説明

ナノワイヤー分散組成物およびその使用

少なくとも1つの低分子量および/または低HLB(親水性−親油性バランス)値分散剤を含む水溶液または非水溶液に懸濁された複数の無機ナノワイヤーを含むナノワイヤー分散組成物(およびその使用)が開示される。水溶液または非水溶液への複数の無機ナノワイヤーの分散性をさらに改善する方法は、例えば、水溶液または非水溶液にナノワイヤーを分散させる前にナノワイヤーの表面を酸化することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は、本明細書に全体が援用される、2005年4月13日出願の米国仮特許出願第60/671,131号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦支援研究に関する言明
該当なし
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーは、次期社会的進化への道を開くであろう次期技術的進化として歓迎され、そして同時に、技術的に過度の熱心さによって広められた単なる最新版のほらとして厳しく批判されてきた。基本的には、論争の両側面がそれらの立場を支持する多くの妥当なポイントを有する。例えば、ナノ材料がそれらの化学的、構造的および電気的能力の点から見て非常にユニークで非常に望ましい特性を有することは絶対に明らかである。しかしながら、今まで、ナノスケール材料を製造しそして道理にかなった商業的なやり方でマクロスケール界へ統合するための技術および/またはより複雑な見込みのある用途向けのより複雑なシステム、例えば、ナノコンピュータ、ナノスケール機械、電子デバイスなどへこれらのナノ材料を組み立てる方法についての議論が非常に少なかったこともまた明らかである。様々な早期の研究者らは、彼らの役割の放棄および分子セルフアセンブリ、電磁アセンブリ技法などについての言及によって統合およびアセンブリ問題に対処するための多くの異なる方法を提案してきた。しかしながら、これまで公表された成功がほとんどなかったか、これらの分野での公表された努力がほとんどなかったかのどちらかであった。
【0004】
ある種のケースでは、これらの材料のユニークで興味深い特性を、個々のアセンブリを必要とする個々のエレメントとしてよりバルク材料としてもっと利用するナノ材料の使用が提案されてきた。例えば、デュアン(Duan)ら著、Nature、425、274−278ページ(2003年9月)は、リジッド半導体ウェハーの代わりにバルク処理された配向した半導体ナノワイヤーフィルムまたは層を用いる、例えば、ディスプレイ、アンテナなど用の、大面積電子基板での使用のためのナノワイヤーベースのトランジスタを記載している。その結果は、単結晶ウェハー基板と同等に機能するが、より不満足な性能の非晶質半導体プロセスで用いられる通常のそしてそれほど高価でないプロセスを用いて製造可能であり、かつ、多様な構造、例えば、柔軟なおよび/または成形した材料によりなじみやすい電子基板である。この技術に従って、唯一の新しいプロセス要件は、所与の軸に沿って実質的に配向しているナノワイヤーのフィルムを提供する能力である。かかる配向のための技術は、例えば、国際公開第03/085700号パンフレット、国際公開第03/085701号パンフレットおよび国際公開第2004/032191号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2005/0066883号明細書(それらのそれぞれの全開示が、あらゆる目的のためにそっくりそのまま、本明細書に参照により本明細書によって援用される)に詳細に既に記載されてきたし、製造プロセスに容易に拡大可能である。
【0005】
別の模範的なケースでは、バルク処理ナノ結晶は光電子デバイス用の柔軟なそして効率的な活性層としての使用について記載されてきた。特に、量子閉じ込め半導体結晶をホール伝導マトリックス中に提供する(タイプ−IIバンドギャップ・オフセットを提供する)能力は、光起電装置か光電子検出器かのどちらかとして利用することができる光活性層の製造を可能にする。活性複合材料に配置されるとき、これらのナノ材料は、当業界で利用可能である標準フィルムコーティング法を用いて簡単に処理される。例えば、あらゆる目的のためにそっくりそのまま参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0118448号明細書を参照されたい。
【特許文献1】国際公開第03/085700号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/085701号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/032191号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0066883号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0118448号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノ材料が用いられるべき用途にかかわらず、改良された製造、それらの究極的な用途またはデバイスへのこれらの材料の加工および統合に対するニーズが存在する。特に、機能性ナノ構造体の実現で残っている難問の1つは、それらの表面化学の信頼できるコントロールを得るための方法を解明すること、および水性および非水性媒体などへのそれらの分散性を改善してこれらの材料のハンドリングおよび加工性を改善することである。本発明は、これらのおよび様々な他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、得られたナノワイヤー薄層の溶解性および加工性を改善するために1つもしくはそれ以上の界面活性剤を使用するナノワイヤー(例えば、半導体ナノワイヤーなどの無機ナノワイヤー)を異なる水性または非水性溶媒(例えば、蒸留水、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、それらの組み合わせなど)に分散させるためのナノワイヤー分散組成物を一般に指向する。異なる組成物へのナノワイヤーの分散は、ワイヤーの取り扱いを容易にし、そして高性能エレクトロニクスならびに下にさらに説明される他のデバイスおよびシステム用の有用なビルディングブロックであるナノワイヤーの安定なフィルムを提供する。ナノワイヤー分散組成物は、表面張力および粘度などの広範囲の所望の特性を示すために、ワイヤー凝集を最小限にするために、デバイス基板に薄膜として塗布されたときに迅速な乾燥を示すために、そして実用的な期間にわたって安定である分散組成物を提供するために調合することができる。
【0008】
本発明の第1態様に従って、溶媒(例えば、エタノール、水、メタノールなどおよび/またはそれらの組み合わせ)に懸濁された複数のナノワイヤーを一般に含む、そして陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両性または高分子界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1つの低分子量(例えば、約10,000未満、例えば、約5,000未満、例えば、約3,000未満)界面活性剤を含むナノワイヤー分散組成物が開示される。現在好ましい一実施形態では、ナノワイヤー分散組成物は非イオン性または高分子分散剤から選択された分散剤を含む。例えば、分散剤は、シルウェット(SilWet)(登録商標)、サ−フィノール(Surfynol)(登録商標)、プルロニック(Pluronic)ポリマー、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群から選択される。アンモニウムポリアクリレートアクリゾールG−111(Ammonium polyacrylate Acrysol G−111)(AG−111)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)などの1つもしくはそれ以上の低鎖高分子分散剤との分散剤の組み合わせは、高められたワイヤー分散度およびコーティング一様性を提供することがさらに分かった。
【0009】
より低い分子量およびより低いHLB(親水性−親油性バランス)値(例えば、約20未満、例えば、約15未満、例えば、約10未満)の両方の分散系は最良のワイヤー分散およびコーティング一様性を提供することもまた分かった。ナノワイヤー分散組成物は、例えば、約0.01〜20重量%の分散剤、例えば、約1〜15重量%分散剤、例えば、約1〜8重量%分散剤を含んでもよい。ナノワイヤー分散組成物はまた、1つもしくはそれ以上のバインダー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、およびヒドロキシルエチルセルロースなどからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の水溶性または水分散性ポリマーを含んでもよい。本発明の分散剤組成物は、半導体(例えば、シリコン)または金属酸化物ナノワイヤーなどの無機ナノワイヤーで特定の実用性を見いだすが、導電性ポリマー、セラミックスなどのような他のナノワイヤー材料でも同様にうまく使用することができる。本発明のナノワイヤー分散組成物は、約10より大きい、例えば、約100より大きい、例えば、約1000より大きいアスペクト比を有するナノワイヤーで特にうまく働く。
【0010】
場合により、本発明の別の態様では、ナノワイヤーは本発明のナノワイヤー分散組成物に懸濁される前に酸化されてもよく、例えば、ナノワイヤーは、ナノワイヤー分散組成物のコーティングおよび溶液一様性をさらに改善するために、迅速熱酸化(RTO)チャンバーでまたは通常の酸化炉で熱酸化されてもよい。
【0011】
本発明は、上に薄膜として堆積された本発明のナノワイヤー分散組成物を含むフレキシブル(例えば、プラスチック)またはリジッド(例えば、ガラスまたは半導体)基板を提供し、それらの基板は、様々な電気システム、光学システム、消費者エレクトロニクス、工業用エレクトロニクス、ワイヤレスシステム、宇宙用途、または、例えば、アクティブマトリックスディスプレイ、アンテナアレイ、無線周波数確認タグ、スマートカード、光学センサーなどをはじめとする任意の他の用途に使用することができる。
【0012】
図面の簡単な説明
図1Aは単結晶半導体ナノワイヤーコア(本明細書では以下「ナノワイヤー」)100を例示する。
【0013】
図1Bはコア−シェル構造に従ってドープされたナノワイヤー110を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書に示されるおよび記載される特定の実施は本発明の例であり、そして形はどうあれ本発明の範囲を別のやり方で限定することを意図されないことは理解されるべきである。実際に、簡潔さのために、通常のエレクトロニクス、製造、半導体デバイス、およびナノワイヤー(NW)(そしてナノロッド、ナノチューブ、およびナノリボンなど)テクノロジーならびにシステム(およびシステムの個々の動作部品の構成要素)の他の機能態様は本明細書では詳細に説明されないかもしれない。さらに、簡潔さの目的のために、本発明はナノワイヤーに関連するものとして本明細書ではしばしば説明される。
【0015】
個々の無機ナノワイヤー(NW)(例えば、シリコンナノワイヤーなどの半導体ナノワイヤー)は、現在商業的に入手可能な最高品質の単結晶材料のそれに匹敵するそして幾つかのケースではそれを超える電子性能のナノスケール電界効果トランジスタ(FET)を製造するために使用することができる。これらのナノ−FETはモーア(Moore)の法則を分子レベルに向かって広げる。しかしながら、それらは、複雑さおよびデバイス製造プロセスの制限されたスケーラビリティのために、生産規模ナノエレクトロニクス用に実施するのが現在困難である。電子デバイスでのナノワイヤーの成功実施は、高密度でおよび最小凝集で一様に広域基板の一面にそれらを堆積させ、パターン化するための方法を必要とする。そうすることは、それらを商業的用途に好適なコントロールされたおよび再現性のあるやり方で電子デバイス基板上に堆積させることができるようにナノワイヤーを溶液に適切に分散させるための分散剤または添加剤の使用を必要とする。
【0016】
ナノワイヤーがしばしば言及されるが、本明細書に記載される技法はまた、ナノロッド、ナノチューブ、ナノテトラポッド、ナノリボンおよび/またはそれらの組み合わせなどの他のナノ構造体にも適用できることが理解されるべきである。本明細書に記載される処理技法は任意の半導体デバイスタイプ、および他の電子部品タイプで用い得ることがさらに理解されるべきである。さらに、本技法は、電気システム、光学システム、消費者エレクトロニクス、工業用エレクトロニクス、ワイヤレスシステム、宇宙用途、または任意の他の用途での適用に好適であろう。
【0017】
本明細書で用いるところでは、「アスペクト比」は、ナノワイヤーの第2および第3軸の長さの平均で割られたナノワイヤーの第1軸の長さであり、ここで、第2および第3軸は、その長さが互いに最もほぼ等しい2つの軸である。例えば、完全なワイヤーについてのアスペクト比は、長軸に垂直の(法線の)断面の直径によって割られたその長軸の長さであろう。
【0018】
ナノワイヤーに関して用いられるときに用語「ヘテロ構造体」は、少なくとも2つの異なるおよび/または区別できる材料タイプによって特徴付けられる構造体を意味する。典型的には、ナノワイヤーの一領域は第1材料タイプを含むが、ナノワイヤーの第2領域は第2材料タイプを含む。ある種の実施形態では、ナノワイヤーは、第1材料のコアおよび第2(または第3など)材料の少なくとも1つのシェルを含み、ここで、異なる材料タイプは、例えば、ナノワイヤーの長軸、分岐ナノ結晶のアームの長軸、またはナノ結晶の中心の周りに放射状に分布する。シェルは、シェルと考えられるためにまたはナノワイヤーがヘテロ構造体と考えられるために隣接材料を完全にカバーする必要はない。例えば、第2材料の小さな島でカバーされた一材料のコアで特徴付けられるナノワイヤーはヘテロ構造体である。他の実施形態では、異なる材料タイプはナノワイヤー内で異なる位置に分布する。例えば、材料タイプは、ナノワイヤーの主(長)軸に沿って分布することができる。ヘテロ構造体内の異なる領域は、全く異なる材料を含むことができ、または異なる領域はベース材料を含むことができる。
【0019】
本明細書で用いるところでは、「ナノ構造体」は、少なくとも1つの領域または約500nm未満、例えば、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、もしくは約20nm未満さえの寸法の特徴的次元を有する構造体である。典型的には、領域または特徴的次元は構造体の最小軸に沿って存在するであろう。かかる構造体の例には、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、分岐テトラポッド(例えば、無機デンドリマー)などが挙げられる。ナノ構造体は材料特性の点で実質的に均一であることができ、またはある種の実施形態では不均一(例えば、ヘテロ構造体)であることができる。ナノ構造体は、例えば、実質的に結晶質である、実質的に単結晶である、多結晶である、非晶質である、またはそれらの組み合わせであることができる。一態様では、ナノ構造体の三次元のそれぞれが約500nm未満、例えば、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、または約20nm未満さえの寸法を有する。
【0020】
本明細書で用いるところでは、用語「ナノワイヤー」は一般に、500nm未満、好ましくは100nm未満である少なくとも1つの断面寸法を含み、そして10より大きい、好ましくは50より大きい、より好ましくは100より大きい、または1000より大きいアスペクト比(長さ:幅)を有する任意の細長い導電性もしくは半導体材料(または本明細書に記載される他の材料)を意味する。
【0021】
本発明のナノワイヤーは材料特性の点で実質的に均一であり得るし、またはある種の実施形態では不均一であり得る(例えば、ナノワイヤーヘテロ構造体)。ナノワイヤーは本質的に任意の便利な材料から製造することができ、例えば、実質的に結晶質である、実質的に単結晶である、多結晶である、または非晶質であることができる。ナノワイヤーは変動する直径を有することができ、または実質的に一様な直径、すなわち、最大ばらつきの領域にわたっておよび少なくとも5nm(例えば、少なくとも10nm、少なくとも20nm、もしくは少なくとも50nm)の線寸法にわたって約20%未満(例えば、約10%未満、約5%未満、もしくは約1%未満)の不偏分散を示す直径を有することができる。典型的には、直径はナノワイヤーの端から離れて評価される(例えば、ナノワイヤーの中心20%、40%、50%、または80%にわたって)。ナノワイヤーは、その長軸の全体長さまたはその一部にわたって、真っ直ぐであることができまたは例えば湾曲しているもしくは曲がっていることができる。ある種の実施形態では、ナノワイヤーまたはその一部は二もしくは三次元量子閉じ込めを示すことができる。本発明によるナノワイヤーはカーボンナノチューブを明確に排除することができ、そして、ある種の実施形態では、「ウィスカー」または「ナノウィスカー」、特に100nmより大きい、または約200nmより大きい直径を有するウィスカーを排除する。かかるナノワイヤーの例には、参照により本明細書に援用される、国際公開第02/17362号パンフレット、国際公開第02/48701号パンフレット、および国際公開第01/03208号パンフレットに記載されているような半導体ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、および類似の寸法の他の細長い導電性または半導体構造体が挙げられる。
【0022】
本明細書で用いるところでは、用語「ナノロッド」は一般に、ナノワイヤーに似ているが、ナノワイヤーのそれ未満のアスペクト比(長さ:幅)を有する任意の細長い導電性もしくは半導体材料(または本明細書に記載される他の材料)を意味する。2つもしくはそれ以上のナノロッドは、連結されたナノロッドが電極間に様々に広がるようにそれらの縦軸に沿って一緒に連結し得ることに留意されたい。あるいはまた、2つもしくはそれ以上のナノロッドは、小さなギャップが2つもしくはそれ以上のナノロッドの端間に存在するように、それらの縦軸に沿って実質的に整列させることができるが、一緒に連結することはできない。このケースでは、電子は、1ナノロッドから別のものへ飛び越えて小さいギャップを横断することによって1ナノロッドから別のものへ流れることができる。2つもしくはそれ以上のナノロッドは、電子が電極間を移動することができるパスをそれらが形成するように、実質的に整列させることができる。
【0023】
例えば、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイヤモンドを含む)、P、B−C、B−P(BP)、B−Si、Si−C、Si−Ge、Si−SnおよびGe−Sn、SiC、BN/BP/BAs、AlN/AlP/AlAs/AlSb、GaN/GaP/GaAs/GaSb、InN/InP/InAs/InSb、BN/BP/BAs、AlN/AlP/AlAs/AlSb,GaN/GaP/GaAs/GaSb、InN/InP/InAs/InSb、ZnO/ZnS/ZnSe/ZnTe、CdS/CdSe/CdTe、HgS/HgSe/HgTe、BeS/BeSe/BeTe/MgS/MgSe、GeS、GeSe,GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、AgF、AgCl、AgBr、AgI、BeSiN、CaCN、ZnGeP、CdSnAs、ZnSnSb、CuGeP、CuSi、(Cu、Ag)(Al、Ga、In、Tl、Fe)(S、Se、Te)、Si、Ge、Al、(Al、Ga、In)(S、Se、Te)、AlCO、ならびに2つもしくはそれ以上のかかる半導体の適切な組み合わせから選択された半導体材料をはじめとする、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブおよびナノリボン用の広範囲のタイプの材料を使用することができる。
【0024】
ナノワイヤーはまた、金、ニッケル、パラジウム、イリジウム、コバルト、クロム、アルミニウム、チタン、ルテニウム、スズなどのような金属、金属合金、ポリマー、導電性ポリマー、セラミックス、および/またはそれらの組み合わせなどの他の材料から形成することもできる。他の現在公知のまたは最近開発された導電性または半導体材料を用いることができる。
【0025】
ある種の態様では、ナノワイヤーは、周期表のIII族からのp型ドーパント;周期表のV族からのn型ドーパント;B、AlおよびInからなる群から選択されたp型ドーパント;P、AsおよびSbからなる群から選択されたn型ドーパント;周期表のII族からのp型ドーパント;Mg、Zn、CdおよびHgからなる群から選択されたp型ドーパント;周期表のIV族からのp型ドーパント;CおよびSiからなる群から選択されたp型ドーパント;またはSi、Ge、Sn、S、SeおよびTeからなる群から選択されたn型ドーパントからなる群からのドーパントを含んでもよい。他の現在公知のまたは最近開発されたドーパント材料を用いることができる。
【0026】
さらに、ナノワイヤーまたはナノリボンは、カーボンナノチューブ、または導電性もしくは半導性有機ポリマー材料(例えば、ペンタセンおよび遷移金属酸化物)でできたナノチューブを含むことができる。
【0027】
従って、用語「ナノワイヤー」は例示目的のために本明細書での説明の全体にわたって言及されるが、本明細書での説明はまたナノチューブ(例えば、中空チューブがそれを通して軸方向に形成されたナノワイヤー様構造体)の使用をも包含することが意図される。ナノチューブは、本明細書に記載される特性および利点を提供するために、単独でまたはナノワイヤーと組み合わせて、ナノワイヤーについて本明細書で記載されるようにナノチューブの組み合わせ/薄膜で形成することができる。
【0028】
本明細書で行われる空間的な記載(例えば、「の上に」、「の下に」、「の上へ」、「の下へ」、「トップ」、「ボトム」など)は例示目的だけのためであること、そして本発明のデバイスは任意の配向またはやり方で空間的に配置できることが理解されるべきである。
【0029】
ナノワイヤーのタイプおよびそれらの合成
図1Aは、単結晶半導体ナノワイヤーコア(本明細書では以下「ナノワイヤー」)100を例示する。図1Aは、一様にドープされた単結晶ナノワイヤーであるナノワイヤー100を示す。かかる単結晶ナノワイヤーは、かなりコントロールされた方法でp型かn型半導体かのどちらかへドープすることができる。ナノワイヤー100などのドープナノワイヤーは改善された電子特性を示す。例えば、かかるナノワイヤーは、バルク単結晶材料に匹敵する担体モビリティレベルを有するようにドープすることができる。
【0030】
図1Bは、コア−シェル構造に従ってドープされたナノワイヤー110を示す。図1Bに示されるように、ナノワイヤー110はドープ表面層112を有し、表面層はナノワイヤー110の表面上の分子単層のみであることをはじめとする、様々な厚さレベルを有することができる。
【0031】
絶縁シェルの価電子帯はp型ドープワイヤーのコアの価電子帯より低いことができる、またはシェルの伝導帯はn型ドープワイヤーのコアより高いことができる。一般に、コアナノ構造体は、任意の金属または半導体材料から製造することができ、シェルは同じまたは異なる材料から製造することができる。例えば、第1コア材料は、II〜VI族半導体、III〜V族半導体、IV族半導体、およびそれらの合金からなる群から選択された第1半導体を含むことができる。同様に、シェルの第2材料は、例えば、II〜VI族半導体、III〜V族半導体、IV族半導体、およびそれらの合金からなる群から選択された、第1半導体と同じまたはそれとは異なる第2半導体を含むことができる。実例半導体には、CdSe、CdTe、InP、InAs、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InSb、Si、Ge、AlAs,AlSb、PbSe、PbS、およびPbTeが含まれるが、それらに限定されない。上に指摘されたように、金、クロム、スズ、ニッケル、アルミニウムなどおよびそれらの合金などの金属材料をコア材料として使用することができ、金属コアは二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素または他の絶縁材料などの適切なシェル材料でオーバーコートすることができる。
【0032】
異なる材料に適合させることができる多数の便利な方法のいずれかによってナノ構造体を製造することができ、それらのサイズをコントロールすることができる。例えば、様々な組成のナノ結晶の合成は、例えば、ペング(Peng)ら著、「CdSeナノ結晶の形状コントロール(Shape Control of CdSe Nanocrystals)」、Nature、404(2000年)、59−61ページ;プンテス(Puntes)ら著、「コロイド状ナノ結晶形状およびサイズコントロール:コバルトの場合(Colloidal nanocrystal shape and size control:The case of cobalt)」、Science、291(2001年)、2115−2117ページ;「造形されたIII〜V族半導体ナノ結晶の形成方法、および方法を用いて形成された製品(Process for forming shaped group III−V semiconductor nanocrystals、and product formed using process)」という表題のアリヴィサトス(Alivisatos)らに付与された米国特許第6,306,736号明細書(2001年10月23日);「造形されたII〜VI族半導体ナノ結晶の形成方法、および方法を用いて形成された製品(Process for forming shaped group II−VI semiconductor nanocrystals、and product formed using process)」という表題のアリヴィサトスらに付与された米国特許第6,225,198号明細書(2001年5月1日);「III〜V半導体ナノ結晶の製造(Preparation of III−V semiconductor nanocrystals)」という表題のアリヴィサトスらに付与された米国特許第5,505,928号明細書(1996年4月9日);「セルフアセンブルド単一層を用いて固体無機表面に共有結合した半導体ナノ結晶(Semiconductor nanocrystals covalently bound to solid inorganic surfaces using self−assembled monolayers)」という表題のアリヴィサトスらに付与された米国特許第5,751,018号明細書(1998年5月12日);「カプセル化量子サイズのドープ半導体粒子およびそれの製造方法(Encapsulated quantum sized doped semiconductor particles and method of manufacturing same)」という表題のガラハー(Gallagher)らに付与された米国特許第6,048,616号明細書(2000年4月11日);ならびに「生物学的用途向け有機ルミネセント半導体ナノ結晶プローブならびにかかるプローブの製造および使用方法(Organo luminescent semiconductor nanocrystal probes for biological applications and process for making and using such probes)」という表題のウェイス(Weiss)らに付与された米国特許第5,990,479号明細書(1999年11月23日)に記載されている。
【0033】
コントロールされた直径のナノワイヤーをはじめとする、様々なアスペクト比を有するナノワイヤーの成長は、例えば、グディックセン(Gudiksen)ら著、「半導体ナノワイヤーの直径−選択的合成(Diameter−selective synthesis of semiconductor nanowires)」、J.Am.Chem.Soc.122(2000年)、8801−8802ページ;キュイ(Cui)ら著、「単結晶シリコンナノワイヤーの直径コントロールされた合成(Diameter−controlled synthesis of single−crystal silicon nanowires)」、Appl.Phys.Lett.78(2001年)、2214−2216ページ;グディックセンら著、「単結晶半導体ナノワイヤーの直径および長さの合成コントロール(Synthetic control of the diameter and length of single crystal semiconductor nanowires)」、J.Phys.Chem.B、105(2001年)、4062−4064ページ;モラレス(Morales)ら著、「結晶質半導体ナノワイヤーの合成のためのレーザー切断法(A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires)」、Science、279(1998年)、208−211ページ;デュアンら著、「化合物半導体ナノワイヤーの一般的合成(General synthesis of compound semiconductor nanowires)」、Adv.Mater.12(2000年)、298−302ページ;キュイら著、「シリコンナノワイヤーでのドーピングおよび電気輸送(Doping and electrical transport in silicon nanowires)」、J.Phys.Chem.B、104(2000年)、5213−5216ページ;ペングら著、「CdSeナノ結晶の形状コントロール」、Nature、404(2000年)、59−61ページ;プンテスら著、「コロイド状ナノ結晶形状およびサイズコントロール:コバルトの場合」、Science、291(2001年)、2115−2117ページ;「造形されたIII〜V族半導体ナノ結晶の形成方法、および方法を用いて形成された製品」という表題のアリヴィサトスらに付与された米国特許第6,306,736号明細書(2001年10月23日);「造形されたII〜VI族半導体ナノ結晶の形成方法、および方法を用いて形成された製品」という表題のアリヴィサトスらに付与された米国特許第6,225,198号明細書(2001年5月1日);「金属酸化物ナノロッドの製造方法(Method of producing metal oxide nanorods)」という表題のリーバー(Lieber)らに付与された米国特許第6,036,774号明細書(2000年3月14日);「金属酸化物ナノロッド(Metal oxide nanorods)」という表題のリーバーらに付与された米国特許第5,897,945号明細書(1999年4月27日);「炭化物ナノロッドの製造(Preparation of carbide nanorods)」という表題のリーバーらに付与された米国特許第5,997,832号明細書(1999年12月7日);アーバウ(Urbau)ら著、「チタン酸バリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる単結晶ペロブスカイト・ナノワイヤーの合成(Synthesis of single−crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate)」、J.Am.Chem.Soc.124(2002年)、1186ページ;ならびにユン(Yun)ら著、「走査プローブ顕微鏡法によって研究された個々のチタン酸バリウムナノワイヤーの強誘電特性(Ferroelectric Properties of Individual Barium Titanate Nanowires Investigated by Scanned Probe Microscopy)」、Nanoletters、2(2002年)、447ページに記載されている。
【0034】
分岐ナノワイヤー(例えば、ナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド、および分岐テトラポッド)の成長は、例えば、ジュン(Jun)ら著、「単一界面活性剤システムを用いるマルチ−アームドCdSナノロッド・アーキテクチャの制御合成(Controlled synthesis of multi−armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system)」、J.Am.Chem.Soc.123(2001年)、5150−5151ページ;ならびにマンナ(Manna)ら著、「可溶性および加工性ロッド−、アロー−、ティアドロップ−、およびテトラポッド−造形CdSeナノ結晶の合成(Synthesis of Soluble and Processable Rod−、Arrow−、Teardrop−、and Tetrapod−Shaped CdSe Nanocrystals)」、J.Am.Chem.Soc.122(2000年)、12700−12706ページに記載されている。
【0035】
ナノ粒子の合成は、例えば、「半導体粒子の製造方法(Method for producing semiconductor particles)」という表題のクラーク Jr.(Clark Jr.)らに付与された米国特許第5,690,807号明細書(1997年11月25日);「酸化ケイ素合金のナノ粒子(Nanoparticles of silicon oxide alloys)」という表題のエル−シャル(El−Shall)らに付与された米国特許第6,136,156号明細書(2000年10月24日);「逆ミセル媒介技法によるナノメートル−サイズ粒子の合成(Synthesis of nanometer−sized particles by reverse micelle mediated techniques)」という表題のイング(Ying)らに付与された米国特許第6,413,489号明細書(2002年7月2日);ならびにリュー(Liu)ら著、「自立強誘電体ジルコン酸チタン酸鉛ナノ粒子のゾル−ゲル合成(Sol−Gel Synthesis of Free−Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles)」、J.Am.Chem.Soc.123(2001年)、4344ページに記載されている。ナノ粒子の合成はまた、生じたナノ構造体が約1.5未満のアスペクト比を有する、ナノ結晶、ナノワイヤー、および分岐ナノワイヤーの成長についての上記引用文献にも記載されている。
【0036】
さらに、1つもしくは多数のシェルのナノワイヤー構造体もまた製造することができる。コア−シェルナノワイヤー(および他のナノ結晶)ヘテロ構造体の合成は、それらのそれぞれの全内容が本明細書に参照により援用される、例えば、バークレイ(Berkeley)の米国特許出願公開第2002/0172820号明細書;2004年8月30日出願の「機能性ナノワイヤーベースのデバイスへのナノワイヤーの製造、収穫、および統合方法(Processes for Manufacturing,Harvesting,and Integrating Nanowires into Functional Nanowires Based Devices)」という表題の同時譲渡および係属米国特許出願第60/605,454号明細書;ペングら著、「光安定性および電子アクセス可能性を持った高度ルミネセントCdSe/CdSコア/シェルナノ結晶のエピタキシャル成長(Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility)」、J.Am.Chem.Soc.119(1997年)、7019−7029ページ;ダボウシ(Dabbousi)ら著、「(CdSe)ZnSコア−シェル量子ドット:サイズシリーズの高度ルミネセント単結晶子の合成およびキャラクタリゼーション((CdSe)ZnS core−shell quantum dots:Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites)」、J.Phys.Chem.B、101(1997年)、9463−9475ページ;マンナら著、「コロイド状CdSeナノロッド上での傾斜CdS/ZnSシェルのエピタキシャル成長および光化学アニーリング(Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods)」、J.Am.Chem.Soc.124(2002年)、7136−7145ページに記載されている。類似のアプローチが、ナノワイヤーをはじめとする他のコア−シェルナノ構造体の成長に適用することができる。
【0037】
異なる材料がナノワイヤーの長軸に沿って異なる位置に分布するナノワイヤーヘテロ構造体の成長は、例えば、グディックセンら著、「ナノスケールのフォトニックスおよびエレクトロニクス用のナノワイヤー超格子構造体の成長(Growth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics)」、Nature、415(2002年)、617−620ページ;ブジョーク(Bjork)ら著、「実現される電子用の一次元ステープルチェイス(One−dimensional steeplechase for electrons realized)」、Nano Letters、2(2002年)、86−90ページ;ウ(Wu)ら著、「単結晶Si/SiGe超格子ナノワイヤーのブロック−バイ−ブロック成長(Block−by−block growth of single−crystalline Si/SiGe superlattice nanowires)」、Nano Letters、2(2002年)、83−86ページ;ならびに米国特許出願公開第2004/0026684号明細書に記載されている。類似のアプローチが、他のヘテロ構造体の成長に適用することができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、ナノワイヤーは成長基板上に合成され、次に、本発明のナノワイヤー分散組成物を使用して究極的デバイス基板へ移され、組み入れられてもよい。例えば、ある種の態様では、無機半導体または半導体酸化物ナノワイヤーは、蒸気−液体−固体(VLS)合成法に基づいてコロイド状触媒を用いて成長基板の表面上に成長させられる。この合成技法に従って、コロイド状触媒(例えば、金、白金などの粒子)は基板の所望の表面上に堆積される。コロイド状触媒を含む基板は次に、基板の表面に結合したナノワイヤーを生み出す合成法にかけられる。他の合成法は、基板の表面の一面に堆積された、例えば、50nmもしくはそれ未満の、薄い触媒フィルムの使用を含む。VLS法の熱は次にフィルムを溶融させてナノワイヤーを形成する触媒の小さい小滴を形成する。典型的には、この後者の方法は、繊維直径均一性が究極的用途に対してそれほど決定的に重要ではない場合に用いられてもよい。典型的には、触媒は金属、例えば、金または白金を含み、そして基板の表面上へ電気めっきされてももしくは蒸着されてもよいし、または多数の他のよく知られた金属堆積法、例えば、スパッタリングなどのいずれかで堆積されてもよい。コロイド堆積のケースでは、コロイドは典型的には、コロイドが表面に付くように基板の表面を先ず処理することによって堆積される。処理表面付き基板は次にコロイドの懸濁液に浸漬される。さらに、上記のように、1つもしくは多数のシェル付きナノワイヤー構造体もまた製造することができる。
【0039】
ナノワイヤーの成長後に、ナノワイヤーは次に、それらの合成場所から収穫される。さらに下に記載されるように、ナノワイヤーは典型的には、1つもしくはそれ以上の界面活性剤および/または他の化合物をその中に有する溶液中へ導入される。例えば、それらの全開示があらゆる目的のためにそっくりそのまま参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2005/0066883号明細書、および米国特許出願公開第2004/0005723号明細書に記載されているような、様々な他の堆積法もまた、デバイス基板上へナノワイヤーを堆積させるために用いられてもよい。
【0040】
ナノワイヤー分散組成物
ナノワイヤーは、水性および極性溶媒などの液体媒体へのそれらの分散性を改善するために様々な陰イオン性、非イオン性、両性および陽イオン性界面活性剤およびポリマーに懸濁されてもよい。好ましくは、ナノワイヤー溶液は少なくとも1つの分散剤を含む。好適な分散剤には、さらに下に記載されるような高分子界面活性剤と陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性界面活性剤との両方が含まれる。
【0041】
特に、本発明のナノワイヤー分散組成物には、その中に複数のナノワイヤー(例えば、半導体ナノワイヤーなどの無機ナノワイヤー、例えば、シリコンナノワイヤー)を分散された液体媒体または溶液が含まれる。液体媒体は専ら水であることができ、1つもしくはそれ以上の有機溶媒と組み合わせて水を含有することができ、または専ら有機溶媒であることができる。一実施形態では、液体媒体は水、例えば、少なくとも20重量%の水、例えば、約50%〜100%の水を含有する。
【0042】
有機溶媒は、例えば、ナノワイヤー分散組成物の表面張力をコントロールするために、分散剤の、またはマイナー成分として原料のいずれかの溶解を可能にするために、液体媒体に含めることができ、例えば、有機溶媒は分散組成物への原料として添加された界面活性剤に存在してもよい。
【0043】
有機溶媒は、存在するとき、当業者に公知の任意の数の有機溶媒であることができる。例えば、好適な水混和性有機溶媒には、C1〜5アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第二ブタノール、第三ブタノールおよびイソブタノール;アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトンアルコール、例えばアセトンおよびジアセトンアルコール;C2〜4エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン;C2〜6アルキレン基を含有するアルキレングリコールまたはチオグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールおよびヘキシレングリコール;ポリ(アルキレングリコール)およびチオグリコール)、例えばジエチレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ならびに低級アルキルグリコールおよびポリグリコールエーテル、例えば2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、3−ブトキシプロパン−1−オール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、;環状エステルおよび環状アミド、例えば場合により置換されたピロリドン;スルホラン;ならびに2つもしくはそれ以上の上述の水混和性有機溶媒を含有する混合物が含まれる。
【0044】
液体媒体内の有機溶媒および/または水の量は、粘度、表面張力、乾燥速度などのようなナノワイヤー分散組成物の特に所望の特性などの、多数の因子に依存することができ、それらは順繰りに、ナノワイヤー分散系が堆積されることが意図される基板のタイプ、ナノワイヤーのサイズ、形状、組成、および/またはアスペクト比などのような因子に依存することができる。幾つかの用途向けに、液体媒体は、水と溶媒との混合物を含む水溶液を含むことができる。かかる水ベースの媒体については、有機溶媒の好ましい量は、100重量部の液体媒体(水プラス有機溶媒と定義される)を基準として0〜約80重量部の範囲の有機溶媒、例えば、100部の液体媒体当たり約2〜50重量部の有機溶媒であることができる。
【0045】
特に良好な分散を達成するために、追加の分散剤が加えられてもよい。好ましくは、分散剤は界面活性剤である。模範的な界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ノノキシニル(nonoxynyl)リン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤;アルキルフェノールエトキシレート、アルキルエトキシレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体などの非イオン性界面活性剤;臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)牛脂アミンなどの陽イオン性界面活性剤;アンモニウムココアミノプロピオンアミドなどの両性界面活性剤である。分散剤の選択は、分散されるべきポリマーの量;液体媒体の性質;ナノワイヤーのサイズ、形状、組成、またはアスペクト比;ナノワイヤーの材料タイプなどをはじめとする多くの因子によって支配される。最適分散のために、幾つかの分散剤の混合物を使用することが必要であるかもしれない。
【0046】
本発明の実施に使用することができる商業的に入手可能な陰イオン性界面活性剤の具体的な例には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS−シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich,Inc.));スルホコハク酸アルキルアリルナトリウム(TREM−コグニス・コーポレーション(Cognis Corporation));ナトリウムn−ラウロイルサルコシネート(サルコシル(Sarkosyl)−シグマ・アルドリッチ);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS−シグマ・アルドリッチ);ポリスチレンスルホネート(PSS−シグマ・アルドリッチ)が挙げられる。本発明の方法の実施に使用することができる商業的に入手可能な陽イオン性界面活性剤の具体的な例には、例えば、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB−シグマ・アルドリッチ)および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB−シグマ・アルドリッチ)が挙げられる。商業的に入手可能な非イオン性界面活性剤の具体的な例には、例えば、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール211、およびサーフィノール221(エア・プロダクツ、ペンシルバニア州(Air products,PA));ブリジ(Brij)(シグマ・アルドリッチ);トゥイーン(Tween)(シグマ・アルドリッチ);トリトン(Triton)X(例えば、トリトンX−100、トリトンX−405など−シグマ・アルドリッチ);スパン(Span)(例えば、スパン20、スパン40、スパン80、スパン85など−シグマ・アルドリッチ);ポリ(ビニルピロリドン)(PVP−シグマ・アルドリッチ);シルウェット(例えばシルウェット(登録商標)L−77、L−7608、およびL−7280−ゼネラル・エレクトリック(General Electric));PEO−PBO−PEOトリブロック共重合体(EBE−ダウ・ケミカル・コープ(Dow Chemical Corp.));PEO−PPO−PEOトリブロックポリマー(プルロニック・シリーズの化合物−バスフ(BASF))が挙げられる。
【0047】
より低い分子量(例えば、約10,000未満、例えば、約5,000未満、例えば、約3,000未満の分子量を有するもの)および/またはより低いHLB(親水性−親油性バランス)値(例えば、約1〜20、例えば、約1〜15、例えば、約1〜10、例えば、約1〜8)の界面活性剤が好ましい界面活性剤であり、そして水溶液(または非水溶液)への最も一貫したナノワイヤー分散性を提供することが本発明の発明者らによって見いだされた。最も好ましい分散剤は、より低い分子量およびより低いHLB値の両方のそれらの界面活性剤(例えば、プルロニック・シリーズ界面活性剤プルロニックL−31、プルロニックL−62およびプルロニックL−81;シルウェット・シリーズ界面活性剤シルウェットL−77、シルウェットL−7280、およびシルウェットL−7608;そしてサーフィノール界面活性サーフィノール420およびサーフィノール440)、ならびに良好なワイヤー分散性およびコーティングの表面特性を提供する該界面活性剤と長鎖高分子分散剤(例えば、アンモニウムポリアクリレートアクリゾールG−111(AG−111)、PVA、およびPVP)との組み合わせであることが分かった。ナノワイヤーの典型的に高い表面積(例えば、28cm/gより大きい)および高いアスペクト比(例えば、典型的には約1,000より大きい)のために、ナノワイヤーを水溶液に分散させるために使用される分散剤の含有率は、ナノワイヤー溶液の総重量を基準として約0.01〜20重量%の範囲に、より好ましくは約1.0〜15.0重量%、例えば、約1.0〜8重量%の範囲にあるべきであることが分かった。一般に、該含有率が0.5重量%未満である場合、ナノワイヤーの分散系は不十分になる傾向があり、ワイヤー凝集が起こるであろう。分散剤濃度が高すぎる場合、ナノワイヤー分散組成物は高すぎる粘度を与える量の分散剤を含有し、それは、デバイス基板にナノワイヤー分散組成物を塗布する能力に悪影響を与え得る。さらに、分散剤濃度が液体媒体への分散剤の溶解度を超えるほどに高い場合、相分離が起こるであろう。分散剤の適切な量は、分散されるべきナノワイヤーのタイプ、ナノワイヤーのサイズ、形状、組成およびアスペクト比、液体媒体のアイデンティティ、例えば、液体媒体が水などの極性溶媒または非極性有機溶媒を含むかどうかなどのような多数の因子に依存するであろう。
【0048】
本発明のナノワイヤー分散組成物に、1つもしくはそれ以上のバインダーが必要に応じて加えられてもよい。バインダーは好ましくは高分子または重合性バインダー、より好ましくは水溶性または水分散性の高分子または重合性バインダーである。水溶性バインダーの例には、デンプン、例を挙げると、ヒドロキシアルキルデンプン、例えばヒドロキシエチルデンプン;セルロース、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(およびその塩)ならびにセルロースアセテートブチレート;ゼラチン;ゴム、例えばガァーガム、キサンタンガムおよびアラビアゴム;ポリビニルアルコール;ポリビニルホスフェート;ポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリジン;ポリエチレングリコール;加水分解ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンイミン;ポリアクリルアミド、例えばポリアクリルアミドおよびポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド);アクリルアミド−アクリル酸共重合体;ポリビニルピリジン;ポリビニルホスフェート;ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体;ビニルピロリドン−スチレン共重合体;ポリビニルアミン;ポリ(ビニルピロリドン−ジアルキルアミノアルキルアルキルアクリレート)、例えばポリビニルピロリドン−ジエチルアミノメチルメタクリレート;酸官能性アクリルポリマーおよび共重合体、例えばポリ(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸と他の(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体;アミン官能性アクリルポリマーおよび共重合体、例えばポリジメチルアミノエチルメタクリレート;酸またはアミン官能性ウレタンポリマー、例えば、ジメチロールプロパン酸および/またはペンダントもしくは末端ポリエチレングリコールを含有するもの;イオン性ポリマー、特に陽イオン性ポリマー、例えばポリ(N,N−ジメチル−3,5−ジメチレンピペリジニウムクロリド);ポリエステル、好ましくは水可溶化基、特に酸基を有するもの、例えばポリオールをソジオスルホイソフタル酸と重合させることによって得ることができるポリエステルが挙げられる。
【0049】
水分散性バインダーの例は、水分散性ポリマー、例えば、ラテックスポリマー、例えば陽イオン性、非イオン性および陰イオン性表面改質スチレン−ブタジエンラテックス;酢酸ビニル−アクリル共重合体ラテックス;第四級アンモニウム基を有するアクリル共重合体ラテックス、例えばポリメチルアクリレートトリメチルアンモニウムクロリドラテックス;ならびにポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリエステル、ポリウレタンまたはビニルポリマーおよびそれらの共重合体である。ポリマー分散系は、例えば、乳化、懸濁、バルクまたは溶液重合、引き続く水への分散によって製造されてもよい。バインダーは単一バインダーを含んでも、または2つ以上のバインダー、特に上記の模範的なバインダーの混合物を含んでもよい。
【0050】
オリゴマーポリオールは、靱性および疎水性または親水性特性をポリマー分散系に提供するために使用されてもよい。オリゴマーポリオールは、約500〜5000ダルトン(Dalton)の数平均分子量を有するポリオールと定義される。このクラスの好ましいメンバーはポリエステルジオール、ポリエーテルジオールおよびポリカーボネートジオールである。
【0051】
また乾燥速度のコントロールにも役立つであろう他の有用な添加剤には、トリメチロールプロパン、ウレアおよびその誘導体、アミド、ブチルカルビトールまたはセロソルブ(Cellosolve)TMなどのヒドロキシエーテル誘導体、アミノアルコール、および他の水溶性または水混和性材料、ならびにそれらの混合物が含まれる。当該技術で一般に知られる他の添加剤には、殺生剤、殺真菌剤、消泡剤、腐食防止剤、粘度調整剤、pHバッファー、浸透剤、金属イオン封鎖剤などが含まれる。ナノワイヤーはまた、PVAまたはPVPなどの水溶性高分子を組み入れられてもよく、アクリルエマルジョンなどの熱硬化性樹脂、またはADCもしくはジアゾニウム塩などの架橋剤が、必要ならば、加えられてもよい。ナノワイヤー分散組成物の加熱はまた、コーティングの表面一様性を助けるかもしれない。
【0052】
それらの分散性および加工性を改善するためのナノワイヤーの酸化
水溶液などの溶媒中のナノワイヤー(例えば、半導体(例えば、シリコン)ナノワイヤーなどの無機ナノワイヤー)の分散性および加工性をさらに改善し、そしてナノワイヤー薄膜堆積をより容易にするために、ナノワイヤー表面は、それらを溶媒に分散させる前に酸化(例えば、成長基板上のかそれからのかのどちらかで)によってさらに処理されてもよい。自然に成長したナノワイヤーの表面特性は、ワイヤー表面が前述のナノワイヤー合成プロセス中に非晶質酸化物層でしばしば部分酸化されるにすぎないので、非常に複雑である傾向がある。例えば、成長したままのシリコンナノワイヤーは、異なる分布、電荷および/または表面特性の多機能性表面基を含有することが分かった。これらのタイプのワイヤーは、前述のような1つもしくはそれ以上の分散剤または界面活性剤の存在下でさえも水性媒体に分散することがより困難である傾向がある。無機ナノワイヤーの酸化は、例えば、ナノワイヤーの表面をより一様にし、その結果ワイヤーがより少ない分散剤で、そして凝集なしに溶液により容易に懸濁されることを可能にする。
【0053】
ナノワイヤーは、熱酸化または化学酸化をはじめとする様々な方法を用いて酸化されてもよい(例えば、ナノワイヤーの表面を溶液中で、例えば、異なる末端基のシランなどの小分子を使用することにより化学修飾することによって)。一実施形態では、ナノワイヤーは、ナノワイヤー担持ウェハーを迅速熱酸化(RTO)チャンバーへ入れることによって迅速に熱酸化され、それは典型的にはN雰囲気でチャンバーの温度を約500℃以下に上げる。RTOチャンバーで、温度は次に酸素中で迅速に、例えば、100℃/秒で、所望の温度、例えば、>850℃(典型的には900〜1100℃)に上げられ、そしてO飽和雰囲気中で数分間放置される。温度は次に、N中で周囲温度に戻される。典型的には、900〜1100℃の温度で1〜10分間は約50〜約100オングストロームの酸化物層をもたらす。類似の方法が、Oに加えて、例えば、NH、NOまたはNOをはじめとする異なる反応性ガスを使用して、窒化物またはオキシ窒化物シェルをコアナノワイヤー上に提供するために用いられてもよい。あるいはまた、窒化は、例えば、かかるガスを酸化後にRTOチャンバーへ導入することによって、酸化物層の一面に行うことができる。同様に、RTO法は、表面汚染物質およびシリコンナノワイヤー中の欠陥を除去することによって、比較的欠陥のない界面をコアナノワイヤーとその取り囲む酸化物層との間に提供するために、「成長−エッチ−成長」法で交互エッチ工程と組み合わせることができる(例えば、米国特許第6,380,103号明細書を参照されたい)。エッチング工程はRTOチャンバー内で行われてもよいが、それが酸化物形成工程に影響を及ぼすかもしれないので、それは一般にあまり望ましくない。典型的には、蒸気エッチ工程が酸化物形成前に行われる。RTOチャンバーを用いる代わりに、ナノワイヤーは、標準酸化プロセスを用いて通常の酸化炉で酸化されてもよい。
【0054】
ナノワイヤー分散組成物の塗布
本発明はまた、本発明のナノワイヤー分散組成物を含む電子回路を提供する。本発明の教示を用いる好適にも安定なナノワイヤー懸濁液は、高性能エレクトロニクス用の有用なビルディングブロックである。実質的に同じ方向に配向したナノワイヤーの収集物は高いモビリティ値を有するであろう。さらに、ナノワイヤーは、安価な製造を可能にするために溶液でフレキシブルに処理することができる。ナノワイヤーの収集物は、ナノワイヤーの薄膜を達成するために溶液からいかなるタイプの基板上へも容易にアセンブルすることができる。例えば、半導体デバイスに使用されるナノワイヤーの薄膜は、2、5、10、100、およびそれらの量の間のまたはそれらの量より多い任意の他の数のナノワイヤーを、高性能エレクトロニクスでの使用のために含むように形成することができる。
【0055】
本発明のナノワイヤーはまた、いかなるタイプの基板上にもフレキシブルにスピンコートできる、有機半導体材料などのポリマー/材料と組み合わせられたときに高性能複合材料を製造するために使用することもできる。ナノワイヤー/ポリマー複合材料は、純ポリマー材料よりも優れた特性を提供することができる。ナノワイヤー/ポリマー複合材料に関するさらなる詳細は下に提供される。
【0056】
本発明のナノワイヤーの収集物または薄膜は、互いに実質的に平行であるように整列させることができるか、または非整列かもしくはランダムのままにしておくことができる。ナノワイヤーの非整列収集物または薄膜は典型的には、1〜10cm/V・sの範囲のモビリティ値を有する、ポリシリコン材料に匹敵するまたはそれより優れた電子的特性を提供する。
【0057】
本発明のナノワイヤーの整列薄膜は様々な方法で得ることができる。例えば、ナノワイヤーの整列薄膜は、次の技法:(a)ラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)膜整列物;(b)米国特許第6,872,645号明細書に記載されているなどの、そしてそっくりそのまま参照により本明細書に援用される、流体流れアプローチ;および(c)機械的剪断力の適用を用いることによって製造することができる。例えば、機械的剪断力は、ナノワイヤーを第1および第2表面の間に置き、そして次にナノワイヤーを整列させるために第1および第2表面を反対方向に動かすことによって用いることができる。ナノワイヤー/ポリマー組成物の整列薄膜は、これらの技法、引き続きナノワイヤーの生成薄膜上への所望ポリマーのスピン−キャスティングを用いて得ることができる。例えば、ナノワイヤーは液体ポリマー溶液で堆積させることができ、整列は次にこれらのまたは他の整列法の1つによって行うことができ、整列ナノワイヤーは硬化させる(例えば、UV硬化させる、架橋させるなど)ことができる。ナノワイヤー/ポリマー複合材料の整列薄膜はまた、ナノワイヤー/ポリマー複合材料のランダムに配向した薄膜を機械的に延伸することによって得ることもできる。
【0058】
p−ドープナノワイヤーおよびn−ドープナノワイヤーは別々に製造し、マクロ電子基板などの、表面上へ均一混合物で沈積させることができる。巨視的なレベルで、生じた材料は高濃度のn−およびp−ドーパントの両方を含有するように見える。p−およびn−ドープナノワイヤーのかかる混合物を生み出すことによって、あたかもそれらがn−およびp−ドープ両方されているように応答するマクロ電子デバイスを製造することができる。例えば、n−ドープおよびp−ドープナノワイヤーの両方を含むナノワイヤーの生じた薄膜は、n−ドープおよびp−ドープナノワイヤーの両方の特性を示すことができる。例えば、ダイオード、トランジスタ、および他の公知の電気デバイスは、p−ドープナノワイヤーおよびn−ドープナノワイヤーの組み合わせを含むように製造することができる。
【0059】
本発明のナノワイヤー分散組成物はまた、本明細書に記載されるようなナノワイヤーヘテロ構造体を用いて、p−nダイオード、トランジスタ、および他の電気デバイスなどの電気デバイスを製造するために使用することもできる。ナノワイヤーヘテロ構造体は、ナノワイヤーの長さに沿ってまたは1つもしくは多数のコア−シェル構造体に複数のp−n接合を含み、それらの長さに沿っておよび/または同軸上に、異なってドープされている交互の部分またはセグメントを含むことができる。
【0060】
多数の電子デバイスおよびシステムは、本発明の方法によって製造されたナノワイヤーの薄膜と共に半導体または他のタイプのデバイスを組み入れることができる。本発明についての幾つかの実例用途は、例示目的のために本明細書で下にまたは別のところで記載され、限定的ではない。本明細書に記載される用途は、ナノワイヤーの整列または非整列薄膜を含むことができ、ナノワイヤーの複合または非複合薄膜を含むことができる。
【0061】
半導体デバイス(または他のタイプのデバイス)は、他の電子回路の信号と結合することができ、および/または他の電子回路と統合することができる。半導体デバイスは大きいフレキシブルまたはリジッド基板上に形成することができ、それは次に分離するかまたはより小さい基板へダイスカットすることができる。さらに、大きな基板(すなわち、通常の半導体ウェハーより実質的に大きい基板)上で、その上に形成された半導体デバイスは相互接続することができる。
【0062】
本発明のナノワイヤー分散組成物はまた、単一半導体デバイスを必要とする用途で、そしてマルチプル半導体デバイスに組み入れることもできる。例えば、本発明のナノワイヤー分散組成物は、その上に複数の半導体デバイスが形成される大面積マクロ電子基板に特に適用できる。かかる電子デバイスは、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(LCD)、有機LEDディスプレイ、電界放出ディスプレイ用のディスプレイ駆動回路を含むことができる。他のアクティブディスプレイは、ナノワイヤー−ポリマー、量子ドット−ポリマー複合材料から形成することができる(該複合材料はエミッターおよびアクティブ駆動マトリックスとして両方で機能することができる)。本発明のナノワイヤー分散組成物はまた、スマート図書館、クレジットカード、大面積アレイセンサー、およびスマートカード、スマート棚札などをはじめとする、無線IC(RFID)タグにも適用できる。
【0063】
本発明のナノワイヤー分散組成物はまた、デジタルおよびアナログ回路用途にも適用できる。特に、本発明のナノワイヤー分散組成物は、大面積基板で超大規模統合を必要とする用途で有用である。例えば、本発明の方法によって製造されたナノワイヤーの薄膜は、論理回路、記憶回路、プロセッサー、増幅器、ならびに他のデジタルおよびアナログ回路に組み入れることができる。
【0064】
本発明のナノワイヤー分散組成物は光起電用途に適用することができる。かかる用途では、透明導電基板が特定の光起電デバイスの光起電特性を高めるために使用される。例えば、かかる透明導電基板は、インジウムスズ酸化物(ITO)などのフレキシブル大面積代替品として使用することができる。基板は、大きいバンドギャップ、すなわち、可視光より大きいバンドギャップを有するために形成されるナノワイヤーの薄膜でコートすることができ、その結果それは非吸収であろうが、その上部に形成されるであろう光起電デバイスの活性材料と足並みを揃えたHOMOバンドかLUMOバンドかのどちらかを有するように形成されるであろう。透明導体は、電流を光起電デバイスから運び去るために吸収光起電材料の2面上に置くことができる。2つの異なるナノワイヤー材料、光起電材料HOMOバンドのそれと足並みを揃えたHOMOを有する1つ、および光起電材料のLUMOバンドと足並みを揃えたLUMOを有する他方を選ぶことができる。2つのナノワイヤー材料のバンドギャップは光起電材料のそれよりはるかに大きいように選ぶことができる。ナノワイヤーは、この実施形態によれば、基板がほとんど非吸収のままであることを可能にしながら、ナノワイヤーの薄膜の抵抗を下げるために軽くドープすることができる。
【0065】
従って、広範囲の軍需品および消費者商品は、本発明のナノワイヤー分散組成物を組み入れることができる。例えば、かかる商品はパーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、ネットワークデバイス、PDAおよびパームパイロットなどのハンドヘルド電子デバイス、電話(例えば、携帯および標準)、ラジオ、テレビジョン、電子ゲームおよびゲームシステム、ディスプレイ(例えば、アクティブマトリックスディスプレイ)、ホームセキュリティシステム、自動車、航空機、ボート、医療デバイス、他の家庭および業務用電化製品などを含むことができる。
【0066】
上記の無数のエレクトロニクス用途について、コーティング特性を改善するためにナノワイヤーの懸濁液に加えられたナノワイヤー分散組成物中の界面活性剤、バインダー、安定剤および/または他の化学薬品は、ナノワイヤーによって形成される薄膜の電気的特性に悪影響を及ぼすかもしれない。これらのケースでは、例えば、基板表面上へのナノワイヤーの堆積後にナノワイヤー表面とデバイス接点との間に十分な電気的接続性を提供するために、ナノワイヤーを乱すことなく、これらの化学薬品を除去することが望ましいかもしれない。残留化学薬品を洗い流すなどの幾つかの方法は、ナノワイヤーもまた除去する傾向がある。クリーニングの化学的方法に加えて、表面汚染物質を除去するために例えば、酸素、高周波プラズマを用いるプラズマクリーニングなどの物理的方法を用いることができる。基板表面をきれいにするために用いることができる他の物理的方法には、レーザークリーニング、他の低損傷、気相クリーニング法、および恐らく分子クリーニング(例えば、分子スケールでのすべての汚染物質の除去)が含まれる。
【実施例】
【0067】
次の非限定的な実施例は、本発明の教示に従ったナノワイヤー分散組成物を例示する。
【0068】
材料:
次の原材料を使用して次に来る実施例でのナノワイヤー分散組成物を調製した。
【0069】
実施例で使用する非イオン性界面活性剤は、エア・プロダクツ、ペンシルバニア州から入手したサーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール211、およびサーフィノール221であり;プルロニックL−17R、プルロニックL−31、プルロニックL−61、プルロニックL−62、プルロニックL−64、プルロニックL−81、プルロニックL−92、プルロニックL−101、プルロニックF−77、およびプルロニックF−88のブロック共重合体はバスフから入手し;シルウェットL−77、シルウェットL−7608、シルウェットL−7087、シルウェットL−7280、およびシルウェットL−8620はGEシリコーンズ(GE Silicones)から入手した。
【0070】
アンモニウムポリアクリレートは、ローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)からアクリゾールG−111として商業的に入手した。サンコア(SANCORE)2725と称されるポリウレタンラテックスはノベオン社、オハイオ州クリーブランド(Noveon,Inc.Cleveland,OH)から入手した。ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、トリトンX−100、トリトンX−405、トゥイーン40、およびスパン20はアルドリッチ(Aldrich)から入手した。
【0071】
下に提供される表1は、下の支援実施例で使用された様々な陰イオン性、陽イオン性、非イオン性および高分子界面活性剤を示す。
【表1】

【0072】
ナノワイヤー合成:
結晶性Siナノワイヤーを、上記のVLS法を用いて成長させた。ワイヤーを、ガス前駆体としてSiHを使用して4インチウェハー上に大気圧で成長させた。ナノワイヤー成長は490℃で90分間起こった。直径が60nmのAuナノ粒子をウェハー上にランダムに置き、VLS反応用の触媒として使用した。すべてのウェハーを同じやり方で処理した。
【0073】
超音波処理:
あらゆる4つのナノワイヤー成長ウェハーを別々に、150mlの脱イオン(DI)水/エタノール(4/1)溶液入り1000mlビーカーに浸漬した。ビーカーを、出力レベル5を用いて2分間水浴中で超音波処理してナノワイヤーを溶液へ移した。ナノワイヤー溶液を撹拌セル膜濾過によって濃縮した。
【0074】
撹拌セル膜濾過:
ナノワイヤー溶液を、43mm直径撹拌セルを用いることによって濃縮した。8μm孔径のポリカーボネート膜を使用して幾らかの小さいワイヤー屑(<10μm)だけでなく水も濾過して取り除き、膜のトップに濃縮ナノワイヤーを保った。
【0075】
対照1
DI水中0.01重量パーセントのナノワイヤー溶液を、#8マイアー棒を用いることによってビテックス(VITEX)フィルム上にコートした。コーティングを80℃オーブン中で5分間乾燥させた。次に、暗視野光学顕微鏡を用いてナノワイヤー被覆フィルムの画像を記録した。ワイヤー分散性を写真上でのワイヤー凝集体のレベルに基づいて目視検査した。このサンプルには多くの大きなワイヤー凝集体があり、そしてワイヤー分散は非常に不満足であることが分かった。
【0076】
実施例1−1
分散混合物を、0.04gのサーフィノール440を2gのナノワイヤー溶液(対照1での)に加え、そして混合することによって製造した。混合物を、#8マイアー棒を用いることによってビテックス・フィルム表面上にコートした。コーティングを80℃オーブン中で5分間乾燥させた。次に、光学顕微鏡を用いてコーティング上のワイヤー分散系を記録した。ワイヤー分散性をワイヤー凝集体のレベルに基づいて目視検査した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−1でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0077】
実施例1−2
実施例1−2を、サーフィノール440の代わりに、0.01gのポリビニルアルコールを2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)を加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−2でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0078】
実施例1−3
実施例1−3を、さらに0.01gのポリビニルアルコールを実施例1−1の混合物に加えたことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1および実施例1−2と比較して、実施例1−3でのワイヤー分散は短鎖界面活性剤(サーフィノール440)および長鎖水溶性ポリマー(PVA)の両方を一緒に混合することによってさらに改善されることが分かった。
【0079】
実施例1−4
実施例1−4を、ポリビニルアルコールの代わりに、0.03gのポリビニルピロリドン(PVP)を実施例1−3の混合物に加えたことを除いては実施例1−3についての手順に従って製造した。対照1および実施例1−2と比較して、短鎖界面活性剤(サーフィノール440)および長鎖水溶性ポリマー(PVP)の両方の添加はワイヤー分散のさらなる改善を提供することが分かった。
【0080】
実施例1−5
実施例1−5を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのサーフィノール211を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−5でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められるが、コーティング一様性は前の実施例1−1〜1−4ほど良好ではないことが分かった。
【0081】
実施例1−6
実施例1−6を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのサーフィノール221を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−6でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0082】
実施例1−7
実施例1−7を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのトリトンX−100を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−7でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0083】
実施例1−8
実施例1−8を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのトリトンX−405を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−8でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0084】
実施例1−9
実施例1−9を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのスパン20を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−9でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0085】
実施例1−10
実施例1−10を、サーフィノール440の代わりに、0.03gのトゥイーン40を2gナノワイヤー溶液(0.01重量パーセントのナノワイヤー)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例1−1についての手順に従って製造した。対照1(界面活性剤なし)と比較して、実施例1−10でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められることが分かった。
【0086】
第1セットの実施例の結果を下の表2にまとめる。示されるように、サーフィノール420および440界面活性剤などのより低い分子量およびより低いHLB値(例えば、約10未満、例えば、約8未満)を有する界面活性剤が対照と比較して最も改善されたナノワイヤー分散性を提供した。分散組成物へのPVPまたはPVAなどの1つもしくはそれ以上の水溶性ポリマーの界面活性剤との適切な組み合わせは、ナノワイヤーの分散性およびコーティング表面特性をさらに改善することができる。
【表2】

【0087】
対照2
対照2を、DI水/エタノール(3/7)中0.05重量パーセントのナノワイヤー溶液を#8マイアー棒を用いることによってビテックス・フィルム上にコートしたことを除いては対照1についての手順に従って製造した。コーティングを80℃オーブン中で5分間乾燥させた。次に、暗視野光学顕微鏡を用いてナノワイヤー被覆フィルムの画像を記録した。ワイヤー分散性を写真上でのワイヤー凝集体のレベルに基づいて目視検査した。このサンプルには多くの大きなワイヤー凝集体があり、そしてワイヤー分散は非常に不満足であることが分かった。
【0088】
実施例2−1
実施例2−1を、0.05gのプルロニックL−17R4を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照2についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照2(界面活性剤なし)と比較して、実施例2−1でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0089】
実施例2−2
実施例2−2を、プルロニックL−17R4の代わりに、0.05gのプルロニックL−64を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−1についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照2(界面活性剤なし)および実施例2−1と比較して、実施例2−2でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0090】
実施例2−3
実施例2−3を、プルロニックL−17R4の代わりに、0.05gのプルロニックL−62を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−1についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照2(界面活性剤なし)ならびに実施例2−1および2−2と比較して、実施例2−3でコーティングのより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0091】
実施例2−4
実施例2−4を、プルロニックL−17R4の代わりに、0.05gのプルロニックL−81を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−1についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照2および実施例2−1〜2−3と比較して、実施例2−4でコーティングの最良のワイヤー分散が認められたことを示す。
【0092】
実施例2−5
実施例2−5を、プルロニックL−81の代わりに、0.05gのプルロニックL−101を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−4についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照2より改善されたが、実施例2−4と比べて良好ではなかったことを示す。
【0093】
実施例2−6
実施例2−6を、プルロニックL−101の代わりに、0.05gのプルロニックF−88を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−5についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照2に似ていたことを示す。
【0094】
実施例2−7
実施例2−7を、プルロニックF−88の代わりに、0.05gのプルロニックF−77を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−6についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照2に似ていたことを示す。
【0095】
実施例2−8
実施例2−8を、プルロニックF−77の代わりに、0.05gのプルロニックL−31を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−7についての手順に従って製造した。ワイヤー分散は対照2より改善されたが、ワイヤー分散は実施例2−4と比べて良好ではなかった。
【0096】
実施例2−9
実施例2−9を、プルロニックL−31の代わりに、0.05gのプルロニックL−92を1gナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−8についての手順に従って製造した。ワイヤー分散は対照2より改善されたが、ワイヤー分散は実施例2−4および2−8と比べて良好ではなかった。
【0097】
実施例2−10
実施例2−10を、さらに2%(ナノワイヤー溶液の総重量基準で)のサンコア2725(ポリウレタンラテックス分散系)を1gのナノワイヤー溶液(対照2ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては実施例2−2についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照2(および実施例2−2)と比べて改善されたことを示す。加えて、コーティング表面粘着性はPUラテックスを加えることによって改善された。
【0098】
第2セットの実施例の結果を下の表3にまとめる。示されるように、プルロニックL−31、L−62、およびL−81などのより低い分子量およびより低いHLB値(例えば、約10未満、例えば、約8未満)を有するプルロニック・ポリマー界面活性剤は、対照と比較して最も改善されたナノワイヤー分散性を提供した。ナノワイヤー分散系へのPUラテックスの添加は、ナノワイヤーの分散性を犠牲にすることなくナノワイヤー分散系コーティング表面の保護に役立つことができる。
【表3】

【0099】
対照3
対照3を、DI水/エタノール(8/2)中0.05重量パーセントのナノワイヤー溶液を#8マイアー棒を用いることによってビテックス・フィルム上にコートしたことを除いては対照1についての手順に従って製造した。コーティングを80℃オーブン中で5分間乾燥させた。次に、暗視野光学顕微鏡を用いてナノワイヤー被覆フィルムの画像を記録した。ワイヤー分散性を写真上でのワイヤー凝集体のレベルに基づいて目視検査した。このサンプルには多くの大きなワイヤー凝集体があり、そしてワイヤー分散は非常に不満足であることが分かった。
【0100】
実施例3−1
実施例3−1を、0.01gのシルウェットL−77を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照3と比較して、実施例3−1でコーティングのわずかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0101】
実施例3−2
実施例3−2を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−1ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−1についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−1と比較して、実施例3−2でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0102】
実施例3−3
実施例3−3を、0.01gのシルウェットL−7608を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、対照3と比較して、実施例3−3でコーティングのわずかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0103】
実施例3−4
実施例3−4を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−3ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−3についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−3と比較して、実施例3−4でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0104】
実施例3−5
実施例3−5を、0.01gのシルウェットL−7280を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、コーティングのワイヤー分散が対照3より改善されたことを示す。
【0105】
実施例3−6
実施例3−6を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−5ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−5についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−5と比較して、実施例3−6でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0106】
実施例3−7
実施例3−7を、0.01gのシルウェットL−7087を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照3のように良好ではなかったことを示す。
【0107】
実施例3−8
実施例3−8を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−7ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−7についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−7と比較して、実施例3−8でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0108】
実施例3−9
実施例3−9を、0.01gのシルウェットL−7650を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照3のように良好ではなかったことを示す。
【0109】
実施例3−10
実施例3−10を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−9ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−9についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−9と比較して、実施例3−10でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0110】
実施例3−11
実施例3−11を、0.01gのシルウェットL−8620を1gナノワイヤー溶液(対照3ナノワイヤー溶液)に加え、それに引き続き混合したことを除いては対照3についての手順に従って製造した。光学顕微鏡写真結果は、ワイヤー分散が対照3と比べて良好ではなかったことを示す。
【0111】
実施例3−12
実施例3−12を、さらに0.01gのAG−111を実施例3−11ナノワイヤー溶液の混合物に加え、そして再び混合したことを除いては実施例3−11についての手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真結果は、実施例3−11と比較して、実施例3−12でコーティングのはるかにより良好なワイヤー分散が認められたことを示す。
【0112】
第3セットの実施例の結果を下の表4にまとめる。示されるように、シルウェットL−77、L−7608、L−7087およびL−7280などのより低い分子量およびより低いHLB値を有するシルウェット界面活性剤は、対照と比較して最も改善されたナノワイヤー分散性を提供した。ナノワイヤー分散組成物へのAG−111などの水溶性ポリマーの添加は、液体組成物中のナノワイヤーの分散をさらに高めた。
【表4】

【0113】
実施例4
次の非限定的実施例は、本発明の教示に従って、ワイヤーを溶液に分散させる前にナノワイヤー上に酸化物層を形成することによる改善されたナノワイヤー分散を例示する。
【0114】
ナノワイヤー合成:
結晶性Siナノワイヤーを、上記のVLS法を用いて成長させた。ワイヤーを、ガス前駆体としてSiHを使用して4インチウェハー上に大気圧で成長させた。ナノワイヤー成長は490℃で90分間起こった。直径が60nmのAuナノ粒子をウェハー上にランダムに置き、VLS反応用の触媒として使用した。すべてのウェハーを同じやり方で処理した。
【0115】
ナノワイヤー酸化:
ナノワイヤー付きウェハーは迅速熱酸化(RTO)システムにおいて大気圧でO環境中900℃で乾燥熱酸化を受けた。500℃での1分チャンバー順化がその直前に行われるものの、酸化相は長さが8分であった。この方法は典型的にはRTOシステムで10〜12nmのSiOを成長させる。類似の方法を、標準炉酸化システムを用いて、適宜に継続期間を調整して行うことができる。酸化はまた、より高い温度、典型的には約1000℃以下の温度を用いて行うこともできる。酸化時間は、当該ケースで適宜短くされる必要がある。酸化物の品質は典型的にはこの間隔内ではそれほど異ならない。
【0116】
超音波処理:
あらゆる4つのナノワイヤー成長ウェハーを別々に、150mlのDI水/エタノール(2/1)溶液入り1000mlビーカー中へ浸漬した。ビーカーを、出力レベル5を用いて2分間水浴中で超音波処理してナノワイヤーを溶液へ移した。
【0117】
撹拌セル濾過:
ナノワイヤー溶液を、43mm直径撹拌セルを用いることによって濃縮した。12μm孔径のポリカーボネート膜を使用して水を濾過して取り除き、膜のトップに濃縮ナノワイヤーを保った。
【0118】
対照4
さらなる表面酸化なしのナノワイヤーを完全に超音波処理し、膜濾過によってDI水/エタノール(80/20)中0.03重量%溶液に濃縮した。分散混合物を、先ず0.03gのサーフィノール440および0.015gのプルロニックL−64を1gのナノワイヤー溶液(0.03重量%)に加え、そして混合することによって製造した。次に、0.015gのアクリゾールG−111を固体で混合物に導入し、再び混合した。最終混合物を、7mmドクターブレード手動ドローダウンを用いることによってビテックス・フィルム表面上にコートした。コーティングを80℃オーブン中で5分間乾燥させた。次に、暗視野光学顕微鏡を用いてコーティングのワイヤー分散を画像形成した。ワイヤー分散性をワイヤー凝集体のレベルに基づいて目視検査した。このコーティングには多くの大きなワイヤー凝集体があることが分かった。
【0119】
実施例4−1
実施例4−1を、対照4に使用したナノワイヤーと置き換えるために表面酸化ナノワイヤーを使用したことを除いては対照4についてと同じ手順に従って製造した。コーティング後に、光学顕微鏡写真は、対照4と比較して、コーティングでの凝集体が表面酸化処理のために著しく減少したことを示す。
【0120】
本発明の様々な実施形態が上に記載されてきたが、それらはほんの一例として、そして限定ではなく提示されてきたことが理解されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなくそれらの中で形態および詳細の様々な変更を行い得ることは当業者に明らかであろう。このように、本発明の広がりおよび範囲は上記の模範的な実施形態のいかなるものによっても限定されるべきではないが、次の特許請求の範囲およびそれらの同等物に従ってただ単に規定されるべきである。
【0121】
本明細書に述べられたすべての刊行物、特許および特許出願は、本発明に関係する当業者の技能のレベルを示すものであり、そしてまるで各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により援用されるべきであると具体的に、そして個々に示されているかのように同じ程度に参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1Aは単結晶半導体ナノワイヤーコア(本明細書では以下「ナノワイヤー」)100を例示する。図1Bはコア−シェル構造に従ってドープされたナノワイヤー110を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの低分子量分散剤を含む水溶液または非水溶液に懸濁された複数の無機ナノワイヤーを含むナノワイヤー分散組成物。
【請求項2】
前記分散剤が非イオン性または高分子界面活性剤から選択される、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項3】
前記分散剤が非イオン性シルウェット界面活性剤、サーフィノール界面活性剤、プルロニック高分子界面活性剤、およびそれらの組み合わせまたは混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項4】
前記分散剤が約20未満のHLB値を有する、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項5】
前記分散剤が約10未満のHLB値を有する、請求項4に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項6】
前記分散剤が約5,000未満の分子量を有する、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項7】
前記分散剤が約3,000未満の分子量を有する、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項8】
前記分散剤が約1,000未満の分子量を有する、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項9】
前記ナノワイヤーが前記水溶液または非水溶液に懸濁される前に酸化される、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項10】
前記ナノワイヤーが前記水溶液または非水溶液に懸濁される前にRTOチャンバーで熱酸化される、請求項9に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの分散剤がブロック共重合体を含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項12】
前記ブロック共重合体がジブロック共重合体を含む、請求項11に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項13】
前記ジブロック共重合体がプルロニックL−31、L−62またはL−81を含む、請求項8に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項14】
0.01〜20重量%分散剤を含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項15】
約1.0〜15重量%分散剤を含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項16】
約1〜8重量%分散剤を含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項17】
前記水溶液または非水溶液が蒸留水、エタノール、メタノールまたはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項18】
1つもしくはそれ以上のバインダーをさらに含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項19】
前記1つもしくはそれ以上のバインダーがポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の水溶性ポリマーを含む、請求項18に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項20】
アンモニウムポリアクリレートアクリゾールG−111、PVA、およびPVPからなる群から選択された長鎖高分子分散剤をさらに含む、請求項2に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項21】
前記複数のナノワイヤーが半導体または金属酸化物ナノワイヤーを含む、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項22】
前記複数のナノワイヤーがシリコンナノワイヤーを含む、請求項21に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項23】
上に薄膜として堆積された請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物を含むフレキシブル基板。
【請求項24】
上に薄膜として堆積された請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物を含むリジッド基板。
【請求項25】
上に薄膜として堆積された請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物を含むアクティブマトリックスディスプレイ・バックプレーン。
【請求項26】
請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物が上に薄膜としてコートされたプラスチック基板。
【請求項27】
前記複数のナノワイヤーが約10より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項28】
前記複数のナノワイヤーが約100より大きいアスペクト比を有する、請求項27に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項29】
前記複数のナノワイヤーが約1000より大きいアスペクト比を有する、請求項27に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項30】
少なくとも1つの低分子量ブロック共重合体分散剤を含む水溶液または非水溶液に懸濁された複数の無機ナノワイヤーを含むナノワイヤー分散組成物。
【請求項31】
前記分散剤が約5,000未満の分子量を有する1つもしくはそれ以上のプルロニック・シリーズのブロックポリマーを含む、請求項30に記載のナノワイヤー分散組成物。
【請求項32】
低分子量分散剤を水溶液または非水溶液へ導入することを含む、前記水溶液または非水溶液への複数の無機ナノワイヤーの分散性を改善する方法。
【請求項33】
前記分散剤が約15未満のHLB値を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記分散剤が約10未満のHLB値を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記分散剤が約3,000未満の分子量を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記分散剤が非イオン性または高分子界面活性剤から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記分散剤が非イオン性シルウェット界面活性剤、サーフィノール界面活性剤、プルロニック高分子界面活性剤、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記分散剤がプルロニック・ポリマー界面活性剤を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
アンモニウムポリアクリレートアクリゾールG−111、PVA、およびPVPからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の低鎖高分子分散剤を前記水溶液または非水溶液へ導入することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノワイヤーがシリコンナノワイヤーを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノワイヤーが約1000より大きいアスペクト比を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
ナノワイヤーを水溶液または非水溶液に分散させる前に非化学的酸化プロセスを用いて前記ナノワイヤーを酸化することを含む、前記溶液への複数の無機ナノワイヤーの分散性を改善する方法。
【請求項43】
前記ナノワイヤーの酸化が900℃またはそれより上で熱酸化プロセスを行って前記ナノワイヤー上にSiOxの1つもしくはそれ以上のシェル層を形成することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記1つもしくはそれ以上のシェル層がSiOを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記複数のナノワイヤーがシリコンナノワイヤーを含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−538728(P2008−538728A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506571(P2008−506571)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/013290
【国際公開番号】WO2006/113207
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】