説明

ナトリウム二次電池用電極合剤、ナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池

【課題】稀少金属の使用量を減少させることができ、しかも、従来に比し、放電容量が大きく、かつ、充放電を繰り返しても放電容量の低下が起こりづらいナトリウム二次電池を与えることができる電極合剤を提供する。
【解決手段】Snを電極活物質として含有し、さらにTi、V、Cr、Mn, Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiからなる群より選ばれる金属を一種以上含有するナトリウム二次電池用電極合剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム二次電池用電極合剤、ナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池として、リチウム二次電池が携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。
しかしながら、リチウム二次電池において、それを構成する材料の製造には、リチウム等の高価な稀少金属元素を含有する原料を多く使用し、大型電源の需要の増大に対応するための前記原料の供給が懸念されている。
【0003】
これに対し、上記の供給懸念を解決することのできる二次電池として、ナトリウム二次電池の検討がなされている。ナトリウム二次電池において、その構成材料には供給量が豊富でしかも安価な原料を用いることができ、これを実用化することにより、大型電源を大量に供給可能になるものと期待されている。
【0004】
そして、従来のナトリウム二次電池としては、特許文献1に、正極活物質として式Na0.7MnO2+yで表されるナトリウム無機化合物を用い、負極活物質としてスズ(Sn)単体を、スパッタリング装置等を用いて集電体上に厚さ2μmの薄膜として堆積し負極として用いたナトリウム二次電池が具体的に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−216508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されたナトリウム二次電池は、二次電池としての性能、例えば充放電を繰り返したときの放電容量は十分とはいえない。
また、負極活物質としてSn薄膜を使用しているが、活物質層が薄いため集電体の体積に対する活物質の比率が小さく、体積あたりの放電容量が大きい電池を作製するには不向きであり、さらにSnは充放電における体積変化が大きいため、充放電を繰り返すと、活物質であるSn薄膜が電極から脱離し、結果として放電容量が減少する傾向にある。
また、薄膜からなる電極は、真空設備などを必要とする大掛かりなスパッタリング装置等が必要であった。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、稀少金属の使用量を減少させることができ、しかも、従来に比し、放電容量が大きく、かつ、充放電を繰り返しても放電容量の低下が起こりづらいナトリウム二次電池用電極合剤、該電極合剤を使用したナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ね、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発明を提供するものである。
<1> Snを電極活物質として含有し、さらにTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiからなる群より選ばれる金属を一種以上含有することを特徴とするナトリウム二次電池用電極合剤。
<2> Snの重量比が、上記金属全体の50%を超え、100%未満である前記<1>に記載のナトリウム二次電池用電極合剤。
<3> さらに、電極形成剤を含有する前記<1>または<2>に記載のナトリウム二次電池用電極合剤。
<4> さらに炭素材を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のナトリウム二次電池用電極合剤。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のナトリウム二次電池用電極合剤を含有してなるナトリウム二次電池用電極。
<6> 第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、
前記第1電極が、前記<5>に記載の電極であり、
前記第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極であるナトリウム二次電池。
<7> 前記第2電極における電極活物質が、ナトリウム無機化合物からなる電極活物質である前記<6>に記載のナトリウム二次電池。
<8> 前記ナトリウム無機化合物が、以下の式(A)で表される酸化物である前記<7>に記載のナトリウム二次電池。
NaxMO2 (A)
(ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、MgおよびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より大きな放電容量を与えるナトリウム二次電池を提供することができ、さらには、充放電を繰り返した際の放電容量の低下を抑制することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)ナトリウム二次電池用電極合剤
本発明のナトリウム二次電池用電極合剤は、Snを電極活物質として含有し、さらにTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiからなる群より選ばれる金属を一種以上含有することを特徴とする。
本発明の電極合剤は、Naの吸蔵放出量の多いSnを電極活物質として含有することにより、従来の炭素系電極活物質と比較して、重量当たりの放電容量を高めることができる。また、電極活物質としてのSnは、Naの吸蔵放出に伴う体積変化が大きいが、本発明の電極合剤は、さらにTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiからなる群より選ばれる金属(以下、「Sn以外の電極合剤用金属」と称す場合がある。)を一種以上含有することにより、Snを単独で使用した場合に問題となる体積変化を抑制し、Snの電極からの脱離が起こりづらいという利点がある。
【0012】
本発明のナトリウム二次電池用電極合剤に対する、電極活物質としてのSnの含有量は、重量比で上記金属全体の50%を超え、100%未満であるであることが好ましい。
【0013】
(1−1−1)Sn
本発明のナトリウム二次電池用電極合剤に対する、電極活物質としてのSnの形状は、粉末、顆粒、インゴット、薄膜のいずれであってもよい。
Snの形状の好適な例であるSn粉末は、例えば和光純薬工業社製(粒径45μm、純度99.5%)、高純度化学研究所社製(粒径38μm未満、純度99.99%)、関東化学社製(粒径45μm)、メルク社製(粒径71μm未満)、ニラコ社製(粒径150μm、純度99.999%)、アルドリッチ社製(粒径150nm、純度99.7%)などの市販品が挙げられる。好ましくはアルドリッチ社製の粒径の小さいものである。
Sn粉末を構成する粒子の形状としては、例えば薄片状、球状、繊維状、または微粒子の凝集体形状などが挙げられる。
Sn粉末を構成する粒子の平均粒径は好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上5μm以下である。
微粒子の形状は、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
なお、Sn粉末の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出することができる。
【0014】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、電極におけるSnの表面および/または一部が酸化されていてもよい。
【0015】
(1−1−2)Sn以外の電極合剤用金属
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiの形状は、粉末、顆粒、インゴット、薄膜のいずれであってもよく、活物質としてのSnとの混合物でもあっても良く、積層体を形成していても良い。またSnおよび/または上記金属で合金を形成していても良い。
【0016】
(1−2)電極形成剤
より電極性能を高めるという観点から、本発明のナトリウム二次電池用電極合剤は、さらに電極形成剤を含有することが好ましい。
電極形成剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
現段階では詳細な理由は定かではないが、これらの物質を含有することで、放電容量が増加する傾向にある。
この中でも、ポリアクリル酸(PAA)やポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)が好ましい。
また、これらは結着剤としての作用を有するため、他の結着剤が不必要、あるいは他の結着剤の使用量を低減させることができる。
【0017】
上記電極形成剤の電極合剤における構成材料の配合量としては、金属全体の100重量部に対し、通常0.5〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度である。
【0018】
(1−3)炭素材
本発明のナトリウム二次電池用電極合剤は、電極活物質としてのSnと、電極形成剤との他に、さらに炭素材を含有していてもよい。
炭素材を含有することにより、電極性能をさらに向上させることができる。
炭素材としては、例えば、熱分解炭素類、有機材料焼成体などが挙げられる。該炭素材料は、好ましくは難黒鉛化炭素材料(「ハードカーボン」ともいう)である。この中でも特に難黒鉛化炭素材料料からなるカーボンマイクロビーズを挙げることができ、市販品の例としては日本カーボン社製のICB(商品名:ニカビーズ)等が挙げられる。
なお、これらの炭素材は、導電材としても作用する。そのため、炭素材を電極に含有させることにより、他の導電材が不必要、あるいは他の導電材の使用量を低減させることができる。
【0019】
炭素材を構成する粒子の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、カーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粒子の凝集体形状などが挙げられる。炭素材料を構成する粒子の形状の平均粒径は好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上20μm以下である。なお、微粒子の形状は、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
なお、炭素材の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出することができる。
【0020】
電極合剤における構成材料の配合量に関して、炭素材の配合量としては、金属全体の100重量部に対し、通常5〜600重量部程度、好ましくは30〜60重量部程度である。
【0021】
(1−4)ナトリウム二次電池用電極
本発明のナトリウム二次電池用電極は、上述のナトリウム二次電池用電極合剤を含有し、必要に応じて他の構成材料を含有していてもよい。他の構成材料として、例えば、集電体、結着剤、導電材が挙げられる。
【0022】
(1−4−1)集電体
集電体の材料としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅、金、銀、白金、アルミニウム合金またはステンレス等の金属、例えば、炭素素材、活性炭繊維、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、鉛またはこれらの合金をプラズマ溶射、アーク溶射することによって形成されたもの、例えば、ゴムまたはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)などの樹脂に導電材を分散させた導電性フィルムなどが挙げられる。集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチング状およびエンボス状であるもの並びにこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。集電体表面にエッチング処理により凹凸を形成させてもよい。
【0023】
(1−4−2)結着剤
結着剤は、他の電極構成材料を接着するバインダーとしての作用を有する。なお、電極が上述の電極形成剤を含有する場合には、結着剤は、電極形成剤の添加量が不十分で、接着性が不足している場合に用いられる。
結着剤としては、例えば有機高分子化合物からなる結着剤が挙げられる。結着剤としての有機高分子化合物としては、例えば、フッ素化合物の重合体が挙げられる。フッ素化合物としては、例えば、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート]、パーフルオロアルキル置換アルキル(メタ)アクリレート[例えばパーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート]、パーフルオロオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロデシルオキシエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)クロトネート、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)マレート及びフマレート、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)イタコネート、フッ素化アルキル置換オレフィン(炭素数2〜10程度、フッ素原子数1〜17程度)、例えばパーフロオロヘキシルエチレン、炭素数2〜10程度、及びフッ素原子数1〜20程度の二重結合炭素にフッ素原子が結合したフッ素化オレフィン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられる。
【0024】
結着剤のその他の例示としては、フッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体が挙げられる。かかる単量体としては、例えば、(シクロ)アルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等];芳香環含有(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等];アルキレングリコールもしくはジアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4)のモノ(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート];(ポリ)グリセリン(重合度1〜4)モノ(メタ)アクリレート;多官能(メタ)アクリレート[例えば、(ポリ)エチレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等]などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系誘導体[例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等]などの(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチルアクリルアミド等のシアノ基含有単量体;スチレン及び炭素数7〜18のスチレン誘導体[例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン及びジビニルベンゼン等]などのスチレン系単量体;炭素数4〜12のアルカジエン[例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等]などのジエン系単量体;カルボン酸(炭素数2〜12)ビニルエステル[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等]、カルボン酸(炭素数2〜12)(メタ)アリルエステル[例えば、酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル及びオクタン酸(メタ)アリル等]などのアルケニルエステル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体;炭素数2〜12のモノオレフィン[例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン及び1−ドデセン等]のモノオレフィン類;塩素、臭素又はヨウ素原子含有単量体、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのフッ素以外のハロゲン原子含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合含有単量体などが挙げられる。また、付加重合体として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体又はエチレン・プロピレン共重合体などの共重合体でもよい。また、カルボン酸ビニルエステル重合体は、ポリビニルアルコールなどのように、部分的又は完全にケン化されていてもよい。結合体はフッ素化合物とフッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体との共重合体であってもよい。
【0025】
結着剤のその他の例示としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどの多糖類及びその誘導体;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;石油ピッチ;石炭ピッチなどが挙げられる。結合剤としては複数種の結合剤を使用してもよい。
【0026】
結着剤の電極における構成材料の配合量は、上記電極形成剤の添加量にもよるが、電極活物質全量100重量部に対し、通常0.5〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度である。
【0027】
(1−4−3)導電材
導電材は、電極中の導電性を高めるために用いられる。なお、上記炭素材が導電材を兼ねる場合もある。
【0028】
導電材としては、炭素材料を挙げることができ、より具体的には、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、繊維状炭素材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維等)などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きく、電極合剤中に少量添加されることにより、得られる電極内部の導電性を高め、充放電効率および大電流放電特性を向上させることも可能である。
通常、電極合剤中の導電材の割合は、電極活物質100重量部に対して5〜20重量部である。本発明のナトリウム二次電池用電極が上述の炭素材を含有する場合には、この割合を下げることも可能である。
【0029】
(1−5)製造方法
以下、本発明のナトリウム二次電池用電極の製造方法を説明する。
本発明のナトリウム二次電池用電極は、各種形状のSn、Sn以外の電極合剤用金属および結着剤等を含む電極合剤が、集電体に担持されているものであり、通常、シート状である。この場合、電極の製造方法としては、例えば、
(1)Sn、Sn以外の電極合剤用金属、必要に応じて上述の電極形成剤、炭素材、結着剤および導電材等からなる混合物に溶剤を添加してなる電極合剤ペーストを、集電体に、ドクターブレード法などで塗工、又は浸漬し、乾燥する方法、
(2)Sn、Sn以外の電極合剤用金属、必要に応じて上述の電極形成剤、炭素材、結着剤および導電材等からなる混合物に溶剤を添加して混練、成形し、乾燥して得たシートを集電体表面に導電性接着剤等を介して接合した後にプレス及び熱処理乾燥する方法、
(3)Sn、Sn以外の電極合剤用金属、必要に応じて上述の電極形成剤、炭素材、結着剤、導電材および液状潤滑剤等からなる混合物を集電体上に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、得られたシート状の成形物を一軸又は多軸方向に延伸処理する方法、などが挙げられる。電極がシート状である場合、その厚みは、通常5〜500μm程度である。
【0030】
電極合剤ペーストの調製に用いる溶剤としては、例えば、水のほか、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒;イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコールなどのアルコール類;プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。結合剤が増粘する場合には、集電体への塗布を容易にするために、可塑剤を使用してもよい。
【0031】
電極合剤ペーストを、集電体へ塗布する方法としては特に制限されない。例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥などにより行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、通常50〜150℃程度である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法を挙げることができる。
以上に挙げた方法により、本発明の電極を製造することができる。
【0032】
(2)ナトリウム二次電池
次に、本発明のナトリウム二次電池について説明する。
本発明のナトリウム二次電池は、第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、前記第1電極が、上記本発明のナトリウム二次電池用電極であり、前記第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極であることを特徴とする。なお、本発明のナトリウム二次電池は、通常、さらにセパレータを有する。
【0033】
本発明のナトリウム二次電池は、通常、第1電極、セパレータ及び第2電極を、積層、巻回することにより得られる電極群を、電池缶などの容器内に収納し、電解質を含有する電解液を含浸させて製造される。ナトリウム二次電池の形状としては、容器の形状に従い、例えば、コイン型、円筒型、角型等が挙げられる。
以下、本発明のナトリウム二次電池の各構成部位について説明する。
【0034】
(2−1)第1電極
第1電極は、上述の本発明のナトリウム二次電池用電極が用いられるため、説明を省略する。
【0035】
(2−2)第2電極
第2電極は、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する。
第2電極は、集電体と、集電体の上に担持された、上記電極活物質を含む電極合剤とから構成される。電極合剤は、上記電極活物質以外にも必要に応じて導電材や結着剤を含む。
【0036】
(2−2−1)電極活物質
第2電極の電極活物質は、ナトリウム含有物からなり、ナトリウム金属およびナトリウム合金、あるいはナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物が挙げられる。
ここで、第2電極がナトリウム金属またはナトリウム合金である場合には、第1電極が正極、第2電極が負極として作用し、第2電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム化合物である場合には、第1電極が負極、第2電極が正極として作用する。なお、ナトリウム化合物は、ナトリウム無機化合物、ナトリウム有機化合物のいずれも使用できるが、安定性の観点からナトリウム無機化合物が好ましく使用される。
【0037】
(ナトリウム無機化合物)
ここで、得られるナトリウム二次電池の充放電サイクル特性の観点では、第2電極の電極活物質として、ナトリウム無機化合物を用いることが好ましい。ナトリウム無機化合物としては、次の化合物を挙げることができる。
すなわち、NaFeO2、NaMnO2、NaNiO2およびNaCoO2等のNaM1a12で表される酸化物、Na0.44Mn1-a21a22で表される酸化物、Na0.7Mn1-a21a22.05で表される酸化物(M1は1種以上の遷移金属元素、0<a1<1、0≦a2<1);
Na6Fe2Si1230およびNa2Fe5Si1230等のNab2cSi1230で表される酸化物(M2は1種以上の遷移金属元素、2≦b≦6、2≦c≦5);
Na2Fe2Si618およびNa2MnFeSi618等のNad3eSi618で表される酸化物(M3は1種以上の遷移金属元素、2≦d≦6、1≦e≦2);
Na2FeSiO6等のNaf4gSi26で表される酸化物(M4は遷移金属元素、MgおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素、1≦f≦2、1≦g≦2)
NaFePO4、NaMnPO4、Na3Fe2(PO43等のリン酸塩;
Na2FePO4F、Na2VPO4F、Na2MnPO4F、Na2CoPO4F、Na2NiPO4F等のフッ化リン酸塩;
NaFeSO4F、NaMnSO4F、NaCoSO4F、NaFeSO4F等のフッ化硫酸塩;
NaFeBO4、Na3Fe2(BO43等のホウ酸塩;
Na3FeF6、Na2MnF6等のNah56で表されるフッ化物(M5は1種以上の遷移金属元素、2≦h≦3);等が挙げられる。
【0038】
本発明において、前記ナトリウム含有化合物の中では、以下の式(A)で表される酸化物を好ましく用いることができる。以下の式(A)で表される酸化物を電極活物質、特に正極活物質として用いることで、電池の充放電容量を向上させることができる。
NaxMO2 (A)
(ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、Mg、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
【0039】
上記ナトリウム無機化合物は、焼成により本発明に用いられるナトリウム無機化合物となり得る組成を有する金属含有化合物の混合物を焼成することによって製造できる。
具体的には、対応する金属元素を含有する金属含有化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に、得られた混合物を焼成することによって製造できる。例えば、好ましい金属元素比の一つであるNa:Mn:Fe:Ni=1:0.3:0.4:0.3で表される金属元素比を有する複合金属酸化物は、Na2CO3、MnO2、Fe34、Ni23の各原料を、Na:Mn:Fe:Niのモル比が1:0.3:0.4:0.3となるように秤量し、それらを混合し、得られた混合物を焼成することによって製造できる。
【0040】
本発明に用いられるナトリウム無機化合物を製造するために用いることができる金属含有化合物としては、酸化物、ならびに高温で分解および/または酸化したときに酸化物になり得る化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物またはシュウ酸塩を用いることができる。ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、蓚酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物を挙げることができ、これらの水和物を挙げることもできる。
取り扱い性の観点で、より好ましくは炭酸ナトリウムである。マンガン化合物としてはMnO2が好ましく、鉄化合物としてはFe34が好ましく、ニッケル化合物としてはNi23が好ましい。また、これらの金属含有化合物は、水和物であってもよい。
【0041】
金属含有化合物の混合物は、例えば以下の共沈法により金属含有化合物の前駆体を得、得られた金属含有化合物の前駆体と前記ナトリウム化合物とを混合して得ることができる。具体的には、M(ここで、Mは前記と同義)の原料として、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩等の化合物を用いて、これらを水に溶解し、沈殿剤と接触させることで金属含有化合物の前駆体が含有した沈殿物を得ることができる。これらの原料の中でも、塩化物が好ましい。また、水に溶解し難い原料を用いる場合、すなわち、例えば、原料として、酸化物、水酸化物、金属材料を用いる場合には、これらの原料を、塩酸、硫酸、硝酸等の酸またはこれらの水溶液に溶解させて、Mを含有する水溶液を得ることもできる。
【0042】
さらに、前記沈殿剤としては、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Li2CO3(炭酸リチウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、K2CO3(炭酸カリウム)、(NH42CO3(炭酸アンモニウム)および(NH22CO(尿素)からなる群より選ばれる化合物を1種以上用いることができ、該化合物の水和物を1種以上用いてもよく、化合物と水和物とを併用してもよい。また、これらの沈殿剤を水に溶かして、水溶液状で用いることが好ましい。水溶液状の沈殿剤における前記化合物の濃度は、通常0.5〜10モル/L程度、好ましくは1〜8モル/L程度である。また、沈殿剤としてはKOHを用いることが好ましく、より好ましくは、これを水に溶かしたKOH水溶液である。また、水溶液状の沈殿剤として、アンモニア水を挙げることもでき、これと前記化合物の水溶液とを併用してもよい。
【0043】
Mを含有する水溶液と沈殿剤とを接触させる方法としては、Mを含有する水溶液に、沈殿剤(水溶液状の沈殿剤を含む。)を添加する方法、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加する方法、水に、Mを含有する水溶液および沈殿剤(水溶液状の沈殿剤を含む。)を添加する方法を挙げることができる。これらの添加時には、攪拌を伴うことが好ましい。また、上記の接触する方法の中では、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加する方法が、pHを保ちやすく、粒径を制御しやすい点で好ましく用いることができる。この場合、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加していくに従い、そのpHが低下していく傾向にあるが、このpHが9以上、好ましくは10以上となるように調節しながら、Mを含有する水溶液を添加するのがよい。また、この調節は、水溶液状の沈殿剤を添加することによっても行うことができる。
【0044】
上記の接触により、沈殿物を得ることができる。この沈殿物は、金属含有化合物の前駆体を含有する。
【0045】
また、Mを含有する水溶液と沈殿剤との接触後は、通常、スラリーとなり、これを固液分離して、沈殿物を回収すればよい。固液分離はいかなる方法によってもよいが、操作性の観点では、ろ過などの固液分離による方法が好ましく用いられ、噴霧乾燥などの加熱して液体分を揮発させる方法を用いてもよい。また、回収された沈殿物について、洗浄、乾燥などを行ってもよい。固液分離後に得られる沈殿物には、過剰な沈殿剤の成分が付着していることもあり、洗浄により当該成分を減らすことができる。洗浄のときに用いる洗浄液としては、水を用いることが好ましく、アルコール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を用いてもよい。また、乾燥は、加熱乾燥によって行えばよく、送風乾燥、真空乾燥等によってもよい。加熱乾燥によって行う場合には、通常50〜300℃で行い、好ましくは100〜200℃程度である。また、洗浄、乾燥は2回以上行ってもよい。
【0046】
混合方法としては、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよいが、簡便性の観点では、乾式混合が好ましい。混合装置としては、攪拌混合、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラムミキサーおよびボールミルを挙げることができる。また、焼成は、用いるナトリウム化合物の種類にもよるが、通常400〜1200℃程度の温度で保持して行えばよく、好ましくは500〜1000℃程度である。また、前記保持温度で保持する時間は、通常0.1〜20時間であり、好ましくは0.5〜10時間である。前記保持温度までの昇温速度は、通常50〜400℃/時間であり、前記保持温度から室温までの降温速度は、通常10〜400℃/時間である。また、焼成の雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴンまたはそれらの混合ガスを用いることができるが、大気が好ましい。
【0047】
金属含有化合物として、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物を適量用いることによって、生成する複合金属酸化物の結晶性、複合金属酸化物を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えばNaF、MnF3、FeF2、NiF2、CoF2、NaCl、MnCl2、FeCl2、FeCl3、NiCl2、CoCl2、NH4ClおよびNH4Iを挙げることができ、これらを混合物の原料(金属含有化合物)として、または、混合物に適量添加して用いることができる。また、これらのフラックスは、水和物であってもよい。
その他の金属含有化合物として、Na2CO3やNaHCO3等を挙げることができる。
また、金属含有化合物以外のフラックスを使用することもでき、例えば、B23やH3BO3等を挙げることができる。
【0048】
上記ナトリウム無機化合物をナトリウム二次電池用電極(正極)活物質として用いる場合、上記のようにして得られるナトリウム無機化合物に、任意にボールミル、ジェットミル、振動ミル等の工業的に通常用いられる装置を用いた粉砕を行い、洗浄、分級等を行って、粒度を調節することが好ましいことがある。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、ナトリウム無機化合物の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理をしてもよい。
なお、上記の表面処理後、熱処理する場合においては、その熱処理の温度にもよるが、熱処理後の粉末のBET比表面積が、上記の本発明に用いられるナトリウム無機化合物におけるBET比表面積の範囲より小さくなる場合がある。
【0049】
(2−2−2)結着剤
第2電極の結着剤としては、上述の本発明のナトリウム二次電池用電極(第1電極)で例示した結着剤が挙げられる。また、上述の電極形成剤を第2電極の結着剤として使用することもできる。
電極合剤中の結着剤の割合は、通常、電極活物質100重量部に対して5〜20重量部である。
【0050】
(2−2−3)導電材
第2電極の導電材としては、上述の本発明のナトリウム二次電池用電極(第1電極)と同様に、炭素材料を挙げることができ、より具体的には、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、繊維状炭素材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維等)などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きく、電極合剤中に少量添加されることにより、得られる電極内部の導電性を高め、充放電効率および大電流放電特性を向上させることも可能である。通常、電極合剤中の導電材の割合は、電極活物質100重量部に対して5〜20重量部である。導電材として上述のような、微粒の炭素材料、繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
【0051】
(2−2−4)電極合剤ペーストの製造方法
第2電極における電極合剤ペーストの製造方法について説明する。第2電極における電極合剤ペーストは、電極活物質、導電材、結着剤および有機溶媒を混練することで得られる。混練方法は特に限定されないが、混練に用いられる混合機としては、高い剪断力を有するものが好ましい。具体的にはプラネタリーミキサー、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速攪拌機などを挙げることができる。
【0052】
混合順序においては、電極活物質粉末と導電材と結着剤と溶媒とを一括混合してもよいし、溶媒に結着剤、電極活物質粉末、導電材を順に混合してもよい。この順は特に限定されないし、電極活物質粉末および導電材の混合物を、徐々に加えるなどしてもよい。また、溶媒と結着剤をあらかじめ混合、溶解させておいてもよい。
【0053】
前記電極合剤ペーストにおける電極成分の割合、すなわち、電極合剤ペースト中の電極活物質、導電材および結着剤の割合は、得られる電極の厚み、塗布性の観点から、通常30〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%である。
【0054】
第2電極は、上記電極合剤ペーストを、集電体に塗布し、得られたものを乾燥して得られる。乾燥により、電極合剤ペーストにおける溶媒は除去され、集電体には、電極合剤が結着され、電極が得られる。
【0055】
(2−2−5)集電体
第2電極において、集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの導電体を挙げることができ、薄膜に加工しやすく、安価であるという点でAlが好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状およびエンボス状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)が挙げられる。集電体表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0056】
第2電極を製造するに当たり、電極合剤ペーストを、集電体へ塗布する方法としては特に制限されない。例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥などにより行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、通常50〜150℃程度である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法を挙げることができる。
以上に挙げた方法により、第2電極を製造することができる。なお、電極の厚みは、通常5〜500μm程度である。
【0057】
(3)電解質
本発明のナトリウム二次電池で用いることができる電解質としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩およびNaAlCl4が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3およびNaN(SO2CF32からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0058】
上記電解質は、通常、有機溶媒に溶解されて非水電解液として使用される。有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入した、フッ素置換基を有する有機溶媒を用いることができる。有機溶媒として、これらのうちの2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
フッ素置換基を有する有機溶媒としては、例えば4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、FECまたはフルオロエチレンカーボネートということがある。)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC:トランスまたはシス−4,5−ジフルオロ−1、3−ジオキソラン−2−オン)等が挙げられる。
【0060】
フッ素置換基を有する有機溶媒として、好ましくはフルオロエチレンカーボネートである。
【0061】
これらのフッ素置換基有する有機溶媒は1種類で使用してもよいが、通常、フッ素置換基を有さない有機溶媒と組み合わせて使用する。
【0062】
前記非水電解液中にフッ素置換基を有する有機溶媒が含まれる割合は0.01体積%以上、10体積%以下の範囲であり、好ましくは0.1体積%以上8体積%以下であり、より好ましくは0.5体積%以上5体積%以下である。
【0063】
また、本発明のナトリウム二次電池において、電解質は、高分子化合物に前記非水電解液を保持させた状態、すなわち、ゲル状電解質として用いることもできるし、固体状、すなわち、固体電解質として用いることもできる。
固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも1種以上を含む高分子化合物などの高分子電解質を用いることができる。また、高分子に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またNa2S−SiS2、Na2S−GeS2、Na2S−P25、Na2S−B23などの硫化物電解質、またはNa2S−SiS2−Na3PO4、Na2S−SiS2−Na2SO4などの硫化物を含む無機化合物電解質、NaZr2(PO4)3などのNASICON型電解質を用いると、安全性をより高めることができることがある。
また、本発明のナトリウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0064】
(4)セパレータ
本発明のナトリウム二次電池で用いることができるセパレータとしては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いた単層または積層セパレータとしてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは一般に、5〜200μm程度が好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0065】
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。ナトリウム二次電池においては、通常、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする)ことが重要である。したがって、セパレータには、通常の使用温度を越えた場合に、できるだけ低温でシャットダウンする(セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合には、多孔質フィルムの微細孔が閉塞する)こと、およびシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが求められる。セパレータとして、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルムからなるセパレータを用いることにより、熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0066】
(5)用途
本発明のナトリウム二次電池は、高い放電容量を有することから、携帯電話、携帯オーディオ、ノートパソコン等の小型電源のみならず、自動車、自動二輪車、電動椅子、フォークリフト、電車、飛行機、船舶、宇宙船、潜水艦等の輸送機器用電源、耕運機等のロボット用電源、キャンプ用途などの移動式電源、屋外/屋内自動販売機用電源などの移動用中型電池としての用途に好適に使用することができる。
また、本発明のナトリウム二次電池の電極材料として、供給量が豊富で安価な原料を用いることができるため、工場、家屋、その他屋外装置用の定置型電源、太陽電池用充電装置、風力発電用充電装置、その他各種発電装置用の負荷平準化電源、冷蔵・冷凍倉庫内や極冷地、砂漠、宇宙等の低温・高温環境下での電源、自動開閉扉用電源等の定置型電池、大型電池としての用途に好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のナトリウム二次電池用電極は、充分な厚みの活物質層を形成することができるため集電体の体積に対する活物質量の比率を大きくでき、体積あたりの放電容量が大きい電池を作製することが可能となる。
さらに、高価な稀少金属元素であるリチウムを使用することなく、安価な材料を用いて構成することができ、本発明は工業的に極めて有用である。
また、大掛かりな真空設備などを必要とするスパッタリング装置等を用いることなしに、大気雰囲気中などで容易に電極を作製ができるため、本発明は工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Snを電極活物質として含有し、さらにTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Pt、Li、Na、Mg、Ca、AlおよびSiからなる群より選ばれる金属を一種以上含有することを特徴とするナトリウム二次電池用電極合剤。
【請求項2】
Snの重量比が、上記金属全体の50%を超え、100%未満である請求項1に記載のナトリウムに二次電池用電極合剤。
【請求項3】
さらに、電極形成剤を含有する請求項1または2に記載のナトリウム二次電池用電極合剤。
【請求項4】
さらに、炭素材を含有する請求項1から3のいずれかに記載のナトリウム二次電池用電極合剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のナトリウム二次電池用電極合剤を含有してなるナトリウム二次電池用電極。
【請求項6】
第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、
前記第1電極が、請求項5に記載の電極であり、
前記第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極であることを特徴とするナトリウム二次電池。
【請求項7】
前記第2電極における電極活物質が、ナトリウム無機化合物からなる電極活物質である請求項6に記載のナトリウム二次電池。
【請求項8】
前記ナトリウム無機化合物が、以下の式(A)で表される酸化物である請求項7に記載のナトリウム二次電池。
NaxMO2 (A)
(ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、MgおよびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)

【公開番号】特開2013−84522(P2013−84522A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225225(P2011−225225)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】