説明

ナノ構造化フェライト合金を用いて形成された物品

【課題】より高い応力及びより低い温度からより高い温度及びより低い応力までの範囲の条件に渡って機械的完全性及び磁気特性を維持することができる軟磁性部材を提供する。
【解決手段】一実施形態では、物品が提供される。物品は軟磁性部材を含む。軟磁性部材はナノ構造化フェライト合金を含む。ナノ構造化フェライト合金は鉄を含有する合金マトリックス内に配置された複数のナノ形態粒子を含み、ナノ形態粒子は酸化物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、軟磁性部材を含む物品に関する。より特定的には、本発明は、一般に、ナノ構造化フェライト合金を含む軟磁性部材を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軟磁性部材は多くの用途、殊に電気及び電磁デバイスで重要な役割を果たしている。軽量でコンパクトな電気機械の必要性が増大している。コンパクトな機械設計は機械の回転速度の増大によって実現され得る。高速で作動するために、これらの機械は高い磁束密度で作動することができる材料を必要とする。これらの部材はまた、使用寿命要件に応じて、構造上の欠陥を生じることなく高い引張強さも示さなければならない。同時にこれらの部材は比較的低い磁気コア損失を許容することができるべきである。当業者には理解されるように、軟磁性部材を形成するのに従来の材料を用いて高い機械的強度と優れた軟磁性能を同時に達成することは困難であり得る。一般に、高強度部材は磁気飽和及びコア損失のような重要な磁気特性を犠牲にして得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7662207号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、より高い応力及びより低い温度からより高い温度及びより低い応力までの範囲の条件に渡って機械的完全性及び磁気特性を維持することができる軟磁性部材を含む改良された物品が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、物品が提供される。この物品は軟磁性部材を含んでいる。この軟磁性部材はナノ構造化フェライト合金を含んでいる。このナノ構造化フェライト合金は鉄を含有する合金マトリックス中に配置された複数のナノ形態粒子(nanofeature)を含んでおり、このナノ形態粒子酸化物を含んでいる。
【0006】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとよりよく理解されるであろう。図面中、図面を通して類似の符号は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、電磁デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
航空宇宙、風力発電及び電気自動車を始めとする多様な用途において多くの電気デバイス及び部材には、比較的に高い透磁性、高い飽和磁化、低いコア損失及び高い機械的強度を有する磁気材料が必要とされ得る。改良された磁気的性質及び高い機械的強度を有する軟磁性部材が求められ続けている。本明細書に記載する本発明の実施形態は従来技術で認められている短所に対処する。本明細書には、軟磁性部材を含む物品が開示されている。この軟磁性部材はナノ構造化フェライト合金を含む。このナノ構造化フェライト合金は鉄を含有する合金マトリックス内に配置された複数のナノ形態粒子を含み、このナノ形態粒子は酸化物を含む。この物品は、機械的完全性と磁気的性質の両方が全体の性能、寿命及びその他の要因に影響し得る回転部品に磁気材料を利用する電気モーター及び発電機のようなデバイスに使用し得る。軟磁性部材を形成するのにナノ構造化フェライト合金を使用することで、当技術分野で公知の材料と比べて比較的に高い強度、比較的に低い保磁力損失及び比較的に高い飽和磁化を有する回転部品が得られる。
【0009】
本発明の1以上の具体的な実施形態について以下に記載する。これらの実施形態を簡潔に説明するために、実際の実施について全ての特徴を本明細書に記載しないことがある。あらゆる工学又は設計計画の場合と同様に、かかる実際の実施において、システム及びビジネスに関連する制約に準拠するといったような実施者の特定の目標(これは実施毎に変わり得る)を達成するために、数多くの実施に特有の決定をなさなければならないことと了解されたい。また、かかる実施努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでも本開示に接した当業者にとってルーチンの設計、製作及び製造業務であろうと考えられる。
【0010】
本発明の様々な実施形態の要素を導入する際、単数形は1以上の要素が存在することを意味する。用語「からなる」、「含む」及び「有する」は包括的であることを意図しており、記載した要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味している。また、「頂」、「底」、「上」、「下」及びこれらの用語の派生語の使用は便宜上のものであり、特に断らない限りその部材の特定の配向を要するものではない。
【0011】
本明細書に開示した全ての範囲はその終点を含み、その終点は互いに組み合わせ可能である。用語「第1」、「第2」などは本明細書で使用する場合いかなる順序、量、又は重要性も意味するものではなく、1つの要素を他のものから区別するために使用する。
【0012】
近似の言語は、本明細書及び特許請求の範囲を通して本明細書で使用する場合、ある量的表示が関連する基本的な機能に変化を生じさせることなく変わることが許容され得るその量的表示を修飾するのに使用され得る。従って、「約」のような用語で修飾された値はその明示された正確な値に限定されない。場合により、近似の言語はその値を測定する機器の精度に対応することがある。
【0013】
一実施形態では、物品が提供される。この物品は軟磁性部材を含む。この軟磁性部材はナノ構造化フェライト合金を含む。ナノ構造化フェライト合金は新しい一群の合金である。通例、ナノ構造化フェライト合金は、鉄を含有する合金マトリックスを含み、マトリックス内に配置されたナノ形態粒子により強化されている。本明細書で使用する場合、用語「ナノ形態粒子」とは、大きさが約100nm未満の最長寸法を有する粒子状物質を意味する。ナノ形態粒子は、例えば球状、立方形、レンズ状及びその他の形状を含めて任意の形状を有することができる。ナノ構造化フェライト合金の磁気的及び機械的性質は、例えば、マトリックス内のナノ形態粒子の密度(数密度、すなわち単位体積当たりの粒子の数を意味する)、ナノ形態粒子の組成及び物品を形成するのに使用する加工処理を調節することによって制御され得る。
【0014】
ナノ構造化フェライト合金のナノ形態粒子は酸化物を含む。一実施形態では、酸化物はチタン、及びイットリウム、ハフニウム、アルミニウム又はジルコニウムから選択される1種以上の追加元素を含み、ある特定の実施形態では追加元素はイットリウムである。幾つかの実施形態では、酸化物はまた、クロム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、ニオブ、アルミニウム、タンタル、コバルト、又はバナジウムのような1種以上の他の元素も含む。酸化物の実際の組成は合金マトリックスの組成並びに材料を加工処理する際に使用する原料の組成にある程度依存する。これについては、以下でより詳細に述べる。特定の実施形態では、酸化物はチタン及びイットリウムを含む。
【0015】
一実施形態では、ナノ形態粒子はナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1018以上のナノ形態粒子の数密度を有する。別の実施形態では、ナノ形態粒子はナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1020以上の数密度を有する。さらに別の実施形態では、ナノ形態粒子はナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1022以上の数密度を有する。
【0016】
一実施形態では、ナノ形態粒子は約1nm〜約100nmの範囲の平均の大きさを有する。さらに別の実施形態では、ナノ形態粒子は約1nm〜約50nmの範囲の平均の大きさを有する。さらに別の実施形態では、ナノ形態粒子は約1nm〜約25nmの範囲の平均の大きさを有する。かかる非常に微細なナノ形態粒子を有することは、ナノ形態粒子が転位運動を妨げることにより材料を強化するように働き得、それでもナノ形態粒子はマトリックス材料の磁壁厚さに匹敵する大きさであるので磁壁の運動を著しく妨げることはないという点で、有利である。こうして、マトリックスは、酸化物−分散−強化型(ODS)材料のようなより粗い粒子分布を有する従来の材料に期待されるのと対照的に、軟磁特性の低下を伴うことなくナノ形態粒子によって強化される。
【0017】
一実施形態では、合金マトリックスはチタン、約35重量%以上の鉄及び約60重量%以下のコバルトを含む。一実施形態では、ナノ構造化フェライト合金中に存在する鉄の量は約50重量%以上であり、特定の実施形態では鉄の量は約75重量%以上であり、これらはナノ構造化フェライト合金の重量を基準とする。コバルトは、幾つかの実施形態では、約20重量%〜約55重量%の量で存在する。高い飽和磁化が特に望ましい幾つかの実施形態では、コバルトの組成は約20重量%〜約35重量%の範囲である。低いコア損失が特に望ましい他の実施形態では、コバルトの組成は約45重量%〜約55重量%の範囲である。
【0018】
幾つかの実施形態では、チタンは約0.1重量%〜約2重量%の範囲で存在する。幾つかの実施形態では、合金マトリックスは約0.1重量%のチタン〜約1重量%のチタンを含む。マトリックス中のその存在に加えて、チタンは、本明細書に記載されているように、酸化物ナノ形態粒子の形成においてある役割を果たす。
【0019】
幾つかの実施形態ではバナジウムも合金マトリックス中に存在し、その場合合金マトリックスを強化するのに役立ち得る。幾つかの実施形態では、バナジウムは約0.1重量%〜約2重量%の範囲で存在し、特定の実施形態ではその範囲は約0.1重量%〜約1重量%である。
【0020】
ある種の条件下で、上記実施形態の幾つかより鉄に富み少ないコバルトを含有する合金が、一つには例えば鉄と比べてコバルトの価格が比較的に高いために望ましい。従って、幾つかの実施形態では、合金マトリックスはチタン、約40重量%以上の鉄及び約8重量%以下のケイ素を含む。特定の実施形態では、コバルトレベルは約5重量%未満である。ケイ素レベルは、幾つかの実施形態では、約1重量%〜約6重量%の範囲であり、特定の実施形態では約2重量%〜約5重量%の範囲である。幾つかの実施形態では、チタンレベルは、本発明の実施形態で使用する他の合金について上記したいずれかのチタンの組成範囲内である。
【0021】
既に記載した実施形態のいずれかで、他の元素も合金マトリックス組成中に含まれていてもよい。例としては、限定されることはないが、クロム、ニッケル、モリブデン、タングステン、ケイ素、ニオブ、アルミニウム及びタンタルがある。これらの元素は通例ナノ構造化フェライト合金の耐食性、機械的性質及び/又はその他の属性を高めるように選択される。
【0022】
クロムは約30重量%以下で、幾つかの実施形態では約20重量%以下、特定の実施形態では約10重量%以下で存在し得る。バナジウムは既にバナジウムについて記載した範囲のいずれかでこれらの合金中に存在し得る。モリブデンは約5重量%以下で、幾つかの実施形態では約3重量%以下、特定の実施形態では約0.5重量%以下で存在し得る。タングステンはモリブデンについて記載した範囲のいずれかで存在し得るが、モリブデンとタングステンの存在と量及び本明細書に記載した元素のいずれも互いに独立であることと了解されたい。ケイ素は本明細書に記載したいずれの合金でも、この元素について既に記載した範囲のいずれかで存在し得る。ニオブは、幾つかの実施形態では約2重量%以下、幾つかの実施形態では約1.5重量%以下、特定の実施形態では約0.5重量%以下で存在する。アルミニウムはニオブについて記載した重量%範囲のいずれかで独立に存在し得、タンタルも同様であり得る。ニッケルは幾つかの実施形態では約10重量%以下、幾つかの実施形態では約8重量%以下、特定の実施形態では約5重量%以下で存在し得る。さらに、合金マトリックスは炭素及び/又は窒素を含んでいてもよい。これらの元素は幾つかの実施形態では約0.5重量%以下、幾つかの実施形態では約0.25重量%以下、特定の実施形態では約0.1重量%以下で存在し得る。
【0023】
追加元素はこの合金により提供される他の望ましい性質にとって役立つように制御された量で存在し得る。これらの添加量は合金の磁気性能を妨害しないように選択される。加えて、合金は同様のサービス又は用途が意図される商業グレードの合金で見られる通常の不純物も含み得る。かかる不純物のレベルは所望の性質に悪影響を与えることがないように制御される。
【0024】
幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造化フェライト合金は結晶構造を有し、非晶質性を実質的にもたない。従って、これらの合金は優れた成形及び加工処理特性を提供し、結晶構造は高まった磁気特性(例えば、飽和磁化)及び極めて厳しい最終用途に対して強度を提供する。一般に、この合金マトリックスはA2及び/又はB2結晶構造によって特徴付けられる。殆どの実施形態では、検出可能な相の約95%以上がこれらの結晶相(個別に又は組み合わせて)により特徴付けられる。幾つかの実施形態では、約98%以上の検出可能な相がA2及び/又はB2である。残りの合金構造を構成することがある他の相には酸化物相及び炭化物相がある。コバルトの量が約20重量%より多い実施形態では、合金マトリックスはB2相によって特徴付けられ得る。
【0025】
ナノ構造化フェライト合金の組成の幾つかの非限定例を下記表1に挙げる。
【0026】
【表1】

様々な実施形態では、幾つかの追加元素を用いて、軟磁性部材の幾つかの性質を得るか又は高めることができる。しかし、幾つかの元素の存在(又は一定のレベルでのそれらの存在)はナノ構造化フェライト合金の全体の性質に対して有害であることがある可能性がある。例えば、銅又はマンガンの存在は合金の飽和磁化を低下させ得る。銅はまた合金の磁気保持力を増大させ得る。保持力の望ましくない増大は、これらの合金を交流回路内に使用したとき、例えば、回転子又は電機子として用いたとき、結果として電力損失(エネルギー損失)を生じ得る。一実施形態では、ナノ構造化フェライト合金は銅を実質的にもたない。本明細書で使用する場合、用語「銅を実質的にもたない」とは、合金の全量を基準にして百万部当たり約50部未満の銅の存在をいう。一実施形態では、ナノ構造化フェライト合金はマンガンを実質的にもたない。本明細書で使用する場合、用語「マンガンを実質的にもたない」とは、合金の総重量を基準にして約1重量%未満のマンガンの存在をいう。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載した物品は電気機械(発電機)である。図1を参照すると、電気機械100の一例の概略三次元図が示されている。図1は、例示の目的でのみ示したもので、本発明はいかなる特定の電気機械又はその構成にも限定されることはない。図示した例において、機械100は回転子アセンブリ110を含んでいる。この回転子アセンブリ110は回転子コア114を通って延びる回転子軸112を含んでいる。回転子アセンブリ110は固定子アセンブリ116内で時計回り又は反時計回り方向に回転することができる。回転子軸112を囲む軸受けアセンブリ118、120は固定子アセンブリ116内でのかかる回転を促進し得る。固定子アセンブリ116は回転子軸112の周囲で、かつその軸に沿って軸方向に固定子アセンブリ116を通って延びる複数の固定子巻線を含んでいる。作動中、回転子アセンブリ110の回転が機械100内に変化する磁場を生じさせる。この変化する磁場は固定子巻線122内に電圧を誘起する。こうして、回転子アセンブリ110の運動エネルギーは固定子巻線122内において電流と電圧の形態で電気エネルギーに変換される。或いは、この機械100は、回転子アセンブリ110内で誘起された電流が回転する磁場と作用して回転子アセンブリ110を回転させるモーターとして使用してもよい。幾つかの実施形態では、モーターは同期モーターであり、他の実施形態ではモーターは非同期モーターである。同期モーターは極ペアカウント(pole pair count)によりスケールアップされる電源周波数で回転し、一方非同期モーターはスリップの存在により特徴付けられるより遅い周波数を示す。当業者はデバイスの要件に応じて設計を変更する仕方を知っているであろう。
【0028】
機械100の回転子アセンブリ110、又は固定子アセンブリ116の1以上が開示された実施形態の軟磁性部材を含み得る。開示された実施形態の軟磁性部材の優れた磁気的及び機械的性質により、機械の性能の点で明確な利点が提供される。ここに記載した図1で、機械100は、磁束が回転子と固定子との間の空隙を通って半径方向に流れるラジアル型の機械である。しかし、機械100の他の例は、磁束が機械100の軸と平行に流れる軸方向の磁束流としても作動し得る。機械100の作動を簡単な図で説明したが、機械100の例はこの特定の簡単な設計に限定されることはない。
【0029】
他のより複雑な設計も適用可能であり、本明細書に記載した軟磁性部材を利用し得る。一実施形態では、軟磁性部材は回転部品である。回転部品を含み得るシステムの例としては、発電機、モーター、又は交流発電機がある。一実施形態では、軟磁性部材は回転子又は電機子である。一実施形態では、軟磁性部材は電磁機械の回転子である。
【0030】
様々な実施形態では、本発明の合金は高い飽和磁化、低い保持力及び高い機械的強度を示し得る。一実施形態では、軟磁性部材は約1.5テスラ以上の飽和磁化を有する。さらに別の実施形態では、軟磁性部材は約2テスラ以上の飽和磁化を有する。さらに別の実施形態では、軟磁性部材は約2.4テスラ以上の飽和磁化を有する。
【0031】
一実施形態では、軟磁性部材は約100エールステッド未満の保持力を有する。さらに別の実施形態では、軟磁性部材は約10エールステッド未満の保持力を有する。さらに別の実施形態では、軟磁性部材は約1エールステッド未満の保持力を有する。
【0032】
高い飽和磁化値により、軟磁性部材は、極めて高い磁束密度で作動することが可能であり、コンパクトな電気機械設計ができる。一実施形態では、本明細書に開示した軟磁性部材は約850MPa超の降伏強度を有する。さらに別の実施形態では、磁気材料は約1000MPa超の降伏強度を有する。さらに別の実施形態では、磁気材料は約1200MPa超の降伏強度を有する。
【0033】
既に記載されたナノ構造化フェライト合金を作成するための例示の方法は、金属粉末と供給原料の金属酸化物を機械的に合金化して、機械的に合金化された粉末を形成する第1の工程を含む。金属粉末は一般に合金マトリックス中に存在することが望まれる上記のような元素を含む。供給原料の金属酸化物は、幾つかの実施形態では、イットリア、ハフニア、ジルコニア及びアルミナから選択される1種以上の酸化物を含む。幾つかの実施形態では、機械的合金化は、酸化物が金属粉末中に溶解されるまで粉末を一緒にミル粉砕することで達成される。
【0034】
第2の工程は機械的に合金化された粉末を圧密化することからなる。この圧密化工程としては、例えば、熱間等水圧プレス、押出、又はロール締め固めにより粉末をシートに圧延することが挙げられる。一実施形態では、圧密化の後、軟磁性材料は、その軟磁性材料の理論密度の約95%より大きい密度を有する。圧密化の工程は高温で行い得、その場合酸化のような環境との相互作用を最小化するために不活性雰囲気下で行われ得る。不活性雰囲気を提供するのに使用され得る不活性ガスの適切な例としては、アルゴン(Ar)、窒素(N)及びヘリウム(He)がある。
【0035】
粉末を熱的に処理するしてマトリックス中にナノ形態粒子の析出を生じさせる。このナノ形態粒子析出物の形成は、材料を作成するプロセス中のいずれのときに行ってもよいが、恐らくは圧密化工程中(圧密化を高温で行う場合)又は圧密化の後に行うと最も便利である。この工程で、チタンは酸素及び供給原料酸化物に由来する金属種(例えばイットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、又はアルミニウム)と反応して、ナノ形態粒子を構成する酸化物を形成する。金属からのその他の元素も反応に関与し、ナノ形態粒子中に取り込まれるようになり得る。この析出のために選択される時間と温度はナノ形態粒子の所望の大きさ及び密度に基づいて容易に設計することができ、純粋に機械的な合金化プロセスのような従来の手段で一般に達成されるよりもずっと微細な分散体を提供するように制御することができる。
【0036】
機械的合金化の後ロール締め固めを使用する実施形態では、粉末は圧延ミル中に供給され得、そこで粉末がシートに圧縮される。次に、この金属のシートを焼結して緻密な塊を創成することができる。幾つかの実施形態では、この焼結されたシートを次いで複数の圧延及び焼結操作にかけてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、熱間等水圧プレス又は押出に続いて成形工程があり、この成形工程はナノ構造化フェライト合金軟磁性材料をプレートに鍛造するか及び/又は材料をシートに圧延することを含み得る。一実施形態では、成形工程後材料はその理論密度の約98%を超える密度を有する。一実施形態では、この方法はさらに成形された物品を機械加工する工程を含む。
【0038】
本明細書では本発明の幾つかの特徴のみを例示し記載して来たが、当業者には多くの修正と変更が明らかであろう。従って、後記特許請求の範囲はかかる修正と変更の全てを本発明の真の思想の範囲内に入るものとして包含するものであると了解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性部材を含む物品であって、軟磁性部材がナノ構造化フェライト合金を含んでなり、ナノ構造化フェライト合金が鉄を含有する合金マトリックス内に配置された複数のナノ形態粒子を含み、ナノ形態粒子が酸化物を含む、物品。
【請求項2】
軟磁性部材が回転部品である、請求項1記載の物品。
【請求項3】
軟磁性部材が回転子又は電機子である、請求項1記載の物品。
【請求項4】
ナノ形態粒子が約1nm〜約100nmの範囲の平均の大きさを有する、請求項1記載の物品。
【請求項5】
ナノ形態粒子がナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1018以上の数密度を有する、請求項1記載の物品。
【請求項6】
合金マトリックスが、
チタン、
約35重量%以上の鉄及び
約60重量%以下のコバルト
を含む、請求項1記載の物品。
【請求項7】
合金マトリックスが、
チタン、
約8重量%以下のケイ素及び
約40重量%以上の鉄
を含む、請求項1記載の物品。
【請求項8】
酸化物が、
チタン及び
イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群から選択される1種以上の元素
を含む、請求項1記載の物品。
【請求項9】
ナノ構造化フェライト合金が、
約35重量%以上の鉄、
約0.1重量%〜約1重量%のチタン及び
約20重量%〜約55重量%のコバルト
を含む合金マトリックス、並びに
合金マトリックス内に配置された複数のナノ形態粒子
を含んでなり、
ナノ形態粒子が酸化物を含み、酸化物がチタン並びにイットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群から選択される1種以上の元素を含み、
ナノ形態粒子が、約1nm〜約50nmの範囲の平均の大きさ及びナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1020以上の数密度を有する、請求項1記載の物品。
【請求項10】
ナノ構造化フェライト合金が、
約50重量%以上の鉄、
約0.1重量%〜約1重量%のチタン及び
約8重量%以下のケイ素
を含む合金マトリックス、並びに
合金マトリックス内に配置された複数のナノ形態粒子
を含んでなり、
ナノ形態粒子が酸化物を含み、酸化物がチタン並びにイットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群から選択される1種以上の元素を含み、
ナノ形態粒子が約1nm〜約50nmの範囲の平均の大きさ及びナノ構造化フェライト合金1立方メートル当たり約1020以上の数密度を有する、請求項1記載の物品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−132095(P2012−132095A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−234473(P2011−234473)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】