説明

ナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝硬変・前癌病変の抑制剤

【課題】本発明は、ナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝硬変または前癌病変の予防または治療に供する肝線維化抑制用医薬組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、特に肝線維化の予防または治療における「標的細胞」ともいえる肝星細胞に着目し、肝星細胞の活性化を抑制することが重要であると考え、ナトリウム利尿ペプチドの生体内における活性型肝星細胞に対する効果を検討したところ、肝線維化に対して抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝硬変または前がん病変の予防または治療に供する医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓における線維化(肝線維化)は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎等の様々な原因による慢性的な肝障害によって引き起こされ、慢性肝疾患においては、例えば、ウイルス性肝炎から肝硬変への進展において肝線維化が重要な役割を果たしている。しかしながら、現状では肝障害を引き起こす原因を取り除くことが肝線維化を阻止する最初の治療法であり、そのため効果的な線維化を抑制する薬剤などの治療法の開発は現在の肝臓病学においては極めて重要な研究課題である。
【0003】
肝線維化は、肝細胞の壊死や損傷に対する反応であり、非常に多くの因子が複雑に関係して生じる。例えば、肝臓の炎症や毒物による損傷、肝臓の血流の変化、または肝臓のウイルスや細菌等による感染症によっても生じる。また、肝細胞における様々な貯蔵異常が線維化に関わることも多い。さらに、アルコールやメトトレキサート等の化学物質や薬物、並びに慢性心不全等の肝臓への循環障害も肝線維化の原因となる。
【0004】
肝臓は肝機能を担っている肝実質細胞からだけで構成されているわけではなく、肝臓を構成する全細胞数の40%は非実質細胞であり、非実質細胞は約48%の類洞内皮細胞、約39%のクッパー細胞および約13%の肝星細胞から構成される。肝星細胞は線維芽細胞に由来する細胞であり、筋線維芽細胞ファミリーに属する。肝臓の筋線維芽細胞は未分化間葉系細胞から分化し、器官形成期においてはコラ−ゲンを産生してマトリックスを構築する細胞で、細胞骨格にαアクチンを有し、成長すると細胞形態は変化して非活性型の肝星細胞になる。肝星細胞は、通常、細胞質内にビタミンAを含む脂肪滴を有しており、また、肝臓内の類洞腔に位置して肝細胞と類洞内皮細胞の間にあって類洞の構築を支持すると共に、分枝した長い突起を有し、所謂、血管周皮細胞のように類洞血管内皮細胞を取り巻き、エンドセリンに反応して収縮したり、一酸化窒素(NO)によって弛緩することで、類洞内の血液流量を調節する作用を有する細胞として知られる。さらに、肝臓におけるコラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン等の細胞外基質(extracellular matrix: ECM)の主な産生細胞は肝星細胞であり、その機能はクッパー細胞や肝マクロファージの産生するサイトカインおよび血小板由来増殖因子(PDGF)等の増殖因子により調節されている。
【0005】
一方で、肝星細胞は肝障害や炎症の際にTGF-β等のサイトカインによって刺激を受け、またはアルコールの多量摂取によるエンドトキシン血症等によって肝星細胞が活性化されてECMが過剰に産生されるようになり、これに起因して肝線維化が生じる。即ち、肝線維化とは肝臓内の組織傷害に対する創傷治癒機転の結果、ECMが過剰に蓄積した病態である。通常、生体内におけるコラーゲン等のECMは産生と分解を繰り返しながら一定のバランスを維持しているが、病的条件下ではそのバランスが崩れ線維化が生じる。肝線維化は主に肝炎ウイルスやアルコールによる炎症に伴って起こり、特に炎症が慢性化した際に顕著となる。
【0006】
肝線維化の過程では、肝星細胞はクッパー細胞や肝マクロファージの産生するサイトカインにより活性化され活性化細胞へと形質転換してコラーゲンやフィブロネクチン等のECMを多く産生する。さらにマトリックス分解酵素(MMP)やその抑制因子(TIMP)、TGF-β、PDGF等のサイトカイン、HGFなどの成長因子を産生して肝線維化の中心的な役割を果す。活性化された肝星細胞は収縮能が亢進し肝血流の調節に関与するほか、各種サイトカイン受容体の発現も増加し、サイトカインに対し高感受性になる。
【0007】
また、コラーゲンの産生、分解は各種サイトカインやMMPやTIMPにより複雑に調節されている。TGF-βは、肝線維化を最も促進するサイトカインでありコラーゲン産生を促進する。一方でTNF-αやIFN-γはコラーゲン産生を抑制する。TGF-βは肝線維化過程で増加してパラクライン、オートクライン作用により肝星細胞を活性化し、ECM産生を促進するほか、肝星細胞でのTIMPの産生を亢進させ、ECMの分解を相対的に低下させるために線維化が進む。また、PDGFは肝星細胞の増殖を促進する最も重要なサイトカインと考えられており、肝線維化の促進に関与する。
【0008】
このように肝星細胞の活性化には肝障害に伴ったサイトカイン等が重要であり、さらに増殖、収縮、ECM産生、サイトカイン産生等を介してさらに活性化が亢進する。
【0009】
肝線維化は上記のように様々な原因により惹起される慢性的な肝損傷の結果生じる症状であり、当該症状が続くと肝硬変に進行し、さらに進行すると最終的には肝癌にまで至ることになるため、肝硬変や肝癌への移行段階での前癌病変への進行を予防し且つ治療するには、肝線維化の予防または治療に用いうる医薬品の開発が期待されている。肝星細胞の活性化の抑制に関しては、PPARgamma-ligand(糖尿病薬)を肝星細胞に作用させると活性化のみならず増殖も抑制されることや(非特許文献1:Kawaguchi K et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004; 315: 187-95.)、またアンジオテンシン-II型受容体アンタゴニスト(降圧薬)は肝星細胞の活性化を抑制しECM産生の抑制を誘導するため(非特許文献2:Kurihara N et al. Br J Pharmacol 2003; 139: 1085-94.)これらを用いた治療法が試みられているが、現在のところ臨床上有効な予防または治療方法は見出されていない。
【0010】
また、進展した非代償性肝硬変では、肝性脳症・腹水・食道胃静脈瘤破裂といったことが起こり極度に生活の質(QOL)も低下する。一旦肝硬変に至った肝臓に対する線維溶解剤は現在のところ存在せず、線維化の進展を阻止遅延させる消極的な治療法しか存在しない。即ち、肝硬変を治療する医薬品も存在しないのが現状である。
【0011】
一方、利尿作用を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が知られている。また、これらのペプチドに対する受容体については、利尿ペプチド受容体-A(NPR-A)、利尿ペプチド受容体-B(NPR-B)等が知られており、これらは膜結合型グアニリル・サイクラーゼ構造をとるグアニリル・サイクラーゼ共役受容体である。
【0012】
さらに、ANPおよびBNPはNPR-Aの特異的リガンドであること、CNPはNPR-Bの特異的リガンドであること、並びにこれらは各々の受容体結合後、細胞内のcGMPを上昇させることにより利尿作用および血管拡張作用等の生物学的活性を示すと考えられている。(非特許文献3:Rosenzweig A, and Seidman CE., Annu. Rev. Biochem., 60:229-255, 1991)。また、ナトリウム利尿ペプチドは、体液の恒常性の制御や血圧の調節に重要な役割を果たすと報告されているが(非特許文献4:Ogawa Y, et al., J. Clin. Invest., 93:1911-1921, 1994)、心臓血管系以外の様々な組織での発現とその生理活性も知られている(非特許文献5:Komatsu Y., et al., Endocrinology, 129:1104-1106, 1991;非特許文献6:Chinkers M. and Garbers DL., Annu. Rev. Biochem., 60:553-575, 1991)。
【0013】
ANPは、心臓より分泌され、水電解質代謝および血圧の調節に重要な役割を果たすペプチドホルモンである。ヒトおよびモデル動物において、心肥大および心不全の重症度に伴い、血中ANP濃度が上昇することが知られており、心不全の病態に代償的に作用すると考えられている。実際に心不全患者においてANP投与により血管拡張作用および利尿作用が発現し、心臓の前負荷、後負荷が軽減され、血行動態改善効果が認められている(非特許文献7:Suzuki T., et al.,Cardiovasc. Res. 51:489-494, 2001)。また、急性心不全薬として既に臨床上用いられている。
【0014】
BNPは、脳から見出されたホルモンであるが、脳よりも主に心臓から分泌され、血管拡張作用、利尿作用を有して、体液量や血圧の調整に重要な役割を果たしているホルモンである。健常人における血漿中BNP濃度は極めて低いが、心不全患者では重症度に応じて増加する(非特許文献8:Mukoyama M., et al., J. Clin. Invest., 87:1402-1412, 1991)。血中BNPは無症候性心不全において既に高値を示し、重症度に応じて著明に増加するため心不全機能評価法として重要であり、BNPの測定は心不全の病態の把握に重要な意義を有する(非特許文献7:Suzuki T., et al.,Cardiovasc. Res. 51:489-494, 2001)。BNPもまた、アメリカ合衆国などで既に急性心不全治療薬として認可されている。
【0015】
CNPは、骨の成長因子として知られており、マウス胎仔の脛骨器官培養において、CNPは長骨の成長を著しく促進させる(非特許文献9:Yasoda A., et al., J. Biol. Chem., 273:11695-11700, 1998)。また、マウス胎仔の脛骨の器官培養や、軟骨培養細胞や、骨芽細胞培養細胞で、ANPやBNPよりもcGMP産生能が高い(非特許文献10:Hagiwara H., et al., J. Biol. Chem., 269:10729-10733, 1994;非特許文献11:Suda M., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 223:1-6, 1996;非特許文献12:Inoue A., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 215:1104-1110, 1995)。また、in vitro実験において肝星細胞の増殖抑制作用を有することが知られている(非特許文献13:Gorbig M.N., Hepatology, 30:501-509, 1999)。
【0016】
また、ナトリウム利尿ペプチドは心臓や腎臓において線維化抑制作用を有するが(非特許文献14:Calderone A, et al. J. Clin. Invest., 101:812-818.;非特許文献15:Suganami T. et al. 12: 2652-2663, 2001)、今までにナトリウム利尿ペプチドが、肝硬変および癌化への移行過程である前癌病変への進行の原因となる肝線維化に対して、実際にin vivoにおいて肝線維化抑制作用を有すること、および肝星細胞に作用して当該細胞の活性化の抑制に有効であるかの否かの検討については報告されておらず、少なくとも本願発明者らは当該報告の存在を知らない。
【0017】
【非特許文献1】Kawaguchi K et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004; 315: 187-95.
【非特許文献2】Kurihara N et al. Br J Pharmacol 2003; 139: 1085-94.
【非特許文献3】Rosenzweig A, and Seidman CE., Annu. Rev. Biochem., 60:229-255, 1991
【非特許文献4】Ogawa Y, et al., J. Clin. Invest., 93:1911-1921, 1994
【非特許文献5】Komatsu Y., et al., Endocrinology, 129:1104-1106, 1991
【非特許文献6】Chinkers M. and Garbers DL., Annu. Rev. Biochem., 60:553-575, 1991
【非特許文献7】Suzuki T., et al.,Cardiovasc. Res. 51:489-494, 2001
【非特許文献8】Mukoyama M., et al., J. Clin. Invest., 87:1402-12, 1991
【非特許文献9】Yasoda A., et al., J. Biol. Chem., 273:11695-11700, 1998
【非特許文献10】Hagiwara H., et al., J. Biol. Chem., 269:10729-10733, 1994
【非特許文献11】Suda M., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 223:1-6, 1996
【非特許文献12】Inoue A., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 215:1104-1110, 1995
【非特許文献13】Gorbig M.N., Hepatology, 30:501-509, 1999
【非特許文献14】Calderone A, et al. J. Clin. Invest., 101:812-818.
【非特許文献15】Suganami T. et al. 12: 2652-2663, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、ナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝硬変または前癌病変の予防または治療に供する肝線維化抑制用医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
肝線維化を予防または治療する方法としては、上記の肝線維化の機序に基づき(1)肝星細胞の活性化の抑制、(2)肝線維化に重要なサイトカインの制御、(3)肝星細胞の増殖の抑制、(4)ECM分解系の制御、および(5)肝細胞増殖や肝幹細胞移植等が考えられる。そこで、本発明者らは、特に肝線維化の予防または治療における「標的細胞」ともいえる肝星細胞に着目し、肝星細胞の活性化を抑制することが重要であると考え、ナトリウム利尿ペプチドの生体内における活性型肝星細胞に対する効果を検討したところ、肝線維化に対して抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は以下の事項に関する。
(1)ナトリウム利尿ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有し、肝星細胞の活性化によって誘導される肝線維化を抑制する、肝線維化抑制用医薬組成物。
(2)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、またはC型ナトリウム利尿ペプチドのいずれかである上記(1)に記載の肝線維化抑制用医薬組成物。
(3)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(2)に記載の肝線維化抑制用医薬組成物。
(4)ナトリウム利尿ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を投与することを特徴とする、肝線維化に起因する肝硬変または前癌病変の予防または治療方法。
(5)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、またはC型ナトリウム利尿ペプチドのいずれかである上記(4)に記載の治療方法。
(6)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(4)に記載の治療方法。
(7)ナトリウム利尿ペプチドはまたは薬学的に許容されるその塩の、肝線維化抑制用医薬組成物の製造のための使用。
(8)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、またはC型ナトリウム利尿ペプチドのいずれかである上記(7)に記載の使用。
(9)ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである上記(7)に記載の使用。
【0021】
本発明に係るナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝線維化抑制用医薬組成物は、肝星細胞に作用してその活性化を抑制し、さらに肝線維化の進行を抑制するという格別な効果を奏するものである。肝線維化の抑制により、肝硬変、または癌化への移行過程である前癌病変への進行の抑制または治療を行うことができる可能性が高まった。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝線維化抑制用医薬組成物は、肝星細胞に作用してその活性化を抑制すると共に肝線維化の進行を抑制するという格別な効果を奏するものである。肝線維化の抑制により、肝硬変、または癌化への移行過程である前癌病変への進行の抑制または治療を行うことができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
肝線維化は、肝細胞の壊死や損傷に対する反応であり、非常に多くの因子が複雑に関係して生じる、肝臓組織の変化のことをいう。肝線維化は、例えば、肝臓の炎症や毒物による損傷、肝臓の血流の変化、または肝臓のウイルスや細菌等による感染症、肝細胞における様々な貯蔵異常、アルコールやメトトレキサート等の化学物質や薬物、並びに慢性心不全等の肝臓への循環障害などが、原因となって生じる。
【0024】
肝障害や炎症の際に産生されるTGF-β等のサイトカインや、アルコールの多量摂取によるエンドトキシン血症等によって、肝星細胞は刺激を受け、ECMを過剰に産生・蓄積するようになり、これに起因して肝線維化の病態が生じる。その一方で、肝星細胞は、マトリックス分解酵素(MMP)やその抑制因子(TIMP)、TGF-β、PDGF等のサイトカイン、HGFなどの成長因子を産生し、肝線維化を促進する。
【0025】
本発明において、動物に対してナトリウム利尿ペプチド(NP)を投与することにより、肝線維化を促進することに関与するI型コラーゲン遺伝子およびマトリックス分解酵素(MMP)の抑制因子(TIMP)遺伝子のその動物体内における発現を有意に低下させることを見いだし、そして実際に肝線維化を起こした動物の肝線維化が抑制/改善されたことを見いだした。
【0026】
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質は、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有する物質であればよいが、ペプチド性物質であるナトリウム利尿ペプチドが好ましく、ナトリウム利尿ペプチドの例としては、例えば心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)等が挙げられる。
【0027】
本発明におけるANPとしては、28個のアミノ酸よりなるヒト由来ANP(SLRRSSCFGG RMDRIGAQSG LGCNSFRY:SEQ ID NO: 1)、ラット由来ANP(SLRRSSCFGG RIDRIGAQSG LGCNSFRY:SEQ ID NO: 3)など、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有するものを用いることができる。本発明に係る有効成分のこれらのペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を発揮するため、少なくとも当該ANPのリング構造(例えば、ヒトANPのアミノ酸配列の場合には、SEQ ID NO: 1の7位Cysと23位Cysとに基づくジスルフィド結合の形成に基づくリング構造)とリング構造に続くC末端部とを有するペプチド(すなわち、ヒトANPの場合にはSEQ ID NO: 1の7-28位に相当するSEQ ID NO: 2)であればよい。その様な構造的特徴を有するペプチドとしては、例えば、SEQ ID NO: 1に記載するANPそのもの、またはその部分アミノ酸配列を有するペプチドであって上記ヒトANPの7-28位のアミノ酸からなるペプチドを内包するペプチド、例えば上記ヒトANPの7-28位のアミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO: 2)そのもの、を挙げることができる。
【0028】
本発明におけるBNPとしては、32個のアミノ酸よりなるヒト由来BNP(SPKMVQGSGC FGRKMDRISS SSGLGCKVLR RH:SEQ ID NO: 4)、ブタ由来BNP(SPKTMRDSGC FGRRLDRIGS LSGLGCNVLR RY:SEQ ID NO: 6)、ラット由来BNP(SQDSAFRIQE RLRNSKMAHS SSCFGQKIDR IGAVSRLGCD GLRLF:SEQ ID NO: 7)など、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有するものを用いることができる。本発明に係る有効成分のこれらのペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を発揮するため、少なくとも当該BNPのリング構造(例えば、ヒトBNPのアミノ酸配列の場合には、SEQ ID NO: 4の10位Cysと26位Cysとに基づくジスルフィド結合の形成に基づくリング構造)とリング構造に続くC末端部とを有するペプチド(すなわち、ヒトBNPの場合にはSEQ ID NO: 4の10-32位に相当するSEQ ID NO: 5)であればよい。その様な構造的特徴を有するペプチドとしては、例えば、SEQ ID NO: 4に記載するBNPそのもの、またはその部分アミノ酸配列を有するペプチドであって上記ヒトBNPの10-32位のアミノ酸からなるペプチドを内包するペプチド、例えば上記ヒトBNPの10-32位のアミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO: 5)そのもの、を挙げることができる。
【0029】
本発明におけるCNPとしては、22個のアミノ酸よりなるヒト由来CNP(GLSKGCFGLK LDRIGSMSGL GC:SEQ ID NO: 8、ブタ及びラットも同じアミノ酸配列を有する)、ニワトリ由来CNP(GLSRSCFGVK LDRIGSMSGL GC:SEQ ID NO: 10)、カエル由来CNP(GYSRGCFGVK LDRIGAFSGL GC:SEQ ID NO: 11)など、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有するものを用いることができる。本発明に係る有効成分のこれらのペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を発揮するため、少なくとも当該CNPのリング構造(例えば、ヒトCNPのアミノ酸配列の場合には、SEQ ID NO: 8の6位Cysと22位Cysとに基づくジスルフィド結合の形成に基づくリング構造)を有するペプチド(すなわち、SEQ ID NO: 9)であればよい。その様な構造的特徴を有するペプチドとしては、例えば、SEQ ID NO: 4に記載するCNPそのもの、またはその部分アミノ酸配列を有するペプチドであって上記ヒトCNPの6-22位のアミノ酸からなるペプチドを内包するペプチド、例えば上記ヒトCNPの6-22位のアミノ酸からなるペプチド(SEQ ID NO: 9)そのもの、を挙げることができる。
【0030】
さらに、本発明に係るナトリウム利尿ペプチドとしては、天然から純粋に単離・精製されたもの、または化学合成法もしくは遺伝子組換え法により製造されたものであってもよく、例えば上記物質(ANP等)に係るアミノ酸配列に基づき、当業者であれば適宜公知の方法により、当該配列中のアミノ酸残基を欠失、置換、付加、挿入等の修飾を施すことにより得ることができ、何れかの方法により得られた物質がNP受容体であるNPR-Aに作用してcGMP産生を亢進し得る物質であれば何れも用いることができる。
【0031】
得られた物質がNP受容体であるNPR-Aに作用してcGMP産生を亢進し得るか否かについては、当業者であれば従来の方法により容易に測定を実施することができる。具体的には、NPR-A(Chinkers M et al. Nature 338; 78-83, 1989)を強制発現させた培養細胞に物質を添加し、cGMP産生能を評価することで可能である。
【0032】
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質は、上述したナトリウム利尿ペプチド(NP)受容体であるNPR-Aを介してcGMP産生を亢進し得る特性を有する物質の薬学的に許容される塩、好ましくはナトリウム利尿ペプチドの薬学的に許容される塩であってもよい。すなわち、本発明においては、上述した物質の、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、または有機酸、例えばギ酸、酢酸、酪酸、コハク酸、クエン酸等の酸付加塩を、有効成分として使用することもできる。あるいは、本発明においては、上述した物質の、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等の金属塩、有機塩基による塩の形態を有効成分として使用することもできる。また、本発明に係る医薬組成物は、その有効成分に係る物質の遊離形としても、またはその医薬的に許容し得る塩であってもよい。
【0033】
本発明の上述した組成物を投与することにより、肝星細胞によるI型コラーゲン遺伝子およびマトリックス分解酵素(MMP)の抑制因子(TIMP)遺伝子の発現を有意に低下させ、そして肝星細胞の活性化によって誘導される肝線維化を抑制することができる。本発明においてはまた、本発明の上述した組成物を投与することにより、上述したように肝線維化を抑制することにより、肝線維化に起因する肝硬変または前癌病変の予防または治療することもできる。
【0034】
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質またはその薬理学的に許容し得る塩は、公知の薬理学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤などと混合して医薬に一般に使用されている投与方法、即ち経口投与方法、または静脈内投与、筋肉内投与もしくは皮下投与等の非経口投与方法によって投与するのが好ましい。
【0035】
有効成分がペプチド性物質の場合、消化管内で分解を受けにくい製剤、例えば活性成分であるペプチドをリボゾーム中に包容したマイクロカプセル剤として経口投与することも可能である。また、直腸、鼻内、舌下などの消化管以外の粘膜から吸収せしめる投与方法も可能である。この場合は坐剤、点鼻スプレー、舌下錠といった形態で投与することができる。
【0036】
本発明に係る医薬組成物の有効成分として用い得る物質の投与量は、疾患の種類、患者の年齢、体重、症状の程度および投与経路などによっても異なるが、一般的に1日当り0.1μg/kg〜100 mg/kgの範囲で投与することができ、0.5μg/kg〜5 mg/kgで投与するのが好ましい。
【0037】
本発明に係る医薬組成物の投与頻度は、使用する有効成分、投与経路、および処置する特定の疾患に依存しても変動する。例えばナトリウム利尿ペプチドを経口投与する場合、一日当たり4回以下の投与回数で処方することが好ましく、また静脈内投与する場合にはインフュージョンポンプを利用して持続的に投与することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例1 ナトリウム利尿ペプチドの肝線維化に対する作用の検討
本実施例においては、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、およびC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の肝線維化に対する作用を、N-ジエチルニトロソアミン(N-diethylnitrosamine、以下、DEN)により誘発したラット肝障害モデルを用いて検討した。
【0039】
Wistar系雄性ラット(日本エスエルシー)に、DEN(和光純薬;200 mg/kg)を週2回、4週間腹腔内投与して持続肝障害モデルを作製した。ANP投与群またはCNP投与群には、DEN投与開始の1週間後から、ヒトANP(アスビオファーマ株式会社)、およびヒトCNP(アスビオファーマ株式会社)、それぞれ1.0μg/kg/minを2週間持続静脈内投与した。
【0040】
持続静脈内投与は、以下の様にして行った。即ち、動物をペントバルビタールナトリウムで麻酔後、仰臥位に保定した。頚部正中を切開し、頚静脈内にハイドロコートカテーテル(AccessTechnology社、カタログ番号:CNC-3H)を挿入した。カテーテルは皮下を通して頚背部から体外に導出し、背部に固定したインフュージョンポンプ(米国メデセル社、商品名:Infu-Disk、カタログ番号:05-0030-S)に接続して薬物を投与した。対照群には、薬物投与を実施しなかった。
【0041】
DEN投与開始4週間後(すなわち、ANP投与群またはCNP投与群の場合にはANPまたはCNPの投与開始から3週間後)に、採血と肝臓の摘出を行い、血清生化学検査、および、肝臓の病理組織学的検討を実施し、肝機能、および肝臓の線維化を評価した。
【0042】
血清生化学検査において、肝機能の指標となる血清生化学的マーカーである、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT;GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)ともいう)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST;GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)ともいう)、および総ビリルビン濃度を測定したところ、血清中ALT、AST、および総ビリルビン濃度はいずれも、対照群に比べて、ANP投与群およびCNP投与群では有意に低かった(図1A〜C)。さらに、血清生化学検査において、肝機能の指標となる血清総タンパク濃度および血清アルブミン濃度を測定したところ、血清総タンパク濃度および血清アルブミン濃度は、対照群に比べて両投薬群で高値に維持されていた(図2A〜B)。これらのデータから、ANP投与群およびCNP投与群では、DENによる肝機能低下が抑制されたことが示された。
【0043】
一方、肝臓組織の病理組織学的検討において、コラーゲン線維を染色することができるAzan染色またはSirius Red染色による検討から、肝機能、および肝臓の線維化を評価した。Azan染色(図3)またはSirius Red染色(図4)において、対照群(「DEN」と記載)では著しい肝臓の線維化が確認されたのに対し、ANP投与群およびCNP投与群では肝臓の線維化が有意に抑制されていたことが示された。
【0044】
これらの結果(図1〜4)から、ANPおよびCNPの投与により、ラットの肝線維化モデルにおいて線維化が抑制され、そして肝機能が改善されることが見出された。
【0045】
さらに、肝線維化の指標である1型プロコラーゲン、MMP-2、MMP-13、TIMP-1、およびTIMP-2の各遺伝子のmRNAの肝臓での発現を、従来の方法(Kawaguchi K. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004; 315: 187-95)に従って、リアルタイムPCRにより評価した。
【0046】
簡単に述べると、ラット肝臓由来の全RNAを、製造者の指示にしたがって、RNeasy-kit(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて単離した。内部標準にはβ-アクチンを用いた。
【0047】
このようにして調製した全RNAに基づいて、cDNAを合成に関して、Taqman逆転写酵素試薬(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN, USA)を、製造者の指示に記載されるように使用した。β-アクチンを内部対照として使用して、マニュアル中で記載されるように、遺伝子発現の比定量を行った。標的RNAの相対量を計算するため、閾値サイクル数および標準曲線に基づく方法を使用した。Light Cycler Q-PCR(Roche Diagnostics)を、RT-PCR用の合成キットAMV(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN, US)を使用して、そして2μlのライトサイクラーファストスタートDNA SYBRグリーンI(Roche Diagnostics)、25 mM MgCl2、10μMの各プライマー、5μlの抽出DNA、そしてAdvantage PCRポリメラーゼ(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)を含む13μlの混合物中で行った(operating system version 3.0)。反応条件は、95℃にて10分間(温度勾配20℃/s)予備的変性の後、95℃にて15秒間の変性(温度勾配20℃/s)、68℃にて5秒間のアニーリング(温度勾配20℃/s)、72℃にて10秒間のプライマー伸長(温度勾配20℃/s)を1サイクルとして40サイクル、そして72℃にて60秒間の精製物検出(温度勾配20℃/s)にて行った。
【0048】
リアルタイムPCR用のプライマーとしては、以下のプライマーを使用した:
1型プロコラーゲン:
センス:5'-agcggtgaagaaggaaagagagg-3'(SEQ ID NO: 12);および
アンチセンス:5'-caataggaccagaaggaccagca-3'(SEQ ID NO: 13)
MMP-2:
センス:5'-gccctcccctgatgctgata-3'(SEQ ID NO: 14);および
アンチセンス:5'-gtcactgtccgccaaataaacc-3'(SEQ ID NO: 15)
TIMP-1:
センス:5'-ccccaacccacccacagacagc-3'(SEQ ID NO: 16);および
アンチセンス:5'-cgctgcggttctgggacttgtg-3'(SEQ ID NO: 17)
TIMP-2:
センス:5'-cagggccaaagcagtgagcgagaa-3'(SEQ ID NO: 18);および
アンチセンス:5'-tcttgccatctccttccgccttcc-3'(SEQ ID NO: 19)。
【0049】
挿入物をDNA配列決定により確認し、そしてリアルタイムPCR解析用のプローブとして使用した。
【0050】
このリアルタイムPCR法による解析の結果、肝臓における1型コラーゲンの遺伝子発現量、および細胞外マトリックス分解を阻害し線維化を促進する因子である組織メタロプロテアーゼ阻害剤-1(tissue inhibitor of metalloproteinase-1)(TIMP-1)およびTIMP-2の遺伝子発現量は、対照群(「DEN」と記載)に比べて、ANP投与群およびCNP投与群では有意に抑制されていた(図5A〜C)。
【0051】
実施例2 ナトリウム利尿ペプチドの肝星細胞に対する作用
肝臓の線維化には、肝星細胞の活性化が関与すると考えられていることから、本実施例においては次に、ANPおよびCNPの単離肝星細胞に対する直接作用を検討した。
【0052】
Wistar系雄性ラット(日本エスエルシー)の肝臓から、肝星細胞を従来の方法(Kawaguchi K., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004; 315: 187-95)により単離した。具体的には、ラット肝臓を、37℃に保ったCa2+、Mg2+を含まないKrebs-Ringer液、0.1%プロナーゼE(Merck、Germany)、0.032%コラゲナーゼ(和光純薬、大阪)で順に灌流した。酵素処理した肝臓を単離し、細かく切った後、0.08%プロナーゼE、0.04%コラゲナーゼ、及び20μg/mL DNase(Boehringer-Mannheim, Germany)を含むKrebs-Ringer液(pH 7.3)中で37℃、30分インキュベートした。ナイロンメッシュを通して、不溶物を除去し、ろ過液を450 g、8分間遠心分離した。沈殿物を8.2% Nycodenz(Nycomed Pharma AS, Norway)液に分散させ、4℃で1400 g、20分間遠心分離した。遠心後の上層白色層に含まれる肝星細胞画分を採取し、450 g、8分間遠心分離し、細胞を集めた。これを10%ウシ胎児血清(Commonwealth Serum Laboratories, Australia), 100 U/mLペニシリン、100 U/mLストレプトマイシン(Gibco Laboratories, Life Technologies, USA)を含むDulbecco改変Eagle培地(日水薬品、東京)に懸濁することにより、肝星細胞を得た。単離した肝星細胞あるいはラット肝星細胞の樹立細胞株であるHSC-T6細胞(Vogel S., et al., J. Lipid Res. 2000. 41: 882-893)を5.0×105 cells/mLの密度でプラスティック培養皿に播種し、37℃で4時間培養後、非接着性の細胞を除去した。ANPまたはCNPを、培養液中の濃度が0、10、50または100μg/mLになるよう添加し、5%CO2条件下にて、37℃で培養した。添加24時間後に細胞を採取し、融解後、肝星細胞活性化の指標として、α-平滑筋アクチン(α-smooth muscle actin;α-SMA)の発現量をウェスタンブロット法で測定した。ウェスタンブロット法は、抗αSMAモノクローナル抗体(Dako Japan)、および、西洋ワサビパーオキシダーゼ複合化抗マウスIgG二次抗体(Amersham)を用いて行った。
【0053】
単離初代肝星細胞あるいはHSC-T6細胞の培養液中にANPを添加した場合の結果を図6に示した。いずれの細胞においてもANPは濃度依存的にα-SMAのタンパク質発現量を抑制した。またCNPでも同様の結果が得られ、ANPおよびCNPは肝星細胞活性化を抑制する作用を有することが示された。
【0054】
これらの結果から、ANPおよびCNPは肝星細胞に作用して肝臓の線維化を抑制して肝機能を維持すること、およびこれらの作用には肝星細胞の活性化抑制が関与することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るナトリウム利尿ペプチドを有効成分とする肝線維化抑制用医薬組成物は、肝星細胞に作用してその活性化を抑制すると共に肝線維化の進行を抑制するという格別な効果を奏するものである。肝線維化の抑制により、肝硬変、または癌化への移行過程である前癌病変への進行の抑制または治療を行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、DEN誘発肝線維化モデルラットにおけるANPおよびCNPの血清ALT(A)、血清AST(B)、および血清総ビリルビン量(T-bil)(C)に対する作用を示すグラフである。棒グラフ上の各値は6例の平均値を示し、グラフは平均値±標準誤差を表す。**;p<0.01、対照群(DEN)に対するt検定。
【図2】図2は、DEN誘発肝線維化モデルラットにおけるANPおよびCNPの血清総タンパク質濃度(A)、および血清アルブミン濃度(B)に対する作用を示すグラフである。棒グラフ上の各値は6例の平均値を示し、グラフは平均値±標準誤差を表す。**;p<0.01、対照群(DEN)に対するt検定。
【図3】図3は、DEN誘発肝線維化モデルの肝臓組織標本のAzan染色像を示す写真である。対照群(DEN)、ANP投与群(ANP)、CNP投与群(CNP)、それぞれ典型的な1例を示す。対照群に比べて、ANPまたはCNP投与群では、対照群(DEN)と比較して、青色に染色される膠原線維領域が少ない。
【図4】図4は、DEN誘発肝線維化モデルの肝臓組織標本のSirius Red染色像を示す写真である。対照群(DEN)、ANP投与群(ANP)、CNP投与群(CNP)、それぞれ典型的な1例を示す。対照群に比べて、ANPまたはCNP投与群では赤茶色に染色される膠原線維領域が少ない。
【図5】図5は、DEN誘発肝線維化モデルの肝臓における1型プロコラーゲン(コラーゲンI)遺伝子(A)、TIMP-1遺伝子(B)、およびTIMP-2遺伝子(C)発現を示すグラフである。各値は6例の平均値±標準誤差を表す。**;p<0.01、対照群(DEN)に対するt検定。
【図6】図6は、ラットから単離した肝星細胞あるいはHSC-T6細胞(ラット肝星細胞の樹立細胞株)のいずれの細胞においてもANPは用量依存的にα-SMAのタンパク質発現量を抑制することを示す、ウェスタンブロットの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム利尿ペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有し、肝星細胞の活性化によって誘導される肝線維化を抑制する、肝線維化抑制用医薬組成物。
【請求項2】
ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、またはC型ナトリウム利尿ペプチドのいずれかである請求項1に記載の肝線維化抑制用医薬組成物。
【請求項3】
ナトリウム利尿ペプチドが、心房性ナトリウム利尿ペプチドである請求項2に記載の肝線維化抑制用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168283(P2010−168283A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114293(P2007−114293)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(503062312)アスビオファーマ株式会社 (25)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】