説明

ナノパウダー合成用のパルスアーク放電を起こさせる方法および装置

【課題】本発明は、ナノパウダーを合成する装置を提供する。
【解決手段】ガス雰囲気と、ペアの削磨電極とを有する反応チャンバであって、該ペアの電極のうちの少なくとも1つはナノパウダーを生成するための前駆物質である、反応チャンバと、該ペアの削磨電極に電気接続された高電力パルス電源と、該ペアの削磨電極に接続されたオートヒューザデバイスであって、該オートヒューザデバイスは、オートヒューズ電源と、トリガ回路と、該削磨電極のうちの1つに電気接続された第1の一次電極、該オートヒューズ電源に電気接続された第2の一次電極および該トリガ回路に電気接続された二次電極を有するトリガードスパークギャップデバイスとを含む、オートヒューザデバイスとを備える、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先日の主張)
本特許出願は、発明者がKurt A. Schroder、Stephen J. SchmidtおよびDoug K. Jacksonの米国仮特許出願第60/505,644号(9/24/03出願)の最先の出願日の利益を主張し、それは本発明の譲受人に譲渡されている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、ナノパウダーを合成するプロセスに関し、より詳しくは、ナノパウダーを合成するための前駆物質の電極間に、高電力パルスアーク放電を生じさせるのに外部高電力スイッチを必要としないナノパウダー合成プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
極めて短時間にわたり高電力かつ高電圧で放電されるパルス電力の分野では、信頼性のあるスイッチの欠如が、ナノパウダー合成へのパルス電力の広範な商用インプリメンテーションを妨げてきた。
【0004】
ナノパウダーを合成する方法の一つには、少なくとも一方が前駆物質から構成された削磨(ablating)電極である2つの電極間にある高電力パルスの放電が含まれる。高電力パルスアークは、高電力パルス放電電源(例えば、コンデンサバンク)に電極を接続することによって、生成される。電源の充電の間では、電極は、外部の高電力パルス電力スイッチを介した充電電圧から分離されている。電極間のスタンドオフ電位差が電源の充電電圧よりも小さい場合では、外部スイッチが閉じているときにおいて高電力のパルス放電アークが電極を横断して生成される。
【0005】
上記の合成システムによるナノパウダーの製造は、用いる外部のパルス電力スイッチの信頼性に依存する。以前のパルス電力スイッチには、製品番号NL1488としてLaFox, IllinoisのRichardson Electronicsによって提供されるイグナイトロン、および固体スイッチ(例えば、製品番号ST323OC18ROとしてEl Segundo, CaliforniaのInternational Rectifierによって提供されるスイッチまたは製品番号TO20443302としてYoungwood, PennsylvaniaのPowerex Inc.によって提供されるスイッチ)、および一般に利用可能な高電力接触スイッチが含まれる。
【0006】
典型的なイグナイトロン(例えば、LaFox, IllinoisのRichardson Electronicsによって提供される製品番号NL1488)は、50kV、75kAの動作が可能な高電力の真空水銀スイッチであり、約100,000動作の寿命を有する。さらに、イグナイトロンは、一部が水銀のプールで満たされた真空キャニスターと、高電力のパルス放電電源に接続された2つの一次電極と、二次電極とを備える。一次電極のひとつと二次電極を第2の放電電源に接続する必要がある。動作中では、第2の放電電源は、水銀を一部気化させるように放電し、それによって、一次電極を電気接触させる。その後、高電力パルス放電電源は、一次電極間に高電力パルスアークを引き起こすように放電される。イグナイトロンの不利な点には、制限された寿命と、装置の破壊および水銀のコンタミネーションを招き得る破壊的不具合の傾向とが含まれる。
【0007】
固体スイッチ(例えば、IGBT(insulating gate barrier transistor)またはSCR(silicon controlled rectifier)スイッチ)は、イグナイトロンよりも信頼性がある。しかし、固体スイッチは、一般的にはイグナイトロンよりも高価であり、低い電力定格を有する。電力定格が低いほど、より低い電流容量および/または電圧スタンドオフになる。その結果、直列および/または並列のスイッチ配置のスイッチのバンクは、イグナイトロンによって切り替えられるのと匹敵するパルスを切り替える必要がある。低い電力定格は、複数の固体スイッチをカスタムな配置で用いることによって克服され得るが、一般的には、そのような配置は、誘起効果および抵抗効果を低減し負荷バランスを確保するために、冷却と複雑な相互接続を必要とする。高電力パルス放電に関して、高抵抗は、通常は、所望のパルスを生成するのに必要な電力量を増加させ、その一方で、高インダクタンスは、パルス長の望ましくない増加を引き起こす傾向にある。
【0008】
高電力コンタクトまたはスパークギャップスイッチは、単純でありイグナイトロンまたは固体スイッチよりも安価ではあるが、一般的には、上述した高電力のパルス放電環境におけるただ一回の使用の後に破壊されるという不利な点を有する。
【0009】
外部高電力スイッチを有するシステムの別の不利な点は、所望のスタンドオフ電圧を達成するのに必要な電極間の最大ギャップが印加電圧によって決定されるということである。電極の間隔が非常に狭い場合では、製造設備において磨耗が生じる。さらに、電極は異常な磨耗を受ける。これによって、ナノパウダーの歩留まりは低くなり、設備がダウンタイムになる。より高い印加電圧システムが電極の間隔を広げるように設計される場合では、スイッチおよび製造設備の部品は、より高いスタンドオフ電圧に適合するように設計する必要がある。これによって、コストが高くなり、システムの信頼性は下がる。
【0010】
従来技術のシステムによる上記の不利な点を克服する試みの一方法は、電極間にヒューズ線を用いることによる。その後の電極間のギャップは、印加電圧と独立して調節され得る。動作中では、外部パルス電力スイッチが閉じられるとすぐに、ヒューズ線は破裂する。その結果、パルス電源の放電を可能にするように導電パスを提供し続けるプラズマが生成される。しかし、ヒューズ線を用いることには、放電ごとに新たなヒューズ線を取り付ける必要がある。さらに、ヒューズ線が電極の前駆物質と同一の組成でない限り、ヒューズ線は、製造されるナノパウダーをコンタミする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外部高電力スイッチの使用およびそれらのスイッチに付随する不利な点を避け、劣化なしでの高繰り返し率(≧1Hz)における電極間の繰り返し放電(107のオーダーの放電)に耐えるナノパウダー合成システムである。これは、主電源から放電を引き起こすように電極間に高電圧かつ高周波数の電流パルスを提供する比較的低エネルギーのオートヒューザ(autofuser)を用いて、電極を高電力スイッチに効果的に変化させることによって、達成される。関連技術における一般的な理解では、スイッチの劣化を引き起こすアーク削磨のために合成システムの電極の先端部が除去されるので、その電極をスイッチとして用いることは望ましくないが、本発明は、削磨された電極物質からナノパウダーを生成し、コンシステントな動作を提供するために、各々に対して電極にインデックス付けをする。従って、電極先端部の削磨は、望ましくなり、電極を横断した主電源放電が低エネルギーオートヒューザによって引き起こされる。従って、高繰り返し率での平均電力の高い放電が確実に実行され得る。
【0012】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ナノパウダーを生成する合成システムであって、
ガス雰囲気と、間隔のあいたペアの電極とを有する反応チャンバであって、該ペアの電極の少なくとも1つは前駆物質である、反応チャンバと、
該ペアの電極を横断して電気接続された高電力パルス電源と、
該ペアの電極を横断して該高電力パルス電源から高電力アーク放電を引き起こして該ナノパウダーを生成する、該ペアの電極に接続されたオートヒューザデバイスと
を備える、合成システム。
(項目2)
ナノパウダーを生成する合成システムであって、
前駆物質のペアの削磨電極とガス雰囲気とを有する反応チャンバであって、該ペアの削磨電極が、軸方向に並ぶが対向する関係で間隔があいている、反応チャンバと、
該ペアの削磨電極を横断して電気接続された高電力パルス電源と、
該ペアの削磨電極に並列に電気接続されたオートヒューザデバイスであって、それによって該ペアの削磨電極を横断して該高電力パルス電源の放電を引き起こして該ナノパウダーを生成する、オートヒューザデバイスと
を備える、合成システム。
(項目3)
上記オートヒューザデバイスが、オートヒューズ電源と、第1の一次電極、第2の一次電極および二次電極を有するトリガードスパークギャップデバイスと、外部刺激に応答し該二次電極に電気接続されたトリガ回路と、該第2の一次電極に電気接続された該ペアの削磨電極の第1の電極とを備え、該オートヒューズ電源は該第1の一次電極に電気接続されている、項目2に記載の合成システム。
(項目4)
上記ガス雰囲気が、不活性ガスと、反応ガスと、該不活性ガスと該反応ガスの組み合わせとのうちの1つであり得る、項目2に記載の合成システム。
(項目5)
上記オートヒューザデバイスが、高繰り返し率で繰り返し上記高電力パルス電源をトリガする、項目3に記載の合成システム。
(項目6)
ナノパウダーを生成する合成システムであって、
前駆物質のペアの削磨電極とガス雰囲気とを有する反応チャンバであって、該ペアの削磨電極が、軸方向に並ぶが対向する関係で間隔があいている、反応チャンバと、
該ペアの削磨電極を横断して電気接続された高電力パルス電源と、
該ペアの削磨電極に直列に電気接続されたオートヒューザデバイスであって、それによって該ペアの削磨電極を横断して該高電力パルス電源の放電を引き起こして該ナノパウダーを生成する、オートヒューザデバイスと
を備える、合成システム。
(項目7)
反応チャンバにおいてナノパウダーを合成する方法であって、該反応チャンバはガス雰囲気中で間隔があいたペアの電極を有し、該ペアの電極の少なくとも1つは前駆物質であり、
該方法は、
該ペアの電極の間にスタンドオフ電圧を生成するように、該ペアの電極を各々に対してインデックス付けすることと、
該スタンドオフ電圧よりも小さな、該ペアの電極を横断した第1の電圧を印加することと、
該ペアの電極を横断した該第1の電圧を維持する間において、該ペアの電極の1つの電極に電気パルスを印加することによって、該スタンドオフ電圧を超えさせ、該ペアの電極の間に放電アークを生じさせることによって該ペアの電極の該少なくとも一つを削磨して該ナノパウダーを生成することと
を包含する、方法。
(項目8)
上記電気パルスを印加するステップの後において、上記ペアの電極が実質的に削磨されるまで、上記方法の各ステップが繰り返される、項目7に記載のナノパウダーを合成する方法。
(項目9)
ガス雰囲気中に間隔があいた複数の電極を有する反応チャンバにおいてナノパウダーを合成する方法であって、
スタンドオフ電圧を形成するように該間隔があいた複数の電極を配置することと、
該間隔があいた複数の電極に、該スタンドオフ電圧より小さな第1の電圧を印加することと、
該第1の電圧を維持する間において、該間隔があいた複数の電極の1つに電気パルスを印加することによって、該スタンドオフ電圧を超えさせ、放電アークを生じさせることによって該間隔があいた複数の電極の少なくとも1つを削磨して該ナノパウダーを生成することと
を包含する、方法。
(項目10)
上記電気パルスを印加するステップの後において、上記間隔があいた複数の電極が実質的に削磨されるまで、上記方法の各ステップが繰り返される、項目9に記載の方法。
(項目11)
ナノパウダーを合成するシステムであって、
ガス雰囲気中で軸方向に対向する関係で配置された前駆物質のインデックス付け可能なペアの電極を有する反応チャンバであって、第1のスタンドオフ電圧は該インデックス付け可能なペアの電極を横断する、反応チャンバと、
該インデックス付け可能なペアの電極を横断して該第1のスタンドオフ電圧よりも小さい第1の電圧を印加する、該インデックス付け可能なペアの電極に並列に電気接続されたパルス電源手段と、
該インデックス付け可能なペアの電極の1つに電気接続されたトリガスパークギャップ手段であって、該トリガスパークギャップ手段はペアの一次電極と二次電極とを有し、第2のスタンドオフ電圧は、該ペアの一次電極を横断し、オートヒューザ電圧よりも大きく、該ペアの電極の間にアーク放電を生じさせて該インデックス付け可能な電極の少なくとも1つを削磨することによって該ナノパウダーを生成するように、該第1の電圧を該第1のスタンドオフ電圧以上に増加させる電気パルスに応答する、トリガスパークギャップ手段と、
該二次電極に電気接続されていて、該トリガスパークギャップ手段へと該電気パルスを供給する外部刺激に応答するトリガ回路と、
該トリガスパークギャップ手段に該オートヒューザ電圧を提供する、該トリガスパークギャップ手段に電気接続されたオートヒューズ電源手段と
を備える、システム。
(項目12)
ナノパウダーを合成するシステムであって、
ガス雰囲気中で軸方向に対向する関係で配置されたペアの電極を有する反応チャンバであって、第1のスタンドオフ電圧は該ペアの電極を横断する、反応チャンバと、
該ペアの電極を横断して該第1のスタンドオフ電圧よりも小さい第1の電圧を印加する、該ペアの電極の第1の電極に直列に電気接続された第1の端子を有するパルス電源手段と、
該パルス電源手段に該ペアの電極を横断して放電させてナノパウダーを生成するパルスを生成する、一次コイルと二次コイルとを有するパルス変圧器手段であって、該二次コイルは該パルス電源手段の第2の端子と該ペアの電極の第2の電極とに直列に電気接続されている、パルス変圧器手段と、
ペアの一次電極と二次電極とを有するトリガスパークギャップ手段であって、該ペアのうちの第1の一次電極は、該一次コイルと直列に電気接続されており、第2のスタンドオフ電圧は、該ペアの一次電極を横断し、オートヒューザ電圧よりも大きく、トリガパルスに応答するトリガスパークギャップ手段と、
該オートヒューザ電圧が該ペアの一次電極を横断して放電することを可能にするように該第2のスタンドオフ電圧を低減し、それによって該パルス変圧器手段に、該二次コイルにおいてパルスを生成させ、該第1のスタンドオフ電圧を超えるように該ペアの電極を横断する電圧を増加させるための、該二次電極に電気接続されていて、該トリガスパークギャップ手段へと該トリガパルスを供給する外部刺激に応答するトリガ回路と、
該トリガスパークギャップ手段の該ペアの第2の一次電極に電気接続された第3の端子と、該一次コイルに電気接続された第4の端子とを有し、該ペアの一次電極を横断してオートヒューザ電圧を提供するオートヒューズ電源手段と
を備える、システム。
本発明の新規な局面および特徴は添付の特許請求の範囲に規定されるが、本発明の原理、例示的な実施形態および使用の最適なモードは、添付の図面とともに好適な実施形態の詳細な説明を参照することによって、最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、オートヒューザ回路が前駆物質の電極と並列に接続された本発明の第1の実施形態の接続図である。
【図2】図2は、図1のオートヒューザ回路が前駆物質の電極と直列に接続された本発明の第2の実施形態の接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(好適な実施形態の詳細な説明)
以下の用語は、本明細書において小文字または大文字で用いられる場合には、以下に示す定義を有するものとする。
「スタンドオフ電圧」は、電極間にアーク放電を引き起こすのに必要な電圧を意味するものとする。
「高電圧」は、500ボルトよりも大きな電圧を意味するものとする。
「高電力」は、100kWよりも大きな電力を意味するものとする。
「ナノパウダー」は、主に1〜500ナノメートル(nm)のサイズのナノ粒子からなるナノ物質を意味するものとする。
「削磨物質」は、プラズマ速度によって引き起こされた機械的せん断と熱伝達との複合効果が原因で前駆物質のかたまりから除去された物質を意味するものとする。
「前駆物質」は、ナノパウダーを生成するために処理される物質を意味するものとする。
【0015】
図1を参照すると、本発明の一実施形態が示されている。そこでは、高電力パルス電源30の正電極は、導線31を介して前駆物質のアノード電極32に接続されており、パルス電源30の負電極は、導線33を介して、前駆物質を含み得るカソード電極34に接続されている。アノード電極32およびカソード電極34は、不活性ガスおよび/または反応ガスで満たされた反応チャンバ35内に配置されている。このガスとしては、アルゴン、窒素、酸素、またはそれらを組み合わせたものが挙げられるが、それらには限定されない。ガス雰囲気の選択は、望まれるナノパウダーに基づく。
【0016】
アノード電極32は、導線40を介して、トリガードスパークギャップデバイス42の第1の一次電極41に接続されており、そのデバイスは、第2の一次電極43と第2の電極44とを有する。
【0017】
トリガードスパークギャップデバイス42は、商業上、Trigatronと称され、それは、Plattsburgh, New YorkのMagnavolt TechnologiesおよびLewis Center, OhioのRE Beverly III And Associatesによって製造および販売されている。
【0018】
トリガードスパークギャップ(「TSG」)デバイス42の第1の一次電極41と、第2の一次電極43と、第2の電極44とは、不活性ガスで満たされたコンテナに収容されている。第2の一次電極43もまた、導線50を介してオートヒューザコンデンサ51の正端子に接続されており、そのコンデンサは、約0.03μFおよび40kVの定格を有する。そのコンデンサの負端子は、導線52を介してグランドに接続されている。第2の一次電極43はまた、導線50および53を介してオートヒューザ電源保護回路54の一端子に接続されており、それの別端子は、導線55を介してオートヒューザ充電用電源56の正端子に接続されている。オートヒューザ充電用電源56の負端子は、導線57を介してグランドに接続されている。
【0019】
オートヒューザ電源保護回路54は、Lucernemines, PennsylvaniaのCKE、および、Hauppuage, New YorkのSpellman High Voltage Electronics Corp.、および、Valhalla, New YorkのBertan, Del Power Conversion Group Companyによるカスタムデザインに応答して、商業上、提供される。
【0020】
オートヒューザコンデンサ51、オートヒューザ電源保護回路54およびオートヒューザ充電用電源56は、本発明のオートヒューズ電源58を構成する。オートヒューザ充電用電源56は、一般的に利用可能なDCの高電圧(20〜40kV)の電源であり、例としては、Valhalla, New YorkのBertanによって製造および販売されている。
【0021】
二次電極44は、導線60を介してTSG保護回路61の一端子に接続されており、それの第2の端子は、導線62を介してステップアップ変圧器63の一次巻線に接続されている。ステップアップ変圧器63の二次巻線は、トリガパルス生成器64の出力端子に接続されている。トリガパルス生成器64の入力端子は、光ファイバーケーブル65を介して、電気入力ライン67を有する光信号源66に接続されている。
【0022】
TSG保護回路61、ステップアップ変圧器63、トリガパルス生成器64および光源66は、トリガ回路68を構成する。トリガ回路68は、Plattsburgh, New YorkのMagnavolt TechnologiesおよびLewis Center, OhioのRE Beverly III And Associatesからのカスタムデザインに応答して、商業上、購入され得る。
【0023】
TSGデバイス42、オートヒューズ電源58およびトリガ回路68は、本発明のオートヒューザデバイス70を構成する。オートヒューザデバイス70は、アノード電極32とカソード電極34(以後、これらをまとめて「製造電極」と呼ぶ)との間に接続されたときにおいて、メインパルス電源30を放電させるのを避けるのに十分高いインピーダンスを有する必要がある。製造電極を横断した電圧スタンドオフは、充電されたメインパルス電源30によって印加される電圧よりも大きい必要がある。最後に、製造電極を横断してオートヒューザデバイス70によって印加された電圧は、メインパルス電源30のコンデンサバンクの放電を引き起こすのに十分長い間、高電圧を維持する必要がある。
【0024】
動作中では、製造電極は、製造電極を横断するスタンドオフ電圧がメインパルス電源30の充電電圧よりも大きくなるように、各々に対してインデックス付けされる。さらに、二次電極44は、ステップアップ変圧器63によって供給される電圧よりも小さいスタンドオフ電圧を第1の一次電極41に対して有するように、配置されている。メインパルス電源30を構成するコンデンサは、3〜10kVの典型電圧に充電され、その一方で、オートヒューズ電源58は、コンデンサ51を30kVの典型電圧に充電する。第1の一次電極41と第2の一次電極43は、20〜40kVの範囲にあるが、オートヒューザコンデンサ51の充電電圧と、メインパルス電源の充電電圧との差よりも大きな電圧をスタンドオフするように、構成されている。光源66が、光ファイバーケーブル65を介してトリガパルス生成器64に光信号を提供するように電圧が加えられるときにおいて、パルスがトリガパルス生成器64によって生成される。そのパルスは、ステップアップ変圧器63により検出され、TSG保護回路61を通過して二次電極44へと送られる。TSG保護回路61は、電流がTSGデバイス42への一方向のみに流れることを可能にするように、設計されている。それに応答して、第1の一次電極41および二次電極44を横断してスパークが生じる。その後、第1の一次電極41と第2の一次電極43との間のスタンドオフ電圧が下がり、放電オートヒューズコンデンサ51によって二つの一次電極を横断してアークが生成される。その結果として、第1の一次電極41の電位が上がり、製造電極の電位差がブレイクダウン電圧レベル以上に増える。その後、製造電極を横断してアークが生成されて、メインパルス電源30のコンデンサバンクを放電し、ナノパウダーが生成される。
【0025】
高電力の外部スイッチを用いた既知のナノパウダー合成システムを超えた改善がオートヒューザデバイス70によって提供されることは明らかである。高電力外部スイッチは、実質的に、開いている場合には高インピーダンスデバイスであり、閉じている場合には低インピーダンスデバイスである。ナノパウダー合成システムに外部高電力スイッチがある場合では、電極は、メインパルス電源30の放電から形成された放電アークが電極間のギャップをこえるのが可能なような低インピーダンスを電極が示すのに十分近接して配置される必要がある。この場合では、高電力電流は、外部高電力スイッチおよび電極の両方ともを通る。電極間のギャップが大きい場合では、電極は高インピーダンスを示す。従って、外部電力スイッチが閉じられると、ギャップのインピーダンスが非常に高いので、何も起こらない。
【0026】
外部電力スイッチを有しないがオートヒューザデバイス70を含むナノパウダー合成システムでは、電極間のギャップが高インピーダンスを有するように構成される。従って、コンデンサバンクが充電されると、コンデンサバンクの電圧はアーク放電を生成しない。オートヒューザデバイス70は、電極間のスタンドオフ電圧よりも大きな電圧を生成する比較的低エネルギーのデバイスである。オートヒューザデバイス70と比べて、電極は低インピーダンスを示す。オートヒューザ70が低電力の高電圧放電を提供すると、電極のインピーダンスは効果的に下がり、その結果、メインパルス電源30が放電し得る。すなわち、オートヒューザデバイス70は、製造電極の状態を高インピーダンスから低インピーダンスへと変化させる。
【0027】
図2を参照すると、本発明の代替実施形態が示されている。そこでは、図1の記述において識別された類似したデバイスが、同じ参照番号によって参照される。図2の実施形態と図1の実施形態との主な違いは、図2では、オートヒューザデバイス70が、アノード電極32と、カソード電極34と、メインパルス電源30とに直列に電気接続されていることである。より詳しくは、パルス変圧器81の二次コイル80が、メインパルス電源30とアノード電極32との間で直列に電気接続されており、パルス変圧器81の一次コイル82が、TSGデバイス42の一次電極41とグランドとの間で直列に電気接続されている。
【0028】
動作中では、アノード電極32とカソード電極34とを含む製造電極は、メインパルス電源30の充電電圧をスタンドオフするように、また、パルス変圧器81によって供給された電圧(典型的には20〜30kV)よりも低いブレイクダウン電圧を有するように、設計されている。メインパルス電源30とオートヒューズ電源58が作動されて充電される。その後、トリガ回路68は、光源66からの光信号によって起動されて、オートヒューザコンデンサ51に、TSGデバイス42の第1の一次電極41および第2の一次電極43を横断して放電させる。その結果、パルス変圧器81の一次コイル82において電圧スパイクが生じ、パルス変圧器81が、二次コイル80においてパルスを生成して、製造電極を横断する電圧をブレイクダウン電圧以上に増やす。その後、メインパルス電源30は放電して、反応チャンバ35内にナノパウダーを生成させる。
【0029】
パルス変圧器81が製造電極と直列するので、図2に示された本発明の実施形態は、10ms以上のオーダーの長いパルス長を含んだアプリケーションにより適応しているということは理解されるべきである。さらに、メインパルス電源30によって生成された電流がパルス変圧器81を通るので、パルス変圧器81は、過熱を避けるために低いインピーダンスを有する必要がある。さらに、オートヒューザデバイス70によって印加された製造電極の電位差は、メインパルス電源30の充電電圧よりも大きい必要があり、メインパルス電源30の放電を引き起こしてナノパウダーを生成するのに十分長い間、製造電極の電位差を高く維持する必要がある。
【0030】
イグナイトロン、固体スイッチおよびコンタクトスイッチのような旧型システムとは異なり、オートヒューザデバイス70は、短寿命の部品を有しないが、むしろ、メインパルス電源30の107回の放電まで耐え得る。
【0031】
本発明はまた、アクティブな水冷、複雑な相互接続、または部品の交換の必要なしに、高電力の1Hz以上のオーダーの繰り返し率の放電と、107回以上の放電の寿命を提供し得る。寿命が伸びたは、信頼性のない外部電力スイッチを取り除き、比較的低電力の信頼性のある部品を備えたオートヒューザデバイス70を使用した直接的な結果である。
【0032】
2つの軸方向に並べられた電極を有する好適な実施形態と関連して、本発明を記載し、図示してきた。ペアの電極の両方が前駆物質からなろうと、そのペアのうちの一つの電極のみが前駆物質からなろうと、本発明が、ペアの電極間の高電力放電を用いる任意の一般的なナノパウダー合成システムに適用され得るということは理解される。
【0033】
本発明の好適な実施形態を詳細に説明してきたが、特許請求の範囲に規定されるような本発明の精神および範囲から逸脱せずに、種々の置換、修正および改変がなされ得る。さらに、好適な実施形態の上記記載は、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91063(P2013−91063A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−21286(P2013−21286)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2011−126684(P2011−126684)の分割
【原出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(511009710)エヌシーシー ナノ, エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】