説明

ナノ構造薄膜およびその使用

本発明は一般に、ケイ素やタングステンなどの材料の活性層が後にコートされる支持基材上でのナノ構造非ケイ素薄膜(アルミナまたはアルミニウム薄膜など)の使用を開示している。ベースである下にある非ケイ素材料は表面積を増加させ、分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、活性層に吸着した1つ以上の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を活性層は支援する。本発明は、比較的容易かつ安価な製造プロセスで製造でき、質量分析、疎水性または親水性コーティング、医療装置用途、エレクトロニクス、触媒作用、保護、データ記憶、オプティックスおよびセンサなどの様々な用途に用いることのできる基材表面を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年9月17日出願の米国仮特許出願第60/611,116号の優先権に係り、これを主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に援用されるものである。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明の一部分は、保健福祉省、国立衛生研究所、国立ヒトゲノム研究所許可番号1R43HG003480−01による米国政府の支援によりなされたものである。このように、米国政府は本発明にある権利を有している。
【0003】
本発明は、主に、ナノテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本発明は、ナノ構造薄膜およびコーティングおよびその使用、例えば、質量分析、超疎水性コーティング、生物付着防止コーティング、細胞接着、分化および培養を促進する表面等などの高表面積用途に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノテクノロジーは、電子、光学および構造特性をはじめとする材料特性に関して様々な多大な利点が得られることが予測されるという点で、次の大幅な技術的飛躍を遂げている。薄膜およびコーティングプロセスとしてのナノ構造材料は、サイズとインターフェースの効果の両方のために、独特な特性を有している。ナノ構造材料は、通常、約500nm未満、例えば、約200nm未満、例えば、約100nm未満の長さスケールでゼロから3次元で調節された微細構造を備えた広い部類の材料である。ナノ構造材料は、エレクトロニクス、質量分析、触媒作用、保護、データ記憶、オプティックスおよびセンサなどの領域において多くの用途が見出されている。ナノ構造膜およびコーティングには、高表面積、疎水性の増大、接着力の増大およびその他同様の特性をはじめとして、従来の薄膜よりも多くの利点がある。
【0005】
ナノ構造膜およびコーティングの特に興味深い用途は、質量分析用途である。一般的に言って、質量分析において、物質は、分子を砕くのに十分なエネルギーを有する電子ビームと衝突する。生成される正の断片(カチオンおよびラジカルカチオン)を磁場を通して真空中で加速し、質量分析器で質量対電荷(m/z)比に基づいて分類する。質量分析器で生成されたイオンのバルクは、単位正電荷を保持するため、値m/zは断片の分子量に等しい。質量分析における最新の進歩では、液体または固体試料の取扱いに関する問題に対処している。イオンは質量分析器の真空中で実際に分析されるため、最も重量な反応は、恐らく、当該の分析物をガス相イオンへ変換するものである。これまで、最も一般的に用いられているイオン化プロセス(例えば、電子イオン化)は、基材の表面に吸着した試料をまず揮発してからイオン化する、2つの別の工程で生じる。
【0006】
過去20年間、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援脱離/イオン化(MALDI)の不揮発性の熱に不安定な化合物の分析のための新たなイオン化技術の開発がなされてきた。ESIによって、大きな不揮発性分子を液相から直接分析することができる。ESIのように試料を電子ビームを用いてイオン化するのではなく、MALDIは試料のパルスレーザー照射により試料をイオン化する。試料は、レーザーにより放出された光の波長を吸収できる固体マトリックスにより共晶化される。通常、試料およびマトリックスは、基材上で混合されて、質量分析器に挿入され、照射後、形成されたガス相イオンが質量分析器に向けられる。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)の成功は、試料へのエネルギーの取込みおよび移動をするマトリックスの能力に関連している。バーバーら(Barber,et al.)、ネイチャー(Nature)293、270−275(1981)、カラスら(Karas, et al.)、Anal.Chem.60、2299−2301(1988年)、マクファーレンら(Macfarlane,et al.)、サイエンス(Science)191、920−925(1976年)、ヒレンカンプら(Hillenkamp, et al.)、Anal.Chem.63,A1193−A1202(1991年))。
【0007】
しかしながら、MALDIの欠点の1つは、イオン化を促進するばかりでなく、約700ダルトンより低いm/z比(例えば、低分子量試料について)で観察される大きな化学ノイズを生じさせるマトリックスの存在である。その結果、低分子量の試料は、通常、MALDIで分析するのが難しい。MALDIの最近の変形には、マトリックスのない直接脱離/イオン化があり、低分子量化合物の分析ができる可能性を有している。特に、多孔性ケイ素(DIOS)およびケイ素連続または円柱状薄膜での脱離/イオン化は、MALDIの変形として用いられてきた。例えば、シウズダックら(Siuzdak et al.)、米国特許第6,288,390号明細書、フォナッシュら(Fonash et al.)、米国特許出願公開第20020048531号明細書、2000年12月19日出願、トーマス(Thomas)JJ.シェン(Shen)、Z.,クロウェル(Crowell)、J.E.,フィン(Finn)、M.G.&シウズダック(Siuzdak)、G.,「ケイ素での脱離/イオン化(Desporption/ionization on silicon)(DIOS)、タンパク質特定のための様々な質量分析プラットフォーム(a diverse mass spectrometry platform for protein characterization)」、Proc.Natl Acad.98:4932−4937(2001年)、シェン(Shen)Z.,ら(et al.)「レーザー脱離/イオン化質量分析のための汎用プラットフォームとしての多孔性ケイ素(Porous silicon as a versatile platform for laser desorption/ionization mass spectrometry)」、Anal Chem.73:612−619(2001年)、カウフィら(Cuiffi,et al.)、「蒸着ナノ構造ケイ素膜を用いた脱離−イオン化質量分析)Desorption−ionization mass spectrometry using deposited nanostructured silicon films)」Anal,Chem.73:1292−1295(2001年)およびクルーゼら(Kruse, et al.)「多孔性ケイ素でのレーザー脱離/イオン化質量分析における分析物イオン生成を制御する実験的因子(Experimental factors controlling analyte ion generation in laser desorption/ionization mass spectrometry on porous silicon)」Anal.Chem.73:3639−3645(2001年)を参照のこと。これらの方法では、一般的に、表面に蒸着した分析物をトラップするために多孔性ケイ素またはエッチングされたケイ素円柱状構造、およびそれらを蒸発しイオン化するためのレーザー照射を用いている。今まで示されてきたこれらの用途の多くは、ケイ素のウエハまたは蒸着膜を電気化学的にエッチングすることにより生成された多孔性ケイ素材料に基づくものであった。
【0008】
ケイ素ナノワイヤは、エレクトロニクス、フォトニクス、オプトエレクトロニクス、センシングおよびその他新規な装置用途における広範囲な研究の対象であった。例えば、キュイら(Cui, et al.)、「生物および化学種の高感度および選択性検出のためのナノワイヤナノセンサ(Nanowire nanosensors for highly sensitive and selective detection of biological and chemical species)」、サイエンス(Science)293、1289−1292(2001年)、キュイら(Cui, et al.)、「ケイ素ナノワイヤビルディングブロックを用いて組み立てた機能性ナノスケール電子装置(Functional nanoscale electronic devices assembled using silicon nanowire building blocks)」、サイエンス(Science)291:851−853(2001年)、ホワンら(Huang, et al.)「半導体ナノワイヤから組み立てた集積オプトエレクトロニクス(Integrated optoelectronics assembled from semiconductor nanowires)」、(アメリカ化学協会論文集(Abstracts of Papers of the American Chemical Society)224:U308(2002年)、シュウら(Zhou, et al.)「化学センサとしてのケイ素ナノワイヤ(Silicon nanowires as chemical sensors)」、Chem.Phys.Lett.369:220−224(2003年)、トアンら(Duan, et al.)「単一−ナノワイヤ電動レーザー(Single−nanowire electrically driven lasers)、ネイチャー(Nature)421:241−245(2003年)、ハームら(Hahm, et al.)「ナノワイヤナノセンサを用いたDNAおよびDNA配列変位の直接超高感度電気的検出(Direct ultrasensitive electrical detection of DNA and DNA sequence variations using nanowire nanosensors)」、Nano Lett.4:51−54(2004年)を参照のこと。ケイ素ナノワイヤは、表面ベースの質量分析の理想的なプラットフォームのように思われる。多孔性ケイ素に対して、ケイ素ナノワイヤは触媒反応して、基材表面で成長する。その物理的寸法、組成、密度および位置は、ナノスケールレベルで正確に制御でき、質量分析活性表面を設計するのにより大きな可能性を与えている。例えば、その全内容が参照により本明細書に援用される、全て「表面積を増大させた用途に用いるナノファイバー表面(Nanofiber Surfaces for Use in Enhanced Surface Area Applications)」という名称の2003年5月6日出願の米国特許出願第60/468,390号明細書、2003年5月5日出願の米国特許出願第60/468,606号明細書および2004年5月2日出願の米国特許出願第10/792,402号明細書を参照のこと。しかしながら、基材表面としてケイ素ナノワイヤを用いると、大規模商業生産についてかかる表面を再生産可能に製造する点でいくつかの課題を引き起こす可能性がある。
【0009】
マトリックス化合部物の必要性をなくし、信頼性があり、実施が比較的安価で、標準MALDI(およびその他)質量分析器により生体分子およびその他分析物に用いることのできる直接レーザー脱離/イオン化技術があると有益である。本発明は、独特なナノ構造薄膜表面を与えて、MALDIおよびその他用途のための高表面積基材を生成するものである。マトリックス化合物の妨害するバックグラウンドピークをなくすことにより、小分子、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、薬品、殺菌剤、炭水化物、脂肪酸等などの低分子量化合物と高分子量化合物の両方の良好な分析物を即時に確実に製造することができる。
【特許文献1】米国特許第6,288,390号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20020048531号明細書
【特許文献3】米国特許出願第60/468,390号明細書
【特許文献4】米国特許出願第60/468,606号明細書
【特許文献5】米国特許出願第10/792,402号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ナノ構造非ケイ素薄膜(アルミナまたはアルミニウム薄膜など)を、第2の材料(例えば、ケイ素、タングステン等)の活性層で後にコートされる支持基材で用いることを開示している。ベースである下にある非ケイ素材料は表面積を増大し、活性層は分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、活性層に吸着した1つ以上の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する。本発明は、比較的容易かつ安価な製造プロセスで製造できる基材表面を提供する。本発明の方法により製造されたナノパターン化薄膜は、比較的広い面積にわたって高均一性を有する、下にある基材に強固に接着している、耐引っ掻き性がある、という特徴を有しており、大きな基材材料に容易に適用することができる。ナノ構造化膜は、例えば、マトリックスフリーの質量分析用に基材の表面積を増やすために、基材表面を超親水性または超疎水性とするために、基材の光学特性を修正するために、かつ/またはナノファイバーまたはその他ナノ構造コンポーネントの成長用に高効率触媒表面を作り出すために、ベース層として用いてもよい。
【0011】
本発明の第1の例示の態様において、支持基材と、ナノ構造コーティングの第1の層と、活性コーティングの第2の層とを一般に含む装置が開示されている。支持基材は、半導体ウエハ、ガラスまたは水晶のシート、金属のシート、一片のセラミックまたはプラスチックなどの様々な形態を採ることができる。ナノ構造コーティングの第1の層は、例えば、少なくとも1つの寸法が約0.2μm未満の細長いまたは板状粒を含むことができる。板状粒の長軸は、支持基材の表面に実質的に垂直に配向されていてよい。本発明の一態様において、ナノ構造コーティングの第1の層は、自然酸化層や蒸着酸化物または窒化物層などの絶縁無機材料を含む。絶縁無機材料はまた、蒸着金属層から形成してもよい。例えば、絶縁無機材料は、アルミナ(Al)、アルミニウム(Al)、SiO、ZrO、HfO、これらの酸化物の水和形態、SiTiO、BaTiO、PbZrOなどの化合物酸化物またはシリケートを含む材料の群から選択してもよい。
【0012】
本発明の一態様において、活性コーティング層は、IR、赤色、緑色、青色および/またはUVレーザー光エネルギーなどの光エネルギーを吸収する半導体を含む。半導体は、Si、Ge、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンコーティングを含むIV族半導体、またはII−V、II−VI族の化合物半導体、ならびに硫化物、セレン化物、テルル化物、窒化物、炭化物、窒化物、アンチモン化物およびリン化物を含む他の半導体を含む群より選択してよい。活性層はまた、触媒活性で、光吸収を阻害し、分析物への光エネルギーの移動を促進または増大可能で、例えば、支持基材の表面をイオン化し、それを脱離可能な、タングステンまたはその他の金属などの金属を含んでいてもよい。金属は、Fe、Co、Cr、Ni、Mo、W、V、Cu、Znを含む遷移金属およびAg、Au、Pt、Pd、Ru、Rhを含む精密金属、またはそれらの金属合金を含む群より選択してよい。
【0013】
本発明の他の態様において、第1の表面と、第1の表面の少なくとも1つの領域に蒸着された、ナノ構造表面を有する第1の材料の非ケイ素膜層とを有する支持基材と;第1の層に蒸着した第2の材料の活性層と;活性層の少なくとも1つの領域と接触配置された少なくとも第1の分析物とを含み、分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、活性層が少なくとも第1の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する質量分析装置が開示されている。非ケイ素膜層は、物理蒸着(PVD)、スパッタ蒸着、低温または高温化学蒸着(CVD)、金属有機CVD、プラズマCVD、レーザーアブレーションをはじめとする熱蒸発およびスパッタリング、またはスプレーコーティング、ディップコーティングまたはスピンコーティング等などの溶液蒸着方法などの様々な周知の技術を用いて基材に蒸着することができる。金属超薄膜(例えば、厚さ約5nm未満の膜)を、原子層蒸着(ALD)技術により蒸着してもよい。薄膜は、例えば、膜を熱水または水蒸気に単純に露出することにより、ナノ構造表面を有するように構成してもよい。このためには、薄膜表面を、約50℃を超える、例えば、約50〜150℃の温度で熱水または水蒸気に露出する。水または水蒸気は、約90〜125℃の温度を有しているのが好ましい。膜表面は、十分な時間にわたって(例えば、約3〜60分間、例えば、約5〜30分間)水または水蒸気に露出して、膜を高秩序のナノ構造表面に変換する。一実施形態において、薄膜はアルミナまたはアルミニウムから作製された金属薄膜である。例えば、自然酸化物層または蒸着酸化物または窒化物層またはZnO、SiO、ZrO、HfOをはじめとする材料、これらの酸化物の水和形態、SiTiO、BaTiO、PbZrOなどの化合物酸化物またはシリケートをはじめとするその他のテクスチャード表面もまた、かかる表面が脱離感度を増大する限りは用いることができる。他の実施形態において、支持基材自身はナノ構造表面を形成できるアルミナまたはアルミニウムなどの非ケイ素材料から作成され、活性層は基材のナノ構造表面に蒸着される。
【0014】
活性層は、ケイ素やゲルマニウムなどの半導体材料、または金属や半金属などのその他導体または半導体材料、および上述および後述するような、光を吸収し、分析物への光エネルギーの移動を促進または増大して、支持基材の表面から脱離するその他材料を含んでいてもよい。一例において、活性層はケイ素から作製され、ケイ素活性層は、10分以上にわたる約50nm以上の深さまでの化学蒸着プロセスにより、またはスパッタリングなどのその他熱蒸着法により薄膜層に蒸着される。活性層はまた、任意で、例えば、特定の特性を向上したり付与するために、コートまたは官能化することができる。例えば、ポリマー、セラミックスまたは小分子は、任意で、コーティング材料として用いることができる。任意のコーティングは、耐水性、改善された機械的、光学的(例えば、光結合の増大)または電気的特性または特定の分析物に対する特異性などの特性を付与することができる。活性層はまた、1つ以上のシラン基、例えば、1つ以上のペルフルオロシラン基などのレーザー脱離を増大させる1つ以上の官能部分、またはダイヤモンドライクカーボン薄膜コーティングなどのその他コーティングにより(例えば、膜の表面を疎水性を与えるために)誘導してもよい。
【0015】
支持基材は、ステンレス鋼、ガラス、水晶、ケイ素などの半導体材料、ポリマー、セラミックス等をはじめとする数多くの従来の材料の一つから作製してよい。分析する物質(例えば、小分子、タンパク質、ペプチド等)の試料を、任意で、ピペット操作、ドット印刷等などの従来の分配手段により、活性層と接触配置する(例えば、1つ以上のシラン基などの1つ以上の官能部分により直接、またはこれを使用することにより)。当業者であれば、分析のために試料を乾燥させるための様々な手順に従うことが分かるであろう。レーザーエネルギーレベルおよびパルス幅も、ナノ構造基材表面に配列された試料の分析のために任意で最適化する。ここでも、当業者であれば、質量分析のためのレーザーエネルギー、パルス幅等に最適なパラメータを決める方法が分かるであろう。例えば、異なるパラメータは、例えば、検出する特定の分子に応じて任意で修正する。例えば、用いるレーザーエネルギーは、任意で調整することができる(例えば、小分子とは対照的にペプチドには高レーザーエネルギーレベル)。
【0016】
本発明の他の態様において、第1の表面と、第1の表面の少なくとも1つの領域の、ナノ構造表面を有する第1の材料(例えば、アルミナやアルミニウムなどの金属)の非ケイ素薄膜層とを含む基材と;第1の層に蒸着した第2の材料の活性層と;活性層の第1の領域と接触配置された少なくとも第1の分析物と;少なくとも第1の領域でエネルギーを導いて、少なくとも第1の分析物を第1の領域から脱離するべく配置されたレーザーと;活性層から脱離された少なくとも第1の分析物を受けるべく配置された質量分析器とを含み、レーザー脱離中に、活性層が少なくとも第1の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する質量分析装置が開示されている。活性層はまた、例えば、その表面を疎水性とする等、特定の特性を向上したり付与するために、1つ以上の官能部分で官能化またはコートしてよい。
【0017】
本発明の他の態様において、質量分析をはじめとする様々な用途の基材を製造する方法、および、かかる基材を用いて、例えば、質量分析等、1つ以上の分析物を検出する方法が提供される。一実施形態において、第1の表面を有する支持基材を提供する工程と、第1の表面に非ケイ素膜層を蒸着する工程と、非ケイ素膜層からナノ構造表面を形成する工程と、ナノ構造表面に活性層を蒸着する工程と、1つ以上の分析物を活性層の1つ以上の領域に蒸着する工程とを含む基材装置を製造する方法が開示されている。非ケイ素膜層を基材の第1の表面に蒸着する工程は、例えば、膜を第1の表面にスパッタリングするか、またはCVD法を用いて膜を基材の表面に蒸着する工程を含むことができる。非ケイ素膜は、ナノ構造膜表面またはその他同様のナノ構造表面が容易に形成される、例えば、アルミナまたはアルミニウム膜を含むことができる。ナノ構造表面を膜層から形成する工程は、例えば、膜層を熱水または水蒸気に約50℃を超える、例えば、約50〜150℃、例えば、約90〜125℃の温度で、約3〜60分間露出して高構造表面を形成する工程を含むことができる。活性層を非ケイ素膜層に蒸着する工程は、例えば、化学蒸着プロセスを用いて、かかる膜を蒸着する工程を含むことができ、かかる膜は例示の実施形態においてケイ素またはタングステン膜を含む。このやり方で、質量分析などの様々な用途に有用な基材が、例えば、電気化学的にエッチングされた多孔性ケイ素膜を濡らすのに比べて、容易に、かつ比較的少ないコストで再生産可能に製造できる。方法はさらに、活性層を1つ以上の官能部分により誘導して、表面の疎水性を増大し、かつ/または1つ以上の分析物を活性層の表面から脱離する工程を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の関連の態様において、第1の表面と、第1の表面に蒸着した非ケイ素薄膜層と、ナノ構造表面を有する薄膜層に蒸着した活性層とを有する支持基材を提供する工程と、質量分析などの1つ以上の検出手段により活性層と関連した1つ以上の分析物を分析する工程とを含む、1つ以上の分析物を分析する方法が提供される。特に、第1の表面と、第1の表面に蒸着した、ナノ構造表面を有する薄膜層(例えば、アルミナやアルミニウムなどの非ケイ素層)と、薄膜層に蒸着した活性層とを有する基材と、表面に関連した1つ以上の分析物とを提供する工程と、表面に向けたレーザーからのエネルギーにより表面から1つ以上の分析物を脱離する工程と、質量分析器において1つ以上の分析物を分析する工程とを含む、質量分析を実施する方法が提供される。測定される分析物としては、例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂肪酸、小分子、核酸、細胞、ポリペプチドおよびこれらの混合物が挙げられる。分析物は、基材の表面に固体、乾燥形態または液体形態で直接適用して、基材上で乾燥してよい。分析物は、水溶液または有機溶剤または懸濁液に懸濁させてもよい。
【0019】
本発明の他の態様において、第1の表面を有する支持基材と、基材の表面に蒸着した複数のナノ結晶、例えば、量子ドットなどの半導体ナノ結晶とを含む、質量分析装置が開示されている。例えば、ナノ結晶は、金ナノ粒子、コバルトナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子またはIV族化合物(例えば、Si、Ge)、II−VI族化合物、II−V族化合物、III−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、I−III−VI族化合物、II−IV−VI族化合物またはII−IV−V族化合物などの半導体材料をはじめとする半導体ナノ結晶とすることができる。半導体材料は、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AIP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、GaSe、InN、InP、InAs、InSb、TIN、TIP、TIAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTeまたはこれらの混合物とすることができる。ナノ粒子は、第2の金属、半金属、ポリマーまたはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AIN、AIP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TIN、TIP、TIAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTeまたはこれらの混合物などの半導体材料といった1つ以上の第2の材料でコートすることができる。
【0020】
本発明の他の態様において、表面と、その表面の少なくとも1つの領域にあるナノ構造表面を有する非ケイ素膜層と、膜層に蒸着した疎水性(または親水性)コーティングとを有する支持基材を含む、質量分析以外の(例えば、医療装置用途、建設材料、保管タンクのバリア層、細胞付着用表面、分化および増殖、ATM機に用いる接触タッチスクリーン、カーディスプレイ、エンターテインメントポータル等)表面積および/または疎水性表面用途を増大する装置が開示されている。疎水性コーティングは、基材の表面を疎水性(または親水性)とする、例えば、ダイヤモンドライクカーボンコーティングまたはその他コーティングを含んでいてもよい。ダイヤモンドライクカーボン膜は、例えば、グラファイトターゲットでパルスレーザーアブレーションを用いて、または低温でのプラズマCVD法によりナノ構造表面に適用することができる。蒸着した材料を加熱すると、かかる膜は応力を失うが、ダイヤモンドのような特性は保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、ナノ構造非ケイ素薄膜(アルミナまたはアルミニウム薄膜など)を、支持基材に用い、活性材料層で後にコートされる装置および方法について記載している。ベース非ケイ素材料は表面積を増大し、適切な構造寸法を生成し、活性層は分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、活性層に吸着した1つ以上の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する。以下の説明では、本発明を完全に理解するために数多くの具体例を示してある。当業者であれば、これらの具体例は本発明を実施するのに必須ではないことが分かるであろう。場合によっては、本発明が曖昧になるのを避けるために、周知の装置特徴およびプロセスの詳細については記載していない。
【0022】
図1に、例示のレーザー脱離/イオン化質量分析セットアップの概略構成を示す。一連のレーザーパルス14により照射された修正指示材料10を保持するMALDI調査に通常用いられるMALDIプレート8が示されている。支持基材10は、好ましくは、従来のMALDI分析に用いるマトリックス材料を用いずに、吸着された複数の分析物12(例えば、タンパク質、ペプチド、小分子等)を有することができる。基材の修正表面は、レーザーパルス14を吸収し、分析物をイオン化し放出して、脱離およびイオン化された分析物13を形成する。脱離およびイオン化された分析物13は、分析のために質量分析器(図示せず)に移動する。
【0023】
図2Aに、本発明の教示による修正支持基材10の拡大断面図を示す。支持基材は、半導体ウエハ、ガラスまたは水晶のシート、金属のシート、一片のセラミックまたはプラスチック等などの様々な形態を採ることができる。図示するとおり、支持基材10は、第1の表面20と、第1の表面の少なくとも1つの領域に蒸着された、ナノ構造表面を有する第1の材料の非ケイ素薄膜層22とを有する。第2の材料の活性層24は第1の層に蒸着される。複数の分析物12は、図2Bに示すとおり、直接、あるいは1つ以上の官能基を用いて、活性層22の少なくとも1つの領域と接触配置される。作用の特定の理論に拘束されるものではないが、分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、活性層は、分析物へのエネルギー(例えば、レーザーパルスからの光エネルギー)の取込みおよび移動を支援すると考えられている。例えば、分析物分子は、活性層表面の直ぐ上にある濃い相にあるプロトン化された活性層イオンによる酸塩基プロトン移動反応によりイオン化されると考えられる。プロトン化された活性層分子は、一連の光化学反応により生成される。
【0024】
本発明の一態様において、第1の非ケイ素層は、自然酸化層や蒸着酸化物または窒化物層などの絶縁無機材料を含んでいてよい。絶縁無機材料はまた、蒸着金属層から形成してもよい。例えば、絶縁無機材料は、アルミニウム(Al)、アルミナ(Al)、ZnO、SiO、ZrO、HfO、これらの酸化物の水和形態、SiTiO、BaTiO、PbZrOなどの化合物酸化物またはシリケートを含む材料の群から選択してもよい。一例において、非ケイ素膜層は、物理蒸着(PVD)、スパッタ蒸着、化学蒸着(CVD)、金属有機CVD、プラズマCVD、レーザーアブレーションをはじめとする熱蒸発およびスパッタリング、またはスプレーコーティング、ディップコーティングまたはスピンコーティング等などの溶液蒸着方法などの様々な周知の技術を用いて基材に蒸着することができるアルミナまたはアルミニウムから作製される。金属超薄膜(例えば、厚さ約5nm未満の膜)を、原子層蒸着(ALD)技術により蒸着してもよい。薄膜の厚さは、好ましくは約1000nm未満、例えば、約5〜400nm、例えば、約5〜200nm、例えば、約10〜100nmである。アルミニウム基材を用いるときは、基材の厚さは、約0.5mm以上と大幅に厚くしてもよい。
【0025】
権利請求の対象とする本発明の発明者らは、膜層は、例えば、膜を熱水または水蒸気に単純に露出することにより、図3および4のSEM画像に示すとおり、ナノ構造表面を有するように構成されていてもよい、ということを意外にも知見した。このためには、表面を、約50℃を超える、例えば、約50〜150℃の温度で熱水または水蒸気に露出する。水または水蒸気は、約90〜125℃の温度を有しているのが好ましい。表面は、同様に、十分な時間にわたって(例えば、約3〜60分間、例えば、約5〜30分間)水または水蒸気に露出して、約200nm未満の孔径を有する高秩序のナノ構造表面に膜を変換するのが好ましい。例えば、図4A−Bは、活性ケイ素層が上に蒸着したナノ構造アルミナ表面の電子顕微鏡写真である。図示するとおり、ナノ構造アルミナ層は、少なくとも1つの寸法が約0.2μm未満の細長いまたは板状粒を含む。板状粒の長軸は、支持基材の表面に実質的に垂直に配向されている。
【0026】
ナノ構造アルミナ層は、酸性溶液(例えば、リン酸、シュウ酸、または硫酸溶液)中でのアルミニウム金属の陽極酸化を介して、膜層のオートクレーブ、例えば、基材を市販の重力または真空オートクレーブ等に基材を入れることにより、多孔性アルミナ膜の形成などのその他の手段により形成することもできる。例えば、その全内容が参照により本明細書に援用されるエヴェリーナパリブロダ(Evelina Palibroda)、A.ラプサン(Lupsan)、ステラプルニュー(Stela Pruneanu)、M.サヴォス(Savos)、固体薄膜(Thin Solid Films)、256、101(1995年)を参照のこと。例えば、酸化亜鉛(ZnO)、上述したナノ構造表面をはじめとする、アルミナまたはアルミニウム以外のその他のテクスチャード表面もまた、かかる表面が脱離感度を増大する限りは用いることができる。ZnOナノテクスチャード表面を形成するのに低温溶液系のアプローチについては、その全内容が参照により本明細書に援用される、例えば、「ZnOナノワイヤアレイの低温ウエハ規模生産(Low Temperature Wafer−Scale Production of ZnO Nanowire Arrays)」、ロリ(Lori)E.グリーンら(Greene et al.)、Angew.Chem.Int.Ed.2003、42、3031−3034に記載されている。
【0027】
支持基材10は、ナノ構造表面を形成することができる(例えば、材料を約50℃を超える、例えば、約50〜150℃の温度、例えば、約90〜125℃の温度で、ナノ構造表面を形成するのに十分な時間にわたって、例えば、約3〜60分、好ましくは約5分より長く、水または水蒸気により加熱することにより)アルミニウムなどの非ケイ素材料から作製してよく、活性層は、基材のナノ構造表面に蒸着される。例えば、図8A〜Dに、ケイ素コートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25ピコグラムの4つの製薬化合物(すなわち、それぞれ、クロニジン、ハロペリドール、プラゾシンおよびキニジン)の質量分析を示す。
【0028】
ナノ構造膜層の上の活性層24は、IR、赤色、緑色、青色および/またはUVレーザー光エネルギーなどの光エネルギーを吸収する半導体を含んでいてよい。半導体は、Si、Ge、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンコーティングを含むIV族半導体、またはII−V、II−VI族の化合物半導体、ならびに硫化物、セレン化物、テルル化物、窒化物、炭化物、窒化物、アンチモン化物およびリン化物を含む他の半導体を含む群より選択してよい。活性層はまた、触媒活性で、光吸収を阻害し、分析物への光エネルギーの移動を促進または増大可能で、例えば、支持基材の表面をイオン化し、それを脱離可能な、タングステン(W)またはその他の金属などの金属を含んでいてもよい。金属は、Fe、Co、Cr、Ni、Mo、W、V、Cu、Znを含む遷移金属およびAg、Au、Pt、Pd、Ru、Rhを含む精密金属、またはそれらの金属合金を含む群より選択してよい。
【0029】
活性層の厚さは、好ましくは約5〜200nm、例えば、約10〜50nmである。ケイ素を活性層として用いるときは、ケイ素活性層は、化学蒸着プロセスにより、またはその他熱蒸発法により薄膜層に蒸着される。例えば、約480℃の温度のCVDオーブン中で、約10〜80分間、例えば、約30〜80分間にわたって、ケイ素活性層を蒸着すると、最良の質量分析結果を与えることが示されている。例えば、図9A〜Bには、CVDオーブン中でのケイ素蒸着時間が30分(図9A)と10分(図9B)のケイ素コートナノ構造アルミナ表面に落とした25ピコグラムのハロペリドールの質量分析についてのピーク信号の差が示されている。ハロペリドールピークは、当然のことながら、約30分間CVD蒸着したケイ素コート表面にのみ現れている。このように、CVD蒸着時間(従って、ケイ素活性層厚さ)は、質量分析信号の感度において重要な役割を演じている。
【0030】
活性層はまた、任意で、例えば、特定の特性を向上したり付与するために、コートまたは官能化することができる。例えば、ポリマー、セラミックスまたは小分子は、任意で、コーティング材料として用いることができる。任意のコーティングは、耐水性、改善された機械的、光学的(例えば、光結合の増大)または電気的特性または特定の分析物に対する特異性などの特性を付与することができる。活性層はまた、レーザー脱離を増大するために、1つ以上のシラン基、例えば、1つ以上のペルフルオロシラン基などの1つ以上の官能部分(例えば、化学反応性基)、またはダイヤモンドコーティングなどのその他コーティング、炭化水素分子、フルオロカーボン分子またはシラン化学反応を介して活性層に付加する両タイプの分子の短鎖ポリマーにより誘導されてもよい。当業者であれば、任意で用いられる数多くの機能付与および機能付与技術を知っているはずである(例えば、分離コラムの構築、バイオアッセイ等に用いるのと同様の)。
【0031】
例えば、関連の部分およびその他の化学反応およびその構築/使用方法に関する詳細については、例えば、ハーマンソンバイオコンジュゲート技術(Hermanson Bioconjugate Techniques)アカデミックプレス(Academic Press)(1996年)、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)化学便覧(1999年)第4版、グレイソンら(Grayson et al.)(編)ジョンウィリー&サンズ(John Wiley&Sons,Inc.)、ニューヨークおよびカーク−オスマー(Kirk−Othmer)工業化学百科事典第4版(1998年および2000年)、グレイソンら(Grayson et al.)(編)ウィリーインターサイエンス(印刷版)/ジョンウィリー&サンズ(John Wiley&Sons,Inc.)(e−フォーマット)にある。さらに関連情報については、CRCプレス編CRC化学物理便覧(2003)第83版にある。プラズマ法等により本発明の活性層にも組み込むことのできる導電性およびその他コーティングについての詳細は、H.S.ナルワ(Nalwa)(編)、有機導電性分子およびポリマー便覧(Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers)、ジョンウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)1997年にある。「ナノ結晶への/からの電荷移動を促す有機種(ORGANIC SPECIES THAT FACILITATE CHARGE TRANSFER TO/FROM NANOCRYSTALS)」米国特許出願公開第20040178390号明細書も参照のこと。例えば、官能化表面への追加部分のカップリングについての有機化学に関する詳細については、例えば、グリーン(Greene)(1981年)有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、ジョンウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨークおよびシュミット(Schmidt)(1996年)有機化学(Organic Chemistry)、ミズーリ州、セントルイスのモスビー(Mosby,St Louis,MO)およびマーチの最新有機化学反応、機構および構造(March’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure)、第5版(2000年)スミス、マーチ(Smith and March)、ウィリーインターサイエンス(Wiley Interscience)ニューヨークISBN 0−471− 58589−0および米国特許出願公開第20050181195号明細書、「超疎水性表面、その構築方法およびその使用(Super−hydrophobic Surfaces, Methods of Their Construction and Uses Therefor)にある。当業者であれば、表面の機能付与に従う多くのその他の関連参考文献および技術について知っているであろう。分析物は、活性層表面に、例えば、シラン基により直接結合していてもよいし、例えば、置換シラン、ジアセチレン、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプト−ベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、トリクロロ−ペルフルオロオクチルシラン、ヒドロキシコハク酸イミド、マレイミド、ハロアセチル、二硫化ピリジル、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド等などの架橋剤との架橋化学反応(誘導)に関与する架橋基またはその他適切な化学反応基を介して結合していてもよい。
【0032】
支持基材10は、ステンレス鋼、ガラス、水晶、半導体ウエハなどの半導体材料、ケイ素、ポリマー、セラミックス等をはじめとする数多くの従来の材料の一つから作製してよい。分析する物質(例えば、小分子、タンパク質、ペプチド等)の試料を、任意で、ピペット操作、ドット印刷等などの従来の分配手段により、活性層と接触配置する(上述したとおり、例えば、1つ以上のシラン基などの1つ以上の官能部分により直接、またはこれを使用することにより)。当業者であれば、分析のために試料を乾燥させるための様々な手順に従うことが分かるであろう。レーザーエネルギーレベルおよびパルス幅も、ナノ構造基材表面に配列された試料の分析のために任意で最適化する。ここでも、当業者であれば、質量分析のためのレーザーエネルギー、パルス幅等に最適なパラメータを決める方法が分かるであろう。例えば、異なるパラメータは、例えば、検出する特定の分子に応じて任意で修正する。例えば、用いるレーザーエネルギーは、任意で調整することができる(例えば、小分子とは対照的にペプチドには高レーザーエネルギーレベル)。本発明のナノ構造表面の興味深い特徴は、小分子を脱離するのに比較的低いレーザーエネルギー(例えば、約60Hz)を必要とするため、バックグラウンドイオン干渉を減少するということである。
【0033】
本発明の他の態様において、第1の表面を有する支持基材と、基材の表面に蒸着した複数のナノ結晶、例えば、量子ドットなどの半導体ナノ結晶とを含む、質量分析装置が開示されている(例えば、タンパク質、ペプチドまたは小分子薬品などの小分子のマトリックスフリーの分析用)。例えば、ナノ結晶は、金ナノ粒子、コバルトナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子またはIV族化合物(例えば、Si、Ge)、II−VI族化合物、II−V族化合物、III−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、I−III−VI族化合物、II−IV−VI族化合物またはII−IV−V族化合物などの半導体材料をはじめとする半導体ナノ結晶とすることができる。半導体材料は、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AIP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、GaSe、InN、InP、InAs、InSb、TIN、TIP、TIAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTeまたはこれらの混合物とすることができる。ナノ粒子は、第2の金属、半金属、ポリマーまたはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AIN、AIP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TIN、TIP、TIAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTeまたはこれらの混合物などの半導体材料といった1つ以上の第2の材料でコートすることができる。
【0034】
一実施形態において、ナノ粒子は基材表面にスピンコートされて、プラズマ処理されて、水吸着可能な酸化物表面を生成する。ナノ粒子はまた、溶液から基材表面に落とす(例えば、単体、あるいは低分子量タンパク質、ペプチドまたは小分子薬品などのサンプリングされる分子と組み合わせて)こともでき、または当業者に知られたその他の好適な方法により表面に適用することができる。あるいは、ナノ結晶は、組織切片に直接適用して、そこでナノ結晶から組織試料(タンパク質や小分子薬品)中の分子へ直接エネルギーの移動を行って、質量分析用に脱離およびイオン化される。ナノ粒子の表面は適宜官能化することができる。ある実施形態において、ナノ結晶の収集物または集団は、サイズおよび/または形状が実質的に単分散である。例えば、その全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第6,207,229号明細書(2001年3月27日)および米国特許第6,322,901号明細書(2001年11月27日)バウェンディら(Bawendi et al.)、「高発光性色選択性材料(Highly luminescent color−selective materials)を参照のこと。
【0035】
当業者に知られた方法を用いて、本発明に用いるのに好適なナノ結晶を作製することができるが、無機ナノ結晶の制御された成長のために溶液相コロイド法を用いるのが好適である。アリビサトス(Alivisatos)A.P.、「半導体クラスタ、ナノ結晶および結晶ドット(Semiconductor clusters, nanocrystals, and quantum dots)、サイエンス(Science)271:933(1996年)、X.パン(Peng)、M.シュランプ(Schlamp)、A.カダヴァニッヒ(Kadavanich)、A.P.アリビサトス(Alivisatos)「光安定性および電子近接性を備えた高発光性CdSe/CdSコア/シェルナノ結晶(Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS Core/Shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility)」、J.Am.Chem.Soc.30:7019−7029(1997年)およびC.B.マーレイ(Murray)、D.J.ノリス(Norris)、M.G.バウェンディ(Bawendi)、「略単分散CdE(E=硫黄、セレン、テルル)半導体ナノ結晶子の合成および特徴付け(Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E=sulfur,selenium,tellurium)semiconductor nanocrystallites)」J.Am.Chem.Soc.115.8706(1993年)を参照のこと。この製造プロセス技術は、クリーンルームや高価な製造機器を必要とすることなく、低コスト処理性に活かされる。これらの方法において、高温で熱分解する金属前駆体は、有機界面活性剤分子の熱溶液へと即時に注入される。これらの前駆体は、高温で分裂し、反応してナノ結晶の核となる。この初期核形成相後、成長する結晶にモノマーを添加することにより成長相が始まる。有機界面活性剤分子コーティングを表面に有する、溶液中で独立した結晶ナノ粒子が得られる。
【0036】
このやり方を利用すると、数秒で生じる初期核形成として合成がなされ、高温で数分間にわたって結晶成長がなされる。温度、存在する界面活性剤の種類、前駆体材料および界面活性剤対モノマーの比などのパラメータを修正して、反応の性質および進行状況を変更することができる。温度は、核形成の構造相、前駆体の分解速度および成長速度を制御する。有機界面活性剤分子は、ナノ結晶形状の溶解度と制御の両方に介在している。界面活性剤対モノマーの比率、界面活性剤同士、モノマー同士およびモノマーの個々の濃度は、成長の速度論に大きく影響する。好適な実施形態において、SiまたはCdSeは、ナノ結晶材料として用いられる。ただし、上述したその他の好適な半導体材料(例えば、InP、ZnS等)を用いることができる。
【0037】
本発明の本実施形態を実施するのに用いる半導体ナノ結晶のサイズおよび組成を制御することにより、ナノ結晶は特定の波長または波長の特定の範囲のレーザー光を吸収し、そこで、十分なエネルギーがナノ結晶からそこに蒸着した分子に移動したり、質量分析用に分子の脱離およびイオン化が生じ得る。異なる半導体からナノ結晶を作製し、そのサイズおよび形状を制御する能力によって、UVから可視、近赤外(NIR)、赤外(IR)波長までの光を吸収するナノ結晶を製造することができる。本発明に用いるナノ結晶は、サイズが約100nm未満であるのが好適であり、サイズが約2nm未満までであるのが好ましい。好適な実施形態において、本発明のナノ結晶は紫外線、すなわち、約300〜400nmの間の波長を吸収する。
【0038】
本発明の他の態様において、支持基材と、表面の少なくとも1つの領域にあるナノ構造表面を有する非ケイ素膜層と、膜層に蒸着した疎水性(または親水性)コーティングとを含む表面積を増大する用途および/または疎水性表面用途の装置が開示されている。疎水性コーティングは、装置の表面を疎水性(または親水性)とする、例えば、ダイヤモンドライクカーボンコーティング(例えば、アモルファスダイヤモンド膜)またはその他のコーティングを含んでいてもよい。ダイヤモンドライクカーボン膜は、例えば、グラファイトターゲットでパルスレーザーアブレーションを用いて、または低温でのプラズマCVD法によりナノ構造表面に適用することができる。蒸着した材料を加熱すると、かかる膜は応力を失うが、ダイヤモンドのような特性は保持する。
【0039】
かかる装置は、その全内容が参照により本明細書に援用される同時係属および関連の案件である2004年4月19日出願の米国特許出願第10/828,100号明細書(これは2003年9月12日出願の米国特許出願第10/661,381号の一部継続出願であり、これは2003年4月17日出願の米国特許仮出願第60/463,766号遡及の利益を主張するものである);および2004年4月27日出願の米国特許出願第10/833,944号明細書(これは2003年4月28日出願の米国特許仮出願第60/466,229号、2004年5月5日出願の米国特許出願第10/840,794号遡及の利益を主張するものであり、これは、2004年3月2日出願の米国特許出願第10/792,402号の一部継続出願であり、これは、2003年5月6日出願の米国特許仮出願第60/468,390号および2003年5月5日出願の第60/468,606号遡及の利益を主張するものである)に詳細が開示されているようなものをはじめとする様々な高表面積および/または疎水性または親水性表面用途に用いることができる。
【0040】
例えば、上述した出願に開示されているとおり、本明細書に開示した独特なナノ構造表面は、クランプ、バルブ、体内または体外装置(例えば、カテーテル)、一時または永久インプラント、ステント、血管移植、吻合装置、動脈瘤治療装置、塞栓性装置、埋め込み型装置(整形外科用インプラント)等などの様々な医療装置で、またはその内部で使用することができる。このように、表面積が増大すると、例えば、生物付着を防止/減少、疎水性による流体フローの増大、接着力の増大、バイオインテグレーションの増大等をはじめとして、医療装置に多くの増強した属性を与える。かかるナノ構造コーティングは、インフォメーションセンター、ゲーム/エンターテインメント/メディアコンソール、売り場専用端末、工業および医療器具、ATM機、小売店、パーソナルコンピュータモニタースクリーン、自動車用ディスプレイ等のタッチスクリーン用表面コーティングとして用いることができる。本明細書に開示されたナノ構造フィルムを用いると、細胞付着、分化および増殖用表面を与えたり、細胞成長を促進する基質として、またはDNAまたはタンパク質マイクロアレイのための基質として、例えば、核酸、タンパク質等をハイブリダイズすることができる。本明細書に開示されたナノ構造フィルムには、骨芽細胞、ニューロン、グリア、表皮、線維芽細胞等をはじめとする生体組織移植用途がある。かかるナノ構造コーティングは、表面で成長し、かつ/または蒸着して、用いる装置に増大した接着力、疎水性、親水性、導電性(例えば、電気接触用途について)というさらなる属性を与えるナノファイバーまたはナノワイヤなどの他のナノ構造成分と特定の用途において組み合わせることもできる。
【実施例】
【0041】
実施例1
以下の限定されない実施例は、質量分析を行うために、活性ケイ素層がコートされたアルミナナノ構造の下にある薄膜を用いる実行可能性を示すものである。これらの実施例に用いるナノ構造表面はアルミナに基づいている。アルミナ50nmを40mm平方の磨いたステンレス鋼板にスパッタリングした。板を沸騰水に3分間露出して、アルミナを高構造化表面に変換する。
【0042】
ケイ素を70分間蒸着したCVD炉に入れる前に、板を酸素プラズマで10分間清浄にした。ナノ構造アルミナのない2枚の鋼板もまた、炉へ対照として入れ、一方はコーティングのないもの(図5A)、他方はケイ素膜層が蒸着しているが、下にアルミナナノ構造表面のないもの(図5B)であった。板を炉から取り出したら、トリクロロペルフルオロオクチルシラン(ペンシルバニア州、モリスヴィルのゲレスト(Gelest,Morrissville,PA))蒸気に4時間露出して、平らな鋼板と共に疎水性を与えた。板に50%アセトニトリル水混合物中0.5ulのプラゾシンを落とし、乾燥させて、分析のためにABIボイジャー(Voyager)DE−プロ質量分析器(カリフォルニア州、フォスターシティのアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems,Foster City,CA)より市販)に挿入した。
【0043】
図5Aに、ナノ構造薄膜層またはケイ素膜層のないステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。図5Bに、ケイ素層を備え、下にあるナノ構造薄膜層のないステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。図5Cに、本発明の教示によるナノ構造薄膜層とケイ素活性層を備えたステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。図に示すとおり、鋼またはケイ素処理表面には信号が検出できないが、下にアルミナナノ構造表面のある表面ではでき、プラゾシンピークは100倍を超える改善を示すオフスケールである。
【0044】
図6A〜Dに、ケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25ピコグラムの4つの製薬化合物(すなわち、それぞれ、クロニジン、ハロペリドール、プラゾシンおよびキニジン)の質量分析の例をさらに示す。図7A〜Dに、ケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した2.5ピコグラムのこれらの同じ4つの化合物の質量分析の例を示す。分かるとおり、質量スペクトルは、それぞれ、25pgおよび2.5pgで落とした4つの分子全ての信号検出を示している。
【0045】
実施例2
以下の限定されない実施例は、質量分析を行うために、活性タングステン層がコートされたアルミニウムナノ構造の下にある薄膜を用いる実行可能性を示すものである。これらの実験に用いるナノ構造表面はアルミニウムに基づいている。アルミニウム100nmを40mm平方の磨いたステンレス鋼板にスパッタリングした。板を沸騰水に5分間露出して、アルミニウムを高構造化表面に変換する。
【0046】
タングステンを50nmの深さまで蒸着した、高真空スパッタリングシステム(カリフォルニア州、サンホセのUHVスパッタリング社(UHV Sputtering Inc.,San Jose,CA))に配置する前に、板を酸素プラズマで10分間清浄にした。板を再びプラズマ清浄し、トリクロロ−ペルフルオロオクチルシラン(ペンシルバニア州、モリスヴィルのゲレスト(Gelest,Morrisville,PA)蒸気に3時間露出して、疎水性とした。板をメタノールで完全に洗って、100℃で20分間焼成した。板に50%アセトニトリル水混合物中25pgのプラゾシン、ハロペリドール、キニジンおよびクロニジンを落とし、乾燥させて、分析のためにABIボイジャー(Voyager)DE−プロ質量分析器(カリフォルニア州、フォスターシティのアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems,Foster City,CA)より市販)に挿入した。
【0047】
図10A〜Dに、タングステンコートナノ構造アルミニウム表面に蒸着した25ピコグラムの4つの製薬化合物(すなわち、それぞれ、クロニジン、ハロペリドール、プラゾシンおよびキニジン)の質量分析の結果を示す。分かるとおり、質量スペクトルは、25pgで落とした4つの分子全ての信号検出を示している。
【0048】
上述したことは、本発明の好ましい実施形態に関するものであるが、本発明のその他のさらなる実施形態が、特許請求の範囲により決まる基本的範囲から逸脱することなく考案され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】例示のレーザー脱離/イオン化質量分析セットアップの構成を示す。
【図2】図2Aは本発明の教示による質量分析基材の断面図である。図2Bはシリル化により官能化されて誘導された図2Aの基材の図である。
【図3】ステンレス鋼基材のナノ構造アルミナ膜のSEM拡大画像を示す。
【図4】図4Aは活性ケイ素層が蒸着したナノ構造アルミナ表面を有する基材の電子顕微鏡写真を示す。図4Bは図4Aの基材表面の断面電子顕微鏡写真の図である。
【図5】図5Aはナノ構造薄膜層のないステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。図5Bはケイ素層を備え、下にあるナノ構造薄膜層のないステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。図5Cは本発明の教示によるナノ構造薄膜層とケイ素活性層を備えたステンレス鋼基材の試料の質量分析の結果を示す。
【図6】図6Aはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのクロニジンの質量分析の結果を示す。図6Bはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。図6Cはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのプラゾシンの質量分析の結果を示す。図6Dはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのキニジンの質量分析の結果を示す。
【図7】図7Aはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した2.5pgのクロニジンの質量分析の結果を示す。図7Bはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した2.5pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。図7Cはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した2.5pgのプラゾシンの質量分析の結果を示す。図7Dはケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した2.5pgのキニジンの質量分析の結果を示す。
【図8】図8Aはケイ素コートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのクロニジンの質量分析の結果を示す。図8Bはケイ素コートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。図8Cはケイ素コートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのプラゾシンの質量分析の結果を示す。図8Dはケイ素コートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのキニジンの質量分析の結果を示す。
【図9】図9Aは約30分の蒸着時間でCVDにより蒸着したケイ素活性層を有するケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。図9Bは約10分の蒸着時間でCVDにより蒸着したケイ素活性層を有するケイ素コートナノ構造アルミナ表面に蒸着した25pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。
【図10】図10Aはタングステンコートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのプラゾシンの質量分析の結果を示す。図10Bはタングステンコートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのハロペリドールの質量分析の結果を示す。図10Cはタングステンコートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのキニジンの質量分析の結果を示す。図10Dはタングステンコートナノ構造アルミニウム基材表面に蒸着した25pgのクロニジンの質量分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と、ナノ構造コーティングの第1の層と、活性コーティングの第2の層とを含む装置。
【請求項2】
前記支持基材が半導体ウエハ、ガラスまたは水晶のシート、金属のシート、一片のセラミックまたはプラスチックである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ナノ構造コーティングの第1の層が、少なくとも1つの寸法が約0.2μm未満の細長いまたは板状粒を含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記板状粒の長軸が前記支持基材の表面に実質的に垂直に配向されている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ナノ構造コーティングの第1の層が絶縁無機材料を含む請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記絶縁無機材料が自然酸化物層から形成されている請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記絶縁無機材料が蒸着金属層から形成されている請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記絶縁無機材料が蒸着酸化物または窒化物層から形成されている請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記絶縁無機材料がアルミニウム、Al、ZnO、SiO、ZrO、HfO、これらの酸化物の水和形態、SiTiO、BaTiO、PbZrOなどの化合物酸化物またはシリケートである請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記活性コーティング層が光を吸収する半導体を含む請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記半導体が、Si、Ge、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンコーティングを含むIV族半導体、II−VまたはII−VI族の化合物半導体、または硫化物、セレン化物、テルル化物、窒化物、炭化物、窒化物、アンチモン化物およびリン化物を含む半導体を含む群より選択される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記半導体がアモルファスまたは多結晶である請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記半導体がIR、赤色、緑色、青色および/またはUVレーザー光エネルギーを吸収する請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記活性コーティング層が、触媒活性であると共に光の吸収を阻害する金属を含む請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記金属がFe、Co、Ni、Mo、W、V、Cu、Znを含む遷移金属およびAg、Au、Pt、Pd、Ru、Rhを含む精密金属、またはそれらの金属合金を含む群より選択される請求項14に記載の装置。
【請求項16】
第1の表面と、前記第1の表面の少なくとも1つの領域に蒸着された、ナノ構造表面を有する第1の材料の非ケイ素膜層とを有する支持基材と;前記第1の膜層に蒸着した第2の材料の活性層と;前記第2の材料の活性層の表面に取り付けられた機能性有機層と;前記機能性有機層を介して前記活性層の領域と関連した少なくとも第1の分析物とを含み、前記分析物のレーザー脱離中のレーザー照射時に、前記活性層が前記少なくとも第1の分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する質量分析装置。
【請求項17】
前記非ケイ素膜層がアルミナまたはアルミニウムから形成されている請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記活性層がケイ素またはタングステンを含む請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ケイ素が前記下にあるアルミナまたはアルミニウム層へと拡散している請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ケイ素活性層が化学蒸着プロセスにより前記薄膜層に蒸着されている請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記機能性有機層が炭化水素分子、フルオロカーボン分子または両種の分子の短鎖ポリマーを含む請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記炭化水素またはフルオロカーボンがシラン化学反応を介して前記活性層に取り付けられている請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記基材がステンレス鋼、プラスチック、ポリマー、セラミック、金属、合金またはこれらの混合物から選択される材料を含む請求項16に記載の装置。
【請求項24】
前記非ケイ素層が約10nm〜1000nmの厚さを有している請求項16に記載の装置。
【請求項25】
前記非ケイ素層の厚さが約100nm〜200nmである請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記活性層の厚さが約5〜200nmである請求項16に記載の装置。
【請求項27】
前記活性層の厚さが約10〜50nmである請求項24に記載の装置。
【請求項28】
第1の表面と、前記第1の表面の少なくとも1つの領域の、ナノ構造表面を有する非ケイ素材料の第1の膜層とを有する基材と、
前記第1の膜層に蒸着した第2の材料の活性層と、
前記活性層の少なくとも第1の領域と関連した少なくとも第1の分析物と、
前記少なくとも第1の領域でエネルギーを導いて、前記第1の分析物を前記第1の領域から脱離するべく配置されたレーザーと、
前記活性層から脱離された前記少なくとも第1の分析物を受けるべく配置された質量分析器とを含み、レーザー脱離中に、前記活性層が分析物へのエネルギーの取込みおよび移動を支援する質量分析システム。
【請求項29】
第1の表面を有する支持基材を提供する工程と、
前記第1の表面に非ケイ素膜層を蒸着する工程と、
前記非ケイ素膜層からナノ構造表面を形成する工程と、
前記ナノ構造表面に活性層を蒸着する工程と、
前記活性層の1つ以上の領域に1つ以上の分析物を蒸着する工程と
を含む1つ以上の分析物の分析に有用な装置を製造する方法。
【請求項30】
前記第1の表面に非ケイ素層を蒸着する工程が、物理蒸着、レーザーアブレーション、低温CVD、高温CVD、プラズマCVD、スプレーコーティング、ディップコーティングまたはスピンコーティングを用いて前記基材の前記第1の表面に前記非ケイ素膜層を蒸着する工程を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記非ケイ素膜がアルミナまたはアルミニウムを含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記活性層がケイ素またはタングステンを含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ構造表面を形成する工程が、(a)アルミナまたはアルミニウム膜を水または水蒸気に約90〜100℃の温度で約5〜30分間露出する工程か、または(b)前記アルミナまたはアルミニウム膜層を加圧滅菌する工程のいずれかを含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記活性層の前記表面を1つ以上の官能基で官能化する工程をさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の官能基が、炭化水素分子、フルオロカーボン分子または両種の分子の短鎖ポリマーを含む機能性有機層を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1の表面を有する支持基材と、前記第1の表面に蒸着したナノ構造表面を有する非ケイ素薄膜と、前記薄膜層に蒸着した活性層と、前記活性層の1つ以上の領域と関連した1つ以上の分析物とを提供する工程と、
前記1つ以上の分析物を、前記表面に向けられたレーザーからのエネルギーにより、前記1つ以上の領域から脱離する工程と、
前記1つ以上の分析物を質量分析器で分析する工程と
を含む質量分析を実施する方法。
【請求項37】
表面を有する支持基材と、前記表面の少なくとも1つの領域に蒸着された、ナノ構造表面を有する非ケイ素薄膜層と、前記膜層に蒸着された疎水性コーティングとを含む表面積および/または疎水性表面用途を増大させる装置。
【請求項38】
前記非ケイ素膜層がアルミナまたはアルミニウムを含む請求項37に記載の装置。
【請求項39】
アルミナまたはアルミニウムナノ構造表面が、前記アルミナまたはアルミニウム膜を水または水蒸気に約90〜100℃の温度で約5〜30分間露出することにより形成される請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記疎水性コーティングがダイヤモンドライクカーボンコーティングを含む請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記ダイヤモンドライクカーボンコーティングがアモルファスダイヤモンドライクカーボンコーティングを含む請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記ダイヤモンドライクカーボンコーティングがグラファイトターゲットにパルスレーザーアブレーションを用いることにより下にあるアルミナまたはアルミニウム膜層の前記ナノ構造表面に適用される請求項40に記載の装置。
【請求項43】
前記装置がクランプ、バルブ、体内または体外装置、一時または永久インプラント、ステント、血管移植、吻合装置、動脈瘤治療装置、塞栓性装置および埋め込み型装置を含む群より選択される医療装置である請求項37に記載の装置。
【請求項44】
前記装置がインフォメーションセンター、エンターテインメントまたはメディアコンソール、売り場専用端末、ATM機、小売店、パーソナルコンピュータモニタースクリーンまたは自動車用ディスプレイで用いられるタッチスクリーンである請求項37に記載の装置。
【請求項45】
支持基材と、前記支持基材の少なくとも一部に蒸着された複数の半導体ナノ結晶とを含む小分子のマトリックスフリー分析用の質量分析装置。
【請求項46】
患者の体の部位を、ナノ構造表面と前記表面に関連した疎水性または親水性コーティングとを含む医療装置と接触させる工程を含む患者の治療方法。
【請求項47】
前記疎水性コーティングがダイヤモンドライクカーボンコーティングを含む請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ構造表面がアルミナまたはアルミニウムナノ構造表面を含む請求項46に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2008−513781(P2008−513781A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532463(P2007−532463)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/032962
【国際公開番号】WO2006/118595
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】