説明

ナノカーボン分散ポリイミド溶液及びこれを用いて製造される複合材料

【課題】 ポリイミドとナノカーボンを複合化するための溶液及び当該溶液から得られる複合材料の提供。
【解決手段】 テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミドと、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性ポリイミドが溶解し、且つ、ナノカーボンが分散したポリイミド溶液に関する。また、本発明は、当該溶液を使用した応用品に関し、例えば、塗布材料、接着剤、これらを用いた多孔性ペレット、析出体、成型体、塗膜、フィルム等の複合材料に関する。本発明は、これらの中でも特に、当該溶液を用いて製造される多孔性ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミドは、その高い耐熱性と絶縁性から、多くの応用が開発されてきた。ポリイミドは、高い耐熱性を有する樹脂であり、更に、フレキシブル回路基板等に用いられている程の高い絶縁性を有する。しかし、その絶縁性の高さから、静電気による帯電防止が望まれていた。しかし、ポリイミドは、炭素材料などの他の材料との複合化において難点があった。一般的に、樹脂を複合化する方法としては、例えば、溶融混練する方法や、溶液にして溶媒を除去して複合化させる方法が考えられる。
【0003】
溶融混練する場合、ポリイミドは、一般的に高い耐熱性を有することから、熱溶融して混練することが困難であった。もし仮に混練できたとしても、非常に高い温度でなければ溶融しないため、混練時に他の材料が熱分解してしまうという問題を有していた。
【0004】
他方、溶液を用いる場合、ポリイミドは、一般的に不溶性の樹脂であるため、溶媒に溶解させることが困難であった。したがって、溶液を調製することが困難であるため、当該方法による複合化は難しかった。
【0005】
そこで、ポリイミドを溶液化する方法として、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液とCNT分散液を混合し、フィルム化した後イミド化反応を行ってポリイミドへCNTを分散させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
その他、従来のポリアミック酸経由によるものではなく、可溶性のポリイミドから直接ポリイミドフィルムを製造する方法として逐次反応によるブロック共重合体の合成方法を採用して可溶性のブロック共重合体ポリイミドを合成する方法が開示されている。当該方法では、特定のモノマーを一旦オリゴマー化して、更にこれらを重合反応させる方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−107657号公報
【特許文献2】国際公開第2008−155811パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る方法では、ポリアミック酸をイミド化する際の熱処理に400℃もの高温を要するため、熱分解の問題が生じる。さらにフィルム化した後にイミド化反応を行なうため、当該反応に伴って水が発生することが問題となる。また、得られる表面抵抗値も1.0×10〜1.0×1012Ωと高い。そこで、本発明は、ポリイミドとナノカーボンを複合化するための溶液及び当該溶液から得られる複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミドと、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液である。
【0010】
本発明(2)は、ナノカーボンが、カーボンナノチューブである、前記発明(1)のナノカーボン分散ポリイミド溶液である。
【0011】
本発明(3)は、非イオン系、または両性イオン系界面活性剤からなるナノカーボン分散剤を更に含有する、前記発明(1)又は(2)のナノカーボン分散ポリイミド溶液である。
【0012】
本発明(4)は、前記テトラカルボン酸化二無水物が、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であり、
前記ジアミン化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン又はビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つのナノカーボン分散ポリイミド溶液である。
【0013】
本発明(5)は、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのカーボン分散ポリイミド溶液の溶媒を除去して得られる、ナノカーボンが分散されたポリイミド複合材料である。
【0014】
本発明(6)は、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのカーボン分散ポリイミド溶液を塗布して得られる、塗膜である。
【0015】
本発明(7)は、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのカーボン分散ポリイミド溶液を塗布して乾燥させて得られる、ポリイミドフィルムである。
【0016】
本発明(8)は、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのナノカーボン分散ポリイミド溶液を、前記溶媒よりも前記可溶性ポリイミドに対する溶解性の低い貧溶媒中に滴下することにより得られる、前記ナノカーボンが分散したポリイミド析出体である。
【0017】
本発明(9)は、前記ポリイミド溶液の溶媒が、N−メチルピロリドン(NMP)であり、前記貧溶媒が水である、前記発明(8)のポリイミド析出体である。
【0018】
本発明(10)は、前記発明(8)又は(9)のポリイミド析出体であって、
表面に形成されており、ポリイミドの一次粒子が融着して形成されるスキン層と、
前記スキン層よりも内部に形成されている多孔質構造を有するコア層とを有し、
前記スキン層の前記一次粒子の隙間に1〜50nmの孔を有し、
前記スキン層及びコア層中のポリイミドにカーボンナノチューブが分散している、ポリイミド多孔性ペレットである。
【0019】
本発明(11)は、前記スキン層の厚みが、50〜100nmである、前記発明(10)のポリイミド多孔性ペレットである。
【0020】
本発明(12)は、前記発明(10)又は(11)のポリイミド多孔性ペレットをプレス成形して得られる、成型体である。
【0021】
本発明(13)は、テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミド、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒、及び前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液の前記溶媒を除去する、ナノカーボンが分散されたポリイミド複合材料の製造方法である。
【0022】
本発明(14)は、テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミド、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒、及び前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液を、前記溶媒よりも前記可溶性ポリイミドに対する溶解性の低い貧溶媒中に滴下することにより、析出体を得る工程を含む、カーボンが分散したポリイミド析出体の製造方法である。
【0023】
本発明(15)は、前記ナノカーボン分散ポリイミド溶液の可溶性ポリイミドの濃度が、2〜20重量%の範囲であり、
前記析出体の内部及び表面にナノカーボンが分散している、前記発明(14)の製造方法である。
【0024】
本発明(16)は、前記溶媒がN−メチルピロリドン(NMP)であり、前記貧溶媒が水である、前記発明(13)〜(15)のいずれか一つの製造方法である。
【0025】
本発明(17)は、前記ナノカーボンが、カーボンナノチューブである、前記発明(13)〜(16)のいずれか一つの製造方法である。
【0026】
本発明(18)は、前記テトラカルボン酸化二無水物が、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であり、
前記ジアミン化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン又はビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンである、前記発明(13)〜(17)のいずれか一つの製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、溶解性ポリイミドを採用することにより200℃以下という比較的低温にて、可溶性ポリイミド溶液を調製し、これにCNT分散液を混合することにより、上記のような問題を解決した。得られた溶液は貧溶媒に滴下して多孔性ペレットや粉末、また溶液をそのまま、あるいは必要に応じて各種樹脂バインダ・粘着剤等と混合することにより、耐熱性と導電性を有するフィルム、塗料や接着剤に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、カーボンナノチューブが分散したポリイミド多孔性ペレットの製造工程を示す説明図である。
【図2】図2(a)は本発明に係る多孔性ペレットのSEM写真による全体像であり、図2(b)は多孔性ペレットのSEMによる断面写真であり、図2(c)は多孔性ペレットの断面の拡大写真であり、図2(d)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真であり、図2(e)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真であり、図2(f)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真である。
【図3】図3は、多孔性ペレットの表面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(溶液)
本発明に係る溶液は、可溶性ポリイミドと、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボンが分散しているポリイミド溶液である。本発明に係る溶液は、可溶性ポリイミドを選択することによって、ポリイミド溶液であって、且つ、ナノカーボンが分散している溶液を得ることができた。本発明において使用する可溶性ポリイミドは、テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である。
【0030】
本発明に係る可溶性ポリイミドに用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されないが、例えば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物,4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸無水物が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明に係る可溶性ポリイミドに用いられるジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(BAPS−M)、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは、3〜10)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)等の芳香族ジアミン、1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノドデカン、1,11−ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
【0032】
可溶性ポリイミドの可溶性部位を形成する無水テトラカルボン酸としては、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等のベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物や、エチレングリコール―ビス(アンヒドロトリメリテート)を用いることが好適である。
【0033】
可溶性ポリイミドの可溶性部位を形成するジアミン化合物としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)、又は、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(BAPS−M)、イソホロンジアミンを用いることが好適である。
【0034】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が非プロトン性極性溶媒挙げられる。
【0035】
本発明に係るポリイミド溶液には、ナノカーボンが分散している。本発明に係るナノカーボン分散ポリイミド溶液は、あらかじめカーボン分散液を調製して、ポリイミド溶液と混合して、調製することができる。以下、本発明において用いられるナノカーボン及び当該ナノカーボンを分散させる分散剤、分散液の構成について詳細に説明する。
【0036】
本発明の溶液の「ナノカーボン」とは、その材料の形状において、一辺が1000nm以下(好適には500nm以下)の大きさを有するカーボンを意味し、例えば、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、グラフェンを挙げることができる。これらのナノカーボンの中でも、カーボンナノチューブが好適である。カーボンナノチューブを使用することによって、特に顕著な、導電性向上効果が得られる。カーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)であっても、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよい。カーボンナノチューブの長さは、0.1〜100μmが好適であり、0.1〜50μmがより好適であり、0.1〜20μmが更に好適である。カーボンナノチューブの直径は、5〜200nmが好適であり、8〜160nmがより好適であり、9〜120nmが更に好適である。尚、当該チューブの長さ、直径は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定し、90%以上の個数が入る範囲とする。
【0037】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、リン脂質系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤、シクロデキストリン類といった包摂化合物を形成するホスト化合物、その他核酸やたんぱく質等の天然由来の高分子化合物等が挙げられる。「リン脂質系界面活性剤」とは、リン酸基を官能基とする陰イオン性界面活性剤・両性イオン界面活性剤であり、リン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質の両方を含む)及び改質リン脂質(例えば、水素添加リン脂質、リゾリン脂質、酵素変換リン脂質、リゾホスファチジルグリセロール、他の物質との複合体)のいずれでもよい。このようなリン脂質は、生物を構成する細胞の種々の膜系、例えば原形質膜、核膜、小胞体膜、ミトコンドリア膜、ゴルジ体膜、リソソーム膜、葉緑体膜、細菌細胞膜に存在し、好適には、リポソームの調製に用いられるリン脂質が好適である。具体的には、例えば、ホスファチジルコリン{例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトリルホスファチジルコリン(DPPC)}、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンを挙げることができる。特に好適な界面活性剤は、両性イオン界面活性剤である。両性イオン界面活性剤としては、四級アンモニウム塩基/スルホン酸基(−SOH)タイプ、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に可溶)、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に不溶)、四級アンモニウム塩基/カルボキシル基タイプの両性イオン界面活性剤が挙げられる。尚、前記の酸基は塩であってもよい。特に、前記の両性イオン界面活性剤が一分子中に+と−の両電荷を有することが好適であり、前記の酸基の酸解離定数(pKa)が、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。具体的には、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAPS)、N,N−ビス(3−D−グルコナミドプロピル)−コラミド、n−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−デシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−ドデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−テトラデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸{Zwittergent(商標)−3−14}、n−ヘキサデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸等のアンモニウムスルホベタイン類、n−オクチルホスホコリン、n−ノニルホスホコリン、n−デシルホスホコリン、n−ドデシルホスホコリン、n−テトラデシルホスホコリン、n−ヘキサデシルホスホコリン等のホスホコリン類、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン類が挙げられる。
【0038】
分散液に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。なお、ナノカーボン分散液の溶媒は、上記の可溶性ポリイミド溶液に用いられる溶媒と同じ種を用いることが好適である。同じ種のものを使用することにより、分散したナノカーボンの凝集を防ぐとともに、溶解したポリイミドの凝集も防止する。
【0039】
非プロトン性極性溶媒中にナノカーボンを分散させる場合、分散剤は、非イオン系または両性イオン系の界面活性剤を選択することが好適である。当該分散剤を選択した場合には、特に、非プロトン性極性溶媒中で、ナノカーボンが安定に分散するという効果を奏する。
【0040】
可溶性ポリイミドの含有量は、溶液全体の質量に対して、1〜30質量%が好適であり、3〜20質量%がより好適であり、5〜15質量%が更に好適である。ナノカーボンの含有量は、溶液全体に対して、0.01〜20質量%が好適であり、0.1〜10質量%がより好適であり、0.2〜5質量%が更に好適である。
【0041】
尚、可溶性ポリイミドと、ナノカーボンの重量比は任意に設定することが出来るが、溶解性ポリイミドとナノカーボンの合計量に対するナノカーボンの含有率([ナノカーボン質量]/([ナノカーボン質量]+[溶解性ポリイミド質量])×100)は、1〜90質量%が好適であり、1〜50質量%がより好適であり、1〜10質量%が更に好適である。このような高いナノカーボンの比率であっても、ポリイミドと均一に複合化することができる。
【0042】
本発明に係るカーボン分散ポリイミド溶液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記の工程により製造できる。本発明係る製造方法は、例えば、可溶性ポリイミド溶液を調製する工程と、前記可溶性ポリイミド溶液とナノカーボンの分散液とを混合する工程と、を有する方法である。その他、ナノカーボン分散液中に固体の可溶性ポリイミドを溶解させることで、カーボン分散ポリイミド溶液が得られる。
【0043】
可溶性ポリイミド溶液を調製する工程は、可溶性ポリイミドを、当該ポリイミドを溶解できる溶媒に直接溶解させてもよいが、可溶性ポリイミドを重合する方法で調整することが好適である。
【0044】
テトラカルボン酸化二無水物とジアミン化合物を溶解させた非プロトン性極性溶媒に溶解させる。ここで用いるテトラカルボン酸化二無水物、ジアミン化合物及び非プロトン性極性溶媒は、先述のものを用いることができる。
【0045】
溶解後、触媒を添加してもよい。ここで使用する触媒は、ポリイミドの重合触媒である限り特に限定されないが、例えば、トルエンスルホン酸、γ−バレロラクトンとピリジン、γ−バレロラクトンとN−メチルモルホリンが挙げられる。触媒無添加でもポリイミドを合成できるが、触媒を添加することで高い分子量のものを得ることができる。なお、低い分子量であっても成膜や成形後の加熱処理で分子量を上げることも不可能ではない。
【0046】
ポリイミドの製造方法は、特に限定されないが、通常の方法で合成でき、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させて、ポリアミド酸を合成したのちに、脱水反応を行なってポリアミドを得ることができる。ポリアミド酸を合成する際の反応条件は、特に限定されないが、温度が0〜120℃が好適であり、5〜30℃がより好適である。また、反応雰囲気は空気でも良いが、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行なわれることが好適である。反応時間も特に限定されないが、例えば、0.5〜48時間である。このようにして、テトラカルボン酸化二無水物とジアミン化合物とで脱水反応を行ない、ポリアミド酸を得ることがでる。続いて、ポリアミド酸から脱水反応を行なう。脱水反応も特に限定されず、通常の方法で脱水でき、可溶性ポリイミドを得ることができる。
【0047】
当該反応系において溶媒として前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒を用いた場合には、可溶性ポリイミドが溶解した溶液となるので、そのまま、ナノカーボンの分散液と混合してもよい。また、可溶性ポリイミドを単離して、ナノカーボンの分散液中に溶解させて、ナノカーボン分散ポリイミド溶液を調製してもよい。
【0048】
(複合材料)
本発明に係るナノカーボン分散ポリイミド溶液を用いて複合材料を調製することができる。より具体的には、本発明のポリイミド溶液から溶媒を除去することによって複合材料が得られる。すなわちポリイミド溶液を用いることによって、ナノカーボンがポリイミド中により均一に分散した複合材料を得ることができる。特に、ポリイミドとナノカーボンの比率を自由に設定することができるため、高濃度のナノカーボンをポリイミド中に分散することができる。また本発明に係る溶液を用いることによって、高温での熱処理を行なうことなく高分子量のポリイミドと、ナノカーボンとの複合化が可能となる。
【0049】
(ポリイミド析出体)
本発明に係るポリイミド溶液を可溶性ポリイミドに対する溶解性の低い貧溶媒中に滴下することによってポリイミド及びナノカーボンが析出した複合体を得ることができる。ここで、滴下する条件を変えることによって、様々な形状の複合材料を得ることができる。
【0050】
例えば、低濃度のポリイミド溶液を使用することによって、ナノカーボンが分散したポリイミド粒子を得ることができる。その他、高濃度のポリイミド溶液を用いた場合であっても、貧溶媒を攪拌しながら滴下すれば、ポリイミド粒子を得ることができる。また、貧溶媒への滴下量を増やすことによって、楕円状のペレットを得ることができる。その他、滴下する高さを低くすることによって、貧溶媒中で滴下液が浮いた状態となり、膜状の析出物が得られることもある。適切な濃度に調整したナノカーボン分散ポリイミド溶液を貧溶媒中に滴下することによって、ナノカーボンが分散した多孔質構造を有するポリイミド多孔性ペレットが得られる。
【0051】
ポリイミド溶液が滴下される「貧溶媒」とは、滴下する溶液に用いられている溶媒よりも、当該溶液に溶解されている可溶性ポリイミドに対する溶解性が低い溶媒を意味する。また、当該貧溶媒は、前記溶媒と均一に混ざる性質を有していることが好適である。貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、アセトン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、ジオキサン等が挙げられる。また、これらの貧溶媒のうち複数の組合せであってもよい。
【0052】
(ポリイミド多孔性ペレット)
適切な濃度に調整したナノカーボン分散ポリイミド溶液を貧溶媒中に滴下することによって、ナノカーボンが分散した多孔質構造を有するポリイミド多孔性ペレットが得られる。本発明に係るポリイミド多孔体ペレットは、粒子表面に形成されており、ポリイミドの一次粒子が緻密に融着して形成されるスキン層と、前記スキン層よりも内部に形成されている多孔質構造を有するコア層とを有する。当該スキン層の前記一次粒子の隙間に1〜50nmの粒子内部と粒子外部とをつなぐ孔が形成されている。そして、スキン層及びコア層中のポリイミドにカーボンナノチューブが分散している、
【0053】
このような多孔性ペレットが得られる推定メカニズムを説明する。まず滴下された液滴は貧溶媒中に潜り込む。その後、液滴表面でポリイミドの析出が起こり、細かな一次粒子が集合した緻密なスキン層が形成される。当該スキン層における、一次粒子の界面において微少な孔が形成されている。当該微少な孔を介して、スキン層内部と外部とで溶媒交換が行なわれて、スキン層内部に存在するポリイミド及びナノカーボンが析出して、多孔質構造を有するコア層が形成されると考えられる。
【0054】
スキン層に関して、ポリイミドの一次粒子の平均粒径は、30nm〜60nmである。そしてスキン層の厚みは、50〜100nmである。また、スキン層に形成されている孔の大きさは1〜50nmである。当該範囲の孔を有することによって、溶液内部に分散されているカーボンナノチューブが当該孔から外へと放出され難くなる。
【0055】
コア層に関して、コア層は多孔質構造を有する。当該多孔質構造は、多孔質構造を形成する骨格を有する。当該骨格は、一次粒子が集合して形成されていることもあれば、一次粒子の形跡を確認出来ないような滑らかな柱状骨格であることもある。ナノカーボンは当該コア層内であれば、どこに存在していてもよいが、多孔質構造を形成する骨格内部に分散していることが骨格の強度を高める観点から好適である。
【0056】
ポリイミド多孔性ペレットを得ようとする場合、可溶性ポリイミドの濃度は、ポリイミドの分子量の兼ね合いもあるが、2〜20質量%の範囲にあることが好適であり、5〜20質量%の範囲にあることがより好適であり、6〜20質量%の範囲にあることが更に好適であり、6〜10質量%の範囲にあることが特に好適である。当該範囲の濃度の溶液を用いることによって、貧溶媒中でポリイミドが凝集して、ペレット状となる。当該ペレット内やペレット表面には溶液中に分散させたナノカーボンが分散される。
【0057】
ポリイミド多孔性ペレットを得る場合、ポリイミド溶液の貧溶媒への一回の滴下量は、特に限定されないが、例えば、0.01〜2.0mlが好適であり、0.1〜1.0mlがより好適であり、0.1〜0.5mlが更に好適である。
【0058】
本発明に係る粒子は、そのまま使用してもよいが、当該粒子をプレスして成形して成形体として用いてもよい。本発明に係るポリイミド多孔性ペレットは、多孔性のポリイミドにナノカーボンが分散している。そのため、本発明に係るポリイミド多孔性ペレットは、導電性を有しているため、静電気の発生が防止される。したがって、ペレットが成形時に静電気の反発によって飛び散りにくくなり、ハンドリング性が高まる。
【0059】
また、本発明に係るポリイミド多孔性ペレットと樹脂バインダを組み合わせて、成形することによって、導電性を有する断熱材とすることもできる。その他、水の浄化用ペレットや、触媒の担持体や、電極材料として使用できる。
【0060】
(ポリイミド粒子)
ポリイミド溶液から製造される析出体として、粒子を得ようとした場合、特に低分子量のポリイミドを用いた場合には、粉状の粒子が得られやすい。高分子量のポリイミドを用いた場合であっても、ホモジナイザー等で高速攪拌しながら滴下すれば、微粒子状のものが得られる。ここで、ポリイミド粒子の平均粒径は、30nm〜60nmである。このような方法により粒子を調製することによって、粒子の内部又は表面にナノカーボンが存在するナノカーボン―ポリイミド複合体の粒子を得ることができる。当該粒子をプレスして成形して成形体として用いてもよい。
【0061】
(その他の用途)
本発明に係る溶液を用いて、キャストすることによって、ナノカーボン―ポリイミド複合フィルムが得られる。
【0062】
本発明に係るポリイミド溶液を様々な用途に用いることができる。例えば、本発明に係る溶液を塗料や、感圧性接着剤や硬化型接着剤として用いることができる。
【0063】
塗料としては、本発明に係る溶液に、公知の樹脂バインダーを添加したものが使用される。例えば、本発明に係る溶液又は前記塗料を塗布して乾燥することによって、塗膜が得られる。塗布する対象としては、通常のポリイミド樹脂や、その他の材料、例えば金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。
【0064】
接着剤としては、本発明に係る溶液に、アクリル系の粘着樹脂や、ゴム系の粘着樹脂等の粘着樹脂を添加して、当該溶液をフィルム等に塗布して、粘着剤として使用することもできる。
【0065】
また、本発明に係る溶液をそのまま用いて、ホットメルト接着剤として使用することも可能である。また、溶液にエポキシ系の熱硬化性樹脂を添加することが好適である。これを熱硬化型接着剤として使用することが好適である。
【0066】
また、本発明に係る溶液又は前記塗布材料を用いて、フィルムを形成してもよい。フィルムは、公知の方法を用いて形成することができる。また、フィルム基材上に本発明に係る溶液を塗布して、カーボンナノチューブ―ポリイミド層を有するフィルムとして用いてもよい。
【実施例】
【0067】
製造例1(溶解性ポリアミドの調製(FDA−BTDA))
2000mLのセパラブルフラスコに、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を64.44g(0.2mol)と、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)を69.7g(0.2mol)、さらに溶媒としてNMPを1000mL加えて室温で攪拌した。これにより、ポリアミド酸が生成した。これに、さらに触媒としてγ−バレロラクトンを2.5g(0.024mol)とピリジンを5.85g(0.074mol)、さらにキシレンを200mL仕込み、180℃で5時間攪拌して反応させた。その際、環流冷却器とセパラブルフラスコの間にディーンスターク管を取付け、イミド化反応に伴い副生する水をキシレンとの共沸により反応系外のディーンスターク管にトラップし、キシレンはオーバーフローによりフラスコ中に戻した。これにより、イミド化反応が進行し、可溶性ポリイミド(FDA−BTDA)のNMP溶液が得られた。得られた可溶性ポリイミド(FDA−BTDA)のNMP溶液を180℃の減圧下で溶媒を留去したのち水とアセトンで順次洗浄したのち乾燥してポリイミド固形物を得た。
【0068】
製造例2(ポリアミド溶液の調製:(BAPS−M−BTDA)
1000mLのセパラブルフラスコに、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を32.22g(0.1mol)と、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(BAPS−M)を43.25g(0.1mol)、さらに溶媒としてNMPを500mL加えて室温で攪拌した。これにより、ポリアミド酸が生成した。これに、さらに触媒としてγ−バレロラクトンを1.25g(0.012mol)とピリジンを2.93g(0.037mol)、さらにキシレンを100mL仕込み、180℃で5時間攪拌して反応させた。その際、環流冷却器とセパラブルフラスコの間にディーンスターク管を取付け、イミド化反応に伴い副生する水をキシレンとの共沸により反応系外のディーンスターク管にトラップし、キシレンはオーバーフローによりフラスコ中に戻した。これにより、イミド化反応が進行し、可溶性ポリイミド(BAPS‐M−BTDA)のNMP溶液が得られた。得られた可溶性ポリイミド(BAPS‐M−BTDA)のNMP溶液を180℃の減圧下で溶媒を留去したのち水とアセトンで順次洗浄したのち乾燥してポリイミド固形物を得た。
【0069】
(実施例1〜6)
(カーボンナノチューブ(CNT)−ポリイミド複合体溶液の調製)
上記実施例で合成したポリイミドとカーボンナノチューブ(ナノシル社製、NC−7000)のNMP分散液(濃度:1重量%)を下表の比率で混合しCNT−ポリイミド複合体(複合体中におけるCNT濃度:1wt%)溶液を調製した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
(実施例3)
(CNT−ポリイミド複合体の多孔性ペレットの調製)
上記の溶液を、シリンジに吸い取り内径1mmの注射針より水中(多量、2L)へ0.2ml程度滴下してCNT−ポリイミド複合体の多孔性ペレットを調製した(図1)。滴下した液滴が水中に入った瞬間に液滴と水との界面でポリイミドが相分離を起こして膜(緻密な多孔性膜、スキン層)を形成してポリイミドとカーボンナノチューブ(ナノシル社製、NC−7000)のNMP分散液を内包する。その後、膜を通して、外層の水と内層されたNMPの交換が起こり、膜内のポリイミドが相分離してCNTと複合された多孔体を形成すると考えられる(図1)。調製した多孔性ペレットの物性を下表に記した。得られた多孔性ペレットのSEM写真を図2に示す。図2(a)は本発明に係る多孔性ペレットのSEM写真による全体像であり、図2(b)は多孔性ペレットのSEMによる断面写真であり、図2(c)は多孔性ペレットの断面の拡大写真であり、図2(d)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真であり、図2(e)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真であり、図2(f)は多孔性ペレットの内部断面の拡大写真である。図3は多孔性ペレットの表面の拡大写真である。図2(b)及び図2(c)によれば、多孔性ペレットの表面付近にスキン層が形成されている様子が観察できる。これらの写真によれば、スキン層の厚みは、50〜100nmであった。また、図2(e)及び図2(f)によれば骨格の切断面にカーボンナノチューブが観測される。このように、多孔性ペレットの骨格内部にカーボンナノチューブが分散されている。図3によれば、多孔性ペレットのスキン層を形成する一次粒子が観察され、更に一次粒子の間には、微少な10nm程度の孔が形成されていることが観察できる。
【0073】
【表3】

【0074】
上記の表の値は、下記の方法により測定した。
かさ密度:天秤で測定した重量を寸法計測した体積を割ることによって求めた。なお、粒子径は10倍に拡大した写真より、マウンテック社画像解析式粒度分布測定ソフトウェア
マックビューで計測した。また、10粒子の平均値をとった。
ガラス転移温度:エスアイアイナノテクノロジー(株)社DSC6220を用い、昇温速度20度/min、窒素中(50ml/min)で測定した。
熱分解温度:エスアイアイナノテクノロジー(株)社TG/DTA6300を用い、昇温速度10度/min、窒素中(200ml/min)で測定した。
【0075】
(実施例13)
(CNT−ポリイミド複合体の粉末の調製)
実施例13においては、溶液をポリイミドが5%の溶液に希釈して行った事を除けば、実施例7と同様に行った。水中にCNT−ポリイミド複合体の微粒子が沈降した。実施例7と同様に回収し、洗浄と乾燥を行った。
【0076】
(実施例14)
実施例14においては、溶液をポリイミドが5%の溶液に希釈して行った事を除けば、実施例11と同様に行った。水中にCNT−ポリイミド複合体の微粒子が沈降した。実施例11と同様に回収し、洗浄と乾燥を行った。
【0077】
(実施例15、16)
(CNT−ポリイミド複合体の成型品の製造)
実施例15では、実施例13で得られたCNT−ポリイミド複合体の粉末を、プレス機にて280℃、10MPaの条件で1時間圧縮成型を行い、厚み1mm、直径20mmの円板状サンプルを得た。実施例16では、実施例14で得られたCNT−ポリイミド複合体の粉末を用いた以外は実施例15と同様の条件で円板状サンプルを得た。物性を表5に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
(実施例17)
(CNT−ポリイミド複合体のフィルム)
ポリイミド(FDA−BTDA)を6g、CNT分散液を30ml、NMPを20ml使用したことを除き、実施例2と同様に調製した溶液を、PETフィルム上にアプリケーター(クリアランス:0.2mm)を用いてコートしたのち、110℃にて10分乾燥して、CNT−ポリイミド複合体の薄膜を調製した。厚みは30μmであった。この塗膜の表面抵抗を、三菱化学製ロレスタにて測定した結果、表面抵抗は4.5×10Ω/□であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
得られたCNT−ポリイミド複合体は、CNTが均一に分散されており、しかもその濃度は自由に調節することが可能であるため、用途に応じて導電性をコントロールすると同時に、その耐熱性と導電性を活かして、各種用途に用いることが出来る。
【0081】
多孔性ペレットは、そのまま、あるいは加工してフィルター材、摺動性を活かしたマイクロマシン用部品、PC用部品、さらに発泡性を活かした耐熱・放熱材料(自動車用部品、エンジン周り用脱メタル)に用いられる。又、パウダーはプレス等により加工して、上記と同様の耐熱・放熱材料として自動車部品や構造材料等に用いられる。
【0082】
さらに、複合体の溶液は、コーティング材料として、HD等の放熱性・耐熱性コーティング、発熱体に適用可能(どこにでも塗布可能で、軽量かつ導電性)である。また、これをフィルム化したものは、同様に耐熱・放熱材料としてフレキシブル回路基盤等の電子デバイスや、面状発熱体としても用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミドと、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液。
【請求項2】
ナノカーボンが、カーボンナノチューブである、請求項1記載のナノカーボン分散ポリイミド溶液。
【請求項3】
非イオン系、または両性イオン系界面活性剤からなるナノカーボン分散剤を更に含有する、請求項1又は2記載のナノカーボン分散ポリイミド溶液。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸化二無水物が、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であり、
前記ジアミン化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン又はビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンである、請求項1〜3のいずれか一項記載のナノカーボン分散ポリイミド溶液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のカーボン分散ポリイミド溶液の溶媒を除去して得られる、ナノカーボンが分散されたポリイミド複合材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項記載のカーボン分散ポリイミド溶液を塗布して得られる、塗膜。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項記載のカーボン分散ポリイミド溶液を塗布して乾燥させて得られる、ポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項記載のナノカーボン分散ポリイミド溶液を、前記溶媒よりも前記可溶性ポリイミドに対する溶解性の低い貧溶媒中に滴下することにより得られる、前記ナノカーボンが分散したポリイミド析出体。
【請求項9】
前記ポリイミド溶液の溶媒が、N−メチルピロリドン(NMP)であり、前記貧溶媒が水である、請求項8記載のポリイミド析出体。
【請求項10】
請求項8又は9記載のポリイミド析出体であって、
表面に形成されており、ポリイミドの一次粒子が融着して形成されるスキン層と、
前記スキン層よりも内部に形成されている多孔質構造を有するコア層とを有し、
前記スキン層の前記一次粒子の隙間に1〜50nmの孔を有し、
前記スキン層及びコア層中のポリイミドにカーボンナノチューブが分散している、ポリイミド多孔性ペレット。
【請求項11】
前記スキン層の厚みが、50〜100nmである、請求項10記載のポリイミド多孔性ペレット。
【請求項12】
請求項10又は11記載のポリイミド多孔性ペレットをプレス成形して得られる、成型体。
【請求項13】
テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミド、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒、及び前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液の前記溶媒を除去する、ナノカーボンが分散されたポリイミド複合材料の製造方法。
【請求項14】
テトラカルボン酸化二無水物及びジアミン化合物との重合体である可溶性ポリイミド、前記可溶性ポリイミドを溶解する溶媒、及び前記溶媒中に分散しているナノカーボンとを含有する、ナノカーボン分散ポリイミド溶液を、前記溶媒よりも前記可溶性ポリイミドに対する溶解性の低い貧溶媒中に滴下することにより、析出体を得る工程を含む、カーボンが分散したポリイミド析出体の製造方法。
【請求項15】
前記ナノカーボン分散ポリイミド溶液の可溶性ポリイミドの濃度が、2〜20重量%の範囲であり、
前記析出体の内部及び表面にナノカーボンが分散している、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記溶媒がN−メチルピロリドン(NMP)であり、前記貧溶媒が水である、請求項13〜15のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項17】
前記ナノカーボンが、カーボンナノチューブである、請求項13〜16のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項18】
前記テトラカルボン酸化二無水物が、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であり、
前記ジアミン化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン又はビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンである、請求項13〜17のいずれか一項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167186(P2012−167186A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29173(P2011−29173)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】