説明

ナノピンセットおよび把持方法

【課題】アームが物体に接触したことを感度良く検出することができるナノピンセットの提供。
【解決手段】ナノピンセットは、開閉自在な一対のアームと、開閉駆動電圧が印加され、一対のアームの少なくとも一方を開閉駆動する静電アクチュエータ6と、静電アクチュエータ6が有する電気的等価回路を帰還回路として用いることにより自励発振させ、その自励発振によりアームを振動させる増幅器91と、アームの物体への接触による振動の変化を検出する振動変化検出部93とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小なワークをハンドリングするためのナノピンセット、および、そのナノピンセットによる把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小なワークをハンドリングするナノピンセットにおいて、櫛歯アクチュエータの容量変化を利用して試料の把持検出を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−210566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した装置では、アクチュエータの容量変化を検出して把持したか否かを判定しているので、検出感度や検出の安定性などに問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるナノピンセットは、開閉自在な一対のアームと、開閉駆動電圧が印加され、一対のアームの少なくとも一方を開閉駆動する静電アクチュエータと、静電アクチュエータが有する電気的等価回路を帰還回路として用いることにより自励発振させ、その自励発振によりアームを振動させる増幅器と、アームの物体への接触による振動状態の変化を検出する振動状態検出部とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明によるナノピンセットは、開閉動作する第1のアームと、静電アクチュエータを備えた第2のアームと、静電アクチュエータが有する電気的等価回路を帰還回路として用いることにより自励発振させ、その自励発振により第2のアームを振動させる増幅器と、第2のアームの物体への接触による振動状態の変化を検出する振動状態検出部とを備え、第1及び第2のアームにより試料を把持することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のナノピンセットにおいて、自励発振により振動するアームの振幅が非接触時に一定となるように、増幅器の利得を調整する利得調整手段を備えたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、振動状態検出部で検出された振動状態の変化に基づき、アームによる試料の把持を検出する把持検出手段をさらに備えたものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、振動状態の変化を、アームの物体への接触による共振振動の振幅の変化、周波数の変化および位相の変化のいずれか一つとしたものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、静電アクチュエータは、静止櫛歯電極部と、アームに連結されて該アームを駆動する可動櫛歯電極部とを有することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1に記載のナノピンセットによる試料の把持方法であって、振動変化検出部により振動の変化が検出されるまで、ナノピンセットを試料が載置された載置部の方向へ移動し、振動変化検出部により振動の変化が検出されたならば、ナノピンセットを載置部の方向と逆の方向に所定移動量だけ移動し、移動の後に静電アクチュエータによりアームを閉駆動し、振動変化検出部により振動の変化が検出されたならば、静電アクチュエータによるアームの閉駆動を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、振動の変化を検出することにより、アームによる把持を感度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明によるナノピンセットの一実施の形態を示す図である。ナノピンセット1は、後述するように、半導体プロセス技術を応用したマイクロマシニング技術を利用して半導体基板上に形成される。ナノピンセット1はXYZステージ等の移動機構に装着して用いられ、ミクロンオーダーの試料のハンドリングに使用される。
【0008】
台座7上には、試料を把持するためのアーム3A,3B、アーム3A,3Bを左右に開閉するための静電アクチュエータ6A,6Bが形成されている。ミクロンオーダーの試料は、アーム3A,3Bの先端に形成されたグリップ部30によって把持される。後述するように、静電アクチュエータ6A,6Bは駆動回路部9によって駆動制御される。
【0009】
図2はグリップ部30の詳細を示す拡大図であり、アーム3A,3Bの先端部分の厚さを階段状に薄くすることによってグリップ部30が形成される。ミクロンオーダーの試料を把持するグリップ部30の幅Wおよび厚さtは、W=1〜30μm、t=1〜25μmのように試料と同程度の寸法に設定される。グリップ部30の長さLは100μm程度と試料よりもやや長く設定される。
【0010】
図1の左側のアーム3Aを駆動する静電アクチュエータ6Aは、台座7上に固定された固定電極60aと、アーム3Aに連結された可動電極61aとを備えている。同様に、右側のアーム3Bを駆動する静電アクチュエータ6Bは、台座7上に固定された固定電極60bと、アーム3Bに連結された可動電極61bとを備えている。図示上下方向に延在する固定電極60a,60bと可動電極61a,61bとの各対向面は後述するように櫛歯形状となっている。
【0011】
静電アクチュエータ6A,6Bの可動電極61a,61bは、それぞれ支持部62によって台座7に弾性的に固定されている。そして、固定電極60aの電極端子80と可動電極61aの電極端子81との間、および、固定電極60bの電極端子82と可動電極61bの電極端子83との間には、アーム開閉電圧がそれぞれ印加される。アーム開閉電圧が印加されると、静電力によって可動電極61aは図示右方向に、可動電極61bは図示左方向にそれぞれ移動する。その結果、アーム3A,3Bが閉じる。
【0012】
アーム3A,3Bは支持部63を介して台座7に弾性的に固定されている。アーム3A,3Bには支持部63を介して電極端子84が接続されており、電極端子84を利用してアーム3A,3Bに電気的な操作を加えたり、電気的な測定を行ったりすることができる。左側のアーム3Aは、アーム3Aの下部に設けられた連結部材8によって左側の可動電極61aに連結されている。同様に、右側のアーム3Bは、連結部材8によって右側の可動電極61bに連結されている。その結果、左右のグリップ部30により試料が把持される。
【0013】
図3は左側のアーム3Aと可動電極61aとの連結部分を示す拡大図であり、アーム3Aは連結部材8を介して可動電極61aに連結されている。なお、アーム3Aと連結部材8との間、および可動電極61aと連結部材8との間にはそれぞれ絶縁層102が形成されている。可動電極61aが静電力により図示右側に移動すると、その動きに連動してアーム3Aも右側に移動する。右側のアーム3B、固定電極60b、可動電極61bに関しても左右反転している以外は全く同様の構造となっている。
【0014】
図4はナノピンセット1の断面形状を示す図であり、図1のA−A’断面,B−B’断面,C−C’断面およびD−D’断面を示したものである。A−A’断面,B−B’断面およびC−C’断面に示すように、台座7には貫通孔7a,7bが形成されており、アーム3A,3Bおよび静電アクチュエータ6A,6Bはこれら貫通孔7a,7b上に架け渡されるように形成されている。
【0015】
静電アクチュエータ6A,6Bは、絶縁層102を介して台座7上に形成されている。同様に、連結部材8により連結されたアーム3A,3Bも絶縁層102を介して台座7上に形成されている。D−D’断面は図1の電極端子80〜84の部分を断面したものであり、電極端子80〜84も絶縁層102を介して台座7上に形成されている。このように、ナノピンセット1は絶縁層を挟んだ上下2つのシリコン層からなる3層構造の基板、例えばSOI(silicon on insulator)基板に形成される。そして、アーム3A,3B,静電アクチュエータ6A,6Bおよび電極端子80〜84は同一シリコン層を用いて形成される。なお、ナノピンセット1の製造方法については後述する。
【0016】
《動作説明》
本実施の形態のナノピンセット1では、上述したように静電アクチュエータ6A,6Bに直流電圧を印加し、その電圧値を制御することでアーム3A,3Bの開閉動作を行うようにした。さらに、静電アクチュエータ6A,6Bを自励発振させてアーム3A,3Bを微小振動させ、試料を把持した際の微小振動の変化によりアーム3A,3Bによる把持を検出するようにした。
【0017】
まず、アーム開閉電圧により電気系と機械系とが結合された各静電アクチュエータ6A,6Bが、交流電圧を印加することにより所定の振動数で発振すること、すなわち、各静電アクチュエータ6A,6Bが振動子として機能することを説明する。
【0018】
図5(a)は、静電アクチュエータ6Aの固定電極60aおよび可動電極61aの構造を示す拡大図であり、図5(b)は、静電アクチュエータ6Aにおける電気・機械結合系の等価回路を示す図である。なお、静電アクチュエータ6Bも同様なので、以下では静電アクチュエータ6Aを例に説明する。一般に、電気・機械結合系においては、電気的エネルギーおよび機械的エネルギーの保存則が成立し、ここでは、アーム開閉電圧が小さく、可動電極の変位量や電荷量の変動は小さいとしてモデル化して考える。
【0019】
固定電極60aと可動電極61aとの対向部は櫛歯形状になっており、固定電極60aに形成された櫛歯600と可動電極61aに形成された櫛歯610とは、互い違いに相手方に入り込んでいる。櫛歯600,610間には静電容量Cが生じる。この静電容量Cは、凹凸が多数形成された櫛歯600,610間におけるトータルの静電容量を表している。また、mは可動部(アーム3Aおよび可動電極61a)の質量、kはバネ定数、rfは機械抵抗、vは可動部12の振動速度を表している。Aは、アーム開閉電圧Eを印加することによる機械系と電気系との間の結合係数である。振動を励起するための交流電圧を印加すると、電気系に電流i2が流れて静電アクチュエータ6Aが駆動される。
【0020】
図5(b)の等価回路で示される静電アクチュエータ6Aに関して、線形近似基本方程式は式(1),(2)のように表される。なお、Cは浮遊容量であり、図5(b)の等価回路のCをC+Cと置き換えて式を立てた。
=jω(C+C)e+(E/X)ν (1)
=jωmν+rν+kν/jω+E/X (2)
但し、iは交流電流値、eは入力交流電圧の振幅、νは可動部の振動速度であり、fは可動部に作用する外力を表している。また、Xは初期状態の櫛歯間距離である。
【0021】
式(1),(2)より、外力が零の場合、静電アクチュエータ6Aのアドミッタンスの絶対値|Y|と角周波数ωとの関係は式(3)のように表すことができる。ここで、A=E/Xである。
【数1】

【0022】
図6は、アドミッタンス値|Y|の角周波数依存性を表すアドミッタンス曲線を示したものである。このアドミッタンス曲線は、電気・機械結合系の特性曲線になっている。一方、|Y|=ω(C+C)で表される直線(破線)は、機械系がない電気系のみの場合の特性曲線であり、式(3)において次式(4)が成り立つ場合の特性曲線を表している。
−2ω(C+C)(ωm−k/ω)=0 (4)
【0023】
式(4)を満たす角周波数ωを発振角周波数ω1と呼ぶと、発振角周波数ωは、アドミッタンス曲線と|Y|=ω(C+C)で表される直線との交点における角周波数である。発振角周波数ωは共振角周波数ωに近い値であり、発振角周波数ωで静電アクチュエータ6Aを駆動すると、上述したように機械系の特性がキャンセルされ、電気系のみのアドミッタンス計測が可能となる。
【0024】
なお、共振角周波数ωは、アドミッタンス曲線のピーク角周波数をωより僅かに高いところに位置しており、アドミッタンス曲線のピーク角周波数をω、凹カーブを示す部分のボトムの角周波数をωとすれば、共振角周波数ωと発振角周波数ωとの関係は、式(5)で表すことができる。
【数2】

【0025】
このように、静電アクチュエータ6Aは共振回路として機能することが解った。そこで、本実施の形態では、静電アクチュエータ6Aと増幅器とを用いて自励発振駆動機構を構成するようにした。
【0026】
図7は、静電アクチュエータ6を駆動するための駆動回路部9を示したブロック図である。本図において、静電アクチュエータ6は、櫛歯ドライブ(COMB-DRIVE)が本来的に有しているL,C,R共振回路に基づいて描いてある。すなわち、櫛歯ドライブ(COMB-DRIVE)を受動2端子素子とみなして駆動回路9を示したのが図7である。
【0027】
駆動回路部9は、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6を帰還回路として有する増幅器91と、増幅器91の出力電圧Vを基準電圧Vrと比較してゲイン制御電圧Vcを発生するAGC(自動ゲイン制御)回路95と、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6に対してバイアス直流電圧Eを印加するDC電源92を含んでいる。このバイアス印加用DC電源92は、静電アクチュエータの機能に着目した場合、「アーム開閉用DC電源」と呼ぶことができる。
【0028】
櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6を増幅器91の帰還回路に挿入する際、本実施の形態では、以下の点に注意を払っている。
【0029】
第1に、バイアス直流電圧Eを印加するDC電源92の内部抵抗は非常に小さいので、帰還信号がDC電源92側を通過しないようにする必要がある。そこで、本実施の形態では、高抵抗RhighをDC電源と直列に挿入してある。このことにより、バイアス用DC電源92が帰還パスに影響を与えないようにしている。
【0030】
第2に、バイアス印加用DC電源92が、増幅器91を含んだ回路系統からDC回路としてフローティング状態にすると同時に、増幅器91の端子(出力端子&入力端子)にDC電圧が直接印加されないよう、ブロッキング・コンデンサCを挿入してある。
【0031】
次に、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6における各端子の電圧V,Vについて説明する。電圧Vは、増幅器91におけるDCバイアス回路の設計値により得られる値であり、一般的に、片電源電圧(+B)のみを用いる場合には、V=+B/2とする。他方、両電源電圧(±B)を用いる場合には、V=0とする。
【0032】
電圧V2は、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6の等価回路から明らかなようにDC電流を通過させないので、V=Eとなる。ここでEは、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6に対して印加されているバイアス直流電圧Eである。このようにして設定された電圧Vと電圧Vとの差に従って、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6が開閉される。換言すると、櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6を開閉するために必要な端子間電位差は、|V−V|である。
【0033】
静電アクチュエータ6Aの電極60a,61aには、アーム開閉用DC電源92によりアーム開閉電圧Eが印加される。このアーム開閉電圧Eを制御することで、アーム3A,3Bの開閉動作が行われる。増幅器91からの出力信号は、接触/把持検出回路93に供給される。接触/把持検出回路93は、試料の接触状態あるいは把持状態を検出するために、例えば電圧コンパレータあるいは周波数コンパレータを内蔵している(図示せず)。すなわち、電圧コンパレータを用いて増幅器91の出力電圧値をモニタすることにより、試料の接触/把持を検出する。周波数コンパレータを用いた場合には、増幅器91から出力される信号の周波数をモニタすることにより、試料の接触/把持を検出する。
【0034】
増幅器91と櫛歯ドライブ(静電アクチュエータ)6とで発振回路を構成することにより、静電アクチュエータ6Aに電圧を印加するとアーム3A,3Bは共振周波数で振動することになる。この振動しているアーム3A,3Bが試料や他の物に接触すると等価回路のR,C,Lが変化し、振動の振幅および周波数が変化する。本実施の形態では、この振動・周波数の変化を接触/把持検出回路93で検出することにより、アーム3A,3Bによる試料の把持や、試料が載置されている基板面等へのアーム3A,3Bの接触を検出するようにした。
【0035】
しかしながら、アーム開閉電圧を変えてアーム3A,3Bの開閉動作を行うと、アーム開閉電圧の大きさによって、すなわち、アーム3A,3Bの開き具合によって振動の振幅および周波数が変化することが分かった。また、十分な接触検出の精度を得るためには、アーム3A,3Bの振幅を100nm程度まで小さくする必要がある。しかし、振幅が小さくなると空気の粘性等が原因して振動が不安定になり、不安定から振幅が小さくなった場合でも把持と誤判定してしまうおそれがあった。
【0036】
そこで、本実施の形態では、AGC回路95により増幅器91の利得を調整することで、アーム開閉によって入力Vが変化しても、増幅器91からの出力電圧Vが一定となるようにした。そのため、アーム3A,3Bが何も把持していないフリーな状態では、アーム3A,3Bは一定の振幅で振動するようになる。但し、接触/把持検出回路93により上記接触あるいは把持の状態を検出可能とするために、AGC回路95が有しているゲイン制御機能は、予め適切な値に設定しておく。このゲイン設定については、設計事項であるので詳細な記載は省略する。
【0037】
図7では、増幅器91に電圧制御型可変利得増幅器を使用し、出力レベル検出器(図示せず)、誤差検出回路(図示せず)および制御回路(図示せず)によりAGC回路95を構成するようにした。すなわち、増幅器91の出力電圧Vを出力レベル検出器(図示せず)で監視し、出力レベル検出器(図示せず)から出力される直流電圧と予め設定されている基準電圧Vrとを誤差検出回路(図示せず)で比較する。誤差検出回路(図示せず)は、比較結果として誤差信号kを制御回路(図示せず)に出力する。制御回路(図示せず)は、誤差信号k(図示せず)がゼロとなるようなゲイン制御電圧Vcを増幅器91の制御端子に供給する。増幅器91は、入力されたゲイン制御電圧Vcに応じた利得で入力電圧V1を増幅し、出力電圧Vを出力する。本実施の形態では、出力電圧Vの増加に伴ってゲイン制御電圧Vcを大きくし、増幅器91の利得が小さくなるように制御して出力電圧Vが一定になるように制御する。
【0038】
図8は、AGC回路95の一例を示したものである。増幅器91の出力電圧Vは全波整流され、後段のオペアンプからは全波整流した電圧と基準電圧−Vrとを比較した結果ゲイン制御電圧Vcが出力される。ゲイン制御電圧VcはFET97のゲートに入力され、ゲート電圧を変化させることで増幅器91の利得を変化させる。ゲイン制御電圧Vcは誤差信号kがゼロになるように制御されるので、一定振幅の出力電圧Vが得られることになる。
【0039】
図9はAGC機能を説明する図であり、アーム開閉電圧Eおよびゲイン制御電圧Vcを変えたときのアーム3A,3Bの振幅を、レーザードップラー振動計を用いて測定したデータである。縦軸は振幅、横軸はゲイン制御電圧Vcを示しており、4種類の開閉電圧16,18,20,22Vに対して曲線L1〜L4が得られた。例えば、ゲイン制御電圧VcをVc=1Vに固定してAGC機能を働かせなかった場合、開閉電圧を16Vに設定するとアーム3A,3Bの振幅は約3μmとなり、開閉電圧を18Vに増加してアーム3A,3Bを閉じると振動の振幅は約7μmに増加する。
【0040】
そこで、アーム開閉に関わらず振幅を一定に保つためには、開閉電圧の変化に同期してゲイン制御電圧Vcを変化させれば良い。例えば、開閉電圧を16V、18V、20Vと変化させてアームを閉じる場合に、その変化に同期させてゲイン制御電圧Vcを1V、1.2V、1.3Vと変化させることで、振幅を約3μmに保持することができる。
【0041】
アーム3A,3Bが振動しながら試料や他の物に接触したり、アーム3A,3Bで試料を把持したり、アーム3A,3B同士が接触するまで閉じたりすると、等価回路のR,C,Lが変化して振動の振幅や周波数が変化するので、その変化を接触/把持検出回路93で検出する。例えば、接触前後において、出力電圧Vは図10(a)の状態から図10(b)に示す状態へと変化する。この出力電圧Vを直流信号に変換してその大きさを基準値と比較し、基準値以下となったならば接触状態や把持状態となったと判断する。
【0042】
また、アーム3A,3Bが試料に接触したり、試料を把持したりすると、アーム3A,3Bの振幅を所定値に維持しようとAGC回路95が働き、増幅器91の制御端子に供給されるゲイン制御電圧Vcが変化する。そこで、増幅器91に供給されるゲイン制御電圧Vcの変化から振動の変化を検出し、それによって接触を検出するようにしても良い。ゲイン制御電圧Vcの変化は振幅や周波数の変化に先立って検出されるので、より高感度な接触検出ができる。
【0043】
上述したように、本実施の形態のナノピンセット1では、静電アクチュエータ6A,6Bを発振させてアーム3A,3Bを微小振動させ、アーム3A,3Bが試料等に接触したときの振動の変化を検出して接触や把持を検出するようにした。また、AGC回路95を用いて振動の振幅を一定に保持するようにした。そのため、従来のように静電アクチュエータの容量変化を検出する方法と比べて、検出感度、検出精度の安定性に優れている。本実施の形態の場合、検出感度は固有振動のQ値によってきまり、容量変化を利用した場合に比べて10〜100倍の感度向上が期待できる。また、静電アクチュエータを振動子として用いた自励発振を利用しているので、回路の簡素化に関しても優れている。
【0044】
なお、上述した実施の形態ではアーム3A,3Bの両方を振動させたが、一方だけを振動させて、振動している方のアームにより接触検出や把持検出を行わせるものであっても良い。また、一方のアームだけを開閉動作および振動動作させるものであっても構わない。
【0045】
さらに、一方のアームを静電方式に変わる他の方式のアクチュエータで開閉駆動し、他方のアームを静電アクチュエータで振動のみさせて、そのアームにより接触検出や把持検出を行わせても良い。他の方式のアクチュエータとしては、熱膨張によってアームを駆動させる熱アクチュエータなどがある。この場合には、振動する方のアームは開閉動作を行わないのでAGC回路95を省略しても良いが、アームを微小振幅で安定的に振動させるためにはAGC回路95を用いる方が好ましい。
【0046】
《製造工程の説明》
次に、SOI(silicon on insulator)基板を用いてナノピンセット1を形成する場合の、製造方法について説明する。なお、以下ではアーム3A,3Bや静電アクチュエータ6A,6Bの部分の形成方法について説明し、駆動回路部9については説明および図示を省略する。駆動回路部9はアーム3A,3Bや静電アクチュエータ6A,6Bを構成するものと同一のシリコン層に半導体プロセス技術によって形成しても良いし、別に作成した回路素子を台座7上に配置するようにしても良い。
【0047】
ナノピンセット1の形成に用いる基板100としては、図11(a)に示すように<110>方位の単結晶シリコンから成るベース層101、酸化シリコンから成る絶縁層102、<110>方位の単結晶シリコンから成るシリコン層103が順に積層されたシリコン基板が用いられる。シリコン基板100には、SOI基板だけでなく、ガラス基板上に単結晶シリコン層を有する基板や、アモルファスシリコン基板やポリシリコン基板上にSOI層を有する基板なども用いることができる。すなわち、最上層が<110>方位を有するシリコン層103であって、このシリコン層103の下層に絶縁層102が形成されているような層構造を有するシリコン基板であれば、ベース層101を多層構造としてもかまわない。
【0048】
シリコン基板100の各層の厚さの一例を述べると、シリコン層103は25μm、絶
縁層102は1μm、ベース層101は300μmである。また、シリコン基板100上における1つのナノピンセットを形成する領域は縦、横ともに数mmの矩形状をしている。図11(a)に示す工程では、スパッタリング法や真空蒸着法などにより、厚さ約50nmのアルミ層104をシリコン層103の表面に形成する。
【0049】
次に、図11(b)のようにアルミ層104の表面にレジスト105を約2μmの厚さで形成し、フォトリソグラフィによりレジスト105を露光・現像することにより、図11(c)に示すレジストパターン105aを形成する。図14はシリコン基板100の斜視図であり、アルミ層104の上面に、アーム3A,3B,静電アクチュエータ6A,6B等に対応するレジストパターン105aが形成されている。なお、図11(c)は図7のF−F’断面を示したものである。
【0050】
次に、図11(d)に示すように、このレジストパターン105aをマスクとして混酸
液によりアルミ層104をエッチングし、シリコン層103を露出させる。その後、ICP−RIE(Inductively Coupled Plasma - Reactive Ion Etching)によりシリコン層103を垂直方向に異方性エッチングする。このエッチングは絶縁層102が露出するまで行われ、エッチング終了後、硫酸・過酸化水素混合液によりレジストパターン105aおよびアルミ層104を除去する(図12(a)参照)。
【0051】
図15は、レジストパターン105aおよびアルミ層104を除去した後の基板100を示す斜視図である。絶縁層102上には、同一シリコン層103により立体構造体が形成される。その立体構造体は、アーム3A,3Bを構成する部分103aと、静電アクチュエータ6A,6Bを構成する部分103bと、電極端子80〜84を構成する部分103cと、後述するガード4を構成する部分103dとから成る。
【0052】
次いで、露出した絶縁層102およびシリコン層103(103a〜103d)を覆う
ようにレジスト106を塗布する(図12(b)参照)。レジスト106の塗布厚さは10μm程度とする。その後、フォトリソグラフィによりレジスト106にマスクパターンを転写して現像することにより、図16に示すようにアーム構成部103aの先端部分におけるレジスト106が矩形状に除去されたレジストパターン106aを形成する。そして、レジストパターン106aをマスクとしてICP−RIEや通常のRIEなどを行い、アーム構成部103aの先端部分をナノピンセットの把持対象に合わせた形状および大きさに加工する。
【0053】
次に、図12(c)に示すように基板100を表裏反転させて、スパッタリング法や真空蒸着法によりベース層101の表面にアルミ層107を形成する。アルミ層107の厚さは、約50nmとする。そして、アルミ層107の上にレジスト108を約2μmの厚さに形成した後にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、そのレジスト108をマスクに用いてアルミ層107を混酸液によりエッチングする(図13(a)参照)。
【0054】
図17は、レジスト108およびアルミ層107の形状を示す斜視図である。図13(
a)は図17のG−G’断面を示したものであり、絶縁層102の図示下側(表面側)にはシリコン層103によるアーム部103aの断面が図示されている。図17から判るように、レジスト108は、後述するガード4および連結部5に対応する部分R1,R2、台座7に対応する部分R3および図4の連結部材8に対応する部分R4が残っており、逆に図4に示した貫通孔7a,7bに対応する部分が除去されてベース層101が露出している。
【0055】
その後、ベース層101の上に形成されたレジスト108およびアルミ層107をマスクとして、ベース層101をICP−RIEによりエッチングする。ベース層101は異方性エッチングにより垂直方向にエッチングされ、エッチングは絶縁層102が露出するまで行われる。エッチング終了後に、硫酸・過酸化水素混液によりレジスト108,106およびアルミ層107を除去する(図13(b)参照)。
【0056】
図18は、図13(b)に示すベース層101の裏面側を示す図である。エッチングに
より、ベース層101には貫通孔7a,7bを有する台座7やガード4,連絡部5および連結部材8が形成される。基板100上には、ガード4が形成されたナノピンセット1が複数形成される。次いで、台座上に露出している酸化シリコンから成る絶縁層102を、緩衝フッ化水素溶液を用いてエッチングする。その結果、シリコン層103とベース層101とで挟まれた領域を除いて、絶縁層102が除去される(図13(c)参照)。
【0057】
図19はベース層101の表面側を示す斜視図であり、図13(c)は図19のH−H’断面を示したものである。電極部103とベース部101との間には絶縁層102が介在している。その後、図13(d)に示すように、露出しているベース層101の上および各構造体を構成するシリコン層103の上に、真空蒸着法等によりアルミ等からなる導体膜109を形成する。導体膜109の厚さは500nm以下とする。
【0058】
このようにして、ガード4を備えたナノピンセット1が形成される。なお、把持対象に
よってはFIBなどの加工装置によりグリップ部3aをさらに追加工しても良い。ガード4はナノピンセット1のアーム3A,3Bを保護するものであり、連結部5により台座7に連結されている。ナノピンセット1を使用する際には、連結部5の部分を折って、ガード4をナノピンセット1から外して用いる。
【0059】
[変形例]
図20は、熱アクチュエータを用いたナノピンセットの一例を示す図である。開閉動作するアーム3Aには、駆動レバー23,24から成る熱アクチュエータが設けられている。一方、静電アクチュエータ6Bが設けられたアーム3Bは、開閉動作は行わず振動動作のみを行う。駆動レバー23,24は、それぞれの梁部23a,梁部24aがアーム3Aに接続されている。梁部24aのX方向の幅は、梁部23aよりも狭く作製されている。
【0060】
熱アクチュエータの駆動レバー23,24は電源部200に接続されている。電源部200は、直列に接続された2つの可変電源200a,200bを有し、可変電源200aのマイナス側が駆動レバー23に接続され、可変電源200bのプラス側が駆動レバー24に接続されている。可変電源200aと200bの接続点はアース電位とされる。
【0061】
梁部24aの抵抗値は梁部23aよりも大きく設定されており、電源部200から駆動レバー23,24へ電力が供給されると、ジュール熱の発生が大きな梁部24aの方が梁部23aよりも大きく熱膨張する。その結果、根元部分の幅が狭くなった部分20aを支点として、アーム3Aが傾くように閉じる。なお、アーム3B側の振動駆動に関しては、上述したナノピンセットと同様であるので説明を省略するが、上述した実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
《把持動作の説明》
最後に、ナノピンセット1による把持動作の一例を図21,22を参照しながら説明する。前述したように、ナノピンセット1は、XYZステージ等によって3次元方向に移動することができる。まず、図21(a)に示すように、アーム3A,3Bを開いた状態で、ナノピンセット1をZ軸方向に移動してアーム3A,3Bを試料300の方向へと近づける。この段階では、アーム6A,3Bは自由な状態なので、自励発振により所定の振幅で振動している。
【0063】
次に、図21(b)に示すように、試料300が載置されている台302に接触すると、接触した際にアーム3A,3Bの振動が小さくなる。接触による拘束力が非常に小さければAGC回路95によって振幅を所定値に維持できるが、拘束力が振幅を所定値に維持できる範囲を越えると振幅が所定値よりも小さくなる。そして、アーム3A,3Bを台302に押しつける力が増して拘束力がさらに大きくなると、振幅を一定に保てなくなりアーム3A,3Bの振動が停止する。図21(b)では、振動が停止した状態を示した。
【0064】
この場合、アーム3A,3Bの台302への接触は、上述したように周波数の変化、振幅の変化、制御電圧Vcの変化のいずれかにより検出することができる。例えば、振幅が基準値よりも小さくなった場合に、アーム3A,3Bが台302に接触したと判断する。
【0065】
図21(c)では、把持動作に移行するために、アーム3A,3Bを微少量だけ上昇させる。その結果、アーム3A,3Bが再び振動することになる。アーム3A,3Bを台302から微少量上昇させたならば、アーム開閉電圧を上げて、図22(a)に示すようにアーム3A,3Bの閉動作を開始する。そして、図22(b)に示すようにアーム3A,3Bが試料300を把持すると、把持力によってアーム3A,3Bの振動が停止する。アーム3A,3Bの振動の停止は、図7の接触・把持検出回路93により検出される。把持が検出されたならば、アーム開閉電圧の上昇を停止して把持検出時の電圧に保持する。その後、XYZステージを駆動して、図22(c)に示すように試料300を把持した状態でナノピンセット1を移動し、試料300を所望の位置へと搬送する。
【0066】
図7に示した駆動回路部9および接触/把持検出回路93は、振動振幅を検出することにより櫛歯ドライブの接触・把持状態を検出するものである。しかし、櫛歯ドライブの接触・把持状態を検出するためには、周波数検出に基づいて接触・把持状態を検出すること、あるいは位相検出に基づいて接触・把持状態を検出することも可能である。以下、周波数検出系を備えた接触・把持検出回路、および、位相検出系を備えた接触・把持検出回路について説明する。
【0067】
図23は、振動周波数検出系を備えた接触・把持検出回路である。本図において、図7と同様の構成要素には、図7と同様の符号を付してある。本図では、図7と異なり、増幅器91の正帰還路中にバンドパスフィルタBPFおよび位相シフタPSを含んでいる。位相シフタPSを調整することにより、発振周波数の微調整を行うことができる。FMデモジュレータFMDMは、基準周波数fに対する周波数シフト量を検出して周波数偏差信号を出力する。この周波数偏差信号は接触/把持検出回路93Aに入力され、図示されていない閾値回路による判定結果に基づいて、試料との接触あるいは把持状態が検出される。
【0068】
図24は、位相検出系を備えた接触・把持検出回路である。本図において、図7と同様の構成要素には、図7と同様の符号を付してある。本図では、上記図23の場合と同様、増幅器91の正帰還路中にバンドパスフィルタBPFおよび位相シフタPSを含んでいる。位相シフタPSを調整することにより、発振周波数の微調整を行うことができる。本図では、位相検出器PHDETを備えており、予め調整した任意の位相(フリー状態の位相を用いる)を零位相として、位相シフト量を電圧に変換する。位相検出器PHDETの出力信号は接触/把持検出回路93Bに入力され、図示されていない閾値回路による判定結果に基づいて、試料との接触あるいは把持状態が検出される。
【0069】
上述した実施の形態では、シリコン基板を加工してナノピンセットを形成したが、このような形成方法に限らず、種々の形成方法によりナノピンセットを形成しても良い。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明によるナノピンセットの一実施の形態を示す図である。
【図2】グリップ部30の詳細を示す拡大図である。
【図3】アーム3Aと可動電極61aとの連結部分を示す拡大図である。
【図4】ナノピンセットの断面形状を示す図であり、図1のA−A’断面,B−B’断面,C−C’断面およびD−D’断面をそれぞれ示す図である。
【図5】(a)は静電アクチュエータ6Aの固定電極60aおよび可動電極61aの構造を示す拡大図であり、(b)は静電アクチュエータ6Aにおける電気・機械結合系の等価回路を示す図である。
【図6】アドミッタンス値|Y|の角周波数依存性を表すアドミッタンス曲線を示す図である。
【図7】駆動回路部9を説明するブロック図である。
【図8】AGC回路95の一例を示す図である。
【図9】開閉電圧およびゲイン制御電圧Vcを変えたときのアーム3A,3Bの振幅の測定データを示す図である。
【図10】接触前後における出力電圧Vの一例を示す図であり、(a)は接触前の信号を、(b)は接触後の信号をそれぞれ示す。
【図11】ナノピンセットの製造手順を説明する図であり、(a)〜(d)の順に工程が進む。
【図12】図11の工程に続く工程を示す図であり、(a)〜(c)の順に工程が進む。
【図13】図12の工程に続く工程を示す図であり、(a)〜(d)の順に工程が進む。
【図14】図11(c)のシリコン基板100の斜視図である。
【図15】レジストパターン105aおよびアルミ層104を除去した後の基板100を示す斜視図である。
【図16】レジストパターン106aを示す斜視図である。
【図17】図13(a)のレジスト108およびアルミ層107の形状を示す斜視図である。
【図18】図13(b)に示すベース層101の裏面側を示す図である。
【図19】図13(c)のベース層101の表面側を示す斜視図である。
【図20】熱アクチュエータを用いたナノピンセットの一例を示す図である。
【図21】ナノピンセット1による把持動作を説明する図であり、(a)〜(c)の順に動作が行われる。
【図22】図21に示す把持動作に続く手順を示す図であり、(a)〜(c)の順に動作が行われる。
【図23】振動周波数検出系を備えた接触・把持検出回路を示す図である。
【図24】位相検出系を備えた接触・把持検出回路を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1:ナノピンセット、3A,3B:アーム、6A,6B:静電アクチュエータ、8:連結部材、9:駆動回路部、11:共振回路、23,24:駆動レバー、60a,60b:固定電極、61a,61a:可動電極、91:増幅器、92:DC電源、93:接触/把持検出回路、95:AGC回路、600,610:櫛歯、300:試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在な一対のアームと、
開閉駆動電圧が印加され、前記一対のアームの少なくとも一方を開閉駆動する静電アクチュエータと、
前記静電アクチュエータが有する電気的等価回路を帰還回路として用いることにより自励発振させ、その自励発振により前記アームを振動させる増幅器と、
前記アームの物体への接触による振動状態の変化を検出する振動状態検出部とを備えたことを特徴とするナノピンセット。
【請求項2】
開閉動作する第1のアームと、
静電アクチュエータを備えた第2のアームと、
前記静電アクチュエータが有する電気的等価回路を帰還回路として用いることにより自励発振させ、その自励発振により前記第2のアームを振動させる増幅器と、
前記第2のアームの物体への接触による振動状態の変化を検出する振動状態検出部とを備え、
前記第1及び第2のアームにより試料を把持することを特徴とするナノピンセット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のナノピンセットにおいて、
前記自励発振により振動する前記アームの振幅が非接触時に一定となるように、前記増幅器の利得を調整する利得調整手段を備えたことを特徴とするナノピンセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、
前記振動状態検出部で検出された前記振動状態の変化に基づき、前記アームによる試料の把持を検出する把持検出手段をさらに備えたことを特徴とするナノピンセット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、
前記振動状態の変化は、前記アームの物体への接触による共振振動の振幅の変化、周波数の変化および位相の変化のいずれか一つであることを特徴とするナノピンセット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、
前記静電アクチュエータは、静止櫛歯電極部と、前記アームに連結されて該アームを駆動する可動櫛歯電極部とを有することを特徴とするナノピンセット。
【請求項7】
請求項1に記載のナノピンセットによる試料の把持方法であって、
前記振動変化検出部により前記振動の変化が検出されるまで、前記ナノピンセットを前記試料が載置された載置部の方向へ移動し、
前記振動変化検出部により前記振動の変化が検出されたならば、前記ナノピンセットを前記載置部の方向と逆の方向に所定移動量だけ移動し、
前記移動の後に前記静電アクチュエータにより前記アームを閉駆動し、
前記振動変化検出部により前記振動の変化が検出されたならば、前記静電アクチュエータによる前記アームの閉駆動を停止することを特徴とする把持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−6471(P2009−6471A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144630(P2008−144630)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】