ナノワイヤ電池の方法及び構成
様々な方法及び装置が、電池に関連して実現される。そのような一構成によれば、イオンが移動する電池において使用するための装置が提供される。この装置は、基材と、複数の根付けられて成長したナノワイヤとを備えている。根付けられて成長したナノワイヤが、イオンと相互作用すべく基材から延びている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、イオン電池の構成及び方法に関し、さらに詳細には、ナノワイヤ基盤の電極の構成及びその製造のための手法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いエネルギ容量、軽い重量、及び長い寿命を有する電池への需要が、携帯電子デバイス、電動車両、及び埋め込み可能な医療装置に関する分野及び産業など、さまざまな分野及び産業において重要になってきている。例えば、多くの場合に、エネルギ容量、重量、及びサイクル寿命の特性が、電池を使用する特定の装置の機能の改善に有用である。携帯電子デバイス及び埋め込み可能な医療装置において、これらの態様及び他の関連する側面が、パワーの向上(例えば、さらなる処理能力)及び/又は装置サイズの小型化を可能にするために有用である。電動車両においては、これらの側面が、電動車両の速度、出力、及び稼働範囲の制限因子であることが多い。
【0003】
電池のさまざまな市販の実施形態は、化学的な酸化及び還元反応からの化学エネルギを貯蔵し、使用可能な電気の形態へと変換する電気化学セルとして機能する。化学反応は、カソードにおいて生じる還元及びアノードにおいて生じる酸化など、電池の2つの電極を構成している材料において生じる。これらの反応は、一部は、アノード及びカソードを構成する材料の間の電気化学ポテンシャルの相違に起因する。多くのイオン基盤の電池においては、2つの材料からなる電極が、他の点では電気絶縁性である電解質などのイオン導電体によって隔てられている。各々の電極材料が、集電体(current collector)と呼ばれることもある導電性材料(好ましくは、金属材料)へと電気的に接続される。次いで、集電体を、集電体間の電子の移動を可能にする外部の回路を使用して互いに接続することができる。電子が外部の回路を通って流れることができるとき、電位の差を等しくするために、アノードがイオンを放出する(例えば、イオンを形成するための酸化によって)。電子の流れが、電解質を通過するイオンの流れによって精算される。次いで、イオンが、カソードの化学的に反応性の材料と反応する。材料が受け入れることができるイオンの数が、その材料の比容量として知られている。電池の電極材料は、重量当たりのエネルギ容量(例えば、単位はAh/g)に関して定められることが多い。多くの研究が、より大容量の電池のためのよりエネルギ密度の高い電極材料の創造及び開発に向けられている。
【0004】
電池の特定の一種類が、リチウムイオン電池、又はLiイオン電池である。Liイオン電池は、電池における充電及び放電状態を実現するために、電極間でLiイオンを移動させる。電極の一種類は、アノードとしてグラファイトを使用する。グラファイトアノードは、372mAh/g程度である可逆の(充電可能な)容量を有する。グラファイトアノードは、層構造の間へのLiイオンのインターカレーションによって機能する。いくつかのグラファイトアノードにおける限界は、LiがグラファイトにおいてLiC6の化学量論で飽和する点にある。従って、より大量のLiの導入を可能にする材料が、大容量のLi電池のアノードとして使用するためには魅力的である。
【0005】
グラファイトアノードのいくつかの代案は、層構造の材料の間へのLiイオンのインターカレーションを含まない貯蔵機構を利用する。例えば、一部の遷移金属酸化物は、700mAh/gという比較的高エネルギのアノードをもたらすことができる変換機構を使用する。他の代案は、Si、Sn、Bi、及びAlなど、Liの導入によってLiとの合金を形成する元素を含む。これらの元素のいくつかは、比較的大きい理論エネルギ容量をもたらす。多くの場合、そのような元素は、Liの導入時に体積変化を示す。例えば、純粋なSiは、Li4.4Siにおいて4200mAh/gという理論容量を有するが、Liの導入(合金化)の際に400%もの体積変化を生じることが示されている。膜及びミクロンサイズの粒子において、このような体積変化に起因してSiが粉々になり、集電体との接触を失い、容量の減退及び電池寿命の短縮につながる可能性がある。薄い非晶質のSiで製作された電極は、多数のサイクルにわたって容量の安定性の改善を示すことができるが、そのような膜が実行可能な電池にとって充分な活物質を有することは稀である。導電カーボン添加材を使用して導電性を高める試みは、このような問題を完全には解決していない。なぜならば、脱合金(リチウムの解放)時に粒子が収縮し、結果としてカーボンとの接触を失う可能性があるからである。Siアノードは、粒子を一体に保持するように試みるために、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのポリマー結合剤によって作成されているが、PVDFの弾性特性は、大きなSiの体積変化にとって充分でない可能性があり、導電性の乏しさを完全には軽減しない。これが、結果として、低いクーロン効率及び乏しいサイクル特性につながる。例えば、10μmというサイズのSi粒子をカーボンブラック及びPVDFと混合して使用することで、3260mAh/gという最初の放電容量がもたらされることが示されているが、充電容量はわずかに1170mAh/gであって、わずか35%という乏しいクーロン効率を示している。10サイクルの後に、さらに容量は94%へと減退する。さらに、導電添加材及び結合剤によって電極の重量が増し、電池の全体としての重量当たり及び体積当たりの容量が小さくなる。
【0006】
これらの特性及び他の特性が、Li電池のアノードにおけるLi合金材料の設計、製造、及び使用における課題である。1つの解決策は、ナノ構造の電池電極材料を使用することである。ナノ材料として、ナノワイヤ、ナノ粒子、及びナノチューブが挙げられ、これらはすべて、少なくとも1つの寸法をナノメートルの寸法に有している。ナノ材料は、変形によりよく適応し、電解質との界面の接触面積がより大きく、電子の移動における経路長が短いため、Li電池における使用に関して、以前より関心の対象である。これらの特性は、サイクル特性の改善、出力率の向上、及び容量の改善をもたらすことができる。しかしながら、現時点での取り組みは、改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】エイ.エム.モレイルズ(A.M.Morales)及びシー.エム.リーバー(C.M.Lieber)著、Science 279、208ページ(1998)
【非特許文献2】エム.エイチ.フアン(M.H.Huang)ら、Adv.Mater.13、113ページ〜116ページ(2001)
【非特許文献3】ディック,ケイ.エイ(Dick,K.A.)ら、Adv.Funct.Mater.15、1603ページ1603〜1610(2005)
【非特許文献4】パン,ゼット.ダブル.(Pan,Z.W.)ら、Science 291、1947〜1949(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の種類の用途及び他の用途に関係する上述の課題及び他の課題の克服に向けられている。本発明のこれらの態様及び他の態様が、いくつかの説明用の実例及び用途において例示され、その一部が図面に示され、後続の特許請求の範囲において特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一典型的な実施形態によれば、電池において使用するための装置が提供される。この装置は、イオンと合金を形成するナノワイヤの新規な使用を通じて、高いエネルギ容量をもたらす。装置の具体的な例は、カーボン以外の材料から作られ、電池の充電状態においてLi+イオンと合金を形成し、放電状態においてLi+イオンを放出するナノワイヤを使用する。集電体へと接続される基材から直接にナノワイヤを注意深く成長させることで、実質的にすべてが基材へと直接接続されて基材から延びているナノワイヤを有する装置をもたらすことができる。
【0010】
別の実施形態によれば、イオンを移動させる電池において使用するための装置が提供される。この装置は、基材と、各々が前記基材に根ざして成長させられ(growth-rooted)、イオンと相互作用する分子を有する外表面を有している複数のナノワイヤとを備えている。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、安定なエネルギ容量を有する電池が提供される。この電池は、イオンを供給するためのイオン輸送体、前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体、及び前記イオン輸送体のもう一方の側に位置する第2の集電体を備えている。第2の集電体が、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して約2000mAh/gよりも大きい前記安定なエネルギ容量を設定する複数の固体(solid)ナノワイヤとを含んでいる。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、充電される電池が提供される。この電池は、イオンを供給するためのイオン輸送体、前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体、及び前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体を備えている。固体ナノワイヤが、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して、後のエネルギ充電の間の容量の最大減退を約25パーセント未満に設定する。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、エネルギ容量を有する電池が提供される。この電池は、基材を有する第1の集電体と、第2の集電体と、前記第1及び第2の集電体の間に位置し、イオンを供給するイオン輸送体と、ナノワイヤからなる層とを備えている。ナノワイヤからなる層は、ナノワイヤのうちの約1つの長さに等しい層高さを有している。さらに、ナノワイヤからなる層は、前記イオン輸送体からのイオンと結合すべく前記基材から前記イオン輸送体に向かって延び、当該電池の前記エネルギ容量を設定するナノワイヤを含んでいる。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、電池が提供される。この電池は、一方が基材を含んでいる第1及び第2の集電体と、前記第1及び第2の集電体の間に位置するイオン輸送体と、前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合して公称のエネルギ容量を定める固体ナノワイヤとを備えている。多数の前記固体ナノワイヤが、前記基材上に位置し、前記基材上に位置する端部を有している。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、集電体へと接続される基材を有する電極機構の方法が実現される。電極機構は、電池において使用されるように設計されている。この方法は、基材から固体ナノワイヤを成長させるステップを含んでいる。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、電池において使用するための電極機構を製作するための方法が実現される。この方法は、固体ナノワイヤを根付かせて成長させてなる基材を、集電体へと取り付けるステップ、前記基材及び集電体ともう1つの集電体との間に位置するイオン輸送体によって、集電体アセンブリを形成するステップ、及び前記集電体アセンブリをハウジング内に配置するステップを含んでいる。
【0017】
以上の概要は、例示の実施形態の各々を説明しようとしたものでも、本発明のすべての実例を説明しようとしたものでもない。
【0018】
本発明を、添付の図面に関連して後述される本発明の種々の実施形態についての詳細な説明を考慮して、さらに完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、イオンが移動する電池において使用するための本発明の一実施形態による装置を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態によるナノワイヤを有する電池セルを示している。
【図3】図3は、集電体アノード上にナノワイヤを有している本発明の典型的な実施形態によるリチウムイオン電池セルの機能を示している。
【図4A】図4Aは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図4B】図4Bは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図4C】図4Cは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図5A】図5Aは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5B】図5Bは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5C】図5Cは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5D】図5Dは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について、さまざまな変更及び代案の形態が容易に可能であるが、本発明のいくつかの実施例が、図面に例示され詳細に説明される。しかしながら、本発明を図示及び説明される特定の実施形態に限定しようとする意図はない。むしろ、本発明の技術的思想及び技術的範囲に包含されるすべての変更、同等物、及び代案を保護することが意図される。
【0021】
本発明は、ナノワイヤ電極が関係するさまざまな種類のイオン電池及び装置ならびに構成に応用可能であると考えられる。本発明は、必ずしもそれに限定されるわけではないが、本発明の種々の態様を、この文脈を使用する実施例の説明によって理解できるであろう。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、アノードと、カソードと、アノード及びカソードに接触する集電体と、電解質とを有する電池が実現される。負極又はアノードが、基材から延びる複数のナノワイヤで構成される。ナノワイヤは、イオンと相互作用する多数の分子を備える外表面を有している。ナノワイヤを延在させてなる基材が、集電体へと取り付けられる。集電体を構成する材料として、これらに限られるわけではないが、ステンレス鋼、銅、ニッケル、アルミニウム、及び他の好ましくはLiに対して不活性な金属材料を挙げることができる。集電体を、導電性にするために銅又はニッケルなどの金属の層でコートされたプラスチックなどの可撓材料で構成することも可能である。具体的な実施形態においては、ナノワイヤが、一端が基材に直接接触し、他端が基材から離れるように延びているナノワイヤを生み出すようなやり方で、基材から成長させられる。
【0023】
本発明の別の実施形態に関しては、電池において使用するための構成が実現される。この構成は、基材に根ざして成長する固体ナノワイヤを含んでいる。基材が、集電体へと取り付けられる。このやり方で、この構成を、電池における電極として使用することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態に関しては、電池が、安定なエネルギ容量を備えて実現される。電解質などのイオン輸送体が、イオンがイオン輸送体の両側に位置した電極の間を移動できるようにする。電極のうちの一方が、基材を有している。複数のナノワイヤが、基材に根ざして成長させられる。これらのナノワイヤが、約2000mAh/gよりも大きい安定なエネルギ容量を設定すべくイオンと相互作用する。このようにして、電池が、複数回の充電及び放電サイクルを経てもエネルギ容量を維持する。これらのナノワイヤは、ナノワイヤへのイオンの拡散を可能にする非フラーレン型のナノワイヤである。
【0025】
本発明の別の実施形態に関しては、電池が、基材から延びるナノワイヤを使用して実現され、ナノワイヤが、2000mAh/g未満であってよい安定なエネルギ容量を提供する。
【0026】
特定の事例においては、ナノワイヤへのイオンの拡散により、結果として、ナノワイヤが一時的に、拡散したイオンと基礎をなすナノワイヤ材料との合金で構成される。そのような合金の具体的な例が、SiナノワイヤへのLiイオンの拡散から形成されるLi4.4Siである。他に考えられるナノワイヤ材料の例として、Ge及びSn、ならびにSnO2、TiO2、Co3O4、Li2.6Co0.4N、Li3N、LiMnN、FeP2、CuP、CoP3、及びMnP4などの種々の金属酸化物、チッ化物、及びリン化物が挙げられる。さらには、ナノワイヤを、例えばSi−Ge合金又はSi−Sn合金など、これらの材料の他の材料との合金を含むように構成することができる。
【0027】
本発明の他の実施形態によれば、電池の構成の生成方法が実現される。ナノワイヤが、集電体基材上に直接成長させられることで、ナノワイヤと集電体との間に直接の電子的接触が形成される。これを行うことができるいくつかの方法として、蒸気−液体−固体(VLS)又は蒸気−固体(VS)成長法の使用が挙げられる。
【0028】
特定の実施例においては、Siナノワイヤが、SiH4の分解を使用して合成される。成長のための基材は、金属材料などの適切な導体、あるいはより詳しくは、ステンレス鋼304の箔であってよい。金などの触媒が、コロイド溶液からもたらされ、あるいは電子ビーム蒸発又はスパッタリングを用いてAuの薄膜を堆積させることによって、集電体基材上に付着させられる。あるいは、ナノワイヤを、これらに限られるわけではないが溶液−液体−固体(SLS)成長法、ソルボサーマル法、熱水法、ゾル−ゲル法、及び超臨界流体−液体−固体(SFLS)法など、テンプレート不要の溶液相の方法を使用して基材上に成長させることができる。
【0029】
得られるナノワイヤは、さまざまなサイズの用途に合わせて特定的にあつらえられた直径を呈することができる。直径の注意深い選択を、いくつかの因子をバランスさせることによって達成することができる。例えば、適切に小さい直径を有するナノワイヤは、イオンの導入(又は、脱離)のひずみに起因する基材からの分離を、生じにくいであろう。そのようなひずみは、(例えば材料の粉状化に起因する)集電体からのナノワイヤの分離につながりかねず、エネルギ容量の低下を引き起こす。大きな直径は、基材上のナノワイヤ材料の総量を多くすることができるが、直径が大きいと、イオンがナノワイヤの中心へと充分に拡散することが不可能になりうる。そのような充分な拡散の不足は、ナノワイヤの一部分が使用されないため、ナノワイヤのグラム当たりのエネルギ容量を相応に減少させる結果になりかねない。これらの因子及び他の因子を、最適なナノワイヤのサイズの決定に使用することができる。
【0030】
本明細書で検討される種々のナノワイヤの構成及び方法のいくつかは、実質的にすべてが金属製の集電体に直接接続されているナノワイヤを提供するために、特に有用でありうる。そのように接続されたナノワイヤは、介在の導電材料を使用することなく、直接的に容量に貢献する。これらの接続されたナノワイヤを、電池のサイクルにおいて見られる体積変化に耐えるように構成することもできる。このように、いくつかの構成及び成長方法は、余分な重量の付加及び電池の全体としての容量の低下につながりかねない結合材又は導電性の添加材の使用を避けるために、有用でありうる。さらに、いくつかのナノワイヤは、ワイヤの長さに沿って集電体へと至る直接の(1次元の)電子の経路を可能にする。これは、集電体への効率的な電荷の輸送のために、特に有用でありうる。一事例においては、この電極が、電池のアノード、すなわち負極として使用される。
【0031】
本発明の特定の実施形態においては、正極又はカソードが、集電体基材から延びる複数のナノワイヤを有するという点で、アノードと同様の電極を含むことができる。これらのナノワイヤを、すでに述べた気相法及びテンプレートをテンプレート不要の溶液相法を使用して、成長させることができる。あるいは、カソードを、Liイオン電池において現在使用されている粉末複合材料で構成してもよい。本発明は、そのような実施例には限定されないが、市販のカソード材料のいくつかの例は、LiCoO2、LiFePO4、LiMnO2、LiMn2O4、及びLiNiO2である。2つの電極の間には、電極間のイオンの移動を促進する電解質を含んでいるイオン伝導性かつ電子絶縁性の領域が存在する。この領域は、電解質で満ちた膜セパレータを含んでおり、電解質は、例えば1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1MのLiPF6など、有機溶媒に溶かされたLi塩である。あるいは、電解質が、ポリマー又は無機材料などの固体イオン伝導材料に混合されたLi塩であってもよい。
【0032】
本発明の種々の典型的な実施形態によれば、ナノワイヤ装置が、約2000mAh/gよりも大きい安定なエネルギ容量を提供する。特定の事例においては、基材から成長したナノワイヤが、最初に結晶構造を呈する。第1の充電及び第1の放電サイクルの後、ナノワイヤの一部(又は、すべて)は、非晶質状態へと変態できる。これは、ナノワイヤの分子構造へとイオンが導入され、ナノワイヤの結晶構造が崩壊することに起因すると考えられる。さらに、充電サイクルも、ナノワイヤのサイズの増加につながる可能性がある。例えば、Siから形成された結晶構造が、Si−Li合金の形成後にサイズの400%の増加を呈することが示されている。充分に小さいナノワイヤの成長が、ひずみの適切な緩和のため、及び割れを生じることなく大きな体積の変化により良好に対応するために、特に有用でありうる。また、ナノワイヤを、比較的短いイオン(例えば、Li)拡散経路を有するように成長させることができる。いくつかの事例では、ナノワイヤを集電体基材上に直接成長させることで、各々のナノワイヤを電気的に向けて、各々のナノワイヤの長さを下る連続的な電子輸送経路を可能にすることによって、1次元の電子の経路が利用される。
【0033】
ここで図面に目を向けると、図1が、イオンが移動する電池において使用するための本発明の一実施形態による装置を示している。ナノワイヤ104が、基材102から延び、電池の充電及び放電の際にイオン106と相互作用するように構成されている。
【0034】
一事例においては、ナノワイヤ104が、基材102に根ざして成長させられた非フラーレンのナノワイヤである。非フラーレンのナノワイヤは、イオンとの相互作用のために、カーボンから形成される単層ナノチューブ(SWNT)及び多層ナノチューブ(MENT)などの層状の材料へのインターカレーションを使用するのではなく、合金化機構を使用する。これは、高いエネルギ容量の電池を提供するために、きわめて有用でありうる。
【0035】
ナノワイヤ104を、イオン106と適切に相互作用する(例えば、充電時にイオンを貯蔵し、放電時にイオンを解放する)さまざまな材料から構成することができる。
【0036】
図2が、ナノワイヤを有する本発明の実施形態による電池セルを示している。電池200が、負荷/充電回路204へと接続されている。放電モードで動作するとき、電池200が、回路204へと電流を供給する。充電モードで動作するとき、回路204からの電流が、電池200を充電するために使用される。集電体206及び212は、アノード及びカソードに電子的に接触する導体である。特定の実施形態においては、集電体が金属であり、Liに対して非反応性である。
【0037】
ナノワイヤ202が、集電体212へと接続されている。特定の実施形態においては、集電体212が、電池200のアノードの一部である。ナノワイヤは、イオン源208からのイオンと相互作用する。イオン源208は、LiCoO2など、リチウムを含む材料を含むことができる。セパレータ210を、イオン源208からのイオンの通過を許しつつ、イオン源208とナノワイヤ202との間の物理的な分離を維持するために、随意により備えることが可能である。これは、種々の多孔質材料を使用することによって達成できる。他の事例では、イオン源208が、Li箔などの固体のイオン源を含むことができる。さらに別の事例では、イオン源208が、集電体206へと接続されたカソード材料で構成されるナノワイヤを含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、集電体が、イオン源によって隔てられた平行なシートとして配置される。
【0039】
他の実施形態においては、集電体を、さまざまな向きに配置することができる。例えば、集電体を、同心の円筒の様相で配置することができる。これは、C、AA、AAAといったセルサイズの電池など、現行の電池技術と同様のフォームファクタを有する電池を生成するために、特に有用でありうる。他の事例では、各々がそれぞれのアノード、カソード、及びイオン源を有している複数の電池セルを、所望の容量及び電圧特性を有するただ1つの電池を形成するように、直列及び/又は並列の構成に配置することができる。
【0040】
図3は、集電体アノード上にナノワイヤを有している本発明の典型的な実施形態によるリチウムイオン電池セルの機能を示している。集電体304及び308が、負荷310からアノードのナノワイヤ302及びカソード部分306の両者への仲立ちをもたらしている。特定の実施形態においては、カソード部分306をナノ構造から構成することができるが、本発明は、そのような実施形態に限られない。アノードのナノワイヤ302が、充電状態の際には、例えば合金化によってLi+イオンを受け取って引き受ける。このような充電状態は、適切な電圧を集電体304及び308へと印加することによって実現される。印加電圧からのエネルギが、例えばナノワイヤ−Li合金のかたちで貯蔵される。カソード部分306が、充電状態の際にLi+イオンを放出する。特定の実施例では、カソードが充電状態の際に自身の酸化電荷を変化させる金属酸化物(例えば、LiCoO2)である。例えば、LiCoO2の場合、Co3+がCo4+へと酸化してLi+イオンを電解質へと放出する充電状態が、放電状態よりも高い酸化状態である。したがって、充電状態においては、より多くのイオンが、アノードのナノワイヤと反応すべく自由である。
【0041】
図3に示されているとおり、Li+イオンは、アノードとカソードとの間の領域に位置する電解質の一部であってもよい。これは、充電及び放電状態のいずれかにおいてアノードとカソードとの間を移動するためのLi+イオンの自由度を可能にする。一事例においては、多孔質のセパレータ層が、アノードとカソードとの間に構造的な支持をもたらしつつ、依然として両者の間のLi+イオンの移動を許容するために使用される。本発明の特定の実施形態は、Li塩を有機溶媒に溶解させて有する電解質を使用して、電池を実現する。具体的な例は、1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1.0MのLiPF6である。電解質は、ポリマー又は無機材料によって溶解されたLi塩であってもよい。
【0042】
図3の構造体を、アノード及びカソードの集電体の間に位置するイオン輸送体を有している電極構成を形成することによって組み立てることができる。アノード及びカソードの一方が、固体なナノワイヤを成長させてなる基材を含む、次いで、この構造体を、少なくとも2つの導電端子を有する絶縁材料など、適切なハウジングによって囲むことができる。1つの端子が、構造体のアノード部分へと電気的につながるように使用される一方で、もう1つの端子は、構造体のカソード部分へと電気的に接続される。特定の実施形態においては、構造体を、市販の電池のフォームファクタに一致するように形作ることができる。
【0043】
図4A〜4Cは、本発明の典型的な実施形態に従ってイオン電池においてナノワイヤ電極として使用するための構造を蒸気−液体−固体成長(VLS)を使用することによって製造する際の種々の段階を示している。図4Aにおいて、触媒404が基材402へと直接付着させられる。基材402は、金属材料などの適切な導体から製作され、さらに詳しくはステンレス鋼の箔から製作される。他の適切な導体の例として、銅、ニッケル、アルミニウム、又は金属でコートされたプラスチックなどの可撓材料が挙げられる。金などの触媒404が、コロイド溶液からもたらされ、あるいは電子ビーム蒸発又はスパッタリングを用いてAuの薄膜を付着させることによってもたらされる。他の適切な触媒は、対象となる特定のナノワイヤ材料系によって決定される。あるいは、ナノワイヤを集電体表面に直接成長させるためにテンプレート不要の溶液相の方法が使用される場合、触媒は不要であるかもしれない。
【0044】
図4Bは、基材402上のナノワイヤ406の成長を示している。次いで、蒸気−液体−固体(VLS)又は蒸気−固体(VS)成長法が、基材へと接続され、基材から延びるナノワイヤを製造するために使用される。そのような技法の例が、
エイ.エム.モレイルズ(A.M.Morales)及びシー.エム.リーバー(C.M.Lieber)著、Science 279、208ページ(1998)、
エム.エイチ.フアン(M.H.Huang)ら、Adv.Mater.13、113ページ〜116ページ(2001)、
ディック,ケイ.エイ(Dick,K.A.)ら、Adv.Funct.Mater.15、1603ページ1603〜1610(2005)、及び、
パン,ゼット.ダブル.(Pan,Z.W.)ら、Science 291、1947〜1949(2001)
にさらに詳しく記載されており、これらの各々は、その全体がここでの言及によって本明細書に引用される。特定の例では、Siナノワイヤが、SiH4の分解を使用して合成される。
【0045】
上述したように、本発明に従って実行される種々の実施形態は、一部は比較的大きく、一部は比較的小さい、さまざまな外径のナノワイヤを実現する。例えば、特定の典型的な実施形態においては、本発明に従って実現されるナノワイヤが、10ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の平均外径を有する。他の実施形態においては、そのようなナノワイヤが、100ナノメートルを超える外径を有し、特定の実施形態においては、1000ナノメートルにもなる平均外径を有する。
【0046】
特定の実施形態においては、充電−放電段階の前に、ナノワイヤの長さが、数十ミクロン程度であり、直径が50nm〜300nmの間である。決してそのような寸法に示されてはいないが、図4Cは、基材402からのナノワイヤ406の成長の完了を示している。成長のプロセスに起因して、ナノワイヤの大部分は、基材からの実質的に垂直な成長を呈することができる。これを、ナノワイヤの大部分が角度Xによって示されるとおりに基材から約50度よりも大きい角度を有する特定の実施例において特徴付けることができる。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、Siナノワイヤ(SiNW)が、Au触媒を用いて基材から成長させられる。単結晶SiNWが、蒸気−液体−個体成長法を使用して、環状炉の内部で成長させられる。ステンレス鋼304の箔(厚さ0.002インチ)からなる基材に、0.1%(w/v)のポリ−L−リシン水溶液での官能化及び50nm径のAuのコロイド溶液への浸漬により、あるいは電子ビーム気化を用いた75nmのAuの気化及び成長の直前の30分にわたる530℃での熱処理によって、Au触媒が授けられる。基材を530℃まで加熱し、シラン(SiH4、Ar中に2%)を、30Torrのチャンバ全圧にて80sccmで流した。
【0048】
この実施例において、SiNW電極の電気化学的特性を、サイクリックボルタンメトリを使用して評価した。リチウムシリサイド化合物Li12Si7の形成に関係する充電電流が、約330mVで始まり、Li21Si5の形成に対応して、25mVにおいてピークを示す。370及び620mVにおける充電ピークは、脱リチウム化を表わしており、マイクロ構造シリコンアノードについて行った先の検討に矛盾していない。これらの特徴的な電流ピークは、スキャン速度が高速であり、より多くのSiNWがサイクリングによって活性化されるため、サイクリングにつれて高くなる。Au触媒も、約150mVで始まるリチウム化にて電気化学的に活性化された。脱リチウム化のピークを、SiNWサンプルにおいて約180mVに見て取ることができた。ステンレス鋼の表面に75nmのAu膜を有する基準サンプルについて、サイクリックボルタンメトリ及び定電流測定の両者が、AuのLiとの合金化及び脱合金化に関する電流が、SiNWのそれと比べて少なく、初期の放電容量が20mAh/gであって、10サイクルの後に10mAh/g未満まで減退することを示した。すなわち、Auからの容量の寄与を、SiNW電極においては無視できると考えることができる。他の実施形態においては、そのような寄与を回避するために、触媒を除去してもよい。
【0049】
図5A〜5Dが、本発明の一典型的な実施形態に従い、ステンレス鋼製の基材上に成長させた複数のSiナノワイヤ(SiNW)を一方の電極とし、リチウム箔を他方の電極として製作された半電池の実験的な実施から得られた結果を示している。電気化学的特性を、溶媒としての1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1.0MのLiPF6電解質を有するガラスセルにおいて実行した。SiNWへのLiの導入が、比較的高いエネルギ容量を呈することが発見された。
【0050】
図5Aは、1mV/sのスキャン速度で2.0〜0.01Vまでの範囲にわたって測定された電位(V)対Li/Li+のサイクリックボルタモグラムを示している。Li−Si合金の形成に関係する充電電流が、約330mVで始まり、100mV未満でかなり大きくなっている。放電時には、電流ピークが、約370及び620mVに現れている。図5Bが、C/20という速度での第1及び第2のサイクルの結果を示している。観察された電圧の推移は、Siアノードについての先の検討と矛盾せず、結晶質のSiから非晶質LixSiが形成される第1の充電の際の長くて平坦な水平域を有している。続く放電及び充電サイクルは、非晶質シリコンに特徴的な別の電圧推移を有している。この第1の充電動作の際に観察された容量は、4277mAh/gであり、理論的な容量と基本的に同等(すなわち、実験誤差の範囲内)であった。第1の放電容量は、3124mAh/gであり、73%というクーロン効率を示した。第2の充電容量は、3541mAh/gへと17%だけ減少したが、第2の放電容量は、3193mAh/gへとわずかに増加し、90%というクーロン効率をもたらした。図5Dが、充電容量及び放電容量の両方が以後のサイクルにおいてほぼ一定のままであり、10サイクルまで減退がわずかであることを示している。さらに図5Dは、充電及び放電データをリチウム電池のアノードに現在使用されているリチウム化グラファイトの理論容量(372mAh/g)とともに示しており、さらに12nmのSiナノ結晶(NC)を含有する薄膜についての充電データを示している。SiNWは、高い電流においても高い容量を示した。図5Cは、C/10、C/5、C/2、及び1Cの速度で観察された放電及び充電曲線を示している。1Cという速度でも、容量は>2100mAh/gに保たれていた。
【0051】
本発明を上述し、以下の特許請求の範囲に記載したが、本発明の技術的思想及び技術的範囲から離れることなく多数の変更を加えることが可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。そのような変更として、例えば、ナノワイヤについていくつかの異なる合金の組み合わせを使用することが挙げられる。さらに、電池を、イオンとの相互作用のためのナノワイヤを備える集電体を各々が含んでいる複数のセルを使用して構成することが可能である。以下の意図される特許請求の範囲に記載されるとおりのこれらの手法及び他の手法が、本発明の態様を特徴付ける。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、イオン電池の構成及び方法に関し、さらに詳細には、ナノワイヤ基盤の電極の構成及びその製造のための手法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いエネルギ容量、軽い重量、及び長い寿命を有する電池への需要が、携帯電子デバイス、電動車両、及び埋め込み可能な医療装置に関する分野及び産業など、さまざまな分野及び産業において重要になってきている。例えば、多くの場合に、エネルギ容量、重量、及びサイクル寿命の特性が、電池を使用する特定の装置の機能の改善に有用である。携帯電子デバイス及び埋め込み可能な医療装置において、これらの態様及び他の関連する側面が、パワーの向上(例えば、さらなる処理能力)及び/又は装置サイズの小型化を可能にするために有用である。電動車両においては、これらの側面が、電動車両の速度、出力、及び稼働範囲の制限因子であることが多い。
【0003】
電池のさまざまな市販の実施形態は、化学的な酸化及び還元反応からの化学エネルギを貯蔵し、使用可能な電気の形態へと変換する電気化学セルとして機能する。化学反応は、カソードにおいて生じる還元及びアノードにおいて生じる酸化など、電池の2つの電極を構成している材料において生じる。これらの反応は、一部は、アノード及びカソードを構成する材料の間の電気化学ポテンシャルの相違に起因する。多くのイオン基盤の電池においては、2つの材料からなる電極が、他の点では電気絶縁性である電解質などのイオン導電体によって隔てられている。各々の電極材料が、集電体(current collector)と呼ばれることもある導電性材料(好ましくは、金属材料)へと電気的に接続される。次いで、集電体を、集電体間の電子の移動を可能にする外部の回路を使用して互いに接続することができる。電子が外部の回路を通って流れることができるとき、電位の差を等しくするために、アノードがイオンを放出する(例えば、イオンを形成するための酸化によって)。電子の流れが、電解質を通過するイオンの流れによって精算される。次いで、イオンが、カソードの化学的に反応性の材料と反応する。材料が受け入れることができるイオンの数が、その材料の比容量として知られている。電池の電極材料は、重量当たりのエネルギ容量(例えば、単位はAh/g)に関して定められることが多い。多くの研究が、より大容量の電池のためのよりエネルギ密度の高い電極材料の創造及び開発に向けられている。
【0004】
電池の特定の一種類が、リチウムイオン電池、又はLiイオン電池である。Liイオン電池は、電池における充電及び放電状態を実現するために、電極間でLiイオンを移動させる。電極の一種類は、アノードとしてグラファイトを使用する。グラファイトアノードは、372mAh/g程度である可逆の(充電可能な)容量を有する。グラファイトアノードは、層構造の間へのLiイオンのインターカレーションによって機能する。いくつかのグラファイトアノードにおける限界は、LiがグラファイトにおいてLiC6の化学量論で飽和する点にある。従って、より大量のLiの導入を可能にする材料が、大容量のLi電池のアノードとして使用するためには魅力的である。
【0005】
グラファイトアノードのいくつかの代案は、層構造の材料の間へのLiイオンのインターカレーションを含まない貯蔵機構を利用する。例えば、一部の遷移金属酸化物は、700mAh/gという比較的高エネルギのアノードをもたらすことができる変換機構を使用する。他の代案は、Si、Sn、Bi、及びAlなど、Liの導入によってLiとの合金を形成する元素を含む。これらの元素のいくつかは、比較的大きい理論エネルギ容量をもたらす。多くの場合、そのような元素は、Liの導入時に体積変化を示す。例えば、純粋なSiは、Li4.4Siにおいて4200mAh/gという理論容量を有するが、Liの導入(合金化)の際に400%もの体積変化を生じることが示されている。膜及びミクロンサイズの粒子において、このような体積変化に起因してSiが粉々になり、集電体との接触を失い、容量の減退及び電池寿命の短縮につながる可能性がある。薄い非晶質のSiで製作された電極は、多数のサイクルにわたって容量の安定性の改善を示すことができるが、そのような膜が実行可能な電池にとって充分な活物質を有することは稀である。導電カーボン添加材を使用して導電性を高める試みは、このような問題を完全には解決していない。なぜならば、脱合金(リチウムの解放)時に粒子が収縮し、結果としてカーボンとの接触を失う可能性があるからである。Siアノードは、粒子を一体に保持するように試みるために、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのポリマー結合剤によって作成されているが、PVDFの弾性特性は、大きなSiの体積変化にとって充分でない可能性があり、導電性の乏しさを完全には軽減しない。これが、結果として、低いクーロン効率及び乏しいサイクル特性につながる。例えば、10μmというサイズのSi粒子をカーボンブラック及びPVDFと混合して使用することで、3260mAh/gという最初の放電容量がもたらされることが示されているが、充電容量はわずかに1170mAh/gであって、わずか35%という乏しいクーロン効率を示している。10サイクルの後に、さらに容量は94%へと減退する。さらに、導電添加材及び結合剤によって電極の重量が増し、電池の全体としての重量当たり及び体積当たりの容量が小さくなる。
【0006】
これらの特性及び他の特性が、Li電池のアノードにおけるLi合金材料の設計、製造、及び使用における課題である。1つの解決策は、ナノ構造の電池電極材料を使用することである。ナノ材料として、ナノワイヤ、ナノ粒子、及びナノチューブが挙げられ、これらはすべて、少なくとも1つの寸法をナノメートルの寸法に有している。ナノ材料は、変形によりよく適応し、電解質との界面の接触面積がより大きく、電子の移動における経路長が短いため、Li電池における使用に関して、以前より関心の対象である。これらの特性は、サイクル特性の改善、出力率の向上、及び容量の改善をもたらすことができる。しかしながら、現時点での取り組みは、改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】エイ.エム.モレイルズ(A.M.Morales)及びシー.エム.リーバー(C.M.Lieber)著、Science 279、208ページ(1998)
【非特許文献2】エム.エイチ.フアン(M.H.Huang)ら、Adv.Mater.13、113ページ〜116ページ(2001)
【非特許文献3】ディック,ケイ.エイ(Dick,K.A.)ら、Adv.Funct.Mater.15、1603ページ1603〜1610(2005)
【非特許文献4】パン,ゼット.ダブル.(Pan,Z.W.)ら、Science 291、1947〜1949(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の種類の用途及び他の用途に関係する上述の課題及び他の課題の克服に向けられている。本発明のこれらの態様及び他の態様が、いくつかの説明用の実例及び用途において例示され、その一部が図面に示され、後続の特許請求の範囲において特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一典型的な実施形態によれば、電池において使用するための装置が提供される。この装置は、イオンと合金を形成するナノワイヤの新規な使用を通じて、高いエネルギ容量をもたらす。装置の具体的な例は、カーボン以外の材料から作られ、電池の充電状態においてLi+イオンと合金を形成し、放電状態においてLi+イオンを放出するナノワイヤを使用する。集電体へと接続される基材から直接にナノワイヤを注意深く成長させることで、実質的にすべてが基材へと直接接続されて基材から延びているナノワイヤを有する装置をもたらすことができる。
【0010】
別の実施形態によれば、イオンを移動させる電池において使用するための装置が提供される。この装置は、基材と、各々が前記基材に根ざして成長させられ(growth-rooted)、イオンと相互作用する分子を有する外表面を有している複数のナノワイヤとを備えている。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、安定なエネルギ容量を有する電池が提供される。この電池は、イオンを供給するためのイオン輸送体、前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体、及び前記イオン輸送体のもう一方の側に位置する第2の集電体を備えている。第2の集電体が、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して約2000mAh/gよりも大きい前記安定なエネルギ容量を設定する複数の固体(solid)ナノワイヤとを含んでいる。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、充電される電池が提供される。この電池は、イオンを供給するためのイオン輸送体、前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体、及び前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体を備えている。固体ナノワイヤが、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して、後のエネルギ充電の間の容量の最大減退を約25パーセント未満に設定する。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、エネルギ容量を有する電池が提供される。この電池は、基材を有する第1の集電体と、第2の集電体と、前記第1及び第2の集電体の間に位置し、イオンを供給するイオン輸送体と、ナノワイヤからなる層とを備えている。ナノワイヤからなる層は、ナノワイヤのうちの約1つの長さに等しい層高さを有している。さらに、ナノワイヤからなる層は、前記イオン輸送体からのイオンと結合すべく前記基材から前記イオン輸送体に向かって延び、当該電池の前記エネルギ容量を設定するナノワイヤを含んでいる。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、電池が提供される。この電池は、一方が基材を含んでいる第1及び第2の集電体と、前記第1及び第2の集電体の間に位置するイオン輸送体と、前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合して公称のエネルギ容量を定める固体ナノワイヤとを備えている。多数の前記固体ナノワイヤが、前記基材上に位置し、前記基材上に位置する端部を有している。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、集電体へと接続される基材を有する電極機構の方法が実現される。電極機構は、電池において使用されるように設計されている。この方法は、基材から固体ナノワイヤを成長させるステップを含んでいる。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、電池において使用するための電極機構を製作するための方法が実現される。この方法は、固体ナノワイヤを根付かせて成長させてなる基材を、集電体へと取り付けるステップ、前記基材及び集電体ともう1つの集電体との間に位置するイオン輸送体によって、集電体アセンブリを形成するステップ、及び前記集電体アセンブリをハウジング内に配置するステップを含んでいる。
【0017】
以上の概要は、例示の実施形態の各々を説明しようとしたものでも、本発明のすべての実例を説明しようとしたものでもない。
【0018】
本発明を、添付の図面に関連して後述される本発明の種々の実施形態についての詳細な説明を考慮して、さらに完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、イオンが移動する電池において使用するための本発明の一実施形態による装置を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態によるナノワイヤを有する電池セルを示している。
【図3】図3は、集電体アノード上にナノワイヤを有している本発明の典型的な実施形態によるリチウムイオン電池セルの機能を示している。
【図4A】図4Aは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図4B】図4Bは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図4C】図4Cは、イオン電池において使用するための本発明の典型的な実施形態による構造の製造における種々の段階を示している。
【図5A】図5Aは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5B】図5Bは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5C】図5Cは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【図5D】図5Dは、本発明の典型的な実施形態による実験用の電池機構の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について、さまざまな変更及び代案の形態が容易に可能であるが、本発明のいくつかの実施例が、図面に例示され詳細に説明される。しかしながら、本発明を図示及び説明される特定の実施形態に限定しようとする意図はない。むしろ、本発明の技術的思想及び技術的範囲に包含されるすべての変更、同等物、及び代案を保護することが意図される。
【0021】
本発明は、ナノワイヤ電極が関係するさまざまな種類のイオン電池及び装置ならびに構成に応用可能であると考えられる。本発明は、必ずしもそれに限定されるわけではないが、本発明の種々の態様を、この文脈を使用する実施例の説明によって理解できるであろう。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、アノードと、カソードと、アノード及びカソードに接触する集電体と、電解質とを有する電池が実現される。負極又はアノードが、基材から延びる複数のナノワイヤで構成される。ナノワイヤは、イオンと相互作用する多数の分子を備える外表面を有している。ナノワイヤを延在させてなる基材が、集電体へと取り付けられる。集電体を構成する材料として、これらに限られるわけではないが、ステンレス鋼、銅、ニッケル、アルミニウム、及び他の好ましくはLiに対して不活性な金属材料を挙げることができる。集電体を、導電性にするために銅又はニッケルなどの金属の層でコートされたプラスチックなどの可撓材料で構成することも可能である。具体的な実施形態においては、ナノワイヤが、一端が基材に直接接触し、他端が基材から離れるように延びているナノワイヤを生み出すようなやり方で、基材から成長させられる。
【0023】
本発明の別の実施形態に関しては、電池において使用するための構成が実現される。この構成は、基材に根ざして成長する固体ナノワイヤを含んでいる。基材が、集電体へと取り付けられる。このやり方で、この構成を、電池における電極として使用することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態に関しては、電池が、安定なエネルギ容量を備えて実現される。電解質などのイオン輸送体が、イオンがイオン輸送体の両側に位置した電極の間を移動できるようにする。電極のうちの一方が、基材を有している。複数のナノワイヤが、基材に根ざして成長させられる。これらのナノワイヤが、約2000mAh/gよりも大きい安定なエネルギ容量を設定すべくイオンと相互作用する。このようにして、電池が、複数回の充電及び放電サイクルを経てもエネルギ容量を維持する。これらのナノワイヤは、ナノワイヤへのイオンの拡散を可能にする非フラーレン型のナノワイヤである。
【0025】
本発明の別の実施形態に関しては、電池が、基材から延びるナノワイヤを使用して実現され、ナノワイヤが、2000mAh/g未満であってよい安定なエネルギ容量を提供する。
【0026】
特定の事例においては、ナノワイヤへのイオンの拡散により、結果として、ナノワイヤが一時的に、拡散したイオンと基礎をなすナノワイヤ材料との合金で構成される。そのような合金の具体的な例が、SiナノワイヤへのLiイオンの拡散から形成されるLi4.4Siである。他に考えられるナノワイヤ材料の例として、Ge及びSn、ならびにSnO2、TiO2、Co3O4、Li2.6Co0.4N、Li3N、LiMnN、FeP2、CuP、CoP3、及びMnP4などの種々の金属酸化物、チッ化物、及びリン化物が挙げられる。さらには、ナノワイヤを、例えばSi−Ge合金又はSi−Sn合金など、これらの材料の他の材料との合金を含むように構成することができる。
【0027】
本発明の他の実施形態によれば、電池の構成の生成方法が実現される。ナノワイヤが、集電体基材上に直接成長させられることで、ナノワイヤと集電体との間に直接の電子的接触が形成される。これを行うことができるいくつかの方法として、蒸気−液体−固体(VLS)又は蒸気−固体(VS)成長法の使用が挙げられる。
【0028】
特定の実施例においては、Siナノワイヤが、SiH4の分解を使用して合成される。成長のための基材は、金属材料などの適切な導体、あるいはより詳しくは、ステンレス鋼304の箔であってよい。金などの触媒が、コロイド溶液からもたらされ、あるいは電子ビーム蒸発又はスパッタリングを用いてAuの薄膜を堆積させることによって、集電体基材上に付着させられる。あるいは、ナノワイヤを、これらに限られるわけではないが溶液−液体−固体(SLS)成長法、ソルボサーマル法、熱水法、ゾル−ゲル法、及び超臨界流体−液体−固体(SFLS)法など、テンプレート不要の溶液相の方法を使用して基材上に成長させることができる。
【0029】
得られるナノワイヤは、さまざまなサイズの用途に合わせて特定的にあつらえられた直径を呈することができる。直径の注意深い選択を、いくつかの因子をバランスさせることによって達成することができる。例えば、適切に小さい直径を有するナノワイヤは、イオンの導入(又は、脱離)のひずみに起因する基材からの分離を、生じにくいであろう。そのようなひずみは、(例えば材料の粉状化に起因する)集電体からのナノワイヤの分離につながりかねず、エネルギ容量の低下を引き起こす。大きな直径は、基材上のナノワイヤ材料の総量を多くすることができるが、直径が大きいと、イオンがナノワイヤの中心へと充分に拡散することが不可能になりうる。そのような充分な拡散の不足は、ナノワイヤの一部分が使用されないため、ナノワイヤのグラム当たりのエネルギ容量を相応に減少させる結果になりかねない。これらの因子及び他の因子を、最適なナノワイヤのサイズの決定に使用することができる。
【0030】
本明細書で検討される種々のナノワイヤの構成及び方法のいくつかは、実質的にすべてが金属製の集電体に直接接続されているナノワイヤを提供するために、特に有用でありうる。そのように接続されたナノワイヤは、介在の導電材料を使用することなく、直接的に容量に貢献する。これらの接続されたナノワイヤを、電池のサイクルにおいて見られる体積変化に耐えるように構成することもできる。このように、いくつかの構成及び成長方法は、余分な重量の付加及び電池の全体としての容量の低下につながりかねない結合材又は導電性の添加材の使用を避けるために、有用でありうる。さらに、いくつかのナノワイヤは、ワイヤの長さに沿って集電体へと至る直接の(1次元の)電子の経路を可能にする。これは、集電体への効率的な電荷の輸送のために、特に有用でありうる。一事例においては、この電極が、電池のアノード、すなわち負極として使用される。
【0031】
本発明の特定の実施形態においては、正極又はカソードが、集電体基材から延びる複数のナノワイヤを有するという点で、アノードと同様の電極を含むことができる。これらのナノワイヤを、すでに述べた気相法及びテンプレートをテンプレート不要の溶液相法を使用して、成長させることができる。あるいは、カソードを、Liイオン電池において現在使用されている粉末複合材料で構成してもよい。本発明は、そのような実施例には限定されないが、市販のカソード材料のいくつかの例は、LiCoO2、LiFePO4、LiMnO2、LiMn2O4、及びLiNiO2である。2つの電極の間には、電極間のイオンの移動を促進する電解質を含んでいるイオン伝導性かつ電子絶縁性の領域が存在する。この領域は、電解質で満ちた膜セパレータを含んでおり、電解質は、例えば1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1MのLiPF6など、有機溶媒に溶かされたLi塩である。あるいは、電解質が、ポリマー又は無機材料などの固体イオン伝導材料に混合されたLi塩であってもよい。
【0032】
本発明の種々の典型的な実施形態によれば、ナノワイヤ装置が、約2000mAh/gよりも大きい安定なエネルギ容量を提供する。特定の事例においては、基材から成長したナノワイヤが、最初に結晶構造を呈する。第1の充電及び第1の放電サイクルの後、ナノワイヤの一部(又は、すべて)は、非晶質状態へと変態できる。これは、ナノワイヤの分子構造へとイオンが導入され、ナノワイヤの結晶構造が崩壊することに起因すると考えられる。さらに、充電サイクルも、ナノワイヤのサイズの増加につながる可能性がある。例えば、Siから形成された結晶構造が、Si−Li合金の形成後にサイズの400%の増加を呈することが示されている。充分に小さいナノワイヤの成長が、ひずみの適切な緩和のため、及び割れを生じることなく大きな体積の変化により良好に対応するために、特に有用でありうる。また、ナノワイヤを、比較的短いイオン(例えば、Li)拡散経路を有するように成長させることができる。いくつかの事例では、ナノワイヤを集電体基材上に直接成長させることで、各々のナノワイヤを電気的に向けて、各々のナノワイヤの長さを下る連続的な電子輸送経路を可能にすることによって、1次元の電子の経路が利用される。
【0033】
ここで図面に目を向けると、図1が、イオンが移動する電池において使用するための本発明の一実施形態による装置を示している。ナノワイヤ104が、基材102から延び、電池の充電及び放電の際にイオン106と相互作用するように構成されている。
【0034】
一事例においては、ナノワイヤ104が、基材102に根ざして成長させられた非フラーレンのナノワイヤである。非フラーレンのナノワイヤは、イオンとの相互作用のために、カーボンから形成される単層ナノチューブ(SWNT)及び多層ナノチューブ(MENT)などの層状の材料へのインターカレーションを使用するのではなく、合金化機構を使用する。これは、高いエネルギ容量の電池を提供するために、きわめて有用でありうる。
【0035】
ナノワイヤ104を、イオン106と適切に相互作用する(例えば、充電時にイオンを貯蔵し、放電時にイオンを解放する)さまざまな材料から構成することができる。
【0036】
図2が、ナノワイヤを有する本発明の実施形態による電池セルを示している。電池200が、負荷/充電回路204へと接続されている。放電モードで動作するとき、電池200が、回路204へと電流を供給する。充電モードで動作するとき、回路204からの電流が、電池200を充電するために使用される。集電体206及び212は、アノード及びカソードに電子的に接触する導体である。特定の実施形態においては、集電体が金属であり、Liに対して非反応性である。
【0037】
ナノワイヤ202が、集電体212へと接続されている。特定の実施形態においては、集電体212が、電池200のアノードの一部である。ナノワイヤは、イオン源208からのイオンと相互作用する。イオン源208は、LiCoO2など、リチウムを含む材料を含むことができる。セパレータ210を、イオン源208からのイオンの通過を許しつつ、イオン源208とナノワイヤ202との間の物理的な分離を維持するために、随意により備えることが可能である。これは、種々の多孔質材料を使用することによって達成できる。他の事例では、イオン源208が、Li箔などの固体のイオン源を含むことができる。さらに別の事例では、イオン源208が、集電体206へと接続されたカソード材料で構成されるナノワイヤを含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、集電体が、イオン源によって隔てられた平行なシートとして配置される。
【0039】
他の実施形態においては、集電体を、さまざまな向きに配置することができる。例えば、集電体を、同心の円筒の様相で配置することができる。これは、C、AA、AAAといったセルサイズの電池など、現行の電池技術と同様のフォームファクタを有する電池を生成するために、特に有用でありうる。他の事例では、各々がそれぞれのアノード、カソード、及びイオン源を有している複数の電池セルを、所望の容量及び電圧特性を有するただ1つの電池を形成するように、直列及び/又は並列の構成に配置することができる。
【0040】
図3は、集電体アノード上にナノワイヤを有している本発明の典型的な実施形態によるリチウムイオン電池セルの機能を示している。集電体304及び308が、負荷310からアノードのナノワイヤ302及びカソード部分306の両者への仲立ちをもたらしている。特定の実施形態においては、カソード部分306をナノ構造から構成することができるが、本発明は、そのような実施形態に限られない。アノードのナノワイヤ302が、充電状態の際には、例えば合金化によってLi+イオンを受け取って引き受ける。このような充電状態は、適切な電圧を集電体304及び308へと印加することによって実現される。印加電圧からのエネルギが、例えばナノワイヤ−Li合金のかたちで貯蔵される。カソード部分306が、充電状態の際にLi+イオンを放出する。特定の実施例では、カソードが充電状態の際に自身の酸化電荷を変化させる金属酸化物(例えば、LiCoO2)である。例えば、LiCoO2の場合、Co3+がCo4+へと酸化してLi+イオンを電解質へと放出する充電状態が、放電状態よりも高い酸化状態である。したがって、充電状態においては、より多くのイオンが、アノードのナノワイヤと反応すべく自由である。
【0041】
図3に示されているとおり、Li+イオンは、アノードとカソードとの間の領域に位置する電解質の一部であってもよい。これは、充電及び放電状態のいずれかにおいてアノードとカソードとの間を移動するためのLi+イオンの自由度を可能にする。一事例においては、多孔質のセパレータ層が、アノードとカソードとの間に構造的な支持をもたらしつつ、依然として両者の間のLi+イオンの移動を許容するために使用される。本発明の特定の実施形態は、Li塩を有機溶媒に溶解させて有する電解質を使用して、電池を実現する。具体的な例は、1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1.0MのLiPF6である。電解質は、ポリマー又は無機材料によって溶解されたLi塩であってもよい。
【0042】
図3の構造体を、アノード及びカソードの集電体の間に位置するイオン輸送体を有している電極構成を形成することによって組み立てることができる。アノード及びカソードの一方が、固体なナノワイヤを成長させてなる基材を含む、次いで、この構造体を、少なくとも2つの導電端子を有する絶縁材料など、適切なハウジングによって囲むことができる。1つの端子が、構造体のアノード部分へと電気的につながるように使用される一方で、もう1つの端子は、構造体のカソード部分へと電気的に接続される。特定の実施形態においては、構造体を、市販の電池のフォームファクタに一致するように形作ることができる。
【0043】
図4A〜4Cは、本発明の典型的な実施形態に従ってイオン電池においてナノワイヤ電極として使用するための構造を蒸気−液体−固体成長(VLS)を使用することによって製造する際の種々の段階を示している。図4Aにおいて、触媒404が基材402へと直接付着させられる。基材402は、金属材料などの適切な導体から製作され、さらに詳しくはステンレス鋼の箔から製作される。他の適切な導体の例として、銅、ニッケル、アルミニウム、又は金属でコートされたプラスチックなどの可撓材料が挙げられる。金などの触媒404が、コロイド溶液からもたらされ、あるいは電子ビーム蒸発又はスパッタリングを用いてAuの薄膜を付着させることによってもたらされる。他の適切な触媒は、対象となる特定のナノワイヤ材料系によって決定される。あるいは、ナノワイヤを集電体表面に直接成長させるためにテンプレート不要の溶液相の方法が使用される場合、触媒は不要であるかもしれない。
【0044】
図4Bは、基材402上のナノワイヤ406の成長を示している。次いで、蒸気−液体−固体(VLS)又は蒸気−固体(VS)成長法が、基材へと接続され、基材から延びるナノワイヤを製造するために使用される。そのような技法の例が、
エイ.エム.モレイルズ(A.M.Morales)及びシー.エム.リーバー(C.M.Lieber)著、Science 279、208ページ(1998)、
エム.エイチ.フアン(M.H.Huang)ら、Adv.Mater.13、113ページ〜116ページ(2001)、
ディック,ケイ.エイ(Dick,K.A.)ら、Adv.Funct.Mater.15、1603ページ1603〜1610(2005)、及び、
パン,ゼット.ダブル.(Pan,Z.W.)ら、Science 291、1947〜1949(2001)
にさらに詳しく記載されており、これらの各々は、その全体がここでの言及によって本明細書に引用される。特定の例では、Siナノワイヤが、SiH4の分解を使用して合成される。
【0045】
上述したように、本発明に従って実行される種々の実施形態は、一部は比較的大きく、一部は比較的小さい、さまざまな外径のナノワイヤを実現する。例えば、特定の典型的な実施形態においては、本発明に従って実現されるナノワイヤが、10ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の平均外径を有する。他の実施形態においては、そのようなナノワイヤが、100ナノメートルを超える外径を有し、特定の実施形態においては、1000ナノメートルにもなる平均外径を有する。
【0046】
特定の実施形態においては、充電−放電段階の前に、ナノワイヤの長さが、数十ミクロン程度であり、直径が50nm〜300nmの間である。決してそのような寸法に示されてはいないが、図4Cは、基材402からのナノワイヤ406の成長の完了を示している。成長のプロセスに起因して、ナノワイヤの大部分は、基材からの実質的に垂直な成長を呈することができる。これを、ナノワイヤの大部分が角度Xによって示されるとおりに基材から約50度よりも大きい角度を有する特定の実施例において特徴付けることができる。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、Siナノワイヤ(SiNW)が、Au触媒を用いて基材から成長させられる。単結晶SiNWが、蒸気−液体−個体成長法を使用して、環状炉の内部で成長させられる。ステンレス鋼304の箔(厚さ0.002インチ)からなる基材に、0.1%(w/v)のポリ−L−リシン水溶液での官能化及び50nm径のAuのコロイド溶液への浸漬により、あるいは電子ビーム気化を用いた75nmのAuの気化及び成長の直前の30分にわたる530℃での熱処理によって、Au触媒が授けられる。基材を530℃まで加熱し、シラン(SiH4、Ar中に2%)を、30Torrのチャンバ全圧にて80sccmで流した。
【0048】
この実施例において、SiNW電極の電気化学的特性を、サイクリックボルタンメトリを使用して評価した。リチウムシリサイド化合物Li12Si7の形成に関係する充電電流が、約330mVで始まり、Li21Si5の形成に対応して、25mVにおいてピークを示す。370及び620mVにおける充電ピークは、脱リチウム化を表わしており、マイクロ構造シリコンアノードについて行った先の検討に矛盾していない。これらの特徴的な電流ピークは、スキャン速度が高速であり、より多くのSiNWがサイクリングによって活性化されるため、サイクリングにつれて高くなる。Au触媒も、約150mVで始まるリチウム化にて電気化学的に活性化された。脱リチウム化のピークを、SiNWサンプルにおいて約180mVに見て取ることができた。ステンレス鋼の表面に75nmのAu膜を有する基準サンプルについて、サイクリックボルタンメトリ及び定電流測定の両者が、AuのLiとの合金化及び脱合金化に関する電流が、SiNWのそれと比べて少なく、初期の放電容量が20mAh/gであって、10サイクルの後に10mAh/g未満まで減退することを示した。すなわち、Auからの容量の寄与を、SiNW電極においては無視できると考えることができる。他の実施形態においては、そのような寄与を回避するために、触媒を除去してもよい。
【0049】
図5A〜5Dが、本発明の一典型的な実施形態に従い、ステンレス鋼製の基材上に成長させた複数のSiナノワイヤ(SiNW)を一方の電極とし、リチウム箔を他方の電極として製作された半電池の実験的な実施から得られた結果を示している。電気化学的特性を、溶媒としての1:1(w/w)のエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート中の1.0MのLiPF6電解質を有するガラスセルにおいて実行した。SiNWへのLiの導入が、比較的高いエネルギ容量を呈することが発見された。
【0050】
図5Aは、1mV/sのスキャン速度で2.0〜0.01Vまでの範囲にわたって測定された電位(V)対Li/Li+のサイクリックボルタモグラムを示している。Li−Si合金の形成に関係する充電電流が、約330mVで始まり、100mV未満でかなり大きくなっている。放電時には、電流ピークが、約370及び620mVに現れている。図5Bが、C/20という速度での第1及び第2のサイクルの結果を示している。観察された電圧の推移は、Siアノードについての先の検討と矛盾せず、結晶質のSiから非晶質LixSiが形成される第1の充電の際の長くて平坦な水平域を有している。続く放電及び充電サイクルは、非晶質シリコンに特徴的な別の電圧推移を有している。この第1の充電動作の際に観察された容量は、4277mAh/gであり、理論的な容量と基本的に同等(すなわち、実験誤差の範囲内)であった。第1の放電容量は、3124mAh/gであり、73%というクーロン効率を示した。第2の充電容量は、3541mAh/gへと17%だけ減少したが、第2の放電容量は、3193mAh/gへとわずかに増加し、90%というクーロン効率をもたらした。図5Dが、充電容量及び放電容量の両方が以後のサイクルにおいてほぼ一定のままであり、10サイクルまで減退がわずかであることを示している。さらに図5Dは、充電及び放電データをリチウム電池のアノードに現在使用されているリチウム化グラファイトの理論容量(372mAh/g)とともに示しており、さらに12nmのSiナノ結晶(NC)を含有する薄膜についての充電データを示している。SiNWは、高い電流においても高い容量を示した。図5Cは、C/10、C/5、C/2、及び1Cの速度で観察された放電及び充電曲線を示している。1Cという速度でも、容量は>2100mAh/gに保たれていた。
【0051】
本発明を上述し、以下の特許請求の範囲に記載したが、本発明の技術的思想及び技術的範囲から離れることなく多数の変更を加えることが可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。そのような変更として、例えば、ナノワイヤについていくつかの異なる合金の組み合わせを使用することが挙げられる。さらに、電池を、イオンとの相互作用のためのナノワイヤを備える集電体を各々が含んでいる複数のセルを使用して構成することが可能である。以下の意図される特許請求の範囲に記載されるとおりのこれらの手法及び他の手法が、本発明の態様を特徴付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを移動させる電池において使用するための装置であって、
基材と、
各々が前記基材に根ざして成長させられ、イオンと相互作用する分子を有する外表面を有している複数のナノワイヤと
を備えている装置。
【請求項2】
第1及び第2の集電体をさらに備えており、前記集電体の一方が、前記基材及び前記ナノワイヤを含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記集電体の間に位置するリチウム主体のイオン輸送体をさらに備えている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記リチウム主体のイオン輸送体が、前記ナノワイヤへの半径方向の拡散のためにリチウムイオンを提供する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ナノワイヤが、電子を1次元においてのみ移動させるように充分に小さい請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ナノワイヤが、ケイ素を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ナノワイヤが、10ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ナノワイヤが、10ナノメートル以下の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル以上の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ナノワイヤが、約300nmの平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ナノワイヤが、結晶質状態の構造を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ナノワイヤが、非晶質状態の構造を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ナノワイヤが、カーボンナノチューブを含んでいない請求項1に記載の装置。
【請求項16】
イオン輸送体と、前記イオン輸送体の各側に位置する第1及び第2の集電体とをさらに備えており、前記集電体のうちの一方が、電池のアノードの一部として機能し、前記基材及び前記ナノワイヤを含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記イオン及び前記ナノワイヤが、互いに異なる第1及び第2の材料でそれぞれ構成され、前記ナノワイヤが、前記第1及び第2の材料から形成される合金構造であって、前記電池のサイクリングの際に形成される合金構造を含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記イオンが、リチウムイオンを含み、前記ナノワイヤが、ケイ素を含み、前記合金構造が、リチウム及びケイ素を含む請求項17に記載の装置。
【請求項19】
安定なエネルギ容量を有する電池であって、
イオンを移動させるためのイオン輸送体と、
前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体と、及び
前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して約2000mAh/gよりも大きい前記安定なエネルギ容量を設定する複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体と、
を備えている電池。
【請求項20】
充電される電池であって、
イオンを移動させるためのイオン輸送体と、
前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体と、及び
前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して後の電池のエネルギサイクルの間の容量の最大減退を約25パーセント未満に設定する複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体と、
を備えている電池。
【請求項21】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項22】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項23】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Siと他の材料とからなる合金を含んでいる請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項24】
放電状態において、前記ナノワイヤがSiである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項25】
放電状態において、前記ナノワイヤがGeである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項26】
放電状態において、前記ナノワイヤがSnである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項27】
放電状態において、前記固体ナノワイヤが、Geと他の材料との合金を含んでいる請求項19又は20に記載の電池。
【請求項28】
放電状態において、前記固体ナノワイヤが、Snと他の材料との合金を含んでいる請求項19又は20に記載の電池。
【請求項29】
前記固体ナノワイヤの実質的にすべてが、前記基材へと直接接続されている請求項20に記載の電池。
【請求項30】
充電状態において、前記固体ナノワイヤが、前記固体ナノワイヤと前記イオンとの組み合わせから形成された合金を含む非晶質部分を有している請求項20に記載の電池。
【請求項31】
エネルギ容量を有する電池であって、
基材を有する第1の集電体と、
第2の集電体と、
前記第1及び第2の集電体の間に位置し、イオンを供給するイオン輸送体、及び
前記イオン輸送体からのイオンと結合すべく前記基材から前記イオン輸送体に向かって延び、当該電池の前記エネルギ容量を設定しているナノワイヤを含んでおり、前記ナノワイヤのうちの約1つの長さに等しい高さを有しているナノワイヤ層と、
を備えている電池。
【請求項32】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項33】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項34】
前記ナノワイヤが、前記基材へと化学的に結合した材料を含んでおり、当該電池の前記エネルギ容量が、約2000mAh/gよりも大きい請求項31に記載の電池。
【請求項35】
前記ナノワイヤが、固体であり、前記基材に根ざして成長させられており、カーボンナノチューブではない請求項31に記載の電池。
【請求項36】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、及びSnのうちの1つであり、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項37】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、及びSnのうちの1つである請求項31に記載の電池。
【請求項38】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、又はSnのうちの1つと別の材料との合金を含んでいる請求項31に記載の電池。
【請求項39】
前記第1の集電体が、アノード集電体であり、前記第2の集電体が、カソード集電体である請求項31に記載の電池。
【請求項40】
当該電池の前記エネルギ容量が、約2000mAh/g未満である請求項39に記載の電池。
【請求項41】
前記ナノワイヤの実質的にすべてが、前記基材に直接接続されている請求項31に記載の電池。
【請求項42】
前記ナノワイヤの大部分が、前記基材上に位置する端部から第2の端部への約60度よりも大きい角度を有しており、前記角度は、90度が前記第1の端部が位置する前記基材の表面に対して垂直であるような角度である請求項31に記載の電池。
【請求項43】
前記ナノワイヤが、金属酸化物及び金属チッ化物のうちの1つを含んでいる請求項31に記載の電池。
【請求項44】
一方が基材を含んでいる第1及び第2の集電体と、
前記第1及び第2の集電体の間に位置するイオン輸送体と、及び
前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合して公称のエネルギ容量を定める固体ナノワイヤと
を備えており、
多数の前記固体ナノワイヤが、前記基材上に位置し、前記基材上に位置した端部を有している電池。
【請求項45】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項44に記載の電池。
【請求項46】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項44に記載の電池。
【請求項47】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有しており、放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、又はSnのうちの1つと別の材料との合金を含んでいる請求項44に記載の電池。
【請求項48】
前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合する前記固体ナノワイヤと、前記基材へと電力を届けるための前記固体ナノワイヤの能力との関数として定められる公称エネルギ容量を有している請求項44に記載の電池。
【請求項49】
前記固体ナノワイヤが、約2000mAh/gよりも大きい平均エネルギ容量をもたらす請求項44に記載の電池。
【請求項50】
前記固体ナノワイヤの大部分が、前記基材上に位置する端部から第2の端部への約60度よりも大きい角度を有しており、前記角度は、90度が前記第1の端部が位置する前記基材の表面に対して垂直であるような角度である請求項44に記載の電池。
【請求項51】
電池において使用するための電極機構を製作する方法であって、
固体ナノワイヤを根付かせて成長させてなる基材を、集電体へと取り付けるステップと、
前記基材及び集電体ともう1つの集電体との間に位置するイオン輸送体によって、集電体アセンブリを形成するステップと、及び
前記集電体アセンブリをハウジング内に配置するステップと、
を含む方法。
【請求項52】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記固体ナノワイヤを、蒸気−液体−固体成長法及び蒸気−固体成長法の一方を使用して成長させるステップ
をさらに含んでいる請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記固体ナノワイヤが、ケイ素を含んでいる請求項51に記載の方法。
【請求項56】
複数の触媒を複数の位置において前記基材上に付着させるステップ
をさらに含んでおり、
前記固体ナノワイヤが、前記複数の位置において成長させられる請求項51に記載の方法。
【請求項1】
イオンを移動させる電池において使用するための装置であって、
基材と、
各々が前記基材に根ざして成長させられ、イオンと相互作用する分子を有する外表面を有している複数のナノワイヤと
を備えている装置。
【請求項2】
第1及び第2の集電体をさらに備えており、前記集電体の一方が、前記基材及び前記ナノワイヤを含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記集電体の間に位置するリチウム主体のイオン輸送体をさらに備えている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記リチウム主体のイオン輸送体が、前記ナノワイヤへの半径方向の拡散のためにリチウムイオンを提供する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ナノワイヤが、電子を1次元においてのみ移動させるように充分に小さい請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ナノワイヤが、ケイ素を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ナノワイヤが、10ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ナノワイヤが、10ナノメートル以下の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル以上の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ナノワイヤが、約300nmの平均外径を有する請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ナノワイヤが、結晶質状態の構造を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ナノワイヤが、非晶質状態の構造を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ナノワイヤが、カーボンナノチューブを含んでいない請求項1に記載の装置。
【請求項16】
イオン輸送体と、前記イオン輸送体の各側に位置する第1及び第2の集電体とをさらに備えており、前記集電体のうちの一方が、電池のアノードの一部として機能し、前記基材及び前記ナノワイヤを含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記イオン及び前記ナノワイヤが、互いに異なる第1及び第2の材料でそれぞれ構成され、前記ナノワイヤが、前記第1及び第2の材料から形成される合金構造であって、前記電池のサイクリングの際に形成される合金構造を含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記イオンが、リチウムイオンを含み、前記ナノワイヤが、ケイ素を含み、前記合金構造が、リチウム及びケイ素を含む請求項17に記載の装置。
【請求項19】
安定なエネルギ容量を有する電池であって、
イオンを移動させるためのイオン輸送体と、
前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体と、及び
前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して約2000mAh/gよりも大きい前記安定なエネルギ容量を設定する複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体と、
を備えている電池。
【請求項20】
充電される電池であって、
イオンを移動させるためのイオン輸送体と、
前記イオン輸送体の一方の側に位置する第1の集電体と、及び
前記イオン輸送体のもう一方の側に位置し、基材と、前記基材に根ざして成長させられ、前記イオンと相互作用して後の電池のエネルギサイクルの間の容量の最大減退を約25パーセント未満に設定する複数の固体ナノワイヤとを含んでいる第2の集電体と、
を備えている電池。
【請求項21】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項22】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項23】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Siと他の材料とからなる合金を含んでいる請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項24】
放電状態において、前記ナノワイヤがSiである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項25】
放電状態において、前記ナノワイヤがGeである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項26】
放電状態において、前記ナノワイヤがSnである請求項1、19、及び20のいずれか一項に記載の装置又は電池。
【請求項27】
放電状態において、前記固体ナノワイヤが、Geと他の材料との合金を含んでいる請求項19又は20に記載の電池。
【請求項28】
放電状態において、前記固体ナノワイヤが、Snと他の材料との合金を含んでいる請求項19又は20に記載の電池。
【請求項29】
前記固体ナノワイヤの実質的にすべてが、前記基材へと直接接続されている請求項20に記載の電池。
【請求項30】
充電状態において、前記固体ナノワイヤが、前記固体ナノワイヤと前記イオンとの組み合わせから形成された合金を含む非晶質部分を有している請求項20に記載の電池。
【請求項31】
エネルギ容量を有する電池であって、
基材を有する第1の集電体と、
第2の集電体と、
前記第1及び第2の集電体の間に位置し、イオンを供給するイオン輸送体、及び
前記イオン輸送体からのイオンと結合すべく前記基材から前記イオン輸送体に向かって延び、当該電池の前記エネルギ容量を設定しているナノワイヤを含んでおり、前記ナノワイヤのうちの約1つの長さに等しい高さを有しているナノワイヤ層と、
を備えている電池。
【請求項32】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項33】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項34】
前記ナノワイヤが、前記基材へと化学的に結合した材料を含んでおり、当該電池の前記エネルギ容量が、約2000mAh/gよりも大きい請求項31に記載の電池。
【請求項35】
前記ナノワイヤが、固体であり、前記基材に根ざして成長させられており、カーボンナノチューブではない請求項31に記載の電池。
【請求項36】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、及びSnのうちの1つであり、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項31に記載の電池。
【請求項37】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、及びSnのうちの1つである請求項31に記載の電池。
【請求項38】
放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、又はSnのうちの1つと別の材料との合金を含んでいる請求項31に記載の電池。
【請求項39】
前記第1の集電体が、アノード集電体であり、前記第2の集電体が、カソード集電体である請求項31に記載の電池。
【請求項40】
当該電池の前記エネルギ容量が、約2000mAh/g未満である請求項39に記載の電池。
【請求項41】
前記ナノワイヤの実質的にすべてが、前記基材に直接接続されている請求項31に記載の電池。
【請求項42】
前記ナノワイヤの大部分が、前記基材上に位置する端部から第2の端部への約60度よりも大きい角度を有しており、前記角度は、90度が前記第1の端部が位置する前記基材の表面に対して垂直であるような角度である請求項31に記載の電池。
【請求項43】
前記ナノワイヤが、金属酸化物及び金属チッ化物のうちの1つを含んでいる請求項31に記載の電池。
【請求項44】
一方が基材を含んでいる第1及び第2の集電体と、
前記第1及び第2の集電体の間に位置するイオン輸送体と、及び
前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合して公称のエネルギ容量を定める固体ナノワイヤと
を備えており、
多数の前記固体ナノワイヤが、前記基材上に位置し、前記基材上に位置した端部を有している電池。
【請求項45】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項44に記載の電池。
【請求項46】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項44に記載の電池。
【請求項47】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有しており、放電状態において、前記ナノワイヤが、Si、Ge、又はSnのうちの1つと別の材料との合金を含んでいる請求項44に記載の電池。
【請求項48】
前記イオン輸送体によってもたらされるイオンと結合する前記固体ナノワイヤと、前記基材へと電力を届けるための前記固体ナノワイヤの能力との関数として定められる公称エネルギ容量を有している請求項44に記載の電池。
【請求項49】
前記固体ナノワイヤが、約2000mAh/gよりも大きい平均エネルギ容量をもたらす請求項44に記載の電池。
【請求項50】
前記固体ナノワイヤの大部分が、前記基材上に位置する端部から第2の端部への約60度よりも大きい角度を有しており、前記角度は、90度が前記第1の端部が位置する前記基材の表面に対して垂直であるような角度である請求項44に記載の電池。
【請求項51】
電池において使用するための電極機構を製作する方法であって、
固体ナノワイヤを根付かせて成長させてなる基材を、集電体へと取り付けるステップと、
前記基材及び集電体ともう1つの集電体との間に位置するイオン輸送体によって、集電体アセンブリを形成するステップと、及び
前記集電体アセンブリをハウジング内に配置するステップと、
を含む方法。
【請求項52】
前記ナノワイヤが、50ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ナノワイヤが、100ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲の平均外径を有している請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記固体ナノワイヤを、蒸気−液体−固体成長法及び蒸気−固体成長法の一方を使用して成長させるステップ
をさらに含んでいる請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記固体ナノワイヤが、ケイ素を含んでいる請求項51に記載の方法。
【請求項56】
複数の触媒を複数の位置において前記基材上に付着させるステップ
をさらに含んでおり、
前記固体ナノワイヤが、前記複数の位置において成長させられる請求項51に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公表番号】特表2010−536158(P2010−536158A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521093(P2010−521093)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072489
【国際公開番号】WO2009/038897
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(503115205)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティ (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072489
【国際公開番号】WO2009/038897
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(503115205)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティ (69)
【Fターム(参考)】
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