ナノパーティクル組成物用の表面安定剤としてのPEG誘導体化脂質の使用
【課題】不溶性有機薬剤とその表面に吸着させた少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質とを含むナノパーティクル組成物を提供する。
【解決手段】PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンA、PEGビタミンE、またはそれらの混合物とすることができるポリエチリングリコール誘導体化脂質を含み、有効平均粒径が約1ミクロン未満であるナノパーティクル組成物及びその製造および使用方法。
【解決手段】PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンA、PEGビタミンE、またはそれらの混合物とすることができるポリエチリングリコール誘導体化脂質を含み、有効平均粒径が約1ミクロン未満であるナノパーティクル組成物及びその製造および使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬剤の表面に表面安定剤として吸着させた少なくとも1種のポリエチレングリコール(PEG)誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEを有する薬剤のナノパーティクル配合物に、またそうした組成物の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナノパーティクル組成物は、米国特許第5,145,684号明細書(以下、‘684特許)に初めて記載されたものであり、表面に非架橋型の表面安定剤を吸着させた難溶性の治療用または診断用薬剤から成る微粒子である。‘684特許はナノパーティクル組成物用のさまざまな表面安定剤の使用について記載している。‘684特許には、ナノパーティクル組成物用の、またはそうした組成物の成分用の表面安定剤としてのPEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEの使用については記載されていない。
【0003】
‘684特許はナノパーティクル組成物の生産を可能にする有用な表面安定剤を特定するための薬剤のスクリーニング方法について記述している。あらゆる表面安定剤があらゆる薬剤の、安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産するのに役立つとは限らない。そればかりか、既知の表面安定剤では安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産できない場合もある。よって、この技術分野ではナノパーティクル組成物の製造に有用な新しい表面安定剤の特定が必要とされている。加えて、そうした新種の表面安定剤には既知の表面安定剤よりも優れた特性が期待できる可能性もある。
【0004】
A. ナノパーティクル組成物中の脂質
脂質は脂肪および脂肪由来物質の総称である。それには次のような物質がすべて含まれる:(i)水には比較的に不溶性であるが有機溶媒(ベンゼン、クロロホルム、アセトン、エーテルなど)には可溶の物質;(ii)脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ステロール、ろうなどと実際的または潜在的に関連する物質;および(iii)動物生体による利用が可能である物質。脂質は水には比較的に不溶であるが有機溶媒には可溶であるため、しばしば「脂溶性」物質といわれる。これは動植物細胞から「非極性」または「脂肪」溶媒により抽出される物質を意味する。代表的な脂質にはリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、セファリンなど)、脂肪、脂肪酸、グリセリドおよびグリセロールエーテル、スフィンゴ脂質、アルコールおよびろう、テルペン、ステロイド、それに非コレステロール系の難水溶性ビタミンである「脂溶性」ビタミンAまたはEなどがある。「Stedman’s Medical Dictionary」 25版、 p.884 (Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 1990)、「Hawley’s Condensed Chemical Dictionary」 11版、 p.704 (Van Nostrand Reinhold Co., New York, 1987)。
【0005】
多数の米国特許がナノパーティクル組成物用の補助表面安定剤としての荷電リン脂質(ジミリストイルホスファチジルグリセロールなど)の使用を教示している。たとえば「静脈内投与したナノパーティクル製剤に誘発される生理副作用の軽減」に関する米国特許第5,834,025号、「ベクロメタゾンナノパーティクル分散系を含むエーロゾル」に関する米国特許第5,747,001号、および「イブプロフェンのR(-)光学異性体を含むナノパーティクル」に関する米国特許第5,718,919号を参照。
【0006】
他の米国特許は、蒸気加熱オートクレーブ時の微粒子凝集の防止を目的としたナノパーティクル組成物表面安定剤用の曇り点調節剤としての荷電リン脂質(ジアシルホスファチジルグリセロールまたはジミリストイルホスファチジルグリセロールなど)の使用について記述している。たとえば、「画像診断用X線造影剤として有効な2,4,6-トリヨード-5-置換アミノ-イソフタレートエステル」に関する米国特許第5,670,136号、「X線造影剤としての3-アミド-トリヨードフェニルエステル」に関する米国特許第5,668,196号、「血液プールおよびリンパ系画像化のためのX線造影剤としての診断用ナノパーティクル混合無水炭酸」に関する米国特許第5,643,552号、「凝集を抑制するための荷電リン脂質を含むナノパーティクル組成物の調製法」に関する米国特許第5,470,583号、および「ナノパーティクルの凝集の抑制を目的とした荷電リン脂質の使用」に関する米国特許第5,336,507号を参照。これらの特許はいずれも、ナノパーティクル組成物の表面安定剤、曇り点調節剤およびその他何らかの成分としてのPEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEのナノパーティクル組成物への使用については触れていない。
【0007】
B. 医薬組成物中のPEG誘導体化脂質
単数または複数のリン脂質二重層から成るリポソーム、すなわちリン脂質小胞について薬剤の担体としての可能性が研究されてきた。未変性リポソームは肝臓と脾臓で吸収される傾向がある。これらの部位を標的とする薬剤では未変性リポソームが佐剤として有用であるが、肝臓と脾臓はしばしば薬物送達の標的部位ではない。肝臓と脾臓に対するこうした親和性はリポソーム被包薬の効果を制限し、また投与を煩雑にする。Kimelberg 他、「Properties and Biological Effects of Liposomes and Their Uses in Pharmacology and Toxicology」 CRC Crit. Rev. Toxicol., 6:25-79 (1978)およびAllen 他“Stealth(登録商標) Liposomes: An Improved Sustained Release System For 1-beta-D-arabinofuranosylcytosine,”「Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。これらの問題を回避するべく、リポソーム構造を変性させて循環時間を延ばすという方法が種々研究されてきた。Allen「 Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。
【0008】
変性脂質の一有効型はポリエチレングリコール(PEG)を含むことが発見された。PEGはポリ(エチレンオキシド)(PEO)ともいうが、その最も一般的な形態は次のように両末端にヒドロキシル基を備えた線状重合体である:
HO-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OH
この重合体はHO-PEG-OHとして表記しうるが、記号-PEG-は次の構造単位を表すものとする:
-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-
【0009】
PEGが特に有効なのは、その調製しやすさ、比較的廉価、分子量の調節可能性、および種々の方法で脂質と結合する能力などのためである。PEGはリポソーム表面に親水性皮膜を形成することにより、また立体障害を引き起こすことにより作用し、それによってリポソーム−血清タンパク質相互作用とリポソーム−RES(細網内皮系)細胞相互作用を抑えると考えられている。Yuda 他“Prolongation of Liposome Circulation Time by Various Derivatives of Polyethyleneglycols” 「Biol. Pharm. Bull.」 19: 1347-1348(1996)。
【0010】
PEG誘導体化脂質については、たとえば「生化学用途向けのポリ(エチレングリコール)とプロピオン酸またはブタン酸一置換型の関連重合体、ならびにその官能性誘導体」に関する米国特許第5,672,662号、およびYuda 他、 (1996)に記載されている。
【0011】
1. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の生体内循環時間を長引かせる効果がある
PEG誘導体化脂質またはリポソームは「立体安定化」脂質またはリポソーム(S脂質またはSリポソーム)と呼ばれる。Allen“Long-circulating(sterically stabilized) liposomes for targeted drug delivery”「TiPS」15:215-220 (1994)。PEGは脂質表面に水を引きつけることにより、脂質上に親水性表面を形成する。この親水性表面は血しょうタンパク質による脂質のオプソニゼーションを阻害し、それによってPEG脂質の循環時間を長引かせる。オプソニゼーションとは主に肝臓と脾臓に存在する単核食細胞系(MPS)細胞による取り込みをいう。PEG誘導体化脂質はMPS細胞による取り込みを免れるため、Stealth(登録商標)脂質/リポソームとも呼ばれる。Lasic D.“Liposomes”「Am. Scientist」 80:20-31 (1992)、Papahadjopoulos 他“Sterically Stabilized Liposomes: Pronounced Improvements in Blood Clearance, Tissue Distribution, and Therapeutic Index of Encapsulated Drugs Against Implanted Tumors” 「PNAS, USA」 88:11460-11464 (1991).[Stealth(登録商標)はLiposome Technology, Inc.(カリフォルニア州メンロパーク)の登録商標である。]
【0012】
下図は代表的PEGリポソームと在来リポソームの比較である:
【表1】
【0013】
PEG脂質は(1)血中滞留時間の延長、(2)MPSへの取り込みの速度と度合いの低下とそれに伴うこの重要な宿主免疫系に対し悪影響が及ぶ確率の低下、(3)動物とヒトにおける用量に依存しない薬物動力学、および(4)生体内生物障壁を突破する能力を示すという点で、在来脂質に大きく優る。Allenのp.216、 Yuda 他のpp. 1349-1351; Bedu-Addo 他 “Interaction of PEG-phospholipid Conjugates with Phospholipid Implications in Liposomal Drug Delivery”「Advanced Drug Delivery Reviews」16:235-247 (1995)およびLasic 他 “The ‘Stealth’ Liposome: A Prototypical Biomaterial” 「Chemical Reviews」、 95:2601-2628 (1995)。
【0014】
たとえば、PEG誘導脂質はナノパーティクルの血中循環時間を大幅に延ばす効果があると報告されている。腫瘍の大きさと増殖を減少させるためのPEG脂質被包型ドキソルビシンおよびエピルビシンの研究から、これらの被包薬は半減期が遊離の薬よりもずっと長く、また循環系からのクリアランスがずっと遅い(PEG被包型ドキソルビシンの場合、分布半減期は約42時間であったが、遊離のドキソルビシンの分布半減期は約5分であった)。‘662特許; Mayhew 他 「Int. J. Cancer」 51:302-309 (1992)、 Huang 他「Cancer Res.」 52: 6774-6781 (1992)およびGabizon 他 “A Pilot Study of Doxorubicin Encapsulated in Long-Circulating [Stealth(登録商標) Liposome(S-Dox) in Cancer Patients”「Proc. Soc. Clin. Oncol.」 11:124 (1992)。
【0015】
同様に、Yuda 他はPEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コハク酸エステル、PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化グリセロールといったPEG誘導体化脂質の生体内循環時間の延長について記述している。これらの結果は、PEG誘導体をリポソームに組み込むと投与後の血中リポソーム濃度が著しく上昇し、それに応じてRESによる取り込みが減少することを示した。PEGを組み込まない在来リポソームは低血中濃度と肝臓、脾臓への高蓄積を示し、これらのリポソームはRESによってすぐに取り込まれてしまうことを示唆した。Yuda 他 p.1349。
【0016】
2. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の毒性を緩和する効果がある
PEG誘導体化脂質被包型にすると薬剤の半減期が延長するだけでなく、動物の場合、投薬の毒性が遊離の薬剤の投与で観察される毒性よりも低くなることも判明した。毒性がこのように低くなるのは、PEGリポソーム担体が投与後の血しょう中濃度の急上昇を防ぐためであるらしい。Mayhew 他 「Int. J. Cancer」 51:302-309 (1992)。
【0017】
3. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の安定性を増す効果がある
長循環PEG脂質が細胞毒性細胞への送達を強めるもう1つのやり方は、血しょうとの接触で急速に分解する薬剤を長時間にわたって保護するという方法である。たとえば白血性腫瘍ができたマウスの研究では、PEG誘導体化リン脂質被包ARA-C(不安定薬剤)は遊離のARA-Cまたは在来リポソームに被包されたARA-Cよりも低用量でマウスの延命時間を長引かせる効果が一段と強かった。Allen 他 「Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。PEG誘導体化リン脂質送達系が低用量でも他の薬剤送達系に優るのは、PEG誘導体化脂質の循環時間の大幅延長や担体からの薬剤の低漏損率のためであった。
【0018】
この技術分野では、投薬の効能を高めることを目的とした潜在的に長い血中滞留時間や低毒性、高安定性を特徴とする難溶性薬剤のナノパーティクル組成物が求められている。さらに、既知の表面安定剤が無効であるようなナノパーティクル薬剤組成物の調製に有効な表面安定剤も求められている。
【発明の概要】
【0019】
発明の要約
本発明は、難溶性薬剤と該薬剤の表面に表面安定剤として吸着させた少なくとも1種のPEG誘導体化リン脂質(以下、「PEGリン脂質」)、PEG誘導体化コレステロール(「PEGコレステロール」)、PEG誘導体化コレステロール誘導体(「PEGコレステロール誘導体」)、PEG誘導体化ビタミンA(「PEGビタミンA」)またはPEG誘導体化ビタミンE(「PEGビタミンE」)とを含むナノパーティクル組成物に関連する。PEG脂質が安定であるために、薬剤/PEG脂質ナノパーティクル組成物は投薬の血中滞留時間の延長、毒性の緩和および安定性の向上につながる。
【0020】
本発明の別の態様は本発明のナノパーティクル組成物を含む医薬組成物に関連する。この医薬組成物は好ましくは、難溶性薬剤、薬剤表面に吸着させた少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE、および医薬として許容しうる担体、ならびに任意の望ましい賦形剤を含む。
【0021】
本発明はさらに、表面安定剤として薬剤表面に吸着させた少なくとも1つのPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEを含むナノパーティクル組成物の製造方法を開示する。この種の方法は難溶性ナノパーティクル薬剤をPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤に、ナノパーティクル/PEG脂質組成物を形成するのに十分な時間および条件の下で接触させることを含む。PEG脂質表面安定剤を薬剤に接触させるタイミングは薬剤微粉砕前、中、後のいずれでもよい。
【0022】
本発明はさらに、本発明に基づくナノパーティクル薬剤/PEG脂質組成物の治療上有効量を治療が必要な哺乳動物に投与することを含む治療方法に関連する。
以上の全般的な説明と以下の詳細な説明はどちらも例示と解説が目的であり、請求項に記載する本発明についてさらに説明しようとするものである。本発明に関する以下の詳細な説明によれば他の目的、利点および新規の特徴も当業者には自明であろう。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、薬剤表面に少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤を吸着させたナノパーティクル薬剤を含む組成物に、またそうした組成物の製造方法に関連する。
【0024】
A. 組成物
本発明の組成物はナノパーティクル薬剤と該薬剤表面に吸着させた少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤とを含む。本発明に有用な表面安定剤はナノパーティクル薬剤の表面に物理的に接着するが、薬剤またはそれ自体とは化学反応をしない。表面安定剤の個々の吸着分子には本質的に分子間架橋がない。
【0025】
本発明はまた、その表面に少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤を吸着させたナノパーティクル組成物を含む。この組成物は無毒性の生理的に許容しうる1以上の担体、佐剤または賦形剤(一括して担体類と呼ぶ)と調合してある。組成物は非経口注射、固形剤または液剤による経口投与、直腸または局所投与等に適するように調合しうる。
【0026】
1. 薬剤微粒子
本発明のナノパーティクルは治療用または診断用薬剤(一括して「薬剤」という)を含む。治療剤はタンパク質、ペプチド、ヌクレオチドなどを含めた医薬でも、あるいはX線造影剤を含めた造影剤などのような診断用薬剤でもよい。薬剤はばらばらの粒子でも、結晶相でも非晶相でもよい。結晶相は、欧州特許第275,796号に記載されているような沈殿法に由来する非結晶相または非晶相とは異なる。
【0027】
本発明は多様な薬剤で実施することができる。薬剤は好ましくは本質的に純粋な形で存在し、難溶性であり、また少なくとも1種類の液体媒体に分散させることができる。「難溶性」とは、液体分散媒中の薬剤の溶解度が約10 mg/mL未満、好ましくは約1 mg/mL未満であることを意味する。
【0028】
薬剤はさまざまな部類の既知の薬剤から、たとえばタンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、肥満抑制薬、栄養剤、コルチコステロイド、エラスターゼインヒビター、鎮痛薬、抗真菌薬、がん治療薬、抗嘔吐薬、鎮痛薬、心臓血管薬、抗炎症薬、駆虫剤、抗不整脈薬、(ペニシリンを含む)抗生物質、抗凝血剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗ムスカリン様作用薬、抗マイコバクテリア症薬、抗腫瘍薬、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗ウィルス薬、抗不安鎮静剤(睡眠薬と神経安定薬)、収れん薬、ベータアドレナリン受容体ブロッカー、血液製剤および代用剤、強心薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤(去痰薬と粘液溶解剤)、診断用薬剤、診断用造影剤、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン薬)、止血薬、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、副交感神経興奮薬、副甲状腺カルシトニンおよび二ホスホン酸塩、プロスタグランジン、放射線医薬品、(ステロイドを含む)性ホルモン、抗アレルギー剤、興奮剤および食欲抑制薬、交感神経興奮薬、甲状腺薬、血管拡張薬、キサンチンなどから選択することができる。
【0029】
薬剤の部類ごとの説明と各部類内の種別リストは、参照指示により本書に組み込まれるMartindaleの「The Extra Pharmacopoeia」29版(The Pharmaceutical Press, London, 1989)に求めることができる。これらの薬剤には市販品もあれば、技術上周知の方法で調製しうるものもある。
【0030】
2. PEG脂質表面安定剤
適当なPEG脂質表面安定剤は、任意のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEから選択しうるのが好ましい。
【0031】
脂質上のPEG置換基の分子量は化合物の循環半減期に影響を及ぼす。分子量が大きい、たとえば約4000〜約5000 DaのPEGをもつ誘導体化脂質は半減期が長いが、2000 Da程度のもっと低分子量のものでも有効である。たとえば、約750〜約800 Daのさらにもっと低分子量のPEGをもつ誘導体化脂質も有用であるが、この程度の分子量では循環半減期に影響が出始める。Allenのp.218およびYuda他のp.1349。
【0032】
DPP-PEG-OHやDSPE-PEG-COOH[たとえばα-(ジパルミトイルホスファチジル)-ω-ヒドロキシポリオキシエチレンおよびジステアロイルホスファチジル-N-(3-カルボキシプロピオニル ポリオキシエチレン スクシニル)エタノールアミン]などのようなPEG誘導体を含み、両末端に官能基をもつリポソームもまた、非PEG誘導体化化合物や同じ分子量ながら末端官能基を欠くPEG誘導体化化合物に比して、化合物の循環半減期を延長する効果がある。Yuda 他、 p.1349。さらに、両末端に官能基をもつ比較的低分子量(たとえば約1000 Da以下)のPEG誘導体化化合物もまた、非PEG誘導体化化合物または同じ分子量ながら末端官能基を欠くPEG誘導体化化合物に比して循環時間が長くなる。
市販のPEGリポソームとしてはPEG-5000(商標)とPEG-2000(商標)の2例がある(Shearwater Polymers, Inc.)。
表面安定剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
3. 補助表面安定剤
本発明の組成物はまた、少なくとも1つのPEG脂質表面安定剤に加えて1種以上の補助表面安定剤を含んでもよい。適当な補助表面安定剤は既知の有機または無機賦形剤から選択しうるのが好ましい。その種の賦形剤には種々のポリマー、低分子オリゴマー、天然産物、界面活性剤などが含まれる。好ましい表面安定剤は非イオン系およびイオン系界面活性剤である。補助表面安定剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
代表的な補助表面安定剤としては、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえば、セトマクロゴル1000などのようなマクロゴルエーテル)、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[たとえば市販品のTween 20(登録商標)やTween 80(登録商標)などのようなTween(登録商標)類(ICI Specialty Chemicals)]、ポリエチレングリコール[Carbowaxs 3350(登録商標)および1450(登録商標)、Carbopol 934(登録商標)(Union Carbide)など]、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SL、HPC-Lなど)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート、非結晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールのエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマー(チロキサポール、スペリオン、トリトンともいう)、ポロキサマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体であるPluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標)など)、ポロキサミン[エチレンジアミンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを逐次付加して得られる四官能性ブロック共重合体であるTetronic 908(登録商標)、別称Poloxamine 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.)など]、荷電リン脂質[ジミリストイルホスファチジルグリセロール、スルホコハク酸ジオクチル(DOSS)など]、Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル[たとえば、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OT(登録商標)]、ラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol P(登録商標) (DuPont)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons X-200(登録商標)(Rohm and Haas)、ステアリン酸スクロースと二ステアリン酸スクロースの混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.)、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)またの名、Olin-1OG(登録商標)またはSurfactant 10-G(登録商標)(Olin Chemicals, Stamford, CT)、Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.)、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノイル-β-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル-β-D-チオグルコピラノシドなどがある。
【0035】
これらの表面安定剤はほとんどが既知の賦形剤であり、American Pharmaceutical AssociationとThe Pharmaceutical Society of Great Britainの共同出版になる「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(The Pharmaceutical Press, 1986)(これは参照指示により本書に組み込まれる)に詳しく記載されている。これらの表面安定剤は市販品であるか、または技術上周知の方法で調整しうるものである。
【0036】
3. ナノパーティクル薬剤/PEG脂質の粒径
本発明の組成物は好ましくは、光散乱法、鏡検法など適切な方法で測定した有効平均粒径が約1000 nm(1ミクロン)未満の、より好ましくは約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満、または約50 nm未満のナノパーティクルを含む。「有効平均粒径が約1000 nm未満」とは、光散乱法で測定した場合に薬剤粒子の少なくとも50%が約1000 nm未満の加重平均粒径であることを意味する。薬剤粒子の少なくとも70%が、より好ましくは薬剤粒子の少なくとも90%が、さらにより好ましくは薬剤粒子の少なくとも約95%が平均粒径約1000 nm未満であるのが好ましい。
【0037】
4. ナノパーティクル薬剤および表面安定剤の濃度
薬剤と1種以上の表面安定剤の相対量は大きく変動しうる。表面安定剤の最適量はたとえば、選択される特定の活性物質、PEG脂質表面安定剤の親水性−親油性バランス(HLB)、融点および水溶性、表面安定剤水溶液の表面張力などに依存する。
【0038】
1種以上の表面安定剤の濃度は薬剤と表面安定剤の合計総質量に基づいて約0.1〜約90質量%の変動範囲とすることができるが、好ましくは約1〜約75質量%の、より好ましくは約10〜約60質量%の、最も好ましくは約10〜約30質量%の変動範囲とする。
薬剤の濃度は薬剤と表面安定剤の合計総質量に基づいて約99.9〜約10質量%の変動範囲とすることができるが、好ましくは約99〜約25質量%の、もっと好ましくは約90〜約40質量%の、最も好ましくは約90〜約70質量%の変動範囲とする。
【0039】
B. ナノパーティクル組成物の製造方法
ナノパーティクル薬剤組成物はたとえば微粉砕法または沈殿法によって製造することができる。ナノパーティクル組成物の製法例は ‘684特許に記載されている。
【0040】
1. ナノパーティクル薬剤分散系を得るための微粉砕処理
ナノパーティクル分散系を得るための水性薬剤の微粉砕処理は薬剤粒子を液体分散媒中に分散させ、次いで微粉砕媒体の存在下で機械的手段により薬剤粒径を所望の有効平均粒径へと小さくするステップを含む。薬剤粒子は少なくとも1つのPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤の存在下で微粉砕することができる。あるいは、微粉砕後の粒子に1以上の表面安定剤を接触させてもよい。微粉砕処理時に希釈剤などのような他の化合物を薬剤/表面安定剤組成物に加えることもできる。分散系は連続式または回分式で製造することができる。得られたナノパーティクル薬剤分散系は固形または液体の製剤組成物に使用することができる。
【0041】
2. ナノパーティクル薬剤組成物を得るための沈殿処理
所望のナノパーティクル組成物を調製するもう1つの方法はマイクロ沈殿処理である。これは、微量毒性溶媒または可溶性重金属不純物をまったく含まない1以上の表面安定剤と1以上のコロイド安定性強化界面活性剤の存在下で安定した薬剤分散系を調製する方法である。この種の方法はたとえば、(1)適当な溶媒に薬剤を溶解させるステップ、(2)ステップ(1)由来の配合物を1種以上の表面安定剤を含む溶液に加えて透明溶液をつくるステップ、および(3)適当な非溶媒を使用してステップ(2)由来の配合物を沈殿させるステップを含む。この方法に続いて、形成される塩があればそれを透析またはダイアフィルトレーションで除去し、分散系を通常の手段で濃縮することができる。得られたナノパーティクル分散系は固形または液体の製剤組成物に使用することができる。
【0042】
C. 1以上の表面安定剤を含むナノパーティクル薬剤組成物の使用方法
本発明のナノパーティクル組成物はヒトおよび動物に対し経口、経直腸、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)、槽内、腹腔内、局所(粉薬、軟膏または点滴薬)投与し、またはスプレー式口腔薬または点鼻薬として投与することができる。
【0043】
非経口投与に適した組成物は生理的に許容可能な滅菌水溶液または非水溶液、分散系、懸濁液または乳濁液、および注射可能溶液または分散系へと再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。適当な水性または非水性の担体、希釈剤、溶媒、または賦形剤は水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどのような注射可能有機エステルなどである。適正な流動性は、たとえばレシチンなどのような皮膜材の使用により、分散系の場合には所要の粒径を維持することにより、また界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0044】
ナノパーティクル組成物は保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤などのような佐剤を含んでもよい。微生物の増殖はパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などのような抗菌/抗真菌剤によって確実に防止することができる。砂糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含めるのも望ましいかもしれない。注射可能な剤形の吸収時間の延長は、吸収を遅らせる物質、たとえばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの使用によって実現できる。
【0045】
経口投与用の固形剤形にはカプセル剤、錠剤、丸薬、粉剤、顆粒剤などがある。こうした剤形では活性化合物を次のうちの少なくとも1つと混和する:(a)1以上の不活性賦形剤(または担体)、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、(b)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、ケイ酸などの充てん剤または増量剤、(c)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、アラビアゴムなどの結合剤、(d)グリセロールなどの保湿剤、(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(f)パラフィンなどの溶解遅延剤、(g)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(h)セチルアルコールやモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(i)カオリンやベントナイトなどの吸着剤、および(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはそれらの混合物などの滑沢剤。カプセル剤、錠剤、丸薬の場合、緩衝剤を剤形に含めてもよい。
【0046】
経口投与用の液体剤形には医薬として許容しうる乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルなどがある。液体剤形は活性化合物のほかに、当業界で普通に用いられる水または他の溶媒や、可溶化剤、乳化剤などの不活性希釈剤を含む場合もある。乳化剤の典型的な例はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油など)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などである。
【0047】
組成物には、こうした不活性希釈剤のほかに湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、香味添加剤並びに香料などのような佐剤を含めてもよい。
本発明のナノパーティクル組成物に含まれる活性成分の実際の用量決定は、特定の組成物および投与方法で所望の治療結果を得るための活性成分の有効量次第で異なろう。したがって、決定用量は所望の治療効果、投与形態、投薬の効能、所望の治療期間等の要因に依存しよう。
【0048】
一回または分割用量で患者に投与される本発明の化合物の総日用量は、たとえば約1ナノモル〜約5マイクロモル/キログラム-体重となろう。投薬単位当たりの組成物は、日用量を調合するのに用いるそれらの約数となるような量を含むことができる。しかし、特定の患者への具体的な用量は、体重、体調、性別、食餌療法、投与回数および形態、投薬の効能、吸収および排出速度、他の薬剤との併用、治療しようとする特定の病気の重さなど種々の要因に依存しよう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】図1aは、2%の化合物Aおよび0.5%のアルブミンの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1b】図1bは、2%の化合物Aおよび1.0%のChremophor ELの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1c】図1cは、2%の化合物Aおよび1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1d】図1dは、 2%の化合物Aおよびデキストロースに溶かした1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2a】図2aは、2%の化合物A、1.0%のF108および0.005%のDOSSの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2b】図2bは、2%の化合物Aおよび生理食塩水に溶かした1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2c】図2cは、2%の化合物Aおよび1.0%のHPC-SLの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2d】図2dは、2%の化合物Aおよび1.0%のチロキサポールの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3a】図3aは、2%の化合物Aおよび1.0%のビタミンE PEGの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3b】図3bは、2%の化合物Aおよび生理食塩水に溶かした1.0% PEG-5000リン脂質の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3c】図3cは、2%の化合物Aおよび1.0%のPVP C-15の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3d】図3dは、2%の化合物Aおよび2.0%のTween 80の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、2%の化合物Aおよび1.0%のPEG-5000の安定的なナノパーティクル組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、2%の化合物Bおよび2%のPlurionic F68(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図6】図6は、2%の化合物Bおよび2%のPlurionic F88(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図7】図7は、1%の化合物Bおよび1%のPlurionic F108(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図8】図8は、1%の化合物Bおよび0.25%のChremophor EL(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図9】図9は、1%の化合物Bおよび0.25%のTween 80(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図10】図10は、2%の化合物Bおよび2%のチロキサポールの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図11】図11は、2%の化合物Bおよび1%のPEG-5000リン脂質の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、本発明はこれらの実施例で説明する個別の条件または詳細に限定されるものではない。この明細書の全体を通じて、参照指示のある米国特許を含めた公表文献はすべて、参照指示により本書に組み込まれる。
【0051】
実施例1
本実施例の目的は、治療活性をもつ難水溶性化合物である化合物Aの安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産するうえでの静脈内投与に許容しうる種々の在来型表面安定剤の有効性を試験することにあった。
以下の組成物は(Pluronic F108(商標)および0.005% DOSSとの組成物を除いて)すべて、U.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中でローラー微粉砕するために調製した。
【0052】
微粉砕処理に要した日数はPluronic F108(商標)、HPC-SL、チロキサポールおよびPVPの各配合物が7日;アルブミン、PEGビタミンE、生理食塩水に溶かしたPluronic F108(商標)、生理食塩水に溶かしたPEG-5000リン脂質、およびChremophor EL(商標)の各配合物が5日;Tween 80(商標)配合物が4日;デクストロースに溶かしたPluronic F108(商標)配合物が8日であった。Pluronic F108(商標)と0.005% DOSSの配合物はローラー微粉砕ではなく0.5 mm径のSDy-20高分子媒体を入れた15 mlポリカーボネートチューブ中で22時間のDC微粉砕にかけた(DC微粉砕はローラー微粉砕よりも強力である)。
【0053】
各組成物に関連する図は微粉砕後の組成物の顕微鏡写真を示す。
(a) 2%の化合物Aと0.5%のアルブミンの混合物(図1a)
(b) 2%の化合物Aと1.0%の Chremophor EL(商標)(ポリオキシエチル化ヒマシ油、BASF Corp.)の混合物(図1b)
(c) 2%の化合物Aと1.0%の Pluronic F108(商標)(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、BASF Corp.)の混合物(図1c)
(d) 2%の化合物Aとデクストロースに溶かした1.0%の Pluronic F108(商標)の混合物(図1d)
(e) 2%の化合物A、1.0%の Pluronic F108(商標)および0.005%の DOSS(スルホコハク酸ジオクチル、Aldrich Chemicals,Inc.)の混合物(図2a)
(f) 2%の化合物Aと生理食塩水に溶かした1.0%の Pluronic F108(商標)の混合物(図2b)
【0054】
(g) 2%の化合物Aと1.0%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、Nisso Chemical)の混合物(図2c)
(h) 2%の化合物Aと1.0%のチロキサポール(Nycomed)の混合物(図2d)
(i) 2%の化合物Aと1.0%のビタミンE PEG(ビタミンEポリエチレングリコール;Eastman Chemical, Rochester, NY)の混合物(図3a)
(j) 2%の化合物Aと生理食塩水に溶かした1.0%の PEG-500リン脂質(Shearwater Polymers, Inc.)の混合物(図3b)
(k) 2%の化合物Aと1.0%の Plasdone C-15(商標)(ポリビニルピロリドン、GAF Corp.)の混合物(図3c)、および
(l) 2%の化合物Aと2.0%の Tween 80(商標)(ポリオキシエチレン化ソルビタンのオレイン酸塩;ICI Americas Inc., Wilmington, Del.)の混合物(図3d)。
微粉砕後の組成物の顕微鏡写真から明らかなように、いずれの界面活性剤も化合物Aの安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生み出す結果とはならなかった。
【0055】
実施例2
本実施例の目的はナノパーティクル組成物用の静脈内投与に許容しうる表面安定剤としてのPEG脂質の有効性を調べることにあった。試験した活性物質は化合物Aである。
2%の化合物Aと1%の PEG-5000(商標)リン脂質(Shearwater Polymers, Inc.)の混合物をU.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中で8日間にわたりローラー微粉砕した。図4に示すように化合物Aの安定したナノパーティクル配合物が得られた。ナノパーティクル分散系の最終有効平均粒径は約277 nm、標準偏差は約87 nmであった。さらに、得られたナノパーティクル配合物はより長い期間、たとえば室温で1週間以上にわたり、安定であった。
【0056】
実施例3
本実施例の目的は、ナノパーティクル用の静脈内投与(IV)に許容しうる種々の表面安定剤、たとえばPEG脂質の有効性を調べることにあった。使用した活性物質は、難水溶性の医薬として活性な化合物である化合物Bであった。化合物Bは、種々の細胞および細胞外環境においてFKBPドメインを含む2つのタンパク質をホモダイマーにすることができる二量化剤として機能するが、移植片対宿主病(GvHD)の治療への使用が意図されている。
【0057】
以下に掲げる組成物(a)、(b)、(d)、(e)、(f)および(g)はU.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中でローラー微粉砕するように調製した。これらの組成物の微粉砕処理時間は次のとおりであった:(a)132時間、(b)2週間、(d)86時間、(e)86時間、(f)74時間、(g)127時間。組成物(c)と(h)はもっと強力なDCミルを使用して0.5 mm径高分子媒体4 mlを充填した15 mlポリカーボネートチューブ中で、それぞれ24時間および20時間処理して調製した。
【0058】
各組成物に関する図は微粉砕後の組成物のホリバ式粒径分布図または(光学)顕微鏡写真である。
(a) 2%の化合物Bと2%のPlurionic F68(商標)(ポリオキシエチレンプロピレングリコール一脂肪酸エステル、BASF)の混合物(図5)
(b) 2%の化合物Bと2%のPlurionic F88(商標)(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、BASF)(図6)
(c) 1%の化合物Bと1%のPlurionic F108(商標)(BASF)の混合物(図7)
(d) 1%の化合物Bと0.25%のChremophor EL(商標)の混合物(図8)
(e) 1%の化合物Bと0.25% Tween 80(商標)の混合物(図9)
(f) 2%の化合物Bと1%のPVP C-15の混合物。この混合物は可溶性であるためコロイド状の懸濁液は形成されなかった;
(g) 2%の化合物Bと2%のチロキサポールの混合物。この組成物は大きな粒子を形成した(図10);および
(h) 2%のAP1903と1%のPEG-5000リン脂質の混合物(図11)
【0059】
図5〜10は、Plurionic F68(商標)、Plurionic F88(商標)、Plurionic F108(商標)、Chremophor EL(商標)、Tween 80(商標)およびチロキサポールの使用が、粒径範囲1ミクロン(1000 nm)〜10ミクロンの均質な分散系を生み出すことを示している。さらに、得られた最小粒径は300〜350 nmであった。加えて、これらの表面安定剤で小粒径を得るには強度の微粉砕処理が必要であった。
対照的に、PEG脂質表面安定剤を使用すると微粉砕処理時間の短縮が可能になり、また最大粒径約195 nm未満の、十分に分散したコロイド状懸濁液が得られた。たとえば図11を参照。
【0060】
本発明の方法と組成物に種々の修正や変更を、発明の精神と範囲から逸脱することなく加えられることは当業者には自明であろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびその相当物の範囲内に収まる限りで、本発明の修正や変更を包摂するものとする。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬剤の表面に表面安定剤として吸着させた少なくとも1種のポリエチレングリコール(PEG)誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEを有する薬剤のナノパーティクル配合物に、またそうした組成物の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナノパーティクル組成物は、米国特許第5,145,684号明細書(以下、‘684特許)に初めて記載されたものであり、表面に非架橋型の表面安定剤を吸着させた難溶性の治療用または診断用薬剤から成る微粒子である。‘684特許はナノパーティクル組成物用のさまざまな表面安定剤の使用について記載している。‘684特許には、ナノパーティクル組成物用の、またはそうした組成物の成分用の表面安定剤としてのPEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEの使用については記載されていない。
【0003】
‘684特許はナノパーティクル組成物の生産を可能にする有用な表面安定剤を特定するための薬剤のスクリーニング方法について記述している。あらゆる表面安定剤があらゆる薬剤の、安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産するのに役立つとは限らない。そればかりか、既知の表面安定剤では安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産できない場合もある。よって、この技術分野ではナノパーティクル組成物の製造に有用な新しい表面安定剤の特定が必要とされている。加えて、そうした新種の表面安定剤には既知の表面安定剤よりも優れた特性が期待できる可能性もある。
【0004】
A. ナノパーティクル組成物中の脂質
脂質は脂肪および脂肪由来物質の総称である。それには次のような物質がすべて含まれる:(i)水には比較的に不溶性であるが有機溶媒(ベンゼン、クロロホルム、アセトン、エーテルなど)には可溶の物質;(ii)脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ステロール、ろうなどと実際的または潜在的に関連する物質;および(iii)動物生体による利用が可能である物質。脂質は水には比較的に不溶であるが有機溶媒には可溶であるため、しばしば「脂溶性」物質といわれる。これは動植物細胞から「非極性」または「脂肪」溶媒により抽出される物質を意味する。代表的な脂質にはリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、セファリンなど)、脂肪、脂肪酸、グリセリドおよびグリセロールエーテル、スフィンゴ脂質、アルコールおよびろう、テルペン、ステロイド、それに非コレステロール系の難水溶性ビタミンである「脂溶性」ビタミンAまたはEなどがある。「Stedman’s Medical Dictionary」 25版、 p.884 (Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 1990)、「Hawley’s Condensed Chemical Dictionary」 11版、 p.704 (Van Nostrand Reinhold Co., New York, 1987)。
【0005】
多数の米国特許がナノパーティクル組成物用の補助表面安定剤としての荷電リン脂質(ジミリストイルホスファチジルグリセロールなど)の使用を教示している。たとえば「静脈内投与したナノパーティクル製剤に誘発される生理副作用の軽減」に関する米国特許第5,834,025号、「ベクロメタゾンナノパーティクル分散系を含むエーロゾル」に関する米国特許第5,747,001号、および「イブプロフェンのR(-)光学異性体を含むナノパーティクル」に関する米国特許第5,718,919号を参照。
【0006】
他の米国特許は、蒸気加熱オートクレーブ時の微粒子凝集の防止を目的としたナノパーティクル組成物表面安定剤用の曇り点調節剤としての荷電リン脂質(ジアシルホスファチジルグリセロールまたはジミリストイルホスファチジルグリセロールなど)の使用について記述している。たとえば、「画像診断用X線造影剤として有効な2,4,6-トリヨード-5-置換アミノ-イソフタレートエステル」に関する米国特許第5,670,136号、「X線造影剤としての3-アミド-トリヨードフェニルエステル」に関する米国特許第5,668,196号、「血液プールおよびリンパ系画像化のためのX線造影剤としての診断用ナノパーティクル混合無水炭酸」に関する米国特許第5,643,552号、「凝集を抑制するための荷電リン脂質を含むナノパーティクル組成物の調製法」に関する米国特許第5,470,583号、および「ナノパーティクルの凝集の抑制を目的とした荷電リン脂質の使用」に関する米国特許第5,336,507号を参照。これらの特許はいずれも、ナノパーティクル組成物の表面安定剤、曇り点調節剤およびその他何らかの成分としてのPEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンAまたはPEG誘導体化ビタミンEのナノパーティクル組成物への使用については触れていない。
【0007】
B. 医薬組成物中のPEG誘導体化脂質
単数または複数のリン脂質二重層から成るリポソーム、すなわちリン脂質小胞について薬剤の担体としての可能性が研究されてきた。未変性リポソームは肝臓と脾臓で吸収される傾向がある。これらの部位を標的とする薬剤では未変性リポソームが佐剤として有用であるが、肝臓と脾臓はしばしば薬物送達の標的部位ではない。肝臓と脾臓に対するこうした親和性はリポソーム被包薬の効果を制限し、また投与を煩雑にする。Kimelberg 他、「Properties and Biological Effects of Liposomes and Their Uses in Pharmacology and Toxicology」 CRC Crit. Rev. Toxicol., 6:25-79 (1978)およびAllen 他“Stealth(登録商標) Liposomes: An Improved Sustained Release System For 1-beta-D-arabinofuranosylcytosine,”「Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。これらの問題を回避するべく、リポソーム構造を変性させて循環時間を延ばすという方法が種々研究されてきた。Allen「 Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。
【0008】
変性脂質の一有効型はポリエチレングリコール(PEG)を含むことが発見された。PEGはポリ(エチレンオキシド)(PEO)ともいうが、その最も一般的な形態は次のように両末端にヒドロキシル基を備えた線状重合体である:
HO-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OH
この重合体はHO-PEG-OHとして表記しうるが、記号-PEG-は次の構造単位を表すものとする:
-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-
【0009】
PEGが特に有効なのは、その調製しやすさ、比較的廉価、分子量の調節可能性、および種々の方法で脂質と結合する能力などのためである。PEGはリポソーム表面に親水性皮膜を形成することにより、また立体障害を引き起こすことにより作用し、それによってリポソーム−血清タンパク質相互作用とリポソーム−RES(細網内皮系)細胞相互作用を抑えると考えられている。Yuda 他“Prolongation of Liposome Circulation Time by Various Derivatives of Polyethyleneglycols” 「Biol. Pharm. Bull.」 19: 1347-1348(1996)。
【0010】
PEG誘導体化脂質については、たとえば「生化学用途向けのポリ(エチレングリコール)とプロピオン酸またはブタン酸一置換型の関連重合体、ならびにその官能性誘導体」に関する米国特許第5,672,662号、およびYuda 他、 (1996)に記載されている。
【0011】
1. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の生体内循環時間を長引かせる効果がある
PEG誘導体化脂質またはリポソームは「立体安定化」脂質またはリポソーム(S脂質またはSリポソーム)と呼ばれる。Allen“Long-circulating(sterically stabilized) liposomes for targeted drug delivery”「TiPS」15:215-220 (1994)。PEGは脂質表面に水を引きつけることにより、脂質上に親水性表面を形成する。この親水性表面は血しょうタンパク質による脂質のオプソニゼーションを阻害し、それによってPEG脂質の循環時間を長引かせる。オプソニゼーションとは主に肝臓と脾臓に存在する単核食細胞系(MPS)細胞による取り込みをいう。PEG誘導体化脂質はMPS細胞による取り込みを免れるため、Stealth(登録商標)脂質/リポソームとも呼ばれる。Lasic D.“Liposomes”「Am. Scientist」 80:20-31 (1992)、Papahadjopoulos 他“Sterically Stabilized Liposomes: Pronounced Improvements in Blood Clearance, Tissue Distribution, and Therapeutic Index of Encapsulated Drugs Against Implanted Tumors” 「PNAS, USA」 88:11460-11464 (1991).[Stealth(登録商標)はLiposome Technology, Inc.(カリフォルニア州メンロパーク)の登録商標である。]
【0012】
下図は代表的PEGリポソームと在来リポソームの比較である:
【表1】
【0013】
PEG脂質は(1)血中滞留時間の延長、(2)MPSへの取り込みの速度と度合いの低下とそれに伴うこの重要な宿主免疫系に対し悪影響が及ぶ確率の低下、(3)動物とヒトにおける用量に依存しない薬物動力学、および(4)生体内生物障壁を突破する能力を示すという点で、在来脂質に大きく優る。Allenのp.216、 Yuda 他のpp. 1349-1351; Bedu-Addo 他 “Interaction of PEG-phospholipid Conjugates with Phospholipid Implications in Liposomal Drug Delivery”「Advanced Drug Delivery Reviews」16:235-247 (1995)およびLasic 他 “The ‘Stealth’ Liposome: A Prototypical Biomaterial” 「Chemical Reviews」、 95:2601-2628 (1995)。
【0014】
たとえば、PEG誘導脂質はナノパーティクルの血中循環時間を大幅に延ばす効果があると報告されている。腫瘍の大きさと増殖を減少させるためのPEG脂質被包型ドキソルビシンおよびエピルビシンの研究から、これらの被包薬は半減期が遊離の薬よりもずっと長く、また循環系からのクリアランスがずっと遅い(PEG被包型ドキソルビシンの場合、分布半減期は約42時間であったが、遊離のドキソルビシンの分布半減期は約5分であった)。‘662特許; Mayhew 他 「Int. J. Cancer」 51:302-309 (1992)、 Huang 他「Cancer Res.」 52: 6774-6781 (1992)およびGabizon 他 “A Pilot Study of Doxorubicin Encapsulated in Long-Circulating [Stealth(登録商標) Liposome(S-Dox) in Cancer Patients”「Proc. Soc. Clin. Oncol.」 11:124 (1992)。
【0015】
同様に、Yuda 他はPEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コハク酸エステル、PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化グリセロールといったPEG誘導体化脂質の生体内循環時間の延長について記述している。これらの結果は、PEG誘導体をリポソームに組み込むと投与後の血中リポソーム濃度が著しく上昇し、それに応じてRESによる取り込みが減少することを示した。PEGを組み込まない在来リポソームは低血中濃度と肝臓、脾臓への高蓄積を示し、これらのリポソームはRESによってすぐに取り込まれてしまうことを示唆した。Yuda 他 p.1349。
【0016】
2. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の毒性を緩和する効果がある
PEG誘導体化脂質被包型にすると薬剤の半減期が延長するだけでなく、動物の場合、投薬の毒性が遊離の薬剤の投与で観察される毒性よりも低くなることも判明した。毒性がこのように低くなるのは、PEGリポソーム担体が投与後の血しょう中濃度の急上昇を防ぐためであるらしい。Mayhew 他 「Int. J. Cancer」 51:302-309 (1992)。
【0017】
3. PEG誘導体化脂質の薬剤担体は投薬の安定性を増す効果がある
長循環PEG脂質が細胞毒性細胞への送達を強めるもう1つのやり方は、血しょうとの接触で急速に分解する薬剤を長時間にわたって保護するという方法である。たとえば白血性腫瘍ができたマウスの研究では、PEG誘導体化リン脂質被包ARA-C(不安定薬剤)は遊離のARA-Cまたは在来リポソームに被包されたARA-Cよりも低用量でマウスの延命時間を長引かせる効果が一段と強かった。Allen 他 「Cancer Res.」 521:2431-2439 (1992)。PEG誘導体化リン脂質送達系が低用量でも他の薬剤送達系に優るのは、PEG誘導体化脂質の循環時間の大幅延長や担体からの薬剤の低漏損率のためであった。
【0018】
この技術分野では、投薬の効能を高めることを目的とした潜在的に長い血中滞留時間や低毒性、高安定性を特徴とする難溶性薬剤のナノパーティクル組成物が求められている。さらに、既知の表面安定剤が無効であるようなナノパーティクル薬剤組成物の調製に有効な表面安定剤も求められている。
【発明の概要】
【0019】
発明の要約
本発明は、難溶性薬剤と該薬剤の表面に表面安定剤として吸着させた少なくとも1種のPEG誘導体化リン脂質(以下、「PEGリン脂質」)、PEG誘導体化コレステロール(「PEGコレステロール」)、PEG誘導体化コレステロール誘導体(「PEGコレステロール誘導体」)、PEG誘導体化ビタミンA(「PEGビタミンA」)またはPEG誘導体化ビタミンE(「PEGビタミンE」)とを含むナノパーティクル組成物に関連する。PEG脂質が安定であるために、薬剤/PEG脂質ナノパーティクル組成物は投薬の血中滞留時間の延長、毒性の緩和および安定性の向上につながる。
【0020】
本発明の別の態様は本発明のナノパーティクル組成物を含む医薬組成物に関連する。この医薬組成物は好ましくは、難溶性薬剤、薬剤表面に吸着させた少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE、および医薬として許容しうる担体、ならびに任意の望ましい賦形剤を含む。
【0021】
本発明はさらに、表面安定剤として薬剤表面に吸着させた少なくとも1つのPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEを含むナノパーティクル組成物の製造方法を開示する。この種の方法は難溶性ナノパーティクル薬剤をPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤に、ナノパーティクル/PEG脂質組成物を形成するのに十分な時間および条件の下で接触させることを含む。PEG脂質表面安定剤を薬剤に接触させるタイミングは薬剤微粉砕前、中、後のいずれでもよい。
【0022】
本発明はさらに、本発明に基づくナノパーティクル薬剤/PEG脂質組成物の治療上有効量を治療が必要な哺乳動物に投与することを含む治療方法に関連する。
以上の全般的な説明と以下の詳細な説明はどちらも例示と解説が目的であり、請求項に記載する本発明についてさらに説明しようとするものである。本発明に関する以下の詳細な説明によれば他の目的、利点および新規の特徴も当業者には自明であろう。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、薬剤表面に少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤を吸着させたナノパーティクル薬剤を含む組成物に、またそうした組成物の製造方法に関連する。
【0024】
A. 組成物
本発明の組成物はナノパーティクル薬剤と該薬剤表面に吸着させた少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤とを含む。本発明に有用な表面安定剤はナノパーティクル薬剤の表面に物理的に接着するが、薬剤またはそれ自体とは化学反応をしない。表面安定剤の個々の吸着分子には本質的に分子間架橋がない。
【0025】
本発明はまた、その表面に少なくとも1種のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤を吸着させたナノパーティクル組成物を含む。この組成物は無毒性の生理的に許容しうる1以上の担体、佐剤または賦形剤(一括して担体類と呼ぶ)と調合してある。組成物は非経口注射、固形剤または液剤による経口投与、直腸または局所投与等に適するように調合しうる。
【0026】
1. 薬剤微粒子
本発明のナノパーティクルは治療用または診断用薬剤(一括して「薬剤」という)を含む。治療剤はタンパク質、ペプチド、ヌクレオチドなどを含めた医薬でも、あるいはX線造影剤を含めた造影剤などのような診断用薬剤でもよい。薬剤はばらばらの粒子でも、結晶相でも非晶相でもよい。結晶相は、欧州特許第275,796号に記載されているような沈殿法に由来する非結晶相または非晶相とは異なる。
【0027】
本発明は多様な薬剤で実施することができる。薬剤は好ましくは本質的に純粋な形で存在し、難溶性であり、また少なくとも1種類の液体媒体に分散させることができる。「難溶性」とは、液体分散媒中の薬剤の溶解度が約10 mg/mL未満、好ましくは約1 mg/mL未満であることを意味する。
【0028】
薬剤はさまざまな部類の既知の薬剤から、たとえばタンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、肥満抑制薬、栄養剤、コルチコステロイド、エラスターゼインヒビター、鎮痛薬、抗真菌薬、がん治療薬、抗嘔吐薬、鎮痛薬、心臓血管薬、抗炎症薬、駆虫剤、抗不整脈薬、(ペニシリンを含む)抗生物質、抗凝血剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗ムスカリン様作用薬、抗マイコバクテリア症薬、抗腫瘍薬、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗ウィルス薬、抗不安鎮静剤(睡眠薬と神経安定薬)、収れん薬、ベータアドレナリン受容体ブロッカー、血液製剤および代用剤、強心薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤(去痰薬と粘液溶解剤)、診断用薬剤、診断用造影剤、利尿剤、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン薬)、止血薬、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、副交感神経興奮薬、副甲状腺カルシトニンおよび二ホスホン酸塩、プロスタグランジン、放射線医薬品、(ステロイドを含む)性ホルモン、抗アレルギー剤、興奮剤および食欲抑制薬、交感神経興奮薬、甲状腺薬、血管拡張薬、キサンチンなどから選択することができる。
【0029】
薬剤の部類ごとの説明と各部類内の種別リストは、参照指示により本書に組み込まれるMartindaleの「The Extra Pharmacopoeia」29版(The Pharmaceutical Press, London, 1989)に求めることができる。これらの薬剤には市販品もあれば、技術上周知の方法で調製しうるものもある。
【0030】
2. PEG脂質表面安定剤
適当なPEG脂質表面安定剤は、任意のPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEから選択しうるのが好ましい。
【0031】
脂質上のPEG置換基の分子量は化合物の循環半減期に影響を及ぼす。分子量が大きい、たとえば約4000〜約5000 DaのPEGをもつ誘導体化脂質は半減期が長いが、2000 Da程度のもっと低分子量のものでも有効である。たとえば、約750〜約800 Daのさらにもっと低分子量のPEGをもつ誘導体化脂質も有用であるが、この程度の分子量では循環半減期に影響が出始める。Allenのp.218およびYuda他のp.1349。
【0032】
DPP-PEG-OHやDSPE-PEG-COOH[たとえばα-(ジパルミトイルホスファチジル)-ω-ヒドロキシポリオキシエチレンおよびジステアロイルホスファチジル-N-(3-カルボキシプロピオニル ポリオキシエチレン スクシニル)エタノールアミン]などのようなPEG誘導体を含み、両末端に官能基をもつリポソームもまた、非PEG誘導体化化合物や同じ分子量ながら末端官能基を欠くPEG誘導体化化合物に比して、化合物の循環半減期を延長する効果がある。Yuda 他、 p.1349。さらに、両末端に官能基をもつ比較的低分子量(たとえば約1000 Da以下)のPEG誘導体化化合物もまた、非PEG誘導体化化合物または同じ分子量ながら末端官能基を欠くPEG誘導体化化合物に比して循環時間が長くなる。
市販のPEGリポソームとしてはPEG-5000(商標)とPEG-2000(商標)の2例がある(Shearwater Polymers, Inc.)。
表面安定剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
3. 補助表面安定剤
本発明の組成物はまた、少なくとも1つのPEG脂質表面安定剤に加えて1種以上の補助表面安定剤を含んでもよい。適当な補助表面安定剤は既知の有機または無機賦形剤から選択しうるのが好ましい。その種の賦形剤には種々のポリマー、低分子オリゴマー、天然産物、界面活性剤などが含まれる。好ましい表面安定剤は非イオン系およびイオン系界面活性剤である。補助表面安定剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
代表的な補助表面安定剤としては、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえば、セトマクロゴル1000などのようなマクロゴルエーテル)、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[たとえば市販品のTween 20(登録商標)やTween 80(登録商標)などのようなTween(登録商標)類(ICI Specialty Chemicals)]、ポリエチレングリコール[Carbowaxs 3350(登録商標)および1450(登録商標)、Carbopol 934(登録商標)(Union Carbide)など]、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SL、HPC-Lなど)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート、非結晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールのエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマー(チロキサポール、スペリオン、トリトンともいう)、ポロキサマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体であるPluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標)など)、ポロキサミン[エチレンジアミンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを逐次付加して得られる四官能性ブロック共重合体であるTetronic 908(登録商標)、別称Poloxamine 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.)など]、荷電リン脂質[ジミリストイルホスファチジルグリセロール、スルホコハク酸ジオクチル(DOSS)など]、Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル[たとえば、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OT(登録商標)]、ラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol P(登録商標) (DuPont)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons X-200(登録商標)(Rohm and Haas)、ステアリン酸スクロースと二ステアリン酸スクロースの混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.)、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)またの名、Olin-1OG(登録商標)またはSurfactant 10-G(登録商標)(Olin Chemicals, Stamford, CT)、Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.)、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノイル-β-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル-β-D-チオグルコピラノシドなどがある。
【0035】
これらの表面安定剤はほとんどが既知の賦形剤であり、American Pharmaceutical AssociationとThe Pharmaceutical Society of Great Britainの共同出版になる「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(The Pharmaceutical Press, 1986)(これは参照指示により本書に組み込まれる)に詳しく記載されている。これらの表面安定剤は市販品であるか、または技術上周知の方法で調整しうるものである。
【0036】
3. ナノパーティクル薬剤/PEG脂質の粒径
本発明の組成物は好ましくは、光散乱法、鏡検法など適切な方法で測定した有効平均粒径が約1000 nm(1ミクロン)未満の、より好ましくは約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満、または約50 nm未満のナノパーティクルを含む。「有効平均粒径が約1000 nm未満」とは、光散乱法で測定した場合に薬剤粒子の少なくとも50%が約1000 nm未満の加重平均粒径であることを意味する。薬剤粒子の少なくとも70%が、より好ましくは薬剤粒子の少なくとも90%が、さらにより好ましくは薬剤粒子の少なくとも約95%が平均粒径約1000 nm未満であるのが好ましい。
【0037】
4. ナノパーティクル薬剤および表面安定剤の濃度
薬剤と1種以上の表面安定剤の相対量は大きく変動しうる。表面安定剤の最適量はたとえば、選択される特定の活性物質、PEG脂質表面安定剤の親水性−親油性バランス(HLB)、融点および水溶性、表面安定剤水溶液の表面張力などに依存する。
【0038】
1種以上の表面安定剤の濃度は薬剤と表面安定剤の合計総質量に基づいて約0.1〜約90質量%の変動範囲とすることができるが、好ましくは約1〜約75質量%の、より好ましくは約10〜約60質量%の、最も好ましくは約10〜約30質量%の変動範囲とする。
薬剤の濃度は薬剤と表面安定剤の合計総質量に基づいて約99.9〜約10質量%の変動範囲とすることができるが、好ましくは約99〜約25質量%の、もっと好ましくは約90〜約40質量%の、最も好ましくは約90〜約70質量%の変動範囲とする。
【0039】
B. ナノパーティクル組成物の製造方法
ナノパーティクル薬剤組成物はたとえば微粉砕法または沈殿法によって製造することができる。ナノパーティクル組成物の製法例は ‘684特許に記載されている。
【0040】
1. ナノパーティクル薬剤分散系を得るための微粉砕処理
ナノパーティクル分散系を得るための水性薬剤の微粉砕処理は薬剤粒子を液体分散媒中に分散させ、次いで微粉砕媒体の存在下で機械的手段により薬剤粒径を所望の有効平均粒径へと小さくするステップを含む。薬剤粒子は少なくとも1つのPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンE表面安定剤の存在下で微粉砕することができる。あるいは、微粉砕後の粒子に1以上の表面安定剤を接触させてもよい。微粉砕処理時に希釈剤などのような他の化合物を薬剤/表面安定剤組成物に加えることもできる。分散系は連続式または回分式で製造することができる。得られたナノパーティクル薬剤分散系は固形または液体の製剤組成物に使用することができる。
【0041】
2. ナノパーティクル薬剤組成物を得るための沈殿処理
所望のナノパーティクル組成物を調製するもう1つの方法はマイクロ沈殿処理である。これは、微量毒性溶媒または可溶性重金属不純物をまったく含まない1以上の表面安定剤と1以上のコロイド安定性強化界面活性剤の存在下で安定した薬剤分散系を調製する方法である。この種の方法はたとえば、(1)適当な溶媒に薬剤を溶解させるステップ、(2)ステップ(1)由来の配合物を1種以上の表面安定剤を含む溶液に加えて透明溶液をつくるステップ、および(3)適当な非溶媒を使用してステップ(2)由来の配合物を沈殿させるステップを含む。この方法に続いて、形成される塩があればそれを透析またはダイアフィルトレーションで除去し、分散系を通常の手段で濃縮することができる。得られたナノパーティクル分散系は固形または液体の製剤組成物に使用することができる。
【0042】
C. 1以上の表面安定剤を含むナノパーティクル薬剤組成物の使用方法
本発明のナノパーティクル組成物はヒトおよび動物に対し経口、経直腸、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)、槽内、腹腔内、局所(粉薬、軟膏または点滴薬)投与し、またはスプレー式口腔薬または点鼻薬として投与することができる。
【0043】
非経口投与に適した組成物は生理的に許容可能な滅菌水溶液または非水溶液、分散系、懸濁液または乳濁液、および注射可能溶液または分散系へと再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。適当な水性または非水性の担体、希釈剤、溶媒、または賦形剤は水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどのような注射可能有機エステルなどである。適正な流動性は、たとえばレシチンなどのような皮膜材の使用により、分散系の場合には所要の粒径を維持することにより、また界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0044】
ナノパーティクル組成物は保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤などのような佐剤を含んでもよい。微生物の増殖はパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などのような抗菌/抗真菌剤によって確実に防止することができる。砂糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含めるのも望ましいかもしれない。注射可能な剤形の吸収時間の延長は、吸収を遅らせる物質、たとえばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの使用によって実現できる。
【0045】
経口投与用の固形剤形にはカプセル剤、錠剤、丸薬、粉剤、顆粒剤などがある。こうした剤形では活性化合物を次のうちの少なくとも1つと混和する:(a)1以上の不活性賦形剤(または担体)、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、(b)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、ケイ酸などの充てん剤または増量剤、(c)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、アラビアゴムなどの結合剤、(d)グリセロールなどの保湿剤、(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(f)パラフィンなどの溶解遅延剤、(g)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(h)セチルアルコールやモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(i)カオリンやベントナイトなどの吸着剤、および(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはそれらの混合物などの滑沢剤。カプセル剤、錠剤、丸薬の場合、緩衝剤を剤形に含めてもよい。
【0046】
経口投与用の液体剤形には医薬として許容しうる乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルなどがある。液体剤形は活性化合物のほかに、当業界で普通に用いられる水または他の溶媒や、可溶化剤、乳化剤などの不活性希釈剤を含む場合もある。乳化剤の典型的な例はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油など)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などである。
【0047】
組成物には、こうした不活性希釈剤のほかに湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、香味添加剤並びに香料などのような佐剤を含めてもよい。
本発明のナノパーティクル組成物に含まれる活性成分の実際の用量決定は、特定の組成物および投与方法で所望の治療結果を得るための活性成分の有効量次第で異なろう。したがって、決定用量は所望の治療効果、投与形態、投薬の効能、所望の治療期間等の要因に依存しよう。
【0048】
一回または分割用量で患者に投与される本発明の化合物の総日用量は、たとえば約1ナノモル〜約5マイクロモル/キログラム-体重となろう。投薬単位当たりの組成物は、日用量を調合するのに用いるそれらの約数となるような量を含むことができる。しかし、特定の患者への具体的な用量は、体重、体調、性別、食餌療法、投与回数および形態、投薬の効能、吸収および排出速度、他の薬剤との併用、治療しようとする特定の病気の重さなど種々の要因に依存しよう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】図1aは、2%の化合物Aおよび0.5%のアルブミンの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1b】図1bは、2%の化合物Aおよび1.0%のChremophor ELの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1c】図1cは、2%の化合物Aおよび1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図1d】図1dは、 2%の化合物Aおよびデキストロースに溶かした1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2a】図2aは、2%の化合物A、1.0%のF108および0.005%のDOSSの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2b】図2bは、2%の化合物Aおよび生理食塩水に溶かした1.0%のF108の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2c】図2cは、2%の化合物Aおよび1.0%のHPC-SLの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図2d】図2dは、2%の化合物Aおよび1.0%のチロキサポールの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3a】図3aは、2%の化合物Aおよび1.0%のビタミンE PEGの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3b】図3bは、2%の化合物Aおよび生理食塩水に溶かした1.0% PEG-5000リン脂質の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3c】図3cは、2%の化合物Aおよび1.0%のPVP C-15の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図3d】図3dは、2%の化合物Aおよび2.0%のTween 80の組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、2%の化合物Aおよび1.0%のPEG-5000の安定的なナノパーティクル組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、2%の化合物Bおよび2%のPlurionic F68(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図6】図6は、2%の化合物Bおよび2%のPlurionic F88(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図7】図7は、1%の化合物Bおよび1%のPlurionic F108(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図8】図8は、1%の化合物Bおよび0.25%のChremophor EL(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図9】図9は、1%の化合物Bおよび0.25%のTween 80(商標)の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【図10】図10は、2%の化合物Bおよび2%のチロキサポールの組成物の微粉砕後の顕微鏡写真である。
【図11】図11は、2%の化合物Bおよび1%のPEG-5000リン脂質の微粉砕混合物のホリバ式粒径分析の結果を示す。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、本発明はこれらの実施例で説明する個別の条件または詳細に限定されるものではない。この明細書の全体を通じて、参照指示のある米国特許を含めた公表文献はすべて、参照指示により本書に組み込まれる。
【0051】
実施例1
本実施例の目的は、治療活性をもつ難水溶性化合物である化合物Aの安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生産するうえでの静脈内投与に許容しうる種々の在来型表面安定剤の有効性を試験することにあった。
以下の組成物は(Pluronic F108(商標)および0.005% DOSSとの組成物を除いて)すべて、U.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中でローラー微粉砕するために調製した。
【0052】
微粉砕処理に要した日数はPluronic F108(商標)、HPC-SL、チロキサポールおよびPVPの各配合物が7日;アルブミン、PEGビタミンE、生理食塩水に溶かしたPluronic F108(商標)、生理食塩水に溶かしたPEG-5000リン脂質、およびChremophor EL(商標)の各配合物が5日;Tween 80(商標)配合物が4日;デクストロースに溶かしたPluronic F108(商標)配合物が8日であった。Pluronic F108(商標)と0.005% DOSSの配合物はローラー微粉砕ではなく0.5 mm径のSDy-20高分子媒体を入れた15 mlポリカーボネートチューブ中で22時間のDC微粉砕にかけた(DC微粉砕はローラー微粉砕よりも強力である)。
【0053】
各組成物に関連する図は微粉砕後の組成物の顕微鏡写真を示す。
(a) 2%の化合物Aと0.5%のアルブミンの混合物(図1a)
(b) 2%の化合物Aと1.0%の Chremophor EL(商標)(ポリオキシエチル化ヒマシ油、BASF Corp.)の混合物(図1b)
(c) 2%の化合物Aと1.0%の Pluronic F108(商標)(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、BASF Corp.)の混合物(図1c)
(d) 2%の化合物Aとデクストロースに溶かした1.0%の Pluronic F108(商標)の混合物(図1d)
(e) 2%の化合物A、1.0%の Pluronic F108(商標)および0.005%の DOSS(スルホコハク酸ジオクチル、Aldrich Chemicals,Inc.)の混合物(図2a)
(f) 2%の化合物Aと生理食塩水に溶かした1.0%の Pluronic F108(商標)の混合物(図2b)
【0054】
(g) 2%の化合物Aと1.0%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、Nisso Chemical)の混合物(図2c)
(h) 2%の化合物Aと1.0%のチロキサポール(Nycomed)の混合物(図2d)
(i) 2%の化合物Aと1.0%のビタミンE PEG(ビタミンEポリエチレングリコール;Eastman Chemical, Rochester, NY)の混合物(図3a)
(j) 2%の化合物Aと生理食塩水に溶かした1.0%の PEG-500リン脂質(Shearwater Polymers, Inc.)の混合物(図3b)
(k) 2%の化合物Aと1.0%の Plasdone C-15(商標)(ポリビニルピロリドン、GAF Corp.)の混合物(図3c)、および
(l) 2%の化合物Aと2.0%の Tween 80(商標)(ポリオキシエチレン化ソルビタンのオレイン酸塩;ICI Americas Inc., Wilmington, Del.)の混合物(図3d)。
微粉砕後の組成物の顕微鏡写真から明らかなように、いずれの界面活性剤も化合物Aの安定した非凝集ナノパーティクル組成物を生み出す結果とはならなかった。
【0055】
実施例2
本実施例の目的はナノパーティクル組成物用の静脈内投与に許容しうる表面安定剤としてのPEG脂質の有効性を調べることにあった。試験した活性物質は化合物Aである。
2%の化合物Aと1%の PEG-5000(商標)リン脂質(Shearwater Polymers, Inc.)の混合物をU.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中で8日間にわたりローラー微粉砕した。図4に示すように化合物Aの安定したナノパーティクル配合物が得られた。ナノパーティクル分散系の最終有効平均粒径は約277 nm、標準偏差は約87 nmであった。さらに、得られたナノパーティクル配合物はより長い期間、たとえば室温で1週間以上にわたり、安定であった。
【0056】
実施例3
本実施例の目的は、ナノパーティクル用の静脈内投与(IV)に許容しうる種々の表面安定剤、たとえばPEG脂質の有効性を調べることにあった。使用した活性物質は、難水溶性の医薬として活性な化合物である化合物Bであった。化合物Bは、種々の細胞および細胞外環境においてFKBPドメインを含む2つのタンパク質をホモダイマーにすることができる二量化剤として機能するが、移植片対宿主病(GvHD)の治療への使用が意図されている。
【0057】
以下に掲げる組成物(a)、(b)、(d)、(e)、(f)および(g)はU.S. Stonewareミルにより0.8 mm径のYTZ ジルコニア媒体7.5 mlを充填した15 ml茶色瓶中でローラー微粉砕するように調製した。これらの組成物の微粉砕処理時間は次のとおりであった:(a)132時間、(b)2週間、(d)86時間、(e)86時間、(f)74時間、(g)127時間。組成物(c)と(h)はもっと強力なDCミルを使用して0.5 mm径高分子媒体4 mlを充填した15 mlポリカーボネートチューブ中で、それぞれ24時間および20時間処理して調製した。
【0058】
各組成物に関する図は微粉砕後の組成物のホリバ式粒径分布図または(光学)顕微鏡写真である。
(a) 2%の化合物Bと2%のPlurionic F68(商標)(ポリオキシエチレンプロピレングリコール一脂肪酸エステル、BASF)の混合物(図5)
(b) 2%の化合物Bと2%のPlurionic F88(商標)(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、BASF)(図6)
(c) 1%の化合物Bと1%のPlurionic F108(商標)(BASF)の混合物(図7)
(d) 1%の化合物Bと0.25%のChremophor EL(商標)の混合物(図8)
(e) 1%の化合物Bと0.25% Tween 80(商標)の混合物(図9)
(f) 2%の化合物Bと1%のPVP C-15の混合物。この混合物は可溶性であるためコロイド状の懸濁液は形成されなかった;
(g) 2%の化合物Bと2%のチロキサポールの混合物。この組成物は大きな粒子を形成した(図10);および
(h) 2%のAP1903と1%のPEG-5000リン脂質の混合物(図11)
【0059】
図5〜10は、Plurionic F68(商標)、Plurionic F88(商標)、Plurionic F108(商標)、Chremophor EL(商標)、Tween 80(商標)およびチロキサポールの使用が、粒径範囲1ミクロン(1000 nm)〜10ミクロンの均質な分散系を生み出すことを示している。さらに、得られた最小粒径は300〜350 nmであった。加えて、これらの表面安定剤で小粒径を得るには強度の微粉砕処理が必要であった。
対照的に、PEG脂質表面安定剤を使用すると微粉砕処理時間の短縮が可能になり、また最大粒径約195 nm未満の、十分に分散したコロイド状懸濁液が得られた。たとえば図11を参照。
【0060】
本発明の方法と組成物に種々の修正や変更を、発明の精神と範囲から逸脱することなく加えられることは当業者には自明であろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびその相当物の範囲内に収まる限りで、本発明の修正や変更を包摂するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択されるナノパーティクル組成物。
【請求項2】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項1記載の組成物。
【請求項7】
請求項1記載の組成物を含む注射可能な製剤。
【請求項8】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約600 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約400 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約300 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約200 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約100 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約50 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項14】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の製造方法において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択され、かつ前記方法が前記薬剤を少なくとも1種のPEG脂質と、ナノパーティクル/PEG脂質組成物を提供するのに十分な時間および条件において接触させることを含むナノパーティクル組成物の製造方法。
【請求項15】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項14記載の方法。
【請求項17】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項14記載の方法。
【請求項18】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項14記載の方法。
【請求項19】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項14記載の方法。
【請求項20】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約200 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満から成る群より選択される請求項14記載の方法。
【請求項21】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の使用方法において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択され、かつ前記方法が治療を必要とする哺乳動物に薬剤/PEG脂質ナノパーティクル組成物を治療上の有効量投与することを含むナノパーティクル組成物の使用方法。
【請求項22】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約200 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満から成る群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の製造方法において、前記の製造方法が
(a) 薬剤を溶媒に溶かすこと、
(b) 可溶化した薬剤を、少なくとも1種のPEG脂質を含む溶液に加えて透明溶液を形成すること、
(c) PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択されるPEG脂質を表面安定剤として有する可溶化薬剤を、非溶媒を使用して沈殿させること、
を含み、前記方法が少なくとも1種のPEG脂質を表面安定剤として有する有効平均粒径約1000 nm未満のナノパーティクル組成物を生産するナノパーティクル組成物の製造方法。
【請求項24】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項23記載の方法。
【請求項26】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項23記載の方法。
【請求項27】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項23記載の方法。
【請求項28】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項23記載の方法。
【請求項29】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約600 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項30】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約400 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項31】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約300 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項32】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約200 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項33】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約100 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項34】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約50 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項35】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項21記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項21記載の方法。
【請求項37】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項38】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項21記載の方法。
【請求項39】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項21記載の方法。
【請求項1】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択されるナノパーティクル組成物。
【請求項2】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項1記載の組成物。
【請求項7】
請求項1記載の組成物を含む注射可能な製剤。
【請求項8】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約600 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約400 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約300 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約200 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約100 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約50 nm未満である請求項1記載の組成物。
【請求項14】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の製造方法において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択され、かつ前記方法が前記薬剤を少なくとも1種のPEG脂質と、ナノパーティクル/PEG脂質組成物を提供するのに十分な時間および条件において接触させることを含むナノパーティクル組成物の製造方法。
【請求項15】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項14記載の方法。
【請求項17】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項14記載の方法。
【請求項18】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項14記載の方法。
【請求項19】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項14記載の方法。
【請求項20】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約200 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満から成る群より選択される請求項14記載の方法。
【請求項21】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の使用方法において、前記PEG脂質がPEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択され、かつ前記方法が治療を必要とする哺乳動物に薬剤/PEG脂質ナノパーティクル組成物を治療上の有効量投与することを含むナノパーティクル組成物の使用方法。
【請求項22】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約200 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満から成る群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
有機薬剤とその表面に吸着させた約1000 nm未満の有効平均粒径を維持するのに十分な量の少なくとも1種のポリエチレングリコール誘導体化脂質(PEG脂質)とを含むナノパーティクル組成物の製造方法において、前記の製造方法が
(a) 薬剤を溶媒に溶かすこと、
(b) 可溶化した薬剤を、少なくとも1種のPEG脂質を含む溶液に加えて透明溶液を形成すること、
(c) PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択されるPEG脂質を表面安定剤として有する可溶化薬剤を、非溶媒を使用して沈殿させること、
を含み、前記方法が少なくとも1種のPEG脂質を表面安定剤として有する有効平均粒径約1000 nm未満のナノパーティクル組成物を生産するナノパーティクル組成物の製造方法。
【請求項24】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項23記載の方法。
【請求項26】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項23記載の方法。
【請求項27】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項23記載の方法。
【請求項28】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項23記載の方法。
【請求項29】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約600 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項30】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約400 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項31】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約300 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項32】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約200 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項33】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約100 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項34】
ナノパーティクル組成物の有効平均粒径が約50 nm未満である請求項23記載の方法。
【請求項35】
薬剤の含有量が約99.9〜約10(w/w)%である請求項21記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種のPEG脂質の含有量が約0.1〜約90(w/w)%である請求項21記載の方法。
【請求項37】
薬剤が結晶相薬剤と非晶相薬剤から成る群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項38】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAまたはPEGビタミンEとは異なる少なくとも1種の表面安定剤をさらに含む請求項21記載の方法。
【請求項39】
PEGリン脂質、PEGコレステロール、PEGコレステロール誘導体、PEGビタミンAおよびPEGビタミンEから成る群より選択される2種以上のPEG脂質を含む請求項21記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−102420(P2009−102420A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24191(P2009−24191)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願2000−602040(P2000−602040)の分割
【原出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願2000−602040(P2000−602040)の分割
【原出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】
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