説明

ナノインプリント成形用樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法並びにレプリカモールド

【課題】耐熱性に優れると共に十分な強度を備えており、且つ微細なパターンを形成可能なナノインプリント成形用樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法、並びにレプリカモールドを提供する。
【解決手段】本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物は、主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が60000〜150000である樹脂(I)(例えば、環状オレフィンの開環重合により得られたもの)と、主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が4000〜50000である樹脂(II)(例えば、環状オレフィンの開環重合により得られたもの)と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント成形用樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法並びにレプリカモールドに関する。更に詳しくは、本発明は、耐熱性に優れると共に十分な強度を備えており、且つ微細なパターンを形成可能なナノインプリント成形用樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法、並びにレプリカモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、エンボス技術を発展させ、飛躍的にその解像度をナノオーダーまで高めた表面微細加工技術であり、近年、その加工技術の応用並びに、その技術を利用した製品開発が盛んに行われている。なかでも、樹脂成形体に対する熱ナノインプリント法は、樹脂を熱変形温度以上の温度で加熱し、軟化させた樹脂の表面に、同じく加熱したモールド(金型)を押圧することで、モールドのパターン形状を樹脂表面に転写する技術であり、新たな製品開発に応用されている。特に、レプリカモールド等、耐熱性の求められる用途への使用が望まれている。
このような樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物としては、下記非特許文献1等が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.Kubo, et al., "Resist pattern inspection using fluorescent dye−doped poly(styrene) thin films in reactive−monolayer−assisted thermal nanoimprint lithography" The 23rd International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC2010), 12C−10−3, Rihga Royal Hotel Kokura, Fukuoka, Japan, November 12,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の熱ナノインプリント法により得られる樹脂成形体を、レプリカモールド等の耐熱性の求められる用途に用いる場合、得られる樹脂成形体の耐熱性や強度が不十分であり、更なる向上が求められている。更に、近年では、パターンの微細化が進み、熱ナノインプリント法においても数百nm以下の微細なパターン形成が求められており、従来知られている樹脂組成物では、微細パターンへの充填が難しく、十分なパターン成形性が得られていないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れると共に十分な強度を備えており、且つ微細なパターンを形成可能なナノインプリント成形用樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法、並びにレプリカモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
[1]主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が60000〜150000である樹脂(I)と、
主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が4000〜50000である樹脂(II)と、を含有することを特徴とするナノインプリント成形用樹脂組成物。
[2]前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)は、それぞれ、環状オレフィンの開環重合により得られたものである前記[1]に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[3]前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)は、それぞれ、下記一般式(1)で表される構成単位を有する前記[1]又は[2]に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(1)において、mは0又は1〜3の整数を表す。nは0又は正の整数を表す。A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)のうちの1種を表すか、或いは、下記(f)又は(g)を表す。
(a):水素原子
(b):ハロゲン原子
(c):酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を含む置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(d):置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(e):エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基
(f):AとA、又は、AとAとでアルキリデン基を表し、残りのA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。
(g):AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された炭化水素環又は複素環を表し、前記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。〕
[4]前記極性基が、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表されるエステル基である前記[3]に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[5]前記一般式(1)におけるA〜Aのうちの少なくとも1つは、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表されるエステル基である前記[3]に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[6]前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)の合計を100質量部とした場合に、前記樹脂(I)の含有割合が10〜90質量部である前記[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[7]本ナノインプリント成形用樹脂組成物に含まれる樹脂成分全体を100質量部とした場合に、前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)の含有割合の合計が、70〜100質量部である前記[1]乃至[6]のうちのいずれかに記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[8]1atmでの沸点が80℃以上である溶媒を更に含有する前記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
[9]前記[1]乃至[8]のうちのいずれかに記載のナノインプリント成形用樹脂組成物を、基体上に塗工して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して前記基体上に被膜を形成する被膜形成工程と、
前記被膜を、前記ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、前記被膜を前記樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却し、その後、前記金型を開放して、前記金型の凹凸パターンを反映させることによりパターンを形成するパターン形成工程と、を備えることを特徴とするパターン形成方法。
[10]前記[9]に記載のパターン形成方法により形成されたパターンを備えることを特徴とするレプリカモールド。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物によれば、耐熱性に優れると共に十分な強度を備えており、且つ微細なパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のパターン形成方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]ナノインプリント成形用樹脂組成物
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物は、主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が60000〜150000である樹脂(I)と、主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が4000〜50000である樹脂(II)と、を含有する。
【0010】
(1−1)樹脂成分
上記「樹脂(I)」及び「樹脂(II)」は、それぞれ、主鎖に脂環式骨格を有する樹脂である。
上記「脂環式骨格」は、シクロアルカン類に由来する骨格のように単環であってもよいし、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等に由来する骨格のように多環であってもよい。尚、樹脂(I)における脂環式骨格と、樹脂(II)における脂環式骨格とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、このような脂環式骨格は、各樹脂中において、1種のみ存在していてもよいし、2種以上存在していてもよい。
このような脂環式骨格を有する樹脂としては、例えば、環状オレフィンの開環重合(開環共重合を含む)により得られるものや、環状オレフィンの付加重合(付加共重合を含む)により得られるものが挙げられる。
【0011】
特に、本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物においては、樹脂(I)及び樹脂(II)が、それぞれ、環状オレフィンの開環重合により得られたものであることが好ましい。
【0012】
上記環状オレフィンは、二重結合を有する環構造を備えた炭化水素系化合物であり、具体的には、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0013】
【化2】

〔一般式(2)において、mは0又は1〜3の整数を表す。nは0又は正の整数を表す。A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)のうちの1種を表すか、或いは、下記(f)又は(g)を表す。
(a):水素原子
(b):ハロゲン原子
(c):酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を含む置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(d):置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(e):エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基
(f):AとA、又は、AとAとでアルキリデン基を表し、残りのA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。
(g):AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された炭化水素環又は複素環を表し、前記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。〕
【0014】
一般式(2)におけるmは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、nは0以上の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。
【0015】
一般式(2)のA〜Aの(e)極性基としては、エステル基であることがより好ましい。
また、一般式(2)におけるA〜Aのうちの少なくとも1つは極性基であることが好ましく、特にエステル基であることが好ましい。
エステル基としては、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表される基であることが好ましい。
上記Rとしては、直鎖状若しくは分枝状の飽和又は(2重結合又は3重結合の)不飽和脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、直鎖状若しくは分枝状の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が好ましい。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルプロピル基、n−ヘキシル基及びイソヘキシル基等が挙げられる。
上記脂環族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)における(f)のアルキリデン基は、AとAとの組合せ、又は、AとAとの組合せで構成されるものであり、その炭素数は3〜10であることが好ましい。
【0017】
一般式(2)における(g)の炭化水素環は、芳香環であっても非芳香環であってもよく、単環構造であっても多環構造であってもよい。また、炭化水素環の炭素数は3〜10であることが好ましい。
上記(g)の複素環は、芳香環であっても非芳香環であってもよく、単環構造であっても多環構造であってもよい。また、複素環の炭素数は3〜10であることが好ましい。
【0018】
また、上記一般式(2)で表される具体的な環状オレフィン化合物としては、例えば、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン[2−ノルボルネン(NB)]、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、
テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(DNM)、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのなかでも、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(DNM)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)が、得られる樹脂(ポリマー)の耐熱性の点で好ましい。
【0019】
尚、上記一般式(2)で表される具体的な環状オレフィン化合物のうち、上述の−COOR基で表される極性基(エステル基)を有するものとしては、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが挙げられる。
【0020】
また、上記環状オレフィンとしては、上述の一般式(2)で表される化合物以外にも、下記一般式(3)で表される化合物等を挙げることができる。
【0021】
【化3】

〔一般式(3)において、nは0又は正の整数を表す。A及びAは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、下記(e)の極性基、若しくは、ハロゲン原子及び/又は下記(e)の極性基により置換された基からなる群より選ばれた原子若しくは基を示す。尚、A及びAは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
(e):エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基。〕
【0022】
一般式(3)におけるnは0以上の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。
【0023】
一般式(3)のA及びAにおける脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルプロピル基、n−ヘキシル基及びイソヘキシル基等が挙げられる。
一般式(3)のA及びAにおける脂環族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(3)のA及びAにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(3)で表される具体的な環状オレフィン化合物としては、例えば、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン(DCP)、
トリシクロペンタジエン、
ペンタシクロ[8.3.0.12,9.14,7.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、
ヘプタシクロ[12.3.0.12,13.14,11.16,9.03,12.05,10]イコサン−7,16−ジエン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチルオキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メチル−9−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8,9−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8,9−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのなかでも、工業的に入手しやすく安価なトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン(DCP)が好適に用いられる。
【0025】
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂(I)及び樹脂(II)が、環状オレフィン化合物の開環重合により得られたものである場合、一般式(2)で表される環状オレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種、及び/又は、一般式(3)で表される環状オレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種、を単量体として用いるのが好ましい。尚、樹脂(I)で用いられる単量体の種類や組合せは、樹脂(II)で用いられる単量体の種類や組合せと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、環状オレフィン化合物を開環重合させて得られる樹脂の製造方法については後述する。
【0026】
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂(I)及び樹脂(II)が、環状オレフィン化合物に由来する場合、その樹脂の態様は、以下に例示される。
(1)環状オレフィン化合物により得られた開環(共)重合体(p1)
(2)上記開環(共)重合体(p1)の水素添加物(p2)、即ち、開環(共)重合体が有する脂肪族不飽和結合(エチレン系二重結合)の一部又は全部に、水素添加して得られる水添樹脂(p2)
上記(2)の態様において、水添樹脂(p2)とする場合の水添率は、通常、脂肪族不飽和結合の10%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上である。樹脂が水添樹脂(p2)である場合は、ナノインプリント成形用樹脂組成物塗工後の溶媒を除去する工程において、加熱乾燥による樹脂成分の劣化を抑制することができる。また、上記(p1)と上記(p2)とを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂(I)及び樹脂(II)のうちの少なくとも一方は下記一般式(1)で表される構成単位を有することが好ましい。特に、樹脂(I)及び樹脂(II)が、それぞれ、下記一般式(1)で表される構成単位を有することが好ましい。この場合、樹脂(I)及び樹脂(II)が有する下記一般式(1)で表される構成単位は同一であってもよいし、異なっていてもよい。尚、下記一般式(1)で表される構成単位は、上記一般式(2)で表される環状オレフィン化合物由来の構成単位である。
また、上記樹脂(I)及び樹脂(II)のうちの少なくとも一方が、下記一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂である場合、この樹脂は上記一般式(2)で表される化合物を含む環状オレフィンを開環重合した後に、更に水素添加反応させて得られた水添樹脂であることが好ましい。
【0028】
【化4】

〔一般式(1)において、mは0又は1〜3の整数を表す。nは0又は正の整数を表す。A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)のうちの1種を表すか、或いは、下記(f)又は(g)を表す。
(a):水素原子
(b):ハロゲン原子
(c):酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を含む置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(d):置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(e):エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基
(f):AとA、又は、AとAとでアルキリデン基を表し、残りのA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。
(g):AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された炭化水素環又は複素環を表し、前記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。〕
【0029】
一般式(1)におけるm及びnについては、上述の一般式(2)におけるm及びnの各説明をそのまま適用することができる。更に、一般式(1)におけるA〜Aの(f)及び(g)の説明については、上述の一般式(2)における(f)及び(g)の各説明をそのまま適用することができる。
【0030】
一般式(1)のA〜Aの(e)極性基としては、エステル基であることがより好ましい。
また、一般式(1)におけるA〜Aのうちの少なくとも1つは極性基であることが好ましく、特にエステル基であることが好ましい。
エステル基としては、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表される基であることが好ましい。このRについては、上述の説明をそのまま適用することができる。
上記極性基が、エステル基である場合、樹脂成分の溶剤への十分な溶解性が得られるため好ましい。更には、ナノインプリント成形用樹脂組成物の塗工性が向上するため好ましい。
【0031】
上記樹脂(I)が、一般式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(1)」ともいう。)を有する樹脂である場合、樹脂(I)に含まれる構成単位全体を100モル%とした場合に、この構成単位(1)の含有割合は、60〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは62〜100モル%、更に好ましくは65〜100モル%である。
また、樹脂(I)が、構成単位(1)として、上記一般式(1)におけるA〜Aのいずれかが上述の−COOR基で表される極性基(エステル基)を有する単位(以下「構成単位(1’)」ともいう)を有する場合、構成単位(1)全体を100モル%とした場合に、構成単位(1’)の含有割合は、30〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜100モル%、更に好ましくは50〜100モル%である。
【0032】
上記樹脂(II)が、構成単位(1)を有する樹脂である場合、樹脂(II)に含まれる構成単位全体を100モル%とした場合に、この構成単位(1)の含有割合は、30〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜100モル%、更に好ましくは50〜100モル%である。
また、樹脂(II)が、構成単位(1)として、上記構成単位(1’)を有する場合、構成単位(1)全体を100モル%とした場合に、構成単位(1’)の含有割合は、30〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜100モル%、更に好ましくは50〜100モル%である。
【0033】
次に、本発明における樹脂(I)や樹脂(II)が、環状オレフィンとして、上記一般式(2)及び/又は(3)に示される環状オレフィン化合物を使用した、開環(共)重合体からなる樹脂である場合の製造方法について説明する。
【0034】
開環重合においては、通常、重合触媒が用いられる。その重合触媒としては、公知のものが適用可能であり、例えば、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の白金族化合物を用いることができる。また、(a)タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びレニウム(Re)等の化合物から選ばれる少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素、IIA族元素、IIB族元素、IIIA族元素、IVA族元素又はIVB族元素を含む化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれる少なくとも1種の組合せからなる化合物も、好ましく用いられる。このような(a)成分と(b)成分とからなる触媒は、更に、活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0035】
上記(a)成分におけるW、Mo及びReの化合物としては、具体的には、WCl、MoCl、ReOCl等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。また、上記(b)成分の具体例としては、n−CLi、(CAl、(CAlCl、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0036】
上記添加剤(c)成分としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類等を好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に示された化合物を使用することができる。
【0037】
上記重合触媒の使用量は、単量体全量1モルに対して、好ましくは0.00001〜0.001モルであり、より好ましくは0.0005〜0.005モルである。触媒の使用量が単量体全量1モルに対して、0.00001モルより少ないと、重合反応が進行しない場合があり、0.001モルより多いと触媒の除去が困難となる場合がある。
【0038】
上記重合反応においては、反応溶媒を用いることができる。この反応溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0039】
上記重合反応において、反応溶媒を用いる場合、その使用量としては、全単量体と溶媒との質量比で、好ましくは、全単量体:溶媒=(5:1)〜(1:15)であり、より好ましくは(2:1)〜(1:8)であり、更に好ましくは(1:1)〜(1:6)の範囲である。
【0040】
上記重合反応においては、分子量調節剤を使用することもできる。この分子量調節剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類等が挙げられる。
【0041】
上述のように、上記樹脂(I)や樹脂(II)は、水添樹脂とすることができるので、その製法、即ち、上記重合反応により得られた開環(共)重合体を、更に水素添加反応(水添処理)する方法を説明する。
【0042】
上記水素添加反応においては、水素添加触媒を用いることができる。この水素添加触媒としては、通常のオレフィン性不飽和結合を水素添加する際に用いられる公知の化合物を使用することができる。例えば、チタン、コバルト、ニッケル等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ等の有機金属化合物とを組み合わせたいわゆるチグラータイプの均一系触媒;パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム等の貴金属を、カーボン、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ケイソウ土等の担体に担持した担持型貴金属系触媒;ロジウム、レニウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒等が挙げられる。これらのうち、水素添加の反応性に優れることから、金属元素がルテニウムである金属ヒドリド錯体化合物が好ましい。
【0043】
上記の金属元素がルテニウムである金属ヒドリド錯体化合物としては、具体的には、
RuH(OCOPh)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−CH)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−C)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−C11)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−C17)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−OCH)(CO)(PPh
RuH(OCOPh−OC)(CO)(PPh
RuH(OCOPh)(CO)(P(cyclohexyl)
RuH(OCOPh−NH)(CO)(PPh
RuHF(CO)(PPh
RuHCl(CO)(PPh
RuHBr(CO)(PPh
RuHI(CO)(PPh等が挙げられる。尚、これらの式中における「Ph」はフェニル基(−C)、又はフェニレン基(−C−)を示す。
これらの化合物のうち、特に好ましいのは、RuH(OCOPh−C11)(CO)(PPh、及び、RuHCl(CO)[P(Cである。
【0044】
上記水素添加触媒の使用量は、原料として用いられる単量体全量を100質量%(1000000質量ppm)としたときに、好ましくは5〜200質量ppmであり、より好ましくは10〜100質量ppmである。
【0045】
水素添加反応に用いられる溶媒としては、上記重合反応に用いられる溶媒を用いることができ、しかもそれ自体が水素添加されないものであれば特に限定されない。具体的には、上記重合反応溶媒と同様のものを挙げることができる。従って、単量体の重合で得られた環状オレフィン系開環(共)重合体溶液を、そのまま水素添加反応に供することができる。水素添加反応に供される溶液中の環状オレフィン系開環(共)重合体と溶媒との質量比は、好ましくは、重合体:溶媒=(5:1)〜(1:20)であり、より好ましくは(2:1)〜(1:15)であり、更に好ましくは(1:1)〜(1:10)である。溶媒の量が上記範囲より多いと溶媒の回収にコストが高くなる。また、溶媒の量が上記範囲より少ないと溶液の粘度が高くなり移液に時間がかかるため生産効率が悪くなる。
【0046】
水素添加反応においては、一般に、開環(共)重合体の水素添加では、開環(共)重合体を適当な溶媒に溶解した溶液に、水素添加触媒と水素ガスとを加えて水素添加反応を行うことができる。この場合、開環(共)重合体を含む溶液の温度を水素の接触開始段階、及び、その後の反応段階の反応過程に応じて制御することができる。
【0047】
溶液に含まれる開環(共)重合体と水素ガスとの接触開始時においては、開環(共)重合体を含む溶液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜40℃、更に好ましくは15℃〜35℃に制御する。開環(共)重合体を含む溶液の温度を上記範囲内にすると、開環(共)重合体の水素化物の色相がより透明になる。その理由としては、開環(共)重合体と水素の接触開始前に、開環(共)重合体を含む溶液の温度を上昇させないことにより、開環(共)重合体中が有する二重結合に対する水素添加触媒を介した酸化が抑制されるためと考えられる。
【0048】
水素接触開始後、開環(共)重合体を含む溶液を必要に応じて加熱して温度調整し、溶液の温度を、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120〜200℃、更に好ましくは140〜180℃に昇温し、その温度に保ち水素添加反応を行う。水素接触開始後の開環(共)重合体を含む溶液の温度をこの範囲にすると、開環(共)重合体が有する脂肪族不飽和結合への水素化率を高めることができる。
【0049】
ここで、水素接触開始時とは、開環(共)重合体を含む溶液が入れられている反応器に水素ガスの導入を開始した時期をいい、水素接触開始後とは、それ以降から水素供給終了時までの時間をいう。
【0050】
水素ガスの供給量としては、好ましくは0.0001〜0.01MPa/sであり、より好ましくは0.001〜0.005MPa/sである。上記範囲内で水素ガスを供給すると、反応熱による系内温度上昇速度を抑制することができる。
また、水素添加反応における反応系の圧力は、好ましくは50〜220kg/cmであり、より好ましくは70〜150kg/cmであり、更に好ましくは90〜120kg/cmである。反応系の圧力が低すぎると水素添加反応に長時間を要し生産性に問題が生じる場合があり、一方、圧力を高くすると大きい反応速度が得られるが、装置として高価な耐圧装置が必要になるので経済効率が低くなる場合がある。
また、反応系内温度を目的の反応温度に保ち、水素ガスの圧力が目的の圧力に達してから反応が終了するまでの時間は、通常1〜9時間であり、好ましくは2〜5時間である。上記範囲の時間であれば、十分な水素化を行うことが可能であるとともに、時間が長すぎることにより生じる副反応も抑制できる。
【0051】
上記のようにして得られた開環(共)重合体の水添樹脂(水素化物)の水添率は、通常、脂肪族不飽和結合の80%以上とすることができ、好ましくは95%以上、より好ましくは100%とすることができる。上記水添率が上記範囲内であると、ナノインプリント成形用樹脂組成物を塗工後の塗膜乾燥(溶媒除去)において、加熱乾燥による樹脂の劣化を抑制することができる。
【0052】
尚、本発明でいう水素添加(水素化)とは、開環(共)重合体分子中の脂肪族不飽和結合(オレフィン性不飽和結合)に対する反応であって、それ以外の不飽和結合は水素化されなくてもよい。
例えば、重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は必ずしも水素化される必要はない。芳香族基が分子内に存在することにより、得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の耐熱性や屈折率などの光学特性に対して有利な場合もあるので、所望の特性によっては、芳香族基が実質的に水素化されない条件を選択することが好ましい場合もある。
【0053】
また、樹脂(I)や樹脂(II)を環状オレフィンの付加重合(付加共重合を含む)により得る場合には、公知の方法を適用することができ特に限定されない。具体的には、例えば、上述の環状オレフィンと、エチレンや無水マレイン酸等の共重合可能な1種以上の不飽和化合物と、をラジカル共重合する方法等が挙げられる。
【0054】
また、上記樹脂(I)及び樹脂(II)としては、市販品を用いることもできる。
樹脂(I)の具体的な市販品としては、例えば、「ARTON G7810」(JSR株式会社製)等が挙げられる。
樹脂(II)の具体的な市販品としては、例えば、「ARTON D4540」(JSR株式会社製)、「ZEONOR1600R」(日本ゼオン株式会社製)等が挙げられる。
尚、これらの市販品は、1種単独で用いてもよいいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、本発明における上記樹脂(I)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、60000〜150000であり、好ましくは65000〜140000、更に好ましくは70000〜130000である。この樹脂(I)のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)との比(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4である。
【0056】
上記樹脂(II)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、4000〜50000であり、好ましくは5000〜50000、更に好ましくは7000〜50000である。この樹脂(II)のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4である。
【0057】
また、上記樹脂(I)及び樹脂(II)のガラス転移温度は、それぞれ、100〜200℃であることが好ましく、より好ましくは110〜190℃、更に好ましくは120〜180℃である。このガラス転移温度が100℃より低い場合、本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物を用いて、凹凸パターンを備える硬化膜を形成させる場合に、樹脂の強度が不足してパターンの倒壊等が現れることがある。一方、200℃を超える場合、ナノインプリント成形用樹脂組成物を用いて得られる塗膜に、金型の凹凸パターンを転写する際に、金型の凹部内に樹脂が充填されるための十分な流動性が得られず転写が困難となることがある。
尚、このガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)及び示差熱分析計(DTA)等で測定することができる。
【0058】
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物には、樹脂成分として、上記樹脂(I)及び樹脂(II)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂(III)を含有していてもよい。
上記他の樹脂(III)としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、パラヒドロキシスチレン等の芳香族ビニルモノマーの重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸2エチルヘキシル共重合体等のアクリル系重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレンーエチレンブチレンースチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0059】
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物に含まれる樹脂成分全体を100質量部とした場合、上記樹脂(I)及び樹脂(II)の含有割合の合計は、80〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは85〜100質量部、更に好ましくは90〜100質量部である。
また、樹脂(I)及び樹脂(II)の合計を100質量部とした場合に、樹脂(I)の含有割合は10〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部である。
【0060】
(1−2)溶媒
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物は、上記樹脂成分以外に、樹脂成分を溶解可能な溶媒を更に含有していてもよい。
上記溶媒は、1atmでの沸点が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは95℃以上である(通常250℃以下)。1atmでの沸点が上記範囲内の溶媒を用いることにより、作業性に優れるナノインプリント成形用樹脂組成物とすることができる。
【0061】
上記溶媒としては、芳香族系化合物、脂肪族炭化水素系化合物、脂環族炭化水素系化合物、含酸素炭化水素系化合物、含窒素炭化水素系化合物及びハロゲン化炭化水素系化合物等が挙げられる。
上記芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン(80℃)、トルエン(111℃)、プロピルベンゼン(159℃)、キシレン(オルト;144℃、メタ;139℃、パラ;138℃)、シメン(177℃)、エチルベンゼン(136℃)、メシチレン(165℃)及びクメン(152℃)等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、オクタン(125℃)、ノナン(151℃)、デカン(174℃)及びドデカン(215℃)等が挙げられる。
上記脂環族炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン(81℃)及びメチルシクロヘキサン(101℃)、デカヒドロナフタレン(cis体;193℃、trans体;185℃)等が挙げられる。
上記含酸素炭化水素系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(80℃)、ジエチルケトン(101℃)、メチルイソブチルケトン(118℃)、シクロヘキサノン(155℃)等のケトン類;2−プロパノール(83℃)、1−ブタノール(117℃)、イソブタノール(108℃)、シクロペンタノール(140℃)、1−ヘキサノール(157℃)、シクロヘキサノール(161℃)等のアルコール類等が挙げられる。
上記含窒素炭化水素系溶媒としては、例えば、N−Nジメチルホルムアミド(153℃)、N−メチルピロリドン(202℃)等が挙げられる。
上記ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、1,2−ジクロロエタン(84℃)及びクロロベンゼン(131℃)、ジクロロベンゼン(オルト;180℃、メタ;174℃、パラ;174℃)等が挙げられる。
尚、これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、カッコ(括弧)内の温度は1atmでの沸点を示す。
【0062】
また、ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分の固形分濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜9.5質量%、更に好ましくは0.5〜9質量%である。樹脂成分の固形分濃度が上記範囲である場合、樹脂成分が均一でむらのない状態でパターンを形成することができる。
【0063】
(1−3)他の添加剤
本発明のナノインプリント成形用樹脂組成物は、上記樹脂成分以外に、その他の添加剤を更に含有していてもよい。
上記その他の添加剤としては、例えば、離型剤、無機フィラー等が挙げられる。
上記離型剤としては、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、フッ素含有樹脂等のフッ素含有化合物からなるフッ素系離型剤等が挙げられる。離型剤を含有する場合、その含有量は、組成物全体を100質量%とした場合に、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
また、上記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機フィラーを含有する場合、その含有量は、組成物全体を100質量%とした場合に、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。
【0064】
[2]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、上述のナノインプリント成形用樹脂組成物を基体上に塗工して塗膜を形成した後、塗膜を乾燥して基体上に被膜を形成する被膜形成工程と、
被膜を、ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、被膜を樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却し、その後、金型を開放して、金型の凹凸パターンを反映させることによりパターンを形成するパターン形成工程と、を備える。
【0065】
上記被膜形成工程では、上述のナノインプリント成形用樹脂組成物が基体上に塗工されて塗膜が形成される。その後、塗膜を乾燥することにより基体上に被膜が形成される。
上記基体は特に限定されるものではなく、例えば、シリコンウエハー、サファイア基板、ガラス基板、金属基板、PET、PEN、ポリイミド等の樹脂基材等を使用することができる。また、これら基材は用途に応じてUV−オゾン処理、離型処理、金属蒸着等により表面を改質して使用することができる。
【0066】
上記被膜形成工程におけるナノインプリント成形用樹脂組成物の塗工方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、ロールコーティング及びバーコーティング等の方法が挙げられる。
【0067】
上記被膜形成工程における塗膜の乾燥方法は特に限定されず、公知の乾燥方法を使用することができる。例えば、真空乾燥(減圧乾燥)、熱風乾燥及びホットプレート乾燥等の加熱乾燥が挙げられる。これらの方法は組み合わせて行ってもよい。
【0068】
上記被膜形成工程で形成される被膜の膜厚は、使用目的等に応じて適宜選択できる。この被膜の膜厚は、例えば、0.02〜10μm(特に0.05〜8μm)とすることができる。
【0069】
上記パターン形成工程では、上記被膜形成工程で得られた被膜が、ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分のガラス転移温度以上の温度に加熱される。次いで、金型が押し付けられた後、被膜が樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却される。その後、金型が開放され、金型の凹凸パターンが反映されたパターンが形成される。
【0070】
上記パターン形成工程は、例えば、図1に示すように、凹凸パターン12を有する金型10を用いて、本発明のナノインプリント成型用樹脂組成物を用いて得られた被膜にパターン34を形成する工程であり、公知の熱ナノインプリント法等を適用することができる。
具体的には、上記パターン形成工程は、例えば、図1に示されるように、
(a)基体20の表面に形成された被膜30を、ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分のガラス転移温度以上の温度条件となるように加熱し、そして、その被膜30に、凹凸パターン12を有する金型10を押圧(圧接)する押圧工程(PR1)と、
(b)上記金型10を上記被膜30に押圧した状態で、被膜30を上記樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却して、被膜30を硬化させて、硬化膜32を形成する硬化膜形成工程(PR2)と、
(c)上記金型10と、この金型10の凹凸パターン12を反映させた形状である凹凸パターン34を有する硬化膜32と、を分離し、この硬化膜32から金型10を開放する金型開放工程(PR3)と、を備えるものとすることができる。
【0071】
上記押圧工程(PR1)では、被膜30を上記樹脂成分のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、被膜30への金型10の押圧が行われる。この場合、被膜30への金型10の押圧は、基体20表面の被膜30を形成する上記樹脂成分のガラス転移温度以上の温度条件で行われることが好ましい。上記樹脂成分のガラス転移温度以上の温度条件とは、金型10及び基体20上の被膜30が、上記樹脂成分のガラス転移温度以上の温度であることをいう。上記温度は、被膜30を構成する上記樹脂成分のガラス転移温度以上であればよく、上限としては、通常、ガラス転移温度に加えて100℃以下である。
【0072】
また、上記被膜30を加熱する手段としては、例えば、ホットプレート、オーブン及びファーネス等が挙げられる。これらのうち、温度管理が容易なことから、ホットプレートによる加熱が好ましい。ホットプレートによる加熱を行う場合、被膜が形成されていない基体の表面をホットプレートと接触させ、ホットプレートを加熱することにより、基体を加熱し、基体における熱伝導により、基体表面の被膜をガラス転移温度以上の温度とすることができる。
尚、金型10及び基体20上の被膜30は同時に加熱してもよいし、別々に加熱してもよい。また、金型10の加熱はヒーター等により行うことができる。
【0073】
上記金型10は、モールド又はスタンパとも称され、被膜30に凹凸パターン34を転写するための凹凸パターン12を備えている。そして、この金型10を被膜30に押圧することにより、被膜30に金型10の凹凸パターン12を反映させた相補的形状の凹凸パターン34を、被膜30に形成することができる。
上記金型10の材質は特に限定されず、通常の熱ナノインプリント等に用いられるものを使用できる。具体的には、金属シリコン、ニッケル及び石英等が挙げられる。また、使用される温度以上の耐熱性を有していれば樹脂製の金型を使用してもよい。
【0074】
金型10の凹凸パターン12の形状は、硬化膜32の用途や目的により適宜選択される。凹凸パターン12(凹凸)の形状としては、例えば、ラインアンドスペース形状、ホール形状、ドット形状及びピラー形状等が挙げられる。
また、凹凸パターン12による凹部と凸部との高さの差は、硬化膜32の用途や目的及び被膜30の膜厚等により適宜選択されるが、通常10μm以下であり、5μm以下のものも使用できる。また、凹凸パターン12のアスペクト比としては、通常1以上であり、2以上であっても3以上であってもよい。
【0075】
また、金型10を被膜30に押圧する場合に、被膜30と接する凹凸パターン12の表面部分には、離型処理を施すことができる。この離型処理としては、上記金型の被膜30と接する凹凸パターン12の表面部分に液状の離型剤を付着させる方法が挙げられる。この離型剤を付着させる方法は特に限定されず、スピンコーティング、塗布(スプレー塗布等)、ディッピング、ロールコーティング及びバーコーティング等の方法を用いることができる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用することができる。また、この離型剤付着工程には、金型に付着された離型剤を定着させるために金型及び/又は離型剤に対して加熱や放射線照射等を施す定着処理を含むことができる。
【0076】
上記離型剤としては、具体的には、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤及びカルナバ系離型剤等が挙げられる。これらの離型剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記押圧工程(PR1)において、金型10の押圧の際の圧力は、金型10の凹凸パターン12の形状を転写できれば特に限定されないが、通常、0.1MPa以上(100MPa以下)であり、好ましくは1〜10MPaであり、より好ましくは2〜8MPaである。
【0078】
上記硬化膜形成工程(PR2)では、上記金型10を上記被膜30に押圧した状態で、被膜30が上記樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却されることにより、被膜30が硬化し、硬化膜32が形成される。
このように、金型10を被膜30に押圧した状態で冷却することにより、効率的に、金型10の凹凸パターン12を反映させた相補的形状の凹凸パターン34を硬化膜32に形成することができる。
被膜の冷却方法は特に限定されず、被膜30を硬化させた硬化膜32を形成できればよい。具体的には、冷却装置を用いた冷却及び自然放熱による冷却等が挙げられる。
【0079】
上記金型開放工程(PR3)では、金型10と、金型10の凹凸パターン12を反映させた形状である凹凸パターン34を有する硬化膜32とが分離され、硬化膜32から金型10が開放される。そして、金型10の凹凸パターン12を反映させた凹凸パターン34が形成された硬化膜32付き基体20が得られる。
上記開放(分離)に際する各種条件等は特に限定されない。例えば、基体20を固定して金型10を基体20から遠ざかるように移動させて分離し、開放してもよいし、金型10を固定して基体20を金型10から遠ざかるように移動させて分離し、開放してもよい。更には、これらの両方を逆方向へ引っ張って開放してもよい。
【0080】
[3]レプリカモールド
本発明のレプリカモールドは、上述のパターン形成方法により形成されたパターンを備えることを特徴とする。本発明のレプリカモールドにおいては、上述のナノインプリント成形用樹脂組成物を用いてパターンが形成されているため、十分な耐熱性と強度を備えている。
このレプリカモールドの構成は、上記パターンを備えていれば特に限定されず、例えば、上述の凹凸パターン34が形成された硬化膜32付き基体20(図1参照)をそのまま或いは所定の寸法に調整してレプリカモールドとすることができる。更には、基体20を除去して凹凸パターン34が形成された硬化膜32自体をレプリカモールドとすることもできる。また、凹凸パターン34が形成された硬化膜32を、別の基体に接合した後、レプリカモールドとすることもできる。
【0081】
本発明のレプリカモールドにおけるパターン形成部(例えば、図1における凹凸パターン34が形成された硬化膜32)のガラス転移温度は、120〜200℃であることが好ましく、より好ましくは125〜190℃、更に好ましくは130〜180℃である。
尚、このガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)及び示差熱分析計(DTA)等で測定することができる。
【0082】
また、上記パターン形成部の線膨張係数は、8.0×10−5以下であることが好ましく、より好ましくは7.5×10−5以下、更に好ましくは7.0×10−5以下である。
尚、この線膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の熱機械分析装置(TMA)「EXTAR6000」(型式名)で測定することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0084】
1.物性の測定方法及び評価方法
各種物性の測定方法及び各種評価項目の評価方法を以下に示す。
【0085】
1−1.ガラス転移温度(Tg)の測定
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計「DSC6200」(型式名)を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で、樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0086】
1−2.重量平均分子量(Mw)の測定
東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC―8020」(型式名)を用いて、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0087】
1−3.耐熱性の評価
ナノインプリント成形用樹脂組成物(樹脂濃度:10%)をPET製の基体上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工し、常温で24時間乾燥させた。次いで、基体から剥離し、両面乾燥ができるよう金枠に挟み込み、100℃で3時間乾燥させた後、更に160℃で12時間真空乾燥を実施し、フィルムを得た。
得られたフィルムを1cm×5cmの大きさに打ち抜き、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル株式会社製、型式「EXSTER6000」)により、5℃/minの昇温速度にて50℃〜180℃の温度範囲で粘弾性測定を行った。この際、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’の比tanδ=E’’/E’が極大となる温度を耐熱温度とした。
【0088】
1−4.成形性の評価
ナノインプリント成形用樹脂組成物(樹脂濃度:2.5%)を直径4インチのシリコンウエハー上に、乾燥後の被膜の膜厚が150nmとなるようにスピンコートにより塗工し、80℃で3分間乾燥した後、160℃で1時間真空乾燥を行い、ナノインプリント評価用基板を作製した。次いで、熱ナノインプリント装置(SCIVAX社製、型名「X−300」)の上熱版に、径150nm、高さ150nm(アスペクト比=1)のピラー形状が形成された直径4インチの大きさの金属シリコン製のモールドをセットした。そこに、上記作製した評価用基板を載せ、圧力3MPa、温度150℃の条件にて3分間加圧を行った。加圧状態を維持したまま60℃まで冷却した後、金型を開放し離型を行った。
そして、転写されたピラー形状のパターンの高さを電子顕微鏡で測定した。尚、この高さは、モールドに形成されたピラー形状の高さ(150nm)に値が近いほど、成形性が良好である。
【0089】
1−5.強度の評価
(フィルムの引張試験)
ナノインプリント成形用樹脂組成物(樹脂濃度:10%)をPET製の基体上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工し、常温で24時間乾燥させた。次いで、基体から剥離し、両面乾燥ができるよう金枠に挟み込み、100℃で3時間乾燥させた後、更に160℃で12時間真空乾燥を実施し、フィルムを得た。
そして、得られたフィルムをダンベル状(JIS K7113−2号)に打ち抜き、試験フィルムを形成した後、下記の条件で引張試験を行い、「引張伸び」及び「引張強度」を10回測定し、各平均値により評価した。尚、引張伸びは、試験フィルムが破断した際の伸び率を示す。また、引張強度は、引張試験中に加わった最大引張応力を示す。各値は数値が高いほど良好である。
<試験条件>
装置;引張試験機(株式会社島津製作所社製、型名「EZ−GRAPH」)
(引張速度:1mm/s、チャック間距離:5cm)
【0090】
2.ナノインプリント成形用樹脂組成物の調製
2−1.樹脂の合成
(合成例1)
環状オレフィンとして、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)80部、ジシクロペンタジエン(DCP)15部、2−ノルボルネン(NB)5部、溶媒としてトルエン150部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン0.9部を窒素置換した反応容器に投入し、反応容器内を80℃に加熱した。更に、イソブチルアルコール0.18部、ジイソプロピルエーテル0.2部、トリイソブチルアルミニウム0.48部、六塩化タングステン(WCl)のトルエン溶液(0.025mol/l)5部加え、80℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
得られた開環(共)重合体の反応溶液を水添反応用容器に移液し、トルエン110部を加えた後、撹拌して均一溶液とした。次いで、溶液温度を30℃まで下げ、水素添加反応触媒であるRuHCl(CO)[P(C(0.04部)を溶液に添加し、水素ガスを7MPaまで導入した。水素ガスを7MPaまで導入後、160℃〜165℃まで昇温し、その温度に保ち、最終的に導入水素ガス圧を9〜10MPaとして3時間反応させた。反応終了後、80℃まで冷却した後、トルエン100部を加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12部、メタノール144部を加え、60℃で3時間攪拌して脱触媒操作を実施した。得られた溶液(水添樹脂を含む生成物)を多量のメタノールに添加して、水添樹脂を沈殿させることにより、水添樹脂を回収した。この水添樹脂を、真空乾燥して樹脂(I−1)を得た。そして、得られた樹脂(I−1)の物性を表1に示した。
【0091】
(合成例2)
1−ヘキセン量を1.2部に変更した以外は、合成例1と同様にして樹脂(I−2)を得た。そして、得られた樹脂(I−2)の物性を表1に示した。
【0092】
(合成例3)
1−ヘキセン量を2.0部に変更した以外は、合成例1と同様にして樹脂(I−3)を得た。そして、得られた樹脂(I−3)の物性を表1に示した。
【0093】
(合成例4)
1−ヘキセン量を0.6部に変更した以外は、合成例1と同様にして樹脂(R−1)を得た。そして、得られた樹脂(R−1)の物性を表1に示した。
【0094】
(合成例5)
1−ヘキセン量を2.8部に変更した以外は、合成例1と同様にして樹脂(II−1)を得た。そして、得られた樹脂(II−1)の物性を表1に示した。
【0095】
(合成例6)
1−ヘキセン量を4.0部に変更した以外は、合成例1と同様にして樹脂(II−2)を得た。そして、得られた樹脂(II−2)の物性を表1に示した。
【0096】
尚、合成例1〜6において、使用量により求められる各単量体に由来する含有割合[DNMに由来する構成単位:DCPに由来する構成単位:NBに由来する構成単位](理論値)は、それぞれ、68:22:10(モル比)である。
【0097】
【表1】

【0098】
2−2.ナノインプリント成形用樹脂組成物の調製
(実施例1)
各樹脂の含有割合(質量換算)が表1の割合となるように、上記合成例1で得られた樹脂(I−1)と、上記合成例5で得られた樹脂(II−1)と、キシレンとを混合し、孔径0.5μmのフィルターにて濾過を行うことにより、樹脂濃度(固形分換算)2.5%のナノインプリント成形用樹脂組成物を調製した。
また、樹脂(I−1)、(II−1)及びキシレンを同様に混合し、孔径5μmのフィルターにて濾過を行うことにより、樹脂濃度(固形分換算)10%のナノインプリント成形用樹脂組成物を調製した。
そして、得られた各ナノインプリント成形用樹脂組成物を用いて、上述のように各評価を行い、それらの結果を表2に示した。
【0099】
(実施例2〜6及び比較例1〜3)
各樹脂の含有割合(質量換算)が表1の割合となるように、上記合成例1〜6で得られた樹脂と、キシレンとを混合し、実施例1と同様にして濾過を行うことにより、樹脂濃度が2.5%と10%の各ナノインプリント成形用樹脂溶液を調製した。
そして、得られた各ナノインプリント成形用樹脂組成物を用いて、上述のように各評価を行い、それらの結果を表2に示した。
【0100】
(比較例4)
重量平均分子量が98900のポリスチレンA(東ソー株式会社製、「TSK標準ポリスチレン 05210」)と、重量平均分子量が37000のポリスチレンB(東ソー株式会社製、「TSK標準ポリスチレン 05209」)と、キシレンとを混合し、実施例1と同様にして濾過を行うことにより、樹脂濃度が2.5%と10%の各ナノインプリント成形用樹脂溶液を調製した。
そして、得られた各ナノインプリント成形用樹脂組成物を用いて、上述のように各評価を行い、それらの結果を表2に示した。尚、この比較例4においては、十分な耐熱性が得られなかったため、成形性及び強度の評価は行わなかった。
【0101】
【表2】

【0102】
2−4.実施例の効果
表2によれば、実施例1〜6のナノインプリント成形用樹脂組成物は、耐熱性に優れると共に十分な強度を備えており、且つ微細なパターンを形成可能であることが確認できた。
【0103】
3.レプリカモールドの製造
(実施例7)
実施例1のナノインプリント成形用樹脂組成物(樹脂濃度:2.5%)を、樹脂製の基体上にスピンコートにより塗工した後、塗膜を80℃で30分間乾燥し、更に180℃で30分間真空乾燥を行って基体上に被膜(150nm)を形成した。
次いで、熱ナノインプリント装置(SCIVAX社製、型名「X−300」)の上熱版に、径150nm、高さ150nm(アスペクト比=1)のピラー形状が形成された直径4インチの大きさの金属シリコン製のモールドをセットした。そこに、上記被膜が形成された基体を載せ、圧力3MPa、温度150℃の条件にて3分間加圧を行った。
次いで、加圧状態を維持したまま60℃まで冷却し、金型を開放して、上記ピラー形状が反映されたパターンを有する硬化膜付き基体(レプリカモールド)を製造した。
尚、この硬化膜付き基体における硬化膜(パターン形成部)の線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)[エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式名「EXTAR6000」]を用いて測定したところ、7×10−5であった。
【0104】
但し、本発明においては、上記の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明におけるナノインプリント成形用樹脂組成物は、微細加工が求められるナノインプリント分野(例えば、レプリカモールド用途やエッチングマスク用途等)において広く利用することができる。特に、耐熱性及び強度が求められるレプリカモールド用途に好適である。
【符号の説明】
【0106】
10;金型(モールド)、20;基体、30;塗膜、32;硬化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が60000〜150000である樹脂(I)と、
主鎖に脂環式骨格を有しており、重量平均分子量が4000〜50000である樹脂(II)と、を含有することを特徴とするナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)は、それぞれ、環状オレフィンの開環重合により得られたものである請求項1に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)は、それぞれ、下記一般式(1)で表される構成単位を有する請求項1又は2に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(1)において、mは0又は1〜3の整数を表す。nは0又は正の整数を表す。A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)のうちの1種を表すか、或いは、下記(f)又は(g)を表す。
(a):水素原子
(b):ハロゲン原子
(c):酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を含む置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(d):置換若しくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(e):エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基
(f):AとA、又は、AとAとでアルキリデン基を表し、残りのA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。
(g):AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された炭化水素環又は複素環を表し、前記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)のうちの1種を表す。〕
【請求項4】
前記極性基が、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表されるエステル基である請求項3に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるA〜Aのうちの少なくとも1つは、−COOR(但し、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)で表されるエステル基である請求項3に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)の合計を100質量部とした場合に、前記樹脂(I)の含有割合が10〜90質量部である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項7】
本ナノインプリント成形用樹脂組成物に含まれる樹脂成分全体を100質量部とした場合に、前記樹脂(I)及び前記樹脂(II)の含有割合の合計が、70〜100質量部である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項8】
1atmでの沸点が80℃以上である溶媒を更に含有する請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載のナノインプリント成形用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれかに記載のナノインプリント成形用樹脂組成物を、基体上に塗工して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して前記基体上に被膜を形成する被膜形成工程と、
前記被膜を、前記ナノインプリント成形用樹脂組成物における樹脂成分のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、前記被膜を前記樹脂成分のガラス転移温度未満に冷却し、その後、前記金型を開放して、前記金型の凹凸パターンを反映させることによりパターンを形成するパターン形成工程と、を備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン形成方法により形成されたパターンを備えることを特徴とするレプリカモールド。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−28768(P2013−28768A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167447(P2011−167447)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】