説明

ナノバブル発生用ノズルおよびナノバブル発生装置

【課題】コンパクトな構成で手軽にナノバブルを発生させることができるノズルおよびこれを用いたナノバブル発生装置を提供する。
【解決手段】内部に流路42が形成された筒状に設けられ、液体中にナノバブルを発生させるためのノズル34であって、軸線方向の一方の端部に液体を流入させる流入口45が形成され、軸線方向の他方の端部にナノバブルが混入した液体を流出させる流出口47が形成され、流路42には、流入口45から所定距離は同一の径を有する同一径部44と、同一径部44から流出口47に向けて、徐々に径が広がるテーパ部46とが形成され、流路42に気体を導入させる気体導入孔50が同一径部44と外部とを連通するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中のナノバブルを生じさせるためのノズルおよびこれを用いたナノバブル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中にマイクロバブルを発生させる装置については従来より開発されており、マイクロバブルにより水質の浄化等が期待されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方で、マイクロバブルよりもさらにバブル径が小さいナノバブルの研究が始められている。ナノバブルは、マイクロバブルよりも水の浄化性能や殺菌性に優れているという研究結果がでており、なおかつ人体にも好影響を与えることが期待されている。
なお、一般的には、バブル径が10〜200μmがマイクロバブル、0.5〜10μmがマイクロナノバブル、0.5μm以下がナノバブルというように定義されている。本明細書中でもナノバブルとは、0.5μm以下の径のものを指している。
【0004】
ナノバブルの発生方法としては、従来より様々な方法が提案されている。
例えば、液体の一部をガス化し、これに超音波を照射することでナノバブルを発生させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
また、ナノバブルよりも大きい径の微少気泡を生成しておき、これに物理的な衝撃を加えてナノバブルを生成する方法がある(例えば特許文献3、特許文献4参照)。
また気体と液体を気液混合室で混合したのち、超微少吐出口から吐出させることにより、ナノバブルを含んだナノ流体を生成する方法も提案されている(例えば特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−305219号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2005−245817号公報
【特許文献4】特開2006−289183号公報
【特許文献5】特開2007−90156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2〜特許文献5に示されたようなナノバブルの発生装置によれば、非常に大がかりな装置を必要としていた。このため、装置自体の大きさはともかく、価格的な面でも従来のナノバブル発生装置では、一般家庭等に普及させるのが困難であると言う課題があった。
また、大がかりな装置ゆえに、簡単に設置・操作できるものではなく、ナノバブルの効能についての研究もはかどらないと言う課題もあった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、コンパクトな構成で手軽にナノバブルを発生させることができるノズルおよびこれを用いたナノバブル発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、本発明にかかるナノバブル発生用ノズルによれば、内部に流路が形成された筒状に設けられ、液体中にナノバブルを発生させるためのノズルであって、軸線方向の一方の端部に液体を流入させる流入口が形成され、軸線方向の他方の端部にナノバブルが混入した液体を流出させる流出口が形成され、前記流路には、前記流入口から所定距離は同一の径を有する同一径部と、該同一径部から流出口に向けて、徐々に径が広がるテーパ部とが形成され、前記流路に気体を導入させる気体導入孔が前記同一径部と外部とを連通するように形成されていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、非常にコンパクトな構成でナノバブルの発生が可能となった。
【0009】
また、前記テーパ部のテーパ角は、3°から5°の間であることを特徴としてもよい。
さらに、前記テーパ部のテーパ角は、3.5°から4.5°の間であることを特徴としてもよい。
前記テーパ部のテーパ角は、4°であることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明にかかるナノバブル発生装置によれば、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のナノバブル発生用ノズルと、該ナノバブル発生用ノズルに液体を送り込むポンプとを具備することを特徴としている。
この構成によれば、非常にコンパクトな構成でナノバブルを発生させることができる。
なお、前記ポンプは水中ポンプであることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノバブル発生用ノズルおよびナノバブル発生装置によれば、コンパクトな構成で、目詰まりせずにナノバブルを発生させることができる。このため、安価な装置としてナノバブル発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るナノバブル発生装置の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のナノバブル発生装置の全体構成を示す説明図である。
ナノバブル発生装置30は、水中ポンプ32と、ノズル34と、水中ポンプ32とノズル34とを連結するホース36とを具備している。そして、ノズル34の流出口47から、水とともにナノバブルが吐出される。
【0013】
ノズル34には、気体を供給するためのエアチューブ38が接続されている。エアチューブ38の先端にはスピードコントローラ40が接続されている。スピードコントローラ40を調整することによって、ノズル34に供給する気体の流量をコントロールできる。
【0014】
また、水中ポンプ32は、DCモータが内蔵されており直流電流によって駆動する。このため、水中ポンプ32は、家庭用電源AC100V用の接続プラグ31と、取り入れた交流電流を直流電流に変換するコンバータ33とを備えている。
水中ポンプ32をDCモータによって駆動させることにより、全体を小型化し、またコストの低減にも寄与することができる。
【0015】
続いてノズル34の構造について、図2に基づいて説明する。
ノズル34は、エアチューブ38から導入される気体と、水中ポンプ32から送り込まれる液体とを混合してナノバブルを液体中に生成する。ノズル34は全体として円筒状に形成されており、円筒の軸線方向の一方の端部には水を内部に送り込むための流入口45が形成され、円筒の軸線方向の他方の端部には水を流出させる流出口47が形成されている。
流入口45と流出口47は、軸線方向に内部を貫通する流路42によって連通している。
ノズル34の材料としては、変形や変質が無い材質であれば特にいずれかの材料に限定されることはないが、金属や合成樹脂を用いることができる。
【0016】
流路42は、径が一定に形成されている同一径部44と、流出方向に向けて徐々に拡径するテーパ部46とから構成されている。
また、エアチューブ38が接続される接続部48は、同一径部44に空気が供給される部位に設けられている。この接続部48は、ノズル34の外壁面に、エアチューブ38の端部が挿入可能な程度の径となる穴が穿設されたものである。
接続部48の底面には、流路42の同一径部44と連通する連通孔50が形成されている。連通孔50は、流路42の同一径部44に対して直交する方向に穿設されている。
【0017】
なお、ノズル34の一方側の端部の外壁部分は、ホース36が接続可能な形状に形成されている。すなわち、ホース36をノズル34の一方側の端部に挿入できるように、ノズル34の一方側の端部の外径は、ホース36の内径とほぼ同径をなしている。本実施形態では、ノズル34の一方側の端部の外壁部分はホース36に向けて徐々に細くなるようなテーパ状の形状をなしており、ホース36に接続しやすいように設けられている。
【0018】
以下、流路と連通孔の具体的な形状について説明する。
種々の実験を行った結果、以下に説明する様な形状のノズルを用いることで、簡単にナノバブルが発生することが確認できた。
まず、ノズル34の流路42が、液体の吐出方向(流出口47方向)に向けて徐々に拡径するようなテーパ状に形成されている点が特徴である。ここでテーパ角θとしては、3°〜5°の間であることが好ましい。
特に好ましくは、テーパ角θとして3.5°〜4.5°の間であるとよい。
最も望ましくは、テーパ角θとして4°であるとよい。
【0019】
また、連通孔50の径は、0.3mm〜0.4mmであることが好ましい。特に好ましくは、連通孔50の径は、0.3mmであるとよい。
【0020】
また流路42の流入口部分(同一径部44)の径は3.0mm〜4.0mmであることが好ましい。特に好ましくは、流入口部分(同一径部44)の径は、3.5mmであるとよい。
【0021】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、ノズル34へ液体を送り込むポンプは、水中ポンプであった。しかし、ポンプは水中ポンプに限られる事はなく、通常のポンプを用いてもよい。
通常のポンプを用いた実施形態を図4に示す。なお、上述した第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、説明を省略する場合もある。
【0022】
ナノバブル発生装置30は、大気中に設置されたポンプ60と、水中に配置されるノズル34と、ポンプ60とノズル34とを連結するホース36と、ポンプ60へ水を供給するための水供給ホース62とを具備している。そして、ノズル34の流出口47から、水とともにナノバブルが吐出される。
【0023】
ポンプ60は、水供給ホース62から供給された水をホース36へ所定の吐出量で吐出する。このように、ポンプ60によって、水はホース36内を流通してノズル34の流入口内に供給される。
なお、本実施形態のポンプ60は、ACモータによって駆動される。
【0024】
ノズル34には、気体を供給するためのエアチューブ38が接続されている。エアチューブ38の先端にはスピードコントローラ40が接続されている。スピードコントローラ40を調整することによって、ノズル34に供給する気体の流量をコントロールできる。この点は、第1の実施形態と同様の構成である。
【0025】
次に、発生させたナノバブルの径を測定する際の測定方法について説明する。
測定は、大塚電子株式会社製のファイバー光学動的光散乱光度計(型名:FDLS3000)を用いることができる。
FDLS3000は、キュムラント解析によって、ストークス粒径、多分散度指数、拡散係数、減衰定数を解析することができ、ヒストグラム解析によって、散乱強度分布、重量換算分布、個数変換分布を解析することができる。
【0026】
FDLS3000内部における測定系を図4に示す。
FDLS3000の光源52は、波長532nmの固定レーザであり、出力は100mWである。
レーザ光は、シャッター、NDフィルター、波長板、レンズ、偏光板等の光学素子群54を介して、試料セル56に照射される。試料セル56は、円柱状に形成されており、内部に測定対象の液体が封入される。
試料セル56の直径は5mm、12mm、21mmなどを選択することができる。
【0027】
試料セル56の周囲には、受光素子57が配置されている。受光素子57の具体例としては、冷却型光電子倍増管58に接続された移動可能な光ファイバーであり、この光ファイバーでは試料セル56に照射されたレーザ光の散乱光を検出できる。冷却型光電子倍増管58は、ナノオーダーのバブルで散乱された散乱光を確実に検出することができる。
なお、レーザ光の入射方向に対して試料セル56の後方には、試料セル56を通過したレーザ光を吸収するビームストッパー59が配置されている。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
上述した光度計で、図3に示したナノバブル発生装置30で発生させたナノバブルの径を測定した結果を図5に示す。
また、ポンプ60としては、株式会社レイシー社製のマグネットポンプ、型名RMD−401を採用した。このポンプの仕様は、電源AC100V、消費電力90W、最高揚程4.6m、最大吐出量45l/minである。
【0029】
また、本実施例で採用したノズル34の具体的な形状を図6に示す。
ノズル34の形状は、全長100mm、直径15mm、同一径部の直径3.5mm、テーパ部におけるテーパ角4°、テーパ部の全長80mm、開口部の径9.18mm、連通孔の径0.3mmである。
また、ノズル34の材質は黄銅である。
【0030】
溶媒は水であり、水中にナノバブルを発生させた。水温は21.2℃。溶媒である水の屈折率は1.3317。溶媒である水の粘度は、0.9725cp。溶媒である水の散乱強度は8539cpsである。
【0031】
図5のグラフは、測定した散乱光強度分布をグラフにあらわしたものであり、横軸にバブルの径(nm)、縦軸に散乱光強度分布(ls)をとっている。
図5のグラフに示すように、結果として、ナノバブル発生装置30を用いて発生させたナノバブルの平均粒径が270.2nmであることが判明した。このように、簡単な構成で極めて径の小さいナノバブルを良好に発生させることができた。
なお、この結果では、粒径10000nm付近で散乱光の強度分布があるが、この分布はナノバブルとは関係無いものである。
【0032】
(実施例2)
図7に、上述した光度計で、上述した実施例1と同様の構成のナノバブル発生装置30で発生させたナノバブルの径を測定した他の結果を示す。
なお、実施例2で用いたポンプおよびノズルは、実施例1と同一のものであるので、ここではポンプおよびノズルについての説明を省略する。
【0033】
溶媒は水であり、水中にナノバブルを発生させた。水温は22.6℃。溶媒である水の屈折率は1.3315。溶媒である水の粘度は、0.9382cp。溶媒である水の散乱強度は6923cpsである。
【0034】
図7のグラフは、測定した散乱光強度分布をグラフにあらわしたものであり、横軸にバブルの径(nm)、縦軸に散乱光強度分布(ls)をとっている。
図7のグラフに示すように、結果として、ナノバブル発生装置30を用いて発生したナノバブルの平均粒径が295.6nmであることが判明した。このように、簡単な構成で極めて径の小さいナノバブルを良好に発生させることができた。
なお、この結果でも、粒径10000nm付近で散乱光の強度分布があるが、この分布はナノバブルとは関係無いものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のナノバブル発生装置は、そのコンパクトな構成から一般家庭における風呂に設置することができる。これにより、家庭における風呂で健康の増進を図ることができる。
また、ナノバブルを混入させた水を種々の洗浄水として用いることもできる。
さらには、水槽で飼育される魚類の活性化や、水耕栽培などにも採用することができるなど、様々な用途に活用できることが期待できる。
【0036】
以上、本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかるナノバブル発生装置の第1の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明にかかるナノバブル発生用ノズルの断面図である。
【図3】ナノバブル発生装置の第2の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図4】光度計内部の測定系を示す説明図である。
【図5】図3のナノバブル発生装置を用いて発生させたナノバブルの粒径を測定したグラフである。
【図6】実験で用いたノズルの具体的な寸法を示す説明図である。
【図7】図3のナノバブル発生装置を用いて発生させたナノバブルの粒径を測定したグラフである。
【符号の説明】
【0038】
30 ナノバブル発生装置
31 接続プラグ
32 水中ポンプ
33 コンバータ
34 ノズル
36 ホース
38 エアチューブ
40 スピードコントローラ
42 流路
44 同一径部
45 流入口
46 テーパ部
47 流出口
48 接続部
50 連通孔
52 光源
54 光学素子群
56 試料セル
57 受光素子
58 冷却型光電子倍増管
59 ビームストッパー
60 ポンプ
62 水供給ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された筒状に設けられ、液体中にナノバブルを発生させるためのノズルであって、
軸線方向の一方の端部に液体を流入させる流入口が形成され、
軸線方向の他方の端部にナノバブルが混入した液体を流出させる流出口が形成され、
前記流路には、前記流入口から所定距離は同一の径を有する同一径部と、該同一径部から流出口に向けて、徐々に径が広がるテーパ部とが形成され、
前記流路に気体を導入させる気体導入孔が前記同一径部と外部とを連通するように形成されていることを特徴とするナノバブル発生用ノズル。
【請求項2】
前記テーパ部のテーパ角は、3°から5°の間であることを特徴とする請求項1記載のナノバブル発生用ノズル。
【請求項3】
前記テーパ部のテーパ角は、3.5°から4.5°の間であることを特徴とする請求項2記載のナノバブル発生用ノズル。
【請求項4】
前記テーパ部のテーパ角は、4°であることを特徴とする請求項3記載のナノバブル発生用ノズル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のナノバブル発生用ノズルと、
該ナノバブル発生用ノズルに液体を送り込むポンプとを具備することを特徴とするナノバブル発生装置。
【請求項6】
前記ポンプは水中ポンプであることを特徴とする請求項5記載のナノバブル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−160530(P2009−160530A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1240(P2008−1240)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(307041469)株式会社青建設計 (1)
【出願人】(307041470)株式会社石田技研 (1)
【出願人】(307042813)
【Fターム(参考)】