説明

ナノダイヤモンド粒子複合体

本発明は、種々の官能化ナノダイヤモンド粒子を提供する。特に、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および治療薬の可溶性複合体、例えば不溶性治療、アントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン化合物、核酸、タンパク質等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本発明は、参照により全体として本出願により組み込まれる、2009年5月28日出願の米国仮特許出願一連番号61/181,993号に対する優先権を主張する。
【0002】
〔連邦支援の調査または開発に関する記述〕
本発明は、アメリカ国立科学財団による付与番号第CMMI−0846323号、CMMI−0856492号、およびDMI−0327077号(カリフォルニア大学バークレイ校からの請負契約、請負契約番号SA5880−21593)、およびアメリカ国立衛星研究所からの付与番号第U54 AI065359号の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
〔技術分野〕
本発明は、種々の官能化ナノダイヤモンド粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および治療薬で構成される複合体を提供する。一定の実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および不水溶性または水に溶けにくい治療薬で構成される可溶性複合体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびアントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン化合物を含む複合体を提供する。他の実施形態において、本発明は、ポリエチレンイミン表面官能化ナノダイヤモンド粒子および核酸分子で構成されるナノダイヤモンド核複合体を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびナノダイヤモンド粒子に吸着されたタンパク質で構成されるアルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を提供し、タンパク質は、十分にアルカリ性の条件においてナノダイヤモンド粒子から脱着するように構成される。
【0004】
〔背景技術〕
効果的な薬物放出賦形剤としての、さらに、機械的、電気的およびMEMS応用におけるナノ粒子の応用が、カーボンナノチューブ、ナノダイヤモンド、ナノ粒子埋め込みフィルム、天然および合成ポリマー、脂質小胞および多数の他のナノスケール種[8、9、17−27]と共に実証されてきた。これらのうち、爆轟されたナノダイヤモンドが、主に、それらの小分子荷重能力[9、28]、官能化表面[29]および生体適合性[15、30−32]のために、関心を集めている。これらの属性は、NDおよび他の粒子または分子の間の相互作用をND表面の特性によって定義できる、動的な界面を作成する。かかる相互作用の一例が、特徴的な表面電荷のために親水性のヒドロキシルおよびカルボキシル官能基を有し、水[8、28、29]における分散を可能にする、提供されたNDによって与えられる。生物医学的応用およびそれらの推奨される生体適合性におけるNDの今後の展望から、好ましい炭素系生体適合材料としてのNDが明らかになっている。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、種々の官能化ナノダイヤモンド粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および治療薬で構成される複合体を提供する。一定の実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および水溶性、不水溶性、または水に溶けにくい治療薬で構成される複合体を提供する。一定の実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および不水溶性または水に溶けにくい治療薬で構成される可溶性複合体を提供する。いくつかの実施形態において、ナノダイヤモンド粒子は、1つ以上の治療薬について高い結合能力を示す。他の実施形態において、本発明は、ポリエチレンイミン表面官能化ナノダイヤモンド粒子および核酸分子で構成されるナノダイヤモンド核複合体を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびナノダイヤモンド粒子に吸着されたタンパク質で構成されるアルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を提供し、タンパク質は、十分にアルカリ性の条件において、ナノダイヤモンド粒子から脱着するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、可溶性複合体を含む組成物を提供し、可溶性複合体は、a)1つ以上の表面カルボキシル基を含むナノダイヤモンド粒子と、b)治療薬と、を含み、治療薬は本質的に不水溶性または水に溶けにくく(例えば疎水性)、治療薬は、可溶性複合体を形成するためにナノダイヤモンド粒子へ吸着され、可溶性複合体は、水において可溶性であり(例えば体内等の体液における可溶性)、ヒトへの生体内投与に適している。一定の実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子に吸着された治療薬を含む組成物を提供し、ナノダイヤモンド粒子は、1つ以上の表面カルボキシル基を含み、治療薬は、ナノダイヤモンド粒子に吸着されていない場合に不水溶性または水に溶けにくく、治療薬は、ナノダイヤモンド粒子に吸着される場合に水溶性である。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、複合体を含む組成物を提供し、複合体は、a)ナノダイヤモンド粒子と、b)治療薬とを含む。いくつかの実施形態において、治療薬は、テトラサイクリン類治療薬を含む。いくつかの実施形態において、治療薬は、アントラサイクリン類治療薬を含む。いくつかの実施形態において、治療薬は、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリンのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、治療薬は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、および/またはロリテトラサイクリンのうちの1つ以上を含む。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、治療薬が、ナノダイヤモンド粒子に吸着することにより、可溶性複合体を形成するように、酸性溶液の存在下においてナノダイヤモンド粒子を治療薬と混合させることであって、治療薬は、本質的に不水溶性または水に溶けにくいことを含む、可溶性複合体を作成する方法を提供する。特定の実施形態において、酸性溶液は、酢酸を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド核酸複合体を含む組成物を提供し、複合体は、a)1つ以上の表面ポリエチレンイミン分子を含む官能化ナノダイヤモンド粒子と、b)核酸分子であって、核酸分子および官能化ナノダイヤモンド粒子はナノダイヤモンド核酸複合体を形成する、核酸分子と、を含む。
【0010】
一定の実施形態において、本発明は、a)官能化ナノダイヤモンド粒子を生成するために、ナノダイヤモンド粒子をポリエチレンイミン分子と混合することと、b)ナノダイヤモンド核酸複合体を生成するために、官能化ナノダイヤモンド粒子を核酸と混合することと、を含む、ナノダイヤモンド核酸複合体を作成するための方法を提供する。
【0011】
特定の実施形態において、官能化ナノダイヤモンド粒子および核酸分子は、官能化ナノダイヤモンド粒子における正の電荷および核酸分子における負の電荷の引力によって、ナノダイヤモンド核酸複合体を形成する。他の実施形態において、核酸は、DNA、RNA、対象の遺伝子、マイクロRNA、siRNA、またはプラスミドを含む。特定の実施形態において、ナノダイヤモンド核酸複合体内の核酸分子は、核酸分子が細胞移入の際に放出されるように、ナノダイヤモンド粒子に付着される。一定の実施形態において、ポリエチレンイミン分子は、低分子量ポリエチレンイミン分子である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を含む組成物を提供し、アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体は、a)1つ以上の表面カルボキシルまたはヒドロキシル基を含むナノダイヤモンド粒子と、b)タンパク質(例えばヒトインシュリンまたは他の治療タンパク質)とを含み、タンパク質は、アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を形成するように、ナノダイヤモンド粒子に吸着され、タンパク質は、十分にアルカリ性の条件においてのみ、ナノダイヤモンド粒子から脱着するように構成される。特定の実施形態において、アルカリ性の条件は、少なくとも、8.0...8.5...9.0...9.5...10.0...10.5...11.0...12.0...13.0...または14.0のpHである。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、a)i)アルカリ性のpHを有する治療を含む被験者と、ii)アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体を含む組成物であって、アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体は、A)1つ以上の表面カルボキシルまたはヒドロキシル基を含むナノダイヤモンド粒子と、B)タンパク質であって、タンパク質はアルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を形成するようにナノダイヤモンド粒子に吸着される、タンパク質と、を含む、組成物と、を提供することと、b)i)アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体が治療部位に達するように、かつ、ii)タンパク質が治療部位におけるアルカリ性のpHに応答して、アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体から脱着するような条件において、被験者へ組成物を(例えば全身的、局所的、経口的等)投与することと、を含む、被験者を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、アルカリ性の条件は、少なくとも8.0...8.5...9.0...9.5...10.0...10.5...11.0...12.0...13.0...または14.0のpHである。他の実施形態において、治療部位は、創傷であり、投与は局所的である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、インシュリン(例えばヒトインシュリン)を含む。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
[図1]NDは、水にプルバラノールAおよび4−OHTを分散させる能力を向上させる。バックグラウンドに対してバイアルが調製され、NDによって行われた濁度の低減が、以下の条件、つまり、A)水における5%のDMSO内の1mg/mlのND、B)水における5%のDMSO内の1mg/mlのND、0.1mg/mlのプルバラノールA、C)水における5%のDMSO内の0.1mg/mlのプルバラノールA、D)水における25%のDMSO内の1mg/mLのND、E)水における25%のDMSO内の1mg/mLのND、0.1mg/mLの4−OHT、F)水における25%DMSO内の0.1mg/mL4−OHTにおいて確認された。G)本来のNDのTEM画像である。H)4−OHT残留物が、NDと薬物の相互作用を確認するために、ND表面において確認できた。スケールバーは、10nmを示した。
[図2]UV−Visは、ND:4−OHTおよびDex−ND複合体プルダウンの分光光度分析である。A)遠心分離後のND試料のUV−Vis分析は、UV−Vis吸収度の低下を明らかにし、4−OHTと界面を接続するための薬剤としてNDを利用し、ペレット化したND試料へ薬物を引き付ける能力を確認する。B)4−OHTおよびND:4−OHTのUV/Vis吸収度の間の比較プロットは、NDおよび4−OHTの界面接続を示す。溶液における自由4−OHTは、遠心分離によって水溶液から除去された、NDへの物理吸着の結果として低下した。なお、それぞれ、遠心分離前後の4−OHTを表す、重複する黒い点線および黒い実線によって示されるように、NDが存在しない場合に、水性上清相から4−OHTを分離することへの影響は認められない。C)さらに、遠心分離後のDexの封鎖によって示されるように、Dex−ND複合体形成が確認された。
[図3]粒子サイズおよびND薬物複合体のゼータ電位のDLS分析。(図3A−3C):すべての薬の平均粒子サイズは、NDの物理吸着の際に低下した。(図3D−3F):すべての試料のゼータ電位は、NDとの錯化の際により正になった。
[図4]治療的生体機能性分析は、NDの錯化による強化された分散の際の維持された薬物活性を確認する。A)プルバラノールA活性の保存は、以下のレーン指定、つまり、A)DNAマーカ、B)負の制御(追加なし)、C)水溶液における5%のDMSO、D)水溶液における5%のDMSO内の1mg/mlのND、E)水溶液における5%DMSO内の1mg/mlのND、0.1mg/mlのプルバラノールA、F)水溶液における5%DMSO内の0.1mg/mlのプルバラノールAによる、DNA断片化分析によって確認された。レーンEは、NDプルバラノールA複合体の強力な活性を確認した。B)MTT細胞生存率分析は、NDによる複合体形成後に、4−OHTの保存された治療活性を確認するために実行された。以下の条件、つまり、(−):負の制御、(+):正の制御、7.5ug/mLの4−OHT、ND:75ug/mLのND、ND:4−OHT:75ug/mLのND、7.5ug/mLの4−OHTが検査された。すべての条件は、1.31mM酢酸を含有する培地内であった。正の制御およびND:4−OHT試料の間の細胞生存率レベルの比較は、NDに錯体形成される場合に保存された4−OHTの効力を示す。3つのうちのある代表的な実験を示す。
[図5](A)アミノ官能化ナノダイヤモンドおよび(B)低分子量ポリエチレンイミン(PEI800)修飾ナノダイヤモンドの概略図。
[図6]ナノダイヤモンドおよびpDNA結合前の官能化Eナノダイヤモンドのサイズ(A)およびゼータ電位(B)。粒子を、60ug/mlの濃度、3ugのpDNA/mlの固定濃度を有するpDNA結合後のナノダイヤモンドおよび官能化ナノダイヤモンドのサイズ(C)およびゼータ電位(D)で、脱イオン化水に懸濁した。173°の散乱角において25℃でZetasizer Nano ZS(Malvern,Worcestershire,United Kingdom)を使用して、サイズ計測が実行された。平均流体力学直径は、累積分析によって決定された。ゼータ電位計測は、自動モードのひだ状の毛細血管内細胞を用いて実行された、水性媒体内の粒子の電気泳動移動度に基づく。データは、平均±標準偏差(n=2)として表す。(E)ND−PEI800/DNAのTEM画像。スケールバーは20nmである。
[図7]PEI800官能化ナノダイヤモンドは、HeLa細胞における効率的な遺伝子トランスフェクションを媒介した。HeLa細胞は、トランスフェクション前24時間、105/ウェルの密度で、24ウェルプレートに播種された。ナノ粒子が細胞に添加され、37℃で4時間培養された。洗浄の際に、細胞は、44時間さらに培養された。粒子濃度は、3μg/ウェルの標的pLuc用量で、異なる重量比を元にして計算された。トランスフェクション後48時間、細胞採集およびルシフェラーゼ分析が実行された。データは、平均±標準偏差(n=2)として表される。*は、細胞溶解物内のタンパク質の10RLU/mgよりも低いトランスフェクション効率を有する粒子を表す。
[図8]5(A)および15(B)の重量比におけるND−PEI800/pGFP、5(C)および15(D)の重量比における非修飾ナノダイヤモンド/pGFP、5(E)および15(F)の重量比におけるPEI800/pGFP、および裸pGFP(G)によって、行われた生体HeLa細胞内のGFP発現の明視野およびGFP共焦点像作成。HeLa細胞は、トランスフェクション前の24時間、1.5X105/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種された。ナノ粒子は、細胞に添加され、4時間、37℃で培養された。洗浄の際に、細胞は、44時間、さらに培養された。粒子濃度は、6μg/ウェルの標的pLuc用量に基づいて計算された。生体HeLa細胞がPBSによって洗浄され、トランスフェクション後48時間、共焦点顕微鏡(ライカ反転レーザー走査系、アルゴンレーザー励起488nm)においてライブで観察された。(スケールバー:50um)
[図9]NaOHの存在下での水中のNDへのインシュリン吸着および脱着を示す仮想概略図。インシュリン非共有は、静電および他の相互作用によって、水中でND表面へ結合する。アルカリ性環境へのシフトにより、インシュリン表面電荷特性を変質させ、それによってND表面からの放出を生じさせる。
[図10](a)そのままのND、(b)水溶液内の吸着されたインシュリンを有するND、および(c)pH10.5に調整された1mMのNaOHによる治療後の吸着されたインシュリンを有するNDのTEM画像。約5−10nmの厚さの、そのままのND(a)と比較して、ND(b)の表面上に明らかな層またはコーティングが存在する。インシュリンの添加は(a)および(b)の間の試料調製における差にすぎないため、視覚可能な層は、インシュリン吸着を示すことがある。材料は、NaOH処理したND上に存在しない(c)。スケールバーは、(a)において20nm、(b、c)において50nmを示す。
[図11](a)FITCインシュリン、(b)そのままのNDおよび(c)NDインシュリン複合体の赤外線スペクトル。矢印は、そのままのNDスペクトルと比較した、NDインシュリンスペクトル上に存在するインシュリンの特徴的なスペクトルを示す。画像(c)は、差スペクトルによって示されるように、NDインシュリン複合体の形成を示唆する。データは、NDへのインシュリンの非共有吸着を示唆する。
[図12]pH7およびpH10.5におけるインシュリンおよびNDの錯体に関連付けられたゼータ電位の変化。NDは、インシュリンおよびNDインシュリン複合体の負の電位と比較した、両方のpH値におけるわずかに正のゼータ電位を明らかにする。NDおよびNDインシュリン複合体の間のゼータ電位における明らかな差は、NDおよびインシュリンの間の相互作用を示す。
[図13]NDからのインシュリンの吸着および脱着のUV/vis定量化。(a)NDに対するFITCインシュリンの吸着は、485nmで計測された、初期のおよび遠心分離されたNDインシュリンの間の到達された差の吸収度値によって示される。(b)562nmで計測された、BCAタンパク質分析を実施するウシインシュリンの吸収度。(c)種々のpH値に調整された、1mMのNaOHにおける、NDからのFITCインシュリンの脱着。試料は、アルカリ性条件において遠心分離され、生成された溶液が計測された。(d)BCAタンパク質分析を使用したNDからのウシインシュリンの脱着。放出吸収度スペクトルから、より大量のインシュリンが、アルカリ性環境において脱着され、NaOHがインシュリンの電荷特性に影響することを示す。
[図14]NaOH(pH10.5)および水で処理したNDインシュリン試料の5日間のインシュリン脱着試験、アルカリ性pH環境内のインシュリン放出を示す。放出されたインシュリンの累積重量パーセンテージが計測された。NaOH試料は、最初の2日間内の増加した脱着および45.8±3.8%の全脱着のために放出された量の平準化を示す。しかしながら、水で処理した試料は、合計で2.2±1.2%の、インシュリンの一部のみを放出した。1日目までに生じたNaOHによって放出されたインシュリンの大部分は、アルカリ溶液が、完全に吸着されたND上に、その最大影響を有していたことを示す。
[図15]様々な培地条件におけるRAW264.7マクロファージ細胞のMTT細胞生存率分析。細胞は、8時間、血清飢餓が行われ、次いで、示された溶液媒体、つまり、(1)DMEM、(2)0.1μMインシュリン、(3)1μMインシュリン、(4)NaOH(pH10.5)によるNDインシュリンから放出された約0.1μMのインシュリン、(5)水における、遠心分離されたNDインシュリンからの生成された溶液、(6)NaOH(1μM全インシュリン)によって処理したNDインシュリン、(7)インシュリンと結合した(NDインシュリン、1μM全インシュリン)NDおよび(8)DMEM10%FBSによる、24時間の回収期間が生じる。NaOH(6)で処理したNDインシュリンの相対生存率は、高いインシュリン濃度(3)の相対生存率と同様であり、これは、放出されたインシュリンによる効果的な回収を示す。NaOH(4)によって放出されたインシュリンは、水(5)によって放出されたインシュリンの相対生存率よりも高い相対生存率を示し、これは、アルカリ溶液を介したより大きい脱着を表す。ANOVA統計分析により、P<0.01が得られ、基の間の顕著な差を表す。
[図16](a)3T3−L1前駆脂肪細胞および(b)分化した脂肪細胞は、2つの細胞タイプの間の形態の明白な差を示す。前駆含脂肪細胞線維芽細胞は、インシュリン、デキサメタゾンおよびIBMXによる培地の補完の際に分化を実行し、移入後10日目までに完全に分化する。脂質小胞形成は、分化の間に生じ、(b)250X倍率で確認することができる。
[図17]培地条件におけるIns1およびCsf3/G−csfのリアルタイムのPCR遺伝子発現。3T3−L1脂肪細胞は、異なる溶液媒体、つまり、(1)DMEM、(2)0.1μMのインシュリン、(3)NaOH(pH10.5)によってNDインシュリンから放出された0.1μMのインシュリン、(4)水における遠心分離されたNDインシュリンから生成された溶液、(5)NaOHで処理したNDインシュリン(1μMの全インシュリン)および(6)インシュリンで結合されたND(NDインシュリン、1μMの全インシュリン)において、2時間の回収期間の前4時間、血清飢餓された。両遺伝子は、NaOHによって放出されたインシュリン(3)およびNaOHで処理したNDインシュリン(5)の増加した発現を示し、活性を保存する一方で、アルカリ性条件による効果的なインシュリン放出を示す。水(4)およびNDインシュリン(6)によって放出されたインシュリンは、比較的、タンパク質機能を防止するND表面へのインシュリンの隔離について示唆する、両遺伝子についての低い相対発現を示した。RT−PCR試料の代表的な遺伝子発現プロット。ANOVA:P<0.01。
[図18]ナノダイヤモンド−ダウノルビシン(ND−Daun)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Daun複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)前(BS)および後(AS)に計測された。
[図19]ナノダイヤモンド−ダウノルビシン(ND−Daun)吸着の比較。14000rpmでの15分遠心分離前(A)および後(B)のND(1)、Daun(2)、ND−Daun(3)、およびND−Daun+NaOH(4)溶液。
[図20]それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのDAUNの脱着。放出特性は、薬物溶出が数時間にわたって持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
[図21]ナノダイヤモンドエピルビシン(ND−Epi)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液内に存在するNDまたはND−Epi複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
[図22]ナノダイヤモンドエピルビシン(ND−Epi)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Epi(2)、ND−Epi(3)、およびND−Epi+NaOH(4)溶液。
[図23]それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのEPIの脱着。放出特性は、数時間にわたって薬物溶出が持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
[図24]ナノダイヤモンドイダルビシン(ND−IDA)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−IDA複合体をペレット化するために、2時間のスピンの前(BS)および後(AS)で計測された。
[図25]ND−Ida吸着の比較。14000rpmにおける15分の遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Ida(2)、ND−Ida(3)、およびND−Ida+NaOH(4)溶液。
[図26]それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのIDAの脱着。放出特性は、数時間にわたって薬物溶出が持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
[図27]ND−Daun−Dox−Epi−Ida吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液において存在するNDまたはND−Daun+Dox+Epi+Ida複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
[図28]ND−Daun−Dox−Epi−Ida吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Daun+Dox+Epi+Ida(2)、ND−Daun+Dox+Epi+Ida(3)、およびND−Daun+Dox+Epi+Ida+NaOH(4)溶液。
[図29]ナノダイヤモンドミノサイクリン(ND−Mino)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液内に存在するNDまたはND−Mino複合体のペレット化のために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
[図30]ナノダイヤモンドミノサイクリン(ND−Mino)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Mino(2)、ND−Mino(3)、およびND−Mino+NaOH(4)溶液。
[図31]ナノダイヤモンド共役からのミノサイクリンの脱着。水において実行される放出特性(上)およびPBS(下)は、最初の数時間における持続的放出を示す。
[図32]ナノダイヤモンドテトラサイクリン(NDテトラ)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはNDテトラ複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
[図33]ナノダイヤモンドテトラサイクリン(NDテトラ)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、テトラ(2)、NDテトラ(3)、およびNDテトラ+NaOH(4)溶液。
[図34]ナノダイヤモンド共役からのテトラサイクリンの脱着。水(上)およびPBS(下)において実行される放出特性は、最初の数時間における持続的放出を示す。
[図35]ナノダイヤモンドドキシサイクリン(ND−Doxy)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Doxy複合体のペレットを作成するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
[図36]ナノダイヤモンドドキシサイクリン(ND−Doxy)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Doxy(2)、ND−Doxy(3)、およびND−Doxy+NaOH(4)溶液。
[図37]ナノダイヤモンド共役からのドキシサイクリンの脱着。水(上)およびPBS(下)において実行される放出特性は、最初の数時間における持続的放出を示す。
[図38]ナノダイヤモンドオキシテトラサイクリン(ND−Oxy)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Oxy複合体のペレット化のために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)に計測された。
[図39]ナノダイヤモンドオキシテトラサイクリン(ND−Oxy)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Oxy(2)、ND−Oxy(3)、およびND−Oxy+NaOH(4)溶液。
【0015】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、種々の官能化ナノダイヤモンド粒子を提供する。一定の実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および不水溶性または水に溶けにくい治療薬で構成される可溶性複合体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびアントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン化合物を含む複合体を提供する。他の実施形態において、本発明は、ポリエチレンイミン表面官能化ナノダイヤモンド粒子および核酸分子で構成されるナノダイヤモンド核複合体を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびナノダイヤモンド粒子に吸着されたタンパク質で構成されるアルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を提供し、タンパク質は、十分にアルカリ性の条件でナノダイヤモンド粒子から脱着するように構成される。
【0016】
(I.ナノダイヤモンド薬物複合体)
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および治療薬で構成される複合体を提供する。一定の実施形態において、本発明は、水溶性、不水溶性、または水に溶けにくい治療薬を有するナノダイヤモンド粒子の複合体を提供する。一定の実施形態において、本発明は、不水溶性または水に溶けにくい治療薬を有するナノダイヤモンド粒子の可溶性複合体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、アントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン類の治療薬(例えばアントラサイクリン、テトラサイクリン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン等)を有するナノダイヤモンド粒子の複合体を提供する。いくつかの実施形態において、ナノダイヤモンド粒子は、1つ以上の治療薬について高い結合能力を示す。
【0017】
幅広い範囲の水溶性化合物が、癌および炎症を含む多種多様な医学的および生理的障害に対する治療関連の特性を示してきた。しかしながら、これらの化合物の水への分散の媒介に対する、拡張可能で、容易な、生体適合性のあるルートの模索の継続は、医学におけるそれらの幅広い応用を制限してきた。本発明の開発において実行された実験は、保存の機能性を有する、水へのそれらの懸濁を強化するためのいくつかの例示的な治療薬による、水分散可能なナノダイヤモンドクラスタ媒介の相互作用の基礎的なアプローチ(これにより以前には実現できなかった新規の治療パラダイムを可能にする)を示す。これらの治療薬は、プルバラノールA、肝細胞癌(肝臓癌)治療のための非常に将来性のある化合物(4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT))、乳癌の治療のための新しい薬物、およびデキサメタゾン(血液の癌および脳腫瘍からリウマチおよび腎臓障害までの合併症を範囲とする、多種多様な疾患を解決する、臨床関連の抗炎症薬)を含む。任意の不水溶性または水に溶けにくい治療薬を利用してもよい。例示的な水溶性薬剤は、例えば、アロプリノール、アセトヘキサミド、ベンズチアジド、クロロプロマジン、クロルジアゼポキシド、ハロペリドール、インドメタシン、ロラゼパム、メトキサレン、メチルプレドニゾン、ニフェジピン、オキサゼパム、オキシフェンブタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ピリメタミン、フェニンジオン、スルフイソキサゾール、スルファジアジン、テマゼパム、スルファメラジン、および/またはトキオキサレンを含む。本発明の実施形態で使用される不水溶性、水に溶けにくい、または脂質可溶性の治療薬は、中枢神経系薬物、末梢神経系薬物、感覚器官薬物、心血管疾患系薬物、呼吸器系薬物、ホルモン、泌尿・生殖器系薬物、肛門疾患用薬物、ビタミン、肝臓疾患用薬物、抗痛風薬物、酵素、抗糖尿病薬、免疫抑制剤、共役因子、抗腫瘍薬物、放射性薬物、抗アレルギー薬物、抗生物質、化学療法薬、生物学的製剤、および体外診断用薬剤を含む。特に、本発明のND複合体で使用される不水溶性、水に溶けにくい、および/または脂質可溶性の治療薬は、ステロイド性薬物(例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾンおよびプラステロン、その塩、およびそれらの脂溶性誘導体)、β−アドレナリン作動薬(例えばプロカテロール、オルシプレナリン、塩酸イソプロテレノール、ピルブテロール、テルブタリン、ヘキソプレナリン、臭化水素酸フェノテロール、硫酸ヘキソプレナリン、硫酸テルブタリン、硫酸サルブタモール、硫酸オキシプレナリン、フマル酸ホルモテロール、塩酸イソプレナリン、塩酸ピルブテロール、塩酸プロカテロール、塩酸マブテロール、およびツロブテロール、その塩、およびそれらの脂溶性誘導体)、キサンチン誘導体(例えばジプロフィリン、プロキシフィリン、アミノフィリンおよびテオフィリン、その塩、およびそれらの脂溶性誘導体)、抗生物質(例えばペンタミジンイセチオネート、セフメノキシム、カナマイシン、フラジオマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ミデカマイシン、アンフォテリシンB、イトラコナゾールおよびナイスタチン、その塩、およびそれらの脂溶性誘導体)、および他の部類(例えば臭化イプラトロピウム、塩酸メチルエフェドリン、塩酸トリメトキノール、クレンブテロール塩酸、臭化オキシトロピウム、臭化フルトロピウム、メトキシフェナミン塩酸、クロルプレナリン塩酸クロモグリク酸ナトリウム等)の治療薬を含む。いくつかの実施形態において、複合体は、NDおよび上記に列挙された薬剤または当業者によって理解される他の薬剤のうちの2つ以上の組み合わせ(例えば2つの治療薬、3つの治療薬、4つの治療薬、5つの治療薬・・・10の治療薬・・・20の治療薬等)に基づく。ナノダイヤモンド処理の拡張性および官能基化のために、このアプローチは、治療関連のシナリオに対し、不水溶性化合物を変換するための容易で、広く影響する、有効なルートとして役立つ。
【0018】
多くの生物医学関連の化合物は、水に可溶化することは困難であるため、それらの治療可能性を制限している[1−5]。これらの化合物は、肝臓および乳癌[1−2]等の疾患に対して、体外での注目すべき治療特性を示している。しかしながら、これらの治療薬は、主に、注入に適していないものとして一般的にみなされている溶剤に可溶性であるため、これらの薬物によって可能となる患者治療への新しいルートの実現が妨げられている。容易な送達のためにこれらの化合物をパッケージングする幅広いニーズがいまだにあり、多種多様な高分子および炭素系ナノ材料が模索されている[6−15]。例えば、ブロック共重合体安定化ナノエマルジョンが、最近、極性および無極性薬剤[6]の賦形剤として模索されてきた。さらに、脂質PEGシェルおよびポリ(乳酸−共−グリコール酸)(PLGA)疎水性核で構成される脂質ポリマーハイブリッドナノ粒子が、水に溶けにくい薬物の放出のために開発されている[7]。水に溶けにくい薬物の分散のための炭素系戦略に関して、PEG化されたナノ酸化グラフェンが、最近、芳香族カンプトセシン(CPT)類似体の送達のために模索されている[15]。
【0019】
ナノダイヤモンド(ND)は、いくつかの医学的に有効な特性を有する材料の重要な、新規の部類を表す[16−36]。4−6nmの非常に均一な粒子直径を作成するために、NDは、超音波処理、遠心分離、および圧延方法[22,26]によって安価に加工できる。さらに、不純物を除くための酸性処理は、同時に、以降の薬物界面作成に対して利用できるカルボキシル基表面官能基化を生じさせることができる。さらに、表面結合したカルボキシル基は、水における安定したND懸濁を可能にする。したがって、これらの合理化されたプロセスにより、NDを薬剤について拡張可能な材料にするための、迅速で、安価および非常に効率的なアプローチを提供する。NDについての以前の研究は、ドキソルビシンによるそれらのキャリア機能、生体適合性のあるまたは脂肪親和性の薬剤によるNDのコーティングを必要としない細胞の内在化、およびマウスのマクロファージおよびヒトの大腸の癌細胞系における薬物有効性の維持を示している。さらに、炎症性サイトカインの定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)調査を用いた総合的な生体適合性分析が、それらの生体適合性特性を明らかにしている。26本発明の実施形態の開発において、NDクラスタが、さらに、水におけるそれらの分散特性を高めるために、水に溶けにくい薬物との錯化をさらに可能にすることが示されている。NDの基礎的機能を実証するために、重要な意味合い(プルバラノールA、4−ヒドロキシタモキシフェン)を有する3つの薬物、または示された関連物(デキサメタゾン)がモデル系として機能した。
【0020】
ナノダイヤモンドは、広範囲の小分子、タンパク質、抗体、およびRNA/DNA治療薬の容易な可溶化の基礎を提供する。本発明は、使用されている治療薬によって制限を受けない。本発明の実施形態の開発において実行された作業は、ナノダイヤモンドパウダープラットフォームが、水のみにおける(例えば現在、ヒトの利用が可能ではないDMSO、エタノール、すべての溶剤における可溶性)それらの不溶性のために、現在、翻訳的に困難である幅広い治療的化合物の迅速な水の可溶化に対して適用できることを示してきた。官能基化/薬物リンクプロセスにおいて少量の酸(例えば1%以下)を添加することにより、4−ヒドロキシタモキシフェン(4−0HT、エタノールで可溶性の乳癌治療薬)、プルバラノールA(DMSOで可溶性の肝臓癌治療薬)、およびデキサメタゾン(エタノール/メタノールで可溶性の抗炎症薬)等の化合物のリンクを実証してきた。酸性官能基化プロセスは、増殖分析によって示されるように、細胞にとって有毒ではなく、数時間内に通常のレベルに迅速に戻るpHのわずかで単純な変化が存在する。これは、ナノダイヤモンド産生、精製、および官能基化の非常に経済的な特性を考えると、大きく拡張可能なプロセスである。さらに、一定の実施形態において、これは、1ステップのプロセスであり、数分で完了できるため、これは、おそらくは、水溶性薬物の可溶化のための最も拡張可能なプロセスになる。変形的治療の可能性があるが抑制的水不溶性を有する非常に広範囲の既に公知および未発見の化合物を考えると、本発明は、生体適合性がある、経済的/拡張可能、およびプロセス速度において非常に迅速であることにより、最適化された薬物可溶化という目的を達成する。
【0021】
多くの潜在的に有用な薬剤は、毒性のために、臨床的応用において使用できない。いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および有毒または潜在的に有毒な治療薬で構成される複合体を提供する。いくつかの実施形態において、ナノダイヤモンド粒子への治療薬の錯化は、薬物毒性を低減し、臨床的応用のための薬物の安全性をもたらす。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびワクチンの複合体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、被験者への1つ以上のワクチンの送達および持続的放出を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の複合体からのワクチン放出は、ワクチン送達の副作用を低減し、ワクチン送達の効率を高める。いくつかの実施形態において、本発明で使用されるワクチンは、インフルエンザワクチン、コレラワクチン、腺ペストワクチン、ポリオワクチン、肝炎Aワクチン、狂犬病ワクチン、黄熱病、はしか/おたふくかぜ/風疹、腸チフスワクチン、破傷風ワクチン、ジフテリアワクチン、マイコバクテリウム属結核ワクチン等を含むが、これらに制限されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子および1つ以上の抗菌剤の複合体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、被験者への1つ以上の抗菌剤の送達および持続的放出を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の複合体からの抗菌剤の放出は、副作用を低減し、抗菌薬の送達効率を高める。いくつかの実施形態において、本発明で使用される抗菌剤は、抗生物質、抗ウィルス物質、抗真菌剤、および駆虫薬を含むが、これらに制限されない。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノダイヤモンド粒子およびアントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン類治療薬(例えばアントラサイクリン、テトラサイクリン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン等)の複合体を提供する。いくつかの実施形態において、アントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン類治療薬、またはその誘導体は、不水溶性である、または水において溶けにくい。いくつかの実施形態において、アントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン類の治療薬、またはその誘導体は、水溶性である。いくつかの実施形態において、NDアントラサイクリン複合体および/またはNDテトラサイクリン複合体は、ND表面および治療的化合物の間の顕著な結合能力を示す。本発明の実施形態の開発において実施された実験は、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリンを含む治療薬によるND表面およびND複合体内の治療的化合物の間の例外的な結合を実証する。いくつかの実施形態において、NDの間の複合体および1つ以上の任意の適したアントラサイクリンおよび/またはテトラサイクリン類の治療は、高い結合能力を示す。いくつかの実施形態において、複合体は、NDおよび、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン等)およびテトラサイクリン(例えばテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン)のうちの1つまたはいずれかの組み合わせに基づく。本発明の実施形態の開発において実施された実験は、水において分散されながら、ND/アントラサイクリン類複合体および/またはND/テトラサイクリン類複合体が非常に緊密に結合することを示す。本発明は作用のいずれかの特定のメカニズムに制限されず、作用メカニズムの理解は本発明の実施には必要ではないが、酸性洗浄されたNDおよび治療的化合物の表面の間の反対電荷により、NaOHまたはKOH処置の後で高い効力結合が生じると考えられる。いくつかの実施形態において、ND/アントラサイクリン類複合体および/またはND/テトラサイクリン類複合体からの薬物放出が持続的に生じる。本発明の実施形態の開発において実施された実験は、薬物耐性疾患モデル(例えば癌)のために、非常に緊密なND薬物結合が細胞へ薬物を運ぶことを可能にし、NDが細胞内の薬物の存在を維持するため、耐性が弱められる可能性があることを示している。このため、薬物駆出/流出が防止される。いくつかの実施形態において、ND/アントラサイクリン類複合体および/またはND/テトラサイクリン類複合体は、複数薬物耐性疾患(例えば癌、結核、細菌感染等)の効果的な治療を提供する。いくつかの実施形態において、ND/アントラサイクリン類複合体および/またはND/テトラサイクリン類複合体は、細胞からの薬物駆出/流出が防止されるため、複数薬物耐性疾患(例えば癌、結核、細菌感染等)の効果的な治療を提供する。
【0025】
本発明は、一般的に、癌から炎症までの、再生医療等への極めて範囲の広い種類の治療戦略に適用可能である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、急性骨髄性白血病、薬物耐性白血病、乳癌、リンパ腫、子宮癌、肺癌、卵巣癌、マラリア、獣医学的応用、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、パーキンソン病(例えば神経保護剤として)、線維筋痛、動物の咬傷による感染症(例えば動物パスツレラ症病原菌、肺パスツレラ等)、リウマチ性関節炎、反応性関節炎、慢性炎症性肺疾患(例えば汎細気管支炎、ぜんそく、嚢胞性線維症、気管支炎等)、サルコイドーシス、マルファン症候群の患者の大動脈瘤の防止、多発性硬化症、マイボーム腺機能不全、座瘡、アミーバ赤痢、炭疽病、コレラ、淋病(例えばペニシリン投与が不可能な場合)、グジュロー・カートイド症候群、ライム病、腺ペスト、歯周病、呼吸器官の感染(例えば肺炎)、HIV(例えばHAARTに対するアジュバントとして)、ロッキー山発疹熱、梅毒(例えばペニシリン投与が不可能な場合)、尿道感染、直腸感染、子宮頚管感染、上部呼吸器管感染(例えば化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌および好血菌インフルエンザによって生じる)、下気道感染(例えば化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、マイコプラズマ肺炎、皮膚および軟部組織感染によって生じる(例えば化膿連鎖球菌、黄色ブドウ球菌によって生じる)、リケッチアによって生じる感染(例えばロッキー山発疹熱、発疹チフス群感染、Q熱、リケッチア痘瘡)、おうむ病のオウム病(例えばオウム病クラミジアによって生じる)、クラミジアトラコマチスによって生じる感染(例えば合併症のない尿道、子宮頚管、または直腸感染、封入体結膜炎、トラコーマ、性病性リンパ肉芽腫等)、鼠径部肉芽腫(例えばカリマトバクテリウム属肉芽種症によって生じる)、回帰熱(例えばボレリア属によって生じる)、バルトネラ症(例えば杆菌状バルトネラによって生じる)、軟性下疳(例えば軟性下疳菌によって生じる)、ツラレミア(例えば野兎病菌によって生じる)、斑(例えばペスト菌によって生じる)、コレラ(例えばビブリオ菌コレラによって生じる)、カンピロバクターフィタス感染、腸アメーバ症(例えば赤痢アメーバによって生じる)、尿路感染(例えば感染しやすい大腸菌株、クレブシエラ等によって生じる)、感染しやすいグラム陰性の有機体(例えば大腸菌、エンテロバクター属腸菌、赤痢菌属、アシネトバクター属、クレブシエラ属、およびバクテロイデス属)によって生じる感染、重度の座瘡等を含むがこれらに制限されない1つ以上の疾患、兆候、症状、および障害の治療、症状の軽減および/または防止を提供する。いくつかの実施形態において、特に、非常に安定しているナノダイヤモンド等の不活性物質に迅速に結合できる場合、および、必要であれば、単純な遠心分離プロセスによって容易に除去できる場合に、本発明の組成物および方法は、可溶性薬剤の水の可溶化を必要とする非生物学的プロセスにも関連する。生物学的応用のために、ナノダイヤモンドは、泌尿器系を介して、生体内で除去できることが示されており、これは、それらの生体敏感性(bio−amenability)を確認する。
【0026】
(II.ナノダイヤモンド核酸複合体)
本発明は、保存の機能によって核酸放出を可能にするナノダイヤモンド核酸複合体を提供する。一定の実施形態において、かかる複合体は、非ウィルス遺伝子送達ベクトルとして役立つ。かかるND核酸複合体を、例えば、癌、炎症、自己免疫疾患、創傷治癒、痛み、神経障害、および他の種類の障害を含む幅広い範囲の医学的障害に利用してもよい。低分子量ポリエチレンイミン(例えばPEI800)によってND表面を官能基化することにより、DNAプラスミドは、細胞移入の際に放出されることができ、一方で、官能基化ステップなしに、DNAは(物理吸着により)NDへ結合できるが、放出できないことが示された。ND核酸複合体を、例えば、癌、炎症、痛み、瘢痕化/創傷治癒、感染、および糖尿病インシュリン送達の治療、および遺伝子治療タイプのアプローチによって治療を可能にする他の障害において使用してもよい。
【0027】
(III.アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体)
本発明は、例えば、アルカリ環境内のタンパク質の脱着を可能にするナノダイヤモンドタンパク質複合体を提供する。本発明の実施形態の開発において実施された作業は、pH依存タンパク質放出(例えば糖尿病治療ならびに創傷治癒における応用のための)を可能にするナノダイヤモンド(ND)インシュリン複合体の開発によって、本発明の例を示す。これは、皮膚火傷の後、インシュリンが、感染、主な合併症を防ぐために直ちに投与されることを示すことから、重要である。さらに、火傷の後の皮膚のpHレベルが基本レベル(例えば10−11)に達する可能性があることが示されている。本発明の実施形態の開発において実施された作業は、かかる複合体は、pHレベルにおいて選択的にインシュリンを放出できるが、放出されていないインシュリン機能は、送達されるまで封鎖されることを示している。タンパク質がインシュリンである場合等の、一定の実施形態において、NDタンパク質複合体は、とりわけ、創傷治癒、感染、および糖尿病インシュリン送達の治療に使用される。
【0028】
関連付けられた合併症を低減させながら治療影響を最大限にするための薬物送達の強化された方法が強く求められている。系統的な治療は、体への薬物暴露の広範囲の使用に関して種々の問題を引き起こし、治療の利点を上回る有害な副作用につながりかねない。薬物組織の相互作用を制限するための薬物送達の効果的な標的化および制御が、望ましい成果である。このため、部位特異的薬物放出は、癌から心血管疾患治療までの範囲の多数の病気について非常に有利である。ナノ医薬品における最近の進歩(例えば画像作成および診断[1−3]、薬物送達[4−10]および遺伝子治療[11−13])は、薬物濃度の低減、標的放出、減退した合併症および生体適合性[3、14−16]を含む、ナノ粒子治療法の利点を示した。
【0029】
多くの研究により、化学薬剤、有機分子およびタンパク質[29、33、34]を含む、NDへの一時的な連結剤または結合剤および治療分子の有効性が示されている。ND[8、9]の薬物放出特性に関して最近、研究が行われたが、タンパク質系薬物の放出に関しては化学的な調査はほとんど行われていない。タンパク質系薬物の例は、サイトカイン、単クローン性抗体、ホルモンおよび凝固因子を含み、これらはすべて、将来性が大きい、または標的薬物送達性について実証されている。
【0030】
薬物送達における高い特異性は、治療薬を局地的に濃縮し、負の副作用を低減することにより、系統的な溶出方法における向上を目的とする。以下の例2に記載されるように、ウシインシュリンは、水溶液における物理的吸着を介して、爆轟されたナノダイヤモンドに非共有結合され、水酸化ナトリウムのアルカリ性環境においてpH依存脱着を実証した。NDへのインシュリン吸着は、FT−IR分光法およびゼータ電位計測によって確認され、一方で、吸着および脱着の両方は、タンパク質検出分析を使用して定量化された、TEM画像作成によって視覚化され、タンパク質機能は、MTTおよびRT−PCRによって実証された。4:1の比率でインシュリンと組み合わせられたNDは、それぞれ、pHが中性およびアルカリ性の溶液における79.8±4.3%吸着および31.3±1.6%脱着を示した。さらに、NaOH(pH10.5)および中性の溶液における5日間の脱着分析は、それぞれ、45.8±3.8%および2.2±1.2%脱着を生じさせた。MTT生存率分析および数量的RT−PCR(Ins1およびCsf3/G−csf遺伝子の発現)からは、結合したインシュリンがアルカリ媒介脱着まで非活性のままであることが明らかである。このため、本発明は、実証された調節可能な放出および保存活性による、治療的タンパク質ND複合体を利用する、持続的薬物放出、創傷治療および画像作成の応用を提供する。
【0031】
〔実施例〕
以下の例は、特定の例示的な本発明の実施形態を提供するために示されており、その範囲を制限することを意図されているのではない。
【0032】
〔実施例1:可溶性ナノダイヤモンド薬物複合体〕
この例は、可溶性ナノダイヤモンド薬物複合体の調製および試験について記載する。
【0033】
(ND薬物複合体調製)
DMSOに懸濁したND(20mg/ml)、ND:プルバラノールA(10:1の比率、20mg/mlND、2mg/mlプルバラノールA)、およびプルバラノールAのみ(2mg/ml)の試料が調製された。DMSO混合物は、NDおよび薬物の種々の混合物で、5%DMSO溶液を作成するために、水で20倍に希釈された。
【0034】
ND:4−OHT複合体を調製するために、1mg4−OHTが、脱イオン化水内の174mM酢酸において可溶化された。ND(10mg/ml)は、4時間、超音波分解され、4−OHT試料に添加されて渦混合器で混合され、ND:4−OHT共役溶液(5mg/mlND、0.5mg/ml4−OHT)を生じさせた。溶剤のみ(174mM酢酸)、NDのみ(5mg/ml)、および4−OHTのみ(0.5mg/ml)溶液が、対照として調製された。
【0035】
(薬物吸着/脱着のUV−Vis分光光度特性化)
走査の前に、すべての試料は、それぞれ、4−OHTおよびNDについて、50μg/mlおよび500μg/mlの濃度に希釈された。すべての試料は、25℃で、2時間、14,000rpmで遠心分離され、ここで、上清は、200nmから600nmへ分光スキャンのために、以降、回収された。薬物負荷濃度は、初期の吸収度読み取りで構成されるND複合体プルダウン実験によって決定され、25℃および14000rpmでのすべての試料の2時間の遠心分離後、最終的な吸収度読み取りが行われた。次いで、負荷をかけられた薬物濃度が、初期および最終的な読み取りの間の差を計測することによって計算された。
【0036】
(透過電子顕微鏡法)
TEMは、ND:4−OHT溶液を超音波分解し、炭素TEM格子(Ted Pella)へ、液滴をピペット注入することにより、実行された。2時間の乾燥後、JEOL2100Fの電界放射電子銃TEMが、高電圧200kVの画像作成のために用いられた。本来のND試料が、同じプロトコルにより、さらに画像作成された。
【0037】
(粒子サイズおよびゼータ電位計測)
複合体の粒子サイズおよびゼータ電位が、Zetasizer Nano(Malvern Instruments)を用いて計測された。ND:4−OHTおよびDex−ND複合体が、以前に記載されたように、25%の水性DMSO内に調製された。ND:プルバラノールA複合体は、以前に記載されたように、5%の水性DMSO内に同様に調製された。NDおよびすべての複合体における治療薬の最終的な濃度は、それぞれ、1mg/mLおよび0.1mg/mLであった。すべてのサイズ計測は、90°散乱角において25℃で実行された。平均流体力学直径は、11回の計測の累積分析により得られた。ゼータ電位計測は、25℃において毛細血管内ウェルを用いて実行され、平均電位が、15回の計測の累積分析によって得られた。
【0038】
(DNA断片化分析)
水における5%DMSOの1:10の希釈、水における5%DMSO内のND(1mg/ml)、水における5%DMSO内のND:プルバラノールA(10:1の比率−1mg/mlND、0.1mg/mlプルバラノールA)、および水における5%DMSO内のプルバラノールA(0.1mg/ml)が、HepG2組織培養細胞に添加され、24時間、生育された。培養された細胞は、500μLの溶解緩衝剤(10mMのTris−HCl、pH8.0、10mMのEDTA、1%のTritonX−100)内に溶解された。37℃での30分の培養後、別のRNase AおよびプロテイナーゼK処理が行われた。フェノールクロロホルム抽出後、核DNAがイソプロピルアルコールにおいて単離され、−80℃で、一晩保存された。次いで、試料がDEPC水に再び懸濁され、その後、70%エタノールが、0.8%アガロースジェルを使用して洗浄および電気泳動され、最後に、臭化エチジウムによって着色された。
【0039】
(MTT細胞生存率分析)
MCF−7細胞は、75ug/mlのNDを含有するpH7.1MEM/EBSS培地、またはND:4−OHT複合体(75ug/mLのND、7.5ug/mLの4−OHT)の96ウェルプレート内の50%合流点へプレートされた。7.5ug/mL4−OHTは、陽性対照として使用された。すべての試料は、4−OHT ND複合体溶液に関連付けられた1.31mM酢酸から成る。培養は、製造業者の規定(Sigma−Aldrich)に従い、MTT系の細胞生存率分析を実行する前に、44時間、37℃、5%のCO2で維持された。吸収度は、Safire multiwell plate reader(Tecan)およびMagellan software(Tecan)を用いて、570nmで決定された。すべての試料は、3つ実行された。
【0040】
(結果)
NDは、以前記載されたように[22,26]、合成、精製、および処理された。フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)計測は、汚染物質[26]を除去するための精製プロセスにおける酸性治療の結果として沈着した表面上のカルボキシル基の存在を確認した。カルボキシル基の有用性は、薬物が外部刺激の際に最終的に放出できるように、物理吸着または静電相互作用によって、NDが薬物分子に接続できる能力に貢献すると仮定された。この例において、この仮説は、機能性分析に加え、多くの薬物ND画像作成および特性化実験、および薬物ND界面接続の分析のUV−Visによって確認された。
【0041】
肝臓癌の化学療法としてのその非常に大きい可能性のため、プルバラノールAは、NDを有する複合体にとって理想的な薬物であった。DMSOに可溶性のプルバラノールAは、細胞サイクル連鎖を中断可能な、サイクリン依存キナーゼ阻害因子である。菌、つまり、多くの場合、癌において連続的に発現する主要遺伝子を過剰に発現する細胞系において、死を促進することが示されている。細胞増殖における菌の役割のため、その過剰発現または突然変異は、多くの場合、癌を発生させる。4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)、不水溶性乳癌治療薬が、エストロゲン関連の癌に対する有効性の実証のために、別のモデル薬物系として選択された。最後に、デキサメタゾン(Dex)が、適用可能な他の生理学的条件の中でも、ステロイド性抗炎症薬としてのその幅広い臨床的関連性のため、さらなる薬物モデルとして選択された。すべてのND薬物複合体は、水において迅速に分散可能であることが実証され、拡張可能で、不水溶性の治療的化合物送達薬剤として、NDプラットフォームの潜在的な適用性を示している。
【0042】
NDの移入による可溶性の変化を試験するために、DMSOに懸濁したND(20mg/ml)、ND:プルバラノールA(10:1の比率、20mg/mlND、2mg/mlプルバラノールA)、およびプルバラノールAのみ(2mg/ml)の試料が比較された。DMSO混合物は、NDおよび薬物(図1A−1C)の種々の混合で5%のDMSO溶液を作成するように、水で20倍に希釈された。水での希釈後、プルバラノールAは、溶液から沈殿し、混濁液を生成した(図1C)。NDの存在は、溶液内の遊離型プルバラノールAの低減を示唆する、おそらくは効率的な薬物吸着によるND表面へ、プルバラノールA水溶液の濁度を大幅に低減する。NDおよび治療薬の間のこの表面接続は、この研究における多数の種類の薬物(例えばドキソルビシン、4−ヒドロキシタモキシフェン、デキサメタゾン等)について確認されている。本発明を理解または実行する必要はない、また、本発明を制限するのではないが、物理吸着が、プルバラノールAおよびNDの間の主な相互作用であると仮定されている。塩の添加および除去によるこの相互作用の調製により、小分子放出の可能性が以前に実証されている。26プルバラノールAとNDの接続面の可逆的な性質のために、複合体は、水において最初に薬物を分散させ、その以降の放出を促進させるための有利なプラットフォームとして役立つ。
【0043】
4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)は、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌のトリフェニルエチレン(TPE)治療戦略としてのその重要性から、ND薬物錯化のための第2の治療として選択された。4−OHTは、エタノールにおいて可溶性であり、多くの場合、他の薬物によって非特異的影響が生じることができる、系統的な投与および治療によって、乳房への局部的な活性のために処方される。4−OHT投与は、乳房[37−40]への新たな原発腫瘍の移入を防ぐことで、局部的再発のリスクを低減することが示されている。
【0044】
水における4−OHT溶解性のND媒介の向上は、プルバラノールA(図1D−1F)で行われた界面試験と同様の、25%のDMSO内にND、4−OHT、およびND:4−OHT試料を含むバイアルによって、視界の度合いを観察することにより、質的に検査および確認された。さらに、ND:4−OHTの界面接続を視覚的に確認するために、結合した4−OHTを有する、および有しないNDの透過電子顕微鏡(TEM)画像が比較された(図1G−1H)。ND溶液(図1H)への薬物の添加の際に不定形の4−OHT残留物が存在したことが、明確に観察された。
【0045】
さらに、ND:4−OHT界面接続が、UV−Vis分光光度分析(図2)に結合されたNDプルダウン分析によって質的に確認された。錯体形成されていないNDの波長走査は、NDの大部分が遠心分離の際にペレット化したことを明らかにし、上清(図2A)においてND残留物はほとんど残っていない。対照的に、錯体形成されていない4−OHTの同様の制御分析が、遠心分離の前後に実行された。UV−Vis吸収度におけるわずかな変化は、NDが存在しない場合に、遠心分離にもかかわらず上清内に同じ量の自由4−OHTが残留したことを実証した(図2B)。この読み取りは、遠心分離のために錯体形成されていない4−OHT分散の変化を特徴付けるための対照として役立った。したがって、これは、ND:4−OHT複合体が遠心分離の際にペレット化し、錯体形成されていない4−OHTが、上清内の4−OHT濃度の低下を生じさせる上清内に残留することを論理的にフォローする。この共役スキームは、NDおよび4−OHTの対照と同じ条件および濃度(図2B)における遠心分離の前後に、ND:4−OHT溶液のUV−Vis脱着を計測することにより、試験された。この実験は、大量の4−OHTが、おそらくはND:4−OHTの物理吸着およびクラスタ化によって、NDと共にプルダウンされたことを示す、遠心分離されていないおよび遠心分離されたND:4−OHT試料の間の吸収度の大きな変化を明らかにした。これらのデータは、NDが、4−OHTのみと比較して、25%DMSOにおける4−OHTの溶解性を高めるという観察結果を確認する。同じクラスタ化の影響が、FITC標識Dex−ND複合体(図2C)を使用してプルダウン分析内で観察された。
【0046】
本発明は、特定のメカニズムに制限されるものではなく、メカニズムの理解は本発明を実施するために必要ではないが、プルバラノールAおよびNDの間の相互作用と同様に、4−OHTおよびNDの間の相互作用は、さらに、主に、本質的には物理吸着および/または静電に起因するものと考えられる。4−OHTの構造から存在する電位双極子の結果として、表面カルボキシル基の存在が、ND:4−OHT隔離を保存するために2つの構成要素の間の界面作成に貢献することができたであろう。
【0047】
NDおよび各治療薬の間の静電相互作用の物理的効果を決定するために、複合体の粒子サイズおよびゼータ電位が、動的光散乱(DLS)によって検査された(図3)。3つの薬物のうちの溶解性の欠如は、最終的に、DMSOから水の滴定の際の粒子凝集によるものである。5%のDMSOにおいて、NDは、46.96nmの平均直径を有し、プルバラノールA、4−OHT、およびDexは、それぞれ、340μm、485.1nm、および1.245μmの粒子に凝集した。NDが錯化する際に、平均のプルバラノールA、4−OHT、およびDex、粒子のサイズは、それぞれ556nm、278.9nm、および77.55nm(図3A−3C)に低減した。試験されたすべての薬物の粒子サイズの低減が、NDの粒子の表面への薬物分子の物理吸着の証拠である。これらのデータは、NDに関連付ける薬物分子の能力を実証し、その結果として、粒子サイズの顕著な低減、場合によっては、けたちがいな低減が生じる。さらに、各薬物のゼータ電位は、NDとの関連付けの際に、より正となることが示された(図3D−3F)。この増加したゼータ電位は、中性の分子と比較して、荷電した複合体の周囲に水和シェルを形成するためのより大きな親和性を有する水分子のため、水中でのND薬物複合体の増加した溶解性に貢献する。
【0048】
さらに、実証されている増加した薬物溶解性は、粒子がより小さく、かつ、わずかに正に荷電した場合に細胞内在化が強化されることが示されているため[41−42]、増加した治療有効性に関する潜在的な臨床的利点をさらに有し得る。両方の特性は、負に荷電したプラズマ膜における内在化に有利であり、飲食作用および飲作用による薬物摂取を促進し得る。
【0049】
ND錯化による水における強化された分散後の薬物官能性を査定するために、プルバラノールA−誘導DNA断片化(図4A)を確認するように、DNAラダリング分析が実行された。断片化は、ND:プルバラノールAおよびプルバラノールAの試料の両方において明らかであり、NDへの隔離およびNDからの放出を実行後、プルバラノールの保持された生物学的活性を示した。このため、分析は、水溶液において水に溶けにくい薬物を分散させるだけでなく、さらに、プルバラノールAの治療活性を維持するための、NDの能力に対して証明した。
【0050】
さらに、ND:4−OHT複合体の化学療法の効果が、MTT細胞生存率分析(図4B)によって評価された。図4Bは、NDの報告された生体適合性を確認する、NDによるおよびNDなしのMCF−7培養の間の細胞生存率の顕著な差がないことを示す。さらに、ND:4−OHT複合体および4−OHTの陽性対照の間の細胞生存率の比較は、ND:4−OHT複合体が、薬物のみとしての化学療法効力と同じ大きさを有することを実証する。ND:4−OHT複合体への暴露は、陰性対照およびND培養に対して7倍以上、細胞生存率を下げた。最も重要なことには、これらの観察により、包括的に、NDの、薬物機能性を維持しながら、水溶性のND:4−OHT複合体の形成により、水における4−OHT分散を増加させる能力を確認する。
【0051】
この例は、水に溶けにくい治療薬の水分散を高めるためのNDの応用を実証している。プルバラノールAおよび4−OHT/デキサメタゾンが、それぞれ、DMSOおよびエタノールにおいて特徴的に可溶性であるために、モデル薬物として選択された。さらに、幅広く関連するサイクリン依存キナーゼ阻害因子/化学療法薬としてのプルバラノールAおよび強力な乳癌薬物としての4−OHTの機能性のため、それらの向上した水溶解性がは、臨床的領域へのそれらの継続的な転換を触媒する。NDは、水におけるそれらの懸濁を可能にするための疎水性薬物による迅速かつ高スループットの複合体形成および臨床的関連の応用を可能にする、医学的に重要なナノ材料類を示した。このため、NDは、維持された生体適合性によるこれらの薬物の容易な送達を促進できる拡張可能プラットフォームとして機能する。
【0052】
〔実施例2:アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体〕
本例は、ナノダイヤモンドタンパク質複合体の調製および試験について述べる。
【0053】
(細胞培養)
マウス細胞系RAW264.7マクロファージおよび3T3−L1線維芽細胞(ATCC Manassas,VA)は、37℃において、5%のCO2内に、それぞれ10%のBS(ATCC)および10%のCBS(ATCC)を含有する1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Cambrex,East Rutherford,NJ)により、DMEM(Cellgro,Herndon,VA)内に維持された。3T3−L1線維芽細胞は、90%の密集度に達するまで、10%CBSで補完されたDMEMにおいて培養され、一方で、含脂肪細胞分化が、以前に確立されたプロトコル[35、36]に従って開始した。培地は、DMEM、10%のFBS、0.86μMのインシュリン、0.25μMのデキサメタゾンおよび0.5mMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX)(Sigma Aldrich St.Louis、MO)で、4日間、取り替えられ、2日目に培地を新しくした。培地は、4日目に、DMEM、10%のFBSおよび0.86μMのインシュリンで取り替えられ、再び、6日目に、さらに4日間、HDMEM、10%のFBSで取り替えられた。細胞は10日目に完全に分化し、以降、DMEM、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンで培養された。
【0054】
(NDインシュリン複合体の形成)
水に分散されたナノダイヤモンド(NanoCarbon Research Institute Co.,Ltd.,Nagano,Japan)が、ND集合体をさらに分散するように、4時間(100W、VWR150D Sonicator)、超音波処理が行われた。水性インシュリンが様々な比率でND溶液へ添加され、物理的吸着によるNDへのインシュリン結合を促進するために、完全に混合された。
【0055】
(タンパク質特性化)
FITC標識インシュリン(Sigma−Aldrich)が、1mMの原液に溶解された。試料は、約494nm(ピークは溶剤によって変化する)のピーク吸収度で、Beckman Coulter DU730UV/vis分光光度計(Fullerton,CA)を用いて計測された。酢酸(pH3)内に溶解され、1mMのNaOHで中性化されたウシインシュリン(Sigma−Aldrich)は、FITCインシュリンからの結果を補完するように使用された。タンパク質検出は、Micro BCAタンパク質分析キット(Thermo Scientific,Rockford,IL)を使用して実行され、562nmの吸収度を計測した。
【0056】
(FT−IRおよびTEM特性化)
インシュリンに対し4:1の比率のNDが調製され、14,000rpmで2時間遠心分離され、上清が除去された。NDインシュリンペレットは、水で清浄され、真空下で乾燥された。個別のNDおよびインシュリン試料が、各溶液の脱水化によってさらに調製された。さらに、pH10.5に調整した1mMのNaOHをNDインシュリンに添加し、14,000rpmで2時間遠心分離し、NDペレットを解離することで、TEM画像作成のために、NaOH処理したNDインシュリンの試料を調製した。試料は、Thermo Nicolet Nexus 870 FT−IR分光計およびHitachi H−8100TEM(Pleasanton,CA)を使用して、室温で特性化された。
【0057】
(DLS分析)
試料の流体力学サイズおよびゼータ電位が、Zetasizer Nano(Malvern Instruments,Worcestershire,United Kingdom)によって計測された。NDおよびインシュリンは、以前記載されているように調製された。簡単に、粒子が、50mg/mLの濃度で、対応するpHで、緩衝剤に懸濁された。サイズ計測は、25℃および173°の散乱角で実行された。平均流体力学直径が、累積分析によって決定された。ゼータ電位計測は、自動モードでひだ状の毛細血管内細胞を使用して実行された、水性媒体内の微粒子の電気泳動移動度に基づいた。
【0058】
(インシュリン吸着および脱着)
NDへのインシュリン吸着の決定が、遠心分離の前後に、タンパク質検出分析によって実行された。インシュリンは、ND懸濁へ添加され、2時間、14,000rpmで遠心分離され、生成された溶液が抽出および定量化された。脱着されたインシュリンの検出は、懸濁しているNDインシュリン試料に対し、様々なpHに調整された、1mMのNaOHのアルカリ溶液を添加することにより、実行された。結合の比率は、吸着試験と同様に決定された。
【0059】
さらに、累積インシュリン放出を決定するために、5日脱着試験が実施された。試料は、NDおよびインシュリン(4:1の比率)を組み合わせ、14,000rpmで2時間遠心分離し、吸着されていないインシュリンを除去するために残留溶液を抽出することにより、調製された。以降、pH10.5に調整された1mMのNaOH溶液は、BCA分析を利用してタンパク質濃度を決定するように、試料に添加され、完全に混合され、24時間後に遠心分離された。アルカリ媒介放出に加えて、水が、別個の試料の組に添加された。各条件の各計測後に試料がNaOHまたは水で補給され、5日にわたって、24時間毎にプロセスが繰り返された。
【0060】
(MTT細胞生存率分析)
RAW264.7マウスマクロファージが、96ウェルプレートでプレートされ、8時間血清飢餓され、24時間培養された。飢餓後の培地は、以下の条件、つまり、DMEM、0.1μMのインシュリン、1μMのインシュリン、DMEM10%のFBS、pH10.5でNaOHによってNDインシュリン複合体から放出された約0.1μMのインシュリン(インシュリンは培地に存在する)、水における遠心分離されたNDインシュリンから生成された溶液、pH10.5(1μM全インシュリン、NDインシュリン複合体が培地に存在する)でNaOHで処理したNDインシュリン、およびNDインシュリン(1μMの全インシュリン、NDインシュリン複合体が培地に存在する)で構成された。NaOH内に吸着されたインシュリンでNDの試料を遠心分離し、0.1μMのインシュリンに対して培地で再構成できる、生成溶液を抽出することにより、NDから放出されたインシュリンが調製された。同様に、関連する脱着分析の中性の溶液として水が利用された。全量の10%に相当する、臭化メチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウム(MTT)溶液(Sigma−Aldrich)が添加され、3時間培養された。ホルマザン結晶形成の後、培地が除去され、MTT溶剤、無水イソプロパノール内の0.1N HCl(Sigma−Aldrich)が、MTT着色剤を可溶化するために試料に添加された。試料の吸収度計測は570nmであり、690nmの波長のバックグラウンドから成る。
【0061】
(数量的RT−PCR)
RT−PCR手順は、以前に記載されたように実施された[35]。3T3−L1脂肪細胞は、6ウェルプレートにおいてプレートされ、4時間血清飢餓され、次いで、DMEMの溶液媒体、0.1μMインシュリン、NaOH(pH10.5)によってNDインシュリンから放出された約0.1μMのインシュリン、pHが中性の水における遠心分離されたNDインシュリン、NaOHで処理したNDインシュリン(1μMの全インシュリン)およびインシュリンと結合したND(NDインシュリン、1μMの全インシュリン)からの生成溶液の、媒体溶液で、回収された。DMEM、インシュリン、NDおよびNaOH含有の溶液媒体の調製は、MTT分析で実行されるものと同様に実施された。RNA解離は、遠心分離によって遺伝子材料を取得するように、トリゾール試薬(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)によって細胞を溶解し、クロロホルムに添加することで、完了した。cDNA合成は、iScript Select cDNA Syhthesis Kit(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して実行された。Ins 1およびCsf3/G−csf遺伝子(Integrated DNA Technologies,Coralville,IA)のPCR発現は、SYBER Green検出試薬(Quanta Biosciences,Gaithersburg,MD)を用いて、MyiQ Single Color Real−Time PCRマシン(Bio−Rad,Hercules,CA)によって定量化された。Rpl32遺伝子(Integrated DNA Technologies)は、試料の中でもcDNAの正規化のハウスキーピング遺伝子として役立った。遺伝子のプライマ連鎖は、次のように与えられた。Ins1,5’−AGGTGGCCCGGCAGAAG−3’(配列番号:1)および5’−GCCTTAGTTGCAGTAGTTCTCCAGCT−3’(配列番号:2)、Csf3/G−csf,5’−CCAGAGGCGCATGAAGCTAAT−3’(配列番号:3)および5’−CGGCCTCTCGTCCTGACCAT−3’(配列番号:4)、Rpl32,5’−AACCGAAAAGCCATTGTAGAAA−3’(配列番号:5)および5’−CCTGGCGTTGGGATTGG−3’(配列番号:6)。
【0062】
(FT−IRおよびTEM)
本発明は、特定のメカニズムに制限されず、メカニズムの理解は本発明の実施に必要ではないが、図9は、それぞれ中性およびアルカリ性の溶液内のインシュリン吸着および脱着の提案されたメカニズムの図を示す。図10内の透過電子顕微鏡法(TEM)画像は、そのままのND(a)、吸着されたインシュリンを有するND(b)、およびNaOHによる処理後のNDインシュリン複合体(c)を示す。(b)において、厚さ約5〜10nmのNDをコーティングする材料の明らかな層が存在する。NaOH処理したNDインシュリン試料(c)は、質的に、ND上の材料の減退した層を示し、NDインシュリンのNaOH処理が、ND表面上に存在する材料を除去したことを示唆する。フーリエ変換赤外(FT−IR)分光法(図11)は、ND上のインシュリンの存在を示す。インシュリン(1)、そのままのND(2)およびNDインシュリン(3)の試料が示され、NDインシュリン上のスペクトルピークは、インシュリンと同様の特徴的なピークを示す。
【0063】
(DLS分析)
NDおよびインシュリンの間の相互作用は、動的光散乱(DLS)分析によって特性化され、表1にまとめられた流体力学ナノ粒子クラスタサイズおよび多分散指数ならびに図12に図示されたゼータ電位を明らかにする。平均のNDクラスタサイズはpH7および10.5において同様のままであり、一方で、インシュリンは、pH10.5より大きい平均サイズを示した。NDインシュリン複合体は、そのままのNDおよび低下した多分散性指数と同程度の平均サイズを実証した。NDは、pH7および10.5の両方においてわずかに正のゼータ電位を示し、インシュリンおよびNDインシュリンは、負の値を生じさせた。pH10.5におけるインシュリンおよびNDインシュリンゼータ電位は、実質的に、pH7において同様の試料よりも負であった。
【0064】
(吸着)
図9は、中性溶液内のインシュリンがNDへの物理的吸着によってどのように結合するかの仮想的な概略を示す。様々な濃度のFITCインシュリン試料は、吸着を促進するために、100μg/mLのNDと完全に混合された。NDインシュリン(図13−a)の吸収度スペクトルは、NDへのインシュリンの吸着のために、水性インシュリンの吸収度スペクトルとは異なる。しかしながら、NDインシュリン複合体は、インシュリンの存在を定量化するために必要なスペクトル特性を保持する。NDの分子量は、吸着された材料に加え、遠心分離による構成要素の分離を可能にする。残留溶液の分離および分析により、荷重能力およびNDからの生成された放出に関するサポートデータが生じる。図13−aは、ND対インシュリンの5:1の比率でのFITCインシュリンのタンパク質吸着を示し、これは、水における89.8±8.5%の結合を示す。NDインシュリンおよびインシュリン試料は、遠心分離の前後で計測され、遠心分離のため、インシュリン試料と比較して、NDインシュリン試料より低いインシュリン濃度が生じた。
【0065】
BCAタンパク質分析を実施する標準ウシインシュリンを用いて、同様の試験が実施された。25μg/mLインシュリンの100μg/mLのND(ND対インシュリンの比率4:1)への吸着は、インシュリン上の遠心分離のプルダウンの影響を考慮して、79.8±4.3%結合を示した。図13−bは、遠心分離の前後のNDインシュリン試料の吸収度スペクトルを示し、ピーク吸収度は562nmであった。遠心分離された試料の吸収度は、初期の試料の吸収度より大幅に低い。
【0066】
タンパク質結合の比率が、初期および遠心分離された試料の間の吸収度の差を計算し、初期および遠心分離されたインシュリン制御の差を減算することにより、決定された。インシュリン対照は、インシュリンが遠心分離される場合に形成されるわずかな勾配によって考慮する必要がある。
【0067】
(脱着)
脱着分析が、吸着分析と同様に実施された。FITC標識および標準インシュリンの水溶液が、それぞれ5:1および4:1の比率でND懸濁に添加された。初期および遠心分離された試料が計測され、脱着されたインシュリン量が計算された。pH値8.90、9.35、10.35および11.53で放出されたFITCインシュリンを比較すると、最大脱着は、最もアルカリ性が高いpH(図13−c)で示された。pH10.7における別個の試験は、53.3±1.2%脱着を実現するNDインシュリン複合体を示す。pH7.1、9.3および10.6におけるNDからの標準インシュリン放出は、さらに、10.6(図13−d)のpHで生じた最も大きい溶出を示した。この脱着特性は、インシュリン放出が、溶液のpHへの比例を実証することを示す。pH10.5におけるNaOHの存在下の4:1の比率でのNDおよびインシュリンで実施された別個の試験は、インシュリンの31.3±1.6%放出を生じさせた。
【0068】
図14は、NaOH(pH10.5)および水における5日間にわたるNDからのインシュリン放出を示す。溶出された累積インシュリンは、吸着された全インシュリンの重量パーセンテージで定量化された。アルカリ性条件(pH10.5)から1日目までに放出されたインシュリン量は、0.2±0.1重量%の水の試料のものと比較して、32.7±1.9重量%であり、2つの試料の間の放出の大きな差が明らかになった。3日目までに、両試料は、横ばい状態になり、インシュリン放出は大きく減少する傾向となり、5日目までに、NaOHおよび水によって溶出された全インシュリン量はそれぞれ、45.8±3.8重量%および2.2±1.2重量%であった。これらの値は、水を含有するものと比べ、NaOHを含有する試料から放出されたインシュリン量は20倍よりも多いことを示す。
【0069】
(MTT細胞生存率分析)
異なるインシュリンおよびND条件、つまり、DMEM(1)、0.1μMのインシュリン(2)、1μMのインシュリン(3)、NaOH(pH10.5)によってNDインシュリン複合体から放出された約0.1μMのインシュリン(4)、水において遠心分離されたNDインシュリンから生成された溶液(5)、NaOHで処理したNDインシュリン(1μMの全インシュリン)(6)、インシュリンと結合したND(NDインシュリン、1μMの全インシュリン)(7)およびDMEM10%FBS(8)における細胞生存率試験が実施された(図15)。なお、両方のND含有試料でNDに吸着されたインシュリン量は、インシュリンがND表面から完全に解離する場合に、培地内の1μMと等しい。0.1μM(2)から1μM(3)インシュリンへ、より大幅に高い相対生存率が生じ、より高いインシュリン濃度では生存率が増加することが推論される。NaOH(4)によりNDインシュリンから放出されたインシュリンの相対生存率は、0.1μM〜1μMのインシュリン廼相対生存率の間の相対生存率と同程度である。以前の脱着結果は、生成溶液におけるインシュリンの顕著なレベルを明らかにしているが、水(5)によって脱着されたインシュリンは、0.1μMのインシュリンの相対生存率と同様の相対生存率を示した。NaOH(6)で処理したNDインシュリンは、1μMのインシュリンの相対生存率よりも大きいが10%のFBS培地の相対生存率未満である、より向上した相対生存率を実証した。NDインシュリン(7)により、水によって放出されたDMEMおよびインシュリンと比較して低い相対細胞生存率が生じる。NaOHで処理したNDインシュリンおよびNDインシュリン条件において、NDは、NDが存在しない同様の試料と比較して、NDによる細胞相互作用を可能にする、回収期間、培地に存在した。標準的な培地、DMEM(8)における10%FBSは、最も高い相対生存率を示した。差異分析(ANOVA)統計検査が実施され、P<0.01となったが、これは、試料基における顕著な差を示す。
【0070】
(数量的RT−PCR)
前駆含脂肪細胞分化により、細胞の90%超(図16)内の形態変化および脂質小胞形成の観察に基づき、移入後10日目までに脂肪細胞が生じる。前駆脂肪細胞(a)は、はっきりと視覚可能な脂質小胞によって、脂肪細胞(b)とは異なる。脂肪細胞上の放出されたインシュリンの効果が、遺伝子インシュリン1(Ins1)および顆粒球コロニー刺激因子(Csf3/G−csf)のRT−PCRによって定量化され、ハウスキーピング遺伝子リボソームタンパク質L32(Rpl32)によって正規化される。様々な溶液媒体に対応するIns1の相対発現が示される(図17−a)。DMEM(1)と比較して、NaOH(3)によって放出されたインシュリンおよびNaOH(5)で処理したNDインシュリンが、最も高い相対発現を示し、これらの条件が、Ins1における最も大きい影響を有することを示す。水(4)およびNDインシュリン(6)によって放出されたインシュリンは、インシュリンのみの条件(2)と比較して中程度の発現レベルを生じさせ、これは、Ins1の最も低い発現を示す。Csf3/G−csf相対発現は図17−bに示され、水(4)によって放出されたインシュリンおよびインシュリン(6)と結合したNDは大幅に低いが、NaOH(3)によって放出されたインシュリンおよびNaOH(5)で処理したNDインシュリンの両方は、高い発現レベルを実証するという点で、Ins1と同様の傾向を示す。しかしながら、Csf3/G−csf上の0.1μMのインシュリンの効果は、Ins1の効果と比較して高かった。ANOVA統計検査は、P<0.01となり、試料基における顕著な差を示す。
【0071】
(物理的吸着)
ND合成中の条件は、水溶液[8、28、29]内の特徴的な表面電荷をもたらすことができる、ヒドロキシルおよびカルボキシル基の非常に官能化された親水性の炭素表面を生じさせる。かかる官能基は、陰イオンの末端基(−COO)およびポリペプチドのプロトン化アミノ基(−NH)の間の静電引力による、タンパク質の物理的吸着の有利な条件を示す。電荷と電荷相互作用に加え、水素結合は、10〜30kcal/mol[33、34、37]の間のエネルギーを結合するH結合により、−NHおよび−COOまたは他のCO含有表面基の間に形成できる。インシュリン分子の外部の荷電したアミノ酸性残留物はその親水性に貢献し、ND表面に付着できる。インシュリンの等電点は、中性のpHにおけるわずかに負の正味電荷を示す、約5.6[38]であるが、ND官能基およびアミン生分子の間の静電相互作用およびH結合によって、引力のある相互作用が生じ得る。図9は、中性の環境内のNDへのインシュリン吸着の概念を仮想的に示す。
【0072】
TEM画像は、そのままのND(a)と比較して、ND表面をコーティングする材料の視覚可能な層を有する、水性インシュリン(図10−b)の浸漬後のNDを示す。インシュリン(b)の添加は、識別要因にすぎないため、吸着されたインシュリンとして識別される材料層(厚さ5−10nm)よりも優先される。図10に見られるNDクラスタは、ND上の官能基への実質的なインシュリン吸着を可能にする、非常に高い表面エリアを有している。実際に、ND特性化は、以前に、450m2/g[9]の顕著な表面エリアを示していた。TEM画像作成は、タンパク質結合の視覚的認識を提供し、吸着は、FT−IR分光法によって定量化可能である。NDへのインシュリン吸着は、インシュリン、そのままのNDおよびインシュリンと結合したNDのFT−IR特徴化によって検証される(図11)。特徴的な多種多様のインシュリン(a)は、吸着されたインシュリン(b)なしにはNDから取得されない定量化可能な結果である、インシュリンと結合した多種多様なND(c)においてよく見られる。TEMおよびFT−IRは、ND表面へのインシュリン吸着のさらなる証拠を提供する。
【0073】
NDインシュリン複合体のさらなる実体化は、UV/vis分析によって与えられる。吸着試験は、適した結合能力(生成された溶液における余剰インシュリンの欠如)におけるNDのFITCインシュリンに対する5:1の比率を明らかにし、89.8±8.5%の吸着を実証した。遠心分離されたNDインシュリン試料(図13−a)に計測可能な吸収度が存在しないことは、NDへの大きなFITCインシュリン吸着を表す。初期および遠心分離されたNDインシュリン試料の間の485nmの吸収度差は、NDの分子量および遠心分離において結合したインシュリンによるNDの安定化に起因しており、溶液内には少量の残留インシュリンが残る。初期および遠心分離されたインシュリン制御試料の間のわずかな差は、水溶液に対するインシュリンの分子量が構成要素の分離を可能にすることから、吸着値を正規化するために使用される。図5−aは、インシュリンの吸収度スペクトルと比較して、NDインシュリンの改変された吸収度スペクトルを明らかにし、インシュリンおよびNDインシュリンの吸収度ピークは、485nmから505nmへ変化している。このピークの変化は、FITC標識インシュリンがNDに吸着する場合の、FITC分子の最適な特性における変化のためのものであると考えられ、タンパク質構造内の考えられる立体配座の変化は、多くの場合、タンパク質吸着[39]において観察されることを示す。
【0074】
同様の結果は、ND対インシュリン結合の4:1の最適比率を有する標準ウシインシュリン吸着試験から得られた。標準ウシインシュリンのより高い吸着比率は、FITC標識インシュリンの分子量と比較したインシュリン分子量を考えて、予期される。図13−bは、BCAタンパク質分析吸収度を示し、実質的な79.8±4.3%インシュリン吸着に関する初期および遠心分離されたNDインシュリン試料のピークについての対照的なピークを明らかにする。
【0075】
FITC標識および標準インシュリンを含むインシュリン吸着試験は、タンパク質ND結合[34]を検証する以前の調査と合致しており、例外的な吸着機能を示し、インシュリンの約80%が、最適NDインシュリン比率でND表面へ結合する。吸着試験によって実証されたNDのタンパク質負荷能力は、利用可能なタンパク質の大部分がND表面に吸着される場合の比較的効率的な薬物負荷プロセスを示唆する。水溶液内の物理的吸着の単純な方法は、薬物または物質の特性に影響を与えかねない共役手順を排除することによる薬物送達調製方法にとって理想的である。
【0076】
NDおよびインシュリンの間の物理的相互作用が、さらに、動的光散乱(表1)によって特徴付けられた。
【0077】
【表1】

【0078】
表1は、pH7および10.5の流体力学ナノ粒子クラスタサイズおよび関連付けられた多分散指数(PDI)のDLS分析を示す。NDは、両方のpH条件における同様のサイズおよびPDIを示すが、pH10.5のインシュリンは、増加したPDIによってより大きい粒子を形成する傾向がある。NDインシュリン複合体の形成の際に、PDIは低下し、NDは、クラスタの比較的非均一な分布サイズに介在することを示唆する。
【0079】
インシュリンが、アルカリ溶液内のより大きいサイズへ統合される一方で、NDはpH7および10.5において同様の流体力学サイズおよび分布のクラスタを形成した。NDによって錯化される際に、多分散指数が低減するだけでなく、クラスタのゼータ電位がさらに負の値に変化した(図12)。PDIの低減は、NDインシュリン複合体の形成によって見られるように、インシュリンの形成と比較して、より均一なナノ材料タンパク質複合体のND媒介発達を示す。NDは、もともと、アルカリ溶液内のわずかに正のゼータ電位を維持していたが、インシュリンは、本質的に、アルカリ溶液においてさらに低減された負のゼータ電位を有していた。このゼータ電位は、ND表面上へのインシュリン付着を示唆する、NDとの移入の際に保持された。pH10.5におけるクラスタのゼータ電位は狭い限られた値の範囲内に存在するため、この結果はさらに検証される。そのままのNDおよびNDインシュリンの間のゼータ電位の明白な差は、NDおよびインシュリンの間の相互作用を示す。
【0080】
(pH媒介脱着)
NDインシュリン複合体からのインシュリンの放出は、水酸化アルカリナトリウム溶液において観察され、pH修飾によって影響を受ける電荷特性の変化によって説明できる。等電点より上のpHの水性環境におけるインシュリンは、官能末端基の電荷の改変のため、負の正味の表面電荷を運搬し得る。以降、負の電荷は、増加したアルカリ性と共に強くなることができ、他の種を有する電荷相互作用に影響する。このため、脱着におけるpHの影響は、かなり直接的である。静電相互作用によってND表面上で荷電された官能基と結合したインシュリン分子および水素結合は、水性環境が中性からアルカリ性へ変わると、改変された電荷特性を表示し始め、したがって、静電反発力によって、NDから放出される。
【0081】
脱着されたインシュリンの量は、溶液のpHに対して比例しているようであり、アルカリ溶液(図13c−d)における増加したインシュリン放出を示す。FITC標識インシュリン脱着(図13−c)の吸収度スペクトルは、pHが8.90から11.53になると、における脱着の増加を表し、標準インシュリンによって同様のパターンが図13−dにおいて表される。これらの結果は、以前記載されたpH依存脱着前提と合致する。NaOH内の標準インシュリンの31.3±1.6%脱着は、インシュリンが、脱着され、ND表面から水性媒体への以降の放出することが可能であることを実証する。
【0082】
多くの実用的な応用は時間をかけた薬物放出を必要とし、インシュリンの時間放出を定量化するには、5日の脱着試験が、NaOHおよび水の両方において結合したインシュリンによるNDによって実施された。図14内の2つの放出曲線間の不均衡は、アルカリ性および中性の溶液の脱着能力の差を例示する。アルカリ性媒介脱着は、5日目までに、水の2.2±1.2%のみと比較して、45.8±3.8%に達した。脱着の大部分は試験の一日目までに生じ、これはNDからのインシュリンの大放出を示唆した。しかしながら、2日目には、中程度のインシュリン放出は生じなかった。インシュリン放出の時間依存度は、NDインシュリン複合体が、アルカリ性環境に暴露される際のインシュリンの遅い放出を可能にする。
【0083】
(タンパク質機能の維持)
上記で記載した結果は、pH媒介インシュリン脱着の基礎を確立するが、かかるシステムの実用的利用は、ND表面からの放出の際の薬物の保持機能に依存する。MTT生存率分析およびRT−PCRから得られたデータは、インシュリン機能が、細胞生存率および遺伝子発現によって示されるように、脱着するように、以降、保存されることを示す。さらに、ND表面上に封鎖されたインシュリンは、NDインシュリン複合体の存在にもかかわらず、細胞経路に対して非活性のままのようである。
【0084】
細胞生存率データ(図15)は、NaOHおよびNaOHで処理したNDインシュリン複合体によって、NDから放出されたインシュリンによる細胞回収の増加を明らかにし、後者は、溶液媒体内のNDおよび脱着されたインシュリンで構成される。これらの2つの培地条件における増加した細胞の生存率レベルは、DMEMのベースラインと比較して、放出されたインシュリンは、飢餓期間後の細胞回収経路を活性化していることを表す。さらに、NaOHで処理したNDインシュリンの生存率は、放出されたインシュリンおよび、そのままのND表面を生じさせ得る、または生じさせない場合があるNaOH処理したNDの存在下において、細胞回収が生じることを示す。血清飢餓およびRAW264.7マクロファージ[40]におけるインシュリン回収を実施する以前の調査は、インシュリン媒介の回収を示す、獲得されたMTTデータと合致する。
【0085】
水およびNDインシュリンによって放出されたインシュリンは、対照的に、低い生存率レベルを生じ、これは、中性の環境においてほとんどまたは全くインシュリン放出がないことを示唆する。NDインシュリン複合体は、吸着されたインシュリンが、ND表面上に暴露されたインシュリンによって細胞経路に影響を与えることを防いでと思われる。タンパク質は、多くの場合、改変された物理的特性を生じさせる表面[39]に吸着される場合に、立体配座の変化を実行することが公知であり、ND表面上のインシュリンの構造の変化は、細胞経路の活性化を防ぐことがある。アルカリ性による媒介までの、可溶性環境からのインシュリンの効果的な隔離が、この系統のインシュリン放出を標的とするための鍵である。
【0086】
RT−PCRからの遺伝子発現は、MTT生存率分析からの結果と、密接に相関する。図17は、含脂肪細胞[35]のインシュリン刺激によって上方調整される遺伝子Ins1およびCsf3/G−csfの相対発現を示す。NaOHによって放出されたインシュリンおよび各遺伝子について増加したNaOHで処理したNDインシュリンを含む試料の発現レベルは、ND表面からの脱着後のインシュリンの効果を実証する。活性インシュリンが存在しない場合、DMEMベースラインによって示されるように、発現レベルは増加しない。MTTの結果と同様に、水およびNDインシュリンによって放出されるインシュリンは、各遺伝子について低減した発現レベルを示し、細胞経路を活性化するために、不十分な応答または低減したインシュリン濃度を示す。これは、タンパク質活性が、インシュリン刺激に起因すると考えられる遺伝子発現によって決定されるように、NDから脱着するインシュリンについて保持されることを示す。さらに、吸着されたインシュリンは、ND表面に結合しているが、細胞生存率または遺伝子発現は増加させない。このように、NDインシュリン複合体は、中性溶液における残留物は安定したまま、アルカリ性環境における標的インシュリン(または他のタンパク質)送達の独自のアプローチを示す。
【0087】
これらの結果は、さらに、治療目的で拡張可能な観察結果であるNDからのインシュリン吸着および溶出がpH依存であることを示す。本発明は特定のメカニズムに制限されず、メカニズムの理解は本発明の実施のために必要ではないが、インシュリン脱着は、おそらくはタンパク質の表面電荷の変化作用によるアルカリ性環境の増加に示され、したがって、NDとインシュリン引力の傾向を低下させる。このpH媒介脱着メカニズムの活用により、向上された薬物送達方法について独自の利点を提供し得る。成長ホルモン[41−45]として作用することにより、インシュリンが創傷治癒を加速させることはよく理解されている。さらに、以前の調査により、細菌増殖のため、時には10.5[46、47]もの高いpHである、創傷組織のアルカリ度の増加が確認されている。これらの2つの観察結果を考慮すると、NDインシュリン複合体を、創傷治癒の治療の有用な治療薬物送達系として使用してもよい。吸着されたインシュリンによるNDの投与は、治癒プロセスを短縮し、アルカリ性創傷エリアにおけるインシュリンの放出により、感染症の発生を低下させることが可能であり得る。インシュリンの系統的な活性化は、インシュリン放出が怪我の部位において発生するため、制限される。このため、本発明は、インシュリン賦形剤としてNDを使用する再生治療として、怪我の創傷に方向付けられる標的インシュリン放出メカニズムを提供する。
【0088】
本発明の実施形態の開発において実施された実験は、単純な物理的吸着によるNDへのインシュリンの効率的、非共有吸着を実証し、タンパク質脱着のpH依存を調査した。アルカリ環境へのNDインシュリン複合体の暴露は、NDおよびインシュリンの間の相互作用に介在し、タンパク質放出を生じさせる。画像作成方法および吸着/脱着分析から、アルカリ条件におけるNDへのインシュリンの効果的な結合および顕著なインシュリン放出が明らかである。MTTおよびRT−PCR分析は、吸着されたインシュリンは大部分が不活性のままである一方での、脱着後の保存の機能を示す。
【0089】
〔実施例3:ナノダイヤモンド薬物結合分析〕
ナノダイヤモンド薬物結合分析は、幅広い範囲のアントラサイクリンおよびテトラサイクリン化合物の間の強力な相互作用を確認するために、本発明の実施形態の開発において実行された。ダウノルビシン、イダルビシン、およびその他等の治療薬の結合効率が、UV−vis光度法、ならびに遠心分離分析(図18〜39を参照)を使用して分析された。すべての場合において、ナノダイヤモンド薬物相互作用は、治療薬(図19、22、25、28、30、33、36、および39を参照)を総合的にペレット化することができ、分光光度分析によってさらに確認された強力な吸着を示した。図17〜18、20〜21、23〜24、26〜27、29を参照、図17〜18、20〜21、23〜24、26〜27、29,1〜32、34〜35、および37〜38を参照)。
【0090】
〔参考文献〕
(I部(可溶性ナノダイヤモンド薬物複合体)および例1からの参考文献)
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【0091】
本出願において言及されるすべての刊行物および特許は、参照により、本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の記載されている方法および組成物の種々の修正および変形が、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好適な実施形態に関して記載されているが、特許請求される本発明が、かかる特定の実施形態に過度に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、関連する分野における当業者には自明である、本発明を実施するために記載されている形態の種々の修正は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】NDは、水にプルバラノールAおよび4−OHTを分散させる能力を向上させる。バックグラウンドに対してバイアルが調製され、NDによって行われた濁度の低減が、以下の条件、つまり、A)水における5%のDMSO内の1mg/mlのND、B)水における5%のDMSO内の1mg/mlのND、0.1mg/mlのプルバラノールA、C)水における5%のDMSO内の0.1mg/mlのプルバラノールA、D)水における25%のDMSO内の1mg/mLのND、E)水における25%のDMSO内の1mg/mLのND、0.1mg/mLの4−OHT、F)水における25%DMSO内の0.1mg/mL4−OHTにおいて確認された。G)本来のNDのTEM画像である。H)4−OHT残留物が、NDと薬物の相互作用を確認するために、ND表面において確認できた。スケールバーは、10nmを示した。
【図2】UV−Visは、ND:4−OHTおよびDex−ND複合体プルダウンの分光光度分析である。A)遠心分離後のND試料のUV−Vis分析は、UV−Vis吸収度の低下を明らかにし、4−OHTと界面を接続するための薬剤としてNDを利用し、ペレット化したND試料へ薬物を引き付ける能力を確認する。B)4−OHTおよびND:4−OHTのUV/Vis吸収度の間の比較プロットは、NDおよび4−OHTの界面接続を示す。溶液における自由4−OHTは、遠心分離によって水溶液から除去された、NDへの物理吸着の結果として低下した。なお、それぞれ、遠心分離前後の4−OHTを表す、重複する黒い点線および黒い実線によって示されるように、NDが存在しない場合に、水性上清相から4−OHTを分離することへの影響は認められない。C)さらに、遠心分離後のDexの封鎖によって示されるように、Dex−ND複合体形成が確認された。
【図3】粒子サイズおよびND薬物複合体のゼータ電位のDLS分析。(図3A−3C):すべての薬の平均粒子サイズは、NDの物理吸着の際に低下した。(図3D−3F):すべての試料のゼータ電位は、NDとの錯化の際により正になった。
【図4】治療的生体機能性分析は、NDの錯化による強化された分散の際の維持された薬物活性を確認する。A)プルバラノールA活性の保存は、以下のレーン指定、つまり、A)DNAマーカ、B)負の制御(追加なし)、C)水溶液における5%のDMSO、D)水溶液における5%のDMSO内の1mg/mlのND、E)水溶液における5%DMSO内の1mg/mlのND、0.1mg/mlのプルバラノールA、F)水溶液における5%DMSO内の0.1mg/mlのプルバラノールAによる、DNA断片化分析によって確認された。レーンEは、NDプルバラノールA複合体の強力な活性を確認した。B)MTT細胞生存率分析は、NDによる複合体形成後に、4−OHTの保存された治療活性を確認するために実行された。以下の条件、つまり、(−):負の制御、(+):正の制御、7.5ug/mLの4−OHT、ND:75ug/mLのND、ND:4−OHT:75ug/mLのND、7.5ug/mLの4−OHTが検査された。すべての条件は、1.31mM酢酸を含有する培地内であった。正の制御およびND:4−OHT試料の間の細胞生存率レベルの比較は、NDに錯体形成される場合に保存された4−OHTの効力を示す。3つのうちのある代表的な実験を示す。
【図5】(A)アミノ官能化ナノダイヤモンドおよび(B)低分子量ポリエチレンイミン(PEI800)修飾ナノダイヤモンドの概略図。
【図6】ナノダイヤモンドおよびpDNA結合前の官能化Eナノダイヤモンドのサイズ(A)およびゼータ電位(B)。粒子を、60ug/mlの濃度、3ugのpDNA/mlの固定濃度を有するpDNA結合後のナノダイヤモンドおよび官能化ナノダイヤモンドのサイズ(C)およびゼータ電位(D)で、脱イオン化水に懸濁した。173°の散乱角において25℃でZetasizer Nano ZS(Malvern,Worcestershire,United Kingdom)を使用して、サイズ計測が実行された。平均流体力学直径は、累積分析によって決定された。ゼータ電位計測は、自動モードのひだ状の毛細血管内細胞を用いて実行された、水性媒体内の粒子の電気泳動移動度に基づく。データは、平均±標準偏差(n=2)として表す。(E)ND−PEI800/DNAのTEM画像。スケールバーは20nmである。
【図7】PEI800官能化ナノダイヤモンドは、HeLa細胞における効率的な遺伝子トランスフェクションを媒介した。HeLa細胞は、トランスフェクション前24時間、105/ウェルの密度で、24ウェルプレートに播種された。ナノ粒子が細胞に添加され、37℃で4時間培養された。洗浄の際に、細胞は、44時間さらに培養された。粒子濃度は、3μg/ウェルの標的pLuc用量で、異なる重量比を元にして計算された。トランスフェクション後48時間、細胞採集およびルシフェラーゼ分析が実行された。データは、平均±標準偏差(n=2)として表される。*は、細胞溶解物内のタンパク質の10RLU/mgよりも低いトランスフェクション効率を有する粒子を表す。
【図8】5(A)および15(B)の重量比におけるND−PEI800/pGFP、5(C)および15(D)の重量比における非修飾ナノダイヤモンド/pGFP、5(E)および15(F)の重量比におけるPEI800/pGFP、および裸pGFP(G)によって、行われた生体HeLa細胞内のGFP発現の明視野およびGFP共焦点像作成。HeLa細胞は、トランスフェクション前の24時間、1.5X105/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種された。ナノ粒子は、細胞に添加され、4時間、37℃で培養された。洗浄の際に、細胞は、44時間、さらに培養された。粒子濃度は、6μg/ウェルの標的pLuc用量に基づいて計算された。生体HeLa細胞がPBSによって洗浄され、トランスフェクション後48時間、共焦点顕微鏡(ライカ反転レーザー走査系、アルゴンレーザー励起488nm)においてライブで観察された。(スケールバー:50um)
【図9】NaOHの存在下での水中のNDへのインシュリン吸着および脱着を示す仮想概略図。インシュリン非共有は、静電および他の相互作用によって、水中でND表面へ結合する。アルカリ性環境へのシフトにより、インシュリン表面電荷特性を変質させ、それによってND表面からの放出を生じさせる。
【図10】(a)そのままのND、(b)水溶液内の吸着されたインシュリンを有するND、および(c)pH10.5に調整された1mMのNaOHによる治療後の吸着されたインシュリンを有するNDのTEM画像。約5−10nmの厚さの、そのままのND(a)と比較して、ND(b)の表面上に明らかな層またはコーティングが存在する。インシュリンの添加は(a)および(b)の間の試料調製における差にすぎないため、視覚可能な層は、インシュリン吸着を示すことがある。材料は、NaOH処理したND上に存在しない(c)。スケールバーは、(a)において20nm、(b、c)において50nmを示す。
【図11】(a)FITCインシュリン、(b)そのままのNDおよび(c)NDインシュリン複合体の赤外線スペクトル。矢印は、そのままのNDスペクトルと比較した、NDインシュリンスペクトル上に存在するインシュリンの特徴的なスペクトルを示す。画像(c)は、差スペクトルによって示されるように、NDインシュリン複合体の形成を示唆する。データは、NDへのインシュリンの非共有吸着を示唆する。
【図12】pH7およびpH10.5におけるインシュリンおよびNDの錯体に関連付けられたゼータ電位の変化。NDは、インシュリンおよびNDインシュリン複合体の負の電位と比較した、両方のpH値におけるわずかに正のゼータ電位を明らかにする。NDおよびNDインシュリン複合体の間のゼータ電位における明らかな差は、NDおよびインシュリンの間の相互作用を示す。
【図13】NDからのインシュリンの吸着および脱着のUV/vis定量化。(a)NDに対するFITCインシュリンの吸着は、485nmで計測された、初期のおよび遠心分離されたNDインシュリンの間の到達された差の吸収度値によって示される。(b)562nmで計測された、BCAタンパク質分析を実施するウシインシュリンの吸収度。(c)種々のpH値に調整された、1mMのNaOHにおける、NDからのFITCインシュリンの脱着。試料は、アルカリ性条件において遠心分離され、生成された溶液が計測された。(d)BCAタンパク質分析を使用したNDからのウシインシュリンの脱着。放出吸収度スペクトルから、より大量のインシュリンが、アルカリ性環境において脱着され、NaOHがインシュリンの電荷特性に影響することを示す。
【図14】NaOH(pH10.5)および水で処理したNDインシュリン試料の5日間のインシュリン脱着試験、アルカリ性pH環境内のインシュリン放出を示す。放出されたインシュリンの累積重量パーセンテージが計測された。NaOH試料は、最初の2日間内の増加した脱着および45.8±3.8%の全脱着のために放出された量の平準化を示す。しかしながら、水で処理した試料は、合計で2.2±1.2%の、インシュリンの一部のみを放出した。1日目までに生じたNaOHによって放出されたインシュリンの大部分は、アルカリ溶液が、完全に吸着されたND上に、その最大影響を有していたことを示す。
【図15】様々な培地条件におけるRAW264.7マクロファージ細胞のMTT細胞生存率分析。細胞は、8時間、血清飢餓が行われ、次いで、示された溶液媒体、つまり、(1)DMEM、(2)0.1μMインシュリン、(3)1μMインシュリン、(4)NaOH(pH10.5)によるNDインシュリンから放出された約0.1μMのインシュリン、(5)水における、遠心分離されたNDインシュリンからの生成された溶液、(6)NaOH(1μM全インシュリン)によって処理したNDインシュリン、(7)インシュリンと結合した(NDインシュリン、1μM全インシュリン)NDおよび(8)DMEM10%FBSによる、24時間の回収期間が生じる。NaOH(6)で処理したNDインシュリンの相対生存率は、高いインシュリン濃度(3)の相対生存率と同様であり、これは、放出されたインシュリンによる効果的な回収を示す。NaOH(4)によって放出されたインシュリンは、水(5)によって放出されたインシュリンの相対生存率よりも高い相対生存率を示し、これは、アルカリ溶液を介したより大きい脱着を表す。ANOVA統計分析により、P<0.01が得られ、基の間の顕著な差を表す。
【図16】(a)3T3−L1前駆脂肪細胞および(b)分化した脂肪細胞は、2つの細胞タイプの間の形態の明白な差を示す。前駆含脂肪細胞線維芽細胞は、インシュリン、デキサメタゾンおよびIBMXによる培地の補完の際に分化を実行し、移入後10日目までに完全に分化する。脂質小胞形成は、分化の間に生じ、(b)250X倍率で確認することができる。
【図17】培地条件におけるIns1およびCsf3/G−csfのリアルタイムのPCR遺伝子発現。3T3−L1脂肪細胞は、異なる溶液媒体、つまり、(1)DMEM、(2)0.1μMのインシュリン、(3)NaOH(pH10.5)によってNDインシュリンから放出された0.1μMのインシュリン、(4)水における遠心分離されたNDインシュリンから生成された溶液、(5)NaOHで処理したNDインシュリン(1μMの全インシュリン)および(6)インシュリンで結合されたND(NDインシュリン、1μMの全インシュリン)において、2時間の回収期間の前4時間、血清飢餓された。両遺伝子は、NaOHによって放出されたインシュリン(3)およびNaOHで処理したNDインシュリン(5)の増加した発現を示し、活性を保存する一方で、アルカリ性条件による効果的なインシュリン放出を示す。水(4)およびNDインシュリン(6)によって放出されたインシュリンは、比較的、タンパク質機能を防止するND表面へのインシュリンの隔離について示唆する、両遺伝子についての低い相対発現を示した。RT−PCR試料の代表的な遺伝子発現プロット。ANOVA:P<0.01。
【図18】ナノダイヤモンド−ダウノルビシン(ND−Daun)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Daun複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)前(BS)および後(AS)に計測された。
【図19】ナノダイヤモンド−ダウノルビシン(ND−Daun)吸着の比較。14000rpmでの15分遠心分離前(A)および後(B)のND(1)、Daun(2)、ND−Daun(3)、およびND−Daun+NaOH(4)溶液。
【図20】それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのDAUNの脱着。放出特性は、薬物溶出が数時間にわたって持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
【図21】ナノダイヤモンドエピルビシン(ND−Epi)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液内に存在するNDまたはND−Epi複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
【図22】ナノダイヤモンドエピルビシン(ND−Epi)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Epi(2)、ND−Epi(3)、およびND−Epi+NaOH(4)溶液。
【図23】それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのEPIの脱着。放出特性は、数時間にわたって薬物溶出が持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
【図24】ナノダイヤモンドイダルビシン(ND−IDA)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−IDA複合体をペレット化するために、2時間のスピンの前(BS)および後(AS)で計測された。
【図25】ND−Ida吸着の比較。14000rpmにおける15分の遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Ida(2)、ND−Ida(3)、およびND−Ida+NaOH(4)溶液。
【図26】それぞれ、水およびPBSにおけるナノダイヤモンド共役からのIDAの脱着。放出特性は、数時間にわたって薬物溶出が持続することを明らかにする。吸収度は485nmで計測された。
【図27】ND−Daun−Dox−Epi−Ida吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液において存在するNDまたはND−Daun+Dox+Epi+Ida複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
【図28】ND−Daun−Dox−Epi−Ida吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Daun+Dox+Epi+Ida(2)、ND−Daun+Dox+Epi+Ida(3)、およびND−Daun+Dox+Epi+Ida+NaOH(4)溶液。
【図29】ナノダイヤモンドミノサイクリン(ND−Mino)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液内に存在するNDまたはND−Mino複合体のペレット化のために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
【図30】ナノダイヤモンドミノサイクリン(ND−Mino)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Mino(2)、ND−Mino(3)、およびND−Mino+NaOH(4)溶液。
【図31】ナノダイヤモンド共役からのミノサイクリンの脱着。水において実行される放出特性(上)およびPBS(下)は、最初の数時間における持続的放出を示す。
【図32】ナノダイヤモンドテトラサイクリン(NDテトラ)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはNDテトラ複合体をペレット化するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
【図33】ナノダイヤモンドテトラサイクリン(NDテトラ)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、テトラ(2)、NDテトラ(3)、およびNDテトラ+NaOH(4)溶液。
【図34】ナノダイヤモンド共役からのテトラサイクリンの脱着。水(上)およびPBS(下)において実行される放出特性は、最初の数時間における持続的放出を示す。
【図35】ナノダイヤモンドドキシサイクリン(ND−Doxy)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Doxy複合体のペレットを作成するために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)で計測された。
【図36】ナノダイヤモンドドキシサイクリン(ND−Doxy)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Doxy(2)、ND−Doxy(3)、およびND−Doxy+NaOH(4)溶液。
【図37】ナノダイヤモンド共役からのドキシサイクリンの脱着。水(上)およびPBS(下)において実行される放出特性は、最初の数時間における持続的放出を示す。
【図38】ナノダイヤモンドオキシテトラサイクリン(ND−Oxy)吸着の分光分析。吸収度曲線は、各溶液に存在するNDまたはND−Oxy複合体のペレット化のために、15分スピン(14000rpm)の前(BS)および後(AS)に計測された。
【図39】ナノダイヤモンドオキシテトラサイクリン(ND−Oxy)吸着の比較。14000rpmにおける15分遠心分離の前(A)および後(B)の、ND(1)、Oxy(2)、ND−Oxy(3)、およびND−Oxy+NaOH(4)溶液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性複合体を含む組成物であって、前記可溶性複合体は、
a) 1つ以上の表面カルボキシル基を含むナノダイヤモンド粒子と、
b) 治療薬であって、前記治療薬は本質的に不水溶性または水に溶けにくく、前記治療薬は、前記可溶性複合体を形成するように前記ナノダイヤモンド粒子に吸着され、前記可溶性複合体は、水において可溶性である、治療薬と、
を含む、可溶性複合体を含む組成物。
【請求項2】
可溶性複合体を作成する方法であって、治療薬が、前記ナノダイヤモンド粒子に吸着することにより可溶性複合体を形成するように、酸性溶液の存在において、ナノダイヤモンド粒子を前記治療薬に混合することであって、前記治療薬は、本質的に不水溶性または水に溶けにくいことを含む、方法。
【請求項3】
前記酸性溶液は、酢酸を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ナノダイヤモンド核酸複合体を含む組成物であって、前記複合体は、
a)1つ以上の表面ポリエチレンイミン分子を含むナノダイヤモンド粒子と、
b)核酸分子であって、前記核酸分子および前記ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド核酸複合体を形成する、核酸分子と、
を含む、組成物。
【請求項5】
前記ナノダイヤモンド粒子および前記核酸分子は、前記ナノダイヤモンド粒子上の正の電荷および前記核酸分子上の負の電荷の引力によって、前記ナノダイヤモンド核酸複合体を形成する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノダイヤモンド核酸複合体内の前記核酸分子は、細胞移入の際に放出されるように、前記ナノダイヤモンド粒子に付着される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレンイミン分子は低分子量のポリエチレンイミン分子である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を含む組成物であって、前記アルカリ感受性のナノダイヤモンド複合体は、
a) 1つ以上の表面カルボキシル基またはヒドロキシル基を含むナノダイヤモンド粒子と、
b) タンパク質であって、前記タンパク質は、前記アルカリ感受性のナノダイヤモンドタンパク質複合体を形成するように、前記ナノダイヤモンド粒子に吸着され、前記タンパク質は、十分にアルカリ性の条件下においてのみ、前記ナノダイヤモンド粒子から脱着するように構成される、タンパク質と、
を含む、組成物。
【請求項9】
前記アルカリ性の条件は、少なくとも9.0のpHである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルカリ性の条件は、少なくとも10.0のpHである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
可溶性複合体を含む組成物であって、前記可溶性複合体は、
a) ナノダイヤモンド粒子と、
b) 治療薬であって、前記治療薬はアントラサイクリン類化合物またはテトラサイクリン類化合物を含む、治療薬と、
を含む、組成物。
【請求項12】
前記アントラサイクリン類化合物またはテトラサイクリン類化合物は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、およびロリテトラサイクリンから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記可溶性複合体内の前記アントラサイクリン類化合物またはテトラサイクリン類化合物は、細胞移入の際に放出される、請求項11に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公表番号】特表2012−528197(P2012−528197A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513299(P2012−513299)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036610
【国際公開番号】WO2010/138837
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】