説明

ナノコンポジットおよびナノコンポジットに関する方法

【解決手段】 導電率について低いパーコレーションしきい値を有し、熱伝導率について低いパーコレーションしきい値を有し、あるいは改善された機械特性を有するナノコンポジット材料用に、電気的、熱的、および機械的な応用例が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、全体としてナノ材料ベースのナノコンポジットおよびその応用の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、六方晶系の方眼紙が継ぎ目なく筒状に丸まり結合したものとして視覚化できる。この方眼紙の各線は炭素炭素結合を表し、また各交点は炭素原子を表す。
【0003】
一般に、カーボンナノチューブは、典型的に外周にわずか数原子のみの細長い管状体である。カーボンナノチューブは、内部が中空で、直線状のフラーレン構造を有する。潜在的に、カーボンナノチューブの長さは、その分子サイズの直径の数百万倍にもなりうる。単層カーボンナノチューブ(single−walled carbon nanotube、略称SWNTs)も、多層カーボンナノチューブ(multi−walled carbon nanotube、略称MWNTs)も存在が認められている。
【0004】
カーボンナノチューブ(別称「CNTs」)は、例えば、強度や重量に関係した非常に望ましくかつ特異的な物理特性の組み合わせを有しているため、現在いくつかの応用が提案されている。カーボンナノチューブは、立証された導電性も示している(Yakobson、B.I.et al.、American Scientist、85、(1997)、324〜337; およびDresselhaus、M.S.et al.、Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes、(1996)、San Diego、Academic Press、902〜905)。例えば、カーボンナノチューブは、銅や金より熱および電気の導電性が高く、ステンレス鋼の100倍もの引張強度を有しながら、重量はステンレス鋼のわずか6分の1である。カーボンナノチューブは、驚異的な小型サイズで生成されうる。例えば、現在生成されているカーボンナノチューブは、ほぼDNA二重らせんのサイズ(または人毛の太さの約1/50,000)である。
【0005】
カーボンナノチューブの優れた特性を考慮すると、カーボンナノチューブは、コンピュータ回路の構築、複合材料(コンポジット)の強化、および薬物送達など、多様な用途に非常に適している。またカーボンナノチューブは、高い熱伝導率および小型・軽量性を要求することの多いマイクロ電子装置への応用に役立つ可能性が高い。フラットパネルディスプレイの使用において認められているカーボンナノチューブ用途の1つは、電子の電界放出技術を使うというものである(カーボンナノチューブは良好な導体および電子エミッタ(電子放出体)であるため)。これまで認められている他の用途には、携帯電話機およびラップトップコンピュータの電磁遮蔽、ステルス航空機用レーダー吸収、ナノエレクトロニクス(新世代コンピュータのメモリを含む)、および高強度・軽量・多機能複合材料としてのものが含まれる。
【0006】
ただし、母材内ではナノチューブおよびナノチューブ凝集体の分散性が低いため、複合材料にカーボンナノチューブを使う試みは、その可能性に遠く及ばない結果に終わっているのが現状である。一般に、自然な状態のSWNTsは一般的な溶媒および高分子に不溶性を示し、ナノチューブ本来の望ましい特性を変更せずに化学的に官能基化するのが困難である。ガラス繊維(グラスファイバー)、炭素繊維(カーボンファイバー)、金属粒子といった、よりスケールの大きな、高分子用添加剤で成功している物理的混合などの技術では、良好なCNT分散の達成に失敗している。これまで、ホスト高分子内でSWNTを分散させるには、次の2つの一般的アプローチが取られている。
【0007】
1)長時間の超音波処理により、高分子溶液中でSWNTを分散させる(最高48時間、M. J. Biercukら、Appl. Phys. Lett. 80、2767 (2002))、及び
2)SWNT存在下でのin situ重合。
【0008】
しかしながら、アプローチ1)の長時間の超音波処理はSWNTsを損傷または切断する場合があり、これは多数の応用において望ましいことではない。アプローチ2)の効率は、溶液中でのナノチューブの分散の度合いにより決定されるが、この度合いは非常に低く、特定の高分子に高度に依存する。例えば、これはポリスチレン(Barraza, H.J.ら、Nano Ltrs、2、797 (2002))よりポリイミドの方がうまく機能する(Park, C.ら、Chem. Phys. Lett.、364、303(2002))。
【0009】
CNTは非常に優れた物理特性を有するが、これを他の材料に組み込むことは炭素の表面化学により妨げられている。位相分離、凝結、マトリックス内での低分散、および母材への低粘着度などの問題が克服されなければならない。
【0010】
カーボンナノチューブの非共有官能基化および可溶化の工程は、Chen, J.ら(J. Am. Chem. Soc.、124、9034 (2002))により説明されており、この工程の結果、優れたナノチューブ分散が得られる。Chenら(同書)が説明しているように、また2002年9月24日に出願された米国特許番号第10/255,122号および2002年12月13日に出願された米国特許出願第10/318,730号を有する2004年2月19日に公開された米国特許出願第US2004/0034177号で説明されているように、SWNTは、激しい振盪および/または短時間の浴槽・超音波処理とともにポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)でクロロホルム中において可溶化された。このような、ホスト高分子にポリカーボネートまたはポリスチレンを伴った官能性および可溶性カーボンナノチューブの複合材料(コンポジット)が生成されており、このような複合材料の特定の機械特性は、2004年2月19日に公開された米国特許出願第US2004/0034177号、2002年9月24日に出願された米国特許番号第10/255,122号、および2002年12月13日に出願された米国特許出願第10/318,730号に報告されている。
【0011】
本発明は、強度の損失、粒子の生成、粘性の増加、処理可能性の損失、または他の材料劣化といった、複合材料に望ましくない結果を生じる、ホスト高分子マトリックス内でのナノ材料の非均一な分散を有するナノコンポジットの問題に対処しており、改善された特性を有するナノコンポジットを本明細書において提供するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、官能性・可溶性ナノ材料のナノコンポジットと、ホストマトリックスとを提供し、前記ナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、低い電気的パーコレーションしきい値を伴った高い導電率か、低い熱的パーコレーションしきい値を伴った高い熱伝導率か、改善された機械特性かを提供する。この低いパーコレーションしきい値は、ホストマトリックス内で前記ナノ材料の高分散が達成されたことを示している。さらに、導電率の増加またはホストマトリックスの特性改善を達成するために必要な官能性・可溶性ナノ材料は少量であるため、ホストマトリックスの他の望ましい物理特性および処理可能性が犠牲になることはない。
【0013】
ホストマトリックスを有するナノコンポジットであって、当該ホストマトリックスは当該ホストマトリックス内に分散した高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスと、官能性・可溶性ナノ材料とを有する、ホストマトリックスを有するナノコンポジットが、本発明の実施形態である。このナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、より低い導電性パーコレーションしきい値または熱伝導性パーコレーションしきい値を有する。このホストマトリックスは、以下説明するように、有機高分子マトリックスか、無機高分子マトリックスか、非高分子マトリックスか、これらの組み合わせかであってよい。
【0014】
本発明の別の実施形態は上記のナノコンポジットであり、ここで、当該ナノコンポジットの前記官能性・可溶性ナノ材料は第1充填剤であり、当該ナノコンポジットは、複雑なナノコンポジットを形成するための第2充填剤をさらに有する。この実施形態では、前記第2充填剤は連続繊維か、不連続繊維か、ナノ粒子か、マイクロ粒子か、マクロ粒子か、これらの組み合わせかを有し、当該第2充填剤は官能性・可溶性ナノ材料以外である。
【0015】
高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスのホストマトリックスを有するナノコンポジットであって、前記高分子マトリックスはポリスチレンおよびポリカーボネート以外である、ナノコンポジットと、前記ホストマトリックス内に分散した官能性・可溶性ナノ材料とは、本発明の別の実施形態である。前記ナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、強化された機械特性を有する。このナノコンポジットは、第2ホスト高分子マトリックスをさらに有することができ、前記官能性・可溶性ナノ材料は、第1ホスト高分子マトリックスおよび前記第2ホスト高分子マトリックス内で分散される。さらに、前記ナノコンポジットの前記官能性・可溶性ナノ材料が第1充填剤である場合、当該ナノコンポジットは、複雑なナノコンポジットを形成するための第2充填剤をさらに有してよく、ここで、前記第2充填剤は官能性・可溶性ナノ材料以外である。
【0016】
本発明の別のナノコンポジットは、ポリスチレンと、このポリスチレン内で分散された官能性・可溶性ナノ材料とを有する。このようなナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、強化された機械特性を有する。このナノコンポジットは、第2ホスト高分子マトリックスをさらに有することができ、前記官能性・可溶性ナノ材料は、前記第1ホスト高分子マトリックスおよび前記第2ホスト高分子マトリックス内で分散される。
【0017】
一実施形態では、ナノコンポジットは、ホストマトリックスであって、当該ホストマトリックス内に分散した第1高分子マトリックスと、第2高分子マトリックスと、官能性・可溶性ナノ材料とを有するホストマトリックスを有し、前記第1高分子マトリックスはポリカーボネートである。
【0018】
高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスを有するホストマトリックスの導電率または熱伝導率を増加させる方法は、ナノコンポジットを形成するため官能性・可溶性ナノ材料をホストマトリックス材料内で分散させる工程を有する。この実施形態では、前記ナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、より低い導電性パーコレーションしきい値または熱伝導性パーコレーションしきい値を有する。前記ホストマトリックス材料は、前記ホストマトリックスまたはホスト高分子マトリックスのモノマーであってよく、このような実施形態では、前記方法は、前記官能性・可溶性ナノ材料の存在下で、前記ホスト高分子マトリックスの材料を重合させる工程をさらに有する。別の実施形態では、前記ホストマトリックスは、第1ホスト高分子マトリックスであり、前記方法は、第1ホスト高分子マトリックスおよび第2ホスト高分子マトリックスを有するナノコンポジットを形成するため、官能性・可溶性ナノ材料および第1ホスト高分子マトリックス材料で第2ホスト高分子マトリックス材料を分散させる工程をさらに有する。一実施形態では、官能性・可溶性ナノ材料は第1充填剤であり、前記分散させる工程は、複雑なナノコンポジットを形成するためホストマトリックス材料内で第2充填剤を分散させる工程をさらに有する。ここで、前記第2充填剤は連続繊維か、不連続繊維か、ナノ粒子か、マイクロ粒子か、マクロ粒子か、これらの組み合わせかを有し、当該第2充填剤は官能性・可溶性ナノ材料以外である。
【0019】
高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスを有するホストマトリックスの機械特性を改善する方法であって、前記ホストマトリックスは、ポリスチレンまたはポリカーボネート以外である、前記方法は、本発明の一態様である。この方法は、ナノコンポジットを形成するためホストマトリックス材料内で官能性・可溶性ナノ材料を分散させる工程を有し、前記ナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、改善された機械特性を有する。前記ホストマトリックス材料は、前記ホストマトリックスであるか、または当該ホストマトリックスのモノマーを有してよく、前記方法は、前記官能性・可溶性ナノ材料の存在下で、前記ホストマトリックス材料を重合させる工程をさらに有する。この方法は、第1ホスト高分子マトリックスおよび第2ホスト高分子マトリックスを有するナノコンポジットを形成するため、官能性・可溶性ナノ材料および第1ホスト高分子マトリックス材料で第2ホスト高分子マトリックス材料を分散させる工程をさらに有しうる。さらに、前記官能性・可溶性ナノ材料が第1充填剤である場合、前記分散させる工程は、複雑なナノコンポジットを形成するためホストマトリックス材料内で第2充填剤を分散させる工程をさらに有してよく、ここで、前記第2充填剤は官能性・可溶性ナノ材料以外である。
【0020】
ポリスチレンの機械特性を改善する方法は、ナノコンポジットを形成するためスチレン高分子材料内で官能性・可溶性ナノ材料を分散させる工程を有し、前記ナノコンポジットは、ポリスチレンおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、改善された機械特性を有する。ポリスチレンの機械特性を改善する別の実施形態を生成するため、第2ホストマトリックスまたは第2充填剤を加えてもよい。
【0021】
第1高分子マトリックスおよび第2高分子マトリックスを有するホストマトリックスの機械特性を改善する方法であって、前記第1高分子マトリックスはポリカーボネートである、前記方法は、本発明の一態様である。この方法は、ナノコンポジットを形成するためホスト高分子材料内で官能性・可溶性ナノ材料を分散させる工程を有し、前記ナノコンポジットは、前記ホストマトリックスおよび前記官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料を有するナノコンポジットと比べ、改善された機械特性を有する。複雑なナノコンポジットを生成するため、第2充填剤を加えてもよい。
【0022】
本明細書で説明するように、改善された電気特性、熱特性、または機械特性を有するナノコンポジットを有する製造品は、本発明の別の実施形態である。さらに、本明細書で説明する方法で生成された生成物は、本発明の実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
官能性・可溶性の単層カーボンナノチューブ(functionalized, solubilized single−walled carbon nanotube、略称f−s−SWNT)を使って、高度に分散されたカーボンナノチューブ/高分子ナノコンポジットが製造された。このようなナノコンポジットは、例えば、非常に低いパーコレーションしきい値を伴った導電率(0.05〜0.1wt%のSWNTローディング)を実証している。ホスト高分子の他の好適な物理特性および処理可能性を低下させずに種々の電気的用途に必要な電気導電率レベルを達成するには、非常に低いf−s−SWNTローディングが要求される。
【0024】
ナノコンポジット:本明細書における用語「ナノコンポジット」は、ホストマトリックス内に分散された非共有結合的な官能性・可溶性ナノ材料を意味する。このホストマトリックスは、ホスト高分子マトリックスまたはホスト非高分子マトリックスであってよい。
【0025】
ホスト高分子マトリックス:本明細書における用語「ホスト高分子マトリックス」は、内部にナノ材料が分散された高分子マトリックスを意味する。ホスト高分子マトリックスは、有機高分子マトリックスか無機高分子マトリックス、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0026】
ホスト高分子マトリックスの例としては、ナイロン、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリイソプレン、SBSゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(硫化フェニレン)、ポリ(酸化フェニレン)、シリコン、ポリケトン、アラミド、セルロース、ポリイミド、レーヨン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、炭素繊維(カーボンファイバー)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチニレン)、ポリチオフェン、熱可塑性物質、熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリエステル樹脂、またはエポキシ樹脂など)、ポリアニリン、ポリピロール、またはPARMAX(登録商標)などのポリフェニレン、例えば、他の共役高分子(導電性高分子など)、またはこれらの組み合わせなどがある。
【0027】
ホスト高分子マトリックス他の例としては、エチレンビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(perfluoroalkoxyalkane)、クロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、またはエチレンテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、アイオノマー、ポリアクリル酸塩、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン(polyethylenechlorinates)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone)、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、またはポリウレタンといった熱可塑性物質を含む。特定の実施形態におけるホスト高分子には、アリル樹脂、メラミンホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒドプラスチック、ポリエステル、ポリイミド、エポキシ、ポリウレタン、またはこれらの組み合わせなどの熱硬化性樹脂などを含む。
【0028】
無機ホスト高分子の例としては、シリコン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリゲルマン、ポリスタンナン、ポリホスファゼン、またはこれらの組み合わせがある。
【0029】
ナノコンポジットには2つ以上のホストマトリックスが存在しうる。2つ以上のホストマトリックスを使うと、前記ナノコンポジット材料のマトリックスにf−s−SWNTを加えることにより、単一のホストマトリックスナノコンポジットの機械特性、熱特性、化学特性、または電気特性が最適化される。以下の実施例4では、本発明のナノコンポジット材料のホスト高分子としてポリカーボネートおよびエポキシが提供される実施形態の例を提供いる。エポキシのほかポリカーボネートを加えると、ホスト高分子としてエポキシだけを伴うナノコンポジット膜と比べ、ナノコンポジット膜内の空隙を低減できる。このような空隙は、ナノコンポジットの性能を劣化させる。
【0030】
一実施形態では、2つのホスト高分子の使用は溶媒で流延されるエポキシナノコンポジット用に設計され、その場合、f−s−SWNTsと、エポキシ樹脂および硬化剤と、ポリカーボネートとは、溶媒に溶解され、ナノコンポジット膜は溶液流延法またはスピンコーティングにより形成される。
【0031】
ホスト非高分子マトリックス:本明細書における用語「ホスト非高分子マトリックス」は、内部にナノ材料が分散された非高分子マトリックスを意味する。ホスト非高分子マトリックスの例には、セラミックマトリックス(炭化ケイ素、炭化ホウ素、または窒化ホウ素など)、または金属マトリックス(アルミニウム、チタン、鉄、または銅など)、またはこれらの組み合わせなどを含む。官能性・可溶性SWNTsには、例えば有機溶媒中のポリカルボシランを混合したのち、溶媒を除去して固体(膜、繊維、または粉末)を形成する。その結果生じた固体f−s−SWNTs/ポリカルボシランナノコンポジットを、さらに、減圧下または(Arなどの)不活性雰囲気下で900〜1600℃に加熱してSWNTs/SiCナノコンポジットに変換する。
【0032】
ナノ材料:本明細書における用語「ナノ材料」は、官能性および可溶性の、多層カーボンナノチューブまたは多層窒化ホウ素ナノチューブ、単層カーボンナノチューブまたは単層窒化ホウ素ナノチューブ、炭素または窒化ホウ素のナノ粒子、炭素または窒化ホウ素のナノファイバー、炭素または窒化ホウ素のナノロープ、炭素または窒化ホウ素のナノリボン、炭素または窒化ホウ素のナノフィブリル、炭素または窒化ホウ素のナノニードル、炭素または窒化ホウ素のナノシート、炭素または窒化ホウ素のナノロッド、炭素または窒化ホウ素のナノホーン、炭素または窒化ホウ素のナノコーン、炭素または窒化ホウ素のナノスクロール、黒鉛ナノプレートレット、ナノドット、他のフラーレン材料、またはこれらの組み合わせを含むが、これに限定はされない。本明細書における用語「ナノチューブ」は広義に使われ、別段の断りがない限りいかなるタイプのナノ材料も包含するよう意図されている。一般に「ナノチューブ」は管状で、原子スケールの外周を有するストランド状の構造である。例えば、単層ナノチューブの直径は、典型的に約0.4ナノメートル(nm)〜約100nmの範囲で、最も典型的には約0.7nm〜約5nm範囲の直径を有する。
【0033】
本明細書における用語「SWNT」は単層ナノチューブを意味し、本明細書で別段の断わりがない限り、上述の他のナノ材料が置換可能であることを意味している。
【0034】
官能性・可溶性ナノ材料:本明細書における用語「官能性・可溶性ナノ材料」は、硬質の共役高分子での非ラッピング非共有結合性の官能基化により、ナノ材料が可溶化されていることを意味する。このような官能基化および可溶化は、Chen, J.ら(J. Am. Chem. Soc.、124, 9034 (2002))のカーボンナノチューブ用の工程および組成物により例示されており、この工程は、結果として優れたナノチューブ分散が得られ、2002年9月24日に出願された米国特許番号第10/255,122号および2002年12月13日に出願された米国特許出願第10/318,730号明細書を有する、2004年2月19日に公開された米国特許出願第US2004/0034177号明細書に説明されている。
【0035】
本明細書において使用される、官能基化および可溶化用の用語「硬質の共役高分子」は、ナノチューブとの非ラッピング的非共有結合用の基幹部を含む。この基幹部は、以下の化学式を有するグループを有しうる。
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

【0038】
ここで、Mは、Ni、Pd、およびPtとからなる群から選択され、
【化3】

【0039】
ここで、上記基幹部a)〜q)におけるR〜Rのそれぞれは、以下説明する炭素結合または酸素結合により当該基幹に結合されたH基か、F基か、R基かを表す。
【0040】
例えばこの基幹は、a)(上記)のポリ(アリーレンエチニレン)を有しうる。ここで、R基は次のとおりである。
【0041】
i) R=R=HおよびR=R=OC1021
ii) R=R=R=R=F、
iii)R=R=HおよびR=R
【0042】
【化4】

または
【0043】
iiii) R=R=HおよびR=R
【0044】
【化5】

【0045】
またはこれらの任意の組み合わせ。すなわち、R基は以下でありうる。
【0046】
【化6】

【0047】
硬質の共役高分子の他の実施形態としては、以下のエーテル結合により基幹に結合された基幹およびR基を有するものなどを含む。
【0048】
【化7】

r)、
【0049】
【化8】

s)、
【0050】
【化9】

t)、
【0051】
【化10】

u)、
【0052】
【化11】

v)、
【0053】
【化12】

w)、
【0054】
【化13】

x)、
【0055】
【化14】

y)、
【0056】
【化15】

z)、
【0057】
【化16】

aa)、
【0058】
【化17】

bb)、
【0059】
【化18】

cc)、
【0060】
【化19】

dd)、またはさらに図ee)またはjj)に示す炭素結合、
【0061】
【化20】

ee)、
【0062】
【化21】

ff)、
【0063】
【化22】

gg)、
【0064】
【化23】

hh)、
【0065】
【化24】

ii)、
【0066】
【化25】

jj)、
【0067】
【化26】

kk)、または
【0068】
【化27】

ll)。
【0069】
一実施形態では、前記R基は種々の溶媒でCNTの溶解度を調整するよう設計されており、例えば、直鎖状または分岐鎖状グリコール側鎖を伴うPPE高分子を使うと、DMFまたはNMP中での高いSWNTs溶解度が提供され、さらにDMFまたはNMPに対し可溶性でありながらハロゲン化溶媒(クロロホルムなど)に対しては可溶性でないホスト高分子(ポリアクリロニトリルなど)にf−s−SWNTsを均一に混合できようになる。さらに他の実施形態では、上記説明したように炭素‐炭素結合または酸素‐炭素結合により前記基幹に結合されたR基は、付加的な反応性種、すなわち官能基を、前記R基の末端に有しうる。本明細書における用語「末端」は、このようなR基の基幹から離れた、遠位の、当該R基の側鎖の外端を意味する。このような官能基には、例えば、アセタール、酸ハロゲン化物、アシルアジド、アルデヒド、アルカン、無水物、環状アルカン、アレーン、アルケン、アルキン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アミン、アミド、アミノ酸、アルコール、アジド、アジリジン、アゾ化合物、カリックスアレーン、炭水化物、炭酸塩、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボジイミド、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプタンド、ジアミノピリジン、ジアゾニウム化合物、エステル、エーテル、エポキシド、フラーレン、グリオキサール、イミド、イミン、イミドエステル、ケトン、ニトリル、イソチオシアネート、イソシアネート、イソニトリル、ラクトン、マレイミド、メタロセン、NHSエステル、ニトロアルカン、ニトロ化合物、ヌクレオチド、オリゴ糖、オキシラン、ペプチド、フェノール、フタロシアニン、ポルフィリン、ホスフィン、ホスホン酸塩、ポリイミン(例えば、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、テルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プリン、ピラジン、1,8−ナフチリジン、かご型シルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane(略称POSS)、ピラゾレート、イミダゾレート、トランド(torand)、ヘキサピリジン、4,4’−ビピリミジンなど)、ピリジン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、キノン、シッフ塩基、セレン化物、セプルクレートsepulchrate)、シラン、硫化物、スルホン、塩化スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホニウム塩、スルホキシド、硫黄化合物、セレン化合物、チオール、チオエーテル、チオール酸、チオエステル、チミン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0070】
官能性・可溶性ナノチューブの基幹から遠位にあるR基の末端官能基は、官能性・可溶性ナノ材料と、本発明の複合材料(コンポジット)のホストマトリックスとの相互作用を強化する。このような末端官能基は、官能性・可溶性CNTsと前記ホストマトリックスとの界面結合を改善するよう設計されている。例えば、前記基幹から遠位にある直鎖状または分岐鎖状の側鎖の末端で反応性官能基(エポキシド、アミン、またはピリジンなど)を伴うPPE高分子を使うと、f−s−SWNTsとエポキシマトリックスとの共有結合が得られ、その結果、例えばf−s−SWNTs/エポキシナノコンポジットの機械特性が増加する。さらに、直鎖状または分岐鎖状の側鎖の末端またはその付近でチオール基を伴うPPE高分子を使うと、例えば金または銀のナノ粒子(ホストマトリックス)とf−s−SWNTsとの強化された相互作用が与えられる。別の例では、直鎖状側鎖の末端でチミンを有するPPE高分子によりSWNTsが官能基化される。次に繊維(ファイバー)は、広範囲にわたる平行な三重(3点)水素結合を形成することにより、上記のようなPPE高分子、および直鎖状側鎖の末端でジアミノピリジンを有するPPE高分子で官能基化したSWNTに組織化できる。
【0071】
本明細書における用語「f−s−SWNTs」は官能性・可溶性の単層ナノチューブを意味し、本明細書に別段の断わりがない限り、上述の他のナノ材料が置換可能であることを意味している。
【0072】
官能基化用の硬質の共役高分子としては、例えば、ポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)、ポリ(アリーレンエチニレン)、またはポリ(3−デシルチオフェン)などを含む。このような官能基化により、炭素ナノ材料の溶媒への溶解性が得られ、長時間の超音波処理が不要になる。この非ラッピング官能基化は、本明細書で説明するとおり、ナノ材料に適している。高分子は共有結合でなく非共有結合によりナノ材料表面に付着するため、内在するナノチューブの電子構造とその主要な属性は影響を受けない。
【0073】
複雑なナノコンポジット:ナノコンポジットは、それ自体で、複雑なナノコンポジットを形成するための第2充填剤用のホストマトリックスとして使用されうる。第2充填剤の例としては、連続繊維(炭素繊維(カーボンファイバー)、カーボンナノチューブ繊維、カーボンナノチューブナノコンポジット繊維、KEVLAR(登録商標)繊維、ZYLON(登録商標)繊維、SPECTRA(登録商標)繊維、ナイロン繊維、またはこれらの組み合わせなど)、不連続繊維(炭素繊維(カーボンファイバー)、カーボンナノチューブ繊維、カーボンナノチューブナノコンポジット繊維、KEVLAR(登録商標)繊維、ZYLON(登録商標)繊維、SPECTRA(登録商標)繊維、ナイロン繊維、またはこれらの組み合わせなど)、ナノ粒子(金属粒子、高分子粒子、セラミック粒子、ナノクレイ、ダイヤモンド粒子、またはこれらの組み合わせなど)、およびマイクロ粒子(金属粒子、高分子粒子、セラミック粒子、クレイ、ダイヤモンド粒子、またはこれらの組み合わせなど)などを含む。
【0074】
既存材料の多くは、炭素繊維(カーボンファイバー)などの連続繊維をマトリックスにおいて使用している。これらの繊維は、カーボンナノチューブよりはるかに大きい。連続繊維で強化したナノコンポジットのマトリックスにf−s−SWNTsを加えると、その結果として耐衝撃性の改善、熱応力の低下、微小割れの低下、熱膨張係数の低下、または横方向または厚さ方向の熱伝導率の増加といった、特性が改善された複雑なナノコンポジット材料が得られる。複雑なナノコンポジット構造で結果的に得られる優位性には、耐久性の改善、寸法安定性の改善、低温燃料タンクまたは圧力容器における漏れの排除、厚さ方向または面内熱伝導率の改善、接地または電磁妨害(EMI)遮蔽の増加、フライホイールエネルギー貯蔵の増加、または無線周波数特性(ステルス)のカスタマイズなどを含む。熱伝導率の改善により、赤外線(IR)特性も低減できる。f−s−SWNTを加えることにより改善された特性を示す他の既存材料としては、電気導電率または熱伝導率を得るための金属粒子ナノコンポジット、ナノクレイナノコンポジット、またはダイヤモンド粒子ナノコンポジットなどを含む。
【0075】
ナノコンポジットの製造方法:ナノ材料をホストマトリックスに組み込む方法は、次の方法を含むがこれに限定はされない。(i)官能性・可溶性ナノ材料の存在下における、溶媒系でのホスト高分子モノマーのチャンバー内重合、(ii)溶媒系における、官能性・可溶性ナノ材料およびホストマトリックス双方の混合、または(iii)官能性・可溶性ナノ材料とホスト高分子融解物との混合。
【0076】
本発明の特定の実施形態に従い、ナノコンポジットを形成する方法は、官能性・可溶性ナノ材料を溶解するための溶媒と、ホストマトリックスとの使用を含む。溶媒は有機または水溶性であってよく、例えば、CHCl、クロロベンゼン、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、アニリン、ベンゼン、ベンゾニトリル、ベンジルアルコール、ブロモベンゼン、ブロモホルム、1−ブタノール、2−ブタノール、二硫化炭素、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、デカリン、ジブロモエタン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエーテル、ジエチルエーテル、ジグリム、ジメトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、エチルアミン、エチルベンゼン、エチレングリコールエーテル、エチレングリコール、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、ギ酸、グリセロール、ヘプタン、ヘキサン、ヨードベンゼン、メシチレン、メタノール、メトキシベンゼン、メチルアミン、臭化メチレン、塩化メチレン、メチルピリジン、モルホリン、ナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、オクタン、ペンタン、ペンチルアルコール、フェノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、ピロール、ピロリジン、キノリン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラリン、テトラメチルエチレンジアミン、チオフェン、トルエン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリエチルアミン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−キシレン、o−キシレン、p−キシレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、またはN−メチル−2−ピロリドンなどがある。
【0077】
溶媒の他の例には、イオン液体または超臨界溶媒などが含まれる。イオン液体の例としては、例えば、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド、1−へキシル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド、1−メチル−3−オクチル−イミダゾリウムクロリド、1−ブチル−4−メチル−ピリジニウムクロリド、1−エチル−3−メチル−テトラフルオロホウ酸イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチル−テトラフルオロホウ酸イミダゾリウム、1−へキシル−3−メチル−テトラフルオロホウ酸イミダゾリウム、3−メチル−1−オクチル−テトラフルオロホウ酸イミダゾリウム、1−ブチル−4−メチル−テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、1−エチル−3−メチル−ヘキサフルオロリン酸イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチル−ヘキサフルオロリン酸イミダゾリウム、1−へキシル−3−メチル−ヘキサフルオロリン酸イミダゾリウム、1−ブチル−4−メチル−ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、1,3−ジメチルメチル硫酸イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチル−メチル硫酸イミダゾリウム、ジメチルイミダゾリウムトリフラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフラート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフラート、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフラート、またはトリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリドなどがある。超臨界溶媒の例には、超臨界二酸化炭素、超臨界水、超臨界アンモニア、または超臨界エチレンなどを含む。
【0078】
官能性・可溶性ナノ材料は、ゼロより大きく100%未満の、以下のパーセント値に等しい、またはその範囲の重量比または体積比の量のナノコンポジットを有しうる。0.01%、0.02%、0.04%、0.05%、0.075%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、および75%、0.1%以上および50%以下または50%に等しい重量比または体積比の量のナノコンポジット、または1%〜10%以上またはそれに等しい重量比または体積比の量のナノコンポジット。
【0079】
f−s−SWNT/ホストマトリックスナノコンポジットに対するf−s−SWNT質量分率ローディング値は、自然な状態のSWNT材料のみに基づき、添加剤材料を除く(「f−s」材料)。
【0080】
パーコレーションしきい値:本発明のナノコンポジットでは、官能性・可溶性ナノ材料が欠如したナノコンポジットと比較し、優れた電気導電性、熱伝導率、または機械特性が得られる。このようなナノコンポジット特性の指標の1つは、ナノコンポジットのパーコレーションしきい値である。パーコレーションしきい値は、マトリックスとの相互連系を提供するホストマトリックス内に存在する官能性・可溶性ナノ材料の重量比または体積比の最小値である。パーコレーションしきい値が低い場合は、ホストマトリックス内でナノ材料の分散が良好であることを意味する。パーコレーションしきい値は、ホストマトリックスのタイプと、ナノ材料のタイプと、官能基化または可溶化のタイプと、ナノコンポジットの製造条件とにより一意に決定される。パーコレーションしきい値は特定の特性によっても一意に決定される。例えば、電気特性の強化機序は熱特性の強化機序と異なるため、特定のナノコンポジットに関する電気特性のパーコレーションしきい値は、そのナノコンポジットの熱特性パーコレーションしきい値とは異なりうる。
【0081】
本発明の複合材料(コンポジット)は、以下のうちいずれかのパーセント範囲内の電気導電率パーコレーションしきい値、または熱伝導率パーコレーションしきい値を示す。0.01%、0.02%、0.04%、0.05%、0.075%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、および33%の重量比または体積比。他の実施形態では、電気導電率のパーコレーションしきい値または熱伝導率のパーコレーションしきい値は、重量比または体積比で0.01%、0.02%、0.04%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、10%以上、および20.0%以下である。さらに異なる他の実施形態では、電気導電率のパーコレーションしきい値または熱伝導率のパーコレーションしきい値は、重量比または体積比で0.01%、0.02%、0.04%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、3.0%、4.0%以上、および5.0%以下または5%と同等である。
【0082】
パーコレーションしきい値は、ナノコンポジットについて関心のある特性を、例えば以下の例で挙げたマトリックスへの官能性・可溶性ナノ材料のローディング質量分率と関係付けて測定することにより決定される。例えば、ナノコンポジットPPE−SWNTs/ポリスチレンは、SWNTローディング0.045重量%での電気導電率パーコレーションしきい値を有し、ナノコンポジットPPE−SWNT/ポリカーボネートは、SWNTローディング0.11重量%での導電率パーコレーションしきい値を有する。
【0083】
電気的用途のナノコンポジット:本発明のナノコンポジット実施形態は、ホストマトリックスと、官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料とを有するナノコンポジットの場合より低い電気導電率パーコレーションしきい値を有する。許容範囲内のローディングの電気導電率を提供することにより、本発明の実施形態は、静電散逸、静電塗装、電磁妨害(EMI)遮蔽、印刷可能回路への書き込み、透明導電性コーティングなどの応用を実現する。
【0084】
本発明のナノコンポジットを有する製造品としては、例えば、ワイヤ、印刷可能回路ワイヤ、コーティング、透明コーティング、レジスト材料用コーティング、レジスト材料、膜、繊維(ファイバー)、粉末、インク、インクジェット対応ナノコンポジット溶液、塗料、電気スプレイ用塗料、EMI遮蔽、導電性シーラント(シーリング剤)、導電性コーキング剤、導電性接着剤、光電子装置など、および静電散逸、静電塗装、または電磁妨害(EMI)遮蔽などの導電性用途の用の他の物品などが含まれる。
【0085】
熱的用途のナノコンポジット:本発明のナノコンポジット実施形態は、ホストマトリックスと、官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料とを有するナノコンポジットの場合より低い熱伝導率パーコレーションしきい値を有する。熱伝導率が強化されることにより、多くの用途がもたらされる。ナノコンポジット材料は弾性および適合性が高まるよう設計できるため、材料の高い熱伝導率を活用して非常に優れた熱伝導率が得られる。このため、本明細書のナノコンポジットは、加熱、冷却、または梱包などにおける熱伝導に関して有用である。
【0086】
本発明のナノコンポジットを有する製造品には、電子機器、光通信機器、マイクロ電気機械(microelectromechanical、略称MEMS)梱包、ヒートスプレッダー、ヒートシンク、パッケージ、モジュール、ヒートパイプ、ハウジング、エンクロージャ、熱交換器、輻射暖房器、熱インターフェース材料、ヒートスプレッダー、膜、繊維(ファイバー)、粉末、コーティング、自動車用途(ボンネット内部品、ラジエーター、センサハウジング、電子モジュール、または燃料電池など)、産業用途(電気コイル部品、ポンプ部品、電気モーター部品、変圧器、配管(パイピング)、チュービング、または加熱など)、換気、または空気調節(HVAC)機器などが含まれる。
【0087】
例えば、集積回路(IC)(またはICパッケージ)とそれに付随するヒートシンクとの間の熱インターフェースとしての、本発明のナノコンポジットを使った熱伝導応用例を図5Aおよび図5Bに示しており、この例には、ヒートシンク10と、TIM2 20(集積ヒートスプレッダー上方の熱インターフェース材料)と、集積ヒートスプレッダー30(HIS)と、TIM1 40(ダイ上方の熱インターフェース材料)と、ダイ50と、アンダーフィル60と、基板70とが含まれている。図5Aは、ラップトップ用途で典型的に使用される熱対策構造の例を示したものである。図5Aの構造例は、ヒートシンク10と、TIM1(ダイ上方の熱インターフェース材料)40と、ダイ50と、アンダーフィル60と、基板70とを有する。図5Bは、デスクトップおよびサーバー用途で典型的に使用される熱対策構造の別の例を示したものである。図5Bの構造例は、ヒートシンク10と、TIM2(集積ヒートスプレッダー上方の熱インターフェース材料)20と、集積ヒートスプレッダー(HIS)30と、TIM1(ダイ上方の熱インターフェース材料)40と、ダイ50と、アンダーフィル60と、基板70とを有する。例えば、本発明のナノコンポジットは、図5Aおよび図5Bの構造におけるTIM1 40またはTIM2 20に使用しうる。
【0088】
本発明のナノコンポジットによりもたらされる熱伝導率特性は、部品から離れる方向へ(例えばヒートシンク10へ)効果的に熱を伝導することにより、ナノコンポジットを図5Aおよび図5Bの構造例などの電気部品の冷却に適したものにする。特定の実施形態では、ナノコンポジットインターフェース(TIM1 40および/またはTIM2 20など)は、望ましい方法で構造に適合するよう形成された固体材料(固体シート)として実施しうる。他の実施形態では、このナノコンポジットインターフェースは、粘性のある(「ネバネバした」)物質として実施しうる。
【0089】
機械的用途のナノコンポジット:本発明のナノコンポジット実施形態は、ホストマトリックスと、官能性・可溶性ナノ材料以外のナノ材料とを有するナノコンポジットの場合と比べ、改善された機械特性、例えば、引張応力、引張歪み、剛性、強度、破砕強靱性、耐クリープ性、耐クリープ破壊性、および疲労抵抗のいずれかを有する。本発明の実施形態は、許容範囲内のローディングで改善された機械特性を提供することにより、種々の機械的応用を可能にする。
【0090】
本発明のナノコンポジットを有する製造品には、接着剤、強化連続繊維、航空機構造、航空機ガスタービンエンジン部品、宇宙機構造、計器構造、ミサイル、打上げ機構造、再使用可能な打上げ機低温燃料タンク取り付け付属品、圧縮天然ガスおよび水素燃料タンク、船舶およびボート構造、圧力容器取り付け付属品、スポーツ用品、産業用機器、自動車および大量輸送車両、海底石油探査および石油生産機器、風力タービンブレード、医療機器(X線テーブルなど)、矯正機器、補綴機器、膜、繊維(ファイバー)、粉末、または家具などが含まれる。
【0091】
2つ以上の特性、または2つ以上の改善された特性について低いパーコレーションしきい値を有するナノコンポジット:本発明のナノコンポジットは異なる特性について異なるパーコレーションしきい値を有しうるが、ナノコンポジットは2つ以上の特性について低いパーコレーションしきい値を有しうるため、複数の有利な特性を提供しうる。例えば、ナノコンポジットは、低いf−s−SWNTローディングで高い導電率を有することができ、さらにそのローディングで強化された機械特性または熱特性をも有しうる。f−s−SWNTsのこの多機能性により、本明細書のナノコンポジットは、1つまたは2つ以上の電気的用途、機械的用途、熱的用途、化学的用途、検出用途、および作動用途に役立ちうる。
【0092】
接着剤は電子機器の組み立てに広く使用されており、多くの用途において電気絶縁体でなければならない。ただし、多くの用途では、導電率が望ましいか、または少なくとも許容範囲内である。改善された熱伝導率を伴う接着剤への強いニーズもある。例えば、ダイヤモンド粒子強化接着剤は、現在生産用途に使用されている。本明細書のナノコンポジットは有利な熱伝導率に基づくと、重要な応用につながる可能性がある。高い熱伝導率が望ましく電気絶縁も必要な場合は、多層構造により電気絶縁および高熱伝導率の双方をもたらせるよう、ナノコンポジットと併せて非常に薄い電気絶縁インターフェースを使用することができる。
【0093】
本発明のナノコンポジットを有する他の製造品としては、航空機構造、航空機ガスタービンエンジン部品、宇宙機構造、計器構造、ミサイル、打上げ機構造、再使用可能な打上げ機低温燃料タンク、船舶およびボート構造、スポーツ用品、産業用機器、自動車または大量輸送車両、海底石油探査または石油生産機器、風力タービンブレード、医療機器(X線テーブルなど)、矯正機器、または補綴機器などが含まれる。
【0094】
ナノコンポジット材料生成のため、本実施例で使われるカーボンナノチューブの非共有結合性の官能基化の工程は、Chen, J.らが説明しており(J. Am. Chem. Soc.、124、9034 (2002))、この工程では優れたナノチューブ分散が得られる。高圧一酸化炭素工程(high pressure carbon monoxide process、略称HiPco)により生成されるSWNTsはCarbon Nanotechnologies, Inc.(テキサス州ヒューストン、米国)から購入され、Chenら(同書)が説明しているように、また2002年9月24日に出願した米国特許番号第10/255,122号および2002年12月13日に出願された米国特許出願第10/318,730号を有する2004年2月19日に公開された米国特許出願第US2004/0034177号で説明されているように、激しい振盪および/または短時間の浴槽・超音波処理とともにポリ(フェニレンエチニレン)(PPE)でクロロホルム中において可溶化された。本実施例では、PPEは、Haiying Liu(Department of Chemistry、Michigan Technological University、ミシガン州、ホートン(Houghton)49931、米国)により提供された。
【0095】
以下の例は本発明の種々の態様をさらに例示するため示したもので、本発明の範囲を限定するよう意図されたものではない。
【実施例1】
【0096】
高分子および官能性・可溶性ナノ材料のナノコンポジットの電気導電率
本実施例の非共有結合で官能基化された可溶性SWNTs/高分子ナノコンポジットは、非常に低いパーコレーションしきい値(SWNTローディング0.05〜0.1重量%)で高分子自体の電気導電率改善を示した。
【0097】
PPEを官能基化したSWNT溶液を、クロロホルム中でホスト高分子(ポリカーボネートまたはポリスチレン)溶液と混合して、均一なナノチューブ/高分子ナノコンポジット溶液を得た。この溶液から、ドロップキャスト法または低速スピンコーティングにより、厚さ100nmの熱酸化物層を伴うシリコンウエハー上に、均一なナノコンポジット膜を生成した。次に、この試料を80℃〜90℃に試料を加熱して残りの溶媒を除去した。
【0098】
ポリスチレン中およびポリカーボネート中に0.01重量%〜10重量%の種々の量の可溶性および官能性SWNTローディングを施して、ナノチューブ高分子ナノコンポジット膜を生成した。膜の厚さは、LEO 1530 Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡)または側面計を使って測定した。ナノコンポジット膜の典型的な厚さは2〜10μm範囲であった。f−s−SWNT/ホスト高分子ナノコンポジットのSWNT質量分率ローディング値は自然な状態のSWNT材料のみに基づき、添加剤材料を除く。図1Aおよび図1Bは、溶液流延法により生成したPPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジット膜(5重量%のSWNT)の表面(1A)および断面(1B)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示したものである。これらの画像は、ホスト高分子マトリックスにおける、PPEを官能基化したSWNTsの優れた分散を示している。f−s−SWNTは、表面に沿ってだけでなく(図1A)、断面にわたっても(図1B)ランダムに分布しており、等方性の3次元ナノチューブネットワークがホスト高分子マトリックス内に形成され、それによりナノコンポジットが等方性導電率を呈する可能性を実現していることを示している。これらの膜は、f−s−SWNTsのそれぞれおよび束が高分子マトリックス内で均一に混合していることを示している。
【0099】
電気導電率の測定は、接触抵抗の効果を軽減するため、標準的な4点プローブ法を使って実行した。試料の電流‐電圧特性測定には、Phillips DM 2812電源およびKeithly 2002デジタルマルチメーターを使用した。
【0100】
PPEを官能基化したナノチューブを使って生成した複合材料(コンポジット)は、非常に低いパーコレーションしきい値と、多数桁の導電率上昇とを呈した。図2Aは、本発明の実施形態に従って形成されたPPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジットについて測定した体積導電率を、SWNTローディングの関数として示したものであり、この複合材料の導電率は、0.02重量%〜0.05重量%のSWNTローディングで急激に増加し、パーコレーションネットワークの形成を示している。パーコレーションネットワーク形成の開始時、導電率は指数法則関係に従っている。
【0101】
【数1】

【0102】
ここで、σは複合材料(コンポジット)の導電率、νはSWNT体積分率、νはパーコレーションしきい値、およびβは臨界指数である。高分子およびSWNTの密度は類似しており、そのため高分子中のSWNTの質量分率mおよび体積分率νは等しいと仮定される。図2Bに示すように、PPE−SWNTs/ポリスチレンの導電率は、上記式(1)のパーコレーションの振る舞いと非常に合っている。m=0.045%およびβ=1.54の直線は相関係数0.994でデータへの優れた適合性を示し、0.045重量%のSWNTローディングで極度に低いパーコレーションしきい値を示している。この非常に低いパーコレーションしきい値は、高アスペクト比の可溶性f−s−SWNTsの分散性が優れていることを意味している。比較のため、純粋なポリスチレンの導電率は約10−14S/mであり(C. A. Harper、Handbook of Plastics, Elastomers, and Composites、第4版(McGraw−Hill、2002))、自然な状態の(官能基化されていない)HiPco−SWNTバッキーペーパーの導電率は約5.1×10 S/mである。バッキーペーパーは、ホスト高分子が不在のため、本明細書におけるナノコンポジットではない。
【0103】
非常に低いパーコレーションしきい値に加え、7重量%のSWNTローディングでのナノコンポジットの導電率は6.89S/mに達し、これは純粋なポリスチレンの場合(10−14S/m)より14桁も高い。7重量%のSWNTローディングでの導電率6.89S/mは、in situ重合により生成された(H. J. Barrazaら、Nano Lett. 2、797 (2002))官能基化されていないSWNT(8.5wt%)/ポリスチレンナノコンポジットの場合(1.34×10−5S/m)より5桁高い。in situ重合技術とは対照的に、官能基化されたカーボンナノチューブを使って高度に分散したナノコンポジットを得るこの方法は、種々のホストマトリックスに適用でき、長時間の超音波処理が不要である。
【0104】
図3Aおよび図3Bでは、PPE−SWNTs/ポリカーボネートナノコンポジットの導電率(測定された体積導電率)を、図2Aおよび図2Bと同じ手順で生成されたナノコンポジットに対するSWNTローディングの関数として示している。PPE−SWNT/ポリカーボネートの導電率は、一般に同じSWNTローディングにおけるPPE−SWNTs/ポリスチレンの場合より高い。例えば、導電率は7重量%のSWNTローディングで4.81×10S/mに達し、これは純粋なポリカーボネート(約10−13S/m、C. A. Harper、同書)の場合より15桁高い。ポリカーボネートナノコンポジットの場合、図3Bに示すように、0.11重量%のSWNTローディングで非常に低いパーコレーションしきい値が測定された(m=0.11%、β=2.79)。
【0105】
図2Aおよび図3Aは、静電散逸、静電塗装、およびEMI遮蔽など電気的用途の導電率レベルも示している(Miller、Plastics World、54、September、73 (1996))。図3Aに示すように、静電散逸および静電塗装などの用途にはポリカーボネート中0.3wt%のSWNTローディングで十分であり、EMI遮蔽用途には3wt%のSWNTローディングで十分である。前記導電率レベルの達成には非常に低いf−s−SWNTローディングしか必要とされないため、ナノコンポジットにおいてホスト高分子の他の好適な物理特性および処理可能性への悪影響は最小限に抑えられる。
【0106】
これまでの技術(M. J. Biercukら、Appl. Phys. Lett. 80、2767 (2002); Park, C.ら、Chem. Phys. Lett.、364, 303 (2002); Barraza, H.J.ら、Nano Leters、2、797 (2002))と対照的に、本工程は種々の異なる高分子マトリックス組織化に適用でき、ナノチューブの分散は非常に均一である。高い導電率レベルは、カーボンナノチューブの電気特性がナノコンポジットによって左右されないことを示している。さらに、長時間の超音波処理を行わずに済むため、カーボンナノチューブの長さが温存される。
【実施例2】
【0107】
高分子および官能性・可溶性ナノ材料のナノコンポジットの熱伝導率
本実施例の非共有結合性の官能基化された可溶性SWNTs/高分子ナノコンポジットは、当該高分子自体と比べ改善された熱伝導率を示している。
【0108】
0.5重量%〜10重量%の種々の量のSWNTローディングを伴うナノコンポジットについて、熱伝導率を測定した。ナノコンポジットの膜は、PTFE基板に溶液流延法を施すことにより作成し、自立構造の膜を基板から剥した。典型的な膜厚は約50〜100ミクロンであった。面外熱伝導率は、市販のHitachi Thermal Conductivity Measurement System(日立熱伝導率測定システム)(日立製作所、〒101−8010東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地)を使って測定した。結果として、10重量%のSWNTローディングでのf−s−SWNTs/ポリカーボネートナノコンポジット膜は、純粋なポリカーボネート膜の場合と比べ、室温で面外熱伝導率の〜35%の増加を示した。
【実施例3】
【0109】
高分子および官能性・可溶性ナノ材料のナノコンポジットの機械特性
本実施例では、f−s−SWNTおよび高分子からなるナノコンポジットの機械特性が、この高分子自体の場合と比べて改善された。
【0110】
用語PARMAX(登録商標)(Mississippi Polymer Technologies, Inc.、米国ミシシッピ州ベイセントルイス(Bay Saint Louis))は、有機溶媒に可溶性を示し融解処理可能な(melt processable)熱可塑性剛体棒状高分子の分類を指す。PARMAX(登録商標)は置換ポリ(1,4−フェニレン)に基づいたもので、各フェニレン環が置換された有機基Rを有する。PARMAX(登録商標)の基本構造をI.に示す。
【0111】
【化28】

【0112】
PARMAX(登録商標)−1000のモノマーはII.に示しており、PARMAX(登録商標)−1200のモノマーはIII.に示す。
【0113】
PARMAX(登録商標)−1200のクロロホルム溶液を、PPE−SWNTのクロロホルム溶液と混合した。この溶液をガラスなどの基板上に流延し、乾燥させて膜を形成させた。この膜を溶媒に適切な温度でさらに減圧乾燥した。クロロホルムの場合は、周囲温度が適している。
【0114】
Instron Mechanical Testing System (Model 5567、Instron Corporation Headquarters、100 Royall Street、Canton、マサチューセッツ州、02021、米国)を使って、このナノコンポジットの機械特性を測定した。その結果、2重量%のSWNTsによるナノコンポジット強化で、PARMAX(登録商標)材料自体と比べ、〜29%の引張強度増加が得られ(154〜199MPa)、及び〜51%のヤング率増加が得られた(3.9から5.9GPa)。
【0115】
さらに、PTFE基板上での溶液流延により、純粋なポリカーボネート膜およびf−s−SWNTs(2重量%のSWNTs)/ポリカーボネート膜を作成した。機械的測定は、上記の説明に従い行った。図6Aは、純粋なポリカーボネート膜について引張応力および引張歪みの関係における機械特性を示したものであり、図6Bは、f−s−SWNTs(2重量%のSWNTs)/ポリカーボネート膜について引張応力および引張歪みの関係における機械特性を示したものである。例えば2重量t%のSWNTs充填では、ポリカーボネートの引張強度が79%増加し、破壊歪み(引張歪み)は約10倍増加した。
【0116】
膜を流延する方法のほか、PPE−SWNTs/PARMAX(登録商標)ナノコンポジットは、圧縮成形、押し出し成形、または紡糸など他の方法でも製造できる。1つの方法では、PARMAX(登録商標)−1200のクロロホルム溶液をPPE−SWNTのクロロホルム溶液と混合して、PPE−SWNTs/PARMAX(登録商標)ナノコンポジットの均一な溶液を形成した。激しく撹拌しながらPPE−SWNTs/PARMAX(登録商標)ナノコンポジット溶液にエタノールを加えて、ナノコンポジットを沈殿させた。ろ過し乾燥させた後、PPE−SWNTs/PARMAX(登録商標)ナノコンポジットの均一な粉末が得られた。結果として生じたナノコンポジット粉末を、200〜400℃(好ましくは315℃)で〜30分間圧縮成形し、種々の成形固体を製造した。
【0117】
図4は、f−s−SWNTs/ポリカーボネートナノコンポジットの破面を示したものである。破砕後もナノチューブがマトリックス内に残っており、ホスト高分子との間に強い相互作用があることを示している。多くの場合、生のナノチューブはマトリックスとの相互作用が弱く、破砕により吐出され、その後材料に空隙が生じてしまう。
【実施例4】
【0118】
2つのホスト高分子および官能性・可溶性ナノ材料からなるナノコンポジットの改善された特性
本実施例では、f−s−SWNTsおよび2つのホスト高分子からなるナノコンポジットの機械特性および電気特性が、ポリ高分子1つの場合と比べ、改善された。
【0119】
f−s−SWNTs/エポキシと、f−s−SWNTs/エポキシおよびポリカーボネートとを、ホスト高分子としてそれぞれ有するナノコンポジットを、電気特性および機械特性について比較した。これらのナノコンポジットは、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、PPE−SWNTsとから組織化し、ポリカーボネート混合の有無で差別化した。処理工程は、PPE−SWNTsおよびエポキシ樹脂の分散、硬化剤、および最終組成5重量%のポリカーボネート(ポリカーボネートを含む組成で)の順に行い、この混合物がよく分散してナノコンポジットを形成するまで撹拌または振盪した。膜の場合は、この混合物で溶液流延法またはスピンコーティングを行い、蒸発により溶媒を除去して、優れたナノチューブ分散を伴うナノコンポジット膜を生成した。
【0120】
その結果得られた溶媒流延法での約50μm厚の膜について、機械特性および電気特性を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
f−s−SWNTsをエポキシに加えたことの効果は表1のデータから明らかである。この表において、エポキシ膜だけの電気導電率は10−14S/mで、官能性・可溶性ナノチューブを加えたエポキシの電気導電率は5.3×10−2S/mであり、約12桁の増加が示されている。エポキシおよびf−s−SWNTsを有する膜では、エポキシだけの場合と比べ機械特性に中程度の改善が見られ(ヤング率は、ナノコンポジットの場合0.75GPa、エポキシ膜の場合0.42GPa。引張強度は、ナノコンポジットの場合22.2MPa、エポキシ膜の場合16.0MPa)、これは可能性として膜内の空隙によるものと考えられる。
【0123】
ポリカーボネートをf−s−SWNTsおよびエポキシに加えたことの効果は、表1のデータから明らかである。この表では、機械特性が約2倍に改善されたことがわかる(ヤング率は、2高分子複合材料(コンポジット)の場合1.23GPa、1高分子複合材料の場合0.75GPa。引張強度は、2高分子複合材料の場合46.3MPa、1高分子複合材料の場合22.2MPa)。2高分子ナノコンポジットを有する膜では、1高分子ナノコンポジットの場合と比べ、電気導電率に約20倍の改善が得られる(2高分子ナノコンポジットの場合1.17S/mで、1高分子ナノコンポジットの場合0.053S/m)。
【0124】
本発明の他の実施形態は、本明細書または本明細書に開示された実施形態の実施例を考慮することにより、当業者に明確に理解される。ただし、以上の明細書は単に本発明の例示と見なし、本発明の真の範囲および要旨は以下の請求項により示すものである。
【0125】
本明細書において、用語「a」および「an」は、別段の断りがない限り、「1つの」、「少なくとも1つの」、または「1つまたはそれ以上の」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
本発明をより深く理解するため、添付の図面と併せて以下の説明が参照される。
【図1】図1Aは、5重量%のSWNTを使って本発明の実施形態により作成された、PPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジット膜の表面を示した走査型電子顕微鏡画像である。図1Bは、5重量%のSWNTを使って本発明の実施形態により作成された、PPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジット膜の断面を示した走査型電子顕微鏡画像である。
【図2】図2Aは、本発明に従って形成された実施形態について、(体積導電率の測定値としても知られている)ジーメンス/メートル(S/m)でのPPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジットの室温導電率およびSWNTs重量ローディングの関係を示した図である。破線は、EMI遮蔽、静電塗装、および静電散逸に必要なおおよその導電率下限を表す。質量分率0%での導電率は約10−14S/mである。図2Bは、PPE−SWNTs/ポリスチレンナノコンポジット室温導電率をSWNT質量分率低下の関数として示した図である。パーコレーションしきい値mは0.045%である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態により作成された、PPE−SWNTs/ポリカーボネートナノコンポジットの室温導電率およびSWNT重量ローディングの関係を示した図である。破線は、EMI遮蔽、静電塗装、および静電散逸に必要なおおよその導電率下限を表す。
【図3B】図3Bは、PPE−SWNTs/ポリカーボネートナノコンポジット室温導電率をSWNT質量分率低下の関数として示した図である。パーコレーションしきい値mは0.110%である。
【図4】図4は、1重量%のSWNTでロードしたf−s−SWNTsポリカーボネートナノコンポジット膜の切断端における破面の電界放出走査型電子顕微鏡画像を示した図である。
【図5】本発明の特定の実施形態に係るCNT高分子複合材料(コンポジット)の熱伝導応用例を示した図。図5Aでは典型的にラップトップ用途に使われる構造を示し、図5Bでは典型的にデスクトップおよびサーバーの用途に使われる構造を示している。上向きの大きな矢印は、各構造における一次熱伝道経路を示している。成分指定については例2を参照。
【図6】図6Aは、溶液流延法により作成された純粋なポリカーボネート膜の引張応力と引張歪みとの関係を示した図である。図6Bは、溶液流延法により生成された、2wt%のSWNTを有するf−s−SWNT/ポリカーボネート膜の引張応力と引張歪みとの関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノコンポジットであって、
高分子マトリックスまたはナノポリマーマトリックスを有するホストマトリックスと、ホストマトリックス内に分散された、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルとから成るものであり、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックス及び官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルを有するナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値または熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項2】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項3】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項4】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、熱可塑性高分子、熱硬化性樹脂高分子、またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項5】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、非有機的な高分子マトリックスから成るものである。
【請求項6】
請求項5のナノコンポジットにおいて、
前記非有機的な高分子マトリックスは、シリコーン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリゲルマン、ポリスタンナン、ポリフォスファゼンまたは組合せを含む。
【請求項7】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであって、前記高分子マトリックスは、ナイロン、ポリエチレン、ポリイソプレン、sbsゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(硫化フェニレン)、シリコーン、アラミド、セルロース、レーヨン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、炭素繊維、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチレニン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、エチレン・ビニルアルコール、フッ素樹脂、アイオノマー、ポリアクリル酸塩、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリエチレン・テレフタレート、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはそれらの組合せを有するものである。
【請求項8】
請求項7のナノコンポジットにおいて、
前記高分子マトリックスはポリスチレンを含むものである。
【請求項9】
請求項7のナノコンポジットにおいて、
前記高分子マトリックスは、ポリフェニレンを含むものである。
【請求項10】
請求項7のナノコンポジットにおいて、
前記高分子マトリックスがポリカーボネートを含むものである。
【請求項11】
請求項7のナノコンポジットにおいて、
前記高分子マトリックスは、フッ素樹脂を含み、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、クロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、エチレン・テトラフルオロエチレンまたはそれらの組合せから成るものである。
【請求項12】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化されて、可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボン、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドットまたはそれらの組合せから成るものである。
【請求項13】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化されて、可溶性にされた単層窒化ホウ素ナノチューブ、多層窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノ粒子、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノ繊維、窒化ホウ素ナノロープ、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノフィブリル、窒化ホウ素ナノニードル、窒化ホウ素ナノホーン、窒化ホウ素ナノコーン、窒化ホウ素ナノスクロール、窒化ホウ素ナノドットまたはそれらの組合せから成るものである。
【請求項14】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化されて、可溶性にされたグラファイトナノプレートレット、官能基化されて可溶性にされたフラーレン材料またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項15】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項16】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項17】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.1重量或いは容積%以上および10.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項18】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ナノコンポジットの官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、さらに前記ナノコンポジットは、複合体ナノコンポジットを形成するために第2の充填剤を有するものであって、
前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子またはそれらの組合せから成り、前記第2の充填剤は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外の物質である。
【請求項19】
請求項1のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、第1のホスト高分子マトリックスであり、前記ナノコンポジットはさらに、第2のホスト高分子マトリックスを有するものであって、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1および第2のホスト高分子マトリックス内で分散し、前記ナノコンポジットは、第1および第2のホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値または熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項20】
請求項19のナノコンポジットにおいて、
第1のホスト高分子マトリックスはエポキシであり、第2のホスト高分子マトリックスはポリカーボネートである。
【請求項21】
請求項1のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項22】
請求項2のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項23】
請求項3のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項24】
請求項12のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項25】
請求項18のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項26】
請求項19のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項27】
請求項21の製造品において、前記製造品は、繊維から成るものである。
【請求項28】
請求項21の製造品において、前記製造品は、フィルムから成るものである。
【請求項29】
請求項21の製造品において、前記製造品は、粉から成るものである。
【請求項30】
請求項24の製造品において、前記製造品は、繊維から成るものである。
【請求項31】
高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスを有するホストマトリックスの電気伝導率若しくは熱伝導率を上げる方法であって、
前記方法は、ナノコンポジットを形成するためにホストマトリックス材料内で、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルを分散させる工程を有し、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値または熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項32】
請求項31の方法において、前記ホストマトリックス材料がホストマトリックスである。
【請求項33】
請求項31の方法において、
前記ホストマトリックス材料は、ホスト高分子マトリックスのモノマーから成り、前記方法はさらに、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルの存在下で、ホスト高分子マトリックス材料を重合させる工程を含むものである。
【請求項34】
請求項31の方法において、
前記ホストマトリックスは、第1のホスト高分子マトリックスであって、前記方法は更に、
第1および第2のホスト高分子マトリックスから成るナノコンポジットを形成するために、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルと一緒になった第2のホスト高分子マトリックス材料、及び第1のホスト高分子マトリックス材料を分散させる工程を有するものであり、
前記ナノコンポジットは、第1及び第2のホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値または熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項35】
請求項34の方法において、
第1のホスト高分子マトリックス材料は、第1のホスト高分子マトリックスであり、第2のホスト高分子マトリックス材料は、第2のホスト高分子マトリックスである。
【請求項36】
請求項34の方法において、
第1のホスト高分子マトリックス材料は、第1のホスト高分子マトリックス材料のモノマーから成り、第2のホスト高分子マトリックス材料は、第2のホストのモノマーから成るものであり、さらに前記方法は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルの存在下で、ホスト高分子マトリックス材料を重合させる工程を有するものである。
【請求項37】
請求項31の方法において、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項38】
請求項31の方法において、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項39】
請求項31の方法において、
前記ホストマトリックス材料は、熱可塑性の高分子またはそのモノマー、または熱硬化性樹脂高分子またはそのモノマー、若しくはそれらの組合せを有するものである。
【請求項40】
請求項31の方法において、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、非有機的な高分子マトリックスを有するものである。
【請求項41】
請求項40の方法において、
前記非有機的な高分子マトリックスは、シリコーン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリゲルマン、ポリスタンナン、ポリフォスファゼン、またはそれらの組合せを含むものである。
【請求項42】
請求項31の方法において、
前記ホストマトリックスは、ナイロン、ポリエチレン、ポリイソプレン、sbsゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(硫化フェニレン)、シリコーン、アラミド、セルロース、レーヨン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、炭素繊維、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチレニン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、エチレン・ビニルアルコール、フッ素樹脂、アイオノマー、ポリアクリル酸塩、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリエチレン・テレフタレート、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはそれらの組合せを含むホスト高分子マトリックス材料を有するものである。
【請求項43】
請求項42の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、ポリスチレン、またはそのモノマーから成るものである。
【請求項44】
請求項42の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、ポリフェニレン、またはそのモノマーから成るものである。
【請求項45】
請求項42の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、ポリカーボネート、またはそのモノマーから成るものである。
【請求項46】
請求項42の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、フッ素樹脂から成り、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、クロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレンまたはエチレン・テトラフルオロエチレン、またはそれらのモノマー、若しくはそれらの組合せを含むものである。
【請求項47】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項48】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層窒化ホウ素ナノチューブ、単層窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノ粒子、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノ繊維、窒化ホウ素ナノロープ、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノフィブリル、窒化ホウ素ナノニードル、窒化ホウ素ナノホーン、窒化ホウ素ナノコーン、窒化ホウ素ナノスクロール、窒化ホウ素ナノドット、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項49】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた黒鉛ナノプレートレット、官能基化され可溶性にされたフラーレン材料、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項50】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項51】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項52】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.1重量或いは容積%以上および10.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項53】
請求項31の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記分散する工程は、合成ナノコンポジットを形成するためにホストマトリックス材料内に第2の充填剤を分散させる工程を更に含み、
第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子またはそれらの組合せから成り、第2の充填剤は官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものある。
【請求項54】
請求項34の方法において、
前記第1のホスト高分子マトリックスは、エポキシの高分子であり、第2のホスト高分子マトリックスは、ポリカーボネート高分子である。
【請求項55】
請求項31の方法によって生じた製品。
【請求項56】
請求項34の方法によって生じた製品。
【請求項57】
請求項53の方法によって生じた製品。
【請求項58】
ナノコンポジットであって、
高分子マトリックス若しくは非高分子マトリックスのホストマトリックスであって、前記高分子マトリックスは、ポリスチレンおよびポリカーボネート以外のものであるホストマトリックスと、
前記ホストマトリックス内で分散された官能基化され可溶性にされたナノマテリアルであって、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである、ナノマテリアルと
を有するナノコンポジット。
【請求項59】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、熱可塑性の高分子、熱硬化性樹脂高分子またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項60】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、非有機的な高分子マトリックスから成るものである。
【請求項61】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記ホスト高分子マトリックスは、ナイロン、ポリエチレン、ポリイソプレン、sbsゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(硫化フェニレン)、シリコーン、アラミド、セルロース、レーヨン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、炭素繊維、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチレニン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、エチレン・ビニルアルコール、フッ素樹脂、アイオノマー、ポリアクリル酸塩、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、
ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリエチレン・テレフタレート、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはそれらの組合せを有するものである。
【請求項62】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホスト高分子マトリックスは、ポリフェニレンを含むものである。
【請求項63】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホスト高分子マトリックスは、フッ素樹脂を有し、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、クロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、エチレン・テトラフルオロエチレン、またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項64】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ホストマトリックスは、第1のホスト高分子マトリックスであり、前記ナノコンポジットは、第2のホスト高分子マトリックスから更に成るものであり、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1および第2のホスト高分子マトリックス内で分散され、前記ナノコンポジットは、第1および第2のホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項65】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項66】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層窒化ホウ素ナノチューブ、多層窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノ粒子、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノ繊維、窒化ホウ素ナノロープ、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノフィブリル、窒化ホウ素ナノニードル、窒化ホウ素ナノホーン、窒化ホウ素ナノコーン、窒化ホウ素ナノスクロール、窒化ホウ素ナノドット、またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項67】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた黒鉛ナノプレートレット、官能基化され可溶性にされたフラーレン材料、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項68】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項69】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項70】
請求項58のナノコンポジットにおいて、
前記ナノコンポジットの官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記ナノコンポジットはさらに、合成ナノコンポジットを形成するために、第2の充填剤から成るものであり、
前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれらの組合せから成り、さらに第2の充填剤は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものである。
【請求項71】
ナノコンポジットであって、
ポリスチレンと、
ポリスチレン内で分散された官能基化され可溶性にされたナノマテリアルであって、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するナノマテリアルと
を有するナノコンポジット。
【請求項72】
請求項71のナノコンポジットにおいて、
前記ポリスチレンは、第1のホスト高分子マトリックスであり、前記ナノコンポジットはさらに、第2のホスト高分子マトリックスから成るものであり、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1および第2のホスト高分子マトリックス内で分散されるものであり、
前記ナノコンポジットは、第1および第2のホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項73】
請求項71のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項74】
請求項71のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項75】
請求項71のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項76】
ナノコンポジットであって、
第1の高分子マトリックスがポリカーボネートである、第1の高分子マトリックスと、第2の高分子マトリックスから成るホストマトリックスと、
ホストマトリックス内で分散された官能基化され可溶性にされたナノマテリアルであって、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものであるナノマテリアルと
を有するナノコンポジット。
【請求項77】
請求項76のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せから成るものである。
【請求項78】
請求項76のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項79】
請求項76のナノコンポジットにおいて、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以上のナノコンポジットから成るものである。
【請求項80】
請求項76のナノコンポジットにおいて、
前記ナノコンポジットの官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記ナノコンポジットはさらに、合成ナノコンポジットを形成するための第2の充填剤を有するものであり、
前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれらの組合せから成り、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものである。
【請求項81】
請求項58のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項82】
請求項60のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項83】
請求項61のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項84】
高分子マトリックスまたは非高分子マトリックスから成るホストマトリックスの機械特性を改善する方法であって、前記ホストマトリックスはポリスチレンまたはポリカーボネートであるものであり、前記方法は、
ナノコンポジットを形成するために、ホストマトリックス材料内に官能基化され可溶性にされたナノマテリアルを分散する工程を有し、
前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、前記官能基化され可溶性にされたナノマテリア以外のナノマテリアルとから成るナノコンポジットのものと比較して、改善された機械特性を有するものである。
【請求項85】
請求項84の方法において、
前記ホストマトリックス材料は、ホストマトリックスである。
【請求項86】
請求項84の方法において、
前記ホストマトリックス材料は、ホストマトリックスのモノマーから成り、前記方法はさらに、前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルの存在下で、ホストマトリックス材料を重合させる工程を有するものである。
【請求項87】
請求項84の方法において、
前記ホストマトリックスは、第1のホスト高分子マトリックスあり、前記方法は更に、
第1および第2のホスト高分子マトリックスから成るナノコンポジットを形成するために、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルと、及び第1のホスト高分子マトリックスと共に、第2のホスト高分子マトリックスを分散する工程を有し、
前記ナノコンポジットは、第1および第2のホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項88】
請求項87の方法において、
前記第1のホスト高分子マトリックス材料は、第1のホスト高分子マトリックスである。
【請求項89】
請求項87の方法において、
前記第1のホスト高分子マトリックス材料は、第1のホスト高分子マトリックス材料のモノマーから成り、前記方法はさらに、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルの存在下でホスト高分子マトリックス材料を重合させる工程を有するものである。
【請求項90】
請求項84の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、熱可塑性の高分子またはそのモノマー、熱硬化性樹脂高分子樹脂またはそのモノマー、若しくはそれらの組合せを有するものである。
【請求項91】
請求項84の方法において、
前記ホストマトリックスは、高分子マトリックスであり、前記高分子マトリックスは、非有機的な高分子マトリックスを有するものである。
【請求項92】
請求項91の方法において、
前記非有機的な高分子マトリックスは、シリコーン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリゲルマン、ポリスタンナン、ポリフォスファゼン、またはそれらの組合せを含む。
【請求項93】
請求項84の方法において、
前記ホストマトリックスは、ナイロン、ポリエチレン、ポリイソプレン、sbsゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(硫化フェニレン)、シリコーン、アラミド、セルロース、レーヨン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、炭素繊維、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチレニン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、エチレン・ビニルアルコール、フッ素樹脂、アイオノマー、ポリアクリル酸塩、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリエチレン・テレフタレート、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはそれらの組合せを含むホスト高分子マトリックス材料を有するものである。
【請求項94】
請求項93の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、ポリフェニレンまたはそのモノマーから成るものである。
【請求項95】
請求項93の方法において、
前記ホスト高分子マトリックス材料は、フッ素樹脂から成り、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、クロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレンまたはエチレン・テトラフルオロエチレンまたはそれらのモノマー、若しくはそれらの組合せを有するものである。
【請求項96】
請求項84の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化された、可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項97】
請求項84の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項98】
請求項84の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%以上および50.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項99】
請求項84の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記分散する工程はさらに、合成ナノコンポジットを形成するためにホストマトリックス材料内で第2の充填剤を分散させる工程を有し、前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれらの組合せから成り、前記第2の充填剤は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものである。
【請求項100】
請求項84の方法によって生じた製品。
【請求項101】
請求項87の方法によって生じた製品。
【請求項102】
請求項99の方法によって生じた製品。
【請求項103】
ポリスチレンの機械特性を改善する方法であって、
前記方法は、ナノコンポジットを形成するために、スチレン高分子材料内で官能基化され可溶性にされたナノマテリアルを分散する工程を有し、
前記ナノコンポジットは、ポリスチレンと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとを有するナノコンポジットと比較して、改善された機械特性を有するものである。
【請求項104】
請求項103の方法において、
前記スチレン高分子材料は、ポリスチレンである。
【請求項105】
請求項103の方法において、
前記スチレン高分子材料は、ポリスチレンのモノマーから成り、前記方法はさらに、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルの存在下で、材料を重合させる工程を含むものである。
【請求項106】
請求項103の方法において、
前記ポリスチレンは、第1のホスト高分子マトリックスであって、前記方法はさらに、第1のホスト高分子マトリックスおよび第2のホスト高分子マトリックスから成るナノコンポジットを形成するために、官能基化され可溶性にされたナノマテリアルと、及び第1のホスト高分子マトリックス材料と共に、第2のホスト高分子マトリックス材料を分散する工程を有し、前記ナノコンポジットは、第1および第2のホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項107】
請求項103の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、官能基化され可溶性にされた単層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット、またはそれらの組合せを有するものである。
【請求項108】
請求項103の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.01重量或いは容積%以上および75.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項109】
請求項103の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、0.04重量或いは容積%および50.0重量或いは容積%以下のナノコンポジットから成るものである。
【請求項110】
請求項103の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記分散する工程はさらに、合成ナノコンポジットを形成するために、ホストマトリックス材料内で第2の充填剤を分散する工程を有し、前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれらの組合せから成り、前記第2の充填剤は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものである。
【請求項111】
請求項103の方法によって生じた製品。
【請求項112】
請求項110の方法によって生じた製品。
【請求項113】
第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスから成るホストマトリックスの機械特性を改善する方法であって、前記第1の高分子マトリックスは、ポリカーボネートであり、前記方法はさらに、
ナノコンポジットを形成するために、ホスト高分子材料内で官能基化され可溶性にされたナノマテリアルを分散する工程を有し、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項114】
請求項113の方法において、
前記官能基化され可溶性にされたナノマテリアルは、第1の充填剤であり、前記分散する工程はさらに、合成ナノコンポジットを形成するために、ホストマトリックス材料内で第2の充填剤を分散させる工程を有し、前記第2の充填剤は、連続する繊維、不連続な繊維、ナノ粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれらの組合せから成り、前記第2の充填剤は、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のものである。
【請求項115】
請求項113の方法によって生じた製品。
【請求項116】
請求項114の方法によって生じた製品。
【請求項117】
請求項64のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項118】
請求項65のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項119】
請求項70のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項120】
請求項71のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項121】
請求項76のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項122】
ナノコンポジットであって、
非高分子マトリックスを有するホストマトリックスと、
前記ホストマトリックス内で分散された官能基化され可溶性にされたナノマテリアルとを有するものであり、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスおよび官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルから成るナノコンポジットよりも低い電気伝導率パーコレーション閾値または熱伝導率パーコレーション閾値を有するものである。
【請求項123】
請求項122のナノコンポジットにおいて、
前記非高分子マトリックスは、セラミックマトリックスを含むものである。
【請求項124】
請求項122のナノコンポジットにおいて、
前記非高分子ポリマーマトリックスは、金属マトリックスを含むものである。
【請求項125】
ナノコンポジットであって、
非高分子マトリックスを含むホストマトリックスと、
前記ホストマトリックス内で分散された官能基化され可溶性にされたナノマテリアルをを有するものであり、前記ナノコンポジットは、ホストマトリックスと、官能基化され可溶性にされたナノマテリアル以外のナノマテリアルとからなるナノコンポジットのものと比べて、強化された機械特性を有するものである。
【請求項126】
請求項125のナノコンポジットにおいて、
前記非高分子マトリックスは、セラミックマトリックスを含むものである。
【請求項127】
請求項125のナノコンポジットにおいて、
前記非高分子マトリックスは、金属マトリックスを含むものである。
【請求項128】
請求項122のナノコンポジットから成る製造品。
【請求項129】
請求項125のナノコンポジットから成る製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−516314(P2007−516314A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533339(P2006−533339)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016226
【国際公開番号】WO2004/106420
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504464210)ザイベックス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】