説明

ナノインプリントのためのプロセスガス閉じ込め

ガス閉じ込めシステム及び方法を説明する。詳細には、パージガスを閉じ込め、ナノロソグラフィシステム内の他の要素へのパージガスの流れを制限するバリアを含むシステム及び方法を説明する。このバリアを、作業環境と外部環境の間の所望の圧力変化に対応し、及び/又はこれを制御するように調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2010年2月9日に出願された米国仮特許出願第61/302,738号の優先権を主張するものであり、この米国特許出願の内容は本明細書の内容とするものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ加工は、約100ナノメートル又はそれ以下の特徴部を有する極小構造の加工を含む。ナノ加工がかなりの影響を与えてきた1つの用途に、集積回路の処理がある。半導体処理産業は、基板上に形成される単位面積当たりの回路を増やす一方で、より高い生産収率を追求し続けているため、ナノ加工はますます重要になっている。ナノ加工では、より優れたプロセス制御を行う一方で、形成される構造物の最小特徴部の寸法を継続的に縮小することができる。ナノ加工が利用されてきたその他の開発分野として、バイオテクノロジー、光学技術、機械系などが挙げられる。
【0003】
今日使用されている例示的なナノ加工技術は、一般にインプリントリソグラフィと呼ばれる。例示的なインプリントリソグラフィプロセスが、米国特許出願公開第2004/0065976号、米国特許出願公開第2004/0065252号、及び米国特許第6,936,194号などの数多くの公報に詳細に記載されている。
【0004】
上述の米国特許出願公開及び特許の各々に開示されているインプリントリソグラフィ技術は、成形可能な(重合可能な)層内にレリーフパターンを形成すること、及びこのレリーフパターンに対応するパターンを下部の基板に転写することを含む。基板をモーションステージに結合して、パターニング処理を容易にするのに望ましい位置調整を行うことができる。パターニング処理では、基板から間隔を空けたテンプレート、及びテンプレートと基板の間に適用される成形可能な液体を使用する。この成形可能な液体を固化して、成形可能な液体と接するテンプレートの表面形状に従うパターンを有する剛体層を形成する。固化後、テンプレートを剛体層から分離して、テンプレートと基板が間隔を空けるようにする。その後、基板及び固化層に、固化層内のパターンと一致するレリーフ像を基板内に転写するための追加処理を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0065976号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0065252号明細書
【特許文献3】米国特許第6,936,194号明細書
【特許文献4】米国特許第6,873,087号明細書
【特許文献5】米国特許第7,157,036号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0187339号明細書
【特許文献7】米国特許第6,932,934号明細書
【特許文献8】米国特許第7,077,992号明細書
【特許文献9】米国特許第7,179,396号明細書
【特許文献10】米国特許第7,396,475号明細書
【特許文献11】米国特許出願第12/987,196号明細書
【特許文献12】米国特許第7,670,530号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2010/0112116号明細書
【特許文献14】米国特許第7,462,028号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ナノプリントプロセスにおけるパージガスを閉じ込める方法及びシステムを提供する。1つの態様では、チャック及びこのチャックに取り付けられたテンプレートを有するインプリントヘッドと、テンプレートから間隔を空けた基板とを含むシステムを提供する。基板から間隔を空けた下面を有するバリアが、インプリントヘッドを取り囲む。バリアの下面と基板の間に、加圧空気であってもよい加圧ガスを供給し、これによりバリアの下面と基板の間の間隙距離を50μm〜5mmに維持する。別の態様では、バリアがインプリントヘッドに移動可能に接続される。さらに別の態様では、バリアがインプリントヘッドに対して移動可能であり、インプリントヘッドとは無関係に間隙距離の調整が可能になる。他の態様では、バリアが、このバリアの下面上に配置された、加圧ガスを送出する1又はそれ以上のガスノズルを有することができる。
【0007】
さらなる態様では、バリアが、このバリアとインプリントヘッドの間に1又はそれ以上のチャネルを定めるようにインプリントヘッドから間隔を空けた側壁を含むことができる。このようなチャネルは、パージガスの放出又は排気に対応することができる。別の態様では、バリアが、チャックと基板の間に延びるアームを含むことができる。他の実施形態では、バリアの高さが、少なくともテンプレートとチャックを組み合わせた高さである。
【0008】
別の態様では、テンプレートと基板の間に位置する作業環境にパージガスを供給することができる。さらなる態様では、バリアの下面に供給する加圧ガスを、パージガスの圧力よりも高い圧力で供給することができる。
【0009】
さらに他の態様では、ナノプリントプロセスにおけるパージガスを閉じ込めるための方法を提供し、この方法は、チャック及びこのチャックに取り付けられたテンプレートを有するインプリントヘッドと、テンプレートから間隔を空けた基板とを提供するステップと、インプリントヘッドをバリアで取り囲むステップと、加圧空気であってもよい加圧ガスを供給して、バリアの下面を基板から50μm〜5mmの間隙距離に維持するとともに、この下面と基板の間にガスバリアを形成するステップと、テンプレートと基板の間の作業環境にパージガスを供給するステップとを含む。別の態様では、バリアが、バリアとインプリントヘッドの間に1又はそれ以上のチャネルを定めるようにインプリントヘッドから間隔を空けた側壁をさらに含む。さらに別の態様では、提供されるバリアが、少なくともテンプレートとチャックを組み合わせた高さを有する。さらなる態様では、バリアがインプリントヘッドに対して移動可能である。
【0010】
他の態様では、加圧ガスが、パージガスの圧力よりも高い圧力で供給される。さらなる態様では、パージガスが、1又はそれ以上のチャネルを介して放出又は排気される。
【0011】
本明細書で説明する態様及び実施構成を、上述した以外の方法で組み合わせることもできる。以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から、その他の態様、特徴、及び利点が明らかになるであろう。
【0012】
本発明の特徴及び利点を詳細に理解できるように、添付図面に示す実施形態を参照することによって本発明の実施形態のより詳細な説明を行うことができる。しかしながら、添付図面は、本発明の代表的な実施形態のみを示すものであり、従って本発明は他の同等に有効な実施形態を認めることもできるので、この添付図面が本発明の範囲を限定するとみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リソグラフィシステムの簡略化した側面図である。
【図2】上部にパターン化層を有する図1に示す基板の簡略化した側面図である。
【図3】インプリントプロセス中のパージガスの流れを示す簡略化した側面図である。
【図4】インプリントプロセス中のパージガスの流れを示す簡略化した側面図である。
【図5】例示的な従来技術の半閉鎖システムの簡略化した側面図である。
【図6A】本発明による例示的なガス閉じ込めシステムの簡略化した側面図である。
【図6B】図6Aの例示的なガス閉じ込めシステムの簡略化した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図、特に図1を参照すると、基板12上にレリーフパターンを形成するために使用するリソグラフィシステム10を示している。基板12は、基板チャック14に結合することができる。図示のように、基板チャック14は真空チャックである。しかしながら、基板チャック14は、以下に限定されるわけではないが、真空型、ピン型、溝型、静電式、電磁型、及び/又は同様のものを含むいずれのチャックであってもよい。例示的なチャックが、米国特許第6,873,087号に記載されており、本発明でもこのチャックを使用するとよい。
【0015】
基板12及び基板チャック14を、ステージ16によってさらに支持することができる。ステージ16は、x、y、及びz軸に沿った並進移動及び/又は回転移動を行うことができる。ステージ16、基板12、及び基板チャック14を基台(図示せず)上に配置することもできる。
【0016】
基板12から間隔を空けてテンプレート18が存在する。テンプレート18は、第1の面及び第2の面を有するボディを含むことができ、一方の面には、ここから基板12へ向かって延びるメサ20が存在する。メサ20は、上部にパターニング面22を有する。さらに、メサ20をモールド20と呼ぶこともできる。或いは、メサ20を使用せずにテンプレート18を形成することもできる。
【0017】
テンプレート18及び/又はモールド20は、以下に限定されるわけではないが、石英ガラス、石英、シリコン、有機ポリマー、シロキサン重合体、ホウケイ酸ガラス、フルオロカーボン重合体、金属、硬化サファイア、及び/又は同様のものを含む材料で形成することができる。図示のように、パターニング面22は、複数の間隔を空けた凹部24及び/又は凸部26によって定められる特徴部を備えるが、本発明の実施形態はこのような構成(例えば平面)に限定されるものではない。パターニング面22は、基板12上に形成されるパターンの基礎を成すあらゆる原パターンを定めることができる。
【0018】
テンプレート18は、チャック28に結合することができる。チャック28は、以下に限定されるわけではないが、真空型、ピン型、溝型、静電型、電磁型、及び/又はその他の同様のチャック型として構成することができる。例示的なチャックが米国特許第6,873,087号にさらに記載されており、該特許は引用により本明細書に組み入れられる。さらに、チャック28をインプリントヘッド30に結合して、チャック28及び/又はインプリントヘッド30を、テンプレート18の動きを容易にするように構成することができる。
【0019】
システム10は、流体分注システム32をさらに備えることができる。流体分注システム32を使用して、基板12上に(重合性材料などの)成形可能材料34を堆積させることができる。液滴分注、回転被覆、浸漬被覆、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、薄膜堆積、厚膜堆積、及び/又は同様のものなどの技術を使用して、基板12上に成形可能材料34を配置することができる。設計配慮に応じ、モールド22と基板12の間に所望の体積が定められる前及び/又は後に、基板12上に成形可能材料34を配置することができる。成形可能材料34は、(薬学用途及びその他の生物医学用途をなど含む)バイオ分野、太陽電池産業、電池産業、及び/又は機能性ナノ粒子を必要とするその他の産業で使用される機能性ナノ粒子とすることができる。例えば、成形可能材料34は、米国特許第7,157,036号及び米国特許出願公開第2005/0187339号に記載されるような単量体混合物を含むことができ、これらの両特許は引用により本明細書に組み入れられる。或いは、成形可能材料34は、以下に限定されるわけではないが、(PEGなどの)生体材料、(N型、P型材料などの)太陽電池材料、及び/又は同様のものを含むことができる。
【0020】
図1及び図2を参照して分かるように、システム10は、経路42に沿ってエネルギー40を導くように結合されたエネルギー源38をさらに備えることができる。テンプレート18及び基板12が経路42と重なって位置するように、インプリントヘッド30及びステージ16を構成することができる。システム10は、ステージ16、インプリントヘッド30、流体分注システム32、及び/又はエネルギー源38と通信するプロセッサ54によって調整することができ、またメモリ56に記憶されたコンピュータ可読プログラムに基づいて動作することができる。
【0021】
インプリントヘッド30、ステージ16のいずれか又は両方は、モールド20と基板12の間の距離を変化させて、これらの間に、成形可能材料34によって満たされる所望の体積を定める。例えば、インプリントヘッド30はテンプレート18に力を印加して、モールド20が成形可能材料34と接触するようにすることができる。所望の体積が成形可能材料34で満たされた後、エネルギー源38が、紫外放射線などのエネルギー40を生成し、これにより成形可能材料34が基板12の表面44及びパターニング面22の形状に従って固化及び/又は架橋し、基板12上にパターン化層46を定める。パターン化層46は、残留層48、及び凸部50及び凹部52として示す複数の特徴部を有することができ、凸部50は厚みt1を有し、残留層は厚みt2を有する。
【0022】
上述のシステム及びプロセスは、米国特許第6,932,934号、米国特許第7,077,992号、米国特許第7,179,396号、及び米国特許第7,396,475号に記載されるインプリントリソグラフィプロセス及びシステムでさらに使用することができ、これらは本願発明で使用することもできる。
【0023】
上述したようなインプリント中、テンプレート18と基板12の間に成形可能材料34を充填している最中に気泡を排除するために、これらの間にプロセスガスをパージすることができる。通常、パージガスの分子量は、周囲空気に比べて低い。一般には、テンプレート18と基板12の間の境界面を、成形可能材料34を充填する前にパージする必要がある。しかしながら、パージ中に、パージ出口からのガスがシステム10の環境内に放出されて、システム10内の要素に悪影響を与える恐れがある。例えば、パージガスは、ツール制御フィードバックユニット60内にエラーを引き起こし、これがナノインプリント中の位置決めエラーにつながることがある。
【0024】
図3を参照して分かるように、システム10は、ツール制御フィードバックユニット60(レーザ干渉計(IFM)ベースのフィードバックシステムなど)を含むことができ、これがパージガス62によって悪影響を受ける恐れがある。一般に、ツール制御フィードバックユニット60は、一貫性のある安定した環境を必要とすることができ、(圧力、温度、屈折率などの)わずかな外乱であっても、読み取りの精度が低下してエラーが生じることがある。例えば、IFMフィードバックのエラーにより、システム要素の位置制御が不正確になり、これがナノインプリント中の位置決めエラーにつながることがある。
【0025】
テンプレート18の設計では、米国特許出願第12/987,196号に開示されるテンプレートに設けられるようなパージポート及び/又は排気ポートを設けることができ、この特許出願の内容は本明細書で引用することもできる。一般に、これらの方式は、パージ領域を取り囲むチャネル及びポートを介してパージガスを排気することにより、パージ中にテンプレート18と基板12の間にパージガスを閉じ込める。しかしながら、テンプレート18と基板12の間の間隙の距離が減少すると、パージガスが横方向に逃げ出す可能性がある。例えば、図4に示すように、テンプレート18と基板12の間の距離が減少すると、パージガス62が、テンプレート18と基板12の間の境界面から横方向に逃げ出して、ツール制御フィードバックユニット60に悪影響を与える可能性がある。
【0026】
部分環境インプリント方式により、パージガスを閉じ込めるための半閉鎖システム及び方法を提供することができる。例示的なシステム及び方法が、米国特許第7,670,530号、米国特許出願公開第2010/0112116号、及び米国特許第7,462,028号にさらに記載されており、これらの特許発明を本発明においても使用することができる。
【0027】
図5に、半閉鎖システム64を示す。システム64は、基板12とテンプレート18の間に分圧を提供することができる。周囲空気に比べて分子量の低いパージガスで満たすことができる作業環境又は小環境68を、事前真空負荷空気ベアリング66によって実質的に密閉することができる。空気ベアリング66は、プレート70に隣接して配置することができる。チャネル(図示せず)により、環境68から排気72を行うことができる。プレート70と、対応するインプリントヘッド30のバランスを保ちながら、空気ベアリング66を通じて加圧ガス74を導くことができる。
【0028】
概ね同様な概念を使用するものの、より優れた機能性を提供する異なる構造要素を含むシステムを、ガス閉じ込めに使用することができる。このシステムは、パージガスを動的に閉じ込めるバリアを提供し、作業環境と外部環境の間の所望の圧力変化に対応し、及び/又はこれを制御するように調整することができる。図6A及び図6Bを参照して分かるように、ガス閉じ込めシステム又はプロセス内にバリア80を提供することができる。バリア80を、基板12から距離d1のところに配置して間隙81を形成することができる。間隙距離d1は、約100μm〜5mm、及び場合によっては50μm〜5mmとすることができる。例えば、流体分注が実質的に影響を受けないままであれば、距離d1の範囲を100μmから50μほどに減少させることができる。バリア装置80と、基板12及び/又はチャック14表面との間の間隙81を距離d1に維持することにより、パージガスを作業環境82内に閉じ込める空気バリアをこの間隙内に形成することができる。パージガスは、チャック28内のチャネル(図示せず)によって作業環境82に供給することができる。
【0029】
バリア80は、ボディ88と、ボディの下部から延びるアーム90とを含む。ボディ88とアーム90は、基板12から間隔を空けて間隙81を形成する下面92を含む。アーム90は、側面96と、チャック28の表面29及び端面27からそれぞれ間隔を空けてバリア80とインプリントヘッド30の間にチャネル86を形成する上面94及び側壁98とをさらに含む。チャネル86は、放出又は排気されるパージガスの非制限流を提供するのに十分な幅とすることができる。例えば、チャネル86の幅は、1〜20mmであってもよい。
【0030】
バリア80は、インプリントヘッド30、チャック28、又はこれらの両方を取り囲むことができる。チャネル86のための間隔を保持するために、バリア80を、インプリントヘッド30及び/又はチャック28から間隔を空けた位置を維持した状態で、インプリントヘッド30、チャック28、又はこれらの両方に接続し又は取り付けることができる。例えば、ボルト締め、接着、及び/又は同様の手段によってバリア80を取り付けることができる。バリア80を、インプリントヘッド30及び/又はチャック28、又はこれらの両方に移動可能に接続して、バリア80はx座標及びy座標に沿ってインプリントヘッド30と並進的に移動できるが、インプリントヘッド30はバリア80とは無関係に上下に移動して、例えばインプリント中にバリア80が間隙距離d1を維持できるようにすることもできる。バリア80は、高さh1及び全幅w1を有するボディを含むことができる。高さh1は、少なくともテンプレート18及びチャック28の高さとすることができる。幅w1は、数ミリメートル〜30ミリメートルとすることができる。なお、幅w1は、間隙81の間隙距離d1に応じて変化することができる。幅w1は、作業環境82からパージされるように意図されたガスを、間隙81ではなくチャネル86を通じて確実に逃がせるようにするために、間隙距離d1に比べて十分に大きくなければならない。一般に、幅w1と間隙距離d1の比率は、少なくとも10:1とされ、また20:1、50:1、又は100:1以上とすることもできる。
【0031】
バリア80は、基板12及び/又は基板12のフィールド83を取り囲むことができる。基板12のフィールド83は、基板12のインプリントされる部分とすることができる。図示のようなバリア80は、ボディ88からチャック28と基板12の間に延びるアーム90を含む。この特定の構成では、チャック28と基板12の間にアーム90を提供することで、パージガスが間隙81から逃げることに対する流体抵抗がさらに高まる。この結果、ガス閉じ込め効果の向上が促進される。
【0032】
上述したように、一般に、バリア80は、基板12の各フィールドのインプリント中に間隙81の距離d1を実質的に維持することができる。間隙距離d1を実質的に維持することにより、基板12のフィールドのインプリント中にガス閉じ込めを行うことができる。間隙距離d1は、バリア80の下面92と基板12の間に加圧ガス84を供給することによって維持することができる。
【0033】
加圧ガス84は、作業環境82内のパージガスの圧力に比べて圧力の高い境界を生じる空気バリアを形成することもできる。従って、加圧ガス84は、環境82内にパージガスを閉じ込めることができ、パージガスがツール要素に、特にツールフィードバックユニット60などの、作業環境82の近くに位置するツールに接するのを実質的に防ぐことができる。
【0034】
バリア80を基板12から間隙距離d1に維持するために加圧ガス84を使用する点が、図5に示すような空気ベアリングシステムとは異なる。通常、空気ベアリングは、2つの要素間に約10μm以下の固定距離で空気クッションを提供する。空気ベアリングを使用すると、このような距離の変化を皆無かそれに近くすることができ、従って所望の圧力変化に対応し、及び/又はこれに合わせるための、又は制御するための調整を皆無かそれに近くすることができる。図6A〜図6Bのシステムでは、間隙距離d1が、空気ベアリングの間隙距離の5倍〜100倍であり、これを範囲全体にわたって調整することができる。
【0035】
バリア80は、間隙距離d1を維持し及び/又はパージガスを閉じ込めるための空気バリアを提供するために加圧ガス84を供給する1又はそれ以上のノズルを含むことができる。ノズルの形状寸法(個数、サイズ、位置、間隔など)は、設計配慮に応じて最適化することができる。ノズルの形状寸法が依存するパラメータのいくつかには、圧力の低下、流量の配慮、幾何学的配慮などがある。計算流体力学に基づくシミュレーションが、ノズルの最適化に役立つことができる。加圧ガス84は加圧空気であってもよいが、他の加圧ガスを使用してもよい。
【0036】
上述したように、テンプレート18及び/又はチャック28からのバリア80の位置付けにより、1又はそれ以上のチャネル86を提供することができる。チャネル86は、パージガスの排気ルートを提供することができる。チャネル86は、影響を受ける可能性のあるインプリントシステムの要素(IMFビーム経路など)からパージガスを実質的に離して引き出す排気ルートを提供することができる。チャネル86は、能動チャネルであっても、及び/又はガスの排気における負圧力差に依拠する受動チャネルであってもよい。図示のように、チャネル86は、チャック28及びインプリントヘッド30の周囲に延びる連続チャネルであるが、このようなチャネルは連続したものでなくてもよく、チャック28及び/又はインプリントヘッド30の周囲に、例えば等間隔の孔などを含む複数のチャネル構成を提供できることが容易に理解されるであろう。バリア装置80内に追加のガス流チャネルを実現することもできる。ガス流チャネルは、正の流れ及び/又は負の流れを提供することができる。
【0037】
当業者には、本説明に照らして様々な態様のさらなる修正及び代替の実施形態が明らかであろう。従って、本説明は例示にすぎないと解釈すべきである。本明細書で図示し説明した形態は、実施形態例として捉えるべきであると理解されたい。本明細書で図示し説明した要素及び材料は、代わりの要素及び材料と置き換えることができ、部品及びプロセスは逆にすることができ、いくつかの特徴部は独立して利用することができ、これらは全て本説明の恩恵を得た後で当業者に明らかになるであろう。本明細書で説明した要素には、添付の特許請求の範囲に示す思想及び範囲から逸脱することなく変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
12 基板
14 基板チャック
16 ステージ
18 テンプレート
20 メサ
27 チャック端面
28 チャック
29 チャック表面
34 成形可能材料
60 ツールフィードバックユニット
62 パージガス
80 バリア
81 間隙
82 作業環境
83 フィールド
84 加圧ガス
86 チャネル
88 ボディ
90 アーム
92 バリア下面
94 バリア上面
96 バリア側面
98 バリア側壁
1 距離
1 高さ
1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノインプリントプロセスにおけるパージガスを閉じ込めるためのシステムであって、
チャック、及び該チャックに取り付けられたテンプレートを有するインプリントヘッドと、
前記テンプレートから間隔を空け、該テンプレートとの間に作業環境を定める基板と、
前記基板から間隔を空けるようにして配置された下面を有する、前記インプリントヘッドを取り囲むバリアと、
を備え、前記バリアが、該バリアの前記下面と前記基板の間に加圧ガスを供給し、これにより前記バリアの前記下面と前記基板の間の間隙距離が50μm〜5mmに維持される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記バリアが、前記インプリントヘッドに対して移動可能であり、これにより前記インプリントヘッドとは無関係に前記間隙距離の調整が可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バリアが、該バリアの前記下面上に配置された、前記加圧ガスを送出する1又はそれ以上のガスノズルをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記バリアが、該バリアと前記インプリントヘッドの間に1又はそれ以上のチャネルを定めるように前記インプリントヘッドから間隔を空けた側壁をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャックが、前記基板に面した表面を含み、前記バリアが、該バリアから前記チャックと前記基板の間に延びるアームを含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業環境にパージガスが供給される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記加圧ガスが、前記パージガスの圧力よりも高い圧力で供給される、
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記パージガスが、前記1又はそれ以上のチャネルを介して放出又は排気される、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記加圧ガスが空気である、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記バリアが、少なくとも前記テンプレートとチャックを組み合わせた高さを有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記バリアが、前記インプリントヘッドに移動可能に接続される、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
ナノインプリントプロセスにおけるパージガスを閉じ込める方法であって、
(a)チャック、及び該チャックに取り付けられたテンプレートを有するインプリントヘッドと、前記テンプレートから間隔を空けて、前記テンプレートとの間に作業空間を定める基板とを提供するステップと、
(b)前記インプリントヘッドを、前記基板から間隔を空けた下面を有するバリアで取り囲むステップと、
(c)加圧ガスを供給して、前記下面を前記基板から50μm〜5mmの間隙距離に維持するとともに、前記下面と前記基板の間にガスバリアを形成するステップと、
(d)前記作業環境にパージガスを供給するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記提供されるバリアが、前記インプリントヘッドに対して移動可能である、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記提供されるバリアが、該バリアと前記インプリントヘッドの間に1又はそれ以上のチャネルを定めるように前記インプリントヘッドから間隔を空けた側壁をさらに含む、
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加圧ガスが、前記パージガスの圧力よりも高い圧力で供給される、
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記パージガスを、前記1又はそれ以上のチャネルを介して放出又は排気するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記加圧ガスが空気である、
ことを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記提供されるバリアが、少なくとも前記テンプレートとチャックを組み合わせた高さを有する、
ことを特徴とする請求項12から請求項17のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2013−519228(P2013−519228A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551980(P2012−551980)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2011/000227
【国際公開番号】WO2011/100050
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】