説明

ナトリウムサンプリング装置

【課題】従来のサンプリング装置では、試料管を加熱する際に、試料管の全体を均一に加熱することができず、冷却する際にも均一に冷却することができないという不具合があった。
【解決手段】送管5をバイパスする試料管6を本体1内に収納し、その本体1内に温風を送風口41から送風ファンにより吹き出させ、本体1内で吹き出された空気を強制対流させることにより試料管6を取り囲む空間の温度を均一にした。これにより試料管6は全体的に均一に加熱される。なお、冷却する際には加熱されていない空気を外部から取り込み、その外気を本体1内で同様に強制対流させることにより、本体1内の温度を均一に、かつ徐々に低下させ、試料管6を均一に冷却するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送管中の溶融金属ナトリウムの一部をサンプリングするためのナトリウムサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナトリウムを製造する際に、製品である金属ナトリウムに含まれる不純物等の検査をする必要がある。この検査はできあがった金属ナトリウムの一部をサンプリングして分析することによって行われる。そのため、製造された金属ナトリウムの一部をサンプリングする装置が必要となる。
【0003】
このようなナトリウムサンプリング装置として、例えば、溶融状態の金属ナトリウムの送管途中に接続され、送管の所定箇所に対して並列に接続され送管をバイパスする試料管と、この試料管を覆う箱状の本体とを備えたものが知られている。このサンプリング装置は、加熱用の電気ヒータと冷却用の送風管とを試料管に沿わせて設け、これら3体を保温ブロックで挟んで断熱している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭64−32146号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のサンプリング装置では、試料管を接続した後に保温ブロックを取り付け、さらに試料管内にナトリウムをサンプリングした後に保温ブロックを取り外さなければ、試料管を本体から取り出すことができず、サンプリング作業が煩わしい。
【0005】
また、加熱時には電気ヒータが試料管に近接しているので、電気ヒータからの輻射により電気ヒータに面している側が加熱されるが、電気ヒータに対して裏側は加熱されにくいという不具合が生じる。また、保温ブロックで囲われた内部空間が煙突として作用しドラフトが発生するため、この内部空間の上側開口から暖められた空気が抜け、下側開口から加熱されていない空気を吸い込み、加熱ムラが生じる。
【0006】
一方、冷却時には送風管から冷風を試料管に向かって吹き付けるが、保温ブロックで囲まれた内部空間の中間部分で送風管から噴出された空気は、暖められながら内部空間を通って出口に向かうので、試料管の中央部分と両端部分とで冷却速度が相違するという不具合も生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、試料管の着脱が容易であって、試料管全体を均一に加熱し、また冷却することのできるナトリウムサンプリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるナトリウムサンプリング装置は、溶融状態の金属ナトリウムの送管途中に接続され、送管の所定箇所に対して並列に接続され送管をバイパスする試料管と、この試料管を覆う箱状の本体であって、試料管を金属ナトリウムの融点以上に加熱する加熱手段と、加熱された試料管を融点以下に冷却する冷却手段とを備えたナトリウムサンプリング装置において、上記加熱手段は、本体の外部に設けられた送風手段と、送風手段からの送風を加熱するヒータとからなり、加熱された温風を本体内に吹き込み、本体内で温風を強制対流させることを特徴とする。
【0009】
本体内で温風を対流させることにより試料管の周囲の空気を均一な温度にし、試料管の加熱ムラの発生を防止する。
【0010】
また、上記本体内に吹き込まれた温風は強制対流後に送風手段に戻され循環すると共に、上記冷却手段は、外気を送風手段に取り込む吸気手段と、循環される空気の少なくとも一部を外気に排出する排気手段とからなり、試料管を冷却する際にはヒータを停止させた状態で循環中の高温空気を外気からの低温空気に置換し、この低温空気を本体内で強制対流させると、試料管を速やかに、かつ全体に均一な冷却速度で冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、本体内に収納した試料管を強制対流させた温風で加熱するので、試料管を長手方向や周方向のいずれの方向にも均一に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照して、1は本発明によるナトリウムサンプリング装置の本体であり、前面に開閉自在の扉2を備えている。3は本体の背面に取り付けられたダクトであり、このダクト3の上端は開口し、その開口には開閉自在の蓋31が設けられている。
【0013】
図2を参照して、本体1の後方の内壁には送風口41と排気口42とが設けられており、両者は共に後述するダクト3に連通している。5は製造された金属ナトリウムが融点(97.8℃)以上に加熱され溶融された状態で貯留タンクに送られる送管である。この送管5には開閉バルブ51が設けられており、その開閉バルブ51を挟んで上流側と下流側とから各々開閉バルブ52,53を介して本体1内に配管が分岐されている。そして、その分岐された配管をジョイント54を介して相互に連結するU字状の試料管6が連結されている。この試料管6はジョイント54によって着脱自在であり、着脱時にこぼれたナトリウムを受けるバット11が本体1内に設置されている。
【0014】
図3を参照して、ダクト3は送風口41と排気口42とを相互に連通するように設けられており、その途中には送風口41に向けて送風するための送風ファン7が設けられている。そして送風ファン7と送風口41との間には電気ヒータ71が設けられてており、送風ファン7からの送風はこの電気ヒータ71で加熱され温風となって送風口41から本体1の内部へと送風される。そしてその送風された温風は本体1内で強制対流され、その後は排気口42から送風ファン7に戻って循環される。なお、図示しない温度センサが本体1の内部空間に設けられており、この温度センサによって温風の温度を検知し、本体1の内部温度が所定の温度(例えば120℃)になるように電気ヒータ71の通電制御が行われる。
【0015】
このように本体1内の温度を所定温度に保持し、所定時間が経過すると、本体1内に設置された試料管6は均一に加熱される。その状態で、開閉バルブ52,53を開けると共に開閉バルブ51を閉めると、送管5内のナトリウムは試料管6内に流れる。そして、所定時間ナトリウムを試料管6内に流した後、開閉バルブ51を開けて開閉バルブ52,53を閉めることにより、ナトリウムを試料管6内にサンプリングする。
【0016】
このようにサンプリングが終了すると、電気ヒータ71への通電を停止する。そして、図4に示すように、本図の(a)に示す状態から(b)に示す状態に切り替える。すなわち、ダクト3の上端の蓋31を開けて開口31aを開放すると共に排気口42の上流に設けた蓋33を閉めて、排気口42を通った空気が送風ファン7に戻らずに、開口31aから外部に排出されるように切り替える。そして同時に、蓋33と送風ファン7との間に設けた蓋32を開けて開口32aを開放する。すると外部の加熱されていない空気がこの開口32aを通って送風ファン7に吸い込まれる。
【0017】
その吸い込まれた加熱されていない空気は送風口41から本体1内へと吹き出されるので、本体1内の加熱された空気はこの新たに吹き込まれる加熱されていない空気によって置換され、ダクトの上端の開口31aから排気される。このように、サンプリング終了後は本体1内の温度が徐々に冷却されるが、本体1内では常に空気が強制循環されているので、試料管6は全体的に均一に冷却される。
【0018】
なお、各蓋31,32,33の開度は自在に調節できるように構成して、加熱時の温度が上がりすぎたような場合には、少量の外気を加熱空気に混合して温度調節を行うようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】本体の内部を示す図
【図3】本体の背面のダクトの構造を示す図
【図4】蓋の開閉状態による空気の流れを示す図
【符号の説明】
【0021】
1 本体
2 扉
3 ダクト
5 送管
6 試料管
7 送風ファン
31 蓋
32 蓋
33 蓋
41 送風口
42 排気口
71 電気ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の金属ナトリウムの送管途中に接続され、送管の所定箇所に対して並列に接続され送管をバイパスする試料管と、この試料管を覆う箱状の本体であって、試料管を金属ナトリウムの融点以上に加熱する加熱手段と、加熱された試料管を融点以下に冷却する冷却手段とを備えたナトリウムサンプリング装置において、上記加熱手段は、本体の外部に設けられた送風手段と、送風手段からの送風を加熱するヒータとからなり、加熱された温風を本体内に吹き込み、本体内で温風を強制対流させることを特徴とするナトリウムサンプリング装置。
【請求項2】
上記本体内に吹き込まれた温風は強制対流後に送風手段に戻され循環すると共に、上記冷却手段は、外気を送風手段に取り込む吸気手段と、循環される空気の少なくとも一部を外気に排出する排気手段とからなり、試料管を冷却する際にはヒータを停止させた状態で循環中の高温空気を外気からの低温空気に置換し、この低温空気を本体内で強制対流させることを特徴とする請求項1に記載のナトリウムサンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−8514(P2009−8514A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169765(P2007−169765)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】