説明

ナノ構造化されたナノ多孔質のフィルム組成物、その構造及びその製造方法

本発明は、種々の組成物のナノ構造化された及びナノ多孔質の薄フィルム構造物の製造方法を含む。これらのフィルムは、直接パターン化されてよい。これらの方法において、先駆物質フィルムは、表面に付着され、またこの先駆物質フィルムの異なる成分は、選択条件下で反応し、ナノ構造化された又はナノ多孔質のフィルムを形成する。そのようなフィルムを種々の用途、例えば低κ誘電体、センサー、触媒、導線又は磁性フィルムに使用し得る。ナノ構造化されたフィルムは、次のように作られ得る。(1)一種の先駆物質成分及び二種の反応の使用(2)光化学変換の異なる速度に基づく2種以上の成分の使用(3)一つの先駆物質の熱感受性及び他方の光化学感受性に基づく2種の先駆物質の使用、及び(4)先駆物質フィルムの光化学反応及びほとんど未反応の成分のフィルムからの選択された除去による。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2001年7月31日に出願された共に係属中の米国出願シリアル番号09/918,908の一部継続出願であり、この出願は、2000年7月28日に出願された仮特許出願番号60/221,844に基づく優先権を主張し、これらのそれぞれは、ここに参考として取り込まれる。
(本発明の分野)
本発明は、フィルム組成物、構造化適用、及び金属又は金属酸化物のナノ構造化されかつナノ多孔質フィルムの製造方法に関する。これらのフィルムは、金属-有機化合物を含有する先駆物質配合物に由来する。本明細書全体に渡り「ナノ構造化されたフィルム」は、その構造又はナノスケールドメイン構造においてナノ粒子を有する薄いフィルムを言い、また「ナノ多孔質フィルム」は、ナノメートル範囲の直径を有する細孔を有する薄いフィルムを言う。本発明は、さらに種々の用途におけるそのようなフィルムの使用に関し、限定的ではないがマイクロエレクトロニクス産業への適用を含む。
(本発明の背景)
半導体は、電子デバイス、例えばコンピューター、テレビ、PDA、ラジオ、携帯電話等の用途に対し集積回路の形成の基礎として広く使用される。これらの集積回路は、単一の結晶シリコンチップ上に数百万個のトランジスタを結合し、複雑な機能を実施し、またデータを蓄積する。他の工業的な要求とともに小型化の連続的な傾向のために、半導体ミクロ電子工学の設計者は、集積回路が、(1)より高速であること、(2)フィルムナノ構成物質又はナノ粒子及び得られるナノ構造が良好に制御されていること、及び(3)低コストであること、を要求する。
【0002】
(1)ミクロ電子工学回路における高速の達成
集積回路をより高速化する一つの方法は、信号のクロストークを減少させることである。クロストーク信号は、第二導線と第一導線とを近い近似で連結させ、第二導線上で不正確な信号を形成する第一導線上の信号である。導線間の電気容量の減少によって、クロストーク信号は減少する。導線間の電気容量は、導線間の物質の絶縁体誘電率を減少させることによって減少され得る。多くの絶縁体誘電率を減少させるスキームが、研究され、例えばエーロゲルフィルム(これは、ナノ多孔質誘電体フィルムであり、固体誘電体物質が、空気で充填されている多くの空隙を有する。)を使用する。「半導体基板上に薄いフィルムのナノ多孔質エーロゲルを形成するための低揮発性溶媒-ベース法」という名称の米国特許第6,380,105号明細書において、薄いフィルムのナノ多孔質誘電体物質が開示されている。しかし、これらのフィルムは、通常のVLSI(超大規模集積回路)技術を使用して形成され、フィルムをパターン化しにくくさせ、これらの多孔性制御点で、変動した結果となる。これは、(1)VLSIフィルムを画像化するのに適用されるフォトレジストが、所望されない残渣で気孔を充填して、また(2)フォトレジストを除去するために使用される溶媒化学が、所望されない残留溶媒で気孔を充填するからである。これらの望まれない余分なフォトレジスト物質及び余分な溶媒化学の除去は困難である。従って、ナノ多孔質フィルムの気孔率を制御し及び残渣を除去する困難性なしにこれらのフィルムを容易にパターン化できる必要性が存在する。
【0003】
(2)フィルムナノ構成物質又はナノ粒子の制御及び得られたミクロ電子工学回路のナノ構造
VLSI処理及びデザインにおける別の必要性は、フィルムのナノ構造の制御の必要性である。実際、VLSIに使用される進んだデザイン薄いフィルム、例えば、金属又は絶縁体拡散障壁、コンデンサー用の導電電極、導線、薄いフィルムレジスタ、薄いフィルムフューズ、薄いフィルム磁気フィルム及び薄いフィルム誘電物質は、ナノ構成物質又はナノ粒子を制御するための試みである。これらの薄いフィルム中のナノ粒子を制御することによって、上記フィルムの最終ナノ構造を制御できる。
【0004】
(3)ミクロ電子工学回路の低コスト化の達成
VLSIの設計及びVLSIの製造における別の必要性は、半導体基板上の回路の製造方法を簡素化することである。製造コストを増加させずに、好ましくは製造コストを低下させてこの方法を簡素化することがさらに有益である。従来のVLSIの研究方法において、必要な一連の処理工程は、フィルムのパターン化を構成するフォトリソグラフィー方法を含む。これはさらに従来のVLSI研究方法において多額のコストである。基本的には、VLSIのパターン化されたすべてのフィルムに対して、フォトレジストは、暴露され、また画像化され(imaged)、開発されまたマスクとして使用されリアクティブイオンエッチング(RIE)を通して画像を写し、次いで余剰のフォトレジストをプラズマO2灰又は湿った溶媒ストリップを使用して除去し、その後清浄化によってフォトレジスト残渣を除去する必要がある。実際、VLSIに使用されるフィルム層上にパターンを形成することは、工程の制限された数からだけでも高くつく。「パターン化されたフィルムを含有する金属を直接付着させる方法」とのタイトルの米国特許第5,534,312号明細書において、金属酸化物、金属、又は他の金属含有化合物を含むパターン化されたフィルムを製造するためのフォトレジストフリーの方法が記載される。具体的には、この方法は、光化学金属有機付着(PMOD)方法である。
この方法は、金属有機化合物の非晶質フィルムの基板への適用を含む。このフィルムは、標準的な工業技術を使用してスピンコーティングによって都合良く適用される。使用される金属-有機化合物は、光反応性であり、好適な波長の光によって開始される低温化学反応を起こす。反応の最終生成物は、反応が実施される雰囲気によって決まる。例えば、金属酸化物フィルムは、空中で作られ得る。フィルムは、フィルムの選択された部分のみを光に暴露することによってパターン化され得る。2種以上の物質のパターンは、異なる雰囲気下でフィルムの異なる部分を光に暴露することにより、同一のフィルムから生み出され得る。形成したパターンフィルムは、ほぼ平面であり、別の平坦化工程が必要ない。このPMOD技術が、制御されたナノ多孔性又はナノ構造化されたフィルムを作るために適用され得ることが分かる。この方法は、実際、全体的な方法を簡素化し、低コストのVLSIを備える方法を提供する。上記載のように、ナノ多孔性は、誘電率などの特性を改良するための特定のフィルムの望ましい特性である。しかし、'312特許は、ナノ多孔性フィルムもそのようなフィルムのナノ多孔性の制御も取り組んでいないので、VLSIで使用されるパターン化されたフィルムを形成する簡素化された、低コストPMOD法をフィルムのナノ多孔性を有効に制御する方法と結合させる必要性が依然と存在する。
【0005】
(発明の概要)
本発明は、ナノ多孔性又はナノ構造化された薄いフィルム(又は薄膜)の制御された付着(又は形成)方法を開示する。この方法は、基板上の先駆物質フィルムの第一の付着工程から成る。この先駆物質形成は、スピンコーティングなどの多様な方法によって表面に付着され得る。この付着は、室温で実施され得る。次工程は、先駆物質溶液の金属又は金属酸化物フィルムへの変換である。
本発明の、ナノ構造化されたフィルムを形成するために、先駆物質配合物の少なくとも1種の成分が、部分的に又は全体に金属又は金属酸化物に変換される。この後、第二の成分の変換が続く。これら2種の変換工程の少なくとも1つは、光分解(先駆物質化合物の光化学反応を経由する先駆物質フィルムの分解)又はイオン又は電子ビームの衝突によって達成され得る。得られたフィルムは、各成分が独立して制御することができる、よく制御された、ナノ構造化された薄フィルムである。変換工程の間、光、イオン、又は電子ビームが、マスクを通して画像化される。得られた薄いフィルムは、変換工程が反応を起こす領域を有し、また他の領域では反応しない。従って、マスク又は有向のビームの使用によってナノ構造化された金属又は金属酸化物フィルムをパターン化する。
上記パターン形成される雰囲気を変化させることによって、組成及び得られたナノ構造及び従って形成する金属又は金属酸化物フィルムのフィルム特性が変化できる。この方法では、大気反応が、光、イオン、又は電子ビーム変換工程の(1)前に、(2)間に、又は(3)後に、又は(4)(1)、(2)又は(3)のいかなる組み合わせにおいて、実施される。
ある成分が容易に除去されるナノ構造化されたフィルムをつくることにより、ナノ多孔性フィルムは、調製され得る。さらに、ここに記載されるような工程関連変数を使用して、光分解したフィルムの多孔性に影響を与えることができる。
【0006】
(好ましい態様の詳細な記載)
本発明は、ナノ構造化された薄いフィルムをつくる方法を開示し、それは、基板上への先駆物質溶液の付着及び次いで上記前記物質の薄フィルムへの変換を含む。その後、薄フィルムを処理して、この工程をその工程の間に異なる回数で、金属酸化物を形成する異なる成分の異なる反応を有するように設計し、この方法の間、異なる材料組成物の制御された形成を可能とする。この方法の少なくとも1つの工程は、薄いフィルムのパターン構成を可能とする指向性光又はイオンビーム、又は電子ビームの相互作用を含む。
これらのナノ構造化された薄いフィルムの制御された構成によって、最終の薄いフィルムの種々の物理的特性の制御を可能にする。これらの薄いフィルムは、種々の基板上に形成することができる。これらの基板の適用例は、CaF2のような単塩、サファイア又はクオーツのような結晶、ケイ素又はガリウムヒ化物のような半導体表面、半導体構造の上層として白金、銅、又はアルミニウムなどの金属、及びSiO2又はポリマーのような絶縁体、及びセラミック(例えばアルミナ)及びポリマー(例えばポリイミド)のようなパッケージ表面を含むが、これらに限定されるものではない。
基板の特性は、この方法に重要でないが、温度範囲、接着特性及び付着溶媒に関して、選ばれた先駆物質フィルムの付着方法に影響を与え得る。最も一般的に使用される基板は、シリコンウエハー又は半導体構造の上層である。
【0007】
先駆物質フィルム、例えばTi(OiPr)2(acac)2の2000Åのフィルムは、基板、例えばシリコン上に、スピンコーティングのような種々の方法によって付着され得る。この方法において、先駆物質は、溶媒に分散されて、先駆物質溶液を形成する。一つの例において、基板、すなわち予備的処理をされた半導体シリコンウエハーは、入手可能なスピンコーター(すなわち、ヘッドウェイ社又はローレルコーポレーション社)に存在するように真空チャックが備えられる場所に固定される。先駆物質溶液は、スピン開始前又は基板をスピンしながら基板表面に分散される。基板は、次いでスピン可能となり、表面上の先駆物質の薄いフィルムの付着物となる。薄いフィルムの厚さは、1μ(ミクロン)〜200nmの最適範囲及び10μ(ミクロン)〜50nmの可能な範囲を有する。この厚さは、スピンコーティング分野で既知のように、パラメータ、例えば基板のスピン速度、先駆物質溶液の粘度、及び先駆物質溶液の濃度を調整することによって調整され得る。厚さは、後に続く暴露工程全体に渡り最初の適用の厚さから相当に減少することに注意すべきである。すべての暴露工程の後、例えば、酸化物は典型的に8-10X(倍)の厚さ減少となり、また金属は、典型的に50-100X(倍)の厚さ減少となる。ある場合において、この溶液の供給速度も因子である。一つの例において、スピン被覆は、室温で実施される。
先駆体化学、基板の被覆に使用される溶媒、付着されるフィルムの前処理、及び付着されるフィルムの厚さを含むいくつかのパラメータを制御して、光分解フィルムの残留非関連性(nonsocial)の多孔性に影響を及ぼし得る。例えば、選択される先駆物質の光活性の度合いが高いほど、光分解フィルムの多孔性の容積比が低くなる。これは、Ba-ヘキサノエート及びTi(acac)2(iPr)2の2成分系(binary system)で明らかである。
【0008】
別の例として、基板に先駆物質をスピン-コーティングするために使用される溶媒は、その溶媒の乾燥の間に生じる先駆構成物質の初期パッキング密度に影響を有する。基本的には、より低い表面張力を有する溶媒は、より高い表面張力を有する溶媒から乾燥されるフィルムと比較して、乾燥されたフィルムの密度を小さくする。毛管力は、表面張力に直接比例し、また毛管半径に反比例する。この力は、付着したフィルムが乾燥する間に、生じる孔の崩壊に影響し、それによって、得られるフィルムのナノ多孔性に影響を与える。例えば、ヘキサン等の低表面張力溶媒は、シクロヘキサン又はMIBK等の高表面張力溶媒より低密度のフィルムを製造する。このフィルムは、光分解後、この初期密度差を引き継ぎ得る。
【0009】
本発明の光分解フィルムのナノ多孔性に影響を与えるように制御され得る値の更に別の例として、UV暴露前の焼付(baking)工程が、UV暴露の間の、焼きしまりの前のネットワーク形成により、追加の多孔性を誘導し得る。ナノ多孔性に影響を与える更に別の例として、光分解フィルムの多孔性は、フィルムの厚さに比例し、放射線量が同じ場合、フィルムを薄くするほど、多孔性が小さくなる。逆に、放射線量が同じ場合、フィルム厚さが増加するにつれて、フィルムの多孔性は増加する。
別の例として、ある範囲での濃度の界面活性剤を添加することによって、フィルムのナノ構造にも影響を受け得る。界面活性剤の特性は、特に、界面活性剤がフィルム内に残される場合も重要である。例えば、ここで参考として取り込まれる米国特許第5,534,312号明細書に記載の方法において形成されるフィルム、すなわち、マンガン2-エチルヘキサノンのフィルムの光分解によって調製されるサンプルは、図3に示される。唯一の示される顕著な特徴は、約4nm直径の小さい丸い形態(feature)からなる粒状性である。純粋なマンガン2-エチルヘキサノエートフィルムは、254nm電磁線によって光分解され、非晶質酸化物のフィルムとなり得る。これらのフィルムは、マスクを使用して、リソグラフィック的にパターン化され得る。ラウリン酸等の界面活性剤を先駆体物質フィルムに添加することによって、形態の密度及び外観は、図4A-4Cに示されるように変化する。
他の又は複数の界面活性剤又は金属が使用され得る。別の好適な界面活性剤は、NaAOTである。ジルコニウム先駆物質は、チタン及びタンタル先駆物質がフィルムを製造するために使用され得るジルコニウム酸化物/界面活性剤混合物を調製するために使用され得、相分離特性は、NaAOT等の界面活性剤の添加によって変更され得る。界面活性剤NaAOTがナノ構造化を生じさせるためにマンガンを伴って使用され得る。マンガン及びNaAOTのモル比を変化させることによって例えば、ナノ構造は、図5A及び5Bに示されるように、形成され得る。
【0010】
熱及び光化学変換方法が使用される場合、いずれの変換方法中、使用される化学系に最初に依存して使用され得る。
光分解フィルムの多孔性に影響を及ぼし得る前述の変数は、そのような変数の完全なリストを構成することを企図するものではなく、むしろ光分解フィルムの多孔性に作用し得る模範的な変数である。
ナノ構造化されたフィルムを製造するための本発明の第一の態様は、以下の通り一つの先駆物質成分及び二つの反応の使用による。先駆物質は、上記先駆物質の一次構造が短範囲の二次の形成、すなわちナノ結晶ドメインの形成の障壁を減少させる。
【実施例1】
【0011】
この最初の態様の例において、バリウムチタンダブルメタルアルコキシド(組成式は、BaTi(OR)x)先駆物質配合物を、その先駆物質を好適な溶媒に溶解させる(好ましくは5-50%(w/w)及びあるいは1-90%(w/w))ことによって調製する。この配合物は、「initial basic method for deposition of precursors」において上述されるように適用される。その後、得られたフィルムは、単一光分解工程で変換される。得られた金属酸化物フィルムは、溶液を温浸(digest)するような熱水的(hydrothermal)条件下、好適な触媒存在下、又はオートクレーブ中触媒の不存在下で選択された圧及び温度で処理される。この熱水的処理は、非晶質金属酸化物のマトリックス中ナノ結晶ドメインを有するフィルムを形成する。
ナノ構造化されたフィルムをつくるための本発明の第二の態様は、以下の通り光化学変換の異なる速度に基づいて選択される二以上の成分を使用することによる。この態様において、二つの先駆物質は、光化学付着の異なる速度が、個々の化合物のナノスケールドメインの付着を導くように選択される。
【実施例2】
【0012】
この第二の態様の例において、Ta(OEt)4(acac)(acac=2,4-ペンタンジオネート)(18質量%)及びジルコニウム(IV)2-エチルヘキサノエート(29質量%)のMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液が使用され、従来のスピンコーティング法によって基板を被覆する。この工程は、米国特許第5,534,332号明細書に記載のように、30分間の深UV電磁線(好ましくは254nm)を使用する光分解に続く。この例における光源は、Xeランプ又はHg蒸気ランプ、例えば、コンデンサーレンズ及びクオーツ光学10cm水フィルターを備えるOriel(商標)ハウジングの100W高圧Hg蒸気ランプでよい。325nm及び/又は416nmのHeCdレーザー放出光は、多くの金属錯体に関連する光源として使用される有用な特性を有する。UV放射工程は、第一にタンタルフィルムの反応となる。これは、5分間のヘキサンによる現像に続き、パターンの形成を得る。さらに2時間の光分解によって、ジルコニウム先駆物質成分の反応及びナノ構造化フィルムの形成となる。類似の例において、残りのジルコニウムを熱的に反応させ、続いて、フィルムを現像させる。
【実施例3】
【0013】
この第二の態様の別の例において、バリウム(2-エチルヘキサノエート)及びTi(OiPr)2(acac)2(それぞれ21.5%w/w及び18.5%w/w)の混合物のMIBK溶液を使用してスピンコーティングによってケイ素基板を被覆する。被覆された基板を、30分間深UV電磁線に暴露する。リソグラフィーの方法(すなわち、基板のパターン化された暴露)の使用によって、パターン化されたフィルムをヘキサン及びイソプロピルアルコール(10:90)の混合物を使用し、潜像を現像する。
フィルムの組成を確認する目的で、得られるバリウムチタン酸化物フィルムサンプルを30分の工程の間、30℃の水浴に漬けた。このフィルムサンプルを水から取り、この水を誘導結合プラズママススペクトル(ICP-MS)によって分析した。この水は、高レベルのバリウムを示すがチタンは示さなかった。この結果は、バリウムが選択的にサンプルから浸出され、さらにフィルム中、酸化バリウム及び酸化チタンの種形成(speciation)(例えば、不連続ドメインの形成)を示唆することを示す。
このバリウムが、フィルムから選択的に抽出されるという事実は、バリウムがチタンを有する第二構造(バリウムチタネートの結晶相に見出されるペロブスカイト構造など)に含まれないことを示唆する。例えば、バリウムチタネートのフィルムが、上記例と同一の条件に付される場合、バリウムもチタンもフィルムに浸出されない。
ナノ構造化されたフィルムをつくる本発明の第三の態様は、一つの先駆物質の熱感性及び他方の光化学感性に基づいて選択される二つの先駆物質を使用することによる。この態様において、選択される二種の先駆物質は、まず第一の物質を分離し、ついで、第二の物質を分離し、次いで、第一の物質を先駆物質フィルムから分離可能なように適切な熱及び光化学感性を有する。
【実施例4】
【0014】
この第三の態様の例において、バリウム(2-エチルヘキサノエート)及びTi(OiPr)2(acac)2(それぞれ21.5%w/w及び18.5%w/w)の混合物のMIBK溶液を使用し、ケイ素基板をスピンコーティングによって被覆する。この被覆された基板を90℃のホットプレート上で2分間、加熱し、チタン先駆物質を熱分解する。ついで、このフィルムを深UV放射線に暴露して、バリウム先駆物質を分解物質とする。リソグラフィー法(すなわち、基板のパターン化された暴露)を使用することによって、ヘキサン及びイソプロピルアルコール(10:90)の混合物を使用してパターン化されたフィルムを形成して、潜像を現像する。
実施例3に使用されたのと同一の試験方法を、実施例4においてつくられたフィルム上に実施して、バリウム及びチタンは、バリウムが浸出されるために分離し、酸化バリウム及び酸化チタンは、フィルム中に予測/予期されるものであるという同一の結論に到った。
【実施例5】
【0015】
この第三の態様の別の例において、ヘプタン中、Ta(OEt)4(acac)及びMn(II)2-エチルヘキサノエート(それぞれ16質量%)から形成された混合物からなるサンプルをケイ素基板上にスピン被覆した。このサンプルは、反応を生じさせる熱工程によって室温で暗所で反応し、主に第一のタンタル先駆物質からなる。これは、次いでフィルムを深UV電磁線に暴露することにより、マンガン先駆物質を光化学反応する。リソグラフィー法の使用によって(すなわち、基板のパターン化された暴露)、パターン化されたフィルムが、ヘキサンを使用して形成し、潜像を現像する。
図1は、得られた方法のマンガン及びタンタル領域を有するナノ構造フィルムのTEMを示す。明るいマンガン領域を示すTEM像が、左に、より暗い領域のタンタルの濃度を右に示す。TEM像の元素分析がEDX(エネルギー分散性x-線分光法)又はEELS(電子エネルギー損失分光法)によって決定される。両方の像は、タンタル及びマンガンの分離と互いに一致する。(各像の倍率は同一であり、明るいフィールド像に示される。)
【実施例6】
【0016】
この第三の態様の更に別の例において、Ta(OEt)4(acac)(18質量%)及びウラニルヘキサノエート(9質量%)から作られた混合物のMEK(メチルエチルケトン)溶液を使用してスピンコーティングによって基板を被覆する。タンタル含有錯体を、室温で熱的に反応させる。次の工程は、光化学的にウラニル化合物との反応である(EKC:この光化学反応がどのように実行されるかに関して方法及び装置の詳細を提供してください。)。リソグラフィーの方法の使用によって(すなわち、基板のパターン化された暴露)、パターン化されたフィルムが、アセトンを使用して生じ、潜像を現像する。
図2は、上述の方法の得られたナノ構造化フィルムのウラン豊富領域のTEMを示す。図2の左側は、サンプルのウラン図を示す。この画像において、ウラン含有領域は、より明るい。図2の右側は、同一の倍率におけるこのサンプルの明るい領域画像を示す。図2において、ウランの豊富な領域は、より明るい。これら二つの画像は、ナノメートルサイズ寸法における二つの成分の分離を示す。
ナノ多孔性薄フィルムをつくるための本発明の第四の態様は、先駆物質フィルムを光化学反応し、次いで、選択的にフィルムから大部分の未反応の成分を除外することによるものである。この態様において、使用される異なる方法は、ナノ構造に作用し、最終のフィルムの多孔性に影響を与え得る。さらに、先駆物質配合物の一つの成分を、金属含有先駆物質の光化学分解によって、ほとんど反応しないように、かつ変換したフィルムから選択的に除去されるように選択することによって、高多孔質フィルムが形成され得る。多孔性の範囲及び性質は、この成分の量及び性質によって制御され得る。
312特許に記載されるPMOD法を使用して、光分解時にある程度のナノ多孔性をつくり得ることが分かった。しかし、この態様は、PMOD法による固有の多孔性と必ずしも同一の寸法でない付加的な多孔性が形成される方法を記載する。適正な先駆物質、米国特許出願番号09/918,908に記載のような低密度酸化物の選択により、このナノ多孔性を提供し得る。添加剤とシリカの適切な選択と関連するこの方法は、光-パターン化された低-k誘電性フィルムを作り得る方法であり、これは上述のようにここで参考として取り込まれる米国特許第6,380,105号明細書に関して「関連技術」部分に記載されるように、技術的に重要である。
【実施例7】
【0017】
この第四の態様の例において、Ta(OEt)4(acac)(24.8質量%)及び1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(6.7質量%)のMIBK溶液からつくられるサンプルを基板上にスピン被覆する。深UV電磁線を使用する約30分間の光分解により、主にタンタルフィルムの反応を生じる。次いで、5分間ヘキサンで現像して、パターン化された薄フィルムが形成される。薄フィルム内に捕捉された1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドをヘキサンとの接触により除去する。生成したパターン化された薄いフィルムは、ナノ多孔質である(SEM分析によって決定される)。上記とは別に、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドが、Ta(OEt)4(acac)の光分解から得られるフィルムの熱処理によって除去される。
【実施例8】
【0018】
この第四の態様の別の例において、Ta(OEt)4(acac)(15質量%)及び尿素(5質量%)の混合物のエタノール溶液からなる先駆物質配合物を使用して、スピンコーティングによって基板を被覆する。深UV電磁線を使用する30分間の光分解により、主にタンタルフィルムの反応が生じる。この工程の次に、5分間のエタノールでの現像をし、その結果、パターン化された薄フィルムが形成する。フィルム内に捕捉された尿素は、パターンの現像の間、エタノールとの接触によって除去される。得られたパターン化されたフィルムは、ナノ多孔質である(SEM分析によって決定される)。上記とは別に、アジピン酸は、タンタル先駆物質の光分解から得られるフィルムの熱処理によって除去される。
【実施例9】
【0019】
この第四の態様のさらに別の例において、Ta(OEt)4(acac)(10質量%)及びアジピン酸(5質量%)のエタノール溶液からつくられるサンプルを使用して、スピンコーティング方法で基板を被覆する。深UV電磁線を使用する約30分間の引き続く光分解により主に、タンタルフィルムの反応が生じる。次いで、5分間のエタノールによる現像を行い、パターン化された薄フィルムを形成する。フィルム内に捕捉されたアジピン酸が、エタノールとの接触によって除去される。得られたパターン化されたフィルムは、ナノ多孔質(SEM分析によって決定される)である。上記とは別に、アジピン酸は、タンタル先駆物質の光分解から得られるフィルムの熱処理によって除去される。
本発明は、その好ましい態様に特に関連して記載されるが、これらの態様は説明的であり、本発明は、異なるがここでの教示の利益を有する当業者に明らかな等価な方法に変更及び実施され得ると理解されるべきである。先に開示された特別な態様は、そのような変形物が本発明の範囲及び意図の中に考えられるような方法で変更又は修正され得ることが明白である。従って、本発明の範囲は、ここでの特別な開示によって制限されるべきでないが、添付された特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】マンガン及びタンタルの領域の透過型電子顕微鏡画像である。
【図2】ウランが豊富な領域の透過型電子顕微鏡画像である。
【図3】酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。
【図4A】マンガン:ラウリン酸が1:1のモル比で調製された酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。
【図4B】マンガン:ラウリン酸が100:1のモル比で調製された酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。
【図4C】マンガン:ラウリン酸が1000:1のモル比で調製された酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。
【図5A】マンガン:NaAOTが1:1のモル比で調製された酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。
【図5B】マンガン:NaAOTが100:1のモル比で調製された酸化マンガンフィルムの透過型電子顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包埋したナノ細孔を有する1種以上の金属又は金属酸化物を含むナノ構造化されたフィルムの付着方法であって、前記ナノ細孔が、金属-リガンド先駆物質溶液を、基板上に付着させた後、前記溶液の光化学反応の結果として形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィルムが、パターン化される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
包埋したナノ細孔を有する1種以上の金属又は金属酸化物を含むフィルムの付着方法であって、以下の工程、
(1)基板の表面上に金属錯体先駆物質溶液のフィルムを付着する工程、及び
(2)前記基板上に付着された先駆物質溶液を、包埋したナノ細孔を有する金属又は金属酸化物に変換させ、前記変換が、少なくとも部分的に光化学的になされる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
細孔が包埋されている付着されたフィルムが、非晶質である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変換が、少なくとも部分的に熱的になされる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記変換が、少なくとも部分的に熱水的になされる請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記変換が、プラズマ、電子ビーム又はイオンビームによってなされる請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムが、2以上の工程で連続して変換される請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記変換が、紫外線によって少なくとも部分的になされる請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記変換工程によって形成された金属又は金属酸化物フィルムが、パターン化される請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記変換が、少なくとも部分的に熱的になされる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変換が、少なくとも部分的に熱水的になされる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記変換が、プラズマ、電子ビーム又はイオンビームによってなされる請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記変換が、少なくとも部分的に紫外線によってなされる請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記変換が、少なくとも部分的に酸素雰囲気によってなされる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記付着が、スピンコーティング、噴霧、浸漬被覆、又はインキ着けによってなされる請求項4に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種の界面活性剤が、前記先駆物質溶液に添加される請求項3に記載の方法。
【請求項18】
付着後にかつ前記フィルムの変換前に焼付け工程が使用される請求項3に記載の方法。
【請求項19】
1種以上の金属又は金属酸化物を含む1種以上の領域を有する非晶質のナノ構造化されたフィルムの付着方法であって、前記フィルムが、1種以上の領域を有し、前記1種以上の領域が、先駆物質混合物の非晶質フィルムを基板上に付着させ、そして前記フィルムを暴露工程に付して先駆物質混合物から材料の領域を形成することによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項20】
先駆物質混合物の前記非晶質フィルムが、前記先駆物質混合物から形成される第一及び第二領域を有し、先駆物質混合物の非晶質フィルムを第一の暴露工程に付して、前記先駆物質混合物から分離する第一材料の第一領域を形成し、また前記先駆物質混合物を次いで第二暴露工程に付して第二材料の第二領域を形成する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも前記フィルムの一部が、パターン化される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
電磁線を使用して、第一暴露工程において光化学反応を開始させる請求項20に記載の方法。
【請求項23】
電磁線を使用して、後に続く工程の1つにおいて光化学反応を開始させる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
電磁線を使用して、前記工程の少なくとも1つにおいて光化学反応を開始させることにより、電磁線を使用して前記フィルムをパターン化する請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記フィルムの少なくとも一部が、電子の使用、イオンの使用、原子の使用、中性子の使用、及び荷電粒子の使用からなる群から選択される技術によってパターン化される請求項21に記載の方法。
【請求項26】
添加剤を使用して、少なくとも1種の暴露工程の間、先駆物質材料の能力に影響を及ぼして相分離を起こさせる請求項20に記載の方法。
【請求項27】
形成される少なくとも1種の領域が、ナノ細孔を有する請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ細孔が、光化学的に又は熱的に揮発性有機化合物を除去することによって形成される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ細孔が、溶媒の使用によって形成される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
2より多い暴露工程によって2より多い領域が形成される請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5A】
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【公表番号】特表2006−501076(P2006−501076A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541859(P2004−541859)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030736
【国際公開番号】WO2004/030830
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505116426)サイモン フレイザー ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】