説明

ナノウェブと基材との積層体の形成方法及びこの積層体を用いたフィルタ

低坪量のナノウェブと基材との積層体の形成方法は、収集スクリムの表面にナノウェブを形成する工程と、次にナノウェブを接着剤が塗布された基材と接触させる工程とを含む。積層体は、ガスろ過媒体として使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ繊維ウェブを基材に積層するための方法、ならびに例えば、工業用のガス流のような流体流から固体を除去するためのフィルタおよびフィルタに有用な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵機またはバッグハウス型のガスろ過は、一般に、工業排出物または「オフガス」から粒状物質をろ過するとともに、微粒子または粉末の形態の細かい生成物を集めるのに用いられる。バッグハウス構造は、一般に、この構造内で支持された、通常フィルタバッグの形態の、1層または複数層の可撓性のフィルタエレメントを含む。フィルタバッグは、略スリーブ状の管状構造を有し、バッグハウスを通るガス流は、バッグハウスの操作時にろ過されている粒状物質をスリーブの外部に堆積するように向けられる。各フィルタバッグは、ガスがバッグを効率的に通過することによって同伴される微粒子を除去することができるような位置に固定され、その位置に保たれる。参照により本明細書に援用される米国特許第4,983,434号明細書には、バッグハウスフィルタ構造およびそれに用いるためのフィルタが例示されている。集塵機には、典型的にはプリーツ状のろ材を含む、略管状の構造(円形または非円形)を有するカートリッジの形態のフィルタエレメントも用いられ得る。参照により本明細書に援用される米国特許第5,632,791号明細書には、カートリッジフィルタエレメントが例示されている。
【0003】
バッグを用いる構造およびカートリッジを用いる構造の両方を指す本明細書で用いられる「バッグハウス」の操作時に、フィルタエレメント(本明細書において「エレメント」または「バッグ」と同義的に呼称されるバッグおよびカートリッジを含む)は、粒子の蓄積によるバッグ内の圧力低下が顕著になったときに、定期的にクリーニングしなければならない。「パルスジェット」または「反転パルス」クリーニングと呼ばれる、バッグハウスフィルタをクリーニングする1つの形態は、フィルタバッグの内部に入る逆流空気をバッグに一気に吹き付けることによるものであり、バッグの外部からろ過された粒状物質を除去して、バッグハウスの下部に集める。クリーニング空気は、ベンチュリ管を通過するにしたがい二次空気を吸引し、その結果得られた空気塊がバッグを激しく膨らませ、集められた粒状物質(「ダストケーキ」)を払い落とす。バッグは、典型的に、ケージ支持体(cage support)に戻ることとなり、クリーニングされたフィルタは微粒子の収集を続ける。バッグ型およびカートリッジ型のフィルタの両方の中でも、パルスジェットがバッグハウスフィルタのろ材自体に対して最も負荷のかかるタイプのクリーニングである。積層体材料がパルスジェット型フィルタのろ材として用いられる場合、膨張および収縮の繰り返しによるろ材への負荷により、多層のろ材が剥離される。
【0004】
米国特許第6,740,142号明細書には、約0.01〜約0.5ミクロンの直径を有する細繊維の層によって少なくとも部分的に覆われた基材から形成されたバッグハウスフィルタのろ材に関し、この細繊維層は、0.005〜2.0グラム/平方メートル(gsm)の坪量および0.1〜3ミクロンの厚さを有する。ろ材を製造するために、米国特許第6,740,142号明細書には、ナノ繊維のウェブを基材の表面に直接形成できることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、積層されたろ材の形成方法、およびそれによって作製される積層されたろ材に関する。得られるろ材は、反転パルスクリーニングによる、使用中の剥離に対する抵抗性が改善され、効率性が高く、クリーニングしやすく、所要の強度特性を有し、製造するのに経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施形態では、本発明は、ナノウェブに接着積層された基材を含む複合シートの形成方法に関し、本方法は、収集面を有するキャリア層を提供する工程と、キャリア層の収集面上にナノウェブを形成する工程と、2つの主面を有する可撓性の多孔質基材を提供する工程と、基材の1つの表面の少なくとも一部に接着剤の層を施す工程と、接着剤層をナノウェブと接着させ、ナノウェブを基材に結合する工程と、任意工程である、キャリア層を除去し、それによって複合シートを形成する工程とを含む。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、2つの主面を有する基材を含むろ材を含む、ガス流から粒状物質を分離するためのフィルタエレメントに関し、この基材は、前記主面の一方にわたって約2gsm未満の坪量を有する第1のナノウェブに接着積層される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、2つの主面を有するちょうど1つの基材を含むろ材を含む、ガス流から粒状物質を分離するためのフィルタエレメントに関し、この基材は、主面の一方にわたって、約2gsm未満の坪量を有する第1のナノウェブに対面する関係で接着積層される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いられる際の「ナノ繊維」という用語は、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nm〜500nm、さらには約100〜400nmの数平均直径または断面を有する繊維を指す。本明細書で用いられる際の直径という用語は、非円形の最大断面を含む。
【0010】
「不織布」という用語は、複数のランダムに分布した繊維を含むウェブを意味する。繊維は、一般に、互いに結合されていてもまたは結合されていなくてもよい。繊維は、短繊維または長繊維であり得る。繊維は、単一の材料、あるいは異なる繊維の組合せとしてかまたは異なる材料からそれぞれ構成される類似の繊維の組合せとして複数の材料を含み得る。
【0011】
本明細書で用いられる際の「ナノウェブ」という用語は、ナノ繊維を含む不織ウェブを指す。
【0012】
本明細書において「キャリア層」および「スクリム」は、ナノウェブを結合、接着または積層できる任意の平面構造を指すのに用いられる。好都合には、本発明に有用なキャリア層またはスクリムは、スパンボンド不織布層であるが、不織繊維などの梳毛ウェブならびに他の不織布および織布および剥離紙から作製可能である。
【0013】
本発明の方法は、低坪量のナノウェブを基材に接着積層するのに有用である。本発明以前には、基材と約2gsm未満の坪量を有するナノウェブとの複合体の形成方法は知られていなかった。このような低坪量を有するナノウェブは、取り扱い時に破損されやすい。本発明者らは、低坪量のナノウェブを基材上に電界紡糸するだけでは、微粒子用のフィルタとして機能するのに必要とされる耐久性を欠き、剥離しやすい複合布ができることを見出した。
【0014】
本発明によれば、まず、低坪量のナノウェブが、キャリア層またはスクリム上に直接形成され;次に、接着剤の層が、アプリケータロールを用いて、別個の基材の主面の一方の少なくとも一部に不連続に塗布される。アプリケータロールは、接着剤が連続した膜で塗布されないように、所定のパターンの隆起部分を有する。例えば、隆起箇所を有するグラビア型のロールが、接着剤を不連続に施すのに適している。
【0015】
次に、ナノウェブと基材の接着剤が塗布された表面とが対面する関係で、スクリム/ナノウェブ複合構造は基材と接触される。次に、2つのロールによって形成されるニップ、またはナノウェブおよび接着剤が塗布された基材を接触させる別の手段を用いて、ナノウェブが、接着剤が塗布された表面に触れるように、ナノウェブ表面を基材と接触させる。これらのニップロールは互いに接触していてもよく、またはロール表面間に固定された間隙または可変の間隙があってもよい。好都合には、ニップは、軟質ロールと硬質ロールとの間に形成される。
【0016】
接着剤は、溶融接着剤または溶剤型接着剤であり得る。溶融接着剤が用いられる場合、接着剤が塗布されてから、ナノウェブが、接着剤の軟化温度または溶融温度を超える温度で基材と接触される。溶剤型接着剤が用いられる場合、接着剤積層プロセスは、室温で行われ得る。あるいは、フィルタが高温ガスろ過向けである場合、接着剤は高温結合剤であり得る。高温結合剤は分散体の形態をとり得る。当業者には、本発明の方法に使用可能な好適な接着剤が特に限定されないことが容易に分かるであろう。好適な接着剤の例としては、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、ポリエステルのコポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレンコポリマー、クロロプレン、アクリル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミドおよびポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
【0017】
必要に応じて、形成する際に、スクリム/ナノウェブ/接着剤/基材複合構造を巻き取ってから、保管するかまたは輸送することができる。複合構造は、後に巻き出し、基材上の低坪量のナノウェブの積層体を残してスクリムを除去することができる。場合によっては、取り扱いおよび使用の際にナノウェブ層を保護するために、スクリムを適所に残しておくことが望ましいことがある。
【0018】
接着剤は、ナノウェブを基材に固着させ、その結果、高レベルの耐久性および剥離抵抗性を有する積層体が得られる。得られる積層体は、多数回のサイクルの空気ジェットパルスに耐える。例えば、基材およびナノウェブは、VDI 3926に少なくとも30サイクルにわたって供された後、より好ましくは少なくともVDI 3926に準拠する完全試験に供された後に結合されたままである。
【0019】
ナノウェブは、電界紡糸、例えば従来の電界紡糸または電気ブロー加工、および場合によってはメルトブロー加工プロセスまたは他のそのような好適なプロセスによって有利に製造されるナノ繊維を主に含むかまたはそれだけを含む。従来の電界紡糸は、全体が本明細書に援用される米国特許第4,127,706号明細書に示される技術である。「電気ブロー加工」プロセスは、全体が参照により本明細書に援用される国際特許公報、国際公開第03/080905号パンフレットに開示されている。溶融フィルムフィブリル化プロセスは、国際特許公報の国際公開第2005/103355号パンフレットに開示されており、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0020】
本発明のナノウェブを形成するのに用いることができるポリマー材料は、特に限定されないが、これらとしては、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性されたポリスルホンポリマー、ポリアミドイミド、ポリイミドおよびそれらの混合物などの付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料の両方が挙げられる。これらの一般的種類に含まれる好ましい材料としては、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABA型ブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、架橋および非架橋形態にある様々な加水分解度(87%〜99.5%)のポリビニルアルコール、ポリアミドイミドおよびポリイミドが挙げられる。好ましい付加ポリマーはガラス質である傾向がある(室温より高いTg)。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマー組成物あるいは合金の場合であり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料では結晶性が低い場合である。ポリアミド縮合ポリマーの1つの好ましい種類は、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などのナイロン材料である。本発明のポリマーナノウェブは、メルトブロー加工によって形成され、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなどのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、および上記のナイロンポリマーなどのポリアミドを含む、メルトブロー加工してナノ繊維にすることが可能な任意の熱可塑性ポリマーを用いることができる。
【0021】
本発明に用いるのに好適な基材の例としては、様々な不織布、織布、編布、フェルト、紙などが挙げられる。好適な不織布は、メルトブローン繊維、スパンボンド繊維、スパンレース繊維、ドライレイド繊維またはウェットレイド繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、またはそれらの混紡が挙げられる。基材は、綿、麻または他の天然繊維などのセルロース系繊維、ガラス繊維を含む無機繊維、炭素繊維、またはポリエステル、ナイロン、ポリオレフィンなどのポリマーから形成される有機繊維、または他の従来の繊維またはポリマー材料ならびにそれらの混合物を含む、様々な従来の繊維から形成され得る。優れた弾性ならびに空気の通過および微粒子の捕捉の影響に対する優れた抵抗性を示す繊維が典型的に用いられる。これらの布帛は、ろ過される空気に同伴する化学微粒子ならびにろ過される空気流の温度およびろ材によって捕捉される微粒子の温度の両方に対して安定性を有するべきである。本発明に有用な様々な基材は、多種多様な特定のろ過の要求を満たすように仕様を合わせたろ材を設計する際の柔軟性を与える。
【0022】
本発明の別の目的は、バッグハウスおよびカートリッジ型の集塵機に有用なフィルタエレメント用の高効率のろ材を提供すること、および上記ろ材を含むフィルタエレメントを提供することである。ろ材は、耐久性のある機械的に安定な複合構造で、基材に接着積層された少なくとも1つの低坪量のナノウェブを含む。この積層体は、ガスなどの流体がろ材を通過する際に最小の流量制限で優れたフィルタ効率を与える。基材は、流体流の上流、下流または内層に位置決めされ得る。
【0023】
ろ材は、2gsm未満、さらには約0.7gsm〜約2gsmの坪量の第1のナノウェブを含む。ろ材は、第1のナノウェブが対面する関係で接着積層された基材をさらに含む。
【0024】
本発明のフィルタエレメントは、フィルタエレメントの内部に位置する好適な支持体構造にろ材を支持することによってまたはフィルタエレメントのネック部において固定具を用いることによって、有用な開口部の形状に保たれ得る。このような支持体構造は、巻き線状またはケージ状の構造の形態をとり得る。あるいは、支持体構造は、フィルタエレメントの形状に類似した有孔のセラミックまたは金属構造であり得る。支持体構造がその表面積のかなりの割合にわたって、ろ材と接触する場合、支持体構造は、構造を通る空気の通過に対して透過性であるべきであり、フィルタエレメントにわたる圧力低下が徐々に増大されないようにすべきである。このような支持体構造は、フィルタエレメントの内部の全体と接触して、フィルタエレメントを最適な形状に保つように形成され得る。
【0025】
本発明のフィルタは、集塵用のパルスクリーニングフィルタおよび非パルスのクリーニングフィルタ、ガスタービンおよびエンジン吸気系統;ガスタービン吸気系統、大型車両用エンジンの吸気系統、小型車両用エンジンの吸気系統;Zフィルタ(Zee filter);車室の空気;オフロード車の車室の空気、ディスクドライブの空気、コピー機のトナーの取り外し;工業用または家庭用のろ過用途におけるHVACフィルタを含む様々なろ過用途に使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下の非限定的な実施例では、以下の試験方法を用いて、様々な報告される特性および性質を判定した。ASTMは、米国材料試験協会(the American Society of Testing Materials)を指す。ISOは、国際標準化機構(the International Standards Organization)を指す。TAPPIは、紙パルプ技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を指す。
【0027】
ろ過効率、圧力低下およびサイクル時間を、テキストが参照により本明細書に援用されるVDI 3926に準拠して測定した。
【0028】
VDI 3926では、ろ過効率(ダスト漏れ量(dust leakage)とも呼ばれる)をマイクログラム/立法メートル(μg・m-3)単位で測定し、圧力低下をパスカル(Pa)単位で測定し、サイクル時間を秒単位で測定する。ろ過効率は、フィルタを通過するダストの量を示す。圧力低下は、フィルタの2つの面の間の圧力差である。サイクル時間は、ダストケーキを放出する2つのパルスの間の持続時間である。所定の圧力低下が得られると(VDI 3926では最大圧力低下が1000Paに設定されている)、逆流パルスが自動的に生成される。VDI 3926は、最初に30サイクル、その後フィルタのエージングをシミュレーションするために10,000サイクル、および最後にさらに30サイクルに基づいている。ろ過効率、圧力低下およびサイクル時間を、最後の30サイクルの終了時に測定する。
【0029】
良好なフィルタは、低いろ過効率値(低い漏れ量(leakage)に相当する)、低い圧力低下および長いサイクル時間を有することとなる。低い圧力低下は、ガスをフィルタに通すのにより低い圧力で済むので、エンドユーザの省エネルギーに相当することとなる。長いサイクル時間はより長いフィルタ寿命に相当することとなる。実際の場合、30秒未満のサイクル時間は、ろ材を交換しなければならないことを示す。
【0030】
透気率をISO 9237に準拠して測定し、l/dm2/分の単位で報告した。
【0031】
実施例1〜3
PCT国際公報の国際公開第03/080905号パンフレットに記載の方法を用いて、ナイロン6,6ナノ繊維をポリエステル不織布スクリム上に直接電気ブロー加工することによって、ナノウェブ試料を製造した。ナノウェブの繊維は、約400nmの平均繊維直径を有していた。ナノウェブは、1.7gsmの坪量を有していた。
【0032】
以下のように、ナノウェブを、14oz/yd2のポリエステルフェルトの試料に接着積層によって結合した。グラビアロールを用いて、ポリウレタン接着剤の不連続層を、フェルトの1つの表面に塗布した。フェルトの接着剤が塗布された表面がナノウェブ/スクリムのナノウェブ側と接触するように、フェルトおよびナノウェブ/スクリムを2つのロールのニップ内に供給した。実施例1〜3の積層体を形成するのに用いられるニップ圧は、それぞれ40psi、60psiおよび80psiであった。試験前に、実施例1の積層体からスクリムを除去した。実施例2および3の積層体では、スクリムを適所に残した。
【0033】
比較例1
米国特許第6,740,142号明細書に記載の指示にしたがって、ろ材試料を作製した。国際特許公報の国際公開第03/080905号パンフレットに記載の方法を用いて、2gsmの坪量を有するナイロン6,6のナノウェブを紡糸した。ナノウェブを14oz/yd2のポリエステルフェルト基材上に直接紡糸した。平均繊維直径は約400nmであった。熱重量分析によって測定した際のナイロン6,6ナノウェブの溶融温度は227℃であった。処理温度、圧密圧力および滞留時間の約100通りの異なる組合せを用いて試料を作製した。米国特許第6,740,142号明細書にしたがって、ナイロン6,6ナノウェブの溶融温度に近い温度を選択した。温度は220℃〜235℃の範囲であり;圧密圧力は20バール〜30バールの範囲であり;滞留時間は30秒〜70秒の範囲であった。ナノウェブを基材の表面に手でこすり付けることにより、基材に対するナノウェブの最も強い接着性を有するように見えた試料を選択した。30バールの圧力下で60秒の滞留時間でプレスにおいて227℃で試料を圧密化することによって試料を作製した。
【0034】
圧密化の前後のいずれも、試料は、フェルトに対するナノウェブの低い接着性を示し、ナノウェブは、ナノウェブ表面を親指で軽くこすることによってフェルトから剥離され得た。試料をVDI 3926試験に供したところ、30サイクル未満もちこたえてから剥離した。
【0035】
表1は、実施例1〜3および比較例1の透気率、ろ過効率、圧力低下およびサイクル時間を含む。ろ過効率、圧力低下およびサイクル時間のデータは、比較例1については得られなかった。その理由は、試料が試験の最初の30サイクル以内に剥離したためである。実施例1〜3のろ材が優れた剥離抵抗性を与えることが表1から分かる。実施例1〜3のろ材はまた、低い圧力低下で高いろ過効率を有することも分かった。
【0036】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノウェブに接着積層された基材を含む複合シートの形成方法であって、
(a)収集面を有するキャリア層を提供する工程と;
(b)前記キャリア層の収集面上にナノウェブを形成する工程と;
(c)2つの主面を有する可撓性の多孔質基材を提供する工程と;
(d)前記基材の1つの表面の少なくとも一部に接着剤の層を施す工程と;
(e)前記接着剤層を前記ナノウェブと接着させ、前記ナノウェブを前記基材に結合する工程と;
(f)任意工程である、前記キャリア層を除去し、それによって前記複合シートを形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記キャリア層が、スパンレース不織布およびスパンボンド不織布からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、梳毛不織布、スパンレース不織布、フェルト、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド複合不織布および織布からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着剤層が、溶剤型接着剤、溶融接着剤または高温結合剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接着剤層を前記ナノウェブと接触させる工程が、ニップロールによるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2つの主面を有する基材を含むろ材を含む、ガス流から粒状物質を分離するためのフィルタエレメントであって、前記基材が、前記主面の一方にわたって、約2gsm未満の坪量を有する第1のナノウェブに接着積層されるフィルタエレメント。
【請求項7】
2つの主面を有するちょうど1つの基材を含むろ材を含む、ガス流から粒状物質を分離するためのフィルタエレメントであって、前記基材が、前記主面の一方にわたって、約2gsm未満の坪量を有する第1のナノウェブに対面する関係で接着積層されるフィルタエレメント。
【請求項8】
前記基材が、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、梳毛不織布、フェルト、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド複合不織布、および織布からなる群から選択される請求項6または7に記載のフィルタエレメント。
【請求項9】
前記第1のナノウェブおよび前記基材が、溶剤型接着剤、溶融接着剤または高温結合剤によって積層される請求項6または7に記載のフィルタエレメント。
【請求項10】
前記基材および前記第1のナノウェブは、前記フィルタエレメントがVDI 3926に少なくとも30サイクルにわたって供された後に結合されたままである請求項6または7に記載のフィルタエレメント。
【請求項11】
前記基材および前記第1のナノウェブは、前記フィルタエレメントがVDI 3926に準拠した完全試験に供された後に結合されたままである請求項6または7に記載のフィルタエレメント。
【請求項12】
前記第1のナノウェブが、約0.7gsm〜約2gsmの坪量を有する請求項6または7に記載のフィルタエレメント。
【請求項13】
ガス流から粒状物質を除去するための方法であって、前記ガス流が、第1のナノウェブが対面する関係で結合されたろ材の表面において前記ろ材に入り、前記ろ過されたガス流が、前記ろ材の、前記第1のナノウェブと反対側の表面から前記ろ材を出るように、請求項6または7に記載のフィルタエレメントのろ材に粒子含有ガス流を通す工程を含む方法。

【公表番号】特表2010−528846(P2010−528846A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511204(P2010−511204)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/007134
【国際公開番号】WO2008/150548
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】