説明

ナノ粒子を用いてプラスチック物品の耐摩耗性を向上させる方法およびこの方法により製造される物品

本発明は、プラスチック物品の耐摩耗性を向上させる方法に関する実施態様を含む。この方法は、(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子化合物と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程を含む。本発明には、耐摩耗性表面を有する物品に関する実施態様も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック物品の耐磨耗性を向上させる方法に関する実施態様を含む。また本発明は、耐摩耗性表面を有する物品に関する実施態様を含む。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)およびレゾルシノールポリアリレート-ポリカーボネートコポリマー(SLX)などの熱可塑性ポリマーは、引掻きおよび擦傷タイプの損傷を受けやすい。ポリマーの引掻きまたは擦傷の受けやすさは、引掻きまたは擦傷のない外観が求められる商業的用途におけるポリマーの有用性を大幅に制限する。
【0003】
引掻きおよび擦傷の損傷を避けるかまたは少なくとも最小化するために、ハードコーティングが様々なポリマー、特にポリカーボネートの表面に適用されている。この手法は、つや出し用途などのいくつかの分野において有利に使用されている。ハードコーティングをポリマーの表面に適用することは、ある場合には改良された耐磨耗性を提供するが、ハードコートの適用は、追加のプロセス工程をもたらし、加工時間およびコストを増加させる傾向にある。加えて、一旦ハードコートが表面(例えば、ポリカーボネートフィルムの表面)に付着すると、ハードコートの存在により後処理オプションが制限される。さらなる制限は、ハードコートされたポリマーを含む物品が「風化」してハードコートがポリマー表面から磨滅した場合に、ポリマーが再び引掻きおよび擦傷を受けやすくなることである。さらに、ポリマー表面に付着しているハードコートは層間剥離することもある。
【特許文献1】米国特許第4,238,596号
【特許文献2】米国特許第4,238,597号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、元の熱可塑性ポリマーの耐磨耗性、特に元のPCおよびSLXポリマーの耐磨耗性を向上させることは非常に望ましい目標である。さらに、改良された磨耗特性を有するこれら熱可塑性ポリマーから作られるプラスチック物品も同様に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施態様において、本発明はプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む。
【0006】
第2の実施態様において、本発明は、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料を含むプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム(e-beam)源に曝す工程
を含む。
【0007】
一実施態様において、本発明は、耐摩耗性表面を有する物品であって、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む方法によって製造される物品を提供する。
【0008】
[詳細な説明]
以下の明細書および特許請求の範囲において、いくつかの用語は、以下の意味を有すると定義される。
【0009】
単数形の表現は、文脈において明らかに示されていない限り、複数形の指示対象を含む。近似の用語は、明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される場合、その用語が関連する基本的機能に変更をもたらすことなく、許容範囲内で変化しうる任意の定量的表現を修飾するために適用される。したがって、「約」などの用語または複数の用語によって修飾された値は、特定された厳密な値に限定されない。いくつか場合には、近似の用語は、その値を測定する機器の精度に対応することもある。
【0010】
本明細書において「芳香族基」という用語は、少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも1の原子価を有する原子の配列を指す。少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも1つの原子価を有する原子の配列は、窒素、硫黄、セレニウム、ケイ素および酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。本明細書では、「芳香族基」という用語は、これらだけに限定されないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、およびビフェニル基を含む。前に述べたように、芳香族基は、少なくとも1つの芳香族基を含む。芳香族基は、常に4n+2の「非局在化」電子を有する環状構造であり、ここで「n」は、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などによって例示されるように、1またはそれ以上の整数である。芳香族基は、非芳香族成分を含むこともできる。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)およびメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族成分-(CH2)4-に融合した芳香族基(C6H3)を含む芳香族基である。便宜上、「芳香族基」という用語は、本明細書において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基など、広範囲な官能基を包含すると定義する。例えば、4-メチルフェニル基は、メチル基を含むC7芳香族基であり、このメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロフェニル基は、ニトロ基を含むC6芳香族基であり、このニトロ基が官能基である。芳香族基は、4-トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち-OPhC(CF3)2PhO-)、4-クロロメチルフェン-1-イル(4-chloromethylphen-1-yl)、3-トリフルオロビニル-2-チエニル、3-トリクロロメチルフェン-1-イル(3-trichloromethylphen-1-yl)(すなわち、3-CCl3Ph-)、4-(3-ブロモプロプ-1-イル)フェン-1-イル(すなわち、4-BrCH2CH2CH2Ph-)などのハロゲン化芳香族基を含む。芳香族基のさらなる例には、4-アリルオキシフェン-1-オキシ(4-allyloxyphen-1-oxy)、4-アミノフェン-1-イル(4-aminophen-1-yl)(すなわち、4-H2NPh-)、3-アミノカルボニルフェン-1-イル(すなわち、NH2COPh-)、4-ベンゾイルフェン-1-イル、ジシアノメチリデンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち-OPhC(CN)2PhO-)、3-メチルフェン-1-イル、メチレンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち、-OPhCH2PhO-)、2-エチルフェン-1-イル、フェニルエテニル、3-ホルミル-2-チエニル、2-ヘキシ-5-フラニル、ヘキサエチレン-1,6-ビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち、-OPh(CH2)6PhO-)、4-ヒドロキシメチルフェン-1-イル(すなわち、4-HOCH2Ph-)、4-メルカプトメチルフェン-1-イル(すなわち、4-HSCH2Ph-)、4-メチルチオフェン-1-イル(すなわち4-CH3SPh-)、3-メトキシフェン-1-イル、2-メトキシカルボニルフェン-1-イルオキシ(例えばメチルサリチル)、2-ニトロメチルフェン-1-イル(すなわち、2-NO2CH2Ph)、3-トリメチルシリルフェン-1-イル、4-t-ブチルジメチルシリルフェン-1-イル、4-ビニルフェン-1-イル、ビニリデンビス(フェニル)などが含まれる。「C3〜C10芳香族基」という用語は、少なくとも3個の、ただし、10個を超えない炭素原子を含む芳香族基を含む。芳香族基1-イミダゾリル(C3H2N2-)は、C3芳香族基を表す。ベンジル基(C7H7-)は、C7芳香族基を表す。
【0011】
本明細書において「脂環式基」という用語は、少なくとも1の原子価を有し、環式ではあるが芳香族ではない原子の配列を含む基を指す。本明細書で定義する場合、「脂環式基」は、芳香族基を含んでいない。「脂環式基」は、1つまたは複数の非環式成分を含むこともできる。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、シクロヘキシル環(環式ではあるが芳香族ではない原子の配列)およびメチレン基(非環式成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレニウム、ケイ素および酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。便宜上、本明細書では、「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲な官能基を包含すると定義される。例えば、4-メチルシクロペント-1-イル(4-methylcyclopent-1-yl)基は、メチル基を含むC6脂環式基であり、このメチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロシクロブタ-1-イル基は、ニトロ基を含むC4脂環式基であり、このニトロ基が官能基である。脂環式基は、1つまたは複数のハロゲン原子を含むこともでき、ハロゲン原子は同じでもまたは異なっていてもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。1つまたは複数のハロゲン原子を含む脂環式基には、2-トリフルオロメチルシクロヘキサ-1-イル(2-trifluoromethylcyclohex-1-yl)、4-ブロモジフルオロメチルシクロオクタ-1-イル(4-bromodifluoromethylcyclooct-1-yl)、2-クロロジフルオロメチルシクロヘキサ-1-イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン-2,2-ビス(シクロヘキサ-4-イル)(すなわち-C6H10C(CF3)2C6H10-)、2-クロロメチルシクロヘキサ-1-イル、3-ジフルオロメチレンシクロヘキサ-1-イル、4-トリクロロメチルシクロヘキサ-1-イルオキシ、4-ブロモジクロロメチルシクロヘキサ-1-イルチオ、2-ブロモエチルシクロペンタ-1-イル(2-bromoethylcyclopent-1-yl)、2-ブロモプロピルシクロヘキサ-1-イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2C6H10-)などが含まれる。さらなる脂環式基の例には、4-アリルオキシシクロヘキサ-1-イル、4-アミノシクロヘキサ-1-イル(例えば、H2NC6H10-)、4-アミノカルボニルシクロペンタ-1-イル(すなわち、NH2COC5H8-)、4-アセチルオキシシクロヘキサ-1-イル、2,2-ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10C(CN)2C6H10O-)、3-メチルシクロヘキサ-1-イル、メチレンビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10CH2C6H10O-)、1-エチルシクロブタ-1-イル(1-ethylcyclobut-1-yl)、シクロプロピルエテニル、3-ホルミル-2-テトラヒドロフラニル、2-ヘキシル-5-テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン-1,6-ビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10(CH2)6C6H10O-)、4-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-HOCH2C6H10-)、4-メルカプトメチルシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-HSCH2C6H10-)、4-メチルチオシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-CH3SC6H10-)、4-メトキシシクロヘキサ-1-イル、2-メトキシカルボニルシクロヘキサ-1-イルオキシ(2-CH3OCOC6H10O-)、4-ニトロメチルシイクロヘキサ-1-イル(すなわち、NO2CH2C6H10-)、3-トリメチルシリルシクロヘキサ-1-イル、2-t-ブチルジメチルシリルシクロペンタ-1-イル、4-トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ-1-イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2C6H10-)、4-ビニルシクロヘキセン-1-イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが含まれる。「C3〜C10脂環式基」という用語は、少なくとも3個のただし、10個を超えない炭素原子を含む脂環式基を含む。脂環式基2-テトラヒドロフラニル(C4H7O-)は、C4脂環式基を表す。シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、C7脂環式基を表す。
【0012】
本明細書において「脂肪族基」という用語は、環式ではない原子の直鎖状または分岐状配列からなる少なくとも1の原子価を有する有機基を指す。脂肪族基は、少なくとも1個の炭素原子を含むと定義される。脂肪族基を含む原子の配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレニウムおよび酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。便宜上、本明細書において「脂肪族基」という用語は、「環式ではない原子の直鎖状または分岐状配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲な官能基を包含すると定義する。例えば、4-メチルペンタ-1-イル(4-methylpent-1-yl)基は、メチル基を含むC6脂肪族基であり、このメチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4-ニトロブタ-1-イル(4-nitrobut-1-yl)基は、ニトロ基を含むC4脂肪族基であり、このニトロ基が官能基である。脂肪族基は、1つまたは複数のハロゲン原子を含むハロアルキル基であることもでき、ハロゲン原子は同じでもまたは異なっていてもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。1つまたは複数のハロゲン原子を含む脂肪族基は、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2-ブロモトリメチレン(例えば、-CH2CHBrCH2-)などのハロゲン化アルキルを含む。さらなる脂肪族基の例には、アリル、アミノカルボニル(すなわち、-CONH2)、カルボニル、2,2-ジシアノイソプロピリデン(すなわち、-CH2C(CN)2CH2-)、メチル(すなわち、-CH3)、メチレン(すなわち、-CH2-)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち、-CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち、-CH2OH)、メルカプトメチル(すなわち、-CH2SH)、メチルチオ(すなわち、-SCH3)、メチルチオメチル(すなわち、-CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわち、CH3OCO-)、ニトロメチル(すなわち、-CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち、(CH3)3Si-)、t-ブチルジメチルシリル、3-トリメトキシシリルプロピル(すなわち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2-)、ビニル、ビニリデンなどが含まれる。さらなる例として、C1〜C10脂肪族基は、少なくとも1個のただし、10個を超えない炭素原子を含む。メチル基(すなわち、CH3-)は、C1脂肪族基の例である。デシル基(すなわち、CH3(CH2)9-)は、C10脂肪族基の例である。
【0013】
本明細書において「耐磨耗性」という用語は、物質が摩擦、こすり若しくは浸食;衝撃;または圧力などの機械的作用によって損傷されないままでいる抵抗性を指す。磨耗は重量損失または表面の光沢の損失をもたらすことがある。耐磨耗性という用語は、擦傷抵抗および引掻き傷抵抗を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前に述べたように、本発明は一態様においてプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む。
【0015】
本明細書において「電子ビーム活性ナノ粒子」という用語は、電子ビーム(e-ビーム)に曝すと、それ自体または他の有機成分に対して架橋結合することができるナノサイズの粒子をいう。いかなる理論にも束縛されないが、電子ビーム源に曝されると、電子ビーム活性ナノ粒子は、安定な遊離ラジカルを生じると考えられる。電子ビーム活性ナノ粒子は、電子ビーム源に曝されると、架橋促進剤として作用し、熱可塑性ポリマー材料に対して架橋結合すると考えられる。
【0016】
この電子ビーム活性ナノ粒子は、架橋促進剤として、当業者に公知の任意の熱可塑性ポリマー材料に用いることができる。本明細書において「熱可塑性ポリマー材料」という用語は、繰り返して、加熱すると軟らかくなり冷却すると硬くなる、巨大分子構造を有する材料を指す。本発明の方法に適した熱可塑性ポリマー材料の例には、これらだけに限定されないが、オレフィン由来のポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらのコポリマー);ポリメチルペンタン由来のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびこれらのコポリマー);不飽和カルボン酸のポリマーおよびこれらの官能性誘導体〔例えば、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、およびポリアクリル酸などのアクリルポリマー〕;アルケニル芳香族ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリ-アルファ-メチルスチレン、ポリビニルトルエン、およびゴム改質ポリスチレン);ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-1,1、およびナイロン-1,2);ポリエステル〔例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特にポリ(エチレンテレフタレート)(以降時々「PET」と称する)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(以降時々「PBT」と称する)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(以降時々「PTT」と称する)、ポリ(エチレンナフタレート)(以降時々「PEN」と称する)、ポリ(ブチレンナフタレート)(以降時々「PBN」と称する)、ポリ(シクロへキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロへキサンジメタノール-コ-エチレンテレフタレート)(以降時々「PETG」と称する)、およびポリ(1,4-シクロへキサンジメチル-1,4-シクロへキサンジカルボキシレート)(以降時々「PCCD」と称する)、およびポリ(アルキレンアレーンジオエート)〕;ポリカーボネート;コポリカーボネート;コポリエステルカーボネート;ポリスルホン;ポリイミド;ポリアリーレンサルファイド;ポリスルフィドスルホン;ならびにポリエーテル(例えば、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン);ならびにこれらのコポリマーが含まれる。
【0017】
一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、PET、PBTなどのポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される。別の実施態様において、熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される。
【0018】
したがって、一実施態様において、本発明はポリカーボネート、コポリカーボネート、またはコポリエステルカーボネートの少なくとも1つを含むプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む。
【0019】
電子ビーム活性ナノ粒子は、電子ビームに曝すと、それ自体または他の有機成分に対して架橋結合することができるナノサイズの粒子を含む。このナノサイズの粒子、すなわちナノ粒子は、電子ビームに曝すとそれ自体架橋結合することができ、あるいは電子ビームに曝すと架橋可能な官能基で表面修飾され得る。電子ビーム活性ナノ粒子は、有機または無機のナノ粒子を含んでいてよい。
【0020】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、少なくとも1種の電子ビーム活性官能基で表面修飾された少なくとも1種の無機ナノ粒子を含む。
【0021】
一実施態様において、無機ナノ粒子は、金属酸化物、金属窒化物、0価金属、複合金属、複合金属酸化物、複合金属窒化物、金属酸窒化物、複合金属酸窒化物、およびこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属成分を含む。別の実施態様において、無機ナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウム-ケイ素酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アンチモン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化クロム、およびこれら金属酸化物の2種以上の組合せからなる群から選択される成分を含む。
【0022】
電子ビーム活性官能基は、電子ビームに曝すと、架橋結合を形成することができる。一実施態様において、電子ビーム活性官能基は、少なくとも1種の電子ビーム活性官能基を有する有機官能化剤を用いて無機粒子を表面修飾することによって無機粒子に結合される。好適な有機官能化剤には、少なくとも1種の電子ビーム活性官能基を有する、有機シラン、有機チタネート、有機ジルコネート、β-ジケトン、カルボン酸(例えば、クエン酸)、カルボン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、チオール、およびアミンが含まれる。電子ビーム活性官能基は、典型的には、脂肪族基、特に2級または3級脂肪族基、または芳香族基、特にベンジル基である。一実施態様において、電子ビーム活性官能基には、少なくとも1種の有機シランが含まれる。別の実施態様において、電子ビーム活性官能基を有する電子ビーム活性ナノ粒子は、無機粒子を有機シランと接触させることによって製造する。本明細書において「シラン」という用語は、有機シランおよび無機シラン(例えば、SiH4)の両方を含み、さらに無機ポリシラン(例えば、H3SiSiH3)を含む。
【0023】
電子ビーム活性官能基で表面修飾された無機ナノ粒子を含む電子ビーム活性ナノ粒子は、当業者に公知の任意の方法で製造することができる。一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、少なくとも1種の無機ナノ粒子を、式(I):
【化1】

〔式中、「a」および「b」は、各場合において独立に1〜3の整数であり(但し、「a+b」=4であることを条件とする);R1は、各場合において独立に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、C3〜C40芳香族基、またはオルガノシロキサン部分であり;Xは、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ基、またはNHSiR23基(式中、R2は、各場合において独立に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である)である〕
を有する少なくとも1種のシランと接触させることによって形成される。一実施態様において、式(I)のR1は、電子ビームに曝すと、安定な遊離ラジカルを生成することができる官能基を含む。
【0024】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、その表面上にヒドロキシル基を含む無機粒子と、少なくとも1種の式(I)のシランとを接触させることによって製造する。別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、その表面上にヒドロキシル基を含む無機粒子と、種々の構造を有する種々のシランとを接触させることによって製造する。この場合、電子ビーム活性ナノ粒子は、まず無機粒子を第一のシランに接触させた後他のシランに接触させることによって、あるいは無機粒子を種々のシランと同時に接触させることによって製造する。
【0025】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、その表面上にヒドロキシル基を含む無機粒子と、少なくとも1種の式(I)のシランとの縮合反応によって製造する。縮合反応は、SiO-結合の形成によって、無機粒子の表面の官能化をもたらす。一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、無機ナノ粒子に単一のSiO-結合を介して結合したシラン部分を有する。別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、無機ナノ粒子に1つ以上のSiO-結合を介して結合したシラン部分を有する。さらに別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、少なくとも2種の異なるシラン部分を有する。
【0026】
一実施態様において、前記電子ビーム活性ナノ粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウム-ケイ素酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の無機ナノ粒子を、式(I)を有するシランと接触させることによって形成される。
【0027】
一実施態様において、式(I)を有する前記シランは、トリハロシラン、トリアルコキシシラン、およびジシラザンからなる群から選択される。別の実施態様において、前記シランは、トリアルコキシシランおよびジシラザンからなる群から選択される。本発明のいくつかの実施態様で実証されるトリアルコキシシランには、これらに限定されないが、トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびベンジルトリエトキシシランが含まれる。本発明のいくつかの実施態様で実証されるジシラザンには、これらに限定されないが、ヘキサメチルジシラザンおよびヘキサエチルジシラザンが含まれる。
【0028】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、電子ビーム源に曝すと架橋結合を形成し得る有機または無機のナノ粒子を含む。一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、アダマンタン、キュバン、およびこれらの置換類似体からなる群から選択される有機ナノ粒子を含む。典型的には、アダマンタンおよびキュバンの置換類似体は、1級、2級、3級脂肪族基を有する。一実施態様において、アダマンタンおよびキュバンの置換類似体は、ベンジル基を有する。理論に拘束されないが、2級、3級、またはベンジル有機基が、電子ビーム(e-beam)源に曝すと前駆体から形成される比較的安定な遊離ラジカルの前駆体として働き、この結果、これらの基が、電子ビーム活性ナノ粒子を含むプラスチック材料の引掻きおよび擦傷耐性を向上させるさらなる化学作用を促進すると考えられる。アダマンタンの置換類似体の例としては、1-メチルアダマンタン、1-ベンジルアダマンタン、2-ベンジルアダマンタン、1-シクロプロピルアダマンタンなどが挙げられる。キュバンの置換類似体の例としては、1-メチルキュバン、1-ベンジルキュバン、1-イソプロピルキュバン、1-シクロプロピルキュバンなどが挙げられる。アダマンタンの置換類似体は、本明細書においてアダマンタンの誘導体と定義される。同様に、キュバンの置換類似体は、本明細書においてキュバンの誘導体と定義される。
【0029】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、約0.5 nm〜約500 nmの範囲の粒子径を有する。別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、約2 nm〜約250 nmの範囲の粒子径を有する。さらに別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、約5 nm〜約100 nmの範囲の粒子径を有する。ここで、本明細書を通して、および請求項において、範囲の限定は、組合せることができ、相互に交換することができる。このような範囲は、特に指定する文脈または指定がない限り、これらの範囲に含まれる全ての下位の範囲を含むものと認められる。
【0030】
電子ビーム活性ナノ粒子の混和性およびその架橋促進剤としての性能は、組成物中の電子ビーム活性ナノ粒子の合計濃度によって決まり得る。一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、熱可塑性ポリマーの約0.1重量%〜約50重量%に相当する量で存在する。別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、ポリマーの約1重量%〜約25重量%に相当する量で存在する。さらに別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子は、ポリマーの約2.5重量%〜約10重量%に相当する量で存在する。
【0031】
電子ビーム活性ナノ粒子を架橋促進剤として熱可塑性プラスチックポリマー材料に導入すると、多くの利点がもたらされる。電子ビーム活性ナノ粒子は、ポリマー加工の選択された段階のみにおける電子ビームの照射によって、粒子とポリマーとの間の共有結合の形成をもたらすことができる。電子ビーム活性ナノ粒子は、熱的に安定な官能基を含むことができ、したがって、これらの粒子を熱可塑性ポリマーと混合し、ポリマーの加工性を損なうことなしに高温で加工することができる。電子ビーム活性ナノ粒子は、非揮発性であることができ、そのようなナノ粒子は、小分子有機化合物で起こりうる、揮発に起因する加工ラインの汚染の危険性を低減することができる。電子ビーム活性ナノ粒子は、架橋(化学結合)に加えて、相乗的な特性改良をもたらし得る。この相乗的な特性改良には、硬度、弾性率、温度安定性、低摩擦係数、耐薬品性、低い熱膨張係数、または低誘電率が含まれる。電子ビーム活性ナノ粒子は、可視光の波長より小さい粒子径を有し、電子ビーム活性ナノ粒子と熱可塑性ポリマーとを含む組成物は、透明な外観を有し得る。
【0032】
一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、式(II):
【化2】

(式中、R3は、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である)
を有する構造単位を含むポリカーボネートを含む。いくつかの実施態様において、R3は、ジヒドロキシ脂肪族化合物、ジヒドロキシ脂環式化合物、またはジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されるものであってよい。
【0033】
一実施態様において、R3は、式(III):
【化3】

(式中、各Gは、各場合において独立に、C3〜C40芳香族基であり;Eは、各場合において独立に、単結合、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、C3〜C40芳香族基、硫黄含有結合、セレニウム含有結合、リン含有結合、または酸素原子であり;「t」は、1以上の数であり;「v」は0かまたは1であり;「u」は0を含む自然数である)
を有するジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される二価のC3〜C40芳香族基である。
【0034】
特定の実施態様において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(2-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)ブタン;1,3-ビス[4-ヒドロキシフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,4-ビス[4-ヒドロキシフェニル-l-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,3-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,4-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-l-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;4,4'-ビフェノール;2,2',6,8-テトラメチル-3,3',5,5'-テトラブロモ-4,4'-ビフェノール;2,2',6,6'-テトラメチル-3,3',5-トリブロモ-4,4'-ビフェノール;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン);1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノエタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジシアノメタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノ-1-フェニルメタン;2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン;9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン;3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド;1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロペノン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;4,4'-オキシジフェノール;4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸;4,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸;2,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン;2-ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-3-メトキシフェニル)メタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-クロロフェニル)エタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-A);1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5,3',5'-テトラクロロ-4,4'-ジヒドロキシフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;4,4'-[1-メチル-4-(1-メチル-エチル)-1,3-シクロヘキサンジイル]ビスフェノール(1,3 BHPM);4-[1-[3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルシクロヘキシル]-1-メチル-エチル]-フェノール(2,8 BHPM);3,8-ジヒドロキシ-5a,10b-ジフェニルクマラノ-2',3',2,3-クマラン(DCBP);2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン;4,4'ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル;4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチル-1,1-ビフェニル;4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジオクチル-1,1-ビフェニル;4,4'-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール;4,4'-ビス(3,5-ジメチル)ジフェノール;4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4'-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル;1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;2,4'-ジヒドロキシフェニルスルホン;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS);ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;2,6-ジヒドロキシナフタレン;ヒドロキノン;レゾルシノール;C1-3アルキル-置換レゾルシノール類;3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン-5-オール;1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール;4,4-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4-ジヒドロキシ-3,3-ジクロロジフェニルエーテル;4,4-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4-チオジフェノール;2,2,2',2'-テトラヒドロ-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビ[1H-インデン]-6,6'-ジオール;およびこれらの混合物からなる群から選択される。式(XVI)のジヒドロキシ芳香族化合物は、市販されておりまたは当業者に知られている方法によって製造することもできる。
【0035】
一実施態様において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、式(IV):
【化4】

(式中、R4は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、各場合において独立に0〜4の整数であり;Wは、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である)
を有するビスフェノールである。
【0036】
一実施態様において、式(II)のR3はビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、CASNo.80-05-7)から誘導され、この熱可塑性ポリマー材料はビスフェノールAポリカーボネートである。ビスフェノールAは、ALDRICH Chemical Coから市販されている。ビスフェノールAポリカーボネートは、一般式(II)に含まれ、R3が式(IV)を有するビスフェノールから誘導された場合(式(IV)中、「a」が0に等しく、Wがイソプロピリデン基であり、ヒドロキシル基が4,4'位に存在する場合)に該当する。
【0037】
別の実施態様において、式(II)のR3はビスフェノールZ(4,4'-シクロヘキシリデンビスフェノール、CASNo.843-55-0)から誘導され、この熱可塑性ポリマー材料はビスフェノールZポリカーボネートである。ビスフェノールZは、ALDRICH Chemical Coから市販されている。ビスフェノールZポリカーボネートは、一般式(II)に含まれ、R3が式(IV)を有するビスフェノールから誘導された場合(式(IV)中、「a」が0であり、Wがシクロヘキシリデン基であり、ヒドロキシル基が4,4'位に存在する場合)に該当する。
【0038】
本発明の方法に関して適切でありうる他のポリカーボネートの例には、これらだけに限定されないが、2,2'-ジメチルビスフェノールZポリカーボネート、2,2'ジメチルビスフェノールAポリカーボネート、およびビスフェノールMポリカーボネートが含まれる。
【0039】
多くの適切なポリカーボネートが市販されており、他の多くのポリカーボネートは、当技術分野において知られている方法によって製造することができる。ポリカーボネート製造のための方法には、これらだけに限定されるものではないが、例えばホスゲンを使用する界面重合;例えばビスフェノールAビスクロロホルメートを使用するビスクロロホルメート重合法;ならびに例えばビスフェノールAと、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートとを使用する溶融重合法が含まれる。
【0040】
一実施態様において、ポリカーボネートはホモポリマーであり、すなわち同じジヒドロキシ化合物から誘導された構造単位を含む。一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、コポリカーボネートを含んでおり、すなわち、2種以上のジヒドロキシ化合物から誘導された構造単位を含む。一実施態様において、コポリカーボネートは、式(III)によって表される1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を含む。一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、式(V):
【化5】

(式中、R4は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、各場合において独立に0〜4の整数であり;Wは、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である)
を有する構造単位を含むコポリカーボネートを含む。当業者は、「構造単位(V)を含むコポリカーボネート」という用語は、構造(V)において示される構造単位を含むコポリカーボネートを指すこと、およびこの用語は、コポリカーボネートが構造(V)を有する「繰返し単位」を含まなければならないことを示唆することを意図していないことを理解するであろう。
【0041】
一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、ビスフェノールAポリカーボネート構造単位を含むコポリカーボネートを含む。一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、ビスフェノールZポリカーボネート構造単位を含むコポリカーボネートを含む。ビスフェノールAポリカーボネート構造単位およびビスフェノールZポリカーボネート構造単位はいずれも、式(V)で表される構造単位の範囲に含まれる。
【0042】
多くの適切なコポリカーボネートが市販されており、他の多くのコポリカーボネートは当技術分野において公知の方法によって製造することができる。コポリカーボネート構造単位の製造方法は、ポリカーボネートの製造に類似していてもよく、これらだけに限定されるものではないが、例えばホスゲンを使用する界面重合;例えばビスフェノールAビスクロロホルメートを使用するビスクロロホルメート重合法;ならびに例えばビスフェノールAおよびジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートを使用する溶融重合法を含む。
【0043】
一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、少なくとも1つのポリカーボネートブロックおよび少なくとも1つのポリエステルブロックを含むコポリエステルカーボネートを含む。別の実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、式(VI):
【化6】

(式中、R5は、各場合において独立に、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R6は、各場合において独立に、二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である。)
を有する構造単位を含むポリエステルブロックを含むコポリエステルカーボネートを含む。式(VI)の構造単位は、式(VII)のジオールおよび式(VIII)の二酸または二酸誘導体:
【化7】

【化8】

(式中、R5は、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R6は、二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R7は、各場合において独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、C1〜C20アルコキシ基、またはC3〜C20アリールオキシ基である)
から誘導することができる。
【0044】
式(VIII)中に包含される適切な二酸および二酸誘導体、例えば、二酸、二酸ハロゲン化物、ジエステル、および酸エステルには、これらだけに限定されないが、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アジピン酸、スベリン酸、オレイン酸、アゼライン酸、エルカ酸、ブラジル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ビフェニル-3,4'-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルケトン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルジクロロメタン-4,4'-ジカルボン酸、これらの対応する二酸ハロゲン化物、ジエステルまたは酸エステルおよびこれらの混合物が含まれる。
【0045】
本発明のコポリエステルカーボネートおよびそれらの製造方法は当技術分野において周知である。一実施態様において、コポリエステルカーボネートは、式(VII)で表される構造単位を含むポリエステルブロックを含み、これは脂肪族ジオールまたは脂肪族二酸または二酸誘導体から誘導される。LEXAN SPは、ビスフェノールA及びドデカン二酸から誘導される構造単位を組み込んだ、このようなコポリエステルカーボネートの一例である。LEXAN SPは、GE Advanced Materials社、Pittsfield、Mass.から市販されている。本発明による使用のための他の適切なコポリエステルカーボネートおよびこのコポリエステルカーボネートの製造に使用することができる方法の例は、米国特許第4,238,596号および同第4,238,597号に見い出される。
【0046】
一実施態様において、コポリエステルカーボネートは、少なくとも1種のジヒドロキシ芳香族化合物と、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸残基とから誘導された構造単位を含むポリエステルブロックを含む。特定の一実施態様において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、一般的にレゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体と呼ばれる式(IX):
【化9】

を有する1,3-ジヒドロキシベンゼンから誘導される。式(IX)において、「b」は、各場合において独立に0〜4の整数であり、R8は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体は、本発明の関連において使用される場合、非置換1,3-ジヒドロキシベンゼンおよび置換1,3-ジヒドロキシベンゼンの両方を含むと理解されるべきである。
【0047】
適切な芳香族ジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸とテレフタル酸との混合物を含む単環式芳香族二酸化合物、あるいは多環式芳香族二酸化合物から誘導された芳香族ジカルボン酸残基を含む。様々な実施態様において、芳香族ジカルボン酸残基は、式(X):
【化10】

で表すことができる。式(X)において、「b」は、各場合において独立に0〜4の整数であり、R9は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。芳香族ジカルボン酸残基は、典型的に、対応する酸、酸ハロゲン化物およびエステルから誘導される。一実施態様において、芳香族ジカルボン酸残基は、塩化イソフタロイル(C8H4O2Cl2)と、塩化テレフタロイル(C8H4O2Cl2)との混合物から誘導される。
【0048】
便宜上、レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体(IX)と、イソ-およびテレフタレートおよび残基(X)とから誘導された構造単位を含むポリエステルを、「ITRポリマー」または単に「ITR」と称する。したがって、一実施態様において、熱可塑性ポリマー材料は、式(XI):
【化11】

(式中、R8およびR9は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「b」は、各場合において独立に0〜4の整数である)
のITR構造単位を含むコポリエステルカーボネートを含む。
【0049】
一実施態様において、コポリエステルカーボネートは、ポリエステルブロックおよびポリカーボネートブロックを含む。コポリエステルカーボネートは、典型的には、ヒドロキシ末端ポリエステル中間体(例えば、ヒドロキシ末端ITR中間体)を、界面条件下、ジヒドロキシ置換芳香族化合物(例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノール)およびホスゲンと反応させることによって製造する。ヒドロキシ末端ポリエステル中間体は、当業者に公知の方法によって製造することができる。
【0050】
一実施態様において、ヒドロキシ末端ポリエステル中間体は、レゾルシノールなどのジヒドロキシ芳香族化合物を1種または複数種の芳香族塩化二酸(例えば、二塩化イソフタロイルおよび二塩化テレフタロイル)と、水および水と実質的に非混和性の少なくとも1種の有機溶媒を含む反応混合物中で(すなわち界面条件下で)反応させることによって製造する。ヒドロキシ末端ポリエステルの分子量の調節は、使用する塩化二酸に対するジヒドロキシ置換芳香族化合物のモル比を増加させることによって、および、反応混合物中に存在する水の量を減少させることによって行うことができる。ヒドロキシ末端ポリエステル中間体の分子量のより一層の調節が、エンドキャップ剤を使用してまたは使用せずに達成され得る。
【0051】
少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子および少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料を含む組成物は、顔料、染料、衝撃改質剤、UVスクリーナー、難燃剤、充填剤、安定剤、流動助剤、エステル交換阻害剤、および離型剤を含む、当業者に知られている添加剤をさらに含有することができる。
【0052】
本発明の組成物は、適切な量の電子ビーム活性ナノ粒子を、任意の他の添加剤とともに熱可塑性ポリマー材料と混合またはブレンドすることによって、製造または提供することができる。混合またはブレンドの方法には、これらだけに限定されないが、1軸押出機または2軸押出機中で溶融混合する方法、2ロール式ミル上、バンバリーミキサー中、ペイントシェーカーまたはコーヒー粉砕機中で、ブレンドおよび組成物の成分を粉末として混合する方法が含まれる。
【0053】
いくつかの実施態様において、1つまたは複数の成分または添加剤は、組成物に水性混合物または溶液として加え、その後、例えば押出機などの適切な加工設備中で脱揮することができる。別の実施態様において、いくつかの成分は水溶液中で混合し、次いで蒸発させて残りの成分に加えることのできる材料を形成させることができる。
【0054】
一実施態様において、ブレンド後に、場合により、組成物を例えば組成物のペレット化または粉砕することによって、粒状の形態に小さくすることもできる。一実施態様において、本発明の組成物は、射出成形、押出し、回転成形、ブロー成形および熱成形などの様々な手段によって、フィルムや多層構造体などの物品を成形するなど、有用な成形物品に形作ることができる。
【0055】
一実施態様において、少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物は、押出しよってフィルムである物品に成形される。一実施態様において、フィルムは約10ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有する。別の実施態様において、フィルムは約100ミクロン〜約800ミクロンの範囲の厚さを有する。さらに別の実施態様において、フィルムは約200ミクロン〜約600ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0056】
一実施態様において、多層物品は、少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子および少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料を含む組成物から成形される。多層物品は、基材層とその上のコーティング層とを含む。基材層は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セルロース系材料、ガラス、セラミック、または金属を含む。コーティング層は、少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子ならびにポリカーボネートと、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む。場合によって、多層物品は、例えば、任意の基材層と任意のコーティング層との間の接着中間層などの中間層をさらに含むこともできる。本発明の多層物品には、これらだけに限定されないが、基材層とコーティング層とを含む多層物品;基材層のそれぞれの側にコーティング層を有する前記基材層を含む多層物品;および基材層と、少なくとも1つの中間層を基材層とコーティング層との間に有する少なくとも1つのコーティング層とを含む多層物品が含まれる。中間層は、透明でもよく、および/または、例えば着色剤や金属フレークなどの装飾材料などの添加剤を含んでいてもよい。基材層、コーティング層、および任意の中間層は、お互いが隣接して重なって接触していることが好ましい。
【0057】
本発明の物品中の基材層の材料は、付加で製造されたものであろうと縮合で製造されたものであろうと、少なくとも1つの第2のポリマー材料であることができる。適切な縮合ポリマーには、これらだけに限定されないが、ポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、コポリエステルカーボネート、およびポリアミドが含まれる。一実施態様において、基材層は、ポリカーボネート、コポリカーボネートおよびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの第2のポリマー材料を含む。第2のポリマー材料は、電子ビーム活性ナノ粒子と熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物の熱可塑性ポリマー材料とは異なる。
【0058】
好適なポリカーボネート(PC)およびコポリカーボネートは、式(XVIII)の構造単位を含む。最も好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAのホモ-およびコ-ポリカーボネートである。ポリカーボネート基材は、(コーティング層として採用されるコポリエステルカーボネート以外の)コポリエステルカーボネートとすることもできる。このようなコポリマーは、典型的に、有機カーボネート単位に加えて、イソフタレートおよび/またはテレフタレートなどのエステル単位を含み、式(XIX)の構造単位を含むこともできる。ポリエステル基材には、これらだけに限定されないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール-co-エチレンテレフタレート)、およびポリ(1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)が含まれる。
【0059】
適切な付加ポリマー基材には、ホモ-およびコ-ポリマー脂肪族オレフィンポリマーおよび官能化オレフィンポリマー〔例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニル-co-塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(アクリロニトリル)など〕、アクリルポリマー〔例えば、(メタ)アクリルアミド、またはポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)などのアルキル(メタ)アクリレートなど〕、およびアルケニル芳香族化合物のポリマー(例えば、シンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレンなど)が含まれる。多くの目的のため好ましい付加ポリマーは、ポリスチレン、特にABSおよびASAコポリマーと呼ばれるもので、これらは、それぞれブタジエンおよびアルキルアクリレートからなるエラストマー性ベースポリマー上にグラフトした、熱可塑性非エラストマー性スチレン-アクリロニトリル側鎖を含むことができる。
【0060】
これまで述べた任意のポリマーのブレンドも、基材として使用することができる。典型的なブレンドには、これらだけに限定されないが、PC/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PC/PET、PC/ポリエーテルイミド、PC/ポリスルホン、ポリエステル/ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート/アクリルゴム、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミドまたはポリフェニレンエーテル/ポリエステルを含むブレンドが含まれる。
【0061】
一実施態様において、多層物品中の基材層は、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーを含むこともできる。適切な熱硬化性ポリマー基材には、これらだけに限定されないが、エポキシ、シアン酸エステル、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート、アクリル、アルキド、フェノール-ホルムアミド、ノボラック、レゾール、ビスマレイミド、PMR樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、ベンゾシクロブタン、ヒドロキシメチルフラン、およびイソシアネートから誘導された熱硬化性ポリマーが含まれる。一実施態様において、熱硬化性ポリマー基材は、さらに、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(例えば、これらに限定されないが、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、またはポリエステルなど)を含む。前記熱可塑性ポリマーは、典型的に、熱硬化性モノマーの硬化前に、前記熱硬化性モノマーの混合物と混合される。
【0062】
一実施態様において、熱可塑性または熱硬化性基材層は、少なくとも1種の充填剤および/または顔料もまた組み込む。例示的な増量および強化充填剤、ならびに顔料には、珪酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラスファイバーまたはガラス球、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、焼成粘土、カオリン、アスベスト、セルロース、木粉、コルク、木綿および合成織物繊維、特にガラス繊維およびカーボンファイバーなどの強化充填剤、ならびに金属フレークなどの着色剤、ガラスフレークおよびガラスビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、染料および顔料(これは、有機でも無機でもまたは有機金属でもよい)が含まれる。一実施態様において、本発明は、シート成形化合物(SMC)などの充填した熱硬化性基材層を含む多層物品を包含する。
【0063】
基材層は、少なくとも1種のセルロース系材料を含んでいてもよい。セルロース系材料には、これらだけに限定されないが、木材、紙、ボール紙、繊維板、パーティクルボード、合板、工作用紙、クラフト紙、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、同様のセルロース含有材料が含まれる。本発明は、また少なくとも1種のセルロース系材料と、少なくとも1種の熱硬化性ポリマー(特に接着性熱硬化性ポリマー)または少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(特にPETもしくはポリカーボネートなどの再生熱可塑性ポリマー)のいずれかとのブレンド、あるいは、少なくとも1種の熱硬化性ポリマーと少なくとも1種の熱可塑性ポリマーとの混合物を包含する。
【0064】
一実施態様において、多層物品は、少なくとも1つのガラス層を基材層として含む。一実施態様において、多層物品は、少なくとも1つの金属層を基材層として含む。代表的な金属基材には、磨耗するおそれがある、真鍮、銅、および他の金属を含む基材または金属含有物品が含まれる。
【0065】
基材層およびコーティング層の性質に基づき、少なくとも1つの接着性中間層を、任意の基材層と任意のコーティング層との間に用いるのが有利である。接着性中間層は、透明でも、不透明でもまたは半透明でもよい。多くの用途のために、中間層は光学的に透明な性質で、一般的に約60%を超える透過率を有し、ヘイズ値が約3%未満であり好ましくない色を有していないことが好ましい。
【0066】
一実施態様において、上記コーティング層の適用法には、その個別のシートを製造してその後で基材層に適用するか、または、両方の層を、典型的には溶融法によって同時に作製する方法が含まれる。この様に、同時射出成形、同時押出し、オーバーモールド法、ブロー成形、多段ショット射出成形およびコーティング層材料のフィルムを基材層の表面に設置し、その後で2つの層を、典型的には射出成形装置、例えばインモールド装飾またはホットプレスにおいて接着させる方法などが使用される。一実施態様において、少なくとも1つのコーティング層の適用は、溶媒キャスティングによって行うことができる。
【0067】
コーティング層および基材層を含む構造体を第2の基材層に適用することも本発明の範囲内である。第2の基材層は、一般的に熱可塑性、熱硬化性、またはセルロース系材料であって、基材層の材料とは類似しているかまたは同一であるが、コーティング層の材料とは異なる材料である。これは、例えば、射出成形金型にコーティング層および基材層を含む構造体を装填し、その後ろに第2の基材層材料を射出することによって実現することができる。この方法により、インモールド装飾などが可能である。第2の基材層の両面に他の層を取り付けることもできるが、通常は一面だけに適用することが好ましい。
【0068】
一実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約10ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有している。別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約100ミクロン〜約800ミクロンの範囲の厚さを有している。さらに別の実施態様において、電子ビーム活性ナノ粒子および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約200ミクロン〜約600ミクロンの範囲の厚さを有している。
【0069】
一実施態様において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約10ミクロン〜約2000ミクロンの範囲の厚さを有している。別の実施態様において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約200ミクロン〜約1600ミクロンの範囲の厚さを有している。さらに別の実施態様において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約400ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有している。
【0070】
前に述べたように、電子ビーム活性ナノ粒子および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含む物品は、電子ビーム(E-ビーム)源に曝される。E-ビーム源に曝されることにより架橋および/または鎖の切断がもたらされ、ポリマーの特性が変化する。E-ビーム源へ曝す手法またはE-ビーム照射の手法は、テレビスクリーンなどの様々な用途に使用されており当業者によく知られている。一実施態様において、E-ビーム照射は、タングステンなどの電子放射材料からの電子の熱放射;電圧の適用による放射された電子の加速;ならびに電場および/または直交磁場の使用によるビームの集束を含む。E-ビーム照射は、周囲の雰囲気条件中で、真空中で、または不活性雰囲気中で行うこともできる。一実施態様において、E-ビーム照射は窒素または水素の存在下で行われる。一実施態様において、E-ビーム照射は真空中で行われる。
【0071】
E-ビーム源の加速電圧がE-ビームの侵入深さを決定する。一実施態様において、E-ビーム源は、約80kV〜約20MVの範囲の動作電圧を有している。別の実施態様において、E-ビーム源は、約80kV〜約1000kVの範囲の動作電圧を有している。さらに別の実施態様において、E-ビーム源は、約80kV〜約500kVの範囲の動作電圧を有している。特定の一実施態様において、E-ビーム源は、約150kVの動作電圧を有している。
【0072】
E-ビーム照射に曝されたときのプラスチック物品の特性の変化は、単位質量当たりのエネルギーで測定されるE-ビーム線量(例えば、2.30カロリー/gが1百万ラド、1Mradに等しい)によって決定される。一実施態様において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約5000Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。別の実施態様において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約500Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。さらに別の実施態様において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約200Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。
【0073】
一実施態様において、E-ビーム源へ曝すことにより、ガラス転位温度、加熱たわみ温度、引っ張り強度/弾性率、熱膨張係数、耐薬品性、または耐磨耗性の1つまたは複数の変化をもたらす。
【0074】
一実施態様において、本発明は、耐磨耗性表面を含む物品を提供する。この物品は、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む方法によって製造される。
【0075】
本発明の方法によって製造することのできる物品には、自動車、トラック、軍用車、およびモーターサイクルの外装および内装構成部品(パネル、クオータパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、扉、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、屋根、バンパー、バンド、グリル、ミラーハウジング、ピラーアプリッケ、外装材、ボディ側モールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアーハンドル、スポイラー、窓枠、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テールランプ、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ライセンス・プレート囲い、ルーフラックおよびランニングボードを含む);アウトドアー車およびデバイスのためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;電気および電気通信デバイスのためのエンクロージャ;屋外家具;航空機構成部品;トリム、エンクロージャおよびハウジングを含むボートおよび船舶用設備;屋外モーターハウジング;水深測定器ハウジング、個人用ウォータークラフト;ジェットスキー;プール;スパ;ホットバス;脚立;脚立カバー;グレージング、屋根、窓、床、窓用装飾品または処理品などの建築用途;写真、絵画、ポスターのために処理したガラスカバーなどのディスプレイ用品;壁パネルおよび扉;保護したグラフィック;屋外および屋内表示;現金自動預払い機(ATM)のためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;芝および庭園用道具を含む、芝および庭園用トラクター、芝刈機および道具のためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;窓およびドアートリム;スポーツ設備および玩具;スノーモービルのためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;RV車用パネルおよび構成部品;遊園地用設備;プラスチック-木材の組合せから作られる物品;ゴルフコースマーカー;ユーティリティピットカバー;コンピュータハウジング;デスクトップ型コンピュータハウジング;携帯用コンピュータハウジング;ラップトップ型コンピュータハウジング;手のひらサイズコンピュータハウジング;モニターハウジング;プリンターハウジング;キーボード;FAX機器ハウジング;コピー機ハウジング;電話器ハウジング、携帯電話ハウジング;ラジオ送信機ハウジング;ラジオ受信機ハウジング;照明用備品;照明用製品;ネットワークインターフェースデバイス用ハウジング、;変圧器ハウジング;エアコン用ハウジング;公共輸送設備のための外装材または座席;列車、地下鉄、またはバスのための外装材または座席;メーターハウジング;アンテナハウジング;衛星放送用アンテナのための外装材;コート処理したヘルメットおよび個人用保護設備;コート処理した合成または天然織物; コート処理した写真用フィルムおよび写真プリント; コート処理した塗装物品; コート処理した染料物品; コート処理した蛍光物品; コート処理した発泡物品などの用途が含まれる。本発明は、付加的な製造作業、例えば、これらだけに限定されないが、成形、インモールド装飾、塗料オーブン中での焼成、ラミネーション、および/または熱成形などをさらに企図している。
【実施例】
【0076】
[材料]:実施例で使用したポリマー材料は、ポリマー中でのITRブロックとポリカーボネートブロックとの重量分率が90:10に等しいITR-ポリカーボネートコポリマー(SLX90/10)であった。特段の記述がない限り、SLX90/10ポリマーはフェノールで末端キャップしてあり、GE Plastics社より入手可能であった。コロイダルシリカ(20 nm、34%水溶液)は、Nalco Company社から購入した。アルミナおよびアルミニウム-ケイ素酸化物(82.5% Al、17.5% Si)粉末は、Nanoproducts Corporation社から購入した。シランは、Gelest Inc.社から購入した。これらのナノ粒子およびシランは、購入したしたままの状態で使用した。電子ビーム活性ナノ粒子の合成のための合成実験の詳細を、実施例1〜5に提示した。以下、未処理のアルミニウム-ケイ素酸化物を、未処理のAlSiOという。
【0077】
[実施例1]:フェニルトリエトキシシランとヘキサメチルジシラザンとを用いたコロイダルシリカの表面修飾
コロイダルシリカ(Nalco 1034A、20 nm)(100 g)およびイソプロパノール(195 ml)を、凝縮器および滴下漏斗を備えた2 Lの三口フラスコに入れた。このコロイダルシリカおよびイソプロパノールの混合物に、フェニルトリエトキシシラン(2.10 g、8.74 mmol)を滴下により添加した。混合物を80℃にて3時間還流させ、室温に冷却した。冷却後、100 mlの溶媒(イソプロパノール)を減圧下、80℃にて除去した。減少した体積をメトキシプロパノールを添加することによって補った。溶媒置換を繰り返すことによって、溶媒を合計500 ml除去した。次いで、この混合物に、ヘキサメチルジシラザン(5.07 g、31.4 mmol)を室温で滴下により添加した。得られた混合物を、さらに1時間還流させ、室温に冷却し、濾紙を通して濾過した。濾液を集め、溶媒を除去し、減圧オーブンを用いて乾燥した。以下、コロイダルシリカのフェニルトリエトキシシランおよびヘキサメチルジシラザンを用いた表面修飾を、処理1という。
【0078】
[実施例2]:アリルトリメトキシシランを用いたアルミニウムケイ素酸化物の表面修飾
アルミニウム-ケイ素酸化物(Nanoproducts Corporation、Al3N3190、50 nm)(5 g)およびトルエン(150 ml)を、凝縮器および滴下漏斗を備えた500 mLの三口フラスコに入れた。得られた混合物を、超音波プローブ(Sonic vibracell、90%振幅2秒パルス/2秒ポーズ/窒素下)を用いて、室温にて5分間超音波処理した後、アリルトリメトキシシラン(5重量%トルエン溶液、26.7 g、8.25 mmol)を滴下により添加した。得られた混合物をN2下で24時間還流させた。室温に冷却後、粉体を遠心分離(3000 rpmで3分間)により集めた。この粉体を50 mlのトルエンと混合し、1分間超音波処理し、3000 rpmで3分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した。得られた粉体を、減圧下、75℃にて乾燥した。以下、アルミニウム-ケイ素酸化物のアリルトリメトキシシランを用いた表面修飾を、処理2という。
【0079】
[実施例3]:トリメトキシシランを用いたアルミニウムケイ素酸化物の表面修飾
アルミニウム-ケイ素酸化物(Nanoproducts Corporation、Al3N3190、50 nm)(5 g)およびトルエン(150 ml)を、凝縮器および滴下漏斗を備えた500 mLの三口フラスコに入れた。得られた混合物を、超音波プローブ(Sonic vibracell、90%振幅2秒パルス/2秒ポーズ/窒素下)を用いて、室温にて5分間超音波処理した後、トリメトキシシラン(5重量%トルエン溶液、27.1 g、8.25 mmol)を滴下により添加した。得られた混合物をN2下で24時間還流させた。室温に冷却後、粉体を遠心分離(3000 rpmで3分間)により集めた。この粉体を50 mlのトルエンと混合し、1分間超音波処理し、3000 rpmで3分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した。得られた粉体を、減圧下、75℃にて乾燥した。以下、アルミニウム-ケイ素酸化物のトリメトキシシランを用いた表面修飾を、処理3という。
【0080】
[実施例4]:ベンジルトリエトキシシランを用いたアルミニウムケイ素酸化物の表面修飾
アルミニウム-ケイ素酸化物(Nanoproducts Corporation、Al3N3190、50 nm)(5 g)およびトルエン(150 ml)を、凝縮器および滴下漏斗を備えた500 mLの三口フラスコに入れた。得られた混合物を、超音波プローブ(Sonic vibracell、90%振幅2秒パルス/2秒ポーズ/窒素下)を用いて、室温にて5分間超音波処理した後、ベンジルトリエトキシシラン(5重量%トルエン溶液、41.9 g、8.25 mmol)を滴下により添加した。得られた混合物をN2下で24時間還流させた。室温に冷却後、粉体を遠心分離(3000 rpmで3分間)により集めた。この粉体を50 mlのトルエンと混合し、1分間超音波処理し、3000 rpmで3分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した。得られた粉体を、減圧下、75℃にて乾燥した。以下、アルミニウム-ケイ素酸化物のベンジルトリエトキシシランを用いた表面修飾を、処理4という。
【0081】
[実施例5]:ヘキサメチルジシラザンを用いたアルミニウムケイ素酸化物の表面修飾
アルミニウム-ケイ素酸化物(Nanoproducts Corporation、Al3N3190、50 nm)(5 g)およびトルエン(150 ml)を、凝縮器および滴下漏斗を備えた500 mLの三口フラスコに入れた。得られた混合物を、超音波プローブ(Sonic vibracell、90%振幅2秒パルス/2秒ポーズ/窒素下)を用いて、室温にて5分間超音波処理した後、ヘキサメチルジシラザン(5重量%トルエン溶液、26.6 g、8.25 mmol)を滴下により添加した。得られた混合物をN2下で24時間還流させた。室温に冷却後、粉体を遠心分離(3000 rpmで3分間)により集めた。この粉体を50 mlのトルエンと混合し、1分間超音波処理し、3000 rpmで3分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した。得られた粉体を、減圧下、75℃にて乾燥した。以下、アルミニウム-ケイ素酸化物のヘキサメチルジシラザンを用いた表面修飾を、処理5という。
【0082】
[実施例6〜16および比較例1〜3]
フィルムの成形:ポリマー(SLX90/10)およびナノ粒子(未処理のAlSiO、実施例1〜5で合成したナノ粒子、およびアダマンタン)を、コーヒー粉砕機を使用してドライブレンドし、垂直型二軸マイクロコンパウンダ(DACA)を180〜300 rpmで用いて、285℃において押し出して、1〜3 cm幅、25〜75μm厚さのフィルムにした。得られたフィルムを、カーボンブラックを含有する10 x 10 x 0.5 cm3のBPA-PCプラックに、160〜170℃にてラミネートした。電子ビーム活性ナノ粒子およびTAICの濃度は、約1重量%〜約10重量%の範囲で変化させた。
【0083】
E-ビームの照射: E-ビーム照射実験は、マサチューセッツ州WilmingtonのAdvanced Electron Beams Inc.社において、80〜150kV動作電圧の設備を使用した。特段の注記がない限り、125kVを標準として使用した。ユニットは通過ごとに5Mradの照射線量を与えることができた。これより高い線量は、複数回通過させることで得た。E-ビーム線量は0〜400Mradに変化させた。すべての実験は、特段の注記がない限り、酸素濃度300ppm未満の窒素ブランケットの下で実施した。
【0084】
摩耗特性の測定:サンプルの擦傷性能を、フェルト(Atlas 14995600)を間に挟んだ2ミクロンの研磨紙(3M 281Q WETORDRY PRODUCTION(商標)研磨紙2MIC)を備えたAltas Crockmeterを使用して調べた。擦傷の重さの程度は、半分、2回または10回サイクルを使用して、サイクルの数で調節した。サイクルストロークは、後進および前進であり、「半分」とは1つの方向に1回進めたことを意味する。擦傷性能の評価に以下の方法を使用した。(1)擦傷サンプルを、「GretagMacbeth Spectralight III」の「Daylight 65」条件の下、標準サンプルと目視で比較した。標準サンプルは、様々な擦傷性能を有するポリマーで構成されており、リネンまたはペーパーで様々なサイクル数擦傷して、表1に示すような様々な程度の擦傷損傷の厳しさ(目視品質、すなわちVQ)を得た。擦傷サンプルは、目視により0(最悪)から10(最善)スケールに分類した。各試験において、各条件の下で4回繰り返し、これらの数の平均値および標準偏差を評価に使用した。
【0085】
様々な電子ビーム活性ナノ粒子を用いたサンプルについて、様々な濃度でサンプルの擦傷性能を決定した(実施例6〜15)。電子ビーム活性ナノ粒子を全く含まないSLX90/10ポリマー、および表面官能化が全くされていないナノ粒子を含むSLX90/10を、比較例として用いた(比較例1〜3)。実施例6〜16および比較例1〜3に用いた組成物および実験条件の詳細を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
以下の比較は例証である。
【0088】
SLX90/10自体のE-ビームの照射では、耐摩耗性がわずかに向上し、VQが3(比較例1)から3.5(比較例2)に変化した。しかし、表面修飾されていないそのままのアルミニウム-ケイ素酸化物を添加しても(比較例3)、電子線に対する反応に変化を与えず、摩耗特性(VQ)をそれ以上向上させなかった。
【0089】
同様に、5重量%のアリルAiSiOを電子ビームを全く照射せずに添加しても(実施例6)、VQに変化がなかった。5重量%のアリルAiSiOを添加した後、電子ビームを200 Mrad照射すると(実施例7)、耐摩耗性が向上し、VQが3.5〜5に増加した。同様の傾向が実施例8〜16においても観察された。電子ビーム活性ナノ粒子を、電子ビームを全く照射することなく添加しても、摩耗特性の改良がもたらされなかった(実施例8、10、12、および14)。しかし、改良された摩耗特性が、いずれの電子ビーム活性ナノ粒子についても200 Mradの電子ビームの照射で観察された(実施例9、11、13、15、および16)。
【0090】
本発明を典型的な実施態様において例示し説明したが、本発明の精神から決して逸脱することなく様々な修正および置換えが可能であるので、この詳細な説明に限定されることを意図するものではない。したがって、本明細書で開示した発明の修正形態および均等形態が、ごく日常的な実験法を用いて当業者によってなされるかもしれないが、かかる修正形態および均等形態のすべては、特許請求の範囲に定義する本発明の精神および範囲内であると確信する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック物品の耐摩耗性を向上させる方法であって、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む方法。
【請求項2】
プラスチック物品の耐摩耗性を向上させる方法であって、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む方法。
【請求項3】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、少なくとも1種の電子ビーム活性官能基で表面修飾された少なくとも1種の無機ナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子が、金属酸化物、金属窒化物、0価金属、複合金属、複合金属酸化物、複合金属窒化物、金属酸窒化物、複合金属酸窒化物、およびこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属成分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウム-ケイ素酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アンチモン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化クロム、およびこれら金属酸化物の2種以上の組合せからなる群から選択される金属成分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の電子ビーム活性官能基で表面修飾された前記無機ナノ粒子が、少なくとも1種の有機官能化剤から誘導される構造単位を含み、前記有機官能化剤が少なくとも1種の電子ビーム活性官能基を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記有機官能化剤が、有機シラン、有機チタネート、有機ジルコネート、β-ジケトン、カルボン酸、カルボン酸塩、チオール、およびアミンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機官能化剤がシランである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、少なくとも1種の無機ナノ粒子を、式(I):
(I) R1aSiXb
〔式中、「a」および「b」は、各場合において独立に1〜3の整数であり(但し、「a+b」=4であることを条件とする);R1は、各場合において独立に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、C3〜C40芳香族基、またはオルガノシロキサン部分であり;Xは、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ基、またはNHSiR23基(式中、R2は、各場合において独立に、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である)である〕
を有する少なくとも1種のシランと接触させることによって形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記無機ナノ粒子が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウム-ケイ素酸化物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記式(I)を有するシランが、トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、およびヘキサエチルジシラザンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、アダマンタンナノ粒子、キュバンナノ粒子、アダマンタン誘導体を含むナノ粒子、およびキュバン誘導体を含むナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種の有機ナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、約0.5 nm〜約500 nmの範囲の粒子径を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマー材料が、式(II):
【化1】

(式中、R3は、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である)
の構造単位を含むポリカーボネートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリカーボネートが、ビスフェノールAポリカーボネートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリマー材料が、式(V):
【化2】

(式中、R4は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、各場合において独立に0から4までの整数であり;Wは、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である)
を有する構造単位を含むコポリカーボネートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記熱可塑性ポリマー材料が、式(VI):
【化3】

(式中、R5は、各場合において独立に、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R6は、各場合において独立に、二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である)
を有する構造単位を含むコポリエステルカーボネートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記コポリエステルカーボネートが、式(XI):
【化4】

(式中、R8およびR9は、各場合において独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「b」は、各場合において独立に0から4までの整数である)
を有する構造単位を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、組成物の約0.1重量%〜約50重量%に相当する量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記電子ビーム活性ナノ粒子が、組成物の約0.25重量%〜約10重量%に相当する量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)が、前記組成物を押し出してフィルムである物品を成形する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記フィルムが、約10ミクロンから約1000ミクロンまでの範囲の厚さを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(b)が、前記組成物を第2のポリマー材料と同時に押出して多層物品を成形する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のポリマー材料が、工程(a)で準備した前記熱可塑性ポリマー材料とは異なるように選択され、かつ、前記第2のポリマー材料が、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)が、前記組成物を溶媒キャスティングして、フィルムを成形する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記曝す工程が、窒素または水素の存在下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記曝す工程が真空中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記電子ビーム源が、約80kV〜約20MVの範囲の動作電圧を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記電子ビーム源が、約150kVの動作電圧を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記電子ビーム源に曝す工程が、約1Mrad〜約5000Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
耐摩耗性表面を有する物品であって、
(a)少なくとも1種の電子ビーム活性ナノ粒子と、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料とを含む組成物を準備する工程;
(b)工程(a)の組成物から物品を成形する工程;および
(c)工程(b)で成形した物品を電子ビーム源に曝す工程
を含む方法によって製造される、物品。

【公表番号】特表2009−511737(P2009−511737A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536686(P2008−536686)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/039690
【国際公開番号】WO2007/047294
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】