説明

ナノインプリント用組成物、パターンおよびその形成方法

【課題】モールド剥離性に優れ良好なパターンが形成でき、且つエッチング後に得られたパターンのラインエッジラフネスが小さいナノインプリント用組成物、これを用いたパターン形成方法および該パターン形成方法によって得られるパターンを提供する。
【解決手段】重合性単量体と、光重合開始剤と、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーとを含有し、前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記重合性単量体に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とするナノインプリント用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用組成物に関する。より詳しくは、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、等の作製に用いられる微細パターン形成のためのインプリント用組成物に関するものである。また、該ナノインプリント用組成物を用いたパターン形成方法および、該パターン形成方法によって得られるパターンにも関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法の適用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術としてナノインプリントリソグラフィが提案された。例えば、下記特許文献1および3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0007】
ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは、ヘッドの高性能化とメディアの高性能化とを両輪とし、大容量化と小型化との歴史を歩んできた。HDDは、メディア高性能化という観点においては、面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込み生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。これらメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリントの応用が提案されている。本用途においても数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリ法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、下記特許文献4および5に記載される透明保護膜材料や、あるいは下記特許文献5に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリントリソグラフィは有用である。
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。
【0010】
これらの用途においては良好なパターンが形成されることが前提であるが、パターン形成において光ナノインプリント法に関しては、モールドに組成物が十分に充填される必要があり、光インプリント法に用いられる液状硬化組成物は低粘度であることが要求される。一方、熱インプリント法においては加熱により軟化させた樹脂組成物にモールドを高圧で圧着させて樹脂組成物をモールドに充填する。この際樹脂組成物の熱流動性が影響する。さらに上記に加え、モールドと組成物の摩擦や組成物のモールドとの親和性、モールド圧着圧力など様々な要因がパターン形成性に影響し、良好なパターンを形成するための明確な指針は得られていないのが現状であった。
また、パターン形成においてナノインプリント法に関しては、モールドとナノインプリント用組成物との剥離性が重要である。マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し、ナノインプリント法においてはモールドとナノインプリント用組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドに組成物の残渣が付着すると以降のインプリント時にパターン欠陥となってしまう問題がある。これに対しモールドの表面処理、具体的には、フロロアルキル鎖含有シランカップリング剤をモールド表面に結合させる方法や、モールドのフッ素プラズマ処理、フッ素含有樹脂モールドを用いる方法などにより付着問題を解決するなどの試みがこれまでになされてきた。しかしながら、量産時にはモールドには数万回のインプリント耐久性が求められており、モールド表面処理だけでなく、ナノインプリント用組成物からのモールド剥離性改良が求められている。
さらに、フォトリソグラフィー法によるパターン形成においては、得られたパターンのスペース部は基板が露出するのに対し、ナノインプリント法によるパターン形成法においては原理的に、モールド凸部と基板の間に組成物が残存するため、得られたパターンスペース部に残膜が生じる。この残膜を除去する際にエッチングを行うとパターン側壁の凹凸(ラインエッジラフネス)が悪化するといった問題もあった。
このように、ナノインプリント法を産業に利用する上では、モールドに忠実な良好なパターンが得られること(パターン形成性)、モールドに組成物が付着しないこと(モールド剥離性)、さらにはエッチング耐性、エッチング均一性や膜強度といった用途に応じた特性が要求され、これらを同時に満たすことが重要となる。
【0011】
この中でも、モールド剥離性を向上させることが近年重視されてきており、例えば下記非特許文献3では、光硬化性樹脂とモールドとの剥離性、硬化後の膜収縮性、酸素存在下での光重合阻害による低感度化などの問題を改良するための工夫として1官能アクリルモノマー、2官能アクリルモノマー、シリコーン含有1官能アクリルモノマーおよび光重合開始剤を含む光硬化性組成物が開示されている。また、フッ素系ポリマーやフッ素系界面活性剤を含有するナノインプリント組成物も開示されている(特許文献8および9参照)。しかしながら、実際にどのような構造のフッ素系ポリマーやフッ素系化合物がモールド剥離性の向上に寄与するか、また組成としてどの程度ナノインプリント用組成物にこれらを添加すればよいかについての詳細な検討は行われてきていなかったのが実情である。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2007−186570号公報
【特許文献8】特開2007−001250号公報
【特許文献9】特開2006−310565号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.,:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114 (1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al.,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【非特許文献3】M.Stewart et al.,:MRS Buletin,Vol.30,No.12,947 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らが特許文献8および9に記載されるナノインプリント用組成物について実際に検討したところ、モールド剥離性が十分でないか、あるいは、モールド剥離性が改善するもののラインエッジラフネスが悪化するものであることがわかった。
【0014】
上記の課題に鑑み、本発明の目的は、モールド剥離性に優れ良好なパターンが形成でき、且つエッチング後に得られたパターンのラインエッジラフネスが小さいナノインプリント用組成物、これを用いたパターン形成方法および該パターン形成方法によって得られるパターンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、特定の構造のフッ素系ポリマーを、特定の割合でナノインプリント用組成物に含有させることで、モールド剥離性に優れると同時に、良好なパターンが形成でき、且つエッチング後に得られたパターンのラインエッジラフネスが小さい本発明のナノインプリント用組成物を見出すに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0016】
[1] 重合性単量体と、光重合開始剤と、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーと、を含有し、前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記重合性単量体に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とするナノインプリント用組成物。
[2] 熱可塑性樹脂と、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーと、を含有し、前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記熱可塑性樹脂に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とするナノインプリント用組成物。
[3] 前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位が下記式(1)を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載のナノインプリント用組成物。
繰り返し単位中のトリフロロメチル基の数/繰り返し単位中の全フッ素数 ≧ 0.1
・・・式(1)
[4] 前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、トリフロロメチル基を2個以上有する繰り返し単位を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[5] 前記(メタ)アクリレート系ポリマーのフッ素含有率が60%以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[6]前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、芳香族基、炭素数4以上の非環状アルキル基および炭素数6以上の環状アルキル基のうち少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[7] 前記重合性単量体のうち、全重合性単量体に対し、90〜100質量%がフッ素原子を有さない重合性単量体であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[8] 前記重合性単量体が、芳香族基、炭素数4以上の非環状アルキル基および炭素数6以上の環状アルキル基のうち少なくとも1つを有する(メタ)アクリレート構造を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[9] さらに溶剤を含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[10] 前記溶剤が、エステル基、エーテル基、ケトン基および水酸基のうち少なくとも1つを含有することを特徴とする[9]に記載のナノインプリント用組成物。
[11] さらにノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
[13] [12]に記載のパターン形成方法によって得られたことを特徴とするパターン。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モールド剥離性に優れ、良好なパターンが形成でき、且つエッチング後に得られたパターンのラインエッジラフネスが小さいナノインプリント用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0019】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合反応に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“ナノインプリント”とは、およそ数nmから数μmのサイズのパターン転写をいう。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0020】
[本発明のナノインプリント用組成物]
−本発明の第1の様態−
本発明のナノインプリント用組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)における第1の様態は、重合性単量体(A)、光重合開始剤(B)と、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー(C)を含む光ナノインプリント用組成物であり、前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記重合性単量体に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とする(以下、「ナノインプリント用組成物」を「ナノインプリント用硬化組成物」と称する場合もある)。通常、光ナノインプリント法に用いられる硬化性組成物は、重合性官能基を有する重合性単量体と、光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤と、を含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本発明においてはさらにトリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー(C)(以下、(C)成分とも言う)を特定の割合で含有する。
【0021】
(A)重合性単量体
前記重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体、が好ましい。
【0022】
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
これらの中で特に、芳香族基あるいは脂環炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性の観点で好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0023】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0024】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、m−キシリレンジアクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0025】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0027】
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0028】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0029】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0030】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0032】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0033】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、本発明で用いる他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0035】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0036】
本発明で用いる他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0037】
上述の重合性単量体は、例えば、本発明の溶剤を除く全組成物中に70〜99.9質量%、好ましくは80〜99.5質量%、さらに好ましくは90〜99.5質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0038】
1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明のナノインプリント硬化性組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜80質量%がさらにこのましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0039】
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは、40質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
【0040】
本発明における重合性単量体は、重合性単量体が芳香族基および/または炭素数4以上の非環状アルキル基および/または炭素数6以上の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート構造を含有することが好ましい。重合性単量体が芳香族基および/または炭素数4以上のアルキル基および/または炭素数6以上の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することによりエッチング後のラインエッジラフネスがさらに改良される。
前記芳香族基としては、炭素数6〜14であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。前記炭素数4以上の非環状アルキル基の炭素数としては、4〜20であることが好ましく、6〜18であることがより好ましい。前記炭素数6以上の環状アルキル基の炭素数としては、6〜14であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
前記重合性単量体としては、重合性基を1〜3個有する重合性単量体が好ましく、さらに好ましくは重合性基を1個有する重合性単量体である。
【0041】
また、本発明では、前記重合性単量体においてウレタン基、水酸基またはアミド基を有する重合性単量体の総含有量が全重合性単量体の20質量%以下であることが好ましい。ウレタン基、水酸基またはアミド基を有する重合性単量体を20質量%以下とすることでパターン形成性、エッチング後のラインエッジラフネスが良好となる。
【0042】
本発明における重合性単量体としては、フッ素原子を有さない重合性単量体を全重合性単量体に対し、90〜100質量%含有することが好ましい。フッ素原子を有さない重合性単量体を多くすることで、ドライエッチング耐性が向上し、また、ドライエッチング後のパターンのラインエッジラフネスが改良される。
【0043】
(光重合開始剤(B))
本発明のナノインプリント硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0044】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光ナノインプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明のナノインプリント硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0045】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。光重合開始剤は例えば市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0046】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0047】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、光硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させるなどの問題を生じる。
【0048】
本発明のナノインプリント硬化性組成物は、重合性単量体(A)がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤(B)が光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であるラジカル重合性組成物であることが好ましい。
【0049】
(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー
本発明のナノインプリント硬化性組成物は、(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー((C)成分)を、前記重合性単量体に対し0.01〜20質量%含有する。
前記(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量は、前記(A)重合性単量体に対し、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜8質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%である。
【0050】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーとは少なくとも1種の(メタ)アクリレート繰り返し単位を含有するポリマーであり、(メタ)アクリレート繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。前記(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有量としては全繰り返し単位に対し10〜100mol%が好ましく、より好ましくは30〜100mol%、さらに好ましくは50〜100mol%である。
【0051】
前記(A)重合性単量体が(メタ)アクリレート構造を有する化合物を全重合性単量体に対し、80質量%以上含有し、且つ、(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーが(メタ)アクリレート繰り返し単位を全繰り返し単位に対し、50mol%以上含有していることが、相溶性の観点から特に好ましい。
【0052】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーに含まれる(メタ)アクリレート繰り返し単位としては、アクリレート繰り返し単位、メタクリレート繰り返し単位、α置換アクリレート繰り返し単位(例えば、αフロロアクリレート繰り返し単位、αシアノアクリレート繰り返し単位、αヒドロキシメチルアクリレート繰り返し単位、αトリフロロメチルアクリレート繰り返し単位)が挙げられる。この中でも前記(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー中の全ての繰り返し単位がα位に置換基のないアクリレート繰り返し単位および/またはメタクリレート繰り返し単位で構成されているとポリマー中の組成均一性が向上し、ラインエッジラフネスが良好となる。
【0053】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーはトリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含むが、トリフロロメチル基は、(メタ)アクリレート繰り返し単位中に含まれていてもよいし、他の繰り返し単位中に含まれていてもよいが、(メタ)アクリレート繰り返し単位中に含まれていることが好ましい。
【0054】
前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位は、トリフロロメチル基を有していればどのような形態であっても良く、例えば炭素数2以上のフロロアルキル鎖末端にトリフロロメチル基を有していても良いし、フロロアルキル鎖を介さずにトリフロロメチル基が結合していてもよい。フロロアルキル鎖中に酸素原子などのヘテロ原子を連結基として有していても良い。
前記トリフロロメチル基を有する官能基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0055】
前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位は、より好ましくは、トリフロロメチル基を2個以上有する繰り返し単位であり、トリフロロメチル基を2〜3個有する繰り返し単位であることがより好ましく、トリフロロメチル基を2個有する繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0056】
トリフロロメチル基を有する繰り返し単位において、繰り返し単位中のトリフロロメチル基の比率、特にフロロアルキル鎖が繰り返し単位中に含まれる場合はフロロアルキル鎖中のトリフロロメチル基の比率を多くし、且つ前記(メタ)アクリレート系ポリマー中のフッ素原子の含有量を少なくすることでラインエッジラフネスが向上する。具体的には、前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位中が下記式(1)を満たすことが好ましい。
繰り返し単位中のトリフロロメチル基の数/繰り返し単位中の全フッ素数≧0.1
・・・式(1)
前記式(1)を満たすことによりドライエッチング後のラインエッジラフネスが良好となる。より好ましくは式(1)の左辺の値が0.14以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、最も好ましくは0.3以上である。
【0057】
前記(C)(メタ)アクリレートポリマーは、フッ素含有率が60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、最も好ましくは30%以下である。
フッ素含量を低くすることによりドライエッチング後のラインエッジラフネスが良好となる。なお、本発明において「(メタ)アクリレートポリマーのフッ素含有率」とは、各繰り返し単位において下記式(2)により「トリフロロメチル基を有する繰り返し単位のフッ素含有率」を算出し、「トリフロロメチル基を有する繰り返し単位のフッ素含有率」に各繰り返し単位の共重合重量比をかけた値の総和である。
(トリフロロメチル基を有する繰り返し単位のフッ素含有率)
=[(フッ素原子の原子量)×(フッ素原子の数)/(繰り返し単位の分子量)]×100
・・・(式2)
【0058】
前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位として好ましくは、下記(Ca)〜(Cf)で表される繰り返し単位である。
【0059】
【化1】

【0060】
前記(Ca)〜(Cf)で表される繰り返し単位中、Rfはトリフロロメチル基を少なくとも1つ有する官能基を表し、Rは水素原子または有機置換基を表す。前記Rが有機置換基である場合、前記有機置換基として好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。
【0061】
前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレートの、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位としては下記の繰り返し単位が挙げられる。
【0062】
【化2】

【0063】
前記トリフロロメチル基を有する(メタ)アクリレートの繰り返し単位中、R1は水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはシアノ基を表し、前記R1は好ましくは水素原子またはメチル基である。
前記Ryは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはトリフロロメチル基を表す。
【0064】
前記(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー中、前記(メタ)アクリレート以外の繰り返し単位としては例えば下記の繰り返し単位が挙げられる。
【0065】
【化3】

上記構造式中、RxおよびRyは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0066】
前記(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーは組成物中の他の成分との相溶性を向上させる目的で、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位を含有することが好ましい。
前記他の繰り返し単位としては、側鎖に芳香族基および/または炭素数4以上の非環状アルキル基および/または炭素数6以上の環状アルキル基を有する繰り返し単位が好ましい。ここで、側鎖に芳香族基および/または炭素数4以上のアルキル基および/または炭素数6以上の環状アルキル基を有することにより、本発明のナノインプリント用組成物のエッチング後のラインエッジラフネスがさらに改良される。
前記芳香族基としては、炭素数6〜14であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。前記炭素数4以上の非環状アルキル基の炭素数としては、4〜20であることが好ましく、6〜18であることがより好ましい。前記炭素数6以上の環状アルキル基の炭素数としては、6〜14であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
前記他の繰り返し単位の骨格としては、(メタ)アクリレート繰り返し単位が好ましい。
【0067】
さらに前記(A)重合性単量体が芳香族基および/または炭素数4以上の非環状アルキル基および/または炭素数6以上の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有している時に、前記(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーが前記他の繰り返し単位を有していると、相溶性が非常に良好となり特に好ましい。
【0068】
(その他成分)
本発明のナノインプリント硬化性組成物は、上述の重合性単量体(A)および光重合開始剤(B)、トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマー(C)の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、オリゴマー、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント硬化性組成物としては、ノニオン系界面活性剤と酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、ノニオン系界面活性剤を含有することが基板塗布性、モールド充填性の観点からより好ましく、ノニオン系界面活性剤と酸化防止剤を含有することが特に好ましい。
【0069】
−界面活性剤−
本発明のナノインプリント硬化性組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0070】
前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましく、その中でもフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0071】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0072】
−酸化防止剤−
さらに、本発明のナノインプリント硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0073】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0074】
−重合禁止剤−
さらに、本発明のナノインプリント硬化性組成物には、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0075】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1〜100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは5〜50mPa・s、さらに好ましくは7〜30mPa・sである。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、さらに残膜を低く抑えることができる。
【0076】
−溶剤−
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が70〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、塗布性、組成物溶解性の観点から、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0077】
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが塗布性の観点から、全組成物中、0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には50〜99質量%が好ましく、70〜97質量%がさらに好ましい。
【0078】
−オリゴマー、ポリマー成分−
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0079】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上するまた、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない法が好ましく、(C)成分、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0080】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0081】
−本発明の第2の様態−
本発明のナノインプリント用組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)における第2の様態は、(D)熱可塑性樹脂成分と、(C)繰り返し単位中にトリフロロメチル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを含有し、前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記熱可塑性樹脂に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とする熱ナノインプリント用組成物である(以下、「熱ナノインプリント用組成物」と称する場合もある)。通常、熱ナノインプリント法に用いられる組成物は、樹脂成分、を含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本発明においてはさらに(C)繰り返し単位中にトリフロロメチル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを特定の範囲で含有する。
【0082】
(D)熱可塑性樹脂成分
前記熱可塑性樹脂成分としては、パターンが転写可能な樹脂であればいずれのものも用いることができるが、(メタ)アクリレート繰り返し単位、スチレン繰り返し単位、ポリオレフィン繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。好ましい繰り返し単位としては、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、スチレン、ノルボルネンなどが挙げられ、置換基を有していてもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アシル基などが挙げられる。
樹脂成分としては芳香環を有する繰り返し単位を含有する樹脂がドライエッチング耐性が向上し、さらにエッチング後のラインエッジラフネスを低減することができる。
【0083】
(C)繰り返し単位中にトリフロロメチル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマー
本発明の第2の様態のナノインプリント用組成物は(C)トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーを特定の範囲で含有する。(C)成分としては第1の様態で挙げたものが好ましく用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0084】
(E)溶剤
本発明の第2の様態のナノインプリント用組成物はさらに溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、第1の様態で挙げたものが好ましく用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0085】
本発明の第2の様態のナノインプリント用組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント硬化性組成物としては、ノニオン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。ノニオン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤としては第1の様態で挙げたものが好ましく用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0086】
(ナノインプリント用組成物の製造方法)
本発明のナノインプリント用組成物は、上述の各成分を混合して調製される。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。0.1ミクロン以下の孔径のフィルターを用いることが好ましくより好ましくは0.05ミクロン以下の孔径のフィルターである。フィルターの孔径を小さくすることで、異物が低減でき、転写欠陥が低減できる。光ナノインプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0087】
[パターン形成方法]
次に、本発明のナノインプリント用組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法は、本発明のナノインプリント用組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程とを含むことを特徴とする。
熱ナノインプリント法においては、本発明のナノインプリント用組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層を加熱する工程と、前記パターン形成層にモールドを圧接する工程と、前記モールドを押圧した前記パターン形成層を冷却する工程と、前記モールドを剥離する工程を経て、微細な凹凸パターンを形成することが好ましい。
また、光ナノインプリント法においては、本発明のナノインプリント用組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、モールドを剥離する工程を経て、微細な凹凸パターンを形成することが好ましい。
ここで、本発明の光ナノインプリント用組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させてもよい。
【0088】
以下において、本発明のナノインプリント用組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する。
本発明のナノインプリント用組成物を基材上に塗布する際の設置方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、インクジェット法などを挙げることができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.01μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0089】
本発明のナノインプリント用組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0090】
次いで、本発明のパターン形成方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを圧接する。また、熱ナノインプリント法においてはパターン形成層を加熱する工程を含むことが好ましい。この際、前記パターン形成層を加熱する工程と前記モールドを押圧する工程はどちらの工程が先であってもよく、同時に行ってもよいが、生産性の観点から同時に行うことが好ましい。加熱モールドを押圧することによりパターン形成層を加熱してもよい。加熱温度は用いる樹脂のTg以上の温度であり、好ましくはTgよりも20〜100℃高い温度である。
【0091】
(モールド)
本発明のパターン形成方法で用いることのできるモールドについて説明する。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールド上のパターン形成方法は特に制限されない。
【0092】
(モールド材)
本発明で用いることのできるモールドのモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリント法においては、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光ナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
【0093】
光ナノインプリント法において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0094】
本発明において使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0095】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、本発明のナノインプリント用組成物とモールド表面との剥離性をさらに向上させ、パターン生産性をより高めるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドの離型処理としては、例えば、シリコーン系やフッ素系などのシランカップリング剤による処理を挙げることができる。また、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等の市販の離型剤も前記モールドの離型処理に好適に用いることができる。このように、離型処理を施したモールドを用い、さらに本発明のモールド離型性の高いナノインプリント用組成物を用いることで、より高いモールドのインプリント耐久性を得ることが可能となる。
【0096】
本発明の組成物を用いてナノインプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を0.1〜30MPaで行うのが好ましい。モールド圧力を30MPa以下にすることによりモールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、さらに、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり、好ましい。モールド圧力が0.1〜30MPaである場合は、モールド凸部のナノインプリント用組成物の残膜が少なくなり、モールド転写の均一性が確保できるため好ましい。また、光インプリント法の場合モールド圧力を0.1〜1MPaで行うのが好ましい。この場合もモールド圧力の範囲であれば熱ナノインプリント時と同様の傾向が得られ、好ましい。
【0097】
本発明のパターン形成方法中、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0098】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0099】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜100mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0100】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要に応じて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0101】
[パターン]
本発明のパターン形成方法によって形成される本発明のパターンは、例えばエッチングレジストまたは永久膜として用いることができ、特にエッチングレジストとしても有用である。本発明のナノインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明のナノインプリント用組成物は、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。
【0102】
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0104】
[合成例]
((メタ)アクリレート系ポリマー(C1)の合成)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.5を3つ口フラスコに入れこれを窒素気流下80℃に加熱した。これにヘキサフロロイソプロピルメタクリレート5g、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート5g、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40gに溶解した溶液を4時間かけて滴下した。滴下後80℃で3時間反応させた。反応液をヘキサン500mlに注ぎ、得られた紛体をろ取、ヘキサンで洗浄、乾燥すると、ポリマー(C1)が9.1g得られた。
【0105】
(その他の(メタ)アクリレート系ポリマーの合成)
同様の手法を用いることにより、下記に示す本発明の(メタ)アクリレート系ポリマー(C1)〜(C7)および比較用(メタ)アクリレート系ポリマー(X1)を合成した。下記構造中の比率は、重合仕込み重量比である。
【0106】
【化4】

【0107】
得られた(メタ)アクリレート系ポリマーの分子量、分散度、フッ素含有率を表1に示す。分子量および分散度はGPCを用い、標準ポリスチレン換算により算出した。
【0108】
【表1】

【0109】
<光ナノインプリント法>
下記表2に示す組成の重合性単量体含有組成物に、重合開始剤P1(2質量%)、界面活性剤W1(0.1質量%)、および(メタ)アクリレート系ポリマー成分(1質量%)を加えて光硬化性組成物を得た。得られた光硬化性組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、10%溶液を調製した。
【0110】
(重合性単量体)
R1:ベンジルアクリレート
R2:ネオペンチルグリコールジアクリレート
R3:トリメチロールプロパントリアクリレート
R4;ウレタンアクリレート(ゴーセラックUV−7500B(日本合成化学工業(株)製)
R5:m−キシリレンジアクリレート
R6:1−ナフチルメチルアクリレート
【0111】
(重合開始剤)
P1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0112】
(界面活性剤)
W1:メガファックF780F(大日本インキ化学工業(株)製)
【0113】
<モールド剥離性>
調製した各組成物の10%溶液をシリコン基板上にスピンコートし、これをホットプレート上で50℃で30秒加熱した。得られた塗布膜に線幅100nm、溝深さが100nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がフッ素系処理された石英モールドをのせ、ナノインプリント装置にセットした。装置内を真空とした後窒素パージを行い装置内を窒素置換した。25℃で1MPaの圧力でモールドを基板に圧着させ、これにモールドの裏面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、パターンを得た。パターン形成に使用したモールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し剥離性を評価した。
A:モールドに硬化性組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな硬化性組成物の付着が認められた。
C:モールドの硬化性組成物の付着が明らかに認められた。
【0114】
<ラインエッジラフネス>
得られたパターン付基板を、日立ハイテクノロジー(株)製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/C48/O2=100:4:2のガスでプラズマドライエッチングを行い、残膜を除去した。得られたパターンのラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほどラインエッジラフネスが良好であることを示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表2より、本発明の実施例1〜11のナノインプリント用組成物は各比較例の組成物に比べ、モールド剥離性に優れ、ドライエッチングにより残膜を除去した後のパターンのラインエッジラフネスが小さいことがわかった。
【0117】
<熱ナノインプリント法>
下記表3に示す化合物を混合し、熱ナノインプリント組成物を調製した。
【0118】
P1:ポリベンジルメタクリレート
W1:メガファックF780F(大日本インキ化学工業(株)製)
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0119】
<モールド剥離性>
Siウェハ上に実施例12、比較例3および4の熱ナノインプリント用組成物をそれぞれスピン塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒加熱した塗布膜を各組成物につき10枚作成した。これに線幅100nm、溝深さが100nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がフッ素系処理されたシリコンモールドをのせ、150℃に加熱しながら加圧力10MPaにてモールドを圧接した。冷却後、モールドを離し、パターンを得た。同一のモールドを用い、10枚の塗布膜に対しパターン転写を行い、モールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、モールド剥離性を以下のように評価した。その結果を下記表3に示す。
A:モールドに組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな組成物の付着が認められた。
C:モールドの組成物の付着が明らかに認められた。
【0120】
<ラインエッジラフネス>
得られたパターン付基板を、日立ハイテクノロジー(株)製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/C48/O2=100:4:2のガスでプラズマドライエッチングを行い、残膜を除去した。得られたパターンのラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほどラインエッジラフネスが良好であることを示す。
【0121】
【表3】

【0122】
表3より、実施例12のナノインプリント用組成物は、フッ素系ポリマー成分を含まない比較例3の組成物に対してモールド剥離性とラインエッジラフネスの両方が改善されていたことがわかった。また、比較例4の組成物に対して、ラインエッジラフネスが顕著に改善されていたことがわかった。
以上より、本発明のナノインプリント用組成物は、熱ナノインプリント法においてもモールド剥離性、エッチング後のラインエッジラフネスの全てが良好であったことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体と、
光重合開始剤と、
トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーと、を含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記重合性単量体に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とするナノインプリント用組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂と、
トリフロロメチル基を有する繰り返し単位を含む(メタ)アクリレート系ポリマーと、を含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーを前記熱可塑性樹脂に対し0.01〜20質量%含むことを特徴とするナノインプリント用組成物。
【請求項3】
前記トリフロロメチル基を有する繰り返し単位が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のナノインプリント用組成物。
繰り返し単位中のトリフロロメチル基の数/繰り返し単位中の全フッ素数≧0.1
・・・式(1)
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、トリフロロメチル基を2個以上有する繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーのフッ素含有率が60%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、芳香族基、炭素数4以上の非環状アルキル基および炭素数6以上の環状アルキル基のうち少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項7】
前記重合性単量体のうち、全重合性単量体に対し、90〜100質量%がフッ素原子を有さない重合性単量体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項8】
前記重合性単量体が、芳香族基、炭素数4以上の非環状アルキル基および炭素数6以上の環状アルキル基のうち少なくとも1つを有する(メタ)アクリレート構造を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項9】
さらに溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項10】
前記溶剤が、エステル基、エーテル基、ケトン基および水酸基のうち少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項9に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項11】
さらにノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のナノインプリント用組成物を基材上に設置してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載のパターン形成方法によって得られたことを特徴とするパターン。

【公開番号】特開2010−106062(P2010−106062A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276778(P2008−276778)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】