説明

ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体

【目的】
湿潤ゲルを内包させた後でも不織布のようにばらばらとほぐれることがなく、その上、ナノ構造を有する多孔質体を均一に内包でき、均一な断熱性能を有する複合体を提供することを目的とする。
【構成】
本発明の請求項1記載の複合体は、連続気泡を有するプラスチック系発泡体からなる基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、該発泡体の空孔率は、20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造を有する多孔質体を均一に内包する複合体に関するもので、防寒衣料、防寒靴、防寒寝具、電気機器断熱、車両断熱材、建築用断熱材など広く応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造を有する多孔質体は、一般的に無機系材料ではシリカ、アルミナ、チタニア、カーボンなどの多孔質体が知られている。一方、有機系ではイソシアネート系化合物、レゾールホルムアルデヒド、フェノールフルフラール、メラミンホルムアルデヒド、ポリイミドなどが知られている。
【0003】
これらの多孔質体は、ゾルーゲル法による加水分解、縮重合によって得られた湿潤ゲル体を超臨界流体で乾燥させて得られる。そして、得られたナノ構造を有する多孔質体は、平均粒子径が20nmの粒子が集合したもので、固形分が5%以下で残りの95%が空気層で囲まれている。
【0004】
また、ナノ構造を有する多孔質体は、固形部分の熱伝導度が小さい上、空気の対流や輻射を抑制する機能に優れるので、断熱材として使用されている硬質ポリウレタンフォームよりも断熱性に優れる。因みに、ナノ構造を有する多孔質体は、0.012〜0.015W/mK付近の断熱性能を示し、経年変化もほとんどないと言われている。
【0005】
ナノ構造を有する多孔質体としては、例えば特許文献1に記載されているようなナノ構造を有するシリカ多孔質体が知られている。このシリカ多孔質体を製造する方法としては、例えばアルコキシシランのメタノール溶液をアルカリ触媒中で加水分解、縮重合させて湿潤ゲルを得て(ゾルーゲル法)、その後、超臨界炭酸ガスで乾燥させて得られている。そして、このシリカ多孔質体は、透明性が高いために断熱窓用として多くの研究がなされている。しかしながら、このシリカ多孔質体の比重は0.05〜0.3g/ccと非常に小さく、しかも固形分が5%以下であるために強度が弱く、指に触れただけで壊れてしまう欠点があった。
【0006】
そこで、特許文献2や3に記載されているように、ナノ構造を有する多孔質体を不織布に内包させた複合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4402927号公報
【特許文献2】特表平10−504792号公報
【特許文献3】特表平2008−511537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら不織布はいずれも綿状にふわふわしたもの(フェルト状、ウエッブ状、マット状)であったため、該基材に湿潤ゲルを内包させようとするとその段階で溶媒の影響を受け、不織布からなる基材がばらばらとほぐれてくるので、厚味が均一である含浸基材を得ることが出来なかった。仮にほぐれることなく湿潤ゲルを基材に含浸させられたとしても、局部的に湿潤ゲルが固まってしまい、超臨界炭酸ガス乾燥した場合には、ナノ構造を有する多孔質体が不均一に内包された複合体となり、断熱性能にばらつきが生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解決するために本発明は、基材として不織布ではなく、連続気泡を有するプラスチック系発泡体で特定の空孔率を有するもの、或いは、織布又はメッシュ構造で特定の目開き(メッシュ)を有するものを採用することによって、湿潤ゲルを内包させた後でも不織布のようにばらばらとほぐれることがなく、その上、ナノ構造を有する多孔質体を均一に内包でき、均一な断熱性能を有する複合体を得ることが出来ることを見出した。
【0010】
本発明の請求項1記載の複合体は、連続気泡を有するプラスチック系発泡体からなる基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、該発泡体の空孔率は、20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)であることを特徴とする。また、請求項2記載の発明は、織布又はメッシュ構造を有する基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、該織布又はメッシュ構造を有する基材の目開きが0.1〜0.5mm(メッシュ:#35〜#150)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合体は、湿潤ゲルを内包させた後でも不織布のようにばらばらとほぐれることがなく、その上、ナノ構造を有する多孔質体を均一に内包保持でき、均一な断熱性能を有する複合体を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】軟質ウレタンフォームにナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体を説明する図。
【図2】ガラスクロスにナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体を説明する図。
【図3】不織布にナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の請求項1記載の複合体は、連続気泡を有するプラスチック系発泡体からなる基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、該発泡体の空孔率は、20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)であることを特徴とする。
【0014】
本発明の連続気泡を有するプラスチック系発泡体は、3次元構造のセル(孔)を有するものである。そして、該発泡体の空孔率は、20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)であるので湿潤ゲルを含浸させた際、セル(孔)全体に湿潤ゲルが均一に内包される。尚、ここでいう「空孔率」とは、プラスチック系発泡体を例えば切断し、その切断面において一辺が1インチの正方形部分を仮に見た際、その正方形中にセル(孔)数がいくつあるのかを表しているものであり、これをppi(pores per inch)と表した。そして、本発明で使用できる連続気泡のプラスチック系発泡体は、一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個存在するものであり、20〜60ppiと表した。
【0015】
また、上記20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)の空孔率を有することにより、連続気泡を有するプラスチック系発泡体からなる基材のセル全体にナノ構造を有する多孔質体が均一に内包される。その結果、0.015〜0.018W/mKの優れた断熱性能を示すことができる。空孔率が20ppi未満であると、湿潤ゲルを含浸する際、湿潤ゲルが発泡体のセルを通過してしまい、発泡体のセル全体へ均一に内包された含浸体が得られない。一方、空孔率が60ppiを超えると、微細なセル構造をもつために湿潤ゲルが発泡体のセルへ浸透し難く、発泡体のセル全体へ均一に内包された含浸体が得られない。
【0016】
本発明で使用できる基材としては、連続気泡を有するプラスチック系発泡体であり、例えば軟質ウレタンフォーム、軟質塩ビフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、メラミンフォーム、ポリイミドフォームなどが挙げられる。また、製造上の観点からロール状に巻けるような柔軟性に富むものがよく、軟質ウレタンフォームやポリエチレンフォームが特に好ましい。そして、これら発泡体に化学繊維、フィルム、シート等をラミネートさせた複合品も使用可能である。
【0017】
本発明のナノ構造を有する多孔質体は、無機系材料ではシリカ、アルミナ、チタニア、カーボンなどの多孔質体が使用できる。そして、ナノゲル含浸合成時にシランカップリング剤添加して、有機材料との相溶性を向上させることも出来る。そうすることで、ナノ粒子の集合体が基材の空孔から剥離し難くなる。更に、得られた複合体同志との積層接着やつなぎ目接着、更に他素材との貼り合わせ加工などを可能に出来る。
【0018】
また、本発明のナノ構造を有する多孔質体は、有機系ではイソシアネート系化合物、レゾールホルムアルデヒド、フェノールフルフラール、メラミンホルムアルデヒド、ポリイミドなどの多孔質体も使用できる。
【0019】
本発明の請求項2記載の複合体は、織布又はメッシュ構造を有する基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、該織布又はメッシュ構造を有する基材は、目開きが0.1〜0.5mm(メッシュ:#35〜#150)であることを特徴とする。
【0020】
尚、織布又はメッシュ構造を有する基材の目開きは、繊維径(mm)とメッシュの関係で示され、数1のような規定がある。
【数1】

そして、本発明に必要な目開きは0.1〜0.5mmであり、これをメッシュで表すと#35〜#150であり、その結果、湿潤ゲルを含浸させた際、これらの目開きに湿潤ゲルが均一に内包される。メッシュが#35未満の場合、目開きが0.6mmを超えるので湿潤ゲルが内包されず、複合体の均一な断熱性能が得られない。一方、メッシュが#150を超えると、目開きが0.1mm未満の微細な空壁となって含浸加工が出来難くなる。尚、目開きを測定するためには、糸の太さや織り数などが必要になるために、簡易的にメッシュで目開きを想定している。
【0021】
また、上記織布とは、平織、綾織り、朱子織り等の織の間に一定の目開きを有する構造の基材であり、例えば平織のように縦糸と横糸を交互に組み合わせたもので目崩れしない基材であればよい。また、上記メッシュ構造を有する基材とは、クロスやメッシュと呼ばれるもので一定間隔に空壁を形成し、糸と糸の交点で接着しているもので目崩れしない基材であればよい。
【0022】
また、織布又はメッシュ構造を有する基材の材質は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポロプロピレンなどの有機系繊維やテフロン(登録商標)繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機系繊維も使用可能である。この他、これらの素材の3 次元化学繊維でも使用可能である。また、製造上の観点からロール状に巻けるような柔軟性に富むものがよい。
【0023】
本発明の複合体の製造方法は、A)先ず、含浸液としてのゾルを基材に強制的に含浸させて一定厚さに絞り込む方法や基材表面にゾルをスプレーする方法など基材の空孔(或いは目開き)内へ含浸液を内包出来ればいずれの方法であってもよい。B)続いて、触媒を添加してゲル化させ、湿潤ゲルとする。C)続いて、湿潤ゲルを内包する基材をロール状に巻いて、高圧容器に収納して、超臨界炭酸ガスによって乾燥させ、収縮の少ない複合体を得る。尚、A)のゾルにB)の触媒を添加してから、ゲル化前のゾルを基材の空孔(或いは目開き)内へ内包させてもよい。
【0024】
上述の含浸液とは、例えば金属アルコキシドや水ガラスを溶媒中で加水分解させ、ゾルを形成させた液である。そして、この含浸液に触媒を添加し、重縮合反応でゾルをゲル化させる、所謂ゾルーゲル法という合成方法で湿潤ゲルが得られる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるもの
ではない。
【0026】
(実施例1)
テトラメトキシシラン(KBM−04、信越化学社製)1モル、メタノール20 モル、25%アンモニア水0.01モルを配合(表1における「シリカ化合物」)した後、攪拌して含浸液を得た。その後、得られた含浸液中に、軟質ウレタンフォーム(厚味8mm、密度45kg/m、空孔率40ppi、商品名:ZV アキレス社製)を室温で含浸させ、35分間放置し、軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、この軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、5時間)を行い、厚味7.5mm、比重0.050の軟質ウレタンフォームのセル全体にナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0027】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性についてそれぞれ評価を行った。各評価方法を以下に示す。
【0028】
(断熱性能)
熱流計(M−180 英弘精機社製)で計測する。実施例1の複合体は、0.016W/mKの断熱性能であった。
【0029】
(柔軟性)
JIS P8115に準拠した折り曲げ試験で基材を荷重1.5kgで135度に折り曲げたときに、基材に折れ皺が発生するかどうかを目視で確認する。実施例1の複合体は、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。
【0030】
(テープ剥離強度)
複合体を2枚並べて繋ぎ目に25mm幅のブチルゴムテープ(WF−450、コニシ社製)を貼ってテープを180°で剥離した際の剥離強度を測定した。その結果、実施例1の複合体は、テープ剥離強度が60g/25mmであり、軟質ウレタンフォームに対してナノ構造を有する多孔質体が接着している事を確認出来た。
【0031】
(実施例2)
テトラメトキシシラン縮合物(メチルシリケート51、コルコート社製)0.3モル、フッ素系シランカップリング剤(KBE−22 信越化学社製)0.7モル、メタノール溶媒20モル、炭酸ナトリウム0.008モル、水10モルを配合(表1における「シリカ化合物+シランカップリング剤」)した後、攪拌して含浸液を得た。その後、得られた含浸液中に、軟質ウレタンフォーム(厚味8mm、密度45kg/m、空孔率40ppi、商品名:ZV アキレス社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、この軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、5時間)を行い、厚味8.0mm、比重0.050の軟質ウレタンフォームのセル全体にナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。尚、この複合体を走査型電子顕微鏡(日立ハイテック社製、S−3400N:倍率1,000倍)で撮影したものを図1に示す。
【0032】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.016W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例2の複合体は、テープ剥離強度が150g/25mmであり、軟質ウレタンフォームに対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0033】
(実施例3)
ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(ミリオネートMR−100、日本ポリウレタン工業社製)10重量部、ジクロロメタン90重量部、触媒(ポリキャット41、エアプロダクツ社製)0.2重量部を配合(表1における「イソシアネート化合物」)した後、攪拌して含浸液を得た。その後、得られた含浸液中に、軟質ウレタンフォーム(厚味8mm、密度45kg/m、空孔率40ppi、商品名:ZV アキレス社製)を室温で含浸させ、30分間放置し、軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、この軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(10Mpa、50℃、3時間))を行い、厚味7.5mm、比重0.050の軟質ウレタンフォームのセル全体にナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0034】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.017W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例3の複合体は、テープ剥離強度が210g/25mmであり、軟質ウレタンフォームに対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0035】
(実施例4)
実施例3の含浸液中に、ポリエチレン発泡体(厚味10mm、密度50kg/m、空孔率50ppi、商品名:LC−150 三和化工社製)を室温で含浸させ、30分間放置し、ポリエチレン発泡体のセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このポリエチレン発泡体のセル全体に湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(10Mpa、50℃、3時間)を行い、厚味9.5mm、比重0.050のポリエチレン発泡体のセル全体にナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0036】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.018W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例4の複合体は、テープ剥離強度が160g/25mmであり、ポリエチレン発泡体に対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0037】
(実施例5)
実施例2の含浸液中に、ガラスクロス基材(厚味3mm、メッシュ:#150、商品名:NGC−2000日本グラスファイバー工業社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ガラスクロス基材のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このガラスクロス基材のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、1時間)を行い、厚味3mm、比重0.050のガラスクロス基材のメッシュにナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。尚、この複合体を実施例2同様の顕微鏡で撮影したものを図2に示す。
【0038】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.018W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例5の複合体は、テープ剥離強度が110g/25mmであり、ガラスクロス基材に対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0039】
(実施例6)
ガラスクロス基材の代わりに、セラミッククロス基材(厚味3mm、メッシュ:#100、商品名:TSC−1320 橘工業社製)を用いた以外は、実施例5と同様の方法にて、厚味3mm、比重0.060のセラミッククロス基材のメッシュにナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0040】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.018W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例6の複合体は、テープ剥離強度が100g/25mmであり、セラミッククロス基材に対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0041】
(実施例7)
実施例2の含浸液中に、ポリエステルメッシュ繊維基材(厚味700μm、メッシュ#60、商品名:PET390−HD セミテック社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ポリエステルメッシュ繊維基材のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このガラスクロス基材のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、0.5時間)を行い、厚味0.60mm、比重0.040のポリエステルメッシュ繊維基材のメッシュにナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0042】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.022W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、実施例7の複合体は、テープ剥離強度が80g/25mmであり、ポリエステルメッシュ繊維基材に対してナノ構造を有する多孔質体が良好に接着している事を確認出来た。
【0043】
(比較例1)
実施例1の含浸液中に、軟質ウレタンフォーム(厚味8mm、密度15kg/m、空孔率14ppi、商品名:ムマックTB−QA アキレス社製)を室温で含浸させ、40分間放置したが、軟質ウレタンフォームのセル全体に湿潤ゲル体を均一に内包保持させることが出来なかったため、超臨界炭酸ガス乾燥までに至らなかった。
【0044】
(比較例2)
実施例1の含浸液中に、メラミン発泡体(厚味8mm、密度15kg/m、空孔率80ppi、商品名:Basotect G BASF社製)を室温で含浸させ、40分間放置したが、メラミン発泡体のセル全体に湿潤ゲル体を均一に内包保持させることが出来なかったため、超臨界炭酸ガス乾燥までに至らなかった。
【0045】
(比較例3)
実施例2の含浸液中に、基材としてポリエステル不織布(厚味8mm、目付量600g/m、ニードルパンチ 高安社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ポリエステル不織布に湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このポリエステル不織布に湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、5時間)を行い、厚味8mm、比重0.080のポリエステル不織布にナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。尚、この複合体を実施例2同様の顕微鏡で撮影したものを図3に示す。
【0046】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.021〜0.031W/mKというように測定箇所によってかなりばらつきがあり、均一な断熱性能は得られなかった。また、柔軟性は折れ皺が発生したので表1に示すように×とした。一方、テープ剥離強度は、テープを剥離する際に不織布の糸がほぐれ、形が崩れてしまったので測定不能とした。
【0047】
(比較例4)
実施例2の含浸液中に、基材としてガラス繊維不織布(厚味12mm、密度80kg/m、商品名:マグボード マグ社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ガラス繊維不織布に湿潤ゲル体を内包保持させたが、ガラス繊維が層状に一部分離して均一なものが得られなかったため、超臨界炭酸ガス乾燥までに至らなかった。
【0048】
(比較例5)
実施例1の含浸液中に、基材としてポリエステルメッシュ繊維(厚味745μm、メッシュ:#20、くればあ社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ポリエステルメッシュ繊維のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このポリエステルメッシュ繊維のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、0.5時間)を行い、厚味0.65mm、比重0.040のポリエステルメッシュ繊維基材のメッシュにナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0049】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.030W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、比較例5の複合体は、テープ剥離強度が0g/25mmであり、軟質ウレタンフォームに対してナノ構造を有する多孔質体がほとんど接着していない事を確認出来た。
【0050】
(比較例6)
実施例1の含浸液中に、基材としてポリエステルメッシュ繊維(厚味3300μm、メッシュ:#160 くればあ社製)を室温で含浸させ、40分間放置し、ポリエステルメッシュ繊維のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させた。次に、このポリエステルメッシュ繊維のメッシュに湿潤ゲル体を内包保持させたものを、20mmφの金属メッシュ巻芯(400mm幅×1m長)に巻きつけて4L高圧容器に収納後、超臨界炭酸ガス乾燥(20Mpa、80℃、0.5時間)を行い、厚味3.2mm、比重0.060のポリエステルメッシュ繊維基材のメッシュにナノ構造を有する多孔質体が内包保持されている複合体を得た。
【0051】
そして、得られた複合体の断熱性能、柔軟性、接着加工性について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。その結果、断熱性能は0.040W/mKであり、折れ皺が発生しなかったので表1に示すように○とした。一方、比較例6の複合体は、テープ剥離強度が0g/25mmであり、軟質ウレタンフォームに対してナノ構造を有する多孔質体がほとんど接着していない事を確認出来た。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡を有するプラスチック系発泡体からなる基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、
該発泡体の空孔率は、20〜60ppi(一辺が1インチの正方形中にセル(孔)が20〜60 個)であることを特徴とする複合体。
【請求項2】
織布又はメッシュ構造を有する基材に、ナノ構造を有する多孔質体を内包する複合体であって、
該織布又はメッシュ構造を有する基材の目開きが、0.1〜0.5mm(メッシュ:#35〜#150)であることを特徴とする複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5676(P2011−5676A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149317(P2009−149317)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】