ナノピラー、その製造方法およびナノピラーを用いたマイクロチップ
【課題】
耐性の高いナノピラーを得る。
【解決手段】
マイクロチップ基板への金薄膜の蒸着を10〜20nmの厚さに行い、その後チップを400〜600度で1時間程度熱処理して自己組織化させることにより、金属によるランダムピラー構造のナノピラーを基板上に形成させる。
耐性の高いナノピラーを得る。
【解決手段】
マイクロチップ基板への金薄膜の蒸着を10〜20nmの厚さに行い、その後チップを400〜600度で1時間程度熱処理して自己組織化させることにより、金属によるランダムピラー構造のナノピラーを基板上に形成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAなどの生体高分子試料をサイズに応じて分離するために使用することのできるナノピラー、その製造方法およびナノピラーを用いたマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
DNAのサイズ分離は、DNAのシーケンスを決定したり、SNPs(一塩基多型)の検出などによるDNA診断、DNAタイピング、DNA検定など広く使われている技術であり、今後ますます需要が増えるため、その取り扱いの容易化と高速化は重要な課題である。
【0003】
DNAのサイズ分離には、従来、アガロースやポリアクリルアミドなどのゲルやポリマー中を電気泳動させ、その網目構造に制限を受けながら移動する速度が、DNAの大きさに依存することを利用したゲル電気泳動が主流であった。
【0004】
しかし、一般的に長時間の泳動が必要なことや、分離するサイズに応じてゲルやポリマーの組成を変える必要があったり、大きなDNAの分離には途方もない時間が必要だったりするため、使いにくいという問題があった。
【0005】
近年、ゲルの網目構造をリソグラフィーなどを用いて作製したピラー構造の人工的な構造物に置き換え、サイズ分離を試みる手法がいくつか報告されている(非特許文献1参照。)。ピラー構造とは、泳動方向に直交する方向に延びた微細な棒状のピラーが高密度に形成されている構造である。
【非特許文献1】S. W. Turner, A. Perez, A. Lopez and H.G. Graighead, J. Vac. Sci. Technol., B16(6), Nov/Dec, pp. 3835-3840(1998)
【非特許文献2】Micro Total Analysis Systems 2003 Vol.2 p1315-1318
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、X線リソグラフィーとDeep−RIEや、ナノスタンピング等で石英ガラスや樹脂材料にナノピラーを作製していた。しかし従来のナノスタンピングで得られるナノピラーは材質が樹脂のため、高温による滅菌処理に問題があったり、また、Deep−RIE等で得られる、材質が石英のナノピラーの場合は、有機溶媒耐性が低く、アルカリや酸(フッ酸)に対しても劣化を引き起こすなどの問題があった(非特許文献2参照。)。
本発明は、耐性の高いナノピラーとその製造方法及びそのようなナノピラーを用いたチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のナノピラーは、金属製で複数の形状が混在したランダムピラー構造を含むナノピラーである。
金属は自己組織化する金属であり、その一例は金又は白金であり、耐熱、滅菌、耐有機溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性、又は耐薬品性を有している。
ここで、「自己組織化」とは散逸系での秩序形成が行われる性質を言う。
【0008】
本発明のマイクロチップは、基板内部に流路が形成され、前記流路の少なくとも一部を遮って本発明による金属製ナノピラーが設けられていることを特徴とするものである。
本発明のナノピラー製造方法は、基板へ自己組織化する金属薄膜の蒸着を行い、その後前記基板を熱処理して金属を自己組織化させることによって、ランダムナノピラー構造を前記基板上に形成させる方法である。
【発明の効果】
【0009】
従来のナノピラーは形状が一定のものに揃えられているのに対して、本発明のナノピラーはランダムピラーであるという違いがある。そのため、フィルタレーション(ろ過)のような用途に適したものとなる。
従来法ではナノスタンピング等で樹脂材料にナノピラーを形成していた。しかし、DNAを抽出する場合は樹脂材料チップでは200度滅菌操作に耐えられず、変形などを起こす場合がある。
【0010】
また、石英を用いたナノピラーチップでは、分析時間が長くなることや、酸(フッ酸)やアルカリ等の溶媒に曝された場合ナノピラーに劣化が起こることで分離機能が損なわれるという恐れがあり、耐薬品性に問題があった。
それに対し、本発明でナノピラーの材料として金属を用いるので、従来品に比べ高温(200度)の滅菌処理や高い耐有機溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐熱性をもち、連続分析や耐久性の面で非常に優れた効果を有する。
【0011】
特に金属として金又は白金を用いた場合には耐薬品性が特にすぐれている。
そのようなマイクロチップは生体高分子分離装置として利用することができる。
本発明の製造方法によれば、基板へ金属薄膜を蒸着し、その後熱処理するだけでランダムナノピラー構造を容易に形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明でのナノピラーの一実施例をその製造法とともに説明する。
図1(A)に示すように、ナノピラーを形成するマイクロチップは、ベースとなる石英製の下基板10にマイクロ流路(深さ150nm)を、例えばリソグラフィーとエッチングなどによって形成する。
基板10の流路内に、金を20nmの厚さになるように蒸着する。このとき、金属マスクなどのマスクを用いることにより、流路部分20のみに金を蒸着するようにする。
【0013】
次に窒素雰囲気下で基板10を600℃で1時間熱処理して、金の自己組織化により基板10の流路内にランダムナノピラー構造を形成させる。
基板10には、流路20の拡大図(B)のようなランダムナノピラーが形成された。
サンプル入り口12及び出口14が形成されたカバーガラス16を基板10の流路形成面にフッ酸接合により密着して接合し、マイクロチップ基板とした。
カバーガラス16へのサンプル入り口12及び出口14は、サンドブラスト法などによって形成した。
【0014】
本発明の製造条件は、上記記載の内容には限定されない。例えば、金薄膜の厚さが10nm、熱処理温度が400℃の場合も金の自己組織化によってナノピラーが形成される。しかし、蒸着膜の厚さが厚すぎるとナノピラーは形成されなくなる。例えば、金薄膜の厚さが85nmとなると、熱処理温度が600℃でも、ナノピラーは形成されない。
ナノピラーの形成条件としては、金薄膜の厚さに関しては50nm以下の場合が好ましく、熱処理温度に関しては金薄膜の厚さが大きくなる程、高い温度が必要になる傾向を示している。
【0015】
図2は基板に金薄膜を10nm蒸着し、その後400℃で1時間熱処理したあとの表面形状のAFM(原子間力顕微鏡)画像を示している。図2の尺度は縦及び横が0〜5μm、高さが0〜188nmになるように表示してある。図中のピラーは幅が300〜500nm、高さが20〜200nmで形状も大きさも不揃いのランダムナノピラー構造である。
【0016】
図3は金薄膜を20nm蒸着し、その後600℃で1時間熱処理したあとの表面形状のAFMデータを示している。図3の尺度は縦及び横が0〜30μm、高さが0〜150nmになるように表示してある。1つのピラーの幅が1〜2μm、高さが20〜200nmであるランダムナノピラー構造である。
【0017】
図4は図3の条件で製造したナノピラーをほぼ垂直上側から観察したAFM画像である。
図5は図4中の線A−Bと線C−Dの断面形状を示している。図6及び図7の上側の図は図4中の線A−Bと線C−Dの線に沿った表面粗さ、下側の図は表面の凹凸を周波数分布として表したものである。
図5〜7より、本発明によって形成されたナノピラーは高さが50〜170nmで変動し、間隔も不揃いのランダム構造であることがわかる。
【0018】
図8は金薄膜を85nmの厚さに蒸着し、その後600℃で1時間熱処理したあと、表面形状を基板のほぼ垂直上側から観察したものである。図8の尺度は縦及び横が0〜1.25μm、高さが0〜10nmになるように表示してある。
図9は図8中の線A−Bと線C−Dの断面形状を示している。図10及び11の上側の図は図8中の線A−Bと線C−Dの線に沿った表面粗さ、下側の図は表面の凹凸を周波数分布として表したものである。
図9〜11より、形成された金属の高さは0〜3nmで、ピラーは形成されておらず、平坦な表面に近いものとなっていることがわかる。
【0019】
本発明のマイクロチップ基板の流路には金のピラーが形成されているため、このマイクロチップ基板は耐熱、滅菌、耐有機溶媒製、耐酸性及び耐アルカリ性などの性質を有している。このことから、マイクロチップの高温による滅菌作用には問題は生じない。
この性質を利用し、マイクロチップ基板を生体高分子装置に組み込み、流路中のフィルターとして用いると、μTAS(Micro Total Analysis Systems)や電気泳動チップなどに応用することができ、例えば、DNAやタンパク質の分離などを行なうことが可能な装置とすることができる。
【0020】
実施例の説明では金属ナノピラーを形成する際に金蒸着を行なったが、白金で同様の操作を行なった場合も、基板上にランダムナノピラーが自己組織化し、金で行なった場合と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ナノピラーをマイクロチップ中のフィルターとして用いることで、生体高分子の分離を行なうために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)はマイクロチップ基板の分解斜視図であり、(B)はランダムナノピラー構造が形成された流路部分の拡大平面図である。
【図2】金による一実施例のナノピラーのAFM画像(金膜厚10nm)である。
【図3】金による他の実施例のナノピラーのAFM画像(金膜厚20nm)である。
【図4】図3のナノピラーをほぼ垂直方向から観察したAMF画像である。
【図5】図4中のA−B,C−D断面におけるピラーの断面形状図である。
【図6】上側の図は図4中のA−B断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図7】上側の図は図4中のC−D断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図8】金膜厚85nmとした場合の熱処理後の表面のAFM画像である。
【図9】図8中のA−B,C−D断面におけるピラーの断面形状図である。
【図10】上側の図は図8中のA−B断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図11】上側の図は図8中のC−D断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【符号の説明】
【0023】
10 マイクロチップ基板
12 試料導入穴
14 試料排出穴
16 カバーガラス
20 ナノピラー形成流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAなどの生体高分子試料をサイズに応じて分離するために使用することのできるナノピラー、その製造方法およびナノピラーを用いたマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
DNAのサイズ分離は、DNAのシーケンスを決定したり、SNPs(一塩基多型)の検出などによるDNA診断、DNAタイピング、DNA検定など広く使われている技術であり、今後ますます需要が増えるため、その取り扱いの容易化と高速化は重要な課題である。
【0003】
DNAのサイズ分離には、従来、アガロースやポリアクリルアミドなどのゲルやポリマー中を電気泳動させ、その網目構造に制限を受けながら移動する速度が、DNAの大きさに依存することを利用したゲル電気泳動が主流であった。
【0004】
しかし、一般的に長時間の泳動が必要なことや、分離するサイズに応じてゲルやポリマーの組成を変える必要があったり、大きなDNAの分離には途方もない時間が必要だったりするため、使いにくいという問題があった。
【0005】
近年、ゲルの網目構造をリソグラフィーなどを用いて作製したピラー構造の人工的な構造物に置き換え、サイズ分離を試みる手法がいくつか報告されている(非特許文献1参照。)。ピラー構造とは、泳動方向に直交する方向に延びた微細な棒状のピラーが高密度に形成されている構造である。
【非特許文献1】S. W. Turner, A. Perez, A. Lopez and H.G. Graighead, J. Vac. Sci. Technol., B16(6), Nov/Dec, pp. 3835-3840(1998)
【非特許文献2】Micro Total Analysis Systems 2003 Vol.2 p1315-1318
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、X線リソグラフィーとDeep−RIEや、ナノスタンピング等で石英ガラスや樹脂材料にナノピラーを作製していた。しかし従来のナノスタンピングで得られるナノピラーは材質が樹脂のため、高温による滅菌処理に問題があったり、また、Deep−RIE等で得られる、材質が石英のナノピラーの場合は、有機溶媒耐性が低く、アルカリや酸(フッ酸)に対しても劣化を引き起こすなどの問題があった(非特許文献2参照。)。
本発明は、耐性の高いナノピラーとその製造方法及びそのようなナノピラーを用いたチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のナノピラーは、金属製で複数の形状が混在したランダムピラー構造を含むナノピラーである。
金属は自己組織化する金属であり、その一例は金又は白金であり、耐熱、滅菌、耐有機溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性、又は耐薬品性を有している。
ここで、「自己組織化」とは散逸系での秩序形成が行われる性質を言う。
【0008】
本発明のマイクロチップは、基板内部に流路が形成され、前記流路の少なくとも一部を遮って本発明による金属製ナノピラーが設けられていることを特徴とするものである。
本発明のナノピラー製造方法は、基板へ自己組織化する金属薄膜の蒸着を行い、その後前記基板を熱処理して金属を自己組織化させることによって、ランダムナノピラー構造を前記基板上に形成させる方法である。
【発明の効果】
【0009】
従来のナノピラーは形状が一定のものに揃えられているのに対して、本発明のナノピラーはランダムピラーであるという違いがある。そのため、フィルタレーション(ろ過)のような用途に適したものとなる。
従来法ではナノスタンピング等で樹脂材料にナノピラーを形成していた。しかし、DNAを抽出する場合は樹脂材料チップでは200度滅菌操作に耐えられず、変形などを起こす場合がある。
【0010】
また、石英を用いたナノピラーチップでは、分析時間が長くなることや、酸(フッ酸)やアルカリ等の溶媒に曝された場合ナノピラーに劣化が起こることで分離機能が損なわれるという恐れがあり、耐薬品性に問題があった。
それに対し、本発明でナノピラーの材料として金属を用いるので、従来品に比べ高温(200度)の滅菌処理や高い耐有機溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐熱性をもち、連続分析や耐久性の面で非常に優れた効果を有する。
【0011】
特に金属として金又は白金を用いた場合には耐薬品性が特にすぐれている。
そのようなマイクロチップは生体高分子分離装置として利用することができる。
本発明の製造方法によれば、基板へ金属薄膜を蒸着し、その後熱処理するだけでランダムナノピラー構造を容易に形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明でのナノピラーの一実施例をその製造法とともに説明する。
図1(A)に示すように、ナノピラーを形成するマイクロチップは、ベースとなる石英製の下基板10にマイクロ流路(深さ150nm)を、例えばリソグラフィーとエッチングなどによって形成する。
基板10の流路内に、金を20nmの厚さになるように蒸着する。このとき、金属マスクなどのマスクを用いることにより、流路部分20のみに金を蒸着するようにする。
【0013】
次に窒素雰囲気下で基板10を600℃で1時間熱処理して、金の自己組織化により基板10の流路内にランダムナノピラー構造を形成させる。
基板10には、流路20の拡大図(B)のようなランダムナノピラーが形成された。
サンプル入り口12及び出口14が形成されたカバーガラス16を基板10の流路形成面にフッ酸接合により密着して接合し、マイクロチップ基板とした。
カバーガラス16へのサンプル入り口12及び出口14は、サンドブラスト法などによって形成した。
【0014】
本発明の製造条件は、上記記載の内容には限定されない。例えば、金薄膜の厚さが10nm、熱処理温度が400℃の場合も金の自己組織化によってナノピラーが形成される。しかし、蒸着膜の厚さが厚すぎるとナノピラーは形成されなくなる。例えば、金薄膜の厚さが85nmとなると、熱処理温度が600℃でも、ナノピラーは形成されない。
ナノピラーの形成条件としては、金薄膜の厚さに関しては50nm以下の場合が好ましく、熱処理温度に関しては金薄膜の厚さが大きくなる程、高い温度が必要になる傾向を示している。
【0015】
図2は基板に金薄膜を10nm蒸着し、その後400℃で1時間熱処理したあとの表面形状のAFM(原子間力顕微鏡)画像を示している。図2の尺度は縦及び横が0〜5μm、高さが0〜188nmになるように表示してある。図中のピラーは幅が300〜500nm、高さが20〜200nmで形状も大きさも不揃いのランダムナノピラー構造である。
【0016】
図3は金薄膜を20nm蒸着し、その後600℃で1時間熱処理したあとの表面形状のAFMデータを示している。図3の尺度は縦及び横が0〜30μm、高さが0〜150nmになるように表示してある。1つのピラーの幅が1〜2μm、高さが20〜200nmであるランダムナノピラー構造である。
【0017】
図4は図3の条件で製造したナノピラーをほぼ垂直上側から観察したAFM画像である。
図5は図4中の線A−Bと線C−Dの断面形状を示している。図6及び図7の上側の図は図4中の線A−Bと線C−Dの線に沿った表面粗さ、下側の図は表面の凹凸を周波数分布として表したものである。
図5〜7より、本発明によって形成されたナノピラーは高さが50〜170nmで変動し、間隔も不揃いのランダム構造であることがわかる。
【0018】
図8は金薄膜を85nmの厚さに蒸着し、その後600℃で1時間熱処理したあと、表面形状を基板のほぼ垂直上側から観察したものである。図8の尺度は縦及び横が0〜1.25μm、高さが0〜10nmになるように表示してある。
図9は図8中の線A−Bと線C−Dの断面形状を示している。図10及び11の上側の図は図8中の線A−Bと線C−Dの線に沿った表面粗さ、下側の図は表面の凹凸を周波数分布として表したものである。
図9〜11より、形成された金属の高さは0〜3nmで、ピラーは形成されておらず、平坦な表面に近いものとなっていることがわかる。
【0019】
本発明のマイクロチップ基板の流路には金のピラーが形成されているため、このマイクロチップ基板は耐熱、滅菌、耐有機溶媒製、耐酸性及び耐アルカリ性などの性質を有している。このことから、マイクロチップの高温による滅菌作用には問題は生じない。
この性質を利用し、マイクロチップ基板を生体高分子装置に組み込み、流路中のフィルターとして用いると、μTAS(Micro Total Analysis Systems)や電気泳動チップなどに応用することができ、例えば、DNAやタンパク質の分離などを行なうことが可能な装置とすることができる。
【0020】
実施例の説明では金属ナノピラーを形成する際に金蒸着を行なったが、白金で同様の操作を行なった場合も、基板上にランダムナノピラーが自己組織化し、金で行なった場合と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ナノピラーをマイクロチップ中のフィルターとして用いることで、生体高分子の分離を行なうために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)はマイクロチップ基板の分解斜視図であり、(B)はランダムナノピラー構造が形成された流路部分の拡大平面図である。
【図2】金による一実施例のナノピラーのAFM画像(金膜厚10nm)である。
【図3】金による他の実施例のナノピラーのAFM画像(金膜厚20nm)である。
【図4】図3のナノピラーをほぼ垂直方向から観察したAMF画像である。
【図5】図4中のA−B,C−D断面におけるピラーの断面形状図である。
【図6】上側の図は図4中のA−B断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図7】上側の図は図4中のC−D断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図8】金膜厚85nmとした場合の熱処理後の表面のAFM画像である。
【図9】図8中のA−B,C−D断面におけるピラーの断面形状図である。
【図10】上側の図は図8中のA−B断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【図11】上側の図は図8中のC−D断面におけるピラーの表面粗さ図、下側の図は表面の凹凸分布図である。
【符号の説明】
【0023】
10 マイクロチップ基板
12 試料導入穴
14 試料排出穴
16 カバーガラス
20 ナノピラー形成流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で、複数の形状が混在したランダムピラー構造を含むナノピラー。
【請求項2】
前記金属は自己組織化する金属である請求項1に記載のナノピラー。
【請求項3】
前記金属は金又は白金である請求項2に記載のナノピラー。
【請求項4】
基板内部に流路が形成され、前記流路の少なくとも一部を遮って請求項1から3のいずれかに記載のナノピラーが設けられていることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のナノピラーの製造法であって、基板へ自己組織化する金属薄膜を数十nm以下の厚さに蒸着法によって形成するステップと、その後前記基板を熱処理して金属を自己組織化させるステップとを備えていることを特徴とするナノピラー製造方法。
【請求項1】
金属製で、複数の形状が混在したランダムピラー構造を含むナノピラー。
【請求項2】
前記金属は自己組織化する金属である請求項1に記載のナノピラー。
【請求項3】
前記金属は金又は白金である請求項2に記載のナノピラー。
【請求項4】
基板内部に流路が形成され、前記流路の少なくとも一部を遮って請求項1から3のいずれかに記載のナノピラーが設けられていることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のナノピラーの製造法であって、基板へ自己組織化する金属薄膜を数十nm以下の厚さに蒸着法によって形成するステップと、その後前記基板を熱処理して金属を自己組織化させるステップとを備えていることを特徴とするナノピラー製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−6243(P2006−6243A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190105(P2004−190105)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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