説明

ナノスケールの二酸化チタンが担持された白金触媒、該白金触媒のヒドロシリル化への使用およびこのような触媒を含有する組成物

本発明は、ナノスケールの二酸化チタン上に担持された白金触媒(Pt/TiO2触媒)、ヒドロシリル化での該触媒の使用、該触媒を用いてのヒドロシリル化法およびこのような触媒を含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノスケールの二酸化チタンが担持された白金触媒(Pt/TiO2触媒)、該白金触媒のヒドロシリル化への使用、このような触媒を有するヒドロシリル化法およびこのような触媒を含有する組成物に関する。
【0002】
脂肪族不飽和結合、殊にC=C二重結合(ヒドロシリル化)を有する化合物へのSi−H−官能性化合物の付加は、既に久しく公知である。
【0003】
ヒドロシリル化により、Si含有の有機化合物、オルガノシランおよびオルガノポリシロキサンは、製造されることができる。前記のSi含有の有機化合物、オルガノシランおよびオルガノポリシロキサンは、例えばエラストマー、歯科工業における成形材料または製紙工業およびフィルム工業における抗粘着性被膜の製造のために、殊にシリコン工業においてオルガノポリシロキサンの付加架橋による硬化に使用される。
【0004】
ヒドロシリル化反応のための触媒として、最も頻繁に白金およびその化合物が使用され、この場合白金は、金属の形で無機担体上に固定された金属として、白金塩としてとして使用されるかまたは場合によっては可溶性の白金錯体の形で使用される。
【0005】
現在まで、工業的に実施されたヒドロシリル化反応の大部分では、米国特許第3715334号明細書および米国特許第3775452号明細書の記載から公知の所謂"カルシュテット(Karstedt)触媒"、式[Pt2(TMDVS)3](TMDVS=テトラメチル−ジビニル−ジシロキサン)によって記載可能な二量体の白金−テトラメチル−ジビニル−ジシロキサン錯体が使用されている。このカルシュテット(Karstedt)触媒は、ヘキサクロロ白金酸H2PtCl6から出発して製造され、この場合このヘキサクロロ白金酸は、同様にしばしばヒドロシリル化触媒として使用されている。
【0006】
また、公知技術水準から、白金触媒によるヒドロシリル化反応は、公知であり、この場合活性化は、UV光および/または可視光により行なわれる。光活性の白金化合物としては、例えば米国特許第4510094号明細書およびWO92/10543の記載からCpPtMe3が公知であり、欧州特許第0398701号明細書の記載からPt(acac)2が公知であり、米国特許第4530879号明細書、WO92/10529およびWO92/10544の記載から(COD)PtR2、但し、Rは、アリール基を表わすものとし、が公知であり、WO95/25735の記載からMe3Pt(OO)、但し、OOは、例えばアセチルアセトナト配位子またはトロポナト(Troponato)配位子を表わすものとし、が公知であり、およびWO95/25734の記載から(TMDVS)Pt−L、但し、Lは、一般に発色団配位子を表わすものとし、が公知である。前記の全ての化合物は、場合によっては適当な光開始剤または光増感触媒と結合して室温でUV光および/または可視光の作用下にポリシロキサンの架橋に関連して触媒活性を示すことが共通している。更に、前記触媒は、均質相で使用され、しばしば比較可能な不均質の使用される触媒よりも高い活性および選択性を示す。
【0007】
均質触媒の大きな処理技術的欠点は、形成される生成物および/または存在する溶剤の分離が困難であること、およびそれと関連して回収が困難であることにある。均質の使用されるヒドロシリル化触媒のもう1つの欠点は、しばしば触媒的に不活性の種の形成によって惹起されるまさに短い可使時間である。
【0008】
それに対して、担持されたPt触媒は、しばしばよりいっそう低い活性またはヒドロシリル化での選択性を示す。しかし、この担持されたPt触媒は、(簡単な)不均質触媒として、本質的に強固で敏感でなく、それによってよりいっそう長い可使時間を有し、ならびによりいっそう簡単に分離および回収されることができるという利点を有する。
【0009】
公知技術水準からヒドロシリル化のための無機担体上に固定された白金触媒は、公知であり、この場合担体材料は、しばしば、例えばカーボンブラックまたは活性炭の形の炭素である。このように担持された触媒は、例えば米国特許第2637738号明細書、ドイツ連邦共和国特許第2815316号明細書およびドイツ連邦共和国特許第2012229号明細書中に記載されており、ならびにP. Boudjouk, B.H. Han, Organometallics 1983, 2, 769-771の記載から公知である。
【0010】
更に、γ−Al23(米国特許第3168544号明細書、米国特許第2970150号明細書)も既にしばしば不均質Pt触媒のための担体材料として使用された。
【0011】
欧州特許第0904315号明細書B1には、C=C−官能性エポキシ化合物でSiH官能性ポリシロキサンをヒドロシリル化するために担体のカーボンブラック、活性炭、Al23、珪酸バリウムおよび酸化バリウム上の不均質の担持されたPt触媒が記載されている。
【0012】
TiO2が担持されたPt触媒は、一般に、例えば合成ガスまたはH2の製造のためにドイツ連邦共和国特許第3340569号明細書の記載から、メタノールの変換のために欧州特許第201670号明細書の記載から、酸化触媒として欧州特許第730906号明細書の記載から、水素化触媒としてドイツ連邦共和国特許第19905838号明細書の記載から、または水酸化触媒としてWO01041926の記載から既に久しく公知である。
【0013】
ヒドロシリル化のためのTiO2が担持されたPt触媒の使用は、塩化アリルをSiH官能性シランで担持された多重元素触媒の存在下で、但し、この場合元素は白金であるものとし、ヒドロシリル化することによって3官能価プロピルシランを製造するための方法に関連して、既にドイツ連邦共和国特許第19857223号明細書中に記載されている。米国特許第6177585号明細書の記載から、SiH−官能性シランをC=C−官能性化合物で二酸化チタンからなる担体上の白金を含有する担持されたバイメタル触媒の存在下でヒドロシリル化するための方法が記載されている。
【0014】
しかしながら、これまでに公知技術水準から公知の全ての担持された白金ヒドロシリル化触媒は、殊に特に急速な反応経過が必要とされる使用のためには僅かすぎる活性を示す。更に、これまで公知技術水準からヒドロシリル化反応に使用された、TiO2が担持された白金触媒は、混合金属触媒である。
【0015】
従って、これまでに公知技術水準から公知の不均質触媒よりも高い活性を有する他のヒドロシリル化触媒を提供するという課題が課された。
【0016】
この課題は、ヒドロシリル化における触媒としてのナノスケールの二酸化チタン(TiO2)が担持された白金触媒の使用、ならびにこのような触媒の存在下でのヒドロシリル化法によって解決される。
【0017】
この課題は、殊にTiO2ゾルまたはナノスケールのTiO2粉末および白金を含有する溶液から出発して得ることができる触媒(Pt/TiO2触媒)およびこのような触媒の使用によって解決された。
【0018】
意外なことに、ナノスケールのTiO2が担持された白金をベースとする触媒は、ヒドロシリル化をよりいっそう高い活性および選択性で促進することが見い出された。
【0019】
更に、意外なことに、殊にナノスケールの二酸化チタンを担体としてベースとするかかる不均質白金触媒は、照射によって活性のさらなる上昇を受けうることが見い出された。
【0020】
TiO2ゾルまたはナノスケールのTiO2粉末および白金を含有する溶液をヒドロシリル化触媒として反応させることによって得ることができる触媒の使用は、これまでに公知技術水準において未だ記載されていない。
【0021】
それにも拘わらず、公知技術水準において、一定のナノスケールのTiO2および白金を含有するかまたはナノスケールのTiO2からゾル−ゲル法によって生じる触媒は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第354402873号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2830231号明細書A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10025964号明細書A1の記載から公知である。
【0022】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4402873号明細書には、ゾル−ゲル法により得ることができる、白金粒子、ポリマーおよびナノスケールの二酸化チタンを含有する組成物が開示されている。
【0023】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2830231号明細書A1には、同様にゾル−ゲル法により得ることができる、担体が場合によっては二酸化チタンの多孔質ゲルであってよい、白金を含有する担持触媒が開示されている。
【0024】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10025964号明細書A1には、触媒活性の物質としての白金を有する、ナノスケールの磁性化可能な特に二酸化チタンを含有する担体材料をベースとする不均質触媒が記載されている。
【0025】
しかし、公知技術水準から、専らナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金からなる不均質触媒は、公知ではない。
【0026】
本発明の対象は、ナノスケールの二酸化チタンからの担体上の白金からなる触媒である。
【0027】
このような触媒は、二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を白金含有溶液と反応させることによって得ることができる。
【0028】
殊に、このような触媒は、次の工程
a)二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を白金含有溶液と反応させる工程、
b)工程a)で得られた生成物を乾燥させる工程、
c)工程b)で得られた生成物をか焼する工程、
d)工程c)で得られた生成物を還元する工程を含む方法によって得ることができる。
【0029】
この場合、白金含有溶液は、有利に白金塩または白金化合物を溶解することによって得ることができ、殊にこの溶液は、白金塩の溶液である。
【0030】
本発明による触媒の製造に使用される二酸化チタン成分は、特にナノスケールのTiO2粉末またはTiO2ゾル、殊にTiO2ゾルである。
【0031】
この場合、工程a)による反応は、特に専ら二酸化チタン成分および白金成分の存在下で、場合によっては溶剤、特に水の存在下で行なわれる。
【0032】
それによれば、本発明の他の対象は、ヒドロシリル化のための触媒としての、担体としてのナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金の使用、殊にナノスケールの二酸化チタンからの担体上の白金からなる触媒または二酸化チタンゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を白金含有溶液と反応させることによって得ることができる触媒である。
【0033】
更に、本発明の対象は、ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒の存在下でのヒドロシリル化法である。この場合には、有利にナノスケールの二酸化チタンからの担体上の白金からなる触媒、殊に二酸化チタンゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を白金含有溶液と反応させることによって得ることができる触媒が使用される。
【0034】
この場合、ヒドロシリル化は、少なくとも1個の珪素−水素結合を有する化合物と少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する化合物との場合によっては熱的に誘発される反応(付加)である。本明細書中で、ヒドロシリル化の概念は、珪素結合した水素を含有する珪素化合物、例えばSiH官能性ポリシロキサンまたはSiH官能性オルガノシランの熱エネルギーを、少なくとも1個の脂肪族多重結合を含有する化合物、殊にオレフィン系またはアセチレン系不飽和位置を有する化合物に付加的に供給しながらの付加(熱的付加)を意味する。
【0035】
また、本発明の対象は、ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒の存在下で少なくとも1つの脂肪族不飽和位置を有する化合物へ少なくとも1個の珪素結合した水素原子含有化合物を付加反応させるための方法である。
【0036】
本発明による触媒は、担持された不均質ヒドロシリル化触媒として顕著に好適である。
【0037】
本発明による触媒の本質的な特徴は、白金、白金塩および/または白金化合物が担体としてのナノスケールの二酸化チタン上に施されているという事実にある。
【0038】
更に、照射源、殊にUV照射源での付加的な照射によって、望ましく触媒された反応がなおさらに促進されうることが見出された。いずれにせよ、ヒドロシリル化のための触媒としてのTiO2担持された白金の高い活性は、付加的に照射源、殊にUV照射源での照射によってなおさらに上昇されうる。
【0039】
それに応じて、本発明の対象は、担体としてのナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒の存在下で、反応混合物中で少なくとも1つの脂肪族不飽和位置を有する化合物へ少なくとも1個の珪素結合した水素原子含有化合物を放射線活性化により付加反応させるための方法でもある。
【0040】
本発明による方法を実施するための化合物(反応体)の好ましい実施態様に関連して、同様に本発明による組成物の詳細に記載された成分が指摘される。
【0041】
付加的な照射下での本発明による方法の特に好ましい実施態様において、二酸化チタンゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末と白金含有溶液との反応によって得ることができる本発明による触媒が使用される。この触媒は、照射によって特に高い付加的な活性化可能性を示す。二酸化チタンゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を使用して製造されたものではない、二酸化チタンが担持された白金触媒は、同様にヒドロシリル化において触媒活性を示す。しかし、この場合、照射による活性化可能性は、殆んど無視することができる。
【0042】
更に、活性化に使用される照射は、殊に化学線、例えば紫外線または200nm〜800nm、有利に400nm未満の波長を有する可視範囲の放射線である。
【0043】
特に好適なUV照射源としては、400nm未満で発光する照射源、即ち殊に低圧水銀蒸気灯、中圧水銀蒸気灯および高圧水銀蒸気灯または"ブラックライト"、例えばDr. HoenleのUVハンドランプUVHAND250がこれに該当する。
【0044】
既に公知技術水準から公知の照射による均質白金−ヒドロシリル化触媒の活性化は、無機担体上に固定された、金属の白金−ヒドロシリル化触媒に関連してはこれまで未だ記載されたことがなかった。TiO2が担持された白金が触媒として使用されるようなヒドロシリル化反応のUV活性化は、殊に好ましい。本発明によるヒドロシリル化法は、一般に基礎となる白金触媒の高い活性および選択性を示す。ヒドロシリル化触媒として最初に使用される前記触媒は、安定性、簡単な分離可能性および回収可能性のような不均質触媒の利点ならびに均質触媒から公知の高い活性および照射、殊にUV光による他の活性可能性を併せ持つ。
【0045】
本発明による方法で使用される触媒または本発明による組成物中に使用される触媒は、原理的に公知技術水準から公知でありかつ例えばWalter Noil, "Chemie und Technologie der Silicone", Verlag Chemie GmbH, Weiheim GmbH, Weinheim/Bergstr. 1968; Bogdan Macciniec, "Comprehensive Handbook on Hydrosilylation", Oxford: Pergamon Press, 1992に記載されている全てのヒドロシリル化反応に使用されることができるか、または公知技術水準から公知のヒドロシリル化可能、殊に架橋可能な全ての組成物に使用されることができる。
【0046】
前記方法は、低分子量化合物の合成ならびに高分子量化合物、殊に不飽和基、殊に炭素−炭素二重結合を有するポリマーの硬化に使用することができる。
【0047】
殊に、C=C−官能性ポリシロキサンとSiH−官能性ポリシロキサンとが反応されるかまたはC=C−官能性オルガノシランとSiH−官能性オルガノシランとが反応されるようなヒドロシリル化反応が促進される。
【0048】
好ましいのは、なかんずくビニル末端基を有するポリジメチルシロキサンと一般式Me3SiO−[Si(H)(Me)O]x−SiMe3〔式中、xは1〜500の数、殊に1〜100を表わす〕で示されるSiH官能性ポリシロキサンとの反応ならびにSi−ビニル官能性オルガノシランとSi−H−官能性オルガノシランとの反応である。
【0049】
本発明による方法によりヒドロシリル化されうるSi−ビニル官能性オルガノシランの具体的な例としては、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−メチル−ジエトキシシラン、ビニル−メチル−ジメトキシシラン、ビニルトリクロロシランが挙げられる。
【0050】
SiH−官能性オルガノシランの具体的な例としては、HSi(OR')3、但し、この場合R’は、アルキル基を表わすものとし、HSi(Me)3-yCly、但し、この場合yは、1〜3の数を表わすものとし、およびHSiR''3、但し、この場合R''は、アルキル基またはアリール基を表わすものとし、が挙げられる。
【0051】
更に、本発明は、(A)少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する化合物、(B)少なくとも1個の珪素−水素結合を有する化合物および(D)ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒を含有するヒドロシリル化可能な組成物に関する。
【0052】
ヒドロシリル化可能な組成物は、殊に架橋可能な組成物を意味する。
【0053】
触媒(D)は、有利にナノスケールの二酸化チタンからの担体上の白金からなる触媒、殊に二酸化チタンゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末を白金含有溶液と反応させることによって得ることができる触媒である。
【0054】
ヒドロシリル化可能な組成物の好ましい実施態様においては、(A)脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン、(B)Si−結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンまたは(A)および(B)の代わりに、(C)脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC−結合した基およびSi−結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンおよび(D)ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒を含有するポリオルガノシロキサン材料が重要である。
【0055】
ヒドロシリル化可能な組成物に関連して記載された成分(A)、(B)または(C)は、本発明による方法において反応させるべき化合物(反応体)に相当する。前記組成ならびに前記方法には、二酸化チタンが担持された本発明による白金触媒、殊にTiO2ゾルまたはナノスケールのTiO2粉末と白金含有溶液との反応から生じるかかる白金触媒が基礎となっている。
【0056】
ヒドロシリル化のための本発明による方法は、熱供給および/または放射線によるエネルギー供給によって、殊にエネルギー供給の2つの形で実施される。同様のことは、本発明による方法が熱および/または放射線の影響下に実施されるような本発明によるヒドロシリル化可能な組成物にも云えることである。
【0057】
有利には、このような組成物は、ビニル官能性オルガノシランおよびビニル末端基を有するポリジメチルシロキサンを含む群から選択された、少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する化合物、およびSiH−官能性ポリシロキサンおよびSiH−官能性オルガノシランを含む群から選択された、少なくとも1個の珪素−水素結合を有する化合物を含有する。
【0058】
本発明は、同様に上記のヒドロシリル化可能な組成物、殊に記載されたポリオルガノシロキサン材料を架橋することによって得ることができるシリコーンエラストマーに関する。
【0059】
本発明は、同様に、例えば歯科の印象、接着剤、剥離ライナー、平面状パッキング、パッキング材および被覆の製造に使用することができる、本発明による方法で製造されたポリシロキサン組成物またはオルガノシラン組成物に関する。
【0060】
本発明による材料中で使用される化合物(A)および(B)、または(C)は、公知のようにして、架橋が可能なように選択される。例えば化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するか、または化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも2つのSi結合水素原子を有するか、または化合物(A)及び(B)の代わりに前記の割合で脂肪族不飽和基およびSi結合水素原子を有するシロキサン(C)が使用される。
【0061】
本発明により使用される化合物(A)は、有利に少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素不含の有機化合物、ならびに有利に少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機珪素化合物であってもよい。本発明による材料において成分(A)として使用することができる有機化合物のための例は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチル−ヘプタジエン−(1,5)、3−フェニル−ヘキサジエン−(1,5)、3−ビニル−ヘキサジエン−(1,5)および4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、N,N’−メチレン−ビス−(アクリル酸アミド)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリメタクリレート、トリプロピレングリコール−ジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ−(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0062】
しかしながら、特に、本発明によるシリコーン材料は、成分(A)として、脂肪族不飽和有機珪素化合物を含有し、この場合、これまでに付加架橋性材料中に使用された全ての脂肪族不飽和有機珪素化合物を使用することができ、例えば尿素セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマー、アミド−セグメントおよび/またはイミド−セグメントおよび/またはエステル−アミド−セグメントおよび/またはポリスチレン−セグメントおよび/またはシラリーレン(Silarylen)−セグメントおよび/またはカルボラン−セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマーおよびエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することもできる。
【0063】
脂肪族炭素−炭素二重結合を有するSiC結合基を有する有機珪素化合物としては、特に平均的な一般式(X)
a1bSiO(4-a-b)/2 (X)
〔式中、
Rは、同一でも異なっていてもよく、脂肪族炭素−炭素二重結合を有しない有機基を表わし、
1は、同一でも異なっていてもよく、脂肪族炭素−炭素多重結合を有する、置換または非置換の1価SiC結合炭化水素基を表わし、
aは0、1、2または3であり、および
bは、0、1または2であり、
但し、この場合a+bの総和は、3以下であり、1分子当たり平均で少なくとも2個の基R1が存在するものとする〕で示される単位からなる線状または分枝鎖状オルガノポリシロキサンが使用される。
【0064】
基Rは、1価または多価の基であってよく、この場合、多価の基、例えば2価、3価および4価の基は、複数の、例えば2、3または4個の式(X)のシロキシ単位と相互に結合する。Rは1価の基−F、−Cl、−Br、−OR6、−CN、−SCN、−NCOおよび置換または非置換のSiC結合炭化水素基、但し、この場合この基は酸素原子または基−C(O)−で中断されていてもよいものとし、ならびに2価の両側で式(X)によりSi結合した基を包含する。この場合、R6は、一般に水素原子を表わすかまたは1〜20個の炭素原子を有する、置換または非置換の1価炭化水素基を表わし、好ましくは、水素、アルキル基およびアリール基を表わす。
【0065】
基R6の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基およびスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−またはp−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基およびα−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基、ならびに式−C(R1)=CR12である。
【0066】
ハロゲン化された基R6の例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基およびハロゲンアリール基、例えばo−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびp−クロロフェニル基である。
【0067】
好ましくは、R6は水素原子、アルキル基およびアリール基であり、この場合、水素原子、メチル基およびエチル基は、殊に有利である。
【0068】
基RがSiC結合置換炭化水素基である場合には、置換基としては、ハロゲン原子、燐含有基、シアノ基、−OR6、−NR6、−NR62、−NR6−C(O)−NR62、−C(O)−NR62、−C(O)−R6、−C(O)OR6、−SO2−Phおよび−C65、但し、この場合R6は、上記の意味を有し、かつPhは、フェニル基を表わすものとし、が好ましい。
【0069】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0070】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、例えばo−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびp−クロロフェニル基、−(CH2n−N(R6)C(O)NR62、−(CH2n−C(O)NR62、−(CH2n−C(O)R6、−(CH2n−C(O)OR6、−(CH2n−C(O)NR62、−(CH2n−C(O)−(CH2m−C(O)CH3、−(CH2n−NR6−(CH2m−NR62、−(CH2n−O−CO−R6、−(CH2n−O−(CH2m−CH(OH)−CH2OH、−(CH2n−(OCH2CH2m−OR6、−(CH2n−SO2−Phおよび−(CH2n−O−C65であり、この場合、R6は前記した意味を表わし、nおよびmは0〜10の同じかまたは異なる整数であり、Phはフェニル基を表わす。
【0071】
Rが2価の両側が式(X)によりSi結合している基の例は、前記の基Rについて挙げられた1価の例から、付加的結合が水素原子の置換により行われることにより誘導されたようなものである。この種の基の例は、−(CH2n−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−CH2−、−C64−、−CH(Ph)−CH2−、−C(CF32−、−(CH2n−C64−(CH2n−、−(CH2n−C64−C64−(CH2n−、−(CH2O)m−、−(CH2CH2O)m−、−(CH2n−Ox−C64−SO2−C64−Oz−(CH2n−であり、この場合、zは、0または1であり、mおよびnは、前記した意味を表わし、Phは、フェニル基である。
【0072】
基Rは、有利には1価の、脂肪族炭素−炭素−多重結合を有しない、SiC結合した、置換または非置換の1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利には1価の、脂肪族炭素−炭素−多重結合を有しない、SiC結合した、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル基またはフェニル基である。
【0073】
基R1は、SiH官能性化合物と付加反応(ヒドロシリル化)することができる任意の基であってよい。
【0074】
基R1が、置換されたSiC結合炭化水素基である場合、置換基としてハロゲン原子、シアノ基および−OR6が有利であり、この場合、R6は上記の意味を表わす。
【0075】
好ましくは、基R1は、2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基およびアルキニル基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基およびスチリル基であり、この場合、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基は、特に有利に使用される。
【0076】
成分(A)の分子量は、例えば102〜106g/molの間で広範囲に変化することができる。成分(A)は、例えば比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンであることができるが、しかし、例えば105g/molの分子量を有する(NMRを用いて測定した数平均)鎖端または末端のSi結合ビニル基を介して提供される高分子量のポリジメチルシロキサンであることもできる。また、成分(A)を形成する分子の構造は確定しておらず;殊に、高分子量の、即ちオリゴマーまたはポリマーのシロキサンの構造は、直鎖状、環式、分枝鎖状または樹脂状、網目状であることができる。直鎖状および環式のポリシロキサンは、有利に式R3SiO1/2、HR2SiO1/2、HRSiO2/2およびR2SiO2/2の単位から構成され、この場合、Rは前記の意味を有する。分枝鎖状および網目状のポリシロキサンは、付加的に3官能性および/または4官能性の単位を含有することができ、この場合、式RSiO3/2、HSiO3/2およびSiO4/2のようなものは、有利である。勿論、シロキサンに対する成分(A)の基準を満たす種々の混合物が使用されてもよい。
【0077】
成分(A)として、それぞれ25℃で0.01〜500000Pa・s、特に有利に0.1〜100000Pa・sの粘度を有するビニル官能性の、主に直鎖状のポリジオルガノシロキサンを使用するのが特に有利である。
【0078】
有機珪素化合物(B)として、これまでにも付加架橋性材料において使用されてきた全ての水素官能性有機珪素化合物を使用することができる。
【0079】
Si結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)としては、特に平均的な一般式(XI)
cdSiO(4-c-d)/2 (XI)
〔式中、
Rは、同一でも異なっていてもよく、かつ上記の意味を有し、
cは、0、1、2または3であり、および
dは、0、1または2であり、
但し、この場合c+dの総和は、3以下であり、1分子当たり平均で少なくとも2個のSi結合水素原子が存在するものとする〕で示される単位からなる直鎖状、環式または分枝鎖状のオルガノポリシロキサンが使用される。
【0080】
特に、本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、Si結合水素原子を、オルガノポリシロキサン(B)の総質量に対して0.04〜1.7質量%の範囲内で含有する。
【0081】
成分(B)の分子量は、同様に、例えば102〜106g/モルの間で広範囲に変動することができる。従って、成分(B)は、例えば比較的低分子のSiH官能性のオリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであってよいが、しかし、鎖中または末端のSiH基を有する高分子のポリジメチルシロキサンまたはSiH基を有するシリコーン樹脂であってもよい。また成分(B)を形成する分子の構造は確定されておらず、特に高分子、即ちオリゴマーまたはポリマーのSiH含有のシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝鎖状または樹脂状、網状であってよい。直鎖状および環式のポリシロキサンは、有利に式R3SiO1/2、HR2SiO1/2、HRSiO2/2およびR2SiO2/2の単位から構成され、この場合、Rは前記の意味を有する。分枝鎖状および網目状のポリシロキサンは、付加的に3官能性および/または4官能性の単位を含有することができ、この場合、式RSiO3/2、HSiO3/2およびSiO4/2のようなものは、有利である。勿論、成分(B)の基準を満たす種々のシロキサンの混合物が使用されてもよい。殊に、成分(B)を形成する分子は、不可欠なSiH基に加えて、場合により同時に脂肪族不飽和の基を含有してもよい。低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチルシロキシ)シランおよびテトラメチルシクロテトラシロキサン、ならびに高分子量のSiH含有シロキサン、例えば25℃で粘度10〜10000mPa・sを有するポリ(水素メチル)シロキサンおよびポリ(ジメチル水素メチル)シロキサン、または同様にメチル基の部分が3,3,3−トリフルオロプロピル基またはフェニル基によって置換されているSiH含有化合物を使用するのが特に有利である。
【0082】
成分(B)は、特に本発明による架橋性の全シリコーン材料中で、SiH基対脂肪族不飽和基のモル比が0.1〜20、特に有利に1.0〜5.0の間にあるような量で含有されている。
【0083】
本発明により使用される成分(A)および(B)は、市販製品であるか、或いは当該化学分野において常用の方法により製造可能である。
【0084】
成分(A)および(B)の代わりに、本発明による材料は、脂肪族炭素−炭素−多重結合およびSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(C)を含有することができるが、これは有利ではない。
【0085】
シロキサン(C)を使用する場合には、特に式
gSiO4-g/2、RhR1SiO3-h/2およびRHSiO3-i/2
〔式中、RおよびR1は、上記の意味を有し、
gは、0、1、2または3であり、hは、0、1または2であり、およびiは、0、1または2であり、
但し、この場合1分子当たり少なくとも2個の基R1および少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在するものとする〕で示される単位からなるシロキサンが重要である。
【0086】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SiO4/2単位、R3SiO1/2単位、R21SiO1/2単位およびR2HSiO1/2単位からなるようなもの、所謂MQ樹脂であり、この場合、この樹脂は付加的にRSiO3/2単位およびR2SiO単位を含有することができ、ならびに主にR21SiO1/2単位、R2SiO単位およびRHSiO単位からなる直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、この場合、RおよびR1は、上記の意味を表わす。
【0087】
オルガノポリシロキサン(C)は、特にそれぞれ25℃で0.01〜500000Pa・s、特に有利に0.1〜100000Pa・sの平均粘度を有する。
【0088】
オルガノポリシロキサン(C)は、当該化学分野において通常使用される方法により製造できる。
【0089】
成分(A)ないし(D)の他に、本発明による硬化可能な組成物は、なおも、これまでにも付加架橋可能なコンパウンドの製造のために使用されていた全ての他の物質を含有してよい。
【0090】
成分(E)として本発明によるコンパウンド中で使用することができる補強性充填剤のための例は、少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法珪酸または沈降珪酸ならびにカーボンブラックおよび活性炭、例えばファーネスブラックおよびアセチレンブラックであり、この場合には、少なくとも50m2/gのBET表面積を有する熱分解法珪酸および沈降珪酸であることが好ましい。
【0091】
記載された珪酸充填剤は、親水性の性質を有していてもよいし、公知方法により疎水化されていてもよい。親水性の充填剤を混入させる場合には、疎水化剤を添加することが必要である。
【0092】
本発明による架橋可能なコンパウンド中の活性の補強性充填剤(E)の含有量は、0〜70質量%、有利には0〜50質量%の範囲である。
【0093】
本発明による組成物、殊にポリオルガノシロキサンコンパウンドは、選択的に成分(F)として他の添加剤を、70質量%の含量まで、特に0.0001〜40質量%の含量まで含有してよい。前記の添加剤は、例えば不活性充填剤、樹脂状ポリオルガノシロキサンであってシロキサン(A)、(B)および(C)とは異なるポリオルガノシロキサン、分散助剤、溶剤、付着助剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤等であってよい。
【0094】
これには、添加剤、例えば石英粉、珪藻土、粘土、白亜、リトポン、カーボンブラック、黒鉛、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、カルボン酸の金属塩、金属ダスト、繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維、プラスチック粉末、着色剤、顔料等が含まれる。
【0095】
更に、本発明によるコンパウンドの加工時間、開始温度および架橋速度の意図的な調整に使用される添加剤(G)が含まれていてよい。これらの抑制剤および安定剤は、付加架橋性のコンパウンドの分野で非常によく知られている。慣例の抑制剤の例は、アセチレン性アルコール、例えば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オールおよび3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、ポリメチルビニルシクロシロキサン、例えば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、メチルビニルSiO2/2基および/またはR2ビニルSiO1/2末端基を有する低分子量のシリコーン油、例えばジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、例えばジアリルマレエート、ジメチルマレエートおよびジエチルマレエート、アルキルフマレート、例えばジアリルフマレートおよびジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミンおよびアミド、ホスファンおよびホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジンおよびオキシムである。前記の抑制剤添加剤(G)の作用は、化学構造に依存するので、個別的に測定されなければならない。
【0096】
本発明によるコンパウンドの抑制剤含量は、特に0〜50000ppm、特に有利に20〜2000ppm、殊に100〜1000ppmである。
【0097】
本発明による組成物、殊にオルガノポリシロキサンコンパウンドの製造は、公知の方法に従って、例えば個々の成分を均一に混合することによって行なうことができる。この場合、順序は、任意であるが、しかし、白金触媒(D)と(A)および(B)または(C)、場合によっては(E)、(F)および(G)からの混合物との均一な混合を先に選ぶべきである。この場合、本発明により使用される白金触媒(D)は、固体物質としてかまたは所謂バッチ量として、均一に微少量の(A)と一緒にかまたは(A)と(E)とを混合して混入されてよい。この場合、この混合は、(A)の粘度に依存して、例えば撹拌機を用いて、ディソルバー中で、圧延機上でかまたは混練機中で行なわれる。
【0098】
Si結合した水素を脂肪族多重結合に付加させることによって架橋しうる本発明によるコンパウンドは、これまでに知られているヒドロシリル化反応によって架橋可能な材料と同じ条件下で架橋させることができる。この場合には、80〜220℃、特に好ましくは130〜190℃の温度が好ましく、かつ900〜1100hPaの圧力が好ましい。しかしながら、よりいっそう高いかまたはよりいっそう低い温度および圧力を使用することもできる。架橋は、エネルギーに富んだ放射線、例えば短波長を有する可視光およびUV光を用いて光化学的に実施されてもよいし、熱的励起と光化学的励起との組み合わせを用いて実施されてもよい。
【0099】
本発明による触媒または本発明による方法で使用される触媒または本発明による組成物中に含有されている触媒は、一般にTiO2−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末、特にTiO2−ゾルおよび白金含有溶液、有利に白金塩の溶液から出発して製造される。
【0100】
この製造法は、次の工程:
a)二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末と白金含有溶液との反応、
b)工程a)により得られた生成物の乾燥、
c)工程b)により得られた生成物のか焼および
d)工程c)により得られた生成物の還元を含む。
【0101】
この製造は、特に水性媒体中で行なわれる。
【0102】
この場合、この触媒は、当業者に工程の標準法を使用しながら、例えば浸漬または含浸、吸着または(共沈)沈殿によって製造される。好ましいのは、触媒活性成分の溶液での担体の含浸、殊に水性媒体中の室温での成分の攪拌である。
【0103】
好ましくは、含浸に続いて、高められた温度、殊に80〜100℃での乾燥が続き、引続き300〜600℃、殊に450℃までの温度でのか焼工程、最終的に還元が続く。
【0104】
適当な還元剤は、酸化還元電位が使用された白金化合物の酸化還元電位より低い全ての物質または物質混合物、即ち+0.5ボルト未満の水性媒体中での標準電位、特に0ボルト未満の標準電位を有する物質である。
【0105】
適当な還元剤の例は、炭酸、例えば蟻酸、クエン酸、乳酸、酒石酸ならびにこれらの酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびC1〜C10−アルキルアンモニウム塩、C1〜C10−アルカノール、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノール、糖、例えば単糖類、二糖類およびオリゴ糖類の形のアルドースおよびケトース、殊にグルコース、フルクトースおよびラクトース、アルデヒド、例えばホルムアルデヒド、硼素水素化合物または水素化硼素、例えばボラン、金属ボラネートおよびボラン錯体、例えばジボラン、硼水素化ナトリウムおよびアミノボラン、殊にトリメチルアミノボラン、ヒドラジンおよびアルキルヒドラジン、例えばメチルヒドラジン、亜二チオン酸水素および亜二チオン酸、殊に亜二チオン酸水素ナトリウムおよび亜二チオン酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウムおよび亜二チオン酸亜鉛、ならびにH2である。
【0106】
好ましい還元剤は、蟻酸、NaBH4および/またはヒドラジンならびにH2である。
【0107】
触媒を噴霧乾燥法により噴霧乾燥装置中で製造することも適している。
【0108】
この場合、噴霧乾燥は、触媒成分の溶液または懸濁液をノズル装置または類似の装置を用いて噴霧乾燥機の蒸発室内で噴霧し、こうして生じた液状粒子を乾燥ガス、例えば加熱された空気、窒素またはアルゴンの流れと接触させるような方法を表わし、この場合この流れは、向流または直流で蒸発室内に導入される。ガス流の温度は、通常、入口管開口で250〜400℃であり、出口管開口で140〜250℃であり、入口管開口と出口管開口との温度差は、少なくとも40℃である。
【0109】
白金含有溶液のための白金出発材料としては、一般に無機Pt(II)塩および/またはPt(IV)塩、殊にH2PtCl6、PtCl2、PtCl4、(NH34PtCl2および(NH34Pt(OH)2を含む群から選択された白金塩ならびに無機Pt化合物または金属有機Pt化合物、例えば白金アセチルアセトネートまたは白金テトラキス(トリフェニルホスファン)が使用されてよい。
【0110】
白金を含有する任意に濃縮された溶液が使用されてよく、好ましいのは、白金0.1〜10質量%を有する溶液である。
【0111】
溶剤は、有利に白金化合物が溶剤中で可溶性であるように選択される。
【0112】
水以外に適しているのは、有機溶剤、例えば直鎖状または分枝鎖状のC1〜C10−アルカノール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、多価アルコール、例えばエチレングリコール、ポリエーテル、例えばジメトキシエタン、ポリエーテルグリコール、ケトン、例えばアセトン、アルデヒド、例えばプロパナール、芳香族炭化水素、例えばトルエンである。特に好ましいのは、水である。
【0113】
製造に使用されるTiO2−ゾルは、平均粒径が10〜100nm、有利に10〜50nm、殊に10〜30nmの範囲内にあり、かつ固体含量が10〜30%であることを示す。
【0114】
ナノスケールのTiO2粉末は、粒度が10〜100nm、有利に10〜50nm、殊に10〜30nm、特に有利に20〜25nmであることを示す。
【0115】
触媒の白金含量(白金含有量)は、0.01〜10質量%の間で変動し、好ましくは、0.1〜2質量%、殊に0.1〜1質量%である。
【0116】
触媒のBET表面積は、一般に20〜500m2/g、有利に50〜250m2/gである。TiO2が担持された白金触媒の前記の特徴のある好ましいパラメーターは、同様に本発明による方法で使用されるTiO2が担持された白金触媒ならびに本発明による組成物中に含有された、TiO2が担持された白金触媒にも当てはまる。
【0117】
本発明による方法で使用されるかまたは本発明による組成物中に使用される、白金の全含量は、特に1〜500ppm、特に有利に20〜200ppmであり、本発明による方法で使用されるかまたは本発明による組成物中に使用される、TiO2の全含量は、特に0.5〜10%である。
【0118】
Si結合した水素を脂肪族多重結合に付加させることによって架橋しうる本発明によるコンパウンドは、これまでに知られているヒドロシリル化反応によって架橋可能な材料と同じ条件下で架橋させることができる。
【0119】
本発明による方法、または本発明による組成物のヒドロシリル化または架橋は、一般に50〜200℃、特に100〜200℃、殊に140〜200℃の温度範囲内で実施される。
【0120】
架橋は、既に記載されたように、エネルギーに富んだ放射線、例えば短波長を有する可視光およびUV光を用いて光化学的に実施されてもよいし、熱的励起と光化学的励起との組み合わせを用いて実施されてもよい。
【0121】
次の実施例は、本発明による方法および本発明による組成物を具体的に示すのに使用されるが、決してこれに限定されるものと見なすべきではない。
【0122】
実施例
担持されたPt触媒の製造
比較例1(Al23上のPtの製造(Spheralite 531P3)):
(NH34Pt(OH)3の水溶液1.44gをH2O35ml(蒸留された)で希釈し、Al227.8g(P3;平均粒径8.9μm、BET115m2/g)と一緒に室温で1.5時間攪拌した。その後に、遠心分離し、得られた粉末を80℃で乾燥箱中で乾燥させ、引続き450℃で5時間、か焼する。生じる粉末2.9gに内部温度計、還流冷却器および載置された気泡計数器(Blasenzaehler)を備えた二口フラスコ中でH2O150ml中のHCOOH8.7gの溶液(85%)を添加し、ガスの発生がもはや確認できなくなるまで(4〜5時間)45〜50℃で攪拌する。冷却後、上に存在する溶液を傾瀉し、残存する粉末を遠心分離し、65℃で4時間乾燥箱中で乾燥させる。Pt1.23%のPt含量および99.0m2/gのBET表面積を有するPt/Al23粉末を生じる。
【0123】
比較例2(DT 51、Millenium):
(NH34Pt(OH)3の水溶液1.41gをH2O35ml(蒸留された)で希釈し、TiO27.5g(DT 51;平均粒径1.2μm、BET90±10m2/g)と一緒に室温で1.5時間攪拌した。その後に、遠心分離し、得られた粉末を80℃で乾燥箱中で乾燥させ、引続き450℃で5時間、か焼する。生じる粉末3.1gに内部温度計、還流冷却器および載置された気泡計数器(Blasenzaehler)を備えた二口フラスコ中でH2O160ml中のHCOOH9.3gの溶液(85%)を添加し、ガスの発生がもはや確認できなくなるまで(4〜5時間)45〜50℃で攪拌する。冷却後、上に存在する溶液を傾瀉し、残存する粉末を遠心分離し、65℃で4時間乾燥箱中で乾燥させる。Pt0.78%のPt含量および83.0m2/gのBET表面積を有するPt/Al23粉末を生じる。
【0124】
本発明による実施例1(TiO2上のPtの製造(Hombikat XXS100、Sachtleben;Pt1.90%))
TiO2−ナノゾル40.0g(Hombikat XXS100、平均粒径20〜25nm、硝酸を有する水性TiO2−ナノゾル、pH1、固体含量18%)と(NH34Pt(OH)2956mgとの混合物を室温で1.5時間攪拌し、引続き80℃で72時間、乾燥箱中で乾燥させる。生じた結晶物を乳鉢中で微粉砕し、450℃で5時間、か焼する。生じる粉末4.8gに内部温度計、還流冷却器および載置された気泡計数器(Blasenzaehler)を備えた二口フラスコ中でH2O250ml中のHCOOH14.4gの溶液(85%)を添加し、ガスの発生がもはや確認できなくなるまで(4〜5時間)45〜50℃で攪拌する。冷却後、上に存在する溶液を傾瀉し、残存する粉末を遠心分離し、65℃で4時間乾燥箱中で乾燥させる。Pt1.90%のPt含量および92.0m2/gのBET表面積を有するPt/TiO2−粉末5.5gを生じる。
【0125】
本発明による実施例2:
TiO2上のPtの製造(Hombikat XXS100、Sachtleben)、Pt0.17%
TiO2−ナノゾル40.0g(Hombikat XXS100、平均粒径20〜25nm、硝酸を有する水性TiO2−ナノゾル、pH1、固体含量18%)と(NH34Pt(OH)295mgとの混合物を室温で1.5時間攪拌し、引続き80℃で72時間、乾燥箱中で乾燥させる。生じた結晶物を乳鉢中で微粉砕し、450℃で5時間、か焼する。Pt/TiO2−粉末4.6gが生じる。
【0126】
このPt/TiO2−粉末2.6gに内部温度計、還流冷却器および載置された気泡計数器(Blasenzaehler)を備えた二口フラスコ中でH2O135ml中のHCOOH7.8gの溶液(85%)を添加し、ガスの発生がもはや確認できなくなるまで(4〜5時間)45〜50℃で攪拌する。冷却後、上に存在する溶液を傾瀉し、残存する粉末を遠心分離し、65℃で4時間乾燥箱中で乾燥させる。Pt0.17%のPt含量および83.6m2/gのBET表面積を有するPt/TiO2−粉末を生じる。
【0127】
試験反応の一般的な記載
a)照射なしの触媒による試験反応
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)(α,ω−ジビニルジメチルポリシロキサン、粘度η=500mPas、固体含量54.6%)と、SiH架橋剤V72(式Me3SiO−[Si(H)Me−O]48−SiMe3、固体含量37%)と不均質Pt触媒とからなる混合物を、ナイフ(24μ)またはスパチュラを用いてガラス対象担体上に塗布し、加熱バンク(Heizbank)上で所定の温度で"塗布試験(Strichtest)"で滲む含量がもはや確認することができなくなるまで処理する。
【0128】
b)付加的なUV照射下での触媒による試験反応
a)と同様に、乳化されたDEHESIVE920(登録商標)と、乳化された、式Me3SiO−[Si(H)Me−O]48−SiMe3のH官能性ポリシロキサン(SiH架橋剤V72)と、不均質Pt触媒とからなる混合物をナイフ(24μ)またはスパチュラを用いてガラス対象担体上に塗布し、加熱バンク(Heizbank)上で10cmの間隔で付加的なUV灯(UV-ハンドランプ(Handlampe) Dr. Hoenle UVAHand 250、10cmの間隔での照射強さ10.5mW/cm2、λmax≒362nm)を用いて所定の温度で"塗布試験(Strichtest)"で滲む含量がもはや確認することができなくなるまで処理する。
【0129】
比較例3(Pt/Al23触媒):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)10.0gと架橋剤V720.6gとの混合物に比較例1からのPt/Al23触媒42mg(Pt49ppm)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)およびb)の記載により試験する。
【0130】
【表1】

【0131】
比較例4(Pt/C触媒、Pt1%):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)10.0gと架橋剤V720.6gとの混合物にPt/C54mg(Pt51ppm)(Pt1%、市販の触媒)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)およびb)の記載により試験する。
【0132】
【表2】

【0133】
比較例5(Pt/C触媒、Pt10%):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)10.0gと架橋剤V720.6gとの混合物にPt/C5.4mg(Pt51ppm)(Pt10%、市販の触媒)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)およびb)の記載により試験する。
【0134】
【表3】

【0135】
本発明による実施例3(Pt/TiO20.17%;照射なし;全Pt含量50ppm):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)5gと架橋剤V720.3gとの混合物に本発明による実施例2からの触媒160mg(Pt50ppm)(Pt/TiO20.17%)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)の記載により試験する。
【0136】
全Pt含量は、50ppmであり、TiO2含量は、2.93%である。
【0137】
【表4】

【0138】
触媒なしでは、200℃で10分後でも架橋は、全く行なわれない。
【0139】
本発明による実施例3は、原則的に別の担持されたPt触媒と比較して本発明による方法で使用された触媒のよりいっそう高い活性を証明する。
【0140】
本発明による実施例4(Pt/TiO20.17%;照射なし;全Pt含量97ppm):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)5gと架橋剤V720.3gとの混合物に本発明による実施例2からの触媒320mg(Pt97ppm)(Pt/TiO20.17%)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)の記載により試験する。
【0141】
全Pt含量は、97ppmであり、TiO2含量は、5.68%である。
【0142】
【表5】

【0143】
本発明による実施例5a(Pt/TiO20.17%;UV照射を用いて;全Pt含量97ppm):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)5gと架橋剤V720.3gとの混合物に本発明による実施例2からの触媒320mg(Pt97ppm)(Pt/TiO20.17%)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法b)の記載により試験する。
【0144】
全Pt含量は、97ppmであり、TiO2含量は、5.68%である。
【0145】
【表6】

【0146】
本発明による実施例5b(TiO2−ゾルを使用して製造されたものではないPt/TiO2触媒):
乳化されたDEHESIVE920(登録商標)5.0gと架橋剤V720.3gとの混合物に比較例2からのPt/TiO2触媒34mg(Pt含量50ppm)を添加し、超音波浴中で10分間、処理し、再度、強力に攪拌し、方法a)およびb)の記載により試験する。
【0147】
【表7】

【0148】
比較例2からのPt/TiO2触媒は、TiO2−ナノゾルにより製造された触媒と比較してよりいっそう低い活性を示す。更に、このような触媒は、照射によって活性の著しい上昇("UV効果")を示さない。
【0149】
Pt/TiO2でのオルガノシランのヒドロシリル化
本発明による実施例6(4h):
Me(H)Si(OEt)32.49g(18.66mmol)と本発明による実施例2からのPt/TiO2触媒279mg(Pt82ppmに相当する)とからの混合物を100℃に加熱し(油浴温度100℃)、滴下法でMe(Vi)Si(OEt)33.0g(18.75mmol)(Vi=ビニル)を添加する(滴加時間11分)。引続き、この温度で4時間、攪拌する。GC分析によれば、ヒドロシリル化生成物Me(OEt)2Si−CH2CH2−Si(OEt)2Meが72%の収率で形成される。
【0150】
本発明による実施例7(1h):
Me(Vi)Si(OEt)30.92g(5.73mmol)(Vi=ビニル)と本発明による実施例2からのPt/TiO2触媒141mg(Pt94ppmに相当する)とからの混合物を100℃に加熱し(油浴温度100℃)、滴下法でMe(Hi)Si(OEt)21.5g(11.11mmol)を添加する(滴加時間15分)。引続き、この温度で1時間、攪拌する。GC分析によれば、ヒドロシリル化生成物Me(OEt)2Si−CH2CH2−Si(OEt)2Meが60%の収率で形成される。
【0151】
本発明による実施例8(1時間、付加的にUV照射):
本発明による実施例7からのバッチ法を繰り返す。付加的に、反応バッチ量の照射を、10cmの間隔で固定配置されたUV照射源を用いて行なう(UV-ハンドランプ(Handlampe) Dr. Hoenle UVAHand 250、10cmの間隔での照射強さ10.5mW/cm2、λmax≒362nm)。
【0152】
GC分析によれば、ヒドロシリル化生成物Me(OEt)2Si−CH2CH2−Si(OEt)2Meが66%の収率で形成される。
【0153】
本発明による実施例7と実施例8の結果の比較は、分子状シランのヒドロシリル化の場合も本発明による触媒の"UV効果"(活性の上昇)を観察することができることを明確に示す。
【0154】
本発明による実施例9(1h):
Me(Vi)Si(OEt)20.92g(5.73mmol)と本発明による実施例1からのPt/TiO2触媒13mg(Pt94ppmに相当する)とからの混合物を100℃に加熱し(油浴温度100℃)、滴下法でMe(H)Si(OEt)21.5g(11.11mmol)を添加する(滴加時間15分)。引続き、この温度で1時間、攪拌する。GC分析によれば、ヒドロシリル化生成物Me(OEt)2Si−CH2CH2−Si(OEt)2Meが58%の収率で形成される。
【0155】
本発明による実施例10(1時間、付加的にUV照射):
本発明による実施例9からのバッチ法を繰り返す。付加的に、反応バッチ量の照射を、10cmの間隔で固定配置されたUV照射源を用いて行なう(UV-ハンドランプ(Handlampe) Dr. Hoenle UVAHand 250、10cmの間隔での照射強さ10.5mW/cm2、λmax≒362nm)。GC分析によれば、ヒドロシリル化生成物Me(OEt)2Si−CH2CH2−Si(OEt)2Meが65%の収率で形成される。
【0156】
本発明による実施例9と実施例10の結果の比較も、分子状シランのヒドロシリル化の場合も本発明による触媒の"UV効果"(活性の上昇)を観察することができることを明確に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケールの二酸化チタンからなる担体上の白金からなる触媒。
【請求項2】
二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末と白金含有溶液との反応によって得ることができる触媒。
【請求項3】
次の工程
a)二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末と白金含有溶液との反応、
b)工程a)により得られた生成物の乾燥、
c)工程b)により得られた生成物のか焼および
d)工程c)により得られた生成物の還元を含む方法によって得ることができる、請求項2記載の触媒。
【請求項4】
二酸化チタン−ゾルが使用されている、請求項2または3記載の触媒。
【請求項5】
使用された二酸化チタン−ゾルにおいて平均粒径が10〜100nmの範囲内にあり、固体含量が10〜30%である、請求項4記載の触媒。
【請求項6】
白金塩の溶液を使用する、請求項2から5までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
白金含量が0.1〜2質量%である、請求項1記載または請求項2から6までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
二酸化チタン−ゾルまたはナノスケールの二酸化チタン粉末と白金含有溶液との反応が水性媒体中で行われている、請求項2から7までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒の存在下でのヒドロシリル化のための方法。
【請求項10】
請求項1記載の触媒または請求項2から8までのいずれか1項の記載により得ることができる触媒を使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ヒドロシリル化反応を付加的に照射源での照射下に実施する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
照射源がUV源である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
担体としてのナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金の、ヒドロシリル化のための触媒としての使用。
【請求項14】
請求項1記載の触媒または請求項2から8までのいずれか1項の記載により得ることができる触媒を使用する、請求項13記載の使用。
【請求項15】
ヒドロシリル化可能な組成物において、
(A)少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する化合物、
(B)少なくとも1個珪素−水素結合を有する化合物および
(D)ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒を含有するヒドロシリル化可能な組成物。。
【請求項16】
(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン
(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、または(A)および(B)の代わりに
(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基およびSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、および
(D)ナノスケールの二酸化チタン上に施こされた白金触媒を含有するポリオルガノシロキサンコンパウンドである、請求項15記載のヒドロシリル化可能な組成物。
【請求項17】
成分(D)に相当する触媒が請求項1記載の触媒または請求項2から8までのいずれか1項の記載により得ることができる触媒である、請求項15または16記載の組成物。
【請求項18】
成分(A)に記載の少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する化合物がビニル官能性オルガノシランおよびビニル末端基を有するポリジメチルシロキサンを含む群から選択されており、成分(B)に記載の少なくとも1個の珪素−水素結合を有する化合物がSiH官能性ポリシロキサンおよびSiH官能性オルガノシランを含む群から選択されている、請求項15から18までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項15から18までのいずれか1項に記載のヒドロシリル化可能な組成物を架橋することによって得ることができるシリコーンエラストマー。
【請求項20】
請求項15から18までのいずれか1項に記載のヒドロシリル化可能な組成物が熱および/または放射線の影響によって架橋されている、請求項19記載のシリコーンエラストマー。

【公表番号】特表2008−522799(P2008−522799A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544780(P2007−544780)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012840
【国際公開番号】WO2006/061138
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】