説明

ナノスケール白金化合物およびその使用方法

本発明は、コポリマー骨格、この骨格に共有結合した複数の側鎖、および解離できる状態でこの骨格に連結した複数の白金化合物を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。本発明は更に、解離できる状態で白金化合物がジカルボニル化合物に連結している、ジカルボニル‐脂質化合物に関する。本発明はまた、癌または転移を治療する方法に関する。本方法は、癌または転移の治療を必要とする対象を選択する工程、および本発明の任意のナノ粒子、化合物、または組成物の有効量を対象に投与する工程を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年2月4日に提出された米国仮特許出願第61/149,725号および2009年9月4日に提出された同第61/240,000号に対して35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権と利益を主張するものであり、その両方の内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府支援
本出願の内容は、米国国防総省により授与されたEra of Hope Scholar Award W81XWH-07-1-0482およびPostdoctoral Award W81XWH-09-1-0728の支援によってなされた。米国政府はこの発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、コポリマー骨格、この骨格に共有結合した複数の側鎖、および解離できる状態でこの骨格に連結した複数の白金化合物を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
癌は米国において死亡原因の第2位であり、2008年には新たな例が1,444,180件、死者は565,650人と推測されている。標準的な化学療法に使用される細胞毒性薬は、全ての細胞を非特異的に標的とし、用量規制毒性をもたらす。より特異的に腫瘍を標的とする新たな戦略の開発が今すぐ必要とされている。
【0005】
ナノベクターの使用は、腫瘍を特異的に標的とすることから、癌の化学療法を改革する可能性がある。幾つかのポリマーナノベクターは、現在開発中であるか、臨床に使用されており、活性薬剤の薬力学的および薬物動態プロファイルを劇的に変化させている。しかしながら、これらポリマー構築物の多くは、共役した(conjugated)活性薬剤の効力を低下させ、改善された治療指数を得るためには腫瘍への取り込みの増加に頼っている。
【0006】
シスプラチンは、多くの種類の癌において化学療法の柱となるものの一つである(Kelland L. The resurgence of platinum-based cancer chemotherapy. Nat Rev Cancer. 2007 Aug; 7(8):573-84(非特許文献1))。しかしながら、重篤な腎毒性があるため、その使用には用量規制がある。更に、複数の癌において一次治療として用いられるシスプラチンのナノベクター製剤は難しい課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kelland L. The resurgence of platinum-based cancer chemotherapy. Nat Rev Cancer. 2007 Aug; 7(8):573-84
【発明の概要】
【0008】
本明細書に報告されているものは、シスプラチンおよびオキサリプラチン等の白金に基づいた化学療法薬のポリマー構築物の合理的な設計であり、これはナノ粒子への自己組織化をもたらす。ナノ粒子は、活性薬剤の効力を維持し、担癌マウスに静脈内投与された場合、シスプラチン、オキサリプラチン、またはカルボプラチンよりも更に高い抗腫瘍効果と共に、更に低い全身毒性および神経毒性を示す。このナノテクノロジーにより可能となったシスプラチンまたはオキサリプラチンの治療指数の改善は、複数の種類の癌の臨床管理においてナノ白金酸を使用するために利用できる。
【0009】
本発明は、コポリマー骨格;この骨格に共有結合した複数の側鎖;および解離できる状態でこの骨格に連結した複数の白金化合物を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。一般的に白金化合物は、側鎖を介した結合により骨格に解離できる状態で連結している。ある態様において、白金化合物は少なくとも一つの配位結合を介して側鎖に連結している。
【0010】
本発明の別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMA)骨格などのポリマレイン酸(PMA)を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25〜50個の単量体からなる。更に、この骨格に共有結合されている複数のPEG側鎖が含まれる。PEG側鎖の分子量は200〜3000ダルトンである。PEG側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の50%および100%を含めたその間の数である。更に、解離できる状態で骨格に連結している複数のシスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖も含まれる。シスプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0011】
本発明の更に別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は約40個の単量体からなる。更に、この骨格に共有結合されている複数のPEG側鎖が含まれる。PEG側鎖の分子量は約2000ダルトンである。PEG側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数である。更に、解離できる状態で骨格に連結している複数のシスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖も含まれる。シスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0012】
本発明のまた更に別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25〜50個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のグルコサミン側鎖が含まれる。グルコサミン側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%および100%を含めたその間の数である。更に、解離できる状態で骨格に連結している複数のシスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖も含まれる。シスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0013】
本発明の別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25から50個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のグルコサミン側鎖が含まれる。グルコサミン側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の75%よりも多い数である。更に、解離できる状態で骨格に連結している複数のシスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖も含まれる。シスプラチンまたはオキサリプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0014】
本発明のまた別の局面は、カルボン酸‐白金II(Pt(II))複合体および複数の脂質‐ポリマー鎖を含む、カルボン酸‐Pt(II)複合体共役ナノ粒子に関する。該カルボン酸‐シスプラチン/オキサリプラチン複合体のカルボン酸部分は該脂質‐ポリマー鎖に共有結合している。
【0015】
本発明の別の局面は、本明細書に説明されている請求項に記載の複数のナノ粒子を含む小胞、ミセル、またはリポソーム化合物に関する。
【0016】
本発明の更に別の局面は、本明細書に記載のナノ粒子または化合物のいずれかならびに薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0017】
また本発明の別の局面は、癌または転移を治療するための方法に関する。本方法は、癌または転移に対する治療を必要とする対象を選択する工程、および本明細書に記載のナノ粒子、化合物、または組成物のいずれかを有効量で対象に投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PMA‐シスプラチン合成の模式図を示す。ポリマー当たりの異なる数のシスプラチン負荷(load)はDLSまたはTEMを用いて測定されるナノ粒子の大きさに影響を及ぼす。またポリイソブチレンマレイン酸担体(PIMA)2および共役体(PIMA‐CISPLATIN)(6)の細胞毒性研究のグラフも示す。
【図2】PMAのEDAによる誘導体化を示す模式図を示す。誘導体化されたポリマーを用いてシスプラチン複合体を合成した。グラフは、異なる処理を施し48時間インキュベートした後に見られるLLC生存率に対する効果を示すものである。
【図3】PMA‐GA‐シスプラチンの合成の模式図を示す。シスプラチンとの複合体形成は、48時間かけて行った。その結果、DLS測定から見られるように、大きさが約100nmの範囲内のナノ粒子が形成された。
【図4】左のグラフは、LLC細胞可溶化物と共にインキュベートした場合にPMA‐GA‐シスプラチン・ナノ粒子から放出される活性シスプラチンの量を示す。右の濃度‐効果グラフは、異なる処理を施し活性薬剤と48時間インキュベートした際のルイス肺癌細胞の生存率に対する効果を示す。細胞生存率は、MTSアッセイを用いて測定した。
【図5】ルイス肺癌モデルにおける遊離シスプラチンとナノ粒子シスプラチンの有効性プロファイルおよび毒性プロファイルを示す折れ線グラフ(図5Aおよび図5B)および棒グラフ(図5C〜5E)である。c57/BL6マウスにLLC細胞を注射することにより腫瘍を誘発した。治療期間中における腫瘍体積(図15A)および体重(図5B)に対する処置の効果が示されている。動物への投与は3回行った(x軸に矢印で示す)。示されているデータは平均値±SE、n=4〜8である。腎毒性および血液毒性のマーカーとして、腎臓(図5C)および脾臓(図5D)の臓器重量に対する処置の効果も示されている(n=4〜6)。各グラフの上部に、各治療群からの代表的な臓器が表示されている。図5Eは、遊離シスプラチンまたはシスプラチン・ナノ粒子(8mg/kgのシスプラチン用量)を投与した24時間後にICP‐分光法を使用して測定された腎臓および腫瘍におけるPtの体内分布を示す。
【図6】PMA‐GA‐シスプラチン(8)の合成を示す模式図である。
【図7】ルイス肺癌細胞に対するPMA‐PEG‐シスプラチンの効果。薬剤または媒体と共に細胞を48時間インキュベートし、次にMTSアッセイにより生存率を検査した。
【図8】生体内における腫瘍増殖および体重に対する様々な治療の効果を示す。c57/BL6マウスにLLC細胞を注射することにより腫瘍を誘発した。
【図9】ポリマーの白金化の量をuv-vis分光測定法を用いて定量化した結果のグラフを示す。
【図10】水中でミセルを形成できる脂質マレイン酸‐シスプラチン複合体の合成を示す模式図である。
【図11】SARから発想を得たシスプラチン・ナノ粒子の設計を示す模式図である。図11Aは、アクア化によるシスプラチンの細胞内活性化の根底にある機構を示す。シスプラチンや類似体(青線で表示)の脱離基は、DNA結合の前にOHに置換される。図11Bは、PIMA‐シスプラチンおよびPIMA‐グルコサミン(PIMA‐GA)‐シスプラチン複合体の化学合成を示す。ポリ無水マレイン酸(n=40)(1)からポリマレイン酸[PIMA](2)への変換は、ジカルボキシラート結合(6)を介した[NH22Pt[OH]2の複合体形成を可能にする。PIMAの腕の一本をグルコサミン(4)により誘導体化し、[NH22Pt[OH]2と複合体を形成させる工程は、pHに応じて二つの異性体(8)および(10)をもたらすことができ、これらは独特のPtNMR信号により特徴付けられる(図11B)。
【図12】cisPt-NPの特徴づけを示す。PIMA(n=40)骨格上のPtの数の増加は形成されたナノ粒子の大きさを増大させた。最適なPt対ポリマー比率では、発明者らは150nmよりも小さいナノ粒子を取得し、これは大きさのカットオフ値未満であり、腫瘍への優先的な誘導を可能とするものである。図12Aは、PIMAの全ての単量体単位をグルコサミンで誘導体化し、その後Ptと複合体化させると150nm未満のナノ粒子が形成されることを示す。図12Bは、この比率におけるポリマー1mg当たりに負荷される白金の総量を示す。
【図13】シスプラチン・ナノ粒子のインビトロにおける特徴づけを示す折れ線グラフである。図13Aおよび図13Bは、MTSアッセイを用いて測定された、細胞生存率に対する異なる処置の濃度効果を示す。X軸は、シスプラチンの等量濃度を示す。空のポリマー性対照を使用した際に使用されたポリマーの用量は、複合体化された形態で特定のシスプラチンの用量を与えるために使用された用量と同じであった。PIMAは更に、エチレンジアミンで誘導体化されることによりPIMA‐EDAが作られ、これはPIMA‐GAと同様の複合体形成環境をPtに提供する。PIMA‐GAと異なり、PIMA‐EDAは、固有の毒性を発現した。PIMA‐GA‐シスプラチン[酸性]は、酸性の複合体形成環境下で形成された異性体を意味し、PIMA‐GA‐シスプラチン[塩基性]は、アルカリ性環境下で形成された異性体を意味する。図13C〜13Eは、PIMA骨格(40単量体単位)が異なる程度に誘導体化されている場合の、PIMA‐GA‐シスプラチン・ナノ粒子のLLC細胞生存率に対する効果を示す。PIMA‐30GA‐シスプラチンはその40単量体単位の内30個がグルコサミンで誘導体化されており、PIMA‐GA‐40およびPIMA‐GA‐200においては全ての単量体単位が誘導体化されている。[a]および[b]は、ポリマーがシスプラチンと複合体を形成する場合に酸性および塩基性の環境において形成された異性体を意味する。表1は、対応するIC50値を示す。
【図14】PIMA‐GA‐シスプラチンによる処置が細胞死を誘発することを示すFACS画像(図14A〜14H)および棒グラフ(図14Iおよび14J)を示す。4T1(図14A〜14D)細胞、およびLLC(図14E〜14H)細胞の代表的なFACS画像は遊離シスプラチンまたはナノ粒子‐シスプラチンを用いた処置後の各四半部におけるパーセントを示す。比較のためにカルボプラチンを対照として使用した(図14Dおよび14H)。細胞は24時間薬剤とインキュベートされ、その後アネキシン‐V FITCで標識され、ヨウ化プロピジウムで対比染色された。
【図15】ナノ粒子の細胞取り込みの追跡を可能にするためのFITCを用いたPIMA‐GAポリマーの標識工程を示す模式図である。
【図16】pHおよびPt複合体形成環境の放出動力学に対する効果を示す折れ線グラフである。ナノ粒子は、透析袋内でpH5.5およびpH8.5でインキュベートされ、時間とともに起こる放出が定量化された。使用されたナノ粒子[PIMAGA‐シスプラチン(O->Pt)]は、ポリマーとシスプラチンを酸性pH[6.4]で複合体化させることにより作り出されたが、PIMA‐GA‐シスプラチン(Pt->N)の場合は、安定な異性体[PIMA‐GA‐シスプラチン(N->Pt)]を作り出すために複合体形成を塩基性pHで行った。示されているデータは、n=3より得られた平均値±SEである。
【図17】PIMA‐GA‐シスプラチン・ナノ粒子が、4T1乳癌モデルにおける遊離シスプラチンと比較して、減少した全身毒性と共に同様の抗腫瘍効果を発現することを示す折れ線グラフ(図17Aおよび17B)および棒グラフ(図17Cおよび17D)である。折れ線グラフは、治療期間中における腫瘍体積(図17A)および体重(図17B)に対する処置の影響を示す。動物への投与は3回行った(x軸に矢印で示す)。示されているデータは平均値±SE、n=4〜8である。棒グラフは、腎毒性および血液毒性のマーカーとして媒体で処理を施された群と比較した場合の脾臓(図18C)および腎臓(図17D)の臓器重量に対する治療の効果を示す(n=4〜6)*P<0.05[ANOVAに続いてNewman-Keuls post hoc試験]。対照としてカルボプラチン[3mg/kg]が使用された。
【図18】K-rasLSL/+/Ptenfl/fl卵巣癌モデルにおけるPIMA‐GA‐シスプラチン・ナノ粒子による腫瘍増殖の抑制を示す棒グラフ(図18A)および折れ線グラフ(図18B)である。図18Aに示すように、生物発光定量化は、シスプラチン‐NPで治療されたマウスにおいて、媒体の場合と比べて著しく低下した腫瘍ルシフェラーゼ信号を示した(p<0.05、一元配置ANOVA解析)。図18Bは、全身体重の測定により評価した薬剤毒性を示す。毎日の体重の記録は、シスプラチン‐NP(1.25mg/kgおよび3mg/kg)により治療された両方の群と比較して遊離シスプラチン群の体重が有意に減少したことを示した(P<0.05、二元配置ANOVA解析)。
【図19】乳癌または卵巣癌にシスプラチン、シスプラチン・ナノ粒子[PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)]、またはカルボプラチンを投与した後のPtの分布を示す棒グラフである。処置は図17および18に記載のとおりに実施された。剖検後に回収された異なる組織におけるPtの量は、誘導結合型プラズマ分光法(ICP)を用いて定量化された。
【図20】SARから発想を得たオキサリプラチン・ナノ粒子の設計を示す模式図である。図20Aは、アクア化によるオキサリプラチンの細胞内活性化の根底にある機構を示す。図20Bは、PIMA‐オキサリプラチンおよびPIMA‐グルコサミン(PIMA‐GA)‐オキサリプラチン複合体の化学合成を示す。オキサリプラチン‐OHはジカルボキシラート結合を介してPIMAと複合体を形成できる。PIMAの腕の一本をグルコサミンにより誘導体化し、オキサリプラチンと複合体を形成させる工程は、pHに応じて二つの異性体をもたらすことができる。
【図21】MTSアッセイを用いて測定された、細胞生存率に対する様々な処置の濃度効果を示す折れ線グラフである。本試験には、乳癌細胞株、ルイス肺癌(図21A)細胞株、および4T1(図21B)細胞株が使用された。X軸は、白金の等量濃度を示す。空のポリマー性対照を使用した際、使用されたポリマーの用量は、複合体の形態においてその特定のオキサリプラチンの用量を与えるために使用された用量と同じであった。PIMA‐GA‐Oxは、酸性の複合体形成環境下で形成された異性体[PIMA‐GA‐オキサリプラチン(O->Pt)]を意味する。PIMA‐GA‐オキサリプラチン曲線は左へ移動し、抗腫瘍効果においてナノ粒子が遊離オキサリプラチンよりも効果的であることが示された。
【図22】PIMA‐GA‐オキサリプラチン・ナノ粒子が、4T1乳癌モデルにおける遊離オキサリプラチンと比較して、減少した全身毒性と共に同様の抗腫瘍効果を発現することを示す折れ線グラフ(図26Aおよび26B)および棒グラフ(図22C〜22E)である。折れ線グラフは、治療期間中における腫瘍体積(図22A)および体重(図22B)に対する処置の影響を示す。動物への投与は3回行われた。示されているデータは平均値±SE、n=4〜8である。棒グラフは、腎毒性および血液毒性のマーカーとして腫瘍(図22C)、腎臓(図22D)および脾臓(図22E)の重量に対する処置の効果を示す(n=4〜6)。
【図23】MTSアッセイを用いて測定された、細胞生存率に対する異なるオキサリプラチン複合体の濃度効果を示す折れ線グラフである。
【図24】細胞生存率に対するシスプラチン、カルボプラチン、およびPIMA‐GA‐200(A)の効果を示す折れ線グラフである。
【図25A】コレステロール‐コハク酸共役体の合成およびこの共役体へのPtの複合体形成を示す模式図である。
【図25B】脂肪ナノ粒子のダイナミックレーザー光分散を示す。脂質ナノ粒子の大きさは150nm未満である。
【図26】脂質ナノ粒子からの経時的なPtの放出動力学とpHの影響を示す折れ線グラフである。放出の速度は酸性pHにおいてより早く、これにより腫瘍内での活性白金酸の選択的な放出が促進されることは、腫瘍内pHが酸性であることと一致する。
【図27】4T1乳癌細胞の生存率に対するシスプラチン‐脂質ナノ粒子の効果を示す折れ線グラフである。細胞生存率は、MTSアッセイを使用して測定された。脂質ナノ粒子を用いた処理は、シスプラチンあるいはカルボプラチンの場合と比較して早い12時間以内の細胞死滅をもたらした(図27A)。三つの時点の全てにおいてシスプラチン‐脂質ナノ粒子はシスプラチンよりも効果的であることが明らかとなった。研究された全ての白金酸の内、カルボプラチンの効果が最も低い(図27A〜27C)。
【図28】シスプラチン耐性の肝細胞癌細胞株(CP20)およびルイス肺癌細胞株(LLC)の生存率に対するシスプラチン‐脂質ナノ粒子の効果を示す折れ線グラフである。シスプラチンは最高濃度においてのみCP20に作用するが、細胞はシスプラチン‐脂質ナノ粒子に感受性が高い(図28A)。カルボプラチンは、この濃度範囲においては効果を示さない(図28Aおよび28B)。シスプラチン・脂質ナノ粒子は、LLCに対して遊離シスプラチンよりも優れた抗癌効果を表した(図28B)。
【図29】4T1同質遺伝子的な腫瘍モデルにおけるシスプラチン‐脂質ナノ粒子の生体内での有効性を示す折れ線グラフ(図29Aおよび29B)および棒グラフ(図29C〜29E)である。折れ線グラフは、腫瘍増殖(図29Aおよび29C)および体重(全身毒性のマーカーとして、図29B)に対する異なる治療の効果を示す。棒グラフは、腎毒性および血液毒性のマーカーとして腎臓(図29D)および脾臓(図29E)の重量を示す。図に示されているとおり、シスプラチン‐脂質ナノ粒子は低下させた全身毒性および腎毒性を伴う、更に強力な抗腫瘍活性を誘発した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、コポリマー骨格;この骨格に共有結合した複数の側鎖;および解離できる状態でこの骨格に連結した複数の白金化合物を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。一般的に白金化合物は、側鎖への結合を介して骨格に結合している。
【0020】
ある態様において、コポリマーはマレイン酸単量体を含む。
【0021】
好ましい態様において、コポリマーは、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMAまたはPMA)である。
【0022】
ある態様において、コポリマーは、2〜100単量体単位を含む。また、ある態様において、コポリマーは、25〜50単量体単位を含む。
【0023】
ある態様において、側鎖はポリマー、単糖類、カルボン酸類、ジカルボン酸類、アミド類、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0024】
好ましい態様において、側鎖はポリエチレングリコール(PEG)である。PEG側鎖は‐C(O)‐NH‐PEGで表すことができる。
【0025】
ある態様において、PEG側鎖の分子量は100〜5000ダルトンである。またある態様において、PEG側鎖の分子量は1000〜3000ダルトンである。好ましい態様において、PEG側鎖の分子量は約2000ダルトンである。
【0026】
ある態様において、側鎖は単糖類である。好ましい態様において、単糖類は、グルコサミンである。単糖類側鎖は‐C(O)‐サッカライド(糖類)で表すことができる。
【0027】
本発明においては、任意の白金化合物を使用することができる。好ましくは、白金化合物は、白金(II)または白金(IV)化合物である。ある態様において、白金(II)化合物はシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびその組み合わせからなる群より選択される。好ましい態様において、白金(II)化合物の側鎖はシスプラチンまたはオキサリプラチンである。
【0028】
ある態様において、白金(II)化合物は、Pt(NH32、Pt(NH3)(2‐メチルピリジン)および

からなる群より選択され、式中pは0〜3である。好ましい態様において、白金(II)化合物はPt(NH32である。
【0029】
ある態様において、白金(II)化合物は

であり、式中pは0〜3である。
【0030】
ある態様において、白金(II)化合物は、少なくとも2個の窒素原子を含み、該窒素原子は白金に直接結合している。更なる態様において、二つの窒素原子は置換されていてもよいリンカー、例えば非環式リンカーまたは環式リンカー、を介して互いに結合している。環式リンカーとは、少なくとも一つの環構造を含む結合部分を意味する。環式リンカーはアリール、ヘテロアリール、シクリル、またはヘテロシクリルであってよい。
【0031】
ある態様において、白金に結合している少なくとも一つの窒素は、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルの環原子である。好ましい態様において、ヘテロアリールは置換されたピリジンでもよく、例えば2‐メチルピリジンが挙げられる。
【0032】
ある態様において、複数の側鎖の数は、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%を含めたその間の数に相当する。これは単量体単位の50%から100%が単量体単位に結合した少なくとも一つの側鎖を有することを意味する。側鎖の総数は、単量体単位の総数よりも多くてもよい。例えば、二つの側鎖がマレイン酸単量体に付着していてもよい。
【0033】
ある態様において、複数の側鎖の数は、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数に相当する。
【0034】
ある態様において、複数の白金化合物の数は、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の10%と100%を含めたその間の数に相当する。一般的には、白金化合物と単量体サブユニットの間には一対一の関係が存在する。従って、パーセントとは、ポリマー骨格中に存在する単量体単位の総数に対する白金化合物に結合した単量体単位の数を意味する。
【0035】
ある態様において、複数の白金化合物の数は、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%を含めたその間の数に相当する。
【0036】
一般的に10〜500ugの白金化合物を1mgのポリマーに負荷することができる。1mgのポリマーには好ましくは50〜250ug、更に好ましくは150〜200ugの白金化合物が負荷される。いくつかの実験において、発明者らはポリマー1mg当たり175±5ugの負荷を達成することができた。
【0037】
ある態様において、側鎖はジカルボン酸を含む。ある態様において、ジカルボン酸は、式HOOC‐R‐COOHで表され、式中RはC1‐C6アルキル、C2‐C6アルケニル、またはC2‐C6アルキニルである。好ましい態様において、ジカルボン酸はマレイン酸である。
【0038】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する少なくとも一つの単量体を含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。Rは好ましくは結合である。
【0039】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体サブユニットの50%と100%を含めたその範囲のものは‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐であり、ここでRは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0040】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体サブユニットの少なくとも90%以上は‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐であり、ここでRは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0041】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する少なくとも一つの単量体を含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。Rは好ましくは結合である。
【0042】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する単量体を50%および100%を含めたその範囲で含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0043】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する単量体を少なくとも90%含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0044】
ある態様において、R'は

または‐NH(CH2CH2O)mCH3であって、式中mは1〜150である。
【0045】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、カルボン酸、アミド、およびエステルからなる群より選択される二つの側鎖を含む。該側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミドおよびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。好ましくは、側鎖の少なくとも一つはカルボン酸ではない。
【0046】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、二つのカルボン酸側鎖を含む。該カルボン酸側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。該炭素原子は単結合または二重結合により互いが連結されていてもよい。
【0047】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、カルボン酸側鎖およびアミド側鎖を含む。該カルボン酸側鎖およびアミド側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖およびアミド側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。該炭素原子は単結合または二重結合により互いが連結されていてもよい。
【0048】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、カルボン酸側鎖およびエステル側鎖を含む。該カルボン酸側鎖およびエステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。該炭素原子は単結合または二重結合により互いが連結されていてもよい。
【0049】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、アミド側鎖およびエステル側鎖を含む。該アミド酸側鎖およびエステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミド酸側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。該炭素原子は単結合または二重結合により互いが連結されていてもよい。
【0050】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、二つのアミド側鎖を含む。該アミド側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミド側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0051】
ある態様において、ポリマーの少なくとも一つの単量体は、二つのエステル側鎖を含む。該エステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミドおよびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0052】
ある態様において、ポリマーは、カルボン酸、アミド、およびエステルからなる群より選択される二つの側鎖を含む。該側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミド側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。好ましくは、側鎖の少なくとも一つはカルボン酸ではない。
【0053】
ある態様において、ポリマーは、少なくとも二つのカルボン酸側鎖を含む。該カルボン酸側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0054】
ある態様において、ポリマーは、カルボン酸側鎖およびアミド側鎖を含む。該カルボン酸側鎖およびアミド側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖およびアミド側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0055】
ある態様において、ポリマーは、カルボン酸側鎖およびエステル側鎖を含む。該カルボン酸側鎖およびエステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該カルボン酸側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0056】
ある態様において、ポリマーは、アミド側鎖およびエステル側鎖を含む。該アミド酸側鎖およびエステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミド側鎖およびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。該炭素原子は単結合または二重結合により互いが結合されていてもよい。
【0057】
ある態様において、ポリマーは、二つのアミド側鎖を含む。該アミド側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミドおよびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0058】
ある態様において、ポリマーは、二つのエステル側鎖を含む。該エステル側鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはその組み合わせにより互いに隔てられている。好ましくは、当該アミドおよびエステル側鎖は二つの炭素原子により互いに隔てられている。
【0059】
本発明のナノ粒子の大きさは、25〜250nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは80〜160nm、最も好ましくは90〜110nmに及んでいてもよい。理論に束縛されるものではないが、大きさの範囲が80〜160のナノ粒子は、増強された透過性および保持により腫瘍に優先的に誘導される。例えばMoghimi et al., Pharmacol Rev. 2001 Jun; 53(2):283-318を参照のこと。
【0060】
ある態様において、白金化合物は、少なくとも一つの配位結合を介して上記骨格に解離できる状態で連結している。理論に束縛されるものではないが、配位結合は、より不安定であり、従ってより容易に白金化合物を放出する。
【0061】
ある態様において、バイオポリマー骨格への白金化合物の連結は更にカルボキシラート結合を含む。ある態様において、白金化合物は配位結合ならびにカルボキシラート結合を介して骨格に連結している。
【0062】
骨格への連結が述べられているが、白金化合物は一般的に一つ以上の側鎖に連結していて、その側鎖が骨格に連結していることを当業者は理解していることが理解されるべきである。従って、白金化合物の骨格への連結が述べられるいかなる場合も、白金化合物が側鎖に連結し、それが骨格に連結している状況を含む。
【0063】
ある態様において、配位結合は白金化合物の白金原子と側鎖の酸素の間の結合である。配位結合は好ましくは、白金とカルボニル酸素の間の結合である。
【0064】
ある態様において、配位結合は白金化合物の白金原子と側鎖のアミド酸素との間の結合である。また、ある態様において配位結合は、白金化合物の白金原子と側鎖のエステルカルボニル酸素との間の結合である。
【0065】
ある態様において、コポリマーは少なくとも一つのマレイン酸単量体を含み、ここで該少なくともマレイン酸の少なくとも一つのカルボン酸は、アミドに誘導体化される。
【0066】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体単位の50%から100%を含めたその範囲のものはマレイン酸単量体であり、ここで該マレイン酸単量体の少なくとも一つのカルボン酸はアミドに誘導体化されている。
【0067】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体単位の少なくとも90%はマレイン酸単量体であり、ここで該マレイン酸単量体の少なくとも一つのカルボン酸はアミドに誘導体化されている。
【0068】
白金化合物のポリマーへの負荷は、ポリマー1mg当たりの白金化合物のmgのパーセントとして表すことができる。例えば、最大0.375mgのシスプラチンをPIMA‐GAポリマーに負荷することが可能であり、従って、37.5%の負荷はその特定のポリマーに対する最大負荷を表す。負荷は約1%からポリマーの理論上の総負荷量の範囲であってよい。
【0069】
ある態様において、白金化合物の負荷は1%〜37.5%である。負荷パーセントは1mgのポリマーに連結する白金化合物のmgを表す。
【0070】
ある態様において、白金化合物の負荷は1%〜6%である。ある態様において、Pt(II)化合物の負荷は0.01%〜1%である。
【0071】
本発明の別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25から50個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のPEG側鎖が含まれる。PEG側鎖の分子量は1000〜3000ダルトンである。PEG側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の50%および100%を含めたその間の数である。更に、骨格に解離できる状態で連結している複数のシスプラチン側鎖も含まれる。シスプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0072】
本発明の更に別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は40個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のPEG側鎖が含まれる。PEG側鎖の分子量は2000ダルトンである。PEG側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数である。更に、骨格に解離できる状態で連結している複数のシスプラチン側鎖も含まれる。シスプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0073】
本発明のまた更に別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25から50個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のグルコサミン側鎖が含まれる。グルコサミン側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%および100%を含めたその間の数である。更に、骨格に解離できる状態で連結している複数のシスプラチン側鎖も含まれる。シスプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0074】
本発明の別の局面は、ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格を含む生体適合性共役ポリマーナノ粒子に関する。骨格は25から50個の単量体からなる。更に、該骨格に共有結合されている複数のグルコサミン側鎖が含まれる。グルコサミン側鎖の数は上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数である。更に、骨格に解離できる状態で連結している複数のシスプラチン側鎖も含まれる。シスプラチン側鎖の数はポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である。
【0075】
本発明のまた別の局面は、カルボン酸‐白金化合物複合体および複数の脂質‐ポリマー鎖を含むカルボン酸‐白金化合物複合体共役ナノ粒子に関する。該カルボン酸‐白金複合体のカルボン酸部分は該脂質‐ポリマー鎖に共有結合している。
【0076】
好ましい態様において、カルボン酸はマレイン酸である。ある態様においてポリマーはPEGである。
【0077】
ある態様において、白金化合物の負荷は1%〜37.5%である。特定の態様において、白金化合物の負荷は1%〜6%である。
【0078】
白金化合物は、Pt(II)化合物であってもPt(IV)化合物であってもよい。ある態様において、Pt(II)化合物はシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびその組み合わせからなる群より選択される。好ましい態様において、白金(II)化合物はシスプラチンである。
【0079】
本発明の別の局面は、本明細書に説明されている請求項に記載の複数のナノ粒子を含む小胞、ミセル、またはリポソーム化合物に関する。
【0080】
本発明の更に別の局面は、本明細書に記載のナノ粒子または化合物のいずれかならびに薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0081】
また本発明の別の局面は、癌または転移を治療するための方法に関する。該方法は、癌または転移の治療を必要とする対象を選択する工程、および本明細書に記載のナノ粒子、化合物、または組成物のいずれかを有効量で対象に投与する工程を含む。
【0082】
ある態様において、癌または転移は、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、精巣癌、膵臓癌、口腔食道癌、胃腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、肺癌、メラノーマ、皮膚癌、サルコーマ、血液癌、神経膠芽腫を含む脳腫瘍、神経外胚葉に由来する腫瘍、を含む白金感受性または抵抗性腫瘍からなる群より選択される。
【0083】
また別の局面において、本発明は、白金化合物ポリマーナノ粒子を製剤化する方法、および白金化合物を生体適合性ポリマーまたは生体適合性コポリマーと共役させる工程を含む方法を提供する。理論に束縛されるものではないが、酸性pHにおける白金化合物の生体適合性ポリマーとの共役化は、共役化が塩基性pHで行われた場合と比較して、生体内でより高い活性を示すナノ粒子をもたらした。
【0084】
従って、ある態様において、共役化はpH7未満で行われ、好ましくはpH1と6.9の間で行われる。ある更に好ましい態様において、共役化はpH6.5で行われる。
【0085】
塩基性条件下での共役化は、モノカルボキシラートとの異性体PIMA‐GA‐シスプラチン複合体、ならびに、より安定なPt<->N配位結合の形成が好まれることを本発明者らは観察した。それに対して、PIMA‐GAとシスプラチンの酸性pHにおける複合体形成は、モノカルボキシラート結合およびPt<->O配位結合に特徴付けられる異性状態を作り出す。従って、Pt<->N配位結合よりもPt<->O配位結合の形成をもたらす共役化条件は、共役化のために好ましい。
【0086】
一般的に、ポリマーに対して過剰のPt(II)化合物が使用される。ある態様において、ポリマーに対して5〜25モル過剰のPt(II)化合物が使用される。好ましくはポリマーに対して10〜20モル過剰の白金(II)化合物が使用される。ある好ましい態様においては、ポリマーに対して15モル過剰のPt(II)化合物が使用される。
【0087】
また別の側面において、本発明は、脂質分子に連結したジカルボニル分子を提供する。その様な化合物は、脂質‐リンカー‐ジカルボニル構造により表すことができる。これらの分子は、シスプラチン、オキサリプラチン、または他の白金酸等の白金化合物ならびに本明細書に記載の白金化合物とカルボキシラート連結および/または配位結合を介して複合体を形成するために使用できる。次にこれらは適切な脂質/リン脂質と混合することにより、pH依存的にPtを放出する150nm未満のナノ粒子を形成することができる。一旦製剤化されれば、これらのナノ粒子は、カルボプラチンおよびシスプラチンと比較して改善された効力および毒性プロファイルを示し、これらはシスプラチン耐性の癌において活性を示す。
【0088】
これらのナノ粒子は、薬学的に活性な輸送のための薬剤を含むように製剤化することができる。
【0089】
従来の意味で使用される「脂質」という用語は、アルコール等の有機溶媒に多かれ少なかれ可溶性であり、水性媒体に比較的不溶性である分子を意味する。従って、「脂質」という用語は、短くて約2個の炭素原子から長くて約28個の炭素原子までの、さまざまな鎖長の化合物を含む。更に、化合物は飽和していても不飽和でもよく、直鎖もしくは分枝鎖の形態、または未縮合もしくは縮合環構造の形態であってもよい。例示的な脂質は、これらに限定されないが、脂質、ワックス、ステロール類、ステロイド類、胆汁酸、脂溶性ビタミン(A、D、E、およびK等)、モノグリセリド類、ジグリセリド類、リン脂質、糖脂質、硫脂質、アミノ脂質、クロモリピッド(リポクローム)、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、および脂肪酸を含む。ある態様において、脂質はコレステロールまたはジステアロイルホスファチジルエタノールアミンである。
【0090】
一般的に、二つのカルボニル基を有するいかなる分子も使用可能である。ある態様において、ジカルボニル分子は、ジカルボン酸またはケト‐カルボン酸である。ある好ましい態様において、ジカルボニル分子はコハク酸である。
【0091】
ある態様において、ジカルボニル分子は、R'OC(O)‐R‐C(O)‐であって、式中RはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ、更に/もしくはアルキレンの骨格は一つ以上のO、S、S(O)、SO2、NH、C(O)が割り込んでいてもよく;更にR'はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシルシ(acylcy)、またはヘテロシクリルであり、これらはそれぞれ置換されていてもよい。Rは、好ましくはCH2、‐CH2CH2‐、‐CH2CH2‐CH2‐、またはCH=CH‐である。R'は、好ましくはHである。
【0092】
ジカルボニル分子は、脂質分子と直接またはリンカー分子を介して結合させることができる。「リンカー」という用語は、化合物の二つの部分連結する有機部分を意味する。リンカーは、典型的には直接の結合、または酸素もしくは硫黄のような原子、NH、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NH等のユニット、または置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール等の原子鎖であって、ここで一つ以上のメチレンがO、S、S(O)、SO2、NH、またはC(O)で割り込まれていても、これで終結していてもよい。また、ジカルボニル分子、および/または脂質は、互いへの連結またはリンカーへの連結のための官能基を含むように改変できることを理解されたい。
【0093】
ある態様において、リンカーはエチレンジアミン等のジアミンである。また、ある態様においてリンカーはPEG‐NH2である。
【0094】
ある好ましい態様において、リンカーは‐NHCH2CH2C(O)‐である。別の好ましい態様において、リンカーは‐CH2CH2NHC(O)‐[OCH2CH2z‐NH‐であり、ここでzは1〜50である。zは好ましくは45である。
【0095】
ある態様において、脂質‐ジカルボニル化合物は、図10(化合物2)および図25(化合物5)に示すとおりである。
【0096】
別の局面において、本発明は、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する少なくとも一つの単量体を含む生体適合性ポリマーを提供するものであり、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。Rは好ましくは結合である。
【0097】
ある態様において、ポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する2〜100単量体単位を含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0098】
ある態様において、ポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する25〜50単量体単位を含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0099】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体サブユニットの50%と100%を含めたその範囲のものは‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐であり、ここでRは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0100】
ある態様において、ポリマー骨格の単量体サブユニットの少なくとも90%以上は‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐であり、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0101】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する少なくとも一つの単量体を含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。Rは、好ましくは結合である。
【0102】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する単量体を50%および100%を含めたその範囲で含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0103】
ある態様において、コポリマーは、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')CH2C(Me2)‐または‐CH(C(O)R')‐R‐CH(CO2H)‐CH2C(Me2)‐を有する単量体を少なくとも90%含み、式中Rは結合またはC1‐C6アルキレンであって、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子である。
【0104】
ある態様において、R'は

または‐NH(CH2CH2O)mCH3であって、ここでmは1〜150である。
【0105】
これらのポリマーは、薬物送達に使用可能なナノ粒子およびゲルを製剤化するために使用することができる。従って、本発明は、更に本明細書に記載のポリマーおよび一つ以上の生物活性を有する活性薬剤(「生物活性薬剤」)を含むナノ粒子を提供する。
【0106】
本明細書に記載の組成物は、生物活性を有する活性薬剤を徐放するための方法において使用可能である。一つの態様において、上記方法は(a)本明細書に記載の組成物を対象に投与するまたは与える工程を含み、ここで組成物は生物活性薬剤を含有する。「生物活性薬剤」とは、本明細書で使用する場合、天然の生体物質を意味し、その例としてはフィブロネクチン、ビトロネクチン、およびラミニン等の細胞外マトリックス成分;サイトカイン;ならびに成長因子および分化因子が挙げられる。「生物活性薬剤」はまた、生体細胞、組織または臓器に対して生物学的効果を有する人工的に合成された物質、分子、または化合物を意味する。
【0107】
適切な成長因子およびサイトカインは、これらに限定されないが、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、顆粒球‐マクロファージ刺激因子(GM‐CSF)、間質細胞由来因子‐1、造血幹細胞因子、VEGF、TGFβ、血小板由来成長因子(PDGF)、アンジオポエチン(Ang)、上皮増殖因子(EGF)、bFGF、HNF、NGF、骨形態形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子(IGF‐1)、インターロイキン(IL)‐3、IL‐1α、IL‐1β、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐11、およびIL‐13、コロニー刺激因子、トロンボポエチン、エリスロポエチン、fit3‐リガンド、および腫瘍壊死因子α(TNFα)を含む。他の例は、Dijkeら、「Growth Factors for Wound Healing(創傷治癒のための成長因子)」、Bio/Technology, 7:793-798 (1989);Mulder GD, Haberer PA, Jeter KF編「Clinicians' Pocket Guide to Chronic Wound Repair(慢性創傷修復のためのポケットガイド)」第4版Springhouse, PA: Springhouse Corporation; 1998:85;Ziegler T.R., Pierce, G.F., and Herendon, D.N., 1997, International Symposium on Growth Factors and Wound Healing: Basic Science & Potential Clinical Applications(成長因子および創傷治癒国際シンポジウム:基礎科学および臨床的応用の可能性)(Boston, 1995, Serono Symposia USA), Publisher: Springer Verlagに記載されている。
【0108】
ある態様において、適切な生物活性薬剤は、これらに限定されないが治療薬を含む。本明細書において、「治療薬」という用語は、疾患の診断、治療、または予防に使用される物質を意味する。疾患の診断、治療、または予防に有効である当業者に公知の任意の治療薬は、本発明の状況において治療薬として検討される。治療薬としては、薬学的に活性を有する化合物、ホルモン、成長因子、酵素、DNA、プラスミドDNA、RNA、siRNA、ウイルス、タンパク質、脂質、炎症誘発性分子、抗体、抗生物質、抗炎症剤、アンチセンスヌクレオチド類、および形質転換核酸類、ならびにその組み合わせが含まれる。生物学的に適合している限り、治療薬はいずれのものを組み合わせてもよい。
【0109】
例示的な治療薬は、これらに限定されないが、以下に記載のものを含み、その内容の全ては参照により本明細書に組み込まれる:Harrison's Principles of Internal Medicine(ハリソン内科学)、第13版、T.R. Harrisonら編、McGraw-Hill N.Y., NY;Physicians Desk Reference(医師用卓上参考書)、第50版、1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.;Pharmacological Basis of Therapeutics(治療学の薬理学的基礎)、第8版、Goodman and Gilman, 1990;United States Pharmacopeia(米国薬局方)、The National Formulary, USP XII NF XVII, 1990;Goodman および Oilmanによる The Pharmacological Basis of Therapeutics(治療学の薬理学的基礎)の最新版;ならびにThe Merck Index(メルクインデックス)の最新版。
【0110】
組成物に組み込んでもよい治療薬の例としては、これらに限定されないが、麻薬性鎮痛薬;金塩;副腎皮質ステロイド;ホルモン;抗マラリア剤;インドール誘導体;関節炎治療用薬剤;テトラサイクリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびオーレオマイシンを含む抗生物質;家畜や大きなウシに与えられる駆虫性薬剤およびイヌジステンパ薬剤、例えばフェノチアジン;スルフィソキサゾール等の硫黄に基づいた薬剤;抗腫瘍薬;嗜癖を監督する薬剤、例えばアルコール嗜癖を制御する薬剤およびたばこ中毒を制御する薬剤;メサドン等の薬物嗜癖の拮抗薬;体重管理薬;甲状腺調節薬;鎮痛薬;避妊ホルモンまたは受精を調節する薬剤;アンフェタミン類;降圧剤;抗炎症剤;鎮咳剤;鎮静剤;神経筋弛緩薬;抗てんかん薬;抗うつ薬;抗不整脈薬;血管拡張薬;降圧性利尿薬;抗糖尿病薬;抗凝固薬;抗結核薬;統合失調症治療薬;ならびにホルモンおよびペプチドが挙げられる。上記のリストは完全でなく、単に組成物に含まれてもよい幅広く多様な治療薬剤を示すことは理解される。ある態様において、治療薬はミトキサントロン、タンパク質(例えば、VEGF)、またはプラスミドDNAである。
【0111】
組成物に分配する治療薬の量は、様々な要素に依存し、その例としては、特定の薬剤;実施すべき機能;薬剤の放出に必要な時間;および投与量が挙げられる。一般的に、治療薬の用量、即ち組成物中の治療薬の量は、約0.001%(w/w)から95%(w/w)、好ましくは約5%(w/w)から約75%(w/w)、最も好ましくは約10%(w/w)から約60%(w/w)の範囲から選択される。
【0112】
シスプラチン[シス‐ジクロロジアミン白金(II)](CDDP)は、重要な種類の抗腫瘍薬として現われ、精巣癌、卵巣癌、子宮頸癌、頭頸部癌、および非小細胞肺癌を含む多くの悪性病変の治療に幅広く利用されている(Jamieson et al, Chem. Rev. (1999), 99(9):2467-2498)。これは更にトリプルネガティブ乳癌においても活性であることが示された(Leong, et al., J. Clin. Invest.(2007), 117(5):1370-80)。しかしながら、主に腎毒性または腎臓に対する毒性のために、その使用には用量制限がある(Madias, NE and Harrington, JT, Am. J. (1978), 65(2):307-14)。この制限に取り組むために、二つの方向への研究が発展した。第一の研究は、白金類似体の合成に着目し、第二の研究は、薬剤が腫瘍部位を直接狙うようにさせる手段として新規のナノ送達系を設計するものである。80〜120nmの範囲の大きさのナノ粒子は、増強された透過性および保留(EPR)効果により腫瘍内に優先的に誘導されることが明らかとなっている(Moghimi, et al., Pharmacol. Rev. (2001), 53(2):283-318)。これは、全身の副作用を軽減し、増加した腫瘍内への送達を示すことができる。シスプラチンのナノリポソーム製剤は、遊離シスプラチンの投与の場合と比較して腫瘍へ50〜200倍の薬剤を送達することが明らかになった(Harrington, et al. Ann. Oncol. (2001) 12:493-496)。ナノリポソーム製剤は最小限の毒性を示したが、シスプラチンと比較するとわずかな抗腫瘍活性しか有しておらず、これは白金を比較的不活性な形態で送達するのみならず、その後、腫瘍内で著しい放出と活性化を達成する必要があることの難しさを表している。ポリマー系にシスプラチンを被包する第二の戦略は、シスプラチンが有機溶媒に不溶性であり、水に部分溶解性であるため難しいものとなり、その結果負荷量は低いかまたは徐放を維持させることはできなかった。これにより、改変することにより疎水性を増加させ、ポリラクチド‐ポリグリコール酸コポリマーナノ粒子への負荷を増加させることができる白金(IV)プロドラッグの開発が必要となった(Dharら、2009)。また、シスプラチンはペプチジル側鎖を介してN‐(2‐ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HMPA)に共役され、これは生物学的に活性であることが示された(Lin X, Zhang Q, Rice JF, Stewart DR, Nowotnik DP, Howell SB. Improved targeting of platinum chemotherapeutics. The antitumor activity of the HPMA copolymer platinum agent AP5280 in murine tumor models. (白金化学療法薬の改良された標的法。マウス腫瘍モデルにおけるHMPAコポリマー白金薬剤AP5280の抗腫瘍活性)、Eur J Cancer. 2004 Jan; 40(2):291-7)。しかしながら、そのようなアプローチは、薬剤活性化のために酵素的切断による処理、または細胞内還元を必要とする。同様に、薬剤負荷量が増加したPAMAMデンドリマー‐白金複合体は、ポリマーおよびPtの間に形成される強力な結合のため、シスプラチンと比較してその毒性が200〜550倍低いことが明らかになった(Haxton KJ, Burt HM. Polymeric drug delivery of platinum-based anticancer agents.(白金に基づく抗腫瘍薬剤のポリマーを用いた薬物送達)J Pharm Sci. 2009 Jul;98(7):2299-316)。
【0113】
現在のアプローチに伴う課題を乗り越えることができる、容易なシスプラチンのナノ製剤を設計するために、本発明者らは、シスプラチンの生体内変換に関する既存の情報、およびシスプラチン類似体の開発により出現した構造-活性相関の理解を統合した。シスプラチンは、二つのクロライド脱離基のうちの一つが細胞内でアクア化され[Pt(NH32Cl(OH2)]および[Pt(NH32(OH2)]2+が形成されることにより活性化され、その後、Ptはプリン塩基のN7位へ共有結合を形成することにより鎖間および鎖内架橋を形成する(Huifang Huang, Leiming Zhu, Brian R. Reid, Gary P. Drobny, Paul B. Hopkins. Solution Structure of a Cisplatin-Induced DNA Interstrand Cross-Link(シスプラチン誘発DNA鎖間架橋の溶液構造). Science 1995: 270. 1842-1845)。それに対し、カルボプラチンおよびオキサリプラチンは、それぞれシクロブタン‐1,1‐ジカルボキシレートおよびシュウ酸塩を脱離基として有し、これらは白金をより強力にキレートすることにより脱離基‐PT複合体に一層の安定性を与え、その結果シスプラチンよりも少ない副作用を示すが、シスプラチンよりも低い有効性も示す(Richard J. Knox, Frank Friedlos, David A. Lydall, and John J. Roberts Mechanism of Cytotoxicity of Anticancer Platinum Drugs: Evidence That cis-Diamminedichloroplatinum (II) and cis-Diammine-(1,1-cyclobutanedicarboxylato) platinum (II) differ only in the kinetics of their interaction with DNA(白金抗癌剤の細胞毒性機構:DNAとの相互作用の動力学においてのみシス‐ジアミンジクロロ白金(II)およびシス‐ジアミン‐(1,1‐シクロブタンジカルボキシラート)白金(II)が異なるという証拠). Cancer Research 46, 1972-1979, April 1, 1986;およびRonald S. Go, Alex A. Adjei. Review of the Comparative Pharmacology and Clinical Activity of Cisplatin and Carboplatin(シスプラチンおよびカルボプラチンの薬理および臨床活性の比較の総説). Journal of Clinical Oncology, Vol 17, Issue 1 (January), 1999:409)。各単量体がシスプラチン(OH)2と複合体を形成できるジカルボキシラート基を示すため、発明者らは、40量体のポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMAまたはPMA)をポリマーとして選択した。これによりシスプラチン分子の負荷が許容された。更に、マレイン酸への水素付加は、クレブス回路の構成要素であるクエン酸を作り出す。ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)2は、図1に示すように、DMF中で水と反応させることによりポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)1より一段階で合成した。更に、シスプラチンのポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMA)2との共役化では、水和したシスプラチンを48時間攪拌することによりPMA‐シスプラチン6を得た。共役していないシスプラチンは透析により除去され、負荷量はNMRおよび分光光度法により決定された。興味深いことに、結合工程は自己組織化工程を介したナノ粒子の発生をもたらし、大きさはポリマー当たりに負荷されたシスプラチン分子の数により定義される。ダイナミックレーザー光分散を利用した測定から、全ての複合体化サイトをシスプラチンで飽和させることにより、ゲルの形成がもたらされ、ポリマー当たり15個のシスプラチン分子を負荷すると100nmの範囲の大きさのナノ粒子が得られることが明らかになった。これは透過型電子顕微鏡法により検証された(データは記載せず)。
【0114】
シスプラチンは肺癌の一次治療であり、その結果、発明者らは、ルイス肺癌細胞の生存率に対するPMA‐シスプラチンの効果を研究した。シスプラチンおよびPMA‐シスプラチンの両方を用いた治療は同一の細胞死滅を誘発した(図1C)。しかしながら、PMAも腫瘍細胞死を誘発した。発明者らは、PMAの誘導体化によりこれを克服できることを見出した。発明者らは、塩基性条件下エチレンジアミンでポリマーを誘導体化した(図2)。興味深いことに、誘導体化はPMAの細胞毒性を取り除くことはできなかったが、PMA‐シスプラチン複合体の細胞毒性を増加させた。これは、脱離基が誘導体化されていないPMAと比べてしっかりと結合していないという事実に起因している可能性がある。実に、このような効果は、シスプラチンよりも低いアクア化の速度定数を有するカルボプラチンの場合にも観察されており、その結果これはシスプラチンよりも細胞毒性が低い。二つのカルボキシ基により形成される強いキレート化が存在するため、天然PMA‐シスプラチンはPMA‐EDAよりもしっかりと保持されていると考えられる。更に、ポリマーをより生物適合性にするため、本発明者らは、ポリマーをグルコサミン(GA)で改変した。PMA‐GA‐シスプラチンは、先ずPMA(1)をグルコサミンと反応させ、次にシスプラチン水溶液と反応させて合成した(図3および11B)。合成された全ての担体ポリマーは、25℃の室温で2日間、水相で白金化され、アクア化されたシスプラチンを白金化剤として使用することにより共役体が得られた。異なる時点で本発明者らは少量の分画を一定分量取り、ポリマーへのシスプラチンの総負荷量を定量化した。発明者らは、複合体化を5時間行った時点で約60%、30時間行った時点で約80%、白金化を48時間行った時点で100%の負荷効率を観察した。薬剤負荷の総量は、6mg/15mgポリマーであった。シスプラチンのアクア化は、暗条件下で48時間、等モルのシスプラチンおよびAgNO3を使用することにより達成された。全ての担体は、透析により常に分画され、分光学的同定のために凍結乾燥により単離された。NMR結果において予測されたNMR値と一致する明確なポリマーおよび糖のピークに見られるように、DBUの使用は、グルコサミン‐PMA共役体の合成をもたらした。しかしながら、塩基、トリエチルアミン、またはDIPEAを用いた処理からは予測された生成物は得られず、NMRトレースからは最終的な機能的生成物を定義する上で貴重な手掛かりが得られた。
【0115】
シスプラチンのPMA‐GAとの複合体形成は、複合体の自己組織化によるナノ粒子の形成をもたらした。特定の場合において、ナノ粒子を0.22ミクロンのフィルターに通すことにより100nm未満の範囲のナノ粒子の形成がもたらされ、これはEPR効果を利用して粒子を特異的に腫瘍へ誘導するためには必須である。興味深いことに、細胞生存率研究は、PMA‐GA誘導体が細胞に対する固有の毒性を全く持たないことを明らかにした。その一方、アクア化されたシスプラチンの効力は保持していた(図4B)。更に、PMAのポリエチレングリコールによる誘導体化は、PMAに関連する固有の毒性も取り除いた。更に、マレイン酸を生物適合性のポリマー骨格に共役化することによっても同様の目的を達成することができる。
【0116】
未変性のポリマーと比較して、誘導体化されたキレート化ポリマーにおいて有効性が増加したことは、モノカルボキシラートキレートがより容易に薬剤を放出することを示し、ジカルボキシラートキレート(6)よりも優れた活性を有することを示した。ポリマーであるモノカルボキシラートにキレートされた白金化合物は、ジカルボン酸により金属が結合している共役体よりも相当に大きな利点を表すことを発明者らは見出した。PMAにおけるジカルボキシラートキレートからのより遅い加水分解性分裂と比較して、モノカルボキシラートにキレートされた誘導体化PMA共役体中の担体からの円滑な加水分解性薬剤放出は、この細胞死滅能力の大きな違いを説明できるであろう。これを更に研究するために、本発明者らは、透析容器内で薬剤‐ポリマー共役体をルイス肺癌細胞溶液と共にインキュベートし、熱量測定アッセイを用いて遊離薬剤の放出を定量化した。発明者らは、活性薬剤の速い放出と共に徐放を実現した(図4A)。なお、同一の配合は、いかなる遊離シスプラチンも除去するために水中で48時間透析され、発明者らは100%の負荷効率を得、これにより活性薬剤が中性状態では放出されず、腫瘍細胞溶液存在下で急速に放出されることが示唆された。
【0117】
本明細書に記載の組成物は、ゲルとして製剤化可能であり、対象における特定の場所へ生物活性薬剤を徐放性送達するために利用できる。例えば、該組成物は、腫瘍の部位で白金化合物の徐放性送達のために使用できる。ある態様において、組成物は、腫瘍が除去された後に白金化合物を徐放的に送達するために使用される。
【0118】
薬学的組成物
対象への投与にはポリマーと結合した白金化合物は、薬学的に許容される組成物として提供できる。これらの薬学的に許容される組成物は、一つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化される治療的に有効な量の本明細書に記載の一つ以上の白金化合物を含む。以下に詳しく説明するとおり、本発明の薬学的組成物は、固体または液体の形態での投与のために特別に製剤化されてもよく、以下に示すものに適応させたものも含まれる:(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水系溶液または懸濁液)、薬用キャンディー、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、錠剤(例えば、頬側、舌下、および全身吸収を目的としたもの)、巨丸剤、散剤、顆粒剤、舌への投与のためのペースト剤;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液もしくは滅菌懸濁液、または徐放性製剤としての皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または硬膜外注射等によるもの;(3)局所投与、例えば、皮膚に投与するクリーム剤、軟膏剤、徐放性パッチまたはスプレーによるもの;(4)膣内投与または直腸内投与、例えばペッサリー、クリーム剤、または気泡剤によるもの;(5)舌下投与;(6)眼への投与;(7)経皮投与;(8)経粘膜投与;または(9)経鼻投与。更に、化合物は、患者に植え込むか、薬物送達系を利用して注射することもできる。Urquhart, et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24:199-236(1984);Lewis, ed. “Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals” (Plenum Press New ork, 1981);米国特許第3,773,919号、および同第35 3,270,960号も参照のこと。
【0119】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で用いる場合、合理的な利益/リスク比と釣り合いがとれ、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなく、ヒトおよび動物の組織との接触において使用するために好適であり、正しい医学的判断の範囲内にある、化合物、物質、組成物、および/または投薬形態を意味する。
【0120】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書で用いる場合、研究対象の化合物を一つの臓器もしくは体の一部から別の臓器もしくは体の一部へ運ぶかまたは輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造支援物質(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、もしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒を封入する物質等の薬学的に許容される物質、組成物、または媒体を意味する。各担体は、製剤のほかの成分と適合性があり、患者にとって有害なでない、という意味で「許容される」必要がある。薬学的に許容される担体としての役割を果たすことが可能な物質のいくつかの例には以下のものが含まれる:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン等のデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、および酢酸セルロース等のセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク等の潤滑剤;(8)ココアバターおよび座薬ワックス等の賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油等の油;(10)プロピレングリコール等のグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG)等のポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張食塩液;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ酸無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸等の増量剤;(23)血清アルブミン、HDL、およびLDL等の血清成分;(22)エタノール等のC2‐C12アルコール;ならびに(23)医薬製剤で使用される他の非毒性の適合物質。湿潤剤、着色剤、放出剤、被膜剤、甘味料、香味料、芳香剤、保存剤、および抗酸化剤も製剤中に存在してよい。「賦形剤」、「担体」、または「薬学的に許容される担体」等の用語は本明細書において区別せずに用いられる。
【0121】
「治療的に有効な量」という語句は、本明細書で用いる場合、任意の医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で動物における細胞の少なくとも亜集団においていくらかの望ましい治療効果をもたらすために効果的な本発明の化合物を含む化合物、物質、または組成物の量を意味する。例えば、対象に投与される化合物の量であって、癌または転移の少なくとも一つの症状において統計学的に有意な測定可能な変化をもたらすのに十分な量である。
【0122】
治療的に有効な量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般的に、治療的に有効な量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象の病状の重症度および種類、ならびに他の薬学的活性を有する剤の投与により異なっていてもよい。
【0123】
「投与」という用語は、本明細書で用いる場合、所望の効果がもたらされるように所望の部位での組成物の少なくとも部分的局在化がもたらされる方法または経路により対象の体内に組成物を留置することを意味する。本明細書に記載の化合物または組成物は、当技術分野において公知の任意の適切な経路により投与可能であり、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、経気道(エアロゾル)、経肺、経鼻、経直腸、および(頬側および舌下を含む)局所投与を含む、非経口または経口経路が含まれる。
【0124】
例示的な投与方法としては、これらに限定されないが、注射、注入、点滴注入、吸入、または経口摂取が含まれる。「注射」は、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内/心室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、骨髄内、脳脊髄内、および胸骨内への注射および注入を含む。好ましい態様において、組成物は静脈内注入または注射により投与される。
【0125】
疾患または障害を「治療」、「予防」、または「緩和」するとは、そのような疾患または障害の発症を遅延または予防すること、およびその様な疾患または障害に関連する症状の進行、悪化もしくは増悪、または進行もしくは重症度を逆転、緩和、回復、抑制、遅延、または停止することを意味する。一つの態様において、疾患または障害の少なくとも一つの症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
【0126】
本明細書で用いる場合、「対象」は人または動物を意味する。通常、動物は霊長類、げっ歯類、家畜、または狩猟動物等の脊椎動物である。霊長類にはチンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカクザル、例えばアカゲザルが含まれる。げっ歯類としては、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物としては、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、イエネコ等のネコ種、イヌ、キツネ、オオカミ等のイヌ種、トリ、エミュー、ダチョウ等の鳥類、マス、ナマズ、鮭等の魚が含まれる。患者または対象は、上記の任意の部分集合であってよく、その例としては、ヒト、霊長類、またはげっ歯類等の一つ以上の群または種を除外した上記のすべてが挙げられる。ある態様において、対象は例えばヒト等の霊長類を含む哺乳類である。「患者」および「対象」という用語は本明細書において区別せずに用いられる。「患者」および「対象」という用語は本明細書において区別せずに用いられる。
【0127】
好ましくは、対象は哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒトの霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、または雌ウシであってよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、炎症に関連する障害の動物モデルを表す対象として有利に利用できる。
【0128】
更に、本明細書に記載の方法は、家畜および/またはペットの治療に利用できる。対象は雄雌どちらでもよい。対象は、過去に障害、癌または転移を有すると診断されていても、またはそれを患っていると特定されていてもよく、既に治療を受けている必要はない。
【0129】
「癌」という用語は、本明細書で用いる場合、これらに限定されないが、固形腫瘍、および血液由来の腫瘍を含む。癌という用語は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液および血管の疾患を意味する。「癌」という用語は更に原発性および転移性の癌を含む。本発明の化合物で治療可能な癌の例としては、これらに限定されないが、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む細胞癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含むがこれらに限定されないリンパ様系統の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含むがこれらに限定されない骨髄細胞系の造血器腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含むがこれらに限定されない間葉系由来の腫瘍;メラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫、神経芽細胞腫、および神経膠腫を含むその他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、およびシュワン細胞腫を含むがこれらに限定されない中枢および抹消神経系の腫瘍;ならびに乾皮症、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、甲状腺濾胞癌、および奇形癌腫を含むがそれらに限定されないその他の腫瘍が挙げられる。本発明の化合物は、過去に癌治療を受けている患者の他に、過去にがん治療を受けていない患者に治療を施すためにも有用である。本発明の方法および組成物は、まさに癌の一次治療および二次治療に利用できる。
【0130】
更に、本発明の化合物は、放射線治療を含む公知の抗癌治療と組み合わせた場合でも有用である。本発明の方法は、G2-M相で効果を発揮する式(1a)または(Ib)のエポチロンとは異なる細胞周期の相、例えばS相、で作用する第二の薬剤を投与する工程を含む抗癌治療と組み合わせた場合に特に有用である。
【0131】
定義
特に指定されるか、または文脈より黙認されない限り、下記の用語および表現は以下に示される意味を含む。以下の用語および表現は、明示的に別段の定めをした場合または文脈から明白である場合を除き、その用語および表現の属する技術分野においてそれらが獲得した意味を除外しない。定義は特定の態様の説明を助けるものとして提供されおり、発明の範囲は請求項にのみ制限されるため、これらは請求される発明を制限することを意図するものではない。更に文脈が必要としない限り、単数形は複数も含み、複数形は単数も含む。
【0132】
「含む」という用語は、本明細書で用いる場合、本発明に必須の組成物、方法、およびその各成分に関して使用されるが、必須であるか否かに関係なく特定されていない要素も含むことができる。
【0133】
操作例以外において、または示されていない限り、本明細書で使用された成分の量または反応条件の量を表す全ての数値は、全ての場合「約」という用語で修飾されていると理解するべきである。百分率に関して「約」という用語が使用される場合、±1%を意味してもよい。
【0134】
単数形である「a」、「an」、および「the」は、文脈に明確に指示されていない限り、複数への言及も含んでいる。同様に、「または、もしくは」という用語は、文脈に明確に指示されていない限り、「および、ならびに」を含むことを意図する。
【0135】
本開示の実施または試験においては、本明細書に記載のものと同様または同一の方法および材料を使用できるが、適した方法および材料は以下に説明されている。「含む(comprise)」という用語は「含む(includes)」を意味する。「e.g.」という省略は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書において使用されている。従って、「e.g.」という省略は、「例えば(for example)」という用語と同じ意味である。
【0136】
「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖であってよい飽和非芳香族炭化水素鎖であって、N、O、またはSが挿入されていてもよい、示された数の炭素原子を含む鎖(これらは限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2‐メチル‐エチル、t‐ブチル、アリル、プロパギルを含む)を意味する。例えば、C1‐C6は基が1〜6個(それを含めた数)の炭素原子を有することを示す。
【0137】
「アルケニル」という用語は、少なくとも一つの二重結合を含むアルキルを意味する。例示的なアルケニル基はこれに限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、1‐メチル‐2‐ブテン‐1‐イル等を含む。
【0138】
「アルケニル」という用語は、少なくとも一つの三重結合を含むアルキルを意味する。
【0139】
「アリール」という用語は、単環式、二環式、または三環式芳香族環系であって各環の0、1、2、3、または4個の原子が置換基で置換されていてもよい系を意味する。例示的なアリール基はこれらに限定されないが、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、およびテトラヒドロナフチル、等を含む。
【0140】
「シクリル」または「シクロアルキル」という用語は、飽和および部分的に不飽和の3〜12炭素、例えば3〜8炭素、および例えば3〜6炭素を有する環状炭化水素基を意味し、ここでシクロアルキル基は更に置換されていてもよい。例示的なシクロアルキル基は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル等を含む。
【0141】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合に1〜3個のヘテロ原子、二環式の場合に1〜6個のヘテロ原子、三環式の場合1〜9個のへテロ原子を有する芳香族の5〜8員単環式、8〜12員二環式、または11〜14員三環式環系を意味し、該ヘテロ原子はO、N、またはSより選択され(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合、それぞれ炭素原子および1〜3個、1〜6個、または1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、3、または4個の原子は置換基で置換されていてもよい。例示的なヘテロアリール基は、これらに限定されないが、ピリジル、フリルもしくはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルもしくはチエニル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル、ナフチリジニル等を含む。
【0142】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式の場合に1〜3個のヘテロ原子、二環式の場合に1〜6個のヘテロ原子、三環式の場合1〜9個のへテロ原子を有する非芳香族の5〜8員単環式、8〜12員二環式、または11〜14員三環式環系を意味し、該ヘテロ原子はO、N、またはSより選択され(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合、それぞれ炭素原子および1〜3個、1〜6個、または1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、または3個の原子は置換基で置換されていてもよい。例示的なヘテロシクリル基は、これらに限定されないが、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、およびテトラヒドロフラニル等を含む。
【0143】
「置換されていてもよい」という用語は、アルキル基およびアルケニル基等の特定の基または部分が、無置換、もしくは下記の「置換基」の定義に列挙した置換基の群より別々に選択された一つ以上の置換基(典型的には1〜4個の置換基)または他に定められた置換基で置換されていることを意味する。
【0144】
「置換基」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基の上に、その基の任意の原子において「置換」した基を意味する。適した置換基は、これらに限定されないが、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルバノイル、アリールカルバノイル、アミノアルキル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アレンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノ、またはウレイドを含む。場合によっては、二つの置換基は、それらが結合している炭素と共に環を形成することができる。
【0145】
「ポリマー」という用語は、本明細書で用いる場合、重合反応の生成物を意味し、同種ポリマー、コポリマー、三元ポリマー、および四元ポリマー等を含む。また、「ポリマー」という用語は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、およびグラフトコポリマーも含む。「コポリマー」という用語は、本明細書で用いる場合、少なくとも二つの異なる単量体を重合反応に供することにより形成されたポリマーを意味する。
【0146】
「コポリマー骨格」という用語は、本明細書で用いる場合、ポリマーの部分であって、ポリマー形成の際に単量体の間に形成した結合を含む連続した鎖を意味する。コポリマー骨格の組成は、それを形成する単量体が何であるかという観点から説明することができ、ポリマー骨格の枝や側鎖の組成は問わない。「側鎖」という用語は、ポリマー形成後、コポリマー骨格の延長を形成する単量体の部分を意味する。
【0147】
「生体適合」という用語は、本明細書で用いる場合、細胞毒性、望まれないタンパク質または核酸修飾、または望まれない免疫反応の活性化を引き起こすこと無く、生物システムと相互作用できる物質を意味する。「生体適合性」は、認識タンパク質、例えば天然の抗体、細胞タンパク質、細胞、および生物システムのその他の成分との相互作用も基本的に示さないことを含む。
【0148】
エステル側鎖は、本明細書で用いる場合、式-R'''C(O)‐OREの側鎖を意味し、ここでREは独立してC1‐C6アルキル、C1‐C6アルケニル、C1‐C6アルキニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールであり、それぞれ置換されていてもよく;R'''は結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ、および/またはアルキレンの骨格はO、S、S(O)、NH、またはC(O)が割り込んでいてもよい。R'''は好ましくは結合である。
【0149】
アミド側鎖は、本明細書で用いる場合、式-R''C(O)‐N(RA2の側鎖を意味し、ここでRAは独立してH、C1‐C6アルキル、C1‐C6アルケニル、C1‐C6アルキニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、糖類、二糖、または三糖でありそれぞれ置換されていてもよく;R''は結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ、および/またはアルキレンの骨格はO、S、S(O)、NH、またはC(O)が割り込んでいてもよい。R''は好ましくは結合である。
【0150】
カルボン酸鎖は、本明細書で用いる場合、式‐R''''C(O)OHの側鎖を意味し、ここでR''''は、結合またはC1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つ以上の二重結合または三重結合を含むことができ、および/またはアルキレンの骨格はO、S、S(O)、NH、またはC(O)が割り込んでいてもよい。R''''は好ましくは結合である。
【0151】
生体適合性ポリマーの一部の限定的な例としては、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリアルキレン類、ポリアルキレン・グリコール類、ポリアルキレンオキシド類、ポリアルキレンテレフタレート類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルエステル類、ポリビニルハライド類、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類およびそのコポリマー類、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース類、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、ニトロセルロース類、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ‐プロピル・メチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(イソプロパクリレート)、ポリ(イソブタクリレート)、ポリ(オクタデカクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール類)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリヒアルロン酸類、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ酸無水物類、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、その任意のコポリマー、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。更に、望ましい酵素分解のために改変された生体適合性ポリマーおよびコポリマー、または光、超音波エネルギー、放射線、または温度、pH、モル浸透圧濃度、溶質もしくは溶媒濃度の変化を適用された結果改変した生体適合性ポリマーおよびコポリマーも本発明に受け入れられる。
【0152】
本発明は、以下の番号を付した項のいずれのものにおいても定義され得る。
【0153】
1. コポリマー骨格;
該骨格に共有結合した複数の側鎖;および
解離できる状態で該側鎖に連結した複数の白金化合物
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
2. 上記複数の白金化合物が、Pt(II)化合物、Pt(IV)化合物、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、項1記載のナノ粒子。
3. 少なくとも一つの上記複数の白金化合物が、少なくとも一つの配位結合を介して上記側鎖に連結している、項1または2記載のナノ粒子。
4. 上記配位結合が、側鎖の酸素と白金化合物の白金原子との間の結合である、項3記載のナノ粒子。
5. 上記酸素がカルボニル酸素である、項4記載のナノ粒子。
6. 上記酸素がアミド酸素である、項4記載のナノ粒子。
7. 上記コポリマーがマレイン酸単量体を含む、項1〜6のいずれか一項記載のナノ粒子。
8. マレイン酸の少なくとも一つのカルボン酸がアミドに誘導体化された、項7記載のナノ粒子。
9. 上記コポリマーがポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMA)である、項1〜8のいずれか一項記載のナノ粒子。
10. 上記コポリマーが2〜100単量体単位を含む、項1〜9のいずれか一項記載のナノ粒子。
11. 上記コポリマーが25〜50単量体単位を含む、項1〜10のいずれか一項記載のナノ粒子。
12. 上記側鎖が、ポリマー、単糖類、ジカルボン酸類、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1〜11のいずれか一項記載のナノ粒子。
13. 上記側鎖がポリエチレングリコール(PEG)である、項1〜12のいずれか一項記載のナノ粒子。
14. 上記PEG側鎖の分子量が100〜5000ダルトンである、項13記載のナノ粒子。
15. 上記PEG側鎖の分子量が1000〜3000ダルトンである、項13記載のナノ粒子。
16. 上記PEG側鎖の分子量が約2000ダルトンである、項13記載のナノ粒子。
17. 上記側鎖が単糖類である、項1〜12のいずれか一項記載のナノ粒子。
18. 上記単糖類がグルコサミンである、項17記載のナノ粒子。
19. 上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、項1〜18のいずれか一項記載のナノ粒子。
20. 上記白金(II)化合物がシスプラチンである、項19記載のナノ粒子。
21. 上記白金化合物がオキサリプラチンである、項19記載のナノ粒子。
22. 側鎖の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間に相当する、項1〜21のいずれか一項記載のナノ粒子。
23. 上記側鎖の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数に相当する、項1〜22のいずれか一項記載のナノ粒子。
24. 上記白金化合物の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の10%と100%との間に相当する、項1〜23のいずれか一項記載のナノ粒子。
25. 上記白金化合物の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間に相当する、項1〜24のいずれか一項記載のナノ粒子。
26. 上記側鎖がジカルボン酸類を含む、項1〜25のいずれか一項記載のナノ粒子。
27. 上記ジカルボン酸類が式HOOC‐R‐COOHを有するものであり、式中RがC1‐C6アルキル、C2‐C6アルケニル、またはC2‐C6アルキニルである、項26記載のナノ粒子。
28. 上記ジカルボン酸がマレイン酸である、項27記載のナノ粒子。
29. 25〜50単量体単位を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のPEG側鎖であって、分子量が1000〜3000ダルトンであり、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間に相当する、PEG側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
30. 40個の単量体からなるポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のPEG側鎖であって、分子量が2000ダルトンであり、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の90%よりも多い、PEG側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
31. 25〜50個の単量体を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のグルコサミン側鎖であって、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間である、グルコサミン側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
32. 25〜50個の単量体を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のグルコサミン側鎖であって、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の90%よりも多い、グルコサミン側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
33. カルボン酸‐白金化合物複合体;および
複数の脂質‐ポリマー鎖
を含む、カルボン酸‐白金化合物複合体共役ナノ粒子であって、上記カルボン酸‐白金化合物複合体のカルボン酸部分が上記脂質‐ポリマー鎖に共有結合している、カルボン酸‐白金化合物複合体共役ナノ粒子。
34. カルボン酸がマレイン酸である、項33記載のナノ粒子。
35. ポリマーがPEGである、項33〜34のいずれか一項記載のナノ粒子。
36. 上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、項33〜35のいずれか一項記載のナノ粒子。
37. Pt(II)化合物がシスプラチンである、項36記載のナノ粒子。
38. 白金化合物の負荷が1%〜30%である、項33〜37のいずれか一項記載のナノ粒子。
39. 白金化合物の負荷が1%〜6%である、項33〜38のいずれか一項記載のナノ粒子。
40. 項33〜39のいずれか一項記載のナノ粒子を複数含む、小胞、ミセル、またはリポソーム化合物。
41. 下記の構造を有するジカルボニル‐脂質化合物:


42. 項41記載のジカルボニル‐脂質化合物および白金化合物を含む小胞、ミセル、リポソーム、またはナノ粒子化合物であって、白金化合物が解離できる状態で項41記載の化合物に連結している、小胞、ミセル、リポソーム、またはナノ粒子化合物。
43. 上記白金化合物が、Pt(II)化合物、Pt(IV)化合物、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、項42記載のナノ粒子。
44. 上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、項43記載のナノ粒子。
45. 上記白金(II)化合物がシスプラチンである、項43記載のナノ粒子。
46. 上記白金化合物がオキサリプラチンである、項43記載のナノ粒子。
47. 生体適合性ポリマーを含むナノ粒子化合物であって、該ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する少なくとも一つのモノマーを含み、式中Rは結合、C1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つまたは複数の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子であり、好ましくはRは結合である、ナノ粒子化合物。
48. 上記ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する2〜100単量体単位を含む、項47記載のナノ粒子。
49. 上記ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する25〜50単量体単位を含む、項47〜48のいずれか一項記載のナノ粒子。
50. R'が

または‐NH(CH2CH2O)mCH3であり、式中mは1〜150である、項47〜49のいずれか一項記載のナノ粒子。
51. 生物活性剤をさらに含む、項47〜50のいずれか一項記載のナノ粒子。
52. 項1〜51記載のナノ粒子または化合物;および
薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物。
53. 項1〜52のいずれか一項記載の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、癌または転移を治療する方法。
54. 上記癌または転移が、白金感受性または白金抵抗性の腫瘍からなる群より選択される、項53記載の方法。
55. 上記癌または転移が、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、精巣癌、膵臓癌、口腔食道癌、胃腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、肺癌、メラノーマ、皮膚癌、サルコーマ、血液癌、脳腫瘍、神経膠芽腫、神経外胚葉に由来する腫瘍、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項54記載の方法。
56. 白金化合物を対象における特定の位置で徐放する方法であって、項1〜52のいずれか一項記載の組成物をその位置に供給する工程を含む方法。
57. 組成物がゲルの形態である、項56記載の方法。
58. 上記位置が腫瘍である、項56〜57のいずれか一項記載の方法。
59. 上記組成物を供給する前に腫瘍が除去されている、項58記載の方法。
【0154】
既に示されていない範囲において、本明細書において記述および説明される様々な態様のいずれか一つのものは更に変更させることにより本明細書に開示される任意の他の態様に示される特徴を組み込むことは当業者には理解される。
【0155】
以下の実施例は本発明のある態様や局面を説明するものである。様々な変更、付加、置換等が本発明の精神や範囲を変化させることなく実施できることは当業者には明らかであろう。また、これら変更および差異は、以下の請求項に定義されているとおり、本発明の範囲内に包含される。以下の実施例は決して本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0156】
材料と方法
CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay[3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐イル)‐5‐(3‐カルボキシメトキシフェニル)‐2‐(4‐スルホフェニル)‐2H‐テトラゾリウム、内塩(MTS)アッセイ]試薬はPromega(ウィスコンシン州、マディソン)より入手した。全てのポリマー溶液は、セルロース膜チューブ、種類としてはそれぞれ1000および3500の重量‐平均分子量分画限度を有するSpectra/Por4およびSpectra/Por6(湿ったチューブ)、で透析された。いくつかの攪拌した脱イオン水のバッチに対して操作を実施した。市販の試薬用化合物を、入手した時の状態のまま使用した(Sigma、Fluka AG、Aldrich Chemie GmbH)。その化合物としては、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)、グルコサミン・HCl、mPEG2000NH2、ジアザ(1,3)ビシクロ[5.4.0]ウンデカン(DBU)、およびトリエチルアミンが含まれた。1H NMRおよび13C NMRは、Varion‐300またはBrucker-400分光計を用いて、それぞれ300および400MHzで測定した。1H NMR化学シフトは、テトラメチルシラン(0.0ppm)または重水(4.80ppm)に対してδ値として、百万分率(ppm)で報告されている。データは以下のように報告されている:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、b=ブロード)、カップリング定数(Hz)、および積分。炭素13の化学シフトは、CDCl3(76.9ppm)またはDMSOd6(39.5ppm)を参照として、ppmでδとして報告されている。195Pt NMRの化学シフトは、Na2PtCl6(0.0ppm)を参照として、ppmとして報告されている。一部の実験において、1H NMRおよび13C NMRは、Varion 500またはBrucker-400装置を用いて、それぞれ500および125MHzで測定した。
【0157】
出発物質は、必要に応じ、反応前に共沸蒸留により乾燥させ、全ての空気感受性および/または感湿反応は、乾燥窒素雰囲気下、炎乾燥および/またはオーブン乾燥させたガラス器具中で、湿気を排除するために取られる標準的な注意を払い、実施された。
【0158】
細胞培養および細胞生存率アッセイ
ルイス肺癌細胞株(LLC)および乳癌細胞株(4T1)はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、米国、メリーランド州、ロックビル)より購入した。ルイス肺癌細胞は、10%FBS、50単位/mLのペニシリン、および50単位/mLのストレプトマイシンが補われたダルベッコ変法イーグル培地中で培養された。4T1細胞は、10%FBS、50単位/mLのペニシリン、および50単位/mLのストレプトマイシンが補われたRPMI培地中で培養された。トリプシン処理された培養LLCおよび4T1細胞を、PBSで二回洗浄し、100μLの培地当たり2×103固の細胞密度で96ウェル平底プレートに播種した。様々な濃度の共役体は、各実験において同一の96ウェルプレートで三重に実施した。培地のみは負の対照として、CDDPは正の対照として維持された。次にプレートを5%CO2雰囲気下、37℃で48時間インキュベートした。細胞を洗浄し、20μLのCellTiter96 Aqueous One Solution試薬(Promega、米国、ウィスコンシン州)を含む100μLの無フェノールレッド培地(FBSを含まない)でインキュベートした。このアッセイ[3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐イル)‐5‐(3‐カルボキシメトキシフェニル)‐2‐(4‐スルホフェニル)‐2H‐テトラゾリウム、内塩](MTS)は、増殖アッセイまたは細胞毒性アッセイにおいて生細胞の数を決定するための比色法である。5%CO2雰囲気下、37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルにおける吸収を、VERSA maxプレートリーダー(Molecular Devices、米国、カルフォルニア州、サニーベール)を用いて490nmで測定した。
【0159】
吸光度は、生存している細胞の数を反映する。全データよりブランクを差し引き、結果はOriginソフトウェア(OriginLab社、米国、ノースアンプトン)を用いて解析した。各試験用量に対する三重に得た吸光度データの平均を、未処理の対照細胞の平均値で割った。割合の対数を使用し、特定の用量に対するグラフ、即ちY=(試験された吸光度の平均値‐バックグラウンド)/(未処理の吸光度の平均値‐バックグラウンド)対X=試験された用量、をプロットした。
【0160】
粒径測定
高解像度TEM画像は、JEOL2011高コントラストデジタルTEMにより取得した。試料は、様々な濃度の水溶性ナノ粒子を数滴加えることにより、炭素で被覆された300メッシュ銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)上に調製され、これを風乾させた。ナノ粒子の大きさの分布は、動的光散乱(DLS)により調査され、これはヘリウム・ネオン・レーザーを搭載したDLSシステム(Malvern NanoZetasizer)において25℃で実施された。
【0161】
物理化学的放出動力学研究
PIMA‐GA‐CDDPを、LLC細胞株から得た1mLの低酸素細胞溶解物に懸濁し、透析袋(MWCO約1000Da)に入れて閉じた。透析袋は1mLのPBS緩衝液中で穏やかに震盪させながら室温でインキュベートした。予定された時間間隔で10μLのアリコートを培養培地より抽出し、90μLの1,2‐フェニレンジアミン溶液(1mLのDMF中1.2mg)で処理し、100℃で3時間インキュベートした。放出されたPt(IV)は、Pt(IV)‐1,2‐フェニレンジアミン錯体の特徴的な波長、λ=704nmで紫外可視(UV-VIS)分光法により定量化された。各アリコートを取り除いた後、培養培地を10μLの新鮮なPBSで補充した。
【0162】
あるいは、濃縮されたPIMA‐GA‐シスプラチン共役体を、1N水酸化ナトリウムまたは1N硝酸でpHを8.5または5.5に調節した100μLの再蒸留水に再懸濁し、これを透析チューブ(MWCO:1000KD、Spectrapor)に移した。透析チューブを磁気ペレットと異なるpHのリン酸緩衝食塩水が2mL入った管に入れた。25℃でIKA攪拌装置を使用して透析袋を穏やかに300rpmで攪拌することにより、シスプラチン放出を観察した。透析膜袋の外側の溶液より予定された時間間隔で10μLのアリコートを取り出し、100μLのオルトフェニルジアミン(DMF中1.2mg/mL)を加え、その結果得られる溶液を3時間加熱することにより次の紫外可視活性錯体を形成する反応に供した。同じ体積を維持するために、透析膜袋の外側の溶液に10μLの新鮮な溶液を補充した。放出された薬剤の量は、706nmでUV‐分光光度計(Shimadzu UV 2450)により評価された。
【0163】
アポトーシスのためのFACS解析
シスプラチン・ナノ粒子または遊離シスプラチン存在下、6ウェルプレート中37℃で24時間細胞をインキュベートし増殖させた。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、0℃で回収した。次に、アネキシンV-Alexa Fluor 488共役体(Molecular Probes, Invitrogen)で細胞を処理し、暗所にて室温で15分間インキュベートした。次に細胞をPBSで洗浄し、RNase(1mg/mL;Sigma)を含むヨウ化プロピジウム(PI)溶液(50g/mL;Sigma)と共にインキュベートした。次に細胞懸濁液をFACSチューブに移し、BD FACS Calibur装置を用いてアネキシンV/PI染色を解析した。データの解析にはCellQuestProソフトウェア(BD Biosciences)を使用した。
【0164】
細胞取り込み調査
LLCおよび4T1細胞を24ウェルプレート内のカバーガラス上に1ウェル当たり50000個播種した。細胞の培養密度が70%に達した段階で、細胞を、30分、2時間、6時間、12時間、および24時間のそれぞれ異なる期間フルオレセインイソチオシアネート(FITC)が結合したシスプラチン・ナノ粒子で処理した。示された時点における共局在を観察するため、細胞をPBSで洗浄し、Lysotracker Red(Molecular Probes)と共に37℃で30分インキュベートし、内部移行させた。次に4%パラホルムアルデヒドを室温で20分間用いて細胞を固定し、これをPBSで2回洗浄し、Prolong Gold Antifade試薬(Molecular Probes)を使用してスライドガラスに載せた。画像は、FITCおよびLysotracker Red用にそれぞれ緑および赤のフィルターを搭載したNikon Eclipse TE2000蛍光顕微鏡を用いて取得した。
【0165】
インビボマウスLLC肺癌および4T1乳癌腫瘍モデル
LLC肺癌細胞および4T1乳癌細胞(3×105)をそれぞれ4週齢のC57/BL6およびBALB/cマウス(体重20g、Charles River Laboratories、マサチューセッツ州)の側腹部皮下に移植した。薬剤による治療は、腫瘍の体積が50mm3に達した後に開始した。腫瘍治療は、シスプラチン・ナノ粒子および遊離シスプラチンまたはオキサリプラチンおよび遊離オキサリプラチンの投与からなるものであった。製剤は、100μLのシスプラチン・ナノ粒子および遊離シスプラチンが1.25および3mg/kgのシスプラチンを含むか、または100μLのオキサリプラチン・ナノ粒子および遊離オキサリプラチンが5および15mg/kgのオキサリプラチンを含むように調製され、確認された。投与は、尾静脈への注射により行った。尾静脈注射により投与されたPBS(100μL)は、薬剤による治療の対照として用いられた。腫瘍体積および体重は毎日監視された。対照群において平均した腫瘍の大きさが2000mm3を超えた時に、動物を屠殺した。屠殺後直ちに腫瘍を回収し、更なる解析のために10%ホルマリンに保存した。動物に対する処置の全ては、Harvard大学IUCACにより承認された。
【0166】
インビボマウス卵巣癌腫瘍モデル
卵巣腺癌を、前述のとおりCreリコンビナーゼを有するアデノウイルスの卵巣内導入により、遺伝子組換えK‐rasLSL/+/Ptenfl/flマウスにおいて誘発させた。薬剤による治療の前後に腫瘍を容易に画像化できるよう、腫瘍細胞は一度Adeno‐Creに活性化されるとルシフェラーゼを発現するように設計された。一度マウスにおいて腫瘍が中型から大型に成長すると、これらは四つの治療群(対照、シスプラチンNP1.25mg/kg、シスプラチンNP‐3mg/kg、および遊離シスプラチン)の内の一つに入れられ、すべての薬剤は静脈内(i.v.)投与された。
【0167】
腫瘍の画像化および薬剤による治療の有効性の評価
インビボ腫瘍画像化は、IVIS Lumina II Imaging システムを用いて実施された。バイオルミネセンスの定量化は、Living Imageソフトウェア3.1(Caliper Life Sciences)を用いて達成した。画像化前にマウスは150mg/kgのD‐ルシフェリンホタルカリウム塩を腹腔内(i.p.)注射により投与された。ルシフェリン注射の5分後、2.5%イソフルラン誘導チャンバーにおいて動物に麻酔をかけた。麻酔をかけた後、マウスを画像化チャンバーに入れ、イソフルランを供給するマニフォールドにより麻酔下のままにし、37℃の加温ステージにより体温を維持した。ルシフェリン投与15分後、30秒の露光時間で生物発光シグナルを集めた。画像の取得は、治療の前日(0日目、基線)、治療周期の中間、および最終治療の一日後に行った。治療効果は、基線と比較して治療後の生物発光シグナルが何倍になっているかを調べることにより定量化した。毒性データの統計分析は、Prism 5(商標)ソフトウェアを使用した一元配置ANOVA試験を用いて行った。
【0168】
シスプラチンの体内分布
シスプラチン・ナノ粒子および遊離シスプラチンは、その分布を監察するためにマウスに静脈内注射された(8mg/kgのシスプラチンと同等の用量)。注射の24時間後、動物を屠殺し、腫瘍および腎臓を回収するために剖検が行われた。別の研究において動物には、有効性試験の手順に従い繰返し投与が行われ、連続投与観察の終わりに動物を屠殺した。臓器の重量を測定し、濃硝酸(約10mL)への溶解は、室温で24時間振盪後100℃で12時間加熱することにより行った。次にこれらの混合物に30%H2O2を加え、結果として得られた溶液を室温で24時間攪拌し、次に更に12時間加熱することにより液体を蒸発させた。全ての固体を1mLの水中に再度溶解した後、白金の量を誘導結合型プラズマ(ICP)分光分析法により測定した。
【0169】
病理組織学およびTUNELアッセイ(アポトーシスアッセイ)
組織は、Harvard Medical School Core Facilityにおいて、10%のホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、薄片を作り、H&Eで染色した。腫瘍および腎臓のパラフィン切片を脱パラフィン処理し、メーカの手順書(In Situ Cell Death Detection Kit、TMR Red、Roche)に従って一般的なTMR‐レッド蛍光ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性dUTPニックエンドラベリング(TUNEL)キットで染色した。画像は、赤のフィルターを搭載したNikon Eclipse TE2000蛍光顕微鏡を用いて取得した。
【0170】
薬物による治療の毒性評価
毒性を評価するために、毎日体重を測定した。更に、重量を測定し、詳細な病理学的検査を行うために肝臓および脾臓を治療の後に取り除き、生命維持に必要な臓器に対する毒性を評価した。生命維持に必要な臓器における細胞アポトーシスはTUNNELアッセイを用いて測定した。毒性データの統計分析は、Prism 5(商標)ソフトウェアを使用した二元配置ANOVA試験を用いて行った。
【0171】
統計分析
データは、少なくともn=3から平均値±S.D.として表した。統計分析は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad、カルフォルニア州、サンディエゴ)を用いて実施された。統計学的差異は、ANOVAに引き続きNewman Keuls Post Hoc試験またはStudent's t testにより決定した。p<0.05は、有意差を示すと考えられた。
【0172】
実施例1:ポリマー担体の合成
ポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)PIMA(2)
10mL丸底フラスコ中でポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)1(1g)を5mLの乾燥DMFに溶解し、これに再蒸留水(1mL)を加えた後、得られた反応混合物を80℃で48時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、低分子量の不純物は透析により除去した。水性ポリマー溶液を、重量‐平均分子量分画限度が1000のものとSpectra/Por4という種類のセルロース膜チューブに入れて三日間透析した。その後、無色の溶液を凍結乾燥することにより732mgの白色ポリマーポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)PIMA(2)を得た。

【0173】
PIMA‐EDA(3)
磁気攪拌装置および乾燥窒素風船を備えた10mL丸底フラスコにポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)(PIMA)1(1g)、乾燥DMF(5mL)、トリエチルアミン(0.1mL)および過剰のエチレンジアミン二塩酸塩(1g)を入れた。得られた混合物を25℃で48時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、過剰のエチレンジアミン等の低分子量不純物を、分子量分画が3.5KDの透析袋を三日間使用して取り除くことによりポリマーを精製した。次にポリマー溶液を凍結乾燥することにより、0.89gのPIMA‐EDA(3)を得た。

【0174】
PIMA‐GAポリマー(4)
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)PIMA1(0.0064g、0.001mmol)をDMF(5mL)に溶解し、次にDBU(0.032mL、1mLの乾燥DMFに溶解、0.21mmol)を加え、この混合物を25℃で1時間攪拌した。この溶液にグルコサミン(0.046g、0.21mmol)を直接加えた。結果として得られた反応混合物は、室温で48時間攪拌させ、次に再蒸留水(1mL)を加えることにより反応を停止させた。有機溶媒を真空下で12時間かけて蒸発させた。結果として得られた淡黄色固体を、Pierce(Thermoscientific)より供給された分子分画3.5KDの透析袋を使用して無色の溶液となるまで3日間透析することにより精製した。凍結乾燥することにより104mgの白色PIMA‐GA(4)ポリマーを得た。

【0175】
別の実験において、PIMA(0.045g)は、DMF(5mL)に溶解し、次にDBU(0.23mL)とグルコサミン(0.323gを5mLの乾燥DMFに溶解)の溶液を加えた。結果として得られた反応混合物は室温で48時間攪拌させ、次に再蒸留水(1mL)を加えることにより反応を停止させた。有機溶媒を真空下で蒸発させた。結果として得られた淡黄色固体を、分子分画3.5KDの透析袋を使用して3日間透析することにより精製した。凍結乾燥することにより104mgの僅かに黄色に着色したPIMA‐GAポリマーを得た。

【0176】
PIMA‐PEGポリマー(5)
25mL丸底フラスコ中、N2下で、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)PIMA1(3mg、0.0005mmol)およびDBU(0.0023mL、0.015mmol)を乾燥DMF(10mL)に1時間溶解し、次にPEG‐NH2(20mg、0.01mmol)を加え、得られた反応溶液を攪拌を継続しながら80℃で3日間加熱した。反応を室温まで冷ました後、水(1mL)を加え、1時間攪拌を継続した。溶媒を真空下で留去し、分子量が2KDである未反応のPEG‐NH2は、必要とされるポリマーから透析により除去した。透析は、Pierce(Thermoscientific)より供給された分子分画3.5KDの膜を使用し、5日間実施することにより無色の溶液が得られ、これを凍結乾燥することにより19mgの白色PIMA‐PEG(5)が得られた。

【0177】
実施例2:共役体の合成
CDDPのアクア化
CDDP(30mg)およびAgNO3(17mg)を10mLの再蒸留水に加えた。結果として得られた溶液は暗所にて室温で24時間攪拌した。反応後にAgCl沈殿物が見出された。AgCl沈殿物は、10000rpmで10分間遠心分離することにより反応から除去された。上清を0.2μmのフィルターに通すことにより、更に精製した。
【0178】
PIMA‐CDDP(6)
10mL丸底フラスコ中で、CDDP(0.00084g、0.0028mmol)を含む1mLの再蒸留水にポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)PIMA2(0.006g、0.001mmol)を溶解し、得られた反応混合物を室温(25℃)で48時間攪拌した。PIMA‐CDDP(6)共役体は、重量‐平均分子量分画限度が1000のものとSpectra/Por4という種類のセルロース膜チューブに入れて透析することにより更に精製された。結果として得られた濁った溶液を凍結乾燥することにより、白色のPIMA‐CDDP(6)共役体を得た。細胞培養実験のために共役体を再懸濁した。
【0179】
PIMA‐EDA‐CDDP(7)
10mL丸底フラスコにPIMA‐EDA3(0.007g、0.001mmol)ポリマーを計り入れ、これに再蒸留水(1mL)に溶解されたCDDP(0.0084g、0.0028mmol)を加えた。次に溶液を室温(25℃)で48時間攪拌した。分子量分画限度が1000のセルロース膜を用いた透析および凍結乾燥により黄色様PIMA‐EDA‐CDDP(7)共役体を得た。
【0180】
PIMA‐GA‐CDDP(8)
磁気攪拌装置を備えた10mL丸底フラスコ内で秤量したPIMA‐GA4(0.0036g、0.0003mmol)にCDDP(0.001g、0.0033mmol)を含んだ1mLの再蒸留水を加え、次に溶液を室温(25℃)で48時間攪拌した。溶液中に形成されたPIMA‐GA‐CDDP(8)共役体を、重量‐平均分子量分画限度が1000の条件で2〜3時間透析することにより更に精製し、未結合のCDDPを除去した。透析された溶液を凍結乾燥することによりやや黄色のPIMA‐GA‐CDDP(8)共役体を得た。
【0181】
PIMA‐PEG‐CDDP(9)
ブラッシュポリマーPIMA‐PEG5(0.019g、0.00007mmol)を10mL丸底フラスコ中に入れ、0.3mLの再蒸留水に溶解したCDDP(0.0002g、0.0007mmol)と混合した。室温(25℃)で三日間攪拌した後、得られた濁った反応混合物を透析した。PIMA‐PEG‐CDDP(2)共役体を含む溶液を、重量‐平均分子量分画限度が1000のものとSpectra/Por4という種類のセルロース膜チューブに入れて2〜3時間透析することにより更に精製され、遊離CDDPが除去された。次にPIMA‐PEG‐CDDP(9)共役体を凍結乾燥することにより、白色固体を得た。細胞培養実験のために共役体を再蒸留水に再懸濁した。
【0182】
FITC標識されたPIMA‐GA‐CDDP
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)PIMA(0.006g)をDMF(5mL)に溶解し、次にDBU(DMFに0.0053mL)およびグルコサミン(5mLの乾燥DMFに0.0075gを溶解)の溶液を加え、この混合物を25℃で1時間攪拌した。得られた反応混合物は25℃で48時間攪拌させた後、0.0022gのFITC-EDA(フルオレセインイソチオシアネートを過剰のエチレンジアミン中25℃にて12時間DMSO中で攪拌することにより、FITC‐EDAを合成した)を加え、更に12時間攪拌を継続させ、再蒸留水(1mL)を反応混合物に加えることにより反応を停止させた。有機溶媒は真空下で蒸発させた。結果として得られた橙色の固体は分子分画3.5KDの透析袋を用いて三日間透析することにより精製した。凍結乾燥により蛍光橙色のPIMA‐GA‐FITCポリマーを得た。このFITC標識ポリマー(PIMA‐GA‐FITC、0.004g)にシスプラチン(0.001g)を含む1mLの再蒸留水を加えた後、溶液を室温(25℃)で48時間攪拌した。溶液中で形成されたPIMA‐GA‐FITC‐シスプラチン共役体は、重量‐平均分子量分画限度が1000の条件で透析することにより更に精製され、未結合のシスプラチンが除去された。透析された溶液を凍結乾燥することにより橙色のFITC標識PIMA‐GAFITC‐シスプラチン共役体ナノ粒子がもたらされた。
【0183】
PIMA‐オキサリプラチン
丸底フラスコ中で、オキサリプラチン‐OH(1mg)を含む1mLの再蒸留水にポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMA)(6mg)を溶解し、得られた反応混合物を室温(25℃)で48時間攪拌した。PIMA‐オキサリプラチン共役体は、重量‐平均分子量分画限度が1000のものとSpectra/Por4という種類のセルロース膜チューブに入れて透析することにより更に精製された。結果として得られた濁った溶液を凍結乾燥することにより、PIMA‐オキサリプラチン共役体を得た。細胞培養実験のために共役体を再懸濁した。
【0184】
PIMA‐GA‐オキサリプラチン
磁気攪拌装置を備えた10mL丸底フラスコ内で秤量したPIMA‐GA(12mg)にオキサリプラチンOH(1mg)を含んだ1mLの再蒸留水を加え、次に溶液を室温(25℃)で48時間攪拌した。溶液中に形成されたPIMA‐GA‐オキサリプラチン共役体を、重量‐平均分子量分画限度が1000の条件で透析することにより更に精製し、未結合のオキサリプラチンを除去した。透析された溶液を凍結乾燥することにより、黄色のPIMA‐GA‐オキサリプラチン共役体を得た。
【0185】
実施例3:様々な塩基を使用したPIMA‐GAポリマー合成のNMR解析
DBUを塩基として使用したPIMA‐GAの合成
グルコサミン塩酸塩(360mg、1.66mmol、200等量)を5mLのDMFに懸濁し、DBU(250μL、1.66mmol、200等量)を用いて室温で1時間処理した。一時間後、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)(50mg、0.008mmol、1等量)の5mLDMF溶液にグルコサミン/DBU(DMF中)溶液を滴下し、反応混合物を室温で72時間攪拌した。3mLの再蒸留水で反応混合物の反応を停止させた。PIMA‐GA共役体は、2000MWCO透析袋を使用して、72時間透析することにより精製した。生成物を48時間凍結乾燥することにより100mgのクリームイエロー色の粉末を得た。生成物は1H NMR分光法(300 MHz)により特徴付けられた。溶解度:生成物は水溶性であったが、有機溶媒、例えばアセトン、メタノール、またはアセトニトリル、には溶解しなかった。1H NMR(300MHz):δ(ppm)=5.2‐5.3(m、0.14H、糖プロトン)、5.0‐5.1(m、0.4H、糖プロトン)、3.6‐4.0(m、13.07H、糖プロトン)、3.25‐3.5(m、15.48H、糖プロトン)、3.0‐3.2(m、6.98H、糖プロトン)、2.5‐2.6(m、6.97H、PIMAプロトン)、1.4‐1.7(m、19.86H、PIMAプロトン)、0.7‐1.2(m、23.77H、PIMAプロトン)。糖プロトンの総数:PIMAプロトンの総数=36.07:50.6=0.71.全ての残基がPIMA‐GA共役単量体中の誘導体化された糖プロトンおよびPIMAプロトンであれば、これは予測された構造に合致する結果である。
【0186】
ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を塩基として使用したPIMA‐GAの合成
グルコサミン塩酸塩(179mg、0.83mmol、100等量)を2mLのDMFに懸濁し、DIPEA(145μL、0.83mmol、100等量)を用いて室温で1時間処理した。一時間後、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)(50mg、0.008mmol、1等量)(3mLのDMFに溶解)を反応混合物に加え、室温で24時間攪拌した。3mLの再蒸留水で反応混合物の反応を停止させた。PIMA‐GA共役体は、1000MWCO透析袋を使用して、24時間透析することにより精製した。生成物を48時間凍結乾燥することにより106mgの白色粉末を得た。生成物は1H NMR分光法(300 MHz)により特徴付けられた。溶解度:生成物は水溶性であったが、有機溶媒、例えばアセトン、メタノール、またはアセトニトリル、には溶解しなかった。

糖プロトンの総数:PIMAプロトンの総数=39.21:61.11=0.64。
【0187】
トリエチルアミンを塩基として使用したPIMA‐GAの合成
グルコサミン塩酸塩(143mg、0.66mmol、80等量)を2mLのDMFに懸濁し、トリエチルアミン(100μL、0.66mmol、80等量)を用いて室温で1時間処理した。一時間後、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)(50mg、0.008mmol、1等量)を反応混合物に加え、室温で24時間攪拌した。3mLの再蒸留水で反応混合物の反応を停止させた。PIMA‐GA共役体は、1000MWCO透析袋を使用して、24時間透析することにより精製した。生成物を48時間凍結乾燥することにより100mgの白色粉末を得た。生成物は1H NMR分光法(300 MHz)により特徴付けられた。溶解度:生成物は水溶性であったが、有機溶媒、例えばアセトン、メタノール、またはアセトニトリル、には溶解しなかった。

糖プロトンの総数:PIMAプロトンの総数=34.31:65.7=0.52。
【0188】
実施例4:PIMA‐GA‐CDDPの時間依存性負荷効率
方法:PIMA‐GA共役体(50mg、0.004mmol)を1mLの再蒸留水に溶解し、次に(NH22Pt(OH)2(3mL、0.057mmol)を加えた。反応を室温で48時間攪拌した。各予定された時点(5時間、31時間、および48時間)に達した後で、200μLのアリコートを反応混合物から取り出した。アリコートを、3000MWCOの再生セルロース膜を有するMicrocon遠心濾過デバイスを通過させることにより濾過し、PIMA‐GA‐CDDP共役体を分離した。いかなる白金試薬も除去するために、ポリマーを再蒸留水(200μL×2)でよく洗浄した。ポリマーに含まれる白金は、上記の方法により決定された。
【0189】
結果:PIMA‐GA共役体におけるPt負荷効率の変化は、1,2‐フェニレンジアミンとPt間の共役の波長λ=706nmにおいてUV-VISスペクトルを生じさせる能力により決定された。ポリマーおよび1,2‐フェニルジアミンは、この波長においていかなる特徴的なピークも持たない。PIMA‐GAおよびヒドロキシプラチン間の反応においてPt含有量が時間と共にいかに変化するかは、UV‐VISスペクトルにより監視された。異なる予定された時点(5時間、31時間、および48時間)において200μLのアリコートを反応混合物から取り出し、ポリマー共役体におけるPt負荷を測定した。ポリマー共役体中の白金負荷は時間と共に増加することが図より示され、190μg/mg(5h)から210μg/mg(31h)となり、48時間で最高値である347μg/mgに達する。予想される最大負荷は一ポリマー単位当たり37.5%であり、ポリマー毎34.7%Ptが得られたため、これはほぼ100%のPtがこの時点でポリマーと複合体を形成していることを示す。
【0190】
実施例5:構造-活性相関に基づくポリマーの理論的最適化
ナノ粒子の有効性を改善するために、本発明者らは、ポリマーの各単量体の腕の一本を生体適合性グルコサミンで誘導体化することによりPIMA‐グルコサミン共役体(PIMA‐GA)(図11B)を作成した。これによりPtとのジカルボキシラート結合がモノカルボキシラート結合と配位結合に変換され、配位結合がモノカルボキシラート連結よりも不安定である場合、Ptをより容易に放出できる(図11B)。
【0191】
Pt環境の核磁気共鳴(NMR)による特徴づけは、酸性pH(pH6.5)中におけるPIMA‐GAおよびシスプラチンの複合体化が、モノカルボキシラートおよび-1611.54に位置する単一のPtNMRピーク(図11B)により特徴付けられるO->Pt配位錯体に特徴付けられる異性体状態[PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)](8)を作り出すことを明らかにした。興味深いことに、アルカリ性pH(pH8.5)でシスプラチンをPIMA‐GAと複合体化すると、Ptがモノカルボキシラートおよび-2210に位置する独特のピークに特徴付けられる(図11B)より安定なN->Pt配位結合により錯体化されている異性体であるPIMA‐GA‐シスプラチン(N->Pt)複合体(10)の形成が好まれた。面白いことに、これら二つのpHに依存する状態の存在により、本発明者らは、Pt環境、特に脱離基の生物学的有効性に対する影響を更に精査することができた。
【0192】
15:1の比率でシスプラチンをPIMA‐グルコサミン(PIMA‐GA)ポリマーに複合体化させると、高解像度透過型電子顕微鏡観察(データ記載せず)およびDLS(図12A)により確認される80〜150nmという望ましい大きさの幅の狭い帯域幅に属するナノ粒子を作り出す自己集合がもたらされた。更に、発明者らは1mgのポリマー当たり175±5μgの負荷(図12B)を達成し、これは従来のナノ粒子製剤を使用して達成できる値よりも著しく高い(Avgoustakis K, Beletsi A, Panagi Z, Klepetsans P, Karydas AG, Ithakissios DS. PLGA-mPEG nanoparticles of cisplatin: in vitro nanoparticle degradation, in vitro drug release and in vivo drug residence in blood properties. J Control Relsease. 2002 Feb19; 79 (1-3): 123-35)。
【0193】
実施例6:インビトロにおけるナノ粒子の有効性および取り込みの特徴づけ
フルオレセインを用いてポリマーにタグをつけることにより(図15)、リソソーム内の区画を標識するためにLysotracker-Red色素で同時標識した細胞へのナノ粒子の取り込みを時間的に追跡することが可能となった。処理から15分以内でLLC細胞内にナノ粒子の急速な取り込みが観察され、それと共に、FITC‐ナノ粒子とLysotracker-Red色素の同時局在からも明らかなように、リソソーム内区画への内部移行が見られた(データ記載せず)。対照的に、4T1細胞への取り込みは遅延され、リソソーム内区画の中への内部移行は、インキュベート後2時間経過した後にのみ明らかとなった。12時間にわたってリソソーム区画からの蛍光シグナルおよびFITC共役体は解離し、これはリソソーム内でプロセシングを受けた後ポリマーが細胞質内に分布することを示唆するものである(データ記載せず)。
【0194】
インビトロにおけるPIMA‐GA‐シスプラチン・ナノ粒子の有効性を検査するために、本発明者らは、ルイス肺癌細胞(LLC)および4T1乳癌細胞株を使用して細胞生存率アッセイを行った。細胞生存率は、インキュベート後48時間の時点でMTSアッセイを用いることにより定量化した。興味深いことに、LLC細胞(図13A)のほうが4T1乳癌細胞(図13B)よりもシスプラチン・ナノ粒子に対する感受性が強かった。面白いことに、PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子(8)は、シスプラチン(IC50=3.87±0.37μM)と同様(P>0.05)でカルボプラチン(IC50=14.75±0.38μM)よりも優れたIC50値(4.25±0.16μM)で著しいLLC細胞死滅を示し、これはアクア化の速度が有効性に重要であるという仮説を支持するものである(図13)。本発明者らが、グルコサミンをエチレンジアミンに置き換えることにより、グルコサミンに似たPt複合体形成環境を作り出した際に、同様の有効性が観察された(図13A)。これは、PIMA‐GA‐シスプラチン(N->Pt)ナノ粒子(IC50=6.36±0.19μM)がシスプラチンよりも著しく活性が低いという観察から更に支持され、白金の環境がアクア化速度の定義に重要であることを示唆するものである。更に複合体形成環境の役割を検証するために、本発明者らは、PIMAポリマーに含まれる40個の単量体の内20個のみがグルコサミンで誘導体化されているPIMA‐GA(20)を作成し、これによりジカルボキシラート結合を導入し、PIMA‐GAにPtを複合体化させるモノカルボキシラートおよび配位結合を減少させた。図16Fに示されているとおり、40個の単量体全てがグルコサミンで誘導体化されているPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子と比較してPIMA‐GA(20)‐シスプラチン(EC50=5.85±0.13μM)では濃度‐有効性曲線が右へ移動する。空のPIMA‐GAポリマーは細胞生存率に対して効果を示さなかった。表にはEC50値がまとめられている。
【0195】
図13Aに示すとおり、ポリマーのみでは細胞死は最高濃度で誘発されたが、シスプラチンとの複合体形成は濃度‐効果曲線を著しく左へ移動させ、これはPIMA‐シスプラチン・ナノ粒子が細胞死滅を誘発することを示した。しかしながら、50uMの濃度においてもPIMAシスプラチンは完全な細胞死滅を誘発できなかった。一方でシスプラチンは20uMよりも高い濃度においては完全な細胞死滅を発揮する。PIMAと複合体を形成した際に起こるこの白金酸の有効性の低下は、シスプラチンと比較して同様に有効性の低いカルボプラチンに存在する連結と類似したPtを強く結合する白金とマレイン酸単量体間のジカルボキシラート連結により説明可能である。
【0196】
細胞表面上でのホスファチジルセリン発現のために細胞を標識した結果、シスプラチン処理がアポトーシス性細胞死を誘発でき、更にLLCが4T1細胞よりも感受性が高いことが明らかになった(図14)。
【0197】
(表1)様々な複合体のEC50値

【0198】
実施例7:ナノ粒子からの活性シスプラチンの放出はpH依存性である
ナノ粒子がリソソーム区画に局在したことから、本発明者らは、腫瘍のリソソーム内区画の酸性pHを模倣し、pH5.5におけるナノ粒子からのPtの放出を検査した(Lin, et al., Eur. J. Cancer, 2004 40(2):291-297)。アルカリ性領域におけるpHの参照として本発明者らはpH8.5も選択した。図16に示すように、70時間監視された期間中、pH5.5でPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子は、持続した著しいシスプラチンの放出をもたらした。一方、pH8.5における放出は著しく少なく、PtのpH依存的な放出が示された。興味深いことに、PIMA‐GA‐シスプラチン(N->Pt)は、pH5.5においても著しく少ない量のPtを放出し、これはN->Pt配位結合がO->Pt連結よりも強いという事実と一致するものであった。本発明者らは、予想どおり、PIMA‐シスプラチン・ナノ粒子が、PIMA‐GA‐シスプラチン(N->Pt)およびPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)の両方と比較して有意に低いPt放出速度を示すことを観察した。これはPtがモノカルボキシラートおよび配位結合の代わりに、より安定なジカルボキシラート結合に保持されているからである。
【0199】
実施例8:ナノ粒子は減少された腎毒性で腫瘍増殖の遅延および退行を誘発する
PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子は白金の所望の放出速度を示し、シスプラチンに匹敵するインビトロ有効性を示したため、発明者らはインビボにおいてナノ粒子の治療的有効性を検証した。確立したルイス肺癌細胞または4T1乳癌細胞を担持するマウスをそれぞれ五つの群に無作為に選別し、各群に(i)PBS(対照);(ii)シスプラチン(1.25mg/kg);(iii)シスプラチン(3mg/kg);(iv)PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子(1.25mg/kg);または(v)PIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子(3mg/kg)を三回投与した。PBSを注射されたマウスは、16日目(最後の注射からの日数)には大きな腫瘍を形成し、従って、安楽死させた。腫瘍の病態に対する治療の効果を評価するために、他の群の動物も同じ時点で屠殺された。図5に示すように、シスプラチンは用量依存的な腫瘍抑制を誘発し、1.25mg/kgのシスプラチンと同等の用量では、ナノ粒子製剤の投与は、遊離薬剤の場合と比較して肺癌の進行をより強力に抑制した。しかしながら、3mg/kgと同等の用量では、遊離シスプラチンは著しい体重減少をもたらし、全身毒性を示した。対照的に、3mg/kgのシスプラチンと同等のナノ粒子で治療された動物では、腫瘍の抑制はいずれの治療群においても同様であったが、体重の増加が見られた(データ記載せず)。更に、剖検は遊離シスプラチンによる治療が腎臓および脾臓の重量を著しく減少させることを明らかにし(図5Dおよび5E)、これは過去の報告と一致する腎毒性および血液毒性を示した。面白いことに、シスプラチン・ナノ粒子は腎臓の重量には影響を及ぼさず、最大用量においてのみ脾臓の大きさを減少させた(図5Dおよび5E)。これは更に、腎臓のH&E染色された切片の病理学的解析により検証され、それによりシスプラチン・ナノ粒子と比較して遊離シスプラチンで治療された動物においては著しい尿細管壊死が見られた。腫瘍抑制の基礎にある機構を明らかにするために、本発明者らはTUNEL用に腫瘍切片を標識し、これにより遊離シスプラチンおよびPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子のいずれもを用いた治療後、著しいアポトーシスが誘発されることが明らかとなった(データは記載せず)。興味深いことに、TUNEL用に腎臓切片を標識すると、遊離シスプラチンで治療された動物において著しいアポトーシスが認められ、それと反対にナノ粒子で治療された群では最小の腎毒性が認められた(データは記載せず)。当然、誘導結合型プラズマ分光法(ICP)を使用した体内分布研究は、シスプラチン・ナノ粒子投与後の腎臓におけるPt濃度が遊離薬剤を投与後に得られる濃度の50%であることを明らかにし(図5E)、これにより腎毒性の低下が説明された。
【0200】
シスプラチン(1.25mg/kg)を用いた治療は、対照と比較して腫瘍増殖の僅かな抑制しか示さず、対照的に同じ用量でのナノ粒子‐シスプラチンを用いた処置は、抗腫瘍効果の劇的な増加を示した(図5A)。これは、ナノ粒子が腫瘍内で活性薬剤の濃度を遊離薬剤の場合と比較して著しく高めることができるという事実と一致する20。より高い濃度では、遊離薬剤とナノ粒子はいずれも同様の抗腫瘍効果を達成し(図5A)、これが該薬剤の理論的上限である可能性がある。しかしながら、この用量での遊離薬剤は、体重の20%よりも多い減少をもたらし(図5B)、これは非特異的な毒性を示すものである。実際、腎臓の重量が減少したことからも見られるとおり、これは著しい腎毒性を誘発した(図5D)。更に、血球数は様々な処置群において差異は無かったものの(図5C)、遊離シスプラチンの最大用量においては脾臓の重量の著しい減少が見られた(図5E)。対照的に、ナノ粒子‐シスプラチンは、最大用量においてもそのような毒性を示さず、これはより高レベルで、またはより長い期間での投薬に関して可能性を広げるものであり、いずれも抗腫瘍結果に劇的に影響を及ぼすことができる。更に、製造の容易さ、材料のコストの安さ、ならびに治療効果の増加および毒性の低下により、世界的な保健に影響を及ぼすナノテクノロジーの例となることができる。理論に束縛されるものではないが、増加した治療指数は、よく研究されたEPR効果によりもたらされる腫瘍内へのナノ粒子の選択的蓄積、およびクリアランスのための大きさの限界、即ち過去の研究において5nm未満と示された限界、を越えたことによる腎臓の回避によりもたらされてもよい(Choi HS, Liu W, Misra P, Tanaka E, Zimmer JP, Itty Ipe B, Bawendi MG, Frangioni JV. Renal clearance of quantum dots(量子ドットの腎クリアランス). Nat Biotechnol. 2007;25:1165-70)。
【0201】
遊離シスプラチンおよびPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子はいずれも4T1乳癌モデルにおいて同様のレベルの腫瘍増殖抑制をもたらした(図17)。興味深いことに、1.25mg/kgおよび3mg/kgの遊離シスプラチンではいずれの場合も、シスプラチン・ナノ粒子で治療された群と比較して著しい体重の減少が誘発された。肺癌モデルにおける観察と一致して、遊離シスプラチンは著しいアポトーシスを腎臓内で誘発したものの、ナノ粒子‐シスプラチン処置群は腎臓では最小のアポトーシスを示したが、腫瘍においては著しいレベルのアポトーシスを示した。
【0202】
肺癌および乳癌モデルに加えて、本発明者らは更に卵巣癌モデルにおいてもPIMA‐GA‐シスプラチン(O->Pt)ナノ粒子を評価した。卵巣上皮癌は女性生殖周期において最も致命的な悪性腫瘍である。類内膜卵巣癌において頻繁に発生する体細胞PTEN突然変異および10q23 PTEN座でのヘテロ接合性の損失の発見は、この卵巣上皮癌のサブタイプの病因においてPTENが主要な役割を果たすことを意味する(Obata, K. et al. Frequent PTEN/MMAC1 mutations in endometrioid but not serous or mucinous epithelial ovarian tumors. Cancer Res. 58, 2095-2097(1998)およびSato, et al., Cancer Res. 2000, 60:7052-7056、およびSato, et al., Cancer Res. 2000, 60: 7052-7056)。同様に、K‐RAS癌遺伝子も、より低い頻度にも関わらず、類内膜卵巣癌において変異している(Cuatrecasas, et al., Cancer (1998)82:1088-1095)。最近の研究で、卵巣表面上皮におけるこれら二つの変異の組み合わせが、完全な浸透度を有する浸潤性で広範囲に転移する類内膜卵巣癌を誘発することが明らかになり、これはヒト腫瘍進行を模倣するための良いモデルとなる。この遺伝子導入モデルにおいて、媒体で処置された動物はルシフェラーゼ発現により定量化されるとおり、速い腫瘍進行を示した。シスプラチン・ナノ粒子を用いた治療は、腫瘍進行の用量依存的な抑制をもたらし、より低い用量は1.25mg/kgと同等であり、遊離シスプラチンの3mg/kgの用量と同様の抑制を発揮した(図18)。より高い用量のシスプラチン・ナノ粒子(3mg/kgのシスプラチンと同等)による治療は、卵巣癌において臨床的使用が許可されている遊離シスプラチンと同じ用量で観察されるような著しい体重減少も無く、より強力な腫瘍抑制をもたらした(図18)。更に、TUNEL染色は、3mg/kgの遊離シスプラチンで腎臓において著しいアポトーシスを示したが、同一のPt濃度においてシスプラチン・ナノ粒子はネフロンのアポトーシスを誘発しなかった。
【0203】
実施例9:連続投与後におけるシスプラチン・ナノ粒子の体内分布
シスプラチン・ナノ粒子の体内分布を調査するために、本発明者らは、各動物が遊離薬剤またはシスプラチン・ナノ粒子を三回投与された連続投与実験の終わりに腫瘍を採集した。図19に示すように、遊離シスプラチンとして送達した場合と対照的に、ナノ粒子として投与した場合、乳癌および卵巣腫瘍の両方においてPtの優先的な蓄積が見られた。
【0204】
実施例10:PIMA‐GA‐オキサリプラチンを用いた治療の毒性評価
図23Bに見られるように、15mg/kgの遊離オキサリプラチンの用量では、全身毒性のために全ての動物に死がもたらされた。対照的に、オキサリプラチン・ナノ粒子の場合、この用量においても毒性は明らかとならなかった。
【0205】
実施例11:脂質‐シスプラチン共役体の合成計画
PMA‐GA‐シスプラチン共役体の他に、本発明者らは、マレイン酸がペグ化された脂質のPEG末端に共役した類似体(PEG2000‐DSPE)も設計した。発明者らは、Ptをマレイン酸に複合させ、Ptが親水性の末端に位置し、脂質が疎水性末端を形成する、白金結合された脂質誘導体の形成をもたらした。これらは水中でミセルを形成し、負荷効率は1mgの脂質誘導体当たり45μgである。この数値は低分子量PEGまたは脂質を使用することにより増加させることができる。図10を参照のこと。
【0206】
実施例12:シスプラチン‐脂質ナノ粒子
材料と方法
全ての反応は、他に記載が無い限り、不活性条件下で実施された。商業的に入手した化合物の全ては、更に精製すること無く使用した。DCM、乾燥DCM、メタノール、クロロギ酸コレステロール、コレステロール、エチレンジアミン、コハク酸無水物、硝酸銀、硫酸ナトリウム、ピリジン、シスプラチン、L‐a‐ホスファチジルコリン、セファデックスG‐25、および1,2‐フェニレンジアミンはSigma-Aldrichより購入した。1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン‐N‐[アミノ(ポリエチレングリコール)2000]および小型手持ち用押出機キット(Whatman社製の0.2μmNucleopore Track-Etch Membrane、Whatmanフィルターサポート、および1.0mL Hamiltonian注射器を含む)はAvanti Polar Lipids社より購入した。無水溶媒用DMFはAcros Organicsより供給された。リンタングステン酸は、Ted Pella社より入手した。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)は、EMD Laboratoriesより購入した予めコートされたシリカゲルアルミニウムシート60 F254を使用して実施した。TLCプレート上のスポットは、アルカリ性過マンガン酸塩または6%ニンヒドリン‐アセトン溶液を使用して可視化した。1H NMR(300MHz)スペクトルはVarian Mercury 300分光光度計を用いて測定した。化学シフトは、百万分率(ppm)として報告し、適した重水素化されたNMR溶媒を用いて、0ppmにあるTMSを参照とした。MTS試薬はPromegaより供給された。細胞生存率アッセイおよび放出動力学データは、GraphPad Prismソフトウェアを使用してプロットした。各サンプルにおいて三重に実施した。
【0207】
(11)の合成
1044μL(15等量)のエチレンジアミン(12)を5.0mLの無水DCMに溶解後、0〜5℃まで氷冷した。500.0mg(1.0等量)のクロロギ酸コレステロールを5.0mLの無水DCMに溶解し、これを15分かけて激しく攪拌しながら滴下により反応混合物に加え、室温に達するまで一晩攪拌を続けた。反応を水(50mL×3)およびDCM(50mL)でワークアップし、その後飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転式蒸発装置を利用して蒸発させた。薄黄色の透明な油性生成物(13)が99.1%の収率で分離された。

【0208】
15の合成
350mg(0.74mmol、1等量)の出発物質(13)を5.0mLの無水DCMに溶解した。これに370.0mg(3.7mmols、5等量)のコハク酸無水物(14)および触媒量のピリジンを加えた。攪拌を一日続けた後、0.1(N)HClおよびDCMで数回ワークアップを行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させることにより白色の無定形固体化合物(15)を得た。収率は95%であった。

【0209】
16の合成
50mg(0.166mmol、1等量)のシスプラチン(16)を10.0mLのH2O中に部分的に溶解した。これに28.0mg(0.166mmol、1等量)の硝酸銀を加え、その結果として得られる反応混合物を室温で一日攪拌した。これは乳白色に見え、塩化銀は25000×gで1時間遠心することにより除去した。7の合成:200mg(0.35mmol、1.0等量)の5は、5.0mLのDMFに溶解した。これに20.0mLの生成物6(濃度5.0mg/mL、1.0等量)を加え、一日攪拌した。凍結乾燥機を利用して反応混合物を乾燥させた。乾燥した生成物(17)は、更に精製すること無く、脂質‐ナノ粒子の合成に使用された。
【0210】
脂質‐ナノ粒子を合成するための一般的な手順
10.0mgのL‐a‐ホスファチジルコリン、5.0mgのコレステロール(またはPt(II)‐コレステロール共役体)、および1.0mgの1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン‐N‐[アミノ(ポリエチレングリコール)2000]を10.0mLのDCMに溶解した。回転式蒸発装置を利用してこれを乾燥させ薄い均一なフイルムを得た。ポンプを用いてしっかりと乾燥させた後、これを60℃で1.0mLのH2Oを用いて2時間水和させた。水和した脂質‐ナノ粒子は薄黄色から白色に見え、僅かな粘稠な質感を有した。これをセファデックスG‐25カラムに通し、65℃で押し出した。
【0211】
脂質‐ナノ粒子における一般的なPt(II)の定量方法
測定した量の押し出した脂質‐ナノ粒子をDMF中の濃度が1.2mg/mLの1,2‐フェニレンジアミンと2時間100℃で加熱した。Pt(II)の量はUV分光光度法(Shimadzu 2450)により計算した。
【0212】
放出動力学
濃縮された薬剤負荷脂質‐ナノ粒子は、緩衝液(または細胞可溶物)に懸濁され、透析膜(分子量カットオフが1000、Spectrum Lab)に封入した。透析袋を1.0mLのPBS緩衝液中、室温で、穏やかに震とうしながらインキュベートした。10μLのアリコートをインキュベートした培地から予定された時間間隔で回収し、放出された薬剤はUV分光光度法(Shimadzu 2450)により定量化された。結果は放出割合(パーセント)としてプロットした。
【0213】
TEMのための試料調製
高解像度TEM画像は、Jeol2011高コントラストデジタルTEMにより取得した。試料調製のために、レース状炭素300メッシュ銅グリッド(Electron Microscopy Science)を脂質‐ナノ粒子の水溶液に漬けた。これを風乾させた後、2%リンタングステン酸水溶液で染色した。脂質‐ナノ粒子の大きさの分布は、動的光散乱(DLS)により調査され、これはヘリウム・ネオン・レーザーを搭載したMalvern Zetasizer DLSシステムにおいて26℃で実施された。
【0214】
細胞生存率アッセイ
2×103固の細胞を96ウェルプレートに播種した。4時間後、様々な濃度の遊離薬剤または脂質‐ナノ粒子で細胞に処理を施した。未処理の細胞は、対照として保存した。48時間後、細胞生存率を、一般的なMTSアッセイをメーカーの使用説明書に従って用いることにより評価した。
【0215】
生体内における有効性および毒性の研究
100μLのPBS中の1×105個の4T1乳癌細胞がBALB/cマウスの右側腹部に皮下接種された。遊離またはナノ粒子に捕捉されている様々な抗癌剤による治療は、腫瘍の体積が200mm3に達した日に開始した。典型的には、動物は遊離薬剤のみまたはナノ粒子内の薬剤を静脈内経路により、一日おきに合計三回投与された。対照群において腫瘍の体積が2000mm3に達した時点で、マウスは屠殺された。腫瘍、腎臓、脾臓、肺、および肝臓を回収し、パラフィン包埋および切片法のために加工した。
【0216】
本明細書に引用される全ての特許および文献は、参照として組み入れられる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー骨格;
該骨格に共有結合した複数の側鎖;および
解離できる状態で該側鎖に連結した複数の白金化合物
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
【請求項2】
上記複数の白金化合物が、Pt(II)化合物、Pt(IV)化合物、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
少なくとも一つの上記複数の白金化合物が、少なくとも一つの配位結合を介して上記側鎖に連結している、請求項1または2記載のナノ粒子。
【請求項4】
上記配位結合が、側鎖の酸素と白金化合物の白金原子との間の結合である、請求項3記載のナノ粒子。
【請求項5】
上記酸素がカルボニル酸素である、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
上記酸素がアミド酸素である、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項7】
上記コポリマーがマレイン酸単量体を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項8】
マレイン酸の少なくとも一つのカルボン酸がアミドに誘導体化された、請求項7記載のナノ粒子。
【請求項9】
上記コポリマーがポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)(PIMA)である、請求項1〜8のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項10】
上記コポリマーが2〜100単量体単位を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項11】
上記コポリマーが25〜50単量体単位を含む、請求項1〜10のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項12】
上記側鎖が、ポリマー、単糖類、ジカルボン酸類、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項13】
上記側鎖がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1〜12のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項14】
上記PEG側鎖の分子量が100〜5000ダルトンである、請求項13記載のナノ粒子。
【請求項15】
上記PEG側鎖の分子量が1000〜3000ダルトンである、請求項13記載のナノ粒子。
【請求項16】
上記PEG側鎖の分子量が約2000ダルトンである、請求項13記載のナノ粒子。
【請求項17】
上記側鎖が単糖類である、請求項1〜12のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項18】
上記単糖類がグルコサミンである、請求項17記載のナノ粒子。
【請求項19】
上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、請求項1〜18のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項20】
上記白金(II)化合物がシスプラチンである、請求項19記載のナノ粒子。
【請求項21】
上記白金化合物がオキサリプラチンである、請求項19記載のナノ粒子。
【請求項22】
側鎖の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間に相当する、請求項1〜21のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項23】
上記側鎖の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の90%よりも多い数に相当する、請求項1〜22のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項24】
上記白金化合物の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の10%と100%との間に相当する、請求項1〜23のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項25】
上記白金化合物の数が、上記ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間に相当する、請求項1〜24のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項26】
上記側鎖がジカルボン酸類を含む、請求項1〜25のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項27】
上記ジカルボン酸類が式HOOC‐R‐COOHを有するものであり、式中RがC1‐C6アルキル、C2‐C6アルケニル、またはC2‐C6アルキニルである、請求項26記載のナノ粒子。
【請求項28】
上記ジカルボン酸がマレイン酸である、請求項27記載のナノ粒子。
【請求項29】
25〜50単量体単位を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のPEG側鎖であって、分子量が1000〜3000ダルトンであり、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間に相当する、PEG側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
【請求項30】
40個の単量体からなるポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のPEG側鎖であって、分子量が2000ダルトンであり、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の90%よりも多い、PEG側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
【請求項31】
25〜50個の単量体を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のグルコサミン側鎖であって、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の数の50%と100%との間である、グルコサミン側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%と75%との間である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
【請求項32】
25〜50個の単量体を含むポリ(イソブチレン‐alt‐マレイン酸)骨格;
該骨格に共有結合した複数のグルコサミン側鎖であって、数が上記ポリマー骨格の単量体単位の90%よりも多い、グルコサミン側鎖;および
解離できる状態で上記骨格に連結した複数のシスプラチン側鎖であって、数が該ポリマー骨格の単量体単位の数の25%および75%を含めたその間の数である、シスプラチン側鎖
を含む、生体適合性共役ポリマーナノ粒子。
【請求項33】
カルボン酸‐白金化合物複合体;および
複数の脂質‐ポリマー鎖
を含む、カルボン酸‐白金化合物複合体共役ナノ粒子であって、上記カルボン酸‐白金化合物複合体のカルボン酸部分が上記脂質‐ポリマー鎖に共有結合している、カルボン酸‐白金化合物複合体共役ナノ粒子。
【請求項34】
カルボン酸がマレイン酸である、請求項33記載のナノ粒子。
【請求項35】
ポリマーがPEGである、請求項33〜34のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項36】
上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、請求項33〜35のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項37】
Pt(II)化合物がシスプラチンである、請求項36記載のナノ粒子。
【請求項38】
白金化合物の負荷が1%〜30%である、請求項33〜37のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項39】
白金化合物の負荷が1%〜6%である、請求項33〜38のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項40】
請求項33〜39のいずれか一項記載のナノ粒子を複数含む、小胞、ミセル、またはリポソーム化合物。
【請求項41】
下記の構造を有するジカルボニル‐脂質化合物:


【請求項42】
請求項41記載のジカルボニル‐脂質化合物および白金化合物を含む小胞、ミセル、リポソーム、またはナノ粒子化合物であって、白金化合物が解離できる状態で請求項41記載の化合物に連結している、小胞、ミセル、リポソーム、またはナノ粒子化合物。
【請求項43】
上記白金化合物が、Pt(II)化合物、Pt(IV)化合物、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項42記載のナノ粒子。
【請求項44】
上記白金化合物が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、パラプラチン、サトラプラチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるPt(II)化合物である、請求項43記載のナノ粒子。
【請求項45】
上記白金(II)化合物がシスプラチンである、請求項43記載のナノ粒子。
【請求項46】
上記白金化合物がオキサリプラチンである、請求項43記載のナノ粒子。
【請求項47】
生体適合性ポリマーを含むナノ粒子化合物であって、該ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する少なくとも一つのモノマーを含み、式中Rは結合、C1‐C6アルキレンであり、アルキレンは一つまたは複数の二重結合または三重結合を含むことができ;R'は置換された窒素原子であり、好ましくはRは結合である、ナノ粒子化合物。
【請求項48】
上記ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する2〜100単量体単位を含む、請求項47記載のナノ粒子。
【請求項49】
上記ポリマーが、式‐CH(CO2H)‐R‐CH(C(O)R')‐を有する25〜50単量体単位を含む、請求項47〜48のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項50】
R'が

または‐NH(CH2CH2O)mCH3であり、式中mは1〜150である、請求項47〜49のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項51】
生物活性剤をさらに含む、請求項47〜50のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項52】
請求項1〜51記載のナノ粒子または化合物;および
薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物。
【請求項53】
請求項1〜52のいずれか一項記載の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、癌または転移を治療する方法。
【請求項54】
上記癌または転移が、白金感受性または白金抵抗性の腫瘍からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
上記癌または転移が、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、精巣癌、膵臓癌、口腔食道癌、胃腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、肺癌、メラノーマ、皮膚癌、サルコーマ、血液癌、脳腫瘍、神経膠芽腫、神経外胚葉に由来する腫瘍、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
白金化合物を対象における特定の位置で徐放する方法であって、請求項1〜52のいずれか一項記載の組成物をその位置に供給する工程を含む方法。
【請求項57】
組成物がゲルの形態である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
上記位置が腫瘍である、請求項56〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
上記組成物を供給する前に腫瘍が除去されている、請求項58記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図14H】
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【図14I】
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【図14J】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図29D】
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【図29E】
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【公表番号】特表2012−516898(P2012−516898A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549262(P2011−549262)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/023217
【国際公開番号】WO2010/091192
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【Fターム(参考)】