説明

ナノ構造ハードセグメントを持つ半結晶質熱可塑性ポリウレタンに基づく形状記憶ポリマー

【課題】ハイブリッドポリウレタンを含む形状記憶ポリマーを提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマーの製造法であって、(A)ポリオールと、(B)籠状シルセスキオキサン連鎖延長剤と、(C)ジイソシアネートとをワンステップで反応させることを含み、前記熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマーは、30℃から60℃の範囲の熱誘発温度を示すことを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、仮出願第60/418,023号(2002年10月11日出願)、第60/466,401号(2003年4月29日出願);出願第60/419,506号(2002年10月18日出願);第60/488,590号(2003年7月18日出願)及び第60/488,323号(2003年7月18日出願)に基づく優先権を主張し、前記各出願特許はその全体を本願に引用して援用する。仮出願第60/377,544号に基づく優先権を主張している出願第10/425,421号(2003年4月29日出願)及び該被優先権主張仮出願も本願に引用して援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は形状記憶ポリマーに関し、更に詳しくは、ハード及びソフトセグメントの交互配列を有し、ナノ構造の多面体オリゴマーシルセスキオキサン(籠状シルセスキオキサン、polyhedral oligomeric silsesquioxane、以下、本明細書において「籠状シルセスキオキサン」を「POSS」と略称する)ジオールを連鎖延長剤として使用して結晶質ハードセグメントを形成させた熱可塑性ポリウレタンに関する。本開示はまた、これらの熱可塑性ポリウレタンの製造法及びその用途にも関する。
【背景技術】
【0003】
形状記憶材料は、熱、光、又は蒸気などの環境刺激を引き金として、形状を一時的な凍結形状から永久的な形状に変換する能力を備えていることを特徴とする材料である。創造的に使用されると、これらの現象は多様な用途に利用できる。形状記憶合金(SMA)と形状記憶ポリマー(SMP)はどちらも同様の熱刺激による形状記憶特性を示すが、それらの作用機構は極めて異なる。SMAの利点は、迅速な歪回復(1秒以内)、二方向性の可逆記憶を養成できる可能性(potential training)、及び低温でのオーステナイト相内で得られるはずの明らかな超弾性などである。これに対し、ポリマーのほうは、高度にコイル状の成分鎖に由来する形状記憶効果を内在する。このコイル状成分鎖は機械的作用によって集団的に伸長可能であり、そのエネルギーはT又はT以下に冷却することにより永久的に蓄えられうる(“形状固定”として知られる)。このポリマーサンプルは、後に臨界温度以上に加熱されると、機械的作用を行って応力のない状態に戻ることができる。すなわち、凍結鎖を可動化してコイル状態のエントロピーを回復する。SMAと比較した場合、熱刺激性SMPは、(i)数百パーセントを超える歪でも回復可能な変形の大きさ;(ii)ポリマー化学の多様性による転移温度の調整の容易さ;及び(iii)低コストでの加工容易性、といった利点を有する。
【0004】
様々な用途、例えば医療機器及びメカニカルアクチュエータとして機能する異なる熱機械的性質を有する熱刺激性SMPは、すでに合成され特性分析されている。これらの材料は、室温での弾性率の範囲が、数GPaの貯蔵弾性率を有する硬質ガラス材料から数十MPaほどの低さの弾性率を有する軟質ゴムにまで及ぶ。その上、収縮(ゴム)弾性率は、最終用途によって規定されるとおり0.5<E<10MPaの範囲に調整されている。そのような一例が化学的に架橋されたポリシクロオクテン(PCO)である。これは硬質の半結晶質ゴムで、Tを超えると、結晶化によって固定される一時的形状に弾性変形される。熱水に浸漬することによって、全体的変形の素早く完全な回復が達成される。このようなSMPは、仮特許出願第60/419,506号(2002年10月18日出願)、発明の名称「化学的に架橋されたポリシクロオクテン(Chemically Crosslinked Polycyclooctene)」に記載されている(前記特許出願の全体を本願に引用して援用する)。仮特許出願第60/377,544号(2002年5月2日出願)、発明の名称「注型可能な形状記憶ポリマー(Castable Shape Memory Polymers)」(前記特許出願の全体を本願に引用して援用する)には、調整可能な臨界温度とゴム弾性率を提供するより硬質のSMPが記載されている。これは、制御されたT及び注型加工を可能とする2種類のビニルモノマーから製造される熱硬化性ランダムコポリマーを用いている。そのようなコポリマーは、二官能性ビニルモノマー(架橋剤)で架橋され、架橋剤の濃度がゴム弾性率、さらに回復時の作業ポテンシャルを制御している。これらの材料は、形状記憶効果のほか注型可能でもあり、より複雑な形状への加工が可能となる。さらに、これらは光学的に透明であり、更なる用途にとっても有用性が高い。
【0005】
上記二例における化学架橋の使用は、可能な加工の種類を制限し、ネットワーク形成時の平衡形状を永久的に固定する。そこで、半結晶質ポリマーとアモルファスポリマーの混和性ブレンドの研究も、それらの持つ結晶性及び機械的性質に魅力があるため、集中的になされてきた。分子レベルで混和可能なこれらのブレンドの場合、広がりのない単一のガラス転移が形状記憶にとって重要な側面となる。さらにそのような混和性ブレンドでは、平衡結晶度(形状固定が行われるT及びT間のプラトー弾性率を制御する)も、ブレンド組成に応じて劇的及び系統的に変化する。これは、代替の形状記憶プラスチックへの明快な道筋を提供する。すなわち、室温での固定状態で比較的高い弾性率を有し、調整可能でシャープな転移を有し、ある融点を超える温度で永久形状を繰り返し再成形することが可能なSMPへの道筋である。これらのSMPブレンドは、仮特許出願第60/466,401号(2003年4月29日出願)、発明の名称「形状記憶特性を有するアモルファス及び半結晶質ポリマーのブレンド(Blends of Amorphous and Semicrystalline Polymers with Shape Memory Properties)」に記載されている(前記特許出願の全体を本願に引用して援用する)。
【0006】
二つのシャープな溶融転移点Tm2>Tm1>室温を有し、二つの融点の差が少なくとも20℃であるミクロ相分離半結晶質熱可塑性ポリマーも、Tm2を超える温度での溶融加工と、流動状態における応力緩和による平衡形状の反復リセットの利点を提供する形状記憶の良好な候補である。この種のSMPに含まれるそのようなポリマーの過去の代表例は従来のポリウレタンで、そのソフトドメインは低融点(しかしTcritより高い)を有するガラス質又は半結晶質であり、ハードドメインは加工時にのみ超過する高い融点を特徴とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】B.X. Fu, B.S. Hsiao, S. Pagola, P. Stephens, H. White, M. Rafailovich, J. Sokolov, P.T. Mather, H.G. Jeon, S. Phillips, J. Lichtenhan, J. Schwab,`Structural development during deformation of polyurethane containing polyhedral oligomeric silsesquioxanes (POSS) molecules.',Polymer,NL,Elsevier Science Ltd.,2001年,Vol.42, No.2,pp. 599-611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、ハイブリッドポリウレタンを含む形状記憶ポリマーを提供することである。
【0009】
本開示の別の目的は、室温での固定状態で中程度の調整可能な弾性率を有し、調整可能でシャープな転移を有し、ある融点を超える温度でその永久形状を繰り返し再成形することが可能な形状記憶ポリマーを提供することである。
【0010】
本開示の別の目的は、シャープで調整可能な転移温度、転移温度を超える温度で調節可能な剛性、及びPOSSドメインの融点を超える温度で熱加工性が明白なハイブリッドポリウレタンSMPを提供することである。
【0011】
本開示のさらに別の目的は、回復温度で優れた形状回復効果を有し、収縮力がPOSSの組成に応じて調節可能なハイブリッドポリウレタンSMPを提供することである。
【0012】
本開示のなお更なる目的は、生体適合性があり、医療機器及びインプラントとして使用できるハイブリッドポリウレタンを提供することである。
【0013】
本開示のさらに別の目的は、そのようなハイブリッドポリウレタンの合成法である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
広く言えば、本開示は、(A)ポリオール、(B)連鎖延長剤のジヒドロキシ末端POSS及び(C)ジイソシアネートを反応させることによるハイブリッドポリウレタンSMPの製造法を提供する。POSSは多面体シルセスキオキサンジオールを意味する。ポリオール(A)は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカプロラクトンジオール、ポリシクロオクテンジオール、ポリ(トランス−1,4−ブタジエン)ジオール、ポリ(トランスイソプレン)ジオール及びポリノルボルネンジオールであり得、連鎖延長剤(B)は、TMP シクロペンチルジオール−POSS、TMP シクロヘキシルジオール−POSS、TMP イソブチルジオール−POSS、トランス−シクロヘキサンジオールシクロヘキサン−POSS、又はトランスシクロヘキサンジオールイソブチル−POSSであり得、そしてジイソシアネート(C)は、多数のジイソシアネートから選ぶことができ、好ましくは4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)である。ハイブリッドポリウレタンSMPの合成に使用するのに適切なその他のジイソシアネート(C)は、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及び水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)などである。
【0015】
ポリオールは半結晶質であり、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカプロラクトンジオール、ポリシクロオクテンジオール、ポリ(トランス−1,4−ブタジエン)ジオール、ポリ(トランスイソプレン)ジオールから選ばれうるか、又はアモルファスであってもよく、その場合、それはポリノルボルネンジオール及び/又はポリメタクリレートコポリマーであり得る。
【0016】
ハイブリッドポリウレタンSMPの製造法及びそれによって製造される新規ハイブリッドポリウレタンを以下の非制限的反応スキームに示す。
【0017】
スキーム1
【化1】


このスキームは、ポリオールとしてポリエチレングリコール、連鎖延長剤としてTMP シクロヘキシルジオール−POSSを用い、トルエン中で4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートと反応させるTPUの合成例を示す。
【0018】
スキーム2
【化2】


このスキームは、ポリオールとしてポリカプロラクトンジオール、連鎖延長剤としてTMP イソブチルジオール−POSSを用い、4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートと反応させるTPUの合成例を示す。
【0019】
スキーム3
【化3】


このスキームは、ポリオールとしてポリシクロオクテン、連鎖延長剤としてTMP イソブチルジオール−POSSを用い、4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートと反応させるTPUの合成例を示す。
【0020】
スキーム1に従って製造された、PEGジオールを配合したPOSSベースのTPUの一般式は以下の通りである。該ポリマーは、X/Yの比率(1〜20)、ポリオールの重合度(1<n<1000)、及び総重合度2<m<100に系統的な変動を可能にする。
【化4】


本ハイブリッドポリウレタンは、シャープで調整可能な転移温度、それらの転移温度を超える温度での調節可能な剛性、及びPOSSドメインの融点を超える温度での熱加工性を示す。該ハイブリッドポリウレタンは、回復温度での優れた形状回復効果、及びPOSSの組成に応じて調節可能な収縮力も示す。それらは、本開示物(PEGの実施態様の場合)が熱だけでなく水分(液体又は蒸気)によっても回復を誘発されうるという点で、他の形状記憶ポリマーとは異なる特有の性質も有する。熱誘発機構の場合、使用される成分の比率によって30℃〜60℃の範囲及び(特に)定常状態(平衡)結晶度を達成するための熱アニーリングが重要である。回復は、転移温度より20℃高く加熱されると数秒以内に達成できる。該材料の追加の利点は、該材料が室温で硬質であること、該ポリマーは一般的に生体適合性があり、場合によっては生分解性であるので、医療機器及びインプラントとして使用できることなどである。該生成物は、用途の要件に応じて任意の色に染色したり、X線(又はd線)ラジオグラフィーに対して放射線不透過性にすることもできる。
【0021】
前述のいずれのハイブリッドポリウレタンポリマーも、例えば、窒化ホウ素、シリカ、二酸化チタン、モンモリロナイト(montmorillonite)、粘土、ケブラー(登録商標)(すなわち、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド)、ステープル、窒化アルミニウム、バリウム及びオキシ炭酸ビスマスのナノ粒子を充填してもよい。粘土及びシリカは、例えばプラスチックの弾性率を増大するのに使用できる。分散剤及び/又は相溶化剤は、例えばポリマーのブレンディング及びポリマーとフィラーのブレンディングを改良するために使用できる。分散剤及び/又は相溶化剤は、例えば、ACRAWAX(登録商標)(エチレンビス−ステアラミド)、ポリウレタン及びELVALOY(登録商標)(アクリル官能基化ポリエチレン)などである。ポリマーは、電子線、UV、γ線、x線のような放射線の印加、又は熱活性化化学架橋技術によって架橋できる。放射線技術は、架橋を達成するのにポリマーを典型的には実質的に加熱する必要がないという利点を提供する。電子線の場合、約200〜300、例えば250キログレイの暴露で典型的には十分な架橋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】PEG:POSSのモル比がそれぞれ1:6、1:4のTMP POSSベースの熱可塑性ポリウレタン(TPU)のDMAプロットを示すグラフである。
【図2】異なるPEG:POSSのモル比を有するTMP POSSベースのTPUのDSCの結果を示すグラフである。
【図3】応力−歪の測定に使用した装置を示す図である。
【図4】TMP POSSベースのTPU(PEG:POSS=1:6)の応力−歪のプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
異なる組成を有する熱可塑性ポリウレタンを、上記スキームを用いてワンステップ縮合重合によって合成した。溶媒としてトルエンを、触媒としてジブチル錫ジラウレートを使用した。反応を窒素下で2時間90℃に維持し、次いで室温に冷却し、ヘキサン中に析出させた。生成物を完全に乾燥させ、トルエン中に溶解して流延フィルム用の10wt%溶液を製造した。サイズ排除クロマトグラフィーから得たこのシリーズのサンプルの分子量及び分子量分布を表1にまとめた。
【0024】
【表1】

異なる組成のポリウレタンサンプルを示差走査熱量測定法(TA Instruments DSC2920)で特性分析した。全てのサンプルとも同一条件下で特定した。各サンプルにつき、加熱及び冷却速度10℃/分で2回のスキャンを実施した(図2)。このシリーズのポリウレタンは二つの融点を示すことが観察された。一つは45<Tm1<50℃の範囲で、PEG“ソフトブロック”の融点に対応する。もう一つの溶融転移は110<Tm2<130℃の範囲に現れ、POSSで強化されたハードセグメント相の融点に対応する。ポリオール:連鎖延長剤のモル比が減少すると、ソフトセグメントの融点は低い値にシフトし、融点ピークがブロードになるのが観察されるが、ハードセグメントの融点は高い値にシフトし、融点ピークがシャープになるのが観察される。この結果は、PEG:POSSの比率が減少すると、得られるブロックコポリマーは総体的PEG含有量が減少するので、これが直接PEGブロックのサイズ及び結晶化の完成に影響するためと説明できる。従って、融点は低い値に移動し、ピークはブロードになる。これに対し、ブロックコポリマー中のPOSSの含有量は増加することになるため、ハードセグメントはより明白に凝集し、より大きくより完全な結晶が形成される。従って、ハードセグメントの融点は高い値に移動し、ピークはシャープになる(図2)。
【0025】
形成されたポリウレタンの乾燥フィルムを細片に切断し、一時的形状固定とその後の回復、すなわち形状記憶について試験した。例えば、サンプルをまずホットステージ上で65℃に加熱した。この温度は第一の転移温度より十分高いが、POSS豊富相の弾性ネットワークの溶融を回避するに足る低さである。次に、これをある伸び率にまで引張り、室温に冷却した。変形された形状は室温で固定された。最後に変形サンプルをホットプレート上で再度65℃に加熱したところ、サンプルは完全に元の長さに数秒以内に復元するのが観察された。形状回復の刺激として水を使用した場合も同様の現象が観察されたが、サンプルは二次的に膨潤して強靱なヒドロゲルを形成した。
【0026】
本開示のハイブリッドポリウレタンは、以下の用途に使用できる。
a.医療用(ヒューマンヘルスケア用)ステント、パッチ及びその他のインプラント
b.調節可能な形状と高剛性(硬直性)を要求される外科用ツール
c.パーソナルケア用品(食器類、ブラシなど)及びハードウェアツールハンドルなど、自由に形状を調節できる構造的道具
d.自己回復プラスチック
e.医療機器(へこんだパネルは加熱又は溶剤との可塑化によって修復される)
f.薬物送達マトリックス
g.高強力熱可塑性(非架橋)高吸収性ヒドロゲル
h.塗料、洗剤及びパーソナルケア製品用の水性流動変性剤
i.成形、複製、ラピッドプロトタイピング、歯科及びフィギュア印刷用の印象材
j.玩具
k.情報蓄積用可逆的エンボス加工
l.温度及び湿度センサ
m.安全バルブ
n.熱収縮テープ又はシール
o.熱制御継手及びファスナー
p.ラージストレイン、ラージフォースアクチュエータ
q.コーティング、接着剤
r.繊維、衣服
【0027】
本開示の形状記憶ポリマーは、その低発熱性、高い生体適合性、並びに特有の機械的性質のために、特に医用生体材料に適している。本開示によれば、該形状記憶ポリウレタンは、一つのセグメントの融点が生物医学用に有用な温度範囲内:37〜50℃に入るように配合された。
【0028】
本開示は、室温での固定状態で中程度の調整可能な弾性率を有し、調整可能でシャープな転移を有し、ある融点を超える温度でその永久形状を繰り返し再成形することが可能な、ポリオールと、POSS連鎖延長剤と、ジイソシアネートとをワンステップで反応させることによって形成された熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマーを含む有益な形状記憶ポリマーを提供する。
【0029】
本開示のポリマー及び加工法をその特定の例示的実施態様を参照しながら説明してきたが、本開示はそのような例示的実施態様に限定されない。それどころか、当業者には容易に分かるとおり、本開示の教えは、本開示の精神又は範囲にもとることなく、多くの実施及び/又は用途に対応可能である。実際、特定のポリマー、ポリマー比率、加工条件、及び最終用途の選択において修正及び/又は変更がこれによって考えられ、そのような修正及び/又は変更も特許請求の範囲に記載の本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマーの製造法であって、
(A)ポリオールと、
(B)籠状シルセスキオキサン連鎖延長剤と、
(C)ジイソシアネートと
をワンステップで反応させることを含み、
前記熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマーは、30℃から60℃の範囲の熱誘発温度を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリシクロオクテンジオール、ポリ(トランス−1,4−ブタジエン)ジオール、ポリ(トランスイソプレン)ジオール及びポリノルボルネンジオールからなる群から選ばれる部材であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリシクロオクテンジオール、ポリ(トランス−1,4−ブタジエン)ジオール及びポリ(トランスイソプレン)ジオールからなる群から選ばれる部材であり、半結晶質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオールが、20〜80℃の範囲のTgを有するアモルファスジオールであり、ポリノルボルネンジオール及びポリメタクリレートコポリマージオールからなる群から選ばれる部材であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記籠状シルセスキオキサン連鎖延長剤が、TMP シクロペンチルジオール−籠状シルセスキオキサン、TMP シクロヘキシルジオール−籠状シルセスキオキサン、TMP イソブチルジオール−籠状シルセスキオキサン、トランス−シクロヘキサンジオールシクロヘキサン−籠状シルセスキオキサン及びトランスシクロヘキサンジオールイソブチル−籠状シルセスキオキサンからなる群から選ばれる部材であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ジイソシアネートが、4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及び水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選ばれる部材であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリシクロオクテンジオール、ポリ(トランス−1,4−ブタジエン)ジオール及びポリ(トランスイソプレン)ジオールからなる群から選ばれる部材であり、前記籠状シルセスキオキサン連鎖延長剤が、TMP シクロペンチルジオール−籠状シルセスキオキサン、TMP シクロヘキシルジオール−籠状シルセスキオキサン、TMP イソブチルジオール−籠状シルセスキオキサン、トランス−シクロヘキサンジオールシクロヘキサン−籠状シルセスキオキサン及びトランスシクロヘキサンジオールイソブチル−籠状シルセスキオキサンからなる群から選ばれる部材であり、前記ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、触媒としてジブチル錫ジラウレートの存在下で実施されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、以下の反応スキーム:
【化1】


(式中、nは1<n<1000である)
に従って実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって製造されることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。
【請求項12】
請求項8に記載の方法によって製造されることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。
【請求項13】
請求項9に記載の方法によって製造されることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。
【請求項14】
請求項10に記載の方法によって製造されることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。
【請求項15】
窒化ホウ素、シリカ、二酸化チタン、モンモリロナイト(montmorillonite)、粘土、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ステープル、窒化アルミニウム、バリウム及びオキシ炭酸ビスマスからなる群から選ばれる部材であるフィラーを含有することを特徴とする、請求項1の方法により製造された熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。
【請求項16】
式:
【化2】


を有し、式中、X:Yの比率が1〜20であり、ポリオールの重合度が1<n<1000であり、そして総重合度が2<m<100であることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン形状記憶ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−99121(P2011−99121A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34427(P2011−34427)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2005−501145(P2005−501145)の分割
【原出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願人】(501315876)ユニバーシティ オブ コネチカット (22)
【Fターム(参考)】