説明

ナノポーラス表面を有する立体製品及びその製造方法

【課題】孔密度や孔径、孔径分布の制御が容易で、簡易な、ナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】糸を編む又は織ることによって任意の立体形状に仕上げる立体製品の製造方法と、母材中にナノ粒子を分散させた材料からなる表面を、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬することによってナノポーラスにする方法、の2つの技術を組み合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、ナノポーラス表面を有する立体製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポーラス表面、すなわち、ナノオーダー(具体的には孔径1000nm以下)の凹部を表面に有する製品は、平滑な表面とは異なる電気的、光学的、化学的性質を有し、各種分野において機能性材料として注目されている。
農業や再生医療等の分野においては、研究用、医療用の細胞培養足場材(細胞を培養する際の足場となる材料)としてナノポーラス表面を有する製品を活用することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ナノポーラス表面を有する製品の製造方法としては、電子線露光、X線露光を利用した微細パターン加工技術が考えられる。また、自然に形成される構造を利用する方法として、アルミニウムを酸性電解液中で陽極酸化したときに形成されるナノポーラスなアルミナ陽極酸化膜を利用する方法がよく知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−157574号公報
【特許文献2】特許第4159103号公報
【特許文献3】特開平11−200090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、微細パターン加工技術は、電子線露光装置、X線露光装置等の露光装置を用いた複雑な処理が必要となる。特許文献2においてナノポーラス表面を形成するための採用されているナノインプリント技術は、ナノオーダーの凹凸構造を有する金型を加工対象物に転写させるというものであり、転写工程における金型の移動等、緻密な条件管理が必要とされる。また、金型作成のコストが高く、大面積化が困難である。特に、細胞培養足場材としては、平面状のものだけでなく、生体器官や組織を模倣した立体形状のもの等も求められるところ、そのような複雑な立体形状を有する製品に対して微細パターン加工やナノインプリントを施すことは難しい。
また、効率よく培養を行うためには、細胞足場材の表面の微細凹部の密度(空孔率)、孔径、孔径分布等を培養する細胞の種類等に応じ適切は範囲に設定することが望まれるが、特許文献1に開示されている方法や、アルミナ陽極酸化膜を利用する方法においては、凹部の密度や孔径、孔径分布の制御が難しい。
そのため、簡易で、孔密度や孔径、孔径分布を所望の範囲に制御することができるナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、立体製品の製造方法について種々検討した結果、糸を立体形状編む又は織ることにより、複雑な立体形状を有する製品を簡単に製造できることに気がついた。そして、この方法において、糸の表面をナノポーラスとすることにより、簡易にナノポーラス表面を有する立体製品を得られることを見出した。
【0007】
さらに、本発明者は、所望の孔径、孔径分布を有するナノポーラス表面を有する糸を製造すべく、ナノポーラス表面を形成する方法について鋭意研究したところ、母材中にナノ粒子を分散させた材料を用意し、これを、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬すると、ナノ粒子だけが選択的に溶出され、その結果、材料の表面にナノ粒子の溶出跡としてナノオーダーの凹部が形成されること、さらに、その凹部の密度や孔径や孔径分布は、母材中に分散させるナノ粒子の量、粒径、粒径分布を調整すれば所望の範囲に制御できること、を見出した。
以上の知見に基づき、本発明者は、糸を編む又は織ることによって任意の立体形状に仕上げる立体製品の製造方法と、母材中にナノ粒子を分散させた材料からなる表面を、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬することによってナノポーラスにする方法、の2つの技術を組み合せて、所望の孔径、孔径分布を有するナノポーラス表面を有する立体製品を簡易に製造することに想到した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本実施態様について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施態様においては、ナノポーラス表面を有する糸を用いて、立体形状を有する編物又は織物を作る。
ナノポーラス表面を有する糸は、母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を予め製造し、これをナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬してナノ粒子のみを選択的に溶出させることにより、その表面にナノ粒子の溶出跡であるナノオーダーの孔径の凹部を形成することによって製造することができる。
ナノ粒子を選択的に溶出させる工程は、糸を立体形状に編む(織る)前に実施しても、後に実施してもどちらでもよい。
【0009】
母材を構成する材料は、ナノポーラス表面を有する立体製品の用途に応じて選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、エラストマー、セルロース等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエステル;ポリアミド;ポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリスチレン又はスチレン系共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTEF)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTEF)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂(分子内にフッ素を含む単量体を重合させることにより得られた重合体)等が挙げられる。硬化化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。エラストマーの具体例としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水添物等が挙げられる。
また、ナノポーラス表面を有する立体製品を細胞足場材として利用する場合、母材を構成する材料として、生体分解性材料、すなわち、生体内に吸収可能な材料又は生体内で分解可能な材料を用いることができる。生分解性材料の具体例としては、上記と一部重複するが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリブチレンカーボネート、ゼラチン、キチン、コラーゲン、キトサン、ケラチン、アパタイト、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸、多糖類等が挙げられる。
【0010】
ナノ粒子を構成する材料に限定はなく、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液を入手することができる限り、いかなる組合せも採用することができる。例えば、母材として熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、エラストマー等を用いる場合には、ナノ粒子としてAg、Cu、Fe、Ni、Cr、Zn粒子等の金属粒子を用いることができる。また、母材としてセルロースを用いる場合には、ナノ粒子として、有機溶剤に溶解する高分子材料からなる粒子を用いることができる。
【0011】
ナノ粒子の粒径、粒径分布に限定はない。ナノ粒子の溶出跡である凹部の孔径は、ナノ粒子の粒径とほぼ等しいから、ナノ粒子の粒径、粒径分布を調整するによって、ナノポーラス表面の孔径、孔径分布を制御することができる。例えば、ナノ粒子の平均粒径は、光学的な効果の観点から、可視光波長、具体的には800nm以下としてもよい。また、ナノポーラス表面を有する立体製品の用途に応じて、例えば、1000nm〜100nmとしてもよいし、100nm〜10nmとしてもよいし、10nm〜1nmとしてもよい。
なお、本明細書において、粒径とは、粒子を透過電子顕微鏡(TEM)等で二次元観察したときの二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。そして、平均粒径とは、粒子を二次元観察した際に同一視野内にあるランダムに選択した100個の粒子の粒径の平均をいう。また、本明細書において、孔径とは、JIS R1655に準じて水銀圧入法によって測定した気孔径をいう。
【0012】
また、ナノ粒子の形状についても同様に限定はなく、ナノポーラス表面を有する立体製品の用途に応じて、ナノポーラス表面の凹部の形として所望する形を有するナノ粒子を用いることができる。ナノ粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよい。
【0013】
母材中に複数のナノ粒子が分散した材料において、母材中のナノ粒子の含有量に限定はなく、所望する凹部の密度に応じて適宜決定すればよい。ナノ粒子が浸漬液中に溶出するためには、少なくともその一部が母材から露出している必要がある。このような観点から、ナノ粒子は、所望する凹部の密度にもよるが、ナノ粒子と母材を構成する材料の総体積に対して、30体積%以上としてもよく、50体積%以上としてもよく、70体積%以上としてもよく、90体積%以上としてもよい。
【0014】
母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を製造する方法に限定はなく、例えば、a.母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる層で芯糸を被覆する方法、b.母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる糸を紡糸する方法、c.母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる繊維又は糸を芯糸の周りに巻きつける方法等が挙げられる。
さらに、方法aや方法cにより得られた糸から、芯糸を溶出するなどして除去して中空糸を製造してもよい。
【0015】
a.母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる層で芯糸を被覆する場合、被覆方法について特に限定はない。また、母材中にナノ粒子が分散した材料からなる層の厚さに限定はなく、例えば、ナノ粒子の平均粒径より厚くても、薄くてもよい。
【0016】
一つの実施態様によれば、母材を構成する材料を含むナノ粒子分散液を用意し、これを芯糸の周りに塗布することによって、母材中にナノ粒子が分散した材料からなる層で被覆することができる。
母材を構成する材料を含むナノ粒子分散液において、母材を構成する材料は、ナノ粒子分散液に溶解していても分散していてよい。母材を構成する材料を含むナノ粒子分散液の具体例としては、母材を構成する材料を溶解させた溶液にナノ粒子を分散させた液や、母材を構成する材料からなる粒子とナノ粒子の両方を分散媒に分散させた液等が挙げられる。例えば、水や、アルコール類、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン系炭化水素系溶剤、各種セルロース溶剤等の有機溶剤に母材を構成する材料を溶解させ、この溶液にナノ粒子を分散させてナノ粒子分散液を調製してもよいし、或いは、母材を構成する材料からなる粒子を水等の分散媒に分散させ、この分散液にナノ粒子を分散させる又はその逆の順序で分散液を調製してもよい。
【0017】
後の工程におけるナノ粒子の溶出を妨げないような表面修飾を施して、ナノ粒子の分散液中での分散性を改良してもよい。このような表面修飾を施したナノ粒子としては、例えば、表面をタンパク質又はペプチドや低分子量ビニルプロリドンで被覆したナノ粒子が挙げられる。
ナノ粒子の表面にタンパク質又はペプチドを固定する表面修飾は、特開2007−217331号公報に開示された方法に準じて行うことができる。具体的には、ナノ粒子を界面活性剤を用いて水に分散させ、この分散液にタンパク質又はペプチドを添加してpH5.0以上で超音波を照射することにより、ナノ粒子の表面の界面活性剤がタンパク質又はペプチドに置換し、その結果、表面にタンパク質又はペプチドを固定したナノ粒子の水分散液が得られる。例えば、このようにして得られたナノ粒子水分散液に、さらに、母材を構成する材料からなる粒子を分散させて、母材を構成する材料を含むナノ粒子分散液とすることができる。
また、ナノ粒子を低分子量ビニルプロリドンで被覆する表面修飾は、特開2008−121043号開示された方法に準じて行うことができる。具体的には、ナノ金属粒子を低分子量ビニルプロリドンの存在下で調製することにより、低分子ビニルピロリドンで被覆されたナノ金属粒子を得る。このようにして得た低分子ビニルピロリドンで被覆されたナノ金属粒子を、例えば1,2エタンジオール等の有機溶媒に分散させる。このようにして得られたナノ粒子分散液に、さらに、母材を構成する材料を溶解するか、母材を構成する材料からなる粒子を分散させて、母材を構成する材料を含むナノ粒子分散液とすることができる。
【0018】
芯糸の太さ、材質に限定はなく、用途に応じて適切なものを選択することができる。芯糸の太さとしては、例えば、20μm〜2mmとしてもよい。糸の材料としては、例えば、母材を構成する材料と同一又は異なる高分子材料;ステンレス等の金属等が挙げられる。
【0019】
ナノ粒子分散液を芯糸の周りに塗布する方法に限定はなく、例えば、噴霧、ディップコーティング等の従来公知の塗布方法を採用することができる。
塗布後、乾燥等により塗布層から分散媒溶媒を除去して、母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる層が形成される。必要に応じて、塗布層を加熱し、母材を構成する材料を焼結或いは溶融させて強固な連続相に変化させてもよい。母材を構成する材料が高分子材料である場合には、そのガラス転移温度以上の温度で加熱することができる。
【0020】
別の実施態様によれば、いわゆる、メカニカルアロイングを利用することもできる。メカニカルアロイングとは、二種類以上の固体に大きなエネルギーを付加しながら混合することにより、固体どうしの積層、折りたたみ、圧延を繰り返し起こし、微細に混合していく固体混合方法である。理論的には、原子レベルの混合も可能である。メカニカルアロイングによれば、比較的容易にナノ粒子を母材中に均一分散させることができる。
メカニカルアロイングは、一般に、金属どうしの混合の際に用いられる方法であるが、折りたたみと圧延を行うことが可能な材料どうしであれば、例えば、高分子材料同士や高分子材料と金属等の混合に対しても応用することができることを本発明者は見出した。
【0021】
具体的には、母材を構成する材料からなる粒子(粉末)とナノ粒子を構成する材料からなる粒子(粉末)を用意し、大きなエネルギーを付加しながらこれらを混合する。
そして、メカニカルアロイングにより得られた固体混合物をそのまま芯糸の周りに溶融塗布したり、固体混合物を適当な溶媒に分散させ、その分散液を芯糸の周りに塗布することにより、母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる層で芯糸を被覆する。分散液の塗布方法としては前述の方法を採用することができる。また、塗布後、必要に応じて、塗布層を加熱し、母材を構成する材料を焼結或いは溶融させて強固な連続相に変化させてもよい。
【0022】
メカニカルアロイングによれば、混合の過程で固体材料が折りたたまれて分割されていくため、初めからナノオーダーの粒子を用意しなくても母材中にナノ粒子が分散した材料を形成することができる。したがって、メカニカルアロイングを行う際に用意するナノ粒子を構成する材料からなる粒子(粉末)の粒径は、ナノオーダーである必要はなく、例えば、1〜1000μmであってもよいし、1〜100μmであってもよい。母材を構成する材料からなる粒子(粉末)の粒径についても限定はなく、ナノ粒子を構成する材料からなる粒子(粉末)の粒径と同程度であっても、ナノ粒子を構成する材料からなる粒子(粉末)より大きくてもよい。
【0023】
メカニカルアロイングは、金属どうしの混合について従来公知の手法、装置と同じものを用いて行うことができる。例えば、ローリングボールミル、振動ミル、遊星ボールミル等のボールミルを用いた混合により実施することができる。この場合、ボールの衝突エネルギーにより、二種類以上の固体粒子は、折りたたまれ、圧延される。
【0024】
b.母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる糸を紡糸する場合、紡糸方法に限定はなく、例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸等公知の紡糸方法を採用することができる。
一つの実施態様によれば、前述のナノ粒子分散液を湿式紡糸することができる。具体的には、前述のナノ粒子分散液(母材を構成する材料を溶解させた溶液にナノ粒子を分散させた液)をノズルより紡出して糸状に形成し、凝固液中で固体化して糸とする。
別の実施態様によれば、前述のメカニカルアロイングにより得られた母材を構成する材料からなる粒子とナノ粒子との固体混合物を乾式紡糸することができる。具体的には、固体混合物を、母材を構成する材料の溶剤に溶解して粘稠な溶液を調製し、これをノズルより紡出して糸状に形成し、熱風等により溶剤を蒸発させ、固体化して糸とする。
さらに別の実施態様によれば、前述のメカニカルアロイングにより得られた母材を構成する材料からなる粒子とナノ粒子との固体混合物を溶融紡糸することができる。具体的には、固体混合物を溶融してノズルより紡出して糸状に形成し、大気中又はガス中にて冷却し、固体化して糸とする。
【0025】
c.芯糸の周りに母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる繊維又は糸を巻きつける場合、巻きつけ方法に特に限定はなく、例えば、従来公知のカバードヤーンの製造方法を採用することができる。
芯糸に限定はなく、例えば、方法aの説明において例示した芯糸を用いることができる。また、母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる繊維又は糸にも限定はなく、例えば、方法bの説明において例示した方法により製造した糸を用いることができる。
【0026】
以上のようにして形成したナノ粒子母材中にナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を、あるいは、これを立体形状に編んだ(織った)立体製品を、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬しナノ粒子を液中に溶出させる。
ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に限定はなく、ナノ粒子と母材を構成する材料との組合せに応じ、適切なものを選択することができる。例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の酸溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液;有機溶剤等を用いることができる
浸漬時間に限定はなく、ナノ粒子が溶出するのに十分な時間浸漬すればよい。浸漬中に、試料に超音波を照射する等の溶出を促進させるための補助処理を行うこともできる。
溶出後、必要により水洗などをした後、乾燥させることにより、ナノポーラス表面を有する糸又は立体製品が得られる。
【0027】
ナノ粒子母材中にナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸又はナノポーラス表面を有する糸を、立体形状に編む又は織る方法に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。
また、立体製品の形状に限定はない。例えば、臓器や血管などの生体の器官や組織等を模倣した複雑な立体的な形状や、シャーレやマルチウェルプレート等の細胞培養容器の形状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ナノポーラス表面を持つ立体製品は、非常に大きな表面積を有するので、例えば、吸着材、分離膜、触媒及び触媒担体として利用することができる。また、ナノポーラス表面を持つ立体製品は、細胞培養足場材として利用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を用意し、
該糸を編む又は織り、
前記工程で得られた編物又は織物を、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬する、
ことを含む、ナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項2】
ナノポーラス表面を有する糸を用意し、
該ナノポーラス表面を有する糸を編む又は織る、
ことを含む、ナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項3】
前記ナノポーラス表面を有する糸を用意することが、
母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を用意し、
該糸を、ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液に浸漬する、
ことを含む、請求項2記載のナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、金属粒子である、請求項3に記載のナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、Ag粒子である、請求項3に記載のナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項6】
前記母材が、高分子材料を含む、請求項3に記載のナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子を溶解するが母材を溶解しない液が、アルカリ溶液又は酸溶液である、請求項3に記載のナノポーラス表面を有する立体製品の製造方法。
【請求項8】
前記母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を用意することが、
芯糸を用意し、
母材を構成する材料を含む、ナノ粒子分散液を用意し、
該ナノ粒子分散液を前記芯糸に塗布する、
ことを含む、請求項3に記載の、ナノポーラス表面を有する製品の製造方法。
【請求項9】
前記母材中に複数のナノ粒子が分散した材料からなる表面を有する糸を用意することが、
母材を構成する材料からなる粒子とナノ粒子を構成する材料からなる粒子を混合して、固体混合物を用意し、
該固体混合物を紡糸する、
ことを含む、請求項3に記載のナノポーラス表面を有する製品の製造方法。
【請求項10】
前記混合が、ボールミルを用いて行われる、請求項9に記載のナノポーラス表面を有する製品の製造方法。
【請求項11】
ナノポーラス表面を有する糸の編物又は織物を含む立体製品。
【請求項12】
ナノポーラス表面を有する糸の編物又は織物を含む細胞培養足場材。
【請求項13】
ナノポーラス表面を有する糸を用意し、
該ナノポーラス表面を有する糸を編む又は織る、
ことにより製造される、ナノポーラス表面を有する立体製品。

【公開番号】特開2010−180482(P2010−180482A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14258(P2009−14258)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】