説明

ナノ粒子分散液

【課題】リン脂質を含むナノ粒子分散液であって、経時的な安定性を向上したものを提供する。
【解決手段】ナノ粒子分散液は、複数の長鎖疎水基と複数の親水基とを有する多鎖多親水基型化合物と、リン脂質と、を含むナノ粒子が、水またはエマルジョンに分散していることを特徴とする。また、ナノ粒子分散液は、前記リン脂質と前記多鎖多親水基型化合物の重量比(リン脂質の重量/多鎖多親水基型化合物の重量)が、0.05≦(リン脂質の重量/多鎖多親水基型化合物の重量)≦20を満たすことを特徴とする。また、ナノ粒子分散液は、前記リン脂質と前記多鎖多親水基型化合物の含有量の合計が、0.001重量%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水相あるいはエマルジョンにナノ粒子が分散してなるナノ粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスファチジルコリンなどのリン脂質は、親水基と疎水基を持つため、化粧料などの皮膚外用剤の分野において、エマルジョンを形成するための界面活性剤として用いられている。特に、消費者の天然物志向の高まりにより、天然物由来の界面活性剤であるリン脂質によるエマルジョン化が求められている。
【0003】
かかる分散液として、従来は、1〜数10μm程度の粒子が分散してなる分散液が一般的であるが、皮膚への吸収性を高めるため、中心粒径が100nm以下のナノ粒子が分散してなるナノ分散液とすることが望まれる。しかし、一般的には、上記リン脂質のみでナノ粒子分散液を形成し、かつ長時間安定に保つことは難しい。
【0004】
一方、多鎖多親水基系化合物は、リン脂質と同様、界面活性剤として採用しうるものであり、化粧料への適用についても提案されている。しかしながら、一般的には多鎖多親水基系化合物だけでナノ粒子分散液を形成し、かつ長時間安定に保つことは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、リン脂質を含むナノ粒子分散液であって、経時的な安定性を向上したものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、リン脂質を含むナノ粒子分散液を開発していく中で、リン脂質とともに多鎖多親水基を加えることで、中心粒径が100nm以下のナノ粒子が水相あるいはエマルジョンに均一分散してなる安定なナノ粒子分散液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン脂質に多鎖多親水基型化合物を加えることにより、リン脂質と多鎖多親水基系化合物からなるナノ粒子分散液の高温、室温、低温での経時安定性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0009】
本発明のナノ粒子分散液は、リン脂質と多鎖多親水基型化合物を必須成分として含有するものである。
【0010】
リン脂質は、複合脂質の一種であり、分子内にリン酸エステルを有する脂質である。本実施形態において用いられるリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(即ちレシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジル酸などのグリセロリン脂質、およびこれらの水素添加物が挙げられる。そして、これらはそれぞれ1種又は2種以上混合して用いることができる。これらの成分は、大豆あるいは卵黄を精製したもの、またこれらの水素添加物が好適である。
【0011】
多鎖多親水基型化合物は、その構造が、分子内に長鎖疎水基と親水基とを、2個以上有する化合物である。
【0012】
本実施形態の多鎖多親水基型化合物における複数の長鎖疎水基としては、それぞれ独立に、すなわち、複数の長鎖疎水基ごとに、炭素数8〜20個の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖、環状鎖からなる疎水基を有する。
【0013】
長鎖疎水基としては、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシルなどの各残基とこれらの分岐鎖異性体、ならびにこれらに対応した1か所、2か所、または3か所に不飽和部分を有する不飽和残基等が挙げられる。
【0014】
また、多鎖多親水基型化合物の長鎖疎水基としては、炭素原子数8〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導される長鎖アシル基でもよい。本実施形態の長鎖疎水基としては、例えば、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸のような直鎖脂肪酸を用いることができる。
【0015】
また、本実施形態の長鎖疎水基としては、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、
メチルテトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、
メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、
メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸のような分岐脂肪酸を用いてもよい。
【0016】
また、本実施形態の長鎖疎水基としては、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキセデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸のような直鎖モノエン酸を用いてもよい。また、本実施形態の長鎖疎水基としては、メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸のような分岐モノエン酸を用いてもよい。また、長鎖疎水基としては、リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸のようなジ又はトリエン酸を用いてもよい。また、オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシレン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸のようなアセチレン酸を用いてもよい。
【0017】
また、本実施形態の長鎖疎水基としては、メチレンオクタデセン酸、メチレンオクタデカン酸、アレプロール酸、アレプレスチン酸、アレプリル酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸のような環状酸から誘導されるアシル基等を用いてもよい。
【0018】
また、本実施形態の長鎖疎水基としては、天然油脂から得られる脂肪酸由来のアシル基でもよく、上記の炭素数8〜20の飽和または不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基であればよい。例えば、ヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、菜種油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、などから誘導されるアシル基等を用いてもよい。
【0019】
次に、本実施形態の多鎖多親水基型化合物の親水基としては、それぞれ独立に、すなわち、複数の親水基ごとに、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸残基、リン酸残基またはそれらの塩等、あるいは、オキシアルキレン基、ポリエチレングリコール基など、またはアミノ基、4級アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基またはそれらの塩などを有するものである。
【0020】
ここで、当該塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩などがあげられる。具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩、アルミニウム、亜鉛などの金属の塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミンがある。
【0021】
本実施形態のナノ粒子分散液は、以上に示した、リン脂質と、長鎖疎水基および親水基を有する多鎖多親水基型化合物と、からなるナノ粒子が、水相あるいはエマルジョンに分散してなるものである。
【0022】
ここでナノ粒子とは、中心粒子径が100nm以下の粒子であることが好ましい。さらに好ましくは、ナノ粒子の粒径は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。なお、中心粒子径は、ナノ粒子の粒度分布において、ある粒子径より大きい粒子の個数または質量が、全粒子の個数または質量の50%を占めるときの粒子径である。粒子径は、動的光散乱法/レーザードップラー法によって測定されたものである。
【0023】
以上のリン脂質(A)と多鎖多親水基型化合物(B)は、ナノ粒子分散液中において、その重量比が、A:B=1:20〜20:1(すなわち、0.05≦Aの質量/Bの質量≦20)であることが好ましい。この重量比の範囲から外れて、リン脂質の配合比率が低すぎたり、多鎖多親水基系化合物の配合比率が低すぎると、安定なナノ分散液が形成されない。
【0024】
また、本発明に係る実施形態のナノ粒子分散液におけるリン脂質と多鎖多親水基型化合物の合計の含有率は、0.001重量%以上であることが望ましい。
【0025】
本実施形態のナノ粒子分散液には、上記必須成分の他に、油性成分を含んでもよい。
【0026】
油性成分としては、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンP、およびその誘導体、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルなどの油溶性ビタミン類、コレステロール、エルゴステロール、β−シトステロール、カンペステロール、シグマステロールなどのステロール類を用いることができる。また、油性成分としては、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチンなどのカロテノイド類を用いてもよい。また、油性成分としては、サフラワー油、アサイーオイル、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ごま油、コムギ胚芽油、とうもろこし油、綿実油、アボガド油、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッッ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油などの植物油を用いてもよい。また、油性成分としては、スクワランなどの動物油、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリンなどの炭化水素油を用いてもよい。また、油性成分としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリル、などのエステル油を用いてもよい。また、油性成分としては、環状シリコン、メチルフェニルシリコン、ジメチコンなどのシリコン油を用いてもよい。
【0027】
さらに、油性成分として、上述したものを2種類以上混合して用いてもよい。
【0028】
また、本実施形態のナノ粒子分散液には、水性成分を含んでもよい。水性成分としては、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオールや、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ソルビトール、マルチトール、ラフィノース、トレハロースなどの糖類や、グリシン、セレン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸などのアミノ酸や、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどの塩類などを配合してもよい。
【0029】
次に、本実施形態のナノ粒子分散液の製造方法を説明する。本発明の水相あるいはエマルジョン中ナノ粒子分散液の製造方法は、特に限定されず、高速攪拌機などの公知の乳化機、攪拌機を用いて行うことができるが、以下に製造方法の一例を示す。
【0030】
本実施形態のナノ粒子分散液の製造方法の一例としては、まず、上述した、リン脂質と、多鎖多親水基型化合物と、1,3ブチレングリコールを80℃以上に加熱、攪拌混合し、完全に溶解したことを確認する。そして、グリセリンおよび純水を80℃以上に加熱し、攪拌混合する。80℃以上において、これら両者を混合し、透明になることを確認する。そして、30℃まで攪拌冷却する。以上の手順で、1,3ブチレングリコール、グリセリンおよび純水の系にリン脂質および多鎖多親水基型化合物からなるナノ粒子を形成させ、得られた混合物を(A1)とする。
【0031】
次に、純水と、グリセリンと、マルビット液と、1,3−ブチレングリコールと、ケルトロールと、エデト酸二ナトリウムと、フェノキシエタノールとを均一に攪拌混合し、得られた混合物を(B)とする。
【0032】
そして、混合物Bに混合物A1を加えて、室温で攪拌して均一に分散させることで、本実施形態にかかるナノ粒子分散液が得られる。
【0033】
以上説明した本実施形態のナノ粒子分散液は、例えば、化粧料として用いることができる。
【0034】
化粧料を構成する他の成分としては、一般に化粧料に配合される各種成分を用いることができる。例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素、脂肪酸類、アルコール類、ポリオール、エステル類、アミン、アミド、金属石鹸類、ガム類、水溶性高分子化合物、酸化防止剤、ビタミン類、香料、色材類、防腐殺菌剤、アミノ酸類、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、消炎剤、抗ヒスタミン剤、生薬類、各種植物エキス類、美白剤、保湿剤などを配合することができる。
【0035】
化粧料の態様としては、例えば、クリーム、乳液、パック、化粧水、美容液、ジェル、洗顔料をはじめとする基礎化粧品類や、おしろい、ファンデーションなどのメイクアップ化粧品類、育毛剤、養毛剤などの化粧料が挙げられる。
【0036】
本発明の水相あるいはエマルジョン中ナノ粒子分散液の用途は、化粧料に限定されるものではなく、軟膏剤、パップ剤、プラスター剤などの医薬品、さらには、医薬部外品などの各種皮膚外用剤に用いることができる。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、リン脂質と多鎖多親水基型化合物とを組み合わせることで、時間が経過してもナノオーダーの粒子が安定して維持される粒子分散液が得られる。従って、皮膚への吸収性の高い状態が長期間維持される化粧料などの外用剤を生成することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、透明なナノ粒子分散液を生成することができる。これにより、特に化粧水など、透明であることが要求される化粧料として使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
大豆水添レシチン(日油株式会社:コートソーム NC−21)0.4重量部、多鎖多親水基型化合物(旭化成ケミカルズ ペリセアL−30)0.389重量部(ペリセアL−30として)、1,3−ブチレングリコール2.4重量部、グリセリン2重量部、純水4.81重量部を80℃で混合し、30℃まで冷却する。得られた混合物を(A1)とする。
【0041】
上記A1とは別に、純水69.58重量部、グリセリン5重量部、マルビット液5重量部、1,3−ブチレングリコール10重量部、ケルトロール0.2重量部、エデト酸二ナトリウム0.02重量部、フェノキシエタノール0.2重量部を均一に攪拌混合し、得られた混合物を(B)とする。
【0042】
(B)に(A1)を均一に分散することで、実施例1の水相に均一分散されたナノ粒子分散液が得られた。なお、ペリセアL−30は、水:71%、ジラウロイルグルタミン酸リジンNa:29%の混合物である。
【0043】
(実施例2〜12,比較例1〜4)
実施例2〜12および比較例1〜4を、実施例1の処方を基準に、大豆水添レシチンとペリセアL−30の総量および比率を変化させて作成した。
【0044】
(実施例および比較例に対する評価試験)
実施例および比較例について、中心粒子径の測定と、触った場合の感触および経時安定性についての評価試験を行った。
【0045】
ナノ粒子分散溶液中のナノ粒子の中心粒子径は、日機装株式会社製の粒度分布測定装置(ナノトラック、型番:UPA−UT151)により動的光散乱法によって測定した。測定条件は、粒子条件:屈折率1.81/非球形、溶媒条件:精製水/1.333、測定時間:90秒で行った。
【0046】
ナノ粒子分散液の感触は、女性20名に、実施例、比較例を顔に塗布してもらい、塗布直後および翌日の肌の状態を評価してもらうことにより調査した。20名中18名以上が、しっとり感があり、さらに翌日もしっとり感が持続したと回答したサンプルについては「○」、17名から10名がそのように回答したサンプルについては「△」、10名未満がそのように回答したサンプルについては「×」と評価した。
【0047】
経時安定性は、実施例、比較例それぞれについて、5℃、室温(25℃)、45℃の3種類の温度環境下において、経時変化を観察して評価した。経時変化は、濁りおよび沈殿の有無を観察した。3か月以上透明性が維持された場合には「○」、1か月以上3か月未満で濁りまたは沈殿が生じた場合には「△」、1か月未満で濁りまたは沈殿が生じた場合には「×」として評価した。
【0048】
また、これらの評価試験の結果に基づき、総合評価を行い、感触、中心粒子径、経時安定性の評価項目のすべてが「○」であった場合には「○」、1つでも「△」または「×」があった場合には「×」と評価した。
【0049】
以下の表1に、実施例の組成および測定結果、評価結果を示す。また、表2に比較例の組成及び測定結果、評価結果を示す。
【0050】
【表1】



【0051】
【表2】



【0052】
表1に示すように、実施例1〜10は、いずれも分散する粒子の中心粒径が100nm以下であり、さらに、いずれの温度条件の下でも、長期間、ナノ粒子の状態が維持されることがわかった。また、ナノ粒子分散液の感触についても、しっとり感があり、保湿効果が維持されたという良好な結果が得られた。
【0053】
一方、比較例1については、リン脂質と多鎖多親水基型化合物の合計の含有量が0.001重量%より小さく、感触の評価について、しっとり感がないという評価結果となった。
【0054】
比較例2については、リン脂質であるレシチンの多鎖多親水基化合物に対する重量比が、1/20未満であり、リン脂質の含有量が少ないため、十分にナノ粒子化せず、感触もしっとり感がないという結果になった。また、経時安定性も低かった。
【0055】
比較例3については、リン脂質であるレシチンの多鎖多親水基化合物に対する重量比が20を超えており、感触の評価および経時安定性のいずれについても好ましくない評価結果となった。
【0056】
また、比較例4についても、リン脂質であるレシチンの多鎖多親水基化合物に対する重量比が20を超えており、感触の評価、および経時安定性の評価が好ましくなかった。
【0057】
次に、本発明のナノ粒子分散液を用いて実際に化粧料を作成した実施例について説明する。
【0058】
(実施例13 水相分散タイプナノ粒子分散ローション)
あらかじめ、純水69.78重量部、グリセリン5重量部、ジプロピレングリコール5重量部、1,3−ブチレングリコール10重量部、エデト酸二ナトリウム0.02重量部、フェノキシエタノール0.2重量部を均一に攪拌混合し、得られた混合物を(B2)とする。
【0059】
(B2)に実施例1中の(A1)を均一に分散することで、ナノ粒子分散化粧水が得られた。
【0060】
(実施例14 水相分散タイプナノ粒子分散ジェル)
あらかじめ、パラオキシ安息香酸メチル0.2重量部、カルボキシビニルポリマー0.4重量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.05重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部、グリセリン5重量部、10%水酸化カリウム水溶液1重量部、エタノール7重量部、純水71.35重量部を均一に攪拌混合し、得られた混合物を(B3)とする。
【0061】
(B3)に実施例1中の(A1)を均一に分散することで、ナノ粒子分散ジェルが得られた。
【0062】
(実施例15 水相分散タイプナノ粒子分散オールパーパス美容液ジェル)
大豆レシチン(日油株式会社:コートソーム NC−21)0.4重量部、多鎖多親水基型化合物(旭化成ケミカルズ ペリセアL−30)1.34重量部(ペリセアL−30として)、1,3−ブチレングリコール2.4重量部、グリセリン2重量部、アスタキサンチン0.001重量部、ビタミンA0.001重量部、アサイーオイル0.01重量部、モモ1,3−ブチレングリコール抽出液0.01重量部、ローズヒップ1,3−ブチレングリコール抽出液0.01重量部、ソウハクヒ1,3−ブチレングリコール抽出液0.01重量部、純水3.228重量部を80℃で混合し、30℃まで冷却する。得られた混合物を(A2)とする。
【0063】
実施例中の(B)に(A2)を均一に分散することで、水相分散タイプナノ粒子オールパーパス美容液ジェルを得た。
【0064】
(実施例16 エマルジョン分散タイプナノ粒子分散乳液状美容液)
大豆水添レシチン(日油株式会社:コートソームNC−21)0.2重量部、多鎖多親水基型化合物(旭化成ケミカルズ ペリセアL−30)0.67(ペリセアL−30として)、1,3−ブチレングリコール1.2重量部、グリセリン1重量部、純水1.93重量部を80℃で混合し、30℃まで冷却する。得られた混合物を(A3)とする。
【0065】
あらかじめ、パラオキシ安息香酸メチル0.2重量部、キサンタンガム0.1重量部、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル共重合体0.1重量部、ジプロピレングリコール6重量部、ポリエチレングリコール(PEG)10000.5重量部、10%水酸化カリウム水溶液0.05重量部、ジメチコン5重量部、シクロメチコン5重量部、流動パラフィン5重量部、純水73.05重量部を混合し、通常の乳液の製法に従い、80℃に加温溶解、乳化後、30℃まで冷却する。得られた混合物を(B4)とする。
【0066】
(B4)に(A3)を均一に分散することで、エマルジョン分散タイプナノ粒子分散乳液状美容液を得た。
【0067】
(実施例17 エマルジョン分散タイプナノ粒子分散クリーム)
あらかじめ、Nikkol Decaglyn 1−M(ミリスチン酸ポリグリセリル−10)0.5重量部、Nikkol Tetraglyn 1−SV(ステアリン酸ポリグリセリル−4)3.5重量部、グリセリン10重量部、パラオキシ安息香酸メチル0.2重量部、Nikkol Trifat−308(トリエチルヘキサノイン)10重量部、軽質流動パラフィン3重量部、メチルポリシロキサン2重量部、カーボポール13822.5重量部、L−アルギニン0.1重量部、純水63.2重量部を80℃で通常のクリームの製法に従い、加温溶解乳化後、30℃まで冷却する。得られた混合物を(B5)とする。
【0068】
(B5)に(A3)を均一に分散することで、エマルジョン分散タイプナノ粒子分散クリームを得た。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長鎖疎水基と複数の親水基とを有する多鎖多親水基型化合物と、リン脂質と、を含むナノ粒子が、水またはエマルジョンに分散していることを特徴とするナノ粒子分散液。
【請求項2】
前記リン脂質と前記多鎖多親水基型化合物の重量比(リン脂質の重量/多鎖多親水基型化合物の重量)が、
0.05≦(リン脂質の重量/多鎖多親水基型化合物の重量)≦20
の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子分散液。
【請求項3】
前記リン脂質と前記多鎖多親水基型化合物の含有量の合計が、0.001重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子分散液
【請求項4】
前記ナノ粒子の中心粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のナノ粒子分散液。

【公開番号】特開2012−254944(P2012−254944A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127462(P2011−127462)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(507296997)株式会社トレミー (1)
【Fターム(参考)】