説明

ナノ構造体及びその製造方法

ナノ構造体は、導電性材料を含む第1構造体を備え、第1構造体が、絶縁材料により離間されている一以上の導電性材料部を有する第2構造体に取り付けられており、第2構造体が、変化を生ずることができる材料を含む第3構造体に取り付けられている。第3構造体は誘電性材料又は強誘電性材料を含んでもよく、その材料にたらされる変化が、その材料の分極であってもよい。ナノ構造体は一以上のナノキャパシタを備えてもよく、ナノキャパシタの各々が第3構造体において、分極を含む変化を生ずることができる部分を備える。ナノキャパシタは、データを記憶するために用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広い様々な用途のために、ナノ構造体の発展に関心が常に増加されてきている。そのようなナノ構造体は、例えば、データ記憶のために用いられ得る。情報処理技術の進歩と共に、高密度のデータ記憶に対する需要が増加している。ナノ構造体は、そのサイズにより、高密度のデータ記憶の供給に対する可能性を提供する。ナノ構造体の製造及び応用に関する様々な研究が行われてきており、この分野では常に改善が求められている。
【発明の開示】
【0003】
本発明の一態様によれば、導電性材料を含む第1構造体を備え、第1構造体が、絶縁材料により離間されている一以上の導電性材料部を有する第2構造体に取り付けられており、第2構造体が、変化を生ずることができる材料を含む第3構造体に取り付けられているナノ構造体が提供される。
【0004】
第3構造体は、第3構造体に生ずる変化を制限できる厚さを有する。第3構造体の厚さを、第3構造体の材料における変化を制御するために制御することができる。
【0005】
第3構造体は、変化を生ずることができる一以上の部分を有するものとすることができる。第3構造体は、第2構造体の一の導電性材料部若しくは複数の導電性材料部の各々、又は複数の導電性材料部の幾つかに近接する部分であって、変化を生ずることができる部分を有するものとすることができる。第3構造体の厚さは、第3構造体における一の部分又は複数の部分の各々に生ずる変化を制限することができる。第3構造体の厚さを、第3構造体の一の部分又は複数の部分の各々における変化を制御するために制御することができる。第3構造体の厚さは、第3構造体の一の部分又は複数の部分の各々への変化を局所化するように制御されてもよい。ナノ構造体が、第2構造体に2以上の導電性材料部を備えるときは、第3構造体の厚さは、第2構造体の導電性材料部の離間間隔と実質的に同一となるように制御されてもよい。
【0006】
変化は、第3構造体への電圧印加により、第3構造体にもたらされ得る。電圧は第3構造体の実質的に全体に印加されてもよく、変化は第3構造体の実質的に全体にもたらされてもよい。変化は、第3構造体への電圧印加により、第3構造体の一以上の部分にもたらされてもよい。電圧は第3構造体の実質的に全体に印加されもよく、変化は第3構造体の一以上の部分にもたらされ得る。局所化電圧は第3構造体の一以上の部分のそれぞれに印加されてもよく、変化はその部分にもたらされ得る。第3構造体の厚さは、第3構造体に印加された電圧により決定され得る。第3構造体への電圧印加のために、第1構造体が第1電極として機能してもよく、第2電極が提供されてもよい。
【0007】
第3構造体は、データを記憶するために用いられ得る。第3構造体は、デジタルの1又は0を表すために用いられ得る。第3構造体において、変化が起きることができる一の部分又は複数の部分の各々は、データを記憶するために用いられ得る。第3構造体において、変化を生ずることができる一の部分又は複数の部分の各々は、デジタルの1又は0を表すために用いられ得る。
【0008】
第3構造体は、変化を生ずることができる材料の層を備えるものとすることができる。
【0009】
第3構造体の一の部分又は複数の部分の各々に変化が局所化されるように、第3構造体における変化が抑制され得ることは見いだされてきた。これは、第3構造体が連続的な層として形成された場合、また第3構造体の実質的に全体に電圧が印加された場合でも同様である。局所化は、第3構造体に起きる変化の分離を可能とすると共に、そのような変化が分離されたデータの断片を記憶するために用いられることを可能とする。
【0010】
第3構造体は、誘電性材料を含んでもよい。誘電性材料にたらされる変化は、その誘電性材料の分極であってもよい。誘電性材料の厚さは、その誘電性材料に生ずる分極を定めることができる。誘電性材料の厚さを、その誘電性材料における分極を制御するために制御することができる。第3構造体は、第2構造体の一の導電性材料部若しくは複数の導電性材料部の各々、又は複数の導電性材料部の幾つかに近接する部分であって、分極を含む変化を生ずることができる誘電性材料の部分を有するものとすることができる。分極を含む変化は、第3構造体への電圧印加により、第3構造体の一以上の部分にもたらされ得る。電圧は第3構造体の実質的に全体に印加されてもよく、第3構造体の一以上の部分に分極を含む変化がもたらされ得る。局所化された電圧は、第3構造体の一以上の部分のそれぞれに印加されてもよく、その部分に分極を含む変化がもたらされ得る。誘電性材料の部分と第2構造体の導電性部分との間における電気的な接触と、第2構造体のその導電性部分と第1構造体との間における電気的な接触とにより、一の誘電性材料の部分又は複数の誘電性材料の部分の各々に分極がもたらされてもよい。ナノ構造体は一以上のナノキャパシタを備えてもよく、ナノキャパシタの各々が第3構造体において、分極を含む変化を生ずることができる部分を備える。第1構造体はナノキャパシタの第1電極として機能してもよく、第2電極は提供される。一のナノキャパシタ若しくは複数のナノキャパシタの各々、又は複数のナノキャパシタの幾つかは、データを記憶するために用いられ得る。一のナノキャパシタ若しくは複数のナノキャパシタの各々、又は複数のナノキャパシタの幾つかは、デジタルの1又は0を表すために使われる分極を保存するために用いられ得る。
【0011】
第3構造体は、強誘電性材料を含んでもよい。強誘電性材料に生ずる変化は、その強誘電性材料の分極であってもよい。強誘電性材料の厚さは、強誘電性材料に生ずる分極を制限することができる。強誘電性材料の厚さを、強誘電性材料における分極を制御するために制御することができる。第3構造体は、第2構造体の一の導電性材料部若しくは複数の導電性材料部の各々、又は複数の導電性材料部の幾つかに近接する部分であって、分極を含む変化を生ずることができる強誘電性材料の部分を有するものとすることができる。分極を含む変化は、第3構造体への電圧印加により、第3構造体の一以上の部分にもたらされ得る。電圧は第3構造体の実質的に全体に印加されてもよく、第3構造体の一以上の部分に分極を含む変化がもたらされ得る。局所化電圧は、第3構造体の一以上の部分のそれぞれに印加されてもよく、その部分に分極を含む変化がもたらされてもよい。強誘電性材料の部分と第2構造体の導電性部分との間における電気的な接触と、第2構造体のその導電性部分と第1構造体との間における電気的な接触とにより、一の強誘電性材料の部分又は複数の強誘電性材料の部分の各々に分極がもたらされてもよい。ナノ構造体は一以上のナノキャパシタを備えてもよく、ナノキャパシタの各々が第3構造体において、分極を含む変化が起きてもよい部分を備える。第1構造体はナノキャパシタの第1電極として機能してもよく、第2電極は提供される。一のナノキャパシタ若しくは複数のナノキャパシタの各々、又は複数のナノキャパシタの少なくとも幾つかは、データを記憶するために用いられ得る。一のナノキャパシタ若しくは複数のナノキャパシタの各々、又は複数のナノキャパシタの少なくとも幾つかは、デジタルの1又は0を表すために使われる分極を保存するために用いられ得る。
【0012】
強誘電性材料は分極をよく保持するので、第3構造体のための強誘電性材料の使用は特に有利であろう。強誘電性材料の第3構造体を備えるナノ構造体は、故にデータ記憶に特に有効であろう。強誘電性材料の第3構造体を備えるナノ構造体は、FeRAM装置又はその他の強磁性体に基づいた記憶システムを構成するために用いられ得る。
【0013】
第3構造体は、オボニック(ovonic)材料を含んでもよい。オボニック材料に生ずる変化は、そのオボニック材料の相変化であってもよい。相変化は結晶相から非晶相であってもよく、又は逆であってもよい。オボニック材料の厚さは、オボニック材料に生ずる相変化を制限することができる。オボニック材料の厚さを、オボニック材料における相変化を制御するために制御することができる。第3構造体は、第2構造体の一の導電性材料部若しくは複数の導電性材料部の各々、又は複数の導電性材料部の幾つかに近接する部分であって、相変化を含む変化を生ずることができるオボニック材料の部分を有するものとすることができる。オボニック材料の部分と第2構造体の導電性部分との間における電気的な接触と、第2構造体のその導電性部分と第1構造体との間における電気的な接触とにより、一のオボニック材料の部分又は複数のオボニック材料の部分の各々に相変化がもたらされ得る。第3構造体において、相変化が起きることができる一のオボニック材料の部分又は複数のオボニック材料の部分の各々は、データを記憶するために用いられてもよい。第3構造体において、相変化が起きることができる一のオボニック材料の部分又は複数のオボニック材料の部分の各々は、デジタルの1又は0を表すために用いられてもよい。
【0014】
第3構造体のオボニック材料の相変化は、第3構造体に対する抵抗における変化を与えることによってもたらされてもよい。一以上のオボニック材料の部分に相変化が生ずる場合、これはオボニック材料の各部分に対する抵抗に分離されていると共に局所化された変化を与えることによってもたらされてもよい。
【0015】
第1構造体は、一以上の層を備えるものとすることができる。第1構造体が2以上の層を備えるときは、これらの層は一緒に取り付けられてもよい。一の層又は複数の層の各々は、金属性の導電性材料、例えばタンタル、白金、イリジウム、SrRuO,(La1/2Sr1/2)CoOのうち何れか一方又はこれらの組み合わせを含んでもよい。一の層又は複数の層の各々は電極として機能してもよい。第1構造体は、約10nm〜約100nmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0016】
第2構造体は、一以上の層を備えるものとすることができる。一の層若しくは複数の層の各々又は複数の層の幾つかは、絶縁材料により離間されている一以上の導電性材料部を備えるものとすることができる。第2構造体の一の導電性材料部又は複数の導電性材料部の各々は、約10nm〜約100nmの範囲内の直径を有してもよい。第2構造体が一以上の導電性材料部を備えるときは、これらは約10nm〜約100nmの範囲内の離間間隔を有してもよい。ナノ構造体がデータ記憶として機能して導電性材料部に近接する変化を利用するときは、導電性材料部の小さな離間間隔は、高密度データ記憶を提供する。第2構造体の一以上の導電性材料部は、導電性材料からなる一以上の柱を有してもよい。一の柱又は複数の柱の各々は、第1構造体に取り付けられている第1断面と、第3構造体に取り付けられている第2断面とを有してもよい。一の柱又は複数の柱の各々の第1断面は、第1構造体と電気的に接触していてもよい。一の柱又は複数の柱の各々の第2断面は、第2構造体と電気的に接触していてもよい。導電性材料の一の柱又は複数の柱の各々は、その導電性材料のワイヤの形をしていてもよい。第2構造体の導電性材料は、金属性材料、例えば白金、金、銅、ニッケルのうち何れか一方又はそれらの組み合わせを含んでもよい。第2構造体の絶縁材料は、アルミナを含んでもよい。
【0017】
ナノ構造体は、第4構造体を更に備えるものとすることができる。第4構造体は、第1構造体に取り付けられていてもよい。第4構造体は、ナノ構造体のための基板として機能してもよく、ナノ構造体のための機械的な支持を提供してもよい。第4構造体は、一つの層を備えてもよい。第4構造体は、シリコンを含んでもよい。第4構造体はガラス材料を含んでもよい。
【0018】
ナノ構造体は、約50nm〜約1000nmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0019】
本願発明の第2形様によれば、第1構造体を形成するステップと、第1構造体の表面上に一以上の細孔(ポア)を有する一以上の誘電性材料の層を形成することにより、第2構造体を形成するステップと、絶縁材料により離間された一以上の導電性材料部を形成するために一の細孔内又は複数の細孔の各々内に導電性材料を配置するステップと、第2構造体の表面上に第3構造体を形成するステップと、を含む本発明の第1態様に係るナノ構造体が提供される。
【0020】
第1構造体は、基板上に形成されてもよい。第1構造体は、堆積方法、例えばスパッタリング堆積法、PLD法、電気堆積法、蒸着法、又は化学法により基板の構造体上に形成されてもよい。
【0021】
第1構造体の表面上に誘電性材料の層を形成するステップは、第1構造体上の一以上の導電性材料の層を配置する工程と、絶縁材料の層を形成するために導電性材料の層を処理する工程とを含んでもよい。導電性材料の層を処理するステップは、絶縁材料を形成するために導電性材料を陽極酸化する工程を含んでもよい。絶縁材料を形成するために導電性材料の層を処理する工程は、絶縁材料に一以上の細孔の形成をもたらしてもよい。導電性材料の層はアルミニウムを含んでもよく、アルミナを含む絶縁材料を形成するために、アルミニウムを含む導電性材料の層は陽極酸化により処理される。陽極酸化によりアルミニウム導電性材料を処理することは、アルミナ絶縁材料に一以上の細孔を更に形成するであろう。
【0022】
絶縁材料に一以上の細孔の形成することは、一の細孔又は複数の細孔の各々を第1構造体に届くように延伸するプロセスを更に備えるものとすることができる。このプロセスは、ミリングプロセス、例えばアルゴンイオンミリングプロセス、又は化学エッチングプロセスが含まれてもよい。
【0023】
導電性材料は、絶縁材料における一の細孔内若しくは複数の細孔の各々内、又は複数の細孔の少なくとも幾つかの細孔内に配置されてもよい。これは、例えば電気的な堆積若しくは物理的な気相堆積方法、又は化学堆積法により達成されてもよい。
【0024】
少なくとも一以上の絶縁層は、非規則的な細孔のパターンを備えてもよい。その非規則的な細孔のパターンは、絶縁材料の本来的な構造により決定されても良い。絶縁層は細孔の所望なパターンを有してもよい。その細孔の所望なパターンは、細孔の規則的なパターンであっても良い。これは、絶縁材料を形成するための処理の前に、少なくとも一以上の導電性材料をインプリント(型押し)することにより達成されてもよい。
【0025】
細孔及びそれによる導電性材料部は、約20nm〜約100nmの範囲内の直径を有してもよい。細孔の離間間隔及びそれによる導電性材料部の離間間隔は、約10nm〜約100nmの範囲内であり、例えば約50nm〜約100nmの範囲内であってもよい。
【0026】
第3構造体は、例えば、MIST法、パルスレーザ堆積法、化学液体積法、又は蒸着法によって第2構造体上に形成されてもよい。第3構造体を形成するステップは、ナノ構造体を約600℃の温度に加熱する工程を含んでもよい。これは、第2構造体に用いられる導電性材料のタイプにおける制限を負わせるであろう。
【0027】
本発明の第3態様によれば、本発明の第1態様に係るナノ構造体を一以上備えるデータ記憶デバイスが提供される。
【0028】
データ記憶デバイスは、ナノ構造体の配列(アレイ)を備えるものとすることができる。
【0029】
本発明の第4態様によれば、本発明の第1態様に係るナノ構造体を一以上備えるセンサが提供される。
【0030】
そのセンサは、ナノ構造体の配列を備えてもよく、高解像度のセンサ配列を提供してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一形態を説明する。添付図面は、本発明の第1態様に係るナノ構造体の概略図である。
【0032】
図1は、ナノ構造体1の断面図である。ナノ構造体1は、導電性材料の層の形になっている第1構造体2と、導電性材料及び絶縁材料の層の形になっている第2構造体3と、変化がもたされてもよい材料の層の形になっている第3構造体4とを備える。ナノ構造体1は、一以上の層を更に備えてもよく、その一以上の層は第3構造体4の上に堆積されていても良い。
【0033】
第1構造体2は、例えば、スパッタコーティング技術により、基板5上に形成されている。基板5は、第1,第2及び第3構造体のための機械的な支持を提供する。基板5は、例えば、絶縁材料、誘電性材料、金属性材料又はシリコンのような半導体を含む。
【0034】
第1構造体2は、タンタルを含む層を備えており、堆積により基板5上に形成されている。第1構造体は、異なる導電性材料、例えばタンタル及び金を含む複数の層を備えることができるであろうが、本実施形態では、第1構造体2はタンタルの単一層を備える。複数層を備える第1構造体は、第1構造体の相当な導電度を維持しながら、基板に対する第1構造体の十分に強い接着力を提供するために用いられてもよい。
【0035】
第2構造体3は、白金を含む複数の導電性材料部6を備えており、複数の導電性材料部6は、アルミナを含む絶縁材料部7により離間されている。第2構造体3は、まず第1構造体2の表面上に(450nm程度に及ぶ厚さの)アルミニウムの薄膜を堆積することで、第1構造体2の表面に形成される。堆積方法はスパッタコーティング技術を含んでもよい(薄膜に形成された細孔構造の熱安定性を向上するため、微量の酸素がアルミニウムの薄膜に加えられてもよい。)そのアルミニウム層は、その後に陽極酸化される。基板、第1及び第2構造体から形成された複合構造体は、弱硫酸(約0.3M)を含む電解セルの中に配置され、電解セルは約2℃の温度まで冷やされる。複合構造体は電解セルの陽極(アノード)として用いられ、白金は電解セルの陰極(カソード)として用いられる。電解セルに約20Vの電圧が印加され、これによりアルミニウム層が酸化される。上述した方法は、アルミニウムをアルミナに変換させると共に、そのアルミナに複数の細孔を生成する。この細孔はアルミナ層の全厚さ、第1構造体2に接する第2構造体3の表面から第3構造体4に接する第2構造体3の表面に渡って延びていてもよい。しかし、これでなければ、第2構造体の全厚さに渡って細孔が延びることを確実にするために、例えば約0.1Mの水酸化ナトリウム液を用いてアルミナ層がエッチングされてもよい。一旦、細孔が形成され、また必要に応じてエッチングされると、白金は化学気相堆積法により各細孔内に配置され、導電性材料部6を形成する。複合構造体は、約0.2Mの塩化白金酸塩溶液を含むと共に典型的に0.1V堆積電圧が印加された更なる電解セル中に配置される。複合構造体は、電解セルの電極として用いられ、塩‐溶液に露出されている複合構造体の導電領域だけがアルミナ層に形成された細孔の底面における導電領域となるように、その電解セル中に配置される。それ故、白金の電気分解堆積は、細孔内でのみ起きて、導電性材料部6の白金部分を形成する。白金の堆積中に、電解セルにおける堆積電流はモニタされ、白金堆積が細孔の先端に達すると電流における急な増加が観察される。堆積は、その電流の増加が止まるまで継続される。この時点で、白金は細孔内、及び複合構造体の表面上の連続膜に堆積される。その後に、複合構造体は電気分解セルから取り出されて白金層を除去するために低い角度でアルゴンイオンエッチングされ、アルミナの外側部と同じレベルの白金部6の外側部分が残される。そのように形成された導電性材料部6の白金部は第1構造体2の表面まで至って第1構造体2の表面に接し、この構造体の導電性のタンタル層との電気的な接触を形成する。第2構造体3の白金からなる導電性材料部6はアルミナ薄膜により互いに離間しており、ここでアルミナは絶縁材料である。従って、導電性白金部6は、互いに電気的に離間している。
【0036】
陽極酸化前のアルミニウムの前処理がないときには、アルミナの固有的な物理的構造に従って、アルミナに細孔が形成される。アルミナの固有的な物理的な構造は、アルミナに細孔の準規則的な配列を生成する。そのような構造は応用性を有しているかもしれないが、規則的な細孔の配列は様々な現在の応用において既に利用され得るナノ構造体を提供するであろう。アルミニウム層の陽極酸化に先立って、この層はそれの自由表面、すなわち第1構造体2に取り付けられていない表面、における窪みの規則的な配列を提供するために処理され得る。そのような窪みは、各窪みにおいて細孔の形成を生じさせ、その結果、細孔の規則的な配列又は予定位置における細孔を形成させる。
【0037】
細孔の直径及びそれによる導電性材料部6の部分は、約20nm〜約40nmの範囲内であることができる。細孔の離間距離及びこれによる第2構造体3の導電性材料部6は、アルミニウム層に形成された窪みの離間距離を調節することで制御され得る。白金を含む導電性材料部6の離間距離は、約10nm〜約100nmの範囲内であり、例えば約50nm〜約100nmであることができる。
【0038】
第3構造体4は、チタン酸バリウム又はジルコニウムチタン酸鉛のような強誘電性材料を含む。パルスレーザ堆積法、ミスト化学溶液堆積法(MIST chemical solution deposition method)又はスピンコートゾル-ゲル法(spin-coat sol-gel process)により、第3構造体4は第2構造体3上に堆積され、第3構造体4は第2構造体3の実質的に全体を覆う。強誘電性材料は、第2構造体3の導電性材料部6、複数の白金部に接触しており、複数の白金部と電気的な接触を形成する。
【0039】
上記強誘電性材料は、その強誘電性材料に分極がもたらされ得る。強誘電性材料は、第2構造体3の導電性材料部6を介して第1構造体2と電気的に接触しているので、その強誘電性材料への電圧の印加により分極がもたらされる。
【0040】
タンタルを含む第1構造体2は、第1電極として機能し、強誘電性材料を含む第3構造体4は動作層(情報を記憶する)として機能する。例えば、金を含む更なる層が、第3構造体4上に堆積されてもいてもよく、これは第2電極として機能する。電圧は、第3構造体4の強誘電性材料の実質的に全体に印加される。印加された電圧により、複数の局所分極が強誘電性材料にもたらされるが、これは第2構造体3の導電性材料部6に接する強誘電性材料の領域においけるその印加電圧により生成される局所電場による。これは、第3構造体4の実質的に全体に電圧が印加され、且つ第3構造体4の強誘電性材料が連続層に形状を成しているにもかわらず生じる。強誘電性材料の厚さは、近接する分極間における干渉を最小にするように制御される。近接する分極間における干渉は、強誘電性材料を通り抜けて広がる横方向に電場により発生してもよい。特に、強誘電性材料は分極間の干渉を最小化するほど十分に薄い。このように形成されたナノ構造体1は、複数のナノキャパシタを提供する。各ナノキャパシタの分極の寸法は、ナノキャパシタの導電性材料部6から生じると共に分極を引き起こす電場により定義される。連続層の形状の強誘電性の第3構造体によっても、高密度のナノキャパシタを備えるナノ構造体は実現される。
【0041】
上記の代替方法として、局所化電圧は、第2構造体3の導電性材料部6に接する複数の強誘電性材料の範囲の各々又は複数の強誘電性材料の範囲の幾つかにおける強誘電性の第3構造体4に対して、印加されてもよい。これは、第2電極としてプローブ、例えば走査型プローブ顕微鏡のプローブを用いることで達成されてもよく、プローブは第3構造体4の強誘電性材料の一以上の領域に対して局所化電圧を印加するためにナノ構造体1上に動かされる。代替的に、これは、第2電極としてプローブアレイ(列)を用いることで達成されてもよく、プローブアレイは第3構造体4の強誘電性材料の複数の領域に局所化電圧を印加する。プローブ又は複数のプローブの幅は、第2構造体3の導電性材料部6の各部分の離間間隔より小さくあるべきである。代替的に、これは、強誘電性の第3構造体4上に所定の層を配置することにより達成されてもよい。その層は第2電極として機能し、電圧がその層に印加されると複数の局所化電圧が強誘電性の第3構造体4に印加されるようにパターニングされている。すなわち、そのパターニングされた層が電極アレイを提供する。第2構造体3の導電性材料部6に接する強誘電性材料の範囲内における、印加電圧により強誘電性材料に生成される局所化された電場により、第3構造体4に印加される一の局所化電圧又は複数の局所化電圧の各々は、そこでの強誘電性材料に局所化された分極をもたらす。上記のように、再び形成されたナノ構造体1は、複数のナノキャパシタを提供する。各ナノキャパシタの分極の寸法は、ナノキャパシタの導電性材料部6から生じると共に分極を引き起こす電場により定義される。高密度のナノキャパシタを備えるナノ構造体は実現される。このナノ構造体の各キャパシタは、個別的にアドレス指定され得る。これは、可動プローブ、プローブアレイまたはパターニングされた層の何れか一方のような第2電極の用意による。これは、電極アレイを備えるパターニングされた層の形状を成す第1電極、すなわち第1構造体2を供給することにより達成されてもよい。
【0042】
強誘電性の第3構造体4における各分極は、よく局所化され得ると共に、強誘電性材料の使用によりこの材料において相当な時間の間に維持され得る。各分極は、アップ分極又はダウン分極であってもよい。従って、各分極はデジタルの1又は0を表すために用いられ得る。このように、ナノ構造体は記憶デバイスとして用いられることができ、複数の2進数バイトを記憶する。第2構造体3の導電性材料6の部分の離間間隔と、これによる第3構造体4の強誘電性材料における分極の離間間隔とは、10nm〜100nmのオーダとすることができ、これは超高密度記憶デバイス又は高解像度センサの可能性を提供する。分極の寸法及び分極の離間間隔は、平方インチ当り1011〜1011オーダの規則的なビット密度を達成する。これは、ハードワイヤード固体メモリにおける新たな規範を定める。分極方向は、第3構造体4の強誘電性材料に印加される電圧の極性を切り替えることで切り替えられてもよい。
【0043】
本実施形態においては、強誘電性材料部を備えるように説明してきたが、その他の誘電性材料、強磁性材料、オボニック材料、ポリマ又は分子材料のような変更が起こることができる他の材料を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1態様に係るナノ構造体の概略図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含む第1構造体を備え、
前記第1構造体が、絶縁材料により離間されている一以上の導電性材料部を有する第2構造体に取り付けられており、
前記第2構造体が、変化を生ずることができる材料を含む第3に取り付けられているナノ構造体。
【請求項2】
前記第3構造体が、該第3構造体に生ずる前記変化を定める厚さを有する請求項1に記載のナノ構造体。
【請求項3】
前記第3構造体の前記厚さが、該第3構造体の前記材料における前記変化を制御するために制御される請求項1又は2に記載のナノ構造体。
【請求項4】
前記第3構造体が、変化を生ずることができる一以上の部分を有する請求項1〜3の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項5】
前記第3構造体が、前記第2構造体の一の前記導電性材料部若しくは複数の前記導電性材料部の各々、又は複数の前記導電性材料部の幾つかに近接する部分であって、変化を生ずることができる部分を有する請求項4に記載のナノ構造体。
【請求項6】
前記第3構造体の前記厚さが、該第3構造体の一の前記部分又は複数の前記部分の各々に前記変化を局所化するように制御される請求項4又は請求項5に記載のナノ構造体。
【請求項7】
前記第2構造体に2以上の導電性材料部を備え、
前記第3構造体の前記厚さが、前記第2構造体の前記導電性材料部の離間間隔と実質的に同一となるように制御される請求項1〜6何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項8】
変化が、前記第3構造体への電圧印加により、前記第3構造体の一以上の前記部分にもたらされる請求項4〜7の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項9】
電圧が前記第3構造体の実質的に全体に印加され、変化が前記第3構造体の一以上の前記部分にもたらされる請求項8に記載のナノ構造体。
【請求項10】
局所化電圧が前記第3構造体の一以上の前記部分のそれぞれに印加され、該部分に変化がもたらされる請求項8に記載のナノ構造体。
【請求項11】
前記第3構造体において、変化を生ずることができる一の前記部分又は複数の前記部分の各々が、データを記憶するために用いられる請求項4〜10の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項12】
前記第3構造体が、誘電性材料を含む請求項1〜11の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項13】
前記誘電性材料に生ずる変化が、該誘電性材料の分極である請求項12に記載のナノ構造体。
【請求項14】
前記第3構造体が、前記第2構造体の一の前記導電性材料部若しくは複数の前記導電性材料部の各々、又は複数の前記導電性材料部の幾つかに近接する誘電性材料の部分を有し、該誘電性材料の部分と前記第2構造体の導電性部分との間における電気的な接触と、前記第2構造体の前記導電性部分と前記第1構造体との間における電気的な接触とにより、前記誘電性材料の部分には分極を含む変化がもたらされる請求項12又は13に記載のナノ構造体。
【請求項15】
前記第3構造体が、強誘電性材料を含む請求項1〜14の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項16】
前記強誘電性材料にもたらされる変化が、該強誘電性材料の分極である請求項15に記載のナノ構造体。
【請求項17】
前記第3構造体が、前記第2構造体の一の前記導電性材料部若しくは複数の前記導電性材料部の各々、又は複数の前記導電性材料部の幾つかに近接する強誘電性材料の部分を有し、該強誘電性材料の部分と前記第2構造体の導電性部分との間における電気的な接触と、前記第2構造体の前記導電性部分と前記第1構造体との間における電気的な接触とにより、前記強誘電性材料の部分には分極を含む変化がもたらされる請求項12又は13に記載のナノ構造体。
【請求項18】
一以上のナノキャパシタを備え、
前記ナノキャパシタの各々が、前記第3構造体において、分極を含む変化がもたらされる部分を備える請求項14又は17に記載のナノ構造体。
【請求項19】
一の前記ナノキャパシタ若しくは複数の前記ナノキャパシタの各々、又は複数の前記ナノキャパシタの少なくとも幾つかが、データを記憶するために用いられる請求項18に記載のナノ構造体。
【請求項20】
一の前記ナノキャパシタ若しくは複数の前記ナノキャパシタの各々、又は複数の前記ナノキャパシタの少なくとも幾つかが、デジタルの1又は0を表すために利用された分極を保存するために用いられる請求項18又は請求項19に記載のナノ構造体。
【請求項21】
前記第3構造体が、オボニック材料を含む請求項1〜20の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項22】
前記オボニック材料にもたらされる変化が、該オボニック材料の相変化である請求項21に記載のナノ構造体。
【請求項23】
前記第2構造体の一の前記導電性材料部又は複数の前記導電性材料部の各々が、約10nm〜約100nmの範囲内の直径を有する請求項1〜22の何れか一項に記載のナノ構造体。
【請求項24】
前記第1構造体を形成するステップと、
前記第1構造体の表面上に一以上の細孔を有する一以上の誘電性材料の層を形成することにより、前記第2構造体を形成するステップと、
絶縁材料により離間された一以上の前記導電性材料部を形成するために、一の前記細孔内又は複数の前記細孔の各々内に導電性材料を配置するステップと、
前記第2構造体の表面上に前記第3構造体を形成するステップと、
を含む請求項1〜23の何れか一項に記載のナノ構造体の製造方法。
【請求項25】
前記第1構造体の前記表面上に誘電性材料の層を形成するステップが、
前記1構造体上の一以上の導電性材料の層を配置する工程と、
前記絶縁材料の層を形成するために導電性材料の前記層を処理する工程と、
を含む請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
導電性材料の前記層を処理するステップが、
前記絶縁材料を形成するために前記導電性材料を陽極酸化する工程を含む請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記絶縁材料を形成するために導電性材料の前記層を処理する工程が、前記絶縁材料に一以上の細孔の形成をもたらす請求項25又は26に記載の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜23に記載のナノ構造体を一以上備えるデータ記憶デバイス。
【請求項29】
請求項1〜23に記載のナノ構造体を一以上備えるセンサ。

【図1】
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【公表番号】特表2009−534779(P2009−534779A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505956(P2009−505956)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001437
【国際公開番号】WO2007/125278
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504389636)ザ クイーンズ ユニヴァーシティ オブ ベルファスト (14)