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ナノファイバー及びその製造法
説明

ナノファイバー及びその製造法

【課題】飛散等が無い安全なナノファイバー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に高分子薄膜を形成し、高分子薄膜に対して、飛跡が基板に到達可能なイオンビームを複数の方向から照射し、高分子薄膜内に、3次元的に相互接続され、かつ一端が基板表面に固定されている複数個の円筒架橋部を形成した後、これを溶媒で洗浄する工程を経てナノファイバーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの直径が数ナノ〜数十ナノメートルの複数個のナノファイバーが、3次元的に相互接続された状態で基板上に自立して形成されたナノファイバー、及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーには超比表面積効果やナノサイズ効果があり、分子認識や吸着特性、光学・電気特性の点で従来にない優れた特性が発揮されるため、ナノメッシュやナノフィルター、高効率触媒等への応用が期待されている(例えば、非特許文献1を参照)。その一方でナノファイバーは近年急速に発展を遂げた先進材料であり、その安全性の評価はまだ十分とは言えず、アスベスト等のように人の健康と環境に有害な影響を及ぼすことが懸念されている。
【0003】
ナノオーダーの加工法として、収束したイオンビームにより微細な切削加工を行う収束イオンビーム(FIB)法やフォトリソグラフィーによるエッチング加工法などが知られているが、直径がナノオーダーの繊維(ナノファイバー)を形成することは極めて困難であった。そこで、高分子材料を溶媒にとかし、細いノズルから引き出すと同時に、帯電させて電場中で延伸することで50nm〜lμm程度のナノファイバーを合成する方法や、気相中で触媒元素を基点としてナノファイバーを成長させる合成法が見いだされた。これらの方法では、ナノファイバーは基板上にランダムに堆積し、不織布状に形成されるため、ナノファイバーすべてを固定することは困難であり、太さ、長さ、形成量などを自在に制御することはできなかった。
【0004】
一方、イオンビームを用いて高分子材料からナノファイバーを形成する製造法が本願発明者らによって見いだされた(例えば、特許文献1を参照)。これは、イオンビームを高分子材料に照射した際、高分子材料内の個々のイオンの飛跡により形成される直径ナノメートルオーダーの円筒架橋部からナノファイバーを製造する技術である。具体的には、基板上に高分子材料を用いて高分子薄膜を形成し、イオンビームを照射する。その際、個々のイオンが高分子薄膜を貫通した飛跡に沿ってエネルギーが付与され、飛跡近傍の分子鎖が一旦切断された後再結合(架橋)する。この結合点(架橋点)は、イオンの飛跡に沿って分布し、その密度は飛跡の中心から半径方向に離れるほど減少する。このため高分子薄膜内には、イオンの飛跡に沿って円筒架橋部が形成される。これを溶媒で洗浄すると円筒架橋部以外は溶解して除去され、円筒架橋部のみからなる高分子材料を得ることが可能となる。これが高分子ナノファイバーである。
【0005】
この形成法では、イオンの入射数により高分子ナノファイバーの形成数を、高分子薄膜の膜厚によりその長さを、高分子材料の分子量や放射線に対する反応性、或いはイオンの入射エネルギーによりその太さを任意に制御できる。また、原料高分子材料としてポリカルボシラン等のセラミック前駆体高分子を用いることで、有機−無機転換反応によってセラミックナノファイバーを形成することも可能である。
【特許文献1】特開2007−076978号公報、杉本雅樹ほか「セラミックナノワイヤー及びイオンビーム照射によるその製造法」
【非特許文献1】図解よくわかるナノファイバー、本宮達也、日刊工業新聞社(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオンビームによるナノファイバーの製造法は、電解紡糸法等の方法で製造可能な下限値よりさらに細い数ナノメートルオーダーまでナノファイバーを細径化でき、より比表面積効果やナノサイズ効果の大きいナノメッシュやナノフィルター、高効率触媒等への応用が可能である。しかし、イオンビーム法では、溶媒による洗浄工程において、ナノファイバーが基板表面に倒れて積み重なり、その比表面積効果が十分発揮されないという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、ナノファイバーの優れた特長を発揮させるため、複数個のナノファイバーが、3次元的に相互接続された状態で基板上に自立して形成されていると共に、形成されたナノファイバーの一端が基板表面に固定された、飛散等が無い安全なナノファイバー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの観点によれば、基板上に高分子薄膜を形成し、高分子薄膜に対して、飛跡が前記基板に到達可能なイオンビームを複数の方向から照射し、高分子薄膜内に、3次元的に相互接続され、かつ一端が前記基板表面に固定されている複数個の円筒架橋部を形成した後、これを溶媒で洗浄する工程を経てナノファイバーを製造することにより、溶媒洗浄後のナノファイバーの飛散を防止するようにしている。
【0009】
さらに、本発明の他の観点によれば、基板上に高分子薄膜を形成し、飛跡が前記基板に到達可能なイオンビームを単一方向から複数照射し、前記高分子薄膜内に一端が前記基板表面に固定された複数個の円筒架橋部を形成した後、これを溶媒に浸漬させ、溶媒の凝集によりナノファイバーが3次元的に相互接続された構造を形成する工程を経てナノファイバーを製造することにより、溶媒洗浄後のナノファイバーの飛散を防止するようにしている。
【0010】
ここで、多角度照射法とは、原料高分子材料を塗布した基板に対して、複数の角度(方向)からイオンビームを照射し、イオンビームの飛跡を高分子薄膜内で交錯させ、複数個の円筒架橋部を立体的に相互接続された状態で形成する方法である。これを溶媒洗浄することで、相互接続された状態で円筒架橋部をナノファイバー化することが可能であり、基板上に倒れない自立状態のナノファイバーが形成できる。
【0011】
また、溶媒洗浄法とは、原料高分子材料を塗布した基板に対して単一方向からイオンビームを複数照射して複数個の円筒架橋部を形成し、溶媒で未架橋部を洗浄除去する際に、近接するナノファイバーを溶媒の凝集作用によりやぐら状に接続して基板への倒れを抑制し、自立状態のナノファイバーを形成する方法である。
【0012】
以上のような製造方法によって製造されたナノファイバーは、基板上の高分子薄膜内に形成された、複数個のナノファイバーが3次元的に相互接続されているナノファイバーであって、前記複数個のナノファイバーの一端が前記基板表面に固定されているナノファイバーとなる。
【0013】
本発明のさらに他の観点によれば、セラミック前駆体である高分子の薄膜を使用し、前述の各製造方法の最終工程においてアルゴンガス等の不活性ガス中でセラミックに焼成することにより、セラミックナノファイバーを得ることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数個のナノファイバーが互いに立体的に接続されている上、それらのナノファイバーの一端が前記基板表面に固定されているので、大気環境中に飛散しない、安全性の高いナノファイバー及びその製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
背景技術において説明したように、すでにイオンビーム照射法によってナノファイバーを得る技術は本願発明者らによって確立されていたが、安全性がより一層高く、かつ自立状態にあるナノファイバーを得ることはできていなかった。本発明者らは、その後の更なる研究により、今回、ナノファイバーの形成工程において、イオンビームの多角度照射法または溶媒洗浄法を用いて、複数個の円筒架橋部(ナノファイバー)を立体的に接続することによって、基板上に自立状態のナノファイバーを形成することができることを見出した。
【0016】
以下、図1から図5を参照して、本発明に係るナノファイバーの製造方法の一例、及びその製造方法で得られた自立したナノファイバーについて説明する。図1は、本発明の多角度照射法によるナノファイバーの製造方法の一例を示している。
【0017】
最初の工程で、高分子材料を溶媒に溶かし、基板上に、スピンコート、ディッピングなどの方法で高分子薄膜を作製する。ポリスチレン等の構造材料用高分子、ポリシラン等の機能性高分子、アルブミン等の生体高分子等、放射線架橋する高分子材料による高分子薄膜の作製が可能なものであれば、本手法を幅広く適用可能である。また、高分子材料としてポリカルボシラン等のセラミック前駆体高分子を使用することで、自立状態のセラミックナノファイバーを製造することができる。基板としては、表面が平滑で塗布液中の溶媒により侵されない材料であれば良い。例えば、シリコンウェハ、ガラス等の無機材料、あるいはポリイミドやポリエチレン等の高分子材料が適用できる。ここまでの工程は、本願発明者らが先に出願した特許文献1の工程と同じである。
<複数ナノファイバーの立体的接続法>
【0018】
イオンビーム照射工程において、個々のイオンの飛跡に沿ってケイ素系高分子薄膜中に円筒架橋部を形成する。この際、図1に示されたように異なる複数の方向から斜めにイオンビームを照射する。基板への倒れを抑制するため、基本的には3方向以上からの照射を行い、複数個の円筒架橋部を立体的に接続しておくことが望ましい。イオンビームの傾斜角度が基板に平行(θ=90°)及び、垂直(θ=0°)の場合、イオンの飛跡が交錯しない。従ってθは0<θ<90°となる必要がある。効率よく接続するためには、ナノファイバーが交錯しやすい30〜60°の傾斜角度が適している。
<ナノファイバーの基板への固定法>
【0019】
本行程において、ナノファイバーの一端を基板に固定するには、高分子薄膜中でのイオンビーム飛跡を基板まで到達させる。この場合、高分子薄膜中でのイオンビームの飛程(到達距離)をR、薄膜に対して垂直方向を基準としたイオンビームの飛跡の傾斜角度をθとすると、高分子薄膜の厚さtは、R×cosθ未満でなければならない。この際のナノファイバーの長さLはt×cosθであり、膜厚と照射角度により任意の値に制御可能である。また、高分子薄膜の厚さtをR× cosθより大きくすることでナノファイバーを基板に固定せず、立体的に接続されたメッシュ状のナノファイバーを溶媒洗浄工程で基板から剥離することも可能である。
【0020】
本工程では、入射した単一のイオンにより、その飛跡に沿ってケイ素系高分子薄膜に高密度にエネルギーが付与され、円筒架橋部が形成される。その半径rは、イオンの飛跡に沿ってエネルギーが付与される範囲、架橋により固定される分子の大きさ、同じエネルギー付与に対する架橋点の生成のしやすさにより決定される。これらはそれぞれ、イオン飛跡に沿って高分子材料に付与されるエネルギー量、高分子材料の分子量、高分子材料の放射線に対する反応性に依存しており、それらを人為的に操作することで円筒架橋部、すなわちナノファイバーの半径を制御できる。
【0021】
イオンビームの飛跡は、高分子薄膜中を平行に貫通するため、高分子薄膜の体積に占める円筒架橋部の体積の総計の割合は、イオンビーム飛跡に対して垂直面における単位面積中の、円筒架橋部の断面積の総計の割合と同一になる。従って、ナノファイバーの半径をr、単位面積あたりのイオンの照射量をf個とすると、その割合はπ×r2×fで表わされる。この円筒架橋部の占める割合が過大である場合、隣接する円筒架橋部が平行に結合し、また立体に接続されて形成される網目構造が密になりすぎるため、内部の未架橋高分子材料が溶媒洗浄では除去不能になることがあるため、高分子薄膜の体積に占める円筒架橋部の占める割合であるπ×r2×fの値は0.5以下にする必要がある。
【0022】
照射後、未架橋部分を溶媒により洗浄して除去し、立体的にナノファイバーが相互接続された自立高分子ナノファイバーが得られる。溶媒としては、塗布した高分子材料が溶解可能なものであれば良い。スピンコート法やディップ法の塗布液に使用した同一溶媒が適用可能である。溶媒洗浄の際に、ナノファイバーが膨潤して切断したり、形成された立体構造が崩れたりする場合には、溶媒の温度を下げる、或いは溶媒を薄める手段により、これらが抑制可能である。溶媒洗浄は、例えば、溶媒が入っているビーカー等の容器に基板を入れて1分程度静置し、取り出してから自然乾燥させる工程で行われる。
【0023】
原料高分子材料が、ポリカルボシラン等のセラミック前駆体高分子材料である場合、溶媒洗浄により得られた自立高分子ナノファイバーは、原料高分子材料の融点温度以上に加熱しても融解しない。従って、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で焼成することで有機一無機転換反応により自立セラミックナノファイバーヘ転換することができる。
【0024】
次に、図2を参照する。図2は、本発明の溶媒凝集法による製造工程の一例を示している。原料の高分子材料及び高分子薄膜の作製工程は多角度照射法のそれと同一である。イオンビーム照射の工程では、高分子薄膜に対して単一方向からイオンビームを複数照射し、個々のイオン飛跡に沿ってケイ素系高分子薄膜中に平行に円筒架橋部を形成する。ナノファイバーの一端を基板に固定するためには、高分子薄膜中でのイオンビームの飛跡が基板に到達する必要がある。従って、高分子薄膜中でのイオンビームの飛程をR、高分子薄膜の厚さtとするとR>tでなければならない。
【0025】
照射後、イオンビームにより架橋されなかった部分を溶媒洗浄により除去し、円筒架橋部をナノファイバー化する。溶媒が乾燥する際、表面張力により凝集するため、その作用でナノファイバーもやぐら状に集まり、立体的に接続されて自立ナノファイバーが得られる。平行に隣接する円筒架橋部を溶媒の凝集力で接続するため、隣接する距離はある値よりも小さくなければならない。従って、実施例1で述べた高分子薄膜の体積に占める円筒架橋部の占める割合であるπ×r2×fの値は、0.5以上に保たれる必要がある。
【0026】
原料高分子材料としてセラミック前駆体高分子材料を用い、有機―無機転換反応により自立したセラミックナノファイバーヘ転換することもできる。その工程に関しては、多角度照射法の場合と同一である。
【0027】
以下,実施例を挙げて本発明をより一層具体的に示す。
【実施例1】
【0028】
ナノファイバーの原料高分子材料として、SiCセラミックスの前駆体高分子材料であるポリカルボシラン(分子量Mn:約2000)を用いた。これをトルエンに溶解させて5 mass%溶液とし、片面研磨シリコンウェハ基板上にスピンコート法により塗布した。得られたポリカルボシラン薄膜の膜厚は230 nmである。
【0029】
高分子薄膜を塗布した基板を図3に示される照射装置に取付け、イオンビームを照射した。図3において、(a)はイオンビーム照射用真空容器、(b)は回転照射台、そして(c)は多角度照射用試料ホルダーを示す。高分子材料を塗布した基板を固定する多角度照射用試料ホルダーは、円盤状のホルダー部分が回転する構造を持っている。この回転軸を傾ける機構(図中のS方向)によりイオンビームの傾斜角を調節し、試料ホルダーの回転機構(図中のD方向)により照射方向を調節できる。この多角度照射用試料ホルダーを3個と、垂直照射試料ホルダーを2個有する回転照射台を、イオンビーム照射用真空容器に装着し、イオンビームを照射した。
【0030】
本実施例では、サイクロトロンで加速されたエネルギー450 MeVのゼノン(Xe)イオンビームを高分子薄膜中に形成される円筒架橋部の分布が均一になるよう上下左右にスキャンしながら照射した。イオンビームの傾斜角(図3のS方向)は45°である。一定線量を照射後、照射方向(図3のD方向)を初回の照射を基準として90°回転し、再び初回と同一線量照射した。これを4回繰り返すことで、45°の照射角度で0、90、180、270°の4方向からイオンビームを照射した。ポリカルボシラン(分子量Mn:約2000)に450 MeVのXeイオンにより形成されるナノファイバーの直径はおよそ15 nmである。高分子薄膜に対して円筒架橋部の占める体積の割合が0.5以下となるよう、照射量の総計が、1x1011 ions/cm2となるようにした。4方向からの照射となる本実施例では、各方向のそれぞれの照射量は、2.5x1011ions/cm2である。照射後、トルエン溶媒で洗浄して未架橋部分を除去し、十分乾燥してポリカルボシランを原料とするナノファイバーを得た。
【0031】
この走査型プローブ顕微鏡の表面形状像を図4に示す。図4は、膜厚230 nmのポリカルボシラン薄膜から本発明の多角度照射法により形成された自立ナノファイバーの走査型プローブ顕微鏡の表面形状像であって、(a)は、本発明による多角度照射法により形成したポリカルボシランの自立ナノファイバーであり、(b)は、従来法の垂直単一方向照射により、同一の線量までイオンビームを照射して形成したポリカルボシランナノファイバーである。(b)の従来法では、基板からの高さは約50 nmであるが、(a)の多角度照射法では約100 nmと2倍以上の高さを示しており、ナノファイバーの基板上への倒れが抑制された自立状態のポリカルボシランのナノファイバーが形成できた。また、(c)は、(a)のポリカルボシランナノファイバーをアルゴン雰囲気中で1000 ℃まで熱処理したものである。ナノファイバー構造を保持したまま、ポリカルボシランからSiCセラミックスヘ焼成転換可能であり、自立セラミックナノファイバーが形成できた。なお、図4の(a)及び(b)において、紙面に向かって右側の黒塗りの部分は低部すなわち基板であり、白いほぼ円形状に見える部分がナノファイバの頂部であり、それらの中間にある灰色の部分が頂部から底部に向かって延びている周面である。このことは、次に説明する図5の(a)からより鮮明に理解できる。
【実施例2】
【0032】
ナノファイバーの原料高分子として、SiCセラミックス前駆体高分子材料のポリカルボシランを用いた。分子量Mnは約2000である。これをトルエンに溶解させて5 mass%の溶液とし、片面研磨シリコンウェハ基板にスピンコート法により塗布した。得られたポリカルボシラン薄膜の膜厚は230 nmである。
【0033】
本実施例では、サイクロトロンで加速されたエネルギー450 MeVのゼノン(Xe)イオンビームの断面を約lcmの円形に調節した後、基板に対して垂直な単一方向から上下左右にスキャンしながら、基板に均一に塗布した高分子薄膜に照射した。このポリカルボシラン薄膜に450 MeVのXeイオンにより形成されるナノファイバー直径はおよそ15 nmである。高分子薄膜に対して円筒架橋部の占める体積の割合が0.5以上となるよう、イオンの照射量は、5x10H bns/cm2とした。照射後、トルエン溶媒で洗浄して未架橋部分を除去し、十分乾燥させることにより、ポリカルボシランナノファイバーを得た。
【0034】
図5は、膜厚230nmのポリカルボシラン薄膜から本発明の溶媒凝集法により形成された自立ナノファイバーの走査型プローブ顕微鏡の表面形状像を示している。図5において、(a)は溶媒凝集法により形成された自立ポリカルボシランナノファイバー、(b)は(a)をアルゴン雰囲気中、1100℃で焼成して得られたSiCセラミック自立ナノファイバーを示す。図5の下部に示されたスケールから、ほぼ円形の白い部分はその高さが約200 nmであり、やぐら状構造の頂部であることがわかる。また、黒い部分すなわち高さ0 nmの部分は底部であり、円形の白い部分すなわち頂部から底部に延びている、周囲に広がっている灰色の部分がやぐら状構造の周面であることが理解できる。
したがって、図5の(a)から、基板からの高さが約200 nmの複数のナノファイバーがやぐら状すなわち円錐状に接続された構造が形成されていることがわかり、自立ナノファイバーの形成が確認できた。
【0035】
また、溶媒接続法により形成した自立ポリカルボシランのナノファイバーをアルゴン雰囲気中1100 ℃で焼成し、自立セラミックナノファイバーヘと転換した(図5の(b)参照)。焼成に伴う収縮により、高さは140 nmに減少しているが、やぐら上に接続された自立構造を保持したまま、SiCセラミックスヘと転換できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】多角度照射法による本発明の自立ナノファイバーの製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】溶媒凝集法による本発明の自立ナノファイバーの製造工程の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に使用される照射装置の構成要素を示す写真である。
【図4】本発明の多角度照射法により形成された自立ナノファイバーの走査型プローブ顕微鏡の表面形状像を示す図である。
【図5】本発明の溶媒凝集法により形成された自立ナノファイバーの走査型プローブ顕微鏡の表面形状像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の高分子薄膜内にイオンビームを照射し、多数の円筒架橋部を形成した後、前記基板ごと溶媒で洗浄して得られるナノファイバーであって、前記ナノファイバーが3次元的に相互接続されていると共に、前記ナノファイバーの一端が、前記基板の表面に固定されていることを特徴とするナノファイバー。
【請求項2】
請求項1に記載のナノファイバーにおいて、前記高分子薄膜がセラミック前駆体である高分子の薄膜であり、不活性ガス中でセラミックに焼成されたナノファイバー。
【請求項3】
基板上に高分子薄膜を形成し、該高分子薄膜に対して、飛跡が前記基板に到達可能なイオンビームを複数の方向から照射し、前記高分子薄膜内に、3次元的に相互接続され、かつ一端が前記基板表面に固定されている複数個の円筒架橋部を形成した後、これらを溶媒で洗浄することを特徴とするナノファイバーの製造方法。
【請求項4】
基板上に高分子薄膜を形成し、飛跡が前記基板に到達可能なイオンビームを単一方向から複数照射し、前記高分子薄膜内に一端が前記基板表面に固定された複数個の円筒架橋部を形成した後、これらを溶媒に浸漬させ、溶媒の凝集により3次元的に相互接続された構造を形成することを特徴とするナノファイバーの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の製造方法において、前記高分子薄膜の厚さを調整して前記ナノファイバーの長さを制御することを特徴とするナノファイバーの製造方法。
【請求項6】
請求項3または4に記載の製造方法において、前記イオンビームの強度を調整して前記ナノファイバーの太さを制御することを特徴とするナノファイバーの製造方法。
【請求項7】
請求項3または4に記載の製造方法において、前記高分子薄膜がセラミック前駆体である高分子の薄膜であり、最終工程において不活性ガス中でセラミックに焼成することを特徴とするナノファイバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70867(P2010−70867A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236572(P2008−236572)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】