説明

ナノファイバシート

【課題】取り扱い性が良好なナノファイバのシートを提供すること。
【解決手段】ナノファイバシート10は、高分子化合物のナノファイバから形成されるナノファイバ層11と、ナノファイバ層11の一方の面側に配された基材層と12、ナノファイバ層11の他方の面側に配された接着層13とを備える。基材層13は、ナノファイバ層11と剥離可能に積層されていることが好適である。接着層13が、ナノファイバ層11上にナノファイバ状の接着剤が堆積されて形成されていることも好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバから構成されるナノファイバ層を備えたナノファイバシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバは、例えば、ナノサイズ効果を利用した高透明性などの光学特性が要求される分野に応用されている。一例として、ナノファイバの直径を可視光の波長以下にすることで、透明なファブリックを実現できる。また、ナノファイバの直径を可視光の波長と同じにすることで、構造発色を発現させることができる。また、超比表面積効果を利用して、高吸着特性や高表面活性が要求される分野や、超分子配列効果を利用して、引張強度等の力学的特性や高電気伝導性等の電気的特性が要求される分野でも検討がなされている。このような特徴を有するナノファイバは、例えば単繊維として用いられるほか、集積体(ファブリック)や複合材としても用いられている。
【0003】
ナノファイバの応用例として、多糖類を主原料とし、静電紡糸法によって得られ、直径が500nm以下である多糖類のナノスケールの繊維が提案されている(特許文献1参照)。同文献の記載によれば、この繊維は、再生医療における生体組織培養の基材及び生体組織の欠損、修復、再生、治療を目的とした生体材料(人工弁、人工臓器、人工血管、創傷被覆材等)の一部として用いられるとされている。
【0004】
また、高分子化合物のナノファイバからなる網目状構造体に、化粧料や化粧料成分を保持させてなる化粧用シートも提案されている(特許文献2参照)。同文献の記載によれば、この化粧用シートは、顔面や手足に対する密着性や装着感を向上させることができ、また、保存性も向上させることができるとされている。
【0005】
しかし、前記の各特許文献に記載のナノファイバから構成されるシートは、該ナノファイバの極細さに起因して剛性が低く(コシが弱く)、取り扱い性が良好とは言えない。しかも、転写が容易に行える構成ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290610号公報
【特許文献2】特開2008−179629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るナノファイバシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高分子化合物のナノファイバから形成されるナノファイバ層と、該ナノファイバ層の一方の面側に配された基材層と、該ナノファイバ層の他方の面側に配された接着層とを備えたナノファイバシートを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ナノファイバシートの取り扱い性が非常に向上する。しかも、本発明では、ナノファイバ層と基材層との間に接着手段を設けることなく、一方、他方の面に肌と密着性を有する接着層を設けることで、ナノファイバの肌への密着を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のナノファイバシートの一実施形態の構造を模式的に示す縦断面図が示されている。同図に示すように、本実施形態のナノファイバシート10は、3層構造の積層体から構成されている。詳細には、ナノファイバシート10は、ナノファイバ層11と、その一方の面に配された基材層12と、他方の面に配された接着層13とを備えている。なお、図1はナノファイバシート10の構造を模式的に示すものであり、各層の厚みは実際の厚みを表すものではない。
【0011】
ナノファイバ層11は、ナノファイバから構成されている層である。ナノファイバ層11は、ナノファイバのみから構成されていることが好ましい。尤も、ナノファイバ層11が、ナノファイバに加えて他の成分を含むことは妨げられない。ナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10〜3000nm、特に10〜1000nmのものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって測定することができる。
【0012】
ナノファイバの長さは本発明において臨界的でなく、ナノファイバの製造方法に応じた長さのものを用いることができる。また、ナノファイバは、ナノファイバ層11において、一方向に配向した状態で存在していてもよく、あるいはランダムな方向を向いていてもよい。更に、ナノファイバは、一般に中実の繊維であるが、これに限られず例えば図2に示すように、中空のナノファイバ20を用いることもできる。
【0013】
ナノファイバは、高分子化合物を原料とするものである。高分子化合物としては、天然高分子及び合成高分子のいずれをも用いることができる。この高分子化合物は、水溶性のものでもよく、水不溶性のものでもよい。天然高分子としては、例えばキチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、変性コーンスターチ、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン等を用いることができる。
【0014】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸グリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド等を用いることができる。
【0015】
ナノファイバ層11の厚みは、ナノファイバシート10の具体的な用途に応じて適切な範囲が設定される。ナノファイバシート10を、例えばヒトの肌に貼付するために用いる場合には、ナノファイバ層11の厚みを50nm〜1mm、特に500nm〜500μmに設定することが好ましい。ナノファイバ層11の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(R5mm超硬球面測定子)を使用することによって測定することができる。測定時にシートに加える荷重は0.01Paとする。
【0016】
ナノファイバ層11においては、ナノファイバは、それらの交点において結合しているか、又はナノファイバどうしが絡み合っている。それによって、ナノファイバ層11は、それ単独でシート状の形態を保持することが可能となる。ナノファイバどうしが結合しているか、あるいは絡み合っているかは、ナノファイバ層11の製造方法によって相違する。
【0017】
ナノファイバ層11の一方の面に配されている基材層12は、ナノファイバシート10の取り扱い性を高める目的で用いられているものである。具体的には、基材層12は、ナノファイバシート10の剛性を高める(コシを強くする)目的で用いられる。ナノファイバ層11を、基材層12と組み合わせて用いることで、剛性が低く、コシの弱いナノファイバ層11を、例えばヒトの肌等の対象物に貼付するときの操作性が良好になる。
【0018】
ナノファイバシート10に適度な剛性を付与する観点から、基材層12は、そのテーバーこわさが0.01〜0.4mNm、特に0.01〜0.2mNmであることが好ましい。テーバーこわさは、JIS P8125に規定される「こわさ試験方法」により測定される。
【0019】
テーバーこわさとともに、基材層12の厚みも、ナノファイバシート10の取り扱い性に影響を及ぼす。この観点から、基材層12の厚みは、該基材層12の材質にもよるが、5〜500μm、特に10〜300μmであることが好ましい。基材層12の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50Aを使用することによって測定することができる。
【0020】
基材層12は、ナノファイバ層11の上に直接積層されている。この場合、基材層12は、ナノファイバ層11に対して剥離可能に積層されていることが好ましい。このような構成とすることで、ナノファイバ層11を、例えばヒトの肌に貼付した後に、基材層12をナノファイバ層11から剥離除去して、ナノファイバ層11を(正確にはナノファイバ層11及び接着層13を)、ヒトの肌に残すことが可能になるという利点がある。
【0021】
基材層12としては、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂を始めとする合成樹脂製のフィルムを用いることができる。基材層12を、ナノファイバ層11に対して剥離可能に積層する場合には、フィルムにおけるナノファイバ層11との対向面に、シリコーン樹脂の塗布やコロナ放電処理などの剥離処理を施しておくことが、剥離性を高める観点から好ましい。フィルムの厚みやテーバーこわさは、先に述べた範囲に設定することが好ましい。
【0022】
基材層12としては、通気性を有するシートを用いることもできる。通気性を有するシートを用いることで、上述したシリコーン樹脂の塗布等の剥離処理をことさら行わなくても、基材層12を、ナノファイバ層11に対して剥離可能に積層することができる。この場合、基材層12の通気性は、JIS P8117に規定される透気抵抗度(ガーレー)で表して、30秒/100ml以下、特に20秒/100ml以下、とりわけ0.01〜20秒/100mlであることが好ましい。通気性を有するシートとしては、例えばメッシュシート;不織布、織布、編み地、紙などの繊維シート;及びそれらの積層体などを用いることができる。繊維シートを構成する繊維としては、繊維形成性の合成樹脂からなる繊維や、コットン及びパルプなどのセルロース系の天然繊維を用いることができる。繊維シートの坪量は、強度や取り扱い性を考慮して、0.1〜100g/m2、特に0.5〜50g/m2であることが好ましい。一方、通気性を有するシートとしてメッシュシートを用いる場合には、メッシュの目開きは、透気抵抗度が上述した範囲であることを条件として、20〜200メッシュ/インチ、特に50〜150メッシュ/インチとすることが好ましい。また、メッシュの線径は、10〜200μm、特に30〜150μmであることが好ましい。メッシュシートを構成する材料としては、上述したフィルムを構成する材料と同様のものを特に制限なく用いることができる。
【0023】
ナノファイバ層11の他方の面に配されている接着層13は、ナノファイバ層11を、例えばヒトの肌等の対象物に貼付することを補助するために用いられる層である。この目的のために、接着層13を構成する接着剤としては、例えばオキサゾリン変成シリコーンや、アクリル樹脂系、オレフィン樹脂系、合成ゴム系の粘着剤等が挙げられる。
【0024】
接着層13は、ナノファイバ層11の他方の面の全面にわたって連続して(つまりベタで)施されていてもよいが、ナノファイバ層11が有する特徴を最大限発揮させる観点からは、必要最小限の量でもって施されていることが好ましい。この目的のために、接着層13は、ナノファイバ層11の他方の面上に不連続に形成されていることが好ましい。接着層13を不連続に形成する態様としては、例えば(i)ナノファイバ層11上に接着剤を散点状に分散配置して接着層13を形成する態様や、(ii)ナノファイバ層11上にナノファイバ状の接着剤を堆積させて接着層13を形成する態様などが挙げられる。
【0025】
接着層13の態様が前記の(i)及び(ii)のいずれの場合であっても、接着層13の厚みは、10nm〜100μm、特に50nm〜50μmであることが好ましい。接着層13の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50Aを使用することによって測定することができる。
【0026】
接着層13の厚みに関し、この厚みを、先に説明したナノファイバ層11の厚みと比較すると、ナノファイバ層11の厚みの方が、接着層13の厚みよりも大きくなっていることが好ましい。この理由は、ナノファイバ層がより肌に近い方がナノファイバの持つ有効成分を肌に供給しやすくするためである。この観点から、ナノファイバ層11の厚みは、接着層13の厚みの2〜1000倍、特に10〜500倍であることが好ましい。
【0027】
本実施形態のナノファイバシート10は例えば次に述べる方法に従い好適に製造される。先ず、(イ)ナノファイバの製造方法としてエレクトロスピニング法を用い、基材層12の一面にナノファイバを堆積させてナノファイバ層11を形成する。次に、(ロ)形成されたナノファイバ層11の表面に、所定の手段によって接着層13を形成する。
【0028】
図3には、前記のエレクトロスピニング法を実施するための装置30が示されている。エレクトロスピニング法を実施するためには、シリンジ31、高電圧源32、導電性コレクタ33を備えた装置30が用いられる。シリンジ31は、シリンダ31a、ピストン31b及びキャピラリ31cを備えている。キャピラリ31cの内径は10〜1000μm程度である。シリンダ31a内には、ナノファイバの原料となる高分子化合物の溶液が充填されている。この溶液の溶媒は、高分子化合物の種類に応じ、水又は有機溶媒とする。高電圧源32は、例えば10〜30kVの直流電圧源である。高電圧源32の正極はシリンジ31における高分子溶液と導通している。高電圧源32の負極は接地されている。導電性コレクタ33は、例えば金属製の板であり、接地されている。シリンジ31におけるニードル31cの先端と導電性コレクタ33との間の距離は、例えば30〜300mm程度に設定されている。図3に示す装置30は、大気中で運転することができる。運転環境に特に制限はなく、温度20〜40℃、湿度10〜50%RHとすることができる。
【0029】
シリンジ31と導電性コレクタ33との間に電圧を印加した状態下に、シリンジ31のピストン31bを徐々に押し込み、キャピラリ31cの先端から高分子化合物の溶液を押し出す。押し出された溶液においては、溶媒が揮発し、溶質である高分子化合物が固化しつつ、電位差によって伸長変形しながらナノファイバを形成し、導電性コレクタ33に引き寄せられる。このとき、導電性コレクタ33の表面に基材層(図示せず)となるべきシートを配置しておくことで、該基材層の表面にナノファイバを堆積させることができる。このようにして形成されたナノファイバは、その製造の原理上は、無限長の連続繊維となる。なお、図2に示したような中空のナノファイバを得るためには、例えばキャピラリ31cを二重管にして芯と鞘に相溶し合わない溶液を流せばよい。
【0030】
次に、形成されたナノファイバ層の上に、接着層を形成する。接着層がナノファイバ状の接着剤からなる場合には、上述の操作と同様の操作を接着層の形成においても行えばよい。接着層が、散点状に分散配置された接着剤から構成される場合には、例えばスプレー噴霧で接着層を形成したり、溶液の濃度を薄くして、上述の操作と同様の操作を行い、接着剤を粒子状に形成すれば良い。また、接着剤をノズルから押し出し等することにより、接着層をライン状、格子状、薄膜状等に配置してもよい。特に均一に薄膜状に形成でき、且つ接着層に水溶性樹脂等を使用する場合には、表面積が高くなって接着層が溶解しやすくなる点から、接着層をナノファイバ状とすることが好ましい。
【0031】
以上のようにして、目的とする3層構造のナノファイバシート10が得られる。このナノファイバシート10は、例えば、接着剤層13を、ヒトの肌等の対象物に当接させて貼着した後、基材層12をナノファイバ層11から剥離するという用い方をすることができる。
【0032】
ナノファイバシート10の貼着対象物としては、ヒトの皮膚以外に、非ヒト哺乳類の皮膚や歯、枝や葉などの植物表面などが挙げられる。
【0033】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、ナノファイバの製造方法として、エレクトロスピニング法を採用した場合を例にとり説明したが、ナノファイバの製造方法はこれに限られない。
【0034】
また、図3に示すエレクトロスピニング法においては、形成されたナノファイバが板状の導電性コレクタ33上に堆積されるが、これに代えて導電性の回転ドラムを用い、回転する該ドラムの周面にナノファイバを堆積させるようにしてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0036】
〔実施例1〕
ポリ乳酸樹脂(東レ(株)製L101(商品名))をクロロホルムとジメチルホルムアミド(80:20重量比)に溶解して、9%の溶液を得た。この溶液を用い、図3に示すエレクトロスピニング法の装置によって、基材層となるべきフィルムの表面にナノファイバ層を形成した。ナノファイバの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:17kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm
・水溶液吐出量:1ml/h
・環境:25℃、30%RH
【0037】
基材層となるべきフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:25μm、テーバーこわさ:0.08mNm)の一面に、シリコーン剥離処理を施したものであった。ナノファイバ層は、剥離処理面に形成した。形成されたナノファイバ層の厚みは30μmであった。ナノファイバの太さは300nmであった。
【0038】
次に、ナノファイバ層の表面に、エレクトロスピニング法によって接着層を形成した。エレクトロスピニング法は、図3に示す装置を用いて行った。高分子溶液として、オキサゾリン変性シリコーンをメタノールに溶解した濃度20%の溶液を用いた。接着層の製造条件は次のとおりである。形成された接着層の厚みは5μmであった。
・印加電圧:17kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm
・水溶液吐出量:1ml/h
・環境:25℃、30%RH
【0039】
このようにして、図1に示す構造のナノファイバシートを得た。このナノファイバシートを、接着層がヒトの上腕の肌に当接するように押し付けた。次いで、基材層をナノファイバ層から剥離した。この操作によって、ナノファイバ層をきれいに肌に転写することができた。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、ポリエチレンテレフタレート製のメッシュシート(目開き:120メッシュ/インチ、線径:63μm)を用いた。このメッシュシートには剥離処理は施されていない。このメッシュシートの透気抵抗度は0.1秒/100ml以下、テーバーこわさは0.13mNmであった。これ以外は実施例1と同様にして、図1に示す構造のナノファイバシートを得た。得られたナノファイバシートを用い、実施例1と同様の転写を行ったところ、実施例1よりも一層首尾良くナノファイバ層がヒトの肌に転写した。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、坪量40g/m2、厚さ0.28mmのスパンボンド不織布を用いた。この不織布の構成繊維は、芯がポリエチレンテレフタレートからなり、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維であった。この不織布の透気抵抗度は0.1秒/100ml、テーバーこわさは0.06mNmであった。これ以外は実施例1と同様にして、図1に示す構造のナノファイバシートを得た。得られたナノファイバシートを用い、実施例1と同様の転写を行ったところ、実施例1よりも一層首尾良くナノファイバ層がヒトの肌に転写した。
【0042】
〔実施例4〕
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、坪量78g/m2、厚さ0.09mmのPPC用紙を用いた。この紙の透気抵抗度は21秒/100ml、テーバーこわさは0.12mNmであった。これ以外は実施例1と同様にして、図1に示す構造のナノファイバシートを得た。得られたナノファイバシートを用い、実施例1と同様の転写を行ったところ、実施例1よりも一層首尾良くナノファイバ層がヒトの肌に転写した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明のナノファイバシートの一実施形態の構造を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、ナノファイバの構造の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、エレクトロスピニング法を実施するための装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ナノファイバシート
11 ナノファイバ層
12 基材層
13 接着層
20 ナノファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物のナノファイバから形成されるナノファイバ層と、該ナノファイバ層の一方の面側に配された基材層と、該ナノファイバ層の他方の面側に配された接着層とを備えたナノファイバシート。
【請求項2】
前記基材層が、前記ナノファイバ層と剥離可能に積層されている請求項1記載のナノファイバシート。
【請求項3】
前記接着層が、前記ナノファイバ層上に接着剤が散点状に分散配置されて形成されているか、又は前記ナノファイバ層上にナノファイバ状の接着剤が堆積されて形成されている請求項1又は2記載のナノファイバシート。
【請求項4】
前記ナノファイバ層の厚みの方が、前記接着層の厚みよりも大きくなっている請求項1ないし3のいずれかに記載のナノファイバシート。
【請求項5】
前記基材層のテーバーこわさが0.01〜0.4mNmである請求項1ないし4のいずれかに記載のナノファイバシート。
【請求項6】
前記ナノファイバの直径が10〜3000nmである請求項1ないし5のいずれかに記載のナノファイバシート。
【請求項7】
前記基材層が、通気性を有するシートからなる請求項1ないし6のいずれかに記載のナノファイバシート。
【請求項8】
通気性を有する前記シートの透気抵抗度(ガーレー)が30秒/100ml以下である請求項7記載のナノファイバシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168722(P2010−168722A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293517(P2009−293517)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】