説明

ナノカーボン材料製造用触媒、その製造方法、ナノカーボン材料の製造装置

【課題】連続的に大量生産を効率よく行うことができ且つ純度の高いナノカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒、その製造方法、ナノカーボン材料の製造装置及びナノカーボン材料製造システムを提供する。
【解決手段】実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒13は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒11の表面に、その少なくとも一部を覆う被覆膜である金属酸化物膜12を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカーボン材料を効率的にしかも純度良く製造することができるナノカーボン材料生成用担体、その担体の製造方法、ナノカーボン材料製造装置、ナノカーボン材料製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボン材料であるカーボンナノチューブは、黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。このカーボンナノチューブには、黒鉛シートが円筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブと、黒鉛シートが円筒状に閉じた単層構造を有する単層ナノチューブとがある。
【0003】
一方の多層ナノチューブは、1991年に飯島により発見された。すなわち、アーク放電法の陰極に堆積した炭素の塊の中に、多層ナノチューブが存在することが発見された(非特許文献1)。その後、多層ナノチューブの研究が積極的になされ、近年は多層ナノチューブを多量に合成できるまでにもなった。
【0004】
これに対して、単層ナノチューブは概ね0.4〜10ナノメータ(nm)程度の内径を有しており、その合成は、1993年に飯島とIBMのグループにより同時に報告された。単層ナノチューブの電子状態は理論的に予測されており、ラセンの巻き方により電子物性が金属的性質から半導体的性質まで変化すると考えられている。従って、このような単層ナノチューブは、未来の電子材料として有望視されている。
【0005】
単層ナノチューブのその他の用途としては、ナノエレクトロニクス材料、電界電子放出エミッタ、高指向性放射源、軟X線源、一次元伝導材、高熱伝導材、水素貯蔵材等が考えられている。また、表面の官能基化、金属被覆、異物質内包により、単層ナノチューブの用途はさらに広がると考えられている。
【0006】
従来、上述した単層ナノチューブは、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン等の金属を陽極の炭素棒に混入し、アーク放電を行うことにより製造されている(特許文献1)。
しかし、この製造方法では、生成物中に、単層ナノチューブの他、多層ナノチューブ、黒鉛、アモルファスカーボンが混在し、収率が低いだけでなく、単層ナノチューブの糸径・糸長にもばらつきがあり、糸径・糸長の比較的揃った単層ナノチューブを高収率で製造することは困難であった。
【0007】
なお、カーボンナノチューブの製造方法としては、上述したアーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などが提案されている(特許文献2乃至4)。
【0008】
【非特許文献1】S.Iijima,Nature,354,56(1991)
【特許文献1】特開平06−280116号公報
【特許文献2】特許第3100962号公報
【特許文献3】特表2001−520615号公報
【特許文献4】特開2001−139317号公報
【特許文献5】特開2004−76197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献5の流動層方式で流動材に活性金属を担持した担体を用いて単層のカーボン材料を製造するに際し、触媒の粒径が100μm以下と極微粒であるので、流動層の流動材と担体とを併用する場合には、造粒して所定の粒径とする必要がある。
【0010】
そこで、従来では、図7に示すように、担体(一次粒子)1を触媒溶液2に含浸させて、触媒を担体表面に担持して触媒粒子3を形成し、その後加圧器4で加圧し、その後整粒することで、二次粒子の造粒触媒5を形成している。
【0011】
この造粒触媒5をナノカーボン材料製造用の触媒粒子とする場合、造粒触媒の表面5aでは、触媒微粒子3の表面に担持された触媒が露出することになり、該触媒から正常なナノカーボン材料が成長せずに、アモルファスカーボンが形成される、という問題がある。
【0012】
この造粒触媒5の表面に形成されるアモルファスカーボンは、不純物となり、ナノカーボン材料の純度を低下させる、という問題がある。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、連続的に大量生産を効率よく行うことができ且つ純度の高いナノカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造用触媒、その製造方法、ナノカーボン材料の製造装置及びナノカーボン材料製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒において、造粒触媒の表面の活性成分濃度と造粒触媒の内部の活性成分濃度とが異なるものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、造粒触媒の表面の活性成分濃度が0〜3%であり、造粒触媒の内部の活性成分濃度が0.01〜10%であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0016】
第3の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面に、その少なくとも一部を覆う被覆膜を形成してなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、前記被覆膜が多孔質膜であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0018】
第5の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄してなり、担体表面からナノカーボン材料生成触媒を除去してなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、前記洗浄材料が、低級アルコール、弱酸性溶液、弱アルカリ性溶液、水又はハロゲンガスのいずれかであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0020】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒にある。
【0021】
第8の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒して造粒触媒を形成する工程と、前記造粒触媒の少なくとも一部を被覆膜で覆う工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0022】
第9の発明は、第8の発明において、前記膜が多孔質膜であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0023】
第10の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄し、担体表面からナノカーボン材料生成触媒を除去することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0024】
第11の発明は、第9の発明において、前記洗浄材料が、低級アルコール、弱酸性溶液、弱アルカリ性溶液、水又はハロゲンガスのいずれかであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0025】
第12の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄する洗浄工程と、前記洗浄後の造粒触媒の少なくとも一部を被覆膜で覆う工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0026】
第13の発明は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面の活性成分を不活化する材料を供給し、担体表面のナノカーボン材料生成触媒の活性成分を不活化することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法にある。
【0027】
第14の発明は、反応器内に炭素原料を供給してナノカーボン材料を製造するナノカーボン材料の製造装置において、第1乃至7のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を用いてなることを特徴とするナノカーボン材料の製造装置にある。
【0028】
第15の発明は、第14の発明において、前記反応器が気流層反応器、固定層反応器、移動層反応器、流動層反応器のいずれか一つであることを特徴とするナノカーボン材料の製造装置にある。
【0029】
第16の発明は、第1乃至7のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を用いてなるナノカーボン材料の製造装置と、前記ナノカーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、該回収されたナノカーボン材料から担体を分離するナノカーボン材料精製装置とを具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システムにある。
【発明の効果】
【0030】
本発明のナノカーボン材料製造用触媒によれば、造粒触媒の表面部分の領域の一部を被覆膜で覆うようにすることにより、アモルファスカーボンの生成を抑制することができ、純度の高いナノカーボン材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0032】
[第1実施形態]
図1は本実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒の工程概略図である。
図1に示すように、本実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒13は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒11の表面に、その少なくとも一部を覆う被覆膜である金属酸化物膜12を形成してなるものである。
前記被覆膜は多孔質の材料からなり、前記金属酸化物膜12以外に、無機酸化物膜であってもよい。
【0033】
ここで、前記金属酸化物膜12としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムの内のいずれか一種又はこれらの組合せとするのがよい。
なお、被覆膜は多孔質であるので、原料ガスは透過し、造粒触媒の内部に存在する触媒に到達することができ、ここでナノカーボン材料の生成が行われる。
【0034】
ここで、造粒触媒の粒径は特に限定されるものではないが、特に流動層反応形式の場合には、例えば100μm〜10mm、好ましくは400μm〜2.0mmとするのがよい。
【0035】
また、本発明では、担体に担持される活性金属は、特には限定されるものではないが、例えばV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mo,W等の金属その他遷移金属を挙げることができる。
【0036】
また、本発明にかかる担体の材料は、例えばアルミナ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、例えば酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、例えばリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のアパタイト系とするのが好ましい。
ここで、アパタイトとは、M102+(Z5-4)62-の組成をもつ鉱物でM、ZO4、Xに対して次のような各元素が単独あるいは2種類以上の固溶状態で入るものをいう。
M:Ca,Pb,Ba,Sr,Cd,Zn,Ni,Mg,Na,K,Fe,Alその他、
ZO4:PO4、AsO4,VO4,SO4,SiO4,CO3
X:F,OH,Cl,Br,O,I
【0037】
ここで、本実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒13の製造方法は、図2に示すように、担体の表面に担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒を担持させる触媒担持工程S−11と、触媒を担持した触媒粒子を例えば加圧器等の加圧装置によりプレス成形して成形体を得る成形工程S−12と、前記成形体を粉砕・整粒して所定粒径の造粒触媒とする粉砕・整粒工程S−13と、得られた所定粒径の造粒触媒の表面に被覆膜をコーティングする膜コーティング工程S−14と、前記膜コーティング後の造粒触媒を乾燥する乾燥工程S−15とを含むことである。
【0038】
ここで、膜コーティング工程の被覆方法は特に限定されるものではないが、例えばゾル・ゲル法の他、CVD法、スラリーディッピング法、蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法を例示することができる。
【0039】
前記造粒触媒11の表面に金属酸化物膜12が形成されたナノカーボン材料製造用触媒13は、前記金属酸化物膜12の存在により、当該造粒触媒11の表面にアモルファスカーボンが生成するのを防止される。この結果、アモルファスカーボンによる不純物量が少なくなるので、純度が高いナノカーボン材料を得ることができる。
【0040】
ここで、本発明でナノカーボン材料とは、ナノ単位ミクロ単位のナノカーボン材料であり、供給された炭素源が触媒に作用し、再析出されて出現される例えばファイバ状、チューブ状、カップ状等の種々の形状を有するカーボンをいう。なお、ナノ単位のナノカーボン材料を単にナノカーボンともいう。
【0041】
前記ナノカーボンの一例としては、例えば単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)のような他のナノチューブ、フィッシュボーンタイプ又はプレートレットタイプのカーボンファイバー等を挙げることができ、これらの製造において、前記造粒触媒を適いることで、不純物のないナノカーボン材料の飛躍的な成長を図ることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図3は本実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒の工程概略図である。
図3に示すように、本実施形態にかかるナノカーボン材料製造用触媒13は、表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒11の表面を洗浄材料である水14により洗浄してなり、担体表面からナノカーボン材料生成触媒を除去してなるものである。図3は、触媒が除去された模式図であり、符号11aは触媒が水洗により除去された領域を概念的に示している。
【0043】
この洗浄により、造粒触媒11の表面部分における触媒を積極的に除去することができ、表面部分において原料ガスが存在していても、炭素生成率が低下し、アモルファスカーボンの生成が抑制される。
【0044】
前記洗浄材料としては、触媒が効率的に除去されるものであれば、いずれでもよいが、前記水以外には、例えば低級アルコール、pH1〜6の酸性溶液、pH8〜12のアルカリ性溶液、又はハロゲンガスとすることができる。
【0045】
ここで、前記酸性溶液の場合には、より好ましくは、pH6前後の弱酸水、前記アルカリ性溶液の場合には、より好ましくはpH8前後の弱アルカリ水とするのがよい。
【0046】
また、前記ハロゲンガスとしては、塩素ガスを例示することができる。
【0047】
図4においては、洗浄材料として弱酸水16を用いて、粒触媒11の表面部分における触媒を積極的に除去することを示している。
【0048】
また、図5においては、洗浄材料として塩素ガス18を用いて、粒触媒11の表面部分における触媒を積極的に除去することを示している。塩素ガス18を用いる場合には、触媒が塩化金属となり、その後加熱することで触媒が除去されることになる。
【0049】
本発明にかかる造粒触媒の表面に触媒が存在しないナノカーボン材料製造用触媒を用いて、ナノカーボン材料を製造することで、アモルファスカーボンの発生が抑制され、純度の高いナノカーボン材料を得ることができる。よって、精製工程での後処理が容易となる。
【0050】
本発明では、表面ナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒において、その表面に金属酸化物膜12を形成したり、又はその表面の一部を洗浄により活性成分を除去したりすることで、造粒触媒の表面の活性成分濃度と造粒触媒の内部の活性成分濃度とが異なるものとしている。この結果、アモルファスカーボンの発生を抑制するようにしている。ここで、造粒触媒の表面の活性成分濃度が好適には0〜3%とし、造粒触媒の内部の活性成分濃度が好適には0.01〜10%とするのがよい。
また、被覆や洗浄以外に、活性成分を不活化する材料を供給して造粒触媒の表面の活性成分の活性を不活化させるようにしてもよい。この不活化する材料としては、例えばSを含む例えばチオフェン、H2S等のS分含む材料を供給して被毒化させるようにすればよい。
【0051】
図6−1は、表面に金属酸化物膜12を形成したものを模式的に示したものであり、図6−2は洗浄により活性成分を除去11aしたものを模式的に示したものであり、図6−3はS分を含む材料を供給することで、活性成分を被毒化させて不活化11bしたものを模式的に示したものである。
このように処理されたナノカーボン材料製造用触媒を用いてナノカーボン材料を製造することで、アモルファスカーボンの発生が抑制された純度の高いナノカーボン材料を安定して供給することができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、反応器として流動層反応器を用いた場合の一例について図7を参照しつつ説明する。
本実施形態では、前述した被覆膜を形成した所定粒径の造粒触媒を流動材と兼用するものであり、流動触媒21としている。図7に示すように、本実施形態にかかるナノカーボン材料の製造システムは、ナノカーボン材料の製造装置50と、前記ナノカーボン材料を製造装置から回収する分離・回収装置52と、該回収されたナノカーボン材料から触媒を分離する精製装置55とを具備するものである。
【0053】
具体的には、ナノカーボン材料の製造システムは、内部に流動材である流動触媒21を充填した流動層反応部23−1と、炭素源20を前記流動層反応部23−1内に供給する原料供給装置41と、流動触媒21を前記流動層反応部23−1内に供給する流動触媒供給装置42と、前記流動層反応部23−1内の流動材である流動触媒21が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部23−2と、前記流動層反応部23−1に導入し、内部の流動触媒21を流動させる流動ガス22を供給する流動ガス供給装置43と、流動層反応部23−1を加熱する加熱部23−3と、該フリーボード部23−2から飛散されたナノカーボン材料生成物(微粒)24−1を回収する第1回収ライン51−1と、第1回収ライン51−1で回収された流動触媒21及びナノカーボン材料生成物(微粒)24−1から排ガス57を分離・回収する分離・回収装置52と、流動層反応部23−1から流動触媒21及びナノカーボン材料生成物(粗粒)24−2を抜き出す第2回収ライン51−2と、抜き出された流動触媒21及びナノカーボン材料生成物(粗粒)24−2と、分離・回収装置52からのナノカーボン材料生成物(微粒)24−1とを回収する回収装置53と、回収装置53で回収されたナノカーボン材料生成物(微粒)24−1及びナノカーボン材料生成物(粗粒)24−2に付着している触媒を除去し、ナノカーボン材料純品56とする精製装置55と、前記分離・回収装置52で分離された排ガス57を処理する排ガス処理装置58とを具備するものである。
【0054】
前記流動層反応部23−1の流動層反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
本実施形態では、流動層反応部23−1とフリーボード部23−2と加熱部23−3とから流動層反応器23を構成している。また、フリーボード部23−2は、流動層反応部23−1よりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0055】
前記原料供給装置41より供給される原料ガスである炭素源20は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2の他、メタン,エタン,プロパン及びヘキサンなどのアルカン類、エチレン,プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等の含酸素官能基を有する有機化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸素濃度制御のため、含酸素炭素源CO、CO2、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等と、酸素を含まない炭素源とを2つ以上組み合わせて供給することもできる。
【0056】
この炭素源14は、流動層反応部23−1内にガス状態で供給し、流動材である流動触媒21による攪拌により均一な反応が行われ、ナノカーボン材料を成長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガス22として流動ガス供給装置43により不活性ガスを流動層反応部23−1内に導入している。
【0057】
そして、300℃から1300℃の温度範囲、より好ましくは400℃から1200℃の温度範囲とし、メタン等の炭素原料を不純物炭素分解物の共存環境下で一定時間触媒に接触することによってナノカーボン材料を合成している。
【0058】
前記分離・回収装置52としてサイクロン以外には、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0059】
また、分離・回収装置52で分離されたナノカーボン材料生成物24は、付着した触媒を分離する精製装置55により、ナノ単位のナノカーボン材料(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等)純品56として回収するようにしている。
本実施形態においては、流動触媒21として表面に被覆膜をコーティングした造粒触媒を用いてナノカーボン材料を製造するようにしているので、造粒触媒の表面ではアモルファスカーボンの生成がなく、造粒触媒の内部にのみに存在する触媒に成長するナノカーボン材料が成長することとなり、この結果製品として、純度が高い良好なものの大量生産化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかるナノカーボン材料製造用触媒は、表面の触媒部分を覆うようにしたり、触媒部分を除去するようにするので、ナノカーボン材料の生成において、不純物であるアモルファスカーボンの生成が抑制され、純度の向上した大規模なナノカーボン材料の大量生産化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態のナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる工程図である。
【図3】第2の実施形態のナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
【図4】第2の実施形態の他のナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
【図5】第2の実施形態の他のナノカーボン材料製造用触媒の模式図である。
【図6−1】造粒触媒の模式図である。
【図6−2】造粒触媒の模式図である。
【図6−3】造粒触媒の模式図である。
【図7】第3の実施形態にかかるナノカーボン材料の製造装置の概略図である。
【図8】造粒触媒の工程概略図である。
【符号の説明】
【0062】
11 造粒触媒
12 金属酸化物膜
13 ナノカーボン材料製造用触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒において、
造粒触媒の表面の活性成分濃度と造粒触媒の内部の活性成分濃度とが異なるものであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
造粒触媒の表面の活性成分濃度が0〜3%であり、造粒触媒の内部の活性成分濃度が0.01〜10%であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項3】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面に、その少なくとも一部を覆う被覆膜を形成してなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項4】
請求項3において、
前記被覆膜が多孔質膜であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項5】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄してなり、担体表面からナノカーボン材料生成触媒を除去してなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項6】
請求項5において、
前記洗浄材料が、低級アルコール、弱酸性溶液、弱アルカリ性溶液、水又はハロゲンガスのいずれかであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項8】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒して造粒触媒を形成する工程と、
前記造粒触媒の少なくとも一部を被覆膜で覆う工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記膜が多孔質膜であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項10】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄し、担体表面からナノカーボン材料生成触媒を除去することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項9において、
前記洗浄材料が、低級アルコール、弱酸性溶液、弱アルカリ性溶液、水又はハロゲンガスのいずれかであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項12】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面を洗浄材料により洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄後の造粒触媒の少なくとも一部を被覆膜で覆う工程とを含むことを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項13】
表面にナノカーボン材料生成触媒を担持した担体を所定粒径に造粒してなる造粒触媒の表面の活性成分を不活化する材料を供給し、担体表面のナノカーボン材料生成触媒の活性成分を不活化することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項14】
反応器内に炭素原料を供給してナノカーボン材料を製造するナノカーボン材料の製造装置において、
請求項1乃至7のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を用いてなることを特徴とするナノカーボン材料の製造装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記反応器が気流層反応器、固定層反応器、移動層反応器、流動層反応器のいずれか一つであることを特徴とするナノカーボン材料の製造装置。
【請求項16】
請求項1乃至7のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を用いてなるナノカーボン材料の製造装置と、
前記ナノカーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、
該回収されたナノカーボン材料から担体を分離するナノカーボン材料精製装置とを具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−231198(P2006−231198A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49463(P2005−49463)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】