説明

ナノ構造防食コーティング、それを含む構造、および基板の防食方法

本発明は、少なくとも一つの防食剤(4)が塗付された高分子電解質の多層構造体(1)および、ドーパントの拡散に対してバリアとして機能しその上側の表面が主要コンパートメントの上側の表面と接する多層構造体(2a)を含む主要コンパートメント;選択的に、それぞれが防食剤とは異なる一つ以上の機能性添加剤が塗付された高分子電解質の多層構造体(8,11)および、ドーパントの拡散に対してバリアとして機能しその上側の表面が補助的コンパートメントの上側の表面と接する上方多層構造体(2b;2c)を、それぞれが含む一つ以上の補助的コンパートメントを含む、高分子電解質を含むナノ構造防食コーティングに関する。本発明はまた、金属製基板および上記のようなコーティングを含む構造、それらの航空学および航空宇宙工学の分野での利用、および、それらを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空学的および航空宇宙工学的アプリケーションに使用されるための、ナノ構造防食コーティング、およびそれを有する構造、および金属および非金属の基板の防食のための工程に関する。
【背景技術】
【0002】
航空工学分野においては、腐食からの保護は、一般的に、例えば陰イオン槽での酸化によるクロム(VI)ベースのコーティングを堆積する方法により得られる。
【0003】
しかしながらいくつかの研究が、クロム(VI)の有害性、特に、その毒性、発がん性、環境に対する有害性を示している。
【0004】
航空工学産業においては、六価クロム塩の代替として、生成された層が同様の特性および性能が維持されるような生成物を得ることは主要な課題であった。
【0005】
従って、少なくとも現行のシステムと同程度であり、毒性のない、別の防食のためのシステムを見つける必要があった。
【0006】
置き換えによる解決策がいくつか存在しており、そのなかには「一層ずつ」堆積する技術がある。
【0007】
特許文献1は、この高分子電解質による解決方法から得られる保護コーティングを記載している。この層は、陰イオン高分子電解質および陽イオン高分子電解質を交互に使用するか、または、陰イオン高分子電解質および陽イオン高分子電解質を含む解決手段を利用して堆積される。
【0008】
このコーティングは、添加剤、特に、耐摩耗性を改善する添加剤を含んでも良い。
【0009】
しかしながら、同時吸着された無機補強剤は、機械的な補強剤として働くのみで、積極的に防食の役目を果たすことはない。
【0010】
特許文献2は、金属製基板および、「一層ずつ」堆積する技術を利用して有機材および無機材が交互になった防食コーティングを有する物品を開示している。このコーティングは、腐食抑制剤または、防食剤を含んでいる。
【0011】
しかしながら、事後的に防食剤を層に組み込むことは、多くの時間を必要とするうえ、多区画かつ多機能の膜を容易に製造しようと考えることを不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/014234号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0027011号明細書
【発明の概要】
【0013】
出願人は、少なくとも一つの防食剤が塗布された高分子電解質の多層構造体を特定の一つの多層のバリアと組み合わせて利用することが、基板、好ましくは金属製の基板の耐食性を改善することを可能にすることを発見した。この少なくとも一つの防食剤が塗付され、多層バリアに包まれた多層構造体は、主要コンパートメントを構成する。
【0014】
これらの高分子電解質の多層構造体は、例えば、ディップコーティング、回転している基板上への堆積(または、スピンコーティング)、散布、噴霧、層状コーティング、およびブラシコーティングなどの「一層ずつ」に堆積する技術によって堆積され、これらの方法によって、一般的に1から100nm、ある特定の堆積条件下では、数マイクロメーターを上限とする厚さを有する、均一で、対象を覆う、瑕疵のない膜を得ることが可能となる。この技術では、堆積される層の厚さを精密に制御することができる。
【0015】
さらに、このような膜を得るために利用される化合物は、毒性が低く、利用も容易である。これらの化合物は環境に関する規制に即しており、特に、多くの場合、水性溶媒と用いられるという付加的な利点を有する。
【0016】
さらには、そのような主要コンパートメントを有するコーティングは、防食剤とは異なる少なくとも一つの機能性添加剤または、その代替として少なくとも一つの別の、「補助的コンパートメント」として知られる部分を有していて、補助的コンパートメントにおいては防食剤は別の機能性添加剤と置き換えられている。このことは、一つだけ、または数個の部分にコーティングをすることができ、このコーティングは、金属製基板に対して高い粘着性を示すと同時に、多官能性であり、つまりは、機械的強度、耐ひっかき性、摩擦抵抗性、色彩、疎水性、生体適合性および/または殺菌性等の防食性以外の特性を持つことができる。
【0017】
このように、これらのコーティングは、いくつかの異なった機能が同時に存在することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に従ったナノ構造防食コーティングの実施の一例を示している。
【図2】図2は本発明に従ったナノ構造防食コーティングが金属基板に堆積された一例を示している。
【図3】図3は本発明に従った構造の実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的において、「機能性添加剤」という言葉は、耐食性、機械的強度、耐ひっかき性、摩擦抵抗性、着色、疎水性、生体適合性および/または殺菌性等の特性を与える物質を意味している。
【0020】
このように、本発明の主題は、高分子電解質ベースのナノ構造防食コーティングであり、このコーティングは、下記を含む主要部を少なくとも一つ含む:
− 少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質多層構造体、および
− ドーパントの拡散に対してバリアとして機能し、その上側の表面が主要コンパートメントの上側の表面と接する上方の多層構造体。
【0021】
用語「ナノ構造コーティング」は、その構造がnm尺度で制御されているコーティングを意味している。この構造は、特に、X線反射率測定および小角度X線散乱、透過顕微鏡法(すなわちTEM)または原子間力顕微鏡法(すなわちAFM)によって確認される。
【0022】
本発明の目的において、「ドーパント」は、ドーパントが塗付された多層構造体を形成する高分子電解質に対して少量の化学種を意味する。ドーパントは、特に、ドーパントが塗付された多層構造体に特定の特性を与えることができる。主要コンパートメントのドーパントは、防食剤であり、そして下記に示す通り、他の選択肢として、防食剤以外の機能性添加剤がある。補助的コンパートメントでは、ドーパントは、下記に示すとおり防食剤以外の機能性添加剤である。
【0023】
好ましくは、少なくとも一つの防食剤は、金属酸化物または金属塩のナノパーティクル、さらに好ましくは、例えば、TEMでの測定値が1〜50nm、より好ましくは2〜10nmのサイズを持つ金属酸化物のナノパーティクルの形状をしている。
【0024】
特に記載されるべきナノパーティクルの例は、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化コバルト、リン酸塩酸化合物、酸化鉛、酸化モリブデンもしくは酸化バナジウムのナノパーティクル、もしくはCe、Nd、Pr、LaもしくはSmのような希土類金属のナノパーティクル、またはこれらの混合物を含む。
【0025】
例えば、セバシン酸ナトリウム、フタル酸カリウム、ハイドロキシアパタイト、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ハイドロキシキノリン、メチルフェノテアジン、例えば、ベンゾトリアゾールまたはトリアゾール、またはテトラクロロ−p−ベンゾキノン(またはクロラニル)のようなアゾール類のような有機剤のような、他の防食剤は、単純な共吸着によって添加される。
【0026】
少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質の多層構造体は、陰イオン高分子電解質、または陽イオン高分子電解質を有するか、または、陰イオン高分子電解質と陽イオン高分子電解質が交互になっている構造を有している。
【0027】
例えば、少なくとも一つの防食剤を塗布されたこの高分子電解質多層構造体は、陰イオン(または陽イオン)高分子電解質の堆積と、陰性(または陽性)に帯電している金属酸化物ナノパーティクル防食剤の堆積が連続してなされることで製造される。
【0028】
別の例としては、防食剤を陰イオンまたは陽イオン高分子電解質と同時に堆積するというものがある。
【0029】
腐食抑制剤として機能するナノパーティクルと同時に、陰イオン高分子電解質と陽イオン高分子電解質を交互に堆積させることは、中性、陰性、または陽性ナノパーティクルを分散させることができるという利点を有する。そのような実施には、架橋剤が存在する環境で、陰イオン高分子電解質および陰イオン高分子電解質を架橋させることができるという利点をも有する。特に、このように架橋した層は、捕捉されたナノパーティクルの流動を制限するということを可能する。
【0030】
好ましくは、少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質多層構造体は、陽イオン高分子電解質を含む。
【0031】
本発明の実施形態の一つでは、主要コンパートメントが、ドープされた種の拡散に対するバリアとして機能する下層を有し、その下層の下側の表面は、主要コンパートメントの下側の表面と一致している。
【0032】
主要コンパートメントはまた、防食剤以外に少なくとも一つの機能性添加剤を有している。この、またはこれらの機能性添加剤は、防食剤として、同じ多層構造体に含まれてもよく、高分子電解質の1以上の他の多層構造体に含まれてもよく、または、上記二つの状態が同じコーティングの中に存在しても良い。
【0033】
本発明に従って、コーティング内で使用されている防食剤以外の機能性添加剤は、防食とは異なった特性、例えば、耐ひっかき性および摩擦抵抗性、機械的強度、疎水性、色彩、または殺菌効果を、主要コンパートメントに与える。
【0034】
耐ひっかき性および摩擦抵抗性、および/または機械的強度を層に与える機能性添加剤の例としては、チタニウムもしくはアルミニウムのアルコキシド、シリカもしくはアルミナのナノパーティクル、チタニウムもしくはジルコニウムの酸化物、剥離クレーのプレートレットもしくはリーフレット、カーボンナノチューブまたは無機もしくはセラミックのナノパーティクルが挙げられる。
【0035】
疎水性を与える機能性添加剤の例には、特に、酸化ジルコニウム、およびフッ化ポリマーまたはコポリマーがある。
【0036】
色彩を与える機能性添加剤の例としては、特に、ナイルブルー、クマリン類、フルオレセイン類、フタロシアニン類またはピレン類のような、顔料または有機もしくは無機の色素が挙げられる。
【0037】
特に挙げられる殺菌剤の例は、抗菌ペプチドおよび、例えば銀塩などの、金属塩を含む。
【0038】
本発明に従った防食コーティングは、一つまたは二つ以上の補助的コンパートメントを有含んでもよく、各々下記のものを含む:
− 上記されたもののような、防食剤以外の少なくとも1種類の機能性添加剤でドープされた高分子電解質多層構造体、および
− ドーパントの拡散に対するバリアとして機能し、その上側の表面が補助的コンパートメントの上側の表面と一致する、上側の多層構造体。
【0039】
上記記載のドーパントの拡散に対してバリアとして機能する多層構造体は、好ましくは、架橋している陰イオン高分子電解質および架橋している陽イオン高分子電解質を含む。好ましい方法は、ポリ酸およびポリアミンを使用し、ポリ酸およびポリアミンを架橋させ、アミド結合を形成する。
【0040】
これらのバリアとして機能する多層構造体は、ほぼ完全に、または完全に主要コンパートメントと補助的コンパートメントの間、および補助的コンパートメント間でドーパントの拡散を制限することを可能にする。
【0041】
高分子電解質多層構造物を架橋させるには、様々な方法があり、例として、熱処理で、または一つ以上の架橋剤が存在する中で架橋させることが挙げられる。架橋は、アクリル酸重合体およびポリアリルアミンの場合の1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびN−ハイドロキシスクシンイミドのようなアミド化剤というように、高分子電解質の化学的性質に基づいて選択された架橋剤が存在する中で行われてもよい。架橋剤の他の例としては、アセトニトリルまたはN,N−ジメチルホルムミドのようなエーテル化剤、または2−ピリドンまたは2−オキサゾリンのようなイミド化剤が挙げられる。
【0042】
バリア多層構造体は、一つ以上の架橋剤が存在するなかで、陰イオン高分子電解質と陽イオン高分子電解質を交互に堆積させることで作られる。
【0043】
本発明のコーティングで使用される陽イオン高分子電解質の例としては、例えばポリアリルアミン塩酸塩、ポリエチレンイミン、またはキトサンのようなアミン基を含むポリマー;例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物およびポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩化物のような第四級アンモニウム基を含むポリマー;例えば、ポリN−メチルビニルピリジンのようなピリジンまたはピリジニウム基を含むポリマーが挙げられる。
【0044】
本発明のコーティングで使用される陰イオン高分子電解質の例としては、例えば、アクリル酸重合体またはポリメタクリル酸のようなポリ酸;例えば、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、スルホン化ポリーテルエーテルケトンのようなスルホン酸基を含むポリマー;特にポリビニルスルスルホネートのような硫酸基を含むポリマー;リン酸塩またはリン酸基を含むポリマー;そして陰イオン多糖類が挙げられる。
【0045】
防食コーティングは、後続表面処理層の粘着性を高める層を含んでいても良い。この層は例えば、上記に記載した高分子電解質をベースにしているものが好ましい。
【0046】
本発明の目的において、用語「後続表面処理」は、一般的にエポキシベースである、帯電した有機マトリクスから形成される塗料の主要層である。この塗料の主要層は、一般的に、エポキシまたはポリウレタンをベースとしている仕上げの塗装で保護されている。この最終コーティングは、特に、環境的な攻撃、極端な天候条件、紫外線、そして様々な汚染、および装飾に対して物理的なバリアを提供する。
【0047】
さらに、後続表面処理層の下にある多層コーティングの存在は、包括的な耐食特性を強化することを可能にする。
【0048】
上記に記載したコーティングは、航空学および航空宇宙工学の分野において、基板の耐食性、耐引っかき性、摩擦抵抗性、機械的強度、疎水性および/または色彩を改善するために利用されることが好ましい。
【0049】
本発明のもう一つの主題は、下記を含む構造である:
− 基板、および
− 上記に定義された高分子電解質をベースとするナノ構造防食コーティング。
【0050】
基板は金属でも非金属でもよい。
【0051】
本発明で使用されてもよい金属製の基板は、好ましくは、アルミニウムもしくはその合金、例えば、2000番台のアルミニウム、より詳細には、めっきされている、もしくはめっきされていないアルミニウム2024、7000番台のアルミニウム、およびさらに詳細にはAl 7075または7175、および6000もしくは5000番台のアルミニウムから製造される、またはチタニウムもしくはマグネシウムから製造される。
【0052】
非金属の基板、特に、複合基板の例としては、熱硬化性プラスチック、または熱可塑性物質のような、カーボンファイバーで強化されたプラスチック(すなわち、「カーボンファイバー強化プラスチック」(CFRP))が挙げられる。
【0053】
いくつかの材料で構成される航空学的構造においては、本発明に記載されるコーティングは、上記に記載されたすべての基板と適合性がある。例えば、前記コーティングはこれらの基板に対して、これら基板の強度および主要塗料インターフェースに強度を与える。
【0054】
前記構造はまた、高分子電解質をベースとしている基板に粘着するための層を、基板と防食コーティングの間に有している。基板への粘着は、静電相互作用だけでなく、例えば、有機金属複合体が基板と結合するような、化学作用によっても起こる。この基板に粘着する層は、例えば、上記に記載された陰イオンまたは陽イオン高分子電解質から選択されたもの、より好ましくは、アクリル酸重合体を含む。
【0055】
本発明のまた別の主題は、金属または非金属の基板を耐食性、耐引っかき性、摩擦抵抗性、機械的強度、疎水性および/または色彩を、航空学的または航空宇宙学的分野において、改善するために、前記コーティングを本発明に従って利用することである。
【0056】
上記に記載された構造を製造する方法も本発明の主題である。この製造方法は、上記記載の主要コンパートメントを製造する下記の工程を含む:
(a)少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質構造体が一層ずつ堆積される方法を用いて基板に堆積される工程、および
(b)ドーパントの拡散に対してバリアとして機能する上方の多層構造体が、一層ずつ堆積される方法を用いて堆積される工程。
【0057】
本発明に従った製造方法は、工程(a)の前に、別の工程を1つ含み、その工程では基板に粘着する層が堆積される。
【0058】
この方法では、例えば同時吸着により、防食剤以外に少なくとも一つの機能性添加剤を、少なくとも一つの防食剤を塗布された電解質多層構造体に塗付することができる。
【0059】
本発明に従った製造方法は、補助的コンパートメントを製造する工程を含んでもよく、この工程では、
(c)防食剤以外の、少なくとも一つの機能性添加剤を塗布された多層構造体は、製造されたバリア多層構造体の上に、例えば、工程(b)または(d)において、一層ずつ堆積する技術で堆積される工程、および
(d)一層ずつ堆積する技術で、ドーパントの拡散に対してバリアとして機能する上方の多層構造体が堆積される工程、を含み、
これら二つの(c)および(d)の工程は、複数回ずつ繰り返される、すなわち、層に与えられるべき機能の数だけ繰り返されるのである。
【0060】
本発明に従った製造方法は、後続表面処理層の吸着力を増すための層が堆積される工程含む。
【0061】
上記に定義される構造を製造する製造方法において、下記の行程を含む方法によって各多層構造体は堆積される:
(i) 以下のものを準備する工程:
− エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒を一つ以上含む第一の水溶液または溶液、好ましくは水溶液であって、高分子電解質を含む第1の溶液、および
− エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒を一つ以上含む第2の水溶液または溶液、好ましくは水溶液であって、少なくとも一つの、第1の溶媒の高分子電解質とは反対の極性のドーパント、第1の溶液の高分子電解質と反対の極性の高分子電解質、または、それらの混合物を含む第2の溶液、
(ii) 行程(i)で製造された第1の溶媒の層をカバーされるべき表面の上に吸着させる工程、
(iii) 第1の溶液の余分を除くために、第1の溶液で使用された溶媒中で表面を洗浄する工程、
(iv) 特に、熱処理によって、フィルター処理された圧縮空気または圧縮窒素のような中性ガスのストリームを用いて、またはそれら二つの技術を組み合わせて層を乾燥させる工程、
(v) 工程(i)で製造された第2の溶液を堆積させる工程、
(vi) 第2の溶液の余分を除くため、第2の溶液で使用された溶媒中で洗浄する工程、
(vii) 特に、熱処理によって、フィルター処理された圧縮空気または圧縮窒素のような中性ガスを用いて、またはそれら二つの技術を組み合わせて層を乾燥させる工程、
(viii) 行程(ii)から(iv)を繰り返す工程、ならびに
(ix) 選択的に、所望の厚さを得られるまで行程(ii)から(iv)を繰り返す工程。
【0062】
好ましくは、行程(ii)から(vii)(行程(viii))を1から20回繰り返し、より良くは、1から10回、さらにより良くは5から10回繰り返す。この繰り返しおよび、最後の選択的な行程(ii)から(iv)(行程(ix))により、2から100nm、好ましくは2から50nmの厚さの多層構造体を得ることが可能である。
【0063】
上記行程(ii)、(iii)、(v)、および(vi)は、特に、ディッピング除去、噴霧、散布、または回転する基板上に堆積させることによって行われる。
【0064】
モノマーと表記された行程(i)で製造された溶液中の高分子電解質の濃度は、好ましくは10−3から5×10−2mol/l(またはM)の範囲内である。
【0065】
行程(i)で製造された第2の溶液に選択的に存在するドーパントの濃度は、好ましくは、10から50g/lそしてより好ましくは、30から40g/lの範囲内である。
【0066】
好ましくは、基板に粘着する層および後続表面処理層の粘着性を促進する層は、上記行程(i)から(iv)に従って堆積される。それらの層は、好ましくは1から20nm、より好ましくは、1から10nmの範囲の厚さである。
【0067】
他の目的、特性、および利点は下記のとおりである。下記の記載は、単に限定のない例であり、添付の図面に則している。
【0068】
高分子分電解質ベースのナノ構造の防食コーティングは、主要コンパートメントとされている最初の単位の繰り返しによって形成されても良い。図1に示されているように、主要コンパートメントは防食剤をコーティングされた多層構造体1および防食剤の拡散に対するバリアとしての多層構造体2を含んでいる。
【0069】
防食剤を塗布された多層構造体1は、好ましくは、1から50nm、より好ましくは2から10nmの範囲のサイズのナノパーティクルの形状の防食剤4を蓄えた高分子電解質マトリクス3を有している。この場合の防食剤4は、ドーパントである。
【0070】
例えば、この少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質の多層構造体1は、ポリアリルアミン塩酸塩のような陽イオン高分子電解質および負に帯電している金属酸化物のナノパーティクルの形状の防食剤を連続して堆積させることによって製造されても良い。
【0071】
ドーパントの拡散に対するバリアとなる多層構造体2aは架橋した高分子電解質を含んでいる。
【0072】
ドーパントの拡散に対するバリアとなる多層構造体2aは、一般的に、陽イオン高分子電解質および陽イオン高分子電解質を架橋剤が存在するなかで交互に堆積されることで製造される。架橋剤により、反対する電荷の二つの高分子電解質の鎖間の共有結合により維持される架橋が作られる。この層は、浸透性が低下したコンパートメントの製造につながる。このような、多層構造体2aによって、他の機能を有する多層構造体に対しての耐食多層構造体のナノパーティクルの拡散を限定することができる。
【0073】
架橋剤は、すべての堆積の工程で、または、いくつかの堆積の行程のいずれかで、同時吸着される。拡散防止層は、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)、またはN−ハイドロキシ−スクシンイミド(NHS)のような架橋剤が存在する中で、例えば、アクリル酸重合体(PPA)とポリアリルアミン塩酸塩(PAH)を交互に堆積させることで製造されても良い。
【0074】
この、ナノ構造防食コーティングは、金属製の基板に堆積されても良い。この場合、良いインターフェースを促進することが望まれ、第1には、ナノ構造防食コーティングと基板間、第2には、ナノ構造防食コーティングとその後に続く処理層間に、良好なインターフェースを促進することが望まれる。これは図2に示されている。
【0075】
このためには、本発明に従って、基板5とナノ構造防食コーティング間に粘着層6が挿入される。
【0076】
上記粘着層6の上側の表面はナノ構造防食コーティングの堆積と互換性を有するという特性を持つ。上記粘着層6の下側の表面は、基板5の表面の原子との結合を形成する。上記結合は、一般的に静電タイプまたは錯体形成タイプである。基板5の化学的性質および粘着層6を形成するのに使用された高分子電解質の化学的性質によっては、有機金属錯体による、基板の表面のペンダント原子との結合が得られても良い。この場合、粘着層6と基板5間の相互作用はより良いものであある。層6は、例えば、アクリル酸重合体(PAA)のような陰イオン高分子電解質から形成される。
【0077】
基板、例えば金属製基板の保護は、一般的に、塗布行程のような、別の行程が後に続く。ナノ構造防食コーティングと後続の処理との適合性を確実にするために、後続処理層の粘着性を高めるための層7はナノ構造防食コーティングの上の表面に堆積される。
【0078】
後続する層の粘着性を高めるための層7の上側の表面は、後続処理層の堆積を促進する特性を持つように適応させても良い。従って、例えば、疎水性または親水性という特性、化学的親和性、極性、プロトン性、重合化または架橋を促進する特定の化学種、硬度または機械的強度などの特性を持っていても良い。層7は、適応性のあるポリマーを含んでも良く、すなわち、そのポリマーは、pH値、温度、イオン化の強さまたは明るさなどの環境からくるストレスに応じて所定の反応を示すポリマーであっても良い。このように得られた層7は、与えられた媒体に対して反応した形態学的特性を変えてもよく、または、そのドーパントを制御しながら放出しても良い。このような適合性のあるポリマーは、S.A.Sukhishvili,Curr.Opin.Coll.Interf.,Sci.,2005年,第10巻,p.37−44. Examplesに記載されていて、その例は、pH感受性のポリアミンおよびポリ酸;ポリイソプロピルアクリルアミド、例えば、カラギーナン、または、ポリジメチルグリコールメチルエーテルメタクリレート、またはポリメチルビニルエーテルのような多糖類を含む高分子電解質ブロックおよび熱感受性ブロックを含むコポリマーなどである。
【0079】
図3は、ナノ構造防食コーティングが主要コンパートメントに加えて二つの補助的な部分を有する別の実施形態を表す。最初の補助的コンパートメントは多層構造体8および2bを含み、第2の補助的コンパートメントは多層構造体11および2cを含む。
【0080】
この場合、粘着性を促進する層7は、最後のバリア層の上に堆積されるが、この場合は2c層の上に堆積される。
【0081】
各補助的コンパートメントは、少なくとも一つの官能化層を有している。この「官能化層」という言葉は、特筆すべき化学的、物理的、または生物学的特性を有する層を示している。それは純粋な例として、化学親和力、疎水性、硬度、機械的強度、生体適合性または殺菌性という特性である。
【0082】
図3では、機械的強度補強多層構造体8は、剥離クレーリーフレット9を含む高分子電解質マトリクス10を含む。このような多層構造体では、剥離クレーリーフレット9の機械的強度特性は、高分子電解質マトリクス10を通して、機械的強度補強層構造体8に与えられる。例えば、カーボンナノチューブまたはセラミックナノパーティクルのような機械的強度を与える他の機能性添加剤が使用されても良い。
【0083】
機械的に強度を増す多層構造体8は、例えば、PAHのような陽イオン高分子電解質と例えばモンモリロナイト、または、適切な機械的特性を有した帯電した剥離可能な無機化合物の堆積を交互に行うことによって作られても良い。
【0084】
図3の構造は、着色多層構造体11という別の機能を持つ多層構造体を含んでいる。高分子電解質マトリクス13のようなものは、ナノパーティクル状の有機または無機の顔料12を含んでいる。
【0085】
着色多層構造体11は、PAHのような陽イオン高分子電解質とPAAのような陰イオン高分子電解質を交互に堆積して作られても良い。着色顔料の性質によって高分子電解質と同時吸着されるか、または形成された多層構造体のなかに拡散される。着色顔料は、例えば、ナノパーティクルの形状をしており、ナイルブルーであるか、荷電したクマリン類、フルオレセイン類、フタロシアニン類、ピレン類、有機または無機のナノパーティクルが例としてあげられ、それらの色はそれらのサイズによる。
【0086】
複数のコンパートメントは、拡散に対するバリアとなる多層構造体2a,2b,および2cによって仕切られ、これらのバリア多層構造体はドーパントが一つの多層構造体から別の多層構造体に移動するのを防ぐ。この実施例の中に存在するドーパントとしては、防食剤、機械的強度を高める添加剤および顔料がある。
【0087】
多層構造体は、一層ずつ堆積する技術で製造される。一つの多層構造体は、少なくとも一つのマトリクスを含み、一つ以上の機能性添加剤を含んでも良い。
【0088】
本発明に従った構造を製造する工程は、それぞれ異なった官能化の役割を持つ複数の多層構造体を基板に堆積させることを含む。それぞれに多層構造体は、前記記載の工程(i)から(ix)を含む、一層ずつ堆積する堆積工程によって作られる。
【0089】
本発明に従った構造の製造方法は一続きの工程を含み、その一続きの工程では、前記記載の堆積工程が、製造される層の特性によって、異なった第1または第2の堆積溶液を用いて行われる。
【0090】
本発明の実施形態の一つは、図3に示されるように、前記記載の方法によって、多層構造は基板5の上に作られ、例えば、アルミニウムで作られる。
【0091】
粘着層6は基板5に対する良好な粘着性を確実にする高分子電解質(陰イオン性または陽イオン性)の層である。粘着性は、一方において静電相互作用によって促進され、また一方では、化学相互作用によって促進される。例えば、ポリアクリル酸(PAA)は、天然の酸化アルミニウムと鎖体を形成しても良い。層6は、前記工程(i)、(ii)、(iii)、および(iv)に従って、高分子電解質の溶液から堆積される。
【0092】
防食剤を塗布された多層構造体1は、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)のような陽イオン高分子電解質と防食剤4を連続して堆積することによって作られる。防食剤は、例えば、CeOのような、負に帯電している金属酸化物のナノパーティクルでも良い。防食剤を塗布された多層構造体1の堆積は、下記の工程を経て行われる:
(i’) 第1の高分子電解質の第1の溶液(I)、第1の高分子電解質と反対の極性に帯電した防食剤の第2の溶液(II)、または第1の高分子電解質と反対の極性を帯電した第2の高分子電解質と防食剤の混合物を含む第2の溶液(II’)が製造される工程、
(ii’) 工程(i’)で製造された溶液(I)の層が、例えば、覆われた基板をディッピングにより除去する方法で、粘着層6に吸着される工程、
(iii’) 表面が、過剰な溶液(I)を除去するため、溶液(I)で使用された溶媒中で洗浄される工程、
(iv’) 層を乾燥する工程、
(v’) 工程(i’)で製造された溶液(II)または(II’)が、例えば、ディッピングによる除去の方法で、堆積される工程、
(vi’) 過剰な溶液(II)または(II’)を除去するため、溶液(II)または(II’)で使用された溶媒中で洗浄が行われる工程、
(vii’) 乾燥が行われる工程、
(viii’) 工程(ii’)から(vii’)がn回繰り返される工程、および
(ix’)最後の層は溶液(I)を用いて、(ii’)、(iii’)、および(iv’)の工程を行うことにより堆積される工程。
【0093】
特定的に10nmから100nm、好ましくは、10nmから50nmの範囲の厚さで防食剤を塗布された高分子電解質層1が得られる。工程(ii’)から(vii’)がn回繰り返され、nは、5から20、好ましくは5から10、より好ましくは、10である。
【0094】
例えば、第1の溶液(I)は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)の陽イオン高分子電解質の水溶液で、第2の溶液は、負に帯電した金属酸化物ナノパーティクルの水溶液(II)、またはPAAのような陰イオン高分子電解質と結合したこれらの負に帯電した金属酸化物ナノパーティクルの水溶液(II’)でも良い。
【0095】
単純な同時吸着によって、他の水分散性防食剤が添加されても良い。
【0096】
架橋した高分子電解質を含む拡散バリア多層構造体2aは、多層構造体1の上に堆積される。多層構造体2aは、複数の官能性コンパートメント間で、ドーパントの拡散を制限するバリアとして働く。
【0097】
多層構造体2aの堆積は、下記の工程を経ることでなされる:
(i’) 例えばPAAのような陰イオン高分子電解質の高分子電解質の第1の溶液(III)および、第1の溶液とは反対の極性を帯電している、例えばPAHのような陽イオン高分子電解質の高分子電解質の第2の溶液(IV)が準備される。モノマーとして、表わされる高分子電解質の濃度は、好ましくは10−3から5×10−2mol/l(またはM)の範囲である。例えば、0.01Mのモノマーと等しくても良い。
(ii’) 工程(i’)で準備された溶液(III)の層が、例えば覆われた基板をディッピングすることにより除去する方法によって、多層構造体1の上に吸着される工程、
(iii’) 表面が、過剰な溶液(III)を除去するために、溶液(III)に使用された溶媒中で洗浄される工程、
(iv’) 層を乾燥する工程、
(v’) 工程(i’)で準備された溶液(IV)を堆積する工程、
(vi’) 過剰な溶液(IV)を除去するために、溶液(IV)で使用された溶媒中で洗浄を行う工程、
(vii’) 乾燥を行う工程
(viii’) 工程(ii’)から(vii’)をm回繰り返す工程、および
(ix’) 溶液(III)を用いて、工程(ii’)、(iii’)、(iv’)を行うことにより、最後の層を堆積する工程。
【0098】
好ましくは、2から50nm、より好ましくは、2から20nmの範囲の厚さの多層構造体2aが得られる。工程(ii’)から(vii’)をm回繰り返すが、mは、好ましくは1から20、より好ましくは1から10、さらに好ましくは1から5の範囲である。
【0099】
例えば、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)およびN−ハイドロキシ−スクシンイミド(NHS)という架橋剤が存在する中で層の堆積は行われる。これらの架橋剤(EDCおよびNHS)はすべての堆積工程で添加されても、または、それらの工程のうちあるときだけ添加されても良い。
【0100】
機械的強度を改善するための機械的強度補強多層構造体8は、陽イオン高分子電解質および、機械的強度強化9を与える作用物質(agent)とを連続して堆積することで作られる。例えばPAHのような陽イオン高分子電解質および機械的強度強化9を与える作用物質(agent)は、モンモリロナイトまたは別の無機化合物から作られるクレーリーフレット9でも良い。多層構造体8は、工程(i)で最初に陽イオン高分子電解質の水溶液を準備し、機械的強度を与える作用物質(agent)の水溶液を準備し、上記のように工程(ii)から(vii)を連続でp回繰り返し、そして工程(ix)を行う。ここでpと記されている工程(ii)から(vii)を繰り返す回数は、例えば、5から20、好ましくは、5から10の範囲であり、さらに好ましくは、pは10である。
【0101】
様々な機能のコンパートメント間でドーパントの拡散を防ぐバリアとして働く、多層構造体2bは、多層構造体2aの堆積方法と同様の方法で堆積される。
【0102】
図3にある、着色多層構造体11は、PAAのような陰イオン高分子電解質およびPAHのような陽イオン高分子電解質を、顔料12が存在している中で、連続して堆積することによって製造される。顔料12は、有機物で、例えば、ナノパーティクルの形状をしていても良い。顔料12は、同時吸着によって堆積される。そのような着色多層構造体11を堆積するには、PAHおよびPAAが、例えば、ナイルブルー、荷電したクマリン類、フルオレセイン類、または上記記載の他の化合物と一緒に使用されても良い。着色顔料の性質によっては、高分子電解質と同時吸着されても良く、または、形成された多層構造体中に拡散によって導入されても良い。
【0103】
上記のように、堆積は工程(i)から行われ、すなわち、PAAおよびPAHの水溶液を別々に準備することから始まり、その後工程(ii)から(vii)をr回繰り返し、選択的に工程(ix)が行われる。上記にrと記されている工程(ii)から(vii)を繰り返す回数は、例えば、5から20、好ましくは、5から10回であり、さらに好ましくは、rは、10である。
【0104】
様々な機能のコンパートメント間でドーパントの拡散を防ぐバリアとして働く、多層構造体2cは、多層構造体2aおよび2bの堆積方法と同様の方法で堆積される。
【0105】
そして、多層構造体2cと選択的後続処理(すなわちトップコート)の間の粘着性を高める層7が堆積される。そのような層は陰イオン高分子電解質または、陽イオン高分子電解質、さらに特定的に、PAHおよびエポキシ系ワニスを含んでも良い。堆積は、上記のように工程(ii)、(iii)、および(iv)を連続して繰り返すことによって行われる。
【0106】
本発明の他の実施形態では、複数の層の形成に使用されている機能性添加剤が、一つのコンパートメントにおいて結合されても良い。例えば、一層ずつ堆積する技術によって、下記のものが堆積される:
− 基板へ粘着するための最初の層であって、その基板が、例えば、アルミニウム製である層、
− ドーパントの拡散に対するバリアである最初の多層構造体、
− コンパートメントに腐食剤と染料を同時吸着させる、PAHおよびクレーの小板を基礎とした多層構造体、
− ドーパントの拡散に対するバリアである第2の多層構造体、および
− ワニス粘着層。
【符号の説明】
【0107】
1,8,11 高分子電解質多層構造体
2a 多層構造体
2b,2c 上方多層構造体
4 防食剤
5 基板
6 高分子電解質ベースの層
7 後続表面処理層の粘着性を高める層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む主要コンパートメントを少なくとも一つ含む高分子電解質ベースのナノ構造防食コーティング:
− 少なくとも一つの防食剤(4)を塗布された高分子電解質多層構造体(1)、および
− ドーパントの拡散に対してバリアとして機能し、その上側の表面が主要コンパートメントの上側の表面と接する上方の多層構造体(2a)。
【請求項2】
少なくとも一つの防食剤(4)が金属酸化物または金属塩のナノパーティクルの形状であることを特徴とする、請求項1に記載の防食コーティング。
【請求項3】
前記ナノパーティクルが、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸塩酸化物、酸化亜鉛、酸化モリブデンもしくは酸化バナジウム、もしくは希土類金属塩、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の防食コーティング。
【請求項4】
前記金属酸化物または金属塩のナノパーティクルの直径が1から50nmの範囲であることを特徴とする、請求項2または3に記載の防食コーティング。
【請求項5】
防食剤(4)が塗付された高分子電解質多層構造体(1)が陽イオン高分子電解質を含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項6】
防食剤(4)が塗付された前記高分子電解質多層構造体(1)が、陰イオン高分子電解質を含んでいることを特徴とする先の請求項1から4のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項7】
防食剤(4)が塗付された前記高分子電解質多層構造体(1)が、陰イオン高分子電解質と陽イオン電解質を交互に含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項8】
前記主要コンパートメントが、防食剤以外に少なくとも一つの機能性添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項9】
ドーパントの拡散に対するバリアとして機能する下層であって、その下側の表面が主要コンパートメントの下側の表面と一致していることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項10】
一つまたは二つ以上の補助的コンパートメントを含み、各々が以下のものを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の防食コーティング:
− 防食剤以外の少なくとも一つの機能性添加剤でドープされた高分子電解質多層構造体(8;11)
− ドーパントの拡散に対するバリアとして機能し、その上側の表面が補助的コンパートメントの上側の表面と一致する上側の多層構造体(2b;2c)。
【請求項11】
前記ドーパントの拡散に対してバリアとして機能する前記多層構造体(2a;2b;2c)が、架橋している陰イオン高分子電解質および陽イオン高分子電解質を含むことを特徴とする先の請求項のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項12】
前記高分子電解質が一つ以上の架橋剤が存在するなかで、熱によって架橋していることを特徴とする請求項11に記載の防食コーティング。
【請求項13】
前記防食剤以外の前記機能性添加剤が、耐ひっかき性、耐摩耗性、機械的強度、疎水性、色彩、または殺菌作用をコンパートメントに与えることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項14】
前記防食剤以外の機能性添加剤が、チタニウムまたはアルミニウムのアルコキシド、シリカまたはアルミナのナノパーティクル、チタニウムまたはジルコニウムの酸化物;剥離クレーのプレートレットもしくはリーフレット、カーボンナノチューブまたは無機もしくはセラミックのナノパーティクル;酸化ジルコニウム、フッ素化ポリマーまたはコポリマー;ナイルブルー、クマリン類、フルオレセイン類、フタロシアニン類およびピレン類;抗菌ペプチドおよび金属塩から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の防食コーティング。
【請求項15】
後続表面処理層の粘着性を高める層(7)を含むことを特徴とする先の請求項のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項16】
前記陽イオン高分子電解質が、例えばポリアリルアミン塩酸塩、ポリエチレンイミン、およびキトサンのようなアミン基を含むポリマー;ポリジアリルヂメチルアンモニウム塩化物およびポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩化物のような第四級アンモニウム基を含むポリマー;およびポリN−メチルビニルピリジンのようなピリジンまたはピリジニウム基礎を含んでいるポリマーから選択されることを特徴とする請求項5、7、または11のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項17】
前記陰イオン高分子電解質が、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のようなポリ酸を含むポリマー;ポリスチレンスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、およびスルホン化ポリエーテルエーテルケトンのようなスルホン酸基を含むポリマー;ポリビニル硫酸塩のような硫酸基を含むポリマー、ホスホン酸塩またはリン酸基を含むポリマー;または陰イオン多糖類から選択されることを特徴とする請求項6、7、または11のいずれかに記載の防食コーティング。
【請求項18】
次のものを含む構造:
− 基板(5)、および
− 請求項1から17のいずれかに記載の高分子電解質ベースのナノ構造防食コーティング。
【請求項19】
前記基板(5)が金属製であることを特徴とする、請求項18に記載の構造。
【請求項20】
前記基板(5)がアルミニウムもしくはその合金、チタニウムまたはマグネシウム製であることを特徴とする請求項19に記載の構造。
【請求項21】
前記基板(5)が複合基板であることを特徴とする請求項18に記載の構造。
【請求項22】
基板(5)に接着する高分子電解質ベースの層(6)を基板(5)とナノ構造防食コーティングの間に持つことを特徴とする請求項18から21のいずれかに記載の構造。
【請求項23】
基板(5)に接着する高分子電解質ベースの層(6)が陽イオン高分子電解質を含むことを特徴とする請求項22に記載の構造。
【請求項24】
基板(5)に接着する高分子電解質ベースの層(6)が陰イオン高分子電解質を含むことを特徴とする請求項22に記載の構造。
【請求項25】
航空学または航空宇宙学の分野において、金属製または非金属製の基板(5)の耐食性、耐ひっかき性、耐摩耗性、機械的強度、疎水性、および/または色彩を改善するための請求項1から17のいずれかに記載のコーティングの利用。
【請求項26】
主要コンパートメントを製造するための下記の工程(a),(b)を含むことを特徴とする請求項18から24のいずれかに記載の構造を製造する方法;
(a)少なくとも一つの防食剤を塗布された高分子電解質多層構造体(1)が、一層ずつ堆積する方法で、基板(5)に堆積される工程;および
(b)前記ドーパントの拡散に対してバリアの働きする上方多層構造体(2a)が一層ずつ堆積される工程。
【請求項27】
前記工程(a)の前に、前記基板(5)に接着するための前記層(6)を堆積する工程を有する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一つの防食剤が塗付された高分子電解質多層構造体(1)は、ドーパント以外に少なくとも1つ以上の機能性添加剤を塗布されることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
補助的コンパートメントを製造する下記の工程を含むことを特徴とする請求項26から28のいずれかに記載の方法:
(c)防食剤以外に少なくとも一つの機能性添加剤を塗布された多層構造体(8)が、一層ずつ堆積する技術によって、多層構造体(2a)に堆積される工程、および
(d)前記ドーパントの拡散に対してバリアとして機能する上方多層構造体(b)が、一層ずつ堆積する技術によって堆積される工程、
上記(c)および(b)の工程は、2回以上繰り返される。
【請求項30】
後続表面処理層の粘着性を高める層(7)は、堆積されることを特徴とする請求項26から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
下記(i)から(ix)の工程を含む方法によって各多層構造体が堆積されることを特徴とする請求項26から30のいずれかに記載の方法
(i)以下のものを準備する:
− 一つ以上の極性溶媒を含んでいる第1の水溶液または溶液、好ましくは水溶液であって、この第1の溶液は高分子電解質を含む、および
− 一つ以上の極性溶媒を含んでいる第2の水溶液または溶液、好ましくは水溶液であって、この第2の溶液は、第1の溶液の高分子電解質と反対の極性を帯びる少なくとも一つのドーパント、第1の溶液の前記高分子電解質と反対の極性を帯びる高分子電解質、またはそれらの混合物を含む、
(ii) 被覆されるべき表面の上に、(i)の工程で準備した第1の層を吸着する、
(iii) 過剰な第1の溶液を除去するために、第1の溶液で使用された溶媒中で前記表面を洗浄する、
(iv) 前記層を乾燥する、
(v) 工程(i)で準備した第2の溶液を堆積する、
(vi) 過剰な第2の溶液を除去するために、第2の溶液で使用された溶媒中で前記表面を洗浄する、
(vii) 特に熱処理によって、フィルター処理された圧縮空気または窒素のような中性ガスのストリームによって、または前記技術を組み合わせて、乾燥する、
(viii) 工程(ii)から(vii)を繰り返す、ならびに
(ix) 所望の厚さが得られるまで、選択的に工程(ii)から(vii)を最後に行う。
【請求項32】
工程(ii)から(vii)を1から20回繰り返すことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(ii)、(iii)、(v)および(vi)がディッピング除去、噴霧、散布、または回転している基板上に堆積する方法により行われることを特徴とする請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
乾燥が熱処理または、中性ガスのストリーム、または二つの技術を組み合わせて乾燥が行われることを特徴とする請求項30から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記中性ガスはフィルター処理された圧縮空気または窒素であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
基板への粘着のための層(6)および後続表面処理層の粘着性を高める層(7)が、請求項31および33から35に定義されたように工程(i)から(iv)に従って堆積されることを特徴とする請求項26から35のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509818(P2011−509818A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541828(P2010−541828)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050022
【国際公開番号】WO2009/092940
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(508228164)ユーロピアン エアロノティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーエーディーエス フランス (5)
【出願人】(510192846)ユニヴェルシテ カトリック ド ルヴァン (1)
【Fターム(参考)】