ナノメーター標準原器、標準試料、ナノメーター標準原器の製造方法、及び標準試料の製造方法
【課題】大気中の物質に対する耐食性に優れ、かつ高精度なナノメーター標準原器を提供する。
【解決手段】ナノメーター標準原器としての標準試料は、比較の基準となる標準長さを有している。また、この標準試料は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、このステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【解決手段】ナノメーター標準原器としての標準試料は、比較の基準となる標準長さを有している。また、この標準試料は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、このステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、比較の基準となる標準長さを有するナノメーター標準原器に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメーター標準原器の一例として、原子間力顕微鏡(AFM)の精度を校正するための標準試料が知られている。AFMは例えばナノオーダーの構造計測に用いられるものであるため、この校正に用いる標準試料は、非常に高精度のステップ(段差)等を有する必要がある。特に近年、ナノオーダーの微小領域で半導体結晶表面などを精度よく観察・測定することが求められており、標準試料によりAFMを校正する際にはオングストロームオーダー以下の高い校正精度と測定の再現性が必要とされている。非特許文献1及び特許文献1から3までは、この種の標準試料又は標準試料の製造方法を開示する。
【0003】
非特許文献1が開示する標準試料はシリコンステップ基板であり、主面にシングルステップ構造を有している。このステップの高さは、シリコンの2原子層分の高さ(0.31nm)となるように製造されている。このようなシングルステップ構造を主面に有したシリコンステップ基板は、単結晶シリコン基板から以下の方法によって製造される。
【0004】
即ち、初めに(111)面から[11−2]方向に微傾斜した面を主面に持った単結晶シリコン基板を適当な大きさに切り出す。次に、この基板に適宜の処理を行った後に、真空チャンバ内に入れて脱ガスを行う。そして、十分に脱ガスが行われて超高真空雰囲気(6.5×10-7Pa未満程度)となったところで、1100〜1200℃に加熱して約10分間保持する。その後、室温まで急冷して真空チャンバを乾燥窒素で満たした状態で取り出すことで、シングルステップ構造を主面に有したシリコンステップ基板を製造できる。
【0005】
また、特許文献1が開示する標準試料は、シリコンウエハから以下の方法によって製造される。即ち、シリコンウエハを十分に平滑にした後に、熱酸化膜を成長させる。そして、フォトリソグラフィーによってパターンマスクを付けた後に、エッチングを行う。このとき、極低エッチング速度のエッチング剤を用いることで、エッチング速度の予測精度が向上するため、エッチング量を所定の値にすることができる。そして、パターンマスクを除去することで、高精度なパターン段差を形成することができる。
【0006】
特許文献2の標準試料は、主面として(0001)面、又は(0001)面から10度以内のオフ角を持った面を有する単結晶サファイヤ基板から、以下の方法によって製造される。即ち、単結晶サファイヤ基板に適切な研磨を施した後に、この基板の主面に複数の凹部を形成する。そして、凹部が形成された単結晶サファイヤ基板を大気中で熱処理することで、凹部の底を中心とした同心円状のステップ/テラス構造を形成することができる。なお、このステップの1段の高さは0.22nmとなっている。以上のようにして、高精度なステップを有するサファイヤ基板を製造できる。
【0007】
特許文献3の標準試料の製造方法は、特許文献2の方法で凹部を形成するときに、当該凹部を精度良く形成できる方法を開示する。この方法は、サファイヤより硬い物質で形成された圧子をサファイヤ基板に押し付けることで凹部を形成する。そして、圧子を押し付ける荷重に応じて凹部の大きさ及び深さを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−196559号公報
【特許文献2】特開2006−284316号公報
【特許文献3】特開2006−327876号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】(社)電子情報技術産業協会規格 「AFMにおける1nmオーダの高さ校正法」pp.3−5 2002年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、標準試料を用いたAFMの校正は、通常は大気中で行われる。しかし、非特許文献1及び特許文献1の構成は、シリコンで構成されているため、大気に少しでも触れると表面に酸化膜が生成されてしまう。表面に酸化膜が生成されるとステップの高さの精度が低下してしまうので、非特許文献1及び特許文献1の標準試料は、時間の経過に従って精度が低下していく。そのため、シリコンで構成された標準試料は、有効使用期限が6ヶ月程度に事実上制限されることが多く、非常に寿命が短かった。その上、表面に付着している酸化物のみを適切に除去することは難しいため、有効使用期限を過ぎると、標準試料として再生させることができなかった。
【0011】
また、非特許文献1及び特許文献1から3までの構成は、テラス幅が不揃いであり、また、ステップ表面の平坦度が悪いため、AFMの校正を精度良く行うことができず、この点においても改善の余地があった。
【0012】
更に、AFMの高さ校正に用いる標準試料において、現在商業的に利用可能である校正高さは、最も微小な値から主に上記0.31nmのほか、石英試料の8.0nmなどが存在するが、この間(0.31〜8.0nm)の値を校正値として提供可能な標準試料が存在しなかった。AFMを用いて対象を正確に評価するためには、少なくとも2点の異なる値を持つ標準試料を測定することにより、評価装置の測定値に対する線形特性を検証することが求められる。よって、ナノオーダーの高低差をより高精度に測定するためには、0.31nmから8.0nmの間において、十分な信頼性を有する複数の絶対値を提供可能な標準試料が求められていた。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、大気中の物質に対する耐食性に優れ、かつ高精度なナノメーター標準原器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のナノメーター標準原器が提供される。即ち、このナノメーター標準原器は、比較の基準となる標準長さを有している。また、このナノメーター標準原器は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、前記ステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【0016】
これに加えて、標準原器の材質としてSiC層を用いているため、材質の単結晶炭化珪素の耐熱・耐酸耐久強度は極めて高く、耐久性と経時変化耐性に優れている。この事によりナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定したナノメーター標準原器が実現できる。
【0017】
前記のナノメーター標準原器において、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することが好ましい。
【0018】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを有するナノメーター標準原器が実現できる。
【0019】
前記のナノメーター標準原器において、ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた収容容器内で行うことが好ましい。
【0020】
これにより、収容容器に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて収容容器内を高純度のSi雰囲気に保つことができるので、好適な環境で加熱処理を行うことができる。
【0021】
前記のナノメーター標準原器において、前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されていることが好ましい。
【0022】
これにより、必要な標準長さに応じて以下の4種類の高さを用いることができる。即ち、4種類の高さとは、4H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、4H−SiC単結晶のハーフユニットの高さ、6H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、及び、6H−SiC単結晶のハーフユニットの高さである。そのため、様々な用途に柔軟に対応することができる。
【0023】
前記のナノメーター標準原器においては、ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能とすることが好ましい。
【0024】
これにより、必要なテラス幅が形成されたナノメーター標準原器を製造することができる。また、ナノメーター標準原器で測定機器の校正を行う場合は、テラス幅を広くすることにより、テラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができる。従って、より正確な校正を行うことができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、前記のナノメーター標準原器としての標準試料が提供される。また、前記標準試料は、前記標準長さを用いて測定機器を校正する。
【0026】
これにより、長期間にわたって精度を維持することができる標準試料を実現できる。なお、この標準試料によって校正することができる測定機器として、例えば、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡,電子顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等を挙げることができる。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、形成されるステップの高さが比較の基準となる標準長さとして用いられるナノメーター標準原器を製造する方法において、以下のナノメーター標準原器の製造方法が提供される。即ち、このナノメーター標準原器の製造方法は、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。
【0028】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを利用可能なナノメーター標準原器を製造することができる。また、材質としてSiC層を用いているため、ナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定したナノメーター標準原器を製造することができる。
【0029】
前記のナノメーター標準原器の製造方法においては、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素基板の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上に必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することが好ましい。
【0030】
これにより、必要なテラス幅に応じてオフ角を調整することで、任意のテラス幅のナノメーター標準原器を製造することができる。
【0031】
本発明の第4の観点によれば、前記のナノメーター標準原器の製造方法としての標準試料の製造方法が提供される。
【0032】
これにより、長期間にわたって精度を維持することができる標準試料を実現できる。また、この標準試料によって校正することができる測定機器として、例えば、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡,電子顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】AFMの原理を概略的に示す説明図。
【図2】標準試料を製造するための加熱処理に用いられる高温真空炉を示す模式図。
【図3】高温真空炉の本加熱室及び予備加熱室を詳細に示す断面構造図。
【図4】炭素ゲッター効果を有する坩堝の外観写真及び断面写真。
【図5】炭素ゲッター効果を説明する模式図。
【図6】単結晶SiC基板を用いた次世代ナノメーター標準原器の製造方法の工程概念図。(a)単結晶SiC基板表面を所定のオフ角度に機械研磨した基板の断面模式概念図。(b)気相エッチングして基板表面を分子レベルに平坦化させた断面模式概念図。(c)基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した断面模式概念図。
【図7】単結晶SiC基板が坩堝に収納された様子を示す模式概念図。
【図8】機械研磨した単結晶SiC基板の(0001)若しくは(000−1)ジャスト面を気相アニール工程で基板表面を分子レベルに平坦化させる処理温度と基板表面粗さの関係を示すグラフ。
【図9】単結晶SiC基板の(0001)Si面を気相アニールして得られるSiC分子配列周期の1周期及び半周期のステップ高さの実測例とAFM表面拡大写真の一例。
【図10】4H−SiC単結晶及び6H−SiCの分子配列と周期を示す模式図。
【図11】単結晶SiC基板の(0001)Si面を気相アニールしてSiC分子配列周期の1周期のステップを自己形成させたテラスの電子顕微鏡表面拡大写真の一例。
【図12】従来技術のSi基板使用標準試料拡大図。(a)Si基板使用標準試料表面三次元拡大図。(b)Si基板使用標準試料模式断面図。
【図13】単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器拡大図。(a)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器表面三次元拡大図。(b)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器料拡大断面図。(c)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器のステップとテラスの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
初めに、原子間力顕微鏡(AFM、測定機器)の測定原理及び校正方法について図1を参照して説明する。図1は、AFMの原理を概略的に示す説明図である。AFMとは、図1に示すカンチレバー92(深針)と、検出対象の試料100と、の原子間力に基づいて、当該試料100の表面の形状を検出する装置である。
【0036】
より詳細に説明すると、カンチレバー92は光を反射可能な反射面92aを備えており、AFMが備えるレーザ発生器91は、この反射面92aにレーザを照射している。この反射面92aで反射したレーザは、4分割されたフォトダイオード93で測定される。フォトダイオード93の各領域で発生した光起電力は増幅器94で増幅され、適宜の信号処理装置へ送られる。
【0037】
この構成により、カンチレバー92が試料100に近づくと、カンチレバー92と試料100との原子間力によりカンチレバー92が試料100に引き寄せられることで、当該カンチレバー92が変形する。この変形によって、反射面92aで反射するレーザの進行方向が変わり、フォトダイオード93の各領域の光起電力に差が生じる。そして、この光起電力の差がなくなる(カンチレバー92の変形量を一定にする)ようにカンチレバー92を上下させながら、試料100の表面を移動させていく。そして、試料100のどの位置でカンチレバー92をどれくらい上下させたかに基づいて、試料100の表面の形状を検出することができる。
【0038】
また、AFMでは、試料の表面の形状を精度良く検出できるようにするために、一定期間毎に校正が行われることがある。この校正は、後述の図12及び図13に示す、所定の高さのステップが形成された標準試料を用いて行われる。
【0039】
この校正作業は、初めに標準試料のステップ及びテラスが形成される位置を把握した後に、当該テラスの表面をAFMによって測定する。次に、測定したテラスの表面が水平になるように画像処理を行う。各テラスは通常は平行であるため、1つのテラスの表面が水平になるようにすることで、全てのテラスの表面を水平にして測定を行うことができる。そして、測定したテラスに隣接するテラスの測定を行う。このとき、AFMに基づいて測定された高さを、標準試料の標準長さ(シリコンステップ基板の場合は、0.31nm)と一致するように当該AFMを設定することで、校正を行うことができる。
【0040】
次に、本実施形態の標準試料(ナノメーター標準原器)を製造するために用いる高温真空炉11と坩堝(収容容器)2について、図2から図5までを参照して説明する。図2は、標準試料を製造するための加熱処理に用いられる高温真空炉を示す模式図である。図3は、高温真空炉の本加熱室及び予備加熱室を詳細に示す断面図である。図4(a)は坩堝2を上方から撮影した外観写真であり、図4(b)は坩堝2の断面顕微鏡写真である。図5は、炭素ゲッター効果を説明する模式図である。
【0041】
図2及び図3に示すように、高温真空炉11は、被処理物を1000℃以上2300℃以下の温度に加熱することが可能な本加熱室21と、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室22と、を備えている。予備加熱室22は本加熱室21の下方に配置され、本加熱室21に対して上下方向に隣接している。また、高温真空炉11は、予備加熱室22の下方に配置された断熱室23を備えている。この断熱室23は予備加熱室22に対して上下方向に隣接している。
【0042】
高温真空炉11は真空チャンバ19を備え、前記本加熱室21と予備加熱室22は、この真空チャンバ19の内部に備えられている。真空チャンバ19には真空形成装置としてのターボ分子ポンプ34が接続されており、例えば10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空を真空チャンバ19内に得ることができるようになっている。ターボ分子ポンプ34と真空チャンバ19との間には、ゲートバルブ25が介設される。また、ターボ分子ポンプ34には、補助のためのロータリポンプ26が接続される。
【0043】
高温真空炉11は、予備加熱室22と本加熱室21との間で被処理物を上下方向に移動させることが可能な移動機構27を備えている。この移動機構27は、被処理物を支持可能な支持体28と、この支持体28を上下動させることが可能なシリンダ部29と、を備えている。シリンダ部29はシリンダロッド30を備え、このシリンダロッド30の一端が前記支持体28に連結されている。また、高温真空炉11には、真空度を測定するための真空計31、及び、質量分析法を行うための質量分析装置32が設けられている。
【0044】
前記真空チャンバ19は、被処理物を保管しておくための図略のストック室と、搬送路65を通じて接続されている。この搬送路65は、ゲートバルブ66によって開閉可能になっている。
【0045】
前記本加熱室21は、平面断面視で正六角形に形成されるとともに、真空チャンバ19の内部空間の上部に配置される。図3に示すように、本加熱室21の内部には、加熱ヒータとしてのメッシュヒータ33が備えられている。また、本加熱室21の側壁や天井には第1多層熱反射金属板41が固定され、この第1多層熱反射金属板41によって、メッシュヒータ33の熱を本加熱室21の中央部に向けて反射させるように構成されている。
【0046】
これにより、本加熱室21内において、加熱処理対象としての被処理物を取り囲むようにメッシュヒータ33が配置され、更にその外側に多層熱反射金属板41が配置されるレイアウトが実現されている。従って、被処理物を強力且つ均等に加熱し、1000℃以上2300℃以下の温度まで昇温させることができる。
【0047】
本加熱室21の天井側は第1多層熱反射金属板41によって閉鎖される一方、底面の第1多層熱反射金属板41には貫通孔55が形成されている。被処理物は、この貫通孔55を介して、本加熱室21と、この本加熱室21の下側に隣接する予備加熱室22との間で移動できるようになっている。
【0048】
前記貫通孔55には、移動機構27の支持体28の一部が挿入されている。この支持体28は、上から順に、第2多層熱反射金属板42、第3多層熱反射金属板43、及び第4多層熱反射金属板44を互いに間隔をあけて配置した構成となっている。
【0049】
3つの多層熱反射金属板42〜44は、何れも水平に配置されるとともに、垂直方向に設けた柱部35によって互いに連結されている。そして、第2多層熱反射金属板42及び第3多層熱反射金属板43とで挟まれたスペースに受け台36が配置され、この受け台36上に被処理物を載置できるように構成されている。本実施形態において、この受け台36はタンタルカーバイドにより構成されている。
【0050】
前記シリンダ部29のシリンダロッド30の端部にはフランジが形成されて、このフランジが第4多層熱反射金属板44の下面に固定される。この構成により、前記シリンダ部29を伸縮させることで、受け台36上の被処理物を前記3つの多層熱反射金属板42〜44とともに上下動させることができる。
【0051】
前記予備加熱室22は、本加熱室21の下側の空間を、多層熱反射金属板46で囲うことにより構成されている。この予備加熱室22は、平面断面視で円状となるように構成されている。なお、予備加熱室22内には、前記メッシュヒータ33のような加熱手段は備えられていない。
【0052】
図3に示すように、予備加熱室22の底面部においては、前記多層熱反射金属板46に貫通孔56が形成されている。また、予備加熱室22の側壁をなす多層熱反射金属板46において、前記搬送路65と対面する部位に通路孔50が形成されている。更に、前記高温真空炉11は、前記通路孔50を閉鎖可能な開閉部材51を備えている。
【0053】
予備加熱室22の下側で隣接する前記断熱室23は、上側が前記多層熱反射金属板46によって区画され、下側及び側部が多層熱反射金属板47によって区画されている。断熱室23の下側を覆う多層熱反射金属板47には貫通孔57が形成されて、前記シリンダロッド30を挿通できるようになっている。
【0054】
前記貫通孔57の上端部に相当する位置において、多層熱反射金属板47には収納凹部58が形成される。この収納凹部58には、前記支持体28が備える第4多層熱反射金属板44を収納可能になっている。
【0055】
多層熱反射金属板41〜44,46,47は何れも、金属板(タングステン製)を所定の間隔をあけて積層した構造になっている。前記開閉部材51においても、通路孔50を閉鎖する部分には、同様の構成の多層熱反射金属板が用いられている。
【0056】
多層熱反射金属板41〜44,46,47の材質としては、メッシュヒータ33の熱輻射に対して十分な加熱特性を有し、また、融点が雰囲気温度より高い物質であれば、任意のものを用いることができる。例えば、前記タングステンのほか、タンタル、ニオブ、モリブデン等の高融点金属材料を多層熱反射金属板41〜44,46,47として用いることができる。また、タングステンカーバイド、ジリコニウムカーバイド、タンタルカーバイド、ハフニウムカーバイド、モリブデンカーバイド等の炭化物を、多層熱反射金属板41〜44,46,47として用いることもできる。また、その反射面に、金やタングステンカーバイド等からなる赤外線反射膜を更に形成しても良い。
【0057】
そして、支持体28に備えられる多層熱反射金属板42〜44は、小さな貫通孔を多数有するパンチメタル構造のタングステン板を、当該貫通孔の位置を異ならせつつ所定の間隔をあけて積層した構造になっている。
【0058】
また、支持体28の最も上層に備えられる第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、本加熱室21の第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。
【0059】
この構成で、真空チャンバ19内の汚染を防止するために適宜の容器に被処理物(例えばSiC基板)を収納する。なお、容器は後述の坩堝2であっても良いし、それ以外の容器であっても良い。そして、この状態で被処理物を搬送路65から真空チャンバ19の内部へ導入し、予備加熱室22内にある前記受け台36上に載置する。この状態で前記メッシュヒータ33を駆動すると、本加熱室21が1000℃以上2300℃以下の所定の温度(例えば約1900℃)に加熱される。またこのとき、前記ターボ分子ポンプ34の駆動によって、真空チャンバ19内の圧力は10-3Pa以下、好ましくは10-5Pa以下となるように調整されている。
【0060】
ここで前述したとおり、支持体28の第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。従って、メッシュヒータ33が発生する熱の一部が第2多層熱反射金属板42を介して予備加熱室22に適度に供給(分配)され、予備加熱室22内の被処理物を500℃以上の所定の温度(例えば800℃)となるように予備加熱することができる。即ち、予備加熱室22にヒータを設置しなくても予備加熱を実現でき、予備加熱室22の簡素な構造が実現できている。
【0061】
上記の予備加熱処理を所定時間行った後、シリンダ部29を駆動し、支持体28を上昇させる。この結果、被処理物が下側から貫通孔55を通過して本加熱室21内に移動する。これにより、直ちに本加熱処理が開始され、本加熱室21内の被処理物を所定の温度(約1900℃)に急速に昇温させることができる。
【0062】
次に、坩堝(収容容器)2について説明する。図4(a)に示すように、坩堝2は互いに嵌合可能な上容器2aと下容器2bとを備える嵌合容器である。また、この坩堝2は、真空下で高温処理を行う場合に後述の炭素ゲッター効果を発揮するように構成されており、具体的には、タンタル金属からなるとともに、炭化タンタル層を内部空間に露出させるようにして備えている。この坩堝2に、シリコン供給源としての図略のシリコンペレットを収容する。これにより、坩堝2に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて、その内部空間を高純度のシリコン雰囲気に保つことができる。
【0063】
更に詳細に説明すると、坩堝2は図4(b)に示すように、その最表層の部分にTaC層を形成し、このTaC層の内側にTa2C層を形成し、更にその内側に基材としてのタンタル金属を配置した構成となっている。なお、タンタルと炭素の結合状態は温度依存性を示すため、前記坩堝2は、炭素濃度が高いTaCを最も表層の部分に配置するとともに、炭素濃度が若干低いTa2Cが内側に配置される。そして、Ta2Cの更に内側には、炭素濃度がゼロである基材のタンタル金属を配置した構成となっている。
【0064】
坩堝2を加熱処理する際には、図3の鎖線で示すように高温真空炉11の予備加熱室22に配置し、適宜の温度(例えば約800℃)で予備加熱する。次に、予め設定温度(例えば、約1900℃)まで昇温させておいた本加熱室21へ、予備加熱室22内の坩堝2をシリンダ部29の駆動によって移動させ、急速に昇温させる。
【0065】
なお、本加熱室21での加熱時において、坩堝2内の雰囲気は約1Pa以下に維持されることが好ましい。また、上容器2aと下容器2bとを嵌め合わせたときの嵌合部分の遊びは、約3mm以下であることが好ましい。これによって、実質的な密閉状態が実現され、前記本加熱室21での加熱処理において坩堝2内のシリコン圧力を高めて外部圧力(本加熱室21内の圧力)よりも高い圧力とし、不純物がこの嵌合部分を通じて坩堝2内に侵入するのを防止することができる。
【0066】
この昇温により、坩堝2の内部空間がシリコンの蒸気圧に保たれる。また、前記坩堝2は上述したように、その表面が炭化タンタル層に覆われており、当該炭化タンタル層(TaC層)が坩堝2の内部空間に露出する構成になっている。従って、上述のように真空下で高温処理を続ける限りにおいて、坩堝2は図5に示すように、炭化タンタル層の表面から連続的に炭素原子を吸着して取り込む機能を奏する。この意味で、本実施形態の坩堝2は炭素原子吸着イオンポンプ機能(イオンゲッター機能)を有するということができる。これにより、加熱処理時に坩堝2内の雰囲気に含まれているシリコン蒸気及び炭化珪素蒸気のうち、炭素だけが坩堝2に選択的に吸蔵されるので、坩堝2内を高純度のシリコン雰囲気に保つことができる。
【0067】
本実施形態においては、以上のように構成される高温真空炉11と坩堝2を用いて、SiC単結晶基板70から標準試料72を製造する。以下の説明において、単に加熱処理等といった場合は上述した高温真空炉11を用いて行うものとする。
【0068】
次に、本実施形態の標準試料72の製造方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6(a)は機械研磨後のSiC単結晶基板70を示す図であり、図6(b)は気相エッチングしてSiC単結晶基板70の基板表面を分子レベルに平坦化させた後のSiC単結晶基板71を示す図であり、図6(c)はSiC単結晶基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した標準試料72を示す図である。図7は、機械研磨後のSiC単結晶基板70が坩堝2に収容された様子を示す模式図である。
【0069】
本実施形態では、所定のオフ角を有するSiC単結晶基板70を用いて標準試料72の製造を行う。この種のSiC単結晶基板70は、所定のオフ角を有する既製品を購入する他、表面がジャスト面であるSiC単結晶基板を研磨することで形成することもできる。表面が所定のオフ角を有している場合でも、その表面に機械研磨等が施されていれば、SiC単結晶基板70の表面は巨視的には平坦なように見える。しかし、ミクロ的には、図6(a)に模式的に示すように凹凸が形成されており、このSiC単結晶基板70を標準試料として用いるためには、この凹凸を分子レベルで平坦化させる必要がある。
【0070】
この平坦化処理は、SiC単結晶基板70をSi蒸気圧下の真空で高温加熱することにより行う。この加熱処理は、1500℃以上2300℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。また、この加熱処理は、図7に示すように、SiC単結晶基板70を坩堝2内に収容して行うことが好ましい。
【0071】
この平坦化のための加熱処理を具体的に説明すると、当該加熱処理は、予備加熱工程と、本加熱工程と、を含む。前記予備加熱工程では、SiC単結晶基板70を収容した坩堝2を、予備加熱室において800℃以上の温度で加熱する。前記本加熱工程では、予め所定の温度で加熱されている本加熱室に前記予備加熱室から坩堝2を移動する。この状態で、SiC単結晶基板70を1500℃以上2300℃以下の温度で所定時間(例えば10分)加熱する。このように、SiC単結晶基板70を坩堝2に収容して事前に予備加熱しておき、予備加熱室から本加熱室へ移動させることで、SiC単結晶基板70を急速に昇温させて加熱処理を行うことができる。
【0072】
この処理により、機械研磨によって凹凸が形成されたSiC単結晶基板70の表面部分が図6(b)のように気相エッチングされて平坦化し、ステップ/テラス構造が形成された分子レベルに平坦化させたSiC単結晶基板71を生成することができる。即ち、Si蒸気圧下の真空で高温加熱することによって、SiC単結晶基板70の表面のSiCがSi2C又はSiC2になって昇華することにより、平坦化されるのである。なお、このときの加熱温度は、上述のとおり1500℃以上2300℃以下とすることが好ましい。分子レベルに平坦化させたSiC単結晶基板71を更にSi蒸気圧下の真空で1800℃以上2000℃以下の気相雰囲気で加熱処理することにより、図6(c)に示す様にSiC単結晶基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した標準試料72が作成できる。
【0073】
このとき形成されるテラス幅の値は、形成されるステップの高さ(下記で示すように温度、SiC単結晶基板70の種類等により選択することができる)と、SiC単結晶基板70のオフ角と、に基づいて定まる。例えば、オフ角を大きくしたり、ステップの高さを低くしたりする場合は、形成されるテラス幅は小さくなる。一方、オフ角を小さくしたり、ステップの高さを高くしたりする場合は、形成されるテラス幅は大きくなる。
【0074】
次に、図8から図11までを参照して、加熱温度と平坦化の関係について説明する。
【0075】
図8は、Si蒸気圧下の真空気相アニール処理温度と平均表面粗さの関係を示したグラフである。図8のグラフでは、単結晶SiC(4H−SiC)において、(0001)Si面の加熱処理の温度(アニール温度)に対する平均粗さ(nm)の関係と、(000−1)C面の加熱処理の温度に対する平均粗さ(nm)の関係と、が示されている。図8のグラフに示すように、1500℃以上の高温で加熱処理した場合、1.0nm以下に平均粗さが収まる結果になった。このことから、高温環境下では、SiC単結晶基板70の表面の平坦化が効率的に進むことが判る。
【0076】
図9は、Si蒸気圧下の真空気相アニール処理温度と表面に形成されたステップの高さの関係を示したグラフである。図9中の(a)は、フルユニット高さに終端した標準試料72の表面の顕微鏡写真である。また、図9中の(b)は、ハーフユニット高さに終端した標準試料72の表面の顕微鏡写真である。図9のグラフに示すように、高温領域では、フルユニット高さ及びハーフユニット高さでのステップの終端が進んでいることが判る。
【0077】
ここで、図10を参照して、ハーフユニット高さ及びフルユニット高さについて説明する。図10は、4H−SiC単結晶及び6H−SiCの分子配列と周期を説明するための模式図である。「フルユニット高さ」とは、図10に示すように、SiとCからなるSiC単分子層が積層方向に積み重ねられる1周期分の前記積層方向の高さをいう。従って、フルユニット高さのステップとは、4H−SiCの場合は1.01nmのステップを意味する。「ハーフユニット高さ」とは、前記1周期の半分の時点での積層方向の高さをいう。従って、ハーフユニット高さのステップとは、4H−SiCの場合0.50nmのステップを意味する。6H−SiCの場合は、フルユニット高さのステップとは1.51nmのステップを意味し、ハーフユニット高さのステップとは0.76nmのステップを意味する。
【0078】
図11は、SiC層の(0001)Si面をC軸方向に1周期分の高さのステップを自己形成させたときの表面を示すSEM写真である。図11では、ステップが形成された箇所(曲線)が細くなっていることから、形成された各ステップが鋭く立ち上がることが判る。また、各テラスに凹凸が見られないことから、精度良く平坦化が行われたことが判る。
【0079】
以上に示してきた実験結果(グラフ及び写真)から判るように、Si蒸気圧下の真空で、所定時間高温加熱することによって、機械的な研磨やエッチングでは極めて困難な分子レベル(フルユニット高さ又はハーフユニット高さ)での平坦化を行うことができる。
【0080】
次に、図12から図13までを参照して、本実施形態の製造方法により製造された標準試料72と、従来の方法で製造された標準試料81と、を比較する。
【0081】
図12(a)はSi基板を用いた従来の標準試料81の表面の形状を示す図であり、図12(b)はSi基板を用いた従来の標準試料81の模式断面図である。図13(a)は本実施形態の標準試料72の表面の形状を示す図であり、図13(b)は本実施形態の標準試料72のステップの断面形状を示す図であり、図12(c)は本実施形態の標準試料72の模式断面図である。
【0082】
初めに、従来の標準試料81について簡単に説明する。標準試料81は、シリコンステップ基板であり、従来技術として上記で説明した方法によって製造される。標準試料81に形成されたステップの高さは、シリコン2原子層分の高さであり、0.31nmとなっている。
【0083】
しかし、実際には、図12(a)に示すようにシリコン表面の酸化等によりテラス表面に凹凸が生じているため、テラス幅が図12(a)に示すように不均一になっており、ステップの高さも高精度に0.31nmという訳ではない。更に言えば、このステップ形状の精度は、シリコンが時間の経過に従って大気中の酸素と反応して酸化することで、徐々に失われていく。
【0084】
次に、本実施形態の標準試料72について説明する。なお、図13で示した標準試料72は、オフ角が1度の4H−SiC単結晶基板70を用いて、ハーフユニット高さのステップを形成させたものである。ステップの高さは正確に0.50nmとなっている。
【0085】
図13(b)に示すように、標準試料72に形成されたテラスは、平坦となっている。しかも、この標準試料72に形成されたステップは、時間が経過しても、表面が粗くなることがない。また、この標準試料72に形成されるテラス幅は、図13(a)に示すように均一になっている。
【0086】
標準試料72,81は、標準長さとしてステップの高さを用いるため、テラス幅の均一具合が直接的にAFMの校正の精度に影響を与える訳ではない。しかし、テラス幅が不均一であると、テラス幅が狭い箇所が形成されることがある。このテラス幅が狭い箇所は、テラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができないため、AFMの校正を行うために好ましくない。この点、本実施形態の標準試料72はテラス幅が均一なため、標準試料72のどの部分で校正を行った場合においても、同程度の精度の校正を行うことができる。
【0087】
また、上記特許文献2及び3が開示する単結晶サファイヤ基板から製造される標準試料は、大気と反応しないため、この点では本実施形態の標準試料72と同等である。しかし、特許文献2の図面に示すように、単結晶サファイヤ基板から製造される標準試料のテラス幅は不均一であり、更にステップの平坦度に関しても本願発明の標準試料72の方が優れている。
【0088】
前述のように、本実施形態の製造方法では、温度等を変更することで形成されるステップの高さを4種類から選択できるので、4種類の絶対値を提供可能である。そして、提供される4種類の絶対値は、全てが非常に高精度となっており、通常は0.1nm程度であるAFMの測定精度を大幅に向上させることができるほか、この絶対値のうち少なくとも2つを用いて校正を行うことで、評価装置の測定値に対する線形特性をナノオーダー以下で検証することが可能となる。また、SiC結晶は、化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり十分な信頼性が有る。
【0089】
以上に説明したように、ナノメーター標準原器としての標準試料72は、比較の基準となる標準長さを有している。また、この標準試料72は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、このステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【0090】
これにより、材質としてSiC層を用いているため、シリコン等で構成された標準試料と異なり、材質としてSiC層を用いているため、ナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定した標準試料72の精度を維持することができる。
【0091】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造は、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板70の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を機械研磨等の手段により加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板70の加熱処理を行う事により、単結晶炭化珪素基板70の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。
【0092】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを有する標準試料72が実現できる。
【0093】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた坩堝2内で行われる。
【0094】
これにより、坩堝2に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて坩堝2内を高純度のSi雰囲気に保つことができるので、好適な環境で加熱処理を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態の標準試料72において、前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されている。
【0096】
これにより、必要な標準長さに応じて以下の4種類の高さを用いることができる。即ち、4種類の高さとは、4H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、4H−SiC単結晶のハーフユニットの高さ、6H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、及び、6H−SiC単結晶のハーフユニットの高さである。そのため、様々な用途に柔軟に対応することができる。
【0097】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能である。
【0098】
これにより、必要なテラス幅が形成された標準試料72を製造することができる。また、標準試料72でAFMの校正を行う場合は、テラス幅を広くすることによりテラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができる。この場合、より正確な校正を行うことができる。
【0099】
また、本実施形態の標準試料72は、標準長さとしてのステップの高さを用いて測定機器としてのAFMを校正する。
【0100】
また、本実施形態の標準試料72の製造方法においては、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板70の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を機械研磨等の手段により加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板70に対して加熱処理を行う事により、炭化珪素基板70の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。なお、必要なテラス幅に応じた所定のオフ角度を形成し、当該オフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することもできる。
【0101】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0102】
収容容器としての坩堝2は、炭化タンタルに限定されない。例えばタンタル以外の金属であって、炭素元素に対するゲッター効果を有し、SiC基板に対して高温接合せず、2000℃程度の温度に対する耐熱性を有し、更に超高真空材料であるものがあれば、当該金属からなる坩堝2に変更することができる。
【0103】
上記実施形態では、AFMを校正するための標準試料及びその製造方法を説明したが、形成されるステップの高さを標準長さとして使用する限り、様々なナノメーター標準原器及びその製造方法に適用することができる。例えば、電子顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の測定機器を校正する標準試料を挙げることができる。
【0104】
また、本発明を適用する限りにおいて、以上に説明してきた製造方法の一部を変更することができることは勿論である。また、上記実施形態で説明した温度条件や圧力条件等は一例であって、装置の構成や要求される標準長さ等の事情に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0105】
2 坩堝(収容容器)
70 SiC単結晶基板
71 表面を分子レベルに平坦化させた後のSiC単結晶基板
72 標準試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、比較の基準となる標準長さを有するナノメーター標準原器に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメーター標準原器の一例として、原子間力顕微鏡(AFM)の精度を校正するための標準試料が知られている。AFMは例えばナノオーダーの構造計測に用いられるものであるため、この校正に用いる標準試料は、非常に高精度のステップ(段差)等を有する必要がある。特に近年、ナノオーダーの微小領域で半導体結晶表面などを精度よく観察・測定することが求められており、標準試料によりAFMを校正する際にはオングストロームオーダー以下の高い校正精度と測定の再現性が必要とされている。非特許文献1及び特許文献1から3までは、この種の標準試料又は標準試料の製造方法を開示する。
【0003】
非特許文献1が開示する標準試料はシリコンステップ基板であり、主面にシングルステップ構造を有している。このステップの高さは、シリコンの2原子層分の高さ(0.31nm)となるように製造されている。このようなシングルステップ構造を主面に有したシリコンステップ基板は、単結晶シリコン基板から以下の方法によって製造される。
【0004】
即ち、初めに(111)面から[11−2]方向に微傾斜した面を主面に持った単結晶シリコン基板を適当な大きさに切り出す。次に、この基板に適宜の処理を行った後に、真空チャンバ内に入れて脱ガスを行う。そして、十分に脱ガスが行われて超高真空雰囲気(6.5×10-7Pa未満程度)となったところで、1100〜1200℃に加熱して約10分間保持する。その後、室温まで急冷して真空チャンバを乾燥窒素で満たした状態で取り出すことで、シングルステップ構造を主面に有したシリコンステップ基板を製造できる。
【0005】
また、特許文献1が開示する標準試料は、シリコンウエハから以下の方法によって製造される。即ち、シリコンウエハを十分に平滑にした後に、熱酸化膜を成長させる。そして、フォトリソグラフィーによってパターンマスクを付けた後に、エッチングを行う。このとき、極低エッチング速度のエッチング剤を用いることで、エッチング速度の予測精度が向上するため、エッチング量を所定の値にすることができる。そして、パターンマスクを除去することで、高精度なパターン段差を形成することができる。
【0006】
特許文献2の標準試料は、主面として(0001)面、又は(0001)面から10度以内のオフ角を持った面を有する単結晶サファイヤ基板から、以下の方法によって製造される。即ち、単結晶サファイヤ基板に適切な研磨を施した後に、この基板の主面に複数の凹部を形成する。そして、凹部が形成された単結晶サファイヤ基板を大気中で熱処理することで、凹部の底を中心とした同心円状のステップ/テラス構造を形成することができる。なお、このステップの1段の高さは0.22nmとなっている。以上のようにして、高精度なステップを有するサファイヤ基板を製造できる。
【0007】
特許文献3の標準試料の製造方法は、特許文献2の方法で凹部を形成するときに、当該凹部を精度良く形成できる方法を開示する。この方法は、サファイヤより硬い物質で形成された圧子をサファイヤ基板に押し付けることで凹部を形成する。そして、圧子を押し付ける荷重に応じて凹部の大きさ及び深さを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−196559号公報
【特許文献2】特開2006−284316号公報
【特許文献3】特開2006−327876号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】(社)電子情報技術産業協会規格 「AFMにおける1nmオーダの高さ校正法」pp.3−5 2002年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、標準試料を用いたAFMの校正は、通常は大気中で行われる。しかし、非特許文献1及び特許文献1の構成は、シリコンで構成されているため、大気に少しでも触れると表面に酸化膜が生成されてしまう。表面に酸化膜が生成されるとステップの高さの精度が低下してしまうので、非特許文献1及び特許文献1の標準試料は、時間の経過に従って精度が低下していく。そのため、シリコンで構成された標準試料は、有効使用期限が6ヶ月程度に事実上制限されることが多く、非常に寿命が短かった。その上、表面に付着している酸化物のみを適切に除去することは難しいため、有効使用期限を過ぎると、標準試料として再生させることができなかった。
【0011】
また、非特許文献1及び特許文献1から3までの構成は、テラス幅が不揃いであり、また、ステップ表面の平坦度が悪いため、AFMの校正を精度良く行うことができず、この点においても改善の余地があった。
【0012】
更に、AFMの高さ校正に用いる標準試料において、現在商業的に利用可能である校正高さは、最も微小な値から主に上記0.31nmのほか、石英試料の8.0nmなどが存在するが、この間(0.31〜8.0nm)の値を校正値として提供可能な標準試料が存在しなかった。AFMを用いて対象を正確に評価するためには、少なくとも2点の異なる値を持つ標準試料を測定することにより、評価装置の測定値に対する線形特性を検証することが求められる。よって、ナノオーダーの高低差をより高精度に測定するためには、0.31nmから8.0nmの間において、十分な信頼性を有する複数の絶対値を提供可能な標準試料が求められていた。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、大気中の物質に対する耐食性に優れ、かつ高精度なナノメーター標準原器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のナノメーター標準原器が提供される。即ち、このナノメーター標準原器は、比較の基準となる標準長さを有している。また、このナノメーター標準原器は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、前記ステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【0016】
これに加えて、標準原器の材質としてSiC層を用いているため、材質の単結晶炭化珪素の耐熱・耐酸耐久強度は極めて高く、耐久性と経時変化耐性に優れている。この事によりナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定したナノメーター標準原器が実現できる。
【0017】
前記のナノメーター標準原器において、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することが好ましい。
【0018】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを有するナノメーター標準原器が実現できる。
【0019】
前記のナノメーター標準原器において、ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた収容容器内で行うことが好ましい。
【0020】
これにより、収容容器に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて収容容器内を高純度のSi雰囲気に保つことができるので、好適な環境で加熱処理を行うことができる。
【0021】
前記のナノメーター標準原器において、前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されていることが好ましい。
【0022】
これにより、必要な標準長さに応じて以下の4種類の高さを用いることができる。即ち、4種類の高さとは、4H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、4H−SiC単結晶のハーフユニットの高さ、6H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、及び、6H−SiC単結晶のハーフユニットの高さである。そのため、様々な用途に柔軟に対応することができる。
【0023】
前記のナノメーター標準原器においては、ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能とすることが好ましい。
【0024】
これにより、必要なテラス幅が形成されたナノメーター標準原器を製造することができる。また、ナノメーター標準原器で測定機器の校正を行う場合は、テラス幅を広くすることにより、テラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができる。従って、より正確な校正を行うことができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、前記のナノメーター標準原器としての標準試料が提供される。また、前記標準試料は、前記標準長さを用いて測定機器を校正する。
【0026】
これにより、長期間にわたって精度を維持することができる標準試料を実現できる。なお、この標準試料によって校正することができる測定機器として、例えば、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡,電子顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等を挙げることができる。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、形成されるステップの高さが比較の基準となる標準長さとして用いられるナノメーター標準原器を製造する方法において、以下のナノメーター標準原器の製造方法が提供される。即ち、このナノメーター標準原器の製造方法は、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。
【0028】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを利用可能なナノメーター標準原器を製造することができる。また、材質としてSiC層を用いているため、ナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定したナノメーター標準原器を製造することができる。
【0029】
前記のナノメーター標準原器の製造方法においては、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素基板の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上に必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度を加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することが好ましい。
【0030】
これにより、必要なテラス幅に応じてオフ角を調整することで、任意のテラス幅のナノメーター標準原器を製造することができる。
【0031】
本発明の第4の観点によれば、前記のナノメーター標準原器の製造方法としての標準試料の製造方法が提供される。
【0032】
これにより、長期間にわたって精度を維持することができる標準試料を実現できる。また、この標準試料によって校正することができる測定機器として、例えば、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡,電子顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】AFMの原理を概略的に示す説明図。
【図2】標準試料を製造するための加熱処理に用いられる高温真空炉を示す模式図。
【図3】高温真空炉の本加熱室及び予備加熱室を詳細に示す断面構造図。
【図4】炭素ゲッター効果を有する坩堝の外観写真及び断面写真。
【図5】炭素ゲッター効果を説明する模式図。
【図6】単結晶SiC基板を用いた次世代ナノメーター標準原器の製造方法の工程概念図。(a)単結晶SiC基板表面を所定のオフ角度に機械研磨した基板の断面模式概念図。(b)気相エッチングして基板表面を分子レベルに平坦化させた断面模式概念図。(c)基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した断面模式概念図。
【図7】単結晶SiC基板が坩堝に収納された様子を示す模式概念図。
【図8】機械研磨した単結晶SiC基板の(0001)若しくは(000−1)ジャスト面を気相アニール工程で基板表面を分子レベルに平坦化させる処理温度と基板表面粗さの関係を示すグラフ。
【図9】単結晶SiC基板の(0001)Si面を気相アニールして得られるSiC分子配列周期の1周期及び半周期のステップ高さの実測例とAFM表面拡大写真の一例。
【図10】4H−SiC単結晶及び6H−SiCの分子配列と周期を示す模式図。
【図11】単結晶SiC基板の(0001)Si面を気相アニールしてSiC分子配列周期の1周期のステップを自己形成させたテラスの電子顕微鏡表面拡大写真の一例。
【図12】従来技術のSi基板使用標準試料拡大図。(a)Si基板使用標準試料表面三次元拡大図。(b)Si基板使用標準試料模式断面図。
【図13】単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器拡大図。(a)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器表面三次元拡大図。(b)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器料拡大断面図。(c)単結晶SiC基板使用次世代ナノメーター標準原器のステップとテラスの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
初めに、原子間力顕微鏡(AFM、測定機器)の測定原理及び校正方法について図1を参照して説明する。図1は、AFMの原理を概略的に示す説明図である。AFMとは、図1に示すカンチレバー92(深針)と、検出対象の試料100と、の原子間力に基づいて、当該試料100の表面の形状を検出する装置である。
【0036】
より詳細に説明すると、カンチレバー92は光を反射可能な反射面92aを備えており、AFMが備えるレーザ発生器91は、この反射面92aにレーザを照射している。この反射面92aで反射したレーザは、4分割されたフォトダイオード93で測定される。フォトダイオード93の各領域で発生した光起電力は増幅器94で増幅され、適宜の信号処理装置へ送られる。
【0037】
この構成により、カンチレバー92が試料100に近づくと、カンチレバー92と試料100との原子間力によりカンチレバー92が試料100に引き寄せられることで、当該カンチレバー92が変形する。この変形によって、反射面92aで反射するレーザの進行方向が変わり、フォトダイオード93の各領域の光起電力に差が生じる。そして、この光起電力の差がなくなる(カンチレバー92の変形量を一定にする)ようにカンチレバー92を上下させながら、試料100の表面を移動させていく。そして、試料100のどの位置でカンチレバー92をどれくらい上下させたかに基づいて、試料100の表面の形状を検出することができる。
【0038】
また、AFMでは、試料の表面の形状を精度良く検出できるようにするために、一定期間毎に校正が行われることがある。この校正は、後述の図12及び図13に示す、所定の高さのステップが形成された標準試料を用いて行われる。
【0039】
この校正作業は、初めに標準試料のステップ及びテラスが形成される位置を把握した後に、当該テラスの表面をAFMによって測定する。次に、測定したテラスの表面が水平になるように画像処理を行う。各テラスは通常は平行であるため、1つのテラスの表面が水平になるようにすることで、全てのテラスの表面を水平にして測定を行うことができる。そして、測定したテラスに隣接するテラスの測定を行う。このとき、AFMに基づいて測定された高さを、標準試料の標準長さ(シリコンステップ基板の場合は、0.31nm)と一致するように当該AFMを設定することで、校正を行うことができる。
【0040】
次に、本実施形態の標準試料(ナノメーター標準原器)を製造するために用いる高温真空炉11と坩堝(収容容器)2について、図2から図5までを参照して説明する。図2は、標準試料を製造するための加熱処理に用いられる高温真空炉を示す模式図である。図3は、高温真空炉の本加熱室及び予備加熱室を詳細に示す断面図である。図4(a)は坩堝2を上方から撮影した外観写真であり、図4(b)は坩堝2の断面顕微鏡写真である。図5は、炭素ゲッター効果を説明する模式図である。
【0041】
図2及び図3に示すように、高温真空炉11は、被処理物を1000℃以上2300℃以下の温度に加熱することが可能な本加熱室21と、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室22と、を備えている。予備加熱室22は本加熱室21の下方に配置され、本加熱室21に対して上下方向に隣接している。また、高温真空炉11は、予備加熱室22の下方に配置された断熱室23を備えている。この断熱室23は予備加熱室22に対して上下方向に隣接している。
【0042】
高温真空炉11は真空チャンバ19を備え、前記本加熱室21と予備加熱室22は、この真空チャンバ19の内部に備えられている。真空チャンバ19には真空形成装置としてのターボ分子ポンプ34が接続されており、例えば10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空を真空チャンバ19内に得ることができるようになっている。ターボ分子ポンプ34と真空チャンバ19との間には、ゲートバルブ25が介設される。また、ターボ分子ポンプ34には、補助のためのロータリポンプ26が接続される。
【0043】
高温真空炉11は、予備加熱室22と本加熱室21との間で被処理物を上下方向に移動させることが可能な移動機構27を備えている。この移動機構27は、被処理物を支持可能な支持体28と、この支持体28を上下動させることが可能なシリンダ部29と、を備えている。シリンダ部29はシリンダロッド30を備え、このシリンダロッド30の一端が前記支持体28に連結されている。また、高温真空炉11には、真空度を測定するための真空計31、及び、質量分析法を行うための質量分析装置32が設けられている。
【0044】
前記真空チャンバ19は、被処理物を保管しておくための図略のストック室と、搬送路65を通じて接続されている。この搬送路65は、ゲートバルブ66によって開閉可能になっている。
【0045】
前記本加熱室21は、平面断面視で正六角形に形成されるとともに、真空チャンバ19の内部空間の上部に配置される。図3に示すように、本加熱室21の内部には、加熱ヒータとしてのメッシュヒータ33が備えられている。また、本加熱室21の側壁や天井には第1多層熱反射金属板41が固定され、この第1多層熱反射金属板41によって、メッシュヒータ33の熱を本加熱室21の中央部に向けて反射させるように構成されている。
【0046】
これにより、本加熱室21内において、加熱処理対象としての被処理物を取り囲むようにメッシュヒータ33が配置され、更にその外側に多層熱反射金属板41が配置されるレイアウトが実現されている。従って、被処理物を強力且つ均等に加熱し、1000℃以上2300℃以下の温度まで昇温させることができる。
【0047】
本加熱室21の天井側は第1多層熱反射金属板41によって閉鎖される一方、底面の第1多層熱反射金属板41には貫通孔55が形成されている。被処理物は、この貫通孔55を介して、本加熱室21と、この本加熱室21の下側に隣接する予備加熱室22との間で移動できるようになっている。
【0048】
前記貫通孔55には、移動機構27の支持体28の一部が挿入されている。この支持体28は、上から順に、第2多層熱反射金属板42、第3多層熱反射金属板43、及び第4多層熱反射金属板44を互いに間隔をあけて配置した構成となっている。
【0049】
3つの多層熱反射金属板42〜44は、何れも水平に配置されるとともに、垂直方向に設けた柱部35によって互いに連結されている。そして、第2多層熱反射金属板42及び第3多層熱反射金属板43とで挟まれたスペースに受け台36が配置され、この受け台36上に被処理物を載置できるように構成されている。本実施形態において、この受け台36はタンタルカーバイドにより構成されている。
【0050】
前記シリンダ部29のシリンダロッド30の端部にはフランジが形成されて、このフランジが第4多層熱反射金属板44の下面に固定される。この構成により、前記シリンダ部29を伸縮させることで、受け台36上の被処理物を前記3つの多層熱反射金属板42〜44とともに上下動させることができる。
【0051】
前記予備加熱室22は、本加熱室21の下側の空間を、多層熱反射金属板46で囲うことにより構成されている。この予備加熱室22は、平面断面視で円状となるように構成されている。なお、予備加熱室22内には、前記メッシュヒータ33のような加熱手段は備えられていない。
【0052】
図3に示すように、予備加熱室22の底面部においては、前記多層熱反射金属板46に貫通孔56が形成されている。また、予備加熱室22の側壁をなす多層熱反射金属板46において、前記搬送路65と対面する部位に通路孔50が形成されている。更に、前記高温真空炉11は、前記通路孔50を閉鎖可能な開閉部材51を備えている。
【0053】
予備加熱室22の下側で隣接する前記断熱室23は、上側が前記多層熱反射金属板46によって区画され、下側及び側部が多層熱反射金属板47によって区画されている。断熱室23の下側を覆う多層熱反射金属板47には貫通孔57が形成されて、前記シリンダロッド30を挿通できるようになっている。
【0054】
前記貫通孔57の上端部に相当する位置において、多層熱反射金属板47には収納凹部58が形成される。この収納凹部58には、前記支持体28が備える第4多層熱反射金属板44を収納可能になっている。
【0055】
多層熱反射金属板41〜44,46,47は何れも、金属板(タングステン製)を所定の間隔をあけて積層した構造になっている。前記開閉部材51においても、通路孔50を閉鎖する部分には、同様の構成の多層熱反射金属板が用いられている。
【0056】
多層熱反射金属板41〜44,46,47の材質としては、メッシュヒータ33の熱輻射に対して十分な加熱特性を有し、また、融点が雰囲気温度より高い物質であれば、任意のものを用いることができる。例えば、前記タングステンのほか、タンタル、ニオブ、モリブデン等の高融点金属材料を多層熱反射金属板41〜44,46,47として用いることができる。また、タングステンカーバイド、ジリコニウムカーバイド、タンタルカーバイド、ハフニウムカーバイド、モリブデンカーバイド等の炭化物を、多層熱反射金属板41〜44,46,47として用いることもできる。また、その反射面に、金やタングステンカーバイド等からなる赤外線反射膜を更に形成しても良い。
【0057】
そして、支持体28に備えられる多層熱反射金属板42〜44は、小さな貫通孔を多数有するパンチメタル構造のタングステン板を、当該貫通孔の位置を異ならせつつ所定の間隔をあけて積層した構造になっている。
【0058】
また、支持体28の最も上層に備えられる第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、本加熱室21の第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。
【0059】
この構成で、真空チャンバ19内の汚染を防止するために適宜の容器に被処理物(例えばSiC基板)を収納する。なお、容器は後述の坩堝2であっても良いし、それ以外の容器であっても良い。そして、この状態で被処理物を搬送路65から真空チャンバ19の内部へ導入し、予備加熱室22内にある前記受け台36上に載置する。この状態で前記メッシュヒータ33を駆動すると、本加熱室21が1000℃以上2300℃以下の所定の温度(例えば約1900℃)に加熱される。またこのとき、前記ターボ分子ポンプ34の駆動によって、真空チャンバ19内の圧力は10-3Pa以下、好ましくは10-5Pa以下となるように調整されている。
【0060】
ここで前述したとおり、支持体28の第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。従って、メッシュヒータ33が発生する熱の一部が第2多層熱反射金属板42を介して予備加熱室22に適度に供給(分配)され、予備加熱室22内の被処理物を500℃以上の所定の温度(例えば800℃)となるように予備加熱することができる。即ち、予備加熱室22にヒータを設置しなくても予備加熱を実現でき、予備加熱室22の簡素な構造が実現できている。
【0061】
上記の予備加熱処理を所定時間行った後、シリンダ部29を駆動し、支持体28を上昇させる。この結果、被処理物が下側から貫通孔55を通過して本加熱室21内に移動する。これにより、直ちに本加熱処理が開始され、本加熱室21内の被処理物を所定の温度(約1900℃)に急速に昇温させることができる。
【0062】
次に、坩堝(収容容器)2について説明する。図4(a)に示すように、坩堝2は互いに嵌合可能な上容器2aと下容器2bとを備える嵌合容器である。また、この坩堝2は、真空下で高温処理を行う場合に後述の炭素ゲッター効果を発揮するように構成されており、具体的には、タンタル金属からなるとともに、炭化タンタル層を内部空間に露出させるようにして備えている。この坩堝2に、シリコン供給源としての図略のシリコンペレットを収容する。これにより、坩堝2に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて、その内部空間を高純度のシリコン雰囲気に保つことができる。
【0063】
更に詳細に説明すると、坩堝2は図4(b)に示すように、その最表層の部分にTaC層を形成し、このTaC層の内側にTa2C層を形成し、更にその内側に基材としてのタンタル金属を配置した構成となっている。なお、タンタルと炭素の結合状態は温度依存性を示すため、前記坩堝2は、炭素濃度が高いTaCを最も表層の部分に配置するとともに、炭素濃度が若干低いTa2Cが内側に配置される。そして、Ta2Cの更に内側には、炭素濃度がゼロである基材のタンタル金属を配置した構成となっている。
【0064】
坩堝2を加熱処理する際には、図3の鎖線で示すように高温真空炉11の予備加熱室22に配置し、適宜の温度(例えば約800℃)で予備加熱する。次に、予め設定温度(例えば、約1900℃)まで昇温させておいた本加熱室21へ、予備加熱室22内の坩堝2をシリンダ部29の駆動によって移動させ、急速に昇温させる。
【0065】
なお、本加熱室21での加熱時において、坩堝2内の雰囲気は約1Pa以下に維持されることが好ましい。また、上容器2aと下容器2bとを嵌め合わせたときの嵌合部分の遊びは、約3mm以下であることが好ましい。これによって、実質的な密閉状態が実現され、前記本加熱室21での加熱処理において坩堝2内のシリコン圧力を高めて外部圧力(本加熱室21内の圧力)よりも高い圧力とし、不純物がこの嵌合部分を通じて坩堝2内に侵入するのを防止することができる。
【0066】
この昇温により、坩堝2の内部空間がシリコンの蒸気圧に保たれる。また、前記坩堝2は上述したように、その表面が炭化タンタル層に覆われており、当該炭化タンタル層(TaC層)が坩堝2の内部空間に露出する構成になっている。従って、上述のように真空下で高温処理を続ける限りにおいて、坩堝2は図5に示すように、炭化タンタル層の表面から連続的に炭素原子を吸着して取り込む機能を奏する。この意味で、本実施形態の坩堝2は炭素原子吸着イオンポンプ機能(イオンゲッター機能)を有するということができる。これにより、加熱処理時に坩堝2内の雰囲気に含まれているシリコン蒸気及び炭化珪素蒸気のうち、炭素だけが坩堝2に選択的に吸蔵されるので、坩堝2内を高純度のシリコン雰囲気に保つことができる。
【0067】
本実施形態においては、以上のように構成される高温真空炉11と坩堝2を用いて、SiC単結晶基板70から標準試料72を製造する。以下の説明において、単に加熱処理等といった場合は上述した高温真空炉11を用いて行うものとする。
【0068】
次に、本実施形態の標準試料72の製造方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6(a)は機械研磨後のSiC単結晶基板70を示す図であり、図6(b)は気相エッチングしてSiC単結晶基板70の基板表面を分子レベルに平坦化させた後のSiC単結晶基板71を示す図であり、図6(c)はSiC単結晶基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した標準試料72を示す図である。図7は、機械研磨後のSiC単結晶基板70が坩堝2に収容された様子を示す模式図である。
【0069】
本実施形態では、所定のオフ角を有するSiC単結晶基板70を用いて標準試料72の製造を行う。この種のSiC単結晶基板70は、所定のオフ角を有する既製品を購入する他、表面がジャスト面であるSiC単結晶基板を研磨することで形成することもできる。表面が所定のオフ角を有している場合でも、その表面に機械研磨等が施されていれば、SiC単結晶基板70の表面は巨視的には平坦なように見える。しかし、ミクロ的には、図6(a)に模式的に示すように凹凸が形成されており、このSiC単結晶基板70を標準試料として用いるためには、この凹凸を分子レベルで平坦化させる必要がある。
【0070】
この平坦化処理は、SiC単結晶基板70をSi蒸気圧下の真空で高温加熱することにより行う。この加熱処理は、1500℃以上2300℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。また、この加熱処理は、図7に示すように、SiC単結晶基板70を坩堝2内に収容して行うことが好ましい。
【0071】
この平坦化のための加熱処理を具体的に説明すると、当該加熱処理は、予備加熱工程と、本加熱工程と、を含む。前記予備加熱工程では、SiC単結晶基板70を収容した坩堝2を、予備加熱室において800℃以上の温度で加熱する。前記本加熱工程では、予め所定の温度で加熱されている本加熱室に前記予備加熱室から坩堝2を移動する。この状態で、SiC単結晶基板70を1500℃以上2300℃以下の温度で所定時間(例えば10分)加熱する。このように、SiC単結晶基板70を坩堝2に収容して事前に予備加熱しておき、予備加熱室から本加熱室へ移動させることで、SiC単結晶基板70を急速に昇温させて加熱処理を行うことができる。
【0072】
この処理により、機械研磨によって凹凸が形成されたSiC単結晶基板70の表面部分が図6(b)のように気相エッチングされて平坦化し、ステップ/テラス構造が形成された分子レベルに平坦化させたSiC単結晶基板71を生成することができる。即ち、Si蒸気圧下の真空で高温加熱することによって、SiC単結晶基板70の表面のSiCがSi2C又はSiC2になって昇華することにより、平坦化されるのである。なお、このときの加熱温度は、上述のとおり1500℃以上2300℃以下とすることが好ましい。分子レベルに平坦化させたSiC単結晶基板71を更にSi蒸気圧下の真空で1800℃以上2000℃以下の気相雰囲気で加熱処理することにより、図6(c)に示す様にSiC単結晶基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を形成した標準試料72が作成できる。
【0073】
このとき形成されるテラス幅の値は、形成されるステップの高さ(下記で示すように温度、SiC単結晶基板70の種類等により選択することができる)と、SiC単結晶基板70のオフ角と、に基づいて定まる。例えば、オフ角を大きくしたり、ステップの高さを低くしたりする場合は、形成されるテラス幅は小さくなる。一方、オフ角を小さくしたり、ステップの高さを高くしたりする場合は、形成されるテラス幅は大きくなる。
【0074】
次に、図8から図11までを参照して、加熱温度と平坦化の関係について説明する。
【0075】
図8は、Si蒸気圧下の真空気相アニール処理温度と平均表面粗さの関係を示したグラフである。図8のグラフでは、単結晶SiC(4H−SiC)において、(0001)Si面の加熱処理の温度(アニール温度)に対する平均粗さ(nm)の関係と、(000−1)C面の加熱処理の温度に対する平均粗さ(nm)の関係と、が示されている。図8のグラフに示すように、1500℃以上の高温で加熱処理した場合、1.0nm以下に平均粗さが収まる結果になった。このことから、高温環境下では、SiC単結晶基板70の表面の平坦化が効率的に進むことが判る。
【0076】
図9は、Si蒸気圧下の真空気相アニール処理温度と表面に形成されたステップの高さの関係を示したグラフである。図9中の(a)は、フルユニット高さに終端した標準試料72の表面の顕微鏡写真である。また、図9中の(b)は、ハーフユニット高さに終端した標準試料72の表面の顕微鏡写真である。図9のグラフに示すように、高温領域では、フルユニット高さ及びハーフユニット高さでのステップの終端が進んでいることが判る。
【0077】
ここで、図10を参照して、ハーフユニット高さ及びフルユニット高さについて説明する。図10は、4H−SiC単結晶及び6H−SiCの分子配列と周期を説明するための模式図である。「フルユニット高さ」とは、図10に示すように、SiとCからなるSiC単分子層が積層方向に積み重ねられる1周期分の前記積層方向の高さをいう。従って、フルユニット高さのステップとは、4H−SiCの場合は1.01nmのステップを意味する。「ハーフユニット高さ」とは、前記1周期の半分の時点での積層方向の高さをいう。従って、ハーフユニット高さのステップとは、4H−SiCの場合0.50nmのステップを意味する。6H−SiCの場合は、フルユニット高さのステップとは1.51nmのステップを意味し、ハーフユニット高さのステップとは0.76nmのステップを意味する。
【0078】
図11は、SiC層の(0001)Si面をC軸方向に1周期分の高さのステップを自己形成させたときの表面を示すSEM写真である。図11では、ステップが形成された箇所(曲線)が細くなっていることから、形成された各ステップが鋭く立ち上がることが判る。また、各テラスに凹凸が見られないことから、精度良く平坦化が行われたことが判る。
【0079】
以上に示してきた実験結果(グラフ及び写真)から判るように、Si蒸気圧下の真空で、所定時間高温加熱することによって、機械的な研磨やエッチングでは極めて困難な分子レベル(フルユニット高さ又はハーフユニット高さ)での平坦化を行うことができる。
【0080】
次に、図12から図13までを参照して、本実施形態の製造方法により製造された標準試料72と、従来の方法で製造された標準試料81と、を比較する。
【0081】
図12(a)はSi基板を用いた従来の標準試料81の表面の形状を示す図であり、図12(b)はSi基板を用いた従来の標準試料81の模式断面図である。図13(a)は本実施形態の標準試料72の表面の形状を示す図であり、図13(b)は本実施形態の標準試料72のステップの断面形状を示す図であり、図12(c)は本実施形態の標準試料72の模式断面図である。
【0082】
初めに、従来の標準試料81について簡単に説明する。標準試料81は、シリコンステップ基板であり、従来技術として上記で説明した方法によって製造される。標準試料81に形成されたステップの高さは、シリコン2原子層分の高さであり、0.31nmとなっている。
【0083】
しかし、実際には、図12(a)に示すようにシリコン表面の酸化等によりテラス表面に凹凸が生じているため、テラス幅が図12(a)に示すように不均一になっており、ステップの高さも高精度に0.31nmという訳ではない。更に言えば、このステップ形状の精度は、シリコンが時間の経過に従って大気中の酸素と反応して酸化することで、徐々に失われていく。
【0084】
次に、本実施形態の標準試料72について説明する。なお、図13で示した標準試料72は、オフ角が1度の4H−SiC単結晶基板70を用いて、ハーフユニット高さのステップを形成させたものである。ステップの高さは正確に0.50nmとなっている。
【0085】
図13(b)に示すように、標準試料72に形成されたテラスは、平坦となっている。しかも、この標準試料72に形成されたステップは、時間が経過しても、表面が粗くなることがない。また、この標準試料72に形成されるテラス幅は、図13(a)に示すように均一になっている。
【0086】
標準試料72,81は、標準長さとしてステップの高さを用いるため、テラス幅の均一具合が直接的にAFMの校正の精度に影響を与える訳ではない。しかし、テラス幅が不均一であると、テラス幅が狭い箇所が形成されることがある。このテラス幅が狭い箇所は、テラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができないため、AFMの校正を行うために好ましくない。この点、本実施形態の標準試料72はテラス幅が均一なため、標準試料72のどの部分で校正を行った場合においても、同程度の精度の校正を行うことができる。
【0087】
また、上記特許文献2及び3が開示する単結晶サファイヤ基板から製造される標準試料は、大気と反応しないため、この点では本実施形態の標準試料72と同等である。しかし、特許文献2の図面に示すように、単結晶サファイヤ基板から製造される標準試料のテラス幅は不均一であり、更にステップの平坦度に関しても本願発明の標準試料72の方が優れている。
【0088】
前述のように、本実施形態の製造方法では、温度等を変更することで形成されるステップの高さを4種類から選択できるので、4種類の絶対値を提供可能である。そして、提供される4種類の絶対値は、全てが非常に高精度となっており、通常は0.1nm程度であるAFMの測定精度を大幅に向上させることができるほか、この絶対値のうち少なくとも2つを用いて校正を行うことで、評価装置の測定値に対する線形特性をナノオーダー以下で検証することが可能となる。また、SiC結晶は、化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり十分な信頼性が有る。
【0089】
以上に説明したように、ナノメーター標準原器としての標準試料72は、比較の基準となる標準長さを有している。また、この標準試料72は、ステップ/テラス構造が形成されたSiC層を有している。そして、ステップの高さが、SiC分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又はSiC分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一である。また、このステップの高さが前記標準長さとして用いられる。
【0090】
これにより、材質としてSiC層を用いているため、シリコン等で構成された標準試料と異なり、材質としてSiC層を用いているため、ナノメーター標準原器の表面が大気中の物質(例えば酸素)との反応性が低く、仮に若干の反応が起きたとしても一度ステップ/テラス構造のSiC層が形成されると下地を構成するSiC結晶の化学的安定性が極めて高いのでステップの高さの精度を長期間にわたって維持可能であり安定した標準試料72の精度を維持することができる。
【0091】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造は、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板70の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を機械研磨等の手段により加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板70の加熱処理を行う事により、単結晶炭化珪素基板70の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。
【0092】
これにより、テラスの表面が分子レベルで平坦化されるため、高精度な標準長さを有する標準試料72が実現できる。
【0093】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた坩堝2内で行われる。
【0094】
これにより、坩堝2に炭素ゲッター機能を良好に発揮させて坩堝2内を高純度のSi雰囲気に保つことができるので、好適な環境で加熱処理を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態の標準試料72において、前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されている。
【0096】
これにより、必要な標準長さに応じて以下の4種類の高さを用いることができる。即ち、4種類の高さとは、4H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、4H−SiC単結晶のハーフユニットの高さ、6H−SiC単結晶のフルユニットの高さ、及び、6H−SiC単結晶のハーフユニットの高さである。そのため、様々な用途に柔軟に対応することができる。
【0097】
また、本実施形態の標準試料72において、ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能である。
【0098】
これにより、必要なテラス幅が形成された標準試料72を製造することができる。また、標準試料72でAFMの校正を行う場合は、テラス幅を広くすることによりテラスの表面の微細な凹凸の影響を相対的に減らすことができる。この場合、より正確な校正を行うことができる。
【0099】
また、本実施形態の標準試料72は、標準長さとしてのステップの高さを用いて測定機器としてのAFMを校正する。
【0100】
また、本実施形態の標準試料72の製造方法においては、4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板70の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を機械研磨等の手段により加工形成させ、温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板70に対して加熱処理を行う事により、炭化珪素基板70の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成する。なお、必要なテラス幅に応じた所定のオフ角度を形成し、当該オフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することもできる。
【0101】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0102】
収容容器としての坩堝2は、炭化タンタルに限定されない。例えばタンタル以外の金属であって、炭素元素に対するゲッター効果を有し、SiC基板に対して高温接合せず、2000℃程度の温度に対する耐熱性を有し、更に超高真空材料であるものがあれば、当該金属からなる坩堝2に変更することができる。
【0103】
上記実施形態では、AFMを校正するための標準試料及びその製造方法を説明したが、形成されるステップの高さを標準長さとして使用する限り、様々なナノメーター標準原器及びその製造方法に適用することができる。例えば、電子顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、光干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の測定機器を校正する標準試料を挙げることができる。
【0104】
また、本発明を適用する限りにおいて、以上に説明してきた製造方法の一部を変更することができることは勿論である。また、上記実施形態で説明した温度条件や圧力条件等は一例であって、装置の構成や要求される標準長さ等の事情に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0105】
2 坩堝(収容容器)
70 SiC単結晶基板
71 表面を分子レベルに平坦化させた後のSiC単結晶基板
72 標準試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較の基準となる標準長さを有するナノメーター標準原器において、
ステップ/テラス構造が形成された単結晶炭化珪素(SiC)層を有しており、
ステップの高さが、単結晶炭化珪素(SiC)分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又は単結晶炭化珪素(SiC)分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一であり、
前記ステップの高さが前記標準長さとして用いられることを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項2】
請求項1に記載のナノメーター標準原器であって、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項3】
請求項2に記載のナノメーター標準原器であって、
ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた収容容器内で行うことを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器であって、
前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されていることを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器であって、
ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能なことを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器としての標準試料であって、
前記標準長さを用いて測定機器を校正することを特徴とする標準試料。
【請求項7】
形成されるステップの高さが比較の基準となる標準長さとして用いられるナノメーター標準原器を製造する方法において、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のナノメーター標準原器の製造方法であって、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素基板の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上に必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のナノメーター標準原器の製造方法としての標準試料の製造方法。
【請求項1】
比較の基準となる標準長さを有するナノメーター標準原器において、
ステップ/テラス構造が形成された単結晶炭化珪素(SiC)層を有しており、
ステップの高さが、単結晶炭化珪素(SiC)分子の積層方向の1周期分であるフルユニットの高さ、又は単結晶炭化珪素(SiC)分子の積層方向の半周期分であるハーフユニットの高さと同一であり、
前記ステップの高さが前記標準長さとして用いられることを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項2】
請求項1に記載のナノメーター標準原器であって、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項3】
請求項2に記載のナノメーター標準原器であって、
ステップ/テラス構造を形成するための加熱処理は、タンタル金属からなるとともに炭化タンタル層を内部空間に露出させた収容容器内で行うことを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器であって、
前記SiC層は、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶で構成されていることを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器であって、
ステップ/テラス構造が形成される面のオフ角を調整することで、任意のテラス幅を形成可能なことを特徴とするナノメーター標準原器。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のナノメーター標準原器としての標準試料であって、
前記標準長さを用いて測定機器を校正することを特徴とする標準試料。
【請求項7】
形成されるステップの高さが比較の基準となる標準長さとして用いられるナノメーター標準原器を製造する方法において、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素(SiC)層の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上にオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、基板表面のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のナノメーター標準原器の製造方法であって、
4H若しくは6H多形を有する単結晶炭化珪素基板の基板表面の(0001)Si面又は(000−1)C面上に必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度を加工形成させ、
温度範囲が1500℃以上2300℃以下のSi蒸気圧下の真空で単結晶炭化珪素基板の加熱処理を行う事により単結晶炭化珪素(SiC)基板表面の研磨傷や欠陥を気相エッチングして分子レベルに平坦化し、
この加熱処理を単結晶炭化珪素(SiC)分子配列周期の1周期又は半周期のステップが自己形成する最適温度で行なうことにより、必要なテラス幅に応じた所定の角度のオフ角度に整合するステップとテラス構造を基板全面に整一に形成することを特徴とするナノメーター標準原器の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のナノメーター標準原器の製造方法としての標準試料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−247807(P2011−247807A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122852(P2010−122852)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】
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