説明

ナトリウムチャネル遮断薬としての置換ベンゾジアゼピノン、ベンゾオキサアゼピノン及びベンゾチアゼピノン

本発明は慢性及び神経因性疼痛の治療に有用なナトリウムチャネル遮断薬である置換ベンゾジアゼピノン、ベンゾオキサアゼピノン及びベンゾチアゼピノン化合物に関する。本発明の化合物は不安症、鬱病、癲癇、躁鬱病及び双極性障害等のCNS障害を含む他の病態の治療にも有用である。本発明は単剤又は1種以上の治療活性化合物との併用剤としての本発明の化合物と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物も提供する。本発明は更に、本発明の化合物及び医薬組成物を投与する段階を含む急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛及びCNS障害(限定されないが、癲癇、躁鬱病、鬱病、不安症及び双極性障害を含む)の治療方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は慢性及び神経因性疼痛の治療に有用なナトリウムチャネル遮断薬である一連のベンゾジアゼピノン、ベンゾオキサアゼピノン及びベンゾチアゼピノン化合物に関する。本発明の化合物はヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、癲癇、躁鬱病、双極性障害、鬱病、不安症及び尿失禁等の神経系障害を含む他の病態の治療にも有用である。
【背景技術】
【0002】
電位依存性イオンチャネルは電気興奮性細胞に活動電位を発生及び伝播させるので、神経及び筋機能に極めて重要である。ナトリウムチャネルは急速な脱分極を媒介し、活動電位の立ち上がり相を構成し、その結果、電位依存性カルシウム及びカリウムチャネルを活性化することにより特殊な役割を果たす。電位依存性ナトリウムチャネルは多重遺伝子ファミリーを構成する。9種類のナトリウムチャネルサブタイプが今日までにクローニングされ、機能的に発現されている。[Clare,J.J.,Tate,S.N.,Nobbs,M.& Romanos,M.A.Voltage−gated sodium channels as therapeutic targets.Drug Discovery Today 5,506−520(2000)]。これらのサブタイプは筋組織と神経組織全体で差別的に発現され、顕著な生体物性を示す。全電位依存性ナトリウムチャネルは他のイオンに比較してナトリウムに対する高度の選択性と電位依存性開閉を特徴とする。[Catterall,W.A.Structure and function of voltage−gated sodium and calcium channels.Current Opinion in Neurobiology 1,5−13(1991)]。マイナス乃至過分極の膜電位では、ナトリウムチャネルは閉じる。膜脱分極後、ナトリウムチャネルは急速に開いた後、不活性化する。ナトリウムチャネルは開状態でのみ電流を流し、一旦不活性化すると、膜過分極により休止状態に戻らなければ再び開くことができない。各種ナトリウムチャネルサブタイプが活性化及び不活性化する電圧範囲は多様であり、その活性化及び不活性化速度も多様である。
【0003】
ナトリウムチャネルは神経毒、抗不整脈薬、抗痙攣薬及び局部麻酔薬等の各種薬剤のターゲットである。[Clare,J.J.,Tate,S.N.,Nobbs,M.& Romanos,M.A.Voltage−gated sodium channels as therapeutic targets.Drug Discovery Today 5,506−520(2000)]。ナトリウムチャネル二次構造における数個の領域はこれらの遮断薬との相互作用に関与しており、大半が高度に保存されている。実際に、今日までに知られている大半のナトリウムチャネル遮断薬は全チャネルサブタイプと同等の効力で相互作用する。しかし、癲癇(例えばラモトリジン、フェニトイン及びカルバマゼピン)や所定の心臓不整脈(例えばリグノカイン、トカイニド及びメキシレチン)の治療に対する治療選択性と十分な治療能をもつナトリウムチャネル遮断薬を製造することは可能であった。
【0004】
神経における電位依存性Naチャネルが神経因性疼痛に重要な役割を果たすことはよく知られている。末梢神経系の損傷の結果、多くの場合には当初の損傷の解消後に神経因性疼痛が長期間持続する。神経因性疼痛の例としては限定されないが、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、糖尿病性神経障害、慢性腰痛、幻肢痛、癌及び化学療法に起因する疼痛、慢性骨盤痛、複合性局所疼痛症候群並びに関連神経痛が挙げられる。一次求心性感覚ニューロンの損傷の結果、神経腫形成及び自発行動と、通常の無害な刺激に応答する誘発行動を生じ得ることが神経因性疼痛のヒト患者と動物モデルで示されている。[Carter,G.T.and B.S.Galer,Advances in the management of neuropathic pain.Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America,2001.12(2):p.447−459]。通常サイレントな感覚ニューロンの異所性活動は神経因性疼痛の発生と持続につながると考えられる。神経因性疼痛は一般に損傷した神経におけるナトリウムチャネル活動の亢進に関係があると推測される。[Baker,M.D.and J.N.Wood,Involvement of Na channels in pain pathways.TRENDS in Pharmacological Sciences,2001.22(1):p.27−31]。
【0005】
実際に、末梢神経損傷ラットモデルでは、損傷神経における異所性活動は疼痛行動徴候に対応する。これらのモデルにナトリウムチャネル遮断薬と局部麻酔薬リドカインを静脈内投与すると、一般行動及び運動機能に影響を与えない濃度で異所性活動を抑制し、触覚刺激性アロディニアの進行を阻止することができる。[Mao,J.and L.L.Chen,Systemic lidocaine for neuropathic pain relief.Pain,2000.87:p.7−17]。これらの有効な濃度はヒトで臨床的に有効であることが示されている濃度と同等であった。[Tanelian,D.L.and W.G.Brose,Neuropathic pain can be relieved by drugs that are use−dependent sodium channel blockers:lidocaine,carbamazepine and mexiletine.Anesthesiology,1991.74(5):p.949−951]。プラセボ対照試験では、リドカインの持続注入により末梢神経損傷患者の疼痛スコアが低下し、別の試験では、リドカインの静脈内投与によりヘルペス後神経痛(PHN)に関連する疼痛強度が低下した。[Mao,J.and L.L.Chen,Systemic lidocaine for neuropathic pain relief.Pain,2000.87:p.7−17.Anger,T.ら,Medicinal chemistry of neuronal voltage−gated sodium channel blockers.Journal of Medicinal Chemistry,2001.44(2):p.115−137]。FDAにより現在認可されているPHN治療薬はリドカインを皮膚パッチ形態で投与するLidoderm(登録商標)のみである。[Devers,A.and B.S.Galer,Topical lidocaine patch relieves a variety of neuropathic pain conditions:an open−label study.Clinical Journal of Pain,2000.16(3):205−208]。
【0006】
神経因性疼痛に加えて、ナトリウムチャネル遮断薬は癲癇と心臓不整脈の治療にも臨床用途がある。最近の動物モデル実験によると、ナトリウムチャネル遮断薬は脳卒中又は神経外傷に起因する虚血状態下における神経保護や、多発性硬化症(MS)患者にも有用であるらしい[Clare,J.J.ら及びAnger,T.ら]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Clare,J.J.,Tate,S.N.,Nobbs,M.& Romanos,M.A.Voltage−gated sodium channels as therapeutic targets.Drug Discovery Today 5,506−520(2000)
【非特許文献2】Catterall,W.A.Structure and function of voltage−gated sodium and calcium channels.Current Opinion in Neurobiology 1,5−13(1991)
【非特許文献3】Carter,G.T.and B.S.Galer,Advances in the management of neuropathic pain.Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America,2001.12(2):p.447−459
【非特許文献4】Baker,M.D.and J.N.Wood,Involvement of Na channels in pain pathways.TRENDS in Pharmacological Sciences,2001.22(1):p.27−31
【非特許文献5】Mao,J.and L.L.Chen,Systemic lidocaine for neuropathic pain relief.Pain,2000.87:p.7−17
【非特許文献6】Tanelian,D.L.and W.G.Brose,Neuropathic pain can be relieved by drugs that are use−dependent sodium channel blockers:lidocaine,carbamazepine and mexiletine.Anesthesiology,1991.74(5):p.949−951
【非特許文献7】Anger,T.ら,Medicinal chemistry of neuronal voltage−gated sodium channel blockers.Journal of Medicinal Chemistry,2001.44(2):p.115−137
【非特許文献8】Devers,A.and B.S.Galer,Topical lidocaine patch relieves a variety of neuropathic pain conditions:an open−label study.Clinical Journal of Pain,2000.16(3):205−208。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は慢性及び神経因性疼痛の治療に有用なナトリウムチャネル遮断薬である置換ベンゾジアゼピノン、ベンゾオキサアゼピノン及びベンゾチアゼピノン化合物に関する。本発明の化合物は不安症、鬱病、癲癇、躁鬱病及び双極性障害等のCNS障害を含む他の病態の治療にも有用である。本発明は単剤又は1種以上の治療活性化合物との併用剤としての本発明の化合物と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物も提供する。
【0009】
本発明は更に、本発明の化合物及び医薬組成物を投与する段階を含む急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛及びCNS障害(限定されないが、癲癇、躁鬱病、鬱病、不安症及び双極性障害を含む)の治療方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は式(I):
【0011】
【化1】

により表される化合物とその医薬的に許容可能な塩を含み、
式中、各Rは独立して
水素、
ハロゲン、
シアノ、
置換されていないか又は1〜5個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、及び
置換されていないか又は1〜5個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ
から構成される群から選択され;
は独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1〜6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、
1−6アルキニル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン、
1−6シクロアルキル(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、並びに
1−6シクロアルキル−C1−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
は独立して
水素及び
1−6アルキル
から構成される群から選択され;
は独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−10アルコキシ、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−アリール(式中、mは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−ヘテロアリール(式中、mは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
は独立して
−(CH−アリール(式中、nは0、1又は2であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0、1又は2であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
Xは独立して
酸素、
置換されていないか又は本明細書に定義するような1個のRで置換された窒素、
硫黄、
スルホキシド、及び
スルホン
から構成される群から選択され;
は独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−10アルコキシ、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−アリール(式中、pは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−ヘテロアリール(式中、pは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択される。
【0012】
本発明の化合物の1態様は、式(Ia):
【0013】
【化2】

に示すようにX=Nであり、R、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0014】
本発明の化合物のこの態様の1分類は、*及び**を付した炭素原子が式(Ib):
【0015】
【化3】

に示すような立体配置を取り、R、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0016】
本発明の化合物のこの態様の1サブ分類は、式(Ic):
【0017】
【化4】

に示すように各R=Hであり、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0018】
このサブ分類において、本発明は、
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1〜6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されており;
が独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−フェニル(式中、pは0、1、2又は3であり、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択される式(Ic)の化合物を包含する。
【0019】
本発明の化合物の第2の態様は、式(Id):
【0020】
【化5】

に示すようにX=Oであり、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0021】
本発明の化合物のこの態様の1分類は、*を付した炭素原子が式(Ie):
【0022】
【化6】

に示すような立体配置を取り、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0023】
この分類において、本発明は、
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1〜6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている式(Ie)の化合物を包含する。
【0024】
本発明の化合物の第3の態様は、式(If):
【0025】
【化7】

に示すようにX=Sであり、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0026】
本発明の化合物のこの態様の1分類は、*を付した炭素原子が式(Ig):
【0027】
【化8】

に示すような立体配置を取り、R、R、R、R及びRが本明細書に定義する通りである化合物とその医薬的に許容可能な塩である。
【0028】
この分類において、本発明は、
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1〜6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1〜6個のハロゲンで置換されている式(Ig)の化合物を包含する。
【0029】
ナトリウムチャネル遮断薬として有用な本発明の化合物の非限定的な具体例を以下に挙げる。
【0030】
【化9】

【0031】
本発明は更に下記実施例を包含する。
【0032】
本発明は更に治療有効量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物を包含する。
【0033】
本発明は更に治療有効量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含有しており、更にi)オピエートアゴニスト、ii)オピエートアンタゴニスト、iii)カルシウムチャネルアンタゴニスト、iv)5HT受容体アゴニスト、v)5HT受容体アンタゴニスト、vi)ナトリウムチャネルアンタゴニスト、vii)NMDA受容体アゴニスト、viii)NMDA受容体アンタゴニスト、ix)COX−2選択的阻害剤、x)NK1アンタゴニスト、xi)非ステロイド性抗炎症薬、xii)選択的セロトニン再取込み阻害剤、xiii)選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害剤、xiv)三環系抗鬱薬、xv)ノルエピネフリンモジュレーター、xvi)リチウム、xvii)バルプロ酸塩、xviii)ニューロンチン、並びにxix)プレガバリンから構成される群から選択される第2の治療剤を含有する医薬組成物を包含する。
【0034】
本発明は更に疼痛の治療又は予防を必要とする患者に治療有効量又は予防有効量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を投与する段階を含む疼痛の治療又は予防方法を包含する。
【0035】
本発明は更に以下の病態:
(1)慢性、内臓、炎症性及び/又は神経因性疼痛症候群;
(2)外傷性神経損傷、神経圧迫もしくは絞扼、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、糖尿病性神経障害、癌及び/又は化学療法に起因又は関連する疼痛;
(3)慢性腰痛;
(4)幻肢痛;並びに
(5)HIV及びHIV治療により誘発される神経障害、慢性骨盤痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性関節痛及び関連神経痛
の1種以上の治療又は予防を必要とする患者における前記病態の治療又は予防方法として、前記病態の治療又は予防を必要とする患者に治療有効量又は予防有効量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を投与する段階を含む方法を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で使用する「アルキル」及び「アル」で始まる他の基(例えばアルコキシ、アルカノイル、アルケニル及びアルキニル)は直鎖でも分岐鎖でもその組合せでもよい炭素鎖を意味する。アルキル基の例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、並びにヘプチルが挙げられる。「アルケニル」、「アルキニル」等の用語は少なくとも1個の不飽和C−C結合を含む炭素鎖を意味する。
【0037】
「シクロアルキル」なる用語は指定炭素原子数の1個の環を含む飽和炭化水素を意味する。シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。「シクロアルキル」が置換されている場合には、例えば以下の基:
【0038】
【化10】

が挙げられる。
【0039】
「C0−4アルキル」なる用語は炭素原子数4、3、2、1又は0のアルキルを意味する。炭素原子数0のアルキルはアルキルが末端基である場合には水素原子置換基であり、アルキルが架橋基である場合には直接結合である。
【0040】
「アルコキシ」なる用語は指定炭素原子数(例えばC1−10アルコキシ)又はこの範囲内の任意数(即ちメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等)の直鎖又は分岐鎖アルコキシドを意味する。
【0041】
「アリール」とは炭素環原子を含む単環又は多環式芳香環系を意味する。好ましいアリールは単環又は二環式6〜10員芳香環系である。フェニルとナフチルが好ましいアリールである。フェニルが最も好ましい。
【0042】
「ヘテロアリール」とはO、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む芳香族又は部分芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールはアリール、シクロアルキル及び非芳香族複素環等の他の種の環に縮合したヘテロアリールも含む。ヘテロアリールの例としてはピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノキサリニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、インダゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル及びテトラゾリルが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としてはアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリニル、ピロリジン−2−オン、ピペリジン−2−オン及びチオモルホリニルが挙げられる。
【0043】
「ハロゲン」とはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。塩素とフッ素が一般に好ましい。ハロゲンがアルキル又はアルコキシ基に置換している場合にはフッ素が最も好ましい(例えばCFO及びCFCHO)。
【0044】
「哺乳動物」なる用語はヒトと動物(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ブタ及びウシ)を意味する。
【0045】
本明細書に記載する化合物は1個以上の二重結合を含み、従ってシス/トランス異性体及び他の配座異性体となる場合がある。本発明は特に指定しない限り、このような可能な全異性体とこのような異性体の混合物を含む。
【0046】
本発明の化合物は1個以上の不斉中心を含み、従ってラセミ化合物、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在する場合がある。特に、本発明の化合物は式Ib、Ie及びIgで*及び**を付した不斉炭素原子に1個の不斉中心をもつ。分子の各種置換基の種類に応じて2個以上の不斉中心が存在する場合もある。このような各不斉中心は独立して2種類の光学異性体を生じ、混合物と純化合物又は部分精製化合物としての可能な全光学異性体及びジアステレオマーを本発明の範囲に含むものとする。本発明はこれらの化合物のこのような全異性体を包含するものである。
【0047】
式Iは好ましい立体配置を表示せずにこの分類の化合物の構造を示す。
【0048】
これらのジアステレオマーの個々の合成又はそのクロマトグラフィー分離は本明細書に開示する方法を適宜変更することにより当分野で公知の通りに実施することができる。その絶対立体配置は必要に応じて既知絶対配置の不斉中心を含む試薬で誘導体化した結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶構造解析により決定することができる。
【0049】
所望により、個々のエナンチオマーを単離するように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離はキラル固定相を使用するクロマトグラフィー法等の当分野で周知の方法により実施することができる。
【0050】
あるいは、当分野で周知の方法により既知配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用して立体選択的合成により化合物の任意エナンチオマーを得ることもできる。
【0051】
当然のことながら、本明細書で構造式Iの化合物と言う場合には医薬的に許容可能な塩も含み、更に遊離化合物の前駆体として使用する場合又は他の合成操作で使用する場合には医薬的に許容できない塩も含むものとする。
【0052】
本発明の化合物は医薬的に許容可能な塩として投与することができる。「医薬的に許容可能な塩」なる用語は医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。本発明の化合物が酸性である場合には、無機塩基と有機塩基を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基からその対応する塩を適宜製造することができる。このような無機塩基から誘導される塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(二価及び一価)、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(三価及び二価)、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、環状アミン及び置換アミン(例えば天然及び合成置換アミン)の塩が挙げられる。塩を形成することが可能な他の医薬的に許容可能な非毒性有機塩基としては、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン及びトロメタミン等のイオン交換樹脂が挙げられる。
【0053】
本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸と有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性酸からその対応する塩を適宜製造することができる。このような酸としては例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0054】
本発明の医薬組成物は活性成分としての本発明の化合物(又はその医薬的に許容可能な塩)と、医薬的に許容可能なキャリヤーと、場合により1種以上の他の治療剤又はアジュバントを含有する。このような他の治療剤としては例えばi)オピエートアゴニスト又はアンタゴニスト、ii)カルシウムチャネルアンタゴニスト、iii)5HT受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、iv)ナトリウムチャネルアンタゴニスト、v)NMDA受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、vi)COX−2選択的阻害剤、vii)NK1アンタゴニスト、viii)非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)、ix)選択的セロトニン再取込み阻害剤(「SSRI」)及び/又は選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害剤(「SSNRI」)、x)三環系抗鬱薬、xi)ノルエピネフリンモジュレーター、xii)リチウム、xiii)バルプロ酸塩、xiv)ニューロンチン(ガバペンチン)、並びにxv)プレガバリンが挙げられる。本発明の組成物としては経口、直腸、局所及び非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)投与に適した組成物が挙げられるが、任意所定症例に最適な経路は特定宿主と、活性成分を投与する病態の種類及び重篤度によって異なる。医薬組成物は単位容量形態で適宜提供することができ、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。
【0055】
本発明の化合物及び組成物は慢性、内臓、炎症性及び神経因性疼痛症候群の治療に有用である。更に外傷性神経損傷、神経圧迫もしくは絞扼、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛及び糖尿病性神経障害に起因する疼痛の治療にも有用である。本発明の化合物及び組成物は慢性腰痛、幻肢痛、慢性骨盤痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性関節痛及び関連神経痛、癌、化学療法に関連する疼痛、HIV及びHIV治療により誘発される神経障害の治療にも有用である。本発明の化合物は局部麻酔薬として利用することもできる。本発明の化合物は過敏性腸症候群及び関連障害とクローン病の治療にも有用である。
【0056】
本発明の化合物は癲癇と部分性及び全身性強直発作の治療に臨床利用される。本発明の化合物は脳卒中又は神経外傷に起因する虚血状態下における神経保護と、多発性硬化症の治療にも有用である。本発明の化合物は頻脈性不整脈の治療にも有用である。更に、本発明の化合物は神経精神障害の治療にも有用であり、このような障害としては、気分障害(例えば鬱病乃至より特定的には鬱病性障害(例えば単発性又は反復性大鬱病性障害及び気分変調性障害)、又は双極性障害(例えばI型双極性障害、II型双極性障害及び気分循環性障害));不安障害(例えば広場恐怖症を伴うことがあるパニック障害、パニック障害病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症(例えば特定動物恐怖症、対人恐怖症)、強迫性障害、ストレス障害(外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を含む)、及び全般性不安障害)が挙げられる。
【0057】
ヒト等の霊長類に加え、他の各種哺乳動物も本発明の方法により治療することができる。例えば、限定されないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、又は他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、齧歯類(例えばマウス)種等の哺乳動物を治療することができる。他方、本方法は鳥類(例えばニワトリ)等の他の種で実施することもできる。
【0058】
当然のことながら、鬱病又は不安症の治療には、ノルエピネフリン再取込み阻害剤、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMA)、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤(SNRI)、α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、非定型抗鬱剤、ベンゾジアゼピン、5−HT1Aアゴニスト又はアンタゴニスト、特に5−HT1A部分アゴニスト、ニューロキニン1受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、及びその医薬的に許容可能な塩等の他の抗鬱剤又は抗不安剤と本発明の化合物を併用することができる。
【0059】
更に、当然のことながら、本発明の化合物は上記症状及び障害を予防するため、更にはナトリウムチャネル活動に関連する他の病態及び障害を予防するために予防有効用量レベルで投与することができる。
【0060】
本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液剤又は懸濁液剤を局所用途に利用することができる。本発明の趣旨ではマウスウォッシュやうがい薬も局所用途の範囲に含まれる。
【0061】
炎症性及び神経因性疼痛の疼痛の治療には約0.01mg/kg〜約140mg/kg体重/日又は患者一人1日当たり約0.5mg〜約7gの用量レベルが有用である。例えば、炎症性疼痛は化合物約0.01mg〜75mg/kg体重/日又は患者一人1日当たり約0.5mg〜約3.5gを投与することにより有効に治療することができる。神経因性疼痛は化合物約0.01mg〜125mg/kg体重/日又は患者一人1日当たり約0.5mg〜約5.5gを投与することにより有効に治療することができる。
【0062】
単一用量形態を製造するためにキャリヤー材料と配合することができる活性成分の量は治療する宿主と特定投与方式により異なる。例えば、ヒト経口投与用製剤には組成物全体の約5〜約95%の範囲の適量のキャリヤー材料と共に活性剤約0.5mg〜約5gを適宜配合することができる。単位用量形態は一般に活性成分約1mg〜約1000mg、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mgを含有する。
【0063】
しかし、当然のことながら、任意特定患者の特定用量レベルは種々の因子により異なる。このような患者関連因子としては、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食生活が挙げられる。他の因子としては、投与時間、投与経路、排泄速度、薬剤併用及び治療する特定疾患の重篤度が挙げられる。
【0064】
実際には、本発明の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を活性成分として慣用医薬配合技術により医薬キャリヤーと混和することができる。キャリヤーは例えば経口又は非経口(静脈内を含む)の投与に所望される製剤形態に応じて多様な形態をとることができる。従って、本発明の医薬組成物は規定量の活性成分を各々含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤等の経口投与に適した不連続単位の形態とすることができる。更に、本発明の組成物は散剤、顆粒剤、溶液剤、水性液体懸濁液剤、非水性液剤、水中油エマルション又は油中水液エマルションの形態でもよい。上記一般剤形に加え、本発明の化合物又はその医薬的に許容可能な塩は制御放出手段及び/又は送達装置により投与することもできる。本発明の組成物は任意製薬法により製造することができる。一般に、このような方法は1種以上の必要成分を構成するキャリヤーと活性成分を配合する段階を含む。一般に、組成物は活性成分を液体キャリヤー又は微粉状固体キャリヤー又はその両者と均一混和することにより製造される。その後、製剤を所望形態に適宜成形することができる。
【0065】
従って、本発明の医薬組成物は医薬的に許容可能なキャリヤーと、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、IfもしくはIgの化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含有することができる。本発明の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を1種以上の治療活性化合物と医薬組成物で併用してもよい。
【0066】
使用する医薬キャリヤーは例えば固体、液体又は気体とすることができる。固体キャリヤーの例としては乳糖、白土、蔗糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアガム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が挙げられる。液体キャリヤーの例としては糖蜜、落花生油、オリーブ油及び水が挙げられる。気体キャリヤーの例としては二酸化炭素と窒素が挙げられる。
【0067】
経口剤形用組成物を製造するには、適切な任意医薬媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油類、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等を使用して懸濁液剤、エリキシル剤及び溶液剤等の経口液体製剤を形成することができ、澱粉、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤等のキャリヤーを使用して散剤、カプセル剤及び錠剤等の経口固体製剤を形成することができる。投与し易いという理由から錠剤とカプセル剤が固体医薬キャリヤーを利用する好適経口投与単位である。場合により、標準水性又は非水性技術により錠剤にコーティングしてもよい。
【0068】
本発明の組成物を含有する錠剤は場合により1種以上の補助成分又はアジュバントを加えて圧縮又は成形により製造することができる。圧縮錠剤は散剤や顆粒剤等の自由流動形態の活性成分を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合し、適切な機械で圧縮することにより製造することができる。成形錠剤は不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することにより製造することができる。各錠剤は活性成分約0.1mg〜約500mgを含有することが好ましく、各カシェ剤又はカプセル剤は活性成分約0.1mg〜約500mgを含有することが好ましい。従って、錠剤、カシェ剤又はカプセル剤1錠に活性成分0.1mg、1mg、5mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg又は500mgを適宜配合し、錠剤、カシェ剤又はカプセル剤1錠又は2錠を1日1回、2回、又は3回投与する。
【0069】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は活性化合物の水溶液又は水性懸濁液として製造することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース等の適切な界面活性剤を加えることができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその油中混合物中で分散液を製造することもできる。更に、微生物の有害な増殖を防ぐために防腐剤を加えてもよい。
【0070】
注射用に適した本発明の医薬組成物としては滅菌水溶液又は分散液が挙げられる。更に、組成物はこのような滅菌注射溶液又は分散液の即席調製用滅菌粉末の形態でもよい。いずれの場合も、最終注射剤形態は無菌でなければならず、注射針を通過し易いように十分流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵条件下で安定でなければならないので、細菌や真菌等の微生物の汚染作用から保護することが好ましい。キャリヤーは例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油及び適切なその混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。
【0071】
本発明の医薬組成物は例えばエアゾール、クリーム、軟膏、ローション及び散布剤等の局所用に適した形態とすることができる。更に、組成物は経皮装置で使用するのに適した形態とすることができる。これらの製剤は本発明の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を使用して慣用加工法により製造することができる。1例として、クリーム又は軟膏は親水性材料と水を化合物約5重量%〜約10重量%と混合して所望コンシステンシーをもつクリーム又は軟膏とすることにより製造される。
【0072】
本発明の医薬組成物はキャリヤーを固体とする直腸投与に適した形態とすることができ、例えば混合物は単位用量座剤を形成する。適切なキャリヤーとしてはカカオバターや当分野で一般に使用されている他の材料が挙げられる。座剤は先ず組成物を軟化又は溶融キャリヤーと混合した後に冷却し、型で成形することにより適宜形成することができる。
【0073】
上記キャリヤー成分に加え、上記医薬製剤は必要に応じて希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑沢剤及び防腐剤(酸化防止剤を含む)等の1種以上の他のキャリヤー成分を加えてもよい。更に、製剤を所期レシピエントの血液と等張にするように他のアジュバントを加えてもよい。本発明の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含有する組成物は粉末又は濃縮液形態で製造することもできる。
【0074】
本発明の化合物及び医薬組成物はナトリウムチャネルを遮断することが判明した。従って、本発明の1側面は有効量の本発明の化合物を投与することにより、哺乳動物においてニューロンナトリウムチャネルの遮断により改善することが可能な病態を治療及び予防することである。このような病態としては、例えば急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、炎症性疼痛及び神経因性疼痛が挙げられる。本発明の化合物及び組成物はヒトに加え、イヌやネコ等の非ヒト哺乳動物における上記病態(急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、炎症性疼痛及び神経因性疼痛を含む)の治療及び予防に有用である。当然のことながら、ヒト以外の哺乳動物の治療とは上記病態に相関する非ヒト哺乳動物における臨床病態の治療を意味する。
【0075】
更に、上述したように、本発明の化合物は1種以上の治療活性化合物と併用することができる。特に、本発明の化合物はi)オピエートアゴニスト又はアンタゴニスト、ii)カルシウムチャネルアンタゴニスト、iii)5HT受容体アゴニスト又はアンタゴニスト(5−HT1Aアゴニスト又はアンタゴニスト、及び5−HT1A部分アゴニストを含む)、iv)ナトリウムチャネルアンタゴニスト、v)N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、vi)COX−2選択的阻害剤、vii)ニューロキニン1受容体(NK1)アンタゴニスト、viii)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ix)選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)及び/又は選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害剤(SSNRI)、x)三環系抗鬱薬、xi)ノルエピネフリンモジュレーター、xii)リチウム、xiii)バルプロ酸塩、xiv)ノルエピネフリン再取込み阻害剤、xv)モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、xvi)可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMA)、xvii)α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、xviii)非定型抗鬱剤、xix)ベンゾジアゼピン、xx)コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、xxi)ニューロンチン(ガバペンチン)、並びにxii)プレガバリンと有利に併用することができる。
【0076】
本明細書で使用する略語は以下の意味である(下記以外の略語は特に指定しない限りそれらが通常使用されている意味である):Ac(アセチル),Bn(ベンジル),Boc(第3級ブトキシカルボニル),CAMP(環状アデノシン−3’,5’−一リン酸),DAST(三フッ化(ジエチルアミノ)硫黄),DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン),DIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム),DMAP(4−(ジメチルアミノ)ピリジン),DMF(N,N−ジメチルホルムアミド),EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩),EtN(トリエチルアミン),GST(グルタチオントランスフェラーゼ),HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール),LAH(水素化アルミニウムリチウム),Ms(メタンスルホニル;メシル;乃至SOMe),MsO(メタンスルホナート乃至メシラート),NBS(N−ブロモスクシンイミド),NCS(N−クロロスクシンイミド),NSAID(非ステロイド性抗炎症薬),PDE(ホスホジエステラーゼ),Ph(フェニル),r.t.乃至RT(室温),Rac(ラセミ),SAM(アミノスルホニル;スルホンアミド乃至SONH),SPA(シンチレーション近接アッセイ),Th(2−又は3−チエニル),TFA(トリフルオロ酢酸),THF(テトラヒドロフラン),Thi(チオフェンジイル),TLC(薄層クロマトグラフィー),TMEDA(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン),TMSI(ヨウ化トリメチルシリル),Tr乃至トリチル(N−トリフェニルメチル),C(アリル),Me(メチル),Et(エチル),n−Pr(ノルマルプロピル),i−Pr(イソプロピル),n−Bu(ノルマルブチル),i−ブチル(イソブチル),s−Bu(第2級ブチル),t−Bu(第3級ブチル),c−Pr(シクロプロピル),c−Bu(シクロブチル),c−Pen(シクロペンチル),c−Hex(シクロヘキシル)。
【0077】
本発明の化合物は下記一般スキームと実施例に記載する手順に従って製造することができる。下記スキーム及び実施例は更に本発明の範囲についても記載するが、これを限定するものではない。
【0078】
特に指定しない限り、実験手順は以下の条件下で実施した。全操作は室温乃至周囲温度、即ち18〜25℃の範囲の温度で実施した。溶媒の蒸発は60℃までの浴温度にて減圧下(600〜4000パスカル:4.5〜30mmHg)でロータリーエバポレーターを使用して実施した。反応過程は薄層クロマトグラフィー(TLC)又は高圧液体クロマトグラフィー−質量分析法(HPLC−MS)により追跡し、単なる例証として反応時間を示す。全最終生成物の構造と純度はTLC、質量分析法、核磁気共鳴(NMR)スペクトロメトリー又は微量分析データのうちの少なくとも1種の技術により確認した。収率を記載する場合には例証に過ぎない。NMRデータを記載する場合には、主要診断プロトンのデルタ(δ)値として示し、指定溶媒を使用して300MHz、400MHz又は500MHzで測定し、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)に対する100万分率(ppm)として表す。シグナル形状に使用する慣用略語は、s.一重線;d.二重線;t.三重線;m.多重線;br.広幅等である。更に、「Ar」は芳香族シグナルを意味する。化学記号はその通常通りの意味であり、以下の略語を使用する。v(容量)、w(重量)、b.p.(沸点)、m.p.(融点)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq(当量)。
【0079】
合成方法
本発明の化合物は下記スキームと実施例に記載する手順に従って製造することができる。特に定義する場合又は当業者に自明である場合を除き、置換基は上記式と同一である。
【0080】
本発明の新規化合物は例えばAdvanced Organic Chemistry,March,5th Ed.,John Wiley and Sons,New York,NY,2001;Advanced Organic Chemistry,Carey and Sundberg,Vol.A and B,3rd Ed.,Plenum Press,Inc.,New York,NY,1990;Protective groups in Organic Synthesis,Green and Wuts,2nd Ed.,John Wiley and Sons,New York,NY,1991;Comprehensive Organic Transformations,Larock,VCH Publishers,Inc.,New York,NY,1988;Handbook of Heterocyclic Chemistry,Katritzky and Pozharskii,2nd Ed.,Pergamon,New York,NY,2000とその引用文献に記載されているような当業者に公知の技術を使用して容易に合成することができる。本発明の化合物の出発材料はAldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI);Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO);Lancaster Synthesis(Windham,N.H.);Ryan Scientific(Columbia,S.C.);Maybridge(Cornwall,UK);Matrix Scientific(Columbia,S.C.);Arcos(Pittsburgh,PA)及びTrans World Chemicals(Rockville,MD)等の商業ソースから容易に入手可能な化学前駆物質の標準合成変換を使用して製造することができる。
【0081】
本明細書に記載する化合物の合成手順は1段階以上の保護基操作段階と、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ラジアルクロマトグラフィー及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)等の精製段階を含むことができる。生成物はプロトン及び炭素−13核磁気共鳴法(H及び13C NMR)、赤外及び紫外分光法(IR及びUV)、X線結晶構造解析、元素分析及びHPLC−質量分析法(HPLC−MS)等の化学分野で周知の各種技術を使用して特性決定することができる。保護基操作方法、精製方法、構造同定方法及び定量方法は化学合成分野の当業者に周知である。
【0082】
適切な溶媒は反応成分の1種又は全部を少なくとも部分的に溶解し、反応成分又は生成物と有害な相互作用を生じない溶媒である。適切な溶媒は芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、ハロゲン化溶媒(例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジグリム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール)、ニトリル(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル)、ケトン(例えば2−ブタノン、ジエチルケトン、tert−ブチルメチルケトン)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び水である。2種以上の溶媒の混合物を使用することもできる。適切な塩基は一般にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム及び水酸化カルシウム);アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物(例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化カルシウム);アルカリ金属アミド(例えばリチウムアミド、ナトリウムアミド及びカリウムアミド);アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素セシウム);アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシド(例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド及びマグネシウムエトキシド);アルカリ金属アルキル(例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム)、アルキルマグネシウムハロゲン化物、有機塩基(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、コリジン、ルチジン及び4−ジメチルアミノピリジン);並びに二環式アミン(例えばDBU及びDABCO)である。
【0083】
上述したように、経口剤形用組成物を製造するには、通常の医薬媒体の任意のものを利用することができる。例えば、懸濁液剤、エリキシル剤及び溶液剤等の経口液体製剤の場合には、水、グリコール、油類、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等を使用することができ、散剤、カプセル剤及び錠剤等の経口固体製剤の場合には、澱粉、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のキャリヤーを添加することができる。投与し易いという理由から錠剤とカプセル剤が固体医薬キャリヤーを利用する最も有利な経口投与単位形態である。必要に応じて、標準水性又は非水性技術により錠剤にコーティングしてもよい。上記一般剤形に加え、制御放出手段及び/又は送達装置を使用して本発明の化合物及び組成物を投与することもできる。
【0084】
当然のことながら、本発明に記載する所望化合物が得られるように、必要に応じて当業者に利用可能な標準官能基変換技術を使用して下記スキームに記載する化合物中に存在する官能基を更に操作することができる。
【0085】
同様に当然のことながら、単一エナンチオマーもしくはジアステレオマーとして、又は2個以上のエナンチオマーもしくはジアステレオマーを任意比率で含む混合物として、1個以上の不斉中心を含む下記スキーム及び表に記載する化合物を製造することができる。
【0086】
当業者に自明の他の変形又は変更も本発明の範囲と教示に含まれる。本発明は下記特許請求の範囲の記載以外には限定されない。
【0087】
【化11】

【0088】
スキーム1は式Iaの化合物の製造プロトコールの1例を要約する。初期出発材料である1−フルオロ−2−ニトロベンゼン1は確立されている手順[Lauffer,D.J.,Mullican,M.D.A Practical Synthesis of (S)−3−tert−Butoxycarbonylamino−2−oxo−2,3,4,5−tetrahydro−1,5−benzodiazepinone−1−acetic Acid Methyl Ester as a Conformationally Restricted Dipeptido−Mimetic for Caspase−1(ICE) Inhibitors.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12,1225−1227(2002)]により中間体4に変換することができる。従って、1−フルオロ−2−ニトロベンゼン1と、(R)−3−アミノ−2−tert−ブトキシカルボニルアミノプロピオン酸と、二炭酸ナトリウム(NaHCO)等の塩基の混合物をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中で加熱すると、芳香族置換生成物2が得られる。次に2をメタノール(MeOH)等の溶媒に溶解した溶液を水素雰囲気下でPd/C等の触媒の存在下に撹拌すると、アニリン3が得られる。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中で1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等の活性化剤と接触させ、化合物3を分子内環化すると、ベンゾジアゼピノン4が得られる。4をテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解した溶液を0℃まで冷却し、先ずカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(KHMDS)等の塩基で処理した後に求電子剤R−X(式中、Xはハロゲン化物又はトリフラートである)で処理すると、アルキル化物5が得られる。5と、炭酸カリウム(KCO)等の塩基と、求電子剤R−X(式中、Xはハロゲン化物又はトリフラートである)と、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(BuNI)等の触媒の混合物をテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で60℃〜100℃の温度に加熱すると、化合物6が得られる。最後に、ジクロロメタン(CHCl)等の溶媒中でトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸と反応させることによりN−Boc保護基6を除去すると、対応するアミンが得られる。次にベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)等の活性化剤とジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下でこのアミンをN−Boc保護D−アミノ酸とカップリングさせると、カップリング生成物7が得られる。このカップリング反応で使用するアミノ酸は商業ソースから入手することもできるし、Williamsらの方法[Williams,R.M.,Myeong−Nyeo,I.Asymmetric synthesis of monosubstituted and alpha,alpha−disubstituted alpha−amino acids via diastereoselective glycine enolate alkylations.Journal of the American Chemical Society 113,9276−9286(1991)]又はSchollkopfの方法[Schollkopf,U.Enantioselective synthesis of non−proteinogenic amino acids via metallated bis−lactim ethers of2,5−diketopiperazines.Tetrahedron 39,2085−2091(1983)とその引用文献]により合成することもできる。
【0089】
【化12】

【0090】
式Id又はIeの化合物の合成方法の1例をスキーム2に要約する。初期出発材料である市販の5−フルオロ−2−ニトロフェノール8を2−(3−ブロモプロポキシ)テトラヒドロ−2H−ピランと水酸化カリウム(KOH)等の塩基の存在下で加熱すると、付加物9が得られる。次に9を酢酸(HOAc)等の酸に溶解した溶液を加温してヒドロキシル脱保護を誘導すると、10が得られる。10をジョーンズ試薬等の酸化剤と接触させ、対応するカルボン酸誘導体に変換後、10% PdVC等の触媒を使用してこの種を40psiで水素化すると、アニリン11が得られる。ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の活性化剤と、ジイソプロピルエチルアミン等の塩基で処理し、11を分子内環化すると、ベンゾオキサアゼピノン12が得られる。
【0091】
ベンゾオキサアゼピノン環系が形成されたら、各種方法で官能基化することができる。例えば、12をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に溶解した溶液を先ず水素化ナトリウム(NaH)等の塩基で処理した後に求電子剤R−X(式中、Xはハロゲン化物又はトリフラートである)で処理すると、アルキル化物13が得られる。次にArmstrongら[Armstrong,J.D.,Eng,K.K.,Keller,J.L.,Purick,R.M.,Hartner,F.W.,Choi,W−B.,Askin,D.,Volante,R.P.An efficient asymmetric synthesis of (R)−3−amino−2,3,4,5−tetrahydro−1H−[1]−benzazepin−2−one.Tetrahedron Letters 35,3239−3242(1994)]により開発された方法の変法を使用して化合物13を後処理する。従って、13をジクロロメタン等の溶媒に溶解した溶液をN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヨードトリメチルシラン(TMSI)及びヨウ素で順次処理すると、α−ヨウ化物14が得られる。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中でナトリウムアジドの存在下に14を温和に加熱してヨウ化物を置換すると、対応するα−アジド誘導体が得られる。α−アジドをPd/C等の触媒の存在下で還元水素化すると、アミン15が得られる。次にベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の活性化剤と、ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下でこのアミンをN−Boc保護D−アミノ酸とカップリングさせると、ジアステレオマーの混合物としてカップリング生成物16が得られる。必要に応じて、キラルカラムを使用して高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によりジアステレオマー混合物を精製すると、エナンチオリッチな材料が得られる。なお、このカップリング反応で使用するアミノ酸は商業ソースから入手することもできるし、上記Williams又はSchollkopfの方法により合成することもできる。最後に、16をメタノール(MeOH)等の溶媒中でHCl等の酸と接触させ、N−Boc脱保護すると、対応するアミンが得られる。次に上記条件を使用してこのアミンを市販のカルボン酸R−COHとカップリングさせると、カップリング生成物17が得られる。
【0092】
【化13】

【0093】
式Id又はIeの化合物の別の製造方法をスキーム3に要約する。出発材料18は公知手順により製造することができる[DeVita,R.J.,Schoen,W.R.,Doldouras,G.A.,Fisher,M.H.,Wyvratt,M.J.,Cheng,K.,Chan,W.W.−S.,Butler,B.S.,Smith,R.G.Heterocyclic Analogs of the Benzolactam Nucleus of the Non−Peptidic Growth Hormone Secretagogue L−692,429.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 5,1281−1286(1995)]。18をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中でN−クロロスクシンイミド(NCS)等の塩素化剤と接触させて位置選択的に塩素化すると、19が得られる。19をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に溶解した溶液を先ず水素化ナトリウム(NaH)等の塩基で処理した後に求電子剤R−X(式中、Xはハロゲン化物又はトリフラートである)で処理すると、アルキル化物20が得られる。次に酸性条件を使用して20に存在するN−Bocアミン保護基を除去することができる。従って、HCl等の酸をメタノール(MeOH)等の溶媒に溶解した溶液と20を接触させて脱保護し、対応するアミンを得た。次に、ジクロロメタン等の溶媒中でベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の活性化剤と、ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下にこのアミンをN−Boc保護D−アミノ酸とカップリングさせると、カップリング生成物21が得られる。このカップリング反応で使用するアミノ酸は商業ソースから入手することもできるし、上記Williams又はSchollkopfの方法により合成することもできる。21をメタノール(MeOH)等の溶媒中でHCl等の酸と接触させ、N−Boc脱保護し、対応するアミンを得た。次に上記条件を使用してこのアミンを市販のカルボン酸R−COHとカップリングさせると、カップリング生成物22が得られる。
【0094】
なお、出発材料18のエナンチオマーである((−S)−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステルはItohらの方法[Itoh,K.,Kori,M.,Inada,Y.,Nishikawa,K.,Kawamatsu,Y.,Sugihara,H.Chemical & Pharmaceutical Bulletin,34,1128(1986)]により製造することができる。合成後、上記のように処理すると、7位にS立体配置を取る22の類似体が得られる。
【0095】
【化14】

【0096】
式If又はIgの化合物の合成方法をスキーム4に要約する。初期出発材料である((R)−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イル)カルバミン酸ベンジルエステル23は公知手順により製造することができる[Slade,J.,Stanton,J.L.,Ben−David,D.,Mazzenga,G.C.Angiotensin converting enzyme inhibitors:1,5−benzothiazepine derivatives.Journal of Medicinal Chemistry 28,1517−1521(1985)]。酢酸(HOAc)等の溶媒中で23を臭化水素(HBr)等の酸と接触させ、ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護基を除去すると、対応するアミンが得られる。次にこのアミンをトリエチルアミン等の塩基の存在下で炭酸ジ−tert−ブチル(BocO)と反応させると、Boc保護種24が得られる。24をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に溶解した溶液を先ず水素化ナトリウム(NaH)等の塩基で処理した後に求電子剤R−X(式中、Xはハロゲン化物又はトリフラートである)で処理すると、アルキル化物25が得られる。次に酸性条件を使用して25に存在するN−Bocアミン保護基を除去することができる。従って、HCl等の酸をメタノール(MeOH)等の溶媒に溶解した溶液と25を接触させて脱保護し、対応するアミンを得た。次に1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の活性化剤と、ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下でこのアミンをN−Boc保護D−アミノ酸とカップリングさせると、カップリング生成物26が得られる。このカップリング反応で使用するアミノ酸は商業ソースから入手することもできるし、上記Williams又はSchollkopfの方法により合成することもできる。
【0097】
なお、出発材料23のエナンチオマーである((S)−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イル)カルバミン酸ベンジルエステルはDeVitaらの方法[DeVita,R.J.,Schoen,W.R.,Doldouras,G.A.,Fisher,M.H.,Wyvratt,M.J.,Cheng,K.,Chan,W.W.−S.,Butler,B.S.,Smith,R.G.Heterocyclic Analogs of the Benzolactam Nucleus of the Non−Peptidic Growth Hormone Secretagogue L−692,429.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 5,1281−1286(1995)]により製造することができる。合成後、上記のように処理すると、3位にS立体配置を取る26の類似体が得られる。
【0098】
(実施例1)
【0099】
【化15】

[(R)−1−[(R)−5−シクロプロピルメチル−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−3−イルカルバモイル]−2−(4−フルオロフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0100】
ステップ1:((R)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−3−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0101】
【化16】

の製造
【0102】
1−フルオロ−2−ニトロベンゼン(7.77g,55.1mmol)と、(R)−3−アミノ−2−tert−ブトキシカルボニルアミノプロピオン酸(9.98g,48.9mmol)と、二炭酸ナトリウム(13.34g,158.8mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(50mL)に加えた混合物を70℃に36時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(200mL)で希釈し、1:1飽和NHCl水溶液:HOで3回洗浄した。水性洗浄層を合わせて酢酸エチル(50mL)で抽出した。酢酸エチル抽出層を合わせて飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0103】
上記粗生成物のメタノール(100mL)溶液に10% Pd/C(3.0g)を加えた。反応容器を水素置換し、反応混合物を水素雰囲気下で4日間撹拌した。次に酢酸エチル(200mL)を使用して反応混合物をセライトで濾過した。得られた濾液を減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0104】
上記粗生成物と、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(12.3g,64.2mmol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(150mL)の混合物を室温で4時間撹拌した。次に反応混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、先ず1:1飽和NaHCO水溶液:HO(200mL)で洗浄後、HO(100mL)で洗浄した。水性洗浄層を合わせて酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。酢酸エチル抽出層を合わせてMgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルクロマトグラフィー(20%→40%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0105】
H NMR(CDCl):δ 7.89(s,1H),6.99(m,1H),6.86(d,J=6.8Hz,1H),6.79(dd,J=7.3,7.3Hz,1H),6.72(d,J=8.0Hz,1H),5.73(d,J=5.3Hz,1H),4.52(m,1H),3.87(dd,J=11.2,3.8Hz,1H),3.42(dd,J=11.0,11.0Hz,1H),1.43(s,9H)。
MS:m/e 300.3(M+23)
【0106】
ステップ2:[(R)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−3−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0107】
【化17】

の製造
【0108】
オーブン乾燥済みの100mL容丸底フラスコにステップ1の生成物(1.98g,7.14mmol)を入れ、撹拌棒とセプタムを装着し、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)を加え、得られた溶液を0℃まで冷却した。カリウムビス(トリメチルシリル)アミドのトルエン(0.5M,19mL)溶液を加え、得られた混合物を0℃にて30分間撹拌した。次にトリフルオロメタンスルホン酸−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(1.54g,8.64mmol)を加え、室温までゆっくりと昇温しながら反応混合物を撹拌した。18時間後に更にトリフルオロメタンスルホン酸−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(0.70g,3.93mmol)を加え、反応混合物を2時間以上撹拌した。次に反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、1:1飽和NaHCO水溶液:HO(2×50mL)で洗浄した。水性洗浄層を合わせて酢酸エチル(50mL)で抽出した。酢酸エチル抽出層を合わせて飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルクロマトグラフィー(5%→40%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0109】
H NMR(CDCl):δ 7.14(m,2H),7.04(m,1H),6.90(dd,J=7.7,1.1Hz,1H),5.48(d,J=7.3Hz,1H),4.79(m,1H),4.62(ddd,J=11.5,7.1,7.1Hz,1H),4.14(m,1H),3.89(m,1H),3.38(m,2H),1.40(s,9H)。
MS:m/e 382.3(M+23)
【0110】
ステップ3:[(R)−5−シクロプロピルメチル−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−3−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0111】
【化18】

の製造
【0112】
密閉式厚肉圧力管にステップ2の生成物(1.20g,3.34mmol)と、炭酸カリウム(1.81g,13.0mmol)と、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.19g,0.51mmol)と、テトラヒドロフラン(10mL)と、ブロモメチルシクロプロパン(2.50mL,3.48g,25.7mmol)をこの順に加えた。テフロン(登録商標)ねじ蓋で管を密閉し、反応混合物を100℃に18時間加熱した。次に反応混合物を酢酸エチル(100mL)て希釈し、先ず飽和NaHCO水溶液(2×50mL)で洗浄後、飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルクロマトグラフィー(0%→35%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0113】
H NMR(CDCl):δ 7.24(m,1H),7.17(d,J=7.8Hz,1H),7.09(m,1H),5.46(d,J=7.5Hz,1H),4.91(m,1H),4.43(ddd,J=11.5,7.4,7.4Hz,1H),3.99(m,1H),3.52(dd,J=11.4,9.4Hz,1H),3.32(dd,J=9.2,7.1Hz,1H),3.15(dd,J=12.4,5.3Hz,1H),2.56(dd,J=12.5,7.7Hz,1H),1.40(s,9H),0.89(m,1H),0.54(dddd,J=9.3,9.3,4.8,4.8Hz,1H),0.46(dddd,J=8.3,8.3,4.1,4.1Hz,1H),0.15(m,2H)。
MS:m/e 436.3(M+23)
【0114】
ステップ4:[(R)−1−[(R)−5−シクロプロピルメチル−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−3−イルカルバモイル]−2−(4−フルオロフェニル)エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0115】
【化19】

の製造
【0116】
ステップ3の生成物(0.730g,1.77mmol)のジクロロメタン(8mL)溶液にトリフルオロ酢酸(2mL)を加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌後、減圧濃縮して油状物を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0117】
上記粗生成物(0.11mmol)のジクロロメタン(1mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(0.18mL,1.0mmol)と、N−Boc−D−4−フルオロフェニルアラニン(0.066g,0.23mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.076g,0.18mmol)をこの順に加えた。得られた溶液を室温で8時間撹拌後、シリカゲルカラムに直接ロードし、フラッシュクロマトグラフィー(20%→35%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0118】
H NMR(CDCl):δ 7.28(m,1H),7.18(dd,J=7.7,1.3Hz,1H),7.11(m,4H),6.97(m,2H),6.85(br s,1H),4.87(m,2H),4.55(m,1H),4.34(m,1H),3.98(m,1H),3.40(m,2H),3.14(dd,J=12.4,5.3Hz,1H),3.03(m,1H),2.97(dd,J=13.7,6.2Hz,1H),2.55(dd,J=12.5,7.7Hz,1H),1.42(s,9H),0.86(m,1H),0.50(m,2H),0.14(m,2H)。
MS:m/e 601.3(M+23)
【0119】
適切な市販出発材料を使用して実施例1の製造について上記に記載した手順に従って下表1の実施例を製造した。所定の実施例では、(上記ステップ4で使用したような)必要なN−Boc保護D−フェニルアラニン誘導体を市販品として入手できなかった。その場合には上記スキーム1に記載したScholkopf又はWilliamsの方法によりフェニルアラニン誘導体を製造した。
【0120】
【表1】




【0121】
(実施例32)
【0122】
【化20】

N−[(R)−1−((R)−3−クロロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)−2−(2−フルオロフェニル)エチル]−4−フルオロ−2−トリフルオロメチルベンズアミド
【0123】
ステップ1:((R)−3−クロロ−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0124】
【化21】

の製造
【0125】
((R)−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル(5.0g,18mmol,De Vita,R.J.,Schoen,W.R.,Doldouras,G.A.,Fisher,M.H.,Wyratt,M.J.,Cheng,K.,Chan,W.W.−S.,Butler,B.S.,Smith,R.G.Heterocyclic Analogs of the Benzolactam Nucleus of the Non−Peptidic Growth Hormone Secretagogue L−692,429.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,5,1281−1286(1995)に従来記載されているように製造)とN−クロロスクシンイミド(3.12g,23.4mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)溶液を室温で5時間撹拌した。次に反応混合物をジクロロメタンで希釈し、HOで3回洗浄した後、飽和NaCl水溶液で1回洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(17%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0126】
H NMR(CDCl):δ 7.79(br s,1H),7.18(d,J=2.5Hz,1H),7.11(dd,J=8.5,2.5Hz,1H),6.96(d,J=8.5Hz,1H),5.50(br s,1H),4.67(m,2H),4.25(m,1H),1.46(s,9H)。
MS:m/e 213.37(M−Boc+1)
【0127】
ステップ2:((R)−3−クロロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0128】
【化22】

の製造
【0129】
水素化ナトリウム(60%/油,0.052g,1.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)懸濁液を0℃まで冷却した。次にステップ1の生成物(0.312g,1.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)溶液を加え、得られた混合物を室温まで昇温した。30分間後に反応混合物を0℃まで冷却した。2−ヨードプロパン(0.340g,2.0mmol)を加え、反応混合物を室温まで昇温した。1時間後に反応混合物をHOに注ぎ、ジクロロメタンで3回抽出した。有機抽出層を合わせてHOで3回洗浄後、飽和NaCl水溶液で1回洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(17%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0130】
H NMR(CDCl):δ 7.18(m,3H),5.5(br s,1H),4.78(septet,J=6.5Hz,1H),4.54(m,1H),4.48(m,1H),4.11(m,1H),1.46(d,J=6.5Hz,3H),1.41(s,9H),1.15(d,J=6.5Hz,3H)。
MS:m/e 255.40(M−Boc+1)
【0131】
ステップ3:[(R)−1−((R)−3−クロロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)−2−(2−フルオロフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0132】
【化23】

の製造
【0133】
塩化アセチル(2.0mL,28mmol)をメタノール(20mL)に加えることにより予め調製しておいたHClのメタノール溶液をステップ2の生成物(0.240g,0.678mmol)に加えた。得られた反応混合物を室温で8時間撹拌後、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0134】
上記粗生成物(0.180g)をジクロロメタン(5mL)に加えた混合物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.320g,2.48mmol)と、N−Boc−D−2−フルオロフェニルアラニン(0.193g,0.680mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.092g,0.68mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.302g,0.68mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌後、ジクロロメタンで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0135】
H NMR(CDCl):δ 7.40−7.22(m,5H),7.09−7.02(m,2H),4.70(m,1H),4.65(septet,J=7.0Hz,1H),4.41(dd,J=10.0,7.5Hz,1H),4.36(dd,J=9.5,5.0Hz,1H),4.19(t,J=11.0Hz,1H),3.19(dd,J=14.0,5.5Hz,1H),2.85(dd,J=14.0,10.0Hz,1H),1.14(d,J=7.0Hz,3H),1.35(s,9H),1.16(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 420.37(M−Boc+1)
【0136】
ステップ4:N−[(R)−1−((R)−3−クロロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)−2−(2−フルオロフェニル)エチル]−4−フルオロ−2−トリフルオロメチルベンズアミド:
【0137】
【化24】

の製造
【0138】
塩化アセチル(2.0mL,28mmol)をメタノール(20mL)に加えることにより予め調製しておいたHClのメタノール溶液をステップ3の生成物(0.250g,0.48mmol)に加えた。得られた反応混合物を室温で8時間撹拌後、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0139】
上記粗生成物(0.040g)をジクロロメタン(2mL)に加えた混合物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.045g,0.35mmol)と、4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)安息香酸(0.018g,0.087mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.012g,0.087mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.038g,0.087mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌後、ジクロロメタンで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(5%メタノール/ジクロロメタン)により精製し、所望生成物を得た。
【0140】
H NMR(CDOD):δ 7.69(m,1H),7.61(m,2H),7.40(d,J=8.5Hz,1H),7.34−7.25(m,5H),7.20−7.05(m,2H),4.91(dd,J=9.5,5.5Hz,1H),4.74(m,1H),4.68(septet,J=7.0Hz,1H),4.42(dd,J=10.0,7.5Hz,1H),4.22(dd,J=11.0,9.5Hz,1H),3.26(m,1H),3.03(m,1H),1.44(d,J=7.0Hz,3H),1.16(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 529.09(M+1)
【0141】
適切な市販出発材料を使用して実施例32の製造について上記に記載した手順に従って下表2の実施例を製造した。所定の実施例では、(上記ステップ3で使用したような)必要なN−Boc保護D−フェニルアラニン誘導体を市販品として入手できなかった。その場合には上記スキーム1に記載したScholkopf又はWilliamsの方法によりフェニルアラニン誘導体を製造した。
【0142】
【表2】







【0143】
(実施例90)
【0144】
【化25】

N−[(R)−2−(2−クロロフェニル)−1−(3−フルオロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)エチル]−4−フルオロ−2−トリフルオロメチルベンズアミド
【0145】
ステップ1:2−[3−(5−フルオロ−2−ニトロフェノキシ)プロポキシ]テトラヒドロピラン:
【0146】
【化26】

の製造
【0147】
5−フルオロ−2−ニトロフェノール(16.75g,106.7mmol)と水酸化カリウム(8.97g,160mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)に加えた混合物を40℃に2時間加熱した。2−(3−ブロモプロポキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(23.8g,106.7mmol)を加え、得られた混合物を60℃に4時間加熱後、室温まで冷却した。次に反応混合物をHOで希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出層を合わせてHO(3×300mL)と飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0148】
H NMR(CDCl):δ 7.96(dd,J=9.0,6.0Hz,1H),6.84(dd,J=10.5,2.5Hz,1H),6.73(m,1H),4.60(dd,J=4.5,2.5Hz,1H),4.25(m,2H),3.97(m,1H),3.86(m,1H),3.65(m,1H),3.52(m,1H),2.21(m,2H),1.83(m,1H),1.74(m,1H),1.57(m,4H)。
MS:m/e 322.16(M+23)
【0149】
ステップ2:3−(5−フルオロ−2−ニトロフェノキシ)プロパン−1−オール:
【0150】
【化27】

の製造
【0151】
ステップ1の生成物(18.42g,61.58mmol)を酢酸(100mL)とHO(20mL)に溶解した溶液を50℃に6時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、HOで希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出層を合わせてHOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して油状物を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0152】
H NMR(CDCl):δ 8.02(dd,J=9.0,5.5Hz,1H),6.84(dd,J=10.5,2.5Hz,1H),6.76(m,1H),4.29(t,J=5.5Hz,2H),3.94(t,J=5.5Hz,1H),2.15(quintet,J=5.5Hz,2H)。
MS:m/e 215.99(M+1)
【0153】
ステップ3:3−フルオロ−6,7−ジヒドロ−9H−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−8−オン:
【0154】
【化28】

の製造
【0155】
ステップ2の生成物(9.50g,44.2mmol)のアセトン(200mL)溶液にジョーンズ試薬(過剰)を1時間かけて滴下した。5時間後に2−プロパノール(10mL)を加えて過剰の試薬をクエンチした。反応混合物を1時間撹拌後、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0156】
上記粗生成物(8.51g)と10% Pd/C(0.400g)をメタノール(50mL)に加えた混合物を水素(40psi)下に5時間振盪した。次に反応混合物を濾過し、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0157】
上記粗生成物(7.4g)をジクロロメタン(100mL)に加えた混合物を0℃に冷却し、これにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(26.0mL,149mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(5.52g,40.8mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(18.1g,40.8mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で3時間撹拌後、ジクロロメタンで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(25%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0158】
H NMR(CDCl):δ 6.91(m,1H),6.81(m,2H),4.53(t,J=5.5Hz,2H),2.86(t,J=5.5Hz,2H)。
MS:m/e 181.96(M+1)
【0159】
ステップ4:3−フルオロ−9−イソプロピル−6,7−ジヒドロ−9H−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−8−オン:
【0160】
【化29】

の製造
【0161】
水素化ナトリウム(60%/油,0.159g,3.98mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)に加えた混合物を0℃に冷却し、これにステップ3の生成物(0.600g,3.30mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を30分間かけて室温まで昇温後、0℃まで冷却した。2−ヨードプロパン(0.732g,4.30mmol)を加え、反応混合物を室温までゆっくりと昇温しながら2時間撹拌後、HOで希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出層を合わせてHOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0162】
H NMR(CDCl):δ 7.22(dd,J=8.5,6.0Hz,1H),6.91(m,2H),4.79(septet,J=7.0Hz,1H),4.54(m,2H),2.58(m,2H),1.28(d,J=7.0Hz,6H)。
MS:m/e 224.03(M+1)
【0163】
ステップ5:3−フルオロ−7−ヨード−9−イソプロピル−6,7−ジヒドロ−9H−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−8−オン:
【0164】
【化30】

の製造
【0165】
ステップ4の生成物(0.300g,1.34mmol)のジクロロメタン(6mL)溶液を−10℃まで冷却した。N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(1.02mL,6.72mmol)とヨードトリメチルシラン(1.35g,6.72mmol)をこの順に加えて混合物を得、30分間撹拌した。次にヨウ素(1.03g,4.03mmol)を加え、反応混合物を室温までゆっくりと昇温した。1時間後に反応混合物をHOで希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出層を合わせて飽和NaHSO水溶液と飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0166】
H NMR(CDCl):δ 7.28(m,1H),6.90(m,2H),4.83(m,1H),4.75(m,2H),4.70(septet,J=7.0Hz,1H),4.50(m,1H),1.41(d,J=7.0Hz,3H),1.20(d,J=7.0Hz,3H)。
【0167】
ステップ6:7−アミノ−3−フルオロ−9−イソプロピル−6,7−ジヒドロ−9H−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−8−オン:
【0168】
【化31】

の製造
【0169】
ステップ5の生成物(0.240g,0.690mmol)とナトリウムアジド(0.178g,2.75mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(6mL)に加えた混合物を40℃に5時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0170】
上記粗生成物(0.175g)と10% Pd/C(0.050g)をメタノール(10mL)に加えた混合物を室温で水素雰囲気下に撹拌した。18時間後に反応混合物を濾過し、減圧濃縮し、所望生成物を得た。
【0171】
H NMR(CDCl):δ 7.20(m,1H),6.95(m,2H),4.80(septet,J=7.0Hz,1H),4.35(m,1H),4.10(m,1H),3.70(m,1H),1.41(d,J=7.0Hz,3H),1.17(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 239.36(M+1)
【0172】
ステップ7:[(R)−2−(2−クロロフェニル)−1−(3−フルオロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0173】
【化32】

の製造
【0174】
ステップ6の生成物(0.100g,0.42mmol)のジクロロメタン(6mL)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.29mL,1.68mmol)と、N−Boc−D−2−クロロフェニルアラニン(0.138g,0.46mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.063g,0.46mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.204g,0.46mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌後、酢酸エチルで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、高圧液体クロマトグラフィー(ChiralPak ADカラム,20% 2−プロパノール/ヘプタン)により精製し、先に溶出するジアステレオマー(d1)と後から溶出するジアステレオマー(d2)として生成物を得た。
【0175】
d1 H NMR(CDOD):δ 7.42(dd,J=8.5,5.5Hz,1H),7.37(m,1H),7.27(m,1H),7.21(m,2H),7.07(m,2H),4.72(m,1H),4.67(septet,J=7Hz,1H),4.43(dd,J=10.0,7.5Hz,2H),4.19(t,J=10.5Hz,1H),3.30(dd,J=14.0,5.0Hz,1H),2.94(dd,J=14.0,9.5Hz,1H),1.44(d,J=7Hz,3H),1.36(s,9H),1.14(d,J=7Hz,3H)。
d1 MS:m/e 420.19(M−Boc+1)
【0176】
d2 H NMR(CDOD):δ 7.42(dd,J=8.5,5.5Hz,1H),7.38(m,1H),7.25(m,3H),7.06(m,2H),4.69(m,2H),4.45(dd,J=9.0,6.0Hz,1H),4.32(m,1H),4.07(t,J=10.0Hz,1H),3.28(dd,J=13.5,5.5Hz,1H),2.98(dd,J=9.0,5.0Hz,1H),1.44(d,J=7Hz,3H),1.36(s,9H),1.13(d,J=7Hz,3H)。
d2 MS:m/e 420.64(M−Boc+1)
【0177】
ステップ8:N−[(R)−2−(2−クロロフェニル)−1−(3−フルオロ−9−イソプロピル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5−オキサ−9−アザベンゾシクロヘプテン−7−イルカルバモイル)エチル]−4−フルオロ−2−トリフルオロメチルベンズアミド:
【0178】
【化33】

の製造
【0179】
ステップ7の先に溶出した生成物d1(0.24g,0.68mmol)を塩酸のメタノール溶液で処理した。得られた混合物を室温で18時間撹拌後、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0180】
上記粗生成物(0.091g)をジクロロメタン(3mL)に加えた混合物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.16g,1.24mmol)と、4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)安息香酸(0.066g,0.22mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.031g,0.23mmol)と、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.102g,0.23mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌後、ジクロロメタンで希釈し、HOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(10%メタノール/ジクロロメタン)により精製し、所望生成物を得た。
【0181】
H NMR(CDOD):δ 7.71(m,1H),7.61(m,2H),7.41(m,2H),7.33(m,2H),7.25(m,2H),7.06(m,2H),4.97(dd,J=9.5,6.0Hz,1H),4.71(m,2H),4.43(dd,J=9.5,7.0Hz,1H),4.20(dd,J=11.5,10.0Hz,1H),3.34(dd,J=14.5,8.5Hz,1H),3.13(dd,J=14.5,8.5Hz,1H),1.43(d,J=7.0Hz,3H),1.13(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 592.65(M+1)
【0182】
適切な市販出発材料を使用して実施例90の製造について上記に記載した手順に従って下表3の実施例を製造した。*を付した炭素原子は各実施例について記載する立体配置(R又はS)を取る。
【0183】
【表3】




【0184】
(実施例115)
【0185】
【化34】

[(R)−1−((R)−5−イソプロピル−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イルカルバモイル)−2−(2−トリフルオロメチルフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0186】
ステップ1:((R)−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0187】
【化35】

の製造
【0188】
それ自体は公知手順[Slade,J.,Stanton,J.L.,Ben−David,D.,Mazzenga,G.C.Angiotensin Converting Enzyme Inhibitors:1,5−Benzothiazepine Derivatives.Journal of Medicinal Chemistry 28,1517−1521(1985)]に従って製造した((R)−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イル)カルバミン酸ベンジルエステル(3.10g,9.45mmol)に臭化水素の酢酸(15mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌後、ジエチルエーテル(200mL)で希釈し、10分間撹拌した。得られた混合物を濾過し、固形分を集めて粗生成物を得、下記後続反応で使用した。
【0189】
上記粗生成物(0.825g)をジクロロメタン(20mL)に加えた混合物に二炭酸ジ−tert−ブチル(0.677g,3.10mmol)とトリエチルアミン(0.62mL,4.0mmol)を加えた。得られた反応混合物を一晩室温で撹拌後、HOに注ぎ、ジクロロメタンで3回抽出した。有機抽出層を合わせてHOとNaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルクロマトグラフィー(30%→60%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0190】
H NMR(CDCl):δ 8.01(s,1H),7.65(d,J=7.7Hz,1H),7.39(dd,J=7.7,7.6Hz,1H),7.21(dd,J=7.7,7.6Hz,1H),7.16(d,J=7.6Hz,1H),5.61(br s,1H),4.50(m,1H),3.83(dd,J=11.1,7.0Hz,1H),2.99(dd,J=11.2,11.1Hz,1H),1.41(s,9H)。
MS:m/e 317.3(M+23)
【0191】
ステップ2:((R)−5−イソプロピル−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル:
【0192】
【化36】

の製造
【0193】
ステップ1の生成物(0.180g,0.542mmol)のジメチルホルムアミド(5mL)溶液に水素化ナトリウム(油中60%,0.026g,0.65mmol)を加え、得られた混合物を室温で10分間撹拌した。次に2−ヨードプロパン(0.170g,1.0mmol)を加え、撹拌を6時間続けた。次に反応混合物をHOで希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。有機抽出層を合わせてHOと飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲルクロマトグラフィー(20%→50%酢酸エチル/ヘキサン直線勾配)により精製し、所望生成物を得た。
【0194】
H NMR(CDCl):δ 7.64(d,J=7.6Hz,1H),7.41(dd,J=7.6,7.4Hz,1H),7.28(m,2H),5.61(s,1H),4.91(septet,J=7.1Hz,1H),4.22(m,1H),3.67(dd,J=11.2,7.0Hz,1H),2.80(t,J=11.2Hz,1H),1.49(d,J=7.1Hz,3H),1.41(s,9H),1.09(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 237.3(M−Boc+1)
【0195】
ステップ3:[(R)−1−((R)−5−イソプロピル−4−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b][1,4]チアゼピン−3−イルカルバモイル)−2−(2−トリフルオロメチルフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0196】
【化37】

の製造:
【0197】
ステップ2の生成物(0.125g,0.372mmol)に塩化水素のメタノール(5mL)溶液を加えた。得られた溶液を室温で6時間撹拌後、減圧濃縮して固体を得、それ以上精製せずに下記後続反応で使用した。
【0198】
1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.095g,0.50mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.068g,0.50mmol)と、N−Boc−D−2−トリフルオロメチルフェニルアラニン(0.141g,0.399mmol)をジクロロメタン(5mL)に加えた混合物に上記粗生成物とジイソプロピルエチルアミン(0.18mL,1.0mmol)を加えた。得られた溶液を室温で14時間撹拌後、HOで希釈し、ジクロロメタンで3回抽出した。有機抽出層を合わせて飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残渣を得、シリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、所望生成物を得た。
【0199】
H NMR(CDCl):δ 7.68(m,2H),7.52(m,1H),7.46(m,1H),7.40(m,2H),7.28(m,2H),6.96(s,1H),4.98(s,1H),4.87(septet,J=7.1Hz,1H),4.49(m,1H),3.71(m,1H),3.37(dd,J=7.8,5.6Hz,1H),3.02(t,J=5.6Hz,1H),2.63(t,J=11.2Hz,1H),1.49(d,J=7.1Hz,3H),1.41(s,9H),1.09(d,J=7.0Hz,3H)。
MS:m/e 452.3(M−Boc+1)
【0200】
適切な市販出発材料を使用して実施例115の製造について上記に記載した手順に従って下表4の実施例を製造した。*を付した炭素原子は各実施例について記載する立体配置(R又はS)を取る。
【0201】
【表4】


【0202】
以下のインビトロ及びインビボアッセイを使用して本発明の化合物の生物学的活性を評価した。
【0203】
化合物評価(インビトロアッセイ):
ナトリウムチャネル阻害剤の同定はナトリウムイオンがアゴニストにより変化したチャネルを透過するときにナトリウムチャネルが細胞脱分極を生じる能力に基づく。阻害剤の不在下では、アゴニストにより変化したチャネルがナトリウムイオンと接触すると細胞脱分極を生じる。ナトリウムチャネル阻害剤はアゴニストにより変化したナトリウムチャネル内のナトリウムイオン移動により生じる細胞脱分極を阻止する。膜電位の変化はドナークマリン(CCDMPE)とアクセプターオキサノール(DiSBAC(3))の2成分を使用する電圧感受性蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)色素対により測定することができる。オキサノールは親油性アニオンであり、膜電位に従って膜に分配される。ナトリウムチャネルアゴニストの存在下でナトリウムの不在下では、細胞の内側は外側に対してマイナスであり、オキサノールは膜の外層に蓄積され、クマリンの励起によりFRETが生じる。ナトリウムを添加すると膜脱分極が生じ、細胞の内側にオキサノールが再分配され、その結果、FRETが減少する。従って、膜脱分極後に比変化(ドナー/アクセプター)が増加する。ナトリウムチャネル阻害剤の存在下では、細胞脱分極が生じないため、オキサノールの分配とFRETは変化しない。
【0204】
ポリリジンをコーティングした96ウェルプレートでPN1ナトリウムチャネルを安定的にトランスフェクトした細胞(HEK−PN1)を約140,000個/ウェルの密度で増殖させた。培地を吸引し、細胞をPBS緩衝液で洗浄し、0.02%プルロニック酸中10μm CC−DMPE100μlと共にインキュベートした。25℃で45分間インキュベーション後に培地を捨て、細胞を緩衝液で2回洗浄した。20μmベラトリジン、20nmブレベトキシン−3及び試験サンプルを加えたTMA緩衝液中でDiSBAC(3)100μlと共に細胞をインキュベートした。25℃で45分間暗所にてインキュベーション後にプレートをVIPR計器にセットし、CC−DMPEとDiSBAC(3)の蛍光発光を10秒間記録した。この時点で食塩緩衝液100μlをウェルに加え、ナトリウム依存性細胞脱分極の程度を測定し、前記2種の色素の蛍光発光を更に20秒間記録した。食塩緩衝液添加前のCC−DMPE/DiSBAC(3)比は1である。阻害剤の不在下では、食塩緩衝液添加後の比は>1.5である。ナトリウムチャネルが公知標準又は試験化合物により完全に阻害されている場合には、この比は1に維持される。従って、蛍光比の濃度依存性変化をモニターすることによりナトリウムチャネル阻害剤の活性を検定することができる。
【0205】
電気生理学的アッセイ(インビトロアッセイ):
細胞調製:PN1ナトリウムチャネルサブタイプを安定的に発現するHEK−293細胞株を社内で樹立した。0.5mg/mL G418と、50単位/mL Pen/Strepと、熱不活化ウシ胎仔血清1mLを加えたMEM増殖培地(Gibco)で37℃、10%CO下に細胞を培養した。電気生理学的記録のために、ポリ−D−リジンをコーティングした35mmプレートに細胞を撒いた。
【0206】
全細胞記録:EPC−9増幅器とPulseソフトウェア(HEKA Electronics,Lamprecht,ドイツ)を使用して全細胞電圧クランプ(Hamillら,Pfluegers Archives 391:85−100(1981))によりPN1ナトリウムチャネルサブタイプを安定的に発現するHEK−293細胞を試験した。実験は室温で実施した。電極を抵抗2〜4MΩまで火炎研磨した。直列抵抗補償により電圧誤差を最小にし、EPC−9のビルトイン回路を使用して過渡容量を相殺した。50kHzでデータを取得し、7〜10kHzでフィルターした。浴溶液は40mM NaCl,120mM NMDG Cl,1mM KCl,2.7mM CaCl,0.5mM MgCl,10mM NMDG HEPES,pH7.4から構成し、内部(ピペット)溶液は110mMメタンスルホン酸Cs,5mM NaCl,20mM CsCl,10mM CsF,10mM BAPTA(四Cs塩),10mM Cs HEPES,pH 7.4から構成した。
【0207】
以下のプロトコールを使用してチャネルの休止状態と不活性化状態に対する化合物の定常状態親和性(夫々K及びK)を推定した:
1.−90Mvの保持電位から−60Mv〜+50Mvの脱分極電圧への8ms試験パルスを使用して電流−電圧関係(IV曲線)を設定した。実験のその他の全部分では、IV曲線のピークの近傍の電圧(一般に−10又は0Mv)を試験パルス電圧として使用した。
2.−120Mv〜−10Mvの電位への10sコンディショニングパルス後の8ms試験パルス中に活性化された電流を測定することにより定常状態不活性化(アベイラビリティ)曲線を設定した。
3.チャネルの20〜50%が不活性化された保持電位で化合物を添加し、2秒間隔で8ms試験パルス中にナトリウムチャネル遮断をモニターした。
4.化合物の平衡後、上記プロトコール2)に従って化合物の存在下における定常状態不活性化の電圧依存性を測定した。チャネルの休止状態を遮断する化合物は全保持電位からの試験パルス中に誘起される電流を低下させ、主に不活性化状態を遮断する化合物は定常状態不活性化曲線の中間点をシフトさせる。対照と化合物の存在下におけるマイナス保持電位での最大電流(Imax)と定常状態不活性化曲線の中間点の差(ΔV)を使用し、下式:
【0208】
【数1】

【0209】
【数2】

を使用してKとKを計算した。
【0210】
化合物が休止状態に影響を与えなかった場合には、下式:
【0211】
【数3】

を使用してKを計算した。
【0212】
ラットCFAモデルを使用したインビボアッセイ:
左後肢の足底面に完全フロイントアジュバント(CFA:ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis),Sigma;油/食塩水(1:1)エマルションに懸濁;結核菌0.5mg/Ml)0.2mLを注射することにより片側炎症を誘発した。この用量のCFAは有意な後肢腫脹を生じたが、動物は実験期間にわたって正常なグルーミング行動と体重増加を示した。組織損傷から3日後にRandall−Selitto試験を使用して機械刺激性痛覚過敏を評価した。反復測定ANOVA後にダネットのPost Hoc検定を実施した。
【0213】
SNL:機械刺激性アロディニア(インビボアッセイ):
神経損傷前と2週間後にアップダウンパラダイムを使用して校正von Freyフィラメントで触覚刺激性アロディニアを評価した。ワイヤーメッシュ底付きプラスチックケージに動物を収容し、各試験セッション前に15分間馴化させた。50%応答閾値を測定するために、(0.4〜28.8gの強度範囲で)von Freyフィラメントを足底中央面に8秒間又は屈曲応答が生じるまで接触させた。陽性応答後、刺激を徐々に弱めて試験した。刺激に対して応答がなかった場合には、刺激を徐々に強くした。初期閾値を通過後、試験セッション毎に1匹当たり刺激付与4回ずつこの手順を繰返した。試験化合物の経口投与から1時間後と2時間後に機械刺激感受性を評価した。
【0214】
本発明に記載する化合物は上記インビトロアッセイで約<0.1μM〜約<50μMのナトリウムチャネル遮断活性を示した。化合物が上記インビトロアッセイで<5μMのナトリウムチャネル遮断活性を示すと有利である。化合物が上記インビトロアッセイで<1μMのナトリウムチャネル遮断活性を示すと更に有利である。化合物が上記インビトロアッセイで<0.5μMのナトリウムチャネル遮断活性を示すと更に有利である。化合物が上記インビトロアッセイで<0.1μMのナトリウムチャネル遮断活性を示すと更に有利である。
【0215】
マウス癲癇モデル:最大電気痙攣発作(MES)(インビボアッセイ):
調査対象動物に痙攣を誘発するように設計されたBasile Electroconvulsive Device(57800 Basile)に接続した耳介電極を使用して雄性C57BL6マウスにおける最大(強直性後肢伸展及び間代性後肢パドリング)電気ショック発作の閾値を測定した。抗痙攣試験では、以下のパラメーターを使用した:周波数=100Hz;パルス幅=0.7m秒;ショック時間=0.5秒;電流=18mA。未処置又はビヒクルを投与したマウスでは、これらのパラメーターにより、死亡に至らずに強直性屈曲期、強直性伸展期及び間代期から構成される典型的発作を生じた。間代発作を生じた動物の百分率と強直発作を生じた動物の百分率を記録した。抗痙攣活性をもつ化合物は強直発作と間代発作を抑制した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
各Rは独立して
水素、
ハロゲン、
シアノ、
置換されていないか又は1から5個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、及び
置換されていないか又は1から5個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ
から構成される群から選択され;
は独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1から6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、
1−6アルキニル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン、
1−6シクロアルキル(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、並びに
1−6シクロアルキル−C1−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
は独立して
水素及び
1−6アルキル
から構成される群から選択され;
は独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−10アルコキシ、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−アリール(式中、mは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−ヘテロアリール(式中、mは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
は独立して
−(CH−アリール(式中、nは0、1又は2であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−ヘテロアリール(式中、nは0、1又は2であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
Xは独立して
酸素、
置換されていないか又は本明細書に定義するような1個のRで置換された窒素、
硫黄、
スルホキシド、及び
スルホン
から構成される群から選択され;
は独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−10アルコキシ、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、
−(CH−アリール(式中、pは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−ヘテロアリール(式中、pは0、1、2又は3であり、前記アリールは置換されていないか又は独立してハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択される]により表される化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】

(式中、R、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである)により表される請求項1に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
式(Ib):
【化3】

[式中、*及び**を付した炭素原子は式(Ib)に示すような立体配置を取り、R、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである]により表される請求項2に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項4】
式(Ic):
【化4】

(式中、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである)により表される請求項3に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項5】
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1から6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されており;
が独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−10アルキル、
1−10シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシルは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
−(CH−フェニル(式中、pは0、1、2又は3であり、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(Id):
【化5】

(式中、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである)により表される請求項1に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項7】
式(Ie):
【化6】

[式中、*を付した炭素原子は式(Ie)に示すような立体配置を取り、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである]により表される請求項6に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項8】
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1から6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(If):
【化7】

(式中、R、R、R及びRは上記に定義した通りである)により表される請求項1に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項10】
式(Ig):
【化8】

[式中、*を付した炭素原子は式(Ig)に示すような立体配置を取り、R、R、R、R及びRは上記に定義した通りである]により表される請求項9に記載の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項11】
が独立して
水素、
置換されていないか又はハロゲン及びヒドロキシから選択される1から6個の置換基で置換されたC1−6アルキル、
1−6アルケニル、並びに
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ−C1−6アルキレン
から構成される群から選択され;
が水素であり;
が独立して
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルキル、
置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されたC1−6アルコキシ、
3−6シクロアルキル−C0−6アルキレン(但し、前記シクロアルキルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から6個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)、及び
フェニル(但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択され;
が−CH−フェニルであり、但し、前記フェニルは置換されていないか又は独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1から5個の置換基で置換されており、前記アルキル及びアルコキシは置換されていないか又は1から6個のハロゲンで置換されている請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下表:
【表1】




から選択される請求項1に記載の化合物及び上記化合物のいずれかの医薬的に許容可能な塩。
【請求項13】
下表:
【表2】







から選択される請求項1に記載の化合物及び上記化合物のいずれかの医薬的に許容可能な塩。
【請求項14】
下表:
【表3】



から選択される請求項1に記載の化合物及び上記化合物のいずれかの医薬的に許容可能な塩。
【請求項15】
下表:
【表4】

から選択される請求項1に記載の化合物及び上記化合物のいずれかの医薬的に許容可能な塩。
【請求項16】
以下の化合物:
【化9】

から選択される請求項1に記載の化合物及び上記化合物のいずれかの医薬的に許容可能な塩。
【請求項17】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。
【請求項18】
i)オピエートアゴニスト、ii)オピエートアンタゴニスト、iii)カルシウムチャネルアンタゴニスト、iv)5HT受容体アゴニスト、v)5HT受容体アンタゴニスト、vi)ナトリウムチャネルアンタゴニスト、vii)NMDA受容体アゴニスト、viii)NMDA受容体アンタゴニスト、ix)COX−2選択的阻害剤、x)NK1アンタゴニスト、xi)非ステロイド性抗炎症薬、xii)選択的セロトニン再取込み阻害剤、xiii)選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害剤、xiv)三環系抗鬱薬、xv)ノルエピネフリンモジュレーター、xvi)リチウム、xvii)バルプロ酸塩、xviii)ニューロンチン、並びにxix)プレガバリンから構成される群から選択される第2の治療剤を更に含有する請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
疼痛の治療又は予防を必要とする患者に治療有効量又は予防有効量の請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を投与する段階を含む疼痛の治療又は予防方法。
【請求項20】
以下の病態:
(1)慢性、内臓、炎症性及び/又は神経因性疼痛症候群;
(2)外傷性神経損傷、神経圧迫もしくは絞扼、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、糖尿病性神経障害、癌及び/又は化学療法に起因又は関連する疼痛;
(3)慢性腰痛;
(4)幻肢痛;並びに
(5)HIV及びHIV治療により誘発される神経障害、慢性骨盤痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性関節痛及び関連神経痛
の1種以上の治療又は予防を必要とする患者における前記病態の治療又は予防方法であって、前記病態の治療又は予防を必要とする患者に治療有効量又は予防有効量の請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を投与する段階を含む前記方法。

【公表番号】特表2010−520237(P2010−520237A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551993(P2009−551993)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/002441
【国際公開番号】WO2008/106077
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】