説明

ナノ粒子を用いた酵素活性に対する阻害

酵素性皮膚炎の治療における場合を含む、酵素活性に対する阻害に有用な方法および組成物が提供されている。このような組成物は、複合材料を含み、この複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、該金属は、当該ナノ粒子の表面上に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、例えば、オムツ、小児用トレーニングパンツ、成人失禁用ブリーフパンツ、婦人衛生用品、および、これらの同類等の吸収体製品の着用に通常、起因する皮膚疾患、例えば酵素性皮膚炎などを治療するための方法および組成物に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
オムツかぶれは、オムツによって標準的に覆われた幼児の体部分が受ける刺激および炎症のうち、よくある病型である。この疾患は、オムツ皮膚炎、ナプキン皮膚炎、ナプキン負け(napkin rash)、あるいは、オムツ負け(nappy rash)とも呼ばれている。この疾患は、確かに幼児に多いが、実際は、幼児に限定されるものではない。吸収体製品の使用が必要とされる程度の失禁に悩む人の誰もが、上記症状を患うことがある。影響を受け易い人は、新生児から高齢者まで、さらには、重篤な患者あるいは歩行困難者にまで及んでいる。米国の連邦規則集(21 C.F.R. 333.503)は、オムツかぶれを、「以下の要素:湿度、閉鎖性、擦傷、尿または糞便あるいはその両方との継続的な接触、あるいは、機械的または化学的な刺激のうち、一つ以上の要素によって生じた、オムツ領域(会陰、臀部、下腹部および内股)における炎症性皮膚疾患」と定義している。一般に、真性のオムツかぶれ、すなわち、オムツ皮膚炎が、その最も基本的な段階において、皮膚と尿または糞便あるいはその両方との長時間の接触に起因する接触刺激性皮膚炎という症状になることは、医療従事者によって認識されている。オムツかぶれに関連した要素のうち、最も一般的で異論のない要素は、アンモニア、糞便由来の酵素類、細菌、細菌作用の代謝産物、尿pH、および、カンジダ・アルビカンス(c. albicans)である。
【0003】
酵素類が、植物、カビ、細菌、牛乳、乳製品、および、ほとんどすべての動物組織、並びに、消化管中の消化液中にも広く分布していることから、当該酵素類は、ほとんどの場合、オムツ、失禁用製品、生理用ナプキン、パンティライナーなどに関連して存在している。このような酵素類は、プロテアーゼ類、リパーゼ類、および、他のエステラーゼ類およびジエステラーゼ類、ウレアーゼ、および、アミラーゼ、エラスターゼ、ヌクレアーゼおよびこれらの同類の酵素を含む他の酵素類を含む。異なるタイプの酵素類の皮膚刺激への相対的な寄与は知られていないが、腸内発生および/または膵臓内発生の少なくとも糞便由来のプロテアーゼ類およびリパーゼ類が、酵素性皮膚炎による皮膚炎症を生じさせる際に直接的な役割を演じるという証拠がある。同様に、プロテアーゼ類は、月経液中に存在していることが知られている。当該プロテアーゼ類は、子宮内膜(uterine lining)の剥がれに起因している。
【0004】
種々のクラスのプロテアーゼ類の酵素活性の阻害を目的とする阻害剤を用いる研究は、セリンプロテアーゼ類、システインプロテアーゼ類およびメタロプロテアーゼ類が糞便中の全蛋白質分解活性に関与している可能性が最も高いことを示していた。MMPsすなわちマトリクス・メタロプロテアーゼ類も、月経液中に存在している存在している可能性が最も高い。セリンプロテアーゼ類の特にトリプシンおよびキモトリプシンは、健康な幼児の排泄物中に、ほぼいつも、大まかに測定可能な量で(in grossly measurable quantities)存在しており、当該トリプシンおよびキモトリプシンは、幼児より少ないが、検出可能な量で、健康な成人の排泄物中に存在している。食事由来のトリグリセリド類を加水分解するエステラーゼ類を含むリパーゼ類も、健康人の排泄物中に見出されており、当該リパーゼ類は、ヒトの皮膚に見出されるトリグリセリド類および他のグリセリド類を加水分解して、刺激性の脂肪酸およびグリセロール副産物が形成される。したがって、体の浸出液中に存在するリパーゼ類およびプロテアーゼ類等の酵素類に皮膚が曝された場合に、皮膚、特に、バリア層(角質層)の脂質含有成分および蛋白質含有成分が分解され、その結果、オムツかぶれの刺激および炎症をもたらすことになる。さらに、皮膚バリア層の動揺(perturbation)は、尿および糞便中の他の成分、アンモニア、細菌、酵母、および、これらの同類など、他の場合にはこれら自体だけでは刺激しないかもしれない当該成分等が、傷つけられた皮膚バリア層を介して移動して、更なる刺激および考えられる感染を生じることを許容する。
【0005】
数世紀にもわたって、金属銀は、オムツかぶれによる影響を受ける皮膚領域内で、通常見出されるカンジダ・アルビカンス(c. albicans)およびスタフィロコッカス・アウレウス(s. aureus)を含む、多くの異なる細菌種の殺菌が可能な因子であることが知られてきた。金属銀は、飲料溶液、すなわち、最新の抗生物質の存在以前において、罹患した人に投与される飲料溶液を浄化するために使用されてきた。ペニシリンおよびその派生物の発見以後でさえ、コロイド状の銀溶液は、厄介な細菌が抗生物質に対する耐性を獲得することになった場合に、しばしば使用されてきた。
【0006】
コロイド状の銀溶液は、現在、市販されているが、当該銀溶液は、多くの場合、不安定であり、保存期間が短い。この性質は、銀粒子が凝集してしまい、溶液中にもはや懸濁しない程度に大きなクラスターを形成する傾向に起因している。このような理由により、銀粒子の凝集を防止することによって、当該銀粒子の懸濁状態を維持するために、望ましくないゲル化剤が溶液に添加されることになる。市販溶液に関する他の課題は、銀成分の大部分が、通常、銀イオンとして見出される点にある。銀イオンは有効な抗菌剤であるが、医療用途およびパーソナルケア用途における銀イオンの存在は、銀イオンがユビキノン塩化物と急速に結合して、不溶性の白色沈殿物を形成し、かつ、皮膚を薄い納戸色(grayish-blue)に色付けしてしまうという課題を有している。
【0007】
市販のオムツかぶれ用の組成物は、鉱油および/または酸化亜鉛に基づいている。
【0008】
米国特許出願US2003/0104019は、皮膚に対する酵素性刺激を緩和する上で有効な成分として、膨潤性粘土を含有する組成物を開示している。
【0009】
ナノ粒子は、米国特許第6,492,453号に開示された充填剤として、米国特許出願US2003/0185964に開示された被覆剤として、および、米国特許第6,518,324号に開示された発泡成分として、使用されることが知られている。
【0010】
粘土、ケイ酸塩およびアルミナ等の無機粒子は、ある種の帯電防止調整効果および/または衣類柔軟効果を付与する補助的な洗浄剤および洗濯用化合物と一緒に広く使用されてきた。同様に、軟質表面および硬質表面に表面改質効果を付与するナノ粒子系、例えば、洗濯用洗浄剤は、米国特許出願US2002/0150678に開示されている。
【0011】
米国特許出願US2005/0115462は、パンティライナー、生理用ナプキン、陰唇間製品(interlabial devices)、成人失禁用製品、胸当て、靴の中敷き、包帯、および、オムツ等、改良型の吸収体製品の調製に使用される軟質表面被膜中に組み込まれる機能性ナノ粒子を開示している。これらの製品は、(a)表面を有する表層剥離済み(exfoliated)ナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とから形成された複合材料を含み、当該金属は、当該ナノ粒子の表面上に保持されている。当該複合材料は、吸収体製品の、例えば、軟質表面被膜の形態である層に塗布されてもよい。
【0012】
酵素性皮膚炎、例えば、糞便由来の酵素類によって生じるオムツ皮膚炎が、上述した複合材料の局所的塗布によって治療され得ることは、意外にも、現在、見出された。一つの実施の形態において、上述した複合材料は、ナノ粘土上に保持された銀を含む。銀を被覆したナノ粘土は、特に、皮膚に塗布されたときに、酵素活性に対する極めて優れた阻害特性を有する。
【0013】
〔本発明の概要〕
本発明は、酵素活性を阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、リパーゼおよびプロテアーゼからなる群より選択された酵素を、有効量の複合材料に接触させることを含み、当該複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、当該金属は、当該ナノ粒子の表面上に保持されている。
【0014】
本発明は、酵素性皮膚炎を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、酵素性皮膚炎に罹患した皮膚領域に対して有効量の複合材料を局所的に塗布することを含み、当該複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、当該金属は、当該ナノ粒子の表面上に保持されている。
【0015】
〔本発明の詳細な記述〕
この明細書を通じて与えられた各限定値は、場合によっては、あたかも全ての下限値または上限値が明細書中に明示的に表示されたかのように、当該下限値または上限値を含むものである。この明細書を通じて与えられた各範囲は、あたかも全ての狭い範囲が明細書中に明示的に表示されたかのように、より広い範囲内に入る狭い当該各範囲を含むものである。
【0016】
この明細書で使用されているように、語句「皮膚疾患」は、オムツかぶれ、あるいは、皮膚発疹等の酵素性皮膚炎に起因する状態であり、刺激、発赤、掻痒、火照りまたは炎症の身体への副作用を含むものである。
【0017】
この明細書で使用されているように、語句「治療方法」は、皮膚疾患を防止し、緩和し、あるいは、治療するための方法を含むはずである。このような方法は、上述した皮膚疾患を緩和する、あるいは、低減する、すべての方法を含むはずである。
【0018】
この明細書で使用されているように、語句「吸収体製品」は、身体からの排泄物、流体および浸出物を吸収するために、幼児および成人によって使用される製品である。この吸収体製品には、オムツ(幼児および成人の双方)、パンティライナーおよび成人用吸収ナプキン(極薄タイプを含む)等の衛生保護製品、および、外科用ガーゼおよび包帯等の創傷用製品が含まれる。吸収体製品は、流体であるが、糞便等の固形物または半固形物をも含む排泄物を吸収してもよい。
【0019】
この明細書で使用されているように、語句「ナノ粒子」は、粒子(棒状粒子、円盤状粒子、血小板状粒子、四面状粒子を含むが、これらの形状の粒子に限定されない)、繊維体、ナノチューブ、あるいは、ナノレベルの寸法を有する他の任意の材料である。
【0020】
本発明は、酵素類、特に、リパーゼおよびプロテアーゼによって生じる皮膚バリア層の崩壊に起因する皮膚疾患を治療するための新規の方法について説明している。本発明は、当該酵素類の活性を低減する上で有効である。
【0021】
本発明の方法は、リパーゼおよびプロテアーゼからなる群より選択された酵素を、有効量の複合材料に接触させることを含み、当該複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、当該金属は、当該ナノ粒子の表面上に保持されている。
【0022】
本発明において、ナノ粒子は、約1ナノメートル〜約1000ナノメートル、好ましくは、2ナノメートル〜約750ナノメートルの平均粒子サイズを有している。すなわち、ナノ粒子は、約1ナノメートル〜約1000ナノメートルの最大寸法(例えば、直径または長さ)を有している。ナノチューブは、長さ1センチメートル以下の構造、あるいは、約2ナノメートル〜約50ナノメートルの粒子サイズを含み得る。ナノ粒子は、体積に対して非常に大きな表面積を有している。ナノ粒子は、結晶質あるいは非晶質であってもよい。単一タイプのナノ粒子が使用されてもよく、異なるタイプのナノ粒子の混合物も使用されてもよい。仮にナノ粒子の混合物が使用された場合に、当該ナノ粒子は、複合材料中に、あるいは、当該複合材料を含む系または組成物中に、均一に、あるいは、非均一に分布されてもよい。
【0023】
ナノ粒子の適切な粒径分布(particle size distributions)の例は、約2ナノメートルから約750ナノメートル未満の範囲、あるいは、約2ナノメートルから約200ナノメートル未満の範囲、あるいは、約2ナノメートルから約150ナノメートル未満の範囲であるが、これらの範囲に限定されるものではない。また、特定の粒径分布が特定の効果を与える上で有用であり、他の粒径分布が他の効果(例えば、着色強化は、他の特性で要求されるサイズとは異なる範囲の粒子サイズを要求する)を与える上で有用であると理解されるはずである。1バッチ分のナノ粒子の平均粒子サイズは、ナノ粒子の粒径分布とは異なることがある。例えば、層状の合成ケイ酸塩は、約25ナノメートルの平均粒子サイズを有しているが、その粒径分布は、概ね、約10ナノメートル〜約40ナノメートルの間で、変動してもよい。この明細書に記述された粒径分布が、当該粒子が水性媒体中に分散されたときの、ナノ粒子の粒径分布であり、かつ、平均粒子サイズが粒径分布の平均値に基づいていると理解されるはずである。
【0024】
本発明に使用されるナノ粒子は、その表層部分が剥離されている(exfoliated)。特に、出発原料は、その表層部分が剥離され、あるいは、その表層部分が放出されて(disbursed)、ナノ粒子を構成する。このような出発原料は、約50マイクロメートル(50,000ナノメートル)以下の平均サイズを有してもよい。このナノ粒子は、非晶質の粘土または構造化された粘土から作製される粒子を含む、例えば、天然または合成のナノ粘土を含んでもよい。
【0025】
一つの実施の形態において、表層剥離済みナノ粒子は、ナノ粘土である。他の実施の形態において、ナノ粒子は、膨潤性のナノ粘土、または、当該ナノ粘土の付加化合物である。膨潤性のナノ粘土は、中間層において弱く結合したイオンを有するものであり、当該ナノ粘土は、加水分解され得るか、あるいは、有機溶媒を吸収し得る。これらの膨潤性のナノ粘土は、概ね、小さな陽イオンまたは陰イオン性の電荷、すなわち、単位格子当たり約0.9ユニット未満の電荷を有している。
【0026】
この明細書で使用されているように、「付加化合物」とは、油膨潤性ナノ粘土、すなわち、極性溶媒および非極性溶媒等の有機性、非水溶媒中で膨潤するナノ粘土を意味する。当該付加化合物は、水膨潤性ナノ粘土を、この膨潤性ナノ粘土に結合する有機材料と反応させることによって調製されてもよい。このような結合用の有機材料の例は、構造:
R1R2R3R4N+X-
を有する第四級アンモニウム化合物であって、ここで、当該R基のうち、少なくとも一つの基が1個〜22個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜22個の炭素原子を有するアルケニル基、あるいは、1個〜22個の炭素原子を有するアラルキル基であることを条件として、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ個別に、水素原子、当該アルキル基、当該アルケニル基、および、当該アラルキル基から選択されると共に、Xは、水膨潤性ナノ粘土である、第四級アンモニウム化合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
当該膨潤性ナノ粘土は、非晶質であってもよく、あるいは、構造化されても、すなわち、複数のシートまたは層を含む構造とされてもよく、ここで、当該複数の層の組み合わせは、格子構造と呼ばれる。格子構造を有する適切なナノ粘土の例は、パイロフィライト(2八面体)タイプ、タルク(3八面体)、あるいは、これらの混合物を含む。構造化された適切な膨潤性ナノ粘土の分類は、スメクタイト・ナノ粘土、海泡石ナノ粘土、ゼオライト・ナノ粘土、パリゴルスカイト・ナノ粘土、あるいは、これらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
非晶質の膨潤性ナノ粘土の例は、アロフェン(allophone)およびイモゴライトを含む。
【0029】
一つの実施の形態において、ナノ粒子は、10マイクロメートル〜18マイクロメートル(10000ナノメートル〜18000ナノメートル)の粒子サイズを有する商品名ナノマー(Nanomer)1.34TCN(ナノコール社(Nanocor)から入手可能である)等の出発原料から作製される。他の実施の形態において、ナノ粒子は、20マイクロメートル〜25マイクロメートルの粒子サイズを有する商品名ピージーブイ(PGV)(この商品もナノコール社(Nanocor)から入手可能である)から作製される。他の実施の形態において、1ナノメートル〜3ナノメートルの粒子サイズ範囲を有する表層剥離済みのピージーブイ(PGV)が使用される。他の実施の形態において、商品名ナノマー(Nanomer)1.34TCN、および、1ナノメートル〜9ナノメートルの粒子サイズ範囲を有する商品名ナノマー(Nanomer)1.30Eが使用される。
【0030】
ベーマイトアルミナは、2ナノメートル〜750ナノメートルの平均粒径分布を有することができる。
【0031】
層状粘土鉱物は、表層剥離済みナノ粒子用の出発原料として使用され得る。本発明での使用に適した層状粘土鉱物は、スメクタイト類、カオリン類、イライト類、クロライト類、アタパルジャイト類および混合層粘土の地質学的分類に属する鉱物を含む。当該分類に属する特定の粘土の典型例は、スメクタイト類、カオリン類、イライト類、クロライト類、アタパルジャイト類および混合層粘土である。例えば、スメクタイト類は、モンモリロナイト、ベントナイト、パイロフィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、ボルコンスコイト(volchonskoite)、ステベンサイトおよびバーミキュライトを含む。一つの実施の形態では、モンモリロナイト系ナノ粘土が好適である。この明細書に、参照によって組み込まれる米国特許第5,869,033号を参照されたい。カオリン類は、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト(nacrite)、アンチゴライト、アナウキサイト(anauxite)、ハロイサイト、インデライト(indellite)およびクリソタイルを含む。イライト類は、ブラバサイト(bravaisite)、ムスコバイト(muscovite)、パラゴナイト、金雲母および黒雲母を含む。クロライト類は、コレンサイト(corrensite)、苦土緑泥石(penninite)、ドンバサイト(donbassite)、須藤石(sudonite)、苦土緑泥石(pennine)およびクリノクロアを含む。アタパルジャイト類は、海泡石およびパリゴルスカイト(polygorskyte)を含む。混合層粘土は、アレバルダイト(allevardite)およびバーミキュライト・バイオタイト(vermiculitebiotite)を含む。当該層状粘土鉱物の異形および同形の置換体は、独特の用途を与える。
【0032】
層状粘土鉱物は、天然物または合成物のいずれであってもよい。例えば、天然または合成のヘクトライト類、モンモリロナイト類およびベントナイト類は、ナノ粒子用の出発原料として使用され得る。
【0033】
天然の粘土鉱物は、通常、層状ケイ酸塩鉱物として、また、非晶質鉱物ほど頻繁ではない程度に存在している。層状ケイ酸塩鉱物は、二次元ネットワーク構造中に配されたSiO4四面体シートを有している。2:1タイプの層状ケイ酸塩鉱物は、マグネシウム八面体シートまたはアルミニウム八面体シートが二枚のシリカ四面体シート間に挟まれた三層構造を有する、数枚から数十枚のケイ酸塩シートの積層構造を有している。
【0034】
膨張性層状ケイ酸塩シートは、負電荷を有しており、当該電荷は、アルカリ金属陽イオンおよび/またはアルカリ土類金属陽イオンの存在によって中性化される。スメクタイトすなわち膨張性マイカは、水中に分散されて、チキソトロピー特性を呈するゾルを形成できる。さらに、スメクタイト系粘土の異形複合体は、種々の陽イオン性の有機化合物または無機化合物との反応によって形成され得る。このような有機複合体の例は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン(四級アンモニウムイオン)が陽イオン交換によって導入される有機物親和性粘土である。この有機複合体は、被膜のゲル化剤として工業的に製造され、かつ、使用されてきた。
【0035】
合成ナノ粘土は、本発明において使用されてもよい。適切なプロセス制御では、合成ナノ粘土の製造方法は、確かにナノ寸法の一次粒子(primary particle)を生み出す。しかし、当該一次粒子は、一つずつが分離した状態の粒子の形態で通常存在しないが、これに代えて、主に、当該一次粒子の圧密に起因する凝集体の形態を呈する。このような凝集体は、当該粒子のナノ寸法の性質に関連した所望の特性が達成され得ないような数千ナノメートルの直径に達しうる。粒子は、例えば、欧州特許EP-A 637,616号に記述されているように粉砕によって、あるいは、水または水/アルコール、および、これらの混合物等の適切な担体用媒体中への分散によって、脱凝集化されてもよい。
【0036】
適切なナノ粘土を製造するための合成材料は、層状含水ケイ酸塩、層状含水アルミニウムケイ酸塩、フルオロケイ酸塩、マイカ・モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ケイ酸リチウムマグネシウム、および、フルオロケイ酸リチウムマグネシウムを含む。ケイ酸リチウムマグネシウムの異形置換体の例は、ヒドロキシル基がフッ素と部分的に置換されている場合である。また、リチウムおよびマグネシウムは、部分的にアルミニウムにより置換されてもよい。ケイ酸リチウムマグネシウムは、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、鉄、クロム、亜鉛、および、これらの混合物からなる群より選択された、いずれかの要素により同形置換されてもよい。
【0037】
例えば、サザン・クレイ・プロダクツ・インク(Southern Clay Products, Inc.)によりラポナイト(LOPONITE:商標)名で市販されているような合成ヘクトライトは、ナノ粒子用の出発原料として使用されてもよい。市販のラポナイト(LOPONITE:商標)には、多くの等級あるいは異形または同形の置換体がある。市販のヘクトライトの例は、ラポナイトB(LOPONITE B:商標)、ラポナイトS(LOPONITE S:商標)、ラポナイトXLS(LOPONITE XLS:商標)、ラポナイトRD(LOPONITE RD:商標)、ラポナイトXLG(LOPONITE XLG :商標)、および、ラポナイトRDS(LOPONITE RDS)である。
【0038】
合成ヘクトライトは、いかなるフッ素をも含有していない。フッ素を有するヒドロキシル基の同形置換体は、フルオロケイ酸ナトリウムマグネシウムリチウム(sodium magnesium lithium fluorosilicates)と呼ばれる合成粘土を製造することになり、当該置換体も、上述の出発原料として使用されてもよい。ラポナイト(LOPONITE:商標)およびラポナイトS(LOPONITE S:商標)として市販された当該フルオロケイ酸ナトリウムマグネシウムリチウムは、約10重量%以下のフッ化物イオンを含有してもよい。この明細書に記述された組成物中に有用なフッ化物イオンの含有率は、約10%以下、あるいは、それ以上の百分率以下である。ラポナイトB(LOPONITE B:商標)であるフルオロケイ酸ナトリウムマグネシウムリチウムは、フッ化物イオンによって決まる、25ナノメートル〜100ナノメートルの平均粒子サイズを有する、円形の平板状の形状を有している。例えば、限定されない一つの実施の形態において、約25ナノメートル〜40ナノメートルの直径を有し、かつ、約1ナノメートルの厚さを有するラポナイトB(LOPONITE B:商標)が使用されてもよい。ラポナイトS(LOPONITE S:商標)と呼ばれる他の異形体は、添加剤として約6%のピロリン酸四ナトリウムを含有している。
【0039】
一つの実施の形態においては、ラポナイトXLS(LOPONITE XLS:商標)がナノ粒子用の出発原料として使用され、かつ、銀が当該出発原料上に金属として保持されている。ラポナイトXLSは、八面体状のマグネシウムおよびリチウムのヒドロキシル架橋剤によって結合された複数の四面体状のケイ酸塩層を有している。この構造は、ナノ粘土の表面への金属の挿入または吸収のいずれかによって、剥離および改質を可能にする。挿入の場合には、金属がナノ粘土の層間に挿入される。表面吸収の場合には、金属がナノ粘土の表面に結合する。ラポナイトXLSは、当該ラポナイトXLSが合成的に一貫性および純度を有し、かつ、剥離して最小労力でナノ粒子を形成できるので、有利である。ナノ粒子の表面は、多数のケイ酸塩基の負電荷を相殺するために、ナトリウムイオンで被覆されている。
【0040】
表層剥離済みナノ粒子のアスペクト比は、一部の場合に、所望の特徴を有する複合材料を含む膜を形成する際に関心事となる。分散液のアスペクト比は、TEM(透過電子顕微鏡法)によって的確に特徴付けられ得る。
【0041】
一つの実施の形態におけるナノ粒子のアスペクト比は、100〜250の範囲に入ることができる。他の実施の形態において、ナノ粒子のアスペクト比は、200〜350である。
【0042】
例えば、ラポナイトB(LOPONITE B:商標)の個別粒子の平均アスペクト比は、約20〜40であり、ラポナイトRD(LOPONITE RD:商標)の個別粒子の平均アスペクト比は、約10〜15である。ラポナイトB(LOPONITE B:商標)は、分散液中に、本質的に単層の粘土粒子または二層の粘土粒子として存在する。ラポナイトRD(LOPONITE RD:商標)は、本質的に二層以上の粘土粒子として存在する。
【0043】
一部の実施の形態において、高アスペクト比は、膜形成に望ましいことがある。水等の適切な担体用媒体中に分散された表層剥離済みナノ粒子のアスペクト比も関心事である。分散媒体中のナノ粒子のアスペクト比は、当該ナノ粒子の一部が凝集されている場合、低い。
【0044】
特定の実施の形態において、個別(非凝集状態)の血小板状および円盤状のナノ粒子の少なくとも一部は、約0.5ナノメートル以上の少なくとも一次元寸法および約15以上のアスペクト比を有することが望ましいことがある。より大きなアスペクト比が、棒状のナノ粒子よりも血小板状および円盤状のナノ粒子には望ましいことがある。
【0045】
棒状のナノ粒子のアスペクト比は、適切な膜形成特性を維持しつつ、円盤状または血小板状のナノ粒子のアスペクト比より低くできる。限定されない特定の実施の形態において、棒状のナノ粒子の少なくとも一部は、約0.5ナノメートル以上の少なくとも一次元寸法および約3以上のアスペクト比を有することが望ましいことがある。
【0046】
回転楕円状のナノ粒子のアスペクト比は、概ね、約5以下である。この明細書で示された複数の実施の形態に好適なナノ粒子は、約250以下のアスペクト比を有している。限定されない他の実施の形態において、ナノ粒子が約10未満のアスペクト比を有することが望ましいことがある。
【0047】
本発明によれば、一つ以上の金属は、ナノ粒子を機能化させるために使用される。特に、当該金属は、挿入、吸収またはイオン交換を含む種々の方法のうちの一つによって、表層剥離済みナノ粒子上に保持されている。有利なことに、当該金属は、ナノ粒子上にありつつ、有用な特性を保持している。この明細書で使用されているように、用語「保持された」とは、ナノ粒子の全表面、あるいは、当該表面の一部のみを覆う態様を含む。
【0048】
一つの実施の形態において、金属は、元素周期表の第3族〜第12族、アルミニウムおよびマグネシウムから選択される。好適には、金属は、銀、銅、亜鉛、マンガン、プラチナ、パラジウム、金、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、および、これらの混合物から選択される。特に好適な実施の形態において、金属は銀である。
【0049】
金属は、挿入によって、ナノ粒子上に保持されてもよい。例えば、特に、銀イオンは、正電荷の銀イオンとケイ酸塩構造中の種々のタイプの酸素との間への好適な挿入を最大化するために、「孔」内に当該銀イオンを配することによって、層状ナノ粘土の種々の層間に挿入され得る。同一の理由により、銅、亜鉛、マンガン等の他の金属イオンについても、挿入が可能である。
【0050】
金属は、イオン交換によっても、ナノ粒子上に保持されることがある。例えば、血小板状のラポナイトの表面は、下の層内のケイ酸塩構造によって提供された酸素原子の負電荷を相殺するために存在するナトリウムイオンから主として構成されている。正電荷の金属イオンが表層剥離済みラポナイトの溶液中に添加された場合に、ナトリウムイオンの表面分画は、添加された金属陽イオンによって置換される。
【0051】
金属は、吸収によっても、ナノ粒子上に保持されることがある。例えば、アミン、アンモニウムおよびカルボキシル基等、特定の官能基は、血小板状のラポナイトの表面または縁部への結合力が強い。金属イオンは、ラポナイトの表面に強く結合できるように、リガンドの添加により改質され得る。一例に関する反応順は、以下に示されている:
2AgNO3 + 2NaOH → Ag2O + 2NaNO3 + H2O
Ag2O + 4NH3 + H2O → 2Ag(NH3)2OH
【0052】
最終生成物のAg(NH3)2OHは、ラポナイトに接触され、これにより、Ag(NH3)2OHはラポナイトの表面に結合する。
【0053】
本発明の一つの実施の形態において、金属イオンが、出発原料の存在下で、金属(0)に還元され、この出発原料は表層剥離されてナノ粒子を形成する。還元および表層剥離は、ステップ(最初に行ういずれかのステップ)順に、あるいは、金属を出発原料/表層剥離済みナノ粒子に接触させるステップ時と同時に、行われてもよい。これにより、金属は、表層剥離済みナノ粒子の表面上に保持される。
【0054】
本発明の一つの実施の形態において、金属が銀であり、この銀がトレンス試薬を用いる挿入によってナノ粒子上に保持される。トレンス試薬は、アルデヒドまたはケトンのいずれかによる還元を受けて金属銀(0)を形成できる公知の銀種である:
+Ag(NH3)2OH + グルコース → Ag0
【0055】
ナノ粒子が大きな表面積を有するので、複合材料は、処方(formulation)全体に含まれる金属をより高濃度にできるはずである。
【0056】
本発明の組成物は、影響を受けた皮膚領域に直接、塗布されるか、あるいは、拭取り繊維、オムツ、生理用ナプキン、パンティライナー、または、これらの同類等の基材を介して、塗布されてもよい。
【0057】
複合材料は、液体、固体、ゲル、被膜用組成物、化粧用組成物および医療用組成物、および、これらの同類を含む、種々の系、材料および組成物中に組み込まれてもよい。複合材料は、幼児または成人の皮膚に直接、塗布される組成物中に組み込まれてもよい。本発明の組成物は、外表皮膚への局所塗布に使用されるクリーム、ローション、ゲル、発泡体、油、軟膏または粉末の形態であってもよい。本発明の組成物は、製品をそのままにしておく(leave-on product)か、あるいは、製品を洗い流す(rinse-off product)かのいずれかの方法による皮膚への適用に適した形態であってもよい。拭取り繊維は、当該組成物を配給するために使用されてもよい。
【0058】
当該複合材料を含有する組成物は、例えば、乳液の形態であってもよい。乳液組成物は、この組成物の全重量に基づいて、約1%〜約50%、例えば約5%〜約20%の少なくとも一つの油と、約50%〜約99%、例えば約80%〜約95%の少なくとも一つの水性成分と、約0.1%〜約20%、例えば約1%〜約5%の複合材料とを含有してもよい。概ね、当該組成物は、この組成物の全重量に基づいて、約0.1%〜約20%、例えば約1%〜約5%の少なくとも一つの乳化剤を含有してもよい。乳液は、ローション、ミルクまたはクリームの形態であってもよい。
【0059】
油相は、いかなる油で構成されてもよい。適切な油の例は、鉱物油、ラノリン、植物油、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0060】
水相は、水、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等のグリコール類、および、これらの混合物を含む水性成分から構成されてもよい。
【0061】
本来、主として親水性である乳化剤は、通常、水相中に添加され、一方、本来、主として親油性である乳化剤は、通常、油相中に添加される。本発明での使用に適した乳化剤は、少なくとも一つの非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性の界面活性剤であってもよい。一つ以上の非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性の界面活性剤の組み合わせも有用であってもよい。利用される界面活性剤のタイプおよび利用される界面活性剤の疎水性/疎油性のバランスは、所望の水中油型組成物のタイプによって決まるはずである。所望の特性を提供するはずである界面活性剤の組み合わせを選択することは、この技術分野における当業者の専門知識の範囲内である。
【0062】
本発明に有用な非イオン性界面活性剤は、エトキシル化脂肪アルコール類、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー類、エトキシル化アルキルフェノール類、アルキルグルコースと脂肪酸とのエトキシル化または非エトキシル化エステル類、および、グリセロールエステル類を含む。
【0063】
本発明に有用な非イオン性界面活性剤の一つの種類は、ポリオールエステル類のポリオキシエチレン誘導体であり、ここで、当該ポリオールエステルのポリオキシエチレン誘導体は、(1)(a)約8個〜約22個の炭素原子、好ましくは約10個〜約14個の炭素原子を含有する脂肪酸、および、(b)ソルビトール、ソルビタン、グルコース、アルファ−メチルグルコシド、1モル当たり平均約1個〜約3個のグルコース残基を有するポリグルコース、グリセリン、ペンタエリトリトール、および、これらの混合物から選択されたポリオールから誘導され、(2)平均約10個〜約120個、好ましくは約20個〜約80個のオキシエチレン単位を含有し、および、(3)ポリオールエステルのポリオキシエチレン誘導体の1モル当たり平均約1個〜約3個の脂肪酸残基を有するものである。
【0064】
ポリオールエステル類のポリオキシエチレン誘導体の例は、PEG-80ソルビタンラウレートおよびポリソルベート20を含むが、これらに限定されるものではない。平均約80モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたラウリン酸のソルビタンモノエステルであるPEG-80ソルビタンラウレートは、商品名アトラスG-4280(Atlas G-4280)で、米国デラウエア州ウィルミントンのユニクマ・アメリカズ(Uniqema Americas)社から市販されている。約20モルのエチレンオキシドで縮合されたソルビトールとソルビトール無水物との混合物のラウレートモノエステルである「ポリソルベート20」は、商品名ツイーン20(Tween 20)で、米国デラウエア州ウィルミントンのユニクマ・アメリカズ(Uniqema Americas)社から市販されている。
【0065】
適切な非イオン性界面活性剤の他の種類は、(a)約6個〜約22個、好ましくは約8個〜約14個の炭素原子を含有する長鎖アルコールを、(b)グルコースまたはグルコース含有ポリマーで縮合して得た縮合生成物である長鎖アルキルグルコシド類またはポリグルコシド類を含む。アルキルグルコシド類は、アルキルグルコシドの1モル当たり約1個〜約6個のグルコース残基を有している。
【0066】
この明細書で使用されているように、用語「両性」は、1)例えば、アミノ(塩基性)および酸(例えば、カルボン酸、酸性)の官能基の両方を含有するアミノ酸等、酸性部位および塩基性部位の両方を含有する分子;または2)同一分子内に正電荷および負電荷の両方を有する両性イオン分子を意味するものとする。後者の電荷は、組成物のpHによって決まるか、あるいは、当該pHとは無関係であるかのいずれであってもよい。両性イオン性物質の例は、アルキルベタイン類およびアミドアルキルベタイン類を含むが、これらに限定されるものではない。両性界面活性剤は、対イオンを除き、この明細書に開示されている。この技術分野における当業者は、本発明の組成物のpH条件下で、両性界面活性剤が正電荷および負電荷を相殺することによって電気的に中性であるか、あるいは、当該両性界面活性剤がアルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいは、アンモニウム対イオン等の対イオンを有するかのいずれであることを容易に理解するはずである。
【0067】
市販されている両性界面活性剤は、本発明での使用に適しており、当該両性界面活性剤は、両性型のカルボン酸塩(amphocarboxylates)、アルキルベタイン類、アミドアルキルベタイン類、アミドアルキルスルタイン類、両性型のリン酸塩(amphophosphates)、ホスホベタイン類、ピロホスホベタイン類、カルボキシアルキルアルキルポリアミン類、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0068】
陰イオン性界面活性剤は、本発明に有用であり、かつ、当該陰イオン性界面活性剤は、以下の種類の界面活性剤:アルキル硫酸塩;アルキルエーテル硫酸塩;アルキルモノグリセリルエーテル硫酸塩;アルキルモノグリセリド硫酸塩;アルキルモノグリセリドスルホン酸塩;アルキルスルホン酸塩;アルキルアリールスルホン酸塩;アルキルスルホコハク酸塩;アルキルエーテルスルホコハク酸塩;アルキルスルホサクシン酸塩(alkyl sulfosuccinamates);アルキルアミドスルホコハク酸塩;アルキルカルボン酸塩;アルキルアミドエーテルカルボン酸塩;アルキルコハク酸塩;脂肪酸アシルサルコン酸塩;脂肪酸アシルアミノ酸;脂肪酸アシルタウリン酸塩;脂肪酸アルキルスルホ酢酸塩;脂肪酸;アルキルリン酸塩;およびこれらの混合物から選択されてもよい。
【0069】
一つの実施の形態において、複合材料は、高分子乳化剤を有する溶液中に含有されている。この明細書で使用されているように、「高分子乳化剤」は、概ね、油相と水相との間で安定化できる乳液の形成に寄与できる、親水性部分および疎水性部分の両方を有するポリマーを云う。本発明によれば、適切であれば、あらゆる種々の高分子乳化剤が使用できる。特定の好適な実施の形態において、高分子乳化剤が添加される組成物に対して長期安定性を与える傾向がある、および/または、基材上への疎水性物質の堆積を促進する傾向がある一つ以上の高分子乳化剤を使用することは、望ましいことである。さらに、特定の好適な高分子乳化剤は、水溶性であり、かつ、水中での疎水性物質の安定性を好ましくは少なくとも一週間、より好ましくは少なくとも一ヶ月間にわたって維持できる相安定性の乳液を形成できる物質を含む。(この明細書で使用されているように、材料は、仮に脱イオン水中に当該材料を0.5重量%のみ添加することによって、室温(安定していない、すなわち、相不安定性)で48時間、安定化できる透明な溶液を形成できる場合に、「水溶性」として定義される。)特定の好適な高分子乳化剤は、電解質(通常は、皮膚表面上に存在するような電解質)の存在により、当該高分子乳化剤の水中での可溶性が、多くの場合に劇的に低下するという点で、塩分感受性である。高分子乳化剤は、仮に当該高分子乳化剤が、塩化ナトリウムが添加されたとき水溶液中での相安定性を維持する機能を喪失する場合には、「塩分感受性」として定義される。詳細には、「塩分感受性」の高分子乳化剤は、仮に脱イオン水中に1%の高分子乳化剤(活性状態)の均質溶液に3%の塩化ナトリウムが添加された場合に、相分離、および/または、30%以上の粘度変化(毎分12回転のLVT2スピンドルを備えたブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定された場合)を呈するはずである。
【0070】
本発明において高分子乳化剤として使用されるポリマー類は、適切であれば、いかなる分子量を有してもよい。本発明の特定の実施の形態において、高分子乳化剤は、好ましくは約500,000を超える重量平均分子量、より好ましくは約250,000を超える重量平均分子量、さらに好ましくは約100,000を超える重量平均分子量を有している。
【0071】
本発明に適した高分子乳化剤は、会合性ポリマー、すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、および、これらの同類等の酸、または、これら酸のコポリマーを形成するための酸の組み合わせを付加重合させることによって形成され得るような個々の反復単位が親水性であるように、モノマー類から形成されるポリマーを含むことがある。
【0072】
特に注目される市販の高分子乳化剤は、ノブオン(Noveon)社から商品名ペムレンTR-1およびTR-2(Pemulen:登録商標、TR-1およびTR-2)で市販されている、塩分感受性で、疎水性に改質されたポリアクリル酸;クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)から商品名アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)AVCで市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸および環状N-ビニルカルボキシアミド類をベースとした水溶性または水膨潤性コポリマー類;クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)から商品名アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)HMBで市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸および疎水性に改質されたメタクリル酸をベースとした水溶性または水膨潤性コポリマー類;および、グラント・インダストリーズ・インク(Grant Industries, Inc.)から商品名グランチックスAPP(Granthix APP)で市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸のホモポリマーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0073】
高分子乳化剤の他の種類は、疎水性に改質され、架橋された陰イオン性アクリル酸コポリマー類を含み、このコポリマー類は、ランダムポリマー類を含むが、当該コポリマー類は、ブロック、星形、グラフトまたはこれらの同類等の他の形態で存在してもよい。一つの実施の形態において、上記の疎水性に改質され、架橋された陰イオン性アクリル酸コポリマー類は、少なくとも一つの酸性モノマーおよび少なくとも一つの疎水性で、エチレン性不飽和モノマーから合成されてもよい。適切な酸性モノマー類の例は、塩基によって中和され得るエチレン性不飽和酸性モノマー類を含む。疎水性のエチレン性不飽和モノマーの適切な例は、少なくとも約3個の炭素原子の長さを有する炭素鎖を有する疎水性鎖を含有するモノマー類を含む。
【0074】
適切な高分子乳化剤となり得る他の材料は、米国ニュージャージー州パーシパニーのBASFコーポレーション(BASF corporation)から商品名プルロニック(PLURONIC)で市販されているエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー類、および、米国デラウエア州ウィルミントンのヘラクレス・コーポレーション(Hercules Corporation)から商品名クルーセル(KLUCEL)で市販されている改質型セルロースポリマー類のような改質型セルロースポリマー類を含む。
【0075】
本発明の特定の好適な実施の形態において、組成物は、ノブオン(Noveon)社による商品名ペムレン(Pemulen:登録商標)TR-1およびTR-2等の塩分感受性で、疎水性に改質されたポリアクリル酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、環状N-ビニルカルボキシアミド類、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)から商品名アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)AVCで市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸および環状N-ビニルカルボキシアミド類をベースとした水溶性または水膨潤性コポリマー類、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)から商品名アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)、HMBで市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸および疎水性改質型メタクリル酸をベースとした水溶性または水膨潤性コポリマー類、および、グラント・インダストリーズ・インク(Grant Industries, Inc.)から商品名グランチックスAPP(Granthix APP)で市販されている、アクリルアミドアルキルスルホン酸のホモポリマーからなる群より選択された塩分感受性の高分子乳化剤;皮膚軟化剤、例えば、鉱油、ペトロラタムまたはシリコーン油等の疎水性物質;スルホコハク酸塩およびイセチオン酸塩からなる群より選択された湿潤剤;および、オキシド、ケイ酸塩またはカルボン酸塩、特に酸化亜鉛または酸化チタン等の親水性粒子を含む。特に好適な実施の形態において、組成物は、上記で詳述された限定に見合い、かつ、モノマー系界面活性剤の乳化剤を実質的に含まない。
【0076】
本発明の組成物には、あらゆる適量で、高分子乳化剤が使用されてもよい。特定の好適な実施の形態において、本発明の組成物は、少なくとも約0.3重量%、例えば、約0.3%と約3%との間、約0.3%と約2%との間、および、約0.3%と約1%との間で含む。この明細書および用途全体で使用されているように、すべての百分率は、特に指示がない限り、組成物の全重量に基づいて、使用成分の重量%を示している。
【0077】
一つの実施の形態において、高分子乳化剤は、疎水性物質と組み合わせられている。室温で水不溶性の液体であり、かつ、本発明の組成物中に使用されたときに、基材上に耐水性のバリア膜、すなわち被覆を形成する能力を有する、あらゆる種々の疎水性材料は、疎水性物質として、本発明での使用に適している。(この明細書で使用されているように、用語「水不溶性」は、0.5重量%の濃度になるように、室温で脱イオン水中に添加された(他の添加物を含まない)ときに、少なくとも48時間続く期間で透明な均質混合物を形成できない材料を云う。)
【0078】
適切な疎水性物質の例は、鉱油、ペトロラタム、植物油(脂肪酸のグリセリルエステル類、トリグリセリド)、ワックスおよび他のエステル類の混合物、必須ではないがグリセロールのエステル類等の材料;ジメチコン、シリコーン油、シリコーンゴムおよびこれらの同類等のポリエチレンおよび非炭水化物系油を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施の形態において、好適な疎水性物質は、鉱油、シリコーン油、ペトロラタム、これらの組み合わせ、および、これらの同類等の皮膚軟化剤を含む。
【0079】
本発明の組成物には、あらゆる適量で、疎水性物質が使用されてもよい。特定の好適な実施の形態において、疎水性物質は、約0.1%〜約50%、好ましくは約0.1%〜約40%、さらに好ましくは約0.1%〜約30%のように、少なくとも約0.1重量%である濃度で、当該組成物中に存在している。
【0080】
特定の好適な実施の形態において、高分子乳化剤および疎水性物質は、それぞれ約60:1〜約1:150の重量比、好ましくは約40:1〜約1:120の重量比、および、約20:1〜約1:100の重量比で存在している。
【0081】
本発明の組成物で基材の湿潤を促進し、かつ、(例えば、疎水性物資の再乳化を回避することによって)当該組成物の疎水性物質を当該基材上に残留させることができるようにする上で適したあらゆる材料は、本発明の湿潤剤として使用されてもよい。好適には、適切な湿潤剤は、少なくとも一つのスルホン酸基(部分)と、塩基で中和可能な少なくとも一つのカルボン酸基(部分)とを含む。
【0082】
適切な湿潤剤の限定されない例は、スルホ酢酸ラウレス2ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、2−スルホラウリン酸メチルナトリウム、および、これらの同類等のスルホコハク酸塩、ココイルイセチオン酸ナトリウムおよびこれらの同類等のイセチオン類、および、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムおよびこれらの同類等のスルホ酢酸塩を含む。このような種々の湿潤剤は、マッキンタイア・グループ・リミテッド(McIntyre Group Limited)(商品名マッカナート(MACKANATE)ELで販売されているスルホ酢酸ラウレス2ナトリウム、商品名マッカナート(MACKANATE)DOS 70で販売されているジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、ステパン・カンパニー(Stepan Company)(商品名アルファステップ(ALFA STEP)PC 48)で販売されている、2−スルホラウリン酸メチルナトリウム、商品名ランタノール(LANTHANOL)LALで販売されているラウリルスルホ酢酸ナトリウム)、および、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)(商品名ホスタポン(HOSTAPON)SCI 85)で販売されているココイルイセチオン酸ナトリウム)を含む種々の製造元から市販されている。
【0083】
本発明の組成物には、あらゆる適量で、湿潤剤が使用されてもよい。特定の好適な実施の形態において、本発明は、少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.01重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約3重量%、さらに好ましくは約0.1重量%〜約2重量%の湿潤剤を含む。
【0084】
この明細書で使用されているように、用語「親水性粒子」は、概ね、室温で固体となる傾向があり、本来的に概ね親水性であり、水不溶性または難溶性のいずれかの傾向があり、および/または、水のみに非常に遅い速度で溶解する、あらゆる粒子(実質的に球状、多孔質、または、高アスペクト比の)を云う。本発明によれば、適切であれば、あらゆる種々の親水性粒子が使用できる。出願人らは、特定の実施の形態では、水中に分散可能である親水性粒子が好適に選択され、かつ、当該親水性粒子が約0.01マイクロメートル〜約500マイクロメートル、好ましくは約0.1マイクロメートル〜約500マイクロメートル、より好ましくは約0.5マイクロメートル〜約400マイクロメートル、さらに好ましくは1.0マイクロメートル〜約300マイクロメートル、またさらに好ましくは約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの粒径を有していることを認識していた。特定の実施の形態において、親水性粒子は、この親水性粒子の親水性を相殺する傾向がある一つ以上の疎水性部分(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、特定の有機シラン類などに由来する疎水性への表面改質、および、これらの同類の被膜)を含む一つ以上の被膜を本質的に有していない。この明細書での使用に適した親水性粒子の限定されない例は、酸化亜鉛、二酸化チタン、遷移金属の酸化物または他の顔料酸化物等の金属酸化物、種々の形態のシリカ、アルミノケイ酸塩、カルボン酸塩、これらの二つ以上の組み合わせ、および、これらの同類を含む。特定の好適な実施の形態では、酸化亜鉛は、特に注目される。
【0085】
本発明の組成物には、あらゆる適量で、親水性粒子が使用されてもよい。特定の実施の形態において、本発明の組成物は、約0.01%〜約50%、好ましくは約0.1%〜約45%、より好ましくは約0.1%〜約40%の親水性粒子を含む。
【0086】
特定の好適な実施の形態において、本発明の組成物は、モノマー系界面活性剤の乳化剤を実質的に含まない。この明細書で使用されているように、用語「モノマー系界面活性剤の乳化剤を実質的に含まない」とは、約1.0%未満、好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.1%未満、さらに好ましくは約0.01%未満、またさらに好ましくは約0.001%未満で含む組成物を云う。「モノマー系界面活性剤の乳化剤」とは、上述して定義された「湿潤剤」の範囲内に入る物質以外のあらゆるモノマー系界面活性剤を意味する。モノマー系界面活性剤の乳化剤の例は、例えば、ココナッツ油由来の混合物、獣脂由来の物質、および、合成直鎖−主鎖、ランダム鎖または副鎖を有する物質を含むポリオキシアルキル化(polyoxyalkynated)アルコール類(アルコールアルコキシレート類);ポリオキシエチレン化(polyoxyehylenated)p-ノニルフェノール、オクチルフェノールを含むポリオキシアルキル化アルキルフェノール類(アルキルフェノールアルコキシレート類)、および、これらの同類等の非イオン性モノマー系乳化剤を含む。
【0087】
モノマー系界面活性剤の乳化剤の他の例は、長鎖アミン類、ジアミン類、および、ポリアミン類、および、これらの塩類等、純粋な陽イオン性であるすべてのモノマー系乳化剤;四級アンモニウム化合物(エトキシル化あるいは非エトキシル化、ポリオキシエチレン化された長鎖アミン類およびアミン酸化物類)、並びに、両性乳化剤、すなわち、両性イオン状態(分子が陽イオンおよび陰イオンの電荷の両方を有している状態)を採用できる物質を含む。これらの物質の例は、アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミノプロピオン酸、アルキルアンホ酢酸塩(alkylamphoacetates)、アルキルアンホグリシン酸塩(alkylamphoglycinates)、カルボン酸イミダゾリン類、リン酸化イミダゾリン類、アルキルベタイン類、アルキルアミドベタイン類、特定のアミン酸化物;スルホベタイン類、および、アルキルスルタイン類、および、アルキルアミドスルタイン類を含む。
【0088】
本発明の組成物は、好ましくは、当該組成物が標準条件(22℃、相対湿度50%)で当該組成物の製造後一週間以上、保持されたときに、相安定性を喪失しない、すなわち、「崩す」ことがない点で、長期安定性を呈する水中油型乳液となるように処方される。
【0089】
本発明の組成物は、一つ以上の選択成分をも含めてもよく、この選択成分は、真珠光沢剤または乳白剤(opacifying agent)、増粘剤、二次的なコンディショナー、保湿剤、キレート剤、および、当該組成物の外観、感触および香りを強調する添加剤、例えば、着色剤、香料、保存料、pH調整剤、スキンコンディショナー、抗刺激剤、抗炎症剤、抗菌剤、センセイト(sensates)、掻痒防止剤(anti-puritics)、皮膚保護剤、塗膜形成剤、保存料およびこれらの同類等を非排他的に含む。本発明の組成物のpHは、約2〜約10、好ましくは約4〜約9、最も好ましくは約7〜約9の範囲内に維持されることが好ましい。
【0090】
水不溶性の添加剤を懸濁させることができる、市販の真珠光沢剤または乳白剤は、本発明での使用に適している。真珠光沢剤または乳白剤は、組成物の全重量に基づいて、約0%〜約3%、好ましくは約0.25%〜約2.5%、より好ましくは約0.5%〜約1.5%の量で存在している。適切な真珠光沢剤または乳白剤の例は、
a)(1)約16個〜約22個の炭素原子を有する脂肪酸と(2)エチレンまたはプロピレングリコールのいずれかとのモノエステル類またはジエステル類;
b)(1)約16個〜約22個の炭素原子を有する脂肪酸と(2)一般式:HO(JO)a--Hで示されるポリアルキレングリコールであって、ここで、Jは約2個〜約3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、aは2または3である、ポリアルキレングリコールとのモノエステル類またはジエステル類;
c)約16個〜約22個の炭素原子を含有する脂肪アルコール類;
d)一般式:KCOOCH2Lで示される脂肪酸エステル類であって、ここで、KおよびLは、独立して、約15個〜約21個の炭素原子を含有する、脂肪酸エステル類;
e)上記組成物中に不溶である無機固体、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0091】
真珠光沢剤または乳白剤は、米国ニュージャージー州ホーボーケンのヘンケル・コーポレーション(Henkel Corporation)から商品名「ユーパーラン(EUPERLAN)PK-3000」で市販されているような、予め形成され、安定化された水性分散液として、当該組成物に導入されてもよい。この材料は、ジステアリン酸グリコール(エチレングリコールとステアリン酸とのジエステル)と、Laureth-4(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)4OH)と、コカミドプロピルベタインとの組み合わせであり、かつ、それぞれ、約25〜約30:約3〜約15:約20〜約25の重量比であることが好ましい。
【0092】
当該組成物に対して適切な粘度を付与できる市販の増粘剤は、本発明での使用に適していることがある。仮に使用された場合に、当該増粘剤は、当該組成物のブルックフィールド(Brookfield)粘度を、約500センチポアズ(約0.5パスカル秒)と約10,000センチポアズ(約10パスカル秒)との間の値に上昇させる上で十分な量で、当該組成物中に存在しているはずである。適切な増粘剤の例は、
a)1)一般式:HO(CH2CH2O)zHで示されるポリエチレングリコールであって、ここで、zは約3〜約200までの整数である、ポリエチレングリコールと;2)約16個〜約22個の炭素原子を含有する脂肪酸とのモノエステル類またはジエステル類;
b)エトキシル化ポリオール類の脂肪酸エステル類;
c)脂肪酸とグリセリンとのモノエステル類およびジエステル類のエトキシル化誘導体;
d)ヒドロキシアルキルセルロース;
e)アルキルセルロース;
f)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース;および、これらの混合物を非排他的に含む。
【0093】
好適な増粘剤は、ポリエチレングリコールエステルを含み、より好ましくは、米国イリノイ州ノースフィールドのステパン・カンパニー(Stepan Company)から、あるいは、イタリア国ボローニャのエス・ピー・エー(S.p.A.)社から商品名「PEG 6000DS」で市販されているジステアリン酸塩PEG-150を含む。
【0094】
当該組成物に対して保湿特性および皮膚状態調節性を付与できる市販の保湿剤は、本発明での使用に適していることがある。保湿剤は、組成物の全重量に基づいて、約0%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約5%、より好ましくは約0.5%〜約3%の量で存在している。適切な保湿剤の例は、1)グリセリン、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、および、これらの混合物からなる群より選択された水溶性の液状ポリオール類;2)一般式:HO(R"O)bHで示されるポリアルキレングリコールであって、ここで、R"は約2個〜約3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつbは約2〜約10までの整数である、ポリアルキレングリコール;
3)一般式:CH3C6H10O5(OCH2CH2)cOHで示されるメチルグルコースのポリエチレングリコールエーテルであって、ここで、cは約5〜約25までの整数である、ポリエチレングリコールエーテル;
4)尿素;および、5)当該1)〜4)と好適な保湿剤であるグリセリンとの混合物を非排他的に含む。
【0095】
保存料は、本発明の処方への添加剤であってもよい。しかし、有利なことに、銀の本来的な抗菌性により、当該保存料が必要でないことがある。適切な保存料は、米国ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・コーポレーション(Dow Chemical Corporation)から「ダウイシル(Dowicil)200」として市販されているクオータニウム(Quaternium)-15を含み、かつ、当該保存料は、組成物の全重量に基づいて、当該組成物中に約0%〜約0.2%、好ましくは約0.05%〜約0.10%の量で存在している。
【0096】
上述した組成物は、適切な容器内で複数の所望の成分を混合し、かつ、機械式撹拌プロペラ、パドルおよびこれらの同類等、この技術分野において周知になっている従来のあらゆる混合手段により、周囲の条件下で、当該成分を混合することによって調製されてもよい。混合順は重要ではないが、香料および非イオン性界面活性剤等の特定成分を主混合物中に添加する前に、当該特定成分を予め混合しておくことが好ましい。
【0097】
増粘剤成分を使用する場合にも、好ましくは約60℃〜約80℃の温度で、上記組成物の全重量に基づいて、約5%〜約20%の水と所望の増粘剤とを予め混合することも好ましい。増粘剤を用いて製造する場合にも、予め形成された、あらゆる真珠光沢剤が添加される前に、組成物全体の温度を40℃未満に下げることが好ましい。
【0098】
また、複合材料または当該複合材料を含む組成物は、吸収体、創傷用製品、あるいは、軟質表面を含む他の製品等の構造体中または製造製品中に導入されてもよい。
【0099】
当該組成物は、表面(複数の表面を含む)に塗布されてもよく、この塗布は、当該表面の少なくとも約0.5%、あるいは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%および少なくとも約100%を含むが、これらに限定されない、当該表面の0.5%を超える百分率の表面を覆う被膜、特に、透明な被膜を形成するために、洗浄、噴霧、浸漬、塗装、拭取り、または、他の方法によって行われる。したがって、当該被膜は、連続的あるいは不連続的なものであってもよい。
【0100】
仮に被膜用組成物が当該表面上に噴霧される場合には、当該被膜用組成物の粘度は、当該被膜用組成物が噴霧装置のノズルを通過できる程度である必要がある。このような粘性は周知であり、かつ、その周知内容は、参照によって、この明細書に組み込まれる。当該組成物は、この組成物が噴霧され得るように、ずり減粘(shear thinning)を受けることができるものであってもよい。
【0101】
複合材料を含有する組成物に適した担体用媒体は、液体、固体および気体を含む。適切な担体用媒体の一つは水であり、この水は、蒸留水、脱イオン水、あるいは、水道水であってもよい。水は、その低コスト、利用可能性、安全性、および、相溶性のために、有用である。液体、特に水のpHは、酸または塩基の添加によって調節されてもよい。水性の担体用媒体も、基材に対して容易に塗布された後に、乾燥する。たとえ水性の担体用媒体が、乾燥したナノ水性媒体よりも一般的であるとしても、組成物は、乾燥粉末、顆粒またはタブレットまたはカプセル内包型の複合形態として存在し得る。
【0102】
任意に、水に加えて、あるいは、水に代えて、担体用媒体は、低分子量の有機溶媒を含めることができる。好適には、当該溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、および、これらの同類、および、これらの混合物のように、水に対し高溶解性である。当該溶媒は、任意の適切な量で使用可能である。限定されない数例では、組成物全体に対して、約50重量%以下、あるいは、それ以上の重量百分率以下;約0.1重量%〜約25重量%;約2重量%〜約15重量%;および、約5重量%〜約10重量%の量を含む。高含有量の溶媒が組成物に使用された場合に考慮する要素は、ナノ粒子の臭い、炎症性、分散性、および、環境影響である。
【0103】
担体用媒体は、乾燥時に、連続皮膜を形成する被膜形成要素をも含めてもよい。被膜形成要素の例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、アクリル系乳液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0104】
複合材料を含有する組成物中で使用できる助剤は、当該複合材料を基材に固定する上で役立つ機能性を含む少なくとも一つのセグメントまたは基とのポリマー類およびコポリマー類を含む。これらのポリマー類も、当該ポリマー類に、親水性または疎水性等の付加的な特徴を与える少なくとも一つのセグメントまたは基を含めてもよい。
【0105】
固定用のセグメントまたは基の例は、ポリアミン類;四級化ポリアミン類;アミノ基;四級化アミノ基;および、これらに対応するアミンオキシド類;両性イオン性ポリマー類;ポリカルボン酸塩;ポリエーテル類;ポリヒドロキシル化ポリマー類;ポリホスホン酸塩およびポリリン酸塩;およびポリマー性キレートを含む。
【0106】
親水性のセグメントまたは基の例は、エトキシル化またはアルコキシル化ポリアミン類;ポリアミン類;ポリカルボキシル化ポリアミン類;水溶性ポリエーテル類;サッカリド類およびポリサッカリド類を含む水溶性ポリヒドロキシル化基またはポリマー類;水溶性カルボン酸塩およびポリカルボン酸塩;カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩およびこれらのポリマー類等の水溶性陰イオン基;水溶性アミン類、四級化物、アミンオキシドおよびこれらのポリマー類;水溶性の両性イオン性基およびこれらのポリマー類;水溶性アミド類およびポリアミド類;および、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとの水溶性ポリマー類およびコポリマー類を含む。
【0107】
疎水化(hydrophobizing)セグメントまたは基の例は、アルキル基、アルキレン基およびアリール基、および、ポリマー性の脂肪族または芳香族炭化水素類;過フッ化炭化水素類、および、過フッ化炭化水素類を含むポリマー類;シリコーン類;ポリ(スチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ドデシルグリシジルエーテル)等の疎水性ポリエーテル類;および、ポリカプロラクトンおよびポリ(3-ヒドロキシカルボン酸)等の疎水性ポリエステル類を含む。
【0108】
本発明の組成物中に導入され得る親水性表面ポリマー類の例は、エトキシル化またはアルコキシル化ポリアミン類;ポリカルボキシル化ポリアミン類;ポリアクリレートを含むが、これに限定されないポリカルボン酸塩;ポリエーテル類;ポリヒドロキシ材料;ポリリン酸塩およびホスホン酸塩を含むが、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明の組成物中に導入され得る疎水性表面ポリマー類の例は、臭化ドデシル、臭化オクタデシル、塩化オレイル、ドデシルグリシジルエーテルおよび塩化ベンジルまたはこれらの混合物等の脂肪族アルキル化剤でアルキル化されたポリエチレンイミン;および、ドデカノン酸メチルおよび塩化オレオイル等の脂肪族アシル化剤でアシル化されたポリエチレンイミンを含むが、これらに限定されないアルキル化ポリアミン類;アミノプロピル・ペンダント基またはアミノエチルアミノプロピル・ペンダント基を有するポリジメチルシロキサンを含むが、これらに限定されないシリコーン類;および、ペルフルオロ化または高次にフッ化されたアルキル基のアクリル酸(メタクリル酸)エステル類をモノマー類として含むポリマー類を含むが、これらに限定されないフッ化ポリマー類を含む。
【0110】
助剤として使用され得る非重合性の表面改質材料は、牛脂ジメチル塩化アンモニウム(ditallowdimethylammonium chloride);オクタデシルトリメチル臭化アンモニウム;ジオレイルアミン;および、ベンジルテトラデシルジメチル塩化アンモニウムを含む脂肪族アミン類および四級化アミン類を含む。シリコーン系界面活性剤、脂肪族両性イオン性界面活性剤および脂肪族アミンオキシドも、上記組成物中に導入されてもよい。
【0111】
有用とされる助剤の他の種類は、シリコーン系界面活性剤および/またはシリコーン類である。これらの助剤は、単独で、および/または、代わりに、上述された他の界面活性剤と組み合わせて、使用可能である。シリコーン系界面活性剤の限定されない例は、ジメチルポリシロキサンの疎水性部分と、一つ以上の親水性ポリアルキレン側鎖とを有するポリシロキサン類のポリアルキレンオキシド(polyalkylene oxide polysiloxanes)である。
【0112】
本発明の組成物は、アルカリ性成分供給源、抗酸化剤、帯電防止剤、キレート剤、アミノカルボン酸塩系のキレート剤、金属塩、感光性無機金属酸化物、臭気調整剤、香料、感光剤、ポリマー類、保存料、加工助剤、顔料、および、pH調整剤、可溶化剤、ゼオライト類、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されない他の助剤を含有することができる。これらの選択成分は、あらゆる所望量で含有されてもよい。
【0113】
複合材料を含む被膜用組成物は、全タイプの軟質表面上に使用され得るものであり、当該軟質表面は、織布、不織布、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。ここに関係する軟質表面は、廃棄可能な吸収体製品に関連した表面を含むが、これに限定されない、あらゆる公知タイプの軟質表面を含むことがあり、当該廃棄可能な吸収体製品は、カバーすなわち上シートと、吸収性コアと、移動層と、吸収性挿入物と、通気性フィルムおよび非通気性フィルムから形成された外層を含む下シートとを含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
パンティライナー、生理用ナプキン、陰唇間製品(interlabial devices)、成人失禁用製品、胸当て、靴の中敷き、包帯、および、オムツ等の廃棄可能な吸収体製品は、通常、吸収性の不織布材料(繊維を含む)から形成され、かつ、この技術分野において周知である。当該製品は、通常、体表面に向く流体浸透性の面と、衣類表面に向く流体不浸透性の面とを有している。さらに、当該製品は、上記二面間に流体を保持するための吸収性コアを含むことがある。廃棄可能な吸収体製品中の吸収性コア等の製造製品に上記複合材料を追加することは、臭気発生の抑制および吸収性の向上にも役立てることができる。
【0115】
また、本発明の組成物は、この技術分野において公知である種々の活性剤を含めてもよく、当該活性剤は、例えば、皮膚美白剤、皮膚色素沈着黒化剤、ニキビ抑制剤、皮脂調節剤、テカリ防止剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗カビ剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け防止剤、光保護剤(photoprotector)、抗酸化剤、角質溶解剤、洗剤、界面活性剤、保湿剤、栄養剤、ビタミン剤、エネルギ増強剤、制汗剤、収斂剤、体臭防止剤、脱毛剤、安定剤、皮膚硬化防止剤(anti-callous agents)、および、髪の毛、爪または皮膚状態用の薬剤である。
【0116】
局所塗布または粘膜塗布用の複数の処方は、この技術分野において周知である。このような処方において、この技術分野における当業者によって使用される賦形剤は、この賦形剤と上記複合材料とが相溶性である場合には、当該複合材料と共に使用されてもよい。
【0117】
一つの実施の形態において、本発明は、吸収体製品を少なくとも必要なときに装用することがある人を治療するための治療計画をも含む。幼児または失禁傾向の成人等の人は、頻繁に吸収体製品を装用することがあり、あるいは、排泄訓練を受けるか、または、夜間の排泄に対する予防を必要とする小児、または、急迫性尿失禁を有し、かつ、場合によって失禁に対する予防を必要とすることがある成人等の人は、必要なときだけ、吸収体製品を装用することがある。当該治療計画は、以下のステップ:a)当該人から吸収体製品を取り除くステップ;b)当該人の皮膚を洗浄して上述皮膚炎を含む患部領域を露出させるステップ;および、c)当該患部領域を、(a)表面を有する表層剥離済み(exfoliated)ナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族の金属、アルミニウムおよびマグネシウムから選択された金属とを含む複合材料であって、当該金属が当該ナノ粒子の表面上に保持されている複合材料を含む組成物で被覆するステップを含むことがある。
【0118】
この明細書に適切に、かつ、例示的に開示された本発明は、この明細書に詳細に開示されていない、あらゆる要素、成分、あるいは、ステップの存在下で、実行されてもよい。いくつかの実施例は、本発明の性質と、本発明を実行する方法をさらに説明するために、以下に述べられている。しかし、本発明は、実施例の詳細な内容に限定されるものと見なされないものとする。
【0119】
すべての百分率は、特に指示がない限り、重量%である。
【0120】
〔実施例〕
いくつかの対照組成物と共に、本発明による複合材料を含む一連の組成物が調製され、かつ、リパーゼ酵素活性を阻害する能力に関して検査された。
【0121】
リパーゼの酵素測定法(assay)は、概ね、シグマ・アルドリッチ・ケミカル・カタログ(Sigma-Aldrich Chemical Catalogue)(2000年/2001年版)の第605頁の「リパーゼの酵素測定の準備」に述べられているようなシグマ(Sigma)EC3.1.1.3の手順に従って準備された。以下の試薬は、当該測定法を準備するために使用された:
A:200ミリリットルのトリス塩酸緩衝液(37℃でpH7.7)
B:オリーブ油基質溶液(乳化剤としてアラビアゴムを用いた、含有比50:50のオリーブ油/水乳液)
C:4℃で保存された95%のエタノール
D:0.9(重量/全容量)%のチモールフタレイン指示溶液
E:50ミリモル(mM)の水酸化ナトリウム溶液
F:リパーゼ酵素水溶液
【0122】
〔第1部:酵素活性の分析の準備〕
〔検査対象溶液の調製〕:2.50ミリリットルの水、1.00ミリリットルの試薬A、および、3.00ミリリットルの試薬Bが、「検査対象」名のラベルを付けた50ミリリットル容量の三角フラスコ中に加えられた後に、混合物は37℃で平衡化された。この混合物に、1.00ミリリットルの試薬Fが添加された後に、この混合物は、混合され、37℃で30分間、培養された。この混合物に、20ミリリットルの試薬Cおよび4滴の試薬Dが添加された後に、この混合物に対して、明るい青色の終点となるまで、試薬Eで滴定が行われた。
【0123】
〔対照溶液(Blank Solution)の調製〕:「対照(blank)」名のラベルを付けた別の50ミリリットル容量の三角フラスコには、2.50ミリリットルの水、1.00ミリリットルの試薬A、および、3.00ミリリットルの試薬Bが添加された。37℃で30分間、対照混合物を培養した後に、この混合物に、20ミリリットルの試薬C、1.00ミリリットルの試薬F、および、4滴の試薬Dが添加された。その後に、この混合物に対して、明るい青色の終点となるまで、試薬Eで滴定が行われた。
【0124】
〔第2部:検査対象溶液の調製〕
適量の組成物は、「サンプル」名のラベルを付けた50ミリリットル容量の三角フラスコ中で秤量された。この三角フラスコ中には、2.50ミリリットルの水、1.00ミリリットルの試薬A、および、3.00ミリリットルの試薬Bが加えられた後に、得られた混合物は、37℃で平衡化された。この三角フラスコ中に1.00ミリリットルの試薬Fを添加した後に、この混合物は、完全に混合され、かつ、37℃で60分間、培養された。この混合物に、20ミリリットルの試薬Cおよび4滴の試薬Dが添加された後に、この混合物に対して、明るい青色の終点となるまで、試薬Eで滴定が行われた。
【0125】
〔対照溶液の調製〕:この対照溶液は、上述のように調製された。
【0126】
〔第3部:酵素活性に対する阻害活性の算定〕
酵素活性は、以下の式によって定義されている:
(試薬E)(試薬Eのモル濃度)(1000)(換算(conversion))(df)
ここで、試薬Eは、対照補正(blank correction)で消費された試薬Eのミリリットル数であり、要するに、当該補正は、対照溶液に対して明るい青色の終点まで滴定を行うために必要な量の水酸化ナトリウム(試薬E)で行われた。
換算(conversion)は、時間換算係数である(例えば、30分間では「2」であり、60分間では「1」である)。
dfは、希釈係数1(dilution factor)である。
【0127】
各組成物に関する酵素活性阻害率は、第1部の検査対象溶液の酵素活性と、各サンプル溶液の酵素活性との差として算定された。
【0128】
本発明による組成物は、以下のように調製された。銀イオン由来の金属銀の形成は、還元剤としての水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を用いて完全に調製された。
4AgNO3 + NaBH4 → 4Ag0
【0129】
銀が保持されたラポナイトXLS粒子を含有する溶液は、以下のように調製された。1000ミリリットルの脱イオン水には、5.0グラムのラポナイトXLSが添加された。この溶液は、1時間、撹拌されて、ラベルを付けた溶液A(0.5%のラポナイトXLS溶液)とされた。400ミリリットルの溶液Aには、11ミリグラムの水素化ホウ素ナトリウムNaBH4が添加された。この溶液は、ラベルを付けた溶液Bとされた。21ミリグラムの硝酸銀AgNO3が2ミリリットルの脱イオン水中で溶解され、この溶液は、溶液B中に滴下されて、0.002%の銀が保持されたラポナイトXLSの明るい黄色の溶液(「組成物1」)を調製した。上記手順にしたがって、0.004%および0.005%の銀が保持されたラポナイトXLS溶液(「組成物2」および「組成物3」)が調製された。
【0130】
上述のように、組成物1、2および3に関する酵素(リパーゼ)活性阻害率が測定され、かつ、ラポナイトXLS(比較組成物A)、0.002%の酸化亜鉛ZnO(比較組成物B)、および0.002%の塩化亜鉛ZnCl2(比較組成物C)に関する酵素(リパーゼ)活性阻害率と比較された。これらの結果は、表1、表2および表3に示されている。
【表1】

【表2】

【表3】

【0131】
本発明による組成物4は、以下のように調製された。上述のように作製された組成物1は、水、アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)AVC、および、鉱油を含むベースと混合することによって、クリームゲルに調製された。組成物4の酵素活性阻害率は、上述のように測定され、かつ、ラポナイトXLSを含有する同様の乳液(銀を含まない)(比較組成物D)の酵素活性阻害率と比較された。これらの結果は、表4に示されている。
【表4】

【0132】
本発明による二つの追加の処方(組成物5および6)も組成物1から調製された。
【0133】
組成物5は、組成物1、ステアレス-1(steareth-1)、ステアレス-20(steareth-20)、セチルアルコール、鉱油および水を含む乳液であった。
【0134】
組成物6は、組成物1、水、アリストフレックス(AristoFlex:登録商標)AVCおよび鉱油を含む他のクリームゲルであった。
【0135】
各組成物の酵素活性阻害率は、上述のように測定された。これらの結果は、表5に示されている。
【表5】

【0136】
組成物5は、活性を示さなかった。このデータは、使用された界面活性剤系が電荷されなかったという事実による可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】
【図2】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素活性を阻害する方法において、
リパーゼおよびプロテアーゼからなる群より選択された酵素を、有効量の複合材料に接触させること、
を含み、
前記複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、
前記金属は、前記ナノ粒子の前記表面上に保持されている、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記金属は、銀、銅、亜鉛、マンガン、プラチナ、パラジウム、金、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、および、これらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記金属は、銀である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子は、ナノ粘土を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子は、表層剥離済みのラポナイト(Laponite)を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記酵素は、リパーゼである、方法。
【請求項7】
酵素性皮膚炎を治療する方法において、
酵素性皮膚炎に罹患した皮膚領域に対して有効量の複合材料を局所的に塗布すること、
を含み、
前記複合材料は、(a)表面を有する表層剥離済みナノ粒子と、(b)元素周期表第3族〜第12族、アルミニウム、およびマグネシウムから選択された金属とを含み、
前記金属は、前記ナノ粒子の前記表面上に保持されている、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記金属は、銀、銅、亜鉛、マンガン、プラチナ、パラジウム、金、カルシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、および、これらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記金属は、銀である、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、
前記ナノ粒子は、ナノ粘土を含む、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、
前記ナノ粒子は、表層剥離済みのラポナイトを含む、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法において、
前記複合材料は、溶液の形態である、方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法において、
前記複合材料は、固体の形態である、方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法において、
前記複合材料は、ゲルの形態である、方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法において、
抗生物質(または抗菌剤?)をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項7に記載の方法において、
抗刺激剤をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項7に記載の方法において、
抗真菌剤をさらに含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−508356(P2010−508356A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535403(P2009−535403)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/082603
【国際公開番号】WO2008/055049
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591252839)マクニール−ピーピーシー・インコーポレイテッド (69)
【氏名又は名称原語表記】MCNEIL−PPC,INCORPORATED
【Fターム(参考)】