説明

ナノサファイアがコートされた厨房器具

【課題】厨房器具の調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)方式の多重コート層を形成するが、前記コート層は溶剤にナノサイズのサファイア粉末を混合し塗布して乾燥処理するので、サファイア粉末による耐熱性および耐磨耗性に優れて厨房器具の使用寿命を長らく維持するのはもとより、表面粗さが滑らかであって飲食物のこびりつきを防止するので、優れた使用満足性を提供する、ナノサファイアがコートされた厨房器具を提供する。
【解決手段】本発明のナノサファイアがコートされた厨房器具は、飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)の多重コート層を形成する調理器具において、前記調理面の多重コート層は、表面をサンディング加工した後、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を塗布し、乾燥焼成炉で高温乾燥させたナノサファイアコート層にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理面にナノサファイアがコートされた厨房器具に係り、より詳しくは、調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)方式の多重コート層を形成するが、前記コート層は溶剤にナノサイズのサファイア粉末を混合した混合液を塗布して乾燥処理するので、サファイア粉末による耐熱性および耐摩耗性に優れて使用寿命を長らく維持するのはもとより、表面粗さが滑らかであるから、飲食物のこびりつきを防止する、ナノサファイアがコートされた厨房器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フライパンやホットプレートなどの厨房器具は、金属材の表面に飲食物のこびりつきを防止するためのコート層を形成して使用している。
【0003】
ところが、前述した厨房器具のコーティング層は、ヘラなどの調理用具を用いて飲食物を調理するとき、調理用具がコート層に反復して接触することによりコート層が容易に剥がれてしまい、これによりコート層の機能が低下して飲食物がこびりつくという問題点があった。
【0004】
これを防止するために、従来の厨房器具のコーティング層は、下塗り、中塗りおよび上塗りの三重コート層や、下塗りおよび上塗りの二重コート層などの多重コート層を形成してコート層の耐久性を向上させるように製造して使用している。
【0005】
しかし、前記従来の厨房器具のコート層を多重にコートして形成するにも拘らず、前記コート層の材質が持つ耐久性の限界によりコート層が容易に剥がれてしまい、これによりコート層の機能が低下して飲食物がさらにこびりつく問題を根本的に解決していない。
【0006】
このような従来の厨房器具のコート問題を補完するための様々なコート技術が知られている。例えば、特許文献1では、下塗りにポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を混合させて耐スクラッチ性質を向上させるようにし、特許文献2では、ナノダイヤモンド粉末を混合してコート層のスクラッチなどを防止することにより耐久性を向上させるようにし、このようにコート層に様々な素材を添加し、添加された素材が同じ特徴によって従来の厨房器具のコート層が持つ問題点を補完するようにする。
【0007】
その他にも、従来の厨房器具のコート層に特許文献3などのように銀、銀、銅などを添加することにより、従来のコーティング層に抗菌、殺菌などの様々な機能を与えるコート技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2007−35007号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2011−2159号明細書
【特許文献3】韓国公開特許第2003−0030424号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の技術の諸般問題点を解決するために発明されたもので、その目的は、厨房器具の調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)方式の多重コート層を形成するが、前記コート層は溶剤にナノサイズのサファイア粉末を混合した混合液を塗布して乾燥処理するので、サファイア粉末による耐熱性および耐磨耗性に優れて厨房器具の使用寿命を長らく維持するのはもとより、表面粗さが滑らかであって飲食物のこびりつきを防止するので、優れた使用満足性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)の多重コート層を形成するが、前記調理面の多重コート層は、表面をサンディング加工した後、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を塗布し、乾燥焼成炉で高温乾燥させたナノサファイアコート層にすることを特徴とする。
【0011】
本発明のナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層を三重に形成する場合、水溶液状態のフッ素樹脂溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗り、中塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗り120〜200℃で10〜15分、中塗り350〜450℃で15〜25分、上塗り350〜450℃で15〜25分高温乾燥処理することを特徴とする。
【0012】
本発明の前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層を二重に形成する場合、水溶液状態のセラミック溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗りおよび中塗り120〜250℃で20〜30分間夫々高温乾燥処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の前記ナノサファイアコート層に混合使用するサファイア粉末は1〜50のナノ粉末粒子にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、厨房器具の調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)方式の多重コート層を形成するが、前記多重コート層のうち少なくとも一つのコート層はフッ素樹脂またはセラミック溶剤にナノサイズのサファイア粉末を混合した混合液を塗布して乾燥処理するので、コート層に含まれたサファイア粉末によってコート層の耐熱性および耐磨耗性を向上させて厨房器具の使用寿命を長らく維持するのはもとより、ナノサイズのサファイア粉末を用いて表面粗さが滑らかであって飲食物のこびりつきを防止するので、優れた使用満足性を提供するという効果を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0016】
本発明のナノサファイアがコートされた厨房器具は、飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)の多重コート層を形成するにあたり、前記調理面の多重コート層は、表面をサンディング加工した後、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を塗布し、乾燥焼成炉で高温乾燥させたナノサファイアコート層にする。
【0017】
前記ナノサファイアコート層に混合使用するサファイアは、耐熱性および耐磨耗性に優れてコート層の剛性を高めるので、使用耐久性を長らく維持するのはもとより、1〜50のナノ粉末粒子で混合使用するので、表面粗さを最小化して飲食物のこびりつきを防止する。
【0018】
この際、前記溶剤にナノサファイア粉末を重量比1:0.05未満で混合する場合、コート層の耐熱性および耐摩耗性が著しく低下し、 前記溶剤にナノサファイア粉末を重量比1:0.5超過で混合する場合、コート層の表面粗さが増加して飲食物がこびりつく欠点を持つため、1:0.05〜5の重量比で混合使用することが好ましい。
【0019】
前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層を三重に形成する場合、水溶液状態のフッ素樹脂溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗り、中塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗り120〜200℃で10〜15分、中塗り350〜450℃で15〜25分、上塗り350〜450℃で15〜25分高温乾燥処理することが好ましい。
【0020】
すなわち、前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層における下塗りにのみ形成することが好ましいが、下塗り以外に中塗り、上塗りにも共に形成することができる。
【0021】
この際、前記ナノサファイアコート層を下塗りにのみ形成すると、コート層の耐熱性および耐摩耗性の強化はもとより、表面粗さを非常に滑らかに維持することができるため、飲食物のこびりつきをさらに防止し、前記ナノサファイアコート層を全体コート層に形成すると、下塗りにのみコートすることに比べて耐熱性および耐摩耗性はさらに強化されるが、表面粗さの滑らかさが多少低下して飲食物のこびりつきを防止する効果が多少劣るため、調理器具の用途に応じて選択的に適用することが好ましい。
【0022】
前記多重コート層のうちナノサファイアコート層にしない中塗りおよび上塗りの場合に、従来の厨房器具で使用する通常のコート層とする。
また、前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層を二重に形成する場合、水溶液状態のセラミック溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗りおよび中塗り120〜250℃で20〜30分間それぞれ高温乾燥処理することが好ましい。
【0023】
すなわち、前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層における下塗りにのみ形成することが好ましいが、下塗り以外に上塗りにも共に形成することができる。
【0024】
この際、前記ナノサファイアコート層を下塗りにのみ形成すると、コート層の耐熱性および耐摩耗性の強化はもとより、表面粗さを非常に滑らかに維持することができるため、飲食物のこびりつきをさらに防止し、前記ナノサファイアコート層を下塗りおよび上塗りの全体コート層に形成すると、下塗りにのみコートすることに比べて耐熱性および耐摩耗性はさらに強化されるが、表面粗さの滑らかさが多少低下して飲食物のこびりつきを防止する効果が多少劣るため、調理器具の用途に応じて選択的に適用することが好ましい。
【0025】
前記多重コート層のうちナノサファイアコート層にしない上塗りの場合、従来の厨房器具で使用する通常のコート層とする。
【0026】
このような本発明のナノサファイアがコートされた厨房器具は、フッ素樹脂またはセラミック溶剤にナノサイズのサファイア粉末を混合して塗布した後、乾燥させるサファイアコート層を、三重コート層の下塗り、中塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つに形成し、或いは二重コート層の下塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つに形成することにより、前記コート層のサファイア粉末によって従来の厨房器具に比べて耐熱性および耐摩耗性に優れてコート層の剛性を高めるため、厨房器具の使用耐久性を長らく維持するのはもとより、前記サファイア粉末を1〜50のナノサイズに混在させるため、コート層の表面粗さを最小化させて飲食物のこびりつきを防止する。
【0027】
この際、前記サファイアコート層を三重または二重コート層の下塗りにのみ形成する場合、耐熱性および耐摩耗性を優秀にするとともに飲食物のこびりつきをさらに防止するようにし、前記サファイアコート層を三重または二重コート層の下塗り以外に中塗りおよび上塗りにも共に形成する場合、下塗りにのみ形成することに比べて耐熱性および耐摩耗性をさらに優秀に提供して使用耐久性をさらに長らくする。これは、厨房器具の使用用途、例えばヘラなどの厨房道具を多く使用する厨房器具の場合に耐久性をさらに考慮して適切に適用することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の厨房器具と一般コート処理された厨房器具の磨耗テストおよび飲食物のこびりつき程度を比較実験した。
【0029】
実施例1
飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗りおよび上塗り)の多重コート層を形成する厨房器具において、下塗りコート層は、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.2の重量比で混合した混合液で塗布し、乾燥焼成炉によって150℃で10分間高温乾燥させたナノサファイアコート層にし、中塗りおよび上塗りコート層は、一般フッ素樹脂コート層にした。
【0030】
実施例2
飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)の多重コート層を形成する厨房器具において、下塗り、中塗りおよび上塗りコート層を、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.2の重量比で混合した混合液で塗布し、乾燥焼成炉によって150℃で10分間それぞれ高温乾燥させたナノサファイアコート層にした。
【0031】
比較例1
飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)の多重コート層を形成するが、前記下塗り(プライマー600製品)、中塗り(mid 700製品)および上塗り(top800製品)の一般コート層にした。
【0032】
比較実験1
実施例1、実施例2および比較例1の厨房器具の調理面が含まれた金属片を10×20mmに裁断し、常温で厚さ4mmのステンレス鋼製ボールを0.8Nの荷重で3cm/sの速度でボールオンプレート(ball on plate)形態の滑り往復磨耗テストを行った。
【0033】
その後、各金属片を顕微鏡で観察確認した。
【0034】
実験結果、ナノサファイアコート層を形成しない比較例1の断片磨耗面積が0.93mmであるが、これと比較して、ナノサファイアコート層を形成する実施例1の断片磨耗面積が0.6mmであり、実施例2の断片磨耗面積が0.45mmに減少することを確認することができた。
【0035】
すなわち、ナノサファイア粉末コート層を多重に形成する場合に耐摩耗性がさらに優秀になることを確認することができた。
【0036】
比較実験2
実施例1、実施例2および比較例1の厨房器具に対して、油を入れていない状態で調理面にて飲食調理を繰り返し行いながら飲食物のこびりつき程度を肉眼で確認した。
【0037】
実験結果、実施例1および実施例2のようにナノサファイアコート層を形成する場合と従来の一般コート層を形成した比較例1は、飲食物のこびりつき程度を確認することができないため、実施例1、2のようにナノサファイアコート層を形成する場合にも飲食物調理の際に飲食物がこびりつくのを防止することを確認することができた。
【0038】
したがって、本発明のナノサファイアがコートされた厨房器具は、一般コートされた厨房器具と比較してサファイア粉末の混合により耐摩耗性に優れて使用寿命を長らく維持することができるのはもとより、飲食物調理の際に飲食物がこびりつくのを一般コートされた厨房器具と同様に防止することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物が接触する調理面に三重(下塗り、中塗り、上塗り)または二重(下塗り、上塗り)の多重コート層を形成する調理器具において、前記調理面の多重コート層は、表面をサンディング加工した後、水溶液状態の溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を塗布し、乾燥焼成炉で高温乾燥させたナノサファイアコート層にすることを特徴とする、ナノサファイアがコートされた厨房器具。
【請求項2】
前記ナノサファイアコート層は、調理面の多重コート層を三重に形成する場合、水溶液状態のフッ素樹脂溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗り、中塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗り120〜200℃で10〜15分、中塗り350〜450℃で15〜25分、上塗り350〜450℃で15〜25分高温乾燥処理することを特徴とする、請求項1に記載のナノサファイアがコートされた厨房器具。
【請求項3】
前記ナノサイファイヤコート層は、調理面の多重コート層を二重に形成する場合、水溶液状態のセラミック溶剤にナノサイズのサファイア粉末を1:0.05〜0.5の重量比で混合した混合液を下塗りおよび上塗りのうち少なくとも一つのコート層に塗布し、前記コート層を乾燥焼成炉で下塗りおよび中塗り120〜250℃で20〜30分間夫々高温乾燥処理することを特徴とする、請求項1に記載のナノサファイアがコートされた厨房器具。
【請求項4】
前記ナノサファイアコート層に混合使用するサファイア粉末は1〜50のナノ粉末粒子にすることを特徴とする、請求項1、2および3のいずれか1項に記載のナノサファイアがコートされた厨房器具。

【公開番号】特開2013−94615(P2013−94615A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243179(P2011−243179)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(503192402)株式会社 大雄 (1)
【Fターム(参考)】