説明

ナノ構造マイクロ多孔質複合発泡体の調製

階層的多孔構造を有するモノリス型金属又は金属複合体を製造する方法であって、多孔質構造を有するテンプレート材料を選択する工程;該テンプレート材料を、構造化される1つの又はそれぞれの該金属の溶液と接触させる工程;1つ又はそれぞれの該金属を該テンプレートに堆積させる工程;該金属被覆テンプレートを、更なる金属の堆積の前に洗浄する工程;該金属被覆テンプレート材料を分離する工程;該テンプレート材料の少なくとも一部分を熱的に除去する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリス型(monolithic)ポリマー、金属及びセラミックナノ構造マイクロ多孔質発泡体材料又は階層的多孔構造(hierarchic pore structure)を有する複合体としてのこれらの組み合わせの作製に関する。本発明において、これらの材料は、下記に詳細に記載される一般的手順に従って製造される。
【背景技術】
【0002】
膜、粉末、顆粒又はモノリス(monolith)のいずれかの形態の多孔質材料は、膜処理、触媒/触媒担体、酵素/真菌/細菌/哺乳類細胞の支持体、軽量構造/機能材料、並びに最近ではマイクロ反応器及びマイクロ生物反応器の範囲にわたる幾つかの重要な用途を有する。孔径、孔形状、孔連結性及びこれらの分布、孔容量率、材料の化学−生化学的性質、機械的強度及びその温度依存性が、特定の用途において重要である。
【0003】
階層多孔質構造を有する触媒
触媒は反応速度及び化学変換を促進するが、触媒部位への反応物の接近可能性及び触媒部位からの生成物の除去は、触媒の潜在能力を最大に発揮するために重要である。担持触媒系は、これらの条件のために意図されている。触媒は、担体に薄膜として堆積している(deposited)又はペレットとして使用される、のいずれかである。これらの2つの技術は特定の欠点を有し、被覆系において、触媒の接着は、不均一で弱い可能性があり、同時に、触媒内部の活性部位への接近可能性は、低い多孔性、小型孔径及び連結性によって妨げられている。したがって、触媒反応が移動により制限されている場合、担体材料それ自体が移動過程を限定するので、そのような系であっても触媒部位への適切な接近可能性を提供することができない。
【0004】
近年、いわゆる「構造化触媒(structured catalysts)」がこれらの問題に対処するために利用可能になっている。ここで、触媒担体は、多くの場合、事実上反応器を形成し、同時に静的混合機として作用するマクロ多孔質発泡体又はモノリスの形態である。過度に圧力を低下させることなくモノリス型触媒担体の表面積を増加するために、マクロチャンネル系(micro−channel systems、自動車産業において触媒コンバーターとして使用される)が用いされる。これらの系において、局所的な流体力学的条件のみならず、触媒被覆厚も制御して、十分に画定された触媒反応器を得ることができ、これらは、常に、充填層又は撹拌槽型配置の触媒粒子を用いる反応器よりも性能が優れている。モノリス型反応器は、固定床の利点(取扱いが容易)と乱流撹拌槽反応器(激しい接触)の利点を組み合わせ、同時に狭い滞留時間分布を提供し、不十分な分布及び規模拡大の問題を回避する。
【0005】
非多孔質/低多孔性の壁を有するモノリス型触媒系も、費用、低触媒装填、モノリスチャンネル壁上の触媒被覆の一体性、及び触媒部位への部分的な接近可能性しか提供しない2つの独立して制御されている長さスケールの存在などの欠点を被っている。ナノサイズの触媒部位の接近可能性は、心臓血管系又は臓器(肝臓、腎臓、肺)また植物養分循環系など自然界において遍在している階層チャンネル又は孔ネットワーク構造によって、最も効果的に達成される。これらの系において、主な生物物理−化学過程は、これらの過程の多くが移動に制限されているので、主に分子/ナノスケールで制御されており、一方、反応物/生成物の連続供給及び除去は、直径が次第に大きくなる毛管/孔を介して達成される。そのような系は、マイクロ−ナノスケールの生物物理/化学的機能特性を、単一臓器容量あたり最適な表面積(触媒変換のために)で機能的連結網目組織(細胞−細胞連絡)を介してマクロ系(臓器)内に組み込んだ最適な構造を提供する。フラクタル様メソからマクロ孔径分布を有するそのような階層構造化触媒系は、増大した表面積及び接近可能性によって、並びに触媒材料が物理的強度及び一体性を提供する全体構造も形成するという事実によって、より効率的であり、頑丈になることを予測することができる。
【0006】
孔径の階層を有する多孔質材料の調製
約100μmから数ナノメートルの範囲の孔径を有する新規階層多孔質触媒の設計において、最初の工程は、階層構造を得るために、制御された大きさを有する構造を得ること及びテンプレート(template)としてそれらを使用することである。テンプレートには、球状ラテックス又はカーボンナノ粒子/カーボンナノチューブ、マクロ及びマイクロエマルション二次元マイクロ成形体、並びにミセル又は基材のテンプレート化が含まれる。幾つかのテンプレートに基づいた合成の際に、階層的多孔構造が現れる。
【0007】
階層的多孔構造を有するモノリス型の形態の触媒は、高内相(high internal phase)エマルション(HIPE)重合経路により調製されるマクロ多孔質ポリマー材料を使用する、流動条件下での無電解金属堆積を使用して得られている。これらのポリマーは、一般に、ポリハイプ(PolyHIPE)ポリマーとして知られており、加工経歴を反映している。これらのポリマーを、エマルション段階での成形に対する受容力に起因して、任意の大きさ及び形状を有する粒状形態又はモノリスのいずれかに調製することができる。加工経歴及びHIPEの組成に応じて、ポリハイプポリマーは、約10000μmからナノメートルの範囲の径範囲にわたって、階層孔及び相互連結を有することができ、同時に、孔容量は、実用的な用途のために97%までの高さに達することができる。これらを、バイオプロセス/化学処理の強化及び小型化を含む異なる用途のために化学的及び生物学的に機能化することができる。ここで、ポリハイプポリマー、並びに他の多孔質材料(ガラス繊維綿などの炭素供給源又は非炭素供給源を含有する)をテンプレートとして使用して、金属を無電解堆積し、続いて得られた構造体を熱処理して、孔の階層を有するモノリス形態の触媒反応器を得る。ポリハイプポリマーの多様性は、孔構造を多様な範囲の大きさにわたって制御することができるという事実に由来する。他の担持系も使用され、炭素フェルト、セラミックモノリス、ナイロン繊維マット、ガラス綿、金属線、炭素繊維、編織布である。これらの材料の巨視的な外観を図1に示す。
【0008】
無電解金属堆積
無電解金属堆積技術は、ほぼ一世紀を経ている。この技術の主な応用には、耐腐食、耐摩耗被覆、並びにマイクロ電子工学が含まれる。非金属基材を伴う大部分の無電解堆積の応用では、表面の前処理(増感/活性化)が必要である。このことは、触媒活性を有する金属を堆積するために、SnCl、PdCl及びAgNOなどの金属溶液に表面を暴露することを伴う。被覆の平滑性は、所望の視覚的、機械的及び化学的特質をもたらすために必須である。
【0009】
塩の水溶液による金属の化学堆積は、反応種の間に電子移動を伴う酸化及び還元(レドックス)反応の両方の電気化学的機構を有する。最も簡単な形態の化学めっきは金属置換反応を通じて行われるものであるが、これは、溶解(陽極基材)金属の表面が溶液からのより貴金属性の高い金属の陰極析出で覆われると、持続することができない。したがって、置換反応による化学めっきは、実用的な用途が少ない。
【0010】
基材を消費することなく化学堆積により厚い堆積物を連続的に蓄積するためには、堆積は、基材に対して初期的に、かつ独占的に生じなければならず、続いて初期の堆積物上に堆積を続ければならない。名称が示唆するように、無電解めっき(堆積)は、外部電力を使用することなく、水溶液から金属を基材に連続的に堆積することである。一般に、無電解めっきは、金属イオンの水溶液に浸漬された触媒性の基材の表面のみにおける、堆積物それ自体の触媒作用を介した基材への連続的堆積による金属イオンの選択的還元によって特徴付けられる。堆積物が還元反応を触媒するので、用語「自己触媒」も、めっきのプロセスを表現するために使用される。
【0011】
無電解ニッケル(EN)めっきは、使用されている最も重要な触媒めっき過程である。EN被覆の物理的−化学的な特性は、その組成、並びにENめっき浴の堆積条件によって決まる。典型的には、ENめっき浴の構成成分は、下記のものである。
1.金属(ニッケル)イオン供給源、
2.還元剤、
3.錯化剤、
4.安定剤/抑制剤、
5.エネルギー。
【0012】
EN技術において、好ましいニッケルカチオン供給源は硫酸ニッケルであり、一方、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルなどの他のニッケル塩が、非常に限定された用途において使用される。還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン及びヒドラジンが慣用的に使用される。これらの還元剤は、それぞれ2つ以上の反応性水素を含有する点において構造的に類似しており、金属還元は、還元剤の脱水素化の結果である。金属イオン堆積の経路は複雑であり、還元剤の種類によって左右される。リン又はホウ素を含めることは、ニッケル合金(Ni−P及びNi−B)の形成をもたらし、それは続いて堆積物の特性を決定する。EN堆積物の一般的な性質は、下記である。
1.ニッケルの還元は、常に、水素ガスの発生を伴う。
2.堆積物は純粋なニッケルではなく、使用される還元剤に応じてリン、ホウ素又は窒素を含有する。
3.還元は、特定の金属の表面上においてのみ生じるが、堆積金属上においても生じなければならない。
4.水素イオンは、還元反応の副産物として生成される。
5.金属の堆積における還元剤の利用は、100パーセントを著しく下回る。
6.堆積ニッケルと消費される還元剤とのモル比は、通常、1以下である。
【0013】
稼働条件に応じて、還元剤の種類及びめっき浴におけるその濃度、したがって被覆におけるニッケルの濃度は、異なる。ホウ素浴は、90〜99.9%のニッケル範囲のニッケル濃度を有する堆積物を生じることができるが、ヒドラジンは、ニッケルが99%を超えるニッケル堆積を生じることができ、還元剤をほぼ100%利用する。
【0014】
錯化剤は、多くの場合にニッケルめっき溶液に使用され、通常、有機酸又はそれらの塩である。しかし、無機ピロリン酸アニオン及びアンモニウムイオンも知られている。錯化剤の機能には、下記が含まれる。
1.めっき溶液を緩衝して、急速なpHの減衰を防止すること。
2.ニッケル塩の沈殿を防止すること。
3.遊離ニッケルイオンの濃度を低減すること。
【0015】
安定剤は、金属沈殿が溶液中の水素ガス発生を伴って自己触媒的に生じる場合に、めっき浴分解を防止するためにめっき溶液に使用される。そのような浴分解は、コロイド粒子の表面のヒドロキシルイオンの存在下での、金属の局所的還元によってもたらされる。そのような粒子は、外来性でありうるか又は高pHで金属塩の沈殿により作り出される。安定剤は、触媒抑制剤(catalytic inhibitor)として作用し、以下の群に分類することができる。
1.第VI族元素:S、Se、Teの化合物、
2.酸素含有化合物:AsO−2、IO−3、MoO−4
3.重金属カチオン:Sn+2、Pb+2、Sb+3
4.不飽和有機酸:マレイン酸、イタコン酸。
【0016】
安定剤の作用濃度は、安定剤の群番号によって増加し、群1及び2の安定剤ではppm未満から数ppmであり、群3の安定剤では10−5M〜10−3Mであり、群4の安定剤では10−3M〜10−1Mである。めっき浴の撹拌(特に、酸素のバブリングによるもの)も、安定性を増加すると思われる。
【0017】
無電解めっきの所要エネルギーは、通常、熱的に供給される。堆積率は温度に対して指数関数的に増加し、したがって、このことは金属被覆の形態(morphology)に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
階層的多孔構造を有するモノリス型の金属又は金属複合体を製造する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、階層的多孔構造を有するモノリス型の金属又は金属複合体を製造する方法であって、
多孔質構造を有するテンプレート材料を選択する工程;
該テンプレート材料を、構造化される1つ又はそれぞれの該金属の溶液と接触させる工程;
1つ又はそれぞれの該金属をテンプレートに堆積させる工程;
該金属被覆テンプレートを、更なる金属の堆積の前に洗浄する工程;
該金属被覆テンプレート材料を分離する工程;
該テンプレート材料の少なくとも一部分を熱的に除去する工程
を含む方法が提供される。
【0020】
製造される金属又は金属複合体材料は、触媒の目的に適している良好な構造一体性及び高い表面積を有する。
【0021】
好ましくは、テンプレートはポリハイプポリマーである。そのような材料は、高度に制御可能な多孔性を有する。
【0022】
場合により、ポリハイプポリマーはスルホン化されて、ポリマーテンプレートの親水性を増加する。
【0023】
都合良くは、ポリハイプポリマーテンプレートは、1〜300ミクロンの範囲の大きさの孔を有する。
【0024】
有利には、ポリハイプポリマーのエマルションは、多孔質セラミック材料の孔の中で密接に混合され、続いて重合され、このことは堆積した金属がセラミックマトリックスに組み込まれることを可能にし、したがって、増強された強度を付与する。場合により、テンプレートは、1つ又はそれぞれの該金属が堆積している繊維を有する炭素フェルトである。
【0025】
場合により、テンプレートはナイロン繊維である。
【0026】
場合により、テンプレートはガラス繊維である。
【0027】
場合により、テンプレートは金属繊維である。
【0028】
好ましくは、ポリハイプポリマー材料は、更に好ましくはシラン材料で被覆されているシリカ粒子を組み込む。シランは、場合によりアミノ基で官能化されている。更に場合により、シリカ表面は、マグネシウムで富化されている。
【0029】
好ましくは、ガラス繊維はシランカップリング剤で被覆されている。
【0030】
場合により、金属繊維はシランカップリング剤で被覆されている。
【0031】
好ましくは、テンプレートが除去される温度は600〜1000℃であり、より強い生成物を得るため、特に好ましくは800℃である。
【0032】
堆積される1つ又はそれぞれの該金属は、好ましくは、ニッケル、タングステン、コバルト、銅、亜鉛、レニウム又はパラジウムから選択される。特に好ましくは、該金属はニッケルである。
【0033】
堆積付着は、還元剤により都合良く達成され、該還元剤は、更に都合良くは、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム又はヒドラジンから選択される。
【0034】
ここで本発明は、以下の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】テンプレート材料を示す:(a)ポリハイプポリマー(PHP)、(b)炭素繊維フェルト、(c)セラミックモノリス、(d)ナイロン繊維フェルト。
【図2】(a)及び(b)本方法に適した装置を例示する。
【図3】(a)〜(g)ニッケル−リン構造体のSEM顕微鏡写真である。
【図4】粒子構造に対するリン濃度の影響を示す。
【図5】ニッケル−リン構造体の内部コアを示す。
【図6】テンプレートポリハイプポリマーのSEM顕微鏡写真である。
【図7】(a)〜(d)55℃の温度でのポリハイプポリマーへのニッケル−ホウ素(モル比0.5)の堆積を示す。
【図8】(a)〜(c)90℃の温度でのポリハイプポリマーへのニッケル−ホウ素(モル比0.5)の堆積を示す。
【図9】(a)〜(c)90℃の温度でのポリハイプポリマーへのニッケル−ホウ素(モル比0.2)の堆積を示す。
【図10】(a)〜(d)600℃で熱処理した後でのPHPへのNi−Bの無電解堆積の500×倍のSEM顕微鏡写真である:a)90℃でのPHPへの堆積、b)75℃でのPHPへの堆積、c)55℃でのPHPへの堆積、d)40℃でのPHPへの堆積。
【図11】(a)〜(d)600℃で熱処理した後でのPHPへのNi−Bの無電解堆積の10000×倍のSEM顕微鏡写真である:a)90℃でのPHPへの堆積、b)75℃でのPHPへの堆積、c)55℃でのPHPへの堆積、d)40℃でのPHPへの堆積。
【図12】(a)〜(d)600℃で熱処理した後でのPHPへのNi−Bの無電解堆積の25000×倍のSEM顕微鏡写真である:a)90℃でのPHPへの堆積、b)75℃でのPHPへの堆積、c)55℃でのPHPへの堆積、d)40℃でのPHPへの堆積。
【図13】(a)〜(b)熱処理後に塩化ニッケル及び硫酸ニッケルをそれぞれ使用して生成した粒子外皮を示す。
【図14】(a)〜(b)塩化ニッケル及び硫酸ニッケルをそれぞれ使用して生成したディスクの外面を示す。
【図15】塩化ニッケルを使用して形成された金属ディスクの断面である。
【図16】ニッケル−タングステン構造体の上面である。
【図17】ニッケル−タングステン構造体における金属粒子の構造を示す。
【図18】ニッケル−タングステン構造体における金属粒子の構造を示す。
【図19】ニッケル−タングステン構造体における金属粒子のナノ多孔質構造を示す。
【図20】セラミックモノリス/ポリハイプポリマー構造体を示す。
【図21】セラミックモノリス/ポリハイプポリマー構造体を示す。
【図22】(a)〜(b)ポリハイプポリマー及びNi−P金属発泡体が充填されたセラミックモノリスディスクを示す
【図23】セラミックモノリス構造体内のニッケル−リン発泡体を示す。
【図24】炭素フェルト繊維に堆積したニッケル−リンを示す。
【図25】炭素フェルト繊維に堆積したニッケル−リンを示す。
【図26】炭素フェルト繊維に堆積したニッケル−リンを示す。
【図27】(a)〜(c)炭素フェルト繊維上に堆積したニッケル−リンの多孔質外皮を示す。
【図28】(a)〜(b)図24〜27に例示されている電気メッキ繊維を示す。
【図29】図24〜27に例示されている電気メッキ繊維を示す。
【図30】図24〜27に例示されている電気メッキ繊維を示す。
【図31】熱処理後の図30の繊維を示す。
【図32】熱処理後の図30の繊維を示す。
【図33】(a)〜(b)ナイロン繊維に堆積したニッケル−リンを示す。
【図34】(a)〜(c)熱処理後の図33の繊維を示す。
【図35】(a)〜(c)図34の金属繊維におけるナノ孔(nonopores)を示す。
【図36】X線回析(XRD)による図35の繊維の元素分析を示す。
【図37】(a)600℃及び(b)1000℃で熱処理された金属繊維の断面図を示す。
【図38】800℃で熱処理された金属繊維の断面図を示す。
【図39】金属繊維内のチャンネル(channel)を示す。
【図40】金属繊維内のチャンネルを示す。
【図41】金属繊維内のチャンネルを示す。
【図42】ガラス繊維綿(glass fibre wool)に堆積したニッケル−リンを示す。
【図43】図42の繊維の断面図である。
【図44】図42の繊維の断面図である。
【図45】老化させた(aged)ニッケル−リン構造体を示す。
【図46】図45の繊維の粒子構造を示す。
【図47】図45の繊維の老化させた粒子構造を示す。
【図48】(a)〜(b)老化させたパラジウムめっきニッケル−リン発泡体を示す。
【図49】図48の発泡体内のチャンネルの存在を示す。
【図50】老化させたパラジウムめっきニッケル−リン発泡体を示す。
【図51】増加した倍率における図50の発泡体の内部構造を示す。
【図52】老化させたパラジウムめっきニッケル−リン発泡体を示す。
【図53】(a)〜(f)Ni−Co−P発泡体の表面を示す:a)表面及び内部構造を示す全体図;(b、c)表面構造の詳細;(d、e、f)内部構造の詳細。
【図54】Ni−Re−P発泡体構造のSEMである。
【図55】(a)〜(c)Ni−Re−W−P金属発泡体の構造を示すSEMである。
【図56】(a)〜(d)ポリハイプポリマー/シリカ(Bindzil−30)複合体構造を、異なった増加する倍率で示すSEMである。
【図57】(a)〜(d)マグネシウム被覆ポリハイプポリマー/シリカ(Bindzil−30)複合体構造を、異なった増加する倍率で示すSEMである。
【図58】(a)〜(d)600℃での熱処理後のマグネシウム被覆ポリハイプポリマー/シリカ(Bindzil−30)複合体構造を、異なった増加する倍率で示すSEMである。
【図59】(a)〜(d)ポリハイプポリマー/シリカ複合体構造に堆積したニッケル−リン合金の、異なった増加する倍率でのSEMである。
【図60】(a)〜(c)スチレン(38%)及びビニルトリメトキシシラン(30%)を油相においてコモノマーとして使用し、水相開始剤を用いて得られたポリハイプポリマー構造を示す。
【図61】(a)〜(c)スチレン(63%)−ビニルトリメトキシシラン(5%)を油相においてコモノマーとして使用し、水相開始剤を用いて得られたポリハイプポリマー構造を示す。
【図62】(a)〜(b) 図60及び61に記載されたサンゴ型(coral)ポリハイプポリマー構造と比較した通常の開放型ポリハイプポリマー構造を示す、油相開始剤(ラウリルペルオキシド1重量%)を使用して得られたスチレン(63%)−ビニルトリメトキシシラン(5%)ポリハイプポリマーの構造である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一般的方法
材料が製造される方法を、以下のように一般的に要約することができる。
1.後で金属又はシリカを堆積するために使用される高度に多孔質のポリマー材料が製造されるテンプレートの製造。
2.シリカの堆積は、テンプレート材料が製造された段階で達成することができる。この場合、この材料は、シリカ−ポリマー複合体を構成する。これらの材料は、主にシリカによりもたらされる非常に大きい表面積を有する。これらの材料の製造は、高内相エマルション(HIPE)形成、続く架橋及び重合を介して達成される。これらの材料は、シリカが存在しない場合、ポリハイプ(PHP)ポリマーとして知られている。HIPEの水相は、水相に懸濁しているシラン被覆シリカ粒子を(50%まで)含有する。重合すると、シリカ粒子は、多孔質ポリマーの壁に沈殿する。
3.次にそのようなシリカ−ポリマー複合体は安定化され、表面は化学的に改質されて、二酸化炭素吸収などにおける用途のため(アミン修飾により)又は触媒作用のために官能基の性質を得る。
4.ポリハイプポリマー又は他の適切な多孔質材料を、金属又は合金を含む金属類の無電解堆積用のテンプレートとして使用することができる。
5.これらのポリマー−金属/合金又はシリカに基づいた複合体が加熱処理されると、ポリマーテンプレートは消滅し、ナノ構造が金属/合金又はセラミック相内に形成され、このナノ構造は、多くの場合に触媒性である。そのような触媒部位は、相互連結する穴の網目組織を介して接近可能である。
6.シリカPHPが金属堆積用のテンプレートとして使用されるとき、得られるポリマー−シリカ−金属/合金系は複合体を形成する。熱処理されると、ポリマーは燃焼により消滅するが、得られる複合体は、壁が多孔質触媒性金属/合金構造により崩壊から保護されているシリカ粒子でできている、多孔質複合体である。この複合体のシリカと金属の部分は、両方とも化学的に改質されて官能化されうる。
7.シリカ/ポリマー複合体は、反応性ビニルシランをコモノマーとしてHIPEの相に使用することによっても得ることができ、重合すると、得られる多孔質発泡体の壁は半透明になる。
8.これらのモノリスから、化学変換においてより効率的なマイクロ反応器を作製することができる。
9.ポリハイプポリマーが例えばスルホン化を介して親水性である場合、シリカ分散体は、PHPの壁に吸着されうる。
【0037】
上記の要約は、本発明の一般的な範囲を示し、そのような材料の応用を記載する。
【0038】
ポリハイプポリマーの金属化
それぞれの無電解ニッケル堆積実験において、5gの塩化ニッケル及び20gの次リン酸ナトリウム水和物が両方とも300mLの再蒸留水に溶解している溶液を使用した。溶液のpHを、40mLの水酸化アンモニウム溶液(濃度35%)の添加により11.5に調整した。この溶液を、定期的に水で洗浄しながら、テンプレートポリマーに通過させた。この手順を、テンプレートの厚さにわたって均一の金属分布をもたらすために、堆積方向を逆にして繰り返した。
【0039】
ポリハイプポリマー(PHP)テンプレート
PHPテンプレートを、油相中の78%スチレン、14%Span80及び8%ジビニルベンゼンを使用して調製した。水相は、再蒸留水中の1%過硫酸カリウムを含有した。PHPテンプレートの相容量(phase volume)は、高開放孔ポリマーを得るために95%であった。エマルション調製は、300rpmの回転速度を使用する混合機により実施した。投与は1分間で完了し、更に2分間の混合を実施した。水相の温度は60℃であった。
【0040】
得られたポリマーを水及びイソプロパノールで洗浄し、孔径を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して評価した。金属堆積を促進するために、ニッケルイオン(塩化ニッケルなど)を水相に含めることが可能である。このことは、また、金属浴を使用することなく幾つかの金属の均一な堆積を確実にするが、エマルションが不安定になり、エマルションの不安定化によって、重合の際に約5000ミクロンに達する非常に大型の孔を形成する可能性がある。液滴の合体及び重合過程が同時に生じるので、完全なエマルション分解は生じない場合があるが、代わりに、得られたポリハイプポリマーは、小型の一次孔の中に分散された非常の大型の合体孔(coalescence pore)を有する場合がある。
【0041】
堆積装置
金属堆積の流れ図を図2(a)に示す。金属堆積セルを、図2(b)に示されているように構成した。堆積セルは、ディスク(厚さ4mm、直径26mm)の形態のポリハイプポリマーテンプレートを収容する。図2(b)を参照すると、PHPテンプレート試料(S)は、PHPの支持体として作用するホルダー(A)を中ぐりしているテフロン(登録商標)流路チャンネル(C)の端部における2つテフロン(登録商標)流分配器(D)により挟まれている。次にこのアセンブリー全体を、バンドヒーター(E)を使用して電気加熱される2つの円形真鍮ブロック(B)の間に設置した。PHPテンプレートを真鍮ホルダーと直接接触させて、直接加熱を提供することに留意すること。PHPテンプレートの温度を、ポリマーと接触している熱電対(E)を使用してモニターした。金属浴液と直接接触したフローセルの全ての部分は、流路チャンネルへの金属堆積を防止するためにテフロン(登録商標)製であった。金属浴溶液を室温に保持し、シリンジポンプを2mL/分の速度で使用して、堆積セルの中へポンプで送った。ポリマーテンプレートの孔の中に金属堆積を起こすために、溶液の温度を93±4℃に上昇した。これを達成するために、堆積セルに脱イオン水を40ml/分の速度により97℃で5分間投入した。この後に、金属浴溶液のシリンジポンプ送りを行った。50mlの溶液をポンプで送った後、PHPテンプレートの温度は、90℃未満に減少し、堆積が停止したとき、高温洗浄水を取り換え、このサイクルを繰り返した。300mlの金属浴溶液を使用した後、流れの方向を、十分な量の金属が堆積するまで逆転した。より均一な堆積を得るために、それぞれ50mlの堆積及び洗浄の後で流れの方向を逆転することが可能である。
【0042】
ニッケルリン合金
2.3.1.ニッケル−リン浴
300mlの水の中、
塩化ニッケル:5g
次リン酸ナトリウム水和物:20g
水酸化アンモニウム溶液(35%):40ml(pH=11.5にpHを調整)
【0043】
それぞれの無電解ニッケル堆積実験において、5gの塩化ニッケル及び20gの次リン酸ナトリウム水和物が両方とも300mLの再蒸留水に溶解している溶液を使用した。溶液のpHを、40mLの水酸化アンモニウム溶液(濃度35%)の添加により11.5に調整した。この溶液を、定期的に水で洗浄しながら、ポリマーテンプレートに通過させた。テンプレートの厚さにわたって均一の金属分布をもたらすために、この手順を、堆積方向を逆にして繰り返した。
【0044】
金属堆積は、もはや浴溶液を、テンプレート材料を通過させることができなくなったときに完了した。およそ3.2gの金属堆積が、ニッケル/リン又はニッケル/ホウ素を使用したときに達成され、一方、構造体をもたらすニッケル/タングステン浴では、値は0.9gであった。全ての場合において、ポリマーテンプレートの重量は、0.085gであった。ポリマー/金属堆積物を、加熱時間が全ての場合において60分間であるように、炉中で10℃/分の速度で600℃まで徐々に加熱した。目標温度に達したとき、材料を1時間保持し、続いてオーブンの外に取り出して冷却させた。
【0045】
次にこれらの材料を、図3(a)〜(g)に示されているように、走査電子顕微鏡法(SEM)により検査した。それぞれのテンプレートと金属の組合せの効果を示すため、SEM検査から得られる以下の特性を考慮する。
1.製造される金属ディスクの周囲の外皮形成。
2.外皮構造。
3.外皮厚。
4.内部構造(マイクロ孔形成)。
5.粒子形成(マイクロ孔は粒子の堆積により形成される)。
6.粒子表面構造。
7.粒子内部構造。
【0046】
図3は、以下の特徴を示す。先ず、図3(a)及び3(b)は、ニッケル−リン外皮金属粒子の内部構造の存在及び粒子内部コアの表面構造をそれぞれ示す。図3(c)は、低倍率の外皮及び高密度な表面構造からより開放された構造への変化を示す。同じ効果がより高い倍率で図3(d)に示されている。金属粒子の合体により形成されているマイクロ孔が形成されていることが分かる(図3(e)及び3(f))。図3(f)では、粒子がナノ構造を有することが分かる。粒子の詳細な表面構造は、図3(g)に示されている。
【0047】
更に、図4に示されているものは、内部粒子構造及びリン濃度の影響である。
【0048】
ニッケル−リン構造体の内部コア構造の高倍率の外観が図5において示されている。これは、金属粒子の合体によるマイクロ孔の形成及び非スルホン化ポリハイプポリマーテンプレートにより得られる試料と同様の金属粒子におけるナノ構造の存在を示す。スルホン化の効果(下記を参照すること)は、粒子内の高度に平滑な金属コアの形成(図5)であると思われる。
【0049】
ポリハイプポリマー−ニッケル−ホウ素構造体の金属化
無電解堆積液
それぞれの金属堆積実験において、以下のNi−B浴組成を使用した。
●0.19Mの塩化ニッケル−ニッケルイオン供給源
●0.38Mのジメチルアミンボラン−還元剤
●0.27Mの酢酸ナトリウム−錯化剤
●3.88 10−4Mのラウリル硫酸ナトリウム−安定剤
最初に、塩化ニッケルを300cmの脱イオン水に室温で溶解し、続いて、ジメチルアミンボラン、酢酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムを加えた。混合を、明澄な浴溶液が得られるまで続けた。溶液のpHを、十分な量の水酸化アンモニウム溶液(濃度35%)の添加により7.2に調整した。混合は、プラスチック被覆磁気撹拌機を溶液調製の全ての段階において、並びに堆積段階の際に使用して実施した。
【0050】
十分な金属が堆積した後、ポリハイプポリマー−ニッケル−ホウ素構造体を破壊し、破断面を、走査電子顕微鏡で検査して、ニッケル−ホウ素堆積物の大きさ及び分布を決定した。次に全構造体又は構造体の一部分を、ポリマーテンプレートを分解するために加熱処理した。ポリマーを分解した後(600℃)、更なるSEM検査を実施するか又は金属化構造体を更なる熱処理に付した。
【0051】
0.085gのポリマーテンプレートを使用して、およそ2.0±0.3gの金属堆積を得た。次にポリマー/金属堆積物を、加熱時間が全ての場合において60分間であるように、炉により最大速度20℃/分で600℃又は800℃又は1000℃まで徐々に加熱した。目標温度に達したとき、材料を、オーブンの外に取り出して冷却させる前に、更に1時間その温度で保持した。続いて、これらの材料をSEMで検査した。
【0052】
ポリハイプポリマーテンプレートの典型的なSEM外観が図6に示されており、平均孔径が60μmの高度に開放された微孔性の孔構造を示す。全てのポリマーテンプレートを、同一の加工条件により調製した。
【0053】
堆積挙動
異なる温度において及び2つの異なるニッケル/ホウ素モル比をめっき浴で使用して、溶液から多孔質ポリハイプポリマーの壁へのニッケル−ホウ素の堆積挙動を調査した。結果を図7〜9に示す。図7(a〜d)において見られるように、堆積は、壁の端部から始まると思われる。しかし、金属還元の自己触媒性に起因して、堆積が最初に生じる部位は、図7(b、c)に示されているように、更なる堆積の部位であり続けると思われる。初期の種(seed)堆積は小さいが(約0.5μm)、これらは、温度が55℃のとき及びニッケル/ホウ素のモル比が0.5であるとき、図7(a〜c)に示されているように、凝集(agglomerate)して1〜5μmの大きさの大型粒子を形成すると思われる。ニッケル/ホウ素の比が同じ0.5で堆積温度が増加すると、凝集粒子の大きさは依然として同じであるが、堆積はより均質に分布する。しかし、図7(a〜c)及び8(a、b)に示されているほど多くの凝集粒子は存在しない。55及び90℃で調製された構造体の全体構造が、図7(d)及び8(c)に示されている。
【0054】
堆積温度が90℃の場合のニッケル/ホウ素の比の効果を示す。ニッケル/ホウ素の比が0.5から0.2に減少すると、堆積はより均一となると思われ、金属粒子の大きさは、図8(a、b)及び9(a〜c)の比較が示すように、凝集の低減によって低減する。しかし、これらの比較は定性的でしかなく、加工条件及びめっき浴組成を最適化する指針として役立てることを意図するものである。
【0055】
熱処理
熱処理は、ポリマーを600℃で1時間燃焼すること及び得られた多孔質金属を600℃で更に1時間焼なまし(anneal)することの2段階で実施される。
【0056】
ニッケル−ホウ素多孔質構造体が、3つの異なる倍率で図10〜12に示されている。マクロスケール及びナノスケールの構造に対する堆積温度の効果が、図10〜12(a〜d)に示されている。両方の長さスケールにおいて構造体が温度により影響を受けていることが分かる。堆積温度が高い(90又は75℃)とき、マイクロメートル未満の大きさの小型金属粒子により骨格構造が形成され、一方、堆積温度が低い(40℃)とき、より大型の凝集粒子が骨格構造を形成する。ニッケル−リン系により得られるマクロ構造と異なり、孔は、より独立しているようであり、堆積温度が高い(90又は75℃)とき、高度な連結性を示す。堆積温度が低下すると、ニッケル−ホウ素系は、ニッケル−リン系と同様に見えるが、後者の場合では、5〜15μmが観測されるのに対して、1〜2μmの金属粒径を有する。しかし、ニッケル−ホウ素合金における連結性は、ニッケル−リン系により得られるものよりもはるかに良好である。したがって、これらの差の主な原因は、堆積段階で得られる金属堆積物の大きさである。
【0057】
ニッケル−ホウ素系とニッケル−リン系の別の重要な差は、前者の場合における外皮−コア形成の不在である。約25μmの厚さの高密度外皮がニッケル−リンの堆積の際に形成され、このことは実際に多孔質ニッケル−リン合金に強度をもたらす。外皮の不在にもかかわらず、多孔質ニッケル−ホウ素合金は、ニッケル−リン合金よりも強度があり、高い相容量を有する。
【0058】
前記において示されているように、ニッケル−ホウ素系及びニッケル−リン系の無電解めっき品質は類似しており、2D表面における両方の系の堆積挙動(粒子の大きさ)が類似していることを示している。しかし、拘束環境(confined environment)内での表面への堆積は異なると思われ、したがって、マクロ環境内の物質の挙動は、非拘束(unrestricted)2D表面における挙動と異なることの、別の証拠を提供する。
【0059】
ポリハイプポリマーの孔内のニッケル−ホウ素の堆積挙動を、温度及びニッケル−ホウ素比の関数として研究した。より高い堆積温度(約70〜90℃)は、粒径が約2μmに増加するより低い堆積温度(約55〜40℃)と比較して、より小さいサイズのより小さい(約0.5μm)金属粒子の堆積をもたらしたことを示した。基材ポリマーが600℃の熱処理後に分解したとき、得られた多孔質金属のマクロスケール及びナノスケール構造は、初期の金属粒子の大きさにより影響を受けた。より小さい堆積物は、高度な連結性を有するより独立した金属孔をもたらした。高いホウ素濃度も、より小さい粒径を生じた。外皮−コア構造が形成されるニッケル−リン系と異なり、小さいサイズの金属粒子堆積物の結果として、ニッケル−ホウ素系において外皮は存在しない。更に、ニッケル−リン浴は、大きな(10〜20ミクロン)粒子を生じ、一方、ニッケル−ホウ素組成物は、より小さい粒子(約1ミクロン)を生じた。塩化ニッケルの代わりに硫酸ニッケルを使用すると、下記に示されているように開放孔外皮がもたらされた。
【0060】
外皮形成に対するニッケル供給源の効果
ここで、2つの異なるニッケル供給源、すなわち、塩化ニッケル及び硫酸ニッケルを使用した。顕微鏡検査は、両方のニッケル供給源を使用して製造した金属発泡体の内部構造が類似していることを示した。しかし、金属発泡体ディスクの外面において異なる特徴があった。
【0061】
二成分ニッケル−リン合金又はニッケル−ホウ素合金を製造するニッケル供給源として、塩化ニッケルをめっき浴に用いた。還元剤が次亜リン酸ナトリウムである場合、塩基性めっき浴により、Ni−P堆積物が生成された。一方、ジメチルアミンボランが還元剤として使用される場合、酸性浴が、Ni−B堆積物を生成するのに最良の結果を生じた。更に、全種類の二成分、三成分及び四成分ニッケル−リン合金と比較して、全く異なる内部構造が製造された。
【0062】
他の元素(単数又は複数)の添加が、金属発泡体の特性を増強するために必要な場合、硫酸ニッケルをニッケル供給源として選択した。二成分ニッケル−リン堆積物を硫酸ニッケルで生成する場合、めっき浴は好ましくは酸性であった。三成分又は四成分ニッケル合金の場合、硫酸ニッケル浴を一般に塩基性pH値で操作した。
【0063】
金属ディスクの内部構造を検査したとき、粒子形成、粒子形状及び粒径は、ニッケル供給源が塩化ニッケル又は硫酸ニッケルのいずれの場合でも非常に類似していることが観察された。更に、両方のニッケル供給源は、上記に説明した同じ熱処理に付された場合、同じの粒子外皮孔を生成すると思われた。
【0064】
例えば、粒子外皮は、塩化ニッケル及び硫酸ニッケルそれぞれにより製造された2つの試料により詳細に示されている(図13(a)及び(b))。これらは両方とも同じ温度で熱処理され、両方とも100nm未満〜250nmの粒子外皮粒径を有した。
【0065】
しかし、金属ディスクの外面を検査したとき、違いが認められた。塩化ニッケルにより製造された金属ディスクの外面において、厚く非常に強力な保護層(外殻)の形成が観察された。一方、硫酸ニッケルが使用される場合、ディスクの外面のいずれの部分においても外殻の形成はなかった。図14(a)及び(b)は、ニッケル供給源としての塩化ニッケル及び硫酸ニッケルそれぞれにより製造された2つの試料を示す。画像は金属ディスクの上面を撮ったものである。図14(a)の試料は、外殻形成のないディスクの上面である図14(b)の試料と比較して、かなり高密度であり、ほとんど孔を有さない外殻の全体的な外観を示す。二次構造が外面において完全に開放されており、外殻形成を有するディスクよりもはるかに接近可能であることが明白に分かる。
【0066】
ニッケル供給源としての塩化ニッケルにより製造された金属ディスクの断面が、図15に示されている。左端及び右端の外殻形成(ディスクの上面及び底面)が画像から分かる。画像から分かるように、外殻は高密度であり、比較的に低多孔質である。
【0067】
ポリハイプポリマー−ニッケル−タングステン構造体の金属化
ニッケル−タングステン浴
300mlの水の中、
硫酸ニッケル六水和物: 2.13g
次亜リン酸ナトリウム水和物: 8.83g
タングステン酸ナトリウム二水和物:10.49g
クエン酸ナトリウム: 9.69g
pH: 10.0
【0068】
ニッケル−タングステン二成分系を、ニッケル−リン系と同じ方法で堆積し、続いて600℃で2時間熱処理した(1時間の加熱及び1時間の硬化)。図16は、ニッケル−タングステン構造体の上面を高倍率で示し、前記の場合と異なり完全な開放構造の存在を示す。この構造は、試料の全体にわたって広がっている。図17において、ニッケル−タングステン構造体のマイクロ構造を形成する金属粒子の詳細な構造は、高倍率で、融合金属粒子におけるナノ孔の存在を示す。内部構造を分析すると、表面の粒子構造と類似した金属粒子の合体により形成されたマイクロ多孔質構造が明らかとなった(図18)。ここでも、これらの融合粒子は、図19に示されているようにナノ多孔質表面構造を有する。
【0069】
塩化ニッケルによって完全に堆積されたディスクは、およそ3.0gの重量を有するが、ニッケル供給源が硫酸ニッケルである場合、完全に堆積されたディスクは、およそ0.8〜1.0g重量を有する。この重量は通常であり、堆積は良好であった。
【0070】
一般領域(表面)のEDXは、各種元素の原子百分率が、ニッケル=72.77%;タングステン=5.01%;酸素=20.31%;リン=1.90%であったことを示す。
【0071】
基材の効果
セラミックモノリス
複合セラミック/金属支持モノリスを得るために、自動車の排気システムに慣用的に用いられるセラミックモノリスを使用した。セラミックディスクをHIPEの中に入れると、ディスクの全てのチャンネルがHIPEで充填された。重合をオーブンで実施した後、チャンネルは、PHPで完全に充填された(図20)。PHPとセラミック壁の境界にめっき溶液が流れ出す空間が残っていないので(図21)、セラミックチャンネル中のPHPは、金属化される準備が整った。
【0072】
セラミックディスクのチャンネル中のPHPを金属化した後、PHPを熱処理により除去した。セラミックディスクは600℃の熱処理に対して耐性があるので、残った構造は、金属発泡体で充填されたチャンネルを有するセラミックディスクであった。図22(a)及び(b)は、それぞれ、PHP及びNi−P金属発泡体で充填されたセラミックディスクチャンネルを示す。
【0073】
この場合のセラミックモノリスチャンネルの金属化は、Ni−Pにより実施した。都合の良いめっき溶液を使用して、チャンネルにNi−B又は多合金(polyalloy)を堆積することも可能である。
【0074】
金属構造のより厳密な検査は、金属発泡体が、一次孔の大きさの半分までになりうる相互連結孔により連結されている、約30〜40μmの大型孔を有する他のNi−P発泡体の典型であることを示した(図23)。
【0075】
炭素繊維フェルト
繊維フェルト(又はマット)の利点は、特定の容量内に繊維を拘束することによって、孔容量を調整できることである。炭素繊維フェルトの金属化は、繊維の周囲にNi−Pを堆積することにより実施した。適切なめっき溶液を選択することにより、繊維の周囲にNi−B又は多合金を堆積することが可能である。堆積は、各繊維がNi−P堆積物により完全に覆われるまで持続した(図24)。完全に堆積された炭素繊維の周囲の領域の拡大像(図24の小さな長方形に示されている)は、拡大画像から分かる堆積特性を示す。
【0076】
繊維の周囲の初期Ni−P堆積物は、図24の拡大画像で示されているように、球状粒子の形態であった。しかし、この段階(熱処理の前)においても、堆積物は、PHPの孔における金属堆積物より融合していた。堆積を続けると、繊維の周囲の堆積物の厚さが増加した。全ての繊維の周囲において堆積が十分な量になると、繊維の周囲の金属堆積物の壁厚は、およそ6.5〜8μmとなり、繊維全体の直径をおよそ30〜35μmにした(図25)。
【0077】
完全に堆積されたディスクを熱処理した後、炭素フェルトを熱分解して、金属繊維から構成される構造を残した。熱処理の後、金属堆積炭素繊維ディスクの一般領域をEDXで分析した。結果を表1に示す。
【表1】


熱処理の後、全ての金属繊維は、大きさが拡大し、部分的に融合したことが分かる(図26)。
【0078】
金属繊維に対する熱の別の効果は、テンプレート材料としてPHPを使用して製造されたNi−Pに基づいた発泡体と同様に、金属繊維の表面における多孔質外皮の形成である(図27(a)及び(b)及び(c))。金属繊維をより詳細に検査したとき、全ての繊維が同じ特性を示さなかったことが観察された。幾つかの繊維において、炭素繊維の除去により作り出された空間は、初期の金属堆積物により完全に充填されており、その周囲に多孔質外皮が形成された(図27(a))。一方、幾つかの金属繊維は、炭素繊維の除去により中空チャンネルを有し(図27(b))、最後に、幾つかの繊維は、貫通する開口チャンネルと伴にチャンネル空間の一部が金属堆積物で充填されていた(図27(c))。構造は、熱処理後では非常に強固であり、顕微鏡検査の破断面を得るために、4mm厚のディスクは、ハンマーでしか破壊することができなかった。
【0079】
金属化炭素フェルトの電気めっき
炭素繊維に金属を完全に堆積した後、各繊維の直径は金属堆積物によりほぼ二倍になったが、金属堆積炭素フェルトディスクは依然として多孔質であった。繊維は、熱処理の前に融合を始めることはなかった。
【0080】
ニッケル−クロム合金は、これらの高い強度及び高温に対する耐性によって産業用途において広く使用されている。したがって、無電解堆積物に第三金属を電気メッキする実験のため、クロム層を、炭素繊維の周囲のNi−P堆積物にめっきした。電気メッキは、Ni−P堆積炭素フェルトディスクを、下記:
●37.5gのCrO
●0.65gのHSO
の典型的なクロムめっき溶液に浸漬することにより実施した。めっき浴は、蒸留水の添加により250mlにした。クロムめっきは、1.5Aの電流により3.5時間実施した。
【0081】
繊維をクロムで電気めっきした後、Ni−P堆積繊維の表面の外観は、湾曲した顆粒状構造(図28(a))からより平滑な構造(図28(b))に変わった。Ni−P堆積繊維の30〜35μmの直径範囲は、クロムめっきの後、44〜50μmの範囲に更に拡大した(図29)。クロムめっき繊維の一般領域をEDXで分析し、結果を表2に提示する。
【表2】

【0082】
ほぼ全てのNi−P堆積物及び炭素繊維がクロムで覆われ、そのことが、表3.3.1における非常に高いクロム含有量の理由であった。銅は、金属堆積の前に炭素フェルトに最初から存在しており、幾つかの試料において、微量の銅が観測された。
【0083】
クロムめっきの後、1本の破断繊維の先端をEDX分析により検査した。EDXスポットを図30において見ることができ、結果を表3に提示する。炭素フェルトの炭素繊維は、温度が1000℃を超えて上昇するまで燃焼しないことに留意されたい。したがって、これらは金属発泡体に追加的な強度ももたらす。熱処理が600℃であったので、位置PO1における高炭素濃度は、炭素繊維の存在を示す。銅の存在は、炭素フェルトにおける初期銅堆積の存在に起因する。金属化炭素フェルトの表面は酸化されるが、粒子の内部のであるか又はクロムめっきが存在する部分では、酸化の度合いは低い。
【表3】

【0084】
クロムめっきディスクが1000℃で1時間熱処理される場合、繊維は拡大し、部分的に融合する(図31)。繊維直径は熱処理後に均一ではないが、100μm以上の直径が観察された(図31)。
【0085】
熱処理前のクロムめっき繊維の平滑面(図28(b))は、1000℃の熱処理の効果により、孔径が1μm未満の粗面(図32)に変わった。
【0086】
金属構造は、熱処理後、著しく強固であった。顕微鏡検査用の破断面を得るために、4mm厚のディスクは、ハンマーでしか破壊することができなかった。
【0087】
ナイロン繊維フェルト
ナイロン繊維フェルトの金属化は、繊維にNi−Pを堆積することによって実施した。適切なめっき溶液を選択することにより、Ni−B又は多合金を繊維の周囲に堆積することが可能である。堆積は、全ての繊維がNi−P堆積物で完全に覆われるまで持続した(図33(a)及び(b))。繊維の周囲への堆積が完了した後、繊維の周囲の金属堆積物の壁厚は、およそ50〜55μmであった。よって、金属堆積繊維の全体的な直径は、およそ150〜160μmであった(図33(a))。
【0088】
金属堆積が完了した後、繊維の熱分解を3つの異なる温度で実施した。図34(a)、(b)及び(c)は、600℃、800℃及び1000℃でそれぞれ熱処理された金属繊維の全体的な外観を示す。図から分かるように、600℃及び800℃の熱処理で得られた構造は、金属繊維の形状及び配向において極めて類似していた(図34(a)、(b))。3つの熱処理は、全て類似した金属繊維厚を生成したが、1000℃の処理は、他と比較して異なる繊維形成を有した(図34(c))。
【0089】
Ni−P繊維の表面構造は、前駆体としてPHPを使用して製造したNi−P粒子の表面構造と類似していた。金属繊維の表面は、3つ全ての異なる熱処理の結果、ナノサイズ孔を有した。600℃、800℃及び1000℃それぞれで熱処理された繊維表面を、図35(a)、(b)及び(c)において見ることができる。前駆体としてPHPを使用して製造したNi−Pディスクは、撚り糸の全融合に起因して、一般に1000℃の熱処理後に多孔質粒子表面を有さないが、金属繊維は、依然として、均一に分布されたナノサイズ孔構造を繊維表面に有した(図35(c))。
【0090】
600℃で熱処理した試料をXRDにより分析した。X線分析の結果は、前駆体材料としてPHPを使用して製造したものと同様であった。元素Ni及びニッケル化合物のNiO、NiP、Ni12が、熱処理後に形成され(図36)、Niが主要な相であった。
【0091】
熱処理の効果を金属繊維の強度と比較したとき、800℃の熱処理は、600℃及び1000℃と比較すると、はるかに強固な金属構造をもたらした。事実、800℃の熱処理後では非常に強固であり、顕微鏡検査の破断面を得るために、4mm厚のディスクは、ハンマーでしか破壊することができなかった。ディスクの強度における差は、金属繊維構造をより詳細に検査したときにも観察された。主な差を金属繊維の破断面に見つけた。
【0092】
破断繊維の検査は、600℃及び1000℃で熱処理した金属繊維の壁の断面(図37(a)及び(b))が、800℃(図38)と比較して相対的により密(solid)であることを明らかにした。
ナイロン繊維の除去により生じた中空チャンネルの直径は、3つの熱処理全ての後では類似していた(図37(a)、(b)及び図39)。金属繊維は全ておよそ35〜50μmのチャンネルを有した。600℃及び1000℃の熱処理と異なり、800℃で熱処理された金属繊維は、チャンネルの内壁、並びに金属繊維の外面にナノサイズ多孔質表面を有した(図39及び41)。
【0093】
800℃で熱処理された金属繊維の全体的な外観を図40において見ることができる。長方形で印を付けられた部分を、その下の画像で拡大した。金属繊維の内及び外面のナノサイズ孔に加えて、壁の断面は多孔質構造を有し、孔径は数百nmの小ささから3μmまでの範囲であった(図39及び40)。壁の断面の孔は、全て、中心を取り囲んで中空チャンネルの周囲に並んでおり、木の茎の断面において観察されるパターンと類似していた。
【0094】
繊維の垂直断面(図40)の他に、中空チャンネルの水平断面(図41)を検査して、金属繊維の壁内部の孔の性質を明らかにした。画像は、孔がチャンネルではなく、熱処理の際に繊維の壁の全体にわたって均一に分散したマイクロサイズ及びナノサイズ球状孔であることを明確に物語っている。
【0095】
炭素フェルトの繊維と異なり、ナイロンフェルトの繊維は600℃で燃焼し、したがって、金属繊維は600℃で得られる。また、炭素及びナイロンを使用して得られた繊維の壁構造は実質的に異なり、ナイロン繊維は、燃焼しない炭素繊維と比較して高度に多孔質の壁を生じることに留意するべきである。
【0096】
ガラス繊維綿
それぞれの金属堆積実験において、以下のNi−B浴組成を使用した。
(300mlの脱イオン水に溶解)
●5.0g(0.19M)の塩化ニッケル−ニッケルイオン供給源
●4.60g(0.38M)のジメチルアミンボラン−還元剤
●6.64g(0.27M)の酢酸ナトリウム−錯化剤
0.03g(3.88 10−4M)ラウリル硫酸ナトリウム−安定剤
【0097】
繊維束を使用する利点は、束を特定の容量内に拘束することにより、テンプレートの多孔性を制御できることである。堆積は75℃で実施した。堆積の後、通常の熱処理を、室温から出発して600℃で2時間実施した。得られた構造体をSEMで検査した。ニッケル−ホウ素構造体の微細構造は、炭素に基づいたテンプレートを使用したときに得られたものと実質的に異なることが明らかである。図42は、構造体の全体的な外観を示し、一方、図43は及び44は、壁及び表面の断面を示す。炭素に基づいた基材の使用により達成されたナノ多孔性は存在しないことが明らかであり、ナノ構造の形成における炭素の重要性を示している。
【0098】
ガラス繊維がシランカップリング剤で被覆された場合、更なる堆積が実施され、得られた構造はより強固であった。
【0099】
合金の老化(aging)
金属発泡体の熱安定性は、幾つかの構造用途において、そして触媒として利用されるなどの主に機能的用途において極めて重要である。Ni−P金属発泡体の老化過程を、オーブンにより600℃で72時間実施した。老化した後、金属構造の全体的な外観は、24時間未満の熱処理により得られた構造と類似していたことが観察された。金属発泡体の全体的な構造は歪められておらず、依然として、凝集粒子により形成された大型孔を有するPHPの輪郭をたどっていた。(図45)。この領域の化学分析を表4において見ることができる。
【表4】

【0100】
粒子の形成についてのより詳細な検査は、粒子の形状が依然として均一及び球状であることを示した。粒子は、大きさが2〜5μmの範囲であった(図46)。
【0101】
粒子の表面外皮は、72時間老化した後、ナノサイズ孔を有する多孔質の状態を維持し、一方、コア材料は球状ではなかった(図47)。800℃で24時間までの多様な時間熱処理した試料は、2μmから1μmを少し下回るまでの粒子外皮の壁厚を有した。72時間老化した後、粒子外皮の厚さは、およそ200nmまで低下した(図47)。
【0102】
化学分析を、図47のEDXスポットにおいて、コア材料及び粒子外皮について実施した(表5)。一般的領域のEDX分析と同様に、粒子外皮のスポット分析(図47のポイント1)は、リン含有量が4.79%に増加したことを示した。長時間の酸化に起因して、酸素含有量が増加したことに留意されたい。触媒用途において、還元剤として水素を使用する定期的な還元が必要である。
【表5】

【0103】
パラジウムめっきNi−P発泡体の老化
Ni−P金属ディスクのパラジウムめっきは、従来の無電解めっき技術を使用して実施した。最初に、Ni−P金属発泡体ディスクを、塩化ニッケル浴から前記に記載したように調製した。次に、下記:
●0.01Mの塩化パラジウム
●0.05Mの塩酸
●2.35Mの水酸化アンモニウム
●0.5Mの塩化アンモニウム
●0.1Mの次亜リン酸ナトリウム水和物
からなる典型的な無電解めっき溶液にディスクを浸漬した。ディスクの表面に対する無電解めっきは、50℃で2時間実施した。パラジウムめっきの前にNi−Pを調製するのにニッケル供給源として塩化ニッケルを選択したので、ディスクは表面に外殻形成を有した。したがって、Pdめっきを2つの別々の部分で実施した。
−外殻形成を有するディスクのめっき:したがって、Pdは外殻の上にめっきされた。
−ディスクの内部構造上へのめっき、ここでめっきは外殻を剥がした後で実施した。
【0104】
600℃で72時間老化する前後のPdめっき外殻の全体的な外観が、図48(a)及び(b)にそれぞれ示されている。規則的な外殻構造において観察されるように、これは老化の前後にほぼ密閉構造を有した。2つの構造の差は、外殻の亀裂が老化過程後に大きなチャンネルに変換されたこと(図49)、並びに構造にランダムに位置する幾つかの大型孔の形成であった。老化過程後のパラジウム被覆外殻の一般領域(図48(b))の化学分析を、表6において見ることができる。
【表6】


72時間老化した後のPdめっき外殻の粒子表面は、依然として、ナノサイズ孔を有し、孔の大きさは、100nmを十分に下回った(図50)。
【0105】
PdめっきNi−P金属発泡体の内部構造を図51において見ることができる。縦列(a)の像は、老化過程の前に撮ったものであり、一方、縦列(b)の像は、600℃での72時間の老化段階後に撮ったものであった。画像は、老化の前後の両方において、金属発泡体が、大型孔の存在に起因してPHPの輪郭をたどっていることを示す。Pdは、数百nmから1μmまでのオーダーにより球形の形態で堆積した(図51、縦列(a))。Pd堆積は、凝集Ni−P金属粒子上に生じた(図51、倍率の増加を伴う縦列(a))。
【0106】
老化過程の後、Ni−P球体を、大きな凝集粒子として画像で確認することができる(図51、倍率の増加を伴う縦列(b))。大部分のNi−P粒子は、Pdフレークにより、並びに小型(数百nmから2μmまで)の球形Pd堆積物によりめっきされた。老化過程後のPdめっき領域の化学分析を表7に提示する。
【表7】

【0107】
老化過程後のNi−P粒子のPd堆積特性を図52で観察することができる。Pdは、2つの異なる形態:小型球状粒子堆積物、及びNi−P粒子の表面全体を覆っている針様Pd結晶、を示した。2つのEDXスポットを、Pd堆積の異なる形態から取り、結果を表8で見ることができる。
【表8】

【0108】
多合金
本技術の一般的な性質を実証するために、多種の多成分金属を堆積して多合金を得た。実験条件を下記に要約する。詳細なSEM構造も下記に要約する。
【0109】
ニッケル−コバルト−リン(Ni−Co−P)
めっき浴:
●0.027Mの硫酸ニッケル六水和物
●0.270Mの次亜リン酸ナトリウム水和物
●0.108Mの硫酸コバルト(II)
●0.123Mのクエン酸アンモニウム
●水酸化ナトリウムによりpHを9.5に設定
操作条件:
ポリマー孔径:50〜60μm
流速: 2ml/分
水浴温度: 96℃
加熱器の温度:90℃
pH: 9.5
第1面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
第2面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
熱処理:600℃(1時間+1時間)
【0110】
ニッケル−コバルト−リン多合金のSEM像は、金属化PHPに固体層が存在しないが、セル構造はコアと比較すると異なっていることを示す。これらは、図53(a、b、c、d、e、f)に示されている。図53(a)は、内部構造を明らかにする、Ni−Co−Pディスクの割れ目の表面を示す。図53(b)は、表面を内部チャンネルと組み合わせた金属ディスクの表面における孔を示し、一方、図53(c)は、表面に大型孔を形成する粒子配向の構造を示す。拡大画像は、粒子外皮の詳細を示す。Ni−Co−P構造体の内部構造の全体的な外観が図53(d)に示されている。図53(e)には、内部セルの詳細が示されている。矢印は、セルの内部が明らかになっている破壊されたセルを示す。拡大像は、2つの隣接するセルの間の界面を示す。セルの内面と外面の両方の構造を観察することができる。外面の構造はいくぶん平坦であり、一方、内部構造は、球状粒子から構成されていた。図53(f)は、球状ケージ様セルの示されている外部凸状壁(outer convex walls)が、比較的に平坦であり、表面にナノ孔を有することを示す。
【0111】
表面及び内部のEDXスペクトルは、表9及び10に示されているように、表面の酸化が明白であること及び表面がニッケルよりもコバルトを多く含有することを示す。
【表9】


【表10】

【0112】
ニッケル−銅−リン(Ni−Cu−P)
以下の例は多合金の説明のために提示される。
めっき浴:
●0.027Mの硫酸ニッケル六水和物
●0.270Mの次亜リン酸ナトリウム水和物
●0.014Mの硫酸銅(II)水和物
●0.110Mのクエン酸ナトリウム
●0.450Mの塩化アンモニウム
●水酸化ナトリウムによりpHを9.0に設定
操作条件:
ポリマー孔径:50〜60μm
流速: 2ml/分
水浴温度: 96℃
加熱器の温度:90℃
pH: 9
第1面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
第2面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
熱処理:600℃(1時間+1時間)
【表11】


上記のEDX分析は、ニッケル構造の表面では銅が主であることを示す。
【0113】
ニッケル−レニウム−リン(Ni−Re−P)
めっき浴:
●0.027Mの硫酸ニッケル六水和物
●0.270Mの次亜リン酸ナトリウム水和物
●1.08×10−3Mの過レニウム酸カリウム
●0.081Mのクエン酸ナトリウム
●水酸化ナトリウムによりpHを9.0に設定
操作条件:
ポリマー孔径:50〜60μm
流速: 2ml/分
水浴温度: 96℃
加熱器の温度:90℃
pH: 9
第1面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
第2面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
熱処理:600℃(1時間+1時間)
【表12】


Ni−Re−P発泡体は、前記で調査したNi−P構造と同様の構造を有する。全体的な構造が図54に示されている。
【0114】
ニッケル−レニウム−タングステン−リン(Ni−Re−W−P)
めっき浴:
●0.027Mの硫酸ニッケル六水和物
●0.270Mの次亜リン酸ナトリウム水和物
●1.27×10−3Mの過レニウム酸カリウム
●0.106Mのタングステン酸ナトリウム二水和物
●0.110Mのクエン酸ナトリウム
●水酸化ナトリウムによりpHを10に設定
操作条件:
ポリマー孔径:50〜60μm
流速: 2ml/分
水浴温度: 96℃
加熱器の温度:90℃
pH: 10
第1面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
第2面のポリマー:(溶液25分間+蒸留水4分間)→6回繰り返す
熱処理:600℃(1時間+1時間)
【0115】
Ni−Re−W−P四成分合金により製造された発泡体は、Ni−Re−P又はNi−W−P三成分合金により製造されたものと異なる構造を有した。金属発泡体は球状のケージ様セルから構成された。図55(a)に示されているNi−Re−W−P発泡体の全体的な外観において、これはNi−B発泡体及びNi−Co−P発泡体と類似しており、上記に記述された金属発泡体の全ての製造に使用された多孔質テンプレート材料(ポリハイプポリマー)の輪郭をたどっている。Ni−Re−W−P発泡体のセルの大きさは、図55(b)から分かるように、直径が25〜70μmに異なっていた。更に、大型セルを形成するコア材料及び粒子外皮は、平坦化されていた。前記の場合と同様に、粒子は平坦外皮を有し、ナノ多孔質である(図55(c))。
【0116】
Ni−Re−W−P四成分合金及びNi−Co−P三成分合金により製造された発泡体は、Ni−Pに基づいた二成分、三成分及び四成分合金を使用して製造された他の全ての発泡体と比較して、前駆体材料(PHP)と最も類似した構造であった。これらの金属発泡体において、ケージ様セル及び相互連結孔は、PHP構造のように、極めて良好に画定されていた。Ni−Re−W−P金属発泡体の一般領域(図55(a))の化学分析を、表13に提示する。
【表13】

【0117】
ナノ構造マイクロ多孔質セラミック材料
幾つかの新規ポリハイプポリマー調製技術が開示され、これによって、機能性「充填剤」(粒状でありうる化学物質/材料)を高内相エマルションの水相の中に入れ、続いて、得られるポリハイプポリマーを官能化するために重合後に前記化学物質/材料が活性化されうるように、重合することができる。これらの「充填剤」を、油相の中に入れることもできるが、油相の容量が小さいことに起因して、油相におけるそのような「充填剤」の濃度は限定される。
【0118】
しかし、エマルションが破壊されるまで油又は水相にどのぐらいの量の「充填剤」を組み込むことができるかについては、限界がある。エマルションは、破壊する前に不安定になり、分散相液滴は合体して大型液滴を形成し、それは重合の際、合体をしなかった一次孔の中に分散された「合体」孔(”coalescence”pores)を形成する。
【0119】
エマルションの連続又は分散相に「充填剤」を有する効果の1つは、大型のミクロンサイズ孔の孔壁内のナノ孔の形成である。これらのナノ孔は多くの用途において有用である。
【0120】
高濃度のコロイドシリカの添加は、そのような溶液が高度に粘性であるので、いままで可能ではなかった。しかし、水相にpH6〜8で分散されているシラン被覆コロイドシリカを、内相として成功裏に使用して、高内相エマルション(HIPE)を形成すること、続いて重合して、マイクロ多孔質シリカ被覆ポリマーを得ることができ、次にこれを、シリカ支持触媒又は実にセラミックを含む更なる改質のためにテンプレートとして使用することができる。シラン被覆コロイドシリカ(大きさは7〜12ナノメートル)分散体は、水の様な粘性を有するが、シリカ装填量は高い(30〜40重量%)。これらの分散体は、Bindzil CC30又はCC40の等級を有するBindzil(商標)の商標名で入手可能である。
【0121】
コロイドシリカ被覆ポリハイプポリマーの調製
油相組成:
67重量%のスチレン
20重量%のジビニルベンゼン(DVB)架橋剤
12重量%のSpan 80(界面活性剤)
1重量%の過酸化ラウリル(油相開始剤)
水相:
Bindzil CC30(シラン被覆コロイドシリカ含有量が30重量%)又は
Bindzil CC40(シラン被覆コロイドシリカ含有量が40重量%)
Bindzil CC30を希釈することによって、Bindzil 5、Bindzil 10及びBindzil 20を、それぞれ5重量%、10重量%及び20重量%の範囲のシラン化シリカ濃度で得ることができる。両方の材料(Bindzil CC30及びBindzil CC40%)は、EKA Chemicals Sweden、an Akzo Nobel Companyから得た。
【0122】
水相の相容量は80%であった。乳化は、加熱ジャケットを備えた撹拌ステンレススチール容器(直径12cm)を使用して25℃で実施した。油相を混合容器内に保持し、水相を別に特定の温度まで加熱し、次に2台の蠕動ポンプ(peristalic pump)により4つの供給ポイントに投与時間の間に一定速度で送達した。混合を、互いに90度の3つの平坦回転翼を使用し、エマルションの最終レベルが最上部の回転翼より約1cm上になるように実施した。攪拌軸の最下部の回転翼は、可能な限り容器の底面に接近させた。それぞれの実験において、内相の量は典型的には225mlであった。
【0123】
加工条件は以下であった。水相の投与速度は10分間であり、回転翼速度(Ω)は300rpmであり、総混合時間(投与時間を含む)は40分間であった。乳化した後、エマルションを円筒形容器(内径26mm)に移し、エマルションを60℃で8時間重合した。幾つかの試料を、最初の4時間の重合の際に、ゲル化が生じるまで15分毎に振とうした。ポリハイプポリマーの試料を、直径が26mm、厚さが4mmのディスクに切断し、これらを、走査電子顕微鏡(SEM)により検査するか又は続いて処理してセラミック若しくはセラミック−金属複合体を得た。振とう試料は、試料管の全体にわたってより均一であった。これは、油相と水相の高い密度差に起因する。実験をBindzil CC40により繰り返す場合、非振とう試料は重合の際に分離するので、重合の際に振とうすることは重要である。Bindzil CC40試料は、大型合体孔を含有した。Bindzil CC30が使用される場合のシリカ被覆ポリハイプポリマーの構造が、図56(a、b、c、d)に示されている。
【0124】
シリカ粒子を含有するポリハイプポリマーは、表14に示されているように高い表面積を有する。シリカの濃度が増加すると、表面積も増大する。Bindzil 40を含有するポリハイプポリマーの表面積が、Bindzil 30を含有するものより低い理由は、Bindzil 30のシリカの粒径がBindzil 40のものよりも小さいからである。
【表14】

【0125】
シリカ被覆ポリハイプポリマーの改質
シリカ被覆ポリハイプポリマーを得ると、これらの構造を有機又は無機基により官能化することができる。これらには下記が含まれる。
シラン被覆:これらは、微生物がこれらの多孔質構造により支持される場合に重要である。アミノアルキルシランはシリカ表面で加水分解され、シラン末端基の縮合反応をもたらし、その結果としてシリカ表面に単層被覆をもたらす。アミノシランは、生物学的用途において特に有用である。粒子間空間へのシランの浸透のため、壁多孔性は低減されるが、光の透過は増強される。加熱処理する前のシリカ粒子の架橋も、周知の技術を使用して達成することができる。
マグネシウムシリカセラミック:シリカ被覆試料を80℃で24時間乾燥する。乾燥試料を硫酸マグネシウムの20重量%の溶液に4時間浸け、続いて80℃で4時間乾燥する。次に30の水酸化アンモニウム溶液に4時間浸ける。最後に、試料を600℃で3時間加熱する(1時間加熱し、600℃の温度で2時間保持する)。得られた材料はポリマー無含有であるが、強固である。これらの材料のSEMによる検査は、構造が、熱処理前の図57(a、b、c、d)に示されているテンプレートポリマー及び熱処理後の図58(a、b、c、d)に示されているテンプレートポリマーと非常に類似していることを示す。
【0126】
シリカ被覆ポリハイプポリマーモノリスへの金属堆積
シリカ被覆円筒形モノリス型ポリハイプポリマー試料(直径2.5mm及び厚さ4mm)をニッケル堆積に使用した。堆積セルについては既に記載されている。金属浴溶液を室温に保持し、シリンジドライバーを2mL/分の速度で使用して、堆積セルの中へポンプで送った。ポリマーテンプレートの孔の中に金属堆積を起こすために、ポリマーの温度を90±3℃に上昇した。これを達成するために、堆積セルを、バンドヒーターを使用して90℃に加熱し、脱イオン水を40mL/分の速度により97℃で4分間投入した。ポリマーは疎水性であったので、ポリマーの孔を通るめっき溶液のより良好な浸透を提供するため、並びに無電解堆積反応により作り出された残留物を孔から清浄するために、熱湯による孔の湿潤が必要であった。熱湯洗浄に続いて、金属浴溶液のシリンジポンプ送りを行った。50mlの溶液をポンプで送った後、堆積を停止し、熱湯洗浄を再開し、このサイクルを繰り返した。実験の全体をとおして、バンドヒーター及び熱湯洗浄は、ポリマーを常に90℃に保持した。300mlの金属浴溶液を使用した後、流れの方向を、十分な量の金属が堆積するまで逆転した。より均一な堆積を得るために、流れの方向を50mlの堆積及び洗浄毎に逆転した。開放表面構造の金属堆積を得るために、無電解堆積において外皮/コア構造をもたらる塩化ニッケルではなく、硫酸ニッケルをニッケル供給源として使用した。
【0127】
硫酸ニッケル堆積浴の組成は、0.17Mの硫酸ニッケル、0.37Mの次亜リン酸ナトリウム、及び水酸化アンモニウム(濃度35%)の使用により4.9に設定されたpHである。堆積した後、これらの複合体材料を高温オーブンの中に室温で入れ、10℃/分の速度で加熱した。目標温度の600℃に達した後、試料をその温度で更に1時間保持し、続いて取り出して室温で冷却させた。これらの試料のSEMによる検討が、図59(a、b、c、d)に示されている。図59(c)及び(d)は、粒子の表面構造を示す。シリカ被覆の存在が、堆積ニッケルのマイクロ構造に影響を及ぼさなかったことが明らかであり、それは非常に類似した構造が、シリカ層不在のポリハイプポリマーにおいても観察されるからである。
【0128】
シランカップリング剤によるシリカの被覆は、金属堆積を改善することが発見された。
【0129】
半透明壁を有する多孔質ポリスチレン−シランコポリマーポリハイプポリマー
高内相エマルションは以下のプログラムを使用して調製した。
水相:
1重量%の過硫酸カリウムを含有する脱イオン水200ml(相容量80%)
油相:
下記からなる油相50ml:
St=68−X−Y−Z−S重量%に従って濃度が変化するスチレンモノマーモノマー
ここで、Stは、スチレンモノマー濃度であり、
X=20重量%のジビニルベンゼン(DVB)であり、
Y=12重量%のSpan 80(界面活性剤)であり、
Z=0又は1重量%
S=ビニルトリメトキシシランであり、5、10、15、20、30%で変化しうる
エマルション調製条件は、下記である:
投与時間=10分間、
追加の混合時間=50分間。
【0130】
エマルションの調製方法及び装置は、前記に記載されたものと同じである。水相開始剤が使用される場合、新規構造は、スチレン−ビニルトリメトキシシランPHPとして得られることが見出され、ここで、シラン濃度S=5〜30%であり、S=30%の場合は図60(a、b、c)に示されたとおりであり、S=5%の場合は図61(a、b、c)に示されたとおりであった。ビニルトリメトキシシラン濃度がS=5%と比較して、S=30%の場合は、ポリハイプポリマーの孔径はより小さく、孔径分布はより狭いことが見出された(ここでも図60及び61を参照されたい)。表15は、ビニルトリメトキシシラン濃度の関数として平均孔径及び孔径範囲を示す。
【表15】

【0131】
油相開始剤(過酸化ラウリル1重量%)をスチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーと共に使用した場合、図62(a)及び(b)に示されているように、「通常の」開放孔構造が得られたことが発見された。
【0132】
スチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーポリハイプポリマーの表面積の変動を表16に示す。表面積はビニルトリメトキシ濃度が増加すると増大することが見出される。
【表16】

【0133】
シランとシラン被覆シリカポリハイプポリマーの組み合わせ
水相に脱イオン水を使用する代わりに、5〜30重量%の範囲のシラン化シリカ濃度を有するBindzil(商標)を使用することが可能であり、このとき依然として、水相開始剤である過硫酸カリウムを同時に使用する。Bindzil分散体を有する又は有さないこれらのスチレン−ビニルトリメトキシシランPHPは、半透明壁を有するポリハイプポリマー構造を生じた。
【0134】
この場合、油相は、20重量%のジビニルベンゼン(架橋剤)、12重量%のSPAN 80(界面活性剤)、S%のビニルトリメトキシシラン、(68−S)重量%のスチレンからなる。油相は20%である。
【0135】
水相−10重量%のシラン被覆シリカを含有するBinzil 10分散体中1重量%の過硫酸カリウム。水相の相容量は80%であった。
【0136】
これらの材料は、表17に示されているように高い表面積を有する。シラン被覆シリカ(Bindzil CCシリーズ)を有するポリハイプポリマーの表面積データが表14に示されており、スチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーPHPの表面積データは表16に提示されている。表面積データは、ポリハイプポリマーの成分と比較して増大していることを示す。
【表17】

【0137】
高度に吸着性の機能性ポリハイプポリマー
EP0060138、WO00/34454及びWO02/10070は、スルホン化ポリハイプポリマーの調製であって、この材料の小片を濃硫酸に浸け、温度を異なる時間の範囲で60℃に上昇して、所望の程度のスルホン化を達成することによる調製を記載する。スルホン化は、外側から始まり、大型粒子を膨張させ、相互連結穴を小さくし、それによって内部への酸の浸透を低減する。このことは、疎水性コアを有する親水性外皮の形成をもたらす。かなり均一にスルホン化されたポリマーを、スルホン化粒子の直径が1cm以下である粉末として得ることが可能であるが、均一にスルホン化されたポリマーをバルクとして得ることは可能ではない。孔の大きさが減少するので、スルホン化はより困難になる。ポリマーへの酸の浸透が限定されるので、この技術をより大型のモノリス型ポリマーに使用することはできない。スルホン化した後、過剰酸を洗い流すか又は中和して、ポリマーを乾燥する。この方法は、簡単とは言えず、典型的には数回の洗浄サイクルが必要となり、過剰量の廃棄物を生じる。
【0138】
これらの欠点は、WO2004/005355及びWO2004/004880において改善されており、そこにはエマルションが重合される際に酸が孔内に均一に分布しているように、乳化段階において希硫酸を分散(水)相として組み込むことによりスルホン化ポリハイプポリマーを調製することを記載している。重合した後、温度を100℃を超えて増加させると、残留界面活性剤のスルホン化をもたらし、150℃を超えて更に上昇させると、ポリマーのスルホン化をもたらす。しかし、スルホン化時間は、依然として長時間であり、得られるポリマーは(親水性ではあるが)水の取り込みが遅い。スルホン化時間を、温度を200℃に増加することによって(典型的には45分間に)低減することができるが、高温は、スルホン化の程度が減少する場合があるので望ましくない。
【0139】
EP0060138に開示されている技術は、高濃度硫酸を使用し、PHPの小片のみに適している。スルホン化した後、過剰酸を除去する必要があり、PHPは水で洗浄され、望まれる場合には続いて中和される。
【0140】
PHPの従来のニトロ化は、時間がかかり、生成される大量の希酸の生成によって環境に優しくない。大型モノリス型構造の製造は、ポリマーへの酸の浸透が不十分であるので困難である。
【0141】
US11/403,996(2006)に開示されているマイクロ波照射技術は、非常に速いスルホン化又はニトロ化をもたらすが、得られたポリマーの水取り込みは、有意な膨張なしに(すなわち、水取り込みは孔の充填による)自重の8〜12倍ぐらいである。ポリハイプポリマーが、乳化段階において10%硫酸を水相に入れ、続いて重合することによって製造される場合、ナノ構造マイクロ多孔質ポリハイプポリマーが得られることが発見されている。このポリマーが典型的には5分間マイクロ波処理される場合、電気伝導性の親水性/疎水性ポリマーが得られ、これは、膨張することなく水を取り込んで孔を充填することができる。
【0142】
これらのポリマーは親水性と疎水性の両方であるので、これらを、空気中から水溶性又は水不溶性毒素を除去することに使用できる。そのようなポリマーは、マイクロ波照射の際にその場で既に生成されている活性炭を有し、したがって、これらを空気マスク(air−mask)又は紙巻きたばこフィルターとして使用することができる。
【0143】
このポリマーを水及びイソプロパノールで洗浄し、続いて硫酸(濃度が98%まで)を吸着させる場合、マイクロ波照射によって、スルホン化の間に急速に膨張する。得られるポリマーは、依然として電気伝導性であり、炭素粒子を含有する。このポリマーを濃水酸化アンモニウムで中和すると、クリーム色(creamy colour)になり、その水吸着能は、24倍(相容量90%)及び35倍(総容量95%)に増加する。しかし、中和が希水酸化アンモニウムで実施される場合、その場で生じるカーボンブラックは酸化されず、したがって、色の変化は観察されない。ポリハイプポリマーの炭素の酸化は、漂白により達成することもできる。ニトロ化され、残留非反応硝酸を含有するポリハイプポリマーを、農業用途において水酸化アンモニウム又は水酸化カリウムを使用して中和することができる。中和されて塩を形成するスルホン化ポリハイプポリマーが、水を含有する有機溶媒の中に入れられたとき、水を選択的に吸収することが見出されている。ポリマーの酸形態が使用される場合、これは、水を含む全ての溶媒を吸収する。この特性を使用して、水含有アルコールなどの溶媒から水を除去することができ、したがって蒸留を回避することができる。これらのポリマーは水を吸着するので、シラン化シリカ分散体(Bindzil−5〜Bindzil−40)をその中に吸着させ、続いて乾燥及び官能化することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層的多孔構造を有するモノリス型金属又は金属複合体を製造する方法であって、
多孔質構造を有するテンプレート材料を選択する工程;
該テンプレート材料を、構造化される1つの又はそれぞれの該金属の溶液と接触させる工程;
1つ又はそれぞれの該金属をテンプレートに堆積させる工程;
該金属被覆テンプレートを、更なる金属の堆積の前に洗浄する工程;
該金属被覆テンプレート材料を分離する工程;
該テンプレート材料の少なくとも一部分を熱的に除去する工程
を含む上記方法。
【請求項2】
前記テンプレートが、モノマー材料を含むエマルションを介して形成されるポリハイプポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーテンプレートの親水性を増加するために、前記ポリハイプポリマーがスルホン化される、又は前記ポリハイプポリマーがスチレンとビニルピリジンのコポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリハイプポリマーテンプレートが、1〜300ミクロンの大きさの範囲の孔を有する、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリハイプポリマーの前記エマルションが、重合の前に、多孔質セラミック材料の孔の中で密接に混合され、続いて前記モノマー材料が重合される、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリハイプポリマー材料が水相からシリカ粒子を組み込む、請求項2から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ粒子がシランカップリング剤で被覆されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
油相がシランモノマーを含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記油相がシランモノマーを含有し、前記水相が、シランカップリング剤で被覆されているシリカ粒子を含有する、請求項9から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シランがアミノ基で官能化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記シリカ表面がマグネシウムで富化されている、請求項6から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記テンプレートが、1つ又はそれぞれの該金属が堆積している繊維を有する炭素フェルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記テンプレートがナイロン繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記テンプレートがガラス繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記テンプレートが金属繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維がシランカップリング剤で被覆されている、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー又は炭素テンプレートが除去される温度が600〜1000℃である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が800℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
それから前記複合体が形成される金属が、ニッケル、タングステン、コバルト、銅、亜鉛、レニウム又はパラジウムから選択される、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属がニッケルである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記堆積が還元剤によって達成される、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記還元剤が、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム又はヒドラジンから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
金属堆積が請求項1の記載に従って達成される、請求項6から8までのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35(a)−35(b)】
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【図35(c)】
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【図36】
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【図37】
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【図40】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図48】
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【図51】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図3(e)】
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【図3(f)】
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【図3(g)】
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【図4】
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【図5】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図26】
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【図38】
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【図39】
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【図41】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図49】
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【図50】
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【図52】
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【図53(a)】
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【図53(b)】
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【図53(c)】
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【図53(d)】
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【図53(e)】
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【図53(f)】
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【図54】
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【図55(a)】
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【図55(b)】
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【図55(c)】
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【図56(a)】
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【図56(b)】
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【図56(c)】
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【図56(d)】
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【図57(a)】
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【図57(b)】
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【図57(c)】
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【図57(d)】
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【図58(a)】
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【図58(b)】
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【図58(c)】
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【図58(d)】
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【図59(a)】
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【図59(b)】
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【図59(c)】
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【図59(d)】
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【図60(a)】
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【図60(b)】
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【図60(c)】
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【図61(a)】
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【図61(b)】
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【図61(c)】
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【図62】
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【公表番号】特表2012−516386(P2012−516386A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530553(P2011−530553)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002403
【国際公開番号】WO2010/041014
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511089527)ユニバーシティー オブ ニューキャッスル (1)
【Fターム(参考)】