説明

ナノ粒子を含む組成物及びその製造方法

【課題】診断用薬や治療薬を含むナノ粒子を安定化する組成物を提供する。
【解決手段】該組成物は、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子を含む。ナノ粒子は、それと組み合わされたさらなる表面改質剤を含有してもよい。該組成物の製造方法は、該ナノ粒子とチロキサポールとをナノ粒子−チロキサポール組成物を得るのに十分な時間及び条件下で接触させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断用薬または治療薬及びそれらと組み合わされているチロキサポールを含有するナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,145,684号明細書に記載されているナノ粒子は、非架橋表面改質剤が表面に吸着している難溶性の治療薬または診断用薬から成る、平均粒径が約400ナノメートル(nm)未満の粒子である。
【0003】
チロキサポール〔酸化エチレン及びホルムアルデヒドを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー〕は、アルキルアリールポリエーテルアルコール型の非イオン性液状ポリマーである。「Superinone」としても知られているチロキサポールは、米国特許第4,826,821号明細書では肺用界面活性剤組成物における非イオン性界面活性剤として有用であることが、また米国特許第3,272,700号明細書では2−ジメチルアミノエチル4−n−ブチルアミノベンゾエート用の安定剤として有用であることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5145684号明細書
【特許文献2】米国特許第4826821号明細書
【特許文献3】米国特許第3272700号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナノ粒子配合物においてチロキサポールを使用することに関する。チロキサポールは、安定剤及び/または分散剤として作用しうる。チロキサポールは表面改質剤としても作用する。チロキサポールは、優れた湿潤剤として働き、またマクロファージ吸収の減少により血液プール滞留を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子から構成されている組成物に関する。好ましい実施態様では、ナノ粒子は診断用薬または治療薬から構成されている。さらに好ましい実施態様では、ナノ粒子は、滅菌工程中の粒子凝集を低減するように作用しうる補助的なさらなる表面改質剤を、ナノ粒子と組み合わせて含む。
【0007】
本発明はさらに、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の製造方法を開示する。本方法は、不溶性の診断用物質または治療用物質を含むナノ粒子とチロキサポールとを、ナノ粒子−チロキサポール組成物を得るのに十分な時間及び条件下で接触させる工程を含む。
【0008】
本発明はまた、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の粒子をコントラスト有効量で哺乳動物に投与し、その哺乳動物の診断画像を発生させる工程を含む診断方法にも関する。
【0009】
さらに本発明は、チロキサポールが表面に吸着している治療薬を含むナノ粒子を有効治療量で哺乳動物に投与する工程を含む治療方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以降、本発明を、ナノ粒子の表面改質剤として主にチロキサポールに関連して記載する。しかしながら、その他のアルキルアリールポリエーテルアルコール型の非イオン性液状ポリマーによっても本発明は実施可能であると考えられる。
【0011】
本発明は、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子から構成されている組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様では、ナノ粒子は、それと組み合わされているさらなる表面改質剤を含む。本発明において有用な表面改質剤は、ナノ粒子の表面に物理的に吸着するが、ナノ粒子またはそれ自身と化学的に反応することはない。表面改質剤の個々の吸着分子は、本質的には分子間架橋を含まない。適当な表面改質剤は、既知の有機及び無機の医薬品用賦形剤、例えば各種ポリマー、低分子量オリゴマー、天然物及び界面活性剤の中から選ぶことができる。好ましい表面改質剤には、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤が含まれる。
【0013】
表面改質剤の代表例として、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ベンザルコニウム塩化物、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、マクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、市販のTween(商品名)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化珪素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、マグネシウムアルミニウムシリケート、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。これらの表面改質剤の大部分は既知の医薬用賦形剤であり、また米国医薬品協会(American Pharmaceutical Association)及び英国の医薬品協会(Pharmaceutical Society)が共同出版したHandbook of Pharmaceutical Excipients(Pharmaceutical Press、1986)に詳しく記載されている。
【0014】
特に好ましい表面改質剤には、ポリビニルピロリドン、Pluronic(商品名)F68及びF108のような酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロックコポリマーであるポロクサマー、Tetronic(商品名)908(Poloxamine 908としても知られている)のようなBASFから市販されている酸化プロピレンと酸化エチレンとをエチレンジアミンへ逐次付加して得られる四官能性ブロックコポリマーであるポロクサミン、デキストラン、レシチン、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、例えば、American Cyanamideから市販されているスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OT(商品名)、DuPontから市販されているラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol(商品名)P、Rohm and Haasから市販されているアルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTriton(商品名)X−200、ICI Specialty Chemicalsから市販されているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるTween 80、並びにUnion Carbideから市販されているポリエチレングリコールであるCarbowax(商品名)3350及び934、が含まれる。特に有用であることがわかっている表面改質剤には、Tetronic 908、Tween(商品名)系列、Pluronic F−68及びポリビニルピロリドンが含まれる。その他の有用な表面改質剤には、
デカノイル−N−メチルグルカミド、
n−デシル β−D−グルコピラノシド、
n−デシル β−D−マルトピラノシド、
n−ドデシル β−D−グルコピラノシド、
n−ドデシル β−D−マルトシド、
ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、
n−ヘプチル β−D−グルコピラノシド、
n−ヘプチル β−D−チオグルコシド、
n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド、
ノナノイル−N−メチルグルカミド、
n−ノニル β−D−グルコピラノシド、
オクタノイル−N−メチルグルカミド、
n−オクチル β−D−グルコピラノシド、
オクチル β−D−チオグルコピラノシド、
等が含まれる。
【0015】
特に好ましい補助表面改質剤は、滅菌工程中の粒子凝集に対して抵抗性を付与する剤であり、ジオクチルスルホスクシネート(DOSS)、ポリエチレングリコール、グリセロール、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド及び荷電リン脂質、例えばジミリストイルホスファチジルグリセロール、を含む。表面改質剤は、市販されているか、及び/または、当該技術分野で知られている技法によって調製することができる。2種以上の表面改質剤を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
ナノ粒子と組み合わされるチロキサポールは、表面改質剤として、安定剤として、及び/または、分散剤として、作用することができる。代わりに、チロキサポールはその他の目的にかなう場合もある。本発明の一実施態様では、チロキサポールが三つすべての作用を供する。別の実施態様では、本明細書の別の部分に記載されているように、チロキサポールが安定剤及び/または分散剤として働き、一方で別の化合物が表面改質剤として作用する場合がある。
【0017】
本発明のナノ粒子は診断用薬または治療薬を含有する。本発明の実施において有用なナノ粒子は、米国特許第5,145,684号明細書(本明細書ではその開示を参照することによって取り入れる)に従って調製することができる。簡単に述べると、難溶性の治療薬または診断用薬を液状分散媒中に分散させ、そしてその薬剤を磨砕媒体の存在下で湿式磨砕して、造影剤の粒径を約400nm未満の有効平均粒径へ低減させる方法でナノ粒子を調製する。粒径の低減を表面改質剤の存在下で行ってもよい。
【0018】
本発明の実施において有用な粒子を調製する一般手順は以下のとおりである。選定する治療薬または診断用薬は、従来の粗大形態において、上記のように当該技術分野で知られている技法によって調製するか、また/あるいは市販されている。選定した粗い治療または診断用物質の粒径が篩分け試験で測定して約100μm未満であることが本質的ではないが好ましい。該薬剤の粗大粒径が約100μmよりも大きい場合には、治療薬または診断用薬の粗大粒径を、エアジェットや破砕ミリングのような従来の微粉砕法によって100μm未満の寸法へ低下させることが好ましい。
【0019】
次いで、選定した粗大治療薬または診断用薬を、それが本質的に不溶性である液状媒体へ添加して、予備混合物を形成させる。液状媒体中の治療薬または診断用薬の濃度は、約0.1〜60%(w/w)、好ましくは5〜30%(w/w)の範囲をとることができる。予備混合物中に表面改質剤を存在させることは、本質的ではないが好ましい。表面改質剤の濃度は、薬剤物質と表面改質剤との合計重量に対して、約0.1〜90重量%、好ましくは1〜75重量%、より好ましくは10〜60重量%、最も好ましくは10〜30重量%の範囲をとることができる。予備混合物懸濁剤の見掛けの粘度は、約1000センチポイズよりも低いことが好ましい。
【0020】
この予備混合物を湿式磨砕に直接使用して、分散体における平均粒径を400nm未満に低下させることができる。磨砕にボールミルを使用する場合には、予備混合物を直接使用することが好ましい。別法として、治療薬または診断用薬及び任意ではあるが表面改質剤を、適当な攪拌手段、例えばローラーミルやCowles型ミキサーによって、肉眼では大きな凝集体は見られない均質分散液が得られるまで、液状媒体中で分散させてもよい。磨砕に循環媒体ミルを使用する場合には、予備混合物にこのような予備微粉砕分散工程を施すことが好ましい。
【0021】
湿式磨砕は、例えばボールミル、アトリッターミル、振動ミル及びサンドミルやビーズミルのような媒体ミルをはじめとする適当ないずれの分散ミルにおいて行ってもよい。所期の結果、すなわち所望の粒径低減を得るのに要する微粉砕時間が比較的短いので、媒体ミルが好ましい。媒体ミル粉砕では、予備混合物の見掛けの粘度は約100〜約1000センチポイズである。ボールミル粉砕では、予備混合物の見掛けの粘度は約1〜約100センチポイズである。このような範囲は、効率的な粒子破砕と媒体浸食との最適バランスを提供しやすい。
【0022】
粒径低減工程用の磨砕媒体は、平均粒径が約3mm未満、好ましくは約1mm未満の好ましくは球形または粒状の硬質媒体から選択することができる。このような媒体は、より短時間の処理時間で本発明の粒子を提供でき、しかも微粉砕装置に与える摩擦が少ないことが望ましい。磨砕媒体用の物質を選択することは重要ではないと考えられる。しかしながら、好ましい媒体は、約3g/cm3 よりも高い密度を有する。酸化ジルコニウム、例えばマグネシアで安定化した95%ZrO、ジルコニウムシリケート及びガラス磨砕媒体は、治療用または診断用組成物の調製物として許容できると考えられるレベルの汚染を含む粒子を提供する。しかしながら、他の媒体、例えばステンレススチール、チタニア、アルミナ及び(イットリウムで安定化した)95%ZrOも有用であると考えられる。
【0023】
磨砕時間は、幅広く変化しうり、主に選定した特定の湿式磨砕ミルに依存する。ボールミルには、5日間またはそれ以上長期の処理時間が必要となる場合がある。一方で、高剪断力の媒体ミルを使用すると、1日未満の処理時間(滞留時間は約1分〜数時間)で所望の結果が得られる。
【0024】
治療薬や診断用薬を著しく劣化させることのない温度で粒子の粒径を低減しなければならない。通常は、約30〜40℃未満の処理温度が好ましい。所望であれば、処理装置を従来の冷却装置によって冷却してもよい。この方法は、従来より、微粉砕処理に有効で且つ安全な処理圧及び周囲温度の条件下で実施されている。例えば、ボールミル、アトリッターミル及び振動ミルでは周囲処理圧が典型的である。媒体ミルでは約20psi(1.4kg/cm2 )以下の処理圧が典型的である。
【0025】
表面改質剤は、予備混合物中に存在させない場合には、予備混合物について記載した量で磨砕後の分散液に添加することができる。その後、その分散液を、例えば激しく振る方法によって、混合することができる。任意ではあるが、例えば超音波電源を用いて音波処理を分散液に施してもよい。例えば、分散液に、周波数20〜80kHzの超音波エネルギーを約1〜120秒間施してもよい。
【0026】
治療薬または診断用薬と表面改質剤との相対量は、幅広く変化しうり、また表面改質剤の最適量は、例えば、選定した特定の治療薬または診断用薬及び表面改質剤に、ミセルを形成する場合には表面改質剤の臨界ミセル濃度に、安定剤の親水性−親油性バランス(HLB)に、安定剤の融点に、その水溶性に、安定剤水溶液の表面張力に、等に依存しうる。表面改質剤は、治療薬または診断用薬の表面積1平方メートル当たり約0.1〜10mgの量で存在することが好ましい。表面改質剤は、乾燥粒子の全重量に対して、0.1〜90重量%、好ましくは1〜75重量%、より好ましくは10〜60重量%、最も好ましくは10〜30重量%の量で存在することができる。
【0027】
本発明の組成物に有用な治療薬及び診断用薬には、米国特許第5,145,684号明細書及び欧州特許出願第498,492号明細書(本明細書ではその開示を参照することによって取り入れる)に記載されている薬剤が含まれる。好ましい診断用薬には、エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN 8883)、エチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)ブチレート(WIN 16318)、ジエチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)マロネート(WIN 67721)及び6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN 67722)が含まれる。特に好ましい診断用薬はX線造影剤WIN 8883である。
【0028】
本明細書で用いられているように、粒径とは、当業者にはよく知られている従来の粒径測定技法、例えば沈降場流動分画法、光子相関分光光度法またはディスク遠心分離法によって測定した数平均粒径をさす。「約400nm未満の有効平均粒径」とは、上記の技法によって測定した場合に粒子の90%以上が約400nm未満の重量平均粒径を示すことを意味する。本発明の好ましい実施態様では、有効平均粒径は約300nm未満であり、またより好ましくは約250nm未満である。本発明の実施態様の一部では、約200nm未満の有効平均粒径が実現している。有効平均粒径に関しては、好ましくは少なくとも95%、またより好ましくは少なくとも99%の粒子が有効平均粒径、例えば400nm未満の粒径を示す。特に好ましい実施態様では、本質的にすべての粒子が400nm未満の粒径を示す。一部の実施態様では、本質的にすべての粒子が250nm未満の粒径を示す。
【0029】
本発明は、本明細書の別の部分に記載した、チロキサポールを表面に組み合わせて含むナノ粒子組成物を、注射用、固体または液体状の経口投与用、直腸または局所投与用、などの無毒性の生理学的に許容できる1種以上のキャリヤー、アジュバントまたはベヒクル(本明細書ではこれらをまとめてキャリヤーと称する)と一緒に配合して組成物としたものを包含する。
【0030】
該組成物は、経口的、直腸的、注射的(静脈注射、筋内注射もしくは皮下注射)、槽内的、体腔内的、腹膜組織内的、局所的(散剤、軟膏もしくは滴剤)、または頬もしくは鼻スプレーとして、ヒトや動物へ投与することができる。
【0031】
注射に適した組成物は、生理学的に許容できる無菌の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液及び無菌の注射可能な溶液または分散液を再構成するための無菌散剤を含むことができる。適当な水性及び非水性のキャリヤー、希釈剤、溶剤または賦形剤の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、等)、それらの適当な混合物、植物油(例、オリーブオイル)、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを利用する方法によって、分散液の場合には必要な粒径を維持する方法によって、また界面活性剤を利用する方法によって維持することができる。
【0032】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤といったアジュバントを含有することもできる。微生物の作用は、各種の抗菌剤や抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、等によって確実に防止することができる。また、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム、等を含有させると望ましい場合もある。注射可能な医薬品形態の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばアルミニウムモノステアレート及びゼラチンを使用することによって遅延させることが可能である。
【0033】
経口投与用の固体投与形態には、カプセル、タブレット、ピル、散剤及び顆粒が含まれる。このような固体投与形態では、活性化合物を、少なくとも1種の不活性な慣例の賦形剤(もしくはキャリヤー)、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムまたは(a)充填剤もしくは増量剤、例えばスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び珪酸、(b)バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシア、(c)保湿剤、例えばグリセロース、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカ澱粉、アルギン酸、ある種の複合シリケート及び炭酸ナトリウム、(e)溶液リターダー、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール、(h)吸着剤、例えばカオリン及びベントナイト、並びに(i)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムもしくはそれらの混合物、と一緒に混合する。カプセル、タブレット及びピルの場合には、投与形態は緩衝剤を含んでもよい。
【0034】
ラクトースまたは乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール、等のような賦形剤を使用した軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として、同様の種類の固体組成物を使用することもできる。
【0035】
タブレット、糖衣錠、カプセル、ピル及び顆粒のような固体投与形態は、腸溶性被膜や当該技術分野でよく知られているその他のもののようなコーティングやシェルによって調製することができる。それらはまた、不透明剤を含有することができ、また腸管の特定部分に1種以上の活性化合物を遅れて放出させるような組成物であってもよい。使用可能な埋封組成物の例として、ポリマー物質やワックスが挙げられる。
【0036】
活性化合物は、適当であれば、上記の賦形剤の1種以上を用いて微小封入された形態にすることもできる。
【0037】
経口投与用の液体投与形態には、医薬品として許容できる乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤が含まれる。液体投与形態は、活性化合物の他に、当該技術分野で通常用いられている不活性希釈剤、例えば水もしくはその他の溶剤、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール並びにソルビタンの脂肪酸エステルまたはこれら物質の混合物、等を含有することができる。
【0038】
このような不活性希釈剤の他に、該組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、調味料及び香料といったアジュバントを含有してもよい。
【0039】
懸濁剤は、活性化合物の他に、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントまたはこれら物質の混合物、等を含有してもよい。
【0040】
直腸投与用の組成物は、本発明の化合物と、常温で固体であるが体温では液体となり、直腸や腹腔内で溶解して活性成分を放出する適当な非刺激性の賦形剤もしくはキャリヤー、例えばココアバター、ポリエチレングリコールもしくは座薬ワックスとを混合することによって調製できる座薬であることが好ましい。
【0041】
本発明の化合物の局所投与用の投与形態には、軟膏、散剤、スプレー及び吸入剤が含まれる。活性成分を、無菌条件下で、生理学的に許容できるキャリヤー及び必要な何らかの防腐剤、緩衝剤もしくは噴射剤と混合する。眼科用配合物、眼軟膏剤、散剤及び溶液もまた、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0042】
本発明の組成物における活性成分の実際の薬用量は、特定の組成物及び投与方法に対して所望の治療応答を得るのに有効な活性成分量が得られるように変化させることができる。従って、特定の薬用量は、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間、及びその他の因子に依存する。
【0043】
1回ごとに分割された用量でホストに投与される本発明の化合物の1日の総用量は、例えば、体重1キログラム当たり約1ナノモル〜約5マイクロモルとすることができる。組成物の1回量は、1日分の量を構成するように使用できるような量の分量とすることができる。しかしながら、特定の患者に対する特定の用量レベルが、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間及び投与経路、吸収速度及び排出速度、別の薬剤との配合並びに治療する特定の疾病の過酷さ、をはじめとする種々の因子に依存しうることは理解される。
【0044】
本発明によるナノ粒子組成物の製造方法には、治療薬または診断用薬、液状媒体、磨砕媒体及び任意に表面改質剤を磨砕容器へ導入する工程と、治療薬または診断用薬の粒径を約400nm未満へ低減させるための湿式磨砕工程と、粒子及び任意に液状媒体を磨砕容器及び磨砕媒体から、例えば吸引、濾過または蒸発によって分離する工程とが含まれる。湿式磨砕工程中に表面改質剤を存在させない場合には、それを該工程後に粒子と混合することができる。液状媒体は、たいていは水であるが、医薬品的に許容できるキャリヤーとして役立つことができる。この方法は、無菌条件下で実施することが好ましい。その後、好ましくはナノ粒子組成物に滅菌処理を施す。
【0045】
本発明さらに、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の製造方法を開示する。該製造方法は、ナノ粒子とチロキサポールとをナノ粒子−チロキサポール組成物を得るのに十分な時間及び条件下で接触させる工程から構成される。
【0046】
この方法は、本明細書の別の部分に記載した治療用または診断用のナノ粒子を調製する工程と、これらのナノ粒子をチロキサポールと接触させる工程とを含む。接触工程は、ナノ粒子の懸濁液とチロキサポールの溶液とを、ナノ粒子−チロキサポール組成物の形成に適した時間及び条件下で混合する方法であることができる。
【0047】
チロキサポールの濃度は、薬物とチロキサポールの全合計重量に対して、約0.1〜90重量%、好ましくは1〜75重量%、より好ましくは10〜60重量%、最も好ましくは10〜30重量%の範囲をとることができる。接触時間は、60秒〜約48時間とすることができる。
【0048】
好ましい実施態様では、該方法は、ナノ粒子と組み合わされる別の表面改質剤をさらに添加する工程を含む。この方法は、本明細書の別の部分に記載した技法によって実施される。
【0049】
本発明はまた、チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の粒子をコントラスト有効量で哺乳動物に投与し、その哺乳動物の診断画像を発生させることから構成される診断方法にも関する。好ましい実施態様では、ナノ粒子は、それと組み合わされているさらなる表面改質剤を含む。
【0050】
本発明による医療処置において使用するための診断用画像形成法は、診断画像が必要な被検体に、有効なコントラストを発生させる量の上記の診断画像造影剤組成物を投与する工程を含む。ヒトの患者の他に、被検体には、哺乳動物種、例えばウサギ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、等の動物が含まれてもよい。投与後、投与された造影剤を含有する体の少なくとも一部をX線または磁場に暴露して、造影剤の存在に対応するX線または磁気共鳴画像パターンを得る。そうすると、その画像パターンを可視化することができる。
【0051】
X線画像形成法では、透過した輻射線を利用して、全体の組織の減衰特性に基づく放射線写真を得る。X線は、様々な組織を透過し、そして散乱、すなわち反射もしくは屈折またはエネルギー吸収によって減衰する。しかしながら、ある種の体内器官、導管及び解剖組織部位が示すX線の吸収量は非常に少なく、これらの体部分の放射線写真を得るのは困難である。この問題を解決するため、放射線学者は、決まってこのような体内器官、導管及び解剖組織部位の中へ、造影剤を含有するX線吸収剤を導入している。
【0052】
何らかのX線可視化技法、好ましくはコンピュータ断層撮影法のような高コントラスト技法を従来の方法で適用することができる。別法として、X線感受性蛍燐光体スクリーン−ハロゲン化銀写真フィルム複合体によって画像パターンを直接観察してもよい。
【0053】
磁気共鳴画像化装置による可視化は、市販の磁気共鳴画像化装置、例えばGeneral Electric製1.5 T Sigma画像化装置〔1H共鳴周波数63.9メガヘルツ(MHz)〕によって行うことができる。市販の磁気共鳴画像化装置は、典型的には、採用する磁場強度によって特徴付けられ、最大電流時の磁場強度は2.0テスラであり、また最小電流時の磁場強度は0.2テスラである。一定の磁場強度に対して、各々検出される核は特徴的な周波数を示す。例えば、1.0テスラの磁場強度では、水素の共鳴周波数は42.57MHzであり、リン−31の共鳴周波数は17.24MHzであり、またナトリウム−23の共鳴周波数は11.26MHzである。
【0054】
本発明の組成物のコントラスト有効量とは、例えば磁気共鳴画像化またはX線画像化によって組織を可視化するのに必要な量をさす。特定の被検体においてコントラスト有効量を決める手段は、当該技術分野ではよく知られているように、用いる磁気活性物質の性質、画像化される被検体の重量、磁気共鳴画像化装置またはX線画像化装置の感度、等に依存する。
【0055】
本発明の組成物を投与した後、投与した組成物が被検体全体に分布して哺乳動物の組織に入るのに十分な時間、被検体の哺乳動物を維持する。典型的には、約20分〜約90時間、好ましくは約20分〜約60分で十分である。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであって、本明細書及び特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本発明の特別な実施態様を以下の実施例で例示する。
【0057】
実施例1:チロキサポール及びエチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN−8883)を使用した画像化の検討
Tyloxapolを安定剤として用いたWIN−8883の配合物を、リン酸緩衝サリン(PBS)中で、懸濁液100ml当たり20グラム(g)のWIN−8883と懸濁液100ml当たり3gのチロキサポールとから調製した。その懸濁液を7日間微粉砕し、その後、光散乱法で平均粒径を測定したところ185nmであった。新鮮なラットの血漿及び人口胃液における安定性試験では、凝集はまったく示されなかった。その配合物を、コンピュータ援用断層撮影用X線画像形成の研究用に、マサチューセッツ総合病院の画像形成及び医薬品研究センター(CIPR)とスタンフォード大学メディカルスクール、放射線学部とに送付した。
【0058】
CIPRでは、白い雄のニュージーランド産ウサギ(体重=約2.5kg)の前足に1回のボーラス注入として0.5ml注射した12時間及び36時間後に、Tyloxapol懸濁液は腋窩及び肩甲下のリンパ節の優れた画像を提供した。スタンフォード大では、3ml/kgの注入によって、脈管系の優れた画像が得られ、次いで注入後の長時間後(すなわち、30分以上)に肝臓と脾臓の両方が不透明化した。
【0059】
実施例2:チロキサポール及びWIN−16318を使用した画像化の検討
配合物100ml当たり10gのWIN−16318と配合物100ml当たり3.4gのチロキサポールとを使用し、14日間微粉砕することによって、実施例1と同様にWIN−16318の配合物を調製した。この工程の終了時には、光散乱法による粒径は289nmであった。この配合物を画像研究のためにスタンフォード大へ送付した。そこで、IV注入すると、血液プールの不透明化が長期化し、その後、肝臓と脾臓内部の濃度が高くなる結果が得られた。
【0060】
実施例3:チロキサポール及びWIN−8883を使用した画像化の検討
配合物100ml当たり10gのWIN−8883と配合物100ml当たり3gのチロキサポールとを使用し、実施例1と同様に配合物を調製した。7日間の微粉砕後、光散乱法による粒径は170nmであった。CIPRにおける画像形成試験によると、注入12時間後において腋窩及び肩甲下のリンパ節の優れた画像形成が例示された。
【0061】
実施例4:チロキサポール及びWIN−67721を使用した画像化の検討
配合物100ml当たり15gのWIN−67721と配合物100ml当たり4.0gのチロキサポールとを使用し、実施例1と同様に配合物を調製した。3日間の微粉砕後、光散乱法による粒径は207nmであった。CIPRにおける画像形成試験によると、ウサギの前足に0.5mlの皮下注射をした注入12時間後において腋窩及び肩甲下のリンパ節の優れた不透明化が例示された。
【0062】
実施例5:チロキサポール及びWIN−67722を使用した画像化の検討
WIN−67722を使用するだけで、実施例4と同様に配合物を調製した。懸濁液を3日間微粉砕し、光散乱法による粒径186nmを達成した。CIPRにおける画像形成試験によると、ウサギの前足に0.5mlの皮下注射をした注入12時間後に腋窩及び肩甲下のリンパ節の優れた不透明化が例示された。
【0063】
実施例6
40種以上の難溶性化合物を含む広範囲のスクリーニング研究の結果、チロキサポールが、試験した他のどの表面改質剤よりもはるかに高いパーセント(約80%)のナノ粒子状化合物を安定化することがわかった。
【0064】
実施例7:チロキサポール安定化レチノイン酸ナノ粒子
チロキサポールが治療薬のレチノイン酸の良好な安定剤であることを示した。米国特許第5,145,684号明細書に記載されている技法によって湿式磨砕して平均粒径を130nmとしたナノ粒子配合物(レチノイン酸7%、チロキサポール3%)は、7ヵ月後に平均粒径145nmを示した。
【0065】
特別な実施態様及び実施例を含む上記の明細書は、本発明を例示するものであって、これを限定するものと解釈すべきではない。本発明の真正な精神及び範囲を逸脱することのない多くの別の変更及び修飾を行うことは可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子を含む組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、それと組み合わされたさらなる表面改質剤を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子が内部に診断用薬または治療薬を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記診断用薬が、エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエートである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の製造方法であって、前記ナノ粒子とチロキサポールとをナノ粒子−チロキサポール組成物を得るのに十分な時間及び条件下で接触させる工程を含む前記方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、それと組み合わされたさらなる表面改質剤を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子が内部に診断用薬または治療薬を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記診断用薬が、エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエートである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
チロキサポールが表面に吸着しているナノ粒子の粒子をコントラスト有効量で哺乳動物に投与し、その哺乳動物の診断画像を発生させる工程を含む診断方法。
【請求項10】
前記診断画像がX線画像である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、それと組み合わされたさらなる表面改質剤を含有する、請求項9記載の方法。
【請求項12】
チロキサポールが表面に吸着している治療薬を含むナノ粒子を有効治療量で哺乳動物に投与する工程を含む治療方法。

【公開番号】特開2008−63348(P2008−63348A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309325(P2007−309325)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【分割の表示】特願平5−280799の分割
【原出願日】平成5年11月10日(1993.11.10)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】