説明

ナトリウム利尿ポリペプチド

本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドを提供する。例えば、本文書は、ナトリウム利尿活性を有するポリペプチドを提供する。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、血圧を低下させる能力を欠いていながら、ナトリウム利尿活性を有することができる。本文書は、哺乳動物においてナトリウム利尿活性を誘導するための方法および材料も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年7月20日出願の米国仮出願第60/951,117号に基づく優先権の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府によって支援された研究に関する記述
本発明は、米国国立心肺血液研究所によって授与された助成金HL036634の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1. 技術分野
本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関する。例えば、本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関連した方法および材料、ならびに心血管異常および腎異常を処置するためのナトリウム利尿ポリペプチドの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
2. 背景情報
ナトリウム利尿ポリペプチドは、ナトリウム利尿(尿中へのナトリウム排泄の増加)を引き起こすことができるポリペプチドである。そのようなポリペプチドは、脳、心臓、腎臓、および/または血管組織によって産生され得る。
【発明の概要】
【0005】
概要
本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関する。例えば、本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関連した方法および材料、ならびに心血管異常、腎異常、または心血管異常および腎異常の両方を処置するためのナトリウム利尿ポリペプチドの使用を提供する。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、利尿活性、ナトリウム利尿活性、cGMPを活性化する能力、糸球体濾過速度を増加させる能力、レニン産生を低下させる能力、アンジオテンシン産生を低下させる能力、アルドステロン産生を低下させる能力、異常に上昇した心充満圧を低下させる能力、腎血流を最適化する能力、またはそれらの組み合わせを有し得る。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、内因性のANP、BNP、およびCNPのレベルを増加させることができる。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、血圧を低下させる能力を欠くことができ、全身性低血圧を引き起こす能力を欠くことができる。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド受容体A、ナトリウム利尿ペプチド受容体B、またはナトリウム利尿ペプチド受容体Aおよびナトリウム利尿ペプチド受容体Bの両方のアゴニストであり得る。
【0006】
一般に、本文書の一つの局面は、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドを特色とする。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。
【0007】
別の局面において、本文書は、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドをコードする単離された核酸を特色とする。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。
【0008】
別の局面において、本文書は、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを特色とする。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。
【0009】
別の局面において、本文書は、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を特色とする。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。前記宿主細胞は、真核生物宿主細胞であり得る。
【0010】
別の局面において、本文書は、薬学的に許容される担体と、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドとを含む薬学的組成物を特色とする。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。
【0011】
別の局面において、本文書は、血圧を低下させることなく哺乳動物においてナトリウム利尿活性を増加させる方法を特色とする。方法は、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドを、哺乳動物に投与する工程を含む。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。ポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。
【0012】
別の局面において、本文書は、心血管異常または腎異常を有する哺乳動物を処置する方法を特色とする。方法は、心血管異常または腎異常の症状の重症度が低下するような条件の下で、アミノ末端からカルボキシ末端への順に、(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列、を含む、44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドを、哺乳動物に投与する工程を含む。このポリペプチドは、ナトリウム利尿活性を含み得る。このポリペプチドは、全身性低血圧を誘導する能力を欠くことができる。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。このポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。このポリペプチドの哺乳動物への投与は、哺乳動物の血圧を低下させないようなものであり得る。
【0013】
他に規定されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である方法および材料が、本発明を実施するために使用され得るが、適当な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照は、参照によりその全体が組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が適用される。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。
【0014】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細が、添付の図面および以下の説明に示される。本発明のその他の特色、目的、および利点は、以下の説明および添付の図面、ならびに特許請求の範囲より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】32アミノ酸残基長であるCU-NPポリペプチド(SEQ ID NO:4)の概略図である。SEQ ID NO:4の最初の10アミノ酸残基は、ヒトウロジラチンのアミノ酸残基1〜10に相当し、SEQ ID NO:1と名付けられる。SEQ ID NO:4のアミノ酸残基11〜27は、ヒト成熟CNPのアミノ酸残基6〜22に相当し、SEQ ID NO:2と名付けられる。SEQ ID NO:4のアミノ酸残基28〜32は、ヒトウロジラチンのアミノ酸残基28〜32に相当し、SEQ ID NO:3と名付けられる。
【図2】示されるようにCU-NPまたはUROにより処理された麻酔下の正常なイヌの腎灌流圧(RPP=MAP - RAPで測定される)をプロットしたグラフである(平均値±SEM;=ベースラインに対してP<0.05;‡=P<0.05 群間)。
【図3】単離されたイヌ糸球体における、等モル濃度のCU-NP、CNP、およびUROに対するcGMP応答をプロットしたグラフである(ブランク、即ち対照についてはn=3〜7;糸球体についてはn=5〜8、†=ブランクに対してP<0.0001;=ブランクに対してP<0.01)。
【図4】単離されたイヌ糸球体において査定されたNPR-Aアンタゴニスト(1μMのA71915)、NPR-Bアンタゴニスト(1μMのP19)、または両アンタゴニスト(A71915の後、P19、いずれも最終濃度1μM)の存在下または非存在下での等モル濃度のCU-NPに対するcGMP応答をプロットしたグラフである(ブランクについてはn=2〜4;糸球体についてはn=3〜6;=ブランクに対してP<0.05;†=ブランクに対してP<0.01;‡=ブランクに対してP<0.0001)。
【図5】ヒト大動脈内皮細胞において査定されたNPR-B抗体(1:100)の非存在下または存在下でのCNPまたはCU-NPに対するcGMP応答をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関する。例えば、本文書は、ナトリウム利尿ポリペプチドに関連した方法および材料、ならびに心血管異常(例えば、急性非代償性心不全、急性冠状動脈症候群、および心筋梗塞後の心室リモデリング)、ならびに腎異常(例えば、周術期腎機能障害、心不全に続発する腎機能障害、および糖尿病性腎症)を処置するためのナトリウム利尿ポリペプチドの使用を提供する。
【0017】
いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、利尿活性、ナトリウム利尿活性、cGMPを活性化する能力、糸球体濾過速度を増加させる能力、レニン産生を低下させる能力、アンジオテンシン産生を低下させる能力、アルドステロン産生を低下させる能力、異常に上昇した心充満圧を低下させる能力、腎血流を最適化する能力、またはそれらの組み合わせを有し得る。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、内因性のANP、BNP、およびCNPのレベルを増加させることができる。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、血圧を低下させ、全身性低血圧を引き起こす能力を欠くことができる。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド受容体A、ナトリウム利尿ペプチド受容体B、またはナトリウム利尿ペプチド受容体Aおよびナトリウム利尿ペプチド受容体Bの両方のアゴニストであり得る。
【0018】
本明細書に提供されるポリペプチドは、任意の配列および任意の長さを有し得る。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含み得る。いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、(a)3個以下(例えば、2個以下、1個、または0個)のアミノ酸の付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1に示された配列、(b)5個以下(例えば、4個以下、3個以下、2個以下、1個、または0個)のアミノ酸の付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:2に示された配列、および(c)3個以下(例えば、2個以下、1個、または0個)のアミノ酸の付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:3に示された配列、と整列するアミノ酸配列を含有し得る。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドは、SEQ ID NO:1の最初のトレオニン残基または最後のセリン残基が、欠失しているか、または異なるアミノ酸残基に交換されていることを除き、SEQ ID NO:1に示された配列を含有していてもよい。
【0019】
アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であり得る。保存的アミノ酸置換は、例えば、酸性アミノ酸としてのアスパラギン酸-グルタミン酸;塩基性アミノ酸としてのリジン/アルギニン/ヒスチジン;疎水性アミノ酸としてのロイシン/イソロイシン、メチオニン/バリン、アラニン/バリン;親水性アミノ酸としてのセリン/グリシン/アラニン/トレオニンであり得る。保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づく分類も含まれる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。アミノ酸置換を行った後、アミノ酸置換を含有しているポリペプチドの活性を、本明細書に記載されたアッセイを使用して査定することができる。
【0020】
いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1に示されるか、または3個以下(例えば、2個以下、1個、もしくは0個)のアミノ酸の欠失、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1に示される配列と整列する第一のアミノ酸配列、(b)SEQ ID NO:2に示されるか、または5個以下(例えば、4個以下、3個以下、2個以下、1個、もしくは0個)のアミノ酸の付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:2に示された配列と整列する第二のアミノ酸配列、および(c)SEQ ID NO:3に示されるか、または3個以下(例えば、2個以下、1個、もしくは0個)のアミノ酸の欠失、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:3に示された配列と整列する第三のアミノ酸配列を含有し得る。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドは、SEQ ID NO:4に示された配列を含むか、またはSEQ ID NO:4に示された配列からなることができる。
【0021】
本明細書に提供されるポリペプチドは、任意の長さを有することができる。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドは、25〜45(例えば、26〜44、27〜43、28〜42、29〜41、30〜40、31〜39、または30〜35)アミノ酸残基長であり得る。25または45アミノ酸残基の長さを有するポリペプチドは、25〜45アミノ酸残基の長さを有するポリペプチドであることが認識されるであろう。
【0022】
いくつかの場合において、本明細書に提供されるポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドであり得る。本明細書において使用されるように、ポリペプチドに関して「実質的に純粋な」ポリペプチドという用語は、それが天然に伴っている他のポリペプチド、脂質、糖質、および核酸を実質的に含まないことを意味する。従って、実質的に純粋なポリペプチドは、その天然環境から取り出されており、かつ少なくとも60パーセント純粋なポリペプチドであるか、または化学合成されたポリペプチドである。実質的に純粋なポリペプチドは、少なくとも約60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセント純粋であり得る。典型的には、実質的に純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲル上で単一の主要なバンドを生じると考えられる。
【0023】
本明細書に提供されるポリペプチドは、このポリペプチドをコードする組換え核酸の発現、または(例えば、固相ポリペプチド合成法もしくはABI 431A Peptide Synthesizer;Applied Biosystems;Foster City, CAのようなペプチド合成装置を使用した)化学合成により入手され得る。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドをコードする発現ベクターを使用した標準的な組換え技術を使用することができる。次いで、得られたポリペプチドを、例えば、アフィニティクロマトグラフィ技術およびHPLCを使用して精製することができる。精製の程度は、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、または高速液体クロマトグラフィを含むが、これらに限定はされない、適切な方法により測定され得る。本明細書に提供されるポリペプチドは、ポリペプチドの精製(例えば、アフィニティマトリックスへの捕捉)を可能にするタグ配列を含有するよう設計または操作され得る。例えば、c-myc、赤血球凝集素、ポリヒスチジン、またはFlag(商標)タグ(Kodak)のようなタグが、ポリペプチド精製を補助するために使用され得る。そのようなタグは、カルボキシ末端またはアミノ末端を含むポリペプチド内の任意の場所に挿入され得る。使用され得るその他の融合体には、アルカリホスファターゼのような、ポリペプチドの検出を補助する酵素が含まれる。
【0024】
本明細書に提供されるポリペプチドは、三つの領域、すなわち、N末端(例えば、ヒトウロジラチンポリペプチドに由来するN末端配列)を含む第一の領域、ヒトCNPポリペプチドのような成熟ナトリウム利尿ポリペプチドの環構造を含む第二の領域、およびC末端(例えば、ヒトウロジラチンポリペプチドに由来するC末端配列)を含む第三の領域を含有するよう作製され得る。
【0025】
本明細書に提供されるポリペプチドは、心血管疾患、うっ血性心不全、心筋梗塞、冠状動脈疾患、腎疾患、肝疾患、癌、代謝疾患、またはそれらの組み合わせを処置するために使用され得る。例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有するCU-NPポリペプチドは、ヒトの冠状動脈疾患の症状の重症度が低下するような条件の下で、冠状動脈疾患を有するヒトに投与され得る。
【0026】
本明細書に提供されるポリペプチドは、薬学的に許容される非毒性の賦形剤または担体との混合により、薬学的組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、例えば、心臓、肝臓、腎臓、またはその他のナトリウム保持状態を処置するのに有効な量で、その必要のある対象に投与され得る。薬学的組成物は、非経口投与用に、特に、水性の生理的緩衝溶液中の溶液もしくは懸濁剤の形態で;経口投与用に、特に、錠剤またはカプセル剤の形態で;または鼻腔内投与用に、特に、散剤、点鼻剤、またはエアロゾル剤の形態で、調製され得る。その他の投与経路用の組成物は、適切な方法を使用して所望に応じて調製され得る。
【0027】
非経口投与用の製剤は、一般的な賦形剤として、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物由来の油、水素化ナフタレン、およびそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの場合において、生体適合性で生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、またはそれらの組み合わせが、インビボでのポリペプチドの放出を制御するための賦形剤として使用され得る。使用され得るその他の適当な非経口送達系には、限定はされないが、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、植え込み型注入系、リポソーム、およびそれらの組み合わせが含まれる。吸入投与用の製剤は、乳糖のような賦形剤を含み得る。吸入製剤は、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸、デオキシコール酸、またはそれらの組み合わせを含有している水性溶液であってもよく、または、それらは、点鼻剤の形態での投与用の油性溶液であってもよい。所望に応じて、本明細書に提供されるポリペプチドを含有している組成物は、鼻腔内に適用されるゲルとして製剤化されてもよい。非経口投与用の製剤は、口腔内投与のためグリココール酸を含み得る。
【0028】
経口投与の場合、錠剤またはカプセル剤は、結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、乳糖、微晶質セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンもしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容される賦形剤を用いて、適切な方法を使用して調製され得る。錠剤は、適切な方法を使用してコーティングされてもよい。経口投与用の調製物は、ポリペプチドの放出制御を与えるよう製剤化されてもよい。
【0029】
鼻用調製物は、液状で、または乾燥物として提供され得る。噴霧される水性の懸濁物または溶液は、pHおよび/または浸透圧を調整するための担体または賦形剤を含み得る。
【0030】
ポリペプチドをコードする核酸
本文書は、本明細書に提供されるポリペプチドのうちの一つまたは複数をコードする単離された核酸も提供する。核酸に関して本明細書において使用されるような「単離された」という用語は、それが由来する生物の天然のゲノムにおいて、それが直接連続している配列(5'末および3'末)の両方に、直接連続していない、天然に存在する核酸をさす。例えば、単離された核酸は、限定はされないが、天然に存在するゲノムにおいてその組換えDNA分子に直接隣接していることが通常見出される核酸配列のうちの一つが、除去されているか、または存在しないことを条件として、任意の長さの組換えDNA分子であり得る。従って、単離された核酸には、限定はされないが、他の配列から独立して別の分子として存在する組換えDNA(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって作製されたcDNAまたはゲノムDNA断片)が含まれ、ベクター、自己複製性プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、もしくはヘルペスウイルス)、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNAも含まれる。さらに、単離された核酸には、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である組換えDNA分子も含まれ得る。
【0031】
天然に存在しない核酸配列は、自然界に見出されず、天然に存在するゲノムにおいて直接連続している配列を有していないため、核酸に関して本明細書において使用されるような「単離された」という用語には、天然に存在しない核酸も含まれる。例えば、操作された核酸のような天然に存在しない核酸は、単離された核酸であると見なされる。操作された核酸(例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸)は、一般的な分子クローニングまたは化学的な核酸合成技術を使用して作成され得る。単離された、天然に存在しない核酸は、他の配列から独立していてもよいし、またはベクター、自己複製性プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、もしくはヘルペスウイルス)、もしくは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれていてもよい。さらに、天然に存在しない核酸には、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である核酸分子が含まれ得る。例えば、cDNAライブラリー、ゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含有しているゲルスライスの中の数百〜数百万の他の核酸の中に存在する核酸は、単離された核酸とは見なされない。
【0032】
本明細書において使用されるように、「核酸」という用語は、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、合成(例えば、化学合成)DNA、および核酸アナログを含む、RNAおよびDNAの両方をさす。核酸は二本鎖または一本鎖であり得、一本鎖の場合には、センス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。さらに、核酸は環状または直鎖状であり得る。核酸アナログは、例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解度を改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において修飾されていてもよい。塩基部分における修飾には、デオキシチミジンのデオキシウリジン、ならびにデオキシシチジンの5-メチル-2'-デオキシシチジンおよび5-ブロモ-2'-デオキシシチジンが含まれる。糖部分の修飾には、2'-O-メチル糖または2'-O-アリル糖が形成されるようなリボース糖の2'ヒドロキシルの修飾が含まれ得る。デオキシリボースリン酸骨格は、各塩基部分が6員モルホリノ環に連結されたモルホリノ核酸、またはデオキシリン酸骨格が偽ペプチド骨格に交換され、4種の塩基が保持されたペプチド核酸を作製するために修飾され得る。例えば、Summerton and Weller Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,7:187-195(1997);およびHyrup et al.Bioorgan.Med.Chem.,4:5-23(1996)を参照のこと。さらに、デオキシリン酸骨格は、例えば、ホスホロチオエート骨格もしくはホスホロジチオエート骨格、ホスホロアミダイト、またはアルキルホスホトリエステル骨格に交換され得る。
【0033】
本明細書に提供される核酸は、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列をコードする配列を含むか、またはSEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列をコードする配列からなることができる。例えば、そのような核酸は、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列をコードするよう操作された、CNPおよびウロジラチンのヒト核酸配列を含有し得る。
【0034】
典型的には、本明細書に提供される単離された核酸は、少なくとも10ヌクレオチド長(例えば、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、300、350、400ヌクレオチド長、またはそれ以上)である。全長に満たない核酸分子は、例えば、診断目的のプライマーまたはプローブとして有用であり得る。単離された核酸分子は、限定はされないが、一般的な分子クローニングおよび化学的な核酸合成技術を含む、標準的な技術により作製され得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が使用され得る。PCRとは、標的核酸が酵素を用いて増幅される手法または技術をさす。関心対象の領域の末端からの、または典型的にはそれを超えた配列情報が、増幅される鋳型の逆鎖と配列が同一であるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために利用される。PCRは、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAからの配列を含む、DNAおよびRNAからの特定の配列を増幅するために使用され得る。プライマーは、典型的には、15〜50ヌクレオチド長であるが、10ヌクレオチド長〜数百ヌクレオチド長の範囲であってもよい。例えば、プライマーは、12、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、または45ヌクレオチド長であり得る。プライマーは、従来の方法により制限消化物から精製されてもよいし、または化学合成されてもよい。プライマーは、典型的には、増幅の最大効率のため一本鎖であるが、プライマーは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーは、まず、鎖を分離するために変性され(例えば、熱処理され)、その後、増幅において使用される。一般的なPCR技術は、例えば、PCR Primer:A Laboratory Manual,ed.by Dieffenbach and Dveksler,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に記載されている。鋳型源としてRNAを使用する場合には、逆転写酵素が相補DNA(cDNA)鎖を合成するために使用され得る。他に記載されているような(Lewis,Genetic Engineering News,12(9):1(1992);Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1874-1878(1990);およびWeiss,Science,254:1292(1991))、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、自家持続配列複製、または核酸配列に基づく増幅も、単離された核酸を得るために使用され得る。
【0035】
単離された核酸は、(例えば、ホスホラミダイト技術を使用して、3'→5'方向に自動DNA合成を使用して)単一の核酸分子として、または一連のオリゴヌクレオチドとして化学合成されてもよい。例えば、所望の配列を含有している一つまたは複数の長いオリゴヌクレオチド(例えば>100ヌクレオチド)の対(各対は、オリゴヌクレオチド対がアニールした場合に二重鎖が形成されるよう、相補的な短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有している)を合成することができる。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長させ、各オリゴヌクレオチド対につき一つの二本鎖核酸分子を得、次いで、それをベクターへライゲートさせることができる。
【0036】
単離された核酸は、変異誘発によっても入手され得る。例えば、PCRを通したオリゴヌクレオチド指向性変異誘発および/または部位特異的変異誘発のような標準的な技術を使用して、例えば、SEQ ID NO:1、2、3、または4に示された配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を変異させることができる。Short Protocols in Molecular Biology,Chapter 8,Green Publishing Associates and John Wiley & Sons,Edited by Ausubel et at.,1992を参照のこと。そのような変異には、付加、欠失、置換、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
ベクターおよび宿主細胞
本文書は、本明細書に提供される核酸を含有しているベクターも提供する。本明細書において使用されるように、「ベクター」とは、挿入されたセグメントの複製が起こるよう、別のDNAセグメントを挿入することができる、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなレプリコンである。ベクターは発現ベクターであり得る。「発現ベクター」とは、一つまたは複数の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御し調節するDNA配列である。
【0038】
本明細書に提供される発現ベクターにおいて、核酸は、一つまたは複数の発現制御配列に機能的に連結され得る。本明細書において使用されるように、「機能的に連結された」とは、発現制御配列が、関心対象のコード配列の発現を効果的に制御するよう、遺伝的構築物に組み入れられていることを意味する。発現制御配列の例には、プロモーター、エンハンサー、および転写終結領域が含まれる。プロモーターは、典型的には転写が開始する点の上流100ヌクレオチド以内(一般に、RNAポリメラーゼIIの開始部位の近く)にあるDNA分子の領域から構成された発現制御配列である。コード配列をプロモーターの制御下に置くためには、プロモーターの下流1〜約50ヌクレオチドに、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位を位置付けることが必要である可能性がある。エンハンサーは、時間、位置、およびレベルに関する発現特異性を提供する。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、転写部位からの様々な距離に位置して、機能することができる。エンハンサーは、転写開始部位から下流に位置することもある。RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAへ転写することができ、次いで、そのmRNAが、コード配列によってコードされたポリペプチドへと翻訳され得る場合、そのコード配列は、細胞内で発現制御配列に「機能的に連結され」かつその「制御下にある」。
【0039】
適当な発現ベクターには、限定はされないが、プラスミドベクター、および、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスに由来するウイルスベクターが含まれる。多数のベクターおよび発現系が、Novagen(Madison, WI)、Clontech Laboratories(Mountain View,CA)、Stratagene(La Jolla,CA)、およびInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad,CA)のような企業より市販されている。
【0040】
発現ベクターは、発現された核酸配列のその後の操作(例えば、精製または局在決定)を容易にするために設計されたタグ配列を含むことができる。緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、赤血球凝集素、またはFlag(商標)タグ(Kodak, New Haven,CT)配列のようなタグ配列が、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。そのようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含むポリペプチド内の任意の場所に挿入され得る。
【0041】
本文書は、本明細書に提供される核酸分子および/または核酸ベクターを含有している宿主細胞も提供する。「宿主細胞」という用語は、核酸分子またはベクターを導入することができる原核細胞および真核細胞をさす。任意の方法が、細胞へ核酸を導入するために使用され得る。例えば、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔、熱ショック、リポフェクション、微量注入、およびウイルス媒介核酸移入が、細胞へ核酸を導入するために使用され得る。さらに、裸のDNAが、他に記載されているように(米国特許第5,580,859号および第5,589,466号)、インビボの細胞に直接送達され得る。
【0042】
ポリペプチドの検出
本文書は、本明細書に提供されるポリペプチドの検出のための方法および材料を提供する。そのような方法および材料は、ポリペプチドを治療薬として受容する哺乳動物において、ポリペプチドレベルをモニタリングするために使用され得る。本明細書に提供されるポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有するCU-NPポリペプチド)は、例えば、一つまたは複数の抗体を使用して免疫学的に検出され得る。本明細書において使用されるように、「抗体」という用語には、本明細書に提供されるポリペプチドのエピトープ決定基に結合することができる、完全な分子およびそれらの断片が含まれる。「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の抗原性決定基をさす。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面配置からなり、典型的には、特異的な三次元構造的特徴および特異的な電荷特徴を有する。エピトープは、一般に、少なくとも5個の連続アミノ酸(連続エピトープ)を有し、または、特定の構造を規定する1セットの非連続アミノ酸(例えば、立体構造的エピトープ)であり得る。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖Fv抗体断片、Fab断片、およびF(ab)2断片が含まれる。ポリクローナル抗体は、免疫感作された動物の血清に含有される抗体分子の不均質集団である。モノクローナル抗体は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の均質集団である。
【0043】
本明細書に提供されるポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有するCU-NPポリペプチド)に対する特異的な結合親和性を有する抗体断片は、公知の技術によって作成され得る。例えば、F(ab')2断片は、抗体分子のペプシン消化により作製され得;Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作成され得る。いくつかの場合において、Fab発現ライブラリーが構築され得る。例えば、Huse et al.,Science,246:1275(1989)を参照のこと。作製された後、抗体またはそれらの断片は、ELISA技術、ラジオイムノアッセイ、およびウエスタンブロッティングを含む標準的なイムノアッセイ法によって、本明細書に提供されるポリペプチドの認識について試験され得る。Short Protocols in Molecular Biology,Chapter 11,Green Publishing Associates and John Wiley & Sons, Edited by Ausubel, F.M et al., 1992を参照のこと。
【0044】
免疫学的アッセイにおいては、本明細書に提供されたポリペプチドに対する特異的な結合親和性を有する抗体、またはそのような抗体に結合する二次抗体が、直接または間接的に標識され得る。適当な標識には、限定はされないが、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、3H、32P、33P、もしくは14C)、蛍光部分(例えば、フルオレセイン、FITC、PerCP、ローダミン、もしくはPE)、発光部分(例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)によって供給されるQdot(商標)ナノ粒子)、明確な波長の光を吸収する化合物、または酵素(例えば、アルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ)が含まれる。抗体を、ビオチンとのコンジュゲーションにより間接的に標識し、次いで、上記分子により標識されたアビジンまたはストレプトアビジンにより、それを検出することができる。標識を検出または定量化する方法は、標識の性質に依り、当技術分野において公知である。検出器の例には、限定はされないが、X線フィルム、放射能計数器、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、照度計、および濃度計が含まれる。当業者に周知の(「多層」アッセイを含む)これらのアプローチの組み合わせが、アッセイの感受性を増強するために使用され得る。
【0045】
本明細書に提供されるポリペプチドを検出するための免疫学的アッセイは、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ(競合RIA)、またはブリッジイムノアッセイ(bridge immunoassay)を含む、多様な公知のフォーマットで実施され得る。例えば、米国特許第5,296,347号;第4,233,402号;第4,098,876号;および第4,034,074号を参照のこと。本明細書に提供されるポリペプチドを検出する方法は、一般に、本明細書に提供されるポリペプチドに結合する抗体と生物学的試料を接触させ、ポリペプチドと抗体との結合を検出することを含む。例えば、本明細書に提供されるポリペプチドに対する特異的な結合親和性を有する抗体を、当技術分野において公知の多様な方法のいずれかによって、固体基質上に固定化し、次いで、生物学的試料に曝すことができる。固体基質上でのポリペプチドと抗体との結合は、適切な機器、例えば、Biacore装置(Biacore International AB,Rapsgatan,Sweden)によって定性的または定量的に検出することができる、結合時に表面プラズモン共鳴の強度の変化をもたらす表面プラズモン共鳴現象を利用することにより検出され得る。いくつかの場合において、抗体を、上記のように標識し検出してもよい。既知量の本明細書に提供されるポリペプチドを使用した標準曲線を、ポリペプチドのレベルの定量を補助するために作成することができる。
【0046】
いくつかの態様において、捕捉抗体が固体基質上に固定化される「サンドイッチ」アッセイを、本明細書に提供されるポリペプチドの存在、欠如、またはレベルを検出するために使用することができる。試料中の関心対象のポリペプチドが固定された抗体に結合できるよう、固体基質を生物学的試料と接触させることができる。抗体に結合したポリペプチドの存在、欠如、またはレベルを、ポリペプチドに対する特異的な結合親和性を有する「検出」抗体を使用して決定することができる。いくつかの態様において、本明細書に提供されるポリペプチドに対する結合親和性を有する捕捉抗体と同様に、CNPまたはウロジラチンに対する結合親和性を有する捕捉抗体を使用することもできる。この態様において、本明細書に提供される特定のポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有するCU-NPポリペプチド)に対する特異的な結合親和性を有する検出抗体を使用することができる。サンドイッチアッセイにおいて、捕捉抗体は、検出抗体と同一のエピトープ(またはポリクローナル抗体の場合には一連のエピトープ)に結合するべきでないことが理解される。従って、モノクローナル抗体が捕捉抗体として使用される場合、検出抗体は、捕捉モノクローナル抗体が結合するエピトープから物理的に分離されているか、もしくは部分的にのみオーバーラップするエピトープに結合する別のモノクローナル抗体、または捕捉モノクローナル抗体が結合するもの以外の、もしくはそれとは別の付加的なエピトープに結合するポリクローナル抗体であり得る。ポリクローナル抗体が捕捉抗体として使用される場合、検出抗体は、捕捉ポリクローナル抗体が結合するエピトープから物理的に分離されているか、もしくは部分的にオーバーラップするエピトープに結合するモノクローナル抗体、または捕捉ポリクローナル抗体が結合するもの以外の、またはそれとは別の付加的なエピトープに結合するポリクローナル抗体のいずれかであり得る。サンドイッチアッセイは、サンドイッチELISAアッセイ、サンドイッチウエスタンブロッティングアッセイ、またはサンドイッチ免疫磁気検出アッセイとして実施され得る。
【0047】
抗体(例えば、捕捉抗体)を結合させることができる適当な固体基質には、限定はされないが、マイクロタイタープレート、チューブ、ナイロン膜またはニトロセルロース膜のような膜、およびビーズまたは粒子(例えば、アガロース、セルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、磁性、または磁化可能なビーズまたは粒子)が含まれる。自動イムノアッセイシステムが使用される場合、磁性または磁化可能な粒子が特に有用であり得る。
【0048】
本明細書に提供されるポリペプチドに対する特異的な結合親和性を有する抗体は、標準的な方法を通して作製され得る。例えば、このポリペプチドは、上記のように組み換え作製されてもよく、生物学的試料(例えば、異種発現系)から精製されてもよく、または化学合成されてもよく、ウサギ、ニワトリ、マウス、モルモット、またはラットを含む宿主動物を免疫感作するために使用され得る。例えば、SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、または少なくとも6アミノ酸長であるそれらの断片が、動物を免疫感作するために使用され得る。免疫学的応答を増加させるために使用することができる様々なアジュバントは、宿主種に依り、フロイントアジュバント(完全または不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような表面活性物質、Pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールを含む。モノクローナル抗体は、本明細書に提供されるポリペプチドおよび標準的なハイブリドーマ技術を使用して調製され得る。特に、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって記載されたような、培養物中の連続継代細胞系による抗体分子の産生を提供する技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., Immunology Today, 4:72(1983);Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026(1983))、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,"Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,"Alan R. Liss, Inc., pp.77-96(1983))により入手され得る。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、およびそれらのサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスのものであり得る。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロおよびインビボで培養され得る。
【0049】
本明細書に提供されるポリペプチドを検出するためのその他の技術には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)のような質量分析技術が含まれる。例えば、Gevaert et al.,Electrophoresis,22(9):1645-51(2001);Chaurand et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.,10(2):91-103(1999)を参照のこと。そのような適用のために有用な質量分析計は、Applied Biosystems(Foster City, CA);Bruker Daltronics(Billerica, MA);およびAmersham Pharmacia(Sunnyvale, CA)より入手可能である。
【0050】
本発明を、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例において、さらに説明する。
【0051】
実施例
実施例1 - CU-NPの合成
図1に示された配列を有するポリペプチドを設計し、ABI 431Aペプチド合成装置を使用して合成した。このポリペプチドはCU-NPポリペプチドと呼ばれる(図1)。合成されたCU-NPポリペプチドを、高速液体クロマトグラフィ/質量分析によって確認した。その分子量は3535.09であり、アミノ酸配列は、Thr-Ala-Pro-Arg-Ser-Leu-Arg-Arg-Ser-Ser-Cys-Phe-Gly-Leu-Lys-Leu-Asp-Arg-Ile-Gly-Ser-Met-Ser-Gly-Leu-Gly-Cys-Asn-Ser-Phe-Arg-Tyr(SEQ ID NO:4)であり、Cys残基がジスルフィド架橋により接合されている(図1)。
【0052】
実施例2 - CU-NPのインビボ効果
心腎機能を3匹の麻酔下の正常なイヌにおいて査定した。注入前、各投薬量レベルでの45分間の10、50、および100ng CU-NP/kg/分の静脈内注入の間(即ち、イヌは、各々、10、50、および100ng/kg/分の連続45分の注入を受容した)、ならびに注入後に、クリアランスを得た。尿細管Na+再吸収およびGFRを、それぞれ、Li+およびイヌリンのクリアランスによって査定した。神経ホルモンをラジオイムノアッセイによって定量化した。データを、反復測定(repeated measures)ANOVA、それに続くダネット検定によって分析した。結果(平均値±SEM)を表1に提示する。
【0053】
さらに、血漿レニン活性が、9±2ng/mL/時間から、5±1ng/mL/時間、3±1ng/mL/時間、3±1ng/mL/時間へと減少し、アンジオテンシンIIレベルが、18±1pg/mLから、10±0.4pg/mL、5±0.4pg/mL、7±1pg/mLへと減少した。100ng/kg/分での注入終了時(329±15)において、注入前(323±6)と比べて、補正QTc時間(ms)の有意な変化は観察されなかった。
【0054】
これらの結果は、CNPおよびウロジラチンのアミノ酸配列を含有しているポリペプチドが、有意な低血圧を誘導することなく、用量依存的に、(1)ナトリウム利尿、利尿、およびGFRを増加させ、(2)心充満圧を減少させ、(3)レニンおよびアンジオテンシンを阻害することができることを証明している。
【0055】
(表1)CU-NPについての腎臓および心血管のデータ

=P<0.05;†=P<0.01;GFR=糸球体濾過速度;PFRNa=ナトリウムの近位部分再吸収;DFRNa=ナトリウムの遠位部分再吸収;PCWP=肺毛細管楔入圧;RAP=右心房圧;MAP=平均動脈圧。
【0056】
実施例3 - CU-NPのさらなる生物学的効果
CU-NPポリペプチドまたはCNPポリペプチドを、50ng/kg/分で、麻酔下の正常なイヌへ75分間静脈内注入した。血液試料および尿試料を、注入前(pre-I)、注入の30分目および60分目、ならびに注入後(post-I)に収集した。イヌリンクリアランスを糸球体濾過速度(GFR)の査定のために使用した。リチウムクリアランス技術を、Naの近位および遠位の部分再吸収(それぞれ、PFRNaおよびDFRNa)の測定のために使用した。後の三つの時点と、pre-Iとの比較を行った。二つの時点の結果を比較する場合には、スチューデントt検定を使用し、反復測定ANOVAを四つの時点を比較するために使用した。結果(平均値±SEM)を表2Aおよび2Bに提示する。
【0057】
CU-NPポリペプチドは、血漿cGMPおよび尿中cGMP排泄を有意に増加させた。CU-NPは、尿量および尿中Na+排泄も増加させ、増強された糸球体濾過速度をもたらした。肺毛細管楔入圧および右心房圧が、全身性低血圧の低下なしに低下した。肺動脈圧も有意に低下し、心拍出量は維持されていた。血漿レニン活性、アンジオテンシンIIレベル、およびアルドステロンレベルは、CU-NP注入の間に抑制されたが、その後、CU-NP注入の停止後に上昇または「リバウンド」した。これらのデータは、長期作用型のCU-NPが、神経ホルモンの継続的な抑制のために使用され得ることを示唆している。
【0058】
CU-NPは、腎cGMP生成および尿中K排泄も有意に増加させた。PFRNa+およびDFRNa+の両方が有意に低下した。これらの所見は、体重により調整された腎血流の増加および腎血管抵抗の低下に関連していた。ヘマトクリットの増加も観察された。血漿ANP、血漿BNP、および血漿CNPが増加し、ANP、BNP、およびCNPの尿中排泄も同様であった。
【0059】
これらの結果は、CU-NPポリペプチドが、血圧を低下させて全身性低血圧を引き起こす能力を欠いていながら、cGMP活性化活性、利尿活性、ナトリウム利尿活性、GFR増強活性、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)抑制活性、心負荷軽減活性、および好都合な腎血行力学的活性を有し得ることを証明している。さらに、これらの結果は、CU-NPポリペプチドが、内因性のANPおよびBNPのレベルを増加させ得ることを証明している。合成CU-NPポリペプチドの尿細管への効果は、近位尿細管および内髄質集合管細胞のレベルでの作用と一致している。
【0060】
(表2A)CU-NPの腎臓および心血管のデータ

=pre-Iに対してP<0.05;†=pre-Iに対してP<0.01;‡=CNPに対してP<0.05;§=CNPに対してP<0.01;¶=CNPに対してP<0.001;GFR=糸球体濾過速度;PFRNa+=ナトリウムの近位部分再吸収;DFRNa+=ナトリウムの遠位部分再吸収;PCWP=肺毛細管楔入圧;RAP=右心房圧;PAP=肺動脈圧;RBF=腎血流;RVR=腎血管抵抗。
【0061】
(表2B)CNPの腎臓および心血管のデータ

=pre-Iに対してP<0.05;†=pre-Iに対してP<0.01;GFR=糸球体濾過速度;PFRNa+=ナトリウムの近位部分再吸収;DFRNa+=ナトリウムの遠位部分再吸収。
【0062】
実施例3 - ヒト大動脈内皮細胞およびインビボにおけるCU-NPの評価
CU-NPをヒト大動脈内皮細胞(HAEC)において試験し、インビボのcGMP活性化の時間経過を確定した。CU-NPを、CO2インキュベーター内で、10-10M、10-8M、または10-6MのHAEC(2〜5代目、80〜90%コンフルエンシー)と共に10分間インキュベートした。CU-NP(n=6)またはCNP(n=3)を、14pmol/kg/分で、麻酔下の正常なイヌへ75分間静脈内注入した。注入前、注入中(I)の25分目、30分目、45分目、60分目、75分目、および注入後(post-I)1分目、2分目、4分目、6分目、10分目、20分目、30分目、45分目、60分目に、血液を収集した。サイクリックGMPをラジオイムノアッセイによって定量化した。
【0063】
表3に示されるように、CU-NPは、HAECにおけるcGMP産生を刺激した(P<0.01 10-6M対未処理)。さらに、CU-NPは、pre-Iと比べてインビボで血漿cGMPを増加させた(post-Iの45分目のP<0.05を除き、Iおよびpost-Iの全ての時点について、P<0.01)。CU-NPは、CNPと比較して、より大きな程度にcGMPを活性化した(P<0.001、Iの25分目からpost-Iの30分目まで)。従って、CU-NPは、HAECにおけるcGMPを有意に活性化し、インビボでもCNPより大きな程度にcGMPを有意に刺激した。
【0064】
(表3)HAECに対するCU-NPの効果

†=未処理に対してP<0.01
【0065】
実施例4 - 単離されたイヌ糸球体におけるCU-NPのcGMP刺激作用
CU-NPが、単離された糸球体においてcGMPを直接刺激するか否かを決定し、CU-NPのcGMP活性化作用を、CNP、URO、およびCNP-Cと比較するための実験を実施した。CNP-Cは、N末端のデュプリケート(duplicate)がC末端の位置に融合しているCNPの全長22AAからなっていた。正常イヌ腎臓の摘出時に糸球体を単離した。CU-NP、CNP、URO、およびCNP-C(10-5M)を、糸球体または対照と共にインキュベートした。サイクリックGMPを、RIAによって測定し、タンパク質レベルについて補正した。CU-NPおよびUROは、それぞれの対照より大きなcGMP応答を誘発したが(P<0.01)、群間の差はなかった。CU-NPおよびUROは、CNPおよびCNP-Cと比べてより大きなcGMP応答を刺激した(P<0.001)。従って、CU-NPは、CNPより大きな程度で、UROとは類似した程度で、糸球体においてcGMPを刺激した。CNP-CはcGMPを活性化しなかった。これらのデータは、活性化される可能性のある増強されたcGMPが、NP受容体AのリガンドのN末端および/またはC末端を必要とする可能性があることを示唆している。
【0066】
(表4)単離された糸球体におけるcGMP産生に対するCU-NPの効果

†=対応する対照に対してP<0.01;‡=CNPおよびCNP-Cに対してP<0.001
【0067】
実施例5 - CU-NPの血液濃縮効果
三つのヒトNP(BNP、CNP、URO、およびCU-NPを、ヘマトクリットの増加によって現れるような血管透過性に対する効果を評価するために研究した。麻酔下の正常なイヌに、14pmol/kg/分で、BNP(n=7)、CNP(n=6)、URO(n=5)、またはCU-NP(n=6)の静脈内注入を与えた。血液を氷上のEDTAチューブに収集し、遠心分離した。ベースラインおよび注入60分目についてのデータを報告する。インビボで、CU-NPは、ヘマトクリットの増加(表5)に加え、PCW圧を低下させた(ベースライン:6±0.9mmHg、60分目:3±0.9mmHg;P<0.05)。従って、CU-NPの血液濃縮効果が、インビボで心負荷軽減作用に寄与する可能性がある。
【0068】
(表5)ヘマトクリットに対するCU-NPの効果

=P<0.05;†=P<0.01)
【0069】
実施例6 - イヌ実験的心不全におけるCU-NPの心腎作用および神経液作用
CU-NPがセカンドメッセンジャーcGMPを活性化し、過度の低血圧を伴うことなく好都合な作用を発揮するか否かを決定するため、CU-NPをイヌ心不全(HF)において評価した。軽度のHFをペーシングにより誘導した(180bpm、10日間)。CU-NPを、75ng/kg/分で、6匹の麻酔下のイヌに75分間静脈内注入した。GFRをイヌリンクリアランスによって測定した。Na+の部分再吸収(FRNa)をLi+クリアランスによって査定した。注入前(pre-I)、Iの30分目およびIの60分目、ならびにpost-Iにおいて、データを収集した。血漿レニン活性、アンジオテンシンII、アルドステロン、およびcGMPも測定した。結果(平均値±SEM)を表6に提示する。
【0070】
CU-NPは、血漿cGMP、尿中cGMP排泄、正味の腎cGMP生成、尿量、および尿中Na+排泄を増加させた。近位および遠位のFRNaが低下した。MAPの軽度の減少と共に、腎血流およびGFRが増強された。COおよびSVRの両方は不変であった。PCWPおよびPAPが低下した。血漿レニン活性、アンジオテンシンII、およびアルドステロンも抑制された。従って、CU-NPは、過度の低血圧なしに、イヌHFにおいてcGMPを活性化し、腎増強作用、心負荷軽減作用、およびレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の抑制作用を発揮した。
【0071】
(表6)実験的HFにおけるCU-NPの腎臓データおよび心血管データ

=pre-Iに対してP<0.05;†=pre-Iに対してP<0.01;GFR=糸球体濾過速度;PFRNa+=ナトリウムの近位部分再吸収;DFRNa+=ナトリウムの遠位部分再吸収;PCWP=肺毛細管楔入圧;PAP=肺動脈圧;RBF=腎血流;MAP=平均動脈圧;CO=心拍出量;SVR=全身血管抵抗。
【0072】
実施例7 - 腎臓灌流圧に対するCU-NPのインビボ効果
腎灌流圧(RPP、MAP-RAPによって測定される)は腎機能の重要な決定因子であるため、RPPに対するCNP、CU-NP、およびUROのインビボ作用を決定するための研究を実施した。CU-NPのGFR増強作用のため、CU-NPが(CNPとは異なり)、強力な腎作用性NP受容体であるNPR-Aも活性化するという仮説を試験するためのインビトロ研究も行った。
【0073】
等モル用量のCU-NP、ヒトCNP、またはヒトUROを、17匹の麻酔下の正常なイヌに、14.14pmol/kg/分で75分間、静脈内注入した。RPPを、ベースラインおよび注入60分目において査定した。データを平均値±SEMとして表す。ペプチド注入の開始後、16分目から45分目まで、および46分目から75分目まで、クリアランスを測定した。各群内で、ペプチド注入60分目におけるRPPをベースラインと比較するため、対応のある両側t検定を使用した。二元配置のANOVA、それに続くボンフェロニのポストテストによって、群間の比較を行った。
【0074】
3種類のペプチドに対するcGMP応答も、連続的に添加されたNPR-AアンタゴニストA719153(1μM)、またはNPR-BアンタゴニストP194(1μM)、または両アンタゴニストの存在下または非存在下で、摘出時にイヌ腎臓から単離された糸球体において査定した(A71915の後、P194、いずれも1μM最終濃度)。CU-NPに対するcGMP応答におけるNPR-Bの関与を確認するため、ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)を使用した付加的な実験を実施した。NPR-Bのリガンド結合領域に対する抗体の非存在下または存在下で、CU-NP(10-6M)を10分間インキュベートすることにより、サイクリックGMP応答を決定した。インビトロのデータ(平均値±SEM)を、一元配置のANOVA、それに続くボンフェロニのポストテストによって分析した。統計的有意性をP<0.05と定義した。GraphPad Prism 4(GraphPad Software, San Diego, CA)を統計分析のために使用した。
【0075】
インビボ研究において、RPP(mmHg)は、UROと比較してCU-NPで維持された。二群を比較すると、ペプチド注入60分目において、RPPは、CU-NPよりUROで有意に低かった(P<0.05、図2)。RPPはCNPによって変化しなかった。
【0076】
(表7)RPPに対するCU-NPの効果

=ベースラインに対してP=0.05
【0077】
インビトロで、10-5M CU-NPは、CNPと比べて7倍、cGMPを増加させ(0.11±0.05fmol/μgに対して0.76±0.05‡fmol/μg)、 UROよりさらに大きくcGMPを活性化する傾向があった(0.54±0.10fmol/μg;P=0.086)。これらの結果は図3に例示される。図4に示されるように、CU-NPのcGMP刺激作用は、A71915によるNPR-Aの阻止(0.31±0.05fmol/μg)、P19によるNPR-Bの阻止(0.28±0.04fmol/μg)、またはA71915およびP19によるNPR-AおよびNPR-Bの両方の阻止(0.23±0.05fmol/μg)によって減弱した。
【0078】
HAECにおいて、10-6M CU-NPおよびCNPは、cGMPを、0.30±0.02pmol/mLおよび0.17±0.04pmol/mLにそれぞれ増加させた(P<0.01 CU-NP対CNP;P<0.001 CU-NP対対照;P<0.001 CNP対対照)。NPR-B抗体(1:100)の存在下で、cGMP応答は、CU-NPで0.19±0.02pmol/mL、CNPで0.08±0.01pmol/mLに減弱した(P<0.01 CU-NP対無抗体、P<0.05 CNP対無抗体)。結果は図5にプロットされる。これらのデータは、NPR-Bが、CU-NPに対するcGMPの応答に少なくとも一部分関与していることを示唆する。
【0079】
従って、CU-NPは、RPPを低下させるUROとは対照的に、腎増強用量でRPPを維持する。さらに、単離された糸球体において、CU-NPの作用は、NPR-AおよびNPR-Bの両方の同時活性化を含み、これは、腎臓における新規の二重NP受容体活性化因子を表している。NPR-Bは、ヒト大動脈内皮細胞におけるCU-NPに対するcGMP応答に一部分関与している。従って、CU-NPは、NPR-AおよびNPR-Bを二重に活性化できる新規のペプチド技術に相当する。
【0080】
その他の態様
本発明を詳細な説明と共に記載してきたが、上記の説明は、本発明を例示するためのものであり、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するためのものではないことが理解されるべきである。その他の局面、利点、および修飾が、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
44アミノ酸残基未満の長さのポリペプチドであって、
アミノ末端からカルボキシ末端への順に、
(a)SEQ ID NO:1に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列、
(b)SEQ ID NO:2に示された配列、または5個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列、および
(c)SEQ ID NO:3に示された配列、または3個以下の付加、サブトラクション、もしくは置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列
を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
ナトリウム利尿活性を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
全身性低血圧を誘導する能力を欠く、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:1に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:2に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO:3に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO:1に示された配列、SEQ ID NO:2に示された配列、およびSEQ ID NO:3に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:1に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
5個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項10】
3個以下の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:3に示された配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項11】
実質的に純粋なポリペプチドである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項13】
請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸を含むベクター。
【請求項14】
請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞。
【請求項15】
真核生物宿主細胞である、請求項14記載の宿主細胞。
【請求項16】
薬学的に許容される担体および請求項1記載のポリペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項17】
血圧を低下させることなく哺乳動物においてナトリウム利尿活性を増加させる方法であって、請求項1記載のポリペプチドを該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
心血管異常または腎異常を有する哺乳動物を処置する方法であって、心血管異常または腎異常の症状の重症度が低下するような条件の下で、請求項1記載のポリペプチドを該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドの哺乳動物への投与が該哺乳動物の血圧を低下させない、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−534062(P2010−534062A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517180(P2010−517180)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/070447
【国際公開番号】WO2009/015011
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(501083115)メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ (27)
【Fターム(参考)】