説明

ナノポーラス高分子材料の製造方法、化学発泡剤のナノ粒子を含むポリマー組成物、化学発泡剤のナノ粒子、およびナノポーラス高分子材料

a.化学発泡剤をナノ粒子の形態で高分子材料中に組み込む工程と、b.化学発泡剤をそのガス状反応生成物の形態に分解する工程と、を含むことを特徴とする、ナノポーラス高分子材料の製造方法。本方法は、反射防止コーティング、組織工学用の生分解性スカフォールド、隔離コーティング、誘電体中間層、メンブレン、ナノリアクターを製造するために使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノポーラス高分子材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポーラス高分子材料の製造方法は、数多く知られている。たとえば、米国特許公開第2002130396−A1号明細書から、分解性ポロゲンとして作用する含窒素ポリマーと特定の熱硬化性ポリマーとを混合し加熱して熱硬化性ポリマーを硬化させる方法が公知である。このようにすると、熱硬化性ポリマーの連続相と含窒素ポリマーの分散相とを含む二相構造体が得られる。約450℃に加熱すると、含窒素ポリマーは、分解して熱硬化性ポリマー中にポアを形成する。
【0003】
公知の方法の欠点の1つは、ポロゲンの核生成およびそれに続く相分離を制御することが難しいので適切な二相構造体を得ることが非常に難しい点である。したがって、多くの場合、所望のポア寸法が得られない。さらなる欠点は、非常に高い温度でのみポアが生成される点である。ポロゲンの分解温度が高いことに起因して、これらの高分子材料がそれと同一の温度さらにはそれよりも低い温度でさえも分解するので、この方法は、ほとんどの高分子材料に適していない。
【0004】
米国特許第6342454B号明細書から、分解性ポロゲンとポリマーとカップリング剤とを混合し加熱してポロゲンをポリマーに結合させる方法が公知である。この場合にも、ポロゲンの核生成および相分離により、二相構造体が得られる。高温で加熱した後、ポロゲンが分解してポアが生成される。公知の方法の欠点は、ポロゲンをポリマーに結合させることが厄介な点、所望の二相構造体を得ることがこの場合も難しい点、およびポロゲンを分解させるのに非常に高い温度がこの場合も必要な点である。
【0005】
CA−2314016A1号明細書から、隣接層間に不連続なガス含有ギャップを含む多層高分子材料を形成する方法が公知である。高分子材料の薄層を部分的に溶接一体化させ、次に、高分子材料を物理発泡剤に接触させて、特定の限度まで発泡剤をポリマーに溶解させるようにする。その後、そうして得られたポリマー/発泡剤併用物に特定の温度および圧力を加えて、発泡剤を放出させ、部分的に溶接された隣接層間にガス含有ギャップを形成するようにする。この方法は、非常に複雑であり、しかもこの方法は、層状構造体を形成する場合にのみ適しているにすぎない。
【0006】
国際公開第01/65617号パンフレットから、ヒュームドシリカポア形成剤を高分子層中に組み込んだ後でポア形成剤を強アルカリ金属水酸化物に溶解させることによりポア形成剤を化学的に除去してポアを得る方法が公知である。この方法は、非常に複雑であり、しかも薄層の場合およびアルカリ金属水酸化物の影響を受けない高安定性フッ素化ポリマーの場合にのみ適しているにすぎない。
【0007】
公知の方法は、複雑であるという問題を抱えており、非常に高い分解温度を有する材料の場合にのみ適しているにすぎず、非常に薄い層のナノポーラス高分子構造体などを製造する場合にのみ適しているにすぎない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多種多様な高分子材料を使用できるように適度な温度でナノポーラス高分子材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、この目的は、
a.化学発泡剤をナノ粒子の形態で高分子材料中に組み込む工程と、
b.化学発泡剤をそのガス状反応生成物の形態に分解する工程と、
を含む方法により達成される。
【0010】
本発明に係る方法によれば、ポリマーの分解が起こらないように化学発泡剤の適度な反応温度でナノポーラス高分子材料が形成される。このようにすれば、これまで使用することのできなかったポリマーを用いて新しいナノポーラス高分子材料を製造することが可能である。さらに、輪郭の明瞭なナノポーラス構造を有する高分子材料が得られる。この理由は、最終的にポーラス構造を得るために複雑な相分離工程を必要とするのではなく、ポーラス構造が単純に化学発泡剤のナノ粒子のサイズおよび形状によりあらかじめ決められることにある。
【0011】
さらなる利点は、本方法を用いて薄層の高分子材料を製造することが可能なだけでなく、より厚い厚さを有する層さらには造形品でさえも製造することが可能な点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
原理的には、高分子材料に適した化学発泡剤が使用されるのであれば、あらゆる熱可塑性高分子材料もしくは熱硬化性高分子材料または任意のエラストマー性高分子材料を本発明に係る方法で使用することが可能である。
【0013】
使用しうる熱可塑性高分子材料の例としては、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレンもしくはプロピレンを含むコポリマー)、スチレン系ポリマー、ポリアクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、ポリビニルクロリドおよび可塑化ポリビニルクロリド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレン(たとえば、ポリフェニレン、ポリ(フェニルキノキサリン)、およびポリ(アリーレンエーテル))、ポリベンゾシクロブテンなどが挙げられる。
【0014】
使用しうる熱硬化性高分子材料の例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル(たとえば、酸官能性ポリエステル、ヒドロキシ官能性ポリエステル)、アシレート樹脂(たとえば、ヒドロキシ官能性アクリレート樹脂およびグリシジルアクリレート樹脂)が挙げられる。熱硬化性コーティング組成物で使用するのに好適な架橋剤は、たとえば、フェノール系架橋剤、イミダゾリン架橋剤、無水物付加物、変性ジシアンジアミン、エポキシ樹脂、グリシジル架橋剤(たとえば、TGIC(トリグリシジルイソシアヌレート))、ヒドロキシルアルキルアミド、イソシアネート付加物、ドデカンジカルボン酸、さらにはポリイミド、ケイ素含有ポリマー(たとえば、オルガノシリケート)である。UV硬化性樹脂組成物(好ましくは、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート)を使用した場合、非常に良好な結果が得られる。
【0015】
好適なオルガノシリケートの例は、シルセスキオキサン、アルコキシシラン、有機シリケート、オルトシリケート、および有機的変性シリケートである。好適なシルセスキオキサンは、たとえば、水素シルセスキオキサン、アルキルシルセスキオキサン(好ましくは、低級アルキルシルセスキオキサン)、アリールシルセスキオキサンまたはアルキル/アリールシルセスキオキサン(たとえば、フェニルシルセスキオキサン)、およびシルセスキオキサンとポリイミドなどとのコポリマーである。
【0016】
使用しうるエラストマー性高分子材料の例としては、天然ゴム(NR)、ネオプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロスルホン化ポリエテン(CSM)、アクリレートゴム(ACM)、塩素化ポリエテン(CM)、ニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、シリコーンゴム(QM)、フッ素ゴム(FKM)、ポリエテンビニルアセテート(EVA)、エテンとアルファオレフィンとの重合により得られるエラストマー(たとえば、EPM)、およびエチレン(ethers)とアルファオレフィンと非共役ポリエンとの重合により得られるエラストマー(たとえば、EPDM)が挙げられる。
【0017】
本発明に係る方法はまた、ナノポーラス生分解性高分子材料の製造に使用するうえでも非常に好適である。生分解性ポリマーとは、加水分解や酵素的分解により分解可能なポリマーであり、たとえば、ポリエステル(たとえば、ポリラクトンおよびポリ乳酸)、ならびにポリアミド、ポリヒドロキシアルコネート(polyhydroxyalkonates)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)コポリマー、ならびにポリ(ε−カプロラクトン(−caprolactone))ホモポリマーおよびコポリマー、セルロースアセテートブチレート、ポリ−ヒドロキシブチレート(pol−hydroxybutyrate)およびポリ−ヒドロキシブチレート−co−バレレートが挙げられる。
【0018】
化学発泡剤とは、明確に定義された化学反応を介してガスを発生させて高分子材料中にフォーム構造を生成させうる添加剤である。これは、ポロゲンと根本的に異なる。ポロゲンは、明確に定義された化学反応を介して分解するのではなく、非常に高い温度でいろいろな種類の分子フラグメントの形態にランダムに分解する
【0019】
さらに、熱分解するポロゲンは、通常、高分子材料をも含む溶液に溶解される。ポロゲンと熱可塑性高分子材料とよりなる二相構造体は、ポロゲンの核生成およびそれに続く溶液からの析出により得られる。これは、化学発泡剤と根本的に異なる。化学発泡剤は、ナノ粒子(そのような形態で入手可能)として高分子材料中に組み込まれる。
【0020】
ポロゲンと比較して、化学発泡剤は、適度な温度で、たとえば300℃未満、好ましく280℃未満、より好ましくは240℃未満、さらに好ましくは200℃未満で、分解する。化学発泡剤の分解温度は、5mgのサンプルを10℃/分の温度上昇でパーキン・エルマー−7(Perkin Elmer−7)装置により測定したときにDSCプロット中にピークが現れる温度である。
【0021】
化学発泡剤は、好ましくは、5種以下の異なるガス分子を含むガス混合物の形態に分解する。ガス混合物は、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、およびアンモニアを含みうる。好ましくは、ガス混合物は、窒素または二酸化炭素を含む。
【0022】
当業者であれば、特定の高分子材料に好適な発泡剤をいかに選択するかを心得ている。発泡剤およびその選択基準は、たとえば、プラスチック添加剤便覧(Plastics Additives Handbook)、第3版、ハンザー・パブリッシャーズ(Hanser Publishers)、ニューヨーク(New York)、第16章(1990年)に開示されている。
【0023】
好適な化学発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミド、ヒドラジン誘導体(たとえば、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)(4,4’−oxybis(benzenesulfohydrazide))、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジド(diphenylsulfone−3,3’−disulfohydrazide)、およびトリヒドラジノトリアジン)、セミカルバジド(semicarbides)(たとえば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド(p−toluylensulfonyl semicarbide)、テトラゾール(たとえば、5−フェニルテトラゾール)、ベンゾオキサジン(たとえば、無水イサト酸)、さらにはクエン酸および重炭酸カリウムが挙げられる。好ましくは、アゾジカルボンアミドを化学発泡剤として使用する。なぜなら、それは、ナノ粒子の製造に好適であるとともに、さまざまな高分子材料中に輪郭の明瞭なマイクロポーラス構造を形成するための発泡剤としても非常に良好に作用するからである。
【0024】
化学発泡剤のナノ粒子を製造するのに好適な方法としては、溶媒から発泡剤を制御析出させることに基づく方法が挙げられる。この方法は、たとえば、ジェイ・ユング(J.Jung)、エム・ペリュト(M.Perrut)、「超臨界流体を用いる粒子デザイン:文献・特許調査(Particle design using supercritical fluids:Literature and patent survey)」、超臨界流体誌(J.of Supercritical Fluids)、第20巻(2001年)、179頁などにレビューされている。
【0025】
良好な結果は、貧溶媒を使用する析出法により得られる。この方法は、化学発泡剤の溶媒溶液を貧溶媒と混合することに基づく。混合中、化学発泡剤は、ナノ粒子として析出する。貧溶媒は、溶媒と混和しうるものでなければならないが、化学発泡剤の溶媒であってはならない。好ましくは、圧縮ガスを貧溶媒として使用する。なぜなら、圧縮ガスは、溶液と急速に混合可能であり、その結果、高度の核生成が引き起こされて微細な粒子が得られるからである。好ましくは、二酸化炭素を貧溶媒として使用する。
【0026】
他の方法は、圧縮ガスを化学発泡剤の溶媒として使用するいわゆるRESS法(超臨界溶液急速膨張法)である。溶液を膨張させたとき、溶解力が急速に低下して、化学発泡剤がナノ粒子として析出する。
【0027】
化学発泡剤のナノ粒子は、2〜1000ナノメートル(nm)、好ましくは4〜500nmの平均直径を有しうる。平均直径は、ランダムに選択された100個の粒子の直径を測定することによりSEM写真から測定される。粒子が球状ではない場合、最大直径が選択される。
【0028】
ほとんどの場合、化学発泡剤のナノ粒子は、化学発泡剤の分解温度未満の温度でナノ粒子と高分子材料とを混合することにより、高分子材料中に組み込まれるであろう。液状樹脂の場合、室温で混合することさえも可能である。また、ナノ粒子をすでに含んでいる溶液に高分子材料を溶解させることも可能であり、または高分子材料を溶解させてその溶液にナノ粒子を添加することも可能である。これは、高分子材料の融解温度が化学発泡剤の分解温度を超える場合に有利である。
【0029】
混合に好適な方法は、たとえば、超音波処理または超音波浴である。
【0030】
しかしながら、高分子材料を溶融してその溶融体中にナノ粒子を混合導入し、さらに、化学発泡剤を用いて高分子フォームを製造するための従来法(たとえば、押出法および射出成形法)で混合物をフォームの形態に加工することにより、可塑性高分子材料中に化学発泡剤のナノ粒子を混合することも可能である。
【0031】
ほとんどの場合、これは、高圧を保持しながら、発泡剤の分解が起こるように、化学発泡剤のナノ粒子を含むポリマー溶融体の温度を上昇させることと、依然として溶融状態にある生成物が膨張してフォーム中に入り込むように、溶融体を冷却し圧力を減少させて、さらにフォームを冷却し固化させることと、により行われるであろう。このようにすると、非常に微細な気泡を有する高分子フォームが得られる。用途は、これまでに知られているフォームと同様であり、たとえば、低密度フォームの隔離材料の分野における用途および建設材料としての用途である。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、
a)化学発泡剤を高分子材料中に組み込む工程と、
b)そうして得られた高分子材料をたとえば造形品またはコーティングの形態に造形する工程と、
c)高分子材料を少なくとも部分的に重合する工程と、
d)少なくとも部分的に重合された高分子材料を化学発泡剤の分解温度超の温度に加熱する工程と、
を含み、工程a、b、およびcは、化学発泡剤の分解温度未満の温度で行われる。
【0033】
このようにすれば、非常に微細なポア構造または気泡構造を有しポアまたは気泡がほぼナノ粒子の形状およびサイズを有するナノポーラス構造を取得しうる可能性がきわめて高い。化学発泡剤が高分子材料のガラス転移温度未満で分解される場合、この傾向がとりわけ強い。
【0034】
そのような方法は、たとえば、架橋ポリエチレンフォームを製造するために実施可能である。そのような方法では、最初にポリエチレンが架橋され、その後で化学発泡剤が分解される。そのようにすると、非常に微細なフォーム気泡を含むフォームが得られ、気泡は、化学発泡剤のナノ粒子の直径よりもわずかに大きい直径を有する。また、熱硬化性材料のコーティングを施し、少なくとも部分的にコーティングを硬化させ、その後、化学発泡剤を分解させる方法を使用することも可能である。そのようにすると、一般的には、ポーラス構造が得られ、ポアは、ほぼナノ粒子のサイズを有する。
【0035】
高分子材料の加工は、従来法(たとえば、成形法、キャスティング法、スピンコーティング法など)のうちの1つにより実施可能である。
【0036】
好ましくは、工程b)で、高分子材料は、コーティングの形態に加工される。
【0037】
好ましくは、高分子材料は、UV硬化系を用いて硬化される。こうすれば、化学発泡剤の分解温度よりも十分に低い適度な温度で硬化させることが可能になる。
【0038】
そのほかのさらなる好ましい一実施形態では、化学発泡剤のナノ粒子は、独立したキャビティーが形成されるように、低濃度で、たとえば15体積%未満、好ましくは10体積%未満で、使用される。
【0039】
他のさらなる好ましい実施形態では、ナノ粒子が接触しキャビティーが結合されて物質を貫通するポアが形成される場合のように、化学発泡剤のナノ粒子は、より高濃度で、たとえば15〜60体積%で、使用される。これは、たとえば、ナノポーラス高分子材料がメンブレンとして使用される場合に望ましい。
【0040】
典型的な用途としては、たとえば、モニター画面などに適用される反射防止コーティング、組織工学用の生分解性スカフォールド、隔離コーティング、誘電体中間層、メンブレン(たとえば、燃料電池中の分離層として使用するためのメンブレンまたは有機材料もしくは生体有機材料を分離するためのメンブレン)、ナノリアクターが挙げられる。
【0041】
本発明はまた、本発明に係る方法で使用される化学発泡剤のナノ粒子に関する。
【0042】
本発明はまた、450℃未満の融解温度および/または分解温度を有するポリマーを含むナノポーラス高分子材料に関する。分解温度とは、5mgのサンプルを10℃/分で加熱するTGA実験でその重量の10%を失うときの温度である。驚くべきことに、本発明に係る方法を用いた場合、ナノポーラス高分子材料を製造することが可能である。一方、公知の方法を用いた場合、その方法の条件が過酷であるため、そのような高分子材料を使用しえない。好ましくは、融解温度および/または分解温度は、400℃未満、さらに好ましくは350℃未満である。
【実施例】
【0043】
実施例1
100mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に0.5グラムの化学発泡剤アゾジカルボンアミドを溶解させた。二酸化炭素を貧溶媒として用いて国際公開第03/086606号パンフレットに記載されているようなPCA法により溶液を処理した。析出物を濾過した後、SEMで測定したときに100nmの平均直径(ランダムに選択された100個の粒子の平均であり、粒子の最大直径を測定した)を有する0.1グラムのアゾジカルボンアミドナノ粒子が得られた。ソニカー(Sonicar)TMW385超音波処理装置を用いて30分間超音波処理することにより粒子をビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(液状UV硬化性樹脂)中に混合し、その後、樹脂組成物中にナノ粒子を含む安定な分散体を得た。0.5重量%の光開始剤イルガキュア(Irgacure)TM184(チバ(Ciba)より供給)を添加した後、分散体をガラススライド上に3000rpmでスピンコーティングした。
【0044】
その後、スコットランド(Scotland)のリビングストン(Livingstone)により供給されたマカムTMフレキシキュア・ランプ(MacamTM flexicure lamp)を用いて3分間かけて100℃で、そうして得られたコーティングの光硬化を行った。その後、メトラーTMFP82HTホット・ステージ・オーブン(MettlerTM FP82HT Hot Stage oven)を用いて空気雰囲気下で2時間かけて200℃でコーティングを加熱した。
【0045】
200℃で加熱中、コーティングが透明から乳白色に変化したことから、ナノポーラス構造が得られたことは明らかである。コーティングの厚さは、発泡剤の分解の影響をほとんどまたはまったく受けなかった。ナノポーラス高分子組成物のSEM写真から、ほぼ元のナノ粒子のサイズを有する微細なポアの存在が明らかにされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.化学発泡剤をナノ粒子の形態で高分子材料中に組み込む工程と、
b.該化学発泡剤をそのガス状反応生成物の形態に分解する工程と、
を含むことを特徴とする、ナノポーラス高分子材料の製造方法。
【請求項2】
a.前記化学発泡剤を前記高分子材料中に組み込む工程と、
b.そうして得られた前記高分子材料を加工する工程と、
c.前記高分子材料を少なくとも部分的に重合する工程と、
d.少なくとも部分的に重合された前記高分子材料を前記化学発泡剤の分解温度超の温度に加熱する工程と、
を含み、工程a、b、およびcは、前記化学発泡剤の分解温度未満の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が工程b)でコーティングの形態に造形されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学発泡剤が300℃未満の分解温度を有することを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
アゾジカルボンアミドが前記化学発泡剤として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記高分子材料がUV硬化系により硬化されることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
生分解性ポリマーが使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で使用される化学発泡剤のナノ粒子を含むポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で使用される化学発泡剤のナノ粒子。
【請求項10】
450℃未満の融解温度および/または分解温度を有するポリマーを含むナノポーラス高分子材料。
【請求項11】
反射防止コーティング、組織工学用の生分解性スカフォールド、隔離コーティング、誘電体中間層、メンブレン、ナノリアクターを製造するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法の使用。

【公表番号】特表2007−521383(P2007−521383A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543507(P2006−543507)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014162
【国際公開番号】WO2005/059015
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】