説明

ナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法

本発明は、セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを供給し;セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合し;ならびに、少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、ゲルが形成されるまで、セルロース繊維をフィブリル化することによってナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法、ならびにこの方法で得られるナノフィブリルセルロースゲルおよびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法およびこの方法によって得られるナノフィブリルセルロースゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、緑色植物の一次細胞壁の構造成分であり、地球上で最も一般的な有機化合物である。それは、多くの用途および産業で非常に重要である。
【0003】
セルロースは、綿、亜麻、および他の植物繊維からできている紙およびボール紙ならびに繊維製品の主要な構成物質である。セルロースは、薄い透明なフィルムであるセロファンおよび20世紀の始めから繊維製品に使用されてきた重要な繊維であるレーヨンに変えることができる。セロファンおよびレーヨンは両方とも、「再生セルロース繊維」として知られている。
【0004】
セルロース繊維は、不活性な材料のろ床を作製するために、液体ろ過でも使用される。セルロースはさらに、親水性および高吸収性スポンジを製造するために使用される。
【0005】
工業用途のために、セルロースは、木材パルプおよび綿から主に得られる。それは、ボール紙および紙を製造するために主として用いられ、程度はより少ないが、それは、多種多様な派生的製品に変えられる。
【0006】
原料としてのセルロースパルプは、木材、または麻、亜麻およびマニラ麻などの植物の茎から処理される。パルプ繊維は、セルロースおよび他の有機化合物(ヘミセルロースおよびリグニン)から主として構築される。セルロースの巨大分子(1−4グリコシド結合型β−D−グルコース分子から構成された)は、水素結合によって一緒に連結されて、結晶性および非晶性ドメインを有するいわゆる一次フィブリル(ミセル)を形成する。いつくかの一次フィブリル(約55本)は、いわゆるミクロフィブリルを形成する。これらのミクロフィブリル約250本は、フィブリルを形成する。
【0007】
フィブリルは、異なる層(これは、リグニンおよび/またはヘミセルロースを含み得る。)に配置されて、繊維を形成する。個々の繊維は、同様にリグニンによって一緒に結合される。
【0008】
製紙に用いられるパルプはしばしば、その木材を粉砕し、場合によって、そのセルロース繊維から望ましくない化合物を除去するために熱および化学反応で処理することによって得られる。
【0009】
この繊維は、粉砕され、一定の微粉度に(所望の特性に依存して)切断される。繊維の粉砕は、精砕機(円錐ロータ−ステータミル、またはディスクもしくは二重ディスク精砕機)で達成される。精砕機はまた、表面の繊維をフィブリル化し、これは、一部のフィブリルが、繊維の表面から部分的に引き出されることを意味する。これは、製紙において添加され得る顔料の良好な保持、およびしばしば、顔料への良好な接着をもたらし、また、紙の繊維間の水素結合の可能性を高めることになる。これは、機械的特性の改善をもたらす。副作用はまた、紙が、より高い密度になり、および散乱中心の大きさが光の波長の半分の許容される最適条件から離れるにつれて、光散乱の喪失のためにより透明になることである(グラシン紙および耐油紙)。
【0010】
繊維が、加えられたエネルギー下で精砕されると、細胞壁が破壊され、付着した細片、すなわち、フィブリルに引き裂かれるのにつれて、それらはフィブリル化される。この破壊が、繊維の本体からフィブリルを分離するように継続される場合、それにより、フィブリルは放出される。繊維のミクロフィブリルへの微細化は、「ミクロフィブリル化」と呼ばれる。このプロセスは、残った繊維がなくなり、ナノサイズ(太さ)のフィブリルだけが残存するまで、継続され得る。
【0011】
このプロセスがさらに進み、これらのフィブリルをますます小さいフィブリルに微細化する場合、それらは最終的に、セルロースの断片またはナノゲルになる。この最後のステップがどの程度まで時間を要するかに依存して、一部のナノフィブリルは、ナノフィブリルゲルの中に残存し得る。一次フィブリルへの微細化は、「ナノフィブリル化」と呼ぶことができ、この2つの形態間で円滑な移行があり得る。一次フィブリルは、「ナノフィブリルゲル」と呼ばれ得るゲル(一次フィブリルのメタ安定網状組織)を水環境で形成する。ナノフィブリルから形成されるゲルは、ナノセルロースを含有すると考えることができる。
【0012】
ナノフィブリルゲルは通常、一部ナノセルロースで構成されていると考えられる非常に微細なフィブリルを含有するので、それらは望ましく、それほど微細でないまたはナノセルロース構造を示さないフィブリルよりも、それら自体へのまたは存在する任意の他の材料へのより強い結合可能性を示す。
【0013】
しかし、従来の精砕機による達成可能な微粉度は、限定されている。また、粒子を微細化するためのいくつかの他の装置、例えば、所定の粒群の繊維を互いに分けることができるだけである、US2001/0045264に記載された毛羽立て機(fluffer)などは、セルロース繊維をナノフィブリルに微細化することができない。
【0014】
同様に、WO02/090651では、紙、板紙またはボール紙を製造する間に生じたパルプ不合格品をリサイクルする方法が記載されており、ここでは、とりわけ、繊維を含有するより清浄な不合格品、顔料および/または繊維が、ボールミルにより特定の粒度に摩砕される。しかし、ナノフィブリルまたはナノフィブリルセルロースゲルへのフィブリル化は言うまでもなく、存在する繊維のフィブリル化についてまったく言及されていない。
【0015】
フィブリルへのまたはさらにセルロース分子における、繊維のさらなる微細化が望まれる場合、他の方法が必要である。
【0016】
例えば、US4,374,702には、懸濁液が、少なくとも3000psiの圧力降下および高速度せん断作用下、続いて固体表面に対して高速度の減速性衝撃下におかれる小口径のオリフィスを有する高圧ホモジナイザーに、繊維状セルロースの液体懸濁液を通すステップ、前記セルロース懸濁液が実質的に安定な懸濁液になるまで、前記懸濁液をオリフィスに通すことを繰り返すステップを含む、ミクロフィブリル化セルロースを調製する方法が記載されており、前記方法は、セルロース出発材料を実質的に化学変化させることなしに、前記セルロースをミクロフィブリル化セルロースに変える。ナノフィブリルセルロースゲルについては、言及されていない。
【0017】
US6,183,596B1には、予め叩解したパルプのスラリーを、2つ以上の粉砕機を有するラビング装置に通し、これら粉砕機は、それらを互いに擦り合わせてパルプをミクロフィブリル化して、ミクロフィブリル化セルロースを得て、得られたミクロフィブリル化セルロースを高圧ホモジナイザーでさらに超ミクロフィブリル化して、超フィブリル化セルロースを得ることができるように配置されている、超ミクロフィブリル化セルロースを製造する方法が開示されている。しかし、ナノフィブリルセルロースゲルに言及されていない。
【0018】
さらに、超微細摩擦粉砕機を用いることができ、ここで、該粉砕機は、機械的せん断加工によって繊維を微粉に小さくさせるが(例えば、US6,214,163B1を参照)、しかし、ナノフィブリルセルロースゲルを自動的にはもたらさない。
【0019】
ナノフィブリルセルロースの機械的製造は、ささいなものではない。例えば、フィブリル化プロセスの間に粘度増加の問題がある。これは、そのプロセスを完全に止めまたは必要とされる比エネルギーを増加させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0045264号明細書
【特許文献2】国際公開第02/090651号
【特許文献3】米国特許第4,374,702号明細書
【特許文献4】米国特許第6,183,596号明細書
【特許文献5】米国特許第6,214,163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、容易に実施されるだけでなく、エネルギー効率的である、ナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法に対する必要性が依然として存在する。
【0022】
本発明の1つの目的は、ナノフィブリルセルロースゲルを製造するこのような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
スループットが粘度の関数である機械において、ナノフィブリルセルロースゲルの粘度の有利な低下が、セルロース繊維含有パルプと一緒の、特定の充填剤および/または顔料の添加および共処理により観察され、より良好なスループットをもたらすことが今や見出された。
【0024】
したがって、上記問題は、本発明のナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法によって解決される。
【0025】
この方法は、以下のステップ:
(a)セルロース繊維を供給するステップ;
(b)少なくとも1種の充填剤および/または顔料を供給するステップ;
(c)セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合するステップ;
(d)少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、ゲルが形成されるまで、セルロース繊維をフィブリル化するステップ
を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の文脈におけるナノフィブリルセルロースは、一次フィブリルに少なくとも部分的に微細化されている繊維を意味する。これらの一次フィブリルが、水環境にある場合、ゲル(本質的にナノセルロースである微粉度の限界において考えられる一次フィブリルのメタ安定網状組織)が形成され、これは、「ナノフィブリルゲル」と命名され、ここでは、様々な程度のナノフィブリル(これらのすべてが本発明によるナノフィブリルセルロースゲルという用語に含まれる。)を含有するナノフィブリルゲルを含む、ナノ繊維とナノフィブリルゲルの間の円滑な移行が存在する。
【0027】
この点で、本発明の文脈におけるフィブリル化は、それぞれ、繊維およびフィブリルをそれらの長軸に沿って大部分微細化し、繊維およびフィブリルの直径の減少をもたらす任意のプロセスを意味する。
【0028】
本発明の方法によれば、少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下でのセルロース繊維のフィブリル化は、ナノフィブリルセルロースゲルを与える。フィブリル化は、ゲルが形成されるまで行われ、ゲルの形成は、せん断速度の依存関係における粘度のモニタリングによって確認される。せん断速度の段階的な増加後に、粘度の低下を反映する一定の曲線が得られる。その後にせん断速度が段階的に減少する場合、粘度は再び増加するが、せん断がゼロに近づくにつれて、せん断速度の範囲の少なくとも一部にわたるその対応する値は、せん断速度を増加させるときよりも低く、せん断速度に対してプロットした粘度のヒステリシスによってグラフで表される。この挙動が観察されるとすぐに、本発明によるナノフィブリルセルロースゲルが形成される。
【0029】
さらに、スループットが粘度の関数である、機械におけるパルプのフィブリル化の間に、本発明によって形成されるゲルの粘度は好ましくは、充填剤および/または顔料の非存在下でフィブリル化された、対応するナノフィブリルセルロースの懸濁液の粘度よりも低い。
【0030】
ブルックフィールド粘度は、当業者に知られている日常的な操作を用いる任意の従来のブルックフィールド粘度計によって測定され得る。
【0031】
本発明の方法で使用され得るセルロース繊維は、ユーカリパルプ、トウヒパルプ、マツパルプ、ブナパルプ、麻パルプ、綿パルプ、およびこれらの混合物からなる群から選択されるパルプに含有されるようなものであり得る。一実施形態では、このセルロース繊維のすべてまたは一部は、セルロース繊維を含む材料をリサイクルするステップに由来し得る。したがって、該パルプは、リサイクルパルプであってもよい。
【0032】
原理上、セルロース繊維のサイズは重要ではない。市販されており、それらのフィブリル化に使用される装置で処理可能である任意の繊維が、一般に本発明で有用である。それらの素性に依存して、セルロース繊維は、50mmから0.1μmの長さを有し得る。このような繊維、ならびに好ましくは20mmから0.5μm、より好ましくは10mmから1mm、典型的には2から5mmの長さを有するものは、本発明で有利に使用することができるが、より長いおよびより短い繊維も有用であり得る。
【0033】
セルロース繊維は、懸濁液、特に水性懸濁液の形態で供給されることが、本発明の使用に有利である。好ましくは、このような懸濁液は、0.2から35重量%、より好ましくは0.25から10重量%、さらにより好ましくは0.5から5重量%、特には1から4重量%、最も好ましくは1.3から3重量%、例えば、1.5重量%の固形分を有する。
【0034】
少なくとも1種の充填剤および/または顔料は、沈降炭酸カルシウム(PCC);天然重質炭酸カルシウム(GCC);ドロマイト;タルク;ベントナイト;クレー;マグネサイト;サテンホワイト;セピオライト、ハント石、珪藻土;シリケート;およびこれらの混合物からなる群から選択される。バテライト、カルサイトまたはアラゴナイト結晶構造を有し得る沈降炭酸カルシウム、ならびに/または大理石、石灰石および/もしくは白亜から選択され得る天然重質炭酸カルシウムが、特に好ましい。
【0035】
特別の実施形態では、超微細で離散した、角柱形状、偏三角形状または菱面体形状の沈降炭酸カルシウムの使用が有利であり得る。
【0036】
充填剤および/または顔料は、粉末の形態で供給され得るが、それらは好ましくは、懸濁液、例えば、水性懸濁液の形態で添加される。この場合、懸濁液の固形分は、それが、ポンプ使用可能な液体である限り、重要でない。
【0037】
好ましい実施形態では、充填剤および/または顔料の粒子は、0.5から15μm、好ましくは0.7から10μm、より好ましくは1から5μm、最も好ましくは1.1から2μm、例えば、1.5μmまたは3.2μmのメジアン粒径を有する。
【0038】
特に好ましくは、充填剤および/または顔料の粒子は、0.01から15μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.3から5μm、最も好ましくは0.5から4μmのメジアン粒径を有する。
【0039】
0.5μmより大きいd50を有する粒子について、重量メジアン粒径d50の測定のために、米国、Micromeritics社製Sedigraph5100装置を用いた。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行った。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。d50<500nmを有する粒子について体積メジアン粒径の測定のために、英国、Malvern社製Malvern Zetasizer Nano ZSを用いた。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行った。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。
【0040】
充填剤および/または顔料は、ポリカルボン酸および/またはこれらの塩もしくは誘導体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸に基づくエステル、アクリルアミドまたはアクリル酸エステル(メチルメタクリレートなど)、またはこれらの混合物のホモポリマーまたはコポリマー;アルカリポリリン酸塩、ホスホン酸、クエン酸および酒石酸ならびにこれらの塩またはエステル;またはこれらの混合物からなる群から選択されるものなどの分散剤を伴っていてもよい。
【0041】
繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合は、充填剤および/または顔料を、繊維に1または数ステップで添加することによって行われ得る。同様に、繊維を、充填剤および/または顔料に1または数ステップで添加し得る。充填剤および/または顔料ならびに繊維は、フィブリル化ステップの前にまたは間に全部または複数回に分けて添加され得る。しかし、フィブリル化の前の添加が好ましい。
【0042】
フィブリル化プロセスの間に、充填剤および/または顔料のサイズならびに繊維のサイズは変わり得る。
【0043】
好ましくは、乾燥重量基準での繊維対充填剤および/または顔料の重量比は、1:33から10:1、より好ましくは1:10から7:1、さらにより好ましくは1:5から5:1、典型的には1:3から3:1、特には1:2から2:1、最も好ましくは1:1.5から1.5:1、例えば、1:1である。
【0044】
充填剤および/または顔料の投与量は、重要であり得る。充填剤および/または顔料が多すぎる場合、これは、ゲルの形成に影響し得る。したがって、特定の配合でゲル形成が見られない場合、充填剤および/または顔料の量を減少させることが必要であり得る。
【0045】
さらに、一実施形態では、該配合物は、フィブリル化の前に、2から12時間、好ましくは3から10時間、より好ましくは4から8時間、例えば、6時間保存されるが、これが、繊維の膨潤を理想的に引き起こし、フィブリル化を容易にさせるからである。
【0046】
繊維の膨潤は、上昇させたpHでの保存によって、ならびに例えば、銅(II)エチレンジアミン、鉄−ナトリウム−酒石酸塩またはリチウム−塩素/ジメチルアセトアミンのようなセルロース溶媒の添加によって、または当技術分野で知られている任意の他の方法によって促進し得る。
【0047】
フィブリル化は、そのために有用な任意の装置によって行われる。好ましくは、該装置は、ホモジナイザーである。それは、US6,214,163またはUS6,183,596で記載されたとおりの超微細粉砕機であってもよい。
【0048】
懸濁液が、狭い開口を通して高圧下で押圧される、任意の市販のホモジナイザー、特に高圧ホモジナイザーが、本発明における使用に好適であり、これは、バルブを備えていることができ、狭い開口の前で直接硬い衝撃面に対して高圧で狭い開口から放出され、したがって粒径を減少させる。圧力は、ピストンポンプなどのポンプで生じさせることができ、衝撃面は、環状のバルブ開口の周りに伸びている衝撃リングを備えることができる。本発明で使用され得るホモジナイザーの例は、GEA Niro SoaviのAriete NS2006Lである。しかし、とりわけ、APV Gaulin Series、HST HL SeriesまたはAlfa Laval SHL Seriesなどのホモジナイザーも使用され得る。
【0049】
さらに、超微細摩擦粉砕機などの装置、例えば、Super Mass Colloiderが、本発明で有利に使用され得る。
【0050】
本製造方法は、その効率に関して特に有利である。上述のように、既知のパルプ懸濁液またはゲルは、フィブリル化プロセスで比較的高い粘度を有する欠点を有し、しばしば高エネルギー消費につながり、これは、経済的ならびに環境的観点から望ましくない。
【0051】
一般に、本方法における粘度の最小化は、2つの利点:
(i)ゲルはより効率的に形成され得るが、それにもかかわらず、ゲルが徐々に形成されるにつれて粘度が上昇する(比較的低いレベル線で)こと、
(ii)粘度がプロセス中で使用可能な実行最高値に近く再度上昇するまで、本発明によって実行することによって、粘度臨界プロセスでさらにより有益なゲルを作ることができること
を可能にさせ、これは、さらにより微細なゲルへの進行が、以前に達成することができたよりもさらに進んだことを意味する。
【0052】
したがって、特定の粘度を達成するために適用される全エネルギーは、本発明によるナノフィブリルセルロースゲルと同じ種類および量のパルプを含有するが、充填剤および/または顔料を含有しないゲルに対して有意により高い。同じ種類および量のパルプからできているが、フィブリル化の後に充填剤および/または顔料が添加されるゲルまたは懸濁液に、同じことが適用される。
【0053】
結果として、特定のブルックフィールド粘度を達成するための全エネルギー消費に関してナノフィブリルセルロースゲルの効率は、充填剤および/もしくは顔料の非存在下でフィブリル化された対応するナノフィブリルセルロースゲルもしくは懸濁液、または充填剤および/もしくは顔料を含有しない対応するゲルもしくは懸濁液の効率よりも高い。
【0054】
したがって、本発明のさらなる態様は、上記のとおりの方法でナノフィブリルゲルを調製することによって、ナノフィブリルセルロースゲルを製造する効率を向上させるための方法を提供することである。
【0055】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって得られるナノフィブリルセルロースゲルであり、特定のブルックフィールド粘度を達成するための全エネルギー消費に関してその効率は、充填剤および/もしくは顔料の非存在下でフィブリル化された対応するナノフィブリルセルロースゲル、または充填剤および/もしくは顔料を含有しない対応するゲルの効率よりも高い。
【0056】
それらの機械的強度特性のために、ナノフィブリルセルロースゲルは、材料複合体、プラスチック、塗料、ゴム、コンクリート、セラミック、接着剤、食品などの用途、または創傷治癒用途においても有利に使用され得る。
【0057】
以下に記載される図面、ならびに実施例および実験は、本発明を例証する役割を果たすものであって、本発明を決して限定すべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、炭酸カルシウムと一緒またはなしのパルプ混合物の均質化の間のブルックフィールド粘度の進行を示すグラフである。
【図2】図2は、均質化の前または後に添加される炭酸カルシウムと一緒およびなしのパルプ混合物のブルックフィールド粘度を示すグラフである。
【図3】せん断速度に対する、均質化の前または後に添加される炭酸カルシウムと一緒およびなしのパルプ混合物の粘度の依存性を示すグラフである。
【図4a】図4aは、繊維のみのSEM画像を示す図である。
【図4b】図4bは、繊維、および均質化の前に存在する繊維の重量に基づいて100重量%の炭酸カルシウムのSEM画像を示す図である。
【図5a】図5aは、繊維のみのSEM画像を示す図である。
【図5b】図5bは、繊維、および均質化2時間後の、存在する繊維の重量に基づいて100重量%の炭酸カルシウムのSEM画像を示す図である。
【図6a】図6aは、繊維のみのSEM画像を示す図である。
【図6b】図6bは、繊維、および均質化10時間後の、存在する繊維の重量に基づいて100重量%の炭酸カルシウムのSEM画像を示す図である。
【図7】図7は、炭酸カルシウム充填剤と一緒およびなしの混合物のゲル形成の効率を示すグラフである。
【図8】図8は、充填剤としてナノメートルサイズの炭酸カルシウムおよびタルクを含有する混合物のゲル形成の効率を示すグラフである。
【実施例】
【0059】
A)レオロジー特性
本発明を実証するために、高精砕パルプ(製紙工場で使用されるパルプ精砕機を用いて、80−83°SRに精砕した、20°SRの標準ユーカリパルプ)およびこのパルプと規定量の炭酸塩(存在する繊維の乾燥重量に基づいて100重量%、乾燥対乾燥(d/d)を、ホモジナイザーを用いてフィブリル化した。このパルプ(対照)および混合物を、約1000バール圧で10時間均質化し、粘度測定値およびSEM写真は、規定の時間間隔で取った。
【0060】
均質化10時間後の対照の粘度(50℃での)560mPa・sは、存在する繊維の乾燥重量に基づいて、100重量%の炭酸カルシウム(Omyacarb 1 AV)と一緒に共均質化することによって435mPa・sに低下させることができた。
【0061】
炭酸カルシウム単独の添加により、均質化パルプの粘度の低下がもたらされるまたは共均質化が必要であるかどうかを検査するために、既に均質化されたパルプの試料を炭酸カルシウム(存在する繊維の乾燥重量に基づいて100重量%、d/d)と混合し、これをブレンドと呼ぶ。
【0062】
「ブレンド」の粘度(865mP・s)は、共均質化混合物の粘度(435mPa・s)より高く、存在する炭酸カルシウムなしの均質化対照の粘度(560mPa・s)よりも高かった。
【0063】
一方、均質化パルプはないが、同じ固形分を有する炭酸塩スラリーは、繊維含有試料より有意に高い粘度は示さない。
【0064】
2.材料
炭酸塩: Omyacarb 1 AV(GCC、存在する繊維の重量に基づいて100重量%の固形分、重量メジアン粒径d50=1.7μm(Sedigraph5100で測定して))(Omya AGから入手できる。)
パルプ: 製紙工場で使用される精砕機を用いて80−83°SRにフィブリル化した標準ユーカリパルプ(20°SR)。ショッパーリーグラー度(°SR)は、Zellcheming Merkblatt V/7/61によって測定し、ISO5267/1で標準化した。
【0065】
3.実験構成
3.1試料調製
1つのホモジナイザーの長期試験のために、1000g(約3重量%の固形分)の入手したままのパルプを1250gの水道水と、撹拌機(4000rpmの回転速度で動作する溶解機ディスク)を用いて混合し、約1.3重量%の固形分を生じた。必要に応じて、対応する量の炭酸カルシウム(Omyacarb 1 AV)を、さらに撹拌しながら添加した(表1参照)。このスラリーの対応する量を採取し、以下に記載するとおりに粘度実験およびSEM顕微鏡写真撮影を行った。スラリーの残部をホモジナイザーの槽に移した。粘度測定に使用した試料は、測定を行った後に本方法にリサイクルした。
【0066】
【表1】

【0067】
3.2ホモジナイザー
Homogenizer(GEA Niro Soavi;NS2006L型)をフィブリル化実験に使用した。その槽を外部の二重プロペラ撹拌機で撹拌して、スラリーの沈殿を防止し、良好な変換を維持した。
【0068】
この機械は、加圧なし(両方の均質化段階でのピストンは、完全に引き戻した)および最低ポンプ速度で起動した。約1000バールの圧力を調整するために、最初の段階だけピストンを押し込んだ。反応時間は、1000バールの圧力が達成されたときに開始し、±200バールだけの圧力変動が観察された。一貫性して圧力不足または過剰圧力を、ピストンの位置を変えることによって補償した。
【0069】
スラリーは、循環に保持した。試料は、均質化チャンバー後(槽に再び入る前)に採取し、均質化チャンバーを通して少なくとも1回の繊維の通過を確実にさせた。
【0070】
4.方法
4.1粘度測定
4.1.1ブルックフィールド粘度
粘度測定は、Brookfield DV−II+粘度計で行った。モータ速度は、100rpmに設定し、粘度は、10秒、60秒および600秒後に読み取った。試料は、室温または50℃で測定した。試料は、熱制御超音波浴中で加熱した。
【0071】
4.1.2レオロジー測定
レオロジー測定は、CC28.7測定系を有するPaar−Physika MCR300を用いて行った。
【0072】
4.2SEM
走査電子顕微鏡写真(SEM)は、0.5gの試料を200cmの蒸留水に添加し、次いで、0.8μmの微細孔ニトロセルロースフィルターを通してろ過した。上に横たわる試料を有するフィルターを真空乾燥機で乾燥させた。この方法でこの膜フィルター上に得た調製物に、50mm金をスパッタリングし、様々な倍率でSEMにおいて評価した。
【0073】
5.結果
5.1粘度測定
図1から、均質化の間の粘度(ブルックフィールド)の評価を行った。粘度は、600秒後に読み取った。試料は、約35℃で測定した(これは、均質化チャンバー後に直ちに採取した試料の温度であった)。試料1は、パルプのみであり、したがって、炭酸カルシウム含有試料2に対する対照材料として用いた。既に述べたように、粘度は、フィブリル化の間に増加する。理解されるように、100重量%の炭酸カルシウム(存在する繊維の乾燥重量に基づいて;d/d)を含有する試料2は常に、対照より低い粘度を示したが、均質化時間が増すにつれてやはり増加する。
【0074】
炭酸カルシウムの存在が、粘度を低下させるために均質化の間に必要であるかどうか証明するために、均質化(10時間)試料1および均質化後に添加した100重量%の炭酸カルシウム(存在する繊維の乾燥重量に基づいて;d/d)のブレンドも、作製し、調べた。粘度は、10秒、60秒および600秒後に読み取った。試料は、熱制御超音波浴中で加熱し、50℃で測定した。
【0075】
図2は、純粋均質化パルプ(試料1)、および100重量%の炭酸カルシウム(存在する繊維の乾燥重量に基づいて;d/d)と共均質化したパルプ(試料2)、ならびに均質化パルプおよび均質化後に添加した100重量%の炭酸カルシウム(存在する繊維の乾燥重量に基づいて;d/d)の混合物(ブレンド)の粘度を示す。この点において、「10秒」、「60秒」および「600秒」は、モータの「電源オン」10秒、60秒および600秒後に取ったブルックフィールド粘度の値を指す。
【0076】
図に示すように、共均質化混合物は、対照より低い粘度を示すが、ブレンドは、対応する共均質化混合物(試料2)および対照(試料1)よりも高い粘度を示す。
【0077】
図1および図2における最終粘度(10時間の均質化時間における)を比較すると、わずかに異なった値が理解され得る。この差は、パルプ混合物の粘度の温度依存性に帰される。
【0078】
5.2レオロジー測定
図3で分かるように、すべての試料は、せん断減粘性挙動を示す。表2は、対照、およびその100重量%炭酸カルシウム共均質化混合物、ならびに100重量%のブレンドの18000s−1における粘度を示す。ブルックフィールド測定のデータ(図2)と同様に、100%重量%炭酸塩共均質化は、最も低い粘度(8mPa・s)を示し、100重量%炭酸塩ブレンドは、最も高い粘度(17mPa・s)を示した。
【0079】
【表2】

【0080】
さらに、図3から、100重量%炭酸カルシウムで共均質化した繊維の場合を示す、試料2の場合にヒステリシスがあることが明らかに分かる。
【0081】
低いせん断速度において、せん断が約18000s−1のせん断速度まで増加するにつれて、粘度は徐々に低下する。その後せん断速度をゆっくり低下させると、前の増加ステップの対応するせん断速度におけるよりも低い粘度を観察することができ、粘度は、前のステップにおける粘度よりも、ならびに同様のせん断条件下のブレンドおよびパルプのみの試料1の粘度よりもこれから常に低いままである。
【0082】
この挙動は、本発明によって達成され得る低い粘度を示すだけでなく、ゲルの形成の明らかな徴候でもある。
【0083】
5.3 SEM
均質化前の図4a(試料1を指す)および図4b(試料2を指す)を、それぞれ、均質化2時間後の図5aおよび図5bと、それぞれ、および均質化10時間後の図6aおよび図6bと、それぞれ比較すると、均質化時間が増加するとともにパルプ繊維はより微細になることが理解され、この理論に拘束されることを望まないが、フィブリルの一定の微粉度が達成された後に、それらは、炭酸塩粒子の周りを包み、炭酸塩粒子の上部に一種の層を形成するようにみえる。
【0084】
B)ゲル形成の効率
本発明の文脈における「効率」は、比エネルギー消費当たりに得られるブルックフィールド粘度(より高いブルックフィールド粘度は、より高い程度のフィブリル化を意味するより安定なゲルを意味する。)と定義される。
【0085】
1.処理
実施例のすべて(実施例4−9)は、グリットクラス46(グリットサイズ297−420μm)を有する炭化ケイ素の石を取り付けた超微細摩擦粉砕機(日本国、Masuko Sangyo Co.Ltd.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2)によって処理した。石の間のすき間は、「−50」μm(供給業者によって引き渡されたマニュアルに記載のとおりの、動的0点)に調整した。回転粉砕機の速度は、1−5回の通過について2500rpm、6回および7回の通過について2000rpm、8回および9回の通過について1500rpm、10回および11回の通過について1000rpm、12回および13回の通過について750rpmならびに14回および15回の通過について500rpmに設定した。
【0086】
2.エネルギー測定
エネルギー測定は、主電源と変圧器の間に電気計器(ELKO Syteme AG、DIZ D665Di)を設置し、全Supermasscolloiderシステム(供給業者から引き渡されたままの)のエネルギー取込みを測定することによって行った。電気計器は、ワット時当たり1シグナルをデジタルカウンター(Hengstler、tico731)に送り、1ワット時の精度で、通過の最後における通過当たりのエネルギー消費を読み取ることができる。
【0087】
3.重量測定
固形分は、Mettler Toledo HB 43−S Halogen固体バランスを用いて測定した。最終の全質量は、Mettler PK 36 Delta Rangeバランスを用いて測定した。初期の乾燥質量は、実験の開始時の全乾燥計量の合計である(詳細な組成は、1つの実験の処方で見出すことができる。)。
【0088】
4.ブルックフィールド粘度決定
ブルックフィールド粘度は、Brookfield Model DV−II+Viscometerで測定した。
【0089】
ブルックフィールド測定データの良好な適合性をもたせるために、ブルックフィールド粘度は、希釈液の列で測定し、固定固形分におけるブルックフィールド粘度を計算した。さらに、乾燥セルロース含有量(乾燥パルプに由来する)対水の比のみを、ブルックフィールド粘度の参照パラメータとして採用することを規定した。以下の式は、セルロース固形分(s.c.)を計算するために用いた:
【0090】
【数1】

【0091】
標準化ブルックフィールド粘度BV2%は、以下の方法で決定した:
1.元の製品の固形分およびブルックフィールド粘度(100rpm、30秒後に測定)を測定する。
【0092】
2.元の製品の3つの希釈液を、固形分(少なくとも10gの重量)およびブルックフィールド粘度(100rpm、30秒後に測定)が測定される水道水の従った量を添加することによって作る。
【0093】
3.xy−散布図(x:固形分、y:ブルックフィールド粘度)を作り、その点を指数法則曲線(y=ax)に当てはめる。
【0094】
4.パラメータaおよびbを用いて、2重量%の標準化セルロース固形分xにおけるブルックフィールド粘度を計算する。
【0095】
ゲルのブルックフィールド粘度に対するOmyacarb 1 AV(試料5から7)の固有の影響を補正するために、充填剤を含有しない比較のゲル(試料4)を、従った量のOmyacarb 1 AVと混合した(試料5−7におけるのと同様の比を有するように)。これらの混合物のBV2%を、上記の手順に従って決定し、充填剤を含有しないゲルを参照して補正パーセントを計算した。補正パーセントは、以下である:0.1部(重量部;d/d;試料5参照)充填剤:<0.1%(無視)、3部(重量部;d/d;試料6参照)充填剤:−14.5%、10部(重量部;d/d;試料7参照)充填剤:−37.5%。
【0096】
試料8および試料9に対して従った補正は行わず、したがって、以下に記載される提示された「効率」値は、約15から20%の範囲で過大評価される)
【0097】
5.比エネルギー消費の計算
通過当たりの比エネルギー消費Eは、以下のとおりに計算する:
【0098】
【数2】

【0099】
6.「効率」の計算
本発明の文脈における「効率」(□)は、比エネルギー消費当たり得られるブルックフィールド粘度(より高いブルックフィールド粘度は、より高いフィブリル化の程度を意味するより安定なゲルを意味する。)と定義される:
【0100】
【数3】

【0101】
7.材料
Omyacarb 1 AV:Omya AGから入手できる;微細な炭酸カルシウム粉末、高純度の白大理石から製造された;重量メジアン粒径d50は、Sedigraph5100で測定して1.7μmである。
【0102】
Nano GCC:天然重質炭酸カルシウム(Vermontからの大理石);分散スラリー(固形分50重量%);体積メジアン粒径d50は、Malvern Zetasizer Nano ZSで測定して246nmである。
【0103】
Finntalc F40:Mondo Mineralsから入手できるFinntalc F40;紙およびボード用のタルク充填剤。
【0104】
ユーカリパルプ:乾燥マット、白色度:88.77%、17°SR
マツパルプ: 乾燥マット、白色度:88.19%、20°SR
【0105】
8.試料調製
試料4(比較):
180gの乾燥ユーカリパルプおよび5820gの水道水を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を、対応の段落における上記のとおりのSupermasscolloiderによって処理した。この例は、3回行い、その再現性を示した。
【0106】
試料5:
180gの乾燥ユーカリパルプ、5820gの水道水および18gのOmyacarb 1 AV(10:1パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を、対応の段落で上記のとおりのSupermasscolloiderによって処理した。この実施例は、3回行い、その再現性を示した。
【0107】
試料6:
180gの乾燥ユーカリパルプ、5820gの水道水および540gのOmyacarb 1 AV(1:3パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を対応の段落で上記したとおりのSupermasscolloiderで処理した。この実験は、2回行い、その再現性を示した。
【0108】
試料7:
180gの乾燥ユーカリパルブ、5820gの水道水および1800gのOmyacarb 1 Av(1:10パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を対応の段落で上記したとおりのSupermasscolloiderで処理した。
【0109】
試料8:
180gの乾燥マツパルブ、5820gの水道水および180gのFinntalc F40(1:1パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を対応の段落で上記したとおりのSupermasscolloiderで処理した。
【0110】
試料9:
180gの乾燥ユーカリパルブ、5820gの水道水および360gのNano GCC(1:1パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を対応の段落で上記したとおりのSupermasscolloiderで処理した。
【0111】
9.結果
試料4−7:
試料4−7を比較すると、効率は、より多くの充填剤(すなわち最大250%だけ)の存在下で製造したゲルについて増加することが明らかである。効率利得は、充填剤の非存在下で形成されたゲルと比較して15%を超えているはずである。
【0112】
試料8および9:
試料8および9は、充填剤添加の固有のブルックフィールド粘度の増加のために、ブルックフィールド粘度−補正は行わなかった(「ブルックフィールド粘度決定」のセクション参照)。
【0113】
しかし、図8から分かるように、効率は、比較試料4の1つより約75%高く、測定効率値のマイナス20%の補正を仮定しても、依然として40%より高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セルロース繊維を供給するステップ;
(b)少なくとも1種の充填剤および/または顔料を供給するステップ;
(c)セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合するステップ;
(d)少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、ゲルが形成されるまで、セルロース繊維をフィブリル化するステップ
を特徴とする、ナノフィブリルセルロースゲルを製造する方法。
【請求項2】
得られたナノフィブリルセルロースゲルのブルックフィールド粘度が、充填剤および/または顔料の非存在下でフィブリル化された対応するナノフィブリルセルロース懸濁液のブルックフィールド粘度よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セルロース繊維が、ユーカリパルプ、トウヒパルプ、マツパルプ、ブナパルプ、麻パルプ、綿パルプ、およびこれらの混合物からなる群から選択されるパルプに含有されるようなものであることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
セルロース繊維が、好ましくは0.2から35重量%、より好ましくは0.25から10重量%、さらにより好ましくは0.5から5重量%、特には1から4重量%、最も好ましくは1.3から3重量%、例えば、1.5重量%の固形分を有する懸濁液の形態で供給されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
充填剤および/または顔料が、沈降炭酸カルシウム;天然重質炭酸カルシウム;ドロマイト;タルク;ベントナイト;クレー;マグネサイト;サテンホワイト;セピオライト;ハント石;珪藻土;シリケート;およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
充填剤および/または顔料が、沈降炭酸カルシウム(好ましくは、バテライト、カルサイトまたはアラゴナイト結晶構造を有する。);天然重質炭酸カルシウム(好ましくは、大理石、石灰石および/または白亜から選択される。);およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
沈降炭酸カルシウムが、超微細で離散した、角柱形状、偏三角形状または菱面体形状の沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
充填剤および/または顔料の粒子が、0.01から15μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.3から5μm、最も好ましくは0.5から4μmのメジアン粒径を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
充填剤および/または顔料が、ポリカルボン酸および/またはそれらの塩もしくは誘導体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などに基づくエステルなど、例えば、アクリルアミドもしくはアクリル酸エステル(メチルメタクリレートなど)、またはこれらの混合物のホモポリマーまたはコポリマー;アルカリポリリン酸塩、ホスホン酸、クエン酸および酒石酸およびこれらの塩またはエステル;またはこれらの混合物からなる群から選択される分散剤を伴っていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合が、充填剤および/または顔料を繊維にまたは繊維を充填剤および/または顔料に1または数ステップで添加することによって行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
充填剤および/もしくは顔料ならびに/または繊維が、前記フィブリル化ステップ(d)の前にまたは間に、好ましくは前記フィブリル化ステップ(d)の前に全部または複数回に分けて添加されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
乾燥重量基準で繊維対充填剤および/または顔料の重量比が、1:33から10:1、好ましくは1:10から7:1、より好ましくは1:5から5:1、典型的には1:3から3:1、さらにより好ましくは1:2から2:1、最も好ましくは1:1.5から1.5:1、例えば、1:1であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
フィブリル化が、ホモジナイザーまたは超微細摩擦粉砕機によって行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ナノフィブリルゲルが、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって調製されることを特徴とする、ナノフィブリルセルロースゲルを製造する効率を向上させる方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項または請求項14に記載の方法によって得られるナノフィブリルセルロースゲル。
【請求項16】
一定のブルックフィールド粘度を得るための全エネルギー消費に対するナノフィブリルセルロースゲルの効率が、充填剤および/もしくは顔料の非存在下でフィブリル化された対応するナノフィブリルセルロースゲルまたは充填剤および/もしくは顔料を含有しない対応するゲルの効率よりも高いことを特徴とする、請求項15に記載のナノフィブリルセルロースゲル。
【請求項17】
材料複合体、プラスチック、塗料、ゴム、コンクリート、セラミック、接着剤、食品などの用途におけるまたは創傷治癒用途における、請求項15または16のいずれかに記載のナノフィブリルセルロースゲルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−522093(P2012−522093A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502647(P2012−502647)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054233
【国際公開番号】WO2010/115785
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】