説明

ナノリットルのアレイローディング

【課題】インターフェースを提供すること。
【解決手段】ナノリットルのサンプルチップ(10)内に微小流体サンプルを貯蔵するためのインターフェースが提供される。流体アクセス構造は、サンプルウェル(12)のアレイから、サンプルウェル(12)の選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供する。流体導入機構は、サンプル流体を流体アクセス領域へと導入し、その結果、選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、選択されたサブセット(20)内にあるサンプルウェル(12)にサンプル流体が入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、サンプル液体をアッセイするための技術に関し、より具体的には、アレイ内のナノリットルのサンプル容積のサブセットを利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
多数の化学的および生物学的な貯蔵アッセイおよび合成操作を行なうための、種々のシステムが公知である。1つのアプローチは、親水性の内装と、疎水性の材料で囲まれた開口部とを備えるナノリットル容積のスルーホール型サンプルウェルのアレイを有するアッセイチップを使用する。ナノリットルのチップシステムの1つの特定の市販品の例は、BioTrove,Inc.(Woburn,MA)製のLiving ChipTMである。ナノリットルのチップ技術は、非常に少ない容積(代表的には、100ナノリットル未満)の流体サンプルを取り扱う能力に依存する。このような少量の液体サンプルを取り扱うことを考慮した種々の検討事項は、微小流体力学として知られる。
【0003】
図1は、代表的なナノリットルのサンプルチップの切り取り図を示す。これは、例えば、特許文献1および特許文献2(これらの内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。アレイチップ10は、一方の平面14から他方の対向する平面(示さず)へとこのチップ10を横切る、スルーホール型のサンプルウェル12のアレイを備える。
【0004】
サンプルウェル12は、例えば、ウェル間の間隔を制御することによって、サブアレイにグループ分けされ得る。例えば、図2は、サンプルウェル12が、5ウェル×5ウェルのサブアレイ20が4×12個あるアレイにグループ分けされた、チップ10を示す。別の実施形態において、サブアレイ20は、8ウェル×8ウェル、または、任意の他の都合のよい数であり得る。図2のチップ10は、1インチ×3インチであり、これは、標準的な顕微鏡スライドに対応する。サブアレイ20内のサンプルウェル12は、図2に示されるように、正方形または矩形のグリッド配置にレイアウトされ得るか、または、サンプルウェルの行および/もしくは列は、図1に示されるようにずらされ得る。
【0005】
サンプルチップ10は、代表的に、厚さが0.1mm〜10mmより大きく(例えば、約0.3mm〜1.52mmの厚み)あり得、そして、一般的には、0.5mmである。スルーホール型のサンプルウェル12の代表的な容積は、0.1ピコリットル〜1マイクロリットルであり得、一般的な容積は、0.2ナノリットル〜100ナノリットルの範囲(例えば、約35ナノリットル)である。液体サンプルの表面張力の毛管現象が、サンプルウェル12にロードするために使用され得る。代表的なチップの寸法について、毛管力は、液体を適所に保持するために十分強い。サンプル溶液がロードされたチップは、空気中で波打ちされ得、そして、サンプルを移動させることなく、中程度の速度で遠心分離さえされ得る。
【0006】
サンプルウェル12の引き出し力を高めるために、容器の標的エリアである、内壁42は、サンプル流体を引き付ける、親水性表面を有し得る。しばしば、この表面は、生体適合性であり、そして、タンパク質および核酸のような生体分子と不可逆的に結合しないことが望ましいが、この結合は、サンプルの精製および/または保管のようないくつかのプロセスには有用であり得る。あるいは、サンプルウェル12は、サンプル流体を引き付ける、多孔性の親水性材料を含み得る。相互汚染(クロストーク)を防止するために、チップ10の外側平面14およびサンプルウェル12の開口部の周囲にある材料層40は、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)の単層のような、疎水性材料から作製され得る。従って、各サンプルウェル12は、疎水性領域がいずれかの端部に接着された、内側の親水性領域を有する。
【0007】
サンプルウェル12のスルーホール型のデザインは、他のマイクロプレート構造に特有の、空気が捕捉される問題を回避する。このアプローチは、疎水性および親水性のパターン化と一緒になって、サンプルウェル12の自己計量式のローディング(self−metered loading)を可能にする。この自己ローディング機能性は、試薬がプレロードされたアレイの製造に役立ち、そしてまた、水性のサンプル物質と接触したときに、アレイが、アレイ自らを満たすのに役立つ。
【0008】
このようなナノリットルのチップは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)分析のような、大量の平行的なアッセイに利用され得ることが示唆されている。しかし、ナノリットルのチップのこのような用途に関する1つの問題は、必要とされるチップの調製および処理が複雑であり、時間がかかることである。サンプルが導入される前に、各サンプルウェルは、必要なプローブ、試薬など(一般に、試薬と呼ばれる)で予め初期化されなければならない。このようなチップの調製は、初期化と呼ばれる。一旦チップが初期化されると、分析物または検体が、各ウェルに導入されなければならず、これは、サンプルローディングと呼ばれる。用語「サンプル」は、検体および試薬の両方を総称的に指すために使用される。96ウェルプレートまたは384ウェルプレートの昔の形式で貯蔵される流体サンプルの大きな収集物(例えば、低分子量の薬物候補、細胞、プローブ分子(例えば、オリゴマー)および/または組織サンプルのライブラリー)を、ナノリットル容器のより効率的な高密度アレイに移すことは、困難であり得る。実際には、ナノリットルのサンプルチップを初期化およびローディングするためには、2つのアプローチ(一斉移送(bulk transfer)および個別移送(discrete transfer))が存在する傾向がある。
【0009】
一斉移送の一例は、サンプル液体のレザバに、サンプルチップを浸漬することである。このサンプル液体は、毛管現象によりサンプルウェル内に運ばれ、そして、全てのウェルが、サンプルで均一に満たされる。
【0010】
個別移送のための1つの確立された方法は、移送液体がロードされた移送ピンを使用する。例えば、代表的には、ピン、またはピンのアレイを用いて、ハイブリダイゼーション分析のために、DNAサンプルをガラススライド上にスポッティングする。ピンはまた、マイクロプレート間、または、ゲル上に、液体(例えば、薬物候補)を移送するために使用されている(1つのこのようなゲルシステムは、Discovery Partners,San Diego,CAにより開発されている)。種々の幾何学および送達容積をした、多くのピンのタイプが、市販されている。V&P Scientific(San
Diego,CA)は、スロット型、溝型、クロスハッチ型、および他の新規の幾何学のピンを製造している。ArrayIt製のStealth Pinは、1回のサンプル取り込みから、数百のスポットを、連続して、0.5nL〜2.5nLの送達容積で、送達することが可能である。Majer Precision Engineeringは、MicroQuil 2000のような、テーパー状の先端およびスロットを有するピンを販売している。1つ以上のピンを用いて、サンプル液体を移送するための技術は、2002年8月23日に出願された、特許文献3(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,387,331号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0094533号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第10/227,179号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の代表的な実施形態は、ナノリットルのサンプルチップ内に、微小流体サンプルを貯蔵するためのインターフェースを提供するための方法およびシステムを包含する。流体アクセス構造は、サンプルウェルのアレイから、サンプルウェルの選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供する。流体導入機構は、選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、選択されたサブセット内のサンプルウェルにサンプル流体が入るように、サンプル流体を流体アクセス領域に導入する。
【0013】
さらなる実施形態において、流体アクセス構造は、アレイの平面の隣に位置決めされて、流体アクセス領域を提供するように適合され得る。流体アクセス構造は、サンプル流体を流体アクセス領域に分配するための少なくとも1つの微小流体回路を備え得、この回路は、アレイに固定されていても、アレイから取り外し可能であってもよい。
【0014】
別の実施形態において、流体アクセス構造は、アレイの一部分を折リ曲げて、流体アクセス領域を提供するように適合され得る。例えば、流体アクセス構造は、マイクロプレートのサンプルウェル内にフィットするように適合され得、それにより、マイクロプレートのサンプルウェル内のサンプル流体を、流体アクセス領域に導入することが可能である。
【0015】
他の実施形態において、流体アクセス構造は、流体アクセス領域とアレイの残りの部分との間に障壁を生成するためのマスクを備え得る。あるいは、印刷プレート(printing plate)が、流体アクセス構造および流体導入機構として使用され得る。流体導入機構は、流体アクセス領域の上にサンプル流体の液滴を引きずることに基づき得る。あるいは、流体導入機構は、サンプル流体の集束した液滴を、例えば、噴霧することによって、流体アクセス領域に分配するために適合され得る。種々の実施形態において、スポンジまたはピペットが、流体導入機構のために使用され得る。
【0016】
別の実施形態において、膜が、流体アクセス構造および流体導入機構として使用される。膜は、パターン化された疎水性領域と親水性領域とを有する外側表面を備え得る。
【0017】
実施形態はまた、微小流体サンプルを貯蔵するためのキットを包含する。このキットは、上記のインターフェースのいずれか、ならびに、サンプルウェルのアレイを備えるチップを備える。このようなキットにおいて、インターフェースは、さらに、サンプルウェルの選択されたサブセット内のウェルのための試薬を含み得る。例えば、この試薬は、ウェルのサブセットに入ったサンプル流体を染色するための染料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、先行技術に従う、代表的なナノリットルサンプルチップの詳細な切り取り図を示す。
【図2】図2は、サンプルウェルのアレイが、サブアレイにグループ化された、図1に従うチップの上面図(top plan view)を示す。
【図3A】図3は、流体アクセス構造において使用するためのチャネルの幾何学の種々の詳細を示す。図3Aは、流体アクセス構造において使用するための、種々のチャネルの形状のいくつかの例を示す。
【図3B】図3Bおよび3Cは、2つの異なるチャネルの断面図を示す。
【図3C】図3Bおよび3Cは、2つの異なるチャネルの断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に従う、PDMSローダーインターフェースの断面図を示す。
【図5】図5は、一実施形態に従う、硬プラスチックの上層を有するPDMSローダーインターフェースを示す。
【図6】図6は、硬プラスチックの上層を有するPDMSローダーインターフェースの代替的な実施形態を示す。
【図7】図7は、サブアレイがマイクロプレートアレイのサンプルウェル内にフィットすることを可能にするように、サンプルチップの一部が折り畳まれている、一実施形態を示す。
【図8】図8は、インターフェースローダーのマスクベースの実施形態を示す。
【図9】図9は、インターフェースローダー機構としての接触印刷の使用を示す。
【図10】図10は、多孔性膜がインターフェースローダー機構として機能する、一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(特定の実施形態の詳細な説明)
本発明の種々の実施形態は、スルーホール型のサンプルウェルのアレイに、微小流体サンプルを貯蔵するためのインターフェースを提供するために方向付けられている。流体アクセス構造は、サンプルウェルの選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供する。流体導入機構は、選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、選択されたサブセット内のサンプルウェルにサンプル流体が入るように、サンプル流体を流体アクセス領域に導入する。
【0020】
種々の要因が、どのようにして特定の実施形態が実現されるかに影響する。これらの中でもとりわけ、均一性が必要とされる特定のプロセスは、最小の流体力学的な誤差(例えば、選択されたサンプルウェルの1%未満が、サンプル流体を適切にロードし損ねる)で、一斉のローディング技術の均一性に達するべきである。また、デッドボリューム(ローディングインターフェース内に残される、未使用のサンプル流体)は、可能な程度まで、最小にされるべきである;効率的な実施形態において、デッドボリュームは、総サンプル流体の容積の10%未満であり得る。さらに、選択されたサンプルウェルと、選択されていないサンプルウェルとの間の相互汚染(クロストーク)は、回避される必要がある。
【0021】
特定の実施形態に影響を及ぼす他の要因としては、意図される用途の特定の細部が挙げられる。例えば、流体導入機構にサンプル流体を提供するために、手動でのローディングが使用されるのか、ロボット式のローディングが使用されるのか、サンプルの供給源の構造(例えば、384ウェルマイクロプレート)、および、例えば、過フッ化液体を用いる他の取扱手順との適合性などである。また、隣接するサブアレイ間の空間の量も、クロストークに対する感受性に影響を与える。
【0022】
サンプル流体が、サブセット(サブアレイ)内のウェルにロードされた後、流体アクセス構造および流体導入機構を備えるローダーインターフェースは、例えば、サンプルチップの表面から剥がすか、または、てこで動かす(pry)ことによって、取り除かれ得る。1つの実施形態において、サンプルチップおよびローダーインターフェースは、キットとして一緒に包装される。このキットにおいて、ローダーインターフェースは、サンプルチップに予め固定され、ローダーインターフェースとサンプルチップとの間の適切な配置を保証する。いくつかの特定の実施形態において、インターフェースのローダー構造の壁に、乾燥形態の試薬を提供することが有用であり得る。所定のサブアレイと一体になった構造は、同じ試薬または異なる試薬を有し得る。試薬は、ゲルまたは蝋(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))中にカプセル化され得る。例えば、蛍光染料が、ローダーインターフェースの内壁にコーティングされ得、その結果、生化学的サンプル(例えば、核酸、細胞またはタンパク質)は、所定のサブアレイに添加された場合に、この染料で染色される。
【0023】
1つの特定の実施形態において、流体アクセス構造は、サンプルチップの平面の隣に位置決めされ、例えば、サンプル流体を流体アクセス領域に分配するための少なくとも1つの微小流体回路を提供することによって、流体アクセス領域を提供するように適合される。このような微小流体回路は、流体アクセス構造内の微小流体チャネルに基づき得、その結果、チャネルは、流体アクセス領域内のサンプルウェルのサブセットの開口部の上に重なり、そして、これと連絡する。流体導入機構は、サンプル流体をチャネルに供給する、ポートまたはレザバであり得る。例えば、ピペットまたはマイクロシリンジが、サンプル流体を、流体導入機構(例えば、サンプル流体を受容するドッキングポート)に提供し得る。このドッキングポートは、流体アクセス領域を形成するアクセス構造チャネルと連絡する。次いで、チャネル内のサンプル流体は、サンプルチップ内のサンプルウェルの選択されたサブセットに入れられる。種々の実施形態において、ドッキングポートは、チャネル1つあたり1つのドッキングポートであっても、チャネル1つあたりに複数のドッキングポートであってもよい。
【0024】
微小流体チャネルは、サンプルチップに面する下端側が開いている間、その上端は閉じていても、開いていてもよい。上端が開いているチャネルは、手動か、もしくは、通常の精度を有するロボット式の分配ステーションによるロードを容易にする利点を有する。なぜならば、液滴は、構造の任意の位置において、微小流体回路の流体アクセス構造と接するだけでよいからである。上端が開いた構造は、代表的に、鋼、チタン、ガラスまたはシリコンのような剛性の材料から容易に製造されるが、これらの剛性の構造は、シリコンの場合には、高価であり得、または、鋼の場合には、下にあるアレイとの密な接触を提供するには、平坦さおよび柔軟さが不十分であり得る。上端が閉じた構造は、エラストマー材料から製造することがより容易であり得るが、ポートおよびこれらのポートへのディスペンサーのドッキングを使用すること、ならびに、ディスペンサーにより付与される圧力の調節を必要とし得る。流体アクセス構造は、種々の材料(金属、プラスチックおよびガラスが挙げられるがこれらに限定されない)から製造され得る。1つの特定の実施形態において、シリコンが、流体アクセス構造を製造するために使用され、そして、良好な剛性で取扱が容易であることが分かったが、シリコンはまた、比較的脆く、簡単に壊れやすく、そして、製造に費用がかかることも分かった。軟らかい材料、またはエラストマー材料の、密な流体力学的接触を有しつつ、堅い材料の剛性でかつ上端の開いたデザインから利益を得る1つの方法は、堅い材料(例えば、鋼)で製造された構造を、軟らかい材料(例えば、PDMS)でコーティングすることである。
【0025】
別の実施形態は、ステンレス鋼のような金属に基づき得る。鋼は、扱いやすく、安価であり、そして、優秀な剛性および強度を有する。鋼はまた、親水性であり、このことは、チャネル内にサンプル流体を保持することを補助する。クロストークを避けるために、鋼の流体アクセス構造は、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)のような、疎水性の単層表面コーティングを備え得る。微小流体回路の内壁の良好な湿潤特性および生体適合性を高めるために、これらは、親水性材料で選択的にコーティングされ得る。親水性材料は、親水性の堆積物であり得、そして好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)のような生体適合性の蝋であり得るか、または、PEG部分を有するシランのような共有結合されたコーティングであり得るが、これらに限定されない。
【0026】
鋼の流体アクセス構造内のチャネルは、エッチングまたは放電加工(EDM)のような種々の異なる方法によって製造され得る。EDMは、ギザギザのない加工(burr−free machining)のために、高エネルギー電流を用いて、主金属を溶融する。ワイヤEDMは、優れた精度と最小限のばらつきを有する、入り組んだパターンおよび複雑な形状を製造し得る。
【0027】
図3Aは、流体アクセス構造において使用するための、種々のチャネルの形状のいくつかの例を示す。チップサンプルウェル12は、図3Aにおいて見られる、小さな孔である。チャネル形状の中でも、蛇行した幾何学31、灌漑列幾何学(irrigation row geometry)32、およびらせん状幾何学33が好ましい。所定の幾何学の中のある点に接続された、ドッキングポートおよびサンプルレザバのような流体導入機構が存在し得る。次いで、サンプル流体は、流体導入機構から、流体アクセス構造の微小流体チャネルへと送達される。サンプル流体は、サンプルウェルの開口部を覆うチャネルを下向きに動くので、毛管現象によりウェル内へと運ばれ、サンプルウェルの容積をサンプル流体で満たす。
【0028】
特定のチャネル形状、および、サンプルチップの幾何学のような他の要因に依存して、流体アクセス構造のチャネルの幅は、狭すぎも広すぎもしない適切な寸法である必要がある。図3Bおよび3Cは、2つの異なるチャネルの断面図を示す。図3Bは、垂直壁を備え、140μmの幅のチャネルを有する、厚さ500μmのサンプルローダーインターフェースを示す。図3Cは、中心が厚さ320μm、表面が厚さ450μmの、砂時計形状のチャネル壁を有する、厚さ300μmのサンプルローダーインターフェースを示す。1つの特定の実施形態において、チャネルの幅は、サンプルウェルの開口部の直径と同じであり得る。別の実施形態において、チャネルは、サンプルウェルの開口部の直径よりも狭い。いくつかの幾何学において、良好なサンプル移動特性を提供するので、より薄いチャネルが好ましくあり得、そして、広すぎるチャネルは、ピペットからのサンプル流体で自発的に満たされるという問題を有し得るか、または、隣接するサンプルチップに対して、サンプル流体を効率的に移動し得ない。いくつかの実施形態において、流体アクセス構造は、サンプルチップと同じ厚みであり、その結果、サンプルウェルと超小型回路チャネルとの間に、1:1のアスペクト比が存在する(例えば、流体アクセス構造およびサンプルチップの両方が、厚さ300μmであり得る)。また、流体アクセス構造が厚いほど、移動されないサンプル流体の望ましくないデッドボリュームが多くなり得る。より厚い流体アクセス構造はまた、サンプル流体をロードすることが難しくあり得る。
【0029】
サンプルチップと流体アクセス構造との間に良好な平面接触を設けることが重要である。接触が悪いと、一貫しないローディング、および他の問題を生じ得る。ある材料を、必要な平坦さおよび剛性を備えて、所望の幾何学および寸法に製造することは、多かれ少なかれ難しくあり得る。さらに、ある材料は、扱われるとき、より変形する傾向があり得る。ある材料は、適切な作動を妨害し得る、ギザギザおよび他の製造上の不揃いという問題を有し得る。
【0030】
接触を向上させるための1つの手段は、例えば、クランプで止めることによって、サンプルチップおよび流体アクセス構造に圧力を加えて、一緒に押し付けることである。いくつかの実施形態において、磁性材料は、サンプルチップと流体アクセス構造との間に、適切な表面接触を形成することを補助し得る。ガスケットがまた、チップと流体アクセス構造とを接続するために有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、エラストマー性のポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))が、ガスケットとして使用され得る。他の実施形態において、PDMSの間に挟まれた層が、サンプルチップおよび流体アクセス構造の平面を有効に接続する。
【0031】
別の実施形態において、サンプルローダーインターフェース自体は、PDMSのようなエラストマー性の材料ベースであり得る。すなわち、流体アクセス構造、および流体導入機構のサンプル受容ポートのチャネルは、PDMS中に成形され得る。PDMSは、生来、軟らかく、かつ、粘着性であり、そして、10μm〜50μmの範囲の微細な形状に成形され得る。
【0032】
図4は、図3Aに見られるような蛇行した幾何学31を有する、PDMSローダーインターフェース40の断面を示す。図4Aは、ドッキングポート41を備える、流体導入インターフェースの断面を示し、このポート41の中に、サンプル流体を含むピペットもしくはマイクロシリンジが挿入され得る。ドッキングポート41の底にあるのは、流体アクセス構造の微小流体チャネルへと送達するための、ある容量のサンプル流体を保持する、サンプルレザバ42である。図4Bは、図3Aに示される蛇行した幾何学31内のサンプルウェルの開口部の上にかぶさった、微小流体チャネル43を通る断面を示す。こうして、ドッキングポート41のピペットもしくはマイクロシリンジからのサンプル流体が、サンプルレザバ42を介して、微小流体チャネル43へと送達される。サンプル流体は、チャネル43を下向きに移動し、そして、サンプルウェルの開口部の上を通過するので、サンプル流体は、毛管現象によりサンプルウェル内に運ばれ、そして、サンプルウェルに、ある容量のサンプル流体が入る。サンプル流体が過多な圧力で提供される場合、いくらかの流体が、レザバ42またはチャネル43から漏れ、そして、相互汚染(クロストーク)を生じ得る。
【0033】
PDMSローダーインターフェースは、所望の特徴および幾何学を有する成形マスク上にポリマー樹脂を成形することによって簡便に製造され得る。例えば、プロトタイプのインターフェースは、三次元CADデータを一連の非常に薄いスライスへと変換するための立体リソグラフィーを用いることによって、PDMS樹脂において製造され得る。レーザーにより生成した紫外光線は、液体ポリマーの表面上で各層をトレースし、完全で、原寸のプロトタイプが形成されるまで、各層を形成および硬化させる。ポリマーベースのローダーインターフェースを形成するための別の技術は、SU−8フォトレジスト構造をつくるために、紫外リソグラフィーを使用し得る。樹脂ベースの展開液に対する比率、ならびに、傷つけることなくその型から成形インターフェースを取り外すための、定着および硬化の時間ならびに温度は、実験的に変動させることが有用であり得る。一般に、より低い温度でよりゆっくりと硬化させると、より良好に機能し得る。なぜならば、より高い硬化温度は、成形したインターフェースを過度に壊れやすくし得るからである。流体導入機構のためのアクセスポートは、組み込んで成形(mold in)され得るか、または、穴を開けるか、レーザー加工するか、穿孔するか、ホットニードル(hot needle)で穴を開けることによって、成形した後に加えられ得る。
【0034】
ローダーインターフェースのチャネルは、サンプル流体を適切に移送かつ送達するために親水性である必要があるものの、PDMSは、本来疎水性であり、そして、親水性にするためには、特別な処理を必要とする。PDMSを疎水性から親水性に変更するために、プラズマガスを用いてPDMSを処理することは、当該分野で公知である。プラズマによる処理の1つの欠点は、時間が経てば分解して、その元の状態に戻ることが知られていることである。別の処理アプローチは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の溶液から、チャネル表面上に親水性のコーティングを堆積させることである。別の可能性は、プラズマとPEGとの組み合わせ処理である。PEGで内側表面をコーティングし、次いで、他の表面を疎水性に戻すか、または、これらの表面を処理して疎水性にすることによって、選択的にコーティングされたエラストマー性構造が生じ、これは、ローディングを容易にすること、および、サンプルのクロストークを防止することの両方において最適であり得る。
【0035】
いくつかの適用において、PDMSの軟らかい弾力性が、特に、ドッキングポートの使用が困難であり得るという、流体導入機構に関する問題を生じ得る。1つの解決策は、主要なPDMS構造に、硬プラスチックのような硬い材料の層を重ねることである。図5は、硬プラスチックの上層(over−layer)50が、PDMSローダーインターフェース40およびサンプルチップ10の上にあるような、1つの実施形態を示す。上層50は、特大のドッキングポート51を備え、このドッキングポート51は、その大きなサイズおよび硬プラスチック材料によって、サンプル流体を送達するピペットもしくはマイクロシリンジの端部を受容するためにより効率的に機能し得る。
【0036】
図6は、硬プラスチックの上層50が、PDMSローダーインターフェース40およびサンプルチップ10の側部の周りを包んでいる、さらなる実施形態を示す。この構成は、構造全体に付加された安定性および剛性を提供し得、そして、PDMSローダーインターフェース40とサンプルチップとの間で適切な位置決め(整列)を維持することを補助し得る。
【0037】
微小流体回路はまた、核酸ハイブリダイゼーションまたはスライドガラス上のタンパク質アレイを含む、他の非スルーホール型マイクロアレイにも使用され得る。微小流体回路ベースの流体アクセス構造は、非常に有効であり得、そして、サンプルチップの表面を通る、流体アクセス領域内およびその周囲へのサンプル流体の汚れおよび染みのような、多くのサンプル移送上の問題を回避し得る。しかし、微小回路は、使用されないデッドボリュームに、いくらかのサンプル流体を無駄に保持し得る。
【0038】
別の実施形態は、デッドボリュームのような問題を回避するために、サンプルウェルのサブアレイを有する三次元構造に基づき得る。この構造は、高密度のナノリットルアレイ形式の利点と、市販のマイクロタイタープレートの自動化液体取り扱いの利点とに同時に対処することを可能にするように適合され得る。図1に示される二次元の平面ナノリットルサンプルチップとは異なり、このような実施形態は、三次元であり、マイクロタイタープレートとの嵌合を容易にするために、サンプルウェルの平面の上の構造によって互いに接続されたサンプルウェルのサブアレイを有する。
【0039】
このようなマイクロタイター適合性のローダーインターフェースを製造する際の1つの問題は、スルーホール型のナノリットルサンプルウェルを製造するための技術は、基板が平面であることを必要とすることである。1つのアプローチは、適切なポリマーから、標準的なサイズのマイクロタイタープレートと適合性である三次元構造をマイクロ成形することであり、このマイクロ成形により、所望のスルーホール型ナノリットルサンプルウェルの幾何学が、マイクロタイタープレートと嵌合する正確な位置に生成される。あるいは、ある実施形態は、マイクロタイタープレートと嵌合するために必要とされる構造を生成するために組み立てを必要とする、複数の構成要素から作製され得る。
【0040】
別の特定の実施形態において、金属のような平面材料が、従来の光化学製造方法を用いてエッチング処理され得る。次いで、必要とされる三次元構造を製造するために、2つのさらなる折り畳み工程が使用され得る。最初の平面部分を適切に設計すれば、最終的に製造される構造は、マイクロタイタープレートと適合するように作製され得、その結果、サンプルウェルのサブアレイは、マイクロタイタープレートのウェルの内側にフィットする。このような実施形態は、光化学エッチング処理の信頼性および精度、ならびに薄い金属薄板の形成が容易であることと共に、組み立て工程が必要ないという利点を有する。
【0041】
図7Aは、このような折り畳み可能なローダーインターフェース70の最初にエッチング処理された平面の片を示す。図7Aにおける構造のアームは、最終的には、マイクロタイタープレートのウェル内のサンプル流体を、流体アクセス領域72(図7Aにおいてはノードである)に導入するための、流体導入機構71となる。図7Aに示される流体アクセス領域72は、各々が、流体アクセス領域からのサンプル流体を保持するための、5×5のサブアレイの25のスルーホール型のナノリットルサンプルウェル12(マイクロタイタープレートのウェル)を有する。各サブアレイ内のサンプルウェルの数は、ノードのサイズを変更することによって容易に変更され得る。サンプルウェルが、高密度でエッチング処理された場合、1つのノードあたり1000以上のサンプルウェルが可能である。図7Aに示されるインターフェース70においては、(384のノードを均等に製造することが容易であるが、)96のノードがある。図7Aに示されるワークピース(work
piece)は、光化学エッチング処理後であるが、形成前のインターフェース70である。外側の枠は、形成作業の前に取り除かれ得るか、または、取り付けられたままにされて、最終的な部品を取り扱うために使用され得る。
【0042】
図7Aに示されるインターフェース70は、各々がワークピースの1方向にのみ機能するように設計された、2つの形成ダイ(forming die)を用いることによって完成させられ得る。第1の形成作業は、次いで、一方向−例えば、全ての行−にのみ、全ての材料を曲げ、そして、乱されていないカラム上の材料の接続はそのままにする。結果として得られるワークピースの一部の例は、図7Bにクローズアップして示される。最終的な形成作業は、最初のものに対して直交性であり、その結果、全てのカラムを形作る。最終的に形成されるインターフェース70の一部は、図7Cにクローズアップして示されるようなものである。最終的に形成されるインターフェース70の構造は、次いで、標準的な96ウェルマイクロタイターサンプルプレートの頂部と適合し得る。このことにより、1以上のアッセイ操作において、種々の工程を実施するために、流体アクセス領域72の各々のサブアレイ内のナノリットルサイズのサンプルウェルが、マイクロタイタープレートのウェル(ならびに、種々の他の液体容器)へと、何度も出し入れされることを可能にする。
【0043】
このような三次元ローダーインターフェースを使用するために、試薬は、例えば、ピン移送技術(pin transfer technology)を用いて、非均一な平面状のワークピースのサンプルウェル内へと予めフォーマットされ得る。あるいは、インターフェース70は、最初に、その最終的な形状に形成され、そして、次いで、ピン移送によって、試薬がサンプルウェル内へと移送されることを可能にするように逆さにされ得る。移送された試薬は、乾燥することによってサンプルウェルのウェルに固定され、次いで、そのウェル内にサンプル流体が入ったマイクロプレート内へとインターフェース70を浸漬する際に放出され得る。PCRの特定の場合、サーマルサイクリングがその後に続く。洗浄操作もまた、このアセンブリを、ELISAなどのために、トラフまたはマイクロプレートへと浸漬することによって実施され得る。分析用の反応を実施した後、プレートは、任意の利用可能な読み取りモードにて、レーザスキャナまたは高解像度のCCDベースのシステムで画像化され得る。
【0044】
また、サンプルローダーインターフェースをサンプルチップに提供するための種々の他のアプローチも存在する。図8は、流体アクセス構造および流体導入機構が、マスクの上層内に一体化されている実施形態を示す。PDMSまたはシリコーンのような弾力性の材料は、サブアレイ間に流体障壁を設けることによって、サンプルチップの表面を分離する。マスク型の適用において、サンプルチップを疎水性表面上に置いて、サンプル流体が、チップの底部を横切って広がることを防止することが有用であり得る。あるいは、または加えて、種々の実施形態が、クロストークを回避するために、サンプルチップの頂部にあるマスク、およびサンプルチップの底部にある類似の対応するマスクを使用し得る。サブアレイマスクと共に使用することが意図されるチップはまた、梁、および、他の表面特徴(例えば、サンプルチップとのマスクの位置決めを助ける、間隔を空けた配置)を有し得る。
【0045】
また、サンプル流体をサブアレイの1つに添加した後に、チップの表面をブロットすることも有用であり得る。例えば、図3Aに示されるような蛇行したローダー回路は、過剰のサンプル流体をブロットするために、マスクを用いて満たされたサブアレイの上に置かれ得る。マスクベースの実施形態は、サンプル流体の染みが、クロストークをもたらすという問題を有し得る。マスクは、代表的に、ブロッティングの後で、かつ使用前にアレイから取り除かれる。
【0046】
マスキングの実施はまた、遠心ローディング技術を用いることによって改善され得る。加えて、または、あるいは、サンプル流体は、種々の手段(スワブ、ブラシ、パッドまたはスポンジの使用が挙げられるがこれらに限定されない)によって、マスキングされたサブアレイへと導入され得る。
【0047】
図9は、サンプル流体が、印刷によりサンプルウェルの選択されたサブアレイへと移送される、別の実施形態を示す。図9Aに示されるように、印刷版(printing plate)90の上の疎水性領域の環境にある親水性の島91に、例えば、ピペットを用いることによって、サンプル流体92がロードされる。印刷版90は、次いで、サンプルチップ10上のサブアレイ内のサンプルウェル12の選択されたセットの開口部と接触するように、押し下げられる。サンプル液体は、次いで、毛管現象によって、選択されたサンプルウェル12内へと運ばれ、そして、印刷版90は、サンプルチップ10からリフトオフされる。マスクベースの実施形態と同じように、この実施形態は、結果として、例えば、蛇行した回路インターフェースを有する、サブアレイの表面にブロットして、サブアレイの表面から任意の過剰のサンプル液体を除去するのに有用であり得る。いくつかの印刷ベースの実施形態において、印刷されたサンプル流体の延展を防止することは困難であり得、この延展は、クロストークをもたらし得る。他の潜在的な問題としては、サンプルチップ10と印刷版90を整列することの困難さ、印刷プロセスの多工程の性質、およびプロセスにおける一般的な煩雑さが挙げられる。
【0048】
選択されたサンプルウェルの表面にある開口部を横切って懸垂型の液滴(hanging drop)を引きずることによって、サンプル流体を移送することは、種々の上記の実施形態と組み合わせて、または、そのままのいずれかで有用であり得る。ピペッター、毛細管、マイクロシリンジ、カニューレ、ピンなどが、選択されたサブアレイを横切って液滴を分配しそして引きずるために使用され得る。このことは、再フォーマッターであるBioMekTM(Beckman Coulter,Fullerton,CA製)または他の市販のシステムのような、液体取り扱いステーションを使用することによって支援され得る。例えば、サンプルチップは、平面内の規定された領域(例えば、4.5mm)内にサンプルチップの動きを制限する、ジグ内の懸垂型の液滴のアレイの下に位置決めされ得る。次いで、サンプルチップは、サンプル流体を選択されたサンプルウェル内へと分配するために、懸垂型の液滴の下に動かされる。懸垂型の液滴によって、ナノリットルのサンプルチップへとサンプル流体を移送することは、2001年5月7日に出願された、米国特許出願第09/850,123号(本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0049】
サンプル流体を、選択されたサンプルウェルに移送するための他の非接触型の技術は、種々の上記の実施形態と組み合わせて、または、そのままのいずれかで有用であり得る。例えば、指向式(focused)の非接触型液滴分配(液滴噴霧)が、サンプル液体をサンプルウェル内へと方向付けるために使用され得る。懸垂型の液滴(droplet)は、過剰のサンプルの除去を容易にするために、アレイもしくはサブアレイの専用もしくは未使用の領域に引きずられ得る。非接触型の分配システムは、LabCyte,Sunnyvale,CAから入手可能である。
【0050】
図10は、多孔性膜が、インターフェースローダー機構として機能する実施形態を示す。示される実施形態において、多孔性膜100は、親水性の表面を有する、内部が一方向性の孔を有する。膜の外側表面101は、ほぼ疎水性であり、そして、親水性領域が、サンプルチップ10上のサブアレイ内の選択されたサンプルウェル12の開口部に対応するようにパターン付けされる。
【0051】
このような多孔性膜100は、種々の異なる手段によって(例えば、蝋によって)、サンプルチップ10に取り付けられ得る。特定の取り付け機構は、膜100によって規定されるサブアレイを越えるサンプル流体のクロストークを防止するはずであるが、一方で、サンプル流体が、サブアレイ内のサンプルウェル12に添加された後は、膜の容易な除去を可能にする。加えて、または、あるいは、膜100は、サンプル流体が分配されるべき、サブアレイのサンプルウェル12との適切な整列を保障するために、サンプルチップ10を覆ってフィットする可撓性の枠内に配置され得る。
【0052】
図10Aに示されるように、膜100は、チップの疎水性表面40が、膜のパターン付けされた疎水性の外側表面101と接触するように、サンプルチップ10の頂部に置かれる。サンプル流体が、膜100の頂部の上に分配され、そして、毛管現象によって、膜の内孔へと運ばれる。追加のサンプル流体が膜の頂部に分配されると、この液体は、膜の内孔を通って移動し、そして、膜の外側表面101の疎水性領域は通過し得ない(これは、さらに、サンプルチップ10の疎水性表面40の対応する部分に寄りかかる)。しかし、サンプル流体は、サブアレイ内の選択されたサンプルウェル12の開口部に対応するようにパターン付けされた、外側表面101の親水性部分を通過し得、そして、実際に通過する。サンプル流体は、膜100の底部の親水性領域から出てき始めるので、この液体は、サンプルウェル12の内壁の親水性表面と接触し、そして、この表面を濡らす。このことにより、サンプルウェル12の内容積が満たされるまで、サンプル流体が、毛管現象により、膜100から、サンプルウェル12の内容積へと引き抜かれる。
【0053】
十分な時間が経過した後、膜100は、図10Bに示されるように、サンプルチップ10から剥がされ得、その結果、せん断力が、膜100内に残ったサンプル流体と、サンプルウェル12内のサンプル流体との間の流体ブリッジを壊す。膜100は、次いで、破棄され得、そして、サンプルチップ10の準備が完了する。
【0054】
膜100の頂部に分配されたサンプル流体の総容量は、サンプルチップ10の外側表面40を濡らすことを回避するために、制御されるべきである。分配されるサンプル流体の容量が膜100と選択されたサンプルウェル12とを合わせた容量を超える場合、サンプルチップ10の外側表面40は、十中八九濡れる。この臨界容量未満を分配することによって、過剰の流体が、サンプルチップ10から除去されたときに、膜100内に留まることを保障する。さらに、膜100が剥がされたときに液体ブリッジに適用されたせん断力は、チップ表面が濡れる可能性を最小限にする。
【0055】
膜100の分配領域が、選択されたサブアレイ内に位置するサンプルウェル12の数により固定されると仮定すると、デッドボリュームは、膜100の厚みを制御することによって最小限にされ得る。例えば、300μmの8×8サブアレイの64のサンプルウェル(個々が、25ナノリットルのチャネルの貯蔵容量を有する)は、総合計1.6マイクロリットルの容積を有する。膜が250μmの厚みである場合、サブアレイに1.6マイクロリットルを送達するためには、約3マイクロリットルのサンプル流体が、膜にロードされる必要がある。これは、サンプル流体の約50%(1.4マイクロリットル)が、デッドボリュームとして無駄になることを意味する。
【0056】
膜ベースのインターフェースローダーは、種々の自動もしくは手動の分配機構(ピペットまたはカニューレ付きシリンジが挙げられる)に適応する。膜は、サンプル流体が、サンプルウェルの所定の選択されたサブアレイにのみ通過することを保障するために、種々の方法で区切られ得る。例えば、多数の一方向性の孔が、膜の上側および下側の表面と接触し得、その結果、サンプル流体が、これらの結合表面に対して実質的に垂直に移送され、サンプル流体が、ディスペンサーの直ぐ下のサンプルウェルにのみ行くことを保障する。
【0057】
あるいは、膜は、サンプルチップに適用されたサンプル流体の分配パターンのネガであるパターンで、孔のブロッキングを使用し得る。例えば、サンプル流体が分配される小さな領域を除いて、膜内の全ての孔は、疎水性のエポキシによってブロッキングされ得る。この実施形態は、必ずしも一方向性の孔を必要としない。
【0058】
いくつかの所望とされる膜の性質がある。これらとしては、以下が挙げられる:
・サブアレイの全てのサンプルウェルへの移送を保証するための、高い多孔性
・容易に適用および除去されるのに十分、厚く、そして耐久性である
・ブロッターは、濡れているとき、裂けるべきではなく、そして、過剰なサンプル流体が含まれるように吸収すべきであり、そして、別のサブアレイへと交差しない
・サンプル流体の、膜の一方側からもう一方側へ、そして、サブアレイのサンプルウェルへの指向性の流れを保証するための、一方向性の細孔
・サンプル流体の、膜を通ってサブアレイのサンプルウェル内への移動を促進するための、疎水性のパターンおよび疎水性の表面コーティング
・膜の上側表面に適用されるサンプル流体が、下にあるサンプルウェルの選択されたサブセットへ貫流することを保証するための、膜の区切り。
【0059】
1つの特定の実施形態は、照射−エッチング処理された(track−etched)ポリエステルまたはポリカーボネートを使用する。このような実施形態は、規定されたサイズ範囲および密度の内孔を有し得るが、膜の多孔性は、比較的低くあり得る(5〜20%)。このような膜は、比較的薄くあり得(例えば、10〜20μm)、それゆえ、取り扱いが困難であり得る。
【0060】
別の特定の実施形態は、紙に似た繊維性のネットワークが形成された、セルロースエステル(硝酸セルロースおよび酢酸セルロース)の成形膜混合物を使用する。これらの膜は、高い多孔性(70%〜80%)を有する開放性のセル構造を有し、そして、幅広い孔のサイズ分布(例えば、0.22μm〜5.0μm)を有し、このことが、選択されたサンプルウェルへの流体の通過および分布を促進し得る。これらの膜は、照射−エッチング処理されたものよりも厚い傾向があり(100μm〜200μm)、このことは、取り扱い特性を向上し得る。
【0061】
別の実施形態は、サブアレイを横切った適切な分布を保証する、蜂の巣構造を有する、比較的孔性が高い(40%〜50%)、AnoporeTM−酸化アルミニウム膜を使用する。この膜では、孔サイズ(20nm〜200nm)は、サンプルウェルの開口部よりもかなり小さくあり得る。
【0062】
なお別の実施形態は、紙またはガラスのマイクロ繊維から作製された膜を使用する。このような材料は、異なるろ過速度を有する、異なるグレードで提供される。紙製フィルタはまた、耐久性を保証するために、樹脂で強化される。
【0063】
膜ローダーインターフェースのさらなる利点は、サンプルチップの表面から、任意の過剰のサンプル流体を吸い取るために、十分に適応しているということである。しかし、この吸い取り作用は、膜が除去されたときに、膜の材料が、サブアレイ内のロードされたサンプルウェルから、サンプル流体を引き戻すことを防止するように制御されるべきである。他の実施形態において、膜は、選択されたサブアレイ内のサンプルウェルが、別の機構によって(例えば、微小流体回路の配置によって)ロードされた後に、サンプルチップの表面から過剰のサンプル流体を除去するための吸い取り機構として使用され得る。
【0064】
本発明の種々の例示的な実施形態が開示されてきたが、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明の利点のいくつかを達成する、種々の変更および修正がなされ得ることは、当業者に明らかであるはずである。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
微小流体サンプルを貯蔵する方法であって、該方法は、以下:
微小流体サンプルを貯蔵するためのサンプルウェルのアレイを有するチップを提供する工程;
サンプルウェルの選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供する工程;ならびに
選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、該選択されたサブセット内のサンプルウェルに該サンプル流体が入るように、該サンプル流体を該流体アクセス領域に導入する工程
を包含する、方法。
(項2)
前記流体アクセス領域を提供する工程が、前記チップの平面の隣に流体アクセス構造を位置決めする工程を包含し、該流体アクセス構造は、前記サンプル流体を該流体アクセス領域に導入することが可能であるように適合されている、上記項1に記載の方法。
(項3)
前記アクセス構造が、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に分配するための、少なくとも1つの微小流体回路を備える、上記項2に記載の方法。
(項4)
前記流体アクセス領域を提供する工程が、前記チップの一部分を折リ曲げる工程を包含する、上記項1に記載の方法。
(項5)
前記チップの折リ曲げられた部分が、マイクロプレートのサンプルウェル内にフィットするように適合されており、そのことにより、該マイクロプレートのサンプルウェル内のサンプル流体の、前記流体アクセス領域内への導入が可能である、上記項4に記載の方法。
(項6)
前記流体アクセス領域を提供する工程が、マスクを用いて、該流体アクセス領域と、前記チップの残りの部分との間に障壁を生成する工程を包含する、上記項1に記載の方法。
(項7)
上記項1に記載の方法であって、前記流体アクセス領域を提供し、そして、前記サンプル流体を該流体アクセス領域に導入するために、印刷プレートが使用される、方法。
(項8)
前記サンプル流体を導入する工程が、前記流体アクセス領域の上に該サンプル流体の液滴を引きずる工程を包含する、上記項1に記載の方法。
(項9)
前記サンプル流体を導入する工程が、該サンプル流体の集束した液滴を前記流体アクセス領域内に分配する工程を包含する、上記項1に記載の方法。
(項10)
前記集束した液滴を分配する工程が、該集束した液滴を噴霧する工程を包含する、上記項9に記載の方法。
(項11)
上記項1に記載の方法であって、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に導入するために、スポンジが使用される、方法。
(項12)
上記項1に記載の方法であって、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に導入するために、ピペットが使用される、方法。
(項13)
上記項1に記載の方法であって、前記流体アクセス領域を提供し、そして、前記サンプル流体を該流体アクセス領域に導入するために、膜が使用される、方法。
(項14)
前記膜が、パターン化された疎水性領域と親水性領域とを有する外側表面を備える、上記項13に記載の方法。
(項15)
微小流体サンプルを貯蔵するためのインターフェースであって、該インターフェースは、以下:
微小流体サンプルを貯蔵するためのサンプルウェルのアレイから、サンプルウェルの選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供するための手段;および
選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、該選択されたサブセット内のサンプルウェルに該サンプル流体が入るように、該サンプル流体を該流体アクセス領域に導入するための手段
を備える、インターフェース。
(項16)
前記流体アクセス領域を提供するための手段が、前記アレイの平面の隣に、流体アクセス構造を位置決めするための手段を備え、該流体アクセス構造は、前記サンプル流体を該流体アクセス領域に導入することが可能であるように適合されている、上記項15に記載のインターフェース。
(項17)
前記流体アクセス構造が、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に分配するための少なくとも1つの微小流体回路を備える、上記項16に記載のインターフェース。
(項18)
前記流体アクセス領域を提供するための手段が、前記アレイの一部分を折リ曲げるための手段を備える、上記項15に記載のインターフェース。
(項19)
前記アレイの折リ曲げられた部分が、マイクロプレートのサンプルウェル内にフィットするように適合されており、そのことにより、該マイクロプレートのサンプルウェル内のサンプル流体の、前記流体アクセス領域内への導入が可能である、上記項18に記載のインターフェース。
(項20)
前記流体アクセス領域を提供するための手段が、マスクを用いて、該流体アクセス領域と、前記アレイの残りの部分との間に障壁を生成するための手段を備える、上記項15に記載のインターフェース。
(項21)
上記項15に記載のインターフェースであって、印刷プレートが、前記流体アクセス領域を提供するための手段、および、前記サンプル流体を該流体アクセス領域に導入するための手段として使用される、インターフェース。
(項22)
前記サンプル流体を導入するための手段が、前記流体アクセス領域の上に該サンプル流体の液滴を引きずるための手段を備える、上記項15に記載のインターフェース。
(項23)
前記サンプル流体を導入するための手段が、該サンプル流体の集束した液滴を前記流体アクセス領域内に分配するための手段を備える、上記項15に記載のインターフェース。
(項24)
前記集束した液滴を分配するための手段が、該集束した液滴を噴霧するための手段を備える、上記項23に記載のインターフェース。
(項25)
上記項15に記載のインターフェースであって、スポンジが、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に導入するための手段として使用される、インターフェース。
(項26)
上記項15に記載のインターフェースであって、ピペットが、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に導入するための手段として使用される、インターフェース。
(項27)
上記項15に記載のインターフェースであって、膜が、前記流体アクセス領域を提供するための手段、および、前記サンプル流体を導入するための手段として使用される、インターフェース。
(項28)
前記膜が、パターン化された疎水性領域と親水性領域とを有する外側表面を備える、上記項27に記載のインターフェース。
(項29)
微小流体サンプルを貯蔵するためのキットであって、以下:
上記項15に記載のインターフェース;および
サンプルウェルのアレイを備える、チップ
を備える、キット。
(項30)
前記インターフェースが、さらに、サンプルウェルの選択されたサブセット内のウェルのための試薬を含む、上記項29に記載のキット。
(項31)
前記試薬が、前記ウェルのサブセット内に入れられたサンプル流体を染色するための染料である、上記項30に記載のキット。
(項32)
微小流体サンプルを貯蔵するためのインターフェースであって、該インターフェースは、以下:
微小流体サンプルを貯蔵するためのサンプルウェルのアレイから、サンプルウェルの選択されたサブセットへの流体アクセス領域を提供するための、流体アクセス構造;および
選択されていないサンプルウェルにサンプル流体が入ることなく、該選択されたサブセット内のサンプルウェルに該サンプル流体が入るように、該サンプル流体を該流体アクセス領域に導入するための、流体導入機構
を備える、インターフェース。
(項33)
前記流体アクセス構造が、前記アレイの平面の隣に位置決めして、前記流体アクセス領域を提供するために適合されている、上記項32に記載のインターフェース。
(項34)
前記流体アクセス構造が、前記サンプル流体を前記流体アクセス領域に分配するための少なくとも1つの微小流体回路を備える、上記項33に記載のインターフェース。
(項35)
前記流体アクセス構造が、前記アレイの一部分を折リ曲げて、前記流体アクセス領域を提供するように適合されている、上記項32に記載のインターフェース。
(項36)
前記流体アクセス構造が、マイクロプレートのサンプルウェル内にフィットするように適合されており、そのことにより、該マイクロプレートのサンプルウェル内のサンプル流体の、前記流体アクセス領域内への導入が可能である、上記項35に記載のインターフェース。
(項37)
前記流体アクセス構造が、前記流体アクセス領域と、前記アレイの残りの部分との間に障壁を生成するためのマスクを備える、上記項32に記載のインターフェース。
(項38)
上記項32に記載のインターフェースであって、印刷プレートが、前記流体アクセス構造、および、前記流体導入機構として使用される、インターフェース。
(項39)
前記流体導入機構が、前記流体アクセス領域の上に前記サンプル流体の液滴を引きずるために適合されている、上記項32に記載のインターフェース。
(項40)
前記流体導入機構が、前記サンプル流体の集束した液滴を前記流体アクセス領域内に分配するために適合されている、上記項32に記載のインターフェース。
(項41)
前記流体導入機構が、前記集束した液滴を噴霧するために適合されている、上記項40に記載のインターフェース。
(項42)
上記項32に記載のインターフェースであって、スポンジが、前記流体導入機構として使用される、インターフェース。
(項43)
上記項32に記載のインターフェースであって、ピペットが、前記流体導入機構として使用される、インターフェース。
(項44)
上記項32に記載のインターフェースであって、膜が、前記流体アクセス構造、および、前記流体導入機構として使用される、インターフェース。
(項45)
前記膜が、パターン化された疎水性領域と親水性領域とを有する外側表面を備える、上記項44に記載のインターフェース。
(項46)
微小流体サンプルを貯蔵するためのキットであって、以下:
上記項32に記載のインターフェース;および
サンプルウェルのアレイを備える、チップ
を備える、キット。
(項47)
前記インターフェースが、さらに、サンプルウェルの選択されたサブセット内のウェルのための試薬を含む、上記項46に記載のキット。
(項48)
前記試薬が、前記ウェルのサブセット内に入れられたサンプル流体を染色するための染料である、上記項47に記載のキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−211919(P2012−211919A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−148636(P2012−148636)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2007−503065(P2007−503065)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(512204075)バイオトローブ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】