説明

ナノ粒子の堆積方法及びナノ粒子堆積装置

【課題】ナノ粒子を基板上に高い堆積率で堆積することができるナノ粒子の堆積方法及び堆積装置を提供する。
【解決手段】真空容器10内に保持された基板2に向けてナノ粒子1を照射し、ナノ粒子1が飛行中にナノ粒子1を加熱して一部又は全部が溶融した液滴とし、液滴状のナノ粒子1を基板2に衝突させて固化して形成されるナノ粒子1cを基板2上に堆積する。液滴状のナノ粒子1は基板2表面での反跳が少なく高い堆積率で堆積することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にナノ粒子を効率よく堆積することができるナノ粒子堆積方法及びナノ粒子堆積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大きさが数十nm〜0.数nmオーダの微粒子からなるナノ粒子は、その微小なサイズに起因するあるいはその大きな比表面積に由来する特異な物性を有することから、これらの物性を利用したさまざまな応用が提案されている。例えば、CdSeナノ粒子を発光材料とする発光素子、金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの成長用触媒として用いたカーボンナノチューブ素子等が提案されている。
【0003】
これらのナノ粒子は、液中の化学反応を用いてナノ粒子を生成する液相法、あるいは原料ガスの反応又はレーザアブレーション等を用いてナノ粒子を生成する気相法等により製造され、素子基板上に堆積されて利用される。
【0004】
液相法は、大量合成が容易で、しかも粒子径が揃ったナノ粒子を製造できるという利点があるものの、界面活性剤を加えてナノ粒子を安定化しなければならず、界面活性剤等による汚染を生ずる。このようなナノ粒子の汚染は、素子、とくに電子デバイスの重大な特性劣化を招来することがある。
【0005】
これに対して、気相法は汚染が少なく、電子デバイス材料として優れたナノ粒子を製造することができる。このため、汚染を嫌う電子デバイス等の素子では、気相法により製造される高純度のナノ粒子の使用が望ましい。
【0006】
しかし、気相法は均一な粒子径を有するナノ粒子の大量生産が液相法に比べて劣るうえ、とくに基板上への堆積効率が低いという問題がある。以下、気相法により製造されたナノ粒子を基板上へ堆積する従来の方法を説明する。
【0007】
特許文献1には、ナノ粒子を基板に垂直に照射することで、アスペクト比の高いホールの底にナノ粒子を堆積するナノ粒子堆積方法が開示されている。
【0008】
このナノ粒子堆積方法では、気相成長法により製造されたナノ粒子を荷電し分級器を用いて分級する。さらに、このナノ粒子を含むエアロゾルを差動排気された真空室に噴出させて加速し、この加速されたナノ粒子を高真空室に導入し静電レンズ系で収束してナノ粒子のビームを形成する。そして、このビームを堆積室内に保持された基板の上面に照射して基板上に形成されたホールの底にナノ粒子を堆積する。
【0009】
しかし、この堆積方法では、高速に加速されたナノ粒子のビームが基板上面で反跳するため、供給ナノ粒子に対する堆積されるナノ粒子の比率である堆積率が非常に低く、例えば10%程度に過ぎず、さらにそれ以下のことも多い。
【0010】
ここでは、基板温度を0℃と低温に保持することで反跳ナノ粒子を少なくする工夫がなされている。さらに基板にバイアス電圧を印可してナノ粒子の反跳を少なくし、堆積率を向上する方法も開示されている。
【0011】
特許文献2には、ナノ粒子を溶融した非晶質シリコン薄膜上に堆積しつつ、結晶化するシリコン結晶薄膜の製造方法が開示されている。
【0012】
この方法では、基板上に堆積された非晶質シリコン薄膜の表面にナノ粒子を供給しつつ、間歇的にレーザビームを照射して非晶質シリコン薄膜及び基板に付着したナノ粒子を溶融する。次いで、ナノ粒子を供給しつつ、冷却することでシリコン結晶薄膜を作成する。
【0013】
この製造方法では、供給されるナノ粒子が、冷却された溶融状態の非晶質シリコン薄膜の表面に付着し、この付着したナノ粒子を核として結晶化が進行する。これにより、再結晶化後のシリコン結晶薄膜の結晶粒の大きさを制御することができる。
【0014】
しかしこの方法は、固体のナノ粒子を固体又は液体(融液)の非晶質シリコン薄膜表面に付着させるもので、ナノ粒子の堆積効率を向上する方法に関する技術を何ら開示していない。
【特許文献1】特開2005−022886号公報
【特許文献2】特開2004−015052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、固体のナノ粒子を固体の基板上に衝突させて堆積する従来の方法は、ナノ粒子が基板表面で反跳するためナノ粒子の堆積率が低いという問題があった。とくに、ナノ粒子を加速して基板上に照射する方法では、反跳が大きく堆積率が低くなるためナノ粒子の堆積コストがより高くなっていた。
【0016】
基板を低温にして反跳を抑制する方法は、ある程度堆積率を向上させるが、とくに高速に加速したナノ粒子を堆積する場合、十分な堆積率を実現することは難しい。また、この方法では、例えば液体窒素温度程度まで基板を低温にして堆積確率を向上させ得たとしても、基板をあまり低温にすると熱ストレスにより基板上に形成されている素子が破壊されるおそれがある。さらに、基板にバイアス電圧を印加して堆積率を向上する方法も、十分な堆積率を実現することは難しく、さらに荷電されていない中性のナノ粒子の堆積には適用できないという問題がある。
【0017】
本発明は、ナノ粒子を基板上に高い堆積率で堆積することができるナノ粒子堆積方法及びナノ粒子堆積装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するための本発明の第1の構成のナノ粒子の堆積方法は、真空容器内に保持された基板に向けて照射されたナノ粒子を、基板に到達する前に加熱してナノ粒子の全部又は一部が溶融した液滴となし、基板上に到達した液滴が固化して形成されたナノ粒子を基板上に堆積する。
【0019】
即ち、本第1の構成では、加熱して液滴とされたナノ粒子が、基板上に到達して基板上で固化することで再びナノ粒子となり、基板上に堆積する。なお、本明細書の「液滴」には、全体が溶融状態にある液滴の他、一部が溶融状態にあり残りが固体状態にあるものをも含まれる。
【0020】
この第1の構成によれば、ナノ粒子は液滴の状態で基板上に衝突する。液体状態の微粒子は、固体状態の微粒子に較べて基板表面に衝突したときの反跳が少なく、基板表面に容易に付着する。なお、一部が液体状態の微粒子でも同様に反跳が抑制される。このため、ナノ粒子を直接基板に照射する従来の方法に較べて、本第1の構成では、ナノ粒子の基板上面への堆積率が高くなる。
【0021】
本発明の第2構成のナノ粒子堆積装置では、真空装置内でナノ粒子照射装置から照射されたナノ粒子が基板に到達する前に、ナノ粒子を加熱して液滴となす加熱装置とを備え、基板上に到達した液滴が固化して形成されたナノ粒子を基板上に堆積する。
【0022】
本第2の構成によると、ナノ粒子を液滴の状態で衝突させ、固化して再形成されたナノ粒子を基板上に堆積する。その結果、固体のナノ粒子を基板上に堆積することができる。従って、第1の構成と同様の理由で、本第2の構成のナノ粒子堆積装置を用いて高い堆積率でナノ粒子を基板上に堆積することができる。
【0023】
上述の第1及び第2の構成において、かかるナノ粒子の加熱は、短時間で加熱できる加熱方法、例えばレーザ加熱又はランプ加熱によることが、高速で照射されたナノ粒子を確実に溶融するという観点から好ましい。また、かかる光による加熱は、基板と及び真空装置内の部品の加熱が回避される点でも優れている。なお、ナノ粒子を高速で照射することが、溶融されたナノ粒子の飛行時間を短縮して飛行中の固化を防ぎ、確実に液滴状で基板に到達させるという観点から好ましい。
【0024】
さらに、基板が保持される真空装置内を、真空乃至希薄気体(クヌーセン領域にある気体)とすることが好ましい。かかる真空装置内の状態では、気体を介した熱伝導は極めて少なく、熱伝導は主に熱輻射によるもののみと見なせる。このため、液滴状ナノ粒子が高速で飛行しても気体を介した熱伝達は小さく、飛行中の固化が防げられる。同様の観点から、真空装置内の気圧を、前記真空容器の代表的寸法である直径Dに対する前記真空容器内の平均自由行程λの比、即ちクヌーセン数Kn=λ/Dを0.1以上になるように保持することが好ましい。
【0025】
なお、上述の第1及び第2の構成のナノ粒子として、気相法により生成されたナノ粒子を用いることが汚染が少ない点で好ましいが、真空容器内に照射し得る状態であれば他の方法、例えば液相法により生成されたナノ粒子を用いることもできる。
【0026】
さらに、上述の第1及び第2の構成において、ナノ粒子を加熱、溶融して液滴となす際に、液滴をナノ粒子の材料の融点よりもさらに高温に加熱して、液滴の一部を蒸発させることもできる。これにより、液滴が小さくなるので、初めに供給したナノ粒子より小さいナノ粒子を基板上に堆積することができる。
【0027】
気相法により微細なナノ粒子、とくに直径5nm以下のナノ粒子を効率よく生成することは容易ではない。液滴の一部を蒸発させて小さなナノ粒子を堆積することで、効率よく生成することができる大きなナノ粒子を用いて、小さなナノ粒子を堆積することができる。従って、ナノ粒子の生成から堆積工程を通して、大きな堆積効率を実現することができる
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ナノ粒子を液滴の状態で基板上に衝突させて堆積するので、基板上での液滴の反跳が少なくなり、このため高い堆積効率でナノ粒子を基板上に堆積することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の第1実施形態は、気相法により生成されたCoナノ粒子を、エアロゾルの状態で差動排気されたオリフィスに導入して加速し、基板表面に形成された酸化膜又はTi薄膜上に堆積するナノ粒子堆積方法及びナノ粒子堆積装置に関する。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態のナノ粒子堆積装置の構成図であり、ナノ粒子堆積装置の主要な構成を表している。
【0031】
図1を参照して、本第1実施形態のナノ粒子堆積装置は、ナノ粒子1aを気相法により生成するナノ粒子生成室40、生成されたナノ粒子1aを分級する分級器30、分級されたナノ粒子1を加速してナノ粒子1のビーム1bを形成するナノ粒子照射装置20及びナノ粒子のビーム1bを基板2上に照射してナノ粒子1cを堆積する真空容器10を備える。
【0032】
ナノ粒子生成室40は1kPaに減圧されており、その内部にナノ粒子1aの原材料からなるターゲット41、本実施形態ではCoターゲット41が配置されている。また、ナノ粒子生成室40には、ガス導入口42が設けられ、ここからキャリアガス43として、冷却効果に優れるガス、例えばHeガスを2slpm(スタンダードリッター毎分)導入する。
【0033】
ナノ粒子生成室40の外部にNdドープYAGレーザ44が配置される。このレーザ44として、発振波長532nm、ピーク出力4W、繰り返し周波数20Hzのパルスレーザを用いた。レーザ44から出射するレーザ光44aはCoターゲット41を照射し、Coターゲット41をレーザアブレーションする。これにより、ターゲット41からCo蒸気が飛散し、このCo蒸気がキャリアガス43により冷却されて固化し、Coナノ粒子1aが生成される。このナノ粒子1aはキャリアガス43とともにエアロゾルを形成し、キャリアガス43と共に分級器30へ輸送される。
【0034】
次いで、レーザアブレーションにより生成されたCoナノ粒子1aは、分級器30に導入されて分級される。この分級器30は、荷電されていない中性粒子を分級することができるものであればよく、例えばナノ粒子1aの慣性の相違により分級するインパクターを用いることができる。また、遠心力を利用したサイクロンを用いることもできる。分級器30を通過したナノ粒子1は、例えば直径が5nm±1nmに揃ったナノ粒子1となる。なお、このナノ粒子1は、キャリアガス43にエアロゾル状に分散している。
【0035】
次いで、分級器30を通過したナノ粒子1は、ノズル23を通してナノ粒子照射装置20内に噴出される。ナノ粒子照射装置20の内部は、中央に小孔22aを有するオリフィス板22bにより上下の室に仕切られ、各室はそれぞれ差動排気管21を通して差動排気されている。
【0036】
ナノ粒子1は、ノズル23からオリフィス板22bの小孔22aへ向けて噴射され、加速されてナノ粒子のビーム1bを形成する。さらに、オリフィス板22bを複数段配置し、複数段のオリフィス板22bをエアロダイナミックレンズとして用いることで、より収束されたナノ粒子ビーム1bを形成することもできる。このようにして形成されたナノ粒子ビーム1bの速度は、通常、100m/秒〜1000m/秒に達する。
【0037】
次いで、ナノ粒子照射装置20で加速されビーム1bに形成されたナノ粒子1は、堆積室を構成する真空容器10の上板に設けられた小孔14を通して真空容器内10に導入される。直径60cm程の真空容器内は、真空排気管11を介して真空排気され、例えば10-3Pa程度の真空に維持される。真空容器内10の下部には、基板ホルダ3が設けられており、その上に基板2が水平に保持される。ナノ粒子ビーム1bは、基板2の上面を照射するように真空容器10内に導入される。
【0038】
真空容器10の外部に、ナノ粒子1の加熱装置18が配置される。加熱装置18は、光加熱装置であり、レーザ15とコリメータ16とを備える。
【0039】
レーザ15として、発振波長1064nm、連続(CW)出力200WのYAGレーザを用い、このレーザ15から出射されるレーザ光15aは、コリメータ16を通して幅20mm、厚さ1mmの帯状をなすシート状光ビーム15bに整形される。整形されたシート状光ビーム15bは、真空容器10の側壁に設けられた窓12を通過して真空容器10内に導入され、真空容器10の対面する側壁に設けられた吸収体13に入射して吸収される。加熱装置18は、シート状光ビーム15bが基板2の上方約2mmを基板2上面に平行に通過するように配置される。
【0040】
粒子ビーム1bとして基板2上面に向けて照射されたナノ粒子1は、シート状光ビーム15bを通過するときに加熱されて溶融し液滴となる。即ち、Coの波長1064nmの光の吸収係数を8×105 /cmとすると、直径5nmのCoナノ粒子1が200m/秒の速度で厚さ1mmのシート状光ビーム15bを通過する間に、Coナノ粒子は略1600℃まで加熱されると計算される。一方、Coの融点は1495℃であるから、Coナノ粒子1はシート状光ビーム15bを通過する間に完全に溶融する。なお、次ぎに説明するように本実施形態ではクヌーセン数(Kn)が大きな、真空〜希薄気体の系であり、気体を介した熱伝導によるナノ粒子1の冷却を無視することができる。
【0041】
次いで、シート状光ビーム15bを通過して液滴となったナノ粒子1(以下「液滴ナノ粒子1」という。)は、基板2上面に到達する約2mmの間に冷却され温度が降下する。直径D=60cmの真空容器10内は10-3Pa程度に維持されており、真空容器10内の平均自由行程λは略1.9mである。この系では、クヌーセン数Kn=λ/Dは、Kn=3程度と大きく、従って、ナノ粒子1の冷却過程は、主として熱輻射により行なわれ、気体を介した冷却過程は無視することができる。
【0042】
1600℃に加熱され200m/秒で基板2に向けて飛行する液滴ナノ粒子1は、基板2上面に到達する約2mmの間に熱輻射により冷却される。液滴が完全黒体であると仮定すると、液滴温度は基板上面に到達する間に400℃〜500℃降下し、基板上面では1100℃〜1200℃になると計算される。しかし、微粒子であるナノ粒子の融点はバルクの状態に較べて低下しており、液滴ナノ粒子1は容易には固化せず液滴状態を保持したまま基板2上面に到達する。
【0043】
なお、真空容器10内の気圧を、クヌーセン数Knが0.1以上の状態、例えば数100Paを超える気圧に維持すると、気体を介した熱伝導が大きくなって液滴ナノ粒子の冷却が速くなりすぎ、基板2に到達する前に固化してしまう。このように固化したナノ粒子が基板表面に衝突すると、従来例と同じく表面での反跳が多くなり、堆積率が低下するため好ましくない。かかる事態は、シート状光ビーム15bと基板2上面間の距離を短くすることである程度解決することはできるが、この距離を短縮すると基板2も加熱されて素子特性を劣化させるおそれがあり好ましくない。
【0044】
次いで、冷却されて温度が降下した液滴ナノ粒子1は基板2の上面に衝突する。基板2として、本発明の第1実施例ではシリコン基板の表面に厚さ350nmの熱酸化膜を形成した基板2を、本発明の第2実施例ではシリコン基板の表面に厚さ5nmのTi薄膜を形成した基板2を用いた。さらに、比較例1及び2として、シート状光ビーム15bを用いずに、即ち、ナノ粒子1を液滴とすることなく固体粒子の状態で堆積した。こらの引用例1、2のナノ粒子の堆積条件は、それ以外はそれぞれ第1及び第2実施例と同一条件とした。
【0045】
なお、上記実施例で用いられた基板の表面層を以下に表示する。
【0046】
第1実施例 熱酸化膜
第2実施例 Ti薄膜
比較例1 熱酸化膜
比較例2 Ti薄膜
基板2表面(上面)に衝突した液滴ナノ粒子1は、瞬時に固化して、ナノ粒子生成器40で生成されたナノ粒子1aと同一組成を有する固体のナノ粒子1cとなり、基板2表面に付着し堆積する。この衝突の際、液滴ナノ粒子1の反跳確率は固体のナノ粒子が衝突する場合に較べて小さい。このため、ナノ粒子1の基板2上への高い堆積率が実現される。
【0047】
かかる低い反跳確率が液滴ナノ粒子1で実現される理由について、本発明の発明者は、液滴が基板に衝突すると、液滴が変形して衝突のエネルギーを吸収するためと考察している。
【0048】
図2は本発明の効果を説明する図(その1)であり、表面に熱酸化膜が形成された基板2上に堆積されたナノ粒子を表している。図2(a)は本発明の第1実施例の堆積結果を、図2(b)は比較例1の堆積結果を表している。なお、ナノ粒子はSEMを用いて観察した。
【0049】
図2(a)を参照して、第1実施例により基板2表面の熱酸化膜上に堆積されたナノ粒子1cは、熱酸化膜上のほぼ全面に均一に堆積されている。これに対して、図2(b)を参照して、比較例1により基板2表面の熱酸化膜上に堆積されたナノ粒子1cは極めて少なく1%以下である。このように、本発明によれば、従来は堆積効率が低かった熱酸化膜上にも高い堆積効率でナノ粒子を堆積することがでる。
【0050】
第1実施例及び比較例1では、熱酸化膜上(即ち基板上)に照射されるナノ粒子の粒径分布、粒子密度及び速度は同一である。従って、この堆積密度の差は、ナノ粒子が液的であるか又は固体であるかの相違に由来することを示唆している。
【0051】
図3は本発明の効果を説明する図(その2)であり、表面にTi薄膜が形成された基板2上に堆積されたナノ粒子を表している。図3(a)は本発明の第2実施例の堆積結果を、図3(b)は比較例2の堆積結果を表している。
【0052】
図3(a)を参照して、Ti薄膜上にナノ粒子を堆積した第2実施例のナノ粒子の堆積密度は、いずれも図2(a)に示す第1実施例と同様、Ti薄膜のほぼ全面に均一に堆積されている。一方、図3(b)を参照して、従来方法によりTi薄膜上にナノ粒子を堆積した比較例2では、ナノ粒子の堆積密度は小さく、10%程度に過ぎない。このように、Ti薄膜上への堆積においても、本発明の堆積方法を適用することにより、固体のナノ粒子を直接堆積する従来の方法に比べ大幅に堆積率を向上することができる。
【0053】
なお、図2(b)及び図3(b)に示す比較例1及び比較例2の堆積密度の違いは、基板材料及び基板の表面状態に堆積率が依存することを示唆している。本発明の発明者は、Ti薄膜上に固体ナノ粒子を直接堆積する第2比較例では、Ti薄膜の表面に微細な凹凸が形成されているため、固体ナノ粒子がこの凹凸に衝突して運動エネルギを失い容易にTi薄膜上に堆積するためであると推量している。
【0054】
このように、ナノ粒子の堆積率は、基板材料、基板表面状態、ナノ粒子材料及びナノ粒子速度等に鋭敏に影響される。例えば、上述の引用例1では、熱酸化膜上へのナノ粒子の堆積率は1%以下であるが、熱酸化膜の表面状態によってはCoナノ粒子の堆積率は10%以上に達することもある。このため、従来の堆積方法では、予想どおりの堆積率を実現することは難しかった。その結果、素子を安定に製造することが難しかった。本実施形態によれば、基板及びナノ粒子の状況如何に関わらず常にほぼ100%に近い堆積率が得られるから、予期した素子特性を有する素子を安定して製造することができる。
【0055】
本第1実施形態のレーザ15の出力を大きくする、ナノ粒子ビーム1bの速度を遅くする、又はシート状光ビーム15bの厚さを暑くすることで、ナノ粒子1をより高温に加熱することもできる。このとき、高温に加熱された液滴ナノ粒子1は、その一部が蒸発し小さな液滴ナノ粒子となる。従って、基板2上には、初めに分級器30により分級された直径5nmナノ粒子より小径のナノ粒子1c、例えばほぼ直径3nmのナノ粒子1cが堆積する。この方法では、蒸発量は容易に精密に制御することができるので、堆積するナノ粒子の直径を精密に制御することができる。
【0056】
気相法を用いたナノ粒子の生成及び分級器を用いたナノ粒子の分級の組み合わせにより微小な、例えば3nm以下のナノ粒子1を製造することは、製造歩留りが悪く実用に用いるには問題がある。液滴ナノ粒子1の一部を蒸発させて小径のナノ粒子を堆積するこの方法によれば、大径のナノ粒子1を用いて小径のナノ粒子1cを容易に、かつ直径を精密に制御して堆積することができる。
【0057】
本発明の第2実施形態は、Coナノ粒子を荷電して分級し、バイアス電圧を印加した基板に向けて照射して加速し、基板表面にCoナノ粒子を堆積するナノ粒子堆積方法及びナノ粒子堆積装置に関する。
【0058】
図4は本発明の第2実施形態のナノ粒子堆積装置の構成図であり、ナノ粒子堆積装置の主要な構成を表している。
【0059】
図4を参照して、本第2実施形態のナノ粒子堆積装置は、ナノ粒子生成室40、生成されたナノ粒子1aを荷電する荷電器50、分級器35、分級されたナノ粒子1を加速してナノ粒子1のビーム1bを形成するナノ粒子照射装置25及びナノ粒子のビーム1bを基板2上に照射してナノ粒子1cを堆積する真空容器10(堆積室)を備える。
【0060】
ナノ粒子生成室40は、第1実施形態と同様であり、レーザアブレーション法によりCoナノ粒子1aを生成し、Heをキャリアガス43とするエアロゾルとして荷電器50へ輸送する。
【0061】
荷電器50は、内部にアイソトープを保持しており、Coナノ粒子1aに放射線を照射して帯電させ、荷電したCoナノ粒子1dとする。また、荷電器50として、単極又は双極イオンを生成するイオナイザーを用いてもよい。
【0062】
分級器35は、荷電粒子を分級する分級器であり、例えばDMA(微分型静電分級器)を用いることができる。なお、中性粒子の分級器を用いることもできるが、この場合は荷電器50は使用しなくてもよい。分級器35により、Coナノ粒子1aは直径5nm±1のナノ粒子1に揃えられる。
【0063】
次いで、ナノ粒子1はナノ粒子照射装置25へ導入される。ナノ粒子照射装置25は、中央に小孔28aを有する複数のオリフィス板28により上下に複数の室に仕切られ、各室は差動排気管26を通して差動排気されている。
【0064】
ナノ粒子1は、ノズル29からオリフィス板28の小孔28aへ向けて噴射されることで加速され、キャリアガス43と分離されて静電レンズ27群へ向けて入射される。そして、荷電されているナノ粒子1は、静電レンズ27群により収束され、ナノ粒子ビーム1bに形成される。このナノ粒子ビーム1bは真空容器10の上方に設けられた小孔14を通過して真空容器10内へ導入される。
【0065】
真空容器10は上述した第1実施形態の真空容器10と、基板ホルダ3へバイアス電源28からバイアス電圧が印加される点を除いて同様である。即ち、基板2上方にはバイアス電圧に基づく電界が形成されている。小孔14を通過して真空容器10内へ導入されたナノ粒子ビーム1bは、バイアス電圧により加速されて基板2上面に衝突する。なお、基板2に衝突する前にシート状光ビーム15bを通過し溶融して液滴ナノ粒子1とされることは第1実施形態と同様である。
【0066】
基板2に衝突した液滴ナノ粒子1は瞬時に固化して再びナノ粒子1cとなり、基板2状面に堆積する。この第2実施形態では、バイアス電圧の印加により基板2へ衝突するナノ粒子1の速度を調整して,また、電界によりナノ粒子の運動を拘束することもできるので、基板2上面での反跳を抑制して堆積率を高めることが容易である。
【0067】
上述した本明細書には以下の付記記載の発明が開示されている。
(付記1) 真空容器内に保持された基板に向けて照射されたナノ粒子を、前記基板に到達する前に加熱して前記ナノ粒子の全部又は一部が溶融した液滴とする工程と、
前記基板上に到達した前記液滴が固化して形成されたナノ粒子を前記基板上に堆積する工程とを有するナノ粒子の堆積方法。
(付記2) 前記ナノ粒子の加熱により、前記ナノ粒子の一部を蒸発させることを特徴とする付記1記載のナノ粒子の堆積方法。
(付記3) 真空容器内に保持された基板に向けてナノ粒子を照射するナノ粒子照射装置と、
前記ナノ粒子が前記基板に到達する前に、前記ナノ粒子を加熱して前記ナノ粒子の全部又は一部が溶融した液滴となす加熱装置とを備え、
前記基板上に到達した前記液滴が固化して形成されたナノ粒子を前記基板上に堆積するナノ粒子堆積装置。
(付記4) 前記加熱装置は、前記基板表面に平行に加熱用光線を照射する光加熱装置であることを特徴とする付記3記載のナノ粒子堆積装置。
(付記5)前記光加熱装置は、レーザ加熱装置又はランプ加熱装置であることを特徴とする付記4記載のナノ粒子堆積装置。
(付記6)前記光加熱装置は、レーザ光又はランプ光をコリメートして、前記基板表面に平行な平板状の前記加熱用光線とするコリメータを備えることを特徴とする付記5記載のナノ粒子堆積装置。
(付記7) 前記ナノ粒子の加熱により、前記ナノ粒子の一部を蒸発させることを特徴とする付記3、4、5又は6記載のナノ粒子堆積装置。
(付記8)前記ナノ粒子照射装置は、前記微粒子を含むキャリアガスを差動排気のオリフィスに導入して、前記微粒子を前記真空容器内に導入することを特徴とする付記3、4、5、6又は7記載のナノ粒子堆積装置。
(付記9)前記ナノ粒子照射装置は、帯電させた前記微粒子を電圧が印加された前記基板に向けて加速又は減速することを特徴とする付記3、4、5、6又は7記載のナノ粒子堆積装置。
(付記10) 前記真空容器内は、希薄気体又は真空であることを特徴とする付記3、4、5、6、7、8又は9記載のナノ粒子堆積装置。
(付記11) 前記真空容器内は、前記真空容器の直径に対する前記真空容器内の平均自由行程の比が0.1以上に保持されることを特徴とする付記3又は4記載のナノ粒子堆積装置。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明を電子デバイスの製造、例えばカーボンナノチューブの作成時の触媒粒子の堆積に適用することで、効率よくナノ粒子を堆積することができるので、製造コストの低減に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態のナノ粒子堆積装置の構成図
【図2】本発明の効果を説明する図(その1)
【図3】本発明の効果を説明する図(その2)
【図4】本発明の第2実施形態のナノ粒子堆積装置の構成図
【符号の説明】
【0070】
1、1a、1c、1d ナノ粒子
1b ビーム
2 基板
3 基板ホルダ 10 真空容器(堆積室)
11 真空排気管
12 窓
13 吸収体
14 小孔
15 レーザ
15a レーザ光
15b シート状ビーム
16 コリメータ
17 バイアス電源
18 加熱装置
20、25 ナノ粒子照射装置
21、26 差動排気管
22a、28a 小孔
22b、28 オリフィス板
23、29 ノズル
27 静電レンズ
30、35 分級器
40 ナノ粒子生成器
41 ターゲット
42 ガス導入口
43 キャリアガス
44 レーザ
44a レーザ光
50 荷電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に保持された基板に向けて照射されたナノ粒子を、前記基板に到達する前に加熱して前記ナノ粒子の全部又は一部が溶融した液滴とする工程と、
前記基板上に到達した前記液滴が前記基板上で固化して形成されたナノ粒子を前記基板上に堆積する工程とを有するナノ粒子の堆積方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子の加熱により、前記ナノ粒子の一部を蒸発させることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子の堆積方法。
【請求項3】
真空容器内に保持された基板に向けてナノ粒子を照射するナノ粒子照射装置と、
前記ナノ粒子が前記基板に到達する前に、前記ナノ粒子を加熱して前記ナノ粒子の全部又は一部が溶融した液滴となす加熱装置とを備え、
前記基板上に到達した前記液滴が前記基板上で固化して形成されたナノ粒子を前記基板上に堆積するナノ粒子堆積装置。
【請求項4】
前記加熱装置は、前記基板表面に平行に加熱用光線を照射する光加熱装置であることを特徴とする請求項3記載のナノ粒子堆積装置。
【請求項5】
前記真空容器内は、前記真空容器の直径に対する前記真空容器内の平均自由行程の比が0.1以上に保持されることを特徴とする請求項3又は4記載のナノ粒子堆積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−31529(P2008−31529A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207030(P2006−207030)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】