説明

ナノ微粒子状酸化亜鉛の調製プロセス

本発明は、水性サスペンジョンの形態又は粉末状固体の形態のナノ微粒子状酸化亜鉛の調製プロセスに関する。さらに、本発明は、サンスクリーン化粧製剤における、プラスチック中、ペイント中、コーティング中の安定化剤としての、及び抗微生物活性成分としての、このように調製された酸化亜鉛粒子及び酸化亜鉛サスペンジョンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性サスペンジョンの形態又は粉末状固体の形態のナノ微粒子状酸化亜鉛の調製プロセスに関する。さらに、本発明は、サンスクリーン化粧製剤における、プラスチック中、ペイント中、コーティング中の安定化剤としての、及び抗微生物活性成分としての、このプロセスにより調製された酸化亜鉛粒子及び酸化亜鉛サスペンジョンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する範囲内では、「粒子」とは、一次粒子を意味するとみなされるものとする。すなわち、集塊粒子ではない。本発明に関連する範囲内では、「ナノ粒子」という用語は、電子顕微鏡法や光散乱法等のような当業者に公知の慣用的方法を利用して決定される平均直径が1〜500nm、好ましくは5〜200nmである粒子を参照すべく用いられる。
【0003】
約100nm未満の粒子サイズを有するナノ微粒子状酸化亜鉛は、潜在的に、サンスクリーン化粧組成物中、透明有機無機ハイブリッド材料中、プラスチック中、ペイント中、及びコーティング中のUV吸収剤として使用するのに特に好適である。それに加えて、UV感受性有機顔料を保護するための、プラスチック中の安定化剤としての、及び抗微生物活性成分としての使用もまた、可能である。
【0004】
UV吸収剤として使用される酸化亜鉛粒子の特に望ましい性質は、いずれの場合も、可視波長領域における可能なかぎり高い透明性及び近紫外光領域(UV−A領域、波長約320〜400nm)における可能なかぎり高い吸収性である。
【0005】
約5nm未満の粒子サイズを有するナノ微粒子状酸化亜鉛は、サイズ量子化効果により吸収端でブルーシフトを呈し(非特許文献1)、したがって、UV−A領域でUV吸収剤として使用するのにそれほど適していない。
【0006】
乾式プロセス及び湿式プロセスによる微細化酸化亜鉛の調製は、当技術分野で公知である。乾式プロセスとして知られる古典的亜鉛焼成法(例えば、非特許文献2)では、広いサイズ分布を有する凝集粒子が生成される。原理的には粉砕プロセスによりサブマイクロメートル領域の粒子サイズを生成することは可能であるが、達成可能な剪断力が非常に小さいので、より小さいナノメートル領域の平均粒子サイズを有するサスペンジョンは、非常に大きな経費をかけた場合にそのような粉末から取得可能であるにすぎない。
【0007】
微細化酸化亜鉛は、主に、沈殿プロセスによる湿式化学法により調製される。水性溶液中で沈殿させると、一般的には、熱的に酸化亜鉛に変換しなければならないヒドロキシド及び/又はカーボネート含有材料が生成される。この場合の熱的後処理は、微細化特性に悪影響を及ぼす。なぜなら、この処理時、粒子は、粉砕により不完全に再細粒化されうるにすぎないマイクロメートルサイズの凝集体の形成をもたらす焼結プロセスに付されるからである。
【0008】
(特許文献1)には、沈殿反応により調製されるナノ微粒子状酸化亜鉛が記載されている。このプロセスでは、ナノ微粒子状酸化亜鉛は、アルカリ沈殿法により酢酸亜鉛溶液から出発して調製される。遠心分離された酸化亜鉛は、メチレンクロリドを添加することによりゾルを生成すべく再分散可能である。このようにして調製された酸化亜鉛サスペンジョンは、良好な長期安定性を有していないという欠点を有する。
【0009】
(特許文献2)には、多くとも15nmの粒子直径を有しかつゾルを生成すべく再分散可能であるナノ微粒子状酸化亜鉛を含む酸化亜鉛ゲルが記載されている。この場合、アルコール中又はアルコール/水混合物中で亜鉛化合物の塩基加水分解により調製された固体は、ジクロロメタン又はクロロホルムを添加することにより再分散される。この場合の欠点は、水中又は水性分散媒中で安定なサスペンジョンが得られないことである。
【0010】
Lin Guo及びShihe Yangによる(非特許文献3)には、ポリビニルピロリドンを用いた酸化亜鉛ナノ粒子の表面コーティングが記載されている。この場合の欠点は、ポリビニルピロリドンでコーティングされた酸化亜鉛粒子を水中に分散できないことである。
【0011】
(特許文献3)には、表面改質が有機酸を用いたコーティングを含む表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛が記載されている。
【0012】
(特許文献4)には、ポリアスパラギン酸の存在下で生成された表面改質ナノ微粒子状金属酸化物が開示されている。
【0013】
(特許文献5)には、表面改質がオリゴエチレングリコール酸又はポリエチレングリコール酸を用いたコーティングを含む表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛が記載されている。これらの生成物のいくつかは、製造するのに非常にコストがかかり、不十分な皮膚適合性しか有していない可能性があるので限られた範囲内で化粧用途に適するにすぎない。
【0014】
(特許文献6)には、サンスクリーン化粧製剤における表面処理酸化亜鉛の使用が記載されており、また、ポリアクリレートを用いた表面処理も開示されている。ポリアクリレートで処理された酸化亜鉛の調製に関する詳細な内容は、見受けられない。
【0015】
(特許文献7)には、ナノ粒子濃縮物の調製プロセスが記載されている。このプロセスでは、10〜200nm、好ましくは25〜150nm、特定的には50〜100nmの平均直径を有するナノ粒子の水性もしくはアルコール性のサスペンジョン(適切であれば塩を含有する)は、少なくとも1回の限外濾過に付され、それにより、希薄透過液(適切であれば塩を含む)と、使用したナノ粒子の少なくとも90%を含む保持液と、に分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許第19907704号明細書
【特許文献2】国際公開第00/50503号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/052327号パンフレット
【特許文献4】独国特許出願公開第102004020766号明細書
【特許文献5】欧州特許第1455737号明細書
【特許文献6】国際公開第98/13016号パンフレット
【特許文献7】独国特許第19950496号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】L. Brus, J. Phys. Chem. (1986), 90, 2555 to 2560
【非特許文献2】Gmelin volume 32, 8th edition, supplementary volume, p. 772 ff.
【非特許文献3】Chem. Mater. 2000, 12, 2268 to 2274 "Synthesis and Characterization of Poly(vinylpyrrolidone)-Modified Zinc Oxide Nanoparticles"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
可視波長領域における可能なかぎり高い透明性及び近紫外光領域(UV−A領域、波長約320〜400nm)における可能なかぎり高い吸収性を同時に有する表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子及びその水性サスペンジョンの調製を可能するプロセスの必要性が存在することは、先行技術についての以上の説明から明らかである。さらなる目的は、酸化亜鉛をベースとして可能なかぎり低い濃度の塩、例えば塩化ナトリウム及び可能なかぎり低い濃度の吸着されてない遊離分散剤を含む酸化亜鉛粒子のサスペンジョンを提供することにある。
【0019】
したがって、本発明の他の目的は、可視波長領域における可能なかぎり高い透明性及び近紫外光領域(UV−A領域、波長約320〜400nm)における可能なかぎり高い吸収性を同時に示しかつ化粧用途との関連では、特定的にはUV防御の分野では良好な皮膚適合性により特徴付けられる表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子及びその水性サスペンジョンを提供することであった。本発明のさらなる目的は、感光性材料、特にプラスチックの安定化のための改良されたUV防御剤を提供することであった。他の目的は、酸化亜鉛をベースとして可能なかぎり低い濃度の塩、例えば塩化ナトリウム等を含むそのようなナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の水性サスペンジョンを提供することであった。水性サスペンジョンは、化粧製剤の製造にできるかぎり直接使用可能でなければならない。すなわち、化粧上許容されない物質を存在したとしてもごく少ない化粧上許容される量で含むものでなければならない。さらに、サスペンジョンは、可能なかぎり高い固形分含有率を有することが望ましい。
【0020】
特定的には、酸化亜鉛粒子は、以下の条件、すなわち、
1) 450nmの波長における透過率(T450nm)が少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%であること、
2) 360nmの波長における透過率(T360nm)が多くとも30%、好ましくは多くとも25%であること、
を満たさなければならない。商ln(T360nm)/ln(T450nm)は、少なくとも7、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも13でなければならない。
【0021】
これらの透過率値は、例えば、欧州特許出願公開第1892218号明細書の段落[0081]に記載の方法に従って決定可能である。例えば、本発明に従って調製された2gの酸化亜鉛粒子を最初に三本ロール機を用いて3gのヒマシ油中で十分に粉砕し分散させる。ドクターブレードを利用して、得られたサスペンジョンから約5〜10μmの厚さのフィルムを作製し、UV−VIS分光計(Hitachi U 3010)を用いて、その透過率を280〜800nmの範囲内で測定する。
【0022】
化粧用途との関連では、特定的にはUV防御分野では、酸化亜鉛粒子及びその表面改質に用いられる物質は、良好な皮膚適合性により特に特徴付けられるものでなければならない。さらに、表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧製剤への組込みが容易でなければならず、かつ得られた製剤は、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも3ヶ月間、特に好ましくは少なくとも6ヶ月間にわたり安定でなければならない。このことは、粒子によるUV吸収を顕著に低減する可能性のある酸化亜鉛粒子の凝集がこの期間中に本質的に起こらないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、以下の工程、すなわち、
a) 水と少なくとも1種の亜鉛塩とを含む溶液(溶液1)及び水と少なくとも1種の強塩基とを含む溶液(溶液2)を調製する工程、ただし、2つの溶液1及び2の少なくとも一方は、少なくとも1種のポリアクリレートを含む、
b) 工程a)で調製された溶液1及び2を混合する工程、この時、表面改質ナノ微粒子状粒子が形成されて溶液から沈殿し水性サスペンジョンが形成される、
c) 工程b)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の水性サスペンジョンを濃縮する工程、ただし、工程b)で得られて工程c)に搬送されるサスペンジョンのpHは、9〜14の範囲内である、
d) 工程c)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の濃縮水性サスペンジョンを場合により精製する工程、
e) 工程d)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子を場合により乾燥させる工程、及び
f) 工程e)で得られた乾燥させた表面改質ナノ微粒子状粒子を場合により熱的に後処理する工程、及び
g) 工程 f)で得られた粒子を場合により粉砕する工程、
を含む表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の調製プロセスにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】膜濾過による濃縮について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
a) 溶液の調製
溶液1
溶液1は、水と少なくとも1種の亜鉛塩とを含む。溶液1は、さらなる成分を含みうる。好ましい亜鉛塩は、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び硝酸亜鉛から選択され、塩化亜鉛は、特に好ましい。溶液1中の亜鉛塩の濃度は、一般的には0.05〜2mol/lの範囲内、好ましくは0.2〜1.5mol/l、特に好ましくは0.3〜1.0mol/lの範囲内である。本発明の一実施形態では、亜鉛塩の水性溶液のpHは、3〜6、好ましくは4〜5の範囲内の値に混合前に調整される。本発明の一実施形態では、亜鉛塩の水性溶液の温度は、40℃〜80℃、好ましくは50℃〜70℃、特に好ましくは55℃〜65℃の範囲内の値に混合前に調整される。
【0026】
溶液2
溶液2は、水と少なくとも1種の強塩基とを含む。溶液2中に存在する強塩基は、一般的には、その濃度に依存して水性溶液中で約8〜約13、好ましくは約9〜約12.5のpHを生成可能である任意の所望の物質でありうる。これは、例えば、金属酸化物又は金属水酸化物さらにはアンモニア又はアミンでありうる。好ましいのは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物、又はアンモニアの使用である。特に好ましいのは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアの使用である。本発明の一実施形態では、アンモニアはまた、プロセス工程a)及び/又はb)の時にウレアの熱分解を介してin situで生成可能である。
【0027】
プロセス工程a)で調製される溶液2中の強塩基の濃度は、好ましくは0.1〜4mol/l、特に好ましくは0.4〜3mol/l、特定的には0.6〜2mol/lの範囲内のヒドロキシルイオン濃度が溶液2中で確立されるように選択される。好ましくは、溶液2中のヒドロキシルイオン濃度(c(OH))は、溶液1中の亜鉛イオン濃度(c(Zn2+))の約2倍になるように選択される。例えば、約0.2mol/lの亜鉛イオン濃度を有する溶液1の場合、好ましくは、約0.4mol/lのヒドロキシルイオン濃度を有する溶液2が使用される。
【0028】
ポリアクリレート
本発明によれば、ポリアクリレートとは、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、メサコン酸、及びイタコン酸をベースとするポリマーのことである。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、又はそれらの混合物をベースとするポリアクリレートが使用される。
【0029】
ポリアクリレート中の少なくとも1種の共重合されたα,β−不飽和カルボン酸の分率は、好ましくは20〜100mol%の範囲内、さらに好ましくは50〜100mol%の範囲内、特に好ましくは75〜100mol%の範囲内である。
【0030】
ポリアクリレートは、遊離酸の形態で、さもなければ部分中和又は完全中和されてそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩の形態で使用可能である。しかしながら、それぞれのポリアクリレートと、有機塩基のトリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ジエチレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、又はテトラエチレンペンタミンと、の塩として使用することも可能である。
【0031】
少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸以外に、ポリアクリレートはまた、共重合された形態でさらなるコモノマーを含みうる。さらなる好適なコモノマーは、例えば、以上に挙げたカルボン酸のエステル、アミド、及びニトリル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、モノメチルマレエート、ジメチルマレエート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、及び最後に挙げた塩基性モノマーとカルボン酸又は鉱酸との塩、さらには塩基性の(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドの四級化生成物である。
【0032】
さらなる好適な共重合性コモノマーは、アリル酢酸、ビニル酢酸、アクリルアミドグリコール酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、又はアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、さらにはホスホン酸基を含むモノマー、例えば、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、又はアクリルアミドメタンプロパンホスホン酸である。酸基を含むモノマーは、遊離酸基の形態でさらには部分的にもしくは完全に塩基で中和された形態で重合に使用可能である。
【0033】
さらなる好適な共重合性化合物は、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、N−ビニルピロリドン、イソブテン、又はスチレン、さらには1個超の重合性二重結合を有する化合物、例えば、ジアリルアンモニウムクロリド、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニリデンウレア、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、又はN,N’−メチレンビスメタクリルアミド等である。
【0034】
当然ながら、該コモノマーの混合物を使用することも可能である。例えば、50〜100mol%のアクリル酸と0〜50mol%の1種以上の、以上に挙げたコモノマーとの混合物は、本発明に係るポリアクリレートの調製に好適である。
【0035】
本発明に係るプロセスに好適な多くのポリアクリレートは、Sokalan(登録商標)(BASF)という名称で市販されている。
【0036】
本発明によれば、ポリアクリレートは、溶液1もしくは2の一方に又は溶液1及び2の両方に存在可能である。好ましくは、ポリアクリレートは、強塩基の溶液(溶液2)中に存在する。
【0037】
プロセス工程a)で調製された溶液1及び/又は2中のポリアクリレートの濃度は、好ましくは0.1〜20g/lの範囲内、特に好ましくは0.5〜10g/lの範囲内、さらに好ましくは1〜8g/lの範囲内、特定的には4〜6g/lの範囲内である。ポリアクリレートは、当然ながら、好ましくは、所望の温度における水へのその溶解度で以上に挙げた濃度の設定が可能になるように選択される。
【0038】
本発明に係るプロセスで使用されるポリアクリレートの分子量Mは、一般的には800〜250000g/molの範囲内、好ましくは1000〜100000g/molの範囲内、特に好ましくは1000〜20000g/molの範囲内、特定的には1000〜10000g/molの範囲内である。本発明の特に好ましい一実施形態では、本発明に係るプロセスで使用されるポリアクリレートの分子量Mは、1000〜5000g/molの範囲内である。
【0039】
b) 混合及び沈殿
本発明に係るプロセスの好ましい実施形態は、純粋なアクリル酸から得られたポリアクリレートの存在下で酸化亜鉛の沈殿が行われるものである。本発明の特に好ましい実施形態では、ポリアクリル酸のナトリウム塩であるSokalan(登録商標)PA15(BASF Aktiengesellschaft)が使用される。
【0040】
工程b)は、溶液1及び2を混合することを含む。プロセス工程b)での2つの溶液1及び2(水性亜鉛塩溶液及び水性塩基溶液)の混合は、好ましくは40℃〜80℃の範囲内、さらに好ましくは50℃〜70℃の範囲内、特に好ましくは55℃〜65℃の範囲内、特定的には58℃〜62℃の範囲内の温度で行われる。したがって、2つの溶液1及び2が混合前にすでにこれらの範囲内の温度に調整されていれば有利である。
【0041】
使用される亜鉛塩に依存して、混合は、3〜13の範囲内のpHで実施可能である。好ましくは、混合時のpHは、7〜13の範囲内、さらに好ましくは8〜12の範囲内である。
【0042】
プロセス工程b)での混合は、例えば、1種以上の以上に挙げた亜鉛塩の水性溶液(溶液1)を、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムとの混合物の水性溶液(溶液2)と、組み合わせることにより実施可能である。
【0043】
他の選択肢として、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種の亜鉛塩との混合物の水性溶液(溶液1)を、少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムの水性溶液(溶液2)と、組み合わせることも可能である。
【0044】
さらに、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種の亜鉛塩との混合物の水性溶液(溶液1)を、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムとの混合物の水性溶液(溶液2)と、組み合わせることも可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、プロセス工程b)での混合は、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムとの混合物の水性溶液(溶液2)を、少なくとも1種の亜鉛塩の水性溶液(溶液1)に計量添加することにより、あるいは少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムの水性溶液(溶液2)を、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種の亜鉛塩との混合物の水性溶液(溶液1)に計量添加することにより、行われる。
【0046】
特に好ましくは、少なくとも1種のポリアクリレートと少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムとの混合物の水性溶液(溶液2)を、少なくとも1種の亜鉛塩、例えば塩化亜鉛又は硝酸亜鉛の水性溶液(溶液1)に添加することが、プロセス工程b)で行われる。これとの関連では、亜鉛塩の溶液(溶液1)の少なくとも一部、好ましくは全部を撹拌反応器内に最初に導入し、最初に導入された亜鉛塩溶液にポリアクリレートのアルカリ溶液(溶液2)を撹拌しながら添加することが特に好ましい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、ポリアクリレートとアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウム、特に水酸化ナトリウムとの混合物の水性溶液の温度は、混合前、40〜80℃の範囲内、特に好ましくは50〜70℃の範囲内、特定的には55〜65℃の範囲内である。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、亜鉛塩、特に塩化亜鉛の水性溶液の温度は、混合前、40〜80℃の範囲内、特に好ましくは50〜70℃の範囲内、特定的には55〜65℃の範囲内である。
【0049】
工程b)は、好ましくは、早くても、混合される溶液の温度が多くとも8℃、好ましくは多くとも6℃、特定的には多くとも4℃異なる時点で開始される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、プロセスは、温度T1を有する少なくとも1種の亜鉛塩の溶液1が最初に導入されかつ温度T2を有する少なくとも1種の強塩基の溶液2が計量導入される反応空間内でプロセス工程b)が行われるように実施される。ただし、2つの溶液1又は2の少なくとも一方、好ましくは溶液2は、少なくとも1種のポリアクリレートをさらに含み、温度T1及びT2は、40〜80℃の範囲内、特に好ましくは50〜70℃の範囲内、特定的には55〜65℃の範囲内であり、かつ多くとも8℃、好ましくは多くとも6℃、さらに好ましくは多くとも4℃、特定的には多くとも2℃異なる。
【0051】
酸化亜鉛の沈殿が行われる反応器内に溶液1が位置する場合、好ましくは、工程b)の開始時に溶液2が溶液1に添加される。酸化亜鉛の沈殿が行われる反応器内に溶液2が位置する場合、好ましくは、工程b)の開始時に溶液1が溶液2に添加される。酸化亜鉛の沈殿が行われる反応器内に溶液1が位置しかつ工程b)の開始時に溶液2が添加されるであれば、特に好ましい。本発明によれば、溶液をすばやく一体化させることが好ましい。溶液2への溶液1の添加又は溶液1への溶液2の添加は、好ましくは0.1〜60分間、好ましくは1〜30分間、特に好ましくは5〜15分間かけて行われる。計量添加前、計量添加時、又は計量添加後、反応器内容物をアジテートすることがさらに好ましく、その際、振盪、撹拌、ガスバブルの通過により又は他の慣用技術を用いてアジテーションを行うことが可能であり、撹拌は特に好ましい。
【0052】
工程b)の時、表面改質ナノ微粒子状粒子が形成されて溶液から沈殿し水性サスペンジョンが形成される。溶液2への溶液1の全添加又は溶液1への溶液2の全添加の後、好ましくは撹拌しながら、好ましくは10分間〜6時間の範囲内のさらなる時間にわたり、特に好ましくは30分間〜4時間の範囲内の時間にわたり、特定的には1時間〜3時間の範囲内の時間にわたり、混合を継続する。
【0053】
亜鉛塩の溶液が撹拌沈殿反応器内に最初に導入されかつポリアクリレートのアルカリ溶液が計量導入されるプロセスの特に好ましい実施形態では、得られる混合物のpHは、酸性領域からアルカリ性領域にシフトする。好ましくは、工程b)の終了時に得られる混合物のpHは、9〜11の範囲内である。
【0054】
本発明に係るプロセスの好ましい実施形態は、プロセス工程a)〜f)の少なくとも1つが連続的に実施されるものである。連続操作手順の場合、プロセス工程b)は、好ましくは管型反応器内で実施される。
【0055】
本発明の他の実施形態では、プロセスは、プロセス工程b)が温度T1の第1の反応空間内で行われるように連続的に実施される。ただし、少なくとも1種の亜鉛塩の水性溶液1及び少なくとも1種の強塩基の水性溶液2は、連続的に供給され、2つの溶液1及び2の少なくとも一方は、少なくとも1種のポリアクリレートを含む。形成されたサスペンジョンは、この第1の反応空間から連続的に取り出されて、温度T2で加熱するための第2の反応空間に移され、この時、表面改質ナノ微粒子状粒子が形成される。原則として、連続プロセスは、温度T2が温度T1超になるように実施される。
【0056】
c) 濃縮
本発明に係るプロセスの工程c)は、工程b)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の水性サスペンジョンの濃縮である。本発明に関連する範囲内では、濃縮とは、サスペンジョン中の酸化亜鉛濃度の増大を意味するとみなされる。本発明の好ましい実施形態では、工程b)で得られたサスペンジョンは、工程c)の前に他の撹拌容器に移される。すなわち、プロセス工程b)及びc)は、異なる反応空間内で行われる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、工程c)は、膜濾過、特に限外濾過(UF)であるか又はそれを含む。膜濾過の方法は、当業者に公知である。膜濾過は、篩効果に基づきかつ主に粒子サイズに依存する圧力駆動式材料分離プロセスである。限外濾過膜は、通常、1nm〜100nmの細孔サイズを有し、それにより、300ダルトン〜500000ダルトン(500kD)の分子量を有する化合物を保持可能である。したがって、このプロセスは、典型的には、バイオ分子、細菌、ウイルス、ポリマー、コロイド粒子、及び糖分子の保持に好適である。膜濾過膜は、特にその公称分画分子量(MWCO)により記述される。MWCOとは、通常、膜が90%超の保持率を有するときの最小分子量のことである。ただし、保持率は、{1−[(透過液中の濃度)/(保持液中の濃度)]}として定義される。本発明に係るプロセスでは、酸化亜鉛に対しては可能なかぎり不透過性でありかつポリアクリレート及び得られたサスペンジョン中に存在する塩、特にNaClに対しては可能なかぎり透過性であるように膜を選択することが特に重要である。多くの場合、分離結果は、分離限界に影響されるだけでなく、そのほかに膜と粗製溶液との相互作用にも影響される。多くの場合、分離結果は、分離限界に影響されるだけでなく、そのほかに膜と粗製溶液との相互作用にも影響される。本発明の目的では、2〜500kDの範囲内、好ましくは200kDまでの分画値を有する膜を使用することが可能である。他の選択肢として、分画値はまた、膜細孔の細孔サイズの形で引用可能である。本発明の目的では、3〜200ナノメートルの範囲内の細孔サイズを有する膜を有利に使用することが可能である。膜濾過では、ポリマー(例えば、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート)、セラミックス(例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム/二酸化チタン)、金属、炭素、又はそれらの組合せのような種々の有機材料又は無機材料よりなる主に非対称的に構造化された又は複合的に製造された多孔性膜が好適である。材料は、計画された濾過温度(プロセス温度PT)及びサスペンジョンのpHで安定であり、かつ膜の分画値は、最小ナノ粒子の直径未満であることが保証されなければならない。機械的理由により、分離層は、一般的には、分離層と同一の材料さもなければ異なる材料で作製された単層又は多層の多孔性サブ構造体に貼付される。
【0058】
可能な材料の組合せの例は、以下の表1に挙げられる。
【表1】

【0059】
膜は、保持液(ZnO含有)と透過液(低ZnO濾液、好ましくは無ZnO濾液)との分離を可能にする加圧ハウジングが利用可能であるフラット形状、管形状、マルチチャネルエレメント形状、キャピラリー形状、又は渦巻き形状で使用可能である。例えば、以下の膜が使用可能である。
【表2】

【0060】
本発明の好ましい実施形態では、保持液側に加えられる圧力は、透過液側よりも高く、かつ保持液側と透過液側との間の圧力差(膜間差圧(TMP)としても参照される)は、好ましくは0.2〜10bar、特に好ましくは0.4〜6,bar、特定的には0.5〜3barである。これとの関連では、2つ以上のモジュールを逐次結合する場合は常に、透過液圧力を上昇させることにより各モジュールの膜間差圧を減少させて適合化することが可能である。膜表面上への酸化亜鉛の厄介な被覆層の蓄積(これは透過液流量の有意な減少をもたらす)を回避するために、循環ポンプ送入、膜間の膜ユニット又は撹拌ユニットの機械的アジテーションにより、膜とサスペンジョンとの間の相対速度0.5〜25m/sを発生させる。被覆層の蓄積の防止又は蓄積した被覆層の破壊のためのさらなる選択肢は、いわゆる逆洗、すなわち、膜を貫通する流動方向の逆転である。そのような逆転は、圧力比を逆転することにより、すなわち、より高い圧力をこれまでの透過液側に加えかつより低い圧力を保持液側に加えることにより達成される。操作温度(プロセス温度)は、膜の安定性及び合成溶液の温度安定性に依存する。一般的には、温度を高くすると透過液流量が多くなる。操作温度は、20℃〜100℃でありうるが、ポリマー膜では温度を20〜70℃の範囲内に保持することがより有利である。本発明に係るプロセスの過程では、プロセス温度は、好ましくは30〜70℃の範囲内、特に好ましくは40〜60℃の範囲内である。本発明に係るプロセスの目的では、膜は、例えば、ディスクモジュール、渦巻き状モジュール、管状モジュール、キャピラリーモジュール、又は中空繊維モジュールに配置可能である。達成可能な透過液流量は、使用される膜のタイプ及び膜の形状、処理条件、供給物組成すなわち本質的にはZnO濃度及びpHに大きく依存する。流量は、典型的には50〜500kg/(m2*h)である。
【0061】
表3は、膜濾過に対する個別パラメーターの典型的な値及び好ましい値を示している。
【表3】

【0062】
プロセスは、サスペンジョンを膜モジュールに反復して通すことによりバッチ方式で非連続的に実施可能であるか、又は1つ以上の逐次結合された供給ステージ及び流出ステージに1回通すことにより連続的に実施可能である。本発明の好ましい実施形態では、濃縮は、フェドバッチプロセスとして実施される。本発明の好ましい実施形態では、工程c)における酸化亜鉛粒子の工程b)で得られたサスペンジョンの酸化亜鉛濃度は、酸化亜鉛重量%換算で、5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%、特定的には15〜25重量%の範囲内の値に膜濾過により増大される。濃縮係数MKは、開始濃度及び所望の最終濃度から計算可能である。酸化亜鉛濃度は、当業者に公知の任意の方法により決定可能である。元素分析により酸化亜鉛濃度を決定することが好ましい。工程c)では、サスペンジョン中の酸化亜鉛濃度が増大されるだけでなく、そのほかに溶存成分の絶対量が低減される。特定的には、溶存するNaCl及びポリアクリレートの絶対量が低減される。酸化亜鉛は全部が保持液中に残留するので、溶存成分、特にNaClの枯渇率は、本質的には酸化亜鉛の開始濃度及び最終濃度に依存する。酸化亜鉛の開始濃度及び最終濃度に依存する以外に、遊離ポリアクリレート、すなわち、酸化亜鉛に吸着されていないポリアクリレートの枯渇の程度はまた、サスペンジョンのpHに著しく依存する。高pH値及び高塩濃度は、酸化亜鉛粒子の表面上に吸着されたポリアクリレートと非吸着すなわち遊離のポリアクリレートとの間の収着平衡を遊離のしたがって分離可能なポリアクリレートの方にシフトする。酸化亜鉛により吸着されたポリアクリレートは、本質的には膜濾過により分離除去されない。本発明によれば、調製プロセスでは、乾燥時に凝集体形成の危険性があるので、有機炭素の含有率として測定される非吸着ポリアクリレートの量が特定の量を超えるのであれば、また酸化亜鉛を基準にした塩含有率として測定されるサスペンジョン中の塩の量が特定の量を超えるのであれば、不利である。本発明によれば、得られるサスペンジョンに関しては、透過液中の酸化亜鉛の量が可能なかぎり少ないのであれば有利である。得られたサスペンジョンが乾燥に付される場合、遊離すなわち非吸着のポリアクリレート及び塩の量が可能なかぎり少ないのであれば有利である。この少ないポリアクリレート担持量は、好ましくは、特定のpHを設定することにより達成される。工程b)で得られて工程c)に送られる酸化亜鉛粒子のサスペンジョンのpHは、9〜14の範囲内である。工程b)で得られて工程c)に送られるサスペンジョンの温度は、30〜80℃の範囲内である。本発明によれば、工程b)で得られて35〜45℃、好ましくは約40℃の処理温度で工程c)に送られる酸化亜鉛粒子のサスペンジョンのpHは、有利には10〜13、さらに好ましくは11.5〜12.7の範囲内の値、特に好ましくは11.7〜12.5の値に調整される。処理温度が55〜65℃の範囲内、好ましくは約60℃である場合、pHは、好ましくは9.8〜13、さらに好ましくは10.8〜12.5、それよりもさらに好ましくは11.5〜12.2の範囲内の値、特に好ましくは約11.9の値に調整される。これとの関連では、pHがそれぞれの温度に依存することに留意されたい。すなわち、使用される塩基の濃度が同一であっても、pH値は温度と共に変化しうる。以上に挙げたpH値は、いずれの場合もサスペンジョンを基準にして、約0.005〜5.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%、特に好ましくは0.1〜1.0重量%のNaOH濃度に対応する。pH値を高くすると酸化亜鉛が例えばNaZn(OH)として溶解される望ましくない影響が現れる。したがって、工程c)は、一般的には20℃〜80℃の範囲内、好ましくは30℃〜70℃の範囲内、特に好ましくは35℃〜65℃の範囲内、特定的には40℃〜60℃の範囲内の温度(処理温度)で実施される。一般的には、工程c)の開始時及び終了時のサスペンジョンのpHは、工程c)が水の蒸発を含まなければ、本質的に同一である。水が蒸発するとヒドロキシルイオンの濃度が増大し、したがって、pHが増大する。本発明のさらなる実施形態では、工程b)の後で得られるサスペンジョンの酸化亜鉛濃度は、単に水を蒸発させることにより又はすでに記載した膜濾過に加えて水を蒸発させることにより増大される。水の蒸発方法は、当業者に公知である。本発明の一実施形態では、水は、減圧下で同時に高温で蒸発させる。本発明の好ましい実施形態では、工程b)で得られた酸化亜鉛粒子のサスペンジョンの酸化亜鉛濃度は、酸化亜鉛重量%換算で、10〜70重量%、特に好ましくは20〜65重量%、特定的には30〜60重量%の範囲内の値に工程c)で調整される。
【0063】
d) 精製
本発明に係るプロセスは、好ましくは工程d)を含む。本発明に係るプロセスの工程d)は、工程c)で得られた表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の濃縮水性サスペンジョンのさらなる精製である。この精製は、酸化亜鉛粒子に吸着されていない塩、特にNaCl及びポリアクリレートのさらなる分離を含む。この分離は、工程c)と同様に、好ましくは膜分離プロセスを利用して行われる。特に好ましくは、工程d)は、透析濾過であるか又はそれを含む。透析濾過は、濾過により得られた量の透過液の液相(この中に塩及び遊離ポリアクリレートが位置する)がほぼ同一量の液相により連続的又は段階的に置き換えられる膜濾過の特別な場合である。したがって、本発明によれば、サスペンジョンは、好ましくは、最初に、膜濾過により工程c)で濃縮され、次に、工程d)で透析濾過により塩及び非吸着(遊離)ポリアクリレートからかなり分離される。工程c)及びd)は、同一の装置で又は異なる装置いわゆる分離モジュールで実施可能である。透析濾過の技術自体は、当業者に公知である。塩、特にNaClの除去の程度は、濃縮係数MK及び透析濾過係数MAの好適な選択により調整可能である。これとの関連では、濃縮係数MKとは、濃縮の後及び前のサスペンジョン中の酸化亜鉛含有率の商のことであり、透析濾過係数MAとは、透過液の分離除去量及び保持液の量の商のことである。全体に存在するポリアクリレートの量は、工程c)(濃縮)及びd)(透析濾過)の時のpH並びに塩濃度に特に依存する。高pH値及び高塩濃度は、ZnOにより吸着されたポリアクリレートと遊離のポリアクリレートと間の収着平衡を遊離のしたがって分離可能なポリアクリレートの方にシフトする。ZnOにより吸着されたポリアクリレートは、本質的には膜濾過により分離除去されない。本発明の一実施形態では、工程d)の透析濾過は、水を用いて実施される。使用可能な水は、好ましくは軟水形で存在する地元の飲料水又は脱塩水である。本発明の好ましい実施形態では、工程d)の透析濾過は、少なくとも2つの異なる液相を用いて実施される。本発明の一実施形態では、使用される交換相は、完全脱塩水である。本発明に係るさらなる実施形態では、使用される交換相は、特定の地元の飲料水条例に対応する飲料水である。液相は、特に好ましくは、可能なかぎり低い含有率の二価カチオン、例えばマグネシウムイオン又はカルシウムイオンを有する水、好ましくは飲料水である。本発明の一実施形態では、飲料水は、本発明に係るプロセスでそれを使用する前に、そのような二価イオンを枯渇させるための慣用的方法に付される(軟水化)。交換相の塩含有率は、当然ながら、保持液の液相の可能なかぎり低い塩含有率を決定する。工程c)で得られた濃縮酸化亜鉛サスペンジョンを、最初に、第1の液相としてアルカリ溶液(水酸化物溶液)、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を用いた第1の透析濾過に付し、次に、第2の液相として水を用いた第2の透析濾過に付すことが、本発明の特に好ましい実施形態である。どれだけ多くの透析濾過が実施されるかに関係なく、水を用いた最後の透析濾過を行うことが特に好ましい。工程c)が水の蒸発を含まない場合、工程c)で得られて工程d)に搬送される酸化亜鉛粒子の濃縮サスペンジョンのpHは、工程c)に供給されるサスペンジョンのpHにほぼ等しい(以上の濃縮(工程c)の項を参照されたい)。pH値を高くすると酸化亜鉛が例えばNaZn(OH)として溶液中に進入する望ましくない影響が現れる。精製は、好ましくは、濃縮と同等又は少なくとも類似の条件(温度、圧力、pH)下で実施される。アルカリ溶液を用いた透析濾過は、好ましくは、アルカリ溶液が、濾過されるサスペンジョンと同一のpHを有するように実施される。中性pHの水を用いた透析濾過は、濾過されるサスペンジョンのpHの低下をもたらす。アルカリ溶液を用いた透析濾過に続いて水を用いた透析濾過を行うと、それから得られる透析濾過酸化亜鉛サスペンジョンは、40℃〜60℃の範囲内の温度で、8〜13、特に好ましくは9〜12の範囲内、特定的には9.5〜11.5の範囲内、最も好ましくは10〜11の範囲内のpHを有するようになる。約40℃の処理温度では、工程d)の終了時に得られるサスペンジョンのpHは、好ましくは9.6〜12.0の範囲内、さらに好ましくは10.0〜11.6の範囲内、特に好ましくは10.4〜11.2の範囲内である。約60℃の処理温度では、工程d)の終了時に得られるサスペンジョンのpHは、好ましくは9.2〜11.6の範囲内、さらに好ましくは9.6〜11.2の範囲内、特に好ましくは10.0〜10.8の範囲内である。pHをこれらの範囲内の値に低下させると、吸着ポリアクリレートと非吸着(「遊離」)ポリアクリレートとの間の平衡は、吸着ポリアクリレートの方にシフトする。本発明によれば、吸着ポリアクリレートの方に平衡をシフトすることが有利である。工程d)で生成された精製濃縮サスペンジョンは、好ましくは撹拌貯蔵容器内に捕集される。酸化亜鉛サスペンジョンからの望ましくない塩、例えばNaCl等の枯渇の程度は、酸化亜鉛濃度及び透析濾過係数MAに依存する。MAは、以下の商である。
【0064】
MA=分離除去透過液の質量/保持液の質量
【0065】
好ましくは、MAは、少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも4、特に好ましくは少なくとも5である。酸化亜鉛サスペンジョン中のNaClの量は、工程d)の時に、工程c)の終了時の酸化亜鉛サスペンジョン中のNaClの量を基準にして、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも99%低減される。特定的には、NaClの量は、少なくとも99.5%低減される。本発明の一実施形態では、サスペンジョン中に依然として存在するNaClの量は、100グラムの酸化亜鉛あたりのNaCl換算で、好ましくは2.0〜0.005グラムの範囲内、さらに好ましくは1.0〜0.01グラムの範囲内、特に好ましくは0.5〜0.05グラムの範囲内である。液体交換相が6〜11、好ましくは7〜10の範囲内のpHを有する場合、ポリアクリレートの枯渇率は、11超のpH値のときよりも少ない。本発明によれば、以下の商
ポリアクリレート担持率=有機炭素の質量/酸化亜鉛の質量
により表される酸化亜鉛粒子のポリアクリレート担持率を0.2%〜1%の範囲内の値に調整することが有利である。工程d)の終了時、サスペンジョン中のポリアクリレートの量の尺度である有機炭素の量は、100グラムの酸化亜鉛あたり、好ましくは2.0〜0.01グラムの範囲内、さらに好ましくは1.0〜0.05グラムの範囲内、特に好ましくは0.7〜0.1グラムの範囲内である。
【0066】
e) 乾燥
好ましくは、本発明に係るプロセスは、工程e)を含む。本発明に係るプロセスの工程e)は、工程d)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の乾燥である。原理的には、工程e)では、公知の乾燥技術はすべて、使用可能である。好ましくは、工程e)は、スプレー乾燥であるか又はそれを含む。スプレー乾燥は、対流乾燥の部類に属する。液相を気化させるのに必要なエネルギーは、使用される乾燥ガスを介して材料に供給される。生成物のスプレー処理は、熱伝達及び物質移動の界面の増大を引き起こし、したがって、乾燥プロセスの速度の増大を引き起こす。サスペンジョン中に存在する酸化亜鉛粒子は、微細なミストが得られるようにノズルを介して又は高速回転アトマイザーディスクを利用して幅広円筒状容器の上端でスプレーされるが、ノズルを介してスプレーすることが好ましい。スプレー速度は、好ましくは毎時10〜1000kg、さらに好ましくは毎時100〜500kg、特に好ましくは毎時150〜400kgである。好ましくは、アトマイゼーションは、二材料ノズルを介して達成される。他の選択肢として、本発明に係るプロセスでのアトマイゼーションは、加圧ノズル、静電アトマイザー、超音波アトマイザー、及び多材料ノズルをはじめとする他のノズルタイプを介して同様に構成可能である。熱い好ましくは濾過された空気又は不活性ガスは、スプレーコーン内に、好ましくは上方から向流で又は並流でスプレーコーンに導入されるが、適切であれば、下方から又は側方から向流で又は並流で導入される。乾燥ガスは、好ましくは100〜650℃、特に好ましくは160〜300℃の範囲内の温度を有する。液体ドロップレットの大きい相対表面は、2つの相間で熱及び物質の有効かつ迅速な交換を引き起こす。酸化亜鉛は、微粉末として下方に落下し、好ましくは、ガスストリームと共に乾燥機の底部で排出される。ガス搬送粒子は、ダストフィルター、電子フィルター、又は遠心分離機(サイクロン)を介して、好ましくはダストフィルターを介して、特に好ましくは被覆布ホース付きダストフィルターを介して、取得可能である。本発明の好ましい実施形態では、ガス及び熱の導入速度は、ドロップレットからの水の蒸発速度に対応するものとする。本発明によれば、工程d)から得られた酸化亜鉛粒子のサスペンジョンは、好ましくは、ポンプを介してスプレー塔に搬送され、塔の頂部に位置するノズルを介してスプレーされる。好ましくは160〜350℃の範囲内の温度を有する導入乾燥空気は、付着水を蒸発させ、その結果、酸化亜鉛は、塔の出口で微細な乾燥粉末として得られる(出口温度50〜160℃)。好ましくは、入口温度と出口温度との間の大きい温度差、特定的には、200〜350℃の入口温度及び50〜90℃の出口温度を選択すべきである。これにより、生成物の残留水分を調整することが可能である。これは、好ましくは、熱重量測定法(200℃で30分間)を用いて決定される。工程e)の終了時、酸化亜鉛は、好ましくは5重量%未満、好ましくは2重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の水含有率を有する。工程e)は、好ましくは、連続的に実施される。
【0067】
f) 熱的後処理
好ましくは、本発明に係るプロセスは、工程f)をさらに含む。工程f)は、好ましくは工程e)で得られた乾燥させた表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の熱的後処理である。工程e)で得られた乾燥生成物は、好ましくは、高温処理に付される。好ましくは、熱的後処理は、好ましくは工程e)で得られた酸化亜鉛粒子を、150℃〜250℃、好ましくは180℃〜230℃、特定的には200℃〜220℃の範囲内の温度に加熱することであるか、又はそのことを含む。本発明によれば、この加熱は、0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間、特定的には2〜4時間の範囲内の時間で行われる。より高い温度を後処理のために選択した場合、選択される処理継続時間をより短くすることが可能である。したがって、例えば、180℃で約4時間の後処理を行うと、200℃で約2時間の後処理を行ったときとほぼ同一の光学的性質の酸化亜鉛粒子が得られる。当然ながら、先に記載したものよりも長い時間及び/又は高い温度も同様に使用可能であるが、必ずしも生成物の有意な改良をもたらすわけではない。加熱は、減圧下及び/又は窒素等のような不活性ガスの存在下で実施可能である。本発明に係るプロセスでは、工程f)は、連続的又は非連続的(すなわち、工程e)で得られたスプレー乾燥生成物は、何回かに分けて工程f)に付される)のいずれかで実施可能である。当然ながら、工程e)で得られた全スプレー乾燥プロセス生成物を1回で工程f)に付すことも可能である。
【0068】
工程f)の後、プロセス生成物は、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜70℃、特定的には20℃〜60℃の範囲内の温度に冷却される。好ましくは、パッケージング前、調製された生成物は、バッチに分割され、これらは、均一で一様な生成物が得られるように十分に混合される。こうしたバッチへの分割は、好ましくは、工程f)を非連続的に実施することにより又は下流の容器を介して達成可能である。この容器は、特に好ましくは、撹拌機を含む。
【0069】
g) 粉砕
好ましくは、本発明に係るプロセスは、工程g)をさらに含む。好ましくは、工程g)は、任意選択の工程f)に続き、好ましくは、工程f)で得られた酸化亜鉛の粉砕を含む。この粉砕は、好ましくはジェット粉砕である。ジェット粉砕とは、粉砕材料が高速のガスストリーム中で加速されて粒子の相互の衝突又は衝突壁との衝突を介して細粒化される衝撃粉砕の一型式のことである。粉砕効果は、この場合、衝突速度及び/又は衝撃エネルギーに決定的に依存する。本発明によれば、ガス圧力は、好ましくは5〜20bar、好ましくは7〜15barの範囲内である。
【0070】
本発明は、ポリアクリレートを用いてナノ微粒子状酸化亜鉛の表面改質を行うことにより、特に化粧製剤において、こうした製剤の保存中に望ましくないpH変化を伴うことなく、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛のサスペンジョンの長期安定性を達成しうるという発見に基づく。
【0071】
本発明に係るプロセスの有利な実施形態は、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子が可視光領域(VIS)で高い光透過率及び近紫外光領域(UV−A)で低い光透過率を有するものである。好ましくは、360nmの波長における透過パーセント(T)の対数と400nmの波長における透過パーセントの対数との比[lnT360nm/lnT450nm]は、少なくとも7、好ましくは少なくとも10、特定的には少なくとも13である。
【0072】
本発明に係るプロセスのさらなる有利な実施形態は、本発明に係るプロセスにより取得可能な表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子が好ましくは15〜200m/g、好ましくは20〜100m/g、特に好ましくは30〜50m/gの範囲内のBET表面積を有するものである。
【0073】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子は、20〜200nm、好ましくは20〜100nmの直径を有する。例えば、そのような酸化亜鉛粒子の再分散の後、得られるサスペンジョンが透明であり、したがって、化粧製剤に添加したときに着色に影響を及ぼさないので、このサイズ範囲は、特に有利である。さらに、これにより透明フィルムで使用できる可能性も生じる。
【0074】
本発明はさらには、本発明に係るプロセスにより取得可能な表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子を提供する。
【0075】
本発明はさらには、サンスクリーン化粧製剤中のUV防御剤としての、プラスチック中の安定化剤としての、及び抗微生物活性成分としての、本発明に係るプロセスにより取得可能な表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の使用を提供する。
【0076】
本発明の好ましい実施形態によれば、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子は、液体媒体中に再分散可能であり、かつ安定なサスペンジョンを形成する。このことは、特に有利である。なぜなら、例えば、サスペンジョンは、さらなる処理の前に再度分散させる必要はなく、直接処理しうるからである。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子は、極性有機溶媒中に再分散可能であり、その際、安定なサスペンジョンを形成する。このことは、特に有利である。なぜなら、この結果として、プラスチックやフィルム等への均一な組込みが可能になるからである。
【0078】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子は、水中に再分散可能であり、その際、安定なサスペンジョンを形成する。このことは、特に有利である。なぜなら、これにより、有機溶媒なしで済ますことが主な利点になる可能性のある化粧製剤等で酸化亜鉛を使用できる可能性が開かれるからである。このほかに考えられるのは、水と極性有機溶媒との混合物中の酸化亜鉛サスペンジョンである。
【0079】
本発明はさらに、本発明に係るプロセスにより取得可能な酸化亜鉛粒子の水性サスペンジョンを提供する。これらのサスペンジョンは、例えば、工程f)に従って得られた酸化亜鉛粒子を分散させることにより得られる。
【0080】
本発明はさらに、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の水性サスペンジョンを提供する。ただし、このサスペンジョンは、本発明に係るプロセスの工程a)〜c)又はa)〜d)により取得可能なものである。これは、特定の場合に有利なこともある。なぜなら、精製、乾燥、粉砕、及び熱的後処理の作業工程を省ける可能性があるからである。本発明の一実施形態では、長期安定性をさらに増大させるために、工程c)の前又は工程c)の時に、酸化亜鉛を基準にして0.01〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲内の分散剤が、これらのサスペンジョンに添加される。好適な分散剤は、例えば、非イオン性の分子又は高分子の界面活性剤又は分散剤、例えば、エトキシル化脂肪アルコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックポリマー(その性質は、ポリエチレングリコールブロック及び/又はポリプロピレングリコールブロックのサイズにより調整可能である)である。
【0081】
そのほかに好適なのは、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、第四級アンモニウム基等を有するイオン性の分子及び/又は高分子の界面活性剤及び/又は湿潤剤又は分散剤である。こうしたものとしては、例えば、C12〜C18アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びアルキルナフタレンスルホン酸並びにそれらの塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0082】
少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、メサコン酸、及びイタコン酸をベースとするポリカルボン酸及びその塩。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、又はそれらの混合物をベースとするポリアクリレートが使用される。さらなる好適な共重合性化合物は、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、イソブテン、又はスチレンである。
【0083】
ポリビニルホスホン酸及び鹸化ポリビニルホルムアミド又はエチレンイミンをベースとする高分子アミンもまた好適である。
【0084】
好適な分散剤はまた、以下のものである。
【表4】

【0085】
好ましい分散剤は、以上に記載のポリアクリレートであり、Sokalan(登録商標)(BASF)ブランドのポリアクリレートは、特に好ましい。Sokalan(登録商標)PA15等のようなブランドSokalan(登録商標)PA及びSokalan(登録商標)CP9等のようなブランドSokalan(登録商標)CPのポリアクリレートは、特に好適である。本発明はさらに、サンスクリーン化粧製剤中のUV防御剤としての、プラスチック中の安定化剤としての、及び抗微生物活性成分としての、本発明に係る表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の以上に記載の水性サスペンジョンの使用を提供する。
【実施例】
【0086】
以下の実施例を参照することにより本発明をより詳細に説明する。
【0087】
工程a):溶液1及び2の調製
【0088】
水と少なくとも1種の亜鉛塩との溶液(溶液1)の調製:
溶液1kgあたり0.4molの濃度のZnClを含む480kgの水性ZnCl溶液を反応容器内で調製し、続いて混合も実施した。このために、439.75kgの完全脱塩水を室温で容器内に計量導入し、40.25kgのZnCl(濃度65重量%の水性溶液)を添加した。容器内の温度を約60℃に調整し、かつ濃度30重量%の塩酸を添加することにより容器内のpHを約4.5に調整した。
【0089】
少なくとも1種のポリアクリレートをもさらに含む水と少なくとも1種の強塩基との溶液(溶液2)の調製:
溶液1kgあたり0.8molの濃度のNaOHと溶液1kgあたり4gの濃度のSokalan(登録商標)PA15とを含む496kgの水酸化ナトリウム溶液の混合物を次のように調製した。428.10kgの脱塩水を容器に計量導入した。これに4400gのSokalan(登録商標)PA15(濃度45重量%の水性溶液)及び63.5kgの濃度25重量%のNaOHを秤量導入した。このアルカリ溶液の温度を60℃に調整した。
【0090】
工程b):工程a)で調製された溶液1及び2の混合(沈殿)
両方の溶液が±2.0℃の許容範囲内で60℃の温度に達した時、溶液1への溶液2の添加を開始した。約5分間にわたり撹拌しながら溶液2を溶液1に一様に添加した。撹拌機の速度は、約100min−1(エネルギー入力約0.7W/l)であった。得られた混合物をさらに2時間撹拌した。
【0091】
収着平衡及びZnO溶解度の分析
透過液を再循環させながら、1.6重量%のZnOと2.5重量%のNaClと0.2重量%のNaポリアクリレートとを含む合成生成物を60℃で限外濾過し、そして水酸化ナトリウム溶液と少しずつ混合した。水酸化ナトリウム溶液の各添加後30分間ごとに、サンプルを採取してそれぞれの値を決定した。表4は、各pHに対するポリアクリレート及び溶解する酸化亜鉛の収着平衡の依存性を示している。pH範囲は、好ましくは、透過液中の遊離すなわち非吸着のポリアクリレートの量が可能なかぎり多くかつ同時に透過液の亜鉛含有率(溶存亜鉛塩)が可能なかぎり小さい状態が得られるものである。したがって、40〜60℃の範囲内の処理温度では、11.0〜12.0、特定的には11.5〜11.8の範囲内のpHが特に好ましい。吸着ポリアクリレートは、(保持液中のポリアクリレート)−(透過液中のポリアクリレート)の差として計算可能である。特定のポリアクリレート含有率に対して用いられる測定パラメーターは、好ましくは、保持液及び透過液の炭素含有率の元素分析測定値である。
【0092】
工程c):膜濾過による濃縮(限外濾過)
膜濾過による濃縮は、図1に図解されている。装置は、貯蔵槽B−1とポンプP−1と熱交換器W−1と膜モジュールM−1と圧力リリーフバルブV−1とを含むポンプサイクルよりなるものであった。膜モジュールの上流に、流量測定FI、温度測定TI、及び圧力測定PIが組み込まれ(供給液=F−1)、さらに、モジュールの後に、さらなる圧力測定PIが組み込まれた(保持液=F−2)。透過排出液F−3の圧力は、圧力リリーフバルブV−2及び圧力測定PIを介して調整可能である。流量計FIを用いて透過排出液で透過液流量を測定し、天秤を用いて捕集槽B−3内の透過液の分離除去量を決定した。
【0093】
150kDの分離限界を有するCUT Membrane Technology社製のポリプロピレン管状膜(外径=7mm、内径=5.5mm、長さ=1000mm)をモジュールに取り付けた。膜管内のサスペンジョンの流量を4m/sに制御し、膜間差圧(TMP=モジュール入口及びモジュール出口の圧力の算術平均から透過液圧力を減算した値)を1barに制御し、かつ温度を60℃に制御した。
【0094】
実験の開始時、ZnO合成サスペンジョン(1.6% ZnO、2.5% NaCl、0.2% ナトリウムポリアクリレートSokalan(登録商標)PA15)をサイクルに充填し、プラントを運転状態に設定し、かつサスペンジョン1kgあたり5gのNaOHを添加することによりpHを上昇させた。続いて、濾液を取り出し、次に、ポンプP−2を用いて、分離除去された無ZnO透過液の量に基づいてさらなるZnO合成排出液(同様にサスペンジョン1kgあたり5gのNaOHと混合されたもの)を容器B−2から供給した。約20重量%の所望のZnO濃度に達した後、透析濾過を開始した。このために、濾液を取り出し、次に、所与のMA値に達するまで、ポンプP−2を用いて、分離除去された無ZnO透過液の量に基づいて容器B−2から透析濾過媒体を供給した。
【0095】
工程d)サスペンジョン中の望ましくない成分の枯渇
表5は、透析濾過係数MA及び定常ZnO濃度に対するNaCl枯渇率の依存性を示している。
【表5】

【0096】
pHを減少させると、遊離のポリアクリレートと酸化亜鉛表面に吸着されたポリアクリレートとの間の平衡は、吸着ポリアクリレートの方にシフトする。水を用いて工程d)を実施した場合、本質的にNaOH含有率が低下し、したがって、pHが低下するので、ポリアクリレートの枯渇率は、より小さい。
【0097】
表6は、濃縮時及び透析濾過時の保持液中のNaCl及び遊離ポリアクリレートの枯渇の過程を示している。MA=3まで、いずれの場合も酸化亜鉛を基準にして、NaClは、99.9%枯渇され、有機炭素は、91.2%枯渇された。処理温度PT(40℃)で測定されたpHは、12.4から10.8に低下した。MA=3を超えると、枯渇率及びpHは、もはや測定精度の範囲内で変化せず、単に透過液中のイオン感受性伝導率だけが、MAの増大に伴ってさらに低下した。表7は、アクリレート枯渇率に及ぼすpHの影響を示している。
【0098】
工程e)
40.0kg/hの物質ストリームを用いて容量計量ポンプを介して乾燥させるべく、工程d)から得られた濃縮精製サスペンジョンを周囲温度でスプレー乾燥機に計量導入した。この際、アトマイゼーションガス:ディスパージョン比=1:1Nm/kg(標準立方メートル毎キログラム)で二材料ノズルを用いて塔頂でアトマイズした。130〜350℃の温度を有する乾燥ガスを並流方式でスプレー塔内に軸方向に供給し、その際、ガスの量を介してスプレー塔出口の出口温度を50〜150℃に調整した。
【0099】
こうして得られた乾燥生成物をフィルターで分離し捕集した。
【0100】
工程f)
工程e)からの乾燥材料を接触乾燥装置に導入し加熱した。熱電対を用いて生成物床の温度を測定し、1〜8時間にわたり80〜240℃の生成物温度を保持した(表8参照)。180〜220℃の範囲内で後処理された酸化亜鉛粒子は、最良の光学的性質を呈した。240℃超又は160℃未満の温度の後処理では、比較的やや不十分な光学的性質が得られた。熱的後処理の継続時間も同様に、光学的性質に影響を及ぼし、後処理の継続時間を長くすると光学的性質が改良されるが、特定の時間点を超えると、それ以上の有意な改良は得られない。したがって、180℃で4時間超又は200℃で2時間超の後処理を行っても、もはやさらなる改良は得られなかった(表8及び9)。
【表6】

【表7】

【0101】
工程g)
工程f)で熱的後処置された生成物をさらなるプロセス工程g)で細粒化に付した。この際、8barの圧縮空気の除圧により発生されるガスストリームと一緒に生成物を4kg/hの物質ストリームでジェットミルに供給し、Sauter直径(SMD)の減少をもたらす粒子同士の衝突の結果として及び粒子とミルの壁との接触の結果として細粒化した。これにより、実験では、工程f)の後のSMD=5〜10μmから工程g)の後のSMD=1〜3μmに、例えば、5.8μmから1.86μmに低減された。
【0102】
適用例:化粧製剤
【0103】
本発明に従って調製された酸化亜鉛を含む化粧製剤の一般的製造手順
相A及びCのそれぞれを個別に約85℃に加熱した。次に、ホモジナイズしながら相C及び酸化亜鉛を相Aに撹拌導入した。その後、短時間ホモジナイズしてから、撹拌しながらエマルジョンを室温に冷却し仕上げ処理した。定量的データはすべて、製剤の全重量を基準にしたものである。
【0104】
実施例1:
3重量%のUvinul(登録商標)T150と本発明に従って調製された4重量%の酸化亜鉛とを含むエマルジョンA
【表8】

【0105】
実施例2:
3重量%のUvinul(登録商標)T150と2重量%のUvinul(登録商標)A Plusと本発明に従って調製された4重量%の酸化亜鉛を含むエマルジョンB
【表9】

【0106】
実施例3:
3重量%のUvinul(登録商標)T150と本発明に従って調製された4重量%の酸化亜鉛とを含むエマルジョンA
【表10】

【0107】
実施例4:
3重量%のUvinul(登録商標)T150と2重量%のUvinul(登録商標)A Plusと本発明に従って調製された4重量%の酸化亜鉛を含むエマルジョンB
【表11】

【0108】
実施例5
【表12】

【0109】
相Aを80℃に加熱し、次に、相Bを添加し、混合物を3分間ホモジナイズした。相Cを個別に80℃に加熱し、相A及びBの混合物に撹拌導入した。次に、撹拌しながら混合物を40℃に冷却し、次に、相Dを添加した。その後、ローションを短時間ホモジナイズした。
【0110】
実施例6:
シリコーン中水型製剤
【表13】

【0111】
相A及びBを約11000rpmで3分間ホモジナイズし、次に、BをAに添加してさらに1分間ホモジナイズした。
【0112】
実施例7
【表14】

【0113】
調製:
相Aを約80℃で加熱して融解させ、約3分間ホモジナイズした。相Bを同様に約80℃まで加熱し、相Aに添加し、この混合物を再度ホモジナイズした。次に、撹拌しながら室温に冷却させた。次に、相Cを添加し、混合物を再度ホモジナイズした。
【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、すなわち、
a) 水と少なくとも1種の亜鉛塩とを含む溶液(溶液1)及び水と少なくとも1種の強塩基とを含む溶液(溶液2)を調製する工程、ただし、2つの溶液1及び2の少なくとも一方は、少なくとも1種のポリアクリレートを含む、
b) 工程a)で調製された溶液1及び2を混合する工程、この時、表面改質ナノ微粒子状粒子が形成されて溶液から沈殿し、水性サスペンジョンが形成される、
c) 工程b)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の水性サスペンジョンを濃縮する工程、ただし、工程b)で得られて工程c)に搬送されるサスペンジョンのpHは、9〜14の範囲内である、
d) 適切であれば、工程c)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子の濃縮水性サスペンジョンを精製する工程、
e) 適切であれば、工程d)で得られた表面改質ナノ微粒子状粒子を乾燥させる工程、及び
f) 適切であれば、工程e)で得られた乾燥させた表面改質ナノ微粒子状粒子を熱的に後処理する工程、
を含む表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の調製プロセス。
【請求項2】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、又は酢酸亜鉛である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記強塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又はアンモニアである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリアクリレートが、20〜100mol%の範囲内の少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸を共重合された形態で含む、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリアクリレートが、800〜250000g/molの範囲内の分子量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
工程b)が、40℃〜80℃の範囲内の温度で行われる、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸化亜鉛の沈殿が行われる反応器内に溶液1が存在し、かつ工程b)の開始時に溶液2が溶液1に添加される、請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
工程c)が膜濾過を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
工程c)が水の蒸発を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
工程b)で得られて工程c)に搬送される酸化亜鉛粒子のサスペンジョンのpHが、10〜13の範囲内のpHに調整される、請求項1〜9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
工程d)が、アルカリ溶液を用いた少なくとも第1の透析濾過と水を用いた少なくとも第2の透析濾過とを含む、請求項1〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
工程f)が、工程e)で得られた乾燥させた表面改質ナノ微粒子状粒子を150〜250℃の範囲内の温度で加熱することであるか又は加熱することを含む、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
分散剤が工程c)の前又は工程c)の時に水性サスペンジョンに添加される、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセスの工程a)〜c)又はa)〜d)を含む、表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の水性サスペンジョンの調製プロセス。
【請求項14】
請求項1〜11又は13のいずれかに記載のプロセスの工程a)〜c)又はa)〜d)により取得可能な表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子の水性サスペンジョン。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載のプロセスにより取得可能な表面改質ナノ微粒子状酸化亜鉛粒子。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530476(P2011−530476A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522471(P2011−522471)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059896
【国際公開番号】WO2010/018075
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】