説明

ナノファイバーの多孔質繊維シート

医療パッケージングならびに医療用ガウンおよび掛け布のような微生物バリア性を必要とする最終用途で有用である多孔質繊維シートが提供される。多孔質繊維シートはナノファイバーおよび木材パルプを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバーまたは木材パルプとナノファイバーとの組み合わせを含んでなる、紙および不織布のような、多孔質繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物透過に対するバリアは、医療デバイスを包装するために使用される材料の重要なおよび不可欠な性質である。医療パッケージングに現在使用される材料には、様々なフィルム、フラッシュ紡糸ポリオレフィン不織布、および医療グレード紙が含まれる。ガスまたはプラズマ滅菌(例えば、酸化エチレン、ステラッド(Sterrad)(登録商標)など)がパッケージの内容物を滅菌するために使用されるケースでは、パッケージは一般に、紙またはフラッシュ紡糸ポリオレフィン・シートのような、多孔質のガス透過性蓋にヒートシールされているボトムウェブを形成する、熱成形フィルムのようなフィルムを含む。あるいはまた、パッケージは、フィルムにヒートシールされた多孔質の層を含んでなるパウチの形態であってもよい。多孔質の蓋または層は、滅菌剤ガスまたはプラズマがパッケージに入り、それから出てその内容物を滅菌するのを可能にし、同時に、医療デバイスが使用されるまでそれが無菌のままであるために微生物透過に対してバリアを提供しなければならない。
【0003】
多孔質繊維シートの微生物バリア性は、平均孔サイズ、シート厚さ、繊維のサイズ、繊維モルフォロジーなどに依存する。多孔質の微生物バリアシートは、微生物胞子およびサブマイクロメートル〜2、3マイクロメートルのサイズの範囲である粒子による透過を防ぐ。細菌浸透を防ぐ多孔質シートの能力は、それらの対数減少値(LRV)によって測られる。LRV値が高ければ高いほど、材料はパッケージの微生物透過を防ぐ点でより良好である。例えば、医療パッケージングに使用されるフラッシュ紡糸ポリオレフィン・シートのLRVは、基本重量(BW)が約1.65から2.2オンス/ヤードに(55.9から74.6g/mに)増えるにつれて、約3.2〜5.5もしくはそれ以上の範囲である。当該技術で公知の医療グレード紙は、それらの基本重量、孔サイズ、添加剤処理などに依存して、約1〜3のLRVを有し、微生物バリアとしてフラッシュ紡糸材料よりもはるかに有効ではない。紙は医療パッケージングでの長年の使用によって改善されてきたが、それは依然として強度、耐引裂性およびまた剥離性の点でさらなる限界を有する。独特の剥離性コーティングは、それらがヒートシールされたパッケージで弱い結合を形成し、かつ、医療デバイスの毛羽立ちをもたらす紙の引裂を避けるためにパッケージが剥離される時に粘着機能がなくなる傾向があるように使用される。
【0004】
コスロー(Koslow)の特許文献1は、ナノファイバーを含んでなるエアフィルター媒体を記載している。ナノファイバーのコーティングは、濾材の性能を高めるために使用することができる。ナノファイバーは好ましくはフィブリル化ナノファイバーである。一実施形態では、濾材はフィブリル化ナノファイバーとガラス微細繊維とのブレンドから製造される。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0177909号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、基本重量を増やすと、不織ウェブのバリア性を高めることができる。基本重量を増やすまたはそれらの気孔率および通気性を制御する不織布特性を変えることなく、費用効率の良い方法でバリア性を改善することが望ましいであろう。医療パッケージングでの使用のために改善された微生物バリア性を有する多孔質繊維シート構造体が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、約10nm〜約1000nmの範囲の直径を有するナノファイバーを含んでなる医療パッケージング用の多孔質繊維シートである。
【0008】
本発明の一実施形態は、少なくとも1のLRVを有する繊維シート中のナノファイバーと木材パルプとの合わせた総重量を基準にして、約1重量パーセント〜99重量パーセントのナノファイバーと約99重量パーセント〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなる多孔質繊維シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、紙、およびナノファイバーまたはナノファイバー/木材パルプ組み合わせを含んでなる不織布をはじめとする、多孔質繊維シートに関する。該繊維シートは、ナノファイバーを含有しない類似の繊維シートと実質的に同じ基本重量で改善されたバリア性を有する。本発明のある種の多孔質繊維シートは、例えば医療パッケージング用の蓋で、微生物バリア材として有用である。
【0010】
用語「ナノファイバー」は、本明細書で用いるところでは、約10ナノメートル(nm)〜1000nm(1マイクロメートル)、好ましくは約200〜400nm、より好ましくは200nm未満の直径または断面を有する繊維を意味する。用語直径は、本明細書で用いるところでは、非円形形状の最大断面を含むであろう。
【0011】
用語「リオセル繊維」は、本明細書で用いるところでは、アミンオキシドのような有機溶媒に木材パルプを溶解することによって得られる溶液の紡糸によって形成される繊維を意味する。リオセル繊維の製造方法は当該技術では公知である。「木材パルプ」は、本明細書で用いるところでは、アルカリ性液または酸性もしくは中性塩の溶液と沸騰させ、引き続き塩素化合物で漂白した木材チップの製品であって、その目的が木材のヘミセルロースおよびリグニン外皮を大体完全に除去することである製品を意味する。
【0012】
用語「ポリエステル」は、本明細書で用いるところでは、繰り返し単位の少なくとも85%が、結合がエステル単位の形成によって生じた、ジカルボン酸とジヒドロキシアルコールとの縮合生成物であるポリマーを包含することを意図される。これには、芳香族、脂肪族、飽和、および不飽和の二酸およびジアルコールが含まれる。用語「ポリエステル」にはまた、本明細書で用いるところでは、共重合体(ブロック、グラフト、ランダム、および交互共重合体のような)、ブレンド、およびそれらの変性物も含まれる。ポリエステルの例には、エチレングリコールとテレフタル酸との縮合生成物であるポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、および1,3−プロパンジオールとテレフタル酸との縮合生成物であるポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)が挙げられる。
【0013】
用語「不織布、シート、層、またはウェブ」は、本明細書で用いるところでは、編布および織布とは対照的に、ランダムに配置されて特定可能なパターンなしの平面材料を形成する個々の繊維、フィラメント、またはスレッドの構造体を意味する。不織布の例には、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、カードウェブ、エア−レイドウェブ、ウェット−レイドウェブ、スパンレースウェブ、および2つ以上の不織層を含んでなる複合ウェブが挙げられる。
【0014】
本発明での使用に好適なナノファイバーには、ポリマー、エンジニアリング樹脂、セラミックス、セルロース、レーヨン、ガラス、金属、活性アルミナ、カーボンもしくは活性炭、シリカ、ゼオライト、またはそれらの組み合わせから製造されたナノファイバーをはじめとするが、それらに限定されない有機または無機ナノファイバーが含まれる。
【0015】
ナノファイバーは好ましくは、コスローの米国特許出願公開第2003/0177909号明細書に記載されているような、フィブリル化ナノファイバーである。フィブリル化されてナノファイバーを形成することができる繊維には、リオセル繊維および選り抜きグレードのアクリル、ナイロン、または不完全な結晶性の他の合成繊維が含まれる。フィブリル化は、繊維の表面上に極めて小さな「毛状のもの」を形成するための繊維端の後方剥離または分化である。繊維がバナナにたとえられるならば、繊維の小さなフィブリルまたはセクションはバナナの皮のように分化し、そして離れる。フィブリル化ナノファイバーは、約1〜10mmの長さを有する、細断された繊維トウのような、フィブリル化可能な繊維を繊維長さのさらなる減少を最小限にしながら反復性ストレスにさらすことによって製造することができる。フィブリル化ナノファイバーにとって好ましい加重平均長さは約4mm未満であるべきである。例えば、繊維は、ブレンダーのような装置で、または当該技術で公知のヒーターもしくは精製機で水中でフィブリル化することができる。
【0016】
繊維がこれらのストレスを受ける時、繊維は、非晶質領域と結晶性領域との間の弱さの結果としてフィブリル(「毛状のもの」)を形成してナノファイバーを形成する。生じるフィブリル化パルプのサンプルは、間隔を置いてフィブリル化工程から採取し、分析して所望の繊維直径、一般には10nm〜1000nmが達成される時を決定することができる。フィブリル化ナノファイバーのサンプル(乾燥後)を適切なホルダーに取り付け、走査電子顕微鏡(SEM)に挿入することができる。繊維寸法は個々に測定し、長さおよび直径の違いを明らかにするために様々な倍率で得られる顕微鏡写真から単位面積当たりに平均することができる。
【0017】
ナノファイバーは、乾燥形か水スラリーの形かのどちらかで使用して本発明による多孔質繊維シートを製造することができる。また、木材パルプを上記のナノファイバーに加えることができる。ナノファイバーを乾燥形で使用する時、当該技術で公知のドライ−レイド法を適用して本発明の多孔質繊維シートを製造することができる。これらの方法には、エア−レイド技術およびスパンレース技術が含まれるが、それらに限定されない。ナノファイバーを水中のスラリーの形で使用する時、紙およびウェット−レイド不織布について当該技術で周知のウェット−レイド技術を用いることができる。ドライ−レイド法とウェット−レイド法との組み合わせを同様にうまく用いて本発明による多孔質繊維シートを製造することができる。本発明で使用されるナノファイバーは、フィブリル化されるか、またはされないようにすることができる。
【0018】
ナノファイバーの水性分散系は、透水性スクリーン上に置き、制御された方法で脱水して高バリア層を形成することができる。紙で使用されるバインダーが、生じる高バリア層の強度を高めるためにナノファイバーの水性分散系に添加されてもよい。有用なバインダーは無機または有機であってもよい。典型的なバインダーは合成ラテックスであり、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、および様々なアクリルポリマーをベースにする。他の有用なバインダーは、コスローの米国特許出願公開第2003/0177909号明細書に開示されている。同様に、木材パルプ繊維がナノファイバーと(バインダーを用いてまたは用いずに)ブレンドされてもよく、水の除去後にナノファイバーを含有しない同じ基本重量の紙に対して改善されたバリア性を有する繊維層を形成する。
【0019】
本発明の一実施形態では、多孔質繊維状の紙様シートは、ナノファイバーおよび木材パルプを含んでなる完成紙料をウェット−レイすることによって製造されて、繊維シート中の木材パルプとナノファイバーとの合わせた総重量を基準にして、約1重量パーセント〜99重量パーセントのナノファイバーと約99〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなる多孔質の紙様シートを形成する。このように形成された繊維シートは、ナノファイバーおよび木材パルプ繊維が繊維シートの全体にわたって実質的に一様に分配されている。
【0020】
本発明の別の実施形態では、木材パルプを含んでなる完成紙料をウェットレイして木材パルプ層を形成し、引き続いてナノファイバーを含んでなる完成紙料をウェット−レイド木材パルプ層上に直接ウェットレイして、繊維シート中の木材パルプとナノファイバーとの合わせた総重量を基準にして、約1重量パーセント〜99重量パーセントのナノファイバーと約99〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなる層状の多孔質の紙様シートを形成することができる。追加の層を沈積させて所望の数の層を形成することができる。2層シートでは、ナノファイバーはシートの一外面上に濃縮され、木材パルプ繊維はシートの他の外面上に濃縮される。3つ以上のウェット−レイド層が用いられる場合、木材パルプ層かナノファイバー層かのどちらかがシートの外面の1つまたは両方を形成することができる。組み合わせは、ナノファイバーの層、木材パルプの層、およびナノファイバー/木材パルプ・ブレンドの層を用いて行うことができる。具体的な例は、木材パルプの2つの外層およびナノファイバー/木材パルプ・ブレンドの内層の「サンドイッチ−タイプ」配置であって、該ブレンドが内層中の木材パルプとナノファイバーとの合わせた総重量を基準にして、約1重量パーセント〜99重量パーセントのナノファイバーと約99〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなる配置であろう。
【0021】
あるいはまた、ナノファイバーを含んでなる完成紙料は、予め形成された木材パルプ含有紙の上にウェットレイすることができる。医療パッケージングに使用される紙グレードは、繊維密度、気孔率、様々な処理、添加剤、および基本重量の点で変わる。薬包紙は漂白され、高度に精製され、バージン木材パルプを使用して伝統的なウェットレイド法によって製造される。予め形成された紙は好ましくは約1.4オンス/ヤード(49g/m)〜2.9オンス/ヤード(98g/m)の基本重量を有する。クラフト紙は、医療パッケージングにしばしば使用される特別なタイプの紙である。それはクラフトパルプから製造され、その製造方法は、木材チップをアルカリ性溶液中で数時間煮る(消化する)工程であって、その時間中に化学薬品が木材中のリグニンを攻撃する工程を含む。溶解したリグニンは後で除去されて後にセルロース繊維を残す。未漂白クラフトパルプは色が暗褐色であるので、それを多くの製紙用途で使用できる前に、それは一連の漂白工程を受けなければならない。
【0022】
本発明による多孔質繊維シートは、最適密度を得るために形成後に高密度化してシート気孔率、バリア性、および強度をバランスさせ、最適化することができる。高密度化は、シートを硬質(金属−金属)カレンダーもしくは軟質カレンダーのニップでのカレンダー掛けによってまたは異なるタイプのプレス(圧盤プレス、二重ベルトプレスなど)での圧縮によって予め行うことができる。高密度化は室温でまたは高温で行うことができる。
【0023】
ナノファイバーは好ましくはウェット−レイド木材パルプ層または予め形成された紙層の上に約0.5g/m〜11g/mで沈積される。好ましくは、ナノファイバー層は、パッケージを特定するために印刷される医療パッケージの外側である。この配置で、起こり得る微生物の攻撃はパッケージの外面で、滅菌された内容物からずっと離れて封じられる。パッケージの内側に面する反対側の層は、フィルムにヒートシールするためのヒートシール性調合物でコートされるであろう。
【0024】
上記の材料は医療パッケージングでの使用に特に好適である。例えば、本発明の多孔質繊維シートを含んでなる蓋構成部品は、医療機器または滅菌されるべき幾つかの他の物体が熱成形フィルムから形成された空洞中に置かれた後に熱成形フィルムの第2構成部品にヒートシールすることができる。ヒートシール層は、熱成形フィルムにシールされる必要がある蓋の区域上へ押し出すもしくはコートすることができる、または熱成形フィルム上へ押し出すもしくはコートすることができる。
【0025】
試験方法
次に来る非限定的実施例では、次の試験方法を用いて様々な報告される特性および性質を測定した。ASTMは米国材料試験協会(American Society of Testing Materials)を意味する。TAPPIはパルプ製紙業界技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を意味する。
【0026】
紙の厚さおよび基本重量(坪量)は、相応してASTM D645およびASTM D646に従って測定した。
【0027】
紙の密度(見掛け密度)はASTM D202に従って測定した。
【0028】
紙についてのガーリー空気抵抗(Gurley Air Resistance)(ガーリー)は、TAPPI T460に従って1.22kPaの圧力差を用いて紙の約6.4平方センチメートル円形部について100ミリメートルのシリンダー変位当たりの秒の単位で空気抵抗を測定することによって求めた。
【0029】
紙についてのバリア対数減少値(LRV)および胞子透過率は、シートの細菌バリア性の尺度であり、ASTM F1608に従って測定した。胞子透過率は試験中に紙サンプルを通過した胞子の百分率として計算した。より高いLRVおよびより低い胞子透過率値は、より高い細菌バリア性に相当する。LRVおよびパーセント胞子透過率は、特異的な試験で用いたコロニー形成単位の具体的な数に基づいて計算する。この数は約1×10だけ変動するので、LRVおよびパーセント胞子透過率もまた変動するであろう。
【0030】
繊維長さおよび長さ分布は、オプテスト・イクイップメント社(OpTest Equipment Inc.)によって発行された繊維品質分析器シリアル番号(Fiber Quality Analyzer Serial Number)LDA96053で測定した。
【0031】
繊維直径は走査電子顕微鏡写真から測定した。
【0032】
パルプおよびフィブリル化繊維のカナダ標準ろ水度(CSF)は、パルプの希薄懸濁液が排水される可能性のある速度の尺度であり、TAPPI試験方法T227に従って測定した。
【実施例】
【0033】
以下の実施例で、フィブリル化リオセル繊維は、10mmの長さを有する1.25デニール・ステープルファイバー(テンセル社(Tencel,Inc.)から入手可能な)をワーナー(Warner)高速ブレンダーを用いて水中でフィブリル化することによって製造した。
【0034】
実施例1〜3
実施例1については、40のCSF、約0.4mmの算術平均長さおよび2.6mmの加重平均長さ(ナノファイバーの大部分の直径は200〜400nm範囲にある)の4.0g(乾燥重量基準で)のフィブリル化リオセル繊維の水スラリーを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に入れ、3分間かき混ぜた。
【0035】
分散系を、8リットルの水で、約21cm×21cmハンドシート金型中へ注ぎ込んでウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に置き、めん棒でハンドクーチ(hand couch)し、ハンドシート乾燥機中150℃で乾燥した。最終紙は98.7g/mの基本重量を有した。
【0036】
実施例1について上に記載したように形成した第2の紙サンプルをさらに、約20cmのロール直径の金属−金属カレンダーのニップに約23℃の温度および約2600N/cmの線圧で通して実施例2の紙サンプルを得た。
【0037】
実施例1について上に記載したように形成した第3の紙サンプルをさらに、圧盤プレスで、約23℃の温度および約15MPaの圧力で1分間圧縮した。かかる処理によって、実施例3の圧縮紙サンプルを製造した。紙の性質を下の表1に示す。カレンダー掛けまたは圧縮による紙サンプルの高密度化は、ガーリー空気抵抗の相伴う増加(減少した通気性)と共にLRVの増加(増加した細菌バリア)をもたらす。
【0038】
実施例4〜5
実施例4については、2.0g(乾燥重量基準で)の実施例1と同じフィブリル化リオセル繊維と2.0g(乾燥重量基準で)の104のCSFまで精製されたサザーン漂白堅木クラフトパルプ(Southern Bleached Hardwood Kraft pulp)(インターナショナル・ペーパー・カンパニー(International Paper Company)製の)とを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に一緒に入れ、3分間かき混ぜた。
【0039】
スラリー中の固体材料は50重量パーセントのフィブリル化リオセル繊維および50重量パーセントの木材パルプであった。ウェット−レイド紙を、実施例1に記載した方法を用いて製造し、乾燥した。最終紙は92.9g/mの基本重量を有した。
【0040】
実施例4について上に記載したように形成した第2の紙サンプルをさらに、実施例2について上に記載したようなカレンダー掛けして実施例5のカレンダー掛け紙を形成した。紙の性質を下の表1に示す。
【0041】
実施例6〜7
実施例6〜7についての紙サンプルを、2つの成分(フィブリル化リオセル繊維および木材パルプ)の百分率を変えたことを除いて実施例5について上に記載したように製造し、カレンダー掛けした。紙組成物の2成分の百分率およびカレンダー掛け紙の性質を下の表1に示す。
【0042】
実施例2および5〜7のカレンダー掛け紙の性質を比較すると、より高いレベルのリオセル・ナノファイバーがより高いLRVおよびより低いガーリー空気抵抗をもたらす。
【0043】
実施例8〜9
150のCSF、約0.5mmの算術平均長さおよび3.8mmの加重平均長さ(ナノファイバーの大部分の直径は200〜400nm範囲にある)の2.0g(乾燥重量基準で)のフィブリル化リオセル繊維と2.0gの104CSF精製漂白堅木パルプとを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に入れ、3分間かき混ぜた。
【0044】
分散系を、8リットルの水で、約21cm×21cmハンドシート金型中へ注ぎ込んでウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に置き、めん棒でハンドクーチし、ハンドシート乾燥機中150℃で乾燥した。
【0045】
乾燥した紙を実施例2について上に記載したようにカレンダー掛けして実施例8のカレンダー掛け紙を得た。
【0046】
第2の紙サンプルを、カレンダー掛けの代わりに、形成したたまま乾燥した紙を実施例3について上に記載したように圧縮したことを除いて、実施例8について記載したように製造して実施例9の圧縮紙を得た。
【0047】
紙の性質を下の表1に示す。
【0048】
実施例10
2.00g(乾燥重量基準で)の実施例1と同じフィブリル化リオセル繊維と2.00g(乾燥重量基準で)の254のCSFまで精製された漂白堅木パルプとを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に一緒に入れ、3分間かき混ぜた。スラリー中の固体材料は50重量パーセントのフィブリル化リオセル繊維および50重量パーセントの木材パルプであった。
【0049】
分散系を、8リットルの水で、約21cm×21cmハンドシート金型中へ注ぎ込んでウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に置き、めん棒でハンドクーチし、ハンドシート乾燥機中150℃で乾燥した。
【0050】
乾燥した紙を実施例2について上に記載したようにカレンダー掛けして実施例10のカレンダー掛け紙を得た。紙の性質を下の表1に示す。
【0051】
実施例11
2.00g(乾燥重量基準で)の実施例1と同じフィブリル化リオセル繊維と2.00g(乾燥重量基準で)の254のCSFまで精製された漂白堅木パルプとを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に一緒に入れ、3分間かき混ぜた。その後、0.40g(乾燥重量基準で)のポリ酢酸ビニル分散系タイプDF51/10(ABアケーマ(Achema)から入手可能な)を加え、かき混ぜをさらに3分間継続した。最終スラリー中の固体材料は45.45重量パーセントのフィブリル化リオセル繊維、45.45重量パーセントの木材パルプ、および9.1重量パーセントのポリ酢酸ビニル・バインダーであった。
【0052】
ウェット−レイド紙を、実施例1に記載した方法を用いて製造し、乾燥した。ポリ酢酸ビニル・バインダーを乾燥機で活性化させた。乾燥した紙を次に実施例2について上に記載したようにカレンダー掛けして実施例11のカレンダー掛け紙を得た。紙の性質を下の表1に示す。
【0053】
実施例12〜13
実施例1と同じ2.00g(乾燥重量基準で)のフィブリル化リオセル繊維を全体として約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に入れ、3分間かき混ぜた。
【0054】
分散系を、8リットルの水で、約21cm×21cmハンドシート金型中へ注ぎ込んでウェット−レイド・シートを形成した。
【0055】
104のCSFまで精製された2.00g(乾燥重量基準で)の漂白堅木パルプを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に入れ、3分間かき混ぜた。
【0056】
分散系を、8リットルの水で、約21cm×21cmハンドシート金型中へ注ぎ込んで第2のウェット−レイド・シートを形成した。
【0057】
両方のハンドシートを、向かい合わせで湿った形で2片の吸取紙の間に一緒に置き、めん棒でハンドクーチし、ハンドシート乾燥機中150℃で乾燥した。
【0058】
乾燥した2層紙を実施例2について上に記載したようにカレンダー掛けして実施例12の2層カレンダー掛けシートを得た。
【0059】
第2の2層紙を、乾燥した紙をカレンダー掛けする代わりに、それを実施例3について上に記載したように圧縮したことを除いて、実施例12について記載したように製造して実施例13の圧縮2層紙を得た。
【0060】
紙の性質を下の表1に示す。実施例12(層状カレンダー掛け50/50ナノファイバー/木材パルプ)を実施例5(カレンダー掛け50/50ナノファイバー/木材パルプ・ブレンド)と比較すると、層状紙のLRVがブレンド紙のそれより僅かに低く、両方とも従来の薬包紙より著しく高いLRVを有する。
【0061】
実施例14〜15
電気ブローン連続ナイロン6,6ナノファイバーを、キム(Kim)らに付与されたPCT国際公開第03/080905号パンフレットに従って製造し、引き続き水と共にワーナー高速ブレンダー中に入れ、繊維長さを減らし、かつ、水中に繊維を分散させるためにかき混ぜた。最終ナノファイバーは約500nmの平均直径(直径範囲は約300〜約700nmである)、約0.19mmの算術平均長さおよび約0.66mmの加重平均長さを有した。2.00g(乾燥重量基準で)のナノファイバーと2.00g(乾燥重量基準で)の254のCSFまで精製された漂白堅木パルプとを約1600gの水と共に実験室用ミキサー(英国パルプ評価装置)中に一緒に入れ、3分間かき混ぜた。スラリー中の固体材料は50重量パーセントのナイロン・ナノファイバーおよび50重量パーセントの木材パルプであった。
【0062】
ウェット−レイド紙を、実施例1に記載した方法を用いて製造し、乾燥した。乾燥した紙を次に実施例2について上に記載したようにカレンダー掛けして実施例14のカレンダー掛け紙を得た。
【0063】
第2の紙を、乾燥した紙をカレンダー掛けする代わりに、それを実施例3について上に記載したように圧縮したことを除いて実施例14について記載したように製造して実施例15の圧縮紙を得た。
【0064】
比較例AおよびB
比較例AおよびBは商業的に入手可能な木材パルプベースの薬包紙である。比較例Aは45#インパーボン(Impervon)(登録商標)薬包紙であり、比較例Bは60#インパーボン(登録商標)薬包紙であり、両方ともキンバリー−クラーク・コーポレーション(Kimberly−Clark Corporation)から入手可能である。
【0065】
紙の性質を下の表1に示す。本発明の紙サンプルのすべてが商業薬包紙のそれより著しく高いLRVを有する。高密度化の程度だけでなく紙中のナノファイバーの百分率を変えることによって、広範囲のガーリー・ヒル(Gurley Hill)空気抵抗を達成することが可能であり、その結果当該技術で用いられる様々な滅菌法の要件を満たすように紙性質を調整することができる。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
10nm〜1000nmの範囲の直径を有するフィブリル化ナノファイバーを含んでなる、医療パッケージング用の多孔質繊維シート。
【請求項2】
フィブリル化ナノファイバーがフィブリル化リオセル繊維を含んでなる請求項1に記載のシート。
【請求項3】
バインダーを含んでなる請求項1に記載のシート。
【請求項4】
繊維シート中のナノファイバーと木材パルプとの合わせた総重量を基準にして、1重量パーセント〜99重量パーセントのナノファイバーと99重量パーセント〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなる多孔質繊維シートであって、該ナノファイバーが10nm〜1000nmの範囲の直径を有するシート。
【請求項5】
ナノファイバーおよび木材パルプ繊維がシートの厚さの端から端まで実質的に均一に分配されている請求項4に記載のシート。
【請求項6】
シートがウェット−レイされている請求項4に記載のシート。
【請求項7】
繊維シートがドライ−レイされている請求項4に記載のシート。
【請求項8】
繊維シートがバインダーを含んでなる請求項6に記載のシート。
【請求項9】
少なくとも1つのナノファイバー層および少なくとも1つの木材パルプ層を含んでなる請求項4に記載のシート。
【請求項10】
ナノファイバーがフィブリル化されている請求項4に記載のシート。
【請求項11】
フィブリル化ナノファイバーがリオセルである請求項10に記載のシート。
【請求項12】
少なくとも1のLRVを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項13】
少なくとも3のLRVを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項14】
少なくとも5.5のLRVを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項15】
0.0005%の最大胞子透過率を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項16】
ウェット−レイド木材パルプの少なくとも2つの外層と該2つの外層の間に挟まれたフィブリル化ナノファイバー/木材パルプ・ブレンドの内層とを含んでなる多孔質繊維シートであって、該ブレンドが該ブレンド中のフィブリル化ナノファイバーと木材パルプとの合わせた総重量を基準にして、1重量パーセント〜99重量パーセントのフィブリル化ナノファイバーと99重量パーセント〜1重量パーセントの木材パルプとを含んでなるシート。
【請求項17】
フィブリル化ナノファイバーがリオセルである請求項16に記載のシート。
【請求項18】
第2構成部品にヒートシールされた蓋構成部品を含んでなる医療パッケージであって、該蓋構成部品が請求項1、4、または16のいずれか一項に記載の繊維シートを含んでなり、該繊維シートが少なくとも1のLRVを有する医療パッケージ。
【請求項19】
繊維シートが少なくとも3のLRVを有する請求項18に記載の医療パッケージ。
【請求項20】
繊維シートが少なくとも5.5のLRVを有する請求項18に記載の医療パッケージ。
【請求項21】
繊維シートが0.0005%の最大胞子透過率を有する請求項18に記載の医療パッケージ。

【公表番号】特表2007−510592(P2007−510592A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536897(P2006−536897)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035326
【国際公開番号】WO2005/040495
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】