説明

ナノチューブを用いる水素製造方法およびその物品

本明細書に開示されるのは、水素含有化合物とナノチューブ含有材料との混合物を形成すること、および該混合物を活性化エネルギーに曝露することによって水素を解離することを含む、水素を製造する方法である。同様に開示されるのは、水素含有化合物とナノチューブ含有材料とを保持するための容器を含み、場合によっては活性化エネルギーを作用させるための少なくとも1つの入口を含む、水素を製造するための物品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体を本明細書に組み込んでいる2005年12月22日出願の米国仮特許出願第60/752407号に対する国内優先権の利益を主張する。
【0002】
本明細書に開示されるのは、活性化源の存在下でカーボンナノチューブなどのナノチューブ、水などの水素含有源を使用する水素の製造方法である。同様に開示されるのは、開示された方法を実行するための装置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
環境へさらに悪影響を及ぼすことなく炭化水素燃料への我々の社会の現在の依存を軽減する代替エネルギー源のニーズが存在する。例えば、経済的かつ安全な水素製造方法は有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブを使用する装置の多様な使用を開発した。一実施形態においては、本開示は、環境にやさしい方法で、すなわち水素の製造を通じて現在および将来のエネルギーニーズに合致するように設計された新規に明らかにされたカーボンナノチューブの独特の性質を組み合わせている。
【0005】
したがって、活性化エネルギーの存在下でカーボンナノチューブなどのナノチューブを水素含有源と接触させることを含む、水素を製造する方法が開示される。一実施形態においては、記載された方法は室温で行われる。1つの限定されない水素源はHOなどの化合物である。
【0006】
同様に開示されるのは、ナノチューブ含有材料の存在下で水素含有源の解離を経て水素を製造する装置である。本実施形態においては、上記装置は、水などの水素含有源と、ナノチューブ含有材料との混合物を保持するための少なくとも1つの容器を含み、場合によっては、混合物に活性化エネルギーを供給するための少なくとも1つの入口を含む。
【0007】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、もっぱら例示および説明のためであり、特許請求の範囲に記載された本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
A.定義
本開示に使用される次の用語または句は下記に概略を述べる意味を有する。
【0009】
用語「繊維」またはその任意の変形は、LがDよりも大きいような長さLと直径Dの物体として定義され、ここで、Dは、繊維の断面が内接する円の直径である。一実施形態においては、使用される繊維のアスペクト比L/D(または形状係数)は、2:1から10:1までの範囲であってもよい。本開示で使用される繊維は、1つまたは多くの異なる成分からなる材料を含んでもよい。
【0010】
用語「ナノチューブ」は、一般的に25Åから100nmを含む範囲に平均直径を有する管状の分子構造を意味する。いずれのサイズの長さを使用してよい。
【0011】
用語「カーボンナノチューブ」またはその任意の変形は、主に丸まって一体となった円筒形チューブの壁を形成する六方格子(グラフェンシート)に配置された炭素原子からなる管状の分子構造を意味する。これらの管状シートは、単独(単層)か、または多くの入れ子の層(複層)として生じて円筒構造を形成することができる。
【0012】
用語「二層カーボンナノチューブ」は、閉じた炭素ケージを有するが少なくとも1つの開口端を有する、記載されたカーボンナノチューブの細長いソレノイドを意味する。
【0013】
句「環境背景放射(environmental background radiation)」は、地球源(terrestrial source)を含めた種々の天然源および人工源から発せられる放射ならびに宇宙線(宇宙放射)を意味する。
【0014】
用語「官能化」(またはその任意の変形)は、そのゼータ電位などのナノチューブの性質を変更し得る表面に結合した原子または原子群を有するナノチューブを意味する。
【0015】
用語「ドープされた」カーボンナノチューブは、六員環炭素の円筒形にしたシートの結晶構造中の、炭素以外のイオンまたは原子の存在を意味する。ドープされたカーボンナノチューブは、六員環環中の少なくとも1個の炭素が非炭素原子で置換されていることを意味する。
【0016】
用語「プラズマ」は、イオン化気体を意味し、その独特の性質のために固体、液体、および気体と対照的な区別できる物質の相であることを意図されている。「イオン化」は、少なくとも1個の電子が、原子または分子の部分から解離していることを意味する。遊離の電荷は、一般的にプラズマを導電性にするのでプラズマは電磁界に強く反応する。
【0017】
用語「超臨界」(「相」または「流体」と共に使用される場合)は、その熱力学的な臨界点を超える温度と圧力とにおける任意の物質として定義される。それは、気体のように固体を通して拡散し、液体のように材料を溶解する独特の能力を有する。さらに、それは、温度または圧力の小さな変化で密度が容易に変化し得る。一実施形態においては、水は超臨界相に存在しうる。
【0018】
用語「容器」は、カーボンナノチューブおよび水を収容するのに十分な任意の槽または環境を意味する。例えば、一実施形態においては、容器は、石英またはPyrexガラス器などの、有限の容量を有する物理的容器を含んでもよい。別の実施形態においては、容器は、電磁界などの、軟境界を有する非物理的容器を含んでもよい。別の実施形態においては、ナノチューブは、多孔質媒体中に収容され、一方の側の薄層の材料と他方の側の光学的に透明な材料との間でそれらと重ね合わせられる。
【0019】
一実施形態において、水素の製造は、活性化エネルギーの添加を必要とすることがある。この活性化エネルギーは、電磁的刺激の形態で直接的または間接的に与えられ、水素含有化合物に温度または電磁界の変化を付与することができる。最初の活性化エネルギーは、電流パルスまたは電磁放射の形態であってもよい。
【0020】
別の実施形態において、太陽放射がカーボンナノチューブによって吸収され加水分解を行うのに使用される。
【0021】
一実施形態において、ナノチューブの存在下で水などの水素含有源または水素含有化合物から水素を製造する方法は、熱、電磁、または粒子の運動エネルギーの形態の活性化エネルギーを利用する。電磁エネルギーは、X線、光学光子、α、β、もしくはγ線、マイクロ波放射、赤外放射、紫外放射、フォノン、宇宙線、ギガヘルツからテラヘルツまでの範囲に及ぶ周波数の放射、またはその組合せから選択される1つまたは複数の供給源を含む。放射の前述の形態は、干渉性であっても干渉性でなくてもよく、またはその任意の組合せで組み合わせられてもよい。
【0022】
活性化エネルギーは、運動エネルギーを有する粒子も含むことができ、この粒子は動いている原子または分子などの任意の粒子として定義される。限定されない実施形態として、陽子、中性子、半陽子、素粒子、およびその組合せが挙げられる。本明細書で使用される「素粒子」は、さらなる粒子に分解することができない基本粒子である。素粒子の例として、電子、陽電子、中間子、π中間子、ハドロン、レプトン(電子の形態である)、バリオン、放射性同位元素、およびその組合せが挙げられる。
【0023】
開示された方法において活性化エネルギーとして使用することができる他の粒子には、Hans C.Ohanianによる「Modem Physics」の460〜494頁における参考文献によって記載されたものが含まれ、この頁は参照により本明細書に組み込まれている。いかなる理論に束縛されることなく、本明細書に記載される水素を製造する方法は、少なくとも部分的に、ナノチューブ構造を明らかにすることである。原子スケールの物質がナノチューブ構造の限定された範囲に閉じ込められる場合、その供給源から水素を取り出す能力は大きく増大すると考えられる。例えば、一実施形態において、ナノスケールの閉じ込めは、水を分解することができる可能性を増大する。
【0024】
この理論の立証は、本発明の後に公開された論文に記載されている。特に、参照により本明細書に組み込まれているGuoらによる論文、Visible−Light−induced Water Splitting in Channels of Carbon Nanotubes,J.Phys.Chem.B 2006、110、1571〜1575頁(2006年7月1日にウェブ上に公開された)は、シングルウォーターカーボンナノチューブ(single−water carbon nanotube)に閉じ込められた水を可視光線のフラッシュに曝露することによる、その水の分解を記載している。この論文は、基本的に異なる機構、特に高真空に依存する機構を記載しているが、それは、それでもなお、水素含有源とカーボンナノチューブとを含む混合物が活性化エネルギーに曝露される場合に、水素を製造することができることを示している。
【0025】
したがって、本開示の一実施形態は、水などの水素の供給源をカーボンナノチューブ中に閉じ込め、それに適切な活性化エネルギーを付与することにより水素ガス(H)を製造することを対象としている。
【0026】
本開示で使用することができる他の水素含有源として、水、重水、トリチウム水、炭化水素またはその組合せから選択される化合物が挙げられる。
【0027】
カーボンナノチューブは特定の実施形態において使用されるが、ナノスケールの閉じ込めを補助または可能にする中空の内部を有し、水素含有化合物と不利に相互作用しない任意のナノスケール構造が、開示された方法において使用され得る。例えば、一実施形態において、ナノチューブは、例えば2mm〜10mmの、500μm〜10cmの範囲の長さを有する多層カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブを含む。本開示によるナノチューブ構造は、例えば25Å〜100nmの、100nmまでの範囲の内径を有していてもよい。
【0028】
本明細書に記載されたナノチューブは、炭素およびその同素体を含んでもよいが、そのナノチューブ材料は、絶縁材料、金属材料、若しくは半導体材料、またはこのような材料の組合せなどの非炭素材料を含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、ナノチューブは、端部と端部とを接続して、若しくは平行に、またはその任意の組合せで配列させることができる。さそれに加えて/代えて、ナノチューブは、無機材料の少なくとも1つの原子層または分子層によって完全にまたは部分的に被覆またはドープされてもよい。
【0030】
一実施形態において、解離反応は、多層ナノチューブ(使用した場合)の壁内で、または、ナノチューブの内部に位置して起こる。解離は、ナノチューブが触媒として作用してナノチューブの外で起こってもよい。
【0031】
本明細書に記載された方法は、プロセスの前またはプロセスの間に水素含有源およびナノチューブを撹拌するステップをさらに含んでもよい。反応が自ら制限されることのないように、気相の泡をナノチューブの表面から解放するために機械的撹拌が使用されてもよい。
【0032】
ナノチューブの組成は、本明細書に記載された方法にとって重要ではないと考えられる。理論に束縛されることなく、前述のように、開示された実施形態に使用されるナノチューブ中の炭素と閉じ込めによって活性化された化学種、重水素との何らかの相互作用に比べて、ナノチューブ内の化学種の閉じ込めは、本明細書に開示された効果の原因であり得る。この理由のために、本明細書に記載されたナノチューブは、特にカーボンと記載されているが、より一般的に、それらは、セラミック材料(ガラスを含めて)、金属材料(およびその酸化物)、有機材料、およびこのような材料の組合せを含んでもよい。
【0033】
組成と同様に、活性化される化学種にある範囲への閉じ込めを提供すること以外に、ナノチューブの形態(幾何学的構成)は重要ではないと考えられる。一実施形態において、本開示は、多層カーボンナノチューブを利用する。本明細書に開示されたナノチューブ構造は、本明細書に記載されたナノチューブ上に外殻またはコーティングを形成する単一または複数の原子または分子層を有してもよい。例えば、本明細書に開示されたナノチューブ構造は、その表面の少なくとも1つに、金属または合金の1つまたは複数のエピタキシャル層を有してもよい。このようなコーティングに加えて、ナノチューブ構造は、無機または有機材料の少なくとも1つの原子または分子層によってドープされてもよい。
【0034】
ナノチューブ用コーティングの説明、ならびにナノチューブのコーティング方法は、本出願人の次の同時係属出願に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。2005年4月22日出願の米国特許出願第11/111736号、2004年3月8日出願の米国特許出願第10/794056号および2006年9月1日出願の米国特許出願第11/514814号。
【0035】
本明細書に記載された方法は、カーボンナノチューブを少なくとも1つの有機基で官能化するステップをさらに含んでもよい。官能化は、一般的に、湿式化学または蒸気、気体若しくはプラズマ化学、およびマイクロ波利用化学技術を含む化学技術を使用して、カーボンナノチューブの表面を修飾すること、ならびに、表面化学を利用してカーボンナノチューブの表面に材料を結合させることによって行われる。これらの方法は、カーボンナノチューブを「活性化する」ために使用され、これは、少なくとも1つのC−CまたはC−ヘテロ原子結合を切断し、それにより分子またはクラスターをそれに結合するための表面を提供することとして定義される。
【0036】
官能化カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの外側壁などの表面に結合した、カルボキシル基などの化学基を含んでもよい。さらに、ナノチューブの官能化は、多段階プロセスで起こってもよく、このプロセスで、官能基は逐次的にナノチューブに添加されて、特定の所望の官能化ナノチューブに達する。
【0037】
官能化カーボンナノチューブと異なり、被覆されたカーボンナノチューブは、材料の層および/または1つまたは複数の粒子で覆われ、これは、官能基と異なり、ナノチューブに必ずしも化学的に結合しておらず、ナノチューブの表面領域を覆っている。
【0038】
本明細書で使用されるカーボンナノチューブは、開示された方法を補助する成分でドープされてもよい。記載されたように、「ドープされた」カーボンナノチューブは、六員環炭素の円筒形にしたシートの結晶構造中の炭素以外のイオンまたは原子の存在を意味する。ドープされたカーボンナノチューブは、六員環環中の少なくとも1個の炭素が非炭素原子で置換されていることを意味する。
【0039】
任意の実施形態において、ナノチューブは、水性懸濁液、磁界、電界、電磁界、機械的ナノチューブネットワーク、ナノチューブと他の繊維とを含む機械的ネットワーク、織られていない材料に形成されたナノチューブのネットワーク、織られた材料に形成されたネットワークまたはその任意の組合せの中に保持することができる。
【0040】
ナノチューブ構造は、ナノチューブのネットワークを含んでもよく、このネットワークは、場合によっては磁界、電界、または他の電磁界中にあることは理解されたい。1つの限定されない実施形態において、磁界、電界、または電磁界は、ナノチューブ構造それ自体によって供給され得る。
【0041】
同様に本明細書に開示されるのは、水素ガスを製造するための装置である。一実施形態において、その装置は、記載された水素含有化合物とナノチューブ含有材料との混合物を保持するための少なくとも1つの容器を含む。
【0042】
一実施形態において、容器は、水性懸濁液、気体、磁界、電界、電磁界、またはその組合せの中に混合物を保持するのに十分である。
【0043】
さらに、水素含有化合物の化学解離は、活性化エネルギーを一般的に必要とし、この活性化エネルギーは、分子内の原子間の化学結合を切断するのに必要なエネルギーとして説明される。このエネルギーは、ナノチューブによって最初に捕捉され、次いで電界に変えられる。この電界は、ナノチューブのナノ半径に起因して極めて大きくなりうる。水の極性分子は、電界に反応して解離する。解離は、ナノチューブの外、多層ナノチューブの壁の間、またはナノチューブの中空内で起こり得る。
【0044】
光は導電性のナノチューブによって吸収されるので、それは起電力(EMF)を誘導する。この誘導されたEMFは、ナノチューブの導電帯内部に電荷を移動し電荷分離を生じる。この電荷分離は、電界を生じさせ、この電界は水分子に作用し得る。同様に、ナノチューブの仕事関数によるが、その端部から電子が放射されて、Hガスの生成をもたらすHイオンを中和する電子の供給源を提供してもよい。
【0045】
別の実施形態において、水がナノチューブの中空コアに取り込まれ、そこで、次いで、水が電子の電離放射を受ける。ナノチューブ内の伝導の1つのモードは、ナノチューブの内側の電子の弾道輸送である。電流が放射捕獲により誘導される場合に、これは起こり得る。
【0046】
解離速度を増加させるために、単純により多くのエネルギーをナノチューブに加え、これによりナノチューブ内の電子の数を増加させてもよい。ナノチューブ伝導機構の詳細は、R.Saito、G.Dresselhaus、M.S.Dresselhausによる「Physical Properties of Carbon Nanotubes」、(2003年)に記載されており、これは参照により組み込まれている。
【0047】
したがって、一実施形態において、その装置は、混合物に活性化エネルギーを供給するための少なくとも1つの入口、およびナノチューブ含有材料と接触することができる少なくとも1つの電極を含む。例えば、少なくとも1つの電極は、ナノチューブ構造に、交流、直流、電流パルス、またはその組合せを加えるのに使用される。一実施形態において、電極は白金である。
【0048】
しかしながら、その装置は活性化エネルギーのための入口を常に必要とはしないことを留意されたい。むしろ、活性化エネルギーは、環境背景放射、宇宙線、太陽光、および外部供給源に接続されていない他の形態であってもよいので、その装置は、単純に、このようなエネルギーを受けて捕捉する能力を必要とする。例えば、一実施形態において、その装置は、前述の混合物にまで光が透過するのを可能にする、石英またはPyrex(商標)で作られたようなガラスをベースとしており、したがって、ナノチューブ含有材料または混合物の少なくとも1つに接続されるべき電極を必ずしも必要としない。
【0049】
さらに、その装置は一般的に大気圧で作動するが、液体または気体の水素含有化合物の使用は、混合物の漏れまたは排出を防ぐために適切に密閉されることを必要とし得ることは理解されたい。
【0050】
別の実施形態において、その装置は、混合物を装置内で正圧にするよう構成されている。水素含有化合物が気体である場合に、これは特に有用である。
【0051】
別の実施形態においては、その装置は、システムに電力を与えるために、燃料電池、エンジン、タービン、電動機、電気装置、熱電装置、光または光増幅装置、またはその任意の組合せなどの、解離された水素を直接使用するための機構を含むように構成されている。電力を必要とする装置は、自動車、コンピュータ、ロボットまたは航空機におけるものなどの、装置のより大きなアッセンブリの一部であってもよい。
【0052】
本開示は、以下の限定されない実施例によってさらに説明され、この実施例は、純粋に本開示の例示を意図したものである。
【実施例】
【0053】
光によって活性化された湿電池を使用する水の解離
本実施例により使用される湿電池の概略図が図1に示されている。本図に示されるように、平均約20μmの長さおよび10〜40nmの範囲の直径を有する多層カーボンナノチューブ5mgをガラスビーカー中の250mlの水に分散して混合物を形成した。
【0054】
この混合物を、得られる気体を捕捉するための槽(「捕捉槽」)にガラス管により接続された密閉されたPyrex(商標)容器に移した。捕捉槽への水蒸気などの望ましくない成分の流入を防ぐために、実験を開始する前にそれを捕捉した。特に、図1に示されるように、Pyrex(商標)容器と捕捉槽とを接続する管は、混合物から生じる任意の水を液化し、それにより水が捕捉槽を通るのを防ぐための冷水ループで巻かれている。
【0055】
Pyrex(商標)容器から約2フィートに位置する500ワットの覆いのないハロゲン球(後方反射鏡を有する)を点灯することにより反応を開始した。最初の混合物中の水の解離は、捕捉槽中でほとんど直ぐに測定可能であった。光供給源に約3.5時間曝露された後、約20mlの水素ガスおよび10mlの酸素ガスが捕捉槽中で製造された。
【0056】
本実施例は、水などの水素含有源と多層カーボンナノチューブとを含む混合物を本明細書に記載された活性化エネルギーに曝露することによって、水素含有源を解離して少なくとも水素ガスを製造することができることを示している。
【0057】
操作実施例において、または別に示されている場合を除いて、明細書および特許請求の範囲において使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数は、用語「約」によって全ての場合に改変されると解釈されるべきである。したがって、反対に示されていない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本開示によって得ようと努める所望の性質に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲との均等の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効数字および通常の丸み付けに照らして解釈されるべきである。
【0058】
本発明の広い範囲を近似値として記載する数値域およびパラメータにかかわらず、特定の例に記載される数値は、できる限り正確に記録される。しかしながら、任意の数値は、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるいくらかの誤差を本質的に含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】光吸収によって活性化される水/カーボンナノチューブ混合物を使用する本開示の一実施形態による水素製造湿電池の概略図である。
【図2】電界により白金電極に供給されるエネルギーによって活性化される重水素/カーボンナノチューブ混合物を使用する本開示の一実施形態による水素製造湿電池の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を製造する方法であって、
水素含有化合物とナノチューブ含有材料との混合物を形成するステップと、
前記混合物を活性化エネルギーに曝露して、前記水素含有化合物中にある水素を解離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記水素含有源が、水、重水、トリチウム水、炭化水素またはその組合せから選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化エネルギーが、熱エネルギー、電磁エネルギー、または粒子の運動エネルギーまたはその任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁エネルギーが、X線、光学光子、γ線、マイクロ波放射、赤外放射、紫外放射、フォノン、ギガヘルツからテラヘルツまでの範囲の周波数の放射、またはその組合せから選択される1つまたは複数の供給源を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化エネルギーが環境背景放射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記運動エネルギーを含む粒子が、中性子、陽子、電子、ベータ線、アルファ線、中間子、π中間子、ハドロン、レプトン、バリオン、およびその組合せから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノチューブがカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが単層、多層またはその組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブが10nmから10mまでの範囲の長さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノチューブが100nmまでの内径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が、前記混合物を前記活性化エネルギーに曝露する前に、または前記混合物を前記活性化エネルギーに曝露しながら同時に、機械的に撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水素源が、固体、液体、気体、プラズマ、または超臨界相である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが、絶縁材料、金属材料、または半導体材料およびこのような材料の組合せからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノチューブ含有材料が、ナノチューブの分散、機械的に結合したナノチューブのネットワーク、またはその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノチューブのネットワークが、前記水素含有化合物と接触する前に、他の繊維と組み合わされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノチューブのネットワークが、少なくとも1種の織られた、または織られていないナノチューブ材料を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
解離した水素、解離の他の副生成物またはその組合せを使用することによって装置に電力を供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記装置が、燃料電池、エンジン、タービン、電動機、電気装置、熱電装置、光若しくは光増幅装置、加熱器またはその任意の組合せから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
大気圧において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ナノチューブ含有材料の存在下で、水素含有源の解離によって水素を製造するための装置であって、
前記水素源と前記ナノチューブ含有材料との混合物を保持するための少なくとも1つの容器を含む装置。
【請求項21】
活性化エネルギーを前記混合物に供給するための少なくとも1つの入口をさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記入口が、少なくとも前記ナノチューブ含有材料に接触することができる少なくとも1つの電極を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記容器が、前記混合物を、水性懸濁液、磁界、電界、電磁界、またはその組合せの中に保持するのに十分である、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記ナノチューブ含有材料が、ナノチューブの分散、機械的に結合したナノチューブのネットワーク、またはその組合せを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記ナノチューブのネットワークが、前記水素含有化合物と接触する前に、他の繊維と組み合わされる、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記ナノチューブのネットワークが、少なくとも1種の織られた、または織られていないナノチューブ材料を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記混合物を撹拌するための機械的撹拌機をさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項28】
前記解離した水素を捕捉するための槽をさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項29】
前記槽が、少なくとも1つの導管によって前記容器に接続されている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記導管が、それに付着したまたはそれを囲んだ少なくとも1つの冷却機構を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記導管、槽、または容器の少なくとも1つが本質的にガラスからなる、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記容器に隣接して活性化エネルギーの供給源をさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項33】
前記活性化エネルギーの供給源がハロゲンランプを含む、請求項32に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521390(P2009−521390A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547610(P2008−547610)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/049042
【国際公開番号】WO2007/102875
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508062177)セルドン テクノロジーズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】