説明

ナノ構造化担持ルテニウム触媒による気相酸化による塩素の製造方法

本発明は、触媒担体は、細孔径>50nmを有する複数の細孔を有し、およびルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を、触媒活性成分として含有するナノ粒子を有することを特徴とする、ルテニウムに基づく担持触媒を用いる気相酸化による塩素の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体は、細孔径>50nmを有する複数の細孔を有し、およびルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を、触媒活性成分として含有するナノ粒子を有することを特徴とする、ルテニウムに基づく担持触媒を用いる気相酸化による塩素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーコン(Deacon)により1868年に開発された、発熱平行反応における酸素による触媒塩化水素酸化の方法は、工業塩素化学の始まりであった:
4HCl+O→2Cl+2H
【0003】
しかしながら、ディーコン法は、クロルアルカリ電気分解によりかなり目立たない所へ押しやられた。実質的に全ての塩素は、塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって製造された(Ullmann Encyclopedia of industrial chemistry、第7版、2006年)。しかしながら、ディーコン法の魅力は、近年、世界的な塩素需要が水酸化ナトリウム溶液への需要より急速に増大しているので再び増大している。塩化水素の酸化による塩素の製造方法は、水酸化ナトリウム溶液の製造には関連せず、この発展にうまく適合する。さらに、多量の塩化水素は、例えばホスゲン化反応において、例えばイソシアネートの製造において、副生物として形成される。
【0004】
塩化水素の塩素への酸化は平衡反応である。平衡の位置は、温度が上昇する場合、所望の最終生成物に有利にシフトする。従って、より低い温度にて反応を進行させる触媒であって、可能な限り大きい活性を有する触媒を使用することが有利である。
【0005】
塩化水素酸化のための最初の触媒は、塩化銅または酸化銅を活性成分として含有し、早くも1868年にディーコンにより記載された。しかしながら、これらは、より低い温度(<400℃)において僅かな活性のみを示した。活性は、反応温度を上昇させることにより増加させることができたが、高温における活性成分の揮発性により、触媒活性の急速な低下および活性成分の反応器からの放出をもたらすことが欠点であった。
【0006】
EP0184413は、酸化クロムに基づく触媒を用いる塩化水素の酸化を記載する。しかしながら、ここで行われる方法は、不適切な触媒活性による多くの触媒装填および高い反応温度を必要とする。
【0007】
ルテニウムを触媒活性成分として有する塩化水素酸化のための最初の触媒は、早くも1965年にDE1567788に記載され、この場合、例えば二酸化ケイ素または酸化アルミニウム上に担持されたRuClから出発する。しかしながら、これらのRuCl/SiO触媒の活性は極めて低かった。さらに、酸化ルテニウムまたは混合酸化ルテニウムを活性成分として、および担体物質として種々の酸化物、例えば二酸化チタン、二酸化ジルコニウム等を含有するRu系触媒は、DE−A19748299に特許請求されている。その触媒における酸化ルテニウムの含有量は、0.1重量%〜20重量%であり、酸化ルテニウムの平均粒径は、1.0nm〜10.0nmである。更なる二酸化チタンまたは二酸化ジルコニウム上に担持されたRu触媒は、DE−A19734412から既知である。多くのRu出発化合物、例えばルテニウム−カルボニル錯体、無機酸のルテニウム塩、ルテニウム−ニトロシル錯体、ルテニウム−アミン錯体、有機アミンのルテニウム錯体またはルテニウム−アセチルアセトン酸錯体等が、少なくとも1つの化合物二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムを含有する記載の塩化ルテニウムおよび酸化ルテニウム触媒の製造のために記載されている。好ましい実施態様では、ルチル形態でのTiOが、担体として用いられた。
【0008】
DE102007020154A1およびDE102006024543A1は、触媒塩化水素酸化の方法を記載するが、触媒は、二酸化錫(担体として)、好ましくは錫石構造における二酸化錫、および少なくとも1つのハロゲン含有ルテニウム化合物(DE102007020154A1)または少なくとも1つの酸素含有ルテニウム化合物(DE102006024543A1)を含有する。
【0009】
ディーコン法のためにこれまで開発されたルテニウム不含触媒は、余りに不活性であるか、または余りに不安定である。これまで記載の担持ルテニウム触媒は、ディーコン法に用いるために原理上適しているが、好ましいと特許請求される担体ルチル−二酸化チタンおよび錫石−二酸化錫は、その結晶性構造により僅かな表面積のみを有し、これはHCl酸化における担体としてのその使用について不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0184413号明細書
【特許文献2】独国特許第1567788号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19748299号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19734412号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102007020154号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102006024543号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Ullmann Encyclopedia of industrial chemistry」、第7版、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、先行技術から既知の触媒より高い比活性(ルテニウム含有量に基づく)を示す塩化水素の酸化のための触媒系を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
意外にも、比活性(すなわち、ルテニウムに基づく)および安定性(高温)を、ナノ構造化触媒の意図した製造により、著しく向上させることができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(触媒2a): 5〜34nm(平均16nm)の直径を有する34個の1次粒子を計算した。
【図2】(触媒2b): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
【図3】(触媒2c): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
【図4】(触媒2d): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、触媒担体が、細孔径>50nmを有する複数の細孔を有し、およびルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を触媒活性成分として含有するナノ粒子を有することを特徴とする、ルテニウム系担体触媒に基づく塩化水素および酸素含有ガスからの塩素の熱触媒による製造のための触媒金属に関する。概して、塩化水素および酸素含有ガスからの塩素の熱触媒製造は、省略のため、以下、ディーコン法として記載する。
【0016】
本発明による触媒物質の細孔容積の好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80%は、マクロ多孔性範囲、すなわち>50nmに起因する。該マクロ多孔性は、触媒担体をナノ粒子で均一に装填し、細孔がナノ粒子の凝集によりブロックされることを防止し、およびディーコン反応中に減少した細孔拡散制限をもたらす。
【0017】
細孔容積および細孔径を決定するために、水銀ポロシメーター法を、本発明の範囲内において用いる。測定は、130°の水銀接触角および480ダイン/cmの表面張力に基づく。
【0018】
触媒物質は、好ましくは、担体物質として、次の群からの1以上の化合物を含有する:アルミニウム化合物、シリコン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物または錫化合物、特に好ましくはアルミニウム化合物および/またはシリコン化合物、およびさらに特に好ましくは次の群の1以上の金属の酸化物、酸化物混合物または混合酸化物:アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウムまたは錫。アルミニウムおよびシリコンの混合酸化物は特に好ましい。1つの可能な用途形態では、バインダー、例えばμ−Alを添加し、その1次機能は、活性成分のための担体の1次機能ではない。
【0019】
触媒物質上に存在するルテニウム含有ナノ粒子は、好ましくは次の群からの1以上の化合物を、触媒活性成分として含有する:酸化ルテニウム、混合酸化ルテニウム、酸化ルテニウム混合物、ルテニウムオキシハライド、ルテニウムハライドまたは金属ルテニウム。塩化ルテニウム、オキシ塩化ルテニウム、または酸化ルテニウムおよび塩化ルテニウムの混合物は特に好ましい。
【0020】
好ましくは、触媒上に存在するルテニウム含有ナノ粒子の少なくとも50%は、50nm以下の直径を有し、特に好ましくは、少なくとも50%は、5nm〜50nmの直径を有し、さらに特に好ましくは、少なくとも80%は、5nm〜50nmの直径を有する。触媒上に存在するルテニウム含有ナノ粒子の平均径は、最も特に好ましくは10〜30nmである。意外にも、ルテニウムの最大分散(すなわち、可能な限り小さいルテニウム1次粒子、例えば5nm未満)を得ようとすることは有利ではない。
【0021】
好ましくは、触媒のルテニウム含有量は、触媒の全重量を基準として20重量%まで、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。あまりに高い装填は、ナノ粒子の凝集をもたらし得、これは不利である。
【0022】
更なる活性成分または促進剤(Promotor)の機能を有する付加的なナノ粒子は、好ましくは触媒物質上に存在し、特に好ましくは元素Ag、Au、Bi、Ce、Co、Cr、Cu、Ni、Sb、Sn、Ti、W、Y、Zn、Zrおよび白金属の1以上の更なる金属、金属化合物および混合化合物、さらに特に好ましくは元素Bi、Sb、SnおよびTiの1以上の更なる金属、金属化合物および混合化合物である。これらのナノ粒子は、触媒上に更に存在し、好ましくは酸化物、混合酸化物、酸化物混合物、オキシハライド、ハライド、還元金属またはその合金を含有する。
【0023】
触媒物質上に存在する付加的なナノ粒子の含有量は、触媒の全重量を基準として好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%までである。あまりに高い装填は、ナノ粒子の凝集をもたらし、これは不利である。
【0024】
好ましくは、触媒上に存在する付加的なナノ粒子の少なくとも50%は、50nm以下の直径を有し、特に好ましくは、少なくとも50%は、3nm〜50nmの直径を有し、さらに特に好ましくは、少なくとも80%は、3nm〜50nmの直径を有する。触媒上に存在する付加的なナノ粒子の平均径は、最も特に好ましくは5〜30nmである。
【0025】
可能性のある好ましい実施態様では、触媒上に存在するナノ粒子は、促進剤として、少なくともルテニウム、および少なくとも1つの更なる金属、好ましくはAg、Au、Bi、Ce、Co、Cr、Cu、Ni、Sb、Sn、Ti、W、Y、Zn、Zrおよび白金属、さらに特に好ましくは元素Bi、Sb、SnおよびTiを含有し、すなわち、これらは、バイメタルまたはマルチメタルと称することができる。このように特性化されたナノ粒子は、酸化物、混合酸化物、酸化物混合物、オキシハライド、ハライド、金属および合金を含有する。
【0026】
好ましくは、触媒上に存在するバイメタルまたはマルチメタルナノ粒子の少なくとも50%は、50nm以下の直径を有し、特に好ましくは少なくとも50%は、5nm〜50nmの直径を有し、さらに特に好ましくは少なくとも80%は、5nm〜50nmの直径を有する。触媒上に存在するバイメタルまたはマルチメタルナノ粒子の平均径は、さらに特に好ましくは10〜30nmである。
【0027】
触媒上に存在するバイメタルまたはマルチメタルナノ粒子の含有量は、触媒の全重量を基準として好ましくは30重量%まで、特に好ましくは20重量%までである。あまりに高い装填は、ナノ粒子の凝集をもたらし、これは不利である。
【0028】
好ましくは、ナノ粒子は、火炎加水分解により製造する。好ましい製造方法は以下の通りである:
少なくとも1つの前駆体を、粉末形態で容器に入れる。バイメタルまたはマルチメタルナノ粒子を製造する場合、異なった粉末前駆体を、好ましくは一緒に入れ、および完全に混合する。粉末を、プラズマチャンバーまたは直火へ供給し、そこで瞬間的に気化する。このようにして製造されたガス状金属化合物を、プラズマから取り出し、および冷却領域において凝集し、的確な寸法分布を有するナノ粒子を形成する。ナノ粒子は、界面活性剤および洗浄剤の添加によりエマルション中で安定化させる。好ましくは、水または有機溶媒を用いてエマルションを調製する。次いで、活性成分、更なる活性成分および/または促進剤を含有するエマルションまたは2以上のエマルションの混合物を用いて、好ましくは「incipient wetness法」として専門文献において従来法により参照される方法により、触媒担体に含浸させる。該方法では、活性成分を含有する含浸溶液を、含浸させるべき担体により、ちょうど吸着させることができる量で容器中に入れ、こうして、活性成分を、担体により、完全に吸着させることを確保する。可能性のある更なる形態を、例えば特許出願US20080277270−A1に見出す。
【0029】
次に、任意の破壊的有機化合物を、触媒表面から除去し、結束し、ナノ粒子を触媒上で安定化するために、触媒を高温で焼成する。焼成は、好ましくは、酸素を含有する雰囲気中で、特に好ましくは空気または不活性ガス/酸素混合物中で行う。該温度は、800℃まで、好ましくは250℃〜600℃までである。焼成時間は、好ましくは1時間〜50時間とするために有利に選択する。エマルションで含浸させた触媒は、好ましくは、焼成前に、好ましくは減圧において、有利には1時間〜50時間、乾燥させる。
【0030】
適当な更なる促進剤は、塩基作用を有する金属の化合物(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および希土類金属塩)、アルカリ金属、特にNaおよびCSの化合物、およびアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ土類金属、特にSrおよびBaの化合物は特に好ましい。好ましい実施態様では、塩基作用を有する金属は、酸化物、水酸化物、塩化物、オキシ塩化物または硝酸塩の形態で用いる。好ましい実施態様では、この種の促進剤は、含浸またはCVD法により触媒へ適用する。
【0031】
本発明により用いる担体は、好ましくは市販されている(例えばSaint Gobain Norproから)。
【0032】
塩化水素酸化のための本発明による触媒は、高い活性を示す一方、同時に高温において高い安定性を有する点で区別される。
【0033】
触媒塩化水素酸化は好ましくは、断熱的にまたは等温的にまたはほぼ等温的に、不連続的に、好ましくは連続的に、流動床法または固定床法として、好ましくは固定床法として、特に好ましくは管反応器中において、不均一触媒上で180〜500℃、好ましくは200〜400℃、特に好ましくは250〜380℃の反応器温度および1〜25バール(1000〜25000hPa)、好ましくは1.2〜20バール、特に好ましくは1.5〜17バール、特に2.0〜15バールの圧力において行うことができる。
【0034】
触媒塩化水素酸化を行う従来法による反応装置は、固定床反応器または流動床反応器である。触媒塩化水素酸化は、好ましくは複数の段階において行うこともできる。
【0035】
断熱的、等温的またはほぼ等温的な手順の場合には、複数の、すなわち2〜10、好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜5、とりわけ2〜3の中間冷却を有する系列に接続した反応器を用いることも可能である。塩化水素を、第1反応器の上流へ酸素と一緒に全体として、または種々の反応器にわたり分配して添加することもできる。個々の反応器のこの系列接続は、1つの装置により達成することもできる。
【0036】
本発明の方法に適した装置の更なる好ましい実施態様は、触媒活性が流れの方向に増加する構造化触媒床を用いることである。触媒床のそのような構造化は、触媒担体に活性物質を異なった程度に含浸させることによって、または触媒を、不活性物質で異なった程度にまで希釈することによって行うことができる。不活性物質としては、例えば二酸化チタン、二酸化ジルコニウムもしくはそれらの混合物、酸化アルミニウム、ステアタイト、セラミック、ガラス、グラファイトまたはステンレス鋼の環状物、円筒状物、または球状物を用いることができる。成形触媒体を用いる場合、好ましいとされるように、不活性物質は、同様の外側寸法を好ましく有するべきである。
【0037】
適当な成形触媒体は、任意の所望の形状を有する成形体であり、好ましいのは、ひし形、押出物、環形状、円筒形状、星形状、車輪形状もしくは球形状である。成形体の寸法(球の場合、直径)は、好ましくは0.2〜10mm、特に好ましくは0.5〜7mmの範囲である。
【0038】
上記微細に分割された(成形)触媒体への代替物として、担体は、担体物質のモノリスであってもよい。上述した微細に分割された(成形された)触媒本体に代えて、担体は、担体物質のモノリスであってもよい。放射状に相互接続していない平行チャンネルを有する「従来使用される」担体本体を好ましく用いる。別の好ましい実施態様は、担体本体中で3次元化合物を有するフォーム、スポンジなど、またモノリス並びにクロスフローチャンネルを有する担体本体である。
【0039】
モノリス状担体は、ハニカム構造、または開いたもしくは閉じたクロスチャンネル構造を有してもよい。モノリス状担体は、100〜900cpsi(1平方インチあたりのセル数)、特に好ましくは200〜600cpsiの好ましいセル密度を有する。
【0040】
本発明の範囲内のモノリスは、例えば「Monoliths in multiphase catalytic processes−aspects and prospects」において、F.Kapteijn、J.J.Heiszwolf、T.A.NijhuisおよびJ.A.Moulijnにより、Cattech 3、1999年、第24頁に開示される。
【0041】
単一パスにおける塩化水素変換は、15〜100%の範囲であり、好ましくは15〜90%、好ましくは40〜90%、特に好ましくは60〜90%に制限することができる。未反応塩化水素の全部または幾らかは、分離した後、触媒塩化水素酸化へフィードバックすることができる。反応器入口における酸素に対する塩化水素の体積比は、好ましくは1:1〜20:1、特に好ましくは2:1〜8:1、さらに特に好ましくは2:1〜6:1である。
【0042】
触媒塩化水素酸化の反応の熱は、有利には、高圧スチームを生じさせるために用いることができる。このスチームは、ホスゲン化反応器および/または蒸留塔、特にイソシアネート蒸留塔を操作するために用いることができる。
【0043】
ディーコン法の最終工程では、形成した塩素を分離する。分離工程は、通常、複数の段階、すなわち、触媒塩化水素酸化の生成物ガスストリームから、未反応塩化水素の分離および必要に応じて再生する工程、塩素および酸素を実質的に含有する得られるストリームの乾燥工程、ならびに乾燥ストリームからの塩素の除去工程を含む。
【0044】
未反応塩化水素および形成するスチームの分離は、冷却することにより、塩化水素酸化の生成物ガスストリームから水性塩酸を凝縮することにより行うことができる。塩化水素は、希塩酸または水に吸収させることもできる。
【0045】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【実施例】
【0046】
実施例1(比較例):本発明によらない触媒の製造
100gのTiOペレット(円筒型、直径約2mm、長さ2〜10mm、Saint−Gobain)に、塩化ルテニウムn−水和物のHO中における溶液を含浸させ、Ru含有量は3重量%であった。こうして得られた湿ったペレットを、終夜60℃にて乾燥させ、乾燥状態で、窒素でフラッシュしながら、NaOHおよび25%ヒドラジン水和物溶液の水中での溶液中へ導入し、該混合物を1時間置いた。次いで、過剰の水を蒸発させた。湿ったペレットを2時間60℃において乾燥させ、次いで300gの水で4回洗浄した。こうして得られた湿ったペレットを、マッフル炉(空気)において20分間120℃において乾燥させ、次いで3時間350℃において焼成した。
【0047】
実施例2:例として選択された本発明による触媒の製造
元素Ru(RuO)、Sn(SnO)、Ni(NiO)、Sb(Sb)、Zr−Y(90重量%ZrO、10重量%Y)、Ti(TiO)、Bi(Bi)の安定性酸化物を、μm規模粉末の形態で容器中に入れた。該粉末は、個々(2a−b、2e−1を示す試料→モノメタルナノ粒子)にまたは予備混合形態(2c−dを示す試料→バイメタルナノ粒子)でプラズマ炉へ供給し、そこで瞬間的に蒸発させた(20000Kを越える温度において)。こうして形成されたガス状金属化合物は、プラズマから取り出し、冷却領域(500℃未満の温度)において凝縮し、および所定の寸法分布を有するナノ粒子を形成させた。該ナノ粒子は、アミン系非イオン櫛状ポリマー(製造者: SDC Materials)の添加により水性エマルション中で安定化させ、ナノ粒子の含有量を、7.5重量%において確立した。エマルション中において、触媒上での更なるナノ粒子に対するルテニウムナノ粒子の所望の割合を確立し、これにより、触媒担体に、所望の全装填が触媒担体へ適用されるまで、「incipient wetness法」として専門文献において従来参照される方法により繰り返し含浸させた。
【0048】
該方法では、活性成分を含有する含浸溶液を、含浸させる担体によってちょうど吸収させることができる量で容器に入れ、こうして、活性成分を、担体によって完全に吸収させることを確保する。Saint−Gobainに規定の担体の特性は、以下の通りである:
平均細孔系: 1.2μm、BET表面積: 30m/g
細孔容積: 0.55cm/g、水吸収能: 60重量%
組成物: 82重量%アルファ/転移Al、18重量%SiO
寸法: d=3〜4mm、l=6〜8mm(2a〜d、2h〜i)、d=3〜4mm、l=3〜4mm(2e〜g)
【0049】
湿潤触媒は、含浸工程間で、最終的に110℃において2〜5時間乾燥させ、空気中で550℃において2時間焼成した。触媒の全重量におけるナノ粒子の金属含有量の割合を、表1に見出す(XRFにより決定)。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例3(比較例):本発明による触媒(実施例1から)の試験
1を示す1gの成形触媒体を、不活性Spheriglass球体で希釈し、石英反応管(内径10mm)に入れた。該バッチを、実施例4と同じ測定プログラムに付した。それにより得られたSTYRuの変化および特性データを、表2に見出す。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例4:本発明による触媒(実施例2から)の試験
2a−iを示す1gの成形触媒体を、いずれの場合にも、不活性Spheriglass球体で希釈し、石英反応管(内径10mm)に入れた。窒素の一定ストリーム下での加熱後、1リットル/時塩化水素、4リットル/時酸素および5リットル/時窒素から構成されるガス混合物(10リットル/時)を、バッチのそれぞれへ380℃において約16時間通過させた。次いで温度を330℃にまで低下させ、空間−時間収率を決定した(出発STY)。次いで、温度を430℃にまで上昇させた。非活性化を測定するために、温度を330℃にまで間隔により低下させた(x時間後のSTY)。空間−時間収率を、反応器のそれぞれの生成物ガスストリームを20%ヨウ化カリウム溶液へ約15分間通過させ、次いで得られるヨウ化物を0.1Nチオスルフェート測定溶液で滴定することにより決定した(繰り返し決定)。次いで、このように決定した塩化物の量から、比空間−時間収率(ルテニウム含有量に基づく)(STY)を以下の式:
STYRu=g(塩素)×g−1(用いた触媒上のルテニウムの重量)×時間−1
に従って決定した(表3a/b)。
【0054】
STYRuにおける変化を、力の近似を用いてモデル化した:
STYRu=at−b (430℃において時間TOSにおけるt)
〔式中、aは出発活性を表し、bは不活性の速度を表す〕
【0055】
これら2つのパラメーターを、同様に、表3a/bに示した。
【0056】
【表3a】

【0057】
【表3b】

【0058】
例として記載の本発明による触媒(2a、2b、2g、2h、2i)の安定性(モデル化不活性化パラメーター−b)は、場合によっては明らかに、本発明によらない先行技術の触媒の安定性より著しく高い。例として記載の本発明による幾つかの触媒(2b、2f、2i)の比出発活性は、場合によっては明らかに、本発明によらない先行技術の触媒の比出発活性より著しく高い。触媒試料2aおよび2cは、先行技術による触媒より著しく高い(高温)安定性および著しく高い出発活性を更に有する。
【0059】
実施例5: 触媒上のナノ粒子の寸法分布
最後に、2a、2b、2cおよび2dを示す例として記載の、僅か10gの本発明による触媒を、乳鉢により粉砕し、エタノール中で懸濁し、得られる懸濁液を、TEM測定(Tecnai20、Megaview III)のための試料キャリアへ液敵状に適用した。異なった領域の2つの試料を、TEMにより調査した。図1(触媒2a)、図2(触媒2b)、図3(触媒2c)および図4(触媒2d)は、例として触媒試料の特性領域を示す。
【0060】
図1(触媒2a): 5〜34nm(平均16nm)の直径を有する34個の1次粒子を計算した。
図2(触媒2b): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
図3(触媒2c): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
図4(触媒2d): 1次粒子分布(二酸化ルテニウムおよび二酸化錫)は、2aの1次粒子分布と同様である。
【0061】
本発明による触媒とは異なって、二酸化ルテニウムは、2つのルチル構造の同等の格子面間隔により、担体を被覆する層の形態でルチル−TiO上に明らかに存在する(実施例1参照)(Seki、Kohe;Iwanaga、Kiyoshi;Hibi、Takuo;Issoh、Kohtaro;Mori、Yasuhiko;Abe、TadashiによるStudies in Surface Science and Catalysis (2007)、第172巻 (Science and Technology in Catalysis 2006)、第55〜60頁における「Development of an improved HCl oxidation process: structure of the RuO/rutile TiO 触媒」)。同じ出版物において、この触媒は、おそらく高い分散を有しているにも拘わらず著しくより低い活性を示すAlまたはSiOに基づく担持ルテニウム触媒と比較される。これらの担体上での高い分散は、ルチル−TiOの面積適用と比較して、触媒特性について明らかに不利である。
【0062】
しかしながら、所定のルテニウム1次粒度を有する本発明によるナノ構造化担持ルテニウム触媒は、ルチル−TiOに基づく担持ルテニウム触媒より明らかに優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体は、細孔径>50nmを有する複数の細孔を有し、およびルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を触媒活性成分として含有するナノ粒子を有することを特徴とする、ルテニウムに基づく担持触媒に基づく、塩化水素および酸素含有ガスからの塩素の熱触媒による製造のための触媒物質。
【請求項2】
触媒物質の細孔容積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%は、直径が50nmを越える細孔に存在することを特徴とする、請求項1に記載の触媒物質。
【請求項3】
触媒担体は、担体物質として、次の群:アルミニウム化合物、シリコン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物または錫化合物、好ましくはアルミニウム化合物および/またはシリコン化合物からの1以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒物質。
【請求項4】
触媒担体は、担体物質として、次の群:アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウムまたは錫、好ましくはアルミニウムおよびシリコンの混合酸化物の金属の1以上の酸化物、酸化物混合物または混合酸化物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の触媒物質。
【請求項5】
触媒上に存在するルテニウム含有ナノ粒子は、触媒活性成分として、次の群:酸化ルテニウム、混合酸化ルテニウム、酸化ルテニウム混合物、ルテニウムオキシハライド、ルテニウムハライド、金属ルテニウム、好ましくは塩化ルテニウム、ルテニウムオキシ塩化物または酸化ルテニウムの混合物および塩化ルテニウムからの1以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項6】
ルテニウム含有ナノ粒子の少なくとも50%は、50nm以下の直径を有し、好ましくは、少なくとも50%は、5nm〜50nmの直径を有し、特に好ましくは、少なくとも80%は、5nm〜50nmの直径を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項7】
ルテニウム含有ナノ粒子は、10〜30nmの平均径を有することを特徴する、請求項1〜6のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項8】
触媒は、触媒物質の全重量を基準として20重量%まで、好ましくは0.5〜5重量%のルテニウム含有量を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項9】
触媒物質は、更なる活性成分としてまたは促進剤として、1以上の更なる金属または金属化合物、好ましくは元素Ag、Au、Bi、Ce、Co、Cr、Cu、Ni、Sb、Sn、Ti、W、Y、Zn、Zrおよび白金属の1以上の更なる金属または金属化合物および混合化合物、特に好ましくは元素Bi、Sb、SnおよびTiの1以上の更なる金属または金属化合物および混合化合物に基づくナノ粒子を付加的に含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項10】
付加的なナノ粒子は、金属化合物として、酸化物、混合酸化物、酸化物混合物、オキシハライド、特にオキシ塩化物、ハライド、特に塩化物、または金属、または請求項9に記載の金属の金属合金を含むことを特徴とする、請求項9に記載の触媒物質。
【請求項11】
触媒上に付加的に存在するナノ粒子の量は、触媒物質の全重量を基準として20重量%まで、好ましくは10重量%までであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項12】
触媒上に付加的に存在するナノ粒子の少なくとも50%は、50nm以下の直径を有し、好ましくは、少なくとも50%は、3nm〜50nmの直径を有し、特に好ましくは、少なくとも80%は、3nm〜50nmの直径を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項13】
付加的なナノ粒子は、5〜30nmの平均径を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の触媒物質。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の触媒物質の製造方法であって、該触媒を、少なくとも以下の工程:
a)火炎加水分解によるルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を含有するナノ粒子の合成、
b)エマルション中におけるルテニウムおよび/またはルテニウム化合物を含有するナノ粒子の安定化、
c)工程b)からのエマルションによる担体の含浸(繰り返し)、
d)含浸させた触媒の高温における焼成
により製造することを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の触媒物質を触媒として用いることを特徴とする、塩化水素および酸素含有ガスからの塩素の熱触媒による製造方法。
【請求項16】
塩化水素酸化は、断熱的にまたは等温的にまたはほぼ等温的に、好ましくは断熱的に、特に連続的に、流動床法または固定床法として、好ましくは固定床法として、180〜500℃、好ましくは200〜400℃、特に好ましくは250〜380℃の反応器温度および1〜25バール(1000〜25000hPa)、好ましくは1.2〜20バール(1200〜20000hPa)、特に好ましくは1.5〜17バール(1500〜17000hPa)、特に2.0〜15バール(2000〜15000hPa)の圧力において行うことを特徴とする、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500145(P2013−500145A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520932(P2012−520932)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004287
【国際公開番号】WO2011/012226
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】