説明

ナノ導電性膜のパターニング方法

【課題】導電性粒子の精密パターニングに使われうるドナー基材を提供すること。
【解決手段】ベース基材と、ナノ導電性粒子及び有機半導体を含む前記ベース基材上の転写層と、を有することを特徴とするナノ導電性膜形成用のドナー基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ導電性膜のパターニング方法に係り、さらに具体的には、製造される素子の熱的安定性が変化することなく、蒸着よりマイルドな条件で行えるパターニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体産業などが発展し、素子の高集積化及び精密化への要求が高まっており、さらに小さな微細パターンをより正確に具現しようとする微細加工技術が重要な関心事として注目されている。
【0003】
かような傾向と関連し、簡単で、かつ高度なナノ導電性粒子の精密なパターニングへの要求は大きい。
【0004】
従来、ナノ導電性粒子の湿式工程によるパターニングは、不可能であるか、または好ましくない結果をもたらした。すなわち、ナノ導電性粒子が有する粒子性により、ナノ導電性粒子だけを湿式工程で分散させることがほとんど不可能であり、ナノ導電性粒子を均一に分散させるためには、高分子のようなバインダを使用する必要があった。具体的には、溶媒にバインダ高分子を溶かし、そこにナノ導電性粒子を分散させた後、それを表面に均一に塗布してパターニングする方法が利用されてきた(例えば、非特許文献1、2)。
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society 2003,126,1596
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society 2004,126,9486
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高分子の電気伝導性が不足しているために、かような方法では、ナノ導電性粒子が有する伝導性特性を低下させてしまうという問題点があった。
【0006】
また、例えば、表示素子に広く使われる酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いる場合には、蒸着によるパターニングが行われてきた。しかしながら、該方法は、高い温度を必要とするエネルギー多消費工程であるという点、シャドーマスクが高価であるという点、輻射熱によるシャドーマスクの膨脹により変形が発生し、それによってパターニングの精度に限界が発生するという点で問題があった。
【0007】
さらに、モバイル領域における表示品質の高性能化と共に、便利さを追求できる、紙のような柔軟性を有するフレキシブル・ディスプレイ(paper−like flexible display)という新たな市場が開拓されてきた。かようなフレキシブルディスプレイにおいては、柔軟性、廉価性、及び軽量化を達成するために、既存のガラス基板を、透明で柔軟なプラスチック基板に代替する必要がある。しかしながら、プラスチック基板は、耐熱温度がガラス基板に比べて相当に低く、150〜200℃ほどの耐熱性を有する透明基板が開発されている状態であるために、既存の蒸着方法では、制約が伴う。
【0008】
上記問題点により、ナノ導電性粒子を湿式工程で分散させ、均一な膜を形成するパターニング法への要求が強かった。
【0009】
本発明が解決しようとする第一の技術的課題は、導電性粒子の精密パターニングに使われうるドナー基材を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする第二の技術的課題は、前記ドナー基材を利用してナノ導電性粒子を精密にパターニングするナノ導電性膜のパターニング方法を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする第三の技術的課題は、ナノ導電性膜を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする第四の技術的課題は、前記ナノ導電性膜を含む平板表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記第一の技術的課題を解決するために、ベース基材と、ナノ導電性粒子及び有機半導体を含む前記ベース基材上の転写層と、を有することを特徴とするナノ導電性膜形成用のドナー基材を提供する。
【0014】
本発明は、前記第二の技術的課題を解決するために、(a)ナノ導電性粒子と有機半導体とを溶媒に添加し、有機半導体混合物を製造するステップと、(b)前記有機半導体混合物をベース基材に塗布及び乾燥させて転写層を形成することにより、ドナー基材を得るステップと、(c)前記ドナー基材をレセプタ基材上に密着するように配置し、前記ドナー基材にエネルギー源を照射し、前記レセプタ基材上に転写層を転写してパターニングされたナノ導電性膜を得るステップと、を含むナノ導電性膜のパターニング方法を提供する。
【0015】
本発明は、前記第三の技術的課題を解決するために、ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜を提供する。
【0016】
本発明は、前記第四の技術的課題を解決するために、ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜を有する平板表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)のような表示素子を始めとする多様なデバイスの製造に使われうるナノ導電性膜のパターニング方法において、蒸着によらずとも、ナノ導電性粒子と有機半導体とを含む素子を湿式で製造できるようにすることにより、簡便、かつ低廉にデバイスを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
本発明の第1実施形態は、前記のような方法のパターニングに使われうるナノ導電性膜形成用のドナー基材を提供する。
【0020】
本発明のナノ導電性膜形成用のドナー基材は、ベース基材と、前記ベース基材上にナノ導電性粒子及び有機半導体を含む転写層とを有する。
【0021】
前記ナノ導電性粒子は、特に限定されるものではないが、金属酸化物粒子、金属粒子、半導体粒子、またはそれらの混合物であることが好ましい。前記ナノ導電性粒子の平均粒径は、2〜20nmであることが好ましい。前記ナノ導電性粒子の平均粒径が2nmより小さければ、凝集(aggregation)が起きやすく、分散し難くなる傾向があり、前記ナノ導電性粒子の平均粒径が20nmより大きければ、ナノ金属の融点が上昇する傾向がある。
【0022】
前記ナノ導電性粒子は、それ自体が粒子であるために、前記ナノ導電性粒子だけでは湿式コーティングが不可能であるが、後述のように、前記有機半導体を溶媒に溶解させた溶液に、前記ナノ導電性粒子を分散させて混合物の形態で使用すれば、前記ナノ導電性粒子を湿式コーティングして被膜を形成できる。従来は、高分子に前記ナノ導電性粒子を分散させることも行われてきたが、高分子の導電性が良好ではないため、被膜は形成されるが、伝導度が悪くなるという問題点があった。
【0023】
前記金属酸化物粒子は、ITO、IZO、インジウム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、セシウム酸化物、アンチモン酸化物、カドミウム酸化物またはそれらの混合物の粒子でありうる。それら金属酸化物は、透明でありつつも電気伝導度にすぐれるために、表示素子の電極などに広く利用される。
【0024】
前記金属粒子は、Au、Ag、Cu、Pd、Ptおよびそれらの合金から選ばれる1種以上であることが好ましい。前記金属粒子は、化学反応の触媒として使われることもあり、各種導電材料として使われることもある。
【0025】
特に、前記金属粒子は、粒子の表面の金属元素が下記化学式1のように置換基で置換されることが好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
ここで、Mは、Au、Ag、Cu、Pd、またはPtを表す。Xは、SまたはCN(シアノ基)を表す。XがCNの場合、CがYと共有結合し、Nの非共有電子対が、Mと配位結合する。また、M−Xは共有結合または配位結合を表す。Yは、C〜C50の有機置換基を表すが、好ましくは、C〜C50の置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基、ジフェニル基、あるいは中間に−CONH−、−COO−、ケイ素原子、ビスポルフィリン及び/または−CO−を含むC〜C50の炭化水素基を表し、nは、1〜20の整数を表す。前記化学式1の例を挙げれば、次の化学式2である。
【0028】
【化2】

【0029】
前記半導体粒子は、二族元素と六族元素とから構成されるか、または三族元素と五族元素とから構成されるか、または六族元素から構成されるナノ結晶粒子であり、本発明に用いられる有機半導体とは区別される。
【0030】
前記半導体粒子についてさらに述べれば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、及びそれらの混合物からなる群から選択された一以上でありうるが、それらに限定されるものではない。
【0031】
前記有機半導体は、溶媒に溶解できるものであれば、特別に限定されるものではない。ペンタセン誘導体;テトラセン誘導体;アントラセン誘導体;ナフタレン誘導体;α−チオフェン4量体;α−チオフェン5量体;α−チオフェン6量体のようなオリゴチオフェン及びその誘導体;チエノフェン及びその誘導体;オリゴフェニレン及びその誘導体;チオフェニレンビニレン及びその誘導体;ペリレン及びその誘導体;ジオキシポリン(dioxyporine)及びその誘導体;ルブレン及びその誘導体;コロネン及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸ジイミド及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体;金属含有もしくは非含有のフタロシアニン及びその誘導体;キノジメタン及びその誘導体、ピロメリット酸二無水物及びその誘導体、またはピロメリット酸ジイミド及びその誘導体が好ましい。
【0032】
また、本発明に使用可能な有機半導体は、側鎖に導入された置換基が150℃〜250℃で熱分解される次のような熱分解性のある置換基を有した化合物から選択された一種以上を使用できる。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
式中、X、X、X及びXは、それぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子であり、X、X、X及びXが同時に水素原子ではない。
【0036】
【化5】

【0037】
式中、R及びRは、それぞれ独立してC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のアルコキシ基、C〜C40のアリール基、C〜C40のアリールオキシ基、C〜C40のアルケニル基、C〜C40のアルキルアリール基、C〜C40のアリールアルキル基、C〜C40のアリールアルケニル基、またはC〜C40のアルキニル基である。
【0038】
【化6】

【0039】
式中、R及びRは、それぞれ独立してC〜C40のアルキル基、C〜C40のシリル基、またはC〜C40のシロキシ基である。特に、R及びRは、それぞれ独立してブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基であることが好ましい。
【0040】
【化7】

【0041】
式中、Rは、前記化学式3〜化学式6の化合物から選択された化合物由来の置換基である。mは30〜250の整数であり、好ましくは50〜200の整数である。
【0042】
前記ドナー基材は、光熱変換層、接着アンカー層、プライマー層、耐熱潤滑層、中間層、離型層及び緩衝層など、さまざまな層をさらに含むことができる。前記さまざまな層をさらに含むドナー基材の一具現例を、図1を参照しつつ、以下で説明する。
【0043】
図1Aは、前記ドナー基材の一具現例を表す。
【0044】
前記ドナー基材は、前記ベース基材200と転写層110との間に接着アンカー層500(achoring layer)をさらに含むことができる。前記接着アンカー層500は、前記ベース基材200と前記転写層110とが良好に接着し、互いに剥離しないために設けられうる。前記接着アンカー層500の材料と塗布方法は、当業界に公知の材料と方法とを利用でき、特別に限定されるものではない。
【0045】
転写層110が接着する前記ベース基材200の他の面には、耐熱潤滑層(heat−resistant lubricant layer)700をさらに含むことができる。前記耐熱潤滑層700は、転写時に加えられる熱により、他のフィルム層が溶けて熱源を汚染させることを防止するためのものであり、その材料と塗布方法は、当業界に公知の材料と方法とを利用でき、特別に限定されるものではない。
【0046】
前記ベース基材200と前記耐熱潤滑層700との間には、熱及び物理的スクラッチによる衝撃を緩和させる緩衝層(subbing layer)600をさらに含むことができる。前記緩衝層600の材料と塗布方法は、当業界に公知の材料と方法を利用でき、特別に限定されるものではない。
【0047】
図1B〜図1Fは、前記ドナー基材の他の具現例をそれぞれ表す。
【0048】
ここで、光熱変換層520は、外部から受けた光を熱に変換させることにより、光を照射した部分だけを転写させる役割を果たし、プライマー層510は、前記ベース基材200と前記光熱変換層520との接着を向上させる役割を果たす。中間層530は、転写層110の転写される部分が損傷されたり、または汚染されることを防止する役割を果たし、離型層540は、転写部分が熱と共に良好に離脱し、かつ転写が容易に起こるように手助けする役割を果たす。
【0049】
前記プライマー層510、光熱変換層520、中間層530、及び離型層540は、特別に限定されるものではなく、当業界に公知のものでありうる。
【0050】
本発明の第2実施形態は、デバイス製造のような多様な目的に使われうるパターニング方法であり、(a)ナノ導電性粒子と有機半導体とを溶媒に添加し、有機半導体混合物を製造するステップと、(b)前記有機半導体混合物をベース基材に塗布及び乾燥させて転写層を形成することにより、ドナー基材を得るステップと、(c)前記ドナー基材をレセプタ基材上に密着するように配置し、前記ドナー基材にエネルギー源を照射し、前記レセプタ基材上に転写層を転写してパターニングされたナノ導電性膜を得るステップとを含むナノ導電性膜のパターニング方法を提供する。
【0051】
本発明による方法によってパターニングを行うために、まず、ナノ導電性粒子と有機半導体とを溶媒に添加して、有機半導体混合物を製造する。前記ナノ導電性粒子は、前記溶媒内に分散し、前記有機半導体は、前記溶媒内に溶解する。
【0052】
このとき、前記有機半導体溶液の全体重量を基準に、前記有機半導体の含有量が10〜60重量%、前記ナノ導電性粒子の含有量が5〜50重量%、前記溶媒の含有量が5〜60重量%であることが好ましい。
【0053】
前記有機半導体の含有量が10重量%に達しなければ、均一な被膜形成が困難であり、前記有機半導体の含有量が60重量%を超えれば、ナノ導電性粒子の効果が低下する。前記ナノ導電性粒子の含有量が5重量%に達しなければ、均一な導電性を得ることができる粒子間の連結が不均一になり、前記ナノ導電性粒子の含有量が50重量%を超えれば、分散が困難になる傾向がある。前記溶媒の含有量が5重量%に達しなければ、均一な分散が困難になり、前記溶媒の含有量が60重量%を超えれば、乾燥に長時間が必要であり、経済的に不利である。ただし、前記溶媒は、有機半導体溶液の粘度をコーティングフィルムを製造するのに適切にする範囲内で使われることが好ましい。
【0054】
前記ナノ導電性粒子は、金属酸化物粒子、金属粒子、半導体粒子、またはそれらの混合物でありうる。それら金属酸化物粒子、金属粒子、及び半導体粒子は、前述の通りである。
【0055】
前記ナノ導電性粒子を分散させる溶媒は、前記有機半導体を溶解させることができる単一成分または多成分系溶媒ならば、特別に限定されるものではないが、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系、アミド系、複素環式炭化水素系溶媒、またはそれらの混合物を用いることができる。限定されるものではないが、具体的には水、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、キシレン、エチレングリコール(EG)、γ−ブチロラクトン、またはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)が好ましく挙げられる。それらは単独または組み合わせでも使われうる。
【0056】
前記有機半導体混合物は、界面活性剤及び/または分散向上剤をさらに含むこともできる。
【0057】
界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(POE)ソルビタンモノオレエート、N,N’−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセロール、脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤;アミン塩、第四級アンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸エステル、アルキル−αスルホカーボネート、ペトロリウムスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、リン酸エステル塩、アルキルリン酸塩のような陰イオン界面活性剤;N−ラウリル−βアミノ酢酸、N−ラウリル−βアミノプロピオン酸、N−ラウリル−βアミノブチル酸、アミノカルボン酸、ベタイン酸塩のような両性界面活性剤などが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0058】
分散向上剤としては、C16〜C20のパルミチン酸、ステアリン酸のような飽和脂肪酸;C16〜C18のオレイン酸、リノレン酸のような不飽和脂肪酸;それら飽和/不飽和脂肪酸とNa、K、Ca、Zn、Cuとの金属塩の一種以上が好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0059】
これ以外にも、前記有機半導体混合物は、増粘剤、帯電防止剤などをさらに含むこともできる。
【0060】
前記の通りに製造された有機半導体混合物をベース基材に均一に塗布し、転写層を形成する。
【0061】
前記ベース基材としては、塗布された前記ナノ導電性粒子と有機半導体との混合物をレセプタ基材上に熱転写できるフィルムであれば、特別に限定されるものではない。かようなベース基材の具体的な例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエーテルスルホン;ポリスチレン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアミド;ポリイミド;セルロース系樹脂;ポリウレタン;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ビニル化合物の付加重合体;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル;ポリ塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物;フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体;ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール;シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム系重合体;ポリビニルブチラール;軟質ポリ塩化ビニル;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体;エチレン系共重合体とエチレン−プロピレン−ジエン共重合体との混合物;スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマー;などである。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸が好ましく、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0062】
前記ベース基材上に、前記有機半導体混合物を均一に塗布する方法は、当業界に公知の方法であれば、特に限定されるものではない。具体的な例を挙げれば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ディップコーティングまたはナイフコーティング法を利用することが可能である。
【0063】
均一に塗布された前記有機半導体混合物の厚さは、特別に限定されるものではないが、30〜50μmであることが好ましい。前記有機半導体混合物のコーティング厚が50μmを超えれば、転写部分が厚くなって熱エネルギーが伝えられず、きれいに熱転写されないという問題点が発生しうる。
【0064】
前記の通りにコーティングされたベース基材は、乾燥過程を介し、残っている溶媒を除去してドナー基材を製造する。乾燥させる条件は、特別に限定されるものではないが、常温または50℃〜100℃の空気雰囲気で行われるが、窒素雰囲気で行う場合がさらに好ましく、空気の強制対流を伴った減圧条件で行えば、さらに迅速に乾燥させることができる。
【0065】
前記ドナー基材は、光熱変換層、接着アンカー層、プライマー層、耐熱潤滑層、中間層、離型層及び緩衝層など、さまざまな層をさらに含むことができる。それらの層の役割、材料及び形成方法は、前述の通りである。
【0066】
従って、前記パターニング方法は、前記有機半導体混合物をベース基材上に塗布する前に、前記ベース基材上に光熱変換層を形成するステップ、接着アンカー層を形成するステップ、プライマー層を形成するステップ、耐熱潤滑層を形成するステップ、中間層を形成するステップ、離型層を形成するステップ、緩衝層を形成するステップのうち、一つ以上をさらに含むことができる。
【0067】
前記ドナー基材のナノ導電性粒子と有機半導体との混合物をレセプタ基材に転写するために、前記の通り乾燥されたドナー基材をレセプタ基材に密着させ、所望のパターンに従ってエネルギーを加える。エネルギーを加える方法は、直接熱を加えることもでき、光、圧力または電気により誘発されたエネルギーを利用することもでき、特別に限定されるものではない。
【0068】
転写のために直接熱を加える場合、90〜230℃の温度で、選択された部分に熱を加えて転写できる。
【0069】
転写のために光を利用する場合、赤外線(IR)レーザをスキャニングして照射でき、照射する時間は、光の強度によって調節されうる。
【0070】
光を利用する場合は、選択的に光熱変換層を含むこともできる。前記光熱変換層は、ベース基材と転写層との間に形成されることが好ましい。前記光熱変換層は、赤外線−可視光線領域の光を吸収する性質を有する吸光性物質により形成されうる。かような特性を有した膜としては、Al、その酸化物及び/または硫化物からなる金属膜、カーボンブラック、黒鉛または赤外線染料が添加された高分子からなる有機膜がある。このとき、金属膜は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法またはスパッタリングを利用し、10〜500nm(100〜5,000Å)の厚さにコーティングされうる。
【0071】
また、前記のように、光熱変換層をさらに含む場合、前記光熱変換層と有機半導体層との分離が良好に起こるように、前記光熱変換層と転写層との間に中間層をさらに含むことができる。前記中間層は、熱硬化性高分子または熱可塑性高分子、架橋結合の可能なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシド及びポリウレタンからなる群から選択されたいずれか一つからなりうる。
【0072】
転写のために圧力を利用する場合、パターニングされるパターンに沿って圧力を加え、100mPa〜10kPaの圧力を加えることが好ましい。
【0073】
転写のために電気を利用する場合、印加される電流は、1mA/cm〜10A/cmの大きさであることが好ましい。
【0074】
前記の通りに転写した後、熱処理するステップをさらに含むこともできる。前記熱処理ステップは、当業界に公知の通常の方法と条件とによることができ、特に限定されるものではないが、90〜230℃の温度で行うことが好ましい。
【0075】
前記レセプタ基材としては、当業界に公知の通常の材料を利用でき、特別に限定されるものではない。前記基材は、好ましくは、表面均一性が良好であり、かつ機械的強度が大きいだけではなく、ディスプレイ用に使われるためには、優秀な透光度特性を有する物質である。例えば、シリコン、ガラス及び透明プラスチックのうち、いずれか一つであることが好ましい。
【0076】
前記のようなレセプタ基材上に転写される前記ナノ粒子と有機半導体との混合物層は、有機電界発光素子の電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、及び正孔注入層のうち、いずれか一つの役割を果たすこともあり、有機TFTのチャンネル層及び電極層の役割を果たすこともある。
【0077】
本発明の第3態様は、ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜を提供する。前記ナノ導電性膜は、前記ナノ導電性膜のパターニング法を利用して製造できる。
【0078】
本発明の第4態様は、ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜を具備した平板表示装置を提供する。前記平板表示装置は、有機発光ダイオード(OLED)表示素子のような表示素子を含む。前記ナノ導電性膜は、本発明のナノ導電性膜のパターニング方法によって製造でき、前記平板表示装置は、前記ナノ導電性膜を利用し、当業界に公知の方法により製造できる。
【実施例】
【0079】
以下、具体的な実施例でもって本発明の構成及び効果をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は、単に本発明をさらに明確に理解させるためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0080】
(実施例1:ナノ導電性有機半導体混合物の製造)
ITOのナノ粉末(平均粒径10〜12nm)1gと、分散向上剤としてクロロホルム4gとを30分間撹拌して混合した後、ここに化学式3で表されるペンタセン誘導体1gと、混合溶媒としてトルエン4gとを入れて60分間よく撹拌し、均一なナノ導電性有機半導体混合物を製造した。
【0081】
(実施例2:ナノ導電性有機半導体ドナー基材の製造)
ポリエチレンテレフタレート(PET)のベースフィルム上に、接着アンカー層として4−クロロフェノールをスピンコーティングして均一に塗布した後、常温で1時間乾燥させた。乾燥させた接着アンカー層上に、スピンコーティング法を利用し、実施例1で製造したナノ伝導性有機半導体混合物を均一に塗布することにより、フィルムを製造した。このように製造したコーティングフィルムを100℃の温度で乾燥ボックス内で1時間乾燥させた。
【0082】
前記の通りに乾燥させたドナー基材をガラス基材に密着させた後、150℃で熱転写してパターンをガラス基材に転写させた。前記の通りに転写されたガラス基材を10分間210℃に加熱し、前記化学式3の化合物を熱分解して有機半導体のパターン膜を形成した。
【0083】
(実施例3:フレキシブルディスプレイの製造)
実施例2のように製造したドナー基材をPET基材に密着させた後、SONY社の熱転写プリンタ(モデル名:SVM−75LS)を利用し所望のパターンに熱転写し、ペンタセン誘導体と、ITOのナノ粉末とが混合されたナノ導電性膜をPET基材に選択的に転写させた。この上に、正孔輸送層としてPEDOT/PSSを50nm厚さにコーティングした後、100℃で30分間乾燥した後、前記正孔輸送層の上部に青色発光物質であるスピロフロオレン系の発光高分子で100nm厚の発光層を形成した後、前記発光層の上部にLiFを3nm厚さに蒸着し、前記電子注入層の上部に第2電極としてAlを200nm厚にコーティングし、柔軟性のある有機発光ディスプレイを製作した。
【0084】
その結果、図2に示したように、所望のパターンによって光を放つ柔軟性のあるディスプレイを製造できた。
【0085】
以上のように、本発明の好ましい実施例について詳細に記述したが、本発明が属する技術分野において当業者ならば、特許請求の範囲に定義された本発明の精神及び範囲を外れずに、本発明を多様に変形して実施できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のナノ導電膜のパターニング方法は、例えば、フレキシブルディスプレイ関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図1B】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図1C】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図1D】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図1E】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図1F】本発明のドナーフィルムの一具現例を表した断面図である。
【図2】本発明の実施例によって製造した表示素子の発光の様子を表した写真である。
【符号の説明】
【0088】
110 転写層、
200 ベース基材、
500 接着アンカー層、
510 プライマー層、
520 光熱変換層、
530 中間層、
540 離型層、
600 緩衝層、
700 耐熱潤滑層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、ナノ導電性粒子及び有機半導体を含む前記ベース基材上の転写層と、を有することを特徴とするナノ導電性膜形成用のドナー基材。
【請求項2】
前記ナノ導電性粒子が金属酸化物粒子、金属粒子、半導体粒子、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のドナー基材。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子がITO、IZO、インジウム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、セシウム酸化物、アンチモン酸化物、カドミウム酸化物またはそれらの混合物の粒子であることを特徴とする請求項2に記載のドナー基材。
【請求項4】
前記金属粒子がAu、Ag、Cu、Pd、Pt、およびそれらの合金から選ばれる1種以上の粒子であることを特徴とする請求項2に記載のドナー基材。
【請求項5】
前記半導体粒子が二族元素−六族元素、三族元素−五族元素、または六族元素からなるナノ結晶粒子であることを特徴とする請求項2に記載のドナー基材。
【請求項6】
前記半導体粒子がCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、及びそれらの混合物からなる群から選択された一種以上の粒子であることを特徴とする請求項5に記載のドナー基材。
【請求項7】
前記ナノ導電性粒子の平均粒径が2〜20nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のドナー基材。
【請求項8】
前記有機半導体がペンタセン誘導体;テトラセン誘導体;アントラセン誘導体;ナフタレン誘導体;オリゴチオフェン及びその誘導体;チエノフェン及びその誘導体;オリゴフェニレン及びその誘導体;チオフェニレンビニレン及びその誘導体;ペリレン及びその誘導体;ジオキシポリン及びその誘導体;ルブレン及びその誘導体;コロネン及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸ジイミド及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体;金属含有もしくは非含有のフタロシアニン及びその誘導体;キノジメタン及びその誘導体;ピロメリット酸二無水物及びその誘導体;またはピロメリット酸ジイミド及びその誘導体;であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のドナー基材。
【請求項9】
光熱変換層、接着アンカー層、プライマー層、耐熱潤滑層、中間層、離型層及び緩衝層のうち、少なくとも一層以上の層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のドナー基材。
【請求項10】
(a)ナノ導電性粒子と有機半導体とを溶媒に添加し、有機半導体混合物を製造するステップと、
(b)前記有機半導体混合物をベース基材に塗布及び乾燥させて転写層を形成することにより、ドナー基材を得るステップと、
(c)前記ドナー基材をレセプタ基材上に密着するように配置し、前記ドナー基材にエネルギー源を照射し、前記レセプタ基材上に転写層を転写してパターニングされたナノ導電性膜を得るステップと、
を含むナノ導電性膜のパターニング方法。
【請求項11】
前記ナノ導電性粒子が金属酸化物粒子、金属粒子、半導体粒子、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載のパターニング方法。
【請求項12】
前記金属酸化物粒子がITO、IZO、インジウム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、セシウム酸化物、アンチモン酸化物、カドミウム酸化物またはそれらの混合物の粒子であることを特徴とする請求項11に記載のパターニング方法。
【請求項13】
前記金属粒子がAu、Ag、Cu、Pd、Pt、またはそれらの合金の粒子であることを特徴とする請求項11に記載のパターニング方法。
【請求項14】
前記金属粒子の表面の金属元素が下記化学式1のような置換基で置換されたことを特徴とする請求項13に記載のパターニング方法:
【化1】

ここで、Mは、Au、Ag、Cu、Pd、またはPtを表し;Xは、SまたはCNを表し、Yは、C〜C50の有機置換基を表し;nは、1〜20の整数である。
【請求項15】
前記半導体粒子が二族元素−六族元素、三族元素−五族元素、または六族元素からなるナノ結晶粒子であることを特徴とする請求項11に記載のパターニング方法。
【請求項16】
前記半導体粒子がCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、及びそれらの混合物からなる群から選択された一種以上の粒子であることを特徴とする請求項15に記載のパターニング方法。
【請求項17】
前記(b)ステップの前に、前記ベース基材上に光熱変換層を形成するステップ、接着アンカー層を形成するステップ、プライマー層を形成するステップ、耐熱潤滑層を形成するステップ、中間層を形成するステップ、離型層を形成するステップ、及び緩衝層を形成するステップのうち、一つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載のパターニング方法。
【請求項18】
前記ナノ導電性粒子の平均粒径が2〜20nmであることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載のパターニング方法。
【請求項19】
前記有機半導体がペンタセン誘導体;テトラセン誘導体;アントラセン誘導体;ナフタレン誘導体;オリゴチオフェン及びその誘導体;チエノフェン及びその誘導体;オリゴフェニレン及びその誘導体;チオフェニレンビニレン及びその誘導体;ペリレン及びその誘導体;ジオキシポリン及びその誘導体;ルブレン及びその誘導体;コロネン及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸ジイミド及びその誘導体;ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体;金属含有もしくは非含有のフタロシアニン及びその誘導体;キノジメタン及びその誘導体;ピロメリット酸二無水物及びその誘導体;またはピロメリット酸ジイミド及びその誘導体;であることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載のナノ導電性膜のパターニング方法。
【請求項20】
前記有機半導体が下記化学式3〜化学式7の化合物から選択される一種以上であることを特徴とする請求項10〜19のいずれか1項に記載のパターニング方法:
【化2】

【化3】

式中、X、X、X及びXは、それぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子であり、X、X、X及びXが同時に水素原子ではない;
【化4】

式中、R及びRは、それぞれ独立してC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のアルコキシ基、C〜C40のアリール基、C〜C40のアリールオキシ基、C〜C40のアルケニル基、C〜C40のアルキルアリール基、C〜C40のアリールアルキル基、C〜C40のアリールアルケニル基、またはC〜C40のアルキニル基である;
【化5】

式中、R及びRは、それぞれ独立してC〜C40のアルキル基、C〜C40のシリル基、またはC〜C40のシロキシ基である;
【化6】

式中、Rは、前記化学式3〜化学式6の化合物由来の置換基であり、mは30〜250の整数である。
【請求項21】
前記溶媒が水、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリン、ジメチルホルムアミド、テトラクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、キシレン、エチレングリコール、γ−ブチロラクトンまたはヘキサフルオロイソプロパノールであることを特徴とする請求項10〜20のいずれか1項に記載のパターニング方法。
【請求項22】
ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜。
【請求項23】
ナノ導電性粒子と有機半導体とを含むナノ導電性膜を有する平板表示装置。
【請求項24】
有機発光表示素子であることを特徴とする請求項23に記載の平板表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−351543(P2006−351543A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167517(P2006−167517)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】