ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面の液体の移動を制御するための方法および装置

【課題】ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面に置かれた小滴の移動が、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの少なくとも1つの特性または小滴の少なくとも1つの特性によって決定される方法および装置を提供する。
【解決手段】小滴の横方向の移動が、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの少なくとも1つの特性によって、小滴がナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに沿って所望の方向に移動するように決定される。他の実施形態では、小滴の移動が、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの少なくとも1つの特性または小滴の少なくとも1つの特性によって、小滴が所望の領域のフィーチャ・パターンに侵入し、そこで実質的に不動化するように決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、極めて小さな所定の表面フィーチャを有する表面に置かれた液体の移動に関し、詳細には、所定のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ・フィーチャを有する表面に置かれた液体の移動の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
無数の応用例における有益な多くの装置または構造が、少なくとも1つの固体表面と接触した液体を有することを少なくともその特徴の1つとしている。例えば、表面またはチャネルの中に置かれた小液滴は、多くのマイクロフルイディクス装置、生物/化学センサ、化学反応器、光学部品、熱放散装置およびパターン形成応用例の特徴である。これらの装置および応用例の多くは、表面と接触したまま液体が移動し、または表面と接触させたまま液体を移動させることを特徴としている。液体と表面の相互作用は液体および表面の特性によって決まるため、液体と表面の相互作用を制御するためには、液体および表面の特性を理解し制御することがしばしば望ましい。これは特に、問題の応用例が比較的に少量の液体を含むときにそうである。
【0003】
図1に、液体マイクロレンズ101が形成されるように表面に置かれた小液滴102の例示的な従来技術の一実施形態を示す。このような液体マイクロレンズは、2001年6月19日出願の「Tunable Liquid Microlens」という名称の同時係属米国特許出願第09/884605号、および2001年9月13日出願の「Tunable Liquid Microlens With Lubrication Assisted Electrowetting」という名称の同時係属米国特許出願第09/951637号の主題となっている。これらの同時係属特許出願はともに、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。図1のマイクロレンズ実施形態は、小液滴および表面がマイクロレンズまたは他の応用例の構成要素であるか否かに関わらず、小液滴と小液滴が置かれた表面との間の相互作用を説明するのに有効である。図1では、小滴102が、数マイクロメートルから数ミリメートルの直径を一般に有する(ただし他の直径も可能である)水などの透明な液体の小滴である。小滴は、一般に疎水性の、または疎水性コーティングを含んだ透明な基板103の上に置かれている。小滴と基板の間の接触角θは、ミリニュートン毎メートル(mN/m)で一般に示される界面張力「γ」(これは界面エネルギーとしても知られている)によって決まる。本明細書において、γS−Vは、基板103と基板の周囲の空気、ガスまたは他の液体との間の界面張力、γL−Vは、小滴102と小滴の周囲の空気、ガスまたは他の液体との間の界面張力、γS−Lは、基板103と小滴102の間の界面張力である。接触角θは下式(1)から決定することができる。
式(1) cosθ=(γS−V−γS−L)/γL−V
式(1)は、小液滴がマイクロレンズとして使用されるか否かに関わらず、小滴が表面に置かれている場合に適用される。
【0004】
図1のマイクロレンズ実施形態および液体が表面に置かれる他の形態では、小滴の形状を変化させることができることがしばしば望ましい。図2に、エレクトロウェッティング(electrowetting)現象を使用し、導電性液体の小滴202と厚さ「d」、比誘電率εの誘電絶縁層203との間の接触角θを可逆的に変化させることによって小滴の形状を変化させる、図1のマイクロレンズに似た従来技術のマイクロレンズ201を示す。誘電層203の下には金属電極204などの電極が配置されており、電極は誘電層によって小滴202から絶縁されている。小滴202は例えば水滴とすることができ、誘電絶縁層203は例えばTeflon/Parylene表面とすることができる。
【0005】
小滴202と電極204の間に電圧差がないとき、小滴202は、小滴の体積と接触角θとによって規定されるその形状を維持する。θは、先に説明したとおり界面張力γによって決まる。電極204に電圧Vが加わると、電極204と小滴202との電圧差によって小滴が広がる。破線205は、小滴202が、電極204に関するその中央位置から層203に沿って均等に広がるようすを示している。具体的には、電極204と小滴202の間に電圧が印加されると、接触度θがθからθに低下する。小滴の異なる部分の下に別個の電極を使用し、それらの個々の電極への電圧を変化させることによって、小滴がその中央位置から別の所望の位置へ移動するような小滴の広がりを達成することができる。このような移動は、前述の同時係属米国特許出願第09/884605号および第09/951637号に記載されている。小滴の形状を変化させるのか、または小滴の位置を変化させるのかに関わらず、この広がりを達成するのに必要な電圧Vは例えば数ボルトから数百ボルトである。広がりの量、すなわちθとθの差によって決まる広がりの量は印加電圧Vの関数である。接触角θは下式(4)から求めることができる。
【0006】
式(4) cosθ(V)=cosθ(V=0)+V(εε)/(2dγL−V
上式で、cosθ(V=0)は、小滴202と電極204の間に電圧が印加されていないときの絶縁層203と小滴202の間の接触角、γL−Vは先に説明した小滴の界面張力、εは絶縁層203の比誘電率、εは、真空の誘電率8.85×10−12F/Mである。
【0007】
先に説明した液体マイクロレンズなどの実施態様では、小滴が置かれた表面は疎水性であるものの、その特性は、表面と接触する領域で小滴がかなり平らになるというものである。したがって、結果として生じる表面と小滴の間の大きな接触面積のため、表面と小滴の間にはかなりの量の流動抵抗が存在する。上述のマイクロレンズではこのほうが望ましい。なぜなら、流動抵抗が小さすぎる場合には、小滴が自由に移動し、小滴を制御する別の手段がない限り、小滴を所望の静止位置に維持し、または所望の形状に保つことが不可能になってしまうからである。しかし多くの場合、表面の液体が受ける流動抵抗を低減させることが望ましい。
【0008】
したがって、このような表面に置かれた液体に依存する最近の応用例は、液体に発揮される前述の流動抵抗を低減することに集中している。先に挙げた装置などの多くの装置は、結果的に装置の動作時電力消費が相当に低減するため、このような低い流動抵抗から恩恵を得ることができる。このような1つの応用例が、「Nanostructured Surfaces for Dramatic Reduction of Flow Resistance in Droplet−based Microfluidics」、J.KimおよびC.J.Kim、IEEE Conf.MEMS、米ネバダ州ラスべガス、2002年1月、479〜482ページに記載されている。この文献はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。この文献には全般的に、所定のナノストラクチャ・フィーチャを有する表面を使用することによって、表面と接触した液体の流動抵抗を大幅に低減する方法が記載されている。
【0009】
この文献には、液体と接触した表面を細かくパターニングし、かつ先に述べた液体の表面張力の原理を使用することによって、表面と液体の間の接触面積を大幅に低減できることが教示されている。その結果、表面の液体の流動抵抗も対応して低減する。
【0010】
図3A〜3Fに、極めて細かいフィーチャを有する異なるマイクロストラクチャおよびナノストラクチャ表面パターンから、表面と小液滴の間の異なる接触角がどのように生じるのかを示す。図3Aおよび3Bはそれぞれ、マイクロライン(microline)表面およびマイクロポスト(micropost)表面を示している。図3Aのライン301の幅はおよそ3〜5マイクロメートル、図3Bのマイクロポスト302の直径は、最も太いところでおよそ3〜5マイクロメートルである。このマイクロライン・パターンとマイクロポスト・パターンを比べると、それぞれの表面に置かれた所与のサイズの小滴に関して、小滴とマイクロライン・パターンとの接触面積は、小滴とマイクロポスト・パターンとの接触面積よりも大きい。図3Dおよび3Eはそれぞれ、図3Aのマイクロライン表面および図3Bのマイクロポスト表面に対する小滴の接触角を示している。マイクロライン・パターン上の小滴305の接触角303(〜145度)は、マイクロポスト・パターンと小滴306の接触角304(〜160度)よりも小さい。その結果、先に述べたとおり、マイクロライン・パターンが小滴に対して発揮する流動抵抗は、マイクロポスト・パターンが小滴に対して発揮する流動抵抗よりも大きくなる。
【0011】
図3Cに、マイクロラインおよびマイクロポスト・パターンよりもさらに細かいパターンを示す。具体的には図3Cは、それぞれのナノポスト309が1マイクロメートル未満の直径を有するナノポスト(nanopost)パターンを示している。図3Cには、多少なりとも円錐形に形成されたナノポスト309が示されているが、他の形状およびサイズも実施可能である。実際に、それぞれのナノポストが10nm未満の直径を有する円筒形ナノポストのアレイもすでに製作されている。具体的に図4A〜4Eに、さまざまな方法を使用して製作された異なる例示的な配列のナノポストを示す。これらの図はさらに、このようなさまざまな直径のナノポストを、さまざまな程度の規則性で形成することができることを示している。これらの図はさらに、さまざまな直径を有するナノポストをさまざまな間隔で製作することができることを示している。2001年2月13日にTonucci他に発行された「Nanopost arrays and process for making same」という名称の米国特許第6185961号に出ているナノポストを製作する例示的な一方法はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ナノポストは、テンプレートを使用し、さまざまなリソグラフィ手段およびさまざまなエッチング方法によってポストを形成する方法など、さまざまな方法によって製作されている。
【0012】
図3Fを参照する。図3Cのナノポストの表面に置かれた小滴307はほぼ球形であり、表面と小滴の間の接触角308は175度から180度である。この表面に置かれた小滴307は流動抵抗をほとんど受けない。この極めて低い流動抵抗のため、このナノストラクチャ表面で水滴を静止させておくことはほぼ不可能となるので、前掲のKim他の文献でも触れられているように、このような表面に小滴を配置しようとするこれまでの試みは問題をはらんでいた。この低い流動抵抗の理由は、図5に示すように、(表面構造に応じた)適当な液体の小滴501の表面張力によって、小滴501がナノポストの先端に載ることが可能になり、小滴と基底の固体表面とが接触しないことにある。その結果、小滴と表面の間の接触面積が極めて小さくなり(すなわち小滴はそれぞれのポスト502の先端としか接触しない)、したがって流動抵抗が小さくなる。
【0013】
したがって、前掲のKim他の文献に模範的に教示されているように、ナノストラクチャを使用して液体の流動抵抗を低減しようとするこれまでの試みは、細いチャネル、管、または小滴の自由移動を定められた領域の範囲内に制御する他の囲いの中に小滴を配置することに限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第09/884605号
【特許文献2】米国特許出願第09/951637号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Nanostructured Surfaces for Dramatic Reduction of Flow Resistance in Droplet−based Microfluidics」、J.KimおよびC.J.Kim、IEEE Conf.MEMS、米ネバダ州ラスべガス、2002年1月、479〜482ページ
【特許文献3】米国特許第6185961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ・フィーチャ・パターン上に小液滴を有利に配置しようとするこれまでの試みは、範囲の制限されたチャネルの中に小滴を配置することに限定されているが、小液滴をチャネルの中に入れることなく、ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面に置かれた小滴の移動を制御することができれば極めて有利であると思われる。さらに、小液滴とナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面との間の界面の特性、例えばナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面との間の接触面積の結果として液体に対して発揮される流動抵抗の量を制御することができれば特に有利であると考えられる。さらに、多くの応用例で、ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面の内部への小滴の侵入の程度を制御することができれば非常に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者らは、ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面に置かれた小液滴の移動が、表面のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ・フィーチャ・パターンの後に定義する少なくとも1つのパターン内特性、あるいは小滴の少なくとも1つの特性によって決定される方法および装置を発明した。一実施形態では、小滴の横方向の移動が、ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ・フィーチャ・パターンの少なくとも1つの特性によって、小滴がフィーチャ・パターンに沿って所望の方向に移動するように決定される。この移動を達成するために例えば、ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャのサイズ、形状、密度または電気特性が、小滴の前縁の接触角が小滴の後縁の接触角よりも小さくなるように設計される。
【0018】
他の実施形態では小滴の移動が、フィーチャ・パターンの少なくとも1つのパターン内特性または小滴の少なくとも1つの特性によって、小滴が所望の領域のフィーチャ・パターンに侵入し、そこで不動化するように決定される。この特性は例えば、小滴の表面張力、小滴またはパターンの温度、あるは小滴とフィーチャ・パターンの間の電圧差とすることができる。
【0019】
本発明のこれらの実施形態の一方または両方は、例えば生物またはマイクロ化学検出器、化学反応器、パターン形成応用例、調整可能な回折格子、全内部反射ミラー、マイクロフルイディクス・ミキサ、マイクロフルイディクス・ポンプ、熱放散装置など、さまざまな応用例に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板の表面に置かれた液体の相互作用を示す従来技術のマイクロレンズ装置を示す図である。
【図2】図1のマイクロレンズとともに使用される従来技術のエレクトロウェッティング原理を使用して、基板に沿った所定の方向に小滴を移動させる方法を示す図である。
【図3A】従来技術のマイクロライン表面を示す図である。
【図3B】従来技術のマイクロポスト表面を示す図である。
【図3C】従来技術のナノポスト表面を示す図である。
【図3D】図3Aの従来技術の表面に置かれた小液滴、ならびに小滴と表面の間に生じる対応する接触角を示す図である。
【図3E】図3Bの従来技術の表面に置かれた小液滴、ならびに小滴と表面の間に生じる対応する接触角を示す図である。
【図3F】図3Cの従来技術の表面に置かれた小液滴、ならびに小滴と表面の間に生じる対応する接触角を示す図である。
【図4A】本発明で使用するのに適した予め画定されたナノストラクチャからなる従来技術のさまざまなナノストラクチャ・フィーチャ・パターンを示す図である。
【図4B】本発明で使用するのに適した予め画定されたナノストラクチャからなる従来技術のさまざまなナノストラクチャ・フィーチャ・パターンを示す図である。
【図4C】本発明で使用するのに適した予め画定されたナノストラクチャからなる従来技術のさまざまなナノストラクチャ・フィーチャ・パターンを示す図である。
【図4D】本発明で使用するのに適した予め画定されたナノストラクチャからなる従来技術のさまざまなナノストラクチャ・フィーチャ・パターンを示す図である。
【図4E】本発明で使用するのに適した予め画定されたナノストラクチャからなる従来技術のさまざまなナノストラクチャ・フィーチャ・パターンを示す図である。
【図5】ナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に小液滴が配置された例示的な従来技術の装置を示す図である。
【図6】図4Cの従来技術のナノストラクチャ・フィーチャ・パターンをより詳細に示す図である。
【図7A】図6のナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に置かれた異なる表面張力を有するさまざまな液体の小滴を示す図である。
【図7B】図6のナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に置かれた異なる表面張力を有するさまざまな液体の小滴を示す図である。
【図7C】図6のナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に置かれた異なる表面張力を有するさまざまな液体の小滴を示す図である。
【図7D】図6のナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に置かれた異なる表面張力を有するさまざまな液体の小滴を示す図である。
【図8A】図7Aの小滴およびナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの断面を示す図である。
【図8B】図7Cの小滴およびナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの断面を示す図である。
【図9A】図2のエレクトロウェッティング原理を使用してナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに小液滴を侵入させる本発明の原理に基づく装置を示す図である。
【図9B】図2のエレクトロウェッティング原理を使用してナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに小液滴を侵入させる本発明の原理に基づく装置を示す図である。
【図10】図9Aおよび9Bのナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの例示的なナノポストの詳細を示す図である。
【図11】ナノポストの密度が異なるナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に小滴を配置することによって、ナノポストの密度が最も高い領域に向かって小滴を移動させる方法を示す図である。
【図12】のこぎり歯パターンに配置されたナノポストを有するナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に小滴を配置することによって、そのパターンに対して既知の方向に小滴を移動させる方法を示す図である。
【図13A】本発明の原理に基づく化学または生物検出器を示す図である。
【図13B】本発明の原理に基づく化学または生物検出器を示す図である。
【図14】図13Aおよび13Bの検出器を、複数の元素または合成物を検出することができるアレイに配置する方法を示す図である。
【図15】本発明の原理に従ってパターンを製作する方法を示す図である。
【図16A】本発明の原理に基づく回折格子を示す図である。
【図16B】本発明の原理に基づく回折格子を示す図である。
【図17A】本発明の原理に基づく全反射(TIR)ミラーを示す図である。
【図17B】本発明の原理に基づく全反射(TIR)ミラーを示す図である。
【図18A】本発明の原理に基づくマイクロフルイディクス・ミキサを示す図である。
【図18B】本発明の原理に基づくマイクロフルイディクス・ミキサを示す図である。
【図18C】本発明の原理に基づくマイクロフルイディクス・ミキサを示す図である。
【図19】本発明の原理に基づく熱放散装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図6に、複数のナノポスト602からなるナノストラクチャ・フィーチャ・パターンがその上に配置された例示的な既知の表面601を示す。本明細書の説明全体を通じて、ナノポストまたはナノストラクチャの使用に適用される同じ原理を、マイクロポストまたはフィーチャ・パターン中のより大きな他のフィーチャに同様に適用することができることを当業者は理解されたい。図6の表面601およびナノポスト602は例えばシリコンから作られる。図6のナノポスト602の直径は例えば約350nm、高さは例えば約6μm、互いの間隔は中心−中心で例えば約4μmである。このようなアレイは規則的な間隔で、あるいは不規則な間隔で製作することができることは当業者には自明である。
【0022】
図7A、7B、7Cおよび7Dに、図6の例示的な表面601に置いたときのさまざまな液体の振る舞いを示す。図7Aは、表面張力(γ)72mN/mの水滴701を表面601に置くと、前述の理由から水滴701はほぼ球形を保つことを示している。図7B、7Cおよび7Dは、それぞれの小液滴702、703および704に関して、表面張力が小さいほど(それぞれエチレングリコール[γ=47mN/m]、シクロペンタノール[γ=33mN/m]、およびオクタノール[γ=27mN/m])、小滴がより広い面積にわたってより大きく広がることを示している。最も小さい表面張力を有する小滴(小滴704)が最も大きく広がっている。
【0023】
特に明記しない限り、本明細書で使用するとき、「ナノストラクチャ」は、少なくとも1つの寸法が1マイクロメートル未満である予め画定された構造であり、「マイクロストラクチャ」は、少なくとも1つの寸法が1ミリメートル未満である予め画定された構造である。用語「フィーチャ・パターン」は、マイクロストラクチャのパターンまたはナノストラクチャのパターンを指す。さらに、本明細書では用語「液体」、「小滴」および「小液滴」が互いに交換可能に使用される。これらの用語はいずれも液体または液体の一部分を指し、それが小滴の形態をとっているか否かは無関係である。さらに、本明細書で使用される媒質は、後に論じるように、その中に生物または化学要素が存在することができる気体または液体である。最後に、本明細書で使用されるパターン内特性は、a)他の要素と比較した個々のフィーチャ・パターン要素の特性(パターン全体の向きなどのフィーチャ・パターンのマクロ特性であるパターン間特性とは対照をなす)、またはb)形状、サイズ、高さ、電気特性などの個々のフィーチャ・パターン要素のある種の特性と定義される。
【0024】
図8Aおよび8Bに、図6のナノストラクチャ表面601と異なる液体の小滴との間の相互作用を説明する断面図を示す。図8Aは例えば図7Aの水の小滴701を表す。水の比較的に高い表面張力ならびにナノストラクチャのパターン内特性のため、小滴701はナノポスト602(図6に詳細に示されている)の先端に載っており、先に論じたとおり、小滴701とナノストラクチャ表面601の間の非常に大きな接触角を有する。そのため、小滴701は非常に小さな流動抵抗しか受けない。図8Bは例えば、図7Cのシクロペンタノールの小滴703を表す。図8Aの水滴701と比べると、シクロペンタノールの小滴703はナノポスト602の先端には載っていない。その代わりに、この液体の比較的に低い表面張力のため小滴703は表面601に完全に侵入し、これによってナノポスト602の下にある固体表面と接触する。この小滴の接触角は図8Aの小滴701のそれに比べて小さく、また、ナノストラクチャ表面601に完全に侵入しているために相対的に大きな流動抵抗を受ける。
【0025】
所与のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面への所与の液体の侵入を制御することができ、したがって、液体に発揮される流動抵抗および固体表面の濡れ特性を制御することができることが望ましいと本発明の発明者らは考えた。図9Aおよび9Bに、図2の例示的なマイクロレンズで使用されるものと同様のエレクトロウェッティングを使用してナノストラクチャ表面への液体の侵入を制御する本発明の原理に基づく一実施形態を示す。
【0026】
図9Aを参照すると、円錐形ナノポスト902のナノストラクチャ・フィーチャ・パターン上に導電性液体の小滴901が先に説明したように置かれており、小滴901の表面張力の結果、ナノポスト902の上部に小滴が載っている。この配置では、小滴はそれぞれのナノポストの表面積fを覆うだけである。ナノポスト902は導電性基板903の表面によって支持されている。小滴901は例えば、電圧源905を有するリード線904を介して基板903に電気的に接続されている。図10に例示的なナノポストを詳細に示す。この図では、誘電材料の絶縁層などの材料1001によってナノポスト902が液体(図9Aの901)から電気的に絶縁されている。ナノポストはさらに、周知のフルオロ・ポリマーなどの低表面エネルギー材料1002によって液体から分離されている。このような低表面エネルギー材料によって、液体とナノポストの表面との間の適当な初期接触角を得ることができる。当業者には自明であろうが、異なる材料からなる別個の2つの層を使用する代わりに、十分に低い表面エネルギーおよび十分に高い絶縁特性を有する単一の材料層を使用することもできる。
【0027】
図9Bに、導電性の小液滴901に低い電圧(例えば10〜20ボルト)を印加することによって液体901とナノポスト902の間に電圧差を生じさせたところを示す。液体とナノポストの表面との間の接触角は小さくなり、接触角が十分に小さくなると、小滴901はナノポスト902の表面に沿ってy方向下方へ移動し、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンへ侵入し、ついにはそれぞれのナノポスト902を完全に取り囲み、基板903の上面と接触する。この構成では、小滴がそれぞれのナノポストの表面積fを覆う。f≫fなので、小滴901とナノポスト902の間の全接触面積は相対的に大きく、したがって小滴901が受ける流動抵抗は図9Aの実施形態よりも大きい。したがって、小滴901をフィーチャ・パターンから除去する十分な他の力がない限り、小滴901は図9Bに示すように、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに対して効果的に静止する。
【0028】
図11に、小滴をy方向に移動させてナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに侵入させる代わりに、小滴1101がx方向1104に横へ移動するようにナノストラクチャ(この例示的な実施形態ではナノポスト1102)が配置された、本発明の原理に基づく例示的な装置を示す。具体的には、ナノポスト1102の密度がx方向1104に増大するようにナノポスト1102が配置されている。この増大した密度によって、小滴の前縁1105の接触角は小滴の後縁1106の接触角よりも小さくなる。縁1105の相対的に小さな接触角によって小滴1101に加えられるx方向の力は、縁1106の相対的に大きな接触角によって小滴1101に加えられるx方向の力よりも小さくなる。小液滴1101は平衡に達しようとするので、小滴1101は、ナノポスト1102の密度が高い領域に向かってx方向1104に「横すべり」する。したがって、液体を配したい表面上の位置に最も高い密度のナノポストを配置することによって、最初に小滴を表面上の別の位置に配置することができ、次いでこの小滴が、最も密度の高い領域に向かって自発的に移動する。
【0029】
図11の例示的な実施形態によって達成される移動は、小滴を、ナノストラクチャ密度の最も高い領域である最終的な平衡位置まで移動させるが、この移動を逆転させて最も高い密度の領域から移動するようにすることが望ましいこともある。図12に、このような反転可能な移動を可能にする本発明の原理に基づく一実施形態を示す。具体的には図12は、のこぎり歯形に配置されたナノストラクチャ1207を有する表面に置かれた小滴1201を示している。平衡すると小滴は、図8Aによって例示したパターンなどのナノポスト・フィーチャ・パターンと同じように位置Bで静止する。しかし、小滴1201に周期的な励振を加えると、小滴1201は方向1204に横すべりし始める。このような周期的な励振は例えば、特定のナノストラクチャ1207に印加する交流電圧によって、あるいは小滴1201の平衡を乱す振幅および周波数の超音波によって作り出すことができる。多くの異なる電圧、ならびに音波の周波数および振幅を使用して、小滴1201の平衡を乱すのに必要な力を生み出すことができることを当業者は理解しよう。さらに、この励振は多くの異なる方法によって生み出すことができることも当業者には自明であろう。
【0030】
小滴1201の移動が始まるのは、平衡が乱されると小滴の接触箇所のサイズが周期的に変化し、したがって小滴1201の縁1205および1206が、フィーチャ・パターンのナノストラクチャ1207の上で前後に移動するためである。しかし、ナノストラクチャ1207の形状が非対称であるために、表面に対する小滴の縁1206の接触角ヒステリシスが縁1205の接触角ヒステリシスよりも小さくなる。言い換えると、小滴1201にとって、表面上を前後に移動する際に、例えばフィーチャ1208の垂直面1211を乗り越えて移動することは、フィーチャ1208の面1212を乗り越えて移動することに比べてはるかに難しい。したがって、小滴がいったん特定のナノストラクチャを方向1204へ横切ると、小滴は反対方向に戻りにくくなり、そこで位置Dなどの新しい平衡位置を確立する。(超音波などの)周期的な励振を継続した場合、小滴は、次のナノストラクチャ1213を方向1204に横切るまで表面を横切って前後に移動し続ける。ナノストラクチャ1213を横切ってしまうと小滴は再び後戻りしにくくなり、方向1204の別の新しい平衡位置を獲得する。その結果、この周期的な励振を続けることによって小滴は方向1204に確率的に移動する。
【0031】
図12の実施形態を、例えば図11の実施形態に示したようなナノストラクチャの高密度領域と組み合わせることによって、小滴1201の反転可能な横方向の移動を達成することができる。例えば、図12を再び参照すると、ナノストラクチャ1207の高密度領域がこの表面の位置Aにある場合、対抗する力がなければ小滴1201は、先に述べたように位置Aに向かって移動する傾向を示す。しかし、図12の例示的なのこぎり歯パターンを例えば超音波によって生み出された力ととともに使用して小滴1201の平衡を乱した場合、位置A(高密度ナノストラクチャ)に向かって小滴を移動させる力は打ち消され、小滴1201は表面上の位置Cに向かって方向1204へ移動する。平衡を乱す力を除去した場合(すなわち超音波源をオフにした場合)、小滴1201は、位置Aの最も高い密度のナノストラクチャの方へ向かって再び移動する傾向を示す。このようにして反転可能な横方向の移動が達成される。
【0032】
図9A、9B、10、11および12の例示的な実施形態は累積的に、本発明の原理を使用することによって、小液滴を表面に沿って横方向へほぼ流動抵抗なしに希望どおりに移動させることができ、さらに、小滴を垂直方向に移動させて、小滴が所定の位置で表面に侵入しそこで事実上静止するようにすることができることを示している。このような移動が可能であることで多くの応用例が考えられる。一例として、図13Aおよび13Bに、本発明の原理を使用した生物または化学検出器の一実施形態を示す。図13Aを参照すると、図9Aに示したナノストラクチャと同様のナノストラクチャ1302の上に小滴1301が置かれている。表面1304には、所望の生物または化学合成物1303を検出することができる検出器1306が置かれている。小滴1301の液体およびナノストラクチャ1302は、所望の量の所望の合成物1303が液体に入ると、液体の表面張力が低下し、液体1301が図13Bに示すようにナノストラクチャ・パターンに侵入し、検出器1306と接触するように選択されている。合成物1303が検出器1306と接触したときには、電気信号を生成する、検出器の色を変化させるなどの周知の方法によって、このような接触の指示を生み出すことができる。
【0033】
検出器として使用する他に、図13Aおよび13Bの実施形態は、所望の化学反応を達成する方法としても使用することができることは当業者には明らかである。例えば、図13Aを再び参照すると、液体がすでに化合物1303を含むように小滴1301の液体を選択することができる。この実施形態の検出器1306は、元素または化合物1303と接触したときに所望の反応を達成する所望の反応物から形成される。これらの検出器/反応物1306は、図13Bに示すように小液滴がナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに侵入したときに、この2つの化学物質が互いに接触し所望の反応が起こるよう、ナノストラクチャの間に配置される。先に(例えば図9Aおよび9Bに関連した議論で)説明したとおり、小滴は、小滴に電圧を印加することによって、あるいは小液滴1301の表面張力(したがって小液滴1301がナノストラクチャの表面と形成する接触角)を低下させるある方法、例えば小液滴1301の温度を高くするなどの方法を使用することによってフィーチャ・パターンに侵入させることができる。
【0034】
図14に、図13Aおよび13Bの例示的な実施形態の可能な一配置を示す。この配置は、化学/生物検出器としても、または化学反応応用例でも使用することができる。具体的には、液体を、その表面上でパターン形成された所定の配置のナノストラクチャを有するアレイ1402の表面を横切って方向1401に流すことができる。それぞれの領域1403は例えば、例えば別の化学/生物合成物を検出しまたはこれと反応するのに適した(図13Aおよび13Bの1306などの)検出器/反応物を、ナノストラクチャの間に有することができる。したがって、検出器として使用する場合には、図14のアレイ1402を使用して複数の異なる化合物を検出することができる。化学反応器として使用する場合には、所望の反応を達成するある種の化合物とだけ反応するように、それぞれの領域を設計することができる。
【0035】
本発明の原理の他の使用を図15に例示的に示す。具体的には図15は、本発明の原理を利用して表面に所望のパターンを選択的にパターニングする方法を示している。この図では、ナノストラクチャ・フィーチャを特徴とする基板1506の表面に、所望のパターン(このケースでは星形パターン1502、1503、1504および1505)が画定されている。このようなパターニング応用例の望ましい目標は、パターン1502〜1505の中に液体を移動させ、それをその中にとどまらせることである。この目標を実施する1つの方法は、先に説明した周知の電圧差エレクトロウェッティングを、基板を横切って方向1501に流れる液体と星形パターン1503および1505の中のナノストラクチャとの間で使用する方法である。表面を横切るとき、液体は、これらの2つのパターンのナノストラクチャの間にだけ侵入し、そこで事実上不動化する。この結果として生じる不動化のため、液体の流れをなくすと、液体はパターン1503および1505の中だけに残る。
【0036】
パターニング応用例において液体を星形パターンへ移動させる代替法は、図11に示したものなどの密度変動パターンを使用して、パターン1502などの相対的に高密度のパターンへ液体を移動させ、エレクトロウェッティングによってそこに保持する方法である。エレクトロウェッティングをパターニング応用例(ならびに他の応用例)において使用して、図15の星形パターンをより完全に濡らすこともできる。具体的には、前述の密度変動パターンを使用して星形パターン1502などの複雑なパターンへ小滴を移動させると、パターンの先端1507へ液体を完全に移動させることが難しいことがある。しかし、十分なエレクトロウェッティング電圧を印加することによって完全な濡れを達成することができる。
【0037】
したがって、基板1506などの基板上の特定の複雑な領域の中に液体をパターニングすることができる。重合を受けやすい周知の液体(例えばアクリル・ベースの単量体の液体。これにはNorland,Inc.社製のNA72光接着材が含まれる。ただしこれに限定されるわけではない)を選択し、その液体に例えば紫外光を当てることによって、パターン1503および1505に形状が一致した重合/硬化した材料を得ることができる。この重合プロセスを本明細書の例示的な任意の実施形態とともに使用して、液体を所望の位置へ移動させ、その液体をナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに侵入させ、重合状態の小滴をその位置に固定することができることは当業者には自明であろう。
【0038】
図16Aおよび16Bに、本発明の原理の他の有用な応用例を示す。具体的には図16Aには、少なくともいくつかの光波長に対して透明な液体の小滴1601がナノストラクチャ1602上に配置された、光学回折格子が示されている。ナノストラクチャ1602は以前に説明したとおり、例えばシリコン基板である表面1603上に配置されている。光ビーム1604が小滴1601に入射すると、少なくともいくつかの波長が小滴1601を通過し、表面1603で反射され、経路1606に沿って伝わり、小液滴を逆方向に通過する。小液滴1601、次いで(比誘電率εを有する)領域1605を通過し、その下の基板1603で反射することによって、(液体と領域1605の間の屈折率の差によって)さまざまな周波数の光が除去され、波長λだけが現れて所定の方向に伝搬する。図16Bは、(これまでに説明した方法の1つを使用して)小液滴1601をナノストラクチャ1602に侵入させることによって、領域1605の比誘電率がεに変化し、これによって光がその中を伝わる媒質の屈折率が変化し、したがってλだけが現れて所定の方向に伝搬することを示している。このようにして、液体1601がナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに侵入したときに、液体1601がフィーチャ・パターンに侵入していないときとは異なる光波長を通過させる調整可能な回折格子が生み出されることを当業者なら理解するであろう。
【0039】
図17Aおよび17Bに、本発明の原理の他の例示的な光学的使用、具体的には全反射(TIR)ミラーとしての使用を示す。一例として、図17Aを参照すると、少なくとも1つの光波長に対して透明な基板1701(例えばガラス基板)が、ナノストラクチャ1702のフィーチャ・パターンを支持している。ナノストラクチャ1702上には先に説明したように小滴1703が載っている。基板1701は、方向1704へ進んでいる光ビームが特定の入射角(光の波長に応じた周知の角度)で基板を通過したときに上面1705と気体1706の境界で反射されるように配置されている。この反射が得られるのは、気体1706の屈折率が基板1701の屈折率よりも小さくなるような比誘電率εを気体(例えば空気)が持っているからである。
【0040】
図17Bに、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターン1702に(やはり先に説明した方法によって)侵入した小滴1703を示す。ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの被侵入領域は、基板1701の屈折率より高い屈折率を与える比誘電率εを有する。その結果、光は反射されずに小滴1703を通過する。適当な基板材料、気体および小液滴と組み合わせたときに本明細書で説明し図17Aおよび17Bに示した調整可能な反射特性を達成する特定の波長の光ビームの特定の入射角を当業者は認知するであろう。
【0041】
図18A、18Bおよび18Cに、マイクロフルイディクス管1802などのチャネルの内壁にナノストラクチャ・フィーチャ・パターンが配置された、本発明の原理に基づく他の実施形態を示す。図18Aは、従来のマイクロフルイディクス管の場合のように管の内面にナノストラクチャを使用しない場合に、チャネルの中を液体が移動するときに、内壁と液体の間の摩擦によって生じる流動抵抗によって内壁の近くの液体の速度が低下することを示している。チャネルの内壁からさまざまな距離の液体の速度が速度ベクトル・プロファイル1801によって表されている。このベクトル・プロファイル1801は、チャネルの中央の液体が最も速く移動し(より長い速度ベクトル)、壁の直近の液体が最もゆっくりと移動する(より短い速度ベクトル)ことを示している。内壁のこの流動抵抗の結果、マイクロフルイディクス・チャネル1802を通して液体をポンピングするのに相対的に大きな電力を消費するより大型のポンプが必要となる。図18Bは、マイクロフルイディクス・チャネル1802の内壁にナノストラクチャ・フィーチャ・パターン1803を配置することによって、液体に対して発揮される流動抵抗がどのように有利に低減するかを示している。これは、液体の速度ベクトル・プロファイル1804によって表されており、このプロファイルは、チャネル1802の壁に隣接した液体の速度がチャネルの中央の液体の速度にほぼ等しいことを示している。ナノストラクチャ・フィーチャ・パターン1803の使用に起因する流動抵抗の低下によって、チャネルを通して液体をポンピングするのに必要なポンプは小さくなり、有利には、動作に必要な電力が相対的に小さくなる。
【0042】
マイクロフルイディクス応用例では、2本以上のチャネルの中を移動している異なる液体を混合することがしばしば望ましい。例えば、統合マイクロフルイディクス生化学分析システム用の別個のチャネルの中を移動しているDNAと試薬を混合することは有用である。このようなシステムでは、DNAサンプルから遺伝情報を引き出す電気泳動プロセスの前にこの混合が実施される。複数のチャネルを混合するこれまでの作業は、混合を完全に達成するのに比較的に長い距離を必要とし、不利である。図18Cは、本発明の原理に基づくミキサを示している。このミキサは例えば、例えば方向1809および1810に流れる2つの異なる液体の流れを結合したい場合に役立つ。先に論じたとおり、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターン1803をチャネルの内壁に配置することによって、チャネルの中の相対的に小さな流動抵抗が達成される。先に論じたとおり、例えばナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの離散領域1806の温度を増大させ、あるいはフィーチャ・パターンの液体と領域1806の間に電圧差を生み出すことにより、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに液体を選択的に侵入させることによって、領域1806などのある領域の壁に沿った流動抵抗を増大させることができる。このように、図18Cのミキサの中の流れ1805は、流動抵抗の小さい領域と、マイクロフルイディクス・チャネル1802の領域1806に隣接した、液体に対する流動抵抗の大きい領域とによって特徴づけられる。その結果、流れ1808によって表されているものなどの強く乱された流れが生み出される。この乱された流れは混合プロセスを増強し、2つ以上の液体の混合を相対的に短い距離で達成する。さらに、図18のミキサでは、流動抵抗などの液体と表面の間の界面特性を動的に制御できるので、図18のミキサを能動的に調整することができる。
【0043】
図19に、熱放散装置で有利に使用されるチャネルなどのチャネルの内壁にナノストラクチャ・フィーチャ・パターンが配置された本発明の他の実施形態を示す。熱放散は、電子装置によって生成される熱を放散させる応用例などの多くの応用例の主な関心事である。過剰な熱は電子装置の性能および全体寿命にしばしば不利な影響を及ぼす。装置1901は、コンピュータの中央処理ユニット、他のプロセッサなどの例示的な熱発生装置である。チャネル1902は装置1901に隣接して、または好ましくは装置1901と接触して配置されている。装置1901が熱を発生していないとき、チャネル1902の中の液体は図18Bに示すように小さな流動抵抗を受ける。一例として、液体は、所定量の熱を受けると液体の表面張力が低下し、液体が壁1904の表面を濡らすように選択される。図9Aおよび図9Bに示した前述のエレクトロウェッティング法など、ナノストラクチャ表面を濡らす他の方法を利用することもできることを当業者は理解されたい。
【0044】
装置1901が十分な量の熱を発生させると、熱はチャネルの壁1904を通して伝わる。チャネルの中を方向1903へ移動している液体の表面張力が低下し、その結果、液体は、ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンの領域1905のチャネルの内壁のナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに侵入する。そのため、領域1905の液体は壁1904と直接に接触し、壁からの熱を、方向1903へ流れている液体により効率的に伝える。当業者には理解されることだが、領域1905への液体の侵入に起因する乱された流れ1906は、乱されていない層流よりもはるかに多くの熱放散を引き起こす。(ナノストラクチャ・フィーチャ・パターンに依存しない)従来の液体ベースの熱放散はある程度の熱を放散させるのには適当であったが、図19の実施形態は、非常に多くの熱を放散させる能力を有利に有する。
【0045】
以上の説明は単に本発明の原理を示したに過ぎない。したがって、当業者は、本発明の原理を具体化しその趣旨および範囲に含まれる、本明細書には明示的に説明しまたは図示しないさまざまな配置を考案することができることを理解されたい。例えば、本明細書のさまざまな実施形態の説明を考慮すれば、広範囲にわたるさまざまな分野および応用例で本発明の原理を利用できることを当業者は理解しよう。例えば、小液滴を移動させ、それを所望の静止位置にとどまらせることは、マイクロレンズなどのさまざまな装置の自己組立において有用である。本明細書に開示した原理を使用することによって、マイクロレンズを表面に配置することができ、次いでこのマイクロレンズは、静止したままになる所望の位置に自発的に移動する。潜在的な本発明の他の実施形態では、本発明のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャ表面が表示装置に使用される。表示の内部の1種または数種の液体の移動を本明細書に開示した原理を使用して制御することによって、さまざまな画像を表示することができる。
【0046】
本明細書に挙げた例および条件付きの用語は全て、本発明の原理の読者の理解を助ける教育的目的のために特に示しただけであって、具体的に挙げた例および条件には限定されないと解釈すべきである。さらに、本発明の態様および実施形態、ならびにその特定の例を挙げている本明細書中の表現は全て、その機能上の等価物を包含することを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャを有する表面を有する基板と、及び
前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの上に置かれた小液滴とを含む装置であって、
前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャは、それらの上に置かれた小液滴を支持することができ、前記表面に沿って所定の方向で前記小液滴の制御された移動を生み出すように適合され、
前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの少なくとも一部は、前記表面上で前記所定の方向に沿って空間密度の増大を有し、前記表面上の前記小液滴により占められる領域より大きい前記表面の領域を占め、前記小液滴は前記表面上の前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャのより高密度の側へ向かって自動的に移動する、装置。
【請求項2】
その上に複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャを有する表面を有する基板と、及び
前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの上に置かれた小液滴とを含む装置であって、
前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャは、それらの上に置かれた小液滴を支持することができ、前記表面に沿って所定の方向で前記小液滴の制御された移動を生み出すように適合され、
前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの少なくとも一部は、前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの各々が非対称の同じのこぎり歯形状を有し、前記非対称同じのこぎり歯形状の前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャは、前記表面上の所定の方向に沿って、各々非対称同じのこぎり歯形状が同じ方向を向いて配置される、装置。
【請求項3】
前記増大した空間密度により近い前記小液滴の前縁は、前記増大した空間密度からより離れた小液滴の後縁接触角よりも小さい接触角を有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記増大した空間密度により近い前記小液滴の前縁は、前記増大した空間密度からより離れた小液滴の後縁接触角よりも小さい接触角を有する、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの第1の部分は、前記複数のナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの第2の部分よりも、高い空間密度を有する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記小液滴は、前記所定の方向に沿って移動するように設定される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記所定の方向に沿って前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの隣接する部分間が単調に減少する間隔が存在する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記ナノストラクチャまたはマイクロストラクチャの隣接する部分の垂直面は、一定の間隔で離隔されている、請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−79964(P2013−79964A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252152(P2012−252152)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2004−103992(P2004−103992)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】