ナノファイバー、ナノフィルムおよびそれらの製造/使用方法
金属酸化物、有機ポリマー、またはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムを製造するための組成物が本明細書に記載される。ファイバーが2種以上の溶媒を有する溶液から形成され、これら溶媒が非混和性であるナノファイバーおよびナノフィルムの製造方法もまた本明細書に記載される。金属酸化物、有機ポリマーまたはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムが記載される。最後に、ナノファイバーおよびナノフィルムの使用方法が記載される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本件出願は、本明細書に参照により援用される、2006年9月6日出願の米国仮特許出願第60/872,441号および2007年3月15日出願の米国仮特許出願第60/918,083号の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ナノファイバー、ナノフィルムおよびそれらの製造/使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノファイバーおよび薄いフィルムの製造および使用が、幅広く研究されてきた。ナノファイバーおよび他の薄いフィルムには、支持体または基材として多くの用途がある。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムは、触媒用の担体として使用することができる。他の実施態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは細胞を培養するための基材として使用することができる。インビボで細胞成長を増殖させるおよび分化させる能力は多数の用途を有する。インビボ細胞成長は、3次元環境である、細胞外マトリックス(ECM)で起こる。例えばペトリ皿表面などの2次元表面は、「インビボ」細胞成長を代表するものではない。従って、ナノファイバーの場合には、細胞外マトリックスをシミュレートする3次元構造物を生じさせることが可能である。
【0004】
基材の最終用途に依存して、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変性させることが望ましい。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムが細胞を培養するために使用されるとき、この材料が適切な気孔率、表面積、および細孔構造を有することが望ましい。それ故、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを制御することができ、それにもかかわらずナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために多種多様な異なる出発原料を使用する柔軟性を有する必要性がある。本明細書に記載される方法は、ファイバー−またはフィルム−形成前に出発原料の溶液を調製するために使用される溶媒の選択に基づく、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変性させるための便利な方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で具象化され、広範に記載されるような、開示される材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法の目的に従って、金属酸化物、有機ポリマー、またはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムが存在する。ファイバーおよびフィルムの表面モルフォロジーを制御することを含む、ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するための組成物および方法もまた、本明細書に記載される。最後に、ナノファイバーおよびナノフィルムの使用方法が記載される。追加の利点は、以下に続く説明において部分的に記載され、そしてこの説明から部分的に明らかになるか、または以下に記載される態様の実施によって分かるかもしれない。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘される要素および組合せを用いて実現され、達成されるであろう。前述の一般的な説明および次の詳細な説明の両方とも例証的で説明的であるにすぎず、限定的でないことは理解されるべきである。
【0006】
本明細書の一部に組み込まれ、そして一部を構成する添付の図は、以下に記載される幾つかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】Ta/PSエレクトロスパン・ナノファイバーだけでなくDMSOありおよびなしのNb/PSの5000×で撮られたSEMを示す。
【図2】白矢印が無機相の領域を示す、外側テクスチャーおよびナノファイバーの有機/無機相ミキシングを示すNb/PSおよびTa/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図3】様々なエレクトロスパン基材上でのHepG2細胞株およびHMSCの両方についての増殖を示す。
【図4】組織培養物処理リジンと比較して幾つかのナノファイバー基材上での全タンパク質産生量および細胞増殖を示す。
【図5】1mMのKCl中pH7.0でのゼータ電位によって測定される際の表面電荷の関数としてのタンパク質産生量を示す。
【図6】基材およびナノファイバー直径に応じたアルブミン産生量を示す。
【図7】アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材およびナノファイバー直径に応じたアルブミン産生量を示す。
【図8】溝様の構造物および細孔からなるチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーの複雑な表面モルフォロジーを示す。
【図9】約14m2/グラムの表面積を有する、追加の表面特徴およびくされを示す。
【図10】チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーに結合したHEK293細胞の顕微鏡写真を示す。
【図11】標準ポリスチレン表面と比較したチタニア/ポリスチレン・ナノファイバー上での細胞カウントの増加を示す。
【図12】チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーに結合したHEK293細胞のより丸い形状を示す。
【図13】2つの異なる倍率での約200〜400nmの典型的なナノファイバー直径のシリカ/PVA(59%シリカ)のSEMを示す。
【図14】50/50シブリッド(Sibrid)TM/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図15】25/75シブリッドTM/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図16】熱架橋可能なシリコーン系・ゲレスト(Gelest)OE43パートAおよびパートB/PSシリコーン組成物10%のSEMを示す。
【図17】50/50および25/75シブリッドTM/PSハイブリッド・エレクトロスパンマットの光学顕微鏡写真を示す。
【図18】基材の面積に対して標準化されたMRC5細胞カウントを示す。
【図19】シリカ/PVA上のMRC5細胞を示す。
【図20】N2O処理シブリッドTM/PS表面上のMRC5細胞を示す。
【図21】N2Oプラズマ処理(PL)か無処理(NO PL)かのどちらかであり、またはより少なく融合した(LF)かまたはより多く融合した(MF)シブリッドTM/PSハイブリッド・エレクトロスパンマット(50/50、25/75)上のHepG2細胞を示す。
【図22】シリコーン/PSハイブリッド・エレクトロスパンマット上のHepG2細胞を示す。
【図23】混合物中にDMSOありおよびなしの59%シリカ組成のシリカ/PVAハイブリッド・エレクトロスパンマット上のHepG2細胞を示す。
【図24】59%シリカ組成の架橋されたシリカ/PVAハイブリッド・エレクトロスパンマット上でのHepG2細胞を示す。
【図25】基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【図26】アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【図27】幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長結果を示す。
【図28】幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長およびタンパク質産生量を示す。
【図29】幾つかの溶媒の沸点および蒸気圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載される材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法は、本明細書に包含される開示主題および実施例の特定的な態様についての以下の詳細な説明を、ならびに図を参照することによってより容易に理解されるかもしれない。
【0009】
本発明の材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法が開示されて記載される前に、以下に記載される態様は、特定的な合成法または特定的な試薬に限定されず、それらはもちろん変わりうるものとして理解されるべきである。本明細書に用いられる専門用語は特定の態様を説明する目的のためであるにすぎず、限定的であることを意図されないこともまた理解されるべきである。
【0010】
また、本明細書の全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示はそれらの全体を、開示事項が関係する最新技術をより完全に記載するために、参照により本明細書によって本出願に援用される。開示される参考文献もまた、当該参考文献において信頼を置かれる文章中で議論される、それら参考文献中に含有される材料に関して、参照により個々におよび具体的に本明細書に援用される。
【0011】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む(comprise)」およびこの用語の他の形態「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などは、非制限的に含む、ということを意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、または工程を排除することを意図しない。
【0012】
本説明および添付の特許請求の範囲に用いられる際、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「組成物(a compositon)」への言及は、2種以上のかかる組成物の混合物を含み、「試剤(an agent)」への言及は、2種以上のかかる試剤の混合物を含み、「層(a layer)」への言及は、2層以上のかかる層の混合物を含む。
【0013】
「場合による」または「場合により」は、その次に記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、ならびに、この記載がその事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0014】
本明細書に開示される、特定の材料、化合物、組成物、および成分は、商業的に入手することができるか、または当業者に一般に公知の技法を用いて容易に合成することができる。例えば、開示される化合物および組成物の製造に使用される出発原料および試薬は、商業的供給業者から入手可能であるか、あるいは当業者に公知の方法によって製造される。
【0015】
また、開示される方法の製品および組成物のために使用することができる、またはそれらに関連して使用することができる、またはそれらの製造のために使用することができる、またはそれらである材料、化合物、組成物、および成分も本明細書に開示される。これらのおよび他の材料が本明細書に開示されるが、以下のことが理解される。すなわち、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される一方で、それぞれの様々な個々のおよび集合的な組合せならびにこれらの化合物の順列の特定指示が明確に開示されないとき、それぞれが具体的に想定されて本明細書に記載される。例えば、ある組成物が開示され、そして当該組成物の成分の数に対して行うことができる修正の数が議論される場合、可能であるそれぞれのおよびあらゆる組合せおよび順列は、それとは反対に特に明記されない限り具体的に想定される。従って、成分A、B、およびCのクラスならびに成分D、E、およびFのクラスが開示され、そして組成物A−Dの例が開示される場合、たとえそれぞれが個々に列挙されなくても、それぞれは個々におよび集合的に想定される。従って、この例では、組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fのそれぞれが具体的に想定され、そして、A、B、およびC;D、E、およびF;ならびに事例組合せA−Dの開示から開示されたと考慮されるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せもまた、具体的に想定され、開示される。従って、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブ−グループが具体的に想定され、A、BおよびC;D、E、およびF;ならびに事例組合せA−Dの開示から開示されたと考慮されるべきである。この概念は、開示組成物の製造および使用方法における工程を含むが、それらに限定されない本開示の全ての態様に適用される。従って、行うことができる様々な追加工程が存在する場合、これらの追加工程のそれぞれが任意の特定的態様または開示方法の態様の組合せで行い得ること、かつ、それぞれのかかる組合せが具体的に想定され、そして開示されていると考慮されるべきであることが理解される。
【0016】
開示される材料、化合物、組成物、物品、および方法の特定的態様についてここで詳細に言及され、それらの例は添付の実施例および図に例示される。
【0017】
金属酸化物、ポリマー、またはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムが本明細書に記載される。ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用される各成分は以下に詳細に記載される。ナノファイバーおよびナノフィルムの製造および使用法もまた以下に概説される。
【0018】
I.ナノファイバーおよびナノフィルム形成用の成分
a.金属酸化物および金属酸化物前駆体
用語「金属酸化物」は、本明細書で用いる際、少なくとも1つのM−O−M結合を含有する任意の化合物と定義される。「M」は遷移金属である。金属酸化物はM−O−M結合のみのものが存在することができる、または、代替として、M−O−M結合の幾らかを他の基に変換することができると考えられる。有機ポリマーの選択に依存して、金属酸化物が有機ポリマーと共有または非共有結合(例えば、静電気的、双極子−双極子、水素結合)を形成することができるように、M−O−M結合の幾らかを反応性の官能基に変換することは可能である。例えば、M−O−M結合は、酸と反応して相当する金属水酸化物M−OH(ここで、ヒドロキシル基は有機ポリマーと相互作用することができる)を生み出すことができる。金属酸化物の選択は、有機ポリマーとの相溶性、標的細胞との相溶性、および金属酸化物の加工性を含むが、それらに限定されない多数の要因に依存して変わり得る。
【0019】
一態様では、金属酸化物は遷移金属酸化物である。遷移金属酸化物の例には、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、五酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化鉛、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物は混合金属酸化物(例えば、NiFe2O4)であり得ることも考えられる。別の態様では、金属酸化物はアルミニウムの酸化物である。
【0020】
用語「金属酸化物」はまたケイ素化合物を含む。ケイ素化合物の例には、シリカ、シリコーン、およびシルセスキオキサンが挙げられるが、それらに限定されない。一態様では、ケイ素化合物はシリカを含む。ある種の態様では、シリカは非晶質である。
【0021】
一態様では、ケイ素化合物はシリコーン化合物を含む。ポリオルガノシロキサンとしても知られる、シリコーンは、2つの有機基が鎖中の各ケイ素原子に結合した線状の繰り返しケイ素−酸素主鎖を持った合成ポリマーである。有機基は、シリカに見いだされる3次元網状構造の形成を防ぎ、ポリマーの物理的および化学的性質を変性させることができる。ある種の有機基は、これらのケイ素−酸素主鎖の2つ以上を連結するために使用することができ、この架橋の性質および程度は、多種多様な製品が製造されることを可能にする。シリコーンは、所望の性質を生じさせるためにナノファイバー形成後に変性させることができる。性質には、気孔率、湿潤性、化学、ナノファイバー直径、表面積および弾性率が含まれ、それらは、組成、粘度、分子量、溶媒および後変性などの実験変数によって制御することができる。シリコーン化合物上に存在する基に依存して、シリコーンはモノマー、オリゴマー、またはポリマーとして存在することができる。一態様では、シリコーンは、アルキルシリコーン(例えば、メチルシリコーン)またはアリールシリコーン(例えば、フェニルシリコーン)を含む。別の態様では、ケイ素化合物は、例えば、シリコーン−ポリアミドまたはシリコーン−ポリウレタンなどのシリコーン−ポリマーを含む。シリコーン−ポリマーのその教示について参照により援用される、米国特許第6,800,713号明細書に開示されているシリコーンポリマーおよびそれの製造方法を、本明細書で用いることができる。
【0022】
別の態様では、ケイ素化合物はシルセスキオキサン化合物を含む。シルセスキオキサンは、RSiO3(ここで、RはSi−C結合によってシリカに結合した有機基であり、そして酸素原子は他のケイ素原子と結合して3次元構造を形成する)の一般式を有するシリケート材料である。有機基の例には、アルキル(例えば、メチル)およびアリール(例えば、フェニル)基が挙げられる。有機基は、湿潤性、弾性率をはじめとする多くの物理的性質、および外部表面への化学結合において機能的な違いを提供することができる。POSS(商標)(ポリ8面体オルガノシリセスキオキサン)分子は、ケージ様のシルセスキオキサンである。一態様では、シルセスキオキサン化合物は、疎水性シルセスキオキサン(例えば、メチル、フェニル、エチルおよびプロピル・シルセスキオキサンなど)、親水性シルセスキオキサン(例えば、2−アミノプロピルシラン・シルセスキオキサン)、または架橋性シルセスキオキサン(例えば、メタクリルオキシプロピルもしくはグリシドキシプロピルシルセスキオキサン)を含む。
【0023】
金属酸化物の混合物を本明細書で使用することができると考えられる。例えば、シリカ、シリコーン、シルセスキオキサン化合物の任意の組合せを、金属酸化物成分として使用することができる。
【0024】
金属酸化物前駆体を、ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用することができる。金属酸化物前駆体は、本明細書に定義されるとき、金属酸化物に容易に変換することができる任意の化合物である。一態様では、金属酸化物前駆体は金属塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属エステル、金属窒化物、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、シルセスキオキサン、シリコーン、シリカ、またはそれらの組合せを含む。別の態様では、金属酸化物前駆体は、ニオブ化合物、タンタル化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、セリウム化合物、カルシウム化合物、カドミウム化合物、エルビウム化合物、セレン化合物、テルル化合物、ガリウム化合物、ヒ素化合物、ゲルマニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、インジウム化合物、ルテニウム化合物、レニウム化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0025】
b.有機ポリマー
有機ポリマーの選択は、使用される金属酸化物および得られるナノファイバーまたはナノフィルムの所望の性質に依存して変わり得る。ある種の態様では、有機ポリマーはナノファイバーの収縮を防ぐことができる。例えば、SiO2を用いると、シリカ・ナノファイバーは有機ポリマーの不存在下で単独で収縮し得る。ここで、ポリマーが構造的完全性を提供する。必ずしも必要とされないが、有機ポリマーは一般に室温で固体である。有機ポリマーの選択はまた、金属酸化物または金属酸化物前駆体の溶解性に依存して変わるであろう。予期できるように、金属酸化物の溶解性は変わり得るが、当業者は、金属酸化物を溶解させるために使用される溶媒と相溶性である有機ポリマーを選択することができる。従って、水溶性および水不溶性ポリマーを使用することが可能である。
【0026】
有機ポリマーに関して考慮すべき他の要因は、ポリマーの分子量である。ある特定の分子量ポリマーを、ある特定のナノファイバー直径を生じさせるために使用することができる。例えば、0.35×106MWポリスチレンは、2〜5μmナノファイバーを製造するために使用することができ、1×106MWポリスチレンは、0.8μm〜2μm直径ナノファイバーを製造するために使用することができ、そして2×106MWポリスチレンは、300nm直径ナノファイバーを製造するために使用することができる。ポリマーの分子量はまた、ポリマーが所与の溶媒系で有する溶解度、溶液粘度、および表面張力にも影響を及ぼし得る。溶液粘度が大きすぎる場合、ナノファイバーのランダム配置の形成をもたらさないので、溶液粘度は、ナノファイバー形成に関して重要な要因である。逆に、金属酸化物および有機ポリマーの溶液が十分に粘稠ではない場合、「ビーズ化した」ナノファイバーまたは小滴が形成される。
【0027】
あるいはまた、1種以上のポリマー前駆体を、ポリマーをその場で製造するために使用することができる。ポリマー前駆体は、重合を受けることができる任意の化合物である。ポリマー前駆体上に存在する官能基に依存して、前駆体は、多数の異なるメカニズムによって重合を受けることができる。例えば、ポリマー前駆体は、ポリアミンまたはポリオール(例えば、それぞれ、ジアミンまたはジオール)と反応してその場でポリマーを生成することができる、ポリイソシアネートであることができる。ポリマー前駆体はまた、ポリエステル、ポリアミド、およびポリカーボネートをはじめとする縮合ポリマーを製造するために使用される他の材料を含むこともできる。2つの成分が互いに反応してもしなくてもよい、ポリマーおよびポリマー前駆体を組み合わせて使用し得ることも考えられる。一態様では、ポリマー前駆体は、電気的処理(エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング)中に重合してポリマーをその場で形成することができる。
【0028】
他の態様では、有機ポリマーは、金属酸化物と相互作用することができる1つ以上の官能基を含む。官能基の例には、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシルなどが挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物と有機ポリマー上に存在する官能基とに依存して、金属酸化物と有機ポリマーとの間の相互作用は、共有または非共有結合の形成をもたらすことができる。
【0029】
一態様では、有機ポリマーは、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNA)、多糖類、ポリアミド、ポリビニルアルキルエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリメタクリレート、フェノール系化合物、エポキシ化合物、ウレタン、スチレンポリマー(例えば、クロロスチレンの)、無水マレイン酸類、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ペプチド、セルロースポリマー、ヒドロゲル、ポリリジン、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、アルギネート、ポリカプロラクトン、ポリオルガノシルセスキオキサン、アクリルアミド、ポリスルホネート、ポリケトン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、ブロックコポリマー、ポリビニルピロリジン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、またはそれらの組合せを含む。
【0030】
II.ナノファイバーおよびナノフィルムの製造
用語「ナノファイバー」および「ナノフィルム」は、それぞれ、10μm以下の、直径または厚さを有する材料と定義される。一態様では、ナノファイバーは、直径サイズが10nm〜500nmの範囲であることができる。別の態様では、ナノフィルムは1nm〜500nmの厚さを有する。
【0031】
ナノファイバーおよびナノフィルムは、当該技術で公知の技法を用いて二次加工することができる。本明細書で製造されるナノファイバーおよびナノフィルムは、1種以上の金属酸化物、1種以上のポリマー、またはハイブリッドと呼ばれる、1種以上の金属酸化物と1種以上のポリマーとの組合せからなることができる。一態様では、金属酸化物前駆体と有機ポリマーとからなるブレンド物を、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用することができる。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために、(1)金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せと、(2)有機ポリマー、少なくとも1種のポリマー前駆体、またはそれらの組合せとを含む組成物を、それぞれ、エレクトロスピンまたはエレクトロスプレーする工程を含む方法によって製造される。
【0032】
一態様では、ナノファイバーは電気的処理によって製造することができる。電気的処理には、エレクトロスピニング、エレクトロスプレーイング、およびナノファイバーを製造するための当該技術で公知の他の方法が含まれる。本発明の実施態様では、金属酸化物、金属酸化物前駆体、有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せを含有する溶液をエレクトロスピンしてナノファイバーを形成することができる。エレクトロスピニングは、ナノファイバーを製造するための当該技術で公知の技法である。別の態様では、当該技術で公知のエレクトロスプレー技法は、ナノフィルムを製造するために用いることができる。エレクトロスピレーイング技法は、基材表面(例えば、単一粒子)上に極めて薄いフィルムを製造するために用いることができる。当業者は、エレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイング技法を用いるためにプロセス・パラメーター(例えば、出発原料の濃度、電圧など)を変えてファイバーおよびフィルムを製造することができる。
【0033】
ナノファイバーまたはナノフィルムを形成する前に、金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せと有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せとが1種以上の溶媒に溶解させられる。また、ファイバー−またはフィルム−形成の前に金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せが一溶液に溶解させられ、そして有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せが別の溶液に溶解させられることも考えられる。有機ポリマーおよび/またはポリマー前駆体の量に対して使用される金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せの量は、溶媒系への金属酸化物または金属酸化物前駆体の溶解性に依存して変わり得る。
【0034】
一態様では、
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスピンする工程を含むナノファイバーを製造するための溶液であって、
金属酸化物前駆体が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である溶液が本明細書に記載される。
【0035】
別の態様では、
(c)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(d)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスピンする工程を含むナノファイバーの製造方法であって、
金属酸化物前駆体が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0036】
別の態様では、
(a)(a)金属酸化物前駆体、
(b)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(c)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムを製造するための溶液であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である溶液が本明細書に記載される。
【0037】
別の態様では、
(b)(d)金属酸化物前駆体、
(e)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(f)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムを製造方法であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0038】
さらなる態様では、
(a)(i)金属酸化物前駆体、
(ii)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(iii)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムの製造方法であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、そして第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0039】
これらの態様では、少なくとも2種の溶媒が選択されて、最小でも2つの相系が溶媒の混合時に生成されるようにする。用語「非混和性」は、互いに完全に不溶性であるかまたは互いに多くとも部分的に可溶性であるが2つの明確な溶媒相を形成する、少なくとも2種の溶媒を含む。非混和性の第1および第2溶媒によって生成される2相系は、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング後のナノファイバーまたはナノフィルムの得られたモルフォロジーに関与する。これは、以下の実施例で実証される。THFからなる第1溶媒はポリマーを含有し、DMSOからなる第2溶媒は金属酸化物前駆体を含有する。2種の溶液を混合すると、THFとDMSOとが互いに非混和性であるので2相系が生成される。従って、ファイバー−またはフィルム形成中に、ポリマーを有するTHF相は、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング中にTHFと混合されるDMSOの存在のために「膨潤した」状態になる。THFの沸点はDMSOのそれより大幅に低い。従って、THFが最初に蒸発し、金属酸化物/金属酸化物前駆体と共に比較的多量のDMSOがポリマーの全体にわたって分散される。DMSOの蒸発時に、細孔がポリマー中に生成され、金属酸化物がポリマー中に置き去りにされる。
【0040】
上の例で実証されるように、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジー(例えば、気孔率の程度)は、出発原料、第1および第2溶媒、ならびに用いられる出発原料および第1/第2溶媒の相対量の選択に依存して変わり得る。別の考慮事項は、特定の溶媒に可溶性である出発原料の選択である。一態様では、金属酸化物前駆体は第1溶媒に可溶性であり、ポリマーは第2溶媒に可溶性であり、ここで、第1溶媒は第2溶媒より高い沸点を有する。別の態様では、金属酸化物前駆体は第1溶媒に可溶性であり、ポリマーは第2溶媒に可溶性であり、ここで、第1溶媒は第2溶媒より低い沸点を有する。この態様では、より小さい細孔サイズが一般に生成され得る。従って、特定の出発原料および第1/第2溶媒を選択することによって、製造されるナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを制御することが可能である。細孔サイズおよび細孔の数もまた、本明細書に記載される技法を用いて変えることができる。一態様では、本明細書に記載される方法は、全ファイバーまたはフィルムの全体にわたって高度に多孔質であるナノファイバーおよびナノフィルムを生成する。ファイバーはまた一様な直径を有し、ビーズ化されず、それは、先行技術技法がナノファイバーを製造するために用いられるときには当てはまらない。
【0041】
金属酸化物、金属酸化物前駆体、ポリマー、およびポリマー前駆体の第1および/または第2溶媒への溶解性は、選択される材料および溶媒に依存して変わり得る。従って、金属酸化物、金属酸化物前駆体、ポリマー、およびポリマー前駆体の1つ以上は第1溶媒および/または第2溶媒に可溶性であり得ると考えられる。異なる成分に関して用語「可溶性」は、完全に可溶性からほんのわずかな量の不溶性材料が存在する状態の極めて高い溶解性までの範囲である。溶液が針の閉塞および一貫性のないスプレーパターンを回避することが可能であるほど均一であることは、エレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイング技法において望ましい。
【0042】
最初の問題として、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される出発原料は、所望の最終製品に基づいて選択される。いったんナノファイバーまたはナノフィルムの組成物が所望のモルフォロジーと見なされたら、第1溶媒および第2溶媒が選択される。第1および第2溶媒の選択は、以下でより詳細に議論される。
【0043】
ポリマーがナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される場合、ポリマーの分子量および粘度、ポリマー溶液の濃度、ならびにエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイングに用いられるシリンジ針の直径が考慮されるべきである。ポリマーの分子量を上げると、より小さい直径のナノファイバーが生成される。ポリマーの分子量を上げることによって、ポリマーの粘度は増大する。ポリマー粘度が増大すると共に、より少量のポリマーがナノファイバーまたはナノフィルム形成のために必要とされ、それはより薄いナノファイバーの形成をもたらす。分子量がより低い場合、粘度はより低く、より多くのポリマーがナノファイバーまたはナノフィルム形成のために必要とされる。これは、より大きいナノファイバーまたはナノフィルムの製造をもたらす。例えば、350,000の分子量を有するポリスチレンは、100万または200万の分子量のポリスチレンから製造されたナノファイバーと比較されたときに、より大きい直径のナノファイバーが生成される。ナノフィルムがエレクトロスプレーイングによって製造される場合、ポリマー濃度および/または粘度を下げることができる。一態様では、使用されるポリマーおよび溶媒の量は、500cps〜5,000cpsの粘度を生じさせるのに十分な量である。別の態様では、ポリマーの分子量は20,000〜3,000,000である。
【0044】
一態様では、ナノファイバーがポリマーと金属酸化物前駆体とから製造されるとき、エレクトロスピニング前の組成物中のポリマーの量は、組成物の0.1〜50重量%であり、エレクトロスピニング前の組成物中の金属酸化物前駆体の出発量は、組成物の0.1〜100重量%である。別の態様では、金属酸化物前駆体の量は、組成物の1〜40重量%、1〜30重量%、1〜20重量%、5〜20重量%、または10〜20重量%である。別の態様では、ポリマーの量は、組成物の1〜40重量%、1〜30重量%、1〜20重量%、5〜20重量%、または10〜20重量%である。
【0045】
上で議論されたように、第1溶媒と第2溶媒とは非混和性であり、それは2相系を生成する。ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用される出発原料は、第1および第2溶媒の選択に関して重要な因子である。ナノファイバーおよびナノフィルムのモルフォロジーに影響を及ぼし得る別の考慮事項は、第1および第2溶媒の沸点および蒸気圧である。溶媒は一般に、50℃〜200℃の範囲の沸点を有する。一態様では、第1溶媒と第2溶媒との間の沸点の差は、少なくとも10℃、少なくとも15℃、または少なくとも20℃である。溶媒の蒸気圧は、20℃で0.1〜170mmHgであることができる。別の態様では、第1溶媒と第2溶媒との間の蒸気圧の差は、20℃で少なくとも10mmHg、20℃で少なくとも20mmHg、20℃で少なくとも30mmHg、20℃で少なくとも40mmHg、または20℃で少なくとも50mmHgである。図29は、第1および第2溶媒を選択する際に有用なツールを提供する、本明細書で有用な幾つかの溶媒の沸点および蒸気圧を示すグラフである。
【0046】
第1および第2溶媒は、例えば、アルカン、アルキルアルコール、カルボン酸、またはホスホン酸などの様々な化合物から選択することができる。一態様では、第1および第2溶媒は、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチル−第三ブチルエーテル、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、2,2,4−トリメチルペンタン、水、ベンゼン、ブタノール、メチルエチルケトン、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ギ酸、酢酸、クエン酸、またはそれらの任意の組合せを含む。表1に溶媒のリスト(第1列)およびそれらが第1列のどの溶媒と非混和性であるかまたは混和性であるかについての説明が提供される。
【表1】
【0047】
ある種の態様では、ナノファイバーまたはナノフィルム形成中の湿度は、溶媒の蒸発速度および/または金属酸化物の反応速度を制御するために操作することができる。さらに、下で議論されるように、これらの条件はまた、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変える。一態様では、湿気は15%より大きい、30%より大きい、45%より大きい、または60%より大きい。別の態様では、湿気は20〜100%、30〜100%、40〜90%、または50〜90%である。
【0048】
ある種の態様では、2種の非混和性溶媒が2相系を生成するために使用されるとき、1つ以上の出発原料は、相分離を推進する、制御する、または維持することができる共溶媒をその場で生成することができる。例えば、金属酸化物前駆体アルミニウムブトキシド(Al(OBu)3)が水(例えば、制御されたやり方で存在する水蒸気)に曝される場合、ブタノールが生成される。ブタノールは、第1溶媒または第2溶媒と非混和性であってもよく、それは相分離を維持するのを助ける。ポリマーまたはポリマー前駆体などの他の成分は水蒸気と反応して相分離のための共溶媒を生み出し得ることも考えられる。共溶媒は、第1および第2溶媒のそれとは異なる。
【0049】
他の態様では、ファイバー−またはフィルム形成は、水蒸気に加えて1種以上の溶媒蒸気の存在下に行うことができる。この態様では、有機溶媒蒸気は、相分離だけでなく蒸発速度を変え得る。水蒸気と同様に、有機溶媒蒸気は、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される成分と反応して相分離をさらに推進するおよび/または制御する共溶媒を生成することができる。有機溶媒蒸気は、上記の第1および第2溶媒のために使用される溶媒のいずれかに由来することができる。有機溶媒蒸気の例には、ベンゼン、アルコール、DMF、DMSO、THFまたはトルエンが挙げられるが、それらに限定されない。水蒸気と有機溶媒蒸気との組合せも同様に使用できることも考えられる。別の態様では、ファイバー−またはフィルム形成は、水蒸気と有機溶媒蒸気との組合せの存在下に行うことができる。
【0050】
ナノファイバー−またはナノフィルム形成中の温度もまた、ファイバーまたはフィルムのモルフォロジーを制御するときには考慮事項である。上で議論されたように、ナノファイバー−またはフィルム−形成中の溶媒の蒸発速度は、表面モルフォロジーに影響を及ぼし得る。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムが製造される温度は、50°〜90°F(10℃〜約32℃)、60°〜90°F(約16℃〜約32℃)、65°〜80°F(約18℃〜約27℃)、または69°〜80°F(約21℃〜約27℃)である。
【0051】
他の処理考慮事項には、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング前の溶液のpHが含まれる。さらに、条件は、ナノファイバーまたはナノフィルムが特定範囲の表面電荷を有するように調整することができる。例えば、細胞、組織、または生物活性分子がナノファイバー上に固定化されるべきであるとき、固定化効率を最大にするために電荷を修正することは有利である。最後に、界面活性剤および他の構造指向剤などの他の成分を、フィイバー−またはフィルム形成前に溶液中へ組み込むことができる。
【0052】
ナノファイバーまたはナノフィルムが金属酸化物とポリマーとからなる場合には、ナノファイバーまたはナノフィルム中に存在する金属酸化物および有機ポリマーの量は変わり得る。一態様では、金属酸化物の量は、ナノファイバーの0.5〜75重量%、0.5〜50重量%、または15〜46重量%であり、有機ポリマーの量は、ナノファイバーの25〜99.5重量%、50〜99.5重量%、または54〜85重量%である。一態様では、金属酸化物がシリカであるとき、ナノファイバーの40〜59重量%がシリカである。別の態様では、ナノファイバーの長さ/ナノファイバーの直径の比は5より大きい。
【0053】
本明細書で製造されるナノファイバーおよびナノフィルムは、様々な異なる材料からなることができる。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ポリスチレンと酸化ニオブ、酸化タンタル、二酸化チタン(チタニア)、またはそれらの組合せとを含む。別の態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ポリビニルアルコールおよびシリカ、ポリスチレンおよびアルミナ、ポリビニルピロリドン(PVP)およびアルミナ、PVPおよびチタニア、シリカおよびアルミナと共にポリスチレン、アルミナおよびチタニアと共にポリスチレン、ポリスチレンおよび酸化セリウム、酸化セリウムと共にPVA、酸化セリウムと共にポリエチレンオキシド(PEO)、またはアルミナおよびチタニアと共にセルロースポリマーを含む。
【0054】
一態様では、少なくとも1種の金属酸化物と少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、金属酸化物がシリカではないナノファイバーが本明細書に記載される。別の態様では、シリカと少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、有機ポリマーがポリビニルアルコールまたはそれのエステルではないナノファイバーが本明細書に記載される。さらなる態様では、少なくとも1種のシリコーン化合物と少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、有機ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−コ−グリコール酸、またはそれらの塩もしくはエステルではないナノファイバーが本明細書に記載される。別の態様では、少なくとも1種のシルセスキオキサン化合物を含むナノファイバーが本明細書に記載される。
【0055】
ナノファイバーまたはナノフィルムがポリマーを含有する場合、ナノフィルムまたはナノファイバーを場合により、有機ポリマーを除去するためにその後の熱処理工程にかけることができる。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムを高温でカ焼して、金属酸化物のみからなるナノファイバーまたはナノフィルムを製造することができる。
【0056】
III.細胞/組織固定化のための基材
本明細書に記載されるナノファイバーおよびナノフィルムを使用する細胞、組織、および/または生物活性分子を固定化するための基材が本明細書に記載される。細胞または組織、および/または生物活性分子を固定化すると、多数の用途が考えられる。これらの用途は以下に記載される。
【0057】
一態様では、
(a)ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムと、
(b)不織のまたは織られた多孔質基材を含むベース基材と
を含む細胞または組織を固定化するための基材であって、ベース基材が第1外面を含み、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムがベース基材の第1外面に隣接している基材が本明細書に記載される。
【0058】
基材の各成分は以下に説明される。
【0059】
a.ナノファイバーの網状構造
本明細書に記載されるナノファイバーは、ナノファイバー網状構造を生成するために使用することができる。用語「網状構造」は、本明細書で用いる際、ナノファイバー間の間隔が成長および培養安定性を促進するために選択された状態で相互連結網を形成するように制御されている、空間におけるナノファイバーのランダム分布または配向分布を意味する。網状構造は、網状構造を構成するナノファイバー間に小さい空間を有し、網状構造中に細孔またはチャネルを形成している。細孔またはチャネルのサイズは、固定化されるべき細胞、組織、または生物活性分子に依存して変わり得る。一態様では、ナノファイバー網状構造の細孔サイズは0.2マイクロメートルより大きい。別の態様では、細孔サイズは1マイクロメートル未満である。さらなる態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートル〜300マイクロメートルである。網状構造は、ナノファイバーの単層、連続ナノファイバーによって形成された単層、ナノファイバーの多層、連続ナノファイバーによって形成された多層、またはマットを含み得る。網状構造は不織布または網であってもよい。網状構造の物理的性質には、テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、ソリディティ、弾性、ジオメトリー、相互連結性、表面対容量比、ナノファイバー直径、ナノファイバー溶解性/不溶性、親水性/疎水性、フィブリル密度、およびナノファイバー配向が含まれるが、それらに限定されない。
【0060】
ナノファイバーサイズ、ナノファイバー直径、ナノファイバー間隔、マトリックス密度、ナノファイバー・テクスチャーおよび弾性をはじめとする、ナノファイバーの物理的性質は、細胞における細胞骨格網状構造および細胞外マトリックスタンパク質における細胞シグナル伝達モチーフの暴露を体系化するための重要な考慮事項であり得る。所望のパラメーターへ設計することができるナノファイバー網状構造の物理的性質には、テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、ソリディティ、弾性、ジオメトリー、相互連結性、表面対容量比、ナノファイバーサイズ、ナノファイバー直径、ナノファイバー溶解性/不溶性、親水性/疎水性、およびフィブリル密度が含まれるが、それらに限定されない。
【0061】
ナノファイバー網状構造の物理的性質の1つ以上は、細胞/組織固定化のための具体的に定義される環境を生じさせるために変えるおよび/または変性させることができる。例えば、ナノファイバー網状構造の気孔率は、イオン、代謝産物、および/または生物活性分子の拡散を高めるためにおよび/または細胞にナノファイバー網状構造を透過させておよび浸透させて細胞とナノファイバー網状構造との間の多点結合を促進する環境中で成長させるように設計することができる。ナノファイバー網状構造の相互連結性は、細胞−細胞接触を容易にするように設計することができる。ナノファイバー網状構造の弾性は、ナノファイバーが二次加工されるポリマー溶液に生物活性分子を加えることによって増大させるまたは低下させることができる。中空であるまたはシースと共にコアを有するナノファイバーを製造することもまた可能である。
【0062】
ナノファイバー網状構造のテクスチャーおよびしわの多さは、細胞の結合を促進するように設計することができる。例えば、均一なまたは不均一なナノファイバーを、細胞の成長または分化活性を最適化するために選択することができる。一態様では、ナノファイバー網状構造は、異なる直径を有する多数のナノファイバーおよび/または異なるポリマーから二次加工された多数のナノファイバーを含む。他の態様では、ナノファイバー網状構造のナノファイバーの溶解性または不溶性は、ナノファイバー網状構造中へ組み込むことができる生物活性分子の放出を制御するように設計することができる。例えば、生物活性分子の放出の速度は、ナノファイバー網状構造のナノファイバーの生物分解または生物溶解の速度によって決定される。他の態様では、ナノファイバー網状構造の疎水性および親水性は、特定の細胞間隔を促進するように設計することができる。
【0063】
個々の単層ナノファイバー網状構造の層化はチャネルを形成することができ、チャネルは、細胞がナノファイバー網状構造を透過し、そして細胞とナノファイバー網状構造との間の多点結合を促進する環境中で成長することを可能にするだけでなく、イオン、代謝産物、タンパク質、および/または生物活性分子の拡散を可能にする。
【0064】
ナノファイバーの網状構造は、インビボで見いだされるものに類似の3次元環境を生じさせることができる。特に、インビボ細胞成長に匹敵する効率的な細胞培養を達成するために、材料が、全体材料を通って細胞の浸透を可能にすることが望ましい。3次元環境の一機能は、細胞−マトリックスおよび細胞−細胞コミュニケーションにより環境の検知および環境への応答を容易にすることによって移行、増殖、分化、表現型の維持およびアポトーシスなどの細胞挙動を導くことである。それ故、適切な気孔率、大きい表面積、および十分な相互連結細孔を有する材料が細胞を培養するために望ましい。本明細書で製造されるナノファイバーはこれらの特徴を有する。
【0065】
b.ベース基材
用語「ベース基材」は、本明細書で用いる際、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムを堆積させることができる任意の表面を意味する。ベース基材は、堆積されるナノファイバーの網状構造またはナノフィルムのために構造的支持を提供する任意の表面であることができる。一態様では、ベース基材はガラス、セルロース、またはプラスチックを含むことができる。別の態様では、ベース基材は、フィルム、織マット、不織マット、または物品であることができる。
【0066】
ベース基材は多孔質または無孔性であることができる。ベース基材の気孔率は、基材の用途に依存して変わり得る。例えば、基材が細胞を固定化するために使用されるとき、ベース基材の気孔率は細胞透過によって決定することができる。細胞は、多孔質基材を透過することができるが、無孔性基材を透過することができない。ナノファイバー網状構造またはナノフィルムの気孔率に依存して、ベース基材は、直径がナノファイバー網状構造またはナノフィルム中に存在する細孔と比べてより小さいまたはより大きい細孔を有することができる。細胞はベース基材および/またはナノファイバーの網状構造もしくはナノフィルムを透過し、そしてそれによって保持され得ると考えられる。ベース基材中の細孔のサイズは、固定化されるべき細胞または組織に依存して変わり得る。一態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートルより大きい。別の態様では、細孔サイズは1マイクロメートル未満である。さらなる態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートル〜300マイクロメートルである。
【0067】
ナノファイバーまたはナノフィルムの製造について上に記載されたポリマーのいずれもベース基材を製造するために使用することができる。かかるポリマーの例には、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリアルキレンオキシド、アルキレンオキシドのコポリマーおよびブロックコポリマー、ポリビニルカルバゾール、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマーならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらの一般クラス内に入る好ましい材料には、ポリエチレン、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ(塩化ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート(および他の(メタ)アクリル樹脂)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABAタイプのブロックコポリマーをはじめとする)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、架橋および非架橋形態での様々な程度(87%〜99.5%)の加水分解のポリビニルアルコールが含まれる。ベース基材は異なるポリマーの層からなるかまたは2種以上のポリマーのブレンド物からなることができると考えられる。上記のポリマーのいずれもベース基材を製造するために織または不織であることができる。例えば、ベース基材は、マットへ織られたナイロンナノファイバーからなることができる。
【0068】
c.生物活性分子
ナノファイバー網状構造、ナノフィルム、および/またはベース基材は、1つ以上の生物活性分子を含むことができる。一態様では、ナノファイバーの網状構造、ナノフィルム、またはベース基材は、細胞/組織成長を高めるための1種以上の化合物を含む。別の態様では、ナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材は、ナノファイバーまたは基材への細胞または組織の結合を促進する化合物をさらに含む。
【0069】
生物活性分子には、ヒトまたは獣医治療薬、栄養補助食品、ビタミン、塩、電解質、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、多糖類、核酸、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、成長因子、分化因子、ホルモン、神経伝達物質、フェロモン、ケイロン、プロスタグランジン、免疫グロブリン、モノカインおよび他のサイトカイン、保湿剤、ミネラル、電気的におよび磁気的に反応性の物質、感光性物質、酸化防止剤、細胞エネルギー源として代謝されるかもしれない分子、抗原、ならびに細胞応答または生理学的応答を引き起こすことができる任意の分子が含まれる。これらの分子の作動薬または拮抗薬だけでなく、分子の任意の組合せを使用することができる。グリコアミノグリカンには、糖タンパク質、プロテオグリカン、およびヒアルロナンが含まれる。多糖類には、セルロース、デンプン、アルギン酸、キトサン、またはヒアルロナンが含まれる。サイトカインには、カージオトロフィン、間質細胞由来因子、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、メラノーマ成長促進活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質1アルファ(MIP−1アルファ)、2,3アルファ,3ベータ,4および5、インターロイキン(IL)1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TNF−アルファ、およびTNF−ベータが含まれるが、それらに限定されない。本発明に有用な免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質には、任意のサイズおよび複雑さのかかる分子の任意のタイプならびにかかる分子の組合せが含まれ得る。例には、構造タンパク質、酵素、およびペプチドホルモンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
用語生物活性分子にはまた、繊維状タンパク質、接着タンパク質、接着性化合物、脱接着性化合物、およびターゲッティング化合物も含まれる。繊維状タンパク質には、コラーゲンおよびエラスチンが含まれる。接着/脱接着化合物には、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが含まれる。接着性タンパク質には、アクチン、フィブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、セレクチン、細胞内接着分子1、2、および3、ならびにα5β1、α6β1、α7β1、α4β2、α2β3、α6β4などのインテグリンを含むがそれらに限定されない細胞−マトリックス接着受容体が含まれる。
【0071】
用語生物活性分子にはまた、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、RGDペプチド、腫瘍壊死因子アルファおよびベータ、エンドスタチン、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、骨形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質2および7、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファA、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロン1アルファ、ならびにインターロイキン2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17および18が含まれる。
【0072】
用語「成長因子」は、本明細書で用いる際、細胞または組織の増殖を促進する生物活性分子を意味する。本発明に有用な成長因子には、形質転換成長因子−アルファ(TGF−アルファ)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)、AA、ABおよびBBアイソフォームをはじめとする血小板由来成長因子(PDGF)、FGF酸性アイソフォーム1および2、FGF塩基性フォーム2.ならびにFGF4,8、9および10をはじめとする線維芽細胞成長因子(FGF)、NGF2.5s、NGF7.0sおよびベータNGFならびにニューロトロフィンをはじめとする神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子、軟骨由来因子、骨成長因子(BGF)、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子(IGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、EG−VEGF、VEGF関連タンパク質、Bv8、VEGF−E、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インスリン様成長因子(IGF)IおよびII、肝細胞成長因子、グリア神経栄養成長因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチン生成細胞成長因子(KGF)、TGFアルファ、ベータ、ベータ1、ベータ2、ベータ3をはじめとする、形質転換成長因子(TGF)、骨格成長因子、骨基質由来成長因子、および骨由来成長因子ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。幾つかの成長因子はまた、細胞または組織の分化を促進することができる。例えば、TGFは、細胞または組織の成長および/または分化を促進することができる。幾つかの好ましい成長因子には、VEGF、NGF、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、FGFb、FGFa、およびBGFが含まれる。
【0073】
用語「分化因子」は、本明細書で用いる際、細胞または組織の分化を促進する生物活性分子を意味する。この用語には、ニューロトロフィン、コロニー刺激因子(CSF)、または形質転換成長因子が含まれるが、それらに限定されない。CSFには、顆粒球−CSF、マクロファージ−CSF、顆粒球−マクロファージ−CSF、エリスロポエチン、およびIL−3が含まれる。幾つかの分化因子はまた、細胞または組織の成長を促進するかもしれない。例えば、TGFおよびIL−3は、細胞の分化および/または成長を促進することができる。
【0074】
用語「接着性化合物」は、本明細書で用いる際、接着性化合物を含むナノファイバー表面への細胞または組織の結合を促進する生物活性分子を意味する。接着性化合物の例には、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびラミニンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
用語「脱接着性化合物」は、本明細書で用いる際、脱接着性化合物を含むナノファイバーからの細胞または組織の脱離を促進する生物活性分子を意味する。脱接着性化合物の例には、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
用語「ターゲッティング化合物」は、本明細書で用いる際、ターゲッティング化合物を含むナノファイバーへの細胞もしくは組織の動員および/または結合を誘発するシグナル伝達分子として機能する生物活性分子を意味する。ターゲッティング化合物およびそれらの同種受容体の例には、フィブロネクチンおよびインテグリンに由来するRGDペプチドをはじめとする結合ペプチド、EGFおよびEGF受容体をはじめとする成長因子、ならびにインスリンおよびインスリン受容体をはじめとするホルモンが挙げられる。
【0077】
ナノファイバー網状構造またはベース基材中への生物活性分子の組み込みは、様々な技法によって達成することができる。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムの形成中に、1つ以上の生物活性分子は、それぞれ、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング中に、生物活性分子がファイバーまたはフィルムの全体にわたって組み込まれるように第1および/または第2溶液中に存在することができる。別の態様では、生物活性分子は、当該技術で公知の技法(例えば、スプレーイング、浸漬など)を用いてナノファイバー、ナノフィルムまたはベース基材の表面に塗布することができる。生物活性分子およびナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材を製造するために使用される材料の選択に依存して。
【0078】
生物活性分子は、二次加工中にナノファイバー網状構造、ナノフィルム、またはベース基材中へ組み込むことができるか、または生物活性分子がナノファイバー網状構造、ナノフィルム、もしくはベース基材に共有結合でもしくは非共有結合で結合するように官能基を介して網状構造、ナノフィルム、もしくは基材の表面に結合させることができる。ある種の態様では、1つ以上の官能基をナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材の外面上に組み込むことができる。これらの官能化表面は、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖類、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子を、ナノファイバーまたはベース基材の表面に結合させることができる。一態様では、官能基は、プラズマ蒸着によってナノファイバーまたはベース基材の外面上に堆積させられる。プラズマ蒸着は、ナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材の表面で局部プラズマを生じさせる。処理表面は次に、反応チャンバーで、例えば、アリルアミンおよび/またはアリルアルコールなどの、ガス状分子と反応させられる。別の態様では、官能基は、それぞれ、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング過程中にナノファイバーまたはナノフィルムの表面上に導入される。例えば、ドデシルアミン、ドデシルアルデヒド、ドデシルチオール、またはドデシルアルコールを、ポリマー溶液に加えることができる。ポリマー溶液は次に、ナノファイバーへエレクトロスピンされ、ここで、それぞれ、加えられたアミン、アルデヒド、スルフヒドリル、またはアルコール部分の一部がナノファイバーの外面上に露出される。
【0079】
d.細胞/組織固定化のための基材の製造
ナノファイバー網状構造またはナノフィルムを、当該技術で公知の技法を用いて、ベース基材上に堆積させることができる。一態様では、ナノファイバー網状構造を製造し、例えば、コロナ帯電および摩擦帯電などの帯電技法によって、ベース基材上に堆積させることができる。あるいはまた、ナノファイバー網状構造を、ナノファイバー網状構造がベース基材に隣接するようにベース基材上へエレクトロスピンすることができる。同様に、ナノフィルムを、ベース基材上にエレクトロスプレーすることができる。他の態様では、前もって形成されたナノファイバー網状構造を、接着剤を用いてベース基材に結合させることができる。
【0080】
用語「隣接する」は、本明細書で用いる際、ナノファイバー網状構造またはナノフィルムとベース基材の表面との間の密な接触を含む。用語「隣接する」はまた、ナノファイバー網状構造またはナノフィルムとベース基材との間に置かれた1つ以上の層を含む。例えば、接着タンパク質は、ナノファイバー網状構造をベース基材上に堆積させる前にベース基材の外面上に堆積させることができる。一態様では、細胞または組織は、ナノファイバー網状構造とベース基材との間に置かれない。上に記載されたように、エレクトロスピニングは、要望通りの異なる性質および配向のナノファイバーを製造するために用いることができる。一般に、禁止されるわけではないが、ベース基材の他の露出面は、他の露出面に隣接するいかなる構成要素も持たない。ベース基材上へのナノファイバーの堆積時に、ナノファイバーは、ベース基材上に一様な厚さで均一に分配される。
【0081】
2つ以上のナノファイバー網状構造またはナノフィルムをベース基材上に層化することができることも考えられる。例えば、特定の細胞または組織の細胞活性を促進する、異なるナノ−および/またはミクロ−環境は、物理的および/または化学的性質を選択した異なるナノファイバー網状構造を層化することによって構築することができる。物理的および/または化学的性質は、上に記載されたように個々のナノファイバー網状構造中へ設計することができる。個々のナノファイバー網状構造の層化はチャネルを形成することができ、チャネルは、細胞が基材を透過し、そして細胞とナノファイバー網状構造またはナノフィルムとの間の多点結合を促進する環境中で成長することを可能にするだけでなく、イオン、代謝産物、タンパク質、および/または生物活性分子の拡散を可能にする。
【0082】
IV.キット
別の態様では、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムとベース基材とを含むキットが本明細書に記載される。上に記載されたナノファイバー網状構造、ナノフィルム、およびベース基材のいずれも本明細書に使用することができる。一態様では、1つ以上の前もって製造されたナノファイバー網状構造を、個々にラップし、滅菌することができる。パッケージングから取り出した後、1つ以上のナノファイバー網状構造を、ベース基材上に手動でまたは機械でアセンブルすることができる。多数のナノファイバー網状構造の場合には、各ナノファイバー網状構造を、層ごとにベース基材に被着させて多層化アセンブリを形成することができる。ベース基材は、それがナノファイバー網状構造を受け入れるために造形されているような物品であることができる。
【0083】
V.用途
本明細書に記載される基材は、細胞または組織を固定化するために使用される。用語「固定化」は、本明細書で用いる際、細胞または組織を保持する基材の能力である。固定化は、細胞または組織がナノファイバー網状構造またはベース基材内の位置に固定されるように細胞または組織を完全に保持することから、細胞または組織がナノファイバー網状構造またはベース基材に自由に浸透する状況までに及ぶことができる。ナノファイバー網状構造、ナノフィルム、またはベース基材中への生物活性分子の組み込みは、基材への細胞または組織の固定化の程度を決定することができる。
【0084】
本明細書に記載される基材を、以下に記載される多数の用途に使用することができる。基材は、フィルター用途、医薬品用途、細胞培養、組織培養、および組織エンジニアリングを含むが、それらに限定されない、ナノファイバーを用いる多くの公知の用途に使用できると考えられる。1種以上の細胞タイプを基材上に堆積させることができると考えられる。細胞は、当該技術で公知の技法を用いて基材上に堆積させることができる。
【0085】
一態様では、(a)細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞付き基材を培養して組織の成長を促進する工程とを含む、複数の細胞を成長させるための方法が本明細書に記載される。
【0086】
別の態様では、(a)細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)このアセンブリを培養して細胞の分化を促進する工程とを含む、細胞の分化方法が本明細書に記載される。
【0087】
幹細胞、前駆細胞、分化細胞、および腫瘍細胞を含むが、それらに限定されない、多くのタイプの細胞を基材上に固定化することができる。幹細胞の例には、胚幹細胞、骨髄幹細胞および臍帯幹細胞が挙げられるが、それらに限定されない。様々な実施態様に使用される細胞の他の例には、骨芽細胞、筋芽細胞、神経芽細胞、線維芽細胞、グリア芽細胞、胚細胞、肝細胞、軟骨細胞、ケラチン生成細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、結合組織細胞、グリア細胞、上皮細胞、内皮細胞、ホルモン分泌細胞、免疫系の細胞、および神経細胞が挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
天然源から誘導された、遺伝子組み換えされた、または任意の他の方法によって生成された、本明細書に有用な細胞をインビトロで培養することができる。任意の天然源の原核または真核細胞を使用することができる。
【0089】
腫瘍細胞などの異型または異常細胞もまた本明細書に使用することができる。本明細書に記載される基材上で培養される腫瘍細胞は、薬剤治療の評価のために身体中の生来の腫瘍環境のより正確な発現量を提供することができる。本明細書に記載される基材上での腫瘍細胞の成長は、生物化学的経路と、腫瘍を特異的に標的にする薬剤の開発を可能にするインビボ様環境における、遺伝子発現、受容体発現、およびポリペプチド産生をはじめとする、腫瘍の活性とのキャラクタリゼーションを容易にすることができる。
【0090】
遺伝子組み換えされた細胞もまた本明細書で使用することができる。組み換えは、1つ以上の遺伝子を発現するように細胞をプログラムすること、1つ以上の遺伝子の発現を抑制すること、または両方を含む。遺伝子組み換えは、例えば、遺伝物質を細胞に加えるかもしくは細胞から除去すること、既存の遺伝物質を変えること、または両方を含むことができる。遺伝子を発現するために細胞がトランスフェクトされるかまたはさもなければ組み換えられる実施態様は、一時的にまたは永久にトランスフェクトされた遺伝子、または両方を用いることができる。遺伝子配列は、フルまたは部分長さ、クローン化されたまたは自然発生のものであってもよい。
【0091】
基材の選択される物理的および/または化学的性質を変えるおよび/または変性させることによって、基材は、特定の細胞または組織の細胞成長を促進するように設計することができる。テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、弾性、ソリディティ、ジオメトリー、およびフィブリル密度を含むが、それらに限定されない、基材の物理的性質および/または特性は、成長および分化をはじめとする、所望の細胞活性を促進するために変えるおよび/または変性させることができる。特異的なナノ−および/またはミクロ−環境を、基材内で設計することができる。例えば、基材の気孔率およびフィブリル密度は、細胞に基材を透過させ、そして3次元環境で成長させるために変えるおよび/または変性させることができる。本明細書に記載される生物活性分子のいずれも、細胞接着、成長および/または分化をはじめとする、所望の細胞活性を促進するために等方的にあるいは勾配として基材中へ設計することができる。かかる細胞がその上で成長する基材の、成長および分化因子をはじめとする物理的および/または化学的性質は、生来のインビボナノ−またはミクロ−環境を模倣するように設計することができる。
【0092】
デザインされたパターンを使って、2および3次元での細胞の空間体系化を得ることができる。表面化学の特定的なパターンを生み出すことによって、細胞挙動を物理的または化学的超微細構造内に限定することができ、それは、細胞成長および/増殖などの細胞活性を制御するために使用することができる。
【0093】
別の態様では、(a)組織の前駆体である細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞付き基材を培養して組織の成長を促進する工程とを含む、組織を成長させるための方法が本明細書に記載される。成長できる細胞を本明細書に記載される基材上に堆積させ、そして組織成長を促進する条件下に培養させることができることも考えられる。上記の細胞のいずれかからの組織成長(すなわち、エンジニアリング)は、本明細書に記載される基材を使って考えられる。本明細書に記載される基材は、多くの異なる種類の前駆体細胞を支持することができ、基材は新しい組織の発育を導くことができる。組織の産生は、創傷治癒に多数の用途を有する。ナノファイバーおよびベース基材を製造するために使用される材料の選択に依存して、組織成長はインビボまたは生体外で行うことができる。
【0094】
ある種の場合には、基材から細胞または組織を取り外すことが望ましい。例えば、本明細書に記載される基材上に成長した幹細胞を採取することが望ましいであろう。細胞を取り外すための当該技術で公知の侵襲的な技術には、機械的かき取り、超音波処理、化学的/酵素的処理、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。他の技法は、pHもしくは温度の調節または結合した細胞を放出させるためのイオンの添加を含む。
【0095】
別の態様では、(a)既知の細胞株を本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞を薬剤と接触させる工程と、(c)薬剤との接触時に堆積細胞によって生成される応答を確認する工程とを含む、既知の細胞株と薬剤との間の相互作用の測定方法が本明細書に記載される。
【0096】
既知の細胞株が本明細書に記載される基材上に固定化された状態で、薬剤が固定化された細胞と相互作用するときに幾つかの薬剤の活性をスクリーンすることが可能である。試験されるべき細胞および薬剤に依存して、細胞−薬剤相互作用は、様々な技法を用いて検出し、測定することができる。例えば、細胞は薬剤を代謝させて容易に検出できる代謝産物を産生するかもしれない。あるいはまた、薬剤は、タンパク質または他の生体分子を産生するように細胞を誘発することができる。本明細書に記載される基材は、細胞が生体外環境で細胞のインビボ性質をよりそっくり模倣するための環境を提供する。基材は、薬剤/細胞相互作用を分析するための高いスループットアプリケーションに使用することができる。高いスループットアプリケーションは、プレート当たり約1536ウェル以下の密度のマルチウェル組織培養チャンバーを利用する。このように、ウェル当たりの細胞集団の増加は、測定されるシグナルを増加させるのに役立つであろう。
【0097】
別の態様では、(a)溶液を本明細書に記載される基材と接触させる工程であって、化合物が基材上に固定化される工程と、(b)固定化された化合物を基材から取り除く工程とを含む、溶液中に存在する化合物の分離方法が本明細書に記載される。ナノファイバー網状構造および/またはベース基材は、溶液中の上記の生物活性分子のいずれも固定化するために変性させることができる。一般に、1つ以上の生物活性分子からなる溶液が基材と接触させられ、そのとき生物活性分子は基材上に固定化される。結合した生物活性分子は次に、溶媒で基材から放出させることができる。基材は、基材が生物活性分子と共有結合または非共有(例えば、イオン、静電気的双極子−双極子、ファンデルワールス(Van Der Waals)相互作用)結合を形成するように上記のように変性させることができる。別の態様では、細胞を精製することができる。例えば、基材上に固定化された単一の個々の細胞の電気的性質を測定することによって、それらの異なる固有の電気的性質によって細胞の集団を分離する/精製することが可能である。この応用は、大量の純幹細胞を採取することが望ましい幹細胞で特に興味のあるものであり得る。
【0098】
他の態様では、本明細書に記載されるナノファイバーおよびナノフィルムは、様々な異なる材料のための支持体として使用することができる。かかる材料には、触媒、金属もしくは有機の導電性材料、磁性材料、圧電材料、強誘電材料、誘電材料、放射性材料、リン光性材料、染料、界面活性剤、または希土類金属が含まれる。これらの成分の量は、意図される最終用途に依存して変わり、それは当業者によって容易に決定することができる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、開示される本主題に従った方法および結果を例示するために以下に記述される。これらの実施例は、本明細書に開示される主題の全ての態様を含めることを意図せず、むしろ代表的な方法および結果を例示することを意図する。これらの実施例は、当業者に明らかである本発明の同等物および変形を排除することを意図しない。
【0100】
数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするために努力されてきたが、多少の誤差および偏差は考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃単位であるかまたは周囲温度においてであり、圧力は大気圧またはその近傍においてである。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力ならび記載される方法から得られる製品純度および収率を最適化するために用いることができる他の反応範囲および条件の多数の変形および組合せが存在する。適度のおよび所定の実験のみが、かかるプロセス条件を最適化するために必要であろう。
【0101】
実施例1−ニオブ、タンタル、またはチタン/ポリスチレン・ナノファイバー
サンプル調製
サンプルを、純ポリスチレン(PS)または、ニオブエトキシド(カタログ#339202 シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))あるいはタンタルブトキシド(カタログ#383333 シグマ・アルドリッチ)と混合されたポリスチレンから調製した。ポリスチレン単独の場合には、PSを18〜20%の濃度範囲でテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。350,000〜2,000,000のポリスチレンの分子量範囲を用いて異なるナノファイバー直径を狙った。タンタルブトキシドまたはニオブエトキシド・ポリスチレンブレンド物の場合については、ポリスチレンを先ずTHFに溶解させ、無機酸化物をDMSOありまたはなしの氷酢酸に溶解させた。タンタルおよびニオブは15〜49%の濃度範囲にあった。
【0102】
エレクトロスピニング法
ナノファイバーを、ガラスカバースリップ、銀コーテッドガラス、またはポリ酢酸ビニルカバースリップのいずれかの上で紡糸した。電圧は5〜9kVであり、ナノファイバー−基材距離は5〜15cmで変わった。相対湿度は制御され、40〜70%で変わることができ、湿度の増加が表面積の増加をもたらす状態で、ナノファイバー表面テクスチャーに顕著な影響を及ぼした。エレクトロスピニング法の温度は68〜78°F(20℃〜約26℃)で変わった。2rpmでサイクル数は20〜250で変わってマット密度の変動を可能にした。
【0103】
細胞株
結合および増殖を研究するために使用された細胞株には、MRC5、HEPG2およびヒト間葉幹細胞(HMSC)が含まれた。結合、増殖および機能を研究するために使用された細胞株は、HEPG2肝細胞株(ATCC #HB−8065)であった。MRC5細胞は同様にATCC(#CCL−171)から入手されたが、ヒト間葉幹細胞はカムブレックス(Cambrex)(#PT2501)から入手された。全ての細胞培養は、カムブレックスによって提供される培地で成長させたHMSCを除いて、イソコベの修正ダルベッコ培地(Isocove’s Modified Dulbecco’s Medium)(IMDM)+10%ウシ胎仔血清(FBS)で行われた。IMDMはギブコ(Gibco)製のカタログ#12440−053であったが、ウシ胎仔血清はハイクロン(Hyclone)製であった。細胞を基材に加えるとき、インビトロゲン(Invitrogen)製の1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin)(カタログ#15140−122)を、汚染を防ぐために混合物に加えた。
【0104】
基材は常に、細胞の添加前に70%エタノールで、その次にIMDM+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシンで洗浄した。MTT細胞増殖アッセイ(ATCC、カタログ#30−1010K)またはセルタイター(CellTITER)96(登録商標)AQワンソリューション・セル増殖アッセイ(AQ One Solution Cell Proliferation Assay)(プロメガ(Promega)、カタログ#G3580)を用いて細胞結合および増殖について評価した。肝細胞タンパク質産生量は、ピアース・バイオテクノロジーズ(Pierce Biotechnologies)製のBCAアッセイ(製品#23227)を用いることによって測定した。バイオメダ(Biomeda)製のアルブミン産生アッセイ(カタログ#EU1057)またはアッセイプロ(AssayPro)(カタログ#EA3201−1)を利用して肝細胞アルブミン産生について評価した。
【0105】
結果
図1は、SEMによって明らかにされるナノファイバーのテクスチャーを示す。DMSOなしのニオビア/ポリスチレンは、DMSOありのニオビア/ポリスチレンまたはDMSOありのタンタラ/ポリスチレンと比較してより滑らかなテクスチャーを示す。
【0106】
図2は、SEM後方散乱画像(ボトム)だけでなく、ナノファイバー内部のナノファイバー・テクスチャーのSEM(トップ)示し、ここで、白点は重金属を示す。タンタラ/ポリスチレン・ナノファイバーは、DMSOありで紡糸した。DMSOの添加で起こる有機/無機の不均一混合は、ナノファイバーを変性させ、そして細胞培養を高めるための無機反応中心を提供するかもしれない。白矢印は無機相の領域を示す。
【0107】
図9は、SEMによって明らかにされるチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーのテクスチャーを示す。ナノファイバーは、THF/DMSOを用いて製造したが、このナノファイバーは、全ナノファイバーの全体にわたってだけでなく表面上でも多孔質である。
【0108】
図3は、増殖が、HEPG2細胞株およびHMSCの両方に関してエレクトロスパン基材について組織培養物処理ポリスチレン(TCT)より大きいかまたはそれに等しかったことを示す。この場合には、各基材タイプの2つの基材を試験した。100,000細胞を第1日目に播種した。増殖は、第5日目にATCC MTTアッセイを用いることによって試験した。図4では、HEPG2細胞増殖および全タンパク質産生量を、異なるエレクトロスパン基材についてTCTと比較した。全タンパク質産生量はBCAアッセイによって測定し、細胞増殖は第2日目に測定した。
【0109】
図5は、1mMのKCl中pH7.0でのゼータ電位によって測定される際の表面電荷の関数としてのタンパク質産生量を示す。図6は、基材に応じたアルブミン産生量を示す。この場合には、エレクトロスパン基材を6ウェルプレートに入れ、500,000HEPG2細胞を第1日目に播種した。第3日目に、培地を取り替えた。第5日目に、基材を取り除き、新ウェルに入れ、DPBSプラスCa+2プラスMg+2でカバーした。第6日目に、培地を取り除き、アルブミンについて評価した。細胞カウントに対して標準化する場合、プロメガ・セルタイター・アッセイを、アルブミンについて評価すると同時に行った。TCT、マトリゲル(Matrigel)(商標)または対照としての6ウェル・フォーマットで既に提供された他の基材を使用するとき、基材を取り除きそして新TCTプレートに入れてエレクトロスパン基材のみ上の細胞の量を測定したことを除いて、同じプロトコルに従った。6ウェル対照との比較は、異なる名目上の表面積に対して標準化することによって行った。図7は、アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【0110】
実施例2−チタニア/ポリスチレン・ナノファイバー
1マイクロメートル未満〜マイクロメートル直径のチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーからなる細胞培養表面または足場を、酸化物/ポリマーハイブリッド・ナノファイバーをポリマーまたはガラス表面上へエレクトロスピンすることによって堆積させた。これらのナノファイバーはユニークな表面モルフォロジー、くされおよび化学組成を有し、それは、それらを動物細胞の接着および成長のための優れた基材にする。ナノファイバー構造および直径は、培養中に動物細胞によって基盤表面として堆積される、細胞外マトリックスのそれに近い。この表面の生体模倣トポグラフィーは、それが培養で動物細胞の成長のために有利な3次元基材を提供するようなものであり、標準的な非繊維状細胞培養表面よりも顕著に向上した細胞収率をもたらす。図8および9は、チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーの表面モルフォロジーおよび特徴を示す。
【0111】
HEK293細胞は、これらのハイブリッド・ナノファイバー表面上に結合し、成長した(図10)。組織培養物処理ポリスチレン対照上よりかなり多い細胞成長が、標準細胞培養条件下で3〜5日後にハイブリッド・ナノファイバー表面上で見られた(図11)。さらに、これらの細胞は、チタニア/ポリスチレンハイブリッド・ナノファイバー上で成長したときに丸いモルフォロジーを示し、ナノファイバー長さに沿って整列した(図12)。細胞は、ナノファイバーの間に、その中におよびそれに沿って優先的に成長し、組織培養物処理(酸化された)ポリスチレンで典型的に見いだされる偏平な単層ではなく、3次元の細胞集団をもたらした。この細胞成長モルフォロジーは、それがインビボ細胞モルフォロジーにさらによく似ているので望ましい。
【0112】
これらのエレクトロスパンハイブリッド・ナノファイバーの電子マイクロプローブによる予備分析は、ナノファイバー内でのチタニアの一様な分布を示した。BET測定は、滑らかな密度の高いナノファイバーより高い表面積値(14m2/グラム)を示す。この結果は、図8および9に示される観察された表面特徴およびくされとよく一致する。典型的なナノファイバー直径は0.5〜5マイクロメートルであり、ここで最も一般的なナノファイバーが直径2〜3マイクロメートルである。ナノファイバー表面は、ナノファイバー表面の50%以上が多孔質でそして時々ウェブ様のコーティングによってカバーされている状態で軸方向に配向した溝を有する。このコーティングは、ナノファイバーの互いのおよび基材表面への接着を容易にし、安定な培養基材または足場をもたらす。
【0113】
実施例3−シリカ/ポリスチレン・ナノファイバーおよびシリコーン/ポリスチレン・ナノファイバー
材料
シリカ・ナノファイバーは、触媒、pH、および水/アルコキシド比を変えることによって公知のゾル−ゲル技術を用いて形成した。ポリマーをこの組成物に導入し、それは水中で膨潤し、故にマットの収縮を減らし、そしてまた無機成分のためのバインダーとしての役割を果たしたであろう。幾つかの組成物を研究したが、典型的にはこれらはTEOS/水(±DMSO)/酸およびポリマーからなる。溶液の詳細を以下に示す。
【0114】
工程1:TEOS(5.5g)、水(5.5g)および2滴のH3PO4(42.5%強度)(0.08g)を、激しく撹拌しながら15分間または無色透明になるまで混合した。次に溶液を60℃で1時間加熱し、次に溶液を氷浴中に保ってさらなる反応の速度を落とす。
【0115】
工程2:次の成分を別の溶液として混合した:工程1からのTEOS混合物(2g)、H2O(0.53g)、DMSO(0.25g)および8%ポリビニルアルコール(PVA:MW89−98K、6.25g)。この溶液を60℃で1時間加熱し、室温に冷却し、エレクトロスピニング前に3日間熟成した。最終マット組成物中の生成シリカを、ポリマー含有率を変えることによって40〜59%で変えた。溶液をまた、DMSOなしで製造した。
【0116】
PVAは部分水溶性であるので、エレクトロスパンマットを、グルタルアルデヒドなどの化学架橋剤を使用して後変性させる。シリカ/PVAハイブリッドの200〜400nm直径ナノファイバーからなる多孔質マットを製造した。異なるシラン(アミン、TEOS)コーテッドガラスカバースリップをエレクトロスピニング基材として使用してナノファイバーの接着を助け、故にマットの密度を高めた。
【0117】
図13は、それらのユニークな表面モルフォロジーおよび典型的なナノファイバー直径を描写するこれらのナノファイバーのSEMを示す。シリカ/PVAハイブリッド・ナノファイバー直径(100〜400nm)は、フィブリル状基盤膜、細胞外マトリックス(ECM)の構造上コンパクトな形態のそれに近い。シリカは必須養分であり、PVAは合成ECM様タンパク質として公知であり、故にこの系は、細胞培養のための良好な生体模倣であることができよう。
【0118】
シリコーン/有機ブレンド物は、シリコーン含有ブロックコポリマー/PSハイブリッドをエレクトロスピンすることによって形成されてきた。可変の粘度、分子量および組成の多くの商業的に入手可能なシリコーンが存在する。商業的に入手可能なシリコーンのほとんどの低いガラス転移温度(Tg)は、単独でエレクトロスピンされることを不可能にするが、これらはコポリマーブレンド物としてエレクトロスピンすることができよう。幾つかの組成物が研究された。
【0119】
#1 PS(MW 350,000、30mlのTHFおよび0.5ml酢酸中の6gのPS、THF中約20%)とコポリマー(35〜45%ポリジメチルシロキサン)フェニレンジアミン ポリエーテルイミド(シブリッド(商標)、15%N−メチルピロリドン)との混合物、ここで、「シブリッド」(15%)/PS(20%)組成を50/50、60/40および25/75比で変えた。
【0120】
#2 PS(MW 350,000、THF中約20%)と熱架橋性シリコーン系 ゲレストOE43パートAおよびパートBとの混合物、ここで、最終シリコーン組成を5〜10%で変えた。
【0121】
#3 PS(MW 350,000、THF中約20%)とPDMSのアミノ官能性コポリマーとの混合物、ここで、最終シリコーン組成を5〜10%で変えた。
【0122】
図14〜16は、これらの系についての典型的なナノファイバー直径(約900nm〜2μm)を示す。これらの高分解能SEMはまた、ナノファイバーの表面および内部ナノファイバーモルフォロジーを描写する。図17は、細胞培養実験のために典型的に使用される密度の高いナノファイバーマットの光学顕微鏡写真を示す。
【0123】
異なるタイプのシリコーンのエレクトロスピニングは、ユニークなモルフォロジー、化学表面エネルギー、および弾性率をもたらす。異なるシリコーンは、たとえこれらの組成物がブレンド物として使用されても、表面上に異なる化学をもたらすであろう。ATR−FTIRを用いて#2についてのサンプルをキャラクタリゼーションした。データは、たとえポリスチレンが両組成物において大半相であっても、シリコーンがナノファイバーの表面上に圧倒的に存在することを示す。PDMS表面張力(γ)は19.9mN/mであり、PSのγは40.7mN/mであり、予期されるように、より低い表面張力ポリマーはナノファイバーの表面に分離した。
【0124】
シリコーンは一般に、より低い表面エネルギー材料である傾向があり、故に水中で湿潤性がより少ない。それ故、50/50または34/66のエレクトロスパン・「シブリッド」/PS混合物は、マットを親水性にするためにN2Oプラズマ処理(30秒)を用いて後変性させた。これらの処理マットはまた、表面の親水性を確実なものにするために促進エージング条件(52度、5日)を受けた。
【0125】
ナノファイバーマット・モルフォロジーはまた、エレクトロスピニング処理条件を操作することによって変えることができた。より多く融合した(MF)対より少なく融合した(LF)ナノファイバーマットは、「シブリッド」/PS 25/75比について先端−基材距離を低下させることによって得られた。これは、より大きい融合ナノファイバー(5〜6μm以下)をもたらした。
【0126】
細胞培養
MRC5線維芽細胞およびHEPG2肝細胞を、シリカ/PVAおよび「シブリッド」/PS系上で成長させた。MRC5細胞をシリカ/PVAおよびN2O処理「シブリッド」/PS系上で対照表面として組織培養物処理ポリスチレン(TCT)を用いて成長させた。MRC5細胞を標準細胞培養条件下に両表面上に結合させ、成長させた。シリカ/PVA上で、MRC5細胞は、24時間後に生存細胞拡散を示した。72時間後に、モルフォロジーはPS上で通常見られるものとは異なった。MRC5細胞は非常に広がり、明白な最先端を有した(図20)。これは、細胞が通常結合し、そして偏平なモルフォロジーに成長するTCT上ではこれまで見られなかった。これは、高められた細胞成長にわたってシリカ/PVA表面上での高められた細胞機能を示唆することができた。
【0127】
N2O処理「シブリッド」/PS表面上で、MRC5細胞はTCTと比較していかなる違いも示さなかった。この細胞は線維芽細胞様であり、そのものと同様にTCT上にロックされた(図19)。図18はまた、基材の面積に対して標準化された相対的なMRC5細胞カウントを示す。汚染は、表面全てについて全く気付かれず、表面は培養期間の間ずっと無傷のままであった。
【0128】
シリカ/PVAおよび「シブリッド」/PSはまた、HEPG2肝細胞成長を支援する。文献は、機能性肝細胞が典型的には回転楕円形または円形であり、他の細胞タイプよりゆっくり成長することを示してきた。
【0129】
標準細胞培養の5日後にTCT対照表面上でより著しく多い細胞成長が、全ての組成(50/50、25/75)での未処理「シブリッド」/PSナノファイバー表面上で見られた。図21は、細胞培養の1日および5日後の基材の面積に対して標準化された相対的なHEPD2細胞カウントを示す。これらの細胞は、「シブリッド」/PS上で成長したときに凝集体を示した(図22)。細胞は、TCT上に典型的に見いだされる偏平な単層ではなく、ナノファイバーの間におよびそれに沿って優先的に成長した。N2O処理「シブリッド」/PSは、未処理サンプルおよびTCTと比較してより低い細胞カウントを示した。たとえ細胞成長がN2O処理「シブリッド」/PS上で低くても、細胞は、TCT上での平らな広がった細胞と比較して凝集体にとどまった。
【0130】
TCT対照表面に匹敵する細胞成長は、シリカ/PVAナノファイバー表面上で見られた。図23は、細胞培養の1日および5日後の基材の面積に対して標準化された相対的なHEPG2細胞カウントを示す。これらの表面上の細胞もまた、TCT上で観察される偏平なモルフォロジーと比較したときに凝集体を示した(図24)。第5日目の肝細胞成長は、DMSOの不存在下に製造されたファイバー(68−06および72−06)と比較してシリカ/PVA(−DMSO)(図23中の83−06)についてかなり高かった。この組成物について観察された凝集体は、基材上に直接凝集しているように見えるシリカ/PVA(+DMSO)について観察された回転楕円体と比較して肝細胞の単層上に横たわっているように見える。
【0131】
図25は、基材に応じたアルブミン産生量を示し、図26は、アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。HepG2増殖およびアルブミン分泌分析についての全プロトコルは、実施例1に詳述される。HepG2細胞播種密度は、全ての実験基材について3mlの培地中100,000細胞に保たれた。
【0132】
実施例4−ナノファイバー直径および組成物と細胞成長および機能との関係
エレクトロスパン金属酸化物/ポリマー・ナノファイバー直径と組成物との間の関係に関する研究は、ポリスチレン・ナノファイバー中へのチタンの包含が類似の寸法のポリスチレン・ナノファイバー単独よりも多くの細胞結合および成長を促すことを示唆した。おおよそ300nm、1,000nmおよび5,000nmの名目上の直径を有するポリスチレンおよびポリスチレン/チタニアからなるナノファイバーを、ガラススライド上へエレクトロスピンし、HepG2肝細胞(ATCC HB065)の成長および機能について評価した。これらの細胞は、容易に定量化される量でタンパク質を産生し、肝細胞機能についての有用なモデルと考えられる。全ての結果は、確認のために繰り返された。
【0133】
細胞を、標準培養条件下にIMDM/10%FBS/抗生物質/抗真菌薬中に維持し、3〜5継代で使用した。播種密度は、全サンプルについて20,000細胞/cm2であり、培地は一日おきに変えた。タンパク質産生についての分析前に、血清含有培地を、血清を含まない培地(IMDM含有ITESおよび抗生物質/抗真菌剤)と取り換えた。サンプルをカルシウムおよびマグネシウム入りDPBSで3回穏やかにリンスして血清を含まない培地の添加前に微量のアルブミンを除去した。細胞を24時間成長させ、血清を含まない培地をタンパク質産生量について分析した。細胞数もこの時測定した(セルタイター96、プロメガ)。全タンパク質を、ホーフェルシュバイガー(プロスタイン、アクティブ・モチフ 北米)(Hoefelschweiger(ProStain,Active Motif North America))の方法を用いて分析した。
【0134】
図27は、幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長結果を示す。細胞成長は、ポリスチレン単独でできたナノファイバーだけでなくポリスチレン、コラーゲンおよびマトリゲル上で培養された組織よりもチタニア含有ナノファイバー表面上で著しく高められた。より大きい直径ナノファイバー上では、細胞はストリング上に結合し、ビーズ様に成長し、大きいクラスターを形成し、1,000nmまたはより小さいナノファイバー上では、小さい回転楕円体が形成された。培養された肝細胞における回転楕円体形成はまた、インビボ様挙動をより多く示唆すると考えられる。
【0135】
肝細胞によるタンパク質産生は、正常の細胞機能の指標と考えられる。24時間期間にわたって成長培地中へ分泌された全タンパク質を、これらの表面上でのこれらの細胞の機能の程度を測定するために測定した。多くの用途で、インビボで見いだされるように、細胞の機能を促進することが望ましい。図28は、幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長およびタンパク質産生量を示す。どの表面も、3次元タンパク質ゲルコーティングであるマトリゲルで見られるような程度のタンパク質産生を生成しなかったが、標準ポリスチレンまたはコラーゲン−コーテッド表面上でよりも著しく多いタンパク質産生(おおよそ150%大きい)が3次元ナノファイバー表面上で起こった。ナノファイバー状表面は、幾つかの点で細胞マトリックスタンパク質の形状を模倣すると考えられる。細胞成長を促進する表面が高められた分化機能をも可能にすることはまた普通ではない。ナノファイバー表面は、標準培養表面よりも多くの分化挙動を促進するように見える。
【0136】
本出願の全体にわたって、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の全体の開示が、本明細書に記載される化合物、組成物および方法をより十分に記載するために、参照により本明細書によって本出願へ援用される。
【0137】
本明細書に記載される材料、方法、および物品に様々な修正および変形を行うことができる。本明細書に記載される材料、方法、および物品の他の態様は、本明細書ならびに本明細書に開示される材料、方法、および物品の慣例を考慮するとから明らかになる。本明細書および実施例は、例証と見なされることが意図される。
【関連出願の説明】
【0001】
本件出願は、本明細書に参照により援用される、2006年9月6日出願の米国仮特許出願第60/872,441号および2007年3月15日出願の米国仮特許出願第60/918,083号の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ナノファイバー、ナノフィルムおよびそれらの製造/使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノファイバーおよび薄いフィルムの製造および使用が、幅広く研究されてきた。ナノファイバーおよび他の薄いフィルムには、支持体または基材として多くの用途がある。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムは、触媒用の担体として使用することができる。他の実施態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは細胞を培養するための基材として使用することができる。インビボで細胞成長を増殖させるおよび分化させる能力は多数の用途を有する。インビボ細胞成長は、3次元環境である、細胞外マトリックス(ECM)で起こる。例えばペトリ皿表面などの2次元表面は、「インビボ」細胞成長を代表するものではない。従って、ナノファイバーの場合には、細胞外マトリックスをシミュレートする3次元構造物を生じさせることが可能である。
【0004】
基材の最終用途に依存して、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変性させることが望ましい。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムが細胞を培養するために使用されるとき、この材料が適切な気孔率、表面積、および細孔構造を有することが望ましい。それ故、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを制御することができ、それにもかかわらずナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために多種多様な異なる出発原料を使用する柔軟性を有する必要性がある。本明細書に記載される方法は、ファイバー−またはフィルム−形成前に出発原料の溶液を調製するために使用される溶媒の選択に基づく、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変性させるための便利な方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で具象化され、広範に記載されるような、開示される材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法の目的に従って、金属酸化物、有機ポリマー、またはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムが存在する。ファイバーおよびフィルムの表面モルフォロジーを制御することを含む、ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するための組成物および方法もまた、本明細書に記載される。最後に、ナノファイバーおよびナノフィルムの使用方法が記載される。追加の利点は、以下に続く説明において部分的に記載され、そしてこの説明から部分的に明らかになるか、または以下に記載される態様の実施によって分かるかもしれない。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘される要素および組合せを用いて実現され、達成されるであろう。前述の一般的な説明および次の詳細な説明の両方とも例証的で説明的であるにすぎず、限定的でないことは理解されるべきである。
【0006】
本明細書の一部に組み込まれ、そして一部を構成する添付の図は、以下に記載される幾つかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】Ta/PSエレクトロスパン・ナノファイバーだけでなくDMSOありおよびなしのNb/PSの5000×で撮られたSEMを示す。
【図2】白矢印が無機相の領域を示す、外側テクスチャーおよびナノファイバーの有機/無機相ミキシングを示すNb/PSおよびTa/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図3】様々なエレクトロスパン基材上でのHepG2細胞株およびHMSCの両方についての増殖を示す。
【図4】組織培養物処理リジンと比較して幾つかのナノファイバー基材上での全タンパク質産生量および細胞増殖を示す。
【図5】1mMのKCl中pH7.0でのゼータ電位によって測定される際の表面電荷の関数としてのタンパク質産生量を示す。
【図6】基材およびナノファイバー直径に応じたアルブミン産生量を示す。
【図7】アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材およびナノファイバー直径に応じたアルブミン産生量を示す。
【図8】溝様の構造物および細孔からなるチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーの複雑な表面モルフォロジーを示す。
【図9】約14m2/グラムの表面積を有する、追加の表面特徴およびくされを示す。
【図10】チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーに結合したHEK293細胞の顕微鏡写真を示す。
【図11】標準ポリスチレン表面と比較したチタニア/ポリスチレン・ナノファイバー上での細胞カウントの増加を示す。
【図12】チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーに結合したHEK293細胞のより丸い形状を示す。
【図13】2つの異なる倍率での約200〜400nmの典型的なナノファイバー直径のシリカ/PVA(59%シリカ)のSEMを示す。
【図14】50/50シブリッド(Sibrid)TM/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図15】25/75シブリッドTM/PSナノファイバーのSEMを示す。
【図16】熱架橋可能なシリコーン系・ゲレスト(Gelest)OE43パートAおよびパートB/PSシリコーン組成物10%のSEMを示す。
【図17】50/50および25/75シブリッドTM/PSハイブリッド・エレクトロスパンマットの光学顕微鏡写真を示す。
【図18】基材の面積に対して標準化されたMRC5細胞カウントを示す。
【図19】シリカ/PVA上のMRC5細胞を示す。
【図20】N2O処理シブリッドTM/PS表面上のMRC5細胞を示す。
【図21】N2Oプラズマ処理(PL)か無処理(NO PL)かのどちらかであり、またはより少なく融合した(LF)かまたはより多く融合した(MF)シブリッドTM/PSハイブリッド・エレクトロスパンマット(50/50、25/75)上のHepG2細胞を示す。
【図22】シリコーン/PSハイブリッド・エレクトロスパンマット上のHepG2細胞を示す。
【図23】混合物中にDMSOありおよびなしの59%シリカ組成のシリカ/PVAハイブリッド・エレクトロスパンマット上のHepG2細胞を示す。
【図24】59%シリカ組成の架橋されたシリカ/PVAハイブリッド・エレクトロスパンマット上でのHepG2細胞を示す。
【図25】基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【図26】アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【図27】幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長結果を示す。
【図28】幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長およびタンパク質産生量を示す。
【図29】幾つかの溶媒の沸点および蒸気圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載される材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法は、本明細書に包含される開示主題および実施例の特定的な態様についての以下の詳細な説明を、ならびに図を参照することによってより容易に理解されるかもしれない。
【0009】
本発明の材料、化合物、組成物、物品、デバイス、および方法が開示されて記載される前に、以下に記載される態様は、特定的な合成法または特定的な試薬に限定されず、それらはもちろん変わりうるものとして理解されるべきである。本明細書に用いられる専門用語は特定の態様を説明する目的のためであるにすぎず、限定的であることを意図されないこともまた理解されるべきである。
【0010】
また、本明細書の全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示はそれらの全体を、開示事項が関係する最新技術をより完全に記載するために、参照により本明細書によって本出願に援用される。開示される参考文献もまた、当該参考文献において信頼を置かれる文章中で議論される、それら参考文献中に含有される材料に関して、参照により個々におよび具体的に本明細書に援用される。
【0011】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む(comprise)」およびこの用語の他の形態「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などは、非制限的に含む、ということを意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、または工程を排除することを意図しない。
【0012】
本説明および添付の特許請求の範囲に用いられる際、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「組成物(a compositon)」への言及は、2種以上のかかる組成物の混合物を含み、「試剤(an agent)」への言及は、2種以上のかかる試剤の混合物を含み、「層(a layer)」への言及は、2層以上のかかる層の混合物を含む。
【0013】
「場合による」または「場合により」は、その次に記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、ならびに、この記載がその事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0014】
本明細書に開示される、特定の材料、化合物、組成物、および成分は、商業的に入手することができるか、または当業者に一般に公知の技法を用いて容易に合成することができる。例えば、開示される化合物および組成物の製造に使用される出発原料および試薬は、商業的供給業者から入手可能であるか、あるいは当業者に公知の方法によって製造される。
【0015】
また、開示される方法の製品および組成物のために使用することができる、またはそれらに関連して使用することができる、またはそれらの製造のために使用することができる、またはそれらである材料、化合物、組成物、および成分も本明細書に開示される。これらのおよび他の材料が本明細書に開示されるが、以下のことが理解される。すなわち、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される一方で、それぞれの様々な個々のおよび集合的な組合せならびにこれらの化合物の順列の特定指示が明確に開示されないとき、それぞれが具体的に想定されて本明細書に記載される。例えば、ある組成物が開示され、そして当該組成物の成分の数に対して行うことができる修正の数が議論される場合、可能であるそれぞれのおよびあらゆる組合せおよび順列は、それとは反対に特に明記されない限り具体的に想定される。従って、成分A、B、およびCのクラスならびに成分D、E、およびFのクラスが開示され、そして組成物A−Dの例が開示される場合、たとえそれぞれが個々に列挙されなくても、それぞれは個々におよび集合的に想定される。従って、この例では、組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fのそれぞれが具体的に想定され、そして、A、B、およびC;D、E、およびF;ならびに事例組合せA−Dの開示から開示されたと考慮されるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せもまた、具体的に想定され、開示される。従って、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブ−グループが具体的に想定され、A、BおよびC;D、E、およびF;ならびに事例組合せA−Dの開示から開示されたと考慮されるべきである。この概念は、開示組成物の製造および使用方法における工程を含むが、それらに限定されない本開示の全ての態様に適用される。従って、行うことができる様々な追加工程が存在する場合、これらの追加工程のそれぞれが任意の特定的態様または開示方法の態様の組合せで行い得ること、かつ、それぞれのかかる組合せが具体的に想定され、そして開示されていると考慮されるべきであることが理解される。
【0016】
開示される材料、化合物、組成物、物品、および方法の特定的態様についてここで詳細に言及され、それらの例は添付の実施例および図に例示される。
【0017】
金属酸化物、ポリマー、またはそれらの組合せからなるナノファイバーおよびナノフィルムが本明細書に記載される。ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用される各成分は以下に詳細に記載される。ナノファイバーおよびナノフィルムの製造および使用法もまた以下に概説される。
【0018】
I.ナノファイバーおよびナノフィルム形成用の成分
a.金属酸化物および金属酸化物前駆体
用語「金属酸化物」は、本明細書で用いる際、少なくとも1つのM−O−M結合を含有する任意の化合物と定義される。「M」は遷移金属である。金属酸化物はM−O−M結合のみのものが存在することができる、または、代替として、M−O−M結合の幾らかを他の基に変換することができると考えられる。有機ポリマーの選択に依存して、金属酸化物が有機ポリマーと共有または非共有結合(例えば、静電気的、双極子−双極子、水素結合)を形成することができるように、M−O−M結合の幾らかを反応性の官能基に変換することは可能である。例えば、M−O−M結合は、酸と反応して相当する金属水酸化物M−OH(ここで、ヒドロキシル基は有機ポリマーと相互作用することができる)を生み出すことができる。金属酸化物の選択は、有機ポリマーとの相溶性、標的細胞との相溶性、および金属酸化物の加工性を含むが、それらに限定されない多数の要因に依存して変わり得る。
【0019】
一態様では、金属酸化物は遷移金属酸化物である。遷移金属酸化物の例には、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、五酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化鉛、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物は混合金属酸化物(例えば、NiFe2O4)であり得ることも考えられる。別の態様では、金属酸化物はアルミニウムの酸化物である。
【0020】
用語「金属酸化物」はまたケイ素化合物を含む。ケイ素化合物の例には、シリカ、シリコーン、およびシルセスキオキサンが挙げられるが、それらに限定されない。一態様では、ケイ素化合物はシリカを含む。ある種の態様では、シリカは非晶質である。
【0021】
一態様では、ケイ素化合物はシリコーン化合物を含む。ポリオルガノシロキサンとしても知られる、シリコーンは、2つの有機基が鎖中の各ケイ素原子に結合した線状の繰り返しケイ素−酸素主鎖を持った合成ポリマーである。有機基は、シリカに見いだされる3次元網状構造の形成を防ぎ、ポリマーの物理的および化学的性質を変性させることができる。ある種の有機基は、これらのケイ素−酸素主鎖の2つ以上を連結するために使用することができ、この架橋の性質および程度は、多種多様な製品が製造されることを可能にする。シリコーンは、所望の性質を生じさせるためにナノファイバー形成後に変性させることができる。性質には、気孔率、湿潤性、化学、ナノファイバー直径、表面積および弾性率が含まれ、それらは、組成、粘度、分子量、溶媒および後変性などの実験変数によって制御することができる。シリコーン化合物上に存在する基に依存して、シリコーンはモノマー、オリゴマー、またはポリマーとして存在することができる。一態様では、シリコーンは、アルキルシリコーン(例えば、メチルシリコーン)またはアリールシリコーン(例えば、フェニルシリコーン)を含む。別の態様では、ケイ素化合物は、例えば、シリコーン−ポリアミドまたはシリコーン−ポリウレタンなどのシリコーン−ポリマーを含む。シリコーン−ポリマーのその教示について参照により援用される、米国特許第6,800,713号明細書に開示されているシリコーンポリマーおよびそれの製造方法を、本明細書で用いることができる。
【0022】
別の態様では、ケイ素化合物はシルセスキオキサン化合物を含む。シルセスキオキサンは、RSiO3(ここで、RはSi−C結合によってシリカに結合した有機基であり、そして酸素原子は他のケイ素原子と結合して3次元構造を形成する)の一般式を有するシリケート材料である。有機基の例には、アルキル(例えば、メチル)およびアリール(例えば、フェニル)基が挙げられる。有機基は、湿潤性、弾性率をはじめとする多くの物理的性質、および外部表面への化学結合において機能的な違いを提供することができる。POSS(商標)(ポリ8面体オルガノシリセスキオキサン)分子は、ケージ様のシルセスキオキサンである。一態様では、シルセスキオキサン化合物は、疎水性シルセスキオキサン(例えば、メチル、フェニル、エチルおよびプロピル・シルセスキオキサンなど)、親水性シルセスキオキサン(例えば、2−アミノプロピルシラン・シルセスキオキサン)、または架橋性シルセスキオキサン(例えば、メタクリルオキシプロピルもしくはグリシドキシプロピルシルセスキオキサン)を含む。
【0023】
金属酸化物の混合物を本明細書で使用することができると考えられる。例えば、シリカ、シリコーン、シルセスキオキサン化合物の任意の組合せを、金属酸化物成分として使用することができる。
【0024】
金属酸化物前駆体を、ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用することができる。金属酸化物前駆体は、本明細書に定義されるとき、金属酸化物に容易に変換することができる任意の化合物である。一態様では、金属酸化物前駆体は金属塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属エステル、金属窒化物、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、シルセスキオキサン、シリコーン、シリカ、またはそれらの組合せを含む。別の態様では、金属酸化物前駆体は、ニオブ化合物、タンタル化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、セリウム化合物、カルシウム化合物、カドミウム化合物、エルビウム化合物、セレン化合物、テルル化合物、ガリウム化合物、ヒ素化合物、ゲルマニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、インジウム化合物、ルテニウム化合物、レニウム化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0025】
b.有機ポリマー
有機ポリマーの選択は、使用される金属酸化物および得られるナノファイバーまたはナノフィルムの所望の性質に依存して変わり得る。ある種の態様では、有機ポリマーはナノファイバーの収縮を防ぐことができる。例えば、SiO2を用いると、シリカ・ナノファイバーは有機ポリマーの不存在下で単独で収縮し得る。ここで、ポリマーが構造的完全性を提供する。必ずしも必要とされないが、有機ポリマーは一般に室温で固体である。有機ポリマーの選択はまた、金属酸化物または金属酸化物前駆体の溶解性に依存して変わるであろう。予期できるように、金属酸化物の溶解性は変わり得るが、当業者は、金属酸化物を溶解させるために使用される溶媒と相溶性である有機ポリマーを選択することができる。従って、水溶性および水不溶性ポリマーを使用することが可能である。
【0026】
有機ポリマーに関して考慮すべき他の要因は、ポリマーの分子量である。ある特定の分子量ポリマーを、ある特定のナノファイバー直径を生じさせるために使用することができる。例えば、0.35×106MWポリスチレンは、2〜5μmナノファイバーを製造するために使用することができ、1×106MWポリスチレンは、0.8μm〜2μm直径ナノファイバーを製造するために使用することができ、そして2×106MWポリスチレンは、300nm直径ナノファイバーを製造するために使用することができる。ポリマーの分子量はまた、ポリマーが所与の溶媒系で有する溶解度、溶液粘度、および表面張力にも影響を及ぼし得る。溶液粘度が大きすぎる場合、ナノファイバーのランダム配置の形成をもたらさないので、溶液粘度は、ナノファイバー形成に関して重要な要因である。逆に、金属酸化物および有機ポリマーの溶液が十分に粘稠ではない場合、「ビーズ化した」ナノファイバーまたは小滴が形成される。
【0027】
あるいはまた、1種以上のポリマー前駆体を、ポリマーをその場で製造するために使用することができる。ポリマー前駆体は、重合を受けることができる任意の化合物である。ポリマー前駆体上に存在する官能基に依存して、前駆体は、多数の異なるメカニズムによって重合を受けることができる。例えば、ポリマー前駆体は、ポリアミンまたはポリオール(例えば、それぞれ、ジアミンまたはジオール)と反応してその場でポリマーを生成することができる、ポリイソシアネートであることができる。ポリマー前駆体はまた、ポリエステル、ポリアミド、およびポリカーボネートをはじめとする縮合ポリマーを製造するために使用される他の材料を含むこともできる。2つの成分が互いに反応してもしなくてもよい、ポリマーおよびポリマー前駆体を組み合わせて使用し得ることも考えられる。一態様では、ポリマー前駆体は、電気的処理(エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング)中に重合してポリマーをその場で形成することができる。
【0028】
他の態様では、有機ポリマーは、金属酸化物と相互作用することができる1つ以上の官能基を含む。官能基の例には、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシルなどが挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物と有機ポリマー上に存在する官能基とに依存して、金属酸化物と有機ポリマーとの間の相互作用は、共有または非共有結合の形成をもたらすことができる。
【0029】
一態様では、有機ポリマーは、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNA)、多糖類、ポリアミド、ポリビニルアルキルエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリメタクリレート、フェノール系化合物、エポキシ化合物、ウレタン、スチレンポリマー(例えば、クロロスチレンの)、無水マレイン酸類、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ペプチド、セルロースポリマー、ヒドロゲル、ポリリジン、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、アルギネート、ポリカプロラクトン、ポリオルガノシルセスキオキサン、アクリルアミド、ポリスルホネート、ポリケトン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、ブロックコポリマー、ポリビニルピロリジン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、またはそれらの組合せを含む。
【0030】
II.ナノファイバーおよびナノフィルムの製造
用語「ナノファイバー」および「ナノフィルム」は、それぞれ、10μm以下の、直径または厚さを有する材料と定義される。一態様では、ナノファイバーは、直径サイズが10nm〜500nmの範囲であることができる。別の態様では、ナノフィルムは1nm〜500nmの厚さを有する。
【0031】
ナノファイバーおよびナノフィルムは、当該技術で公知の技法を用いて二次加工することができる。本明細書で製造されるナノファイバーおよびナノフィルムは、1種以上の金属酸化物、1種以上のポリマー、またはハイブリッドと呼ばれる、1種以上の金属酸化物と1種以上のポリマーとの組合せからなることができる。一態様では、金属酸化物前駆体と有機ポリマーとからなるブレンド物を、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用することができる。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために、(1)金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せと、(2)有機ポリマー、少なくとも1種のポリマー前駆体、またはそれらの組合せとを含む組成物を、それぞれ、エレクトロスピンまたはエレクトロスプレーする工程を含む方法によって製造される。
【0032】
一態様では、ナノファイバーは電気的処理によって製造することができる。電気的処理には、エレクトロスピニング、エレクトロスプレーイング、およびナノファイバーを製造するための当該技術で公知の他の方法が含まれる。本発明の実施態様では、金属酸化物、金属酸化物前駆体、有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せを含有する溶液をエレクトロスピンしてナノファイバーを形成することができる。エレクトロスピニングは、ナノファイバーを製造するための当該技術で公知の技法である。別の態様では、当該技術で公知のエレクトロスプレー技法は、ナノフィルムを製造するために用いることができる。エレクトロスピレーイング技法は、基材表面(例えば、単一粒子)上に極めて薄いフィルムを製造するために用いることができる。当業者は、エレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイング技法を用いるためにプロセス・パラメーター(例えば、出発原料の濃度、電圧など)を変えてファイバーおよびフィルムを製造することができる。
【0033】
ナノファイバーまたはナノフィルムを形成する前に、金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せと有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せとが1種以上の溶媒に溶解させられる。また、ファイバー−またはフィルム−形成の前に金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せが一溶液に溶解させられ、そして有機ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せが別の溶液に溶解させられることも考えられる。有機ポリマーおよび/またはポリマー前駆体の量に対して使用される金属酸化物、金属酸化物前駆体、またはそれらの組合せの量は、溶媒系への金属酸化物または金属酸化物前駆体の溶解性に依存して変わり得る。
【0034】
一態様では、
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスピンする工程を含むナノファイバーを製造するための溶液であって、
金属酸化物前駆体が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である溶液が本明細書に記載される。
【0035】
別の態様では、
(c)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(d)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスピンする工程を含むナノファイバーの製造方法であって、
金属酸化物前駆体が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0036】
別の態様では、
(a)(a)金属酸化物前駆体、
(b)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(c)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムを製造するための溶液であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である溶液が本明細書に記載される。
【0037】
別の態様では、
(b)(d)金属酸化物前駆体、
(e)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(f)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムを製造方法であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0038】
さらなる態様では、
(a)(i)金属酸化物前駆体、
(ii)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(iii)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムの製造方法であって、
フィルム形成材料が第1溶媒、第2溶媒、または第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、そして第1溶媒と第2溶媒とが少なくとも2相系を生成するために非混和性である方法が本明細書に記載される。
【0039】
これらの態様では、少なくとも2種の溶媒が選択されて、最小でも2つの相系が溶媒の混合時に生成されるようにする。用語「非混和性」は、互いに完全に不溶性であるかまたは互いに多くとも部分的に可溶性であるが2つの明確な溶媒相を形成する、少なくとも2種の溶媒を含む。非混和性の第1および第2溶媒によって生成される2相系は、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング後のナノファイバーまたはナノフィルムの得られたモルフォロジーに関与する。これは、以下の実施例で実証される。THFからなる第1溶媒はポリマーを含有し、DMSOからなる第2溶媒は金属酸化物前駆体を含有する。2種の溶液を混合すると、THFとDMSOとが互いに非混和性であるので2相系が生成される。従って、ファイバー−またはフィルム形成中に、ポリマーを有するTHF相は、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング中にTHFと混合されるDMSOの存在のために「膨潤した」状態になる。THFの沸点はDMSOのそれより大幅に低い。従って、THFが最初に蒸発し、金属酸化物/金属酸化物前駆体と共に比較的多量のDMSOがポリマーの全体にわたって分散される。DMSOの蒸発時に、細孔がポリマー中に生成され、金属酸化物がポリマー中に置き去りにされる。
【0040】
上の例で実証されるように、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジー(例えば、気孔率の程度)は、出発原料、第1および第2溶媒、ならびに用いられる出発原料および第1/第2溶媒の相対量の選択に依存して変わり得る。別の考慮事項は、特定の溶媒に可溶性である出発原料の選択である。一態様では、金属酸化物前駆体は第1溶媒に可溶性であり、ポリマーは第2溶媒に可溶性であり、ここで、第1溶媒は第2溶媒より高い沸点を有する。別の態様では、金属酸化物前駆体は第1溶媒に可溶性であり、ポリマーは第2溶媒に可溶性であり、ここで、第1溶媒は第2溶媒より低い沸点を有する。この態様では、より小さい細孔サイズが一般に生成され得る。従って、特定の出発原料および第1/第2溶媒を選択することによって、製造されるナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを制御することが可能である。細孔サイズおよび細孔の数もまた、本明細書に記載される技法を用いて変えることができる。一態様では、本明細書に記載される方法は、全ファイバーまたはフィルムの全体にわたって高度に多孔質であるナノファイバーおよびナノフィルムを生成する。ファイバーはまた一様な直径を有し、ビーズ化されず、それは、先行技術技法がナノファイバーを製造するために用いられるときには当てはまらない。
【0041】
金属酸化物、金属酸化物前駆体、ポリマー、およびポリマー前駆体の第1および/または第2溶媒への溶解性は、選択される材料および溶媒に依存して変わり得る。従って、金属酸化物、金属酸化物前駆体、ポリマー、およびポリマー前駆体の1つ以上は第1溶媒および/または第2溶媒に可溶性であり得ると考えられる。異なる成分に関して用語「可溶性」は、完全に可溶性からほんのわずかな量の不溶性材料が存在する状態の極めて高い溶解性までの範囲である。溶液が針の閉塞および一貫性のないスプレーパターンを回避することが可能であるほど均一であることは、エレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイング技法において望ましい。
【0042】
最初の問題として、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される出発原料は、所望の最終製品に基づいて選択される。いったんナノファイバーまたはナノフィルムの組成物が所望のモルフォロジーと見なされたら、第1溶媒および第2溶媒が選択される。第1および第2溶媒の選択は、以下でより詳細に議論される。
【0043】
ポリマーがナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される場合、ポリマーの分子量および粘度、ポリマー溶液の濃度、ならびにエレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーイングに用いられるシリンジ針の直径が考慮されるべきである。ポリマーの分子量を上げると、より小さい直径のナノファイバーが生成される。ポリマーの分子量を上げることによって、ポリマーの粘度は増大する。ポリマー粘度が増大すると共に、より少量のポリマーがナノファイバーまたはナノフィルム形成のために必要とされ、それはより薄いナノファイバーの形成をもたらす。分子量がより低い場合、粘度はより低く、より多くのポリマーがナノファイバーまたはナノフィルム形成のために必要とされる。これは、より大きいナノファイバーまたはナノフィルムの製造をもたらす。例えば、350,000の分子量を有するポリスチレンは、100万または200万の分子量のポリスチレンから製造されたナノファイバーと比較されたときに、より大きい直径のナノファイバーが生成される。ナノフィルムがエレクトロスプレーイングによって製造される場合、ポリマー濃度および/または粘度を下げることができる。一態様では、使用されるポリマーおよび溶媒の量は、500cps〜5,000cpsの粘度を生じさせるのに十分な量である。別の態様では、ポリマーの分子量は20,000〜3,000,000である。
【0044】
一態様では、ナノファイバーがポリマーと金属酸化物前駆体とから製造されるとき、エレクトロスピニング前の組成物中のポリマーの量は、組成物の0.1〜50重量%であり、エレクトロスピニング前の組成物中の金属酸化物前駆体の出発量は、組成物の0.1〜100重量%である。別の態様では、金属酸化物前駆体の量は、組成物の1〜40重量%、1〜30重量%、1〜20重量%、5〜20重量%、または10〜20重量%である。別の態様では、ポリマーの量は、組成物の1〜40重量%、1〜30重量%、1〜20重量%、5〜20重量%、または10〜20重量%である。
【0045】
上で議論されたように、第1溶媒と第2溶媒とは非混和性であり、それは2相系を生成する。ナノファイバーおよびナノフィルムを製造するために使用される出発原料は、第1および第2溶媒の選択に関して重要な因子である。ナノファイバーおよびナノフィルムのモルフォロジーに影響を及ぼし得る別の考慮事項は、第1および第2溶媒の沸点および蒸気圧である。溶媒は一般に、50℃〜200℃の範囲の沸点を有する。一態様では、第1溶媒と第2溶媒との間の沸点の差は、少なくとも10℃、少なくとも15℃、または少なくとも20℃である。溶媒の蒸気圧は、20℃で0.1〜170mmHgであることができる。別の態様では、第1溶媒と第2溶媒との間の蒸気圧の差は、20℃で少なくとも10mmHg、20℃で少なくとも20mmHg、20℃で少なくとも30mmHg、20℃で少なくとも40mmHg、または20℃で少なくとも50mmHgである。図29は、第1および第2溶媒を選択する際に有用なツールを提供する、本明細書で有用な幾つかの溶媒の沸点および蒸気圧を示すグラフである。
【0046】
第1および第2溶媒は、例えば、アルカン、アルキルアルコール、カルボン酸、またはホスホン酸などの様々な化合物から選択することができる。一態様では、第1および第2溶媒は、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチル−第三ブチルエーテル、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、2,2,4−トリメチルペンタン、水、ベンゼン、ブタノール、メチルエチルケトン、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ギ酸、酢酸、クエン酸、またはそれらの任意の組合せを含む。表1に溶媒のリスト(第1列)およびそれらが第1列のどの溶媒と非混和性であるかまたは混和性であるかについての説明が提供される。
【表1】
【0047】
ある種の態様では、ナノファイバーまたはナノフィルム形成中の湿度は、溶媒の蒸発速度および/または金属酸化物の反応速度を制御するために操作することができる。さらに、下で議論されるように、これらの条件はまた、ナノファイバーまたはナノフィルムのモルフォロジーを変える。一態様では、湿気は15%より大きい、30%より大きい、45%より大きい、または60%より大きい。別の態様では、湿気は20〜100%、30〜100%、40〜90%、または50〜90%である。
【0048】
ある種の態様では、2種の非混和性溶媒が2相系を生成するために使用されるとき、1つ以上の出発原料は、相分離を推進する、制御する、または維持することができる共溶媒をその場で生成することができる。例えば、金属酸化物前駆体アルミニウムブトキシド(Al(OBu)3)が水(例えば、制御されたやり方で存在する水蒸気)に曝される場合、ブタノールが生成される。ブタノールは、第1溶媒または第2溶媒と非混和性であってもよく、それは相分離を維持するのを助ける。ポリマーまたはポリマー前駆体などの他の成分は水蒸気と反応して相分離のための共溶媒を生み出し得ることも考えられる。共溶媒は、第1および第2溶媒のそれとは異なる。
【0049】
他の態様では、ファイバー−またはフィルム形成は、水蒸気に加えて1種以上の溶媒蒸気の存在下に行うことができる。この態様では、有機溶媒蒸気は、相分離だけでなく蒸発速度を変え得る。水蒸気と同様に、有機溶媒蒸気は、ナノファイバーまたはナノフィルムを製造するために使用される成分と反応して相分離をさらに推進するおよび/または制御する共溶媒を生成することができる。有機溶媒蒸気は、上記の第1および第2溶媒のために使用される溶媒のいずれかに由来することができる。有機溶媒蒸気の例には、ベンゼン、アルコール、DMF、DMSO、THFまたはトルエンが挙げられるが、それらに限定されない。水蒸気と有機溶媒蒸気との組合せも同様に使用できることも考えられる。別の態様では、ファイバー−またはフィルム形成は、水蒸気と有機溶媒蒸気との組合せの存在下に行うことができる。
【0050】
ナノファイバー−またはナノフィルム形成中の温度もまた、ファイバーまたはフィルムのモルフォロジーを制御するときには考慮事項である。上で議論されたように、ナノファイバー−またはフィルム−形成中の溶媒の蒸発速度は、表面モルフォロジーに影響を及ぼし得る。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムが製造される温度は、50°〜90°F(10℃〜約32℃)、60°〜90°F(約16℃〜約32℃)、65°〜80°F(約18℃〜約27℃)、または69°〜80°F(約21℃〜約27℃)である。
【0051】
他の処理考慮事項には、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング前の溶液のpHが含まれる。さらに、条件は、ナノファイバーまたはナノフィルムが特定範囲の表面電荷を有するように調整することができる。例えば、細胞、組織、または生物活性分子がナノファイバー上に固定化されるべきであるとき、固定化効率を最大にするために電荷を修正することは有利である。最後に、界面活性剤および他の構造指向剤などの他の成分を、フィイバー−またはフィルム形成前に溶液中へ組み込むことができる。
【0052】
ナノファイバーまたはナノフィルムが金属酸化物とポリマーとからなる場合には、ナノファイバーまたはナノフィルム中に存在する金属酸化物および有機ポリマーの量は変わり得る。一態様では、金属酸化物の量は、ナノファイバーの0.5〜75重量%、0.5〜50重量%、または15〜46重量%であり、有機ポリマーの量は、ナノファイバーの25〜99.5重量%、50〜99.5重量%、または54〜85重量%である。一態様では、金属酸化物がシリカであるとき、ナノファイバーの40〜59重量%がシリカである。別の態様では、ナノファイバーの長さ/ナノファイバーの直径の比は5より大きい。
【0053】
本明細書で製造されるナノファイバーおよびナノフィルムは、様々な異なる材料からなることができる。一態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ポリスチレンと酸化ニオブ、酸化タンタル、二酸化チタン(チタニア)、またはそれらの組合せとを含む。別の態様では、ナノファイバーまたはナノフィルムは、ポリビニルアルコールおよびシリカ、ポリスチレンおよびアルミナ、ポリビニルピロリドン(PVP)およびアルミナ、PVPおよびチタニア、シリカおよびアルミナと共にポリスチレン、アルミナおよびチタニアと共にポリスチレン、ポリスチレンおよび酸化セリウム、酸化セリウムと共にPVA、酸化セリウムと共にポリエチレンオキシド(PEO)、またはアルミナおよびチタニアと共にセルロースポリマーを含む。
【0054】
一態様では、少なくとも1種の金属酸化物と少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、金属酸化物がシリカではないナノファイバーが本明細書に記載される。別の態様では、シリカと少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、有機ポリマーがポリビニルアルコールまたはそれのエステルではないナノファイバーが本明細書に記載される。さらなる態様では、少なくとも1種のシリコーン化合物と少なくとも1種の有機ポリマーとのブレンド物を含むナノファイバーであって、有機ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−コ−グリコール酸、またはそれらの塩もしくはエステルではないナノファイバーが本明細書に記載される。別の態様では、少なくとも1種のシルセスキオキサン化合物を含むナノファイバーが本明細書に記載される。
【0055】
ナノファイバーまたはナノフィルムがポリマーを含有する場合、ナノフィルムまたはナノファイバーを場合により、有機ポリマーを除去するためにその後の熱処理工程にかけることができる。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムを高温でカ焼して、金属酸化物のみからなるナノファイバーまたはナノフィルムを製造することができる。
【0056】
III.細胞/組織固定化のための基材
本明細書に記載されるナノファイバーおよびナノフィルムを使用する細胞、組織、および/または生物活性分子を固定化するための基材が本明細書に記載される。細胞または組織、および/または生物活性分子を固定化すると、多数の用途が考えられる。これらの用途は以下に記載される。
【0057】
一態様では、
(a)ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムと、
(b)不織のまたは織られた多孔質基材を含むベース基材と
を含む細胞または組織を固定化するための基材であって、ベース基材が第1外面を含み、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムがベース基材の第1外面に隣接している基材が本明細書に記載される。
【0058】
基材の各成分は以下に説明される。
【0059】
a.ナノファイバーの網状構造
本明細書に記載されるナノファイバーは、ナノファイバー網状構造を生成するために使用することができる。用語「網状構造」は、本明細書で用いる際、ナノファイバー間の間隔が成長および培養安定性を促進するために選択された状態で相互連結網を形成するように制御されている、空間におけるナノファイバーのランダム分布または配向分布を意味する。網状構造は、網状構造を構成するナノファイバー間に小さい空間を有し、網状構造中に細孔またはチャネルを形成している。細孔またはチャネルのサイズは、固定化されるべき細胞、組織、または生物活性分子に依存して変わり得る。一態様では、ナノファイバー網状構造の細孔サイズは0.2マイクロメートルより大きい。別の態様では、細孔サイズは1マイクロメートル未満である。さらなる態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートル〜300マイクロメートルである。網状構造は、ナノファイバーの単層、連続ナノファイバーによって形成された単層、ナノファイバーの多層、連続ナノファイバーによって形成された多層、またはマットを含み得る。網状構造は不織布または網であってもよい。網状構造の物理的性質には、テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、ソリディティ、弾性、ジオメトリー、相互連結性、表面対容量比、ナノファイバー直径、ナノファイバー溶解性/不溶性、親水性/疎水性、フィブリル密度、およびナノファイバー配向が含まれるが、それらに限定されない。
【0060】
ナノファイバーサイズ、ナノファイバー直径、ナノファイバー間隔、マトリックス密度、ナノファイバー・テクスチャーおよび弾性をはじめとする、ナノファイバーの物理的性質は、細胞における細胞骨格網状構造および細胞外マトリックスタンパク質における細胞シグナル伝達モチーフの暴露を体系化するための重要な考慮事項であり得る。所望のパラメーターへ設計することができるナノファイバー網状構造の物理的性質には、テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、ソリディティ、弾性、ジオメトリー、相互連結性、表面対容量比、ナノファイバーサイズ、ナノファイバー直径、ナノファイバー溶解性/不溶性、親水性/疎水性、およびフィブリル密度が含まれるが、それらに限定されない。
【0061】
ナノファイバー網状構造の物理的性質の1つ以上は、細胞/組織固定化のための具体的に定義される環境を生じさせるために変えるおよび/または変性させることができる。例えば、ナノファイバー網状構造の気孔率は、イオン、代謝産物、および/または生物活性分子の拡散を高めるためにおよび/または細胞にナノファイバー網状構造を透過させておよび浸透させて細胞とナノファイバー網状構造との間の多点結合を促進する環境中で成長させるように設計することができる。ナノファイバー網状構造の相互連結性は、細胞−細胞接触を容易にするように設計することができる。ナノファイバー網状構造の弾性は、ナノファイバーが二次加工されるポリマー溶液に生物活性分子を加えることによって増大させるまたは低下させることができる。中空であるまたはシースと共にコアを有するナノファイバーを製造することもまた可能である。
【0062】
ナノファイバー網状構造のテクスチャーおよびしわの多さは、細胞の結合を促進するように設計することができる。例えば、均一なまたは不均一なナノファイバーを、細胞の成長または分化活性を最適化するために選択することができる。一態様では、ナノファイバー網状構造は、異なる直径を有する多数のナノファイバーおよび/または異なるポリマーから二次加工された多数のナノファイバーを含む。他の態様では、ナノファイバー網状構造のナノファイバーの溶解性または不溶性は、ナノファイバー網状構造中へ組み込むことができる生物活性分子の放出を制御するように設計することができる。例えば、生物活性分子の放出の速度は、ナノファイバー網状構造のナノファイバーの生物分解または生物溶解の速度によって決定される。他の態様では、ナノファイバー網状構造の疎水性および親水性は、特定の細胞間隔を促進するように設計することができる。
【0063】
個々の単層ナノファイバー網状構造の層化はチャネルを形成することができ、チャネルは、細胞がナノファイバー網状構造を透過し、そして細胞とナノファイバー網状構造との間の多点結合を促進する環境中で成長することを可能にするだけでなく、イオン、代謝産物、タンパク質、および/または生物活性分子の拡散を可能にする。
【0064】
ナノファイバーの網状構造は、インビボで見いだされるものに類似の3次元環境を生じさせることができる。特に、インビボ細胞成長に匹敵する効率的な細胞培養を達成するために、材料が、全体材料を通って細胞の浸透を可能にすることが望ましい。3次元環境の一機能は、細胞−マトリックスおよび細胞−細胞コミュニケーションにより環境の検知および環境への応答を容易にすることによって移行、増殖、分化、表現型の維持およびアポトーシスなどの細胞挙動を導くことである。それ故、適切な気孔率、大きい表面積、および十分な相互連結細孔を有する材料が細胞を培養するために望ましい。本明細書で製造されるナノファイバーはこれらの特徴を有する。
【0065】
b.ベース基材
用語「ベース基材」は、本明細書で用いる際、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムを堆積させることができる任意の表面を意味する。ベース基材は、堆積されるナノファイバーの網状構造またはナノフィルムのために構造的支持を提供する任意の表面であることができる。一態様では、ベース基材はガラス、セルロース、またはプラスチックを含むことができる。別の態様では、ベース基材は、フィルム、織マット、不織マット、または物品であることができる。
【0066】
ベース基材は多孔質または無孔性であることができる。ベース基材の気孔率は、基材の用途に依存して変わり得る。例えば、基材が細胞を固定化するために使用されるとき、ベース基材の気孔率は細胞透過によって決定することができる。細胞は、多孔質基材を透過することができるが、無孔性基材を透過することができない。ナノファイバー網状構造またはナノフィルムの気孔率に依存して、ベース基材は、直径がナノファイバー網状構造またはナノフィルム中に存在する細孔と比べてより小さいまたはより大きい細孔を有することができる。細胞はベース基材および/またはナノファイバーの網状構造もしくはナノフィルムを透過し、そしてそれによって保持され得ると考えられる。ベース基材中の細孔のサイズは、固定化されるべき細胞または組織に依存して変わり得る。一態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートルより大きい。別の態様では、細孔サイズは1マイクロメートル未満である。さらなる態様では、細孔サイズは0.2マイクロメートル〜300マイクロメートルである。
【0067】
ナノファイバーまたはナノフィルムの製造について上に記載されたポリマーのいずれもベース基材を製造するために使用することができる。かかるポリマーの例には、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリアルキレンオキシド、アルキレンオキシドのコポリマーおよびブロックコポリマー、ポリビニルカルバゾール、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマーならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらの一般クラス内に入る好ましい材料には、ポリエチレン、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ(塩化ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート(および他の(メタ)アクリル樹脂)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABAタイプのブロックコポリマーをはじめとする)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、架橋および非架橋形態での様々な程度(87%〜99.5%)の加水分解のポリビニルアルコールが含まれる。ベース基材は異なるポリマーの層からなるかまたは2種以上のポリマーのブレンド物からなることができると考えられる。上記のポリマーのいずれもベース基材を製造するために織または不織であることができる。例えば、ベース基材は、マットへ織られたナイロンナノファイバーからなることができる。
【0068】
c.生物活性分子
ナノファイバー網状構造、ナノフィルム、および/またはベース基材は、1つ以上の生物活性分子を含むことができる。一態様では、ナノファイバーの網状構造、ナノフィルム、またはベース基材は、細胞/組織成長を高めるための1種以上の化合物を含む。別の態様では、ナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材は、ナノファイバーまたは基材への細胞または組織の結合を促進する化合物をさらに含む。
【0069】
生物活性分子には、ヒトまたは獣医治療薬、栄養補助食品、ビタミン、塩、電解質、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、多糖類、核酸、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、成長因子、分化因子、ホルモン、神経伝達物質、フェロモン、ケイロン、プロスタグランジン、免疫グロブリン、モノカインおよび他のサイトカイン、保湿剤、ミネラル、電気的におよび磁気的に反応性の物質、感光性物質、酸化防止剤、細胞エネルギー源として代謝されるかもしれない分子、抗原、ならびに細胞応答または生理学的応答を引き起こすことができる任意の分子が含まれる。これらの分子の作動薬または拮抗薬だけでなく、分子の任意の組合せを使用することができる。グリコアミノグリカンには、糖タンパク質、プロテオグリカン、およびヒアルロナンが含まれる。多糖類には、セルロース、デンプン、アルギン酸、キトサン、またはヒアルロナンが含まれる。サイトカインには、カージオトロフィン、間質細胞由来因子、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、メラノーマ成長促進活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質1アルファ(MIP−1アルファ)、2,3アルファ,3ベータ,4および5、インターロイキン(IL)1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TNF−アルファ、およびTNF−ベータが含まれるが、それらに限定されない。本発明に有用な免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質には、任意のサイズおよび複雑さのかかる分子の任意のタイプならびにかかる分子の組合せが含まれ得る。例には、構造タンパク質、酵素、およびペプチドホルモンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
用語生物活性分子にはまた、繊維状タンパク質、接着タンパク質、接着性化合物、脱接着性化合物、およびターゲッティング化合物も含まれる。繊維状タンパク質には、コラーゲンおよびエラスチンが含まれる。接着/脱接着化合物には、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが含まれる。接着性タンパク質には、アクチン、フィブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、セレクチン、細胞内接着分子1、2、および3、ならびにα5β1、α6β1、α7β1、α4β2、α2β3、α6β4などのインテグリンを含むがそれらに限定されない細胞−マトリックス接着受容体が含まれる。
【0071】
用語生物活性分子にはまた、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、RGDペプチド、腫瘍壊死因子アルファおよびベータ、エンドスタチン、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、骨形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質2および7、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファA、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロン1アルファ、ならびにインターロイキン2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17および18が含まれる。
【0072】
用語「成長因子」は、本明細書で用いる際、細胞または組織の増殖を促進する生物活性分子を意味する。本発明に有用な成長因子には、形質転換成長因子−アルファ(TGF−アルファ)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)、AA、ABおよびBBアイソフォームをはじめとする血小板由来成長因子(PDGF)、FGF酸性アイソフォーム1および2、FGF塩基性フォーム2.ならびにFGF4,8、9および10をはじめとする線維芽細胞成長因子(FGF)、NGF2.5s、NGF7.0sおよびベータNGFならびにニューロトロフィンをはじめとする神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子、軟骨由来因子、骨成長因子(BGF)、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子(IGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、EG−VEGF、VEGF関連タンパク質、Bv8、VEGF−E、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インスリン様成長因子(IGF)IおよびII、肝細胞成長因子、グリア神経栄養成長因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチン生成細胞成長因子(KGF)、TGFアルファ、ベータ、ベータ1、ベータ2、ベータ3をはじめとする、形質転換成長因子(TGF)、骨格成長因子、骨基質由来成長因子、および骨由来成長因子ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。幾つかの成長因子はまた、細胞または組織の分化を促進することができる。例えば、TGFは、細胞または組織の成長および/または分化を促進することができる。幾つかの好ましい成長因子には、VEGF、NGF、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、FGFb、FGFa、およびBGFが含まれる。
【0073】
用語「分化因子」は、本明細書で用いる際、細胞または組織の分化を促進する生物活性分子を意味する。この用語には、ニューロトロフィン、コロニー刺激因子(CSF)、または形質転換成長因子が含まれるが、それらに限定されない。CSFには、顆粒球−CSF、マクロファージ−CSF、顆粒球−マクロファージ−CSF、エリスロポエチン、およびIL−3が含まれる。幾つかの分化因子はまた、細胞または組織の成長を促進するかもしれない。例えば、TGFおよびIL−3は、細胞の分化および/または成長を促進することができる。
【0074】
用語「接着性化合物」は、本明細書で用いる際、接着性化合物を含むナノファイバー表面への細胞または組織の結合を促進する生物活性分子を意味する。接着性化合物の例には、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびラミニンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
用語「脱接着性化合物」は、本明細書で用いる際、脱接着性化合物を含むナノファイバーからの細胞または組織の脱離を促進する生物活性分子を意味する。脱接着性化合物の例には、トロンボスポンジンおよびテネイシンCが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
用語「ターゲッティング化合物」は、本明細書で用いる際、ターゲッティング化合物を含むナノファイバーへの細胞もしくは組織の動員および/または結合を誘発するシグナル伝達分子として機能する生物活性分子を意味する。ターゲッティング化合物およびそれらの同種受容体の例には、フィブロネクチンおよびインテグリンに由来するRGDペプチドをはじめとする結合ペプチド、EGFおよびEGF受容体をはじめとする成長因子、ならびにインスリンおよびインスリン受容体をはじめとするホルモンが挙げられる。
【0077】
ナノファイバー網状構造またはベース基材中への生物活性分子の組み込みは、様々な技法によって達成することができる。例えば、ナノファイバーまたはナノフィルムの形成中に、1つ以上の生物活性分子は、それぞれ、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング中に、生物活性分子がファイバーまたはフィルムの全体にわたって組み込まれるように第1および/または第2溶液中に存在することができる。別の態様では、生物活性分子は、当該技術で公知の技法(例えば、スプレーイング、浸漬など)を用いてナノファイバー、ナノフィルムまたはベース基材の表面に塗布することができる。生物活性分子およびナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材を製造するために使用される材料の選択に依存して。
【0078】
生物活性分子は、二次加工中にナノファイバー網状構造、ナノフィルム、またはベース基材中へ組み込むことができるか、または生物活性分子がナノファイバー網状構造、ナノフィルム、もしくはベース基材に共有結合でもしくは非共有結合で結合するように官能基を介して網状構造、ナノフィルム、もしくは基材の表面に結合させることができる。ある種の態様では、1つ以上の官能基をナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材の外面上に組み込むことができる。これらの官能化表面は、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、多糖類、アミノ酸、ヌクレオチド、核酸、ポリヌクレオチド、または他の生物活性分子を、ナノファイバーまたはベース基材の表面に結合させることができる。一態様では、官能基は、プラズマ蒸着によってナノファイバーまたはベース基材の外面上に堆積させられる。プラズマ蒸着は、ナノファイバー、ナノフィルム、またはベース基材の表面で局部プラズマを生じさせる。処理表面は次に、反応チャンバーで、例えば、アリルアミンおよび/またはアリルアルコールなどの、ガス状分子と反応させられる。別の態様では、官能基は、それぞれ、エレクトロスピニングまたはエレクトロスプレーイング過程中にナノファイバーまたはナノフィルムの表面上に導入される。例えば、ドデシルアミン、ドデシルアルデヒド、ドデシルチオール、またはドデシルアルコールを、ポリマー溶液に加えることができる。ポリマー溶液は次に、ナノファイバーへエレクトロスピンされ、ここで、それぞれ、加えられたアミン、アルデヒド、スルフヒドリル、またはアルコール部分の一部がナノファイバーの外面上に露出される。
【0079】
d.細胞/組織固定化のための基材の製造
ナノファイバー網状構造またはナノフィルムを、当該技術で公知の技法を用いて、ベース基材上に堆積させることができる。一態様では、ナノファイバー網状構造を製造し、例えば、コロナ帯電および摩擦帯電などの帯電技法によって、ベース基材上に堆積させることができる。あるいはまた、ナノファイバー網状構造を、ナノファイバー網状構造がベース基材に隣接するようにベース基材上へエレクトロスピンすることができる。同様に、ナノフィルムを、ベース基材上にエレクトロスプレーすることができる。他の態様では、前もって形成されたナノファイバー網状構造を、接着剤を用いてベース基材に結合させることができる。
【0080】
用語「隣接する」は、本明細書で用いる際、ナノファイバー網状構造またはナノフィルムとベース基材の表面との間の密な接触を含む。用語「隣接する」はまた、ナノファイバー網状構造またはナノフィルムとベース基材との間に置かれた1つ以上の層を含む。例えば、接着タンパク質は、ナノファイバー網状構造をベース基材上に堆積させる前にベース基材の外面上に堆積させることができる。一態様では、細胞または組織は、ナノファイバー網状構造とベース基材との間に置かれない。上に記載されたように、エレクトロスピニングは、要望通りの異なる性質および配向のナノファイバーを製造するために用いることができる。一般に、禁止されるわけではないが、ベース基材の他の露出面は、他の露出面に隣接するいかなる構成要素も持たない。ベース基材上へのナノファイバーの堆積時に、ナノファイバーは、ベース基材上に一様な厚さで均一に分配される。
【0081】
2つ以上のナノファイバー網状構造またはナノフィルムをベース基材上に層化することができることも考えられる。例えば、特定の細胞または組織の細胞活性を促進する、異なるナノ−および/またはミクロ−環境は、物理的および/または化学的性質を選択した異なるナノファイバー網状構造を層化することによって構築することができる。物理的および/または化学的性質は、上に記載されたように個々のナノファイバー網状構造中へ設計することができる。個々のナノファイバー網状構造の層化はチャネルを形成することができ、チャネルは、細胞が基材を透過し、そして細胞とナノファイバー網状構造またはナノフィルムとの間の多点結合を促進する環境中で成長することを可能にするだけでなく、イオン、代謝産物、タンパク質、および/または生物活性分子の拡散を可能にする。
【0082】
IV.キット
別の態様では、ナノファイバーの網状構造またはナノフィルムとベース基材とを含むキットが本明細書に記載される。上に記載されたナノファイバー網状構造、ナノフィルム、およびベース基材のいずれも本明細書に使用することができる。一態様では、1つ以上の前もって製造されたナノファイバー網状構造を、個々にラップし、滅菌することができる。パッケージングから取り出した後、1つ以上のナノファイバー網状構造を、ベース基材上に手動でまたは機械でアセンブルすることができる。多数のナノファイバー網状構造の場合には、各ナノファイバー網状構造を、層ごとにベース基材に被着させて多層化アセンブリを形成することができる。ベース基材は、それがナノファイバー網状構造を受け入れるために造形されているような物品であることができる。
【0083】
V.用途
本明細書に記載される基材は、細胞または組織を固定化するために使用される。用語「固定化」は、本明細書で用いる際、細胞または組織を保持する基材の能力である。固定化は、細胞または組織がナノファイバー網状構造またはベース基材内の位置に固定されるように細胞または組織を完全に保持することから、細胞または組織がナノファイバー網状構造またはベース基材に自由に浸透する状況までに及ぶことができる。ナノファイバー網状構造、ナノフィルム、またはベース基材中への生物活性分子の組み込みは、基材への細胞または組織の固定化の程度を決定することができる。
【0084】
本明細書に記載される基材を、以下に記載される多数の用途に使用することができる。基材は、フィルター用途、医薬品用途、細胞培養、組織培養、および組織エンジニアリングを含むが、それらに限定されない、ナノファイバーを用いる多くの公知の用途に使用できると考えられる。1種以上の細胞タイプを基材上に堆積させることができると考えられる。細胞は、当該技術で公知の技法を用いて基材上に堆積させることができる。
【0085】
一態様では、(a)細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞付き基材を培養して組織の成長を促進する工程とを含む、複数の細胞を成長させるための方法が本明細書に記載される。
【0086】
別の態様では、(a)細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)このアセンブリを培養して細胞の分化を促進する工程とを含む、細胞の分化方法が本明細書に記載される。
【0087】
幹細胞、前駆細胞、分化細胞、および腫瘍細胞を含むが、それらに限定されない、多くのタイプの細胞を基材上に固定化することができる。幹細胞の例には、胚幹細胞、骨髄幹細胞および臍帯幹細胞が挙げられるが、それらに限定されない。様々な実施態様に使用される細胞の他の例には、骨芽細胞、筋芽細胞、神経芽細胞、線維芽細胞、グリア芽細胞、胚細胞、肝細胞、軟骨細胞、ケラチン生成細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、結合組織細胞、グリア細胞、上皮細胞、内皮細胞、ホルモン分泌細胞、免疫系の細胞、および神経細胞が挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
天然源から誘導された、遺伝子組み換えされた、または任意の他の方法によって生成された、本明細書に有用な細胞をインビトロで培養することができる。任意の天然源の原核または真核細胞を使用することができる。
【0089】
腫瘍細胞などの異型または異常細胞もまた本明細書に使用することができる。本明細書に記載される基材上で培養される腫瘍細胞は、薬剤治療の評価のために身体中の生来の腫瘍環境のより正確な発現量を提供することができる。本明細書に記載される基材上での腫瘍細胞の成長は、生物化学的経路と、腫瘍を特異的に標的にする薬剤の開発を可能にするインビボ様環境における、遺伝子発現、受容体発現、およびポリペプチド産生をはじめとする、腫瘍の活性とのキャラクタリゼーションを容易にすることができる。
【0090】
遺伝子組み換えされた細胞もまた本明細書で使用することができる。組み換えは、1つ以上の遺伝子を発現するように細胞をプログラムすること、1つ以上の遺伝子の発現を抑制すること、または両方を含む。遺伝子組み換えは、例えば、遺伝物質を細胞に加えるかもしくは細胞から除去すること、既存の遺伝物質を変えること、または両方を含むことができる。遺伝子を発現するために細胞がトランスフェクトされるかまたはさもなければ組み換えられる実施態様は、一時的にまたは永久にトランスフェクトされた遺伝子、または両方を用いることができる。遺伝子配列は、フルまたは部分長さ、クローン化されたまたは自然発生のものであってもよい。
【0091】
基材の選択される物理的および/または化学的性質を変えるおよび/または変性させることによって、基材は、特定の細胞または組織の細胞成長を促進するように設計することができる。テクスチャー、しわの多さ、接着力、気孔率、弾性、ソリディティ、ジオメトリー、およびフィブリル密度を含むが、それらに限定されない、基材の物理的性質および/または特性は、成長および分化をはじめとする、所望の細胞活性を促進するために変えるおよび/または変性させることができる。特異的なナノ−および/またはミクロ−環境を、基材内で設計することができる。例えば、基材の気孔率およびフィブリル密度は、細胞に基材を透過させ、そして3次元環境で成長させるために変えるおよび/または変性させることができる。本明細書に記載される生物活性分子のいずれも、細胞接着、成長および/または分化をはじめとする、所望の細胞活性を促進するために等方的にあるいは勾配として基材中へ設計することができる。かかる細胞がその上で成長する基材の、成長および分化因子をはじめとする物理的および/または化学的性質は、生来のインビボナノ−またはミクロ−環境を模倣するように設計することができる。
【0092】
デザインされたパターンを使って、2および3次元での細胞の空間体系化を得ることができる。表面化学の特定的なパターンを生み出すことによって、細胞挙動を物理的または化学的超微細構造内に限定することができ、それは、細胞成長および/増殖などの細胞活性を制御するために使用することができる。
【0093】
別の態様では、(a)組織の前駆体である細胞の親セットを、本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞付き基材を培養して組織の成長を促進する工程とを含む、組織を成長させるための方法が本明細書に記載される。成長できる細胞を本明細書に記載される基材上に堆積させ、そして組織成長を促進する条件下に培養させることができることも考えられる。上記の細胞のいずれかからの組織成長(すなわち、エンジニアリング)は、本明細書に記載される基材を使って考えられる。本明細書に記載される基材は、多くの異なる種類の前駆体細胞を支持することができ、基材は新しい組織の発育を導くことができる。組織の産生は、創傷治癒に多数の用途を有する。ナノファイバーおよびベース基材を製造するために使用される材料の選択に依存して、組織成長はインビボまたは生体外で行うことができる。
【0094】
ある種の場合には、基材から細胞または組織を取り外すことが望ましい。例えば、本明細書に記載される基材上に成長した幹細胞を採取することが望ましいであろう。細胞を取り外すための当該技術で公知の侵襲的な技術には、機械的かき取り、超音波処理、化学的/酵素的処理、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。他の技法は、pHもしくは温度の調節または結合した細胞を放出させるためのイオンの添加を含む。
【0095】
別の態様では、(a)既知の細胞株を本明細書に記載される基材上に堆積させる工程と、(b)堆積細胞を薬剤と接触させる工程と、(c)薬剤との接触時に堆積細胞によって生成される応答を確認する工程とを含む、既知の細胞株と薬剤との間の相互作用の測定方法が本明細書に記載される。
【0096】
既知の細胞株が本明細書に記載される基材上に固定化された状態で、薬剤が固定化された細胞と相互作用するときに幾つかの薬剤の活性をスクリーンすることが可能である。試験されるべき細胞および薬剤に依存して、細胞−薬剤相互作用は、様々な技法を用いて検出し、測定することができる。例えば、細胞は薬剤を代謝させて容易に検出できる代謝産物を産生するかもしれない。あるいはまた、薬剤は、タンパク質または他の生体分子を産生するように細胞を誘発することができる。本明細書に記載される基材は、細胞が生体外環境で細胞のインビボ性質をよりそっくり模倣するための環境を提供する。基材は、薬剤/細胞相互作用を分析するための高いスループットアプリケーションに使用することができる。高いスループットアプリケーションは、プレート当たり約1536ウェル以下の密度のマルチウェル組織培養チャンバーを利用する。このように、ウェル当たりの細胞集団の増加は、測定されるシグナルを増加させるのに役立つであろう。
【0097】
別の態様では、(a)溶液を本明細書に記載される基材と接触させる工程であって、化合物が基材上に固定化される工程と、(b)固定化された化合物を基材から取り除く工程とを含む、溶液中に存在する化合物の分離方法が本明細書に記載される。ナノファイバー網状構造および/またはベース基材は、溶液中の上記の生物活性分子のいずれも固定化するために変性させることができる。一般に、1つ以上の生物活性分子からなる溶液が基材と接触させられ、そのとき生物活性分子は基材上に固定化される。結合した生物活性分子は次に、溶媒で基材から放出させることができる。基材は、基材が生物活性分子と共有結合または非共有(例えば、イオン、静電気的双極子−双極子、ファンデルワールス(Van Der Waals)相互作用)結合を形成するように上記のように変性させることができる。別の態様では、細胞を精製することができる。例えば、基材上に固定化された単一の個々の細胞の電気的性質を測定することによって、それらの異なる固有の電気的性質によって細胞の集団を分離する/精製することが可能である。この応用は、大量の純幹細胞を採取することが望ましい幹細胞で特に興味のあるものであり得る。
【0098】
他の態様では、本明細書に記載されるナノファイバーおよびナノフィルムは、様々な異なる材料のための支持体として使用することができる。かかる材料には、触媒、金属もしくは有機の導電性材料、磁性材料、圧電材料、強誘電材料、誘電材料、放射性材料、リン光性材料、染料、界面活性剤、または希土類金属が含まれる。これらの成分の量は、意図される最終用途に依存して変わり、それは当業者によって容易に決定することができる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、開示される本主題に従った方法および結果を例示するために以下に記述される。これらの実施例は、本明細書に開示される主題の全ての態様を含めることを意図せず、むしろ代表的な方法および結果を例示することを意図する。これらの実施例は、当業者に明らかである本発明の同等物および変形を排除することを意図しない。
【0100】
数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするために努力されてきたが、多少の誤差および偏差は考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃単位であるかまたは周囲温度においてであり、圧力は大気圧またはその近傍においてである。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力ならび記載される方法から得られる製品純度および収率を最適化するために用いることができる他の反応範囲および条件の多数の変形および組合せが存在する。適度のおよび所定の実験のみが、かかるプロセス条件を最適化するために必要であろう。
【0101】
実施例1−ニオブ、タンタル、またはチタン/ポリスチレン・ナノファイバー
サンプル調製
サンプルを、純ポリスチレン(PS)または、ニオブエトキシド(カタログ#339202 シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))あるいはタンタルブトキシド(カタログ#383333 シグマ・アルドリッチ)と混合されたポリスチレンから調製した。ポリスチレン単独の場合には、PSを18〜20%の濃度範囲でテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。350,000〜2,000,000のポリスチレンの分子量範囲を用いて異なるナノファイバー直径を狙った。タンタルブトキシドまたはニオブエトキシド・ポリスチレンブレンド物の場合については、ポリスチレンを先ずTHFに溶解させ、無機酸化物をDMSOありまたはなしの氷酢酸に溶解させた。タンタルおよびニオブは15〜49%の濃度範囲にあった。
【0102】
エレクトロスピニング法
ナノファイバーを、ガラスカバースリップ、銀コーテッドガラス、またはポリ酢酸ビニルカバースリップのいずれかの上で紡糸した。電圧は5〜9kVであり、ナノファイバー−基材距離は5〜15cmで変わった。相対湿度は制御され、40〜70%で変わることができ、湿度の増加が表面積の増加をもたらす状態で、ナノファイバー表面テクスチャーに顕著な影響を及ぼした。エレクトロスピニング法の温度は68〜78°F(20℃〜約26℃)で変わった。2rpmでサイクル数は20〜250で変わってマット密度の変動を可能にした。
【0103】
細胞株
結合および増殖を研究するために使用された細胞株には、MRC5、HEPG2およびヒト間葉幹細胞(HMSC)が含まれた。結合、増殖および機能を研究するために使用された細胞株は、HEPG2肝細胞株(ATCC #HB−8065)であった。MRC5細胞は同様にATCC(#CCL−171)から入手されたが、ヒト間葉幹細胞はカムブレックス(Cambrex)(#PT2501)から入手された。全ての細胞培養は、カムブレックスによって提供される培地で成長させたHMSCを除いて、イソコベの修正ダルベッコ培地(Isocove’s Modified Dulbecco’s Medium)(IMDM)+10%ウシ胎仔血清(FBS)で行われた。IMDMはギブコ(Gibco)製のカタログ#12440−053であったが、ウシ胎仔血清はハイクロン(Hyclone)製であった。細胞を基材に加えるとき、インビトロゲン(Invitrogen)製の1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin)(カタログ#15140−122)を、汚染を防ぐために混合物に加えた。
【0104】
基材は常に、細胞の添加前に70%エタノールで、その次にIMDM+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシンで洗浄した。MTT細胞増殖アッセイ(ATCC、カタログ#30−1010K)またはセルタイター(CellTITER)96(登録商標)AQワンソリューション・セル増殖アッセイ(AQ One Solution Cell Proliferation Assay)(プロメガ(Promega)、カタログ#G3580)を用いて細胞結合および増殖について評価した。肝細胞タンパク質産生量は、ピアース・バイオテクノロジーズ(Pierce Biotechnologies)製のBCAアッセイ(製品#23227)を用いることによって測定した。バイオメダ(Biomeda)製のアルブミン産生アッセイ(カタログ#EU1057)またはアッセイプロ(AssayPro)(カタログ#EA3201−1)を利用して肝細胞アルブミン産生について評価した。
【0105】
結果
図1は、SEMによって明らかにされるナノファイバーのテクスチャーを示す。DMSOなしのニオビア/ポリスチレンは、DMSOありのニオビア/ポリスチレンまたはDMSOありのタンタラ/ポリスチレンと比較してより滑らかなテクスチャーを示す。
【0106】
図2は、SEM後方散乱画像(ボトム)だけでなく、ナノファイバー内部のナノファイバー・テクスチャーのSEM(トップ)示し、ここで、白点は重金属を示す。タンタラ/ポリスチレン・ナノファイバーは、DMSOありで紡糸した。DMSOの添加で起こる有機/無機の不均一混合は、ナノファイバーを変性させ、そして細胞培養を高めるための無機反応中心を提供するかもしれない。白矢印は無機相の領域を示す。
【0107】
図9は、SEMによって明らかにされるチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーのテクスチャーを示す。ナノファイバーは、THF/DMSOを用いて製造したが、このナノファイバーは、全ナノファイバーの全体にわたってだけでなく表面上でも多孔質である。
【0108】
図3は、増殖が、HEPG2細胞株およびHMSCの両方に関してエレクトロスパン基材について組織培養物処理ポリスチレン(TCT)より大きいかまたはそれに等しかったことを示す。この場合には、各基材タイプの2つの基材を試験した。100,000細胞を第1日目に播種した。増殖は、第5日目にATCC MTTアッセイを用いることによって試験した。図4では、HEPG2細胞増殖および全タンパク質産生量を、異なるエレクトロスパン基材についてTCTと比較した。全タンパク質産生量はBCAアッセイによって測定し、細胞増殖は第2日目に測定した。
【0109】
図5は、1mMのKCl中pH7.0でのゼータ電位によって測定される際の表面電荷の関数としてのタンパク質産生量を示す。図6は、基材に応じたアルブミン産生量を示す。この場合には、エレクトロスパン基材を6ウェルプレートに入れ、500,000HEPG2細胞を第1日目に播種した。第3日目に、培地を取り替えた。第5日目に、基材を取り除き、新ウェルに入れ、DPBSプラスCa+2プラスMg+2でカバーした。第6日目に、培地を取り除き、アルブミンについて評価した。細胞カウントに対して標準化する場合、プロメガ・セルタイター・アッセイを、アルブミンについて評価すると同時に行った。TCT、マトリゲル(Matrigel)(商標)または対照としての6ウェル・フォーマットで既に提供された他の基材を使用するとき、基材を取り除きそして新TCTプレートに入れてエレクトロスパン基材のみ上の細胞の量を測定したことを除いて、同じプロトコルに従った。6ウェル対照との比較は、異なる名目上の表面積に対して標準化することによって行った。図7は、アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。
【0110】
実施例2−チタニア/ポリスチレン・ナノファイバー
1マイクロメートル未満〜マイクロメートル直径のチタニア/ポリスチレン・ナノファイバーからなる細胞培養表面または足場を、酸化物/ポリマーハイブリッド・ナノファイバーをポリマーまたはガラス表面上へエレクトロスピンすることによって堆積させた。これらのナノファイバーはユニークな表面モルフォロジー、くされおよび化学組成を有し、それは、それらを動物細胞の接着および成長のための優れた基材にする。ナノファイバー構造および直径は、培養中に動物細胞によって基盤表面として堆積される、細胞外マトリックスのそれに近い。この表面の生体模倣トポグラフィーは、それが培養で動物細胞の成長のために有利な3次元基材を提供するようなものであり、標準的な非繊維状細胞培養表面よりも顕著に向上した細胞収率をもたらす。図8および9は、チタニア/ポリスチレン・ナノファイバーの表面モルフォロジーおよび特徴を示す。
【0111】
HEK293細胞は、これらのハイブリッド・ナノファイバー表面上に結合し、成長した(図10)。組織培養物処理ポリスチレン対照上よりかなり多い細胞成長が、標準細胞培養条件下で3〜5日後にハイブリッド・ナノファイバー表面上で見られた(図11)。さらに、これらの細胞は、チタニア/ポリスチレンハイブリッド・ナノファイバー上で成長したときに丸いモルフォロジーを示し、ナノファイバー長さに沿って整列した(図12)。細胞は、ナノファイバーの間に、その中におよびそれに沿って優先的に成長し、組織培養物処理(酸化された)ポリスチレンで典型的に見いだされる偏平な単層ではなく、3次元の細胞集団をもたらした。この細胞成長モルフォロジーは、それがインビボ細胞モルフォロジーにさらによく似ているので望ましい。
【0112】
これらのエレクトロスパンハイブリッド・ナノファイバーの電子マイクロプローブによる予備分析は、ナノファイバー内でのチタニアの一様な分布を示した。BET測定は、滑らかな密度の高いナノファイバーより高い表面積値(14m2/グラム)を示す。この結果は、図8および9に示される観察された表面特徴およびくされとよく一致する。典型的なナノファイバー直径は0.5〜5マイクロメートルであり、ここで最も一般的なナノファイバーが直径2〜3マイクロメートルである。ナノファイバー表面は、ナノファイバー表面の50%以上が多孔質でそして時々ウェブ様のコーティングによってカバーされている状態で軸方向に配向した溝を有する。このコーティングは、ナノファイバーの互いのおよび基材表面への接着を容易にし、安定な培養基材または足場をもたらす。
【0113】
実施例3−シリカ/ポリスチレン・ナノファイバーおよびシリコーン/ポリスチレン・ナノファイバー
材料
シリカ・ナノファイバーは、触媒、pH、および水/アルコキシド比を変えることによって公知のゾル−ゲル技術を用いて形成した。ポリマーをこの組成物に導入し、それは水中で膨潤し、故にマットの収縮を減らし、そしてまた無機成分のためのバインダーとしての役割を果たしたであろう。幾つかの組成物を研究したが、典型的にはこれらはTEOS/水(±DMSO)/酸およびポリマーからなる。溶液の詳細を以下に示す。
【0114】
工程1:TEOS(5.5g)、水(5.5g)および2滴のH3PO4(42.5%強度)(0.08g)を、激しく撹拌しながら15分間または無色透明になるまで混合した。次に溶液を60℃で1時間加熱し、次に溶液を氷浴中に保ってさらなる反応の速度を落とす。
【0115】
工程2:次の成分を別の溶液として混合した:工程1からのTEOS混合物(2g)、H2O(0.53g)、DMSO(0.25g)および8%ポリビニルアルコール(PVA:MW89−98K、6.25g)。この溶液を60℃で1時間加熱し、室温に冷却し、エレクトロスピニング前に3日間熟成した。最終マット組成物中の生成シリカを、ポリマー含有率を変えることによって40〜59%で変えた。溶液をまた、DMSOなしで製造した。
【0116】
PVAは部分水溶性であるので、エレクトロスパンマットを、グルタルアルデヒドなどの化学架橋剤を使用して後変性させる。シリカ/PVAハイブリッドの200〜400nm直径ナノファイバーからなる多孔質マットを製造した。異なるシラン(アミン、TEOS)コーテッドガラスカバースリップをエレクトロスピニング基材として使用してナノファイバーの接着を助け、故にマットの密度を高めた。
【0117】
図13は、それらのユニークな表面モルフォロジーおよび典型的なナノファイバー直径を描写するこれらのナノファイバーのSEMを示す。シリカ/PVAハイブリッド・ナノファイバー直径(100〜400nm)は、フィブリル状基盤膜、細胞外マトリックス(ECM)の構造上コンパクトな形態のそれに近い。シリカは必須養分であり、PVAは合成ECM様タンパク質として公知であり、故にこの系は、細胞培養のための良好な生体模倣であることができよう。
【0118】
シリコーン/有機ブレンド物は、シリコーン含有ブロックコポリマー/PSハイブリッドをエレクトロスピンすることによって形成されてきた。可変の粘度、分子量および組成の多くの商業的に入手可能なシリコーンが存在する。商業的に入手可能なシリコーンのほとんどの低いガラス転移温度(Tg)は、単独でエレクトロスピンされることを不可能にするが、これらはコポリマーブレンド物としてエレクトロスピンすることができよう。幾つかの組成物が研究された。
【0119】
#1 PS(MW 350,000、30mlのTHFおよび0.5ml酢酸中の6gのPS、THF中約20%)とコポリマー(35〜45%ポリジメチルシロキサン)フェニレンジアミン ポリエーテルイミド(シブリッド(商標)、15%N−メチルピロリドン)との混合物、ここで、「シブリッド」(15%)/PS(20%)組成を50/50、60/40および25/75比で変えた。
【0120】
#2 PS(MW 350,000、THF中約20%)と熱架橋性シリコーン系 ゲレストOE43パートAおよびパートBとの混合物、ここで、最終シリコーン組成を5〜10%で変えた。
【0121】
#3 PS(MW 350,000、THF中約20%)とPDMSのアミノ官能性コポリマーとの混合物、ここで、最終シリコーン組成を5〜10%で変えた。
【0122】
図14〜16は、これらの系についての典型的なナノファイバー直径(約900nm〜2μm)を示す。これらの高分解能SEMはまた、ナノファイバーの表面および内部ナノファイバーモルフォロジーを描写する。図17は、細胞培養実験のために典型的に使用される密度の高いナノファイバーマットの光学顕微鏡写真を示す。
【0123】
異なるタイプのシリコーンのエレクトロスピニングは、ユニークなモルフォロジー、化学表面エネルギー、および弾性率をもたらす。異なるシリコーンは、たとえこれらの組成物がブレンド物として使用されても、表面上に異なる化学をもたらすであろう。ATR−FTIRを用いて#2についてのサンプルをキャラクタリゼーションした。データは、たとえポリスチレンが両組成物において大半相であっても、シリコーンがナノファイバーの表面上に圧倒的に存在することを示す。PDMS表面張力(γ)は19.9mN/mであり、PSのγは40.7mN/mであり、予期されるように、より低い表面張力ポリマーはナノファイバーの表面に分離した。
【0124】
シリコーンは一般に、より低い表面エネルギー材料である傾向があり、故に水中で湿潤性がより少ない。それ故、50/50または34/66のエレクトロスパン・「シブリッド」/PS混合物は、マットを親水性にするためにN2Oプラズマ処理(30秒)を用いて後変性させた。これらの処理マットはまた、表面の親水性を確実なものにするために促進エージング条件(52度、5日)を受けた。
【0125】
ナノファイバーマット・モルフォロジーはまた、エレクトロスピニング処理条件を操作することによって変えることができた。より多く融合した(MF)対より少なく融合した(LF)ナノファイバーマットは、「シブリッド」/PS 25/75比について先端−基材距離を低下させることによって得られた。これは、より大きい融合ナノファイバー(5〜6μm以下)をもたらした。
【0126】
細胞培養
MRC5線維芽細胞およびHEPG2肝細胞を、シリカ/PVAおよび「シブリッド」/PS系上で成長させた。MRC5細胞をシリカ/PVAおよびN2O処理「シブリッド」/PS系上で対照表面として組織培養物処理ポリスチレン(TCT)を用いて成長させた。MRC5細胞を標準細胞培養条件下に両表面上に結合させ、成長させた。シリカ/PVA上で、MRC5細胞は、24時間後に生存細胞拡散を示した。72時間後に、モルフォロジーはPS上で通常見られるものとは異なった。MRC5細胞は非常に広がり、明白な最先端を有した(図20)。これは、細胞が通常結合し、そして偏平なモルフォロジーに成長するTCT上ではこれまで見られなかった。これは、高められた細胞成長にわたってシリカ/PVA表面上での高められた細胞機能を示唆することができた。
【0127】
N2O処理「シブリッド」/PS表面上で、MRC5細胞はTCTと比較していかなる違いも示さなかった。この細胞は線維芽細胞様であり、そのものと同様にTCT上にロックされた(図19)。図18はまた、基材の面積に対して標準化された相対的なMRC5細胞カウントを示す。汚染は、表面全てについて全く気付かれず、表面は培養期間の間ずっと無傷のままであった。
【0128】
シリカ/PVAおよび「シブリッド」/PSはまた、HEPG2肝細胞成長を支援する。文献は、機能性肝細胞が典型的には回転楕円形または円形であり、他の細胞タイプよりゆっくり成長することを示してきた。
【0129】
標準細胞培養の5日後にTCT対照表面上でより著しく多い細胞成長が、全ての組成(50/50、25/75)での未処理「シブリッド」/PSナノファイバー表面上で見られた。図21は、細胞培養の1日および5日後の基材の面積に対して標準化された相対的なHEPD2細胞カウントを示す。これらの細胞は、「シブリッド」/PS上で成長したときに凝集体を示した(図22)。細胞は、TCT上に典型的に見いだされる偏平な単層ではなく、ナノファイバーの間におよびそれに沿って優先的に成長した。N2O処理「シブリッド」/PSは、未処理サンプルおよびTCTと比較してより低い細胞カウントを示した。たとえ細胞成長がN2O処理「シブリッド」/PS上で低くても、細胞は、TCT上での平らな広がった細胞と比較して凝集体にとどまった。
【0130】
TCT対照表面に匹敵する細胞成長は、シリカ/PVAナノファイバー表面上で見られた。図23は、細胞培養の1日および5日後の基材の面積に対して標準化された相対的なHEPG2細胞カウントを示す。これらの表面上の細胞もまた、TCT上で観察される偏平なモルフォロジーと比較したときに凝集体を示した(図24)。第5日目の肝細胞成長は、DMSOの不存在下に製造されたファイバー(68−06および72−06)と比較してシリカ/PVA(−DMSO)(図23中の83−06)についてかなり高かった。この組成物について観察された凝集体は、基材上に直接凝集しているように見えるシリカ/PVA(+DMSO)について観察された回転楕円体と比較して肝細胞の単層上に横たわっているように見える。
【0131】
図25は、基材に応じたアルブミン産生量を示し、図26は、アルブミンが分析されるのと同時に測定された細胞カウントに対して標準化された基材に応じたアルブミン産生量を示す。HepG2増殖およびアルブミン分泌分析についての全プロトコルは、実施例1に詳述される。HepG2細胞播種密度は、全ての実験基材について3mlの培地中100,000細胞に保たれた。
【0132】
実施例4−ナノファイバー直径および組成物と細胞成長および機能との関係
エレクトロスパン金属酸化物/ポリマー・ナノファイバー直径と組成物との間の関係に関する研究は、ポリスチレン・ナノファイバー中へのチタンの包含が類似の寸法のポリスチレン・ナノファイバー単独よりも多くの細胞結合および成長を促すことを示唆した。おおよそ300nm、1,000nmおよび5,000nmの名目上の直径を有するポリスチレンおよびポリスチレン/チタニアからなるナノファイバーを、ガラススライド上へエレクトロスピンし、HepG2肝細胞(ATCC HB065)の成長および機能について評価した。これらの細胞は、容易に定量化される量でタンパク質を産生し、肝細胞機能についての有用なモデルと考えられる。全ての結果は、確認のために繰り返された。
【0133】
細胞を、標準培養条件下にIMDM/10%FBS/抗生物質/抗真菌薬中に維持し、3〜5継代で使用した。播種密度は、全サンプルについて20,000細胞/cm2であり、培地は一日おきに変えた。タンパク質産生についての分析前に、血清含有培地を、血清を含まない培地(IMDM含有ITESおよび抗生物質/抗真菌剤)と取り換えた。サンプルをカルシウムおよびマグネシウム入りDPBSで3回穏やかにリンスして血清を含まない培地の添加前に微量のアルブミンを除去した。細胞を24時間成長させ、血清を含まない培地をタンパク質産生量について分析した。細胞数もこの時測定した(セルタイター96、プロメガ)。全タンパク質を、ホーフェルシュバイガー(プロスタイン、アクティブ・モチフ 北米)(Hoefelschweiger(ProStain,Active Motif North America))の方法を用いて分析した。
【0134】
図27は、幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長結果を示す。細胞成長は、ポリスチレン単独でできたナノファイバーだけでなくポリスチレン、コラーゲンおよびマトリゲル上で培養された組織よりもチタニア含有ナノファイバー表面上で著しく高められた。より大きい直径ナノファイバー上では、細胞はストリング上に結合し、ビーズ様に成長し、大きいクラスターを形成し、1,000nmまたはより小さいナノファイバー上では、小さい回転楕円体が形成された。培養された肝細胞における回転楕円体形成はまた、インビボ様挙動をより多く示唆すると考えられる。
【0135】
肝細胞によるタンパク質産生は、正常の細胞機能の指標と考えられる。24時間期間にわたって成長培地中へ分泌された全タンパク質を、これらの表面上でのこれらの細胞の機能の程度を測定するために測定した。多くの用途で、インビボで見いだされるように、細胞の機能を促進することが望ましい。図28は、幾つかのナノファイバー表面上での細胞成長およびタンパク質産生量を示す。どの表面も、3次元タンパク質ゲルコーティングであるマトリゲルで見られるような程度のタンパク質産生を生成しなかったが、標準ポリスチレンまたはコラーゲン−コーテッド表面上でよりも著しく多いタンパク質産生(おおよそ150%大きい)が3次元ナノファイバー表面上で起こった。ナノファイバー状表面は、幾つかの点で細胞マトリックスタンパク質の形状を模倣すると考えられる。細胞成長を促進する表面が高められた分化機能をも可能にすることはまた普通ではない。ナノファイバー表面は、標準培養表面よりも多くの分化挙動を促進するように見える。
【0136】
本出願の全体にわたって、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の全体の開示が、本明細書に記載される化合物、組成物および方法をより十分に記載するために、参照により本明細書によって本出願へ援用される。
【0137】
本明細書に記載される材料、方法、および物品に様々な修正および変形を行うことができる。本明細書に記載される材料、方法、および物品の他の態様は、本明細書ならびに本明細書に開示される材料、方法、および物品の慣例を考慮するとから明らかになる。本明細書および実施例は、例証と見なされることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む、ナノファイバーを製造するための組成物であって、
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、かつ、前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
成分(a)が金属酸化物であり、前記金属酸化物が、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、五酸化バラジウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化鉛、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(a)が金属酸化物前駆体であり、前記金属酸化物前駆体が、金属塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属エステル、金属窒化物、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、シルセスキオキサン、シリコーン、シリカ、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(a)が金属酸化物前駆体であり、前記金属酸化物前駆体が、ニオブ化合物、タンタル化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、セリウム化合物、カルシウム化合物、カドミウム化合物、エルビウム化合物、セレン化合物、テルル化合物、ガリウム化合物、ヒ素化合物、ゲルマニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、インジウム化合物、ルテニウム化合物、レニウム化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー、1種以上のポリマー前駆体、またはそれらの組合せをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物前駆体、前記ポリマー、前記ポリマー前駆体、またはそれらの任意の組合せが1種以上の共溶媒をその場で生成することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオキサゾリン、ポリビニルピリジン、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、ポリアミド、ポリビニルアルキルエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリメタクリレート、フェノール系化合物、エポキシ化合物、ウレタン、スチレンポリマー、無水マレイン酸類、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ペプチド、セルロースポリマー、ヒドロゲル、ポリリジン、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、アルギネート、ポリカプロラクトン、ポリオルガノシルセスキオキサン、アクリルアミド、ポリスルホネート、ポリケトン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、ブロックコポリマー、ポリビニルピロリジン、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒に可溶性であり、そして前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒に可溶性であり、そして前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より低い沸点を有することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1溶媒と第2溶媒とが、20℃において少なくとも10mmHgの蒸気圧の差を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1および第2溶媒が、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチル−第三ブチルエーテル、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、2,2,4−トリメチルペンタン、水、ベンゼン、ブタノール、メチルエチルケトン、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(a)ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
含む、ナノファイバーを製造するための組成物であって、
前記ポリマー、ポリマー前駆体またはそれらの組合せが前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1溶媒および前記第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)ポリマーまたはポリマー前駆体と、
(c)第1溶媒および第2溶媒と
を含むファイバー形成組成物であって、
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体、金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せ、ポリマーまたはポリマー前駆体が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および前記第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より低い沸点を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1溶媒と第2溶媒とが、20℃において少なくとも10mmHgの蒸気圧の差を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
触媒、生物活性剤、金属もしくは有機の導電性材料、磁性材料、圧電材料、強誘電材料、誘電材料、放射性材料、リン光性材料、染料、界面活性剤または希土類金属をさらに含むことを特徴とする請求項1、12または13に記載の組成物。
【請求項18】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物を電気的に処理する工程を含むナノファイバーの製造方法であって、
(a)の成分が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする方法。
【請求項19】
(a)(a)金属酸化物前駆体、
(b)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(c)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムの製造方法であって、
前記フィルム形成材料が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする方法。
【請求項20】
フィルム形成材料が金属酸化物前駆体およびポリマーであり、前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項1】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む、ナノファイバーを製造するための組成物であって、
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、かつ、前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
成分(a)が金属酸化物であり、前記金属酸化物が、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、五酸化バラジウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化鉛、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(a)が金属酸化物前駆体であり、前記金属酸化物前駆体が、金属塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属エステル、金属窒化物、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、シルセスキオキサン、シリコーン、シリカ、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(a)が金属酸化物前駆体であり、前記金属酸化物前駆体が、ニオブ化合物、タンタル化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、セリウム化合物、カルシウム化合物、カドミウム化合物、エルビウム化合物、セレン化合物、テルル化合物、ガリウム化合物、ヒ素化合物、ゲルマニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、インジウム化合物、ルテニウム化合物、レニウム化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー、1種以上のポリマー前駆体、またはそれらの組合せをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物前駆体、前記ポリマー、前記ポリマー前駆体、またはそれらの任意の組合せが1種以上の共溶媒をその場で生成することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオキサゾリン、ポリビニルピリジン、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、ポリアミド、ポリビニルアルキルエーテル、シクロオレフィンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリメタクリレート、フェノール系化合物、エポキシ化合物、ウレタン、スチレンポリマー、無水マレイン酸類、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ペプチド、セルロースポリマー、ヒドロゲル、ポリリジン、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、アルギネート、ポリカプロラクトン、ポリオルガノシルセスキオキサン、アクリルアミド、ポリスルホネート、ポリケトン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、ブロックコポリマー、ポリビニルピロリジン、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒に可溶性であり、そして前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せが前記第1溶媒に可溶性であり、そして前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より低い沸点を有することを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1溶媒と第2溶媒とが、20℃において少なくとも10mmHgの蒸気圧の差を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1および第2溶媒が、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチル−第三ブチルエーテル、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、2,2,4−トリメチルペンタン、水、ベンゼン、ブタノール、メチルエチルケトン、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(a)ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
含む、ナノファイバーを製造するための組成物であって、
前記ポリマー、ポリマー前駆体またはそれらの組合せが前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1溶媒および前記第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)ポリマーまたはポリマー前駆体と、
(c)第1溶媒および第2溶媒と
を含むファイバー形成組成物であって、
前記金属酸化物、金属酸化物前駆体、金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せ、ポリマーまたはポリマー前駆体が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および前記第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より低い沸点を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1溶媒と第2溶媒とが、20℃において少なくとも10mmHgの蒸気圧の差を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
触媒、生物活性剤、金属もしくは有機の導電性材料、磁性材料、圧電材料、強誘電材料、誘電材料、放射性材料、リン光性材料、染料、界面活性剤または希土類金属をさらに含むことを特徴とする請求項1、12または13に記載の組成物。
【請求項18】
(a)金属酸化物、金属酸化物前駆体、または金属酸化物と金属酸化物前駆体との組合せと、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物を電気的に処理する工程を含むナノファイバーの製造方法であって、
(a)の成分が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、そして前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする方法。
【請求項19】
(a)(a)金属酸化物前駆体、
(b)金属酸化物およびポリマー、ポリマー前駆体、もしくはそれらの組合せ、または
(c)金属酸化物前駆体および金属酸化物
を含むフィルム形成材料と、
(b)第1溶媒および第2溶媒と
を含む組成物をエレクトロスプレーする工程を含むナノフィルムの製造方法であって、
前記フィルム形成材料が前記第1溶媒、前記第2溶媒、または前記第1および第2溶媒の両方に可溶性であり、前記第1溶媒と前記第2溶媒とが非混和性であることを特徴とする方法。
【請求項20】
フィルム形成材料が金属酸化物前駆体およびポリマーであり、前記金属酸化物前駆体が前記第1溶媒に可溶性であり、前記ポリマーが前記第2溶媒に可溶性であり、そして前記第1溶媒が前記第2溶媒より高い沸点を有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2010−502855(P2010−502855A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527387(P2009−527387)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/019336
【国際公開番号】WO2008/030457
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/019336
【国際公開番号】WO2008/030457
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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